説明

マンコンベアの移動手摺及びマンコンベア用手摺、並びに移動手摺用帆布

【課題】帆布に摩擦特性の極めて低い繊維を利用した場合であっても、その固定を容易且つ確実に行うことができるとともに、帆布の強度の低下や型崩れによる寸法変化を確実に防止することができるマンコンベアの移動手摺を提供する。
【解決手段】移動手摺8は、横断面C字状を呈する本体樹脂部16と、本体樹脂部16の内側面に設けられた基布20と、基布20の表面の一部を覆うように基布20に設けられた摺動布21と、基布20の表面の他の一部を覆うように基布20に設けられた高摩擦体22とを備える。高摩擦体22は、基布20を構成していた一部の繊維が、溶融した後に基布20の表面側で凝固することによって形成されたものであり、摺動布21よりも高い摩擦特性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレーターや動く歩道等のマンコンベアにおいて使用されるマンコンベアの移動手摺、マンコンベア用手摺、移動手摺用帆布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターや動く歩道といったマンコンベアでは、一般に、横断面C字状の無端状を呈する移動手摺が使用されている。この移動手摺は、踏段上の乗客が安全のために掴むものであり、上記踏段と同期するように駆動され、また、案内レールによってその走行方向が案内されている。
【0003】
上記構成の移動手摺を備えたマンコンベアでは、一般に、移動手摺の駆動と走行の案内とが、その内側面(内側面に設けられた帆布)を介して行われている。このため、移動手摺には、その内側面に、十分な駆動力を発生させるための高い摩擦特性(摩擦係数)と、走行時の摺動抵抗を低減させるための低い摩擦特性(摩擦係数)との双方の機能を備えることが要求される。
【0004】
このような事情に鑑み、従来技術として、帆布にフッ素樹脂繊維を使用することにより、移動手摺の走行抵抗(走行時の摺動抵抗)を大幅に低減させたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−105801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フッ素樹脂繊維は摩擦係数が極めて小さいため、移動手摺の走行抵抗を低減させるためには好適であるが、移動手摺の本体樹脂への接着が極めて難しいといった問題があった。このため、特許文献1に記載のものでは、帆布に開けられた多数の貫通孔を介して本体樹脂の一部を移動手摺の内側面側に浸み出させることにより、この樹脂によって帆布の固定(及び、高摩擦部の形成)を行っていた。
【0007】
しかし、このような固定方法では、帆布に多数の貫通孔を開けなければならず、帆布の強度の低下や型崩れによる寸法変化が発生して、安定した製品の供給が困難になってしまう。例えば、移動手摺を押し出しによって一体成形するためには、帆布に対してある程度の張力を作用させなければならず、帆布に捩れや位置ずれが発生してしまう恐れがあった。
【0008】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、帆布に摩擦特性の極めて低い繊維を利用した場合であっても、その固定を容易且つ確実に行うことができるとともに、帆布の強度の低下や型崩れによる寸法変化を確実に防止することができるマンコンベアの移動手摺、及び、マンコンベア用手摺を提供することである。
【0009】
また、上記目的の達成を実現できる移動手摺用帆布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るマンコンベアの移動手摺は、横断面C字状を呈し、無端状に形成された本体樹脂部と、本体樹脂部の内側面に、本体樹脂部の長手に沿って設けられた基布と、基布の表面の一部を覆うように基布に設けられた摺動布と、基布の表面の他の一部を覆うように基布に設けられた、摺動布よりも高い摩擦特性を有する高摩擦体と、を備え、高摩擦体は、基布を構成していた一部の繊維が、溶融した後に基布の表面側で凝固することによって形成されたものである。
【0011】
また、この発明に係るマンコンベアの移動手摺は、横断面C字状を呈し、無端状に形成された本体樹脂部と、本体樹脂部の内側面に、本体樹脂部の長手に沿って設けられた基布と、基布の表面の一部を覆うように基布に設けられた摺動布と、基布の表面の他の一部を覆うように基布に設けられた駆動布と、駆動布の表面側に設けられた、摺動布よりも高い摩擦特性を有する高摩擦体と、を備え、高摩擦体は、駆動布を構成していた一部の繊維が、溶融した後に駆動布の表面側で凝固することによって形成されたものである。
【0012】
この発明に係るマンコンベア用手摺は、横断面C字状を呈する長尺の本体樹脂部と、本体樹脂部の内側面に、本体樹脂部の長手に沿って設けられた基布と、基布の表面の一部を覆うように基布に設けられた摺動布と、基布の表面の他の一部を覆うように基布に設けられた、摺動布よりも高い摩擦特性を有する高摩擦体と、を備え、高摩擦体は、基布を構成していた一部の繊維が、溶融した後に基布の表面側で凝固することによって形成されたものである。
【0013】
また、この発明に係るマンコンベア用手摺は、横断面C字状を呈する長尺の本体樹脂部と、本体樹脂部の内側面に、本体樹脂部の長手に沿って設けられた基布と、基布の表面の一部を覆うように基布に設けられた摺動布と、基布の表面の他の一部を覆うように基布に設けられた駆動布と、駆動布の表面側に設けられた、摺動布よりも高い摩擦特性を有する高摩擦体と、を備え、高摩擦体は、駆動布を構成していた一部の繊維が、溶融した後に駆動布の表面側で凝固することによって形成されたものである。
【0014】
この発明に係る移動手摺用帆布は、基布と、基布の表面の一部を覆うように基布に設けられた摺動布と、を備え、基布は、移動手摺製造時の温度で溶融しない第1繊維と、移動手摺製造時の温度で溶融する第2繊維と、を用いて織られ、摺動布は、第2繊維よりも低い摩擦特性を有する第3繊維を用いて織られたものである。
【0015】
また、この発明に係る移動手摺用帆布は、基布と、基布の表面の一部を覆うように基布に設けられた摺動布と、基布の表面の他の一部を覆うように基布に設けられた駆動布と、を備え、駆動布は、移動手摺製造時の温度で溶融しない第1繊維と、移動手摺製造時の温度で溶融する第2繊維と、を用いて織られ、摺動布は、第2繊維よりも低い摩擦特性を有する第3繊維を用いて織られたものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、帆布に摩擦特性の極めて低い繊維を利用した場合であっても、その固定を容易且つ確実に行うことができるとともに、帆布の強度の低下や型崩れによる寸法変化を確実に防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】マンコンベアの全体構成を示す側面図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるマンコンベアの移動手摺を示す断面図である。
【図3】移動手摺に使用される帆布の構成を示す正面図である。
【図4】移動手摺に使用される帆布の構成を示す断面図である。
【図5】図1のA−A矢視を示す図である。
【図6】図1のB−B矢視を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2におけるマンコンベアの移動手摺の図3相当図である。
【図8】この発明の実施の形態2におけるマンコンベアの移動手摺の図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0019】
実施の形態1.
図1はマンコンベアの全体構成を示す図である。以下においては、マンコンベアの一例として、上下階床間の移動の際に利用されるエスカレーターの構成について具体的に説明し、動く歩道等の他の例については、その説明を省略する。
【0020】
図1において、1は上下階床間に掛け渡されたエスカレーターのトラスである。エスカレーターの自重及び積載荷重は、このトラス1によって支持される。2は乗客が上下階床間を移動する際に乗る踏段、3は踏段2が連結された無端状の踏段チェーン、4は踏段チェーン3が巻き掛けられた踏段駆動用スプロケット、5は踏段駆動用スプロケット4等を駆動するための駆動電動機、6は駆動電動機5の出力を減速し、チェーンを介して踏段駆動用スプロケット4を回転させる減速機、7は駆動電動機5の制御等、エスカレーターの運転制御を司る制御盤である。
【0021】
8は上記踏段2と同期するように駆動される移動手摺である。移動手摺8は、無端状を呈しており、その上部側が、踏段2の両側に立設された欄干9の上端部に沿って移動する。また、移動手摺8は、エスカレーターの各乗降口において上下に反転され、下部側が、踏段2の両側に設けられたスカートガード内等に配置される。
【0022】
10は移動手摺8を駆動するための手摺駆動装置である。手摺駆動装置10は、駆動ローラ11及び加圧ローラ12(図1においては、共に図示せず)を備えた摩擦駆動方式によって移動手摺8を駆動する。即ち、手摺駆動装置10は、駆動ローラ11と加圧ローラ12とによって移動手摺8を上下から挟み込むことにより、この挟み込んだ状態で駆動ローラ11を回転させ、移動手摺8との間の摩擦力を利用して移動手摺8を駆動する。なお、駆動の際、駆動ローラ11は移動手摺8の内側面に、加圧ローラ12は移動手摺8の外側面(乗客が把持する把持面)に接触する。
【0023】
また、13は踏段駆動用スプロケット4と同軸に設けられた手摺駆動用スプロケット、14は手摺駆動用スプロケット13の回転力を手摺駆動装置10に伝達するための手摺チェーンである。即ち、駆動電動機5の駆動力によって手摺駆動用スプロケット13が踏段駆動用スプロケット4とともに回転することにより、手摺チェーン14を介してその駆動力が手摺駆動装置10に伝達される。そして、移動手摺8は、手摺駆動装置10によって駆動され、踏段2に同期して上下乗降口間を循環移動する。
【0024】
次に、上記移動手摺8について具体的に説明する。
図2はこの発明の実施の形態1におけるマンコンベアの移動手摺を示す断面図、図3は移動手摺に使用される帆布の構成を示す正面図、図4は移動手摺に使用される帆布の構成を示す断面図である。なお、図3及び図4(a)は移動手摺を製造する前の帆布の状態を、図4(b)は移動手摺を製造した後の帆布の状態を示している。また、図5は図1のA−A矢視を示す図、図6は図1のB−B矢視を示す図である。
【0025】
移動手摺8は、横(短手方向)断面が略C字状を呈しており、上記手摺駆動装置10による駆動と案内レール15による走行の案内とが、内側面を介して行われる。即ち、移動手摺8には、その内側面に、十分な駆動力を発生させるための高い摩擦特性(摩擦係数)と、走行時の走行抵抗(案内レール15との摺動抵抗)を低減させるための低い摩擦特性(摩擦係数)との双方の機能が要求されている。
【0026】
本実施の形態における移動手摺8は、本体樹脂部16、抗張体17、帆布18により、その要部が構成される。
本体樹脂部16は、移動手摺8の要部を構成するものであり、横断面が略C字状を呈し、無端状に形成されている。本体樹脂部16は、例えば、ゴムやポリウレタン等の樹脂部材によって構成されている。なお、図2等では、本体樹脂部16が一種類の弾性体からなる場合を一例として示している。しかし、本体樹脂部16の構成はこのようなものに限られる訳ではなく、移動手摺8に付与する機能等に合わせて、本体樹脂部16を複数の樹脂層によって構成しても構わない。
【0027】
抗張体17は、移動手摺8に所定の引張強度を付与し、その伸びを防止するためのものである。抗張体17は、例えば、スチールテープや鋼製のワイヤを縒り合わせたものからなり、本体樹脂部16の内部に、その長手に沿って設けられている。なお、19は複数の抗張体17を一体化させるための固定用樹脂を示している。
【0028】
帆布18は、移動手摺8に対して、摩擦特性に関する上記双方の機能を付与するために備えられたものである。先ず、図3及び図4(a)を参照し、移動手摺8を製造(例えば、押し出し成形)する前の帆布18の状態、即ち、帆布18単体としての構成について具体的に説明する。
【0029】
帆布18は、基布20と摺動布21との二層構造を有している。
基布20は、所定の幅及び長さを有する布からなり、少なくとも二種類の繊維20a及び20bを用いて織られている。繊維20aは、基布20の要部を構成し、本体樹脂部16を構成する樹脂との接着性に優れた特性を有している。また、繊維20aは、移動手摺8を製造(例えば、押し出し成形)する時の温度でも溶融しない材質の糸からなる。例えば、押し出し成形時の温度(180乃至230℃)でも溶出しないポリエステル繊維等が、繊維20aとして好適である。
【0030】
一方、繊維20bは、少なくともその一部が、基布20の表面(移動手摺8の内側面側の面)に露出するように、或いは、基布20の表面に極めて近い位置に配置されるように、織り込まれている。繊維20bは、移動手摺8を製造する時の温度で溶融する材質の糸、例えば、本体樹脂部16を構成する樹脂と同種の材質の熱可塑性糸からなる。具体的には、押し出し成形時の温度で溶出するポリウレタン繊維等が、繊維20bとして好適である。
【0031】
また、摺動布21は、基布20に対して二層織りされることにより、基布20の表面の一部を覆うように、基布20に設けられている。なお、摺動布21は、移動手摺8が走行する際の走行抵抗を低減させるためのものである。このため、摺動布21は、移動手摺8としての使用時に、駆動ローラ11に接触することなく案内レール15にのみ接触するように、駆動ローラ11が帆布18に接触する部分(帆布18(基布20)の中央部)には配置されず、その両側に、基布20の長手に渡って配置される。
【0032】
摺動布21は、案内レール15に対する摺動抵抗を低減させるため、少なくともその一部に、上記繊維20bよりも低い摩擦特性を有する所定の繊維を用いて織られている。例えば、摺動布21の上記繊維として、フッ素樹脂繊維等の極めて低い摩擦特性を有するものが用いられる。また、移動手摺8の走行抵抗を更に低減させるため、摺動布21は、例えば、上記低い摩擦特性を有する繊維が、その表面になるべく多く現れるように、且つ、その長手が摺動布21(帆布18)の長手方向を向くように、織り込まれる。
【0033】
移動手摺8の製造に際しては、先ず、図2に示す移動手摺8と同じ構成を有する長尺の手摺本体を製作した後、この手摺本体を所定の長さに切断してその両端部を接続することにより、無端状(環状)の移動手摺8を完成させる。
【0034】
例えば、上記手摺本体を押し出し成形によって製造する場合、先ず、固定用樹脂19によって一体化された抗張体17と、上記構成の帆布18とを用意しておく。そして、帆布18がその内側面に、抗張体17が内部に配置されるようにして、横断面C字状の手摺本体を押し出し成形によって成形する。この時、帆布18は、基布20の裏面側が、溶融した樹脂(ポリウレタンエラストマー等)と接着され、手摺本体の成形後は、本体樹脂部16と一体化されて強固に固定される。また、基布20内の繊維20bは、押し出し成形時の熱によって溶融して広がり、手摺本体の成形時或いは成形後に、基布20の内部及び基布20の表面側で凝固する。
【0035】
このようにして得られた移動手摺8(手摺本体)は、図2に示すように、基布20が本体樹脂部16の内側面に、その長手に渡って設けられる。そして、繊維20bが溶融及び凝固することによって形成された高摩擦体22が、C字状を呈する本体樹脂部16の開口に対向するようにその長手に渡って配置され、この高摩擦体22の両側に、摺動布21が本体樹脂部16の長手に渡って配置される。
【0036】
なお、移動手摺8の製造時、基布20内の繊維20bは、基布20の表面全体に溶出するが、摺動布21が設けられた部分では、基布20と摺動布21との境界面において溶出樹脂がせき止められ、その樹脂が摺動布21の表面まで達することはない。このため、本構成の移動手摺8をエスカレーターにおいて使用した場合、案内レール15を、高摩擦体22に接触させることなく摺動布21の表面にのみ接触させることができ、移動手摺8の走行抵抗を大幅に低減させることが可能となる。また、駆動ローラ11は、摺動布21に接触することなく、(摺動布21よりも)高い摩擦特性を有する高摩擦体22にのみ接触するため、移動手摺8を駆動するための十分な駆動力を得ることも可能となる。
【0037】
本実施の形態における移動手摺8では、摺動布21が基布20に対して二層織りされ、基布20が本体樹脂部16に強固に固定されている。このため、摺動布21にフッ素樹脂繊維等の極めて低い摩擦特性を有する繊維を用いた場合であっても、その固定を容易且つ確実に行うことができる。
【0038】
また、上記構成の帆布18であれば、従来技術のように、帆布に多数の貫通孔を形成することなく、駆動のための高摩擦体22を移動手摺8の内側面に形成することができる。このため、帆布18の強度の低下や型崩れによる寸法変化を確実に防止することができ、安定した製品の供給が可能となる。なお、本実施の形態では、繊維20bとして、本体樹脂部16を構成する樹脂と同種の材質の熱可塑性糸を用いている(即ち、本体樹脂部16を構成する樹脂と同質の樹脂によって高摩擦体22を構成している)ため、手摺本体の製造時に、繊維20bの溶融が不十分になることがなく、移動手摺8の内側面の所望の位置に、確実に高摩擦体22を成形することができる。
【0039】
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2におけるマンコンベアの移動手摺の図3相当図、図8はこの発明の実施の形態2におけるマンコンベアの移動手摺の図4相当図である。本実施の形態では、上記効果を損なうことなく、帆布18の強度を更に高めるための構成について説明する。
【0040】
本実施の形態における帆布18は、基布23と摺動布21及び駆動布24との二層構造を有している。
基布23は、所定の幅及び長さを有する布からなり、少なくともその一部に、本体樹脂部16を構成する樹脂との接着性に優れた所定の繊維を用いて織られている。例えば、押し出し成形時の温度(180乃至230℃)でも溶出しないポリエステル繊維等が、基布23の繊維として好適である。
【0041】
駆動布24は、基布23に対して二層織りされることにより、基布23の表面の一部を覆うように、基布23に設けられている。駆動布24は、駆動ローラ11が帆布18に接触する部分(帆布18(基布23)の中央部)に配置されている。
【0042】
具体的に、駆動布24は、少なくとも二種類の繊維24a及び24bを用いて織られている。繊維24aは、移動手摺8を製造(例えば、押し出し成形)する時の温度でも溶融しない材質の糸からなり、駆動布24の要部を構成する。例えば、押し出し成形時の温度(180乃至230℃)でも溶出しないポリエステル繊維等が、繊維24aとして好適である。
【0043】
繊維24bは、少なくともその一部が、駆動布24の表面(移動手摺8の内側面側の面)に露出するように、或いは、駆動布24の表面に極めて近い位置に配置されるように、織り込まれている。繊維24bは、移動手摺8を製造する時の温度で溶融する材質の糸、例えば、本体樹脂部16を構成する樹脂と同種の材質の熱可塑性糸からなる。具体的には、押し出し成形時の温度で溶出するポリウレタン繊維等が、繊維24bとして好適である。
【0044】
なお、摺動布21の構成は、実施の形態1と同様である。摺動布21は、基布23に対して二層織りされることにより、基布23の表面の一部を覆うように、基布23に設けられている。また、摺動布21は、少なくともその一部に、フッ素樹脂繊維等の、上記繊維24bよりも低い摩擦特性を有する所定の繊維を用いて織られており、駆動布24の両側に配置されている。
【0045】
そして、移動手摺8の製造に際しては、例えば、帆布18がその内側面に、抗張体17が内部に配置されるようにして、横断面C字状の手摺本体を押し出し成形によって成形する。この時、帆布18は、基布23の裏面側が、溶融した樹脂(ポリウレタンエラストマー等)と接着され、手摺本体の成形後は、本体樹脂部16と一体化されて強固に固定される。また、駆動布24内の繊維24bは、押し出し成形時の熱によって溶融して広がり、手摺本体の成形時或いは成形後に、駆動布24の内部及び駆動布24の表面側で凝固する。
【0046】
このようにして得られた移動手摺8(手摺本体)は、基布23が本体樹脂部16の内側面に、その長手に渡って設けられる。そして、繊維24bが溶融及び凝固することによって形成された高摩擦体25が、C字状を呈する本体樹脂部16の開口に対向するようにその長手に渡って配置され、この高摩擦体25の両側に、摺動布21が本体樹脂部16の長手に渡って配置される。
【0047】
なお、移動手摺8の製造時に溶融した駆動布24内の繊維24bは、駆動布24の表面全体に溶出するが、摺動布21が設けられた部分では、その境界面において溶出樹脂がせき止められる。このため、この溶出樹脂は、駆動布24との境界部分のみ、摺動布21の表面に僅かに進入するが、他の部分においては、摺動布21の表面に達することはない。なお、本構成の帆布18を使用する場合は、例えば、案内レール15の上面中央部に、凹状の窪みを形成しておけば良い。かかる構成を有することにより、摺動布21よりも高い摩擦特性を有する高摩擦体25が案内レール15に接触してしまうことを確実に防止することができる。
【0048】
その他の構成は、実施の形態1と同様であり、かかる構成を有することにより、実施の形態1と同様の効果を奏することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 トラス
2 踏段
3 踏段チェーン
4 踏段駆動用スプロケット
5 駆動電動機
6 減速機
7 制御盤
8 移動手摺
9 欄干
10 手摺駆動装置
11 駆動ローラ
12 加圧ローラ
13 手摺駆動用スプロケット
14 手摺チェーン
15 案内レール
16 本体樹脂部
17 抗張体
18 帆布
19 固定用樹脂
20、23 基布
20a、20b、24a、24b 繊維
21 摺動布
22、25 高摩擦体
24 駆動布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面C字状を呈し、無端状に形成された本体樹脂部と、
前記本体樹脂部の内側面に、前記本体樹脂部の長手に沿って設けられた基布と、
前記基布の表面の一部を覆うように前記基布に設けられた摺動布と、
前記基布の表面の他の一部を覆うように前記基布に設けられた、前記摺動布よりも高い摩擦特性を有する高摩擦体と、
を備え、
前記高摩擦体は、前記基布を構成していた一部の繊維が、溶融した後に前記基布の表面側で凝固することによって形成されたことを特徴とするマンコンベアの移動手摺。
【請求項2】
横断面C字状を呈し、無端状に形成された本体樹脂部と、
前記本体樹脂部の内側面に、前記本体樹脂部の長手に沿って設けられた基布と、
前記基布の表面の一部を覆うように前記基布に設けられた摺動布と、
前記基布の表面の他の一部を覆うように前記基布に設けられた駆動布と、
前記駆動布の表面側に設けられた、前記摺動布よりも高い摩擦特性を有する高摩擦体と、
を備え、
前記高摩擦体は、前記駆動布を構成していた一部の繊維が、溶融した後に前記駆動布の表面側で凝固することによって形成されたことを特徴とするマンコンベアの移動手摺。
【請求項3】
前記高摩擦体は、前記本体樹脂部を構成する樹脂と同質の樹脂からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマンコンベアの移動手摺。
【請求項4】
前記基布は、少なくともその一部に、ポリエステル繊維を有し、
前記摺動布は、少なくともその一部に、フッ素繊維を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のマンコンベアの移動手摺。
【請求項5】
前記高摩擦体は、C字状を呈する前記本体樹脂部の開口に対向するように、前記本体樹脂部の長手に渡って配置され、
前記摺動布は、前記高摩擦体の両側に、前記本体樹脂部の長手に渡って配置された
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のマンコンベアの移動手摺。
【請求項6】
横断面C字状を呈する長尺の本体樹脂部と、
前記本体樹脂部の内側面に、前記本体樹脂部の長手に沿って設けられた基布と、
前記基布の表面の一部を覆うように前記基布に設けられた摺動布と、
前記基布の表面の他の一部を覆うように前記基布に設けられた、前記摺動布よりも高い摩擦特性を有する高摩擦体と、
を備え、
前記高摩擦体は、前記基布を構成していた一部の繊維が、溶融した後に前記基布の表面側で凝固することによって形成されたことを特徴とするマンコンベア用手摺。
【請求項7】
横断面C字状を呈する長尺の本体樹脂部と、
前記本体樹脂部の内側面に、前記本体樹脂部の長手に沿って設けられた基布と、
前記基布の表面の一部を覆うように前記基布に設けられた摺動布と、
前記基布の表面の他の一部を覆うように前記基布に設けられた駆動布と、
前記駆動布の表面側に設けられた、前記摺動布よりも高い摩擦特性を有する高摩擦体と、
を備え、
前記高摩擦体は、前記駆動布を構成していた一部の繊維が、溶融した後に前記駆動布の表面側で凝固することによって形成されたことを特徴とするマンコンベア用手摺。
【請求項8】
基布と、
前記基布の表面の一部を覆うように前記基布に設けられた摺動布と、
を備え、
前記基布は、
移動手摺製造時の温度で溶融しない第1繊維と、
移動手摺製造時の温度で溶融する第2繊維と、
を用いて織られ、
前記摺動布は、前記第2繊維よりも低い摩擦特性を有する第3繊維を用いて織られた
ことを特徴とする移動手摺用帆布。
【請求項9】
前記第2繊維は、前記基布の表面に露出するように織り込まれたことを特徴とする請求項8に記載の移動手摺用帆布。
【請求項10】
基布と、
前記基布の表面の一部を覆うように前記基布に設けられた摺動布と、
前記基布の表面の他の一部を覆うように前記基布に設けられた駆動布と、
を備え、
前記駆動布は、
移動手摺製造時の温度で溶融しない第1繊維と、
移動手摺製造時の温度で溶融する第2繊維と、
を用いて織られ、
前記摺動布は、前記第2繊維よりも低い摩擦特性を有する第3繊維を用いて織られた
ことを特徴とする移動手摺用帆布。
【請求項11】
前記第2繊維は、前記駆動布の表面に露出するように織り込まれたことを特徴とする請求項10に記載の移動手摺用帆布。
【請求項12】
前記第1繊維としてポリエステル繊維が用いられ、
前記第2繊維としてポリウレタン繊維が用いられ、
前記第3繊維としてフッ素繊維が用いられた
ことを特徴とする請求項8から請求項11の何れかに記載の移動手摺用帆布。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−106821(P2012−106821A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255948(P2010−255948)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】