説明

マンガン錯体の結晶変態

【課題】 マンガン錯体の結晶変態を提供する。
【解決手段】 本発明は、N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体;
【化1】


の結晶変態であって、粉末X線回折パターンにおける約6.87Åのd−間隔でのピークを特徴とする新規結晶形、その製造方法及びその使用に関するものである。本発明の結晶変態は、例えば、テキスタイル材料における染み又は汚れを漂白するために、或いはテキスタイル材料の洗浄工程に関連して移染性染料の再沈着を阻止するために、或いは硬質表面を清浄にするために、洗浄剤、清浄剤、消毒剤又は漂白剤において使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体の新規無定形結晶形、その製造方法及びその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミン(サルトレン:saltren):
【化1】

、その1:1マンガン(III)錯体[マンガン(III)サルトレン]:
【化2】

、その製造、並びに過酸素触媒としてのその使用は、例えば、国際特許出願公開第0105925号パンフレット(実施例1及び実施例13)、国際特許出願公開第0109276号パンフレット(実施例53)及び国際特許出願公開第02059245パンフレット(実施例15)から知られている。マンガン(III)サルトレン化合物は知られており、そして、無定形変態としてのみ製造可能である。
【特許文献1】国際特許出願公開第0105925号パンフレット
【特許文献2】国際特許出願公開第0109276号パンフレット
【特許文献3】国際特許出願公開第02059245パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一つより多い結晶形で存在する物質の能力は、多形性として定義され、そして、このような異なる結晶形態は、“無定形変態”又は“無定形”と称される。一般的に、多形性は、配座を変換するための或いは、異なる分子間の又は分子内の相互作用を形成するための
物質分子の能力、特に水素結合により影響を受け、これは、異なる無定形の結晶格子における異なる原子配置に反映される。
【0004】
物質の異なる無定形は結晶格子の異なるエネルギーを持ち、従って、固体状態において、それらは異なる物理的性質、例えば形態、密度、融点、色、安定性、溶解速度、研削の容易さ、顆粒化、圧縮性等を示す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
今や驚くべきことに、N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体:
【化3】

の新規結晶変態であって、粉末X線回折パターンにおける約6.87Åのd−間隔についてのピークを特徴とする変態が見出された。
【0006】
とりわけ、N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の新規結晶変態は、粉末X線回折パターンにおける約6.87Å及び12.69Åのd−間隔についてピークを特徴とする。
【0007】
より特別には、N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の新規結晶変態は、粉末X線回折パターンにおける約3.51Å、3.65Å、4.20Å、4.63Å、4.95Å、5.30Å、6.38Å、6.87Å、7.50Å、10.57Å及び12.69Åのd−間隔についてのピークを特徴とする。
【0008】
最も特別には、N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の新規結晶変態は、粉末X線回折パターンにおけるd−間隔に対するピーク約2.22Å、2.48Å、2.94Å、3.14Å、3.51Å、3.65Å、3.76Å、3.94Å、4.20Å、4.63Å、4.95Å、5.30Å、5.82Å、6.19Å、6.38Å、6.87Å、7.50Å、8.59Å、10.57Å及び12.69Åを特徴とする。
【0009】
マンガン(III)サルトレン[化合物(2)]の新規結晶変態の粉末試料は、CuX線[λ(CuKα)=1.540598Å]下、室温(25℃)で、STOE−粉末回折計により分析された。
【0010】
下記表1は、dで示され且つオングストローム単位[Å]で表現された、格子面の間の特徴的な間隔及び、それらの対応する特徴的な相対強度(弱い、中程度又は強い)を示す。
【表1】

【0011】
図1は、実施例1から得られた、マンガン(III)サルトレン[化合物(2)]の粉末X線回折パターンを示す。数値は2θにより与えられる。
図2は、実施例2から得られた、マンガン(III)サルトレン[化合物(2)]の粉末X線回折パターンを示す。数値は2θにより与えられる。
【0012】
下記の式は、dと2θの間の関係を示す。
【数1】

【0013】
加えて、MoX線[λ(MoKα)=0.71073Å]下、293Kで、STOEスタジ(Stadi)4−サイクル−回折計D045におけるマンガン(III)サルトレン[化合物(2)]の新規結晶変態の単結晶を記録することにより、単一セルのための結晶構造解析基礎データが得られた。
【0014】
結晶の寸法は0.5mm×0.35mm×0.2mmであった。
マンガン(III)サルトレン[化合物(2)]の新規結晶変態に対する結晶構造解析基礎データ(単結晶における回折)を下記表2に示す。
【表2】

【0015】
無定形変態に比較して、マンガン(III)サルトレン[化合物(2)]の新規結晶変態は、改良された性質を有する。
新規結晶変態は、例えば、無定形変態に比較して、改良された製剤性を有する。更に、新規結晶変態は、改良された濾過性を有する。
【0016】
マンガン(III)サルトレン[化合物(2)]の新規結晶変態は、例えば、テキスタイル材料の処理において、繊維及び染料に同時に如何なる損傷も生じさせることなく、過酸化物の作用を改良するために使用され得る。
【0017】
過酸化物を含む漂白剤は、洗浄及び清浄工程においてかなり長い間使用されていた。それらは、90℃及びそれより高い温度のリカーにおいて優れた作用を有するが、しかし、それらの性能は低温で著しく減少する。適する塩の形態で添加された種々の遷移金属イオン又は、そのようなカチオンを含む配位化合物は、H2 2 の分解を触媒することが知られている。このようにして、H2 2 の又はH2 2 を放出する前駆体の又は他のペルオキソ化合物の低温では不充分な漂白作用である漂白作用を向上させることが可能である。
実用目的において特に重要なものは、遷移金属イオンと配位子との組み合わせであり、その過酸化物活性は、カタラーゼ様の不均化においてのみではなく基質における酸化に対する増加傾向において明示される。本発明の場合においてむしろ望ましくない傾向を示す前者の活性化は、低温では不充分なH2 2 及びその誘導体の漂白効果を損なう。
【0018】
有効な漂白作用を有するH2 2 活性化に関し、種々の配位子、とりわけ1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン及び所望により酸素原子を含むブリッジ配位子を持つマンガン錯体の単核及び多核変異形が、現在とりわけ有効であると考えられ
ている。このような触媒は、実用条件下で充分な安定性を有し、そして、Mnn+を持つので、生態学的に許容され得る金属イオンを含むが、しかし、残念ながらそれらの使用は、染料及び繊維に対する相当な損傷を伴う。
【0019】
本発明は、N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]:

の新規無定形結晶変態の、酸化反応用触媒としての使用に関するものである。
【0020】
N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の新規結晶変態は、好ましくは、ペルオキシ化合物と一緒に使用される。前記観点において述べ得る例は、下記の使用を包含する:
a)洗浄工程又は(予備)温洗工程に関連するテキスタイル材料における染み又は汚れの漂白、
b)テキスタイル材料の洗浄中の移染性染料の再沈着の阻止、
c)硬質表面、とりわけ壁用タイル又は床タイルの清浄化、より特別には成形汚れを除去するための清浄化、
d)抗菌作用を有する洗浄溶液及び清浄溶液における使用、
e)繊維製品を漂白するための予備処理剤として、
f)有機合成に関連する選択的酸化反応の触媒として、
g)廃水処理のための触媒として。
【0021】
別の用途は、N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の新規結晶変態の、製紙に関連する漂白のための、ペルオキシ化合物を用いる反応用の触媒としての使用に関するものである。
【0022】
テキスタイル材料の染み又は汚れの漂白、洗浄工程における移染性染料の再沈着の阻止、或いは、硬質表面、とりわけ壁タイル又は床タイルの清浄化が好ましい。
【0023】
N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の新規結晶変態は、例えば、テキスタイル材料の処理において、繊維及び染料に認識し得る如何なる損傷も生じさせないことに注目すべきである。
【0024】
洗浄リカーにおいて移染性染料の再沈着を阻止する方法は、通常、過酸化物を含む洗浄剤を含む洗浄リカーに、洗浄リカー1L当たり、0.1ないし200mg、好ましくは0.2ないし75mg、とりわけ0.2ないし30mgの量の、N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体の新規結晶変態を添加することにより行われる。N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体の新規結晶変態は、他の遷移金属錯体と一緒に使用される。このような錯体は、例えば、国際特許出願公開第02088289号パンフレット、国際特許出願公開第0105925号パンフレット、国際特許出願公開第010927
6号パンフレット、国際特許出願公開第02059245号パンフレット、国際特許出願公開第053574号パンフレット、欧州特許第902083号明細書及び欧州特許第955289号明細書に記載されている。
【0025】
本発明は、
I)A)アニオン性界面活性剤少なくとも1種及び/又はB)非イオン性界面活性剤少なくとも1種0〜50質量%、好ましくは0〜30質量%、
II)C)ビルダー物質少なくとも1種0〜70質量%、好ましくは0〜50質量%、
III)D)少なくとも1種の(ポリ)ホスホネート及び/又はアミノアルキレンポリ(アルキレンホスホネート)0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、
IV)E)過酸化物少なくとも1種及び/又は過酸化物形成性物質少なくとも1種1〜99質量%、好ましくは1〜70質量%、並びに
V)洗浄剤、清浄剤、消毒剤及び漂白剤0.2ないし20g/リットルがリカーに添加されたとき、該リカー中で、濃度0.2〜50mg/リットルリカー、好ましくは0.2〜30mg/リットルリカーを与える量の、F)N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の新規結晶変態
を含む、洗浄剤又は清浄剤にも関するものである。
【0026】
本発明は、
I)A)アニオン性界面活性剤少なくとも1種及び/又はB)非イオン性界面活性剤少なくとも1種0〜20質量%、好ましくは0〜15質量%、
II)C)ビルダー物質少なくとも1種0〜60質量%、好ましくは0〜50質量%、
III)D)少なくとも1種の(ポリ)ホスホネート及び/又はアミノアルキレンポリ(アルキレンホスホネート)0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、
IV)E)過酸化物少なくとも1種及び/又は過酸化物形成性物質少なくとも1種1〜99質量%、好ましくは1〜70質量%、並びに
V)洗浄剤、清浄剤、消毒剤及び漂白剤0.2ないし20g/リットルがリカーに添加されたとき、該リカー中で、濃度0.2〜50mg/リットルリカー、好ましくは0.2〜30mg/リットルリカーを与える量の、F)N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の新規結晶変態
を含む、消毒剤又は漂白剤にも関するものである。
【0027】
上記%は、それぞれの場合において、前記薬剤の総質量に基づく質量%である。前記薬剤は好ましくは、N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の新規結晶変態0.005ないし2質量%、とりわけ0.01ないし1質量%、そして特に0.02ないし1質量%を含む。
【0028】
本発明の洗浄剤又は清浄剤が少なくとも1種の成分A)及び/又は成分B)を含むとき、その量は好ましくは1〜50質量%、とりわけ1〜30質量%である。
【0029】
本発明の薬剤が少なくとも1種の成分C)を含むとき、その量は好ましくは1〜70質量%、とりわけ1〜50質量%である。特に好ましいのは5ないし50質量%の量、とりわけ10ないし50質量%の量である。
【0030】
本発明の薬剤が少なくとも1種の(ポリ)ホスホネート及び/又はアミノアルキレン−ポリ(アルキレンホスホネート)を含むとき、その量は好ましくは0.1〜3質量%、とりわけ1〜3質量%である。好ましい化合物はアミノ−トリメチレン−ホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、並びにそれらの混合物及びそれらからの塩である。
【0031】
対応する洗浄、清浄、消毒又は漂白工程は通常、過酸化物及び、リカー1L当たり、N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の新規結晶変態0.1ないし200mgを含む水性リカーを使用することにより行われる。前記リカーは好ましくは、リカー1L当たり、式(2)で表わされる化合物0.2ないし30mgを含む。
【0032】
本発明の薬剤は、例えば、過酸化物を含む完全洗浄剤又は別個の漂白添加剤であってよい。漂白添加剤は、衣服が漂白剤を含まない洗浄剤を用いて洗浄される前に、別個のリカー中で、繊維製品上の着色された汚れを除去するために使用される。漂白添加剤は、漂白剤を含まない洗浄剤と一緒に一つのリカー中でも使用され得る。
【0033】
例えば、最初に、成分E)及びF)以外の上記成分全てを含む水性懸濁液を噴霧乾燥することにより初期粉末を製造し、その後、乾燥成分E)及びF)を添加し、そして、全部一緒に混合することにより、本発明の薬剤の顆粒を製造することも可能である。成分F)を、成分A)、B)、C)及びD)を含む水性懸濁液に添加し、その後、噴霧乾燥し、その後、乾燥した素材に成分E)を混合することも可能である。
【0034】
成分A)、C)及びD)を含むが、しかし成分B)を含まないか又は極微量含む水性懸濁液を用いて開始してもよい。前記懸濁液は噴霧乾燥され、その後、成分F)が成分B)と混合され、そして添加され、その後、成分E)が乾燥状態で混合される。
【0035】
成分全てを乾燥状態で混合することも可能である。
【0036】
アニオン界面活性剤A)は、例えば、スルフェート、スルホネート又はカルボキシレート界面活性剤又はその混合物であり得る。好ましい界面活性剤は、所望により、アルキル基が10個ないし20個の炭素原子を有するアルキルエトキシスルホネートと組み合わせた、アルキル基中に12個ないし22個の炭素原子を有するものである。
【0037】
好ましいスルホネートは、例えば、アルキル基に9個ないし15個の炭素原子を有するアルキルベンゼンスルホネートである。アニオン性界面活性剤の場合におけるカチオンは好ましくは、アルカリ金属カチオン、とりわけナトリウムである。
【0038】
アニオン性界面活性剤成分は、例えば、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、オレフィンスルホネート、アルカンスルホネート、脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボキシレート又はα−スルホ脂肪酸塩又はそのエステルであり得る。好ましいものは、アルキル基に10個ないし20個の炭素原子を有するアルキルベンゼンスルホネート、8個ないし18個の炭素原子を有するアルキルスルフェート、8個ないし18個の炭素原子を有するアルキルエーテルスルフェート及び、パーム油又は獣脂から誘導され且つ8個ないし18個の炭素原子を有する脂肪酸塩である。アルキルエーテルスルフェートに添加されるエチレンオキシドの平均モル数は、好ましくは1ないし20、好ましくは1ないし10である。前記塩は好ましくは、アルカリ金属例えばナトリウム又はカリウム、とりわけナトリウムから誘導される。非常に好ましいカルボキシレートは、式R−CO(R1 )CH2 COOM1 (式中、Rは9個ないし17個の炭素原子を有するアルキル基又はアルケニル基を表わし、R1 は炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わし、そしてM1 はアルカリ金属、とりわけナトリウムを表わす。)で表わされるアルカリ金属サルコシネートである。
【0039】
非イオン性界面活性剤成分は、例えば、第一級及び第二級アルコールエトキシレート、とりわけ、アルコール1モル当たり平均してエチレンオキシド1ないし20モルでエトキシル化された炭素原子数8ないし20の脂肪族アルコール、より特別には、アルコール1
モル当たり平均してエチレンオキシド1ないし10モルでエトキシル化された炭素原子数10ないし15の第一級及び第二級脂肪族アルコールである。エトキシル化されていない非イオン性界面活性剤は、アルキルポリグリコシド、グリセロールモノエーテル及びポリヒドロキシアミド(グルカミド)を包含する。
【0040】
洗浄剤又は清浄剤中のアニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の総量は、好ましくは5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%、そしてより好ましくは5〜30質量%である。前記界面活性剤に関して、下限は10質量%であるのが好ましい。
【0041】
消毒剤又は漂白剤中のアニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の総量は、好ましくは0〜15質量%である。
【0042】
好ましいカルボキシレートは、式R2 −CO−N(R3 )−CH2 COOM' 1 (式中、R2 は8個ないし18個の炭素原子を有するアルキル基又はアルケニル基を表わし、R3 は炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わし、そしてM' 1 はアルカリ金属を表わす。)で表わされるアルカリ金属サルコシネートである。
【0043】
非イオン性界面活性剤B)は、例えば、エチレンオキシド3ないし8モルと、9個ないし15個の炭素原子を有する第一級アルコール1モルとの縮合生成物であり得る。
【0044】
ビルダー物質C)として、例えば、アルカリ金属ホスフェート、とりわけトリポリホスフェート;炭酸塩又は炭酸水素塩、とりわけそれらのナトリウム塩;シリケート、アルミノシリケート、ポリカルボキシレート、ポリカルボン酸、有機ホスホネート、アミノアルキレンポリ(アルキレンホスホネート)又は前記化合物の混合物が考慮される。
【0045】
とりわけ適するシリケートは、式NaHSit 2t+1・pH2 O又はNa2 Sit 2t+1・pH2 O(式中、tは数1.9ないし4を表わし、そしてpは数0ないし20を表わす。)で表わされる結晶性層状シリケートのナトリウム塩である。
アルミノシリケートの中でも、好ましいものは、名称ゼオライトA、B、X及びHSの下に市販品を入手可能なもの、及び更に、前記成分2種又はそれより多くを含む混合物である。ゼオライトAが好ましい。
【0046】
ポリカルボキシレートの中でも、好ましいものは、ポリヒドロキシカルボキシレート、とりわけシトレート及びアクリレート、及び更に、それらのマレイン酸無水物とのコポリマーである。好ましいポリカルボン酸は、ラセミ形態又はエナンチオマー状の純粋(S,S)形態のニトリロトリ酢酸、エチレンジアミン四酢酸及びエチレンジアミンジスクシネートである。
【0047】
成分D)として、とりわけ適するものは、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸及びジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸のアルカリ金属塩、並びにそれらの混合物及びそれらからの塩である。
【0048】
過酸化物成分E)として、例えば、テキスタイル材料を慣用の洗浄温度、例えば10℃ないし95℃で漂白する、文献において知られており且つ市販品を入手可能な、有機又は無機過酸化物が考慮される。
特に、有機過酸化物は、例えば、少なくとも3個、好ましくは6個ないし20個の炭素原子のアルキル鎖を有するモノ過酸化物又はポリ過酸化物;特に、6個ないし12個の炭素原子を有するジペルオキシジカルボキシレート、例えばジペルオキシペルアセテート、ジペルオキシペルセバケート、ジペルオキシフタレート及び/又はジペルオキシドデカン
ジオエート、とりわけそれらの対応する遊離酸は興味深い。ペルオキシ酸前駆体をH2 2 と組み合わせて使用することも可能である。とりわけ好ましいものは、モノ−又はポリ過酸化物、とりわけ有機過酸又はそれらの塩、例えば、フタルイミドペルオキシカプロン酸、ペルオキシ安息香酸、過酢酸、ジペルオキシドデカン二酸、ジペルオキシノナン二酸、ジペルオキシデカン二酸、ジペルオキシフタル酸又はそれらの塩である。
【0049】
洗浄剤、清浄剤、消毒剤又は漂白剤中の過酸化物の量は、好ましくは0.5〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、そしてより好ましくは1〜15質量%である。過酸化物が使用される場合、下限は好ましくは2質量%、とりわけ5質量%である。
【0050】
しかしながら、好ましくは、無機過酸化物、例えば、過硫酸塩、過硼酸塩、過炭酸塩及び/又は過珪酸塩が使用される。無機及び/又は有機過酸化物混合物も使用され得ることが理解される。過酸化物は種々の結晶形態で存在し且つ異なる水分含有率を有してよく、そして、それらの貯蔵安定性を改良するために、それらは他の無機化合物又は有機化合物と一緒に使用もされ得る。
【0051】
過酸化物は、各成分を、例えばスクリュー計量システム及び/又は流動床混合機を使用して、洗浄剤、清浄剤、消毒剤又は漂白剤に添加される。
【0052】
洗浄剤又は清浄剤は、本発明の組み合わせに加えて、例えば、ビス−トリアジニルアミノ−スチルベンジスルホン酸、ビス−トリアゾリル−スチルベンジスルホン酸、ビス−スチリル−ビフェニル又はビス−ベンゾフラニルビフェニル、ビス−ベンズオキサリル誘導体、ビス−ベンズイミダゾイル誘導体又はクマリン誘導体又はピラゾリン誘導体の類からの1種又はそれより多くの蛍光増白剤を含み得る。
【0053】
使用される洗浄剤又は清浄剤は通常、1種又はそれより多くの助剤例えば汚れ懸濁剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム;pHを調節するための塩、例えばアルカリ又はアルカリ土類金属シリケート;泡調節剤、例えば石鹸;噴霧乾燥性及び顆粒化性を調節するための塩、例えば硫酸ナトリウム;芳香料;及び更に、適切であれば、帯電防止剤及び柔軟剤、例えばスメクタイト白土;光漂白剤;顔料;及び/又はシェーディング剤を含む。前記構成成分は、勿論、用いられるどのような漂白システムにも安定であるべきである。このような助剤は、洗浄剤又は清浄剤の全質量に基づいて、例えば、0.1ないし20質量%、好ましくは0.5ないし10質量%、とりわけ0.5ないし5質量%の量存在し得る。
【0054】
更に、洗浄剤、清浄剤、消毒剤又は漂白剤は、所望により、酵素を含み得る。酵素は、汚れを除去するために、洗浄剤、清浄剤、消毒剤又は漂白剤に添加され得る。酵素は通常、血液、ミルク、草又は果実ジュースにより引き起こされる蛋白質−又は澱粉に基づく汚れに対する性能を改良する。好ましい酵素はセルラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ及びリパーゼである。好ましい酵素はセルラーゼ及びプロテアーゼ、とりわけびプロテアーゼである。セルラーゼは、セルロース及びその誘導体に作用し、そしてそれらをグルコース、セロビオース、セロオリゴサッカライドに加水分解する酵素である。セルラーゼは汚れを除去し、そして、手触りの粗さを緩和する効果を有する。使用される酵素の例は下記のものを包含するが、しかし、如何なる意味においても、下記のものに限定されない:
米国特許出願公告第6242405号明細書、第14欄、第21行ないし第32行に記載されたプロテアーゼ、
米国特許出願公告第6242405号明細書、第14欄、第33行ないし第46行に記載されたリパーゼ、
米国特許出願公告第6242405号明細書、第14欄、第47行ないし第56行に記載されたアミラーゼ、及び
米国特許出願公告第6242405号明細書、第14欄、第57行ないし第64行に記載されたセルラーゼ。
【0055】
酵素は、所望により、洗浄剤、清浄剤、消毒剤又は漂白剤中に存在し得る。使用される場合、酵素は通常、洗浄剤、清浄剤、消毒剤又は漂白剤の全質量に基づいて、0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜5質量%、そしてより好ましくは0.1ないし4質量%の量存在し得る。
【0056】
Mn(III)サルトレン[化合物(2)]の新規結晶変態に加えて、漂白を活性化する活性成分及び/又は慣用の漂白活性化剤として知られる別の遷移金属塩又は錯体、即ち、ペルヒドロ化分解条件下で、1個ないし10個の炭素原子、とりわけ2個ないし4個の炭素原子を有する非置換の又は置換されたペルベンゾ−及び/又はペルオキソ−カルボン酸を与える化合物、を使用することも可能である。適する漂白活性化剤は、所定数の炭素原子及び/又は非置換の又は置換されたベンゾイル基を有するO−及び/又はN−アシル基を持つ、最初に記載された慣用の漂白活性化剤を包含する。好ましいものは、ポリアシル化アルキレンジアミン、とりわけテトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、アシル化グリコルリル、とりわけテトラアセチルグリコルリル(TAGU)、N,N−ジアセチル−N,N−ジメチル尿素(DDU)、アシル化トリアジン誘導体、とりわけ1,5−ジアセチル−2,4−ジオキソヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン(DADHT)、次式(3):
【化5】

[式中、R4 はスルホネート基、カルボン酸基又はカルボキシレート基を表わし、そして、R5 は直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数7ないし15のアルキル基を表わす。]で表わされる化合物、とりわけ名称SNOBS、SLOBS及びDOBAの下で知られている活性化剤、アシル化多価アルコール、とりわけトリアセチン、エチレングリコールジアセテート及び2,5−ジアセトキシ−2,5−ジヒドロフラン、及び更に、アセチル化ソルビトール及びマンニトール及びアシル化糖誘導体、とりわけペンタアセチルグルコース(PAG)、スクロースポリアセテート(SUPA)、ペンタアセチルフルクトース、テトラアセチルキシロース及びオクタアセチルラクトース並びに、アセチル化され、所望によりN−アルキル化されたグルカミン及びグルコノラクトンである。ドイツ国特許出願公開第4443177号明細書から知られている慣用の漂白活性化剤の組み合わせを使用することも可能である。過酸化物とペルイミン酸を形成するニトリル化合物も、漂白活性化剤として考慮される。
【0057】
本発明の洗浄剤又は清浄剤に対する別の好ましい添加剤は、繊維製品の洗浄中、洗浄条件下で繊維製品から放出された洗浄リカー中の染料により引き起こされる汚染を阻止する、染色堅牢度増進剤及び/又はポリマーである。このようなポリマーは、好ましくは、アニオン性又はカチオン性置換基を取り込むことにより変性されていてもよいポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジン−N−オキシド又はポリベタイン、とりわけ、5000ないし60000、より特別には10000ないし50000の範囲内の分子量を有するものである。このようなポリマーは通常、洗浄剤又は清浄剤の全質量に基づいて、0.01ないし5質量%、好ましくは0.05ないし5質量%、そしてより好ましくは0.1ないし2質量%の量使用される。好ましいポリマーは、国際特許出願公開第02/02865号パンフレットに記載されたものである(とりわけ、第1頁最終段落及び第2頁第一段落を参照)。
【0058】
上述の洗浄剤又は清浄剤は、粉末形態、顆粒形態、錠剤形態及び液体形態を包含する種々の物理的形態を取り得る。その例は、慣用の粉末強力洗剤、コンパクト及びスーパーコンパクト強力洗剤並びに、錠剤、例えば強力洗剤錠剤である。一つの重要な物理的形態は、洗濯機に添加するために採用された、いわゆる濃厚顆粒形態である。
【0059】
いわゆるコンパクト(又はスーパーコンパクト)洗剤も重要である。洗剤製造の分野において、最近、増加された量の活性物質を含むコンパクト洗剤の製造に向かう傾向が増加した。洗浄工程の間のエネルギー消費を最小化するために、コンパクト洗剤は、40℃のような低い温度又は、室温例えば25℃でも、有効に機能することが必要とされる。このような洗剤は通常、充填剤又は加工助剤、例えば硫酸ナトリウム又は塩化ナトリウムを極少量しか含まない。このような充填剤の量は通常、洗剤の全質量に基づいて、0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、とりわけ0〜1質量%である。このような洗剤は通常、嵩密度650〜1000g/L、好ましくは700〜1000g/L、そしてとりわけ750〜1000g/Lを有する。
【0060】
洗浄剤又は清浄剤は錠剤の形態でも存在し得る。錠剤の付随する特徴は分配の容易さ及び取り扱いの便利さである。錠剤は固形洗剤の最もコンパクトな移送であり、そして、例えば、0.9ないし1.3kg/Lの嵩密度を有する。急速な崩壊を可能にするため、洗濯洗剤錠剤は通常、特定の崩壊剤:
−発泡剤、例えば炭酸塩/炭酸水素塩/クエン酸、
−膨張剤、例えばセルロース、カルボキシメチルセルロース、架橋されたポリ(N−ビニルピロリドン)、
−急速溶解材、例えば酢酸ナトリウム(カリウム)、クエン酸ナトリウム(カリウム)、−急速溶解水溶性硬質コーティング、例えばジカルボン酸
を含む。
前記錠剤は、上記崩壊剤のどのような組み合わせも含み得る。
【0061】
洗浄剤又は清浄剤は、該洗浄剤又は清浄剤の全質量に基づいて、水5〜50質量%、好ましくは10〜35質量%を含む水性液体として、又は、水5質量%まで、好ましくは0〜1質量%を含む非水性液体洗剤としても製剤化され得る。非水性液体洗剤組成物は、キャリアーとして、他の溶剤を含み得る。メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールにより例示される低分子量の第一級又は第二級アルコールが適している。一価アルコールは界面活性剤を可溶化するのに好ましいが、しかし、多価アルコール、例えば、2個ないし約6個の炭素原子及び2個ないし約6個のヒドロキシル基含むもの(例えば、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、グリセリン及び1,2−プロパンジオール)も使用し得る。前記組成物は、洗剤の全質量に基づいて、そのようなキャリアー5ないし90質量%、典型的には10ないし50質量%を含み得る。前記洗剤は、いわゆる“単位液体投与”形態としても存在し得る。
【0062】
全洗浄工程の間に、洗浄リカーがpH値約6.5〜11、好ましくは7.5〜11を有する洗浄剤又は清浄剤が通常、製剤化される。洗浄工程におけるリカー分配比は通常、1:4ないし1:40、好ましくは1:4ないし1:15、より好ましくは1:4ないし1:10、とりわけ好ましくは1:5ないし1:9である。
【0063】
洗浄手順は通常、洗濯機で行われる。
種々のタイプの洗濯機、例えば、
−垂直回転軸を持つ上面投入洗濯機;通常、容量45ないし83リットルを有するこれらの洗濯機は、温度10〜50℃及び洗浄サイクル約10〜60分の洗浄工程のために使用される。このようなタイプの洗濯機はしばしば、米国において使用される。
−水平回転軸を持つ前面投入洗濯機;通常、容量8ないし15リットルを有するこれらの洗濯機は、温度30〜95℃及び洗浄サイクル約10〜60分の洗浄工程のために使用される。このようなタイプの洗濯機はしばしば、欧州において使用される。
−垂直回転軸を持つ上面投入洗濯機;通常、容量26ないし52リットルを有するこれらの洗濯機は、温度5〜25℃及び洗浄サイクル約8〜15分の洗浄工程のために使用される。このようなタイプの洗濯機はしばしば、日本において使用される。
【0064】
本発明の洗浄剤、清浄剤、消毒剤又は漂白剤は、汚染された繊維製品が、撹拌することなく、洗剤及び/又は洗濯用漂白添加剤の溶液又は懸濁液中に0.5〜24時間放置される浸漬工程においても使用され得る。浸漬は、例えばバケツ中又は洗濯機中で起り得る。通常、繊維製品は、浸漬工程の後に洗浄及び/又は濯ぎ洗いされる。
【0065】
N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の新規結晶変態は、適する顆粒化助剤を含む顆粒に配合されることも可能である。このような顆粒は、粉末−又は顆粒−形態の洗浄剤、清浄剤、消毒剤又は漂白剤に配合するために適している。
【0066】
驚くべきことに、Mn(III)サルトレン[化合物(2)]の新規結晶変態は、低温においてさえ、壁タイル又は床タイル上に生じる着色された汚染に対する著しく改良された漂白触媒作用も示す。
【0067】
従って、Mn(III)サルトレン[化合物(2)]の新規結晶変態の、硬質表面用、とりわけ壁タイル又は床タイル用清浄溶液中における、ペルオキシ化合物を用いる反応用の触媒としての使用は、とりわけ興味深い。
【0068】
Mn(III)サルトレン[化合物(2)]の新規結晶変態は、ペルオキシ化合物と一緒になって、優れた抗菌作用も有する。殺菌用又は細菌の攻撃に対する防御用のMn(III)サルトレン[化合物(2)]の新規結晶変態の使用も同様に興味深い。
【0069】
Mn(III)サルトレン[化合物(2)]の新規結晶変態は、有機合成、とりわけ有機分子、例えばエポキシドを形成するためのポリオレフィンの酸化、に関連する選択的酸化のために甚だ適している。このような選択的変換反応は、とりわけプロセス化学において必要とされる。従って、本発明は、有機合成に関連する選択的酸化反応の際の式(1)で表わされる化合物の金属錯体の使用にも関するものである。
【0070】
N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の新規結晶変態は、
α)サリチルアルデヒド3部及びトリス(2−アミノエチル)アミン1部を含む溶液を、所望により若干の塩基、例えばNaOH、KOH等を含み得るMn(III)溶液に添加すること、及び
β)N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]を単離し、そして精製すること、
により得ることが可能である。
【0071】
段階α)用の適する有機溶剤は、DMF、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド又はアルコール、例えばメタノール、エタノール、ブタノール等である。
段階α)の反応温度は、好ましくは15〜50℃の間、より好ましくは20〜40℃の間、最も好ましくは室温(25℃)である。
単離及び精製(段階β)は、慣用手段により行われる。好ましくは、前記化合物は濾過され、若干の溶剤を用いて洗浄され、そして真空下で乾燥される。
【0072】
本発明を下記実施例により説明するが、しかし、本発明は下記実施例により限定されるものではない。
【0073】
実施例1
25℃で撹拌されている、サリチルアルデヒド3部及びトリス(2−アミノエチル)アミン1部及びNaOH溶液(50%)2当量を含むエタノール性溶液に、エタノール性Mn(III)塩溶液の化学量論量を添加した。新規結晶形を持つMn(III)サルトレンが、数分後に得られた。沈澱した化合物を濾別し、洗浄し、そして真空下で乾燥した。
【0074】
実施例2
サリチルアルデヒド3部及びトリス(2−アミノエチル)アミン1部をDMFに溶解した。この溶液を、温度25℃で20時間撹拌した。その後、DMFに溶解したMn(III)塩を添加した。同時に、実施例1に従って得られたMn(III)サルトレン種結晶も、前記溶液に添加した。新規結晶形を持つMn(III)サルトレンが、数分後に得られた。沈澱した化合物を濾別し、洗浄し、そして真空下で乾燥した。
【0075】
実施例3〜26
下記表3a、3b及び3cにおいて、我々は、新規結晶形を持つMn(III)サルトレンを含む、洗剤及び洗濯用漂白添加剤の組成物の例(実施例3〜26)を示す。
【表3】

【表4】

上記表3a及び3bにおいて、新規結晶変態を持つMn(III)サルトレンは、PEG8000、TiO2 、CaCO3 及びトウモロコシ澱粉と一緒になって顆粒を形成している。
【表5】

【0076】
実施例27
洗濯漂白工程における漂白触媒としての、新規結晶形を持つMn(III)サルトレンの使用
お茶で汚された綿の布(BC−1、CFT、オランダ製)3gを、漂白リカー300mL中で洗浄した。前記漂白リカーは、炭酸ナトリウム0.71g及び過炭酸ナトリウム0.75gを含んでいた。水の硬度は、CaCO3 50ppmに対応する。前記リカーは所望により、漂白触媒として、新規結晶形を持つMn(III)サルトレン0.004gを含んでいた。新規結晶形を持つMn(III)サルトレンを、該新規結晶形を持つMn(III)サルトレン10%及び製剤助剤90%を含む顆粒形態で添加した。
【0077】
漂白は、リニテスト(LINITEST)装置中のビーカー内で、25℃で30分間行われた。漂白後、布を濯ぎ、アイロンをかけ、そして機器スペクトラフラッシュ(SPECTRAFLASH)2000を用いて反射スペクトルを測定し、そして、CIE標準手順に従って、輝度Yに変換した。漂白効果は、DY=Y(洗浄後)−Y(洗浄前)として得られた。
【0078】
得られた結果を、下記表4に示す。その結果は、新規結晶構造を持つMn(III)サルトレンの漂白効果を示している。
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、実施例1から得られたMn(III)サルトレン[化合物(2)]の粉末X線回折パターンを示す図である。Mn(III)サルトレン[化合物(2)]の新規結晶変態の粉末試料は、CuX線[λ(CuKα)=1.540598Å]下、室温(25℃)で、STOE−粉末回折計により分析された。
【0080】
【図2】図2は、実施例2から得られたMn(III)サルトレン[化合物(2)]の粉末X線回折パターンを示す図である。Mn(III)サルトレン[化合物(2)]の新規結晶変態の粉末試料は、CuX線[λ(CuKα)=1.540598Å]下、室温(25℃)で、STOE−粉末回折計により分析された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体:
【化1】

の結晶変態であって、
粉末X線回折パターンにおける約6.87Åのd−間隔についてのピークを特徴とする結晶変態。
【請求項2】
N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の結晶変態であって、
粉末X線回折パターンにおける約6.87Å及び12.69Åのd−間隔についてのピークを特徴とする結晶変態。
【請求項3】
N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の結晶変態であって、
粉末X線回折パターンにおける約3.51Å、3.65Å、4.20Å、4.63Å、4.95Å、5.30Å、6.38Å、6.87Å、7.50Å、10.57Å及び12.69Åのd−間隔についてのピークを特徴とする結晶変態。
【請求項4】
N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の結晶変態であって、
粉末X線回折パターンにおける約2.22Å、2.48Å、2.94Å、3.14Å、3.51Å、3.65Å、3.76Å、3.94Å、4.20Å、4.63Å、4.95Å、5.30Å、5.82Å、6.19Å、6.38Å、6.87Å、7.50Å、8.59Å、10.57Å及び12.69Åのd−間隔についてのピークを特徴とする結晶変態。
【請求項5】
N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の結晶変態であって、
CuX線[λ(CuKα)=1.540598Å]下、室温(25℃)で、機器STOE−粉末回折計において、新規結晶変態の粉末試料に対するX線回折により得られた、格子面の間の下記の間隔:
【表1】

により表わされる特徴的なX線粉末パターンを有する結晶変態。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項記載のN,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の結晶変態であって、
試料単結晶に関するX線回折に従い、下記の結晶構造解析基礎データ:
【表2】

により表わされることを特徴とする結晶変態。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項記載のN,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の結晶変態の、酸化反応用触媒としての使用。
【請求項8】
N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体の結晶変態が、洗浄剤、清浄剤、消毒剤又は漂白剤において使用される、請求項7記載の使用。
【請求項9】
N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体の結晶変態が、テキスタイル材料における染み又は汚れを漂白するために、或いはテキスタイル材料の洗浄工程に関連して移染性染料の再沈着を阻止するために、或いは硬質表面を清浄にするために、ペルオキシ化合物と一緒に使用される、請求項7又は8記載の使用。
【請求項10】
請求項1ないし6記載のN,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体の結晶変態が、製紙に関連する漂白のための、ペルオキシ化合物を用いる反応用の触媒として使用される、請求項7又は8記載の使用。
【請求項11】
I)A)アニオン性界面活性剤少なくとも1種及び/又はB)非イオン性界面活性剤少なくとも1種0〜50%、好ましくは0〜30%、
II)C)ビルダー物質少なくとも1種0〜70%、好ましくは0〜50%、
III)D)少なくとも1種の(ポリ)ホスホネート及び/又はアミノアルキレンポリ(アルキレンホスホネート)0〜10%、好ましくは0〜5%、
IV)E)過酸化物少なくとも1種及び/又は過酸化物形成性物質少なくとも1種1〜9
9%、好ましくは1〜70%、並びに
V)洗浄剤、清浄剤、消毒剤及び漂白剤0.2ないし20g/リットルがリカーに添加されたとき、該リカー中で、濃度0.2〜50mg/リットルリカー、好ましくは0.2〜30mg/リットルリカーを与える量の、F)N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の新規結晶変態
を含む、洗浄剤、清浄剤、消毒剤又は漂白剤。
【請求項12】
請求項1ないし6記載のN,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]の変態を製造するための方法であって、
a)サリチルアルデヒド3部及びトリス(2−アミノエチル)アミン1部を含む溶液を、所望により若干の塩基を含み得るMn(III)溶液に添加すること、及び
b)N,N’,N”−トリス[サリチリデンアミノエチル]アミンの1:1マンガン(III)錯体[化合物(2)]を単離し、そして精製すること、
による方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2006−516973(P2006−516973A)
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500593(P2006−500593)
【出願日】平成16年1月19日(2004.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000359
【国際公開番号】WO2004/065302
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】