説明

マンション管理組合総会資料作成システム

【課題】 マンションの共有部分から利益を上げるに際して好適に使用される管理組合総会資料作成システムを提供する。
【解決手段】 マンションの複数の異なる共有部分を第三者に貸与する際の貸与内容について記録した貸与プラン情報ファイル4が記憶部1に記憶され、貸与プラン情報ファイル4には、共有部分の名称、貸与目的及び貸与額と、貸与を行った際に生ずる予想支出及び予想利益が記録されている。選択プログラム5により共有部分を選択する入力が行われ、修繕積立金算入額算出プログラム7により、選択された共有部分について修繕積立金算入額が算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、マンション管理組合の総会資料を作成する際に使用されるシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
分譲マンションでは、個々の住宅が所有し占有している占有部分と、集合住宅の各戸の保有者が共有している共有部分とがある。多くの場合、各所有者によって管理組合が結成され、管理組合において共有部分の管理が行われている。尚、本明細書において、「マンション」とは、「マンションの管理の適性化の推進に関する法律」の第二条第一号におけるものと同様であり、通称される「マンション」の概念よりも広く、いわゆるコーポラティブハウスやテラスハウス、複数棟が一つの団地内に設けられている場合なども含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−207197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
狭い国土を背景として、我が国では都市部を中心としてマンションの建設が盛んに行われてきた。しかしながら、老朽化したマンションでは、建て直しが必要になってきているものの、建て直しには莫大な費用が必要で、各所有者の合意が得られずに頓挫してしまっているケースも多い。建て直しは不要な場合でも、大規模な修繕が必要であるにも関わらず修繕積立金が不足し、必要な修繕が行えなくなってしまっているケースが頻発している。
一般に、分譲マンションにおいては、各所有者によって管理組合が結成され、各所有者から管理費や修繕積立金が徴収される。管理費は、管理業者に業務が委託されている場合、管理組合から管理業者に支払われる。修繕積立金は、建物の部分的な修繕や大規模修繕等のために管理組合において積み立てられる金銭である。
【0005】
修繕積立金は、建築当初は修繕箇所が少ないため不足するということは少ないが、年数が経つうちに不足しがちである。これは、修繕費用についての予測が甘いことに原因がある場合もあるし、マンションを開発したデベロッパーが購入を促すために修繕積立金を安く設定してしまったことに原因がある場合もある。いずれにしても、年数がある程度経つと修繕積立金を増額しなければならないことも多く、ローン返済中の所有者や定年退職をした年金生活者等の場合、大きな負担になってしまうこともしばしばである。
本願の発明は、このような点を解決課題として為されたものであり、マンションの共有部分から利益を上げるに際して好適に使用される管理組合総会資料作成システムを提供する意義を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、記憶部と、演算処理部と、表示部と、プリンタとを有するマンション管理組合総会資料作成システムであって、
記憶部には、マンションの複数の異なる共有部分を第三者に貸与する際の貸与内容について記録した貸与プラン情報ファイルが記憶されており、
貸与プラン情報ファイルは、貸与される個々の共有部分について、当該共有部分の名称と、当該共有部分を第三者に貸与する場合の貸与目的及び貸与額と、当該貸与を行った際に生ずる予想支出及び予想利益とを記録したファイルであり、
記憶部には、選択プログラム、修繕積立金算入額算出プログラム及び算入額出力プログラムがインストールされているとともに、選択用画面ファイルが記憶されており、
選択プログラムは、前記複数の異なる共有部分について個々に選択させる入力を行わせるプログラムであり、
修繕積立金算入額算出プログラムは、選択された共有部分について、貸与プラン情報ファイルから予想利益を読み出して合算することで修繕積立金算入額を算出するプログラムであり、
算入額出力プログラムは、選択プログラムが選択させた選択された共有部分についての前記貸与プラン情報ファイルの内容と、修繕積立金算入額算出プログラムが算出した修繕積立金算入金の額とを表示部に出力してプリンタによって印刷可能とするプログラムであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記記憶部には、将来必要となる修繕費の額と、修繕積立金の名目で各保有者から徴収する徴収額とを記録した積立金情報ファイルが記憶されているとともに、将来における修繕積立金の過不足を予測する積立金過不足シミュレーションプログラムがインストールされており、
積立金過不足シミュレーションプログラムは、将来必要となる修繕費の額を積立金情報ファイルから読み出し、その修繕費に係る修繕が必要となる時期までに徴収される修繕積立金の徴収総額を積立金情報ファイルに記録された徴収額の情報に従って算出するともに、前記修繕積立金算入額算出プログラムが算出した修繕積立金算入額に従い、当該時期までの算入総額を算出し、徴収総額と算入総額とを合算した上で過不足額を算出し、その算出結果を前記表示部に出力して前記プリンタによって印刷可能とするものであるという構成を有する。
【発明の効果】
【0007】
以下に説明する通り、本願の請求項1記載の発明によれば、マンションの共有部分を貸与した場合の修繕積立金算入額が印刷されるので、そのような貸与を管理組合として承諾するかの採決を行うのに好適なものとなる。特に、異なる複数の共有部分の貸与プランが表記され、その貸与プランを全て実行することによってどの程度の修繕積立金算入額となるのかが印刷されるので、異なる複数の共有部分の貸与プランについて一括して総会で承認を得るのに好適なものとなる。
また、請求項2記載の発明によれば、修繕が必要となる時期までに徴収される修繕積立金の徴収総額と、共有部分の貸与によって得られた利益を当該時期まで算入した算入総額とが合算され、修繕費との過不足額が算出されるので、共有部分の貸与によって修繕費が賄えるかどうかを事前に確認することができる。このため、共有部分の貸与について総会で承認を得るのにより好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るマンション管理組合総会資料作成システムの概略構成を示した図である。
【図2】貸与プラン情報ファイルの内容の一例について示した概略図である。
【図3】選択用画面ファイル6によって表示される選択用画面の一例について示した概略図である。
【図4】総会資料として印刷された選択用画面の一例を示す概略図である。
【図5】積立金情報ファイル8の内容について一例を示した概略図である。
【図6】シミュレーション表示フォームの一例について示した概略図であり、積立金過不足シミュレーションプログラム9の実行結果の一例を示している。
【図7】総会資料として印刷されたシミュレーション表示フォームの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本願発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
実施形態のシステムは、マンション管理組合の総会資料の作成システムである。マンション管理組合は、一般に、年に一回程度の総会を行い、重要事項を決議する。本実施形態のシステムは、この総会の際に各組合員(各戸の所有者)に提示される資料の作成の際に使用されるシステムとなっている。
【0010】
図1は、実施形態に係るマンション管理組合総会資料作成システムの概略構成を示した図である。このシステムは、幾つかのプログラムがインストールされたコンピュータによって構成されており、記憶部1と、演算処理部2と、表示部31と、プリンタ32と、入力部33を備えている。コンピュータとしては、ノートパソコンが好ましいが、デスクトップパソコンや、ワークステーションやサーバ等の他のタイプのコンピュータであっても良い。
【0011】
記憶部1は、典型的にはハードディスクであるが、ディスクレスのコンピュータの場合、メモリのような記憶素子である場合もある。演算処理部2はCPUであり、表示部31はディスプレイである。尚、表示部31としては、後述するようにプロジェクタとスクリーンの構成が採用されることもある。、
図1に示すように、記憶部1には、マンションの複数の異なる共有部分を第三者に貸与する際の貸与内容について記録した貸与プラン情報ファイル4が記憶されている。図2は、貸与プラン情報ファイルの内容の一例について示した概略図である。
【0012】
貸与プラン情報ファイル4は、貸与される個々の共有部分について、当該共有部分の名称と、当該共有部分を第三者に貸与する場合の貸与目的及び貸与額と、当該貸与を行った際に生ずる予想支出及び予想利益とを記録したファイルである。
具体的には、貸与プラン情報ファイル4は、Microsoft Excel(Microsoftは、米国Microsoft Corporationの登録商標)のような表計算ソフトによって作成、更新されるファイルとなっている。
【0013】
図2に示すように、貸与プラン情報ファイル4は、所定の位置の行に、各見出しとして、「共有部分No. 」、「共有部分名称」、「貸与目的」、「貸与金額(月額)」、「予想支出」、「予想利益」のテキスト文字が入力されている。そして、「共有部分名称」のセルの列には、「デベロッパープレート」、「エントランス横スペース」、「駐輪場脇スペース」、「屋上」の四つが順に入力されている。そして、「デベロッパープレート」の行の「貸与目的」、「貸与金額(月額)」、「予想支出」、「予想利益」の列には、それぞれ、「屋外広告」、「30,000」、「0」、「30,000」の各テキスト文字又は数字が入力されている。
【0014】
「エントランス横スペース」の行については、図2に示すように、「自販機設置」、「15,000」、「5,000」、「10,000」の各テキスト文字又は数字が入力されている。「駐輪場脇スペース」もほぼ同様である。さらに、「屋上」の行には、「太陽光発電設備設置」、「50,000」、「0」、「50,000」のテキスト文字又は数字の入力がされている。
上記データのうち、「予想支出」は、そのような貸与を行う際に生ずると予想される支出のデータである。例えば貸与目的が自販機設置である場合、自販機が消費する電力の料金等がそれに当たる。「予想利益」については、「予想支出」が0の場合には「貸与金額」のデータがそのまま入力される。0でない場合には、「予想支出」を差し引いたものである。
【0015】
尚、「デベロッパープレート」とは、マンションを開発したデベロッパーの名前のプレートが設けられている場所のことである。この貸与プランは、このプレートを取り外し、第三者に対して屋外広告の据え付け箇所として貸与するプランである。多くの場合、この部分は共有部分であってデベロッパーのプレートを据え付け続けることが義務付けられていることはない。また、デベロッパーが倒産してしまっている場合があり、倒産したデベロッパーのプレートを掲げていることは、マンションの住人にとっては見栄えが悪いものである。この貸与プランは、これらの点を考慮し、デベロッパーのプレートの箇所を有効利用するものである。
また、「太陽光発電設備設置」とは、屋上スペースへの太陽光発電設備設置を第三者に対して許可する貸与プランである。この場合、設備のコストやメンテナンスのコストは、貸与された業者が全て行うことになるので、管理組合側では特にコスト負担(支出)はない。
【0016】
一方、記憶部1には、選択プログラム5がインストールされているとともに、選択用画面ファイル6が記憶されている。
選択プログラム5は、選択用画面ファイル6によって選択用画面を表示部31に表示し、貸与対象の共有部分を選択させるプログラムである。選択プログラム5は、貸与プラン情報ファイル4から情報を読み取って処理することができるプログラムであり、例えば前記のMicrosoft Excelのファイル(.xls形式のファイル)であれば、同社のVBA(Visual Basic for Applications)で書かれたプログラムが一例として挙げられる。
【0017】
図3は、選択用画面ファイル6によって表示される選択用画面の一例について示した概略図である。図3に示す例は、図2に示す例の貸与プラン情報ファイル4を使用して選択用画面を表示したものとなっている。
図3に示すように、この選択用画面では、貸与プラン情報ファイル4に記録された貸与プラン情報が列記され、各々について選択入力欄(この例ではチェックボックス)61が設けられた構成となっている。このような選択用画面は、前述したファイルでは、VBAの場合には、いわゆるフォーム形式のファイルを.xls形式のファイルに関連付けて作成することで得ることができる。
【0018】
選択プログラム5は、貸与プラン情報ファイル4を扱うアプリケーションソフトに登録された一つのマクロプログラムとすることができる。この場合、選択プログラム5は、貸与プラン情報ファイル4をアプリケーションソフトによって開き、そのアプリケーションソフトのマクロ実行機能によって実行される。
また、記憶部1には、修繕積立金算入額算出プログラム7がインストールされている。図3に示すように、選択用画面には「決定」と表記されたコマンドボタン(以下、決定ボタン)62が設けられている。決定ボタン62には、修繕積立金算入額算出プログラム7の起動コマンドが埋め込まれている。
【0019】
本実施形態における修繕積立金算入額算出プログラム7は、年間での修繕積立金算入額を算出するものとなっている。修繕積立金算入額算出プログラム7は、選択入力欄61に選択の入力がされているもの(この例ではチェックボックスにチェックが入っているもの)について、予想利益を12倍し、それらを合算するプログラムとなっている。例えば、「デベロッパープレート」と、「駐車場脇スペース」と、「屋上」の各チェックボックスにチェックが入れられた状態で決定ボタン62がクリックされた場合、修繕積立金算入額算出プログラム7は、30,000×12+10,000×12+50,000×12=1,080,000の計算を行う。
【0020】
図3に示すように、選択用画面には、「修繕積立金算入額(年間見込み)」と表記された部分があり、その横にテキストボックス(以下、算入額表示ボックス)63が設けられている。修繕積立金算入額算出プログラム7は、計算した修繕積立金算入額の年間見込み額を算入額表示ボックス63に出力する。これで、修繕積立金算入額算出プログラム7は終了である。
また、図3に示すように、選択用画面には、「総会資料として印刷」と表記されたコマンドボタン(以下、印刷ボタン)64が設けられている。印刷ボタン64には、選択用画面の内容を印刷するプログラム(総会用印刷プログラム)の起動コマンドが設けられている。
【0021】
総会用印刷プログラムは、「マンション管理組合名」、「総会開催日」等のデータを入力させた後、それらのデータを所定の位置に組み込んだ状態で、選択用画面の内容を印刷するプログラムとなっている。図4は、総会資料として印刷された選択用画面の一例を示す概略図である。尚、「マンション管理組合名」や「総会開催日」のデータは、貸与プラン情報ファイル4の所定の位置(所定の位置のセル)に予め書き込んでおき、それを読み出して組み込むようにしても良い。
【0022】
また、本実施形態のマンション管理組合総会資料作成システムは、将来における修繕積立金の過不足額を算出することが可能となっている。以下、この点について説明する。
記憶部1には、積立金情報ファイル8が記憶されているとともに、積立金過不足シミュレーションプログラム9がインストールされている。図5は、積立金情報ファイル8の内容について一例を示した概略図である。
積立金情報ファイル8も、貸与プラン情報ファイル4と同様に、Microsoft Excelのような表計算ソフトによって扱えるファイルである。図5に示すように、積立金情報ファイル8には、見出しの行の各セルには、「年」、「年次」、「通常修繕費」、「徴収額(年額)」、「大規模修繕費」、「積立金(算入額無し)」、「算入額(年額)」、「積立金(算入額有り)」の入力がされている。
【0023】
そして、これらの見出しの入力がされた各セルの下の各行には、それぞれデータが入力されている。「年」は、年号で表された実際の年のデータであり、「年次」の列は、マンションが建築されてから何年経っているかを示すデータである。この例では、マンション建築から5年目以降のデータが入力されており、例えば4年目の管理組合総会において資料とされることが想定されている。
【0024】
「通常修繕費」の列は、そのマンションが定常的に必要とされる修繕費の額であり、いわゆる大規模修繕に要する費用は含まれていない。大規模修繕に要する費用は、「大規模修繕費」の列に予め入力されており、この例では10年目、20年目、というように10年ごとに大規模修繕が予定されている。
「徴収額(年額)」の列の各セルには、そのマンションにおいて各所有者から徴収する修繕積立金の年間総額のデータが予め入力されている。「積立金(算入額無し)」は、算入額が無い場合(共有部分の貸与を行わない場合)の修繕積立金の残額のデータである。このデータは、「徴収額(年額)」のデータを積み上げ計算していくとともに、「通常修繕費」のデータを毎年減算していくことで得られる。このような計算がされるよう、各セルに数式が予め入力されている。
【0025】
「算入額(年額)」の列は、修繕積立金算入額算出プログラム7の算出結果が入力されるセルである。「積立金(算入額有り)」の列は、「修繕積立金(算入額無し)」のデータに対して毎年の「算入額(年額)」を加算して積み上げ計算した結果が入力されるセルである。そのような計算が行われるよう、各セルに予め数式が入力されている。
図5の例では、「過不足額」のデータが入力されるセルが特に設けられていないが、「大規模修繕費」が発生する10年次と20年次における積立金のデータが過不足額になる。マイナスの場合、不足が生じることを意味する。
【0026】
一方、図3に示すように、選択用画面には、「積立金シミュレーション」と表記されたコマンドボタン(以下、シミュレーションボタン)65が設けられている。シミュレーションボタン65には、積立金過不足シミュレーションプログラム9の起動コマンドが埋め込まれている。シミュレーションボタン65は、算入額表示ボックス63のデータを引数にして積立金過不足シミュレーションプログラム9を起動するようになっている。修繕積立金算入額算出プログラム7が実行されていない等の理由で算入額表示ボックス63のデータがNull値の場合、0を引数にして積立金算出プログラムが実行される。
【0027】
記憶部1には、積立金過不足シミュレーションプログラム9の実行結果を表示するためのフォーム(以下、シミュレーション表示フォーム)のファイル(図1中不図示)が記憶されている。シミュレーション表示フォームのファイルも、積立金情報ファイル8に関連付けて作成されたフォームファイルであり、例えばマイクロソフト社のVBAによって作成されたフォームファイルである。
【0028】
図6は、シミュレーション表示フォームの一例について示した概略図であり、積立金過不足シミュレーションプログラム9の実行結果の一例を示している。
積立金過不足シミュレーションプログラム9は、積立金情報ファイル8を開き、引数として渡された算入額のデータを「算入額(年額)」の列の各セルに入力する。各セルには、同じ額が入力される。その上で、積立金過不足シミュレーションプログラム9は、積立金情報ファイル8の各セルの値を更新させる。この結果、「積立金(算入額有り)」の各セルにおいて自動計算が行われ、各セルに更新値が入力される。
【0029】
次に、積立金過不足シミュレーションプログラム9は、更新された積立金情報ファイル8のデータをグラフ化してシミュレーション表示フォームに出力する。図6に示すように、積立金過不足シミュレーションプログラム9は、「積立金(算入額無し)」、「積立金(算入額有り)」、「大規模修繕費」の各データを一つのグラフ内に表示するものとなっている。グラフの縦軸は金額であり、横軸は、年次となっている。具体的には、「積立金(算入額無し)」及び「積立金(算入額有り)」は折れ線グラフで示され、「大規模修繕費」は棒グラフで示されている。そして、過不足額がマイナスになる場合、そのマイナス額をグラフ中に引き出し線付きの囲み欄で注記されるプログラミングされている。
【0030】
積立金過不足シミュレーションプログラム9は、更新された積立金情報ファイル8から、図4に示すようなグラフを作成し、シミュレーション表示フォームに嵌め込んで表示するモジュールを有している。図4に示すようなグラムは、同様にマイクロソフト社のVBAのようなプログラム言語を使ってプログラミングすることで容易に実現することができる。したがって、詳細な説明は割愛する。このようにして、シミュレーション表示フォームにグラムを嵌め込んで表示すると、積立金過不足シミュレーションプログラム9が終了である。
尚、シミュレーション表示フォームにも、印刷ボタン10が設けられている。この印刷ボタン10にも、シミュレーション表示フォームの内容を総会資料として印刷するプログラムの起動コマンドが埋め込まれている。図7は、総会資料として印刷されたシミュレーション表示フォームの一例を示す概略図である。
【0031】
次に、本実施形態のマンション管理組合総会資料作成システムの使用例について説明する。上記説明から解るように、本実施形態の支援システムは、マンションの共有部分を第三者に貸与することでマンション管理組合が金銭収入を得るようにし、これによって修繕積立金を増加していく目的で使用されるものである。このような共有部分の第三者への貸与は、借受人とマンション管理組合とが契約を結ぶことになるか、このような契約を一括して仲介する仲介業者がいると便利である。本実施形態のシステムは、このような仲介業者が使用することを想定している。
【0032】
仲介業者は、総会に先立って管理組合の理事と打ち合わせし、前述した「徴収額(年額)」のデータや「通常修繕費」のデータを聞いておき、積立金情報ファイル8に予め入力しておく。また、仲介業者は、それぞれの貸与プランについて市場調査をし、どの程度の金額で貸与できるかを調べておき、貸与プラン情報ファイル4の「予想利益」の列のセルに予め入力しておく。貸与する際に管理組合側で何らかの支出があると予想される場合、仲介業者はその支出の額を予測し、その額を「予想支出」の列のセルに予め入力しておく。
仲介業者は、本実施形態のシステムであるノートパソコンとプリンタを管理組合の総会の会場に持ち込む。総会の会場には、ノートパソコンのディスプレイと同じ画像をスクリーンに表示するプロジェクタも持ち込まれている。
【0033】
仲介業者は、ノートパソコンを操作して選択用画面を表示する。選択用画面は、プロジェクタによりスクリーンに表示される。仲介業者は、選択用画面内の選択入力欄61に随時入力をして決定ボタン62をクリックする。この結果、スクリーンには、修繕積立金算入額の年間見込み額が前述したように表示される。選択入力欄61の入力の仕方で、修繕積立金算入額の年間見込み額が変わるので、色々と入力を変え、その結果を、参加した組合員(各戸の保有者)に見てもらう。さらに、仲介業者は、修繕積立金算入額の年間見込み額が表示されている状態で、シミュレーションボタン65を随時クリックする。この結果、図6に示すようなグラフがスクリーンに表示される。
【0034】
図6から解るように、本実施形態では、共有部分の貸与を行わなかった場合(各保有者からの徴収だけで賄った場合)の修繕積立金の推移と、特定のプランで共有部分の貸与を行った場合の修繕積立金の推移を比較することができる。図6に示す例では、貸与を行わなかった場合、10年目の大規模修繕では修繕積立金がマイナスになることはないものの、20年目の大規模修繕ではマイナスになるという予測である。しかし、選択された共有部分の貸与プランを行うと、20年目でも修繕積立金はマイナスにはならないという予測である。つまり、共有部分の貸与を行わなかった場合、20年目の手前の何からの時点で修繕積立金の値上げが必要になるのに対し、共有部分の貸与を行った場合、そのような値上げは必要はない。このような点を、スクリーンに表示されたグラフをもとに組合員(各戸の所有者)に対して仲介業者は説明することができる。
このようにして、仲介業者は、総会において適宜スクリーン上の表示を利用しながら共有部分の貸与のメリットを説明し、必要に応じて印刷をして各参加者に配布する。総会の議長(理事長など)は、このような共有部分の貸与について承諾するかどうかの賛否を問い、貸与プランについて一括して総会の承諾を取る。
【0035】
このようなマンション管理組合総会資料作成システムによれば、マンションの共有部分を貸与した場合の修繕積立金算入額が表記されるので、そのような貸与を管理組合として承諾するかの採決を行うのに好適なものとなる。特に、異なる複数の共有部分の貸与プランが表記され、その貸与プランを全て実行することによってどの程度の修繕積立金算入額となるのかが表記されるので、異なる複数の共有部分の貸与プランについて一括して総会で承認を得るのに好適なものとなる。
【0036】
マンション管理組合の総会は、通常は年に一回しか行われない。共有部分の貸与は、貸与を求める借受人がその都度、管理組合に対して申し入れることがあり得るが、そのような貸与は総会での承認無しには行えないので、申し入れがあっても次の総会まで待ってもらうことになる。本実施形態の支援システムによれば、将来申し入れがありそうな(又は貸借人が現れそうな)貸与プランについて、予め一括して総会で承認を得るのに利用でき、貸与を迅速に実行することで管理組合の収益により貢献することができる。
マンション管理組合としても、上記のように共有部分の貸与を可能な限り行って収益を修繕積立金に算入することで、修繕積立金の徴収額を少なくしつつ積立金の残額を多くすることが可能である。したがって、年数がかなり経った後の大規模修繕にも安心して対応が可能であり、さらには耐用年数経過後に立て替える場合にも、立て替え費用の大きな部分を占めるように修繕積立金を残すことができる。
【0037】
マンション共有部分の貸与プランとしては、上述した以外のものもあり得る。例えば、マンションの屋上を携帯電話用アンテナ設置スペースとして貸与することもあり、また無線LAN用アンテナ設置スペースとして貸与することもある。さらに、屋外広告としては、前述したデベロッパープレートの部分の他、建物の壁面部分を貸与する場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0038】
上述したように、本願発明は、マンション管理組合の総会資料を作成する際に好適に利用できるものである。
【符号の説明】
【0039】
1 記憶部
2 演算処理部
31 表示部
32 プリンタ
4 貸与プラン情報ファイル
5 選択プログラム
6 選択用画面ファイル
61 選択入力欄
62 決定ボタン
63 算入額表示ボックス
64 印刷ボタン
65 シミュレーションボタン
7 修繕積立金算入額算出プログラム
8 積立金情報ファイル
9 積立金過不足シミュレーションプログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶部と、演算処理部と、表示部と、プリンタとを有するマンション管理組合総会資料作成システムシステムであって、
記憶部には、マンションの複数の異なる共有部分を第三者に貸与する際の貸与内容について記録した貸与プラン情報ファイルが記憶されており、
貸与プラン情報ファイルは、貸与される個々の共有部分について、当該共有部分の名称と、当該共有部分を第三者に貸与する場合の貸与目的及び貸与額と、当該貸与を行った際に生ずる予想支出及び予想利益とを記録したファイルであり、
記憶部には、選択プログラム、修繕積立金算入額算出プログラム及び算入額出力プログラムがインストールされているとともに、選択用画面ファイルが記憶されており、
選択プログラムは、前記複数の異なる共有部分について個々に選択させる入力を行わせるプログラムであり、
修繕積立金算入額算出プログラムは、選択された共有部分について、貸与プラン情報ファイルから予想利益を読み出して合算することで修繕積立金算入額を算出するプログラムであり、
算入額出力プログラムは、選択プログラムが選択させた選択された共有部分についての前記貸与プラン情報ファイルの内容と、修繕積立金算入額算出プログラムが算出した修繕積立金算入金の額とを表示部に出力してプリンタによって印刷可能とするプログラムであることを特徴とするマンション管理組合総会資料作成システム。
【請求項2】
前記記憶部には、将来必要となる修繕費の額と、修繕積立金の名目で各保有者から徴収する徴収額とを記録した積立金情報ファイルが記憶されているとともに、将来における修繕積立金の過不足を予測する積立金過不足シミュレーションプログラムがインストールされており、
積立金過不足シミュレーションプログラムは、将来必要となる修繕費の額を積立金情報ファイルから読み出し、その修繕費に係る修繕が必要となる時期までに徴収される修繕積立金の徴収総額を積立金情報ファイルに記録された徴収額の情報に従って算出するともに、前記修繕積立金算入額算出プログラムが算出した修繕積立金算入額に従い、当該時期までの算入総額を算出し、徴収総額と算入総額とを合算した上で過不足額を算出し、その算出結果を前記表示部に出力して前記プリンタによって印刷可能とするものであることを特徴とする請求項1記載のマンション管理組合総会資料作成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−237879(P2010−237879A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83776(P2009−83776)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(506191024)株式会社トーク (3)