説明

マロン酸ニトリル誘導体アニオン塩、及びイオン伝導性材料としてのそれらの使用

【課題】本発明は、アニオン性荷電が排除されているイオン性化合物、マロン酸ニトリルの誘導体に関する。
【解決手段】本発明によって開示されるイオン性化合物は、全体的な電気的中性を保証するのに十分な数の、少なくとも1つのカチオン性部分M+mと結合するアニオン性部分を含む;この化合物は、ヒドロキソニウム、ニトロソニウムNO、アンモニウム−NH、原子価mを有する金属カチオン、原子価mを有する有機カチオン、又は原子価mを有する有機金属カチオンとしてのMをさらに含んでなる。アニオン性部分は式R−Y−C(C≡N)又はZ−C(C≡N)のうちの1つに相当し、ここでZは電子吸引基、Rは有機基、及びYはカルボニル、チオカルボニル、スルホニル、スルフィニル、又はホスホニルである。これらの化合物は、特にイオン伝導性材料、導電性材料、着色剤、及び様々な化学反応の触媒に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン電荷が非局在化されたマロン酸ニトリルから誘導されるイオン性化合物、及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な機能を有する有機分子又は重合体にイオン性基を導入することは公知であり、かつ特に関心が持たれている。実際、クーロンカは分子レベルで利用可能なより強力な相互作用に対応し、そのイオン性基は非常に注目に値する方法でそれらが結合する分子を修飾する。スルホン酸塩又はカルボン酸塩官能基により水可溶性とされた着色剤に言及することができる。
【0003】
しかしながら、この型の−CO1/mMm+又は−SO1/mMm+基は解離せず、水又は軽アルコールのような極性の高いプロトン性溶媒を除く溶媒における不溶性を引き起こし、これがそれらの使用を大きく制限する。
【0004】
他方で、通常の非プロトン性媒体又は溶媒和重合体に可溶であり、かつそこで解離する化合物[RSO−N−SO1/mMm+(RFは過フッ素化基であり、Mm+は原子価m+のカチオンである)の塩が公知である。しかしながら、アニオン性電荷の電子に対して重要な引力を発揮する2つのペルフルオロアルキルスルホニル基の存在(特に、各スルホニル基の炭素のa原子上のフッ素原子の存在)は可溶性及び解離の特性を得るのに必要な条件であるものと考えられている。例えば、酸H[CFSO−N−SOCF]のpKaは非フッ素化酸CHSOH(pKa=0.3)のものと比較して僅かに1.95であり、中心窒素原子の基本的な特徴のために明らかに過フッ素化酸CFSOH(pKa<−9)に劣る。
【発明の概要】
【0005】
驚いたことに、本発明者らは、イオン性基−C(CN)を含む化合物が、例えそれらが電子吸引性が高い過フッ素化基を含んでいない場合でも、優れた可溶性及び解離特性を有していることを見出している。
【0006】
したがって、本発明は、出発分子の複雑な修飾を必要とすることなく良好な可溶性及び良好な解離を有するイオン性化合物群を提供することを目的とする。本発明の分子の前駆体は、大部分が工業製品であり、及び/又は容易に利用できるものである。加えて、本発明の化合物において過フッ素化部分が存在しないこと、又は少なくともそれが減少していることが、その化合物の製造コスト、したがってその結果生じる用途のコストの削減を可能にすることに注意すべきである。
【0007】
本発明の目的は、全体の電気的中性を備えるのに十分な数の少なくとも1つのカチオン性部分M+mと会合するアニオン性部分を含む、マロン酸ニトリルの誘導体であるイオン性成分であって、Mがヒドロキソニウム、ニトロソニウムNO、アンモニウム−NH、原子価mを有する金属カチオン、原子価mを有する有機カチオン又は原子価mを有する有機金属カチオンであることを特徴とし、かつ該イオン性部分が式R−Y−C(C≡N)又はZ−C(C≡N)のうちの1つに相当し、ここで、
− Zは、
j)−CN、−NO、−SCN、−N、FSO−、−CF、R’CH−(R’は過フッ素化基、好ましくはCF−)、フルオロアルキルオキシ、フルオロアルキルチオキシ、フルオロアルケニルオキシ、フルオロアルケニルチオキシ基:
jj)おそらくは少なくとも1つの窒素、酸素、イオウ又はリン原子を含む1以上の芳香族核を有する基であって、該核はおそらくは縮合核であり、及び/又は該核はおそらくはハロゲン、−CN、−NO、−SCN、−N、CF=CF−O−、基R−及びRCH−から選択される少なくとも1つの置換基を坦持し、ここでRは1ないし12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキルアルキル基、フルオロアルキルオキシ基、フルオロアルキルチオキシ基、アルキル、アルケニル、オキサアルキル、オキサアルケニル、アザアルキル、アザアルケニル、チアアルキル、チアアルケニル基、重合体基、少なくとも1つのカチオン性イオノフォア基及び/又は少なくとも1つのアニオン性イオノフォア基を有する基;
から選択される、少なくともフェニル基と等しいハメットパラメータを有する電子吸引基を表し、
ただし、1つの置換基Zは一価の基、多価の基、もしくは少なくとも1つの基−C(C≡N)を坦持する多価の基(デンドリマーを含む)の一部、又は重合体の一区画であってもよく;
− Yは、カルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基又はホスホニル基を表し、及び:
− Rは、
a)アルキルもしくはアルケニル基、アリール、アリールアルキル、アルキルアリールもしくはアルケニルアリール基、多環基を含む脂環式もしくは複素環基;
b)少なくとも1つの機能的エーテル、チオエーテル、アミン、イミン、アミド、カルボキシル、カルボニル、イソシアネート、イソチオシアネート、ヒドロキシを含むアルキル又はアルケニル基;
c)芳香族核及び/又は該核の少なくとも1つの置換基が窒素、酸素、イオウのようなヘテロ原子を含む、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アルキルアリール又はアルケニルアリール基;
d)窒素、酸素、イオウから選択される少なくとも1つのヘテロ原子をおそらくは含む縮合芳香族環を含む基;
e)おそらくは機能的エーテル、チオエーテル、イミン、アミン、カルボキシル、カルボニル又はヒドロキシ基を含む、ハロゲン化又は過ハロゲン化アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール基;
f)RC(R’)(R”)−O−基(ここで、Rはアルキル過フッ素化基であり、かつR’及びR”は互いに独立に水素原子又は上記a)、b)、c)又はd)において定義されるもののような基である)[例えば、CFCHO−、(CFCO−、(CFCHO−、CFCH(C)O−、CH(CFCH−];
g)(RN−基(ここで、同一であるか、もしくは異なるR基は上記a)、b)、c)、d)及びe)において定義されるようなものであり、Rのうちの1つはハロゲン原子であってもよく、又は2つのR基が一緒にNと環を構成する二価の基を形成する);
h)重合体基;
i)1以上のカチオン性イオノフォア基及び/又は1以上のアニオン性イオノフォア基を有する基;
から選択される基であり、
ただし、1つの置換基Rは一価の基、複数の−Y−C−(C≡N)基を坦持する多価の基の一部又は重合体の一区画であってもよいイオン性組成物であり、
ただし、YがカルボニルかつRが1ないし3個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基である場合、又はZが−CNである場合には、Mはアルカリ金属とは異なる、
該イオン性成分である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施例47において、1.8Vと3.3Vとの間で、充電と放電との速度をC/10(10時間で充電または放電をする公称静電容量)でサイクルして得られた曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様によると、カチオンはアルカリ金属のカチオン、アルカリ土類金属のカチオン、遷移金属のカチオン、三価金属のカチオン、希土類のカチオンから選択される金属カチオンである。例として、Na、Li、K、Sm3+、La3+、Ho3+、Sc3+、Al3+、Y3+、Yb3+、Lu3+、Eu3+に言及することができる。
【0010】
カチオンは有機金属カチオン、例えばメタロセニウム、であってもよい。例として、フェロセン、チタノセン、ジルコノセン、インデノセニウムもしくはメタロセニウムアレンから誘導されるカチオン、おそらくはキラル性を有するボスフィン型のリガンドと錯体を形成する遷移金属のカチオン、原子もしくは原子団に共有結合により固定されている1以上のアルキルもしくはアリール基を有する有機金属カチオンに言及することができる。具体的な例には、メチル亜鉛、フェニル水銀、トリアルキルスズもしくはトリアルキル鉛、クロロ[エチレンビス(インデニル)]ジルコニウム(IV)又はテトラキス−(アセトニトリル)パラジウム(II)が含まれる。有機金属カチオンは重合体鎖の一部であってもよい。
【0011】
本発明の特定の態様において、有機カチオンはR(オキソニウム)、NR(アンモニウム)、RC(NHR(アミジニウム)、C(NHR(グアニジウム)、C(ピリジニウム)、C(イミダゾリウム)、C(イミダゾリニウム)、C(トリアゾリウム)、SR(スルホニウム)、PR(ホスホニウム)、IR(ヨードニウム)、(C(カルボニウム)カチオンからなる群より選択されるオニウムカチオンである。所定のオニウムカチオンにおいて、R基は全て類似していてもよい。しかしながら、オニウムカチオンは互いに異なるR基を含んでいてもよい。R基はHであってもよく、又は以下の基から選択されてもよい。
【0012】
− アルキル、アルケニル、オキサアルキル、オキサアルケニル、アザアルキル、アザアルケニル、チアアルキル、チアアルケニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルケニルアリール基、ジアルキルアミノ基及びジアルキルアゾ基;
− 窒素、酸素、イオウのようなヘテロ原子を含む少なくとも1つの側鎖をおそらくは有する環状又は複素環基;
− 芳香族核にヘテロ原子をおそらくは含む環状又は複素環基;
− 少なくとも1つの窒素、酸素、イオウもしくはリン原子をおそらくは含む、複数の縮合もしくは非縮合芳香族又は複素環核を含む基。
【0013】
オニウムカチオンがHとは異なる少なくとも2つのR基を有する場合、これらの基は、カチオン性電荷を有する中心をおそらくは取り囲む、芳香族性もしくは非芳香族性である環を一緒に形成してもよい。
【0014】
本発明の化合物のカチオン性部分がオニウムカチオンである場合、それはカチオンの正電荷とアニオン部分の負電荷との間のイオン性結合によってのみカチオン性部分に結合する独立したカチオン基の形態であってもよい。この場合、カチオン性部分は重合体の循環単位の一部であってもよい。
【0015】
オニウムカチオンはアニオン性中心によって坦持されるZ基又はRD基の一部であってもよい。この場合、本発明の化合物は双性イオンを構成する。本発明の化合物のカチオンがオニウムカチオンである場合、それは、その化合物に特定の特性を付与することを可能にする置換基をその化合物に導入するように選択することができる。例えば、カチオンMは、環中に少なくとも1つのアルキル化窒素原子を含む、芳香族特性を有するカチオン性複素環であり得る。例として、イミダゾリウム、トリアゾリウム、ピリジニウム、4−ジメチル−アミノ−ピリジニウムに言及することができ、これらのカチオンはおそらくは環の炭素原子上に置換基を有する。これらのカチオンの中では、その塩が150℃未満、特には25℃未満の融点を有するものである。
【0016】
カチオンMが、おそらくは重合体網に組み込まれている、−N=N−、−N=Nを有するジアゾ基を坦持する基、スルホニウム基、ヨードニウム基、ホスホニウム基又は置換もしくは非置換アレン−フェロセニウムカチオンである本発明の化合物は、適切な波長の化学線エネルギー源によって活性化可能である限り興味深いものである。このような化合物の特定の例には、カチオンがジアリールヨードニウムカチオン、ジアルキルアリールヨードニウムカチオン、トリアリールスルホニウムカチオン、トリアルキルアリールスルホニウムカチオン、又は置換もしくは非置換フェナシルージアルキルスルホニウムカチオンであるものが含まれる。上記カチオンは重合体鎖の一部であってもよい。
【0017】
本発明の化合物のカチオンMは2,2’[アゾビス(2−2’−イミダゾリニノ−2−イル)プロパン]2+又は2,2’−アゾビス(2−アミジニオプロパン)2+基を組み込む有機カチオンであってもよい。その場合本発明の化合物は、熱的に活性化可能であり、かつ不揮発性であり、極性有機溶媒並びに非プロトン性溶媒和モノマー及び重合体に可溶であるフリーラジカル開始剤として特に興味深い。
【0018】
本発明の化合物の特定の群はRY−基を含むものである。Yが−SO−又は−CO−である化合物が特に好ましい。
置換基Rの選択により本発明の化合物の特性を調整することが可能である。一態様において、Rは1ないし24個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、オキサアルキル、オキサアルケニル、アザアルキル、アザアルケニル、チアアルキルもしくはチアアルケニル、又は5ないし24個の炭素原子を有するアリール、アリールアルキル、アルキルアリールもしくはアルケニルアリール基から選択される。
【0019】
別の態様によると、Rは1ないし12個の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル基から選択され、おそらくは主鎖又は側鎖に少なくとも1つのヘテロ原子O、NもしくはSを含み、及び/又はおそらくはヒドロキシ基、カルボニル基、アミン基又はカルボキシル基を坦持する。
【0020】
別の態様によると、Rは、芳香族核及び/又はそれらの置換基が窒素、酸素、イオウのようなヘテロ原子を構成するアリール、アリールアルキル、アルキルアリール又はアルケニルアリール基から選択される。
【0021】
置換基Rは重合体基、例えば、ポリ(オキシアルキレン)基であってもよい。その場合、本発明の化合物はイオン性基−Y−C(CN)、Mを坦持する重合体の形態にある。
【0022】
は重合体の循環単位、例えば、オキシアルキレン単位又はスチレン単位であってもよい。その場合、本発明の化合物は、その循環単位の少なくとも一部がイオン性基−Y−C(CN)、Mが固定されている側基を坦持する重合体の形態にある。例として、少なくとも特定のオキシアルキレン単位が置換基−Y−C(CN)、Mを坦持するポリ(オキシアルキレン)又は少なくとも特定のスチレン単位が置換基−Y−C(CN)、Mを坦持するポリスチレンに言及することができる。
【0023】
本発明による化合物の特定の範疇には、置換基Rが少なくとも1つのアニオン性イオノフォア基及び/又は少なくとも1つのカチオン性イオノフォア基を有する化合物が含まれる。このアニオン性基は、例えば、カルボキシレート官能基(−CO)、スルホネート官能基(−SO)、スルホンイミド官能基(−SONSO−)又はスルホンアミド官能基(−SON−)であり得る。イオノフォア基は、例えば、ヨードニウム、スルホニウム、オキソニウム、アンモニウム、アミジニウム、グアニジニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、トリアゾリウム、ホスホニウム又はカルボニウム基であり得る。カチオン性イオノフォア基は全体的に又は部分的にカチオンMとして作用し得る。
【0024】
が少なくとも1つのエチレン性不飽和及び/又は縮合可能な基及び/又は熱的手段、光化学的手段もしくはイオン性解離によって解離可能な基を含む場合、本発明の化合物は、おそらくは他のモノマーとの重合、架橋又は縮合に処することが可能な反応性化合物である。また、これらは、イオノフォア基を適切な反応性官能基を坦持する重合体に固定するのに用いることもできる。
【0025】
置換基Rはメソモルフォア基(mesomorphous group)もしくはクロモフォア基(chromophore group)又は自己ドープした導電性の重合体もしくは加水分解可能なアルコキシシランであってもよい。
【0026】
置換基Rはフリーラジカルを捕獲することが可能な基、例えば、ヒンダードフェノールもしくはキノンを含んでいてもよい。
また、置換基Rは解離性双極子、例えば、アミド官能基、スルホンアミド官能基又はニトリル官能基を含んでいてもよい。また、置換基Rは酸化還元対、ジスルフィ」ミ基、チオアミド基、フェロセン基、フェノチアジン基、ビス(ジアルキルアミノアリール)基、窒素鹸化物基又は芳香族イミン基を含んでいてもよい。
【0027】
また、置換基Rは錯化リガンド、又は光学的に活性な基を含んでいてもよい。
本発明の化合物の別の範疇には、Yがカルボニル基であり、R−CO−がアミノ酸、又は光学的もしくは生物学的に活性なポリペプチドを表す化合物が含まれる。
【0028】
別の変種によると、本発明による化合物は置換基Rを含み、この置換基Rは2を上回る原子価vを有する基を表し、それ自体が少なくとも1つの基−Y−C(CN)、Mを含む。この場合、本発明の化合物のアニオン性部分に存在する負電荷は適切な数のカチオン又はカチオン性イオノフォア基Mによって補償されるべきである。
【0029】
本発明の化合物が式Z−C(CN)、M(ここで、Zは、−SO−基によって負電荷を有する窒素原子に結合しない電子吸引基である)に相当する場合、Zは−OCnF2n+1、−OCH、−SC2n+1及び−SCH、−OCF=CF、−SCF=CF(ここで、nは1ないし8の全数である)からなる群より選択されることが有利である。また、ZはC2n+1CH−基(ここで、nは1ないし8の全数である)であってもよい。
【0030】
本発明の化合物は、化合物R−Y−L又はZ−Lを化合物[A−C(CN)n−mnM’m+と反応させる方法であって、
− Z及びRは前に定義されるようなものであり、
− M’、又はMについて前に定義されるようなカチオンであり、
− Lは電気陰性出発基、例えば、ハロゲン、N−イミダゾリル基、N−トリアゾリル基、活性化エステルを付与する化合物(例えば、スクシンイミジルオキシ、ベンゾトリアゾールオキシ又はO−シル尿素)、アルコキシド基、R−Y−O−又はR−Y−S−基を表し、及び
− AはカチオンMm+、トリアルキルシリル基、トリアルキルゲルマニル基、トリアルキルスタンニル基又はt−アルキル基(ここで、アルキル置換基は1ないし6個の炭素原子を有する)を表す、
方法によって得ることができる。
【0031】
例として、下記反応スキームによるフルオロスルホニルフッ化物とマロン酸ニトリルの二塩との反応が言及されるべきである。
FSO−F+[NaC(CN)Na→NaF+[FSO−C(CN)Na
【0032】
Aがt−アルキル基である化合物[A−C(CN)n−mnM’m+の使用が有利であり、これは、そのような基が対応するアルケンの形成による水素イオンの前駆体であるためである。出発基がフッ素である場合には、F−Si結合の非常に高い安定性から、トリアルキルシリル基の使用は特に興味深いものである。
【0033】
Aが水素イオンである化合物[A−C(CN)n−mnM’m+が用いられる場合、本発明の化合物の形成を促進するため、水素イオンと組み合わせることによりL(HT)塩を形成することが可能な第三塩基もしくは過密塩基Tの存在下において反応を行うことが有利である。この塩基は、アルキルアミド(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、キヌクリジン)、1,4−ジアゾビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO);ピリジン(例えば、ピリジン、アルキルピリジン、ジアルキルアミノピリジン);イミダゾール(例えば、N−アルキルイミダゾール、イミダゾ[1,1−a]ピリジン);アミジン(例えば、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク−7−エン(DBU));グアニジン(例えば、テトラメチルグアニジン、1,3,4,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン(HPP)の中で選択することができる。マロン酸ニトリルのアルカリ金属塩も塩基として用いることができる。
【0034】
このような方法の例として、DABCOの存在下においてカルボニル塩化物RCOClをマロン酸ニトリルと反応させる方法に言及することができる。
本発明の化合物は、カップリング剤によるマロン酸ニトリル塩とカルボン酸との直接カップリングによっても得ることができる。Z=COである場合、ペプチドの合成において用いられる縮合剤(分子脱水剤)の作用によりRCOOHからその場で直接調製される疑似ハロゲン化物型の化合物RZX(X=RCO、SCO、PTO、BzO...)を用いることが有利である。このような薬剤は、例えば、Systhesis p. 453 (1972)及びAnn. Rev. Biochem 39, 841 (1970)に記述されている。この場合、本発明の化合物は、極性溶媒中に化学量論比で存在する、分子脱水剤が付加されているRCOOH及び化合物(1/nM)[(NC)CH]から調製される。好ましくは、縮合剤は、カルボジイミド、例えばシクロヘキシルカルボジイミドもしくはジイソプロピルカルボジイミド;スクシンイミジルの、フタルイミジルの、ベンゾトリアゾリルの、ニトロ−、ジニトロ−もしくはペルハロフェノールの、トリフルオロエチルの、トリクロロエチルの炭酸塩又はシュウ酸塩;混合物PΦ−ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)又はPΦ−ジチオジピリジン;カルボニルジイミダゾール(Im)CO又はフェニルホスホロジイミダゾールΦPO(Im);アミドアセタール、例えば、ジメチルホルムアミドジ−ネオペンチルアセタール(CHNCH[OCHC(CH;2−アルコキシ−1−アルコキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン;O−ベンゾトリアゾール−1−イルーN,N,N’N’−テトラメチルウロニウム又はO−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリスジメチルアミノホスホニウムの塩;芳香族スルトン、例えば、2,2−(6−ニトロナフト[1,8−cd]−1,2−オキサチオキシ)酸化物、イソブチルクロロホルメート、ジフェニルホスホクロロイリデート、エチレンクロロホスファイト、ジエチルエチレンピロホスファイト、ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ボスフィニル塩化物;2−ter−ブチル−5−メチルイソオキサゾリウム塩(ウッドワード試薬L)から選択される。
【0035】
上記方法のいずれかにより得られる化合物のカチオンは、カチオン交換の公知の方法により、沈殿もしくは選択的抽出、又はイオン交換樹脂の使用のいずれかにより、置換することができる。
【0036】
加えて、本発明の置換基Rは公知の反応により修飾することができる。例えば、アリル基を含む置換基Rは、おそらく、過酸化物と反応させることにより変換されてエポキシ化置換基Rを生じる。−NHR基は、カリウムtert−ブトキシド及びビニルクロロホルメートと反応させることによりビニルエステル基に変換することができる。これらの修飾又は他のものを行うための方法は当業者に利用可能である。
【0037】
本発明のイオン性化合物は、高度に多様な性質を有する置換基が固定されている少なくとも1つのイオノフォア基を含む。これらの置換基に対する選択の可能性の大きさを考慮すると、本発明の化合物は、たとえ極性が低いものであっても大部分の有機、液状もしくは重合体媒体においてイオン伝導性の特性を付与することを可能にする。この用途は電気化学の分野、特に一次もしくは二次発電機、超電気容量(supercapacitances)、燃焼性電池及び電界発光ダイオードにエネルギーを貯蔵するのに重要である。本発明のイオン性化合物の重合体又は有機液体との適合性は、イオン性化合物の量が極度に少ない場合でさえも、注目に値する帯電防止特性を付与することを可能にする。重合体である本発明の化合物は、重合又は共重合する特性を有する本発明の化合物から得られる重合体性化合物に加えて、上に収載される特性を移動不可能なアニオン性電荷を有する利点と共に有する。これは、本発明の別の目的が、溶媒中の溶液の形態にある本発明のイオン性化合物から作製されるイオン伝導性材料からなるためである。
【0038】
一態様によると、イオン伝導性材料の調製に用いられるイオン性化合物は、カチオンがアンモニウム、又は金属、特にリチウムもしくはカリウム、亜鉛、カルシウム、希土類金属から誘導されるカチオン、又は有機カチオン、例えば、置換アンモニウム、イミダゾリウム、トリアゾリウム、ピリジニウム、4−ジメチルアミノピリジニウムであり、これらのカチオンがおそらくは環の炭素原子上に置換基を坦持する化合物から選択される。これにより、得られるイオン伝導性材料は、正電荷と負電荷との相互作用が低いことから溶媒中での伝導性及び可溶性が高い。その電気化学的安定性の範囲は広く、酸化媒体に加えて還元媒体において安定である。さらに、有機カチオン及び150℃未満の融点を有する化合物、特にイミダゾリウム、チアゾリウム、ピリジニウム、4−ジメチルアミノピリジニウムの化合物は、それらが溶融相にある場合には溶媒の非在下においてさえ、高い固有伝導性を有する。
【0039】
これらのイオン伝導性材料の特性は、置換基Y又はRを選択することによって改変することもできる。
にアルキル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基、特に6ないし20個の炭素原子を有するアルキル基、アリールアルキル基、特に液晶型の相を形成するビフェニルを含む両者を選択することにより、イオン導電性材料にメソゲン型の特性を付与することが可能になる。液晶相、ネマティック、コレステリックもしくはディスコティック(discotic)型における伝導特性は、光学的ポスティング(optical posting)に関連する用途に、又はカチオンの移動度に影響を与えることなく電解質、特に重合体電解質におけるアニオンの移動度を低下させるのに興味深いものである。この特徴は、電気化学的発電機、特にリチウムカチオンを用いるものにおける用途に重要である。
【0040】
置換基Rがメソモルフォア基、又は少なくとも1つのエチレン性不飽和及び/又は熱的手段、光化学的手段もしくはイオン解離により縮合可能な基及び/又は分離可能な基を含む基である場合、イオン伝導性材料は多価電解質である重合体又は共重合体を容易に形成し、後者は重合体が溶媒和基を有する場合には元来多価電解質であり、あるいは液体もしくは重合体型の極性溶媒を添加することにより、又はそのような溶媒と混合することにより多価電荷質となる。これらの生成物は単にカチオンのためだけによる伝導性を有し、これは電気化学的発電機型の用途において非常に有用な特性を構成する。共重合体におけるモル分画が小さい場合、これらは安定な帯電防止特性を生じ、これは湿度に依存することがほとんどなく、かつカチオン性着色剤の固定を生じるものであり、この特性は着色材料を伴う織物繊維及び皮革に有用である。
【0041】
自己ドープした電子的に伝導性の重合体である置換基Rの存在は、外部の薬剤に対するイオン伝導性材料の安定性を改善する。この伝導性は高温のときでさえも安定である。金属と接触した状態で、これらの材料が生じる界面抵抗は非常に低く、特に金属鉄又はアルミニウムを腐食から保護する。
【0042】
置換基Rが加水分解可能なアルコキシシランである場合、イオン伝導性材料は水の存在下における加水分解−縮合の単純な機構により安定な重合体を形成することが可能であり、したがって、酸化物、シリカ、ケイ酸塩、特にはガラスの表面を処理して表面伝導特性、帯電防止特性を誘起し、又は極性重合体の付着を促進することが可能である。
【0043】
置換基Rがヒンダードフェノール又はキノンのようなフリーラジカルトラップを含む基である場合、イオン導電性材料は以下の利点及び特性を有する:それは、不揮発性であり、かつ同様に帯電防止特性が付与される極性モノマー及び重合体に適合する酸化防止剤として作用する。
【0044】
置換基Rがアミド、スルホンアミド又はニトリルのような解離する双極子を含む場合、イオン伝導性材料の低もしくは中程度の極性の媒体、特には溶媒和重合体における伝導性が改善され、これは、溶媒又は揮発性可塑剤の添加を最小にし、それらを排除さえする。
【0045】
ジスルフィド、チオアミド、フェロセン、フェノチアジン、ビス(ジアルキルアミノアリール)基、窒素酸化物、芳香族イミドのような酸化還元対を含む置換基Rの存在により、光電気化学系、特には光を電気に変換する系、エレクトロクローム(electrochrome)型の光の調節系における電気化学的発電機の保護要素及び電荷均等化として有用な酸化還元シャトル(redox shuttle)の特性をイオン伝導性材料に誘起することが可能になる。
【0046】
錯化リガンドである置換基Rのイオン伝導性材料における存在により、金属性カチオン、特には電荷が増加した(2、3及び4)ものを、非プロトン性媒体を含む有機媒体に可溶の錯体の形態でキレート化することが可能となり、かつこれらのカチオンを溶媒和重合体中で特にはアニオン性錯体の形態で移送することが可能となる。電荷が増加した金属製カチオンは、実際には、溶媒和重合体中で非可動性である。この種の錯化剤は、特に安定である遷移金属(Fe、Co...)の特定のカチオン又は特定の希土類(Ce、Eu...)酸化還元対と共に付与される。
【0047】
がO、N及びSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有するアルキルもしくはアルケニル置換基である本発明の化合物を含むイオン伝導性材料は、特には極性重合体、とりわけポリエーテルにおける錯化及び可塑化受容能を有する。ヘテロ原子N及びSは遷移金属Zn及びPbと選択的に錯体を形成する。
【0048】
アルキルもしくはアルケニル置換基Rがさらにヒドロキシ基、カルボニル基、アミン基、カルボキシル基を有する場合、本発明のイオン性化合物は重縮合により重合体又は共重合体を生じることが可能であり、このような重合体又は共重合体を含むイオン伝導性材料は多価電解質特性を有する。
【0049】
がアリール、アリールアルキル、アルキルアリール又はアルケニルアリール基から選択され、側鎖及び/又は芳香族核が窒素、酸素、イオウのようなヘテロ原子を含む化合物が本発明のイオン伝導性材料に存在することにより、解離が改善され、かつヘテロ原子の位置に依存する錯体の生成(ピリジン)又は重複酸化(duplicative oxidation)による共役重合体もしくは共重合体の生成(ピロール、チオフェン)の可能性が増大する。
【0050】
イオン伝導性材料が、Rが重合体鎖の循環単位を表す本発明の化合物を含む場合、その材料は多価電解質を構成する。
置換基Zが−OC2n+1、−OCH、−SC2n+1及び−SCH、−OCF=CF、−SCF=CF(nは1ないし8の全数)からなる群より選択される本発明の化合物は、重合体を扱う際に80℃の高温であっても、特には酸素に対して、安定なモノマー及び重合体の前駆体である。したがって、このような化合物を含むイオン伝導性材料は燃焼性電池の電解質として特に適切である。
【0051】
本発明のイオン伝導性材料は溶媒中の溶媒の形態にある本発明のイオン性化合物を含む。
この溶媒は非プロトン性液体溶媒であっても、極性重合体であっても、あるいはそれらの混合物の1つであってもよい。
【0052】
非プロトン性液体溶媒は、例えば、直鎖エーテル及び環状エーテル、エステル、ニトリル、ニトロ誘導体、アミド、スルホン、スルホラン、アルキルスルファミド、特には水素化炭化水素から選択される。特に好ましい溶媒は、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、グライム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルテトラヒドロフラン、メチルもしくはエチルホルメート、プロピレンもしくはエチレンカーボネート、アルキルカーボネート(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びメチルプロピルカーボネート)、ブチロラクトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、テトラメチレンスルホン及び5ないし10個の炭素原子を有するテトラアルキルスルホンアミドである。
【0053】
本発明のイオン伝導性材料は、上述の非プロトン性液体溶媒から選択される非プロトン性液体溶媒とイオウ、窒素、酸素及びフッ素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む単位を有する極性重合体溶媒とを同時に含むことができる。2ないし98%の液体溶媒を含むことが可能である。このような極性重合体の例として、アクリロニトリル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン又はメチルメタクリレートから誘導される単位を主として有する重合体に言及することができる。溶媒中の非プロトン性液体の割合は2%(可塑化した溶媒に相当)から98%(ゲル化した溶媒に相当)までを変化し得る。
【0054】
本発明のイオン伝導性材料は、従来技術においてイオン伝導性材料の調製に通常用いられる塩をさらに含んでいてもよい。本発明のイオン性化合物との混合物において用いることができる塩のうち、ペルフルオロアルカンスルホン酸塩、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミド、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メタン及びトリス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メタンから選択される塩が特に好ましい。
【0055】
もちろん、本発明のイオン伝導性材料はこの種の材料において通常用いられる添加物、例えば、粉末もしくは繊維の形態の無機又は有機充填材(charges)をさらに含んでいてもよい。
【0056】
本発明のイオン伝導性材料は、電気化学一般における電解質として用いることができる。したがって、本発明は、電解質によって分離される陰極及び陽極を具備する電気化学的発電機であって、この電解質が上述のイオン伝導性材料であることを特徴とする電気化学的発電機を目的として有する。特定の態様によると、このような発電機は、金属リチウム、又は、おそらくは酸化リチウム中のナノメートル級の分散の形態にあるそれらの合金、又はリチウム及び遷移金属の二重窒化物(double nitride)、又は一般式Li1+y+x/3Ti2−x/3(0≦x≦1、0≦y≦1)を有する低電位酸化物、又は炭素及び有機物質の熱分解から生じる炭化生成物からなる陰極を具備する。別の態様によると、この発電機は、単独で、もしくは混合して用いられる、酸化バナジウムVO(2≦x≦2,5)、LiV、LiNi1−xCO(0≦x≦1;0≦y≦1)、マンガンスピネル(manganese spinels):LiMn1−x(M=Cr、A1、V、Ni、0≦x≦0,5;0≦y≦2)、有機ポリジスルフィド、FeS、FeS、硫酸鉄Fe(SO、橄欖石構造の鉄及びリチウムリン酸塩及びホスホケイ酸塩、又は鉄がマンガンで置換されている置換生成物から選択される陽極を具備する。正のコレクターは、好ましくは、アルミニウム製である。
【0057】
また、本発明のイオン伝導性材料は超電気容量において用いることもできる。したがって、本発明の別の目的は、少なくとも1つの高比表面(specific surface)を有する炭素電極、又は酸化還元重合体を含む電極を用いる超電気容量であって、電解質が上述のイオン伝導性材料である超電気容量を提供することにある。
【0058】
また、本発明のイオン伝導性材料は導電性材料のpもしくはnドーピングに用いることも可能であり、この使用は本発明の別の目的を構成する。
加えて、本発明のイオン伝導性材料はエレクトロクローム装置における電解質として用いることができる。電解質が本発明によるイオン伝導性材料であるエレクトロクローム装置は本発明の別の目的である。
【0059】
本発明の化合物のイオン種の強力な解離が、カルボカチオン、特には酸素及び窒素との共役が存在するものの安定化、及び、驚いたことに、特定のモノマーに対する水素イオン形態の本発明の化合物の強力な活性を生じることが観察された。したがって、本発明は、カチオン性反応が可能なモノマーもしくは重合体の重合もしくは架橋の触媒であるブレンステッド酸の源を構成する光開始剤としての、又は重合体を修飾するための触媒としての、このイオン性化合物の使用を目的として有する。
【0060】
カチオン性反応が可能なモノマーもしくはプレポリマーを重合もしくは架橋する方法は、本発明の化合物を、重合反応を触媒する酸の源を構成する光開始剤として用いることを特徴とする。カチオンが、おそらくは重合体網に組み込まれる、結合−N=N、−N=N−を有する基、スルホニウム基、ヨードニウム基、又は置換もしくは非置換のアレン−フェロセニウムカチオンである本発明による化合物が特に好ましい。
【0061】
置換基R又は置換基Zの選択は、モノマー又はプレポリマーの反応に用いられる溶媒における前記化合物の安定性が増大するように、及び最終重合体に所望の特性の関数としてなされる。例えば、非置換アルキル基の選択は低極性媒体における溶解性をもたらす。オキサ基又はスルホンを含む基の選択は極性媒体における溶解性をもたらす。それぞれイオウ又はリン原子に酸素を付加することにより得られるスルホキシド基、スルホン基、酸化ホスフィン基、ホスホネート基を含む基は、接着性、輝き、酸化もしくはUVに対する耐性に関して改善された獲得特性を重合体に付与する。本発明の光開始剤で重合又は架橋することが可能なモノマー及びプレポリマーは、カチオン性重合を受けることができるものである。
【0062】
本発明の光開始剤で重合又は架橋することができるモノマー及びプレポリマーは、カチオン性重合に処することができるものである。
モノマーのうち、環状エーテル官能基、環状チオエーテル官能基又は環状アミン官能基ビニル化合物(特には、ビニルエーテル)、オキサゾリン、ラクトン及びラクタムに言及することができる。
【0063】
エーテル又は環状チオエーテル型の重合体のうち、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、エピクロロヒドリン、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシドール、ブチレンオキシド、オクチレンオキシド、グリシジルエーテル及びエステル(例えば、グリシジルメタクリレートもしくはアクリレート、フェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル又はそのフッ素化誘導体)、4ないし15個の炭素原子を有する環状アセタール(例えば、ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキセパン)及びスピロ−ビシクロジオキソランに言及することができる。
【0064】
ビニル化合物のうち、ビニルエーテルは、カチオン性重合が可能である非常に重要なモノマー群を構成する。例として、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールモノビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、150ないし5,000の分子量を有するポリ−THF−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、アミノプロピルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテルに言及することができる。
【0065】
他のビニル化合物には、例として、1,1−ジアルキルエチレン(例えば、イソブテン)、ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン、a−メチルスチレンのようなa−アルキルスチレン、4−ビニルアニソール、アセナフテン)、N−ビニル化合物(例えば、N−ビニルピロリドン又はN−ビニルスルホンアミド)が含まれ得る。
【0066】
プレポリマーのうち、脂肪族鎖、芳香族鎖、又は複素環鎖にエポキシ基が坦持される化合物、例えば、3ないし15個のエチレンオキシド単位によってエトキシル化されているビスフェノールAのグリシジックエーテル(glycidic ethers)、ジアルキル、アルキルアリール又はジアリールシロキサンの共重合体をメチルヒドロゲノシロキサンを用いてビニルシクロヘキサンオキシドの存在下においてヒドロシリル化することによって得られるエポキシシクロヘキサン−エチル型の側鎖を有するシロキサン、トリエトキシもしくはトリメトキシシラプロピルシクロヘキセンオキシドから得られるゾル−ゲル型の縮合生成物、ブタンジオールモノビニルエーテル及び2以上の感応性を有するアルコールと脂肪族もしくは芳香族ジ−もしくはトリ−イソシアネートとの反応生成物を含むウレタンに言及することができる。
【0067】
本発明による重合方法は、カチオン性重合が可能な少なくとも1種のモノマー又はプレポリマーと少なくとも1種の本発明のイオン性化合物とを混合し、得られた混合物に化学線又はβ線を照射することにある。好ましくは、5mm未満の厚みを有する薄層に形成されており、好ましくは500μm以下の厚みを有する薄層の形態にある反応混合物に放射線を放射する。反応の持続期間は、試料の厚み及び活性λ波長での源の出力に依存する。これは、源の前面を通過する速度よって定義され、その速度は300m/分ないし1cm/分である。層を延展し、それを放射線で処理する操作を多数回繰り返すことにより、5mmを上回る厚みを有する最終材料の層を得ることができる。
【0068】
一般に、用いられる光開始剤の量はモノマー又はプレポリマーの重量に対して0.01ないし15重量%であり、好ましくは0.1ないし5重量%である。
本発明のイオン性化合物は、溶媒の非在下において光開始剤として用いることができ、これは、例えば、光開始剤として用いられるイオン性化合物が可溶もしくは容易に分散し得る液体モノマーを重合させようとする場合である。この種の利用は、それが溶媒に関連する問題(毒性、引火性)を打開することを可能にするため、特に興味深いものである。
【0069】
また、本発明のイオン性化合物は、特に重合又は架橋させようとする媒体が高い粘性を有する場合にすぐに使用可能であり、かつ容易に分散できる、重合に対して不活性である溶媒中の均質な溶液の形態にある光開始剤として用いることもできる。
【0070】
不活性溶媒の例として、アセトン、メチルーエチルケトン及びアセトニトリルのような揮発性溶媒に言及することができる。これらの溶媒は、単に、(特にはプレポリマーを扱う場合に、それらの粘性を低下させるため)重合又は架橋させようとする生成物の希釈に用いられる。これらは、重合又は架橋の後、乾燥させることにより除去される。不揮発性溶媒にも言及することができる。不揮発性溶媒も重合又は架橋させようとする生成物を希釈し、光開始剤として用いられる本発明のイオン性化合物を溶解させる役目を果たすが、それらは形成された材料中に残留し、そのため可塑化剤として作用する。例としては、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、モノ−、ジ−、トリ−エチレンもしくはプロピレングリコールのエーテル−エステル、モノ−、ジ−、トリ−エチレンもしくはプロピレングリコールのエーテル−アルコール、フタル酸もしくはクエン酸のエステルのような可塑化剤に言及できる。
【0071】
本発明の別の態様によると、組み合わせて用いられるより粘性の重合体又はプレポリマーに対する重合モノマー及び溶媒もしくは希釈剤として同時に作用する、低分子量かつ低粘度の化合物である、重合に対して反応性の化合物が溶媒又は希釈剤として用いられる。反応の後には、溶媒として用いられたこれらのモノマーは最終的に得られる巨大分子網の一部であり、二感応性モノマーを扱う場合にはそれらの組み込みはより広範である。照射の後に得られる材料は、低分子量及び実質的な蒸気圧(vapour tension)を有し、又はその重合体が接触している物質を汚染することが可能な生成物を含まない。例として、反応性溶媒はモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−エチレン及びプロピレングリコールのモノ及びジビニルエーテル、N−メチルピロリドン、例えば商品名PEPCで米国ニュージャージー州のISPから商業的に入手可能なプロピレンカーボネートの2−プロペニルエーテルから選択することができる。
【0072】
反応混合物に照射するため、照射を紫外線、可視光線、X−線、γ線及びβ放射から選択することができる。紫外線を化学放射線として用いる場合、本発明の光開始剤に、この光開始剤の最大吸収に相当するものよりも少ないエネルギーの波長での効率的な光分解をもたらすことを目的とする光増感剤、例えば産業装置で製造されるもの、を添加することが有利である(特に、水銀灯に対するI≒300nm)。このような添加物は公知であり、非限定的な例として、アントラセン、ジフェニル−9,10−アントラセン、ペリレン、フェノチアジン、テトラセン、キサントン、チオキサントン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、1,3,5−トリアリール−2−ピラゾリン及びそれらの誘導体、特には、とりわけ吸収波長の変更を可能にするアルキル、オキサ−もしくはアザ−アルキル基によって芳香族核が置換されている誘導体に言及することができる。本発明によるヨードニウム塩が光開始剤として用いられる場合には、イソプロピルチオキサントンが好ましい光増感剤の例である。
【0073】
異なる型の既述の放射線の中で、紫外線が特に好ましい。一方では、それが他の既述の放射線よりも用いるのに都合がよい。他方では、光開始剤は一般にUV線に対して直接的に感受性であり、エネルギー(δλ)の差がより小さければ光増感剤はより効率的である。
【0074】
本発明のイオン性化合物は、熱的に、又は化学放射線の作用によって生じるブリーラジカル開始剤と共に用いることもできる。重合の方法が異なる官能基を有するモノマー又は重合体の混合物を重合又は架橋させることも可能である(例えば、フリーラジカルによって重合するモノマーもしくはプレポリマー及びカチオン性重合によって重合するモノマーもしくはプレポリマー)。この可能性は、対応するモノマーを源とする重合体の単純な混合物によって得られるであろうものとは異なる物理的特性を有する相互浸透網を生成するのに特に有利である。ビニルエーテルはフリーラジカル開始によっては活性ではないか、もしくは活性が非常に低い。したがって、本発明による光開始剤、フリーラジカル開始剤、ビニルエーテル型のモノマーの少なくとも1種及びアリル基のもののような非活性化二重結合を有するモノマーの少なくとも1種を含む反応混合物においては、各型のモノマーの分離重合を行うことが可能である。他方で、電子を欠いているモノマー、例えば、電子に富むビニルエーテルの存在下において形成された、フマル酸、マレイン酸、アクリルもしくはメタクリル酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びマレイミドのエステル又はアミド、並びにそれらの誘導体が電荷の移動を複雑にし、これがフリーラジカル開始により代わりの重合体を1:1でもたらすことが知られている。ビニルモノマーを最初にこの化学量論に対して過剰することにより、重合可能な官能基を純粋なカチオン性重合によって保存することが可能となる。フリーラジカル開始剤及び本発明によるカチオン性開始剤の混合物の活性の開始は、例えば、本発明の光開始剤及び選択されたラジカル開始剤が活性である波長、例えばI=250nm、の化学放射線による単離の場合、2種類の反応体に同時に渡される。例として、以下の市販生成物:イルガキュア(Irgacure)184、イルガキュア651、イルガキュア261、カンタキュア(Quantacure)DMB、カンタキュアITXに開始剤として言及することができる。
【0075】
また、成形が容易であり、かつ架橋の程度に加えて取り扱い、接着、溶解度をカチオン性開始剤の活性を惹起することにより改変することができるプレポリマーを最初に形成するのに、2種類の型の重合を連続的に用いることも有利である。例えば、熱解離可能なラジカル開始剤及び本発明によるカチオン性光開始剤の混合物により、まず熱の作用の下で、次いで化学放射線の作用の下での連続的な重合又は架橋をもたらすことが可能となる。同様に、フリーラジカル開始剤及び本発明によるカチオン性光開始剤が選択され、最初に本発明による光開始剤を惹起するものよりも長い波長で感光させる場合、2つの制御可能な工程で架橋が得られる。フリーラジカル開始剤は、例えば、365nmの波長でフリーラジカル重合の惹起を可能にするイルガキュア651であり得る。
【0076】
また、本発明は、マイクロリソグラフィーの分野におけるフォトレジストの化学的増幅反応への本発明のイオン性化合物の使用も目的として有する。このような利用の過程では、重合体及び本発明のイオン性化合物を含む材料のフィルムが照射される。この照射はカチオンMが水素イオンで置換されることによる酸の形成を生じ、これは重合体の分解又は変形を触媒する。照射されたフィルムの部分で重合体が分解又は変形した後、形成されたモノマー又は変換された重合体が除去され、未露出部分の像が残る。この特有の用途には、イオン性置換基−C(CN)を坦持するスチレニル循環単位から本質的になる重合体の形態にある本発明の化合物を用いることが有利である。これらの化合物は、スルフィドを取り扱う際、光分解の後に揮発性ではなく、したがって臭いを放たない生成物を得ることを可能にする。したがって、本発明の化合物の存在下において修飾することが可能な重合体のうち、例えば、エステル単位又は第三アルキルアリールエーテル単位を含む重合体、例えば、ポリ(フタルデヒド)、ビスフェノールAと二酸との重合体、ポリt−ブトキシカルボニルオキシスチレン、ポリt−ブトキシーa−メチルスチレン、ポリジt−ブチルフマレート−CO−アリルトリメチルシラン及び第三アルコールのポリアクリレート、特にはt−ブチルポリアクリレートを引用することができる。他の重合体はJ. V. Crivelloら, Chemistry of Materials 8, 376-381, (1996)に記述されている。
【0077】
高い熱安定性を有する本発明の化合物は、従来技術の既知塩に対して多くの利点を生じる。これらは、PF、AsF、特にはSbF型の配位アニオンを用いて得られるものに匹敵し、もしくはそれよりも速い惹起及び伝達速度を有する。加えて、アニオン−C(CN)の拡散係数は、ヘキサフルオロメタレートアニオン又はテトラフルオロホウ酸アニオン又はフェニルホウ酸アニオンのものよりも大きい。これらの特性は、負電荷の非局在化、及びニトリル基の窒素原子が坦持し、かつ互いを2Å排斥する部分的電荷の問での弱い斥力によって説明される。
【0078】
本発明の化合物において、イオン対は非常に高い解離を有し、これが、特には異なる媒体において、その活性軌道が反応の基質に容易に露出されるカチオンMm+の固有触媒特性の発現を可能にする。このため、有機化学の重要な反応の大部分を、安易な条件下において、優れた収率及び触媒を反応混合物から分離する可能性を伴って行うことができる。キラル基を有する本発明によるイオン性化合物の使用による非対称性誘起を立証することは、その一般性及びその操作の容易性の観点から特に重要である。したがって、本発明は、フリーデル−クラフツ反応、ディールス−アルダー反応、アルドール化反応、ミカエル付加、アリル化反応、ピナコールカップリング反応、グリコシル化反応、オキセタンの開環反応、アルケンの複分解反応、チーグラー−ナツタ型の重合、開環による複分解型の重合及び非環式ジエンの複分解型の重合における触媒としての本発明の化合物の使用を別の目的として有する。上記反応のための触媒としての利用に好ましい本発明のイオン性化合物は、カチオンがリチウム、マンガン、銅、亜鉛、スズ、希土類を含む三価金属、プラチノイド、及びそれらの有機金属対、特にはメタロセンであるものである。
【0079】
また、本発明の化合物は化学的、光化学的、電気化学的、光電気化学的反応を行うための溶媒として用いることもできる。この特有の用途には、カチオンがイミダゾリウム、トリアゾリウム、ピリジニウム又は4−ジメチルアミノーピリジニウムであるイオン性化合物が好ましく、このカチオンはおそらくは環の炭素原子上に置換基を有する。液体形態で用いられる化合物のうち、150℃未満、特には100℃未満の融点を有するものが特に好ましい。
【0080】
また、本発明者らは、−C(CN)基が有するイオン電荷が共役重合体型の導電性に対する安定化効果を有し、置換基Zがアルキル長鎖を含む化合物を用いることにより、これらの重合体をドープされた状態においてさえ既知の有機溶媒に可溶にすることが可能となることも見出している。これらの電荷が重合体自体に移ることにより全体的にカチオン性電荷を有する重合体が生じ、これらは可溶性であり、かつ、それらの安定性に加えて、アルミニウム及び金属鉄のような金属に防食特性を付与する。カチオン性部分がドープされた“p”共役重合体からなるポリカチオンである本発明のイオン性化合物を含む、導電性を有する材料を提供することは本発明の目的である。この用途に好ましいイオン性化合物は、置換基Z又はRが6ないし20個の炭素原子を有するアルキル鎖を含むものである。
【0081】
カチオン型の着色材料(シアニン)は、写真フィルムの増感剤として、レーザー用の光学情報を保存する(書き込み可能な光学ディスク)のにいよいよ頻繁に用いられている。これらの共役分子が固相にある場合に互いに積み重なる傾向は、孤立した分子に関する光学特性の変動のため、それらの用途を制限する。本発明のイオン性化合物を、本発明の官能基に対応するその同じ分子におそらくは結合する対イオンを含むカチオン性着色材料の製造に用いることにより、固体重合体マトリックスにおけるものを含む凝集現象を減少させ、かつこれらの着色材料を安定化することが可能となる。本発明のイオン性化合物を含むことを特徴とするカチオン性着色材料の組成物を提供することは、本発明の別の目的である。この用途に特に好ましイオン性化合物は、アニオン性基−C(CN)の負電荷が着色材料の分子に固定されているか、又は着色材料の正電荷の対イオンを構成するものである。
【0082】
本発明による化合物の例の幾つかを以下に示す:
【0083】
【化1】

【0084】
【化2】

【0085】
本発明を、本発明の化合物の調製及び様々な用途を記述する以下の例を用いてより詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例】
【0086】
本発明の全ての化合物はマロン酸ニトリルのアルカリ金属塩から調製されている。これらの塩は、昇華セルにおいて40℃で二次真空の下において予め精製された市販のマロン酸ニトリルから得られており、このマロン酸ニトリルは48時間後にセルのコールドフィンガー(cold finger)で白色結晶の形態で回収された後、アルゴンの下に保持された。
【0087】
リチウム塩は、マロン酸ニトリルの水溶液に滴定済の水酸化リチウムLiOHの溶液を添加し、その中和点をpHメーターで決定することにより得た。その後、この水溶液を凍結乾燥し、その生成物を二次真空の下において室温で72時間乾燥した。水素イオン及び炭素RMNによる測定で99%を上回る純度を有する、アルゴンの下に保持されるリチウム塩が得られる。
【0088】
同じ方法により、水酸化リチウムをそれぞれ水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムに置き換えることにより、ナトリウム及びカリウム塩が得られた。
実施例1
25mlのテトラヒドロフラン(THF)中の3.039(10mモル)のステアリン酸クロリドCl735COClと、5mlの無水ピリジンとを、25mlのテトラヒドロフラン中の1.04g(10mモル)のマロノニトリルのカリウム塩に加えた。24時間撹拌した後、溶液をろ過して塩化カリウムの沈殿物を除去し、そして500mgの炭酸リチウムLiCOに接触させた。混合物を24時間撹拌し、次に過剰の炭酸塩を遠心分離により除去してから、溶媒を蒸発させた。3.3gのマロノニトリルステアロイルのリチウム塩が得られ、これはプロトン及びカーボンRMN(NMR)で特徴付けして97%を超える純度を有する。
【0089】
【化3】

【0090】
この塩の高級アルキル基Rは、良く知られたテンシオ−アクティブ特性(tensio-active properties)を与え、溶媒類及び非プロトン性溶媒和ポリマー類とを含む。
実施例2
6.61g(100mモル)のマロノニトリルを−20℃の50mlのTHF中に溶解させたものに、795mgの水素化リチウムLiHを一部分ずつ加える。2時間−20℃で置いた後、20.14g(100mモル)の1−(トリフルオロメタンスルホニル)イミダゾール(Flukaから市販されている)を加える。反応を4時間−20℃で、そして48時間室温で続ける。次に溶媒を蒸発させてから、白色固体残留物をジクロロメタンで洗浄して、反応中に形成されたイミダゾールを除去した。LiCFSOC(CN)が得られる。
【0091】
実施例3
アルゴン雰囲気下で、0.66g(10mモル)のマロノニトリルと180mgのリチウム無水物とを、3.02g(10mモル)のノナフルオロブタンスルホニルの20mlの無水THF中の溶液に加え、0℃に保った。4時間後、反応混合物をろ過、蒸発させて、10cmの水中に再生し、KClの飽和溶液に注いだ。KCSOC(CN)の沈殿物を精製するために、水中で、そしてペンタノン/ジクロロエタン混合物中で結晶化した。分析に基づいた純粋な生成物の収率は、65%である。
【0092】
同様にして、KC13SOC(CN)とKC1817SOC(CN)とを作成する。その後そのリチウム塩を得るために、THF中のLiClまたはLiBFでイオン交換した。この生成物は、良く知られたテンシオ−アクティブ特性を有し、溶媒和するポリマー類中に可溶であり、同時に、導電性錯体を与えかつテンシオ−スタティック(tensio-static properties)特性を与える。
【0093】
実施例4
5mlのテトラヒドロフラン中の324mg(1mモル)の4−ジメチルアミノアゾベンゼン−4’−スルホニルクロリドを、5mlのTHF中の104mg(1mモル)のマロノニトリルのカリウム塩と500μlのトリエチレンとに加える。24時間撹拌した後、塩化カリウムの沈殿物を除去し、そして溶媒を蒸発させた後、トリエチルアンモニウム塩が得られ、この塩は、350mgのテトラブチルアンモニウムブロミドを含む5mlの水溶液中に懸濁していた。混合物を24時間撹拌した。オレンジ色の粉末が得られ、これはプロトン及びカーボンRMNで特徴付けして98%を超える純度を有し、また大部分の有機溶媒類に可溶で、次の式に相当する。
【0094】
【化4】

【0095】
このイオン性色材は、非水性媒質中でpH指示薬となる(pH帯1〜4で、黄色−オレンジ−赤−青紫色の遷移がある)。
実施例5
10.85g(100mモル)のメトキシ酢酸クロリドを、150mlのアセトニトリルと15mlの無水ピリジンとの中に希釈した。この混合物を窒素雰囲気下に保ち、マグネチックスターラーで撹拌し、一部分ずつ10.41g(100mモル)のマロノニトリルのカリウム塩を加える。塩化カリウムの沈殿が終了した時に(約1時間)、25gの無水リン酸三カリウムKPOを加え、混合物を24時間撹拌した。その後、混合物を蒸発乾固させた。得られたメトキシアセチルマロノニトリルのカリウム塩を、ブタノン/1,2−ジクロロエタン混合物中で再結晶させて精製した。
【0096】
【化5】

【0097】
この化合物は、大部分の通常の有機溶媒類(テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、グライム類、...)及び非プロトン性溶媒和ポリマー類とに可溶である。
【0098】
176.2mgのこの化合物を、5mlの無水(dry)アセトニトリル中に溶解させ、これに、31.7mgの無水塩化マグネシウムを加える。この混合物を4時間撹絆してから、塩化カリウムの沈殿物を遠心分離により除去した。このフローティング溶液(floating solution)は、マグネシウム{Mg[CHOCHCOC(CN)陰イオン錯体のカリウム塩を含む。
【0099】
このフローティング溶液に、800mgのランダム共重合体である、エチレンオキシド(80%)−メチル−グリシジル−エーテル(20%)の分子量M=2.5×10のものを加える。この粘稠な溶液を塗布し、蒸発させることで、錯体{Mg[CHOCHCOC(CN)の形態でマグネシウムを含むポリマー電解質のフィルムが得られる。
【0100】
マグネシウムアノードを含む一次発電装置を次の通り作成した。
【0101】
【表1】

【0102】
電解質は、上記に説明した錯体{Mg[CHOCHCOC(CN)を含むポリマー電解質のフィルムである。正極は次のようにして得られた。組成物を製造し、これは、43%v/vの上記に説明したものと同一の電解質と、8%v/vのアセチレンブラックと、50%v/vのフッ化黒鉛CF(x≦1)とを含む;この組成物をアセトニトリル中で希釈し、次に200nmの銅で金属化した8μm厚さのポリプロピレンのシート上に塗布して、約80μm厚さの層を形成させた。負極は、20μm厚さのマグネシウムのシートだった。各要素を80℃で積層して組み立てた後、電池の電圧は2.5Vであり、流れ400μA/cmにつき容量は7mAh/cmだった。
【0103】
実施例6
ポリ(エチレンオキシド)PEOのスルホン化オリゴマーを、次のようにして製造した。10gのPEO(本PCT例では、POEと指示している)の分子量600のものを、ベンゼンとの共沸蒸留と凍結乾燥とで乾燥させた。50mlのTHFを加えた後、末端基OHをカリウム−ナフタレンで金属化した。化学量論を比色法で決定し、その反応の終りは、ナフタレンの陰イオンラジカルの強い緑色が持続することで示された。次に4.10gのプロパンスルトンを加えた。溶媒の蒸発後、α,ω−ジスルホン化ポリマーが粉末の形態で得られ、そして残留ナフタレンはヘキサンで洗浄して除去した。
【0104】
このようにして形成された5gのα,ω−ジスルホン化ポリマーを15mlのアセトニトリル中に懸濁させ、1.8gの(クロロメチレン)ジメチルアンモニウムクロリド[(CHN=CHCl],Clで処理した。塩化カリウムの沈殿物は、約1時間後に形成された。この懸濁液に、1.26gのマロノニトリルのカリウム塩と3mlの無水ピリジンとを加えた。ろ過後、反応混合物を、リン酸リチウムLiPOの存在下で撹拌した。新たにろ過することによって、無色の溶液の分離が可能になり、この溶液は濃縮により粘性流体を与えた。
【0105】
【化6】

【0106】
この材料は、極性単位(エーテル、アミド、ニトリル、エステル...)を含む多数のポリマー類の可塑化を可能にし、同時にポリマーに高いイオン伝導度を与える。
実施例7
非イオン性テンシオ−アクティブ材料である、ポリオキシエチレン−23ラウリルエーテルC1225(OCHCH23OH(Brij(登録商標)35)を、実施例4と同様の手順でスルホン化した。12gのBrij(登録商標)35を、ベンゼンとの共沸蒸留と凍結乾燥とで乾燥させた。50mlのTHFを加えた後、OH末端基を、5mgのトリフェニルメタンの存在下で水素化ナトリウムで金属化した。化学量論を比色法で決定し、その反応の終りは、陰イオンFの強い赤色が持続することで示された。次に1.4gの1,4−ブタンスルトンを加えた。溶媒を蒸発後、スルホン化オリゴマーが粉末の形態で得られた。
【0107】
このようにして形成された5gのスルホン化オリゴマーを15mlのアセトニトリル中に懸濁させ、1mlの塩化チオニルと10μ1のジメチルホルムアミドとで処理した。塩化ナトリウムの沈殿物は、20分で形成された。ろ過後、溶媒と過剰のSOClとを減圧下で蒸発させた。残留物を30mlのピリジン中に溶解させ、次に350mgのマロノニトリルのナトリウム塩を加えた。ろ過後、反応混合物を、リン酸リチウムLiPOの存在下で撹拌した。新たにろ過することによって、無色の溶液の分離が可能になり、この溶液は濃縮によりロウを与えた。
【0108】
【化7】

【0109】
この材料は、テンシオ−アクティブ特性及び可塑化特性を有する。
実施例8
10mlのピリジン中の380mg(1mモル)のエチレンビス−(オキシエチレンニトリロ)テトラ酢酸を、912mgのヒドロキシスクシンイミジルカーボネートで24時間処理した。416mg(4mモル)のマロノニトリルのカリウム塩を、15mlの同体積のピリジンとアセトニトリルとの混合物に加えた。24時間後、沈殿物をろ過により分離してから、2分割した30mlのTHFで洗浄した。以下の結晶が得られた。
【0110】
【化8】

【0111】
この化合物は、二価(AII)と三価(AIII)の金属の、特に希土類の配位子(L)である。対応する錯体である[AIIL]2−と[AIIIL]とは、極性非プロトン媒質及び極性ポリマー類に、特にポリエーテル類に可溶な塩類である。こうした錯体では、中心金属Aは外部の静電的影響から保護されており、レーザーを構成するためには興味深い。またこの錯体は、金属Aの酸化の程度を変えることでレドックス反応を可能にする。
【0112】
実施例9
548mg(2mモル)の1,1’−フェロセン−ジカルボン酸と824mg(4mモル)のジシクロヘキシルカルボジイミドとの、5mlの同体積の無水ピリジンとメタノールとの混合物中の溶液を作成した。この混合物を、室温、75時間、マグネチックスターラーで撹拌した。次に、288mg(4mモル)のマロノニトリルのリチウム塩を加えた。この混合物を24時間、室温で撹絆した。ジシクロヘキシル尿素の沈殿物を遠心分離により除去してから、溶媒を蒸発させた。生成物である1,1’−フェロセン−ジアセチルマロノニトリルが、ハイドロスコープ的な暗い茶色の固体の形態で得られ、これはプロトン及びカーボンRMNで特徴付けして98%を超える純度を有する。これは、大部分の通常の有機溶媒類(テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、グライム類、...)及び非プロトン性溶媒和ポリマー類とに可溶である。
【0113】
【化9】

【0114】
この塩は、可逆レドックス対(reversible redox couple)を有する。ポリエチレンオキシドでは、これを決定可能であり、直径125μmの白金電極上で可逆電位は、リチウム電極を基準にして≒3.8Vである。
【0115】
液体、ゲルまたはポリマー電解質中に溶解させることにより、これはリチウム電池中の過充電の際の保護となることが可能になり、従ってレドックスシャトル(redox shuttle)として働く。これはまた、色材を用いた電気システムを提供することも可能にする。
【0116】
実施例10
以下の式の510mg(2mモル)の6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸(Trolox)を、
【0117】
【化10】

【0118】
10mlの同体積の無水ピリジンとメタノールとの混合物中に、313μl(2mモル)の1,3ジイソプロピルカルボジイミドと共に懸濁させた。24時間後にジイソプロピル尿素の沈殿物をろ過してから、208mg(2mモル)のマロノニトリルのカリウム塩を加えた。混合物を、中性雰囲気(窒素)中で24時間撹拌した。溶液の体積を、ロータリーエバボレーターで2mlにまで減少させた。20mlのジオキサンを加えてから、混合物を−10℃に冷却した。白色の沈殿物を、ろ過により集めた。分析結果は、C1717Kに相当する。
【0119】
この生成物は、特にポリマー類のための抗酸化特性を有する。同じことが、テトラアルキルアンモニウム陽イオン類等の有機陽イオン類をはじめとする他の陽イオン類の誘導体類に関しても当てはまる。
【0120】
実施例11
2.8g(10mモル)の4,4’−アゾビス(4−シアナオバレリック)酸(cyanaovaleric acid)と、3.24g(20mモル)のカルボニルジイミダゾールと、100mgのジメチルアミノピリジンとを20mlのエーテル中に懸濁し、0℃に保った。COの発生が止んだ後(5時間)、1.44g(20mモル)のマロノニトリルのリチウム塩を加える。この混合物を、0℃、1時間、メカニカルスターラーで撹拌した。遠心分離により、次の結晶質の沈殿物が単離された。
【0121】
【化11】

【0122】
この塩は、特にアセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフランに可溶である。これは、既に60℃での重合または架橋反応を開始するためのブリーラジカル開始剤として使用できる。
【0123】
実施例12
479mg(1mモル)のローダミンBを10mlのピリジン中に懸濁させてから、104mg(1mモル)のマロノニトリルのカリウム塩と206mg(1mモル)のジシクロヘキシルカルボジイミドとを加えた。48時間撹拌後、混合物をろ過してジシクロヘキシル尿素を除去し、そして蒸発させた。得られた化合物は双性イオンであり、強い発色特性を有する。これは極性ポリマー類に可溶であり、色材を用いたレーザーを提供することを可能にする。アセチルマロノニトリル基はまた、酸化物類、特にナノ粒子(nano-particulate)酸化チタン上に吸着されることが可能となり、特に光電池への応用で可視放射に対して増感剤として働く。
【0124】
【化12】

【0125】
実施例13
ピリル−3酢酸(M=122)を、D. Delabouglise(These Universite de Paris-Nord, February 1991, “Molecular Control of Properties of Polymers”)の方法に従って作成した。488mgのこの化合物を、5mlのアセトニトリルと1mlのピリジンとの混合物中に溶解させ、これに648mg(40mモル)のカルボニルジイミダゾールを加えた。24時間後、そしてCO巻き込み(involvement)の終りに、417mg(40mモル)のマロノニトリルのカリウム塩を加える。混合物を、48時間、室温で撹拌した。溶媒を蒸発させてから、カリウム塩を、ブタノン−1,2ジクロロエタン混合物中で再結晶させて精製した。
【0126】
アセトニトリル中にこの塩を5.10−2/M含む10mlの溶液を作り、そして電気化学的電池のアノード区画室中の白金電極上で、電気重合を実行した。可擁性の導電性フィルムが得られ、このフィルム中ではドーピング(酸化)は外側での陽イオンと電子との交換により確実になる。この材料の電気伝導度は、約10S.cm−1であり、また周囲雰囲気で安定である。未置換ピロールの存在下またはNまたは3位にオキシエチレン鎖を有するピロールの存在下で実行される電気重合により、共重合体類が与えられ、この共重合体類はまた安定であり、その色変化を使用してエレクトロクロムシステムを提供できる。
【0127】
【化13】

【0128】
実施例14
アルゴン下でグローブボックス中で作業し、−20℃の100mlのTHF中の24.15g(100mモル)のジ−2一エチルヘキシルアミンに一部分ずつ、32mlのシクロヘキサン(100mモル)中の2Mブチルリチウムを加える。1時間後、11.85g(100mモル)のクロロスルホニルフルオライドFSOC1を加える。反応を4時間、−20℃で、そして24時間、室温で続ける。次に温度を0℃にしてから、10.42g(100mモル)のマロノニトリルのカリウム塩KHC(CN)と11.22g(100mモル)のDABCOとを加える、0℃で24時間置いた後、反応混合物をろ過/ろ過して、塩化カリウムの沈殿物とDABCOの塩酸塩とを除去した。溶媒を蒸発させ、乾燥させた後、ジ−2−エチルヘキシルアミノスルホニルマロノニトリルのリチウム塩を回収し、これはカーボンRMNで特徴付けして98%を超える純度を有する。
【0129】
同じ方法に従って、ジブチルアミノスルホニルマロノニトリルのリチウム塩をジブチルアミンから得た。
【0130】
【化14】

【0131】
カリウム塩を得るために、最小量の水中でこのリチウム塩をフッ化カリウムKFで処理した。ろ過、蒸発、乾燥後、定量的量のカリウム塩を回収した。
こうした塩は、大部分の通常の有機溶媒類(テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、グライム類、...)及び非プロトン性溶媒和ポリマー類とに可溶である。
【0132】
実施例15
5.44g(10mモル)の3,3’−ジエチル−チアトリカルボシアニン(Aldrich, Milwaukee, USAから市販されている)と4.08g(10mモル)の実施例14に従って作成されたジ−2−エチルヘキシルアミノスルホニルマロノニトリルのカリウム塩とを共に、24時間水中で撹拌した。水相をジクロロメタンで抽出して、ジ−2−エチルヘキシルアミノスルホニルマロノニトリルの3,3’−ジエチルチアトリカルボシアニンが回収され、これはプロトンRMNで特徴付けして99%を超える純度を有する。
【0133】
【化15】

【0134】
この塩は、ジクロロメタンまたは塩化メチレンのような低極性溶媒類に、並びにメチルポリメタクリレートのようなほとんど極性の低い媒質類に非常に可溶である。
これが色材として使用される際には、様々なジアルキルアミノ基の「可塑化」特質という事実により、色材の分子の凝集が明らかに減少することが認められており、これは利点を構成する。実際、凝集という現象は、色材を利用するシステム、特に情報記憶用の光学ディスクにおいては、良好な動作にとって害になり、というのはこれは光学的吸収バンドを広げるからである。
【0135】
実施例16
3.17g(10mモル)の塩化ジフェニルヨードニウム(CIClと4.08g(10mモル)の実施例14に従って作成されたジ−2−エチルヘキシルアミノスルホニルマロノニトリルのカリウム塩とを共に、24時間水中で撹拌した。水相をジクロロメタンで抽出して、ジ−2−エチルヘキシル−アミノスルホニルマロノニトリルジフェニルヨードニウムが回収され、これはプロトンRMNで特徴付けして99%を超える純度を有した。
【0136】
【化16】

【0137】
この塩は、化学線放射(光、γ線、電子ビーム)の影響下で、電子の豊富なモノマー(ビニルエーテル類、プロピルビニルエーテル類、...)の陽イオン架橋反応の開始を可能にする。
【0138】
これは、大部分の通常の有機溶媒類(テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、グライム類、...)とポリエチレンオキシドのような非プロトン性溶媒和ポリマー類とに可溶である。これはまた、トリエチレングリコールジビニルエーテルのような反応性溶媒類中に5重量%の程度まで可溶で、このことは、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドジフェニルヨードニウム塩の例とは反する。
【0139】
この塩の光開始特性を試験するために、UV放射を、254nm、出力1,900mW/cmで、ポリエチレンの不織フェルトに照射した。このフェルトは、本実施例のジ−2−エチルヘキシルアミノスルホニルマロノニトリルジフェニルヨードニウム(1重量%)と実施例21で得られる7,8−オクテン−3,6−オキサ−1−スルホニルマロノニトリル(20重量%)とを含むトリエチレングリコールジビニルエーテル(79重量%)に浸漬したものである。数秒間の照射後、続いて10分間、媒質中で作られた化学種の増殖を可能にし(ポストキュア)、フェルトにより支持された高分子電解質が得られる。このタイプの複合材料は、ポリマーゲル電解質を用いたリチウム電池の開発に非常に興味深い。
【0140】
実施例17
5.919(20mモル)の実施例14に従って作られたジブチルアミノスルホニルマロノニトリルのカリウム塩を、10mlの水中に溶解させた。撹拌中に、2.71g(10mモル)の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)塩酸塩[=NC(CHC(=NH)NH・2HC1(Aldrichから市販されている)を10mlの水中に溶解させたものを加えた。直ちに沈殿物が形成され、これをろ過により集める。真空下、室温で乾燥後、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジブチルアミノスルホニルマロノニトリルを回収した。
【0141】
【化17】

【0142】
この塩はフリーラジカル重合開始剤であり、大部分の通常の有機溶媒類(テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、グライム類、...)及び非プロトン性溶媒和モノマー類及びポリマー類とに可溶で、このことは、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)塩酸塩とは反する。
【0143】
1部の開始剤と100部のポリマーとのアセトニトリル中の溶液を作る。このポリマーは、エチレン型不飽和を含み、Alloin, et al(Solid States Ionics, (1993), 60, 3)に説明される手順に従って、分子量1,000のポリエチレングリコールと3−クロロ−2−クロロメチル−1−プロペンとの重縮合により得られる。得られた粘稠な溶液をポリプロピレン(PP)フィルム上に注いだ。溶媒を蒸発させた後、PP上の厚さ110μmのポリマーフィルムを、グローブボックス中にアルゴン下で1週間保管し、乾燥させた。次に、架橋を開始するために、フィルム温度を60℃にした。1晩後、良好な機械的性質と少量の抽出可能な材料(1%未満)とを有するフィルムが得られる。従って、ポリマーマトリックス中で使用した開始剤の溶解度により、効果的でかつ均質な架橋が得られることが可能になる。その上、この開始剤は、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルの例とは反し、揮発性ではなく、加える量は重合タイプ毎に少なくとも最適化できる。
【0144】
実施例18
4.8g(10mモル)の実施例14で得られたジ−2−エチルヘキシルアミノスルホニルマロノニトリルのカリウム塩を10mlの無水ニトロメタン中に溶解させたものに、グローブボックス中で1.17g(10mモル)のニトロソニウムテトラフルオロボレートNOBF(Aldrichから市販されている)を加える。1時間後、反応混合物をろ過して、不溶性のテトラフルオロホウ酸カリウムを除去し、ジ−2−エチルヘキシルアミノスルホニルマロノニトリルのニトロソニウム塩のニトロメタン中の1M溶液が得られる。
【0145】
同様の方法により、ジブチルアミノスルホニルマロノニトリルのニトロソニウム塩のニトロメタン中の1M溶液を、ジブチルアミノスルホニルマロノニトリルのカリウム塩から作る。こうした塩は、共役ポリマー類(ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、...)のドーピングには特に興味深く、この塩は、このポリマー類に関知できる程の電子伝導度を与える。
【0146】
【化18】

【0147】
ガラスプレート上に、クロロホルム溶液から、立体規則性ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(Aldrich, Milwaukee, USAから市販されている)の二つの堆積物を作成する。乾燥後、この堆積物を各々、ニトロメタン中に溶解させた上記の塩でドーピングした。ドーピング後、このようにして得られたポリ(3−ヘキシルチオフェン)の各フィルムでは、電子伝導度は1S.cm−1を超え、かつ湿潤な媒質中での良好な安定性を有した。こうした堆積物は、半導体産業においてマスクを提供するために興味深いものだった。
【0148】
実施例19
アルゴン下、0℃の100mlの無水テトラヒドロフラン中で、20.27g(100mモル)の4−スチレンスルホニルクロリドCH=CHCSOCl(Monomer-Polymer & Dajac Laboratoriesから市販されている)と10.42g(100mモル)のマロノニトリルと22.44g(200mモル)のDABCOとを反応させた。2時間、0℃で、さらに48時間、室温で置いた後、溶液をろ過して、形成されたDABCO塩酸塩を除去してから、溶液を4.249の無水塩化リチウム(100mモル)で処理し、グローブボックス中に保管し、重量を測った。直ちにDABCO塩酸塩の沈殿物を形成し、そして6時間撹拌後、次に反応混合物を再度ろ過した。真空下で24時間、室温で蒸発させ、乾燥させた後、31.16gの4−スチレンスルホニルマロノニトリルのリチウム塩を回収し、これはプロトン及びカーボンRMNで特徴付けして97%を超える純度を有する。
【0149】
【化19】

【0150】
この塩を、陰イオン、陽イオンまたはフリーラジカル手段により開始する重合により、単独重合または共重合させることができる。またこれを、ビニリデンポリフルオライドのようなポリマーマトリックス上で照射することによりグラフトできる。
【0151】
単独重合体は、脱気した水中でシアナオバレリック酸により60℃で開始するフリーラジカル重合により得られ、通常の有機溶媒類及び非プロトン性溶媒和ポリマー類とに可溶である。ポリエチレンオキシド中で濃度O/Liが16/1では、この塩は、100℃で電気伝導度≒5.2×10−4S.cm−1を有する。
【0152】
その上、アセトン中の濃縮溶液中で(≒1Mのリチウム陽イオン)、4一スチレンスルホニルマロノニトリルのリチウム塩のこの単独重合体は、ディールス−アルダー反応の触媒として使用できる。
実施例20
実施例19に説明した方法と同様の方法に従って、ビニルスルホニルマロノニトリルのリチウム塩が、11.01g(100mモル)のエチレンスルホニルフルオライド(Fluka, Buchs, Switzerlandから市販されている)から得られ、これはプロトン及びカーボンRMNで特徴付けして98%を超える純度を有する。
【0153】
【化20】

【0154】
この塩を、フリーラジカル開始重合によって単独重合または共重合させることができる。
6.6gのエチレンオキシド共重合体でアリル二重結合を含み、分子量Mw=2.5×10を有するものを、アセトニトリル中に溶解させた。1.52gのビニルスルホニルマロノニトリル(PCT出願にはマロニトリルと見える)のリチウム塩と、実施例17に従って作られた50mgのフリーラジカル開始剤とを加えた。溶液を平底のPTFEの灰吹皿中で蒸発させ、そして容器を一次真空(primary vacuum)下で80℃、12時間オーブン中に置いた。架橋エラストマーが得られ、これに−SOC(CN)Li基が固定されていた。この材料は、陰イオンの固定された電解質を構成し、リチウムイオンによる伝導度6.7×10−4S.cm−1と陽イオン性輸率0.92とを有する。
【0155】
実施例21
60mlの無水ジメチルホルムアミド中の2.2g(25mモル)のエチレングリコールビニルエーテルCH=CHO(CHOHに、4.05gの実施例20で得られたビニルスルホニルマロノニトリルのリチウム塩と5.87g(42.5mモル)の無水炭酸カリウムKCOと330mg(1.25mモル)の18−クラウン−6(陽イオンKの錯化剤として働く)とを加える。次に反応混合物を、アルゴン下、80℃で撹枠した。48時間後、反応混合物を多孔度N°3のブリットガラス上で濾過し、溶媒を除去するために、減圧下で蒸発させた。乾燥後、残留化合物を、1.86g(25mモル)の無水カリウムKClを含む10mlの水中で再結晶させた。ろ過と乾燥後、7,8−オクテン−3,6−オキサ−1−スルホニルマロノニトリルのカリウム塩を回収し、これはプロトン及びカーボンRMNで特徴付けして98%を超える純度を有する。
【0156】
【化21】

【0157】
リチウム塩を定量的収率で得るために、カリウム塩を無水テトラヒドロフラン中で化学量論的量の無水塩化リチウムで処理し、反応混合物をろ過し、溶媒を蒸発させ、真空下で乾燥させた。
【0158】
この塩を、陽イオン開始重合により、フリーラジカルによって開始し不飽和モノマーが交互に並ぶ重合により、単独重合または共重合させることができる。
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを用い、陽イオン手段により開始した、無水アセトニトリル中の重合により作成された単独重合体は、ジメチルカーボネートとエチレンカーボネートとの混合物(2:1)中で0.8M濃度で、30℃で電気伝導度6×10−3S.cm−1を有する。その上、この単独重合体は、大部分の通常の有機溶媒類(テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、グライム類、...)とポリエチレンオキシドのような非プロトン性溶媒和ポリマー類とに可溶である。その結果、この単独重合体は良好なイオン導電性材料を構成する。
【0159】
実施例22
4.49g(40mモル)のDABCOと1.32g(20mモル)のマロノニトリルとの10mlの0℃の無水テトラヒドロフラン中の溶液に、5mlの無水テトラヒドロフランで希釈した6.05g(20mモル)の4−ヨードベンゼンスルホニルクロリドICSOCl(Aldrichから市販されている)を加える。2時間0℃で置いた後、反応を24時間、室温で続けた。この反応で形成されたDABCO塩酸塩を除去するために、多孔度N°4のブリットガラス上でろ過した。ろ過した溶液からアセトニトリルを蒸発させた後、生成物を15mlの冷水中に再生し、それから1.49g(20mモル)の無水塩化カリウムを5mlの水中に溶解させたものをゆっくり加える。現われた沈殿物を、多孔度N°4のブリットガラス上でろ過して集めた。乾燥後、4−ヨードベンゼンスルホニルマロノニトリルのカリウム塩を回収した。
【0160】
この化合物を、酢酸と、無水酢酸と、過酸化水素との混合物により酸化して、ヨードソアセテートK[(NC)CSOI(OCCH]にした。これはYamada & al(Die MakromolecularChemie, (1972), 152, 153-162)の方法に従った。4.88g(10mモル)の前記ヨードソアセテートを、15mlのメタンスルホン酸と4.51g(30mモル)のブトキシベンゼンとの混合物中に懸濁し、0℃で4時間保った。反応生成物を300mlのエーテルに注ぎ、それから沈殿物をろ過により分離し、エーテルで洗浄し、乾燥させた、このようにして3.9gの双性イオン(4−ブトキシベンゼン)−(4−フェニルスルホニルマロノニトリル)ヨードニウム(75%収率)が得られ、これはプロトン及びカーボンRMNで特徴付けして97%を超える純度を有する。
【0161】
【化22】

【0162】
この双性イオンは、化学線放射(光、γ線、電子ビーム)の影響下で、電子の:豊富なモノマー(ビニルエーテル類、ビニルプロピルエーテル類、...)の陽イオン架橋反応の開始を可能にする。
【0163】
これは、大部分の通常の有機溶媒類(テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、グライム類、...)及び非プロトン性溶媒和モノマー類及びポリエチレンオキシドのようなポリマー類とに良好な溶解度を示す。これはまた、トリエチレングリコールジビニルエーテルのような反応性溶媒類中に5重量%を超える量が可溶である。
【0164】
この塩の光開始特性を試験するために、UV放射を、254nm、出力1,900mW/cmで、1重量%までの前記ヨードニウム塩を含むトリエチレングリコールジビニルエーテルの溶液に照射した。数秒間の照射後、反応性溶媒は凝固し、反応は非常に発熱性だった。
【0165】
実施例23
2.22g(5mモル)のテトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)テトラフルオロボレート(CHCN)Pd(BF(Aldrichから市販されている)の30mlのテトラヒドロフラン中の溶液を、4.08g(10mモル)のカリウムジ−2−エチルヘキシル−アミノスルホニルマロノニトリルで処理した。24時間撹拌後、反応混合物をろ過して、テトラフルオロホウ酸カリウムKBFの沈殿物を除去してから、溶媒を蒸発させた。定量的収率のテトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)のジ−2−エチルヘキシルアミノスルホニルマロノニトリルが得られた。
【0166】
【化23】

【0167】
この塩は、ノルボルネンのビニル重合の触媒として有用である。ノルボルネンを、室温でニトロメタン中、300ppmのこの塩の存在下で重合した。2時間後、反応混合物をメタノール中で再沈殿させた。平均分子量数420,000、収率82%を有するポリノルボルネンが得られる。
【0168】
実施例24
アルゴン下でグローブボックス中で作業し、1.8gのフェンザイン(10mモル)と139mgの金属リチウムとを30mlのポリプロピレン(Nalgene(登録商標))フラスコに導入した。次に20mlの無水テトラヒドロフランとメノウ小球とを加えた。密閉したフラスコをグローブボックスの外部でモーターの軸上で自転させた。テトラヒドロフランは速やかに暗いモーブ色に変わり、この色はモノリチウムフェナジンの特徴であった。24時間後、オレンジ色の沈殿物である9,10−ジ−Li−ジヒドロフェナジンの懸濁液が得られた。次に8.61g(20mモル)のこの化合物に、4.89g(40mモル)の1,3−プロパンスルトンを加えた。8時間、室温で粉砕した後、反応混合物をろ過して、メノウ小球を除去し、それからろ過済み溶液にアルゴン下で2滴のジメチルホルムアミドを加えてから、5.08g(40mモル)の塩化オキサリルClCOCOClを15mlの無水ジクロロメタン中に溶解させたものをゆっくり加えた。4時間、室温で置いた後、4.65g(40mモル)のカリウムマロノニトリルを加えた。反応を24時間続けてから、反応混合物をろ過して、塩化カリウムの沈殿物を除去した。溶媒の蒸発後、9−10−(プロピルスルホニルマロノニトリル)フェナジンのジリチウム塩を回収し、これはプロトン及びカーボンRMNで特徴付けして98%を超える純度を有した。
【0169】
【化24】

【0170】
この化合物は、大部分の通常の有機溶媒類(テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、グライム類、...)と極性ポリマー類とに可溶である。
【0171】
この化合物は、二つの可逆レドックス対を有する。ポリエチレンオキシドでは、これを示すことが可能であり、直径125μmの白金電極上で第一のレドックス対の電位は≒3.2V、第二のレドックス対の電位は≒3.8Vで、これらの電位はリチウム電極に対して測定したものである。
【0172】
液体、ゲルまたはポリマー電解質中に溶解させると、この化合物はリチウム電池中の過充電の保護となり、従ってレドックスシャトルとして働く。
この化合物はまた、色材を用いた電気システムを提供することも可能にする。このようにして、エレクトロクロムグレージング(electrochrome glazing)を作るために、ITO(酸化インジウムスズ)の導電層で覆ったガラスプレート上に、この化合物とポリ(ベンゾジイミド−co−エチレンオキシド)とのアセトン溶液を堆積した。ポリてベンゾジイミド−co−エチレンオキシド)は分子量≒1,100g/モルで、フランス共和国特許出願FR93/01117に説明する方法と同様の方法により得られる。溶媒を蒸発させ、乾燥させた後、グローブボックス中で、先に堆積したポリマー上に、ITOの導電層で覆った第二のガラス電極を組み立てた。この生成物を封止して不浸透性にした後、1,250mVの電位を外面にポテンシヨスタットによって印加した。システムは強い青色に発色した。−500mVの電位を印加することで、このシステムが比較的速く退色するのを認めることができた(60s未満)。そのようなエレクトロクロムシステムは、より大きなシステム用(mを超える)でさえも、製造が容易であり、大きなシステムではガラス並びに導電性透明電極として適切に処理したポリマーを利用する。その上、発色を維持するのに必要なエネルギーは比較的弱く、1W/m未満である。
【0173】
実施例25
Parr化学反応器中で、5.21g(50mモル)のカリウムマロノニトリルと264mgのクラウン−エーテルである18−クラウン−6とを60mlの無水アセトニトリル中に溶解させた。反応器を密閉後、アルゴンでのブラッシングを15分間実行し、その後反応器を絶縁した。次に、6.41g(50mモル)の二酸化イオウSO(Flukaから市販されている)を導入し、10分後に、9.52g(50mモル)のビニルトリエトキシシラン(Flukaから市販されている)を20mlの無水アセトニトリル中に溶解させたものを導入した。6時間室温に置いた後、反応器の温度を40℃にし、それから反応器をその温度で48時間保ってから、溶媒を蒸発させた。真空下で乾燥後、生成物をアルゴン下で保管した。2−(トリエトキシシリル)エチルスルホニルマロノニトリルのカリウム塩[(CO)Si(CHSOC(CN)]Kを定量的収率で回収し、これはプロトン及びカーボンRMNで特徴付けして99%を超える純度を有した。
【0174】
そのリチウム塩を得るために、テトラヒドロフラン中の塩化リチウムでイオン交換した。
【0175】
【化25】

【0176】
この塩は、加水分解一重縮合の機構により、有機ケイ素ネットワークを作ることを可能にする。またこの塩は、ガラスを主原料とする材料(繊維、グレージング、...)を処理して、その表面状態を修正し、特に帯電防止特性を与えることを可能にする。
【0177】
加えて、単独重合体類または共重合体類を、様々なアルコキシシラン類を用いてプロトン性媒質中で、あるいは触媒(酸、塩基、フッ化物、...)の存在下で得ることができる。共重合体を製造するために、2−(トリエトキシシリル)エチルスルホニルマロノニトリルのカリウム塩とO−[2−(トリメトキシシリル)エチル]−〇’−メチルポリエチレングリコールの分子量5,000(Shearwaters Polymersから市販されている)のものとを(5:1)、水/メタノール混合物中で重縮合し、触媒として痕跡量の過塩素酸を利用した。数時間後、溶液を濃縮した。前もって脱気した活1生炭のフェルトで比表面積1,500m/g(Actitexから市販されている)のものを、得られた粘稠な液体に含浸させた。乾燥後、この作業を繰り返して、含浸を改良した。1週間、乾燥器中に50℃で置いた後、直径2cmの二つのパステル(pastil)を型で打抜いた。次にシガレットペーパーのシート(Bollore Technologiesから市販されている)を粘稠な液体に含浸させ、この粘稠な液体は上述のカーボンフェルトの含浸に使用したものと同一だった。このシートを、先に型で打抜いた二つの炭素電極の間に置いた。1週間、乾燥器中に50℃で置き、そして2日間真空下に60℃で置いた後、「全固体(all-solid)」電気化学的スーパーキャパシタンス(supercapacitance)が得られる。このスーパーキャパシタンスは、以下の特性を40℃で有する。エネルギー密度15Wh/l(または静電容量96F/電極用の炭素1g)、最大出力700W/kg、及びサイクリング時における良好な結果(0Vと2Vとの間での充電/放電が10,000サイクルを超える)である。このタイプのスーパーキャパシタンスは、揮発性液体がないために、エレクトロニクス分野では特に興味深い。
【0178】
実施例26
実施例25に説明した方法と同様の方法で、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミノスルホニルマロノニトリルのリチウム塩を、12.54g(40mモル)のビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン[(CHO)Si(CHNH)(Flukaから市販されている)から合成した。得られた化合物は、プロトン及びカーボンRMNで特徴付けして98%を超える純度を有した。
【0179】
【化26】

【0180】
この化合物は、実施例25の化合物と類似の特性を有し、同じ用途に使用できる。
この化合物の重縮合を水/メタノール混合物中で実行するため、1滴の濃塩酸を触媒として利用した。数時間後、溶媒を蒸発させ、得られた粘稠な液体をテフロン(登録商標)プレート上に注いだ。1週間、乾燥器中に50℃で置いた後、得られた材料を真空下、100℃で48時間乾燥させてから、アルゴン下で砕き、粒径約1ミクロンにした。次に複合電解質を製造するために、この粉末を、分子量300,000のポリエチレンオキシドと共にアセトニトリル中で混合した。この分散系をガラスリングに注ぎ、アセトニトリルを蒸発させると、厚さ220μmで良好な機械的品質を有する複合電解質のフィルムが得られる。この電解質は、60℃でイオン伝導度が10−5S.cm−1を超え、陽イオン性輸率0.92である。
【0181】
実施例27
10.81g(40mモル)の実施例19の通りに製造した4−スチレンスルホニルマロノニトリルのリチウム塩と3.18g(40mモル)のアクリロニトリルと100mgの1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)との100mlの無水テトラヒドロフラン中の溶液を、乾燥アルゴンでブラッシングして脱気した。アルゴン下で、アクリロニトリルとスチレン誘導体類との共重合を実行するために、反応混合物を60℃で48時間加熱した。冷却後、溶液を濃縮してから、ポリマーをエーテル中で再沈殿させて回収した。ろ過と乾燥後、ポリ−(アクリロニトリル−co−4−スチレンスルホニルマロノニトリルのリチウム塩(PANSSM)が得られた。
【0182】
【化27】

【0183】
このポリマーは、固定陰イオンを有するゲル化ポリマー電解質の作成を可能にする。これは、ゲルを得ることを可能にするマトリックスを構成し、かつ高分子電解質の特性を有する。
【0184】
ゲル化電解質を作成した(30重量%のPANSSM、35%のエチレンカーボネート、35%のプロピレンカーボネート)。このゲルは、良好な機械的性質と30℃で電気伝導度7.9×10−4S.cm−1とを有する。この電解質の陽イオン性輸率は、0.95と見積もられた。電気化学的発電装置を作成するために、前記ゲル化電解質と、共重合体(PANSSM)(20容量%)をバインダーとして混合したカーボンコークス(80容量%)からなる複合アノードと、カーボンブラック(6容量%)、LiCoO(75容量%)及び共重合体(PANSSM)(20容量%)からなる複合カソードとを利用した。この発電装置は、25℃でサイクリングした際に、最初のサイクルの静電容量の80%を超える静電容量を維持することにより、3Vと4.2Vとの間での充電/放電を10,000サイクル行うことを可能にした。これは、固定陰イオンの利用という事実により、電力要求中の非常に良好な性能を有する。また固定陰イオンの使用により、界面抵抗の発生の改良が可能となった。
【0185】
実施例28
13.44g(50mモル)の1−ドデカン−スルホニルクロリドCH1225SOC1(Lancasterから市販されている)を−20℃の30mlの無水テトラヒドロフラン中に溶解させたものを、8.8g(100mモル)のナトリウムマロノニトリルで処理した。1時間0℃で、さらに24時間室温で置いた後、溶媒を蒸発させ、生成物を30mlの水中で再生した。3.73g(50mモル)の無水塩化カリウムKC1を加えたことで、沈殿物を得ることが可能になり、この沈殿物を再結晶させ、ろ過により回収し、最後に乾燥させた。1−ドデカンスルホニルマロノニトリルのカリウム塩を、結晶化粉末の形態で得、これはプロトン及びカーボンRMNで決定して99%を超える純度を有する。
【0186】
【化28】

【0187】
同様に実施して、1−ブタンスルホニルマロノニトリルと1−オクチルスルホニルマロノニトリルとのカリウム塩を各々、1−ブタンスルホニルクロリドと1−オクタンスルホニルクロリドとから得た。
【0188】
これら三つの誘導体のリチウム塩を定量的量作るために、無水テトラヒドロフラン中でカリウム塩と塩化リチウムとをイオン交換した。
1−ドデカンスルホニルマロノニトリルのリチウム塩をポリエチレンオキシドのマトリックス中に溶解させて、濃度O/Li=16/1としたものは、陽イオン性輸率≒0.55を有する。この結果、ポリマー電解質を用いたリチウム電池の電解質中にこの化合物を使用する際、電池の動作最中に現われる濃度勾配は実質的に減少する。電力要求中の性能は従って改良される。
【0189】
1−ドデカンスルホニルマロノニトリルの塩は、リチウム積層の添加剤及びポリマー類の押出しの特にポリエチレンオキシドの押出しの添加剤として否定できな利点を有した。
実施例29
0℃の100mlの水中に、23.01g(100mモル)のヘキサフルオロプロパンスルトン(Fluorchemから市販されている)を加える。2時間撹拌後、水相を2分割した20mlのジクロロメタンによって抽出し、各有機相を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させた。ジクロロメタンの蒸発と集めた液体の蒸留との後に、16.949の1−フルオロ−2,2,2−トリフルオロエタンスルホニルフルオライドCFCHFSOFが得られる(収率:94%、これはプロトン及びフッ素RMNで決定して99%を超える純度を有する)。
【0190】
【化29】

【0191】
アルゴン下でグローブボックス中で作業し、9.2g(50mモル)の上に述べたようにして作られた化合物を、10mlの無水テトラヒドロフラン中に溶解させた。この溶液を−20℃にした後、カリウムt−ブトキシド(CHCOK(Aldrichから市販されている)のテトラヒドロフラン中の1M溶液の50ml(50mモル)をゆっくり加える。15分後、12.46g(50mモル)の1−プロモドデカンを加えた。反応を2時間、−20℃で、そして24時間、室温で続ける。次に8.8g(100mモル)のナトリウムマロノニトリルを加える。48時間後、溶媒を蒸発させ、そして残留物を、7.46g(100mモル)の塩化カリウムKClを含む50mlの水中で再結晶させた。ろ過と乾燥後、1−ドデカン−2,2,2−トリフルオロエタンスルホニルマロノニトリルのカリウム塩が得られ、これはプロトン、カーボン及びフッ素RMNで特徴付けして99%を超える純度を有した。
【0192】
【化30】

【0193】
リチウム塩を定量的収率で得るために、カリウム塩を無水テトラヒドロフラン中で化学量論的量の無水塩化リチウムで処理し、反応混合物をろ過し、溶媒を蒸発させ、真空下で乾燥させた。
【0194】
こうした化合物は、リチウム積層の添加剤及びポリマー類の押出しの特にポリエチレンオキシドの押出しの添加剤として使用できる。またそれらは、可塑化特性及び帯電防止特性を有する。
【0195】
実施例30
14.41g(100mモル)の2−プロペン−スルホン酸CH=CHCHSONaのナトリウム塩を−20℃の60mlの無水アセトニトリルに懸濁したものに、2時間の間、20mlのベンゼン中に希釈した11.9g(100mモル)の塩化チオニルを滴下する。1晩−20℃で置いた後、反応混合物を遠心分離して、形成された塩化ナトリウムを除去し、そして溶媒をメンブランポンプ付きロータリーエバボレーターによって蒸発させた。次に、得られた液体を真空下で短いカラム中で蒸留し、10.97gの2−プロペン−スルホニルクロリドCH=CHCHSOC1(収率78%)を与え、これをカーボンRMNで特徴付けした。次に7.03g(50mモル)のこの化合物を、アルゴン下で10.42g(100mモル)のカリウムマロノニトリルと、60mlの無水アセトニトリル中、−20℃で2時間、さらに室温で24時間反応させた。溶媒を蒸発させた後、生成物を15mlの水中に再結晶させた。ろ過と乾燥後、2−プロペンスルホニルマロノニトリルのカリウム塩を回収し、これはプロトン及びカーボンRMNで特徴付けして98%を超える純度を有した。
【0196】
【化31】

【0197】
リチウム塩を定量的収率で得るために、カリウム塩を無水テトラヒドロフラン中で化学量論的量の無水塩化リチウムで処理し、反応混合物をろ過し、溶媒を蒸発させ、真空下で乾燥させた。
【0198】
この塩を、エチレン結合が関連する化学反応に使用できる。これは特に、フリーラジカルにより開始する重合またはジルコノセン(zirconocene)のような配位重合(coordinatedpolymerization)触媒による重合により、単独重合または共重合させることができる。
【0199】
実施例31
100mlの水中の8.33gの実施例30に従って得られた2−プロペン−スルホニルマロノニトリルのカリウム塩(40mモル)に、6.9gの3−クロロ過安息香酸(40mモル)、これはSchwartz & Blumbergs(J. Org. Chen, (1964), 1976)により説明される手順に従って得られた、を加える。1時間強く撹拌した後、溶媒を蒸発させ、そして残留物を10mlのエタノール中で再結晶させた。ろ過と乾燥後、2,3−エポキシプロペン−1−スルホニルマロノニトリルのカリウム塩を回収し、これはプロトン及びカーボンRMNで特徴付けして98%を超える純度を有した。
【0200】
【化32】

【0201】
リチウム塩を得るために、カリウム塩を無水テトラヒドロフラン中で化学量論的量の無水塩化リチウムで処理し、反応混合物をろ過し、溶媒を蒸発させ、真空下で乾燥させた。
この塩を、陰イオンまたは陽イオン手段で開始する重合により、単独重合または共重合させることができる。より一般的にはこうした塩は、オキセタンが関連する化学反応を受けることができる。
【0202】
2,3−エポキシブタン−1−スルホニルマロノニトリルのカリウム塩の単独重合体を作成するために、テトラヒドロフラン中でカリウムt−ブトキシドを用いて陰イオン手段により開始する重合を行い、さらにそのリチウムポリ塩を得るために、THF中の無水塩化リチウムでイオン交換した。後者はゲル化媒質(21重量%のポリアクリロニトリル、38%のエチレンカーボネート、33%のプロピレンカーボネート、8%の単独重合体)中で、30℃で電気伝導度1.2×10−3S.cm−1を有する。この電解質の陽イオン性輸率は0.76である。その上、この単独重合体は、大部分の通常の有機溶媒類(テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、グライム類、...)及び非プロトン性溶媒和ポリマー類とに可溶である。
【0203】
実施例32
50.74g(300mモル)の2−アミノ−5−トリフルオロメチル−1,3,4−チアジアゾール(Aldrichから市販されている)を、100mlの濃塩酸と30mlの氷酢酸との混合物に撹拌しながら加えた。反応混合物を−10℃にしてから、35mlの水中の22.42g(325mモル)の亜硝酸ナトリウムNaNOをゆっくり加える。ジアゾ化反応を1時間続ける。同時に、300mlの氷酢酸中の二酸化イオウSO(Flukaから市販されている)の流れを、飽和するまでブリット部材を通過させた。次に、7.5gの塩化銅(I)CuClを加え、そして二酸化イオウの添加を、反応混合物の色が黄緑色から青緑色に変わるまで続けた。反応混合物を温度<10℃にした後、30分間、先に作ったジアゾニウムを加えた。少量のエーテルを加えて、各添加後に形成される泡の量を減少させた。ジアゾニウム添加の終了後、反応混合物を1リットルの水−氷(1:1)混合物に注いだ。氷が溶けた後、黄色の油をデカントアムプラ(decantingampulla)中で分離し、水相を2分割した100mlのエーテルで抽出した。集めた油にエーテル相を加えた後、溶液を炭酸水素ナトリウムの濃縮溶液で中性になるまで洗浄し、次に水で洗浄、そして最後にこれを硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を蒸発させた後に、真空下で蒸留後、46.99gの2−スルホニル−5−トリフルオロメチル−1,3,4−チアジアゾールクロリド(62%収率)を回収し、これはプロトン及びフッ素RMNで特徴付けして98%を超える純度を有する。
【0204】
その後、実施例19に説明した方法と同様の方法により、5−トリフルオロメチル−1,3,4−チアジアゾール−2−スルホニルマロノニトリルのリチウム塩が得られ、これはカーボン及びフッ素RMNで特徴付けして98%を超える純度を有した。
【0205】
【化33】

【0206】
カリウム塩を得るために、最小量の水中でこのリチウム塩をフッ化カリウムKFで処理した。ろ過、蒸発、乾燥後、カリウム塩を定量的収率で回収した。
こうした塩は、大部分の通常の有機溶媒類(テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、グライム類、...)とポリエチレンオキシドのような非プロトン性溶媒和ポリマー類とに可溶である。
【0207】
こうした塩は、アセトニトリル中濃度0.5Mで、リチウムアノードに対して4.5Vを超える酸化電位を有する。リチウム塩は、単独でまたはカリウム塩との混合物で、液体またはゲル電解質類を用いたLiイオン電池に、及びポリマー電解質リチウム電池に使用できる。
【0208】
電池を組み立てるために、カーボンコークス(80容量%)とバインダーとしてのポリふっ化ビニリデン(PVDF、Montedisonから市販されている)(20容量%)との混合物からなるアノードと、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合物(2:1)からなり、PVDFを用いてゲル化し、5−トリフルオロメチル−1,3,4−チアジアゾール−2−スルホニルマロノニトリルのリチウム塩を濃度1M含む電解質と、カーボンブラック(6容量%)とLiMnO(75容量%)とバインダーとしてのPVDF(20容量%)との混合物からなる複合カソードとを利用した。電池に25℃でサイクリングを受けさせた。2Vと4.7Vとの間での充電/放電を1,000サイクル行った後、電池は最初のサイクルの静電容量の約50%に相当する静電容量を維持した。
【0209】
実施例33
13.21g(200mモル)のマロノニトリルを、15〜20℃の150mlのTHF中に溶解させた。次にアルゴン下で、44.87g(400mモル)のDABCOと21.18g(200mモル)の臭化シアンBrCNとを加えた。4時間−20℃で、さらに24時間室温で撹拌後、反応混合物をろ過して、DABCO塩酸塩を除去した。次に8.48gの無水塩化リチウム(200mモル)を加えた。24時間撹拌後、反応混合物をろ過して、DABCO塩酸塩を除去した。溶媒の蒸発と乾燥後に、19g(98%収率)のトリシアノメタンのリチウム塩LiC(CN)を回収し、これはプロトン及びカーボンRMNで特徴付けして98%を超える純度を有した。
【0210】
エーテル溶液中で酸を得るために、0℃の100mlの1M塩酸(100mモル)を、30mlのエーテル中の9.7gのトリシアナオメタンのリチウム塩の懸濁液に加えた。数分撹拌後、トリシアナオメタンをエーテル相中に回収した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥後、7.15gのイミダゾール(105mモル)を加えた。沈殿物が直ちに形成され、これをろ過と乾燥とにより回収した。15.23g(96%収率)のトリシアノメタンイミダゾリウムを回収し、これはプロトン及びカーボンRMNで特徴付けして99%を超える純度を有した。
【0211】
【化34】

【0212】
グローブボックス中で、7のイミダゾールに対し2のイミダゾリウム塩のモル混合物を砕き、乳鉢中に液体が得られることを可能にした。この融解塩は高いプロトン伝導度を有し、60℃で10−3S.cm−1を超えた。この融解塩を使用して、無水プロトン導体であるポリマー電解質を作ることができ、そのためにポリエチレンオキシドを、好ましくは高分子量のものかまたは後で架橋する可能性のあるものを、電気伝導度を損なわずに融解塩を加える。こうしたポリマー電解質類は、色材を用いたエレクトロクロムシステムをはじめとして、エレクトロクロムグレージングのような光変調システムを作成するために特に興味深い。
【0213】
80重量%の融解塩と20重量%の分子量5×10のポリエチレンオキシドからなるポリマー電解質を使用してメンブランを作成したが、このメンブランは可視範囲で光学的に透明でありかつ良好な機械的挙動を有する。次にエレクトロクロムシステムをグローブボックス中で作成するために、このメンブランを利用して、ガラスプレート上の水素化酸化イリジウムHIrOの層と酸化スズの下位導電層との堆積物からなる第一の電極と、三酸化タングステンWOの層と酸化スズの導電性下位層とからなる第二の電極との間にメンブランを封入した。このエレクトロクロムでは、80%(退色状態)〜30%(発色状態)の間の光学的吸収の変動と、サイクリング時の良好な性能(20,000サイクルを超える)が可能となっている。
【0214】
実施例34
6.61gのマロノニトリル(100mモル)を−20℃の50mlのTHF中に溶解させたものに、795mgの水素化リチウムLiHを一部分ずつ加える。2時間−20℃で置いた後、20.14g(100mモル)の1−(トリフルオロメタンスルホニル)イミダゾール(Flukaから市販されている)を加える。反応を4時間−20℃で、そして48時間室温で続ける。次に溶媒を蒸発させてから、残留物を60mlの水中に再生した。次に14.66g(100mモル)の1−エチル−3−メチル−1H−イミダゾリウムクロリド(Aldrichから市販されている)を、水溶液に加える。水よりも密度の高い高密度相が、直ちに形成された。この相を、ジクロロメタンで抽出して回収した。ジクロロメタンを蒸発させ、得られた液体を真空下40℃で乾燥後、トリフルオロメタンスルホニルマロノニトリルの1−エチル−3−メチル−1H−イミダゾリウムの融解塩が得られ、これはプロトン、カーボン及びフッ素RMNで特徴付けして98%を超える純度を有した。
【0215】
【化35】

【0216】
この融解塩は、電気伝導度4.5×10−3S.cm−1と、凝固点−20℃未満を有する。この塩はレドックス安定性の範囲が広いため、リチウム電池のような電気化学的発電装置、スーパーキャパシタンス、光変調システム、光電池のために特に興味深い電解質となる。
【0217】
電気化学的スーパーキャパシタンスを製造するために、トリフルオロメタンスルホニルマロノニトリルの1−エチル−3−メチル−1H−イミダゾリウムの融解塩を電解質として、また炭素/アルミニウム複合材料を電極として利用した。厚さ150μmの電極を、厚さ40μmを有する微孔質ポリエチレンの両側に置き、そして完成したシステムを融解液体塩に浸漬した後、グローブボックス中でボタン電池のハウジング内に封止した。得られたスーパーキャパシティーは0Vと2.5Vとの間での充電/放電が100,000サイクルを超えることが可能で、その際エネルギー密度は25Wh/lを超え、伝達出力は1,500W/lを超えた。
【0218】
実施例35
30mlのTHF中で、6.76g(40mモル)のペンタフルオロピリジン(Aldrichから市販されている)を、4.49g(40mモル)のDABCOの存在下で、4.17g(40mモル)のカリウムマロノニトリルKHC(CN)と反応させた。48時間撹拌後、溶媒を蒸発させ、そして残留物を、4gの塩化カリウムを既に加え済みの15mlの水中に再結晶させた。ろ過と乾燥後、5.29gの4−マロノニトリル−ペンタフルオロピリジンのカリウム塩(73%収率)が得られ、これはカーボンRMNで決定して99%を超える純度を有する。
【0219】
同じ方法に従って、2−マロノニトリル−3,5−ジニトロベンゾ−トリフルオライドのカリウム塩を、10.82g(40mモル)の2−クロロ−3,5−ジニトロベンゾトリフルオライド(Aldrichから市販されている)から作成し、これはフッ素、プロトン及びカーボンRMNで決定して99%を超える純度を有した。
【0220】
そのリチウム塩を得るために、THF中の塩化リチウムでイオン交換した。
こうした塩は、大部分の通常の有機溶媒類(テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、グライム類、...)及び非プロトン性溶媒和ポリマー類とに可溶である。
【0221】
【化36】

【0222】
こうした実施例は、芳香族環中の電子吸引基及び/またはヘテロ原子の存在により活性化されるような置換基を含む芳香核上に、マロノニトリルの陰イオンをグラフトする例を示す。
【0223】
実施例36
冷却器とメカニカルスターラーと中性ガス入り口(アルゴン)との付いた三つ口フラスコの中に、ジメチルシロキサンと(水素)(メチル)−シロキサン(HMS 301 25%SiH、Mw1900、GelestInc., Tullytown, PA, USAから市販されている)との9.5gの共重合体をテトラヒドロフラン中に溶解させたものを導入した。次に6.04gのビニルスルホニルマロノニトリルのリチウム塩と70mgのクロロ白金酸HPtClとを加える。混合物を加熱して、4時間還流した。次にポリマーをエタノール中に再沈殿させた。
【0224】
このようにしてジメチルシロキサンと(エチル−スルホニルマロノニトリル)(メチル)−シロキサンのリチウム塩との共重合体が得られ、これは大部分の有機溶媒類に可溶で、油類またはシリコン材料に量で>2%含まれ、それらに帯電防止特性を与える。
【0225】
【化37】

【0226】
実施例37
実施例28に説明した方法と同様の方法によって、(1R)−(−)−10−ショウノウスルホニルマロノニトリルのカリウム塩を、(1R)−(−)−10−ショウノウスルホニルクロリド(Aldrichから市販されている)から得、また、(1S)−(+)−ショウノウスルホニルマロノニトリルのカリウム塩を、(1S)−(+)−10−ショウノウスルホニル(Aldrichから市販されている)から得、収率は70%を超え、純度はプロトン及びカーボンRMNで決定して99%を超えた。
【0227】
対応するリチウム塩を得るために、テトラヒドロフラン中の塩化リチウムでイオン交換(複分解)した。
スカンジウム塩を得るために、対応するカリウム塩を化学量論的量のスカンジウムテトラフルオロボレート(BFでアセトニトリル中で処理した。ろ過して、テトラフルオロホウ酸カリウムKBF、の沈殿物を除去し、溶媒を蒸発させた後に、二種類の鏡像異性体のスカンジウム塩を定量的収率で回収した。
【0228】
【化38】

【0229】
こうした塩は、大部分の極性有機溶媒類(アセトニトリル、テトラヒドロフラン、DMF、...)及び非プロトン性溶媒和ポリマー類とに可溶である。
実施例38
(N−メトキシブチル−N−2−ブチル−34−メチル)アミノスルホニルマロノニトリルのリチウム塩の二種類の鏡像異性体を、実施例14に説明した方法と同様の方法によって、N−メトキシブチル−N−2−ブチル−3−メチル−アミンの二種類の鏡像異性体(Air Productsから市販されている)から得、純度は97%を超えた。
【0230】
カリウム塩を得るために、リチウム塩をフッ化カリウムKFで水中で処理した。ろ過、蒸発及び乾燥後、カリウム塩を定量的収率で回収した。
スカンジウム塩を得るために、カリウム塩を化学量論的量のスカンジウムテトラフルオロボレートSc(BFでアセトニトリル中で処理した。ろ過して、テトラフルオロホウ酸カリウムKBF4の沈殿物を除去し、溶媒を蒸発させた後に、二種類の鏡像異性体のスカンジウム塩を定量的収率で回収した。
【0231】
【化39】

【0232】
こうした塩は、大部分の極性有機溶媒類(アセトニトリル、テトラヒドロフラン、DMF、...)及び非プロトン性溶媒和ポリマー類とに可溶である。
実施例39
1.82g(10mモル)の(1S)−(+)−ケトピニック酸(ketopinic acid)(Aldrichから市販されている)を10mlのピリジン中に溶解させてから、1.04g(10mモル)のマロノニトリルのカリウム塩と2.06g(10mモル)のジシクロヘキシルカルボジイミドとを加える。48時間撹拌後、混合物をろ過してジシクロヘキシル尿素を除去した。ろ液を蒸発後、(1S)−(+)−ケトピニックアセチルマロノニトリルのカリウム塩が得られ、これはプロトン及びカーボンRMNで決定して97%を超える純度を有する。
【0233】
スカンジウム塩を得るために、カリウム塩を化学量論的量のスカンジウムテトラフルオロボレートSc(BFでアセトニトリル中で処理した。ろ過して、テトラフルオロホウ酸カリウムKBFの沈殿物を除去し、溶媒を蒸発させた後に、(1S)−(+)−ケトピニックアセチルマロノニトリルのスカンジウム塩を定量的収率で回収した。
【0234】
【化40】

【0235】
実施例40
アルドール縮合の触媒作用
ジブチルアミノスルホニルマロノニトリルのスカンジウム塩を得るために、実施例14で得られたカリウム塩を化学量論的量のスカンジウムテトラフルオロボレートSc(BFでアセトニトリル中で処理した。ろ過して、テトラフルオロホウ酸カリウムKBF、の沈殿物を除去し、溶媒を蒸発させた後に、ジブチルァミノスルホニルマロノニトリルのスカンジウム塩Sc(DBSM)を定量的収率で回収した。
【0236】
この塩をアルドール縮合反応の触媒として次のように使用した。32.6mg(0.04mモル)のジブチルアミノスルホニルマロノニトリルのスカンジウム塩を1.5mlのジクロロメタン中に含む溶液に、1mlのジクロロメタン中の105mg(0.6mモル)の1−エン−2−メチル−1−シリルアセタール−1−メトキシプロペン(CHC=C(OSiMe)OMeと42mg(0.4mモル)のベンズアルデヒドとの混合物を加える。16時間室温で撹拌後、水を加えてから、生成物をジクロロメタンで抽出した。有機相を3分割した10mlの水で洗浄してから、ジクロロメタンを蒸発させた。次に残留物をテトラヒドロフラン/1MのHC1(10:1)で0.5時間0℃で処理した。ヘキサンで希釈後、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液を加えてから、生成物をジクロロメタンで抽出した。有機相を塩化ナトリウムの飽和溶液で洗浄してから、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、粗生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーで分離した。メチル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−フェニルプロピオネートを、収率89%で得た。
【0237】
【化41】

【0238】
同じ反応を約10に分割した触媒の量で実行したが、化合物メチル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−フェニルプロピオネートの収率が減少することはなかった。この結果は、ジブチルアミノスルホニルマロノニトリルのスカンジウム塩はジクロロメタン中の溶解度が良好なために生じる。
【0239】
実施例41
マイケル付加の触媒作用
実施例40で得られたジブチルアミノスルホニルマロノニトリルのスカンジウム塩を、マイケル付加の触媒として次のように使用した。
【0240】
32.6mg(0.04mモル)のジブチルアミノスルホニルマロノニトリルのスカンジウム塩(10%モル)の1.5mlのジクロロメタン中の溶液に、1mlのジクロロメタン中の105mg(0.6mモル)の1−エン−2−メチル−1−シリルアセタール−1−メトキシプロペン(CHC=C(OSiMe)OMeと84mg(0.4mモル)のカルコンとの混合物を加える。12時間室温で撹拌後、水を加えてから、生成物をジクロロメタンで抽出した。有機相を3分割した10mlの水で洗浄してから、ジクロロメタンを蒸発させた。次に残留物をテトラヒドロフラン/1MのHC1(20:1)混合物で0.5時間0℃で処理した。ヘキサンで希釈後、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液を加えてから、生成物をジクロロメタンで抽出した。有機相を塩化ナトリウムの飽和溶液で洗浄してから、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、粗生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーで分離した。1,5−ジカルボニル化化合物を、収率87%で得た。
【0241】
【化42】

【0242】
同じ反応を約10に分割した触媒の量で実行したが、1,5−ジカルボニル化化合物の収率が減少することはなかった。この結果は、ジブチルアミノスルホニルマロノニトリルのスカンジウム塩はジクロロメタン中の溶解度が良好なために生じる。
【0243】
実施例42
フリーデル−クラフツ反応の触媒作用
実施例40で得られたジブチルアミノスルホニルマロノニトリルのスカンジウム塩を、アシル化のフリーデルークラフツ反応の触媒として次のように作業して使用した。40mlの無水ニトロメタン中に、570mg(700μモル)のSc(DBSM)と1.08g(10mモル)のアニソールと2.04gの無水酢酸とを加える。10分間21℃で撹拌後、反応混合物を50m1のエーテルで希釈してから、100mlの炭酸水素ナトリウムNaHCOの飽和溶液を使用して反応を阻害した。シーライトでろ過後、溶液を3分割した50mlのエーテルで抽出し、集めたエーテル相を、塩化カリウムの飽和溶液で洗浄した。エーテル相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた後、1.469のP−メトキシアセトフェノン(97%収率)を回収し、これはプロトンRMNで特徴付けして99%を超える純度を有した。
【0244】
【化43】

【0245】
従って、ジブチルアミノスルホニルマロノニトリルのスカンジウム塩は、ブリーデルークラフツ反応のアシル化の非常に良好な触媒であることが確認される。
実施例43
ディールス−アルダー反応の触媒作用
実施例39に従って作られた(1S)−(+)−ケトピニックーアセチルマロノニトリルのスカンジウム塩(ScKAM)と、実施例37に従って作られた(1R)−(−)−10−ショウノウスルホニルマロノニトリルのスカンジウム塩(ScCSM)と、実施例38に従って作られた(N−メトキシブチルーN−2−ブチルー3−メチル)アミノスルホニルマロノニトリルのスカンジウム塩(ScMBBMASM)とを、ディールスーアルダー反応の触媒として使用し、メチルビニルケトンとシクロペンタジエンとの反応を可能にした。
【0246】
【化44】

【0247】
上述の各スカンジウム塩毎に、次の作業手順に従った。
651mg(10mモル)の新しく蒸留したシクロペンタジエンと701mg(10mモル)のメチルビニルケトンとの10mlのジクロロメタン中の溶液に、200μモルのスカンジウムキラルの塩を加える。24時間室温に置いた後、反応混合物をろ過して、触媒作用懸濁液を除去した。全ての場合で、得られた反応収率は、水相中でクロマトグラフィーで決定して90%を超えている。反応の様々な生成物をキラルカラムで分離後、鏡像異性体過剰率をRMNで決定した。結果は、この塩のキラル触媒としての効率を示すもので、次の表で与えられる。
【0248】
【表2】

【0249】
実施例44
−20℃の100mlの無水THF中の18.11g(100mモル)の6−プロモ−1−ヘキサノールと11.22g(100mモル)のDABCOとに、19.06g(100mモル)のトシルクロリドをゆっくり加える。24時間、−20℃で撹拌後、反応混合物をろ過して、DABCO塩酸塩の沈殿物を除去した。溶媒を蒸発させた後、定量的量の6−ブロモ−1−ヘキサノールトシラートCHFSOO(CHBrを回収した。この化合物をその後、40gのアニリンFNH(200mモル)と共に20mlのTHF中に溶解させ、そしてこの溶液を加熱して一晩中還流した。冷却後、300mlの水を加えてから、有機相をエーテルで抽出した。水で洗浄後、エーテル相を硫酸マグネシウムで乾燥させた。蒸発と乾燥後、23gのN−(6−ブロモヘキシル)アニリンが得られた。
【0250】
グローブボックス中、アルゴン下で作業し、9.2gの実施例29に従って作られた1−フルオロ−2,2,2−トリフルオロエタンスルホニルCFCHFSOF(50mモル)を、10mlの無水テトラヒドロフラン中に溶解させた。この溶液の温度を−20℃にした後、カリウムt−ブトキシド(CHCOK(Aldrichから市販されている)のテトラヒドロフラン中の1M溶液50mlをゆっくり加える。15分後、12.8l(50mモル)のN−(6−ブロモヘキシル)アニリンを加えた。反応を2時間−20℃で、そして24時間室温で続ける。次に8.8g(50mモル)のナトリウムマロノニトリルと5.61gのDABCOとを加えた。48時間後、反応混合物をろ過して、DABCO塩酸塩の沈殿物を除去し、溶媒を蒸発させ、そして残留物を、7.46(100mモル)の塩化カリウムKClを含む50mlの水中に再結晶させた。ろ過と乾燥後、1−(6−アニリノ−1−ヘキサン)−2,2,2−トリフルオロエタンスルホニルマロノニトリルのカリウム塩が得られ、これはプロトン、カーボン及びフッ素RMNで特徴付けして99%を超える純度を有した。
【0251】
8.87gのこの化合物(20mモル)をその後、200mlの塩酸の1M溶液中に溶解させてから、3時間の間に、4.56g(20mモル)の過硫酸アンモニウム(NHをゆっくり加える。反応を14時間続ける。次に反応混合物を水酸化カリウムで中和してから、体積を≒40m1に濃縮した。ろ過と乾燥後、5.9gの次の化合物の黒色の粉末を回収した。
【0252】
【化45】

【0253】
このポリマー化合物は、その構造中に、非常に非局在化しているドーピング陰イオンを含んでおり、電子導体の特性(PCE)を示す。この陰イオンは塩基性特質が低いため、このポリマーの安定性を改良する。湿潤な媒質中では、4点測定で決定したこの電気伝導度は、始めは約4S.cm−1である。
【0254】
この材料を電池のカソードとして試験した。電池は次の構造を有した。
−複合カソード:40容量%の本実施例で得られるポリマー化合物と60容量%の分子量3×10のポリエチレンオキシドとからなる;
−電解質:実施例28で得られるブタンスルホニルマロノニトリルのリチウム塩を含み、濃度O/Li=20/1で、分子量5×10のポリエチレンオキシドのフィルムからなる;
−金属リチウムアノード。
【0255】
組み立て体をボタン型電池のハウジング内に取り付けた後、得られた電池を、温度60℃で3Vと3.9Vとの間でサイクルした。1,000サイクルを超えた充電/放電が可能であり、同時に最初のサイクルの静電容量の80%を保った。
【0256】
加えて、本実施例のポリマー化合物は、フェラスメタル類の良好な腐食抑制剤であり、また、コロナ効果により処理したプラスチック材料上に堆積物を生成することを可能にする。
【0257】
実施例45
30mlのTHF中の11.8g(0.1モル)のシュウ酸メチルに、80mlのTHF中に溶解させた20.8g(0.2モル)のカリウムマロノニトリルを加えた。沈殿物が数分で形成された。混合物を中性雰囲気中で2時間撹拌してから、これをろ過し、2分割した50mlエーテルで洗浄した。次の陰イオンのカリウム塩が、ベージュ色の固体の形態で得られた。
【0258】
【化46】

【0259】
この化合物は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、鉄、クロムのような金属と陰イオン錯体を形成する。こうした錯体は、非プロトン溶媒中にまたは溶媒和するポリマー類中に可溶であり、かつ、錯体形成した金属(Mg、A1)のビークルキャリアとしてまたは安定なレドックス対(Fe、Cr)として有用である。
【0260】
実施例46
10mlのアセトニトリル中の1.98g(0.1mモル)のスルホニルジイミダゾールに、20mlのエーテル中に溶解させた1.42g(0.2mモル)のナトリウムマロノニトリルを加える。沈殿物が数分で形成される。混合物を中性雰囲気中で2時間撹拌してから、これをろ過し、2分割した20mlエーテルで洗浄した。次の陰イオンのリチウム塩が、白色の固体の形態で得られた。
【0261】
【化47】

【0262】
この塩は、プロピレンカーボネートのような極性溶媒類またはエチレンオキシドを主原料とする溶媒和するポリマー類に可溶であり、90℃で電気伝導度約10−4S.cm−1を与え、リチウムとの界面安定性が優れている。
【0263】
実施例47
実施例2で得られたトリフルオロメタンスルホニルマロノニトリルのリチウム塩と実施例31で得られた2,3−エポキシプロパン−1−スルホニルマロノニトリルのリチウムポリ塩とを、リチウム−ポリマー技術に従って電気化学的発電装置内で試験した。
【0264】
各塩毎に電池を作成するために、次の層を重ね合せた。
−集電体:厚さ2mmのステンレス鋼;
−カソード:厚さ72μmの二酸化バナジウム(45容量%)と、Shawinigan black(登録商標)(5容量%)と、分子量Mw=3×10のポリエチレンオキシド(50容量%)とを有する複合材料のフィルムのパステルからなる;
−電解質:二種類のリチウム塩の一つを濃度O/Li=15/1で含む、分子量Mw=5×10のポリエチレンオキシドのフィルムのパステルからなる;
−アノード:厚さ50μmを有する金属リチウムのシートからなる;
−集電体:上記集電体と同様のもの。
【0265】
電極と電解質とを構成するパステルをグローブボックス中で切り取り、上記に示した順序で積み上げた。
その後集電体を、得られた電池の両側に置いた。
【0266】
発電装置を雰囲気から保護しかつフィルムに機械的応力を及ぼすことを可能にするボタン型電池のハウジング内に、この組み立て体を封止した。次に電池をエンクロージャ内にアルゴン下で置き、温度60℃の乾燥器中に置いた。その後これを、1.8Vと3.3Vとの間で、充電と放電との速度をC/10(10時間で充電または放電をする公称静電容量)でサイクルした。
【0267】
得られたサイクルの曲線を図1に示す(トリフルオロメタンスルホニルマロノニトリルのリチウム塩:曲線A;2,3−エポキシプロパン−1−スルホニル−マロノニトリルのリチウムのポリ塩:曲線B)。この図で、使用量Uは%で表わされて縦座標に示され、サイクル数Cは横座標に示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合の電気的中性をもたらすのに十分な数の少なくとも1つのカチオン性部分M+mと会合するアニオン性部分を含む、マロン酸ニトリルから誘導されるイオン性化合物であって、Mがヒドロキソニウム、ニトロソニウムNO、アンモニウム−NH、原子価mを有する金属カチオン、原子価mを有する有機カチオン又は原子価mを有する有機金属カチオンであることを特徴とし、かつ該アニオン性部分が式R−Y−C(C≡N)又はZ−C(C≡N)のうちの1つに相当し、ここで、
− Zは、
j)−CN、−NO、−SCN、−N、FSO−、−CF、R’CH−(R’は過フッ素化基、好ましくはCF−)、フルオロアルキルオキシ、フルオロアルキルチオキシ、フルオロアルケニルオキシ、フルオロアルケニルチオキシ基:
jj)おそらくは少なくとも1つの窒素、酸素、イオウ又はリン原子を含む1以上の芳香族核を有する基であって、該核はおそらくは縮合核であり、及び/又は該核はおそらくはハロゲン、−CN、−NO、−SCN、−N、CF=CF−O−、基R−及びRCH−から選択される少なくとも1つの置換基を坦持し、ここでRは1ないし12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキルアルキル、フルオロアルキルオキシ基、フルオロアルキルチオキシ基、アルキル、アルケニル、オキサアルキル、オキサアルケニル、アザアルキル、アザアルケニル、チアアルキル、チアアルケニル基、重合体基、少なくとも1つのカチオン性イオノフォア基及び/又は少なくとも1つのアニオン性イオノフォア基を有する基;
から選択される、少なくともフェニル基と等しいハメットパラメータを有する電子吸引基を表し、
ただし、1つの置換基Zは一価の基、多価の基、もしくは少なくとも1つの基−C(C≡N)を坦持する多価の基(デンドリマーを含む)の一部、又は重合体の一区画であってもよく;
− Yは、カルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基又はホスホニル基を表し、及び:
− Rは、
a)アルキルもしくはアルケニル基、アリール、アリールアルキル、アルキルアリールもしくはアルケニルアリール基、多環基を含む脂環式もしくは複素環基;
b)少なくとも1つの機能的エーテル、チオエーテル、アミン、イミン、アミド、カルボキシル、カルボニル、イソシアネート、イソチオシアネート、ヒドロキシを含むアルキル又はアルケニル基;
c)芳香族核及び/又は該核の少なくとも1つの置換基が窒素、酸素、イオウのようなヘテロ原子を含む、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アルキルアリール又はアルケニルアリール基;
d)窒素、酸素、イオウから選択される少なくとも1つのヘテロ原子をおそらくは含む縮合芳香族環を含む基;
e)おそらくは機能的エーテル、チオエーテル、イミン、アミン、カルボキシル、カルボニル又はヒドロキシ基を含む、ハロゲン化又は過ハロゲン化アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール基;
f)RC(R’)(R”)−O−基(ここで、Rはアルキル過フッ素化基であり、かつR’及びR”は互いに独立に水素原子又は上記a)、b)、c)又はd)において定義されるもののような基である)[例えば、CFCHO−、(CFCO−、(CFCHO−、CFCH(C)〇−、CH(CFCH−];
g)(RN−基(ここで、同一であるか、もしくは異なるR基は上記a)、b)、c)、d)及びe)において定義されるようなものであり、Rのうちの1つはハロゲン原子であってもよく、又は2つのR基が一緒にNと環を構成する二価の基を形成する);
h)重合体基;
i)1以上のカチオン性イオノフォア基及び/又は1以上のアニオン性イオノフォア基を有する基;
から選択される基であり、
ただし、1つの置換基Rは一価の基、複数の−Y−C(C≡N)基を坦持する多価の基の一部又は重合体の一区画であってもよい、
イオン性化合物であり、
ただし、YがカルボニルかつRが1ないし3個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基である場合、又はZが−CNである場合には、Mはアルカリ金属とは異なる該イオン性化合物。
【請求項2】
有機カチオンがR(オキソニウム)、NR(アンモニウム)、RC(NHR(アミジニウム)、C(NHR(グアニジウム)、C(ピリジニウム)、C(イミダゾリウム)、C(イミダゾリニウム)、C(トリアゾリウム)、SR(スルホニウム)、PR(ホスホニウム)、IR(ヨードニウム)、(C(カルボニウム)カチオンからなる群より選択されるオニウムカチオンであることを特徴とする請求項1による化合物であって、ここでR基は互いに独立にH、又は以下の群からなる基から選択される基である:
− アルキル、アルケニル、オキサアルキル、オキサアルケニル、アザアルキル、アザアルケニル、チアアルキル、チアアルケニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルケニルアリール基、ジアルキルアミノ基及びジアルキルアゾ基;
− 窒素、酸素、イオウのようなヘテロ原子を含む少なくとも1つの側鎖をおそらくは有する環状又は複素環基;
− 芳香族核にヘテロ原子をおそらくは含む環状又は複素環基;
− 少なくとも1つの窒素、酸素、イオウもしくはリン原子をおそらくは含む、複数の縮合もしくは非縮合芳香族又は複素環核を含む基:
ただし、複数のR基はカチオン性電荷を有する中心をおそらくは取り囲む、脂肪族又は芳香族の環を一緒に形成してもよい。
【請求項3】
オニウムカチオンがZ基又はR基の一部であることを特徴とする請求項2による化合物。
【請求項4】
オニウムカチオンが重合体の循環単位の一部であることを特徴とする請求項2による化合物。
【請求項5】
カチオンMが、環中でアルキル化されている少なくとも1つの窒素原子を含む、芳香族の特徴を有するカチオン性複素環であることを特徴とする請求項2による化合物。
【請求項6】
カチオンがイミダゾリウム、トリアゾリウム、ピリジニウム、4−ジメチル−アミノ−ピリジニウムであることを特徴とし、該カチオンが環の炭素原子上に置換基をおそらくは含む、請求項5による化合物。
【請求項7】
カチオンMが、おそらくは重合体網に組み込まれている、−N=N−、−N=N結合を有する基、スルホニウム基、ヨードニウム基、又は置換もしくは非置換アレン−フェロセニウムカチオンであることを特徴とする請求項2による化合物。
【請求項8】
カチオンがジアリールヨードニウム、ジアルキルアリールヨードニウムカチオン、トリアリールスルホニウムカチオン、トリアルキルアリールスルホニウムカチオン、又は置換もしくは非置換フェナシル−ジアルキルスルホニウムカチオンであることを特徴とする請求項2による化合物。
【請求項9】
アリールヨードニウムカチオン、又はアルキルアリールヨードニウムカチオン、又はトリアリールスルホニウムカチオン、又はアルキルアリールスルホニウムカチオン、又はフェナシル−ジアルキルスルホニウムカチオンが重合体鎖の一部であることを特徴とする請求項2による化合物。
【請求項10】
Mが2,2’[アゾビス(2−2’−イミダゾリニオ−2−イル)プロパン]2+又は2,2’−アゾビス(2−アミジニオプロパン)2+基を組み込む有機カチオンであることを特徴とする請求項2による化合物。
【請求項11】
カチオンMがアルカリ金属のカチオン、アルカリ土類金属のカチオン、遷移金属のカチオン、三価金属のカチオン及び希土類のカチオンからなる群より選択される金属カチオンである請求項1による化合物。
【請求項12】
カチオンが、フェロセン、チタノセン及びジルコノセンから誘導されるカチオン、インデノセニウムカチオン、アレンメタロセニウムカチオン、おそらくはキラル性を有するリガンドと錯体を形成する遷移金属のカチオン並びに原子もしくは原子団に共有結合により結合する1以上のアルキルもしくはアリール基を有する有機金属カチオンからなる群より選択されるメタロセニウムであり、該カチオンはおそらくは重合体鎖の一部であることを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項13】
置換基Zが、−〇C2n+1、−〇CH、−SC2n+1、及び−SCH、−〇CF=CF、−SCF=CF(nは1ないし8の整数)からなる群より選択されることを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項14】
ZがC2n+1CH−基(nは1ないし8の整数)であることを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項15】
が1ないし24個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、オキサアルキル、オキサアルケニル、アザアルキル、アザアルケニル、チアアルキルもしくはチアアルケニル、又は5ないし24個の炭素原子を有するアリール、アリールアルキル、アルキルアリールもしくはアルケニルアリールから選択される基であることを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項16】
が1ないし12個の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル基から選択され、おそらくは主鎖又は側鎖に少なくとも1つのヘテロ原子O、NもしくはSを含み、及び/又はおそらくはヒドロキシ基、カルボニル基、アミン基又はカルボキシル基を坦持することを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項17】
が、芳香族核及び/又はそれらの置換基が窒素、酸素、イオウのようなヘテロ原子を含むアリール、アリールアルキル、アルキルアリール又はアルケニルアリールから選択されることを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項18】
がポリ(オキシアルキレン)基又はポリスチレン基の一部であることを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項19】
がヨードニウム、スルホニウム、オキソニウム、アンモニウム、アミジニウム、グアニジニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、トリアゾリウム、ホスホニウム又はカルボニウムを含む基であり、該イオン性基は全体的に又は部分的にカチオンMとして挙動することを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項20】
がカルボン酸官能基(−CO−)、スルホン酸官能基(−SO)、スルホンイミド官能基(−SONSO−)又はスルホンアミド官能基(−SON−)からなる1以上のアニオン性イオノフォア基を有することを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項21】
が少なくとも1つのエチレン性不飽和及び/又は縮合可能な基及び/又は熱的手段、光化学的手段もしくはイオン性解離によって解離可能な基を含むことを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項22】
がメソモルフォア基もしくはクロモフォア基又は自己ドープした導電性の重合体もしくは加水分解可能なアルコキシシランを表すことを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項23】
が循環単位又は重合体鎖を表すことを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項24】
がフリーラジカルを捕獲することが可能な基を含むことを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項25】
が解離可能な双極子を含むことを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項26】
が酸化還元対を含むことを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項27】
が錯化リガンドを含むことを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項28】
−Y−が光学的に活1生であることを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項29】
−Y−がアミノ酸又は光学的もしくは生物学的に活性のポリペプチドを表すことを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項30】
が2を上回る原子価vを有する基を表し、該基が両自由端に−C(C≡N)基を含むことを特徴とする請求項1による化合物。
【請求項31】
溶媒中の溶液の形態でイオン性化合物を含むイオン伝導性材料であって、該イオン性化合物が請求項1による化合物であることを特徴とするイオン伝導性材料。
【請求項32】
イオン性化合物のカチオンがアンモニウム、又は金属から誘導されるカチオン、又は置換アンモニウム、イミダゾリウム、トリアゾリウム、ピリジニウム、4−ジメチルアミノ−ピリジニウムから選択される有機カチオンであり、該カチオンはおそらくは環の炭素原子上に置換基を有することを特徴とする請求項31によるイオン伝導性材料。
【請求項33】
イオン性化合物の置換基Rがアルキル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基;メソモルフォア基又は少なくとも1つのエチレン性不飽和を含む基及び/又は縮合可能な基及び/又は熱的手段、光化学的手段もしくはイオン性解離によって解離可能な基;自己ドープした導電性重合体;加水分解可能なアルコキシシラン;フリーラジカルトラップ;解離する双極子;酸化還元対;錯化リガンドを包含することを特徴とする請求項31によるイオン伝導性材料。
【請求項34】
イオン性化合物の置換基Rが、O、N又はSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むアルキル又はアルケニル;ヒドロキシ基、カルボニル基、アミノ基、カルボキシル基を有するアルキル又はアルケニル、側鎖及び/又は芳香族核がヘテロ原子を含むアリール、アリールアルキル、アルケニルアリールであることを特徴とする請求項31によるイオン伝導性材料。
【請求項35】
置換基Rが重合体の循環単位であることを特徴とする請求項31による材料。
【請求項36】
イオン性化合物の置換基Zが、−OC2n+1、−OCH、−SC2n+1及び−SCH、−〇CF=CF、−SCF=CFからなる群より選択されることを特徴とする請求項31によるイオン伝導性材料。
【請求項37】
溶媒が直鎖エーテル及び環状エーテル、エステル、ニトリル、ニトロ誘導体、アミド、スルホン、スルホラン、スルファミド及び部分的に水素化された炭化水素から選択される非プロトン性液体溶媒、又は極性重合体、又はそれらの混合物のいずれかであることを特徴とする請求項31によるイオン伝導性材料。
【請求項38】
溶媒が、イオン性基が移されていてもよい、架橋もしくは非架橋の溶媒和重合体であることを特徴とする請求項37によるイオン伝導性材料。
【請求項39】
溶媒和重合体が直鎖構造、櫛状又はブロックから選択され、これらがポリ(エチレンオキシド)、エチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドもしくはアリルグリシジルエーテル単位を含む共重合体、ポリホスファゼンをベースとする網状体、イソシアネートと架橋したポリエチレングリコールをベースとする架橋網状体、重縮合によって得られ、かつ架橋可能な基の組み込みを可能にする基及びブロック共重合体を有し、このブロック共重合体の幾つかのブロックは酸化還元特性を有する官能基を坦持する網状体を形成してもよいことを特徴とする請求項38によるイオン伝導性材料。
【請求項40】
溶媒が非プロトン性液体溶媒並びにイオウ、酸素、窒素及びフッ素から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む単位を有する極性重合体溶媒から本質的になることを特徴とする請求項31によるイオン伝導性材料。
【請求項41】
極性重合体が、アクリロニトリル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン又はメチルメタクリレートから誘導される単位を主として含むことを特徴とする請求項40によるイオン伝導性材料。
【請求項42】
少なくとも1種の第2塩をさらに含むことを特徴とする請求項31によるイオン伝導性材料。
【請求項43】
粉末又は繊維の形態の無機又は有機充填材をさらに含むことを特徴とする請求項31によるイオン伝導性材料。
【請求項44】
電解質によって分離される陰極及び陽極を具備する電気化学的発電機であって、該電解質が請求項31ないし43のいずれか1項による材料であることを特徴とする発電機。
【請求項45】
陰極が金属リチウム、又は、おそらくは酸化リチウム中のナノメートル級の分散の形態にあるそれらの合金、又はリチウム及び遷移金属の二重窒化物、又は一般式Li1+y+x/3Ti2−x/3O、(0≦x≦1、0≦y≦1)を有する低電位酸化物、又は炭素及び有機物質の熱分解から生じる炭化生成物からなることを特徴とする請求項44の発電機。
【請求項46】
陽極が、単独で、もしくは混合して用いられる、酸化バナジウムVO(2≦x≦2,5)、LiV、LiNil−xCo(0≦x≦1;0≦y≦1)、マンガンのスピネルLiMn1−x(M=Cr、Al、V、Ni、0≦x≦0,5;0≦y≦2)、有機ポリジスルフイド、FeS、FeS、硫酸鉄Fe(SO、橄欖石構造の鉄及びリチウムのリン酸塩及びホスホケイ酸塩、又は鉄がマンガンで置換されているそれらの生成物から選択されることを特徴とする請求項44による発電機。
【請求項47】
少なくとも1つの高比表面を有する炭素電極、又は酸化還元重合体を含む電極を用いる超電気容量であって、電解質が請求項31ないし43のいずれか1項による材料である超電気容量。
【請求項48】
導電性ポリマーにおけるp又はnのドーピングへの請求項31ないし43のいずれか1項による材料の利用。
【請求項49】
電解質が請求項31ないし43のいずれか1項による材料であるエレクトロクローム装置。
【請求項50】
カチオン性反応が可能なモノマーもしくはプレポリマーを重合もしくは架橋する方法であって、請求項1による化合物を、該反応を触媒する酸の源を構成する光開始剤として用いることを特徴とする方法。
【請求項51】
カチオンが、おそらくは重合体網に組み込まれる、結合−N=N、−N=N−、スルホニウム基、ヨードニウム基、又は置換もしくは非置換のアレン−フェロセニウムを有するものからイオン性化合物が選択されることを特徴とする請求項41による方法。
【請求項52】
イオン性化合物の置換基Rが非置換アルキル基、オキサ基もしくはスルホンを含む基、スルホキシド、スルホン、ホスフィンオキシドもしくはボスホネート基を含む基であることを特徴とする請求項50による方法。
【請求項53】
モノマーが環状エーテル官能基、環状チオエーテル官能基又は環状アミン官能基、ビニル化合物、ビニルエーテル、オキサゾリン、ラクトン及びラクタムを含む化合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項50による方法。
【請求項54】
プレポリマーが脂肪族鎖、芳香族鎖、又は複素環鎖にエポキシ基が坦持される化合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項50による方法。
【請求項55】
光開始剤を少なくとも1種のカチオン性重合が可能なモノマーもしくはプレポリマーと混合し、かつ得られる混合物にβ線を含む化学放射線を照射することを包含することを特徴とする請求項50による方法。
【請求項56】
薄層に形成した後に反応混合物に放射線を照射することを特徴とする請求項55による方法。
【請求項57】
光開始剤を重合反応に対して不活性である溶媒中の溶液の形態で用いることを特徴とする請求項50による方法。
【請求項58】
不活性溶媒がアセトン、メチルーエチルケトン、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、モノ−、ジ−、トリ−エチレンもしくはプロピレングリコールのエーテル−エステル、モノ−、ジ−、トリ−エチレンもしくはプロピレングリコールのエーテル−アルコール、フタル酸もしくはクエン酸のエステルからなる群より選択されることを特徴とする請求項57による方法。
【請求項59】
重合に対して反応性である化合物からなる溶媒又は希釈剤の存在下において反応を行うことを特徴とする請求項50による方法。
【請求項60】
反応性化合物がモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−エチレンもしくはプロピレングリコールのモノ及びジビニルエーテル、トリビニルエーテルトリメチロールプロパン及びジメタノールシクロヘキサンのジビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、プロピレンカーボネートの2−プロペニルエーテルから選択されることを特徴とする請求項59による方法。
【請求項61】
光増感剤を反応混合物に添加することを特徴とする請求項50による方法。
【請求項62】
光増感剤がアントラセン、ジフェニル−9,10−アントラセン、ペリレン、フェノチアジン、テトラセン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、1,3,5−トリアリール−2−ピラゾリン及びそれらの誘導体、特には、アルキル、オキサ−もしくはアザ−アルキル基によって芳香族核が置換されている誘導体からなる群より選択されることを特徴とする請求項61による方法。
【請求項63】
反応混合物が少なくとも1種のフリーラジカル重合が可能なモノマー又はプレポリマー及び化学放射線もしくはβ線の効果又は熱の作用の下でフリーラジカル重合の開始剤を放出することが可能な化合物をさらに含むことを特徴とする請求項50による方法。
【請求項64】
酸に対して感受性である基を有する重合体の溶解度特性を改変するための方法であって、請求項1による化合物の存在下において該重合体に化学放射線又はβ線を照射することからなることを特徴とする方法。
【請求項65】
重合体が第三アルコールから誘導されるエステル単位又はアリールエーテル単位を含むことを特徴とする請求項64による方法。
【請求項66】
重合体がt−ブチルポリアクリレート、t−ブチルもしくはt−アミルポリイタコネート、ポリ(t−ブトキシカルボニルオキシスチレン)、ポリ(t−ブトキシスチレン)からなる群より選択されることを特徴とする請求項65による方法。
【請求項67】
フォトレジストの光増幅に用いられることを特徴とする請求項64による方法。
【請求項68】
請求項10による化合物がフリーラジカル開始剤として用いられることを特徴とする、ビニルモノマーを重合するための方法。
【請求項69】
請求項1による化合物を含むことを特徴とする、カチオン性着色材料の組成物。
【請求項70】
アニオン性基R−Y−C(C≡N)又はZ−C(C≡N)の負電荷が着色材料の分子に固定されているか、又は着色材料の正電荷の対イオンを構成することを特徴とする請求項69によるカチオン性着色材料の組成物。
【請求項71】
フリーデル−クラフツ反応、ディールス−アルダー反応、アルドール化反応、ミカエル付加、アリル化反応、ピナコールカップリング反応、グリコシル化反応、エキセタン(exetanes)の開環反応、アルセン(alcenes)の複分解反応、チーグラー−ナッタ型の重合、開環による複分解型の重合及び非環式ジエンの複分解型の重合における触媒としての請求項1によるイオン性化合物の利用。
【請求項72】
イオン性化合物のカチオンがリチウム、マグネシウム、銅、亜鉛、スズ、希土類を含む三価金属、プラチノイド、及びそれらの有機金属対から選択されることを特徴とする請求項71による利用。
【請求項73】
化学的、光化学的、電気化学的、光電気化学的反応を行うための溶媒としての請求項6による化合物の利用であって、該化合物がその融点を上回って用いられる利用。
【請求項74】
請求項1によるイオン性化合物を含むことを特徴とする誘電材料。
【請求項75】
イオン性化合物のカチオン性部分がドープされた“P”共役重合体からなるポリカチオンであることを特徴とする請求項74による誘電材料。
【請求項76】
イオン性化合物の置換基Zが6ないし20個の炭素原子を有するアルキル鎖を含むことを特徴とする請求項74による誘電材料。

【図1】
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【公開番号】特開2010−100647(P2010−100647A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6864(P2010−6864)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【分割の表示】特願平10−529515の分割
【原出願日】平成9年12月30日(1997.12.30)
【出願人】(597164909)イドロ−ケベック (30)
【氏名又は名称原語表記】Hydro−Quebec
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【Fターム(参考)】