説明

マンゴ果肉の微粉末製造方法

【課題】本発明は、高級果物としては適し難い形状、色彩等を有する低級品マンゴを加工して、その栄養素、香味、食味を損なうことなく、全果汁を含むマンゴ果肉の微粉末となし、製菓を含む調理用材料として活用するためのマンゴ果肉の微粉末製造方法を提供する。
【解決手段】粗カットしたマンゴ果肉を粉砕してピューレにし、次いで前記ピューレにフリーズドドライを施して顆粒を形成し、次いで前記顆粒状マンゴ果肉に対して気流式微粉砕を施すことによりマンゴ果肉微粉末を得ることを特徴とし、また、顆粒状マンゴ果肉に1〜5wt%のトレハロース粉末を添加した後に微粉砕をすることを特徴とする。または、前記ピュレに1〜5wt%のトレハロース粉末を添加して溶解した後に、フリーズドドライを施して顆粒を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンゴ果肉の微粉末製造方法に関し、詳しくは生マンゴ果肉の有する栄養素、香味、食味を損する事無く、製菓を主体とする調理材料に簡易に使用できるマンゴ果肉の微粉末の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マンゴは、嗜好品の代表的な高級果物として、その香味、食味が賞味されて、その生産量が拡大し、生産地域も亜熱帯である沖縄、南九州にとどまらず、温室栽培が可能なことから北海道でも栽培されてきている。マンゴの果肉は多汁で、独特のマンゴ臭である甘い香りがあり、そして濃厚な甘味を有する。その栄養素は、βカロテンを主体とするビタミンAが他の果物に比べて多く、またビタミンCやカリウム、カルシウムなどのミネラル成分も多く含まれる。また、マンゴは、本来の果肉を賞味する高級果物として扱われるものの他に、低級品の果肉をペースト状にして、プリン、アイスクリーム、又はジャム、ゼリーなどの菓子類、チャツネなどの調理材料として利用されている。
【0003】
このように、高級果物として流通するマンゴは、生産したマンゴ果実から形状、色彩等から厳選されたもので量的に一部であり、他のマンゴ果実は果肉ペーストとして、製菓や調理の材料として使われているのが現状である。
【0004】
近年、野菜や果物を粉末化することにより、製菓や調理の材料として、取り扱い易く、その材料の風味、匂い等を生かした粉末製造技術が出現してきている。その例として、搾汁した後の温州ミカンを原料として、粉砕機により液状化した後、フリーズドドライ乾燥機により乾燥してパウダーを得る製造方法が先行技術として開示されている。(文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−17822公報(〔0018〜0021〕
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この先行技術で得たフリーズドドライ粉末は多孔質のため吸湿性があり、また酸化し易いもので、製菓や調理の材料として最適なものとは言い難い。また、全果汁を含むマンゴ果肉を原料として、微粉末を得る製造方法については良く知られていない。
【0007】
本発明は、これらの問題を解決したものであって、全てのマンゴが持つ栄養素、香味、食味を活用すべく、高級果物として流通し難い形状、色彩等を有する低級品マンゴを加工して、その栄養素、香味、食味を損なうことなく、全果汁を含むマンゴ果肉を微粉末と成し、製菓を含む調理材料として活用するためにマンゴ果肉の微粉末製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係るマンゴ果肉の微粉末製造方法は、粗カットしたマンゴ果肉を粉砕してピューレにし、次いで前記ピューレにフリーズドドライを施して顆粒を形成し、次いで前記顆粒状マンゴ果肉に対して気流式微粉砕を施すことによりマンゴ果肉微粉末を得ることを特徴とする。
【0009】
本方法は、マンゴ果肉を粉砕してピューレにするだけでは、粘度の高い果汁が邪魔して、固形分を数10μm以下に微粉砕し難い問題を解決したものであって、粗粉砕したピューレをフリーズドドライにして果汁・固形分を濃縮した顆粒状の果肉を得、該顆粒に乾式粉砕である気流式粉砕を施すことにより数10μmから数μmの粒度範囲のマンゴ果肉の微粉末を得るものである。また、本方法によれば、香味と甘味に富んだマンゴ果汁は水分のみが除去されて該マンゴ果肉微粉末に包含することができる。
【0010】
そこで、本構成方法によれば、数10μmから数μmの粒度範囲のマンゴ果肉の乾燥した微粉末を得ることができる。本微粉末は多孔質でなく、粒度範囲も狭いので、酸化等により変質し難く、また製菓や調理材料として使えばマンゴ果肉が本来有している栄養素、香味、食味を製菓や調理において発現することができる。
【0011】
請求項2に係るマンゴ果肉の微粉末製造方法は、請求項1に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法において、前記顆粒状マンゴ果肉に対して気流式微粉砕を施す際に、顆粒状マンゴ果肉に1〜5wt%のトレハロース粉末を添加した後に微粉砕をすることを特徴とする。
【0012】
トレハロースは二つのグルコースがグリコシド結合してできた二糖類であって、常温で白色の結晶で水によく溶け、砂糖の約半分の甘味を有する。また、強い保水力があり、糖質の劣化防止、果物等の変色を防止する力がある。このトレハロースをフリーズドドライ後の顆粒に添加する構成をとることにより、得られるマンゴ果肉の微粉末にマンゴの糖分によるダマ(擬似粒子)ができるのを防止する。そして微粉末成品を製菓や調理材料への添加・混合を簡易に一様にすることができる。
【0013】
請求項3に係るマンゴ果肉の微粉末製造方法は、請求項1に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法において、前記ピューレに1〜5wt%のトレハロース粉末を添加して溶解した後に、フリーズドドライを施して顆粒を形成することを特徴とする。
【0014】
このトレハロースを添加する構成をとることにより、ピューレからフリーズドドライした顆粒の表面にトレハロース分子が被覆されて、次の微粉砕の際に微粉末にダマができにくくなると共に、微粉砕処理において粉砕機器の壁面の付着防止をして順調な粉砕処理が行える。トレハロースの添加が1wt%未満の場合は、トレハロースの効果が現れにくく、また5wt%を超えて添加しても、費用対効果の上昇が期待できない。
【0015】
請求項4に係るマンゴ果肉の微粉末製造方法は、請求項1または請求項2のいずれかに記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法において、前記気流式微粉砕が、 閉回路循環気流方式を持つ粉砕・分級方式を採用して行うことを特徴とする。
【0016】
マンゴ果肉を微粉砕するに際しては、本来マンゴ果肉の有する香味、甘味、食味や栄養素を損なわないように、できるだけ加熱を伴わないこと、微粉末の粒度範囲を広くし過ぎないこと、香気を散脱しないために処理する搬送気流量を過大にしないこと等が求められ、これらを満足するために、閉回路循環気流方式を持つ粉砕・分級方式を採用した。粉砕に際しては、原料同士の同体摩擦による粉砕作用を適用するのが、得られる微粉末の形状が角張っていなくて丸みを帯びる点で好ましく、この点で旋回気流中又は衝突気流中での顆粒同士の衝突・摩擦による粉砕が好ましい。よって、この粉砕には複数段の回転羽根を持った気流式粉砕機や旋回するジェット気流を用いたジェット気流粉砕機が好ましい。また、粉砕物の粒度分布を決める粒度分級については、回転気流による遠心力作用を利用した粒度分級が好ましく、この点で気体サイクロンや回転羽根による遠心分級等を採用するのがよい。
【0017】
これらの構成をとることにより、顆粒状マンゴ果肉から粉砕・分級を行い、本来マンゴ果肉の有する香味、甘味、食味や栄養素を維持したマンゴ果肉の微粉末成品を得ることができる。
【0018】
請求項5に係るマンゴ果肉の微粉末製造方法は、ダイス状にカットしたマンゴ果肉を予備乾燥して水分5〜15wt%のダイス状マンゴ果肉を得、次いで前記予備乾燥したダイス状マンゴ果肉に対して熱風気流式微粉砕を施すことによりマンゴ果肉微粉末を得ることを特徴とする。
【0019】
本方法は、高温でない熱風気流を利用した微粉砕方式を採用して、本来マンゴ果肉の有する香味、甘味、食味や栄養素を損なわないようにマンゴ果肉の微粉末を得るもので、微粉砕に掛けるマンゴ果肉をダイス状にサイズを小さくし、かつ果肉水分を高温でない熱風気流を利用して水分を80wt%から5〜15wt%に減らす予備処理を加えることを特徴とする。この構成方法をとることにより、マンゴ果肉から本来マンゴ果肉の有する香味、甘味、食味や栄養素を維持したマンゴ果肉の微粉末成品を得ることができる。
【0020】
請求項6に係るマンゴ果肉の微粉末製造方法は、請求項5に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法において、前記予備乾燥したダイス状マンゴ果肉に対して熱風気流式微粉砕を施す際に、ダイス状マンゴ果肉に1〜5wt%のトレハロース粉末を添加した後に微粉砕をすることを特徴とする。
【0021】
このトレハロースを添加する構成をとることにより、粉砕処理中にマンゴ果肉の粒子表面に微粒のトレハロースが付着するので、マンゴ果肉の微粉末成品にマンゴの糖分によりダマ(擬似粒子)が発生するのを防止し、微粉末成品を製菓や調理材料への添加・混合を一様に、かつ容易にすることができる。
【0022】
請求項7に係るマンゴ果肉の微粉末製造方法は、請求項5又は6に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法において、前記熱風気流式微粉砕が、循環熱風気流方式を持つ閉回路粉砕・分級方式を用いて行うことを特徴とする。
【0023】
マンゴ果肉を微粉砕するに際しては、本来マンゴ果肉の有する香味、甘味、食味や栄養素を損なわないように、できるだけ加熱を伴わないこと、微粉末の粒度範囲を広くし過ぎないこと、香気を散脱しないために処理する搬送気流量を過大にしないこと等が求められ、これを満足するために、閉回路循環気流方式を持つ粉砕・分級方式を採用した。粉砕に際しては、原料同士の同体摩擦による粉砕作用を適用するのが、得られる微粉末の形状が角張っていなくて丸みを帯びる点で好ましく、この点で旋回気流中又は衝突気流中での顆粒同士の衝突・摩擦による粉砕が好ましい。よって、この粉砕には複数段の回転羽根を持った気流式粉砕機や旋回するジェット気流を用いたジェット気流粉砕機が好ましい。また、粉砕物の粒度分布を決める粒度分級は、回転気流による遠心力作用を利用した粒度分級が好ましく、この点で気体サイクロンや回転羽根による遠心分級等を用いることができる。
【0024】
これらの構成をとることにより、ダイス状マンゴ果肉から粉砕・分級を行って本来マンゴ果肉の有する香味、甘味、食味や栄養素を維持したマンゴ果肉の微粉末成品を得ることができる。
【0025】
請求項8に係るマンゴ果肉の微粉末製造方法は、ダイス状にカットしたマンゴ果肉を予備乾燥して水分5〜15wt%のダイス状マンゴ果肉を得、次いで前記予備乾燥したダイス状マンゴ果肉に対してカッティングミル又はカッティングロールによる粉砕を施すことによりマンゴ果肉微粉末を得ることを特徴とする。
【0026】
この構成により粒度0.4〜1.0mm範囲の安定した粒度分布のマンゴ果肉の粉末をえることができる。また、粉砕粒度が粗いために粉砕の摩擦熱による品質劣化を防ぐことができる。これにより、ダイス状マンゴ果肉から粉砕を行って本来マンゴ果肉の有する香味、甘味、食味や栄養素を維持したマンゴ果肉の粉末成品を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る請求項1に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法によれば、数10μmから数μmの粒度範囲のマンゴ果肉の乾燥した微粉末を得ることができる。本微粉末成品は多孔質でなく、粒度範囲も狭いので、酸化等により変質し難く、製菓や調理材料として使えばマンゴ果肉が本来有している栄養素、香味、食味を製菓や調理において発現することができる。
【0028】
本発明に係る請求項2、3に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法によれば、マンゴ果肉の微粉末にマンゴの糖分によりダマが生じるのを防止できる。また、微粉砕処理において粉砕機器の壁面の付着を防止して順調な処理が行え、微粉末成品にダマが生じて混入することを防止し、微粉末成品の品質維持に貢献する。
【0029】
本発明に係る請求項4に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法によれば、閉回路循環気流方式の粉砕・分級処理により、粗粒分のない、かつ混合や溶解が容易であり、また顆粒状マンゴ果肉から本来マンゴ果肉の有する香味、甘味、食味や栄養素を維持したマンゴ果肉の微粉末成品を得ることができる。
【0030】
本発明に係る請求項5に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法によれば、ダイス状のマンゴ果肉の予備乾燥を経由して、マンゴ果肉から本来マンゴ果肉の有する香味、甘味、食味や栄養素を維持したマンゴ果肉の微粉末を得ることができる。また、予備乾燥には、定法の前処理や乾燥設備が流用でき、その場合には設備的に過剰な投資を伴うことがなく製造ができる可能性がある。
【0031】
本発明に係る請求項6に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法によれば、熱風気流式微粉砕を施すことにより、得られるマンゴ果肉の微粉末にマンゴの糖分によりダマ(擬似粒子)ができるのを防止し、微粉末成品を製菓や調理材料への添加・混合を一様に容易にすることができる。
【0032】
本発明に係る請求項7に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法によれば、循環熱風気流方式を持つ閉回路粉砕・分級処理により、粗粒分のない、かつ混合や溶解が容易で、またダイス状マンゴ果肉から本来マンゴ果肉の有する香味、甘味、食味や栄養素を維持したマンゴ果肉の微粉末成品を得ることができる。
【0033】
本発明に係る請求項8に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法によれば、カッティングミル又はカッティングロールによる粉砕処理により、粒度分布の安定した、かつ品質劣化の少ないダイス状マンゴ果肉から本来マンゴ果肉の有する香味、甘味、食味や栄養素を維持したマンゴ果肉の粉末成品を得ることができる。
【0034】
本発明に係る請求項1から8に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法によれば、本来のマンゴが持つ栄養素、香味、食味を活用すべく、高級果物として流通し難い形状、色彩等を有する低級品マンゴでも、本製造方法により加工して、その栄養素、香味、食味を損なうことなく、全果汁を含むマンゴ果肉の微粉末成品を得ることができ、製菓を含む調理用材料として付加価値を上げて活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明の実施するための形態に係るマンゴ果肉の微粉末製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明に係わるマンゴ果肉の微粉末製造方法を実施するための形態について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施するための形態に係るマンゴ果肉の微粉末製造方法のフローチャートである。図1のマンゴ果肉の微粉末製造方法のフローチャートによると、(a)果肉をカットした後、ピューレを作ってフリーズドドライを経由して微粉砕する工程と、(b)果肉をカットした後、予備乾燥を経由して微粉砕する工程と、に分かれる。
【0037】
(a)果肉をカットした後、ピューレを作ってフリーズドドライを経由して微粉砕する工程について説明すると、マンゴ果実を処理する際の方法の一つは、扁平な種子を中心に3枚に切り離し、果皮を皿にみたてて縦横に刻み目をいれて切り離し粗カットした、または、ダイス状のマンゴ果肉を得る。このときに生じる果汁は後工程のピューレに加えることができる。前記のマンゴ果肉はミキサー等により液状化処理してピューレを作る。次いで、このピューレを冷凍皿に小分けして装入し、−30℃の冷凍温度で冷凍状態のピューレ固形塊を得る。次いで、4〜50torrの真空状態、温度50〜70℃で水分を昇華揮発させて、フリーズドドライされたマンゴ果肉を得る。この場合、ピューレに加えた先の果汁はマンゴ果肉に随伴して一体化する。得られたフリーズドドライ後のマンゴ果肉は、多孔質であるが、水分は5%以下となり、微粉砕に適した性状を呈する。
【0038】
マンゴ果肉を微粉砕するに際しては、本来マンゴ果肉の有する香味、甘味、食味や栄養素を損なわないように、できるだけ加熱を伴わないこと、微粉末の粒度範囲を広くし過ぎないこと、香気を散脱しないために処理する搬送気流量を過大にしないことを勘案して、閉回路循環気流方式を持つ粉砕・分級方式が好ましい。粉砕は、原料同士の同体摩擦による粉砕作用を適用するのが、得られる微粉末の形状が角張っていなくて丸みを帯びる点でよく、この点で旋回気流中又は衝突気流中での顆粒同士の衝突・摩擦による粉砕が好ましい。
【0039】
よって、この粉砕には複数段の回転羽根を持った気流式粉砕機(例えば、古河産機システムズ(株)製ドリームミル)や旋回するジェット気流を用いたジェット気流粉砕機(例えば、(株)セイシン企業製やホソカワミクロン(株)製)の使用が好適である。また、粉砕物の粒度分布を決める粒度分級については、回転気流による遠心力作用を利用した粒度分級が好ましく、気体サイクロンや前記ドリームミルのような回転羽根による遠心分級を採用するのがよい。これらの機器による粉砕・分級により、数10μmから数μmの粒度範囲のマンゴ果肉の乾燥した微粉末を得ることができる。本微粉末は多孔質でなく、粒度範囲も狭いので、酸化等により変質し難く、混合や溶解が容易で、製菓や調理材料として使えば、マンゴ果肉が本来有している栄養素、香味、食味を製菓や調理において容易に付加することができる。
【0040】
また、マンゴ果肉ピューレに1〜5wt%のトレハロース粉末を添加して溶解した後に、フリーズドドライを施して顆粒を形成すること、または、フリーズドドライ後の顆粒状マンゴ果肉に対して気流式微粉砕を施す際に、顆粒状マンゴ果肉に1〜5wt%のトレハロース粉末を添加した後に微粉砕をすれば、ピューレからフリーズドドライした顆粒の表面にトレハロースが被覆されて、微粉砕の際に、マンゴの糖分によるダマができにくくなると共に、微粉砕において粉砕機器の壁面の付着を防止して順調な粉砕処理が行なえる。また、別の方法では、このトレハロースをフリーズドドライ後の顆粒に添加する構成をとることにより、得られるマンゴ果肉の微粉末にマンゴの糖分によるダマ(擬似粒子)ができるのを防止する。ここで得られた微粉末成品を製菓や調理材料への添加・混合を一様に容易にすることができる。
【0041】
また、(b)果肉をカットした後、予備乾燥を経由して微粉砕する工程について、(a)工程と異なる部分について説明すると、このマンゴ果肉の微粉末製造方法は、ダイス状にカットしたマンゴ果肉を予備乾燥して水分5〜15wt%のダイス状マンゴ果肉を得、次いで前記予備乾燥したダイス状マンゴ果肉に対して熱風気流式微粉砕を施すことによりマンゴ果肉微粉末を得るものである。また、前記予備乾燥したダイス状マンゴ果肉に対して熱風気流式微粉砕を施す際に、ダイス状マンゴ果肉に1〜5wt%のトレハロース粉末を添加した後に微粉砕をするものである。
【0042】
本方法は、予備乾燥して水分を5〜15wt%に減じたダイス状マンゴ果肉を原料として、高温の熱風を使用しないでも所定の粒度である数10μmから数μmの粒度範囲で、水分が5wt%以下の本来のマンゴ果肉の有する香味、甘味、食味や栄養素を維持したマンゴ果肉の乾燥した微粉末を得るもので、さらにダイス状マンゴ果肉に1〜5wt%のトレハロース粉末を添加することにより、マンゴ果肉の微粉末成品にマンゴの糖分によりダマ(擬似粒子)が発生するのを防止し、製菓や調理材料への添加・混合を一様に、かつ容易にする微粉末成品を得ることができる。また、本方法は、予備乾燥に定法の前処理や乾燥設備が流用でき、その場合には、設備的に過剰な投資を伴うことがなく製造ができる可能性がある。
【0043】
また別の、果肉をカットした後、予備乾燥を経由して粉砕する工程について説明すると、ダイス状にカットしたマンゴ果肉を予備乾燥して水分5〜15wt%のダイス状マンゴ果肉を得、次いで前記予備乾燥したダイス状マンゴ果肉に対してカッティングミル又はカッティングロールによる粉砕を施すことによりマンゴ果肉粉末を得るものである。前記カッティングミル又はカッティングロールによる粉砕は、前者が幾つもの刃が付いた2枚の円盤を向かい合わせて片方を回転させ、刃と刃の間で砕くもので、円盤の間隔差により粉砕粒度の調節が可能であり、相対的に熱発生が抑制される構造である。後者は、一対のカッティングロールは一つのロールを横向きカット溝、もう一つのロールには縦向きにカット溝を備えている。左右のロールの回転速度を変えているのが特徴で、ロールの溝はロール間隔差の圧力で被粉砕物を破砕する。粒子も擂り潰されることなく均一で、ロール式構造で発熱が抑えられる。これにより、粒度分布の安定した、かつ品質劣化の少ないダイス状マンゴ果肉から本来マンゴ果肉の有する香味、甘味、食味や栄養素を維持したマンゴ果肉の粉末成品を得ることができる。また、カッティングミル又はカッティングロールによる粉砕機は、コーヒー豆の粉砕に用いたものを改造し、流用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
果物果肉の微粉末の製造分野で広く適用されるのみならず、根菜等の微粉末製造方法としても利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗カットしたマンゴ果肉を粉砕してピューレにし、次いで前記ピューレにフリーズドドライを施して顆粒を形成し、次いで前記顆粒状マンゴ果肉に対して気流式微粉砕を施すことによりマンゴ果肉微粉末を得ることを特徴とするマンゴ果肉の微粉末製造方法。
【請求項2】
前記顆粒状マンゴ果肉に対して気流式微粉砕を施す際に、顆粒状マンゴ果肉に1〜5wt%のトレハロース粉末を添加した後に微粉砕をすることを特徴とする請求項1に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法。
【請求項3】
前記ピューレに1〜5wt%のトレハロース粉末を添加して溶解した後に、フリーズドドライを施して顆粒を形成することを特徴とする請求項1に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法。
【請求項4】
前記気流式微粉砕が、閉回路循環気流方式を持つ粉砕・分級方式を用いて行うことを特徴とする請求項1又は2又は3に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法。
【請求項5】
ダイス状にカットしたマンゴ果肉を予備乾燥して水分5〜15wt%のダイス状マンゴ果肉を得、次いで前記予備乾燥したダイス状マンゴ果肉に対して熱風気流式微粉砕を施すことによりマンゴ果肉微粉末を得ることを特徴とするマンゴ果肉の微粉末製造方法。
【請求項6】
前記予備乾燥したダイス状マンゴ果肉に対して熱風気流式微粉砕を施す際に、ダイス状マンゴ果肉に1〜5wt%のトレハロース粉末を添加した後に微粉砕をすることを特徴とする請求項5に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法。
【請求項7】
前記熱風気流式微粉砕が、循環熱風気流方式を持つ閉回路粉砕・分級方式を用いて行うことを特徴とする請求項5又は6に記載のマンゴ果肉の微粉末製造方法。
【請求項8】
ダイス状にカットしたマンゴ果肉を予備乾燥して水分5〜15wt%のダイス状マンゴ果肉を得、次いで前記予備乾燥したダイス状マンゴ果肉に対してカッティングミル又はカッティングロールによる粉砕を施すことによりマンゴ果肉微粉末を得ることを特徴とするマンゴ果肉の微粉末製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−239433(P2012−239433A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113229(P2011−113229)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(510158200)株式会社 ダイツウ (17)
【Fターム(参考)】