説明

マンコンベアの移動手摺及びマンコンベア用手摺

【課題】摩擦特性の極めて低い繊維を帆布に利用した場合であっても、この帆布の固定を容易に且つ確実に行うことができるマンコンベアの移動手摺を提供する。
【解決手段】移動手摺は、横断面C字状を呈する無端状に形成された本体樹脂部と、本体樹脂部の内側面に、本体樹脂部の長手に沿って設けられた帆布18とを備える。そして、この帆布18を、本体樹脂部に設けられた基布20と、基布20に設けられた、基布20よりも低い摩擦特性を有する摺動布21との二層に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレーターや動く歩道等のマンコンベアで使用される移動手摺と、マンコンベアでの使用を目的としたマンコンベア用手摺とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターや動く歩道といったマンコンベアでは、一般に、横断面C字状の無端状を呈する移動手摺が使用されている。この移動手摺は、踏段上の乗客が安全のために掴むものであり、上記踏段と同期するように駆動され、また、案内レール等によってその走行が案内されている。
【0003】
上記構成の移動手摺を備えたマンコンベアでは、一般に、移動手摺の駆動と走行の案内とが、その内側面(内側面に設けられた帆布)を介して行われている。このため、移動手摺には、その内側面に、十分な駆動力を発生させるための高い摩擦特性(摩擦係数)と、走行時の摺動抵抗を低減させるための低い摩擦特性(摩擦係数)との双方の機能を備えることが要求される。
【0004】
このような事情に鑑み、マンコンベアの移動手摺として、その内側面(の帆布)に、部分的に低い摩擦特性を備えさせたものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
具体的に、特許文献1に記載のものでは、移動手摺の内側面に綿やポリエステル等からなる帆布を設けるとともに、この帆布のうち、案内レールに案内される部分に、低摩擦材料からなる皮膜を施している。なお、皮膜材料としては、エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン等が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−522185
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のものでは、帆布の表面の一部に、低摩擦材料からなる皮膜を形成しなければならない。このため、帆布を製作する際に、布を織る工程の他に、上記低摩擦材料を塗布する工程が必要になり、加工費が増大するといった問題があった。また、帆布に皮膜を形成するため、その皮膜に斑が生じたり、移動手摺の長期使用によって皮膜の一部が摩耗或いは剥がれたりする恐れもあった。
【0007】
なお、出願人は、上述のような問題を考慮し、移動手摺の内側面に低摩擦特性機能を付与するため、帆布にフッ素樹脂繊維を利用することを既に提案している(特願2008−281521)。
【0008】
フッ素樹脂繊維は摩擦係数が極めて小さいために、移動手摺の走行抵抗(案内レールとの摺動抵抗)を低減させるためには好適であるが、移動手摺の本体樹脂部への接着が極めて難しいといった問題がある。このため、かかる帆布を移動手摺の本体樹脂部に固定するためには、帆布への孔開け(特願2008−281521参照)や機械的な締結等が必要になってしまう。しかし、このような固定方法は、フッ素樹脂繊維の一部を切断することになるため、帆布の強度の低下や型崩れによる寸法変形が発生し、安定した製品の供給が困難になる恐れがあった。
【0009】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、摩擦特性の極めて低い繊維を帆布に利用した場合であっても、この帆布の固定を容易に且つ確実に行うことができるマンコンベアの移動手摺と、移動手摺として使用された際に上記目的を達成することができるマンコンベア用手摺とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るマンコンベアの移動手摺は、横断面C字状を呈し、無端状に形成された本体樹脂部と、本体樹脂部の内側面に、本体樹脂部の長手に沿って設けられた帆布と、を備え、帆布は、本体樹脂部に設けられた基布と、基布の表面の一部を覆うように基布に設けられ、基布よりも低い摩擦特性を有する摺動布と、を備えたものである。
【0011】
また、この発明に係るマンコンベア用手摺は、横断面C字状を呈する長尺の本体樹脂部と、本体樹脂部の内側面に、本体樹脂部の長手に沿って設けられた帆布と、を備え、帆布は、本体樹脂部に設けられた基布と、基布の表面の一部を覆うように基布に設けられ、基布よりも低い摩擦特性を有する摺動布と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、摩擦特性の極めて低い繊維を帆布に利用した場合であっても、この帆布の固定を容易に且つ確実に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】マンコンベアの全体構成を示す側面図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるマンコンベアの移動手摺を示す断面図である。
【図3】移動手摺に使用される帆布の正面図である。
【図4】移動手摺に使用される帆布の断面図である。
【図5】帆布の構成を説明するための図である。
【図6】帆布の構成を説明するための図である。
【図7】帆布の構成を説明するための図である。
【図8】帆布の構成を説明するための図である。
【図9】帆布の構成を説明するための図である。
【図10】図1のA−A矢視を示す図である。
【図11】図1のB−B矢視を示す図である。
【図12】他の構成例におけるA−A矢視を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態2におけるマンコンベアの移動手摺の図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0015】
実施の形態1.
図1はマンコンベアの全体構成を示す側面図である。以下においては、マンコンベアの一例として、上下階床間の移動の際に利用されるエスカレーターの構成について具体的に説明し、動く歩道等の他の例については、その説明を省略する。
【0016】
図1において、1は上下階床間に架け渡されたエスカレーターのトラスである。エスカレーターの自重及び積載荷重は、このトラス1によって支持される。2は乗客が上下階床間を移動する際に乗る踏段、3は踏段2が連結された無端状の踏段チェーン、4は踏段チェーン3が巻き掛けられた踏段駆動用スプロケット、5は踏段駆動用スプロケット4等を駆動するための駆動電動機、6は駆動電動機5の出力を減速し、チェーンを介して踏段駆動用スプロケット4を回転させる減速機、7は駆動電動機5の制御等、エスカレーターの運転制御を司る制御盤である。
【0017】
8は上記踏段2と同期するように駆動される移動手摺である。この移動手摺8は無端状を呈しており、その上部側が、踏段2の両側に立設された欄干9の上端部に沿って移動する。また、移動手摺8は、エスカレーターの上下乗降口において上下に反転され、下部側が、踏段2の両側に設けられたスカートガード内等に配置される。
【0018】
10は移動手摺8を駆動するための手摺駆動装置である。この手摺駆動装置10は、駆動ローラ11及び加圧ローラ12(図1においては、共に図示せず)を備えた摩擦駆動方式によって移動手摺8を駆動する。即ち、手摺駆動装置10は、駆動ローラ11と加圧ローラ12とによって移動手摺8を上下から挟み込むことにより、この挟み込んだ状態で駆動ローラ11を回転させ、移動手摺8との間の摩擦力を利用して移動手摺8を駆動する。なお、駆動の際、駆動ローラ11は移動手摺8の内側面に、加圧ローラ12は移動手摺8の外側面(乗客が把持する把持面)に接触する。
【0019】
また、13は踏段駆動用スプロケット4と同軸に設けられた手摺駆動用スプロケット、14は手摺駆動用スプロケット13の回転力を手摺駆動装置10に伝達するための手摺チェーンである。即ち、駆動電動機5の駆動力によって手摺駆動用スプロケット13が踏段駆動用スプロケット4とともに回転することにより、手摺チェーン14を介してその駆動力が手摺駆動装置10に伝達される。そして、移動手摺8は、手摺駆動装置10によって駆動され、踏段2に同期して上下乗降口間を循環移動する。
【0020】
次に、上記移動手摺8について具体的に説明する。
図2はこの発明の実施の形態1におけるマンコンベアの移動手摺を示す断面図、図3は移動手摺に使用される帆布の正面図、図4は移動手摺に使用される帆布の断面図、図5乃至図9は帆布の構成を説明するための図である。また、図10は図1のA−A矢視を示す図、図11は図1のB−B矢視を示す図である。
【0021】
移動手摺8は、横(短手方向)断面が略C字状を呈しており、上記手摺駆動装置10による駆動と案内レール15による走行の案内とが、内側面を介して行われる。即ち、移動手摺8には、その内側面に、十分な駆動力を発生させるための高い摩擦特性(摩擦係数)と、走行時の走行抵抗(案内レール15との摺動抵抗)を低減させるための低い摩擦特性(摩擦係数)との双方の機能が要求されている。
【0022】
本実施の形態における移動手摺8は、上記機能を実現するための構成を有しており、その要部が、例えば、本体樹脂部16、抗張体17 帆布18によって構成されている。
本体樹脂部16は、移動手摺8の要部を構成するものであり、横断面が略C字状を呈し、無端状に形成されている。この本体樹脂部16は、例えば、ゴムやポリウレタン等の樹脂部材によって構成される。なお、図2では、本体樹脂部16が一種類の弾性体からなる場合を一例として示しているが、その構成は図2に示すものに限られる訳ではない。例えば、移動手摺8に付与する機能等に合わせて、本体樹脂部16を複数の樹脂層によって構成しても良い。
【0023】
抗張体17は、移動手摺8に所定の引張強度を付与し、その伸びを防止するためのものである。この抗張体17は、例えば、スチールテープや鋼製のワイヤを縒り合わせたものからなり、本体樹脂部16の内部に、その長手に沿って設けられている。なお、19は複数の抗張体17を一体化させるための固定用樹脂を示している。
【0024】
帆布18は、移動手摺8に対して、上述した摩擦特性の双方の機能を付与するために備えられたものである。この帆布18は、本体樹脂部16の内側面に、本体樹脂部16の長手に沿って設けられている。そして、上記帆布18は、本体樹脂部16に設けられた基布20と、この基布20に設けられた摺動布21との二層構造を有している。
【0025】
基布20は、少なくともその一部に、本体樹脂部16を構成する樹脂との接着性に優れた繊維が用いられており、本体樹脂部16の内側面全体に対向するように配置されている。具体的に、基布20は、縦糸22と横糸23aとが所定の織り方で織られた織物からなる。なお、縦糸22はその長手が本体樹脂部16の長手方向に配置された糸、また、横糸23aはその長手が本体樹脂部16の短手方向に配置された糸からなり、縦糸22及び横糸23aとして、例えば、ポリエステル繊維等が用いられる。
【0026】
図5は上記基布20の織り方の一例を示したものである。図5に示す織り方では、複数本の縦糸22を一束としたものを一部に設け、この一束としたもの及びしないもの(縦糸22)と横糸23aとを交互に織るようにしている。即ち、縦糸22が、横糸23aの表面側(移動手摺8の内側面を形成する側)及び裏面側(本体樹脂部16に対向する側)を交互に通過するのに対し、横糸23aは、その一部(上記複数本の縦糸22を一束とした部分)において、縦糸22の表面側或いは裏面側を複数本続けて通過する。
【0027】
かかる基布20の織り方は、帆布18の形状を安定させ、且つ、本体樹脂部16に対する固定を強固にするために好適なものである。即ち、かかる織り方であれば、上記一束とした部分において各糸の拘束を緩和させることができ、その部分の縦糸22及び横糸23aの間に隙間が形成され易くなる。このため、基布20に対して、溶融した本体樹脂部16の樹脂を容易に浸透及び通過させることが可能となり、基布20(帆布18)を本体樹脂部16に対して強固に固定することができるようになる。また、基布20として、樹脂に対する接着性が優れたポリエステル繊維のみを使用すれば、本体樹脂部16に対する固定をより強固に行うことも可能となる。
【0028】
なお、図5では、2本の縦糸22を一束とした場合を示しているが、基布20としての実用性を考慮すると、横糸23aが一度に飛び越える縦糸22の本数は、6本以下が好ましい。また、基布20は、溶融した樹脂の浸透性及び通過性を向上させるため、帆布18の型崩れが起きない程度に織り密度を粗くし、縦糸22及び横糸23aの本数を全体的に減らすようにしても良い。
【0029】
一方、上記摺動布21は、移動手摺8が走行する際の走行抵抗を低減させるために備えられたものである。この摺動布21は、基布20の表面の一部を覆うように配置され、基布20よりも低い摩擦特性を有するように構成されている。具体的に、摺動布21は、駆動ローラ11と接触することなく案内レール15にのみ接触するように、駆動ローラ11が帆布18に接触する部分(帆布18の中央部)には配置されず、その両側に、本体樹脂部16の長手に沿って配置されている。
【0030】
なお、基布20の両側の縁部を本体樹脂部16に埋め込んで帆布18を本体樹脂部16の各耳部(横断面C字状の各端部)に強固に固定するため、基布20の両側の縁部には、本体樹脂部16の長手に渡って摺動布21は設けられていない。
【0031】
また、摺動布21は、基布20よりも低い摩擦特性を備えるため、少なくともその一部に、上記基布20を構成する繊維よりも低い摩擦特性を有する所定の繊維を用いて織られている。具体的に、摺動布21は、縦糸24と横糸23bとが所定の織り方で織られた織物からなる。縦糸24は、その長手が本体樹脂部16の長手方向に配置された糸からなり、例えば、フッ素樹脂繊維等の極めて低い摩擦特性を有する繊維が用いられる。また、横糸23bは、その長手が本体樹脂部16の短手方向に配置された糸からなり、上記基布20と同様に、ポリエステル繊維等が用いられる。
【0032】
本実施の形態では、基布20と摺動布21とにおいて、共通の横糸を用いる場合について示している。即ち、基布20の横糸23aと摺動布21の横糸23bとは、同じ一本の糸からなる。かかる構成であれば、基布20と摺動布21との製作を同時に行うことができ、更に後述の絡み糸25を使用すれば、基布20と摺動布21とを同時に且つ一体的に織り上げることができるようになる。
【0033】
図6は上記摺動布21の織り方の一例を示したものである。図6に示す摺動布21は、各縦糸24が、横糸23bの裏面側(基布20の表面に対向する側)よりも表面側(移動手摺8の内側面を形成する側)を多く通過するように織られている。具体的に、各縦糸24は、横糸23bの裏面側を一回通過した後、表面側を二回続けて通過する。そして、縦糸24は、横糸23bの裏面側を通過する位置が、隣接するもの同士で長手方向に一本分ずつずれるように織られている。
【0034】
かかる摺動布21の織り方は、摺動布21(帆布18)の表面になるべく多くの縦糸24が現れるようにしたものである。縦糸24は、低い摩擦特性を有し、且つ、その長手が移動手摺8の走行方向を向くように配置されている。このため、縦糸24を摺動布21の表面側に多く配置すれば、それだけ移動手摺8の走行抵抗を低減させることができる。なお、図6に示すものでは、各縦糸24が横糸23bの表面側を2本続けて飛び越える場合を示しているが、摺動布21としての実用性を考慮すると、縦糸24が一度に飛び越える横糸23bの本数は、6本以下が好ましい。
【0035】
また、摺動布21は、その織り密度が、基布20の織り密度よりも密(即ち、基布20の織り密度が粗)になるように、縦糸24と横糸23bとを用いて織られている。基布20は、本体樹脂部16との接着性を向上させるため、その織り密度を粗にして、その全体に多くの隙間(空間、貫通孔等)を形成している。このため、帆布18を本体樹脂部16に固定した際には、本体樹脂部16を構成する一部の樹脂(図2に示す16a)が、基布20を通過してその表面側に到達する。一方、摺動布21の表面側に本体樹脂部16の樹脂が現れると、その樹脂が案内レール15に接触し、移動手摺8の走行抵抗を著しく増加させてしまう恐れがある。このため、摺動布21は、その織り密度を密にすることによって樹脂の通過を防止し、基布20を通過した本体樹脂部16の樹脂が、その表面側に現れることがないようにしている。
【0036】
また、摺動布21は、横糸23bの裏面側を通過する縦糸24の位置が長手方向に一段ずつずれて配置されているため、織り密度を密にすることによって横糸23bが縦糸24の裏側に隠れるようになり、その表面に横糸23bが露出しなくなる。これにより、摺動布21の表面全体を縦糸24のみで構成することが可能となり、移動手摺8の走行抵抗を更に低減させることができるようになる。
【0037】
また、図8及び図9に示す絡み糸25は、摺動布21を基布20の表面側に固定するための糸であり、基布20を構成する繊維と摺動布21を構成する繊維とに絡むように帆布18に織り込まれている。具体的に、本実施の形態における帆布18では、絡み糸25を各縦糸22及び24と同方向に配置し、基布20の横糸23aの裏面側と摺動布21の横糸23bの表面側とを交互に通過させている。
【0038】
摺動布21の要部は、フッ素樹脂繊維等の極めて低い摩擦特性を有する繊維から構成されているため、摺動布21を基布20に接着固定するためには、接着性が優れる下地用樹脂を浸透コーティングする等の特別の処置が必要となる。一方、上記絡み糸25を用いれば、布を織る工程において摺動布21を基布20に固定することができ、帆布18の製作工程を簡略化させることが可能となる。また、絡み糸25の使用によって摺動布21を基布20に対して機械的に結合させることができるため、摺動布21の剥がれを長期に渡って防止することも可能となる。
【0039】
なお、図7は基布20及び摺動布21の各糸の配置を、図8は横糸23a及び23bと絡み糸25との配置を、図9は帆布18の各糸の配置をそれぞれ示している。図7乃至図9においては、各糸の配置を見易くするため、本来重なり合って見える糸を適宜ずらして記載している。
【0040】
この発明の実施の形態1によれば、フッ素樹脂繊維等、摩擦特性の極めて低い繊維を帆布18に利用した場合であっても、帆布18の固定を容易に且つ確実に行うことができるようになる。なお、上記構成を有する移動手摺8であれば、駆動ローラ11に対して、高い摩擦特性を有する基布20(或いは、基布20を通過した本体樹脂部16の樹脂)が接触するため、十分な駆動力を発生させることができる。また、案内レール15に対しては、極めて低い摩擦特性を有する摺動布21が接触するため、走行時の摺動抵抗を十分に低減させることも可能である。
【0041】
なお、図12は他の構成例におけるA−A矢視を示す図であり、案内レール15の上面中央部を他の部分よりも一段低くしたものを示している。かかる構成であれば、案内レール15と基布20の表面との間隔を十分に保つことが可能となり、基布20を通過した本体樹脂部16の樹脂が案内レール15に接触することを確実に防止できる。なお、図12において、移動手摺8については上記と同様の構成を有している。
【0042】
一方、上記構成の移動手摺8を製造するためには、先ず、移動手摺8と同じ横断面を有する長尺の手摺本体を製作すれば良い。即ち、上記手摺本体には、横断面C字状を呈する長尺の本体樹脂部が備えられ、この本体樹脂部の内側面に、上記構成の帆布が設けられている。そして、長尺の手摺本体を製作した後、この手摺本体を所定の長さに切断してその両端部を接合することにより、無端状(環状)の移動手摺8を完成させる。
【0043】
実施の形態2.
図13はこの発明の実施の形態2におけるマンコンベアの移動手摺の図5相当図である。即ち、図13は基布20の織り方の他の例を示している。
【0044】
図13に示す織り方では、縦糸22と横糸23aとが交互に織られている。基布20は、帆布18の形状を安定させ、且つ、本体樹脂部16に対する固定を強固に行う機能を備えることができれば、図13に示すような通常の織り方が採用されていても構わない。かかる場合、各糸の間にできるだけ広い空間を形成して樹脂を浸透及び通過させ易くするため、例えば、帆布18の型崩れが起きない程度に織り密度を粗くしたり、縦糸22や横糸23aの径を細くしたりすることが好ましい。
【符号の説明】
【0045】
1 トラス、 2 踏段、 3 踏段チェーン、 4 踏段駆動用スプロケット、
5 駆動電動機、 6 減速機、 7 制御盤、 8 移動手摺、 9 欄干、
10 手摺駆動装置、 11 駆動ローラ、 12 加圧ローラ、
13 手摺駆動用スプロケット、 14 手摺チェーン、 15 案内レール、
16 本体樹脂部、 16a 樹脂、 17 抗張体、 18 帆布、
19 固定用樹脂、 20 基布、 21 摺動布、 22 縦糸、 23a 横糸、 23b 横糸、 24 縦糸、 25 絡み糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面C字状を呈し、無端状に形成された本体樹脂部と、
前記本体樹脂部の内側面に、前記本体樹脂部の長手に沿って設けられた帆布と、
を備え、
前記帆布は、
前記本体樹脂部に設けられた基布と、
前記基布の表面の一部を覆うように前記基布に設けられ、前記基布よりも低い摩擦特性を有する摺動布と、
を備えたことを特徴とするマンコンベアの移動手摺。
【請求項2】
前記摺動布は、少なくともその一部に、前記基布を構成する繊維よりも低い摩擦特性を有する繊維を用いて織られたことを特徴とする請求項1に記載のマンコンベアの移動手摺。
【請求項3】
前記基布は、少なくともその一部に、前記本体樹脂部を構成する樹脂との接着性に優れた繊維を用いて織られたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマンコンベアの移動手摺。
【請求項4】
前記摺動布は、前記本体樹脂部の長手に沿って前記基布に設けられ、
前記基布は、前記本体樹脂部の長手に渡り、その中央部と両側の縁部とに前記摺動布が設けられていない
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のマンコンベアの移動手摺。
【請求項5】
前記摺動布は、
その長手が前記本体樹脂部の長手方向に配置された縦糸と、
その長手が前記本体樹脂部の短手方向に配置された横糸と、
を有し、
前記縦糸が、前記横糸の裏面側よりも表面側を多く通過するように織られたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のマンコンベアの移動手摺。
【請求項6】
前記摺動布は、前記縦糸として、前記基布を構成する繊維よりも低い摩擦特性を有する繊維が用いられ、その表面に前記横糸が露出しないように織られたことを特徴とする請求項5に記載のマンコンベアの移動手摺。
【請求項7】
前記基布は、
その長手が前記本体樹脂部の長手方向に配置された縦糸と、
その長手が前記本体樹脂部の短手方向に配置された横糸と、
を有し、
前記縦糸が、前記横糸の表面側及び裏面側を交互に通過し、
前記横糸が、少なくともその一部において、複数本の前記縦糸の表面側或いは裏面側を続けて通過するように織られたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のマンコンベアの移動手摺。
【請求項8】
前記基布は、その長手が前記本体樹脂部の長手方向に配置された第1縦糸を有し、
前記摺動布は、その長手が前記本体樹脂部の長手方向に配置された、前記第1縦糸よりも低い摩擦特性を有する第2縦糸を有し、
前記基布と前記摺動布とは、共通の横糸を用いて織られたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のマンコンベアの移動手摺。
【請求項9】
前記基布の織り密度は、前記摺動布の織り密度よりも粗いことを特徴とする請求項1から請求項8の何れかに記載のマンコンベアの移動手摺。
【請求項10】
前記摺動布は、前記基布を構成する繊維と前記摺動布を構成する繊維とに絡められた絡み糸により、前記基布に固定されたことを特徴とする請求項1から請求項9の何れかに記載のマンコンベアの手摺装置。
【請求項11】
前記基布は、ポリエステル繊維のみを用いて織られたことを特徴とする請求項1から請求項10の何れかに記載のマンコンベアの移動手摺。
【請求項12】
前記摺動布は、フッ素樹脂繊維を用いて織られたことを特徴とする請求項1から請求項11の何れかに記載のマンコンベアの移動手摺。
【請求項13】
横断面C字状を呈する長尺の本体樹脂部と、
前記本体樹脂部の内側面に、前記本体樹脂部の長手に沿って設けられた帆布と、
を備え、
前記帆布は、
前記本体樹脂部に設けられた基布と、
前記基布の表面の一部を覆うように前記基布に設けられ、前記基布よりも低い摩擦特性を有する摺動布と、
を備えたことを特徴とするマンコンベア用手摺。
【請求項14】
前記摺動布は、少なくともその一部に、前記基布を構成する繊維よりも低い摩擦特性を有する繊維を用いて織られたことを特徴とする請求項13に記載のマンコンベア用手摺。
【請求項15】
前記基布は、少なくともその一部に、前記本体樹脂部を構成する樹脂との接着性に優れた繊維を用いて織られたことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載のマンコンベア用手摺。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−42413(P2011−42413A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189686(P2009−189686)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】