説明

マンデル酸類の製造方法およびマンデル酸類結晶

【課題】医農薬原料、液晶材料及び光学分割剤として有用な、高純度なマンデル酸類を製造する方法および高純度マンデル酸類結晶を提供する。
【解決手段】マンデロニトリル類を鉱酸で加水分解し、マンデル酸類を製造する方法において、未反応マンデロニトリル類が存在する状態で且つ生成したマンデル酸類の一部を析出させた状態で反応熟成させることを特徴とするマンデル酸類の製造方法。
マンデロニトリル類を鉱酸で加水分解し、マンデル酸類を製造する方法において、未反応マンデロニトリル類が存在する状態で且つ生成したマンデル酸類の50〜99.9重量%を加水分解反応液から析出させた状態で反応熟成させることを特徴とするマンデル酸類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医農薬原料、液晶材料及び光学分割剤として有用なマンデル酸類の製造方法およびマンデル酸類結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
マンデル酸類の製造方法としては、アルデヒド化合物とシアニドとの付加反応を実施し、マンデロニトリル類を得、次いで酸加水分解することによる製造方法が知られている(特許文献1)。上記付加反応の際、化学的触媒を使用する方法(非特許文献1)、又は生物学的触媒を使用する方法(非特許文献2、非特許文献3)も知られている。また、酸加水分解後のマンデル酸類を採取する方法としては、有機溶媒によりマンデル酸類を抽出した後、該有機溶媒を濃縮、乾固する方法、有機溶媒と水との混合溶媒によりマンデル酸類を抽出した後、晶析する方法等が知られている(特許文献3、特許文献4、特許文献5)。しかし、採取過程において、マンデル酸類の二量体が生成し、マンデル酸類の化学純度を低下させることが問題であった(特許文献5)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−59895号公報
【特許文献2】特開2001−348356号公報
【特許文献3】特開2001−342165号公報
【特許文献4】特開2003−206255号公報
【特許文献5】特開2003−226666号公報
【非特許文献1】Inoue, S. et al., J. Org. Chem., 55, 181−185(1990)
【非特許文献2】Effenberger, F. et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 33, 1555−1564(1994)
【非特許文献3】Effenberger, F. et al., Tetrahedron Lett., 31, 1249−1252(1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、マンデル酸類の二量体を低減させた高純度マンデル酸類の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、マンデロニトリル類を酸加水分解し、次いで生成したマンデル酸類の一部を析出させた状態で熟成した後、マンデル酸結晶を回収することにより、マンデル酸類の二量体の含有量が低減された高純度なマンデル酸類を製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)マンデロニトリル類を酸加水分解し、次いで生成したマンデル酸類の一部を析出させた状態で熟成した後、マンデル酸類結晶を回収することを含むマンデル酸類の製造方法。(2)高速液体クロマトグラフィーの測定におけるマンデル酸類とその二量体の面積合計を100面積%とした場合、マンデル酸類の二量体含有割合が0.1%以下(面積百分率)であるマンデル酸類結晶。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マンデル酸類の二量体が低減した高純度のマンデル酸類を工業的に効率的に製造する方法および高純度なマンデル酸類結晶を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、マンデロニトリル類を酸加水分解し、次いで生成したマンデル酸類の一部を析出させた状態で熟成した後、マンデル酸結晶を回収することを含むマンデル酸類の製造方法、である。マンデル酸類を製造するにあたり、その前駆体であるマンデロニトリル類は、例えば、アルデヒド類にシアニドを付加して製造することができる。アルデヒド類としては、次式(I)で示される化合物が挙げられる。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Ar基は無置換または置換されたアリール基若しくは、複素アリール基を示す。)
式IのAr基としては、例えばフェニル、ベンジル、ナフチル、ピリジル、フリル等が挙げられる。置換されたAr基の場合、置換基としては、例えば、(保護されていても良い)ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アルキルチオ、ハロゲン、置換されたフェニル、フェノキシ、アミノまたはニトロが挙げられる。好ましくは、Ar基はアリール基、特に好ましくはフェニル基である。それらAr基は無置換、あるいはC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、(保護されていても良い)ヒドロキシ、アセトキシ、Cl、Br、フェニル、フェノキシまたはフルオロフェノキシによって置換されていてもよい。
【0011】
具体的には、ベンズアルデヒド、m−フェノキシベンズアルデヒド、p−アセトキシベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド、2,3−メチレンジオキシベンズアルデヒド、フルフラール、ピリジン−2−カルバルデヒド等の芳香族アルデヒドが挙げられる。好ましくは、ベンズアルデヒド、m−フェノキシベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド、2,3−メチレンジオキシベンズアルデヒドであり、特に好ましくは、ベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒドが挙げられる。
【0012】
マンデロニトリル類の合成に際しては、化学的触媒又は生物学的触媒の存在下で立体選択的に付加反応を実施することも可能である。化学的触媒としては、環状ジペプチドが挙げられる。生物学的触媒としては、生物体由来の(S)−ヒドロキシニトリルリアーゼ、(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ等を含む粗酵素、精製酵素、固定化酵素が挙げられる。またこれらの酵素は、これら酵素をコードする遺伝子を組み込んだ遺伝子組換え微生物によって生産されたものでも良い。
【0013】
上記式(I)で示されるアルデヒドを原料として用い、青酸を付加させた場合、次式(II)で示されるマンデロニトリル類が得られる。
【0014】
【化2】

【0015】
上記式(II)で示されるマンデロニトリルとしては、例えば、マンデロニトリル(2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトニトリル)、3−フェノキシマンデロニトリル(2−ヒドロキシ−2−(3−フェノキシフェニル)アセトニトリル)、4−アセトキシマンデロニトリル(2−ヒドロキシ−2−(3−アセトキシフェニル)アセトニトリル)、4−メチルマンデロニトリル(2−ヒドロキシ−2−(p−トリル)アセトニトリル)、2−クロロマンデロニトリル(2−(2−クロロフェニル)−2−ヒドロキシアセトニトリル)、3−クロロマンデロニトリル(2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシアセトニトリル)、4−クロロマンデロニトリル(2−(4−クロロフェニル)−2−ヒドロキシアセトニトリル)、3−ニトロマンデロニトリル(2−ヒドロキシ−2−(3−ニトロフェニル)アセトニトリル)、3,4−メチレンジオキシマンデロニトリル(2−ヒドロキシ−2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)アセトニトリル)、2,3−メチレンジオキシマンデロニトリル(2−ヒドロキシ−2−(2,3−メチレンジオキシフェニル)アセトニトリル)、2−(2−フリル)−2−ヒドロキシアセトニトリル、2−(2−ピリジル)−2−ヒドロキシアセトニトリル等の2−アリール−2−ヒドロキシアセトニトリル等が挙げられる。好ましくは、マンデロニトリル(2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトニトリル)、3−フェノキシマンデロニトリル(2−ヒドロキシ−2−(3−フェノキシフェニル)アセトニトリル)、4−メチルマンデロニトリル(2−ヒドロキシ−2−(p−トリル)アセトニトリル)、2−クロロマンデロニトリル(2−(2−クロロフェニル)−2−ヒドロキシアセトニトリル)、3−クロロマンデロニトリル(2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシアセトニトリル)、4−クロロマンデロニトリル(2−(4−クロロフェニル)−2−ヒドロキシアセトニトリル)、3−ニトロマンデロニトリル(2−ヒドロキシ−2−(3−ニトロフェニル)アセトニトリル)、3,4−メチレンジオキシマンデロニトリル(2−ヒドロキシ−2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)アセトニトリル)、2,3−メチレンジオキシマンデロニトリル(2−ヒドロキシ−2−(2,3−メチレンジオキシフェニル)アセトニトリル)であり、特に好ましくは、マンデロニトリル(2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトニトリル)、2−クロロマンデロニトリル(2−(2−クロロフェニル)−2−ヒドロキシアセトニトリル)、3−クロロマンデロニトリル(2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシアセトニトリル)、4−クロロマンデロニトリル(2−(4−クロロフェニル)−2−ヒドロキシアセトニトリル)が挙げられる。
【0016】
上記方法で得られたマンデロニトリル類を加水分解することによりマンデル酸類を製造する。加水分解により生成するマンデル酸類は、次式(III)で示される化合物である。
【0017】
【化3】

【0018】
マンデロニトリル類は、特に精製することなく加水分解工程に用いても良い。また、抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、晶析または活性炭処理などの公知の方法によって精製して使用しても良い。好ましくはマンデロニトリル類の含有率が80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上となるように溶液を調製し、加水分解を行うことが好ましい。上記精製で行う蒸留等も同様な濃度になるまで溶媒を留去することが好ましい。
【0019】
加水分解反応は、鉱酸を用いて実施することが好ましい。鉱酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸、過塩素酸であり、好ましくは塩酸である。
鉱酸の使用量は、マンデロニトリル類に対して、0.5〜20当量とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.9〜10当量であり、特に好ましくは1.0〜5.0当量である。
【0020】
加水分解工程で用いる溶媒は、通常は水を用いるが、必要に応じて、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの極性溶媒、トルエン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒等を共存させても良い。これらの溶媒は単一で用いても組み合わせて用いても良い。
【0021】
加水分解工程における、マンデロニトリル類、鉱酸及び溶媒の添加方法は、反応効率向上の観点から、鉱酸中へマンデロニトリル類を添加した後、溶媒を添加する方法が好ましい。
【0022】
鉱酸中のマンデロニトリル類の濃度は、特に限定されないが、1〜70重量%とすることが好ましい。5〜60重量%がより好ましく、10〜50重量%が特に好ましい。
【0023】
加水分解工程の反応温度は−5℃〜溶媒の沸点温度とすることが好ましく、具体的には10〜90℃の範囲とすることが好ましい。この温度範囲内であると不純物を低減することができる。
【0024】
また、加水分解工程中においては、マンデロニトリル類を鉱酸中へ添加する時の反応温度と、該反応液に溶媒を添加する時の反応温度は同じでも、異なっていても良い。例えば、酵素反応によりマンデロニトリル類を製造し、溶媒を留去したマンデロニトリル類を、鉱酸中へ添加する時の反応温度は−5℃〜溶媒の沸点温度が好ましく、10〜40℃が特に好ましい。該反応液に溶媒を添加する時の反応温度は10℃〜溶媒の沸点温度が好ましく、30〜90℃が特に好ましい。
【0025】
次に上記加水分解工程中で、高速液体クロマトグラフィーの測定における反応液全体の面積合計を100面積%とした場合、加水分解生成物であるマンデル酸類に対して、マンデロニトリル類の存在比が好ましくは50%以下(面積百分率)、より好ましくは20%以下(面積百分率)、特に好ましくは10%以下(面積百分率)となった時点で、マンデル酸類の一部を析出させ、反応液を熟成させる。
【0026】
次に、熟成(以下、熟成工程)について説明する。
熟成工程の開始は、上述の通り加水分解生成物であるマンデル酸類に対して、マンデロニトリル類の存在比が50%以下(面積百分率)となる時点が好ましく、より好ましくは20%以下(面積百分率)、特に好ましくは10%以下(面積百分率)である。マンデロニトリル類の存在比は、高速液体クロマトグラフィーや核磁気共鳴法などの分析方法により確認することができる。
【0027】
熟成工程とは、反応液を0〜90℃にて、例えば5分間〜200時間撹拌又は放置することを意味する。攪拌時又は放置時の温度は、10〜70℃が好ましい。より好ましくは15〜60℃である。撹拌する場合、攪拌時間は5分間以上、好ましくは30分間以上、特に好ましくは1時間以上である。
【0028】
「マンデル酸類の一部を析出させた状態」で熟成するとは、加水分解により生成したマンデル酸類の0.1〜99.9重量%が加水分解反応液から析出した状態をいう。マンデル酸類を高純度化することおよび生産効率の点で、5〜99.9重量%析出していることが好ましく、50〜99.9重量%析出していることがより好ましい。また加水分解反応の途中でマンデル酸類の一部を析出させた状態にすることもできる。マンデル酸類の析出は、反応液の冷却、濃縮、塩析等により行う。好ましくは冷却による析出法である。二量体の析出を防ぐ点から冷却による析出の場合は、0.3〜30℃/時間で冷却をすることにより結晶を析出させる。好ましくは、0.4〜20℃/時間であり、特に好ましくは、0.5〜10℃/時間で冷却する。
【0029】
濃縮による析出の場合は、常圧下又は減圧下、いずれの条件での濃縮でもよい。塩析による析出の場合は、無機塩を添加することによりマンデル酸類を析出させる。無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどが挙げられる。その添加量は、マンデル酸類が析出する量であれば特に限定されない。
また、反応液に塩基を添加することにより、加水分解工程で使用した鉱酸と塩基が反応し、生じる無機塩により、マンデル酸類を析出させてもよい。この場合、反応液に添加する塩基の量は、マンデル酸類が析出する量であれば特に限定されない。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、アンモニア、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
塩析による析出は、無機塩又は塩基はどちらか一方を添加してもよいし、両方を添加しても構わない。また、このときのpHの範囲は酸性であれば特に限定されないが、pH5.0以下が好ましい。
【0030】
熟成工程は、不活性ガス雰囲気下または、大気中で実施しても良いが、着色を防止する点から不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましく、窒素雰囲気下で実施することがより好ましい。また、常圧下、加圧下又は減圧下の条件で、熟成を実施することができるが、不純物が低減し、工程が簡略化される点から常圧下で実施することが好ましい。
【0031】
上述の熟成工程により反応液中のマンデル酸類の二量体含有割合は、後述する高速液体クロマトグラフィーの測定において、マンデル酸類とその二量体の面積合計を100面積%とした場合、1%(面積百分率)以下にまで減少させることができる。
【0032】
熟成工程後、必要に応じて冷却等の操作を行い、マンデル酸類を析出させる。不純物の混入を防ぐ点から冷却時の速度は、0.3〜30℃/時間で冷却することが好ましく、より好ましくは、0.4〜20℃/時間であり、特に好ましくは、0.5〜10℃/時間である。
【0033】
析出物は固液分離により採取する。固液分離としては、例えば、加圧ろ過、自然ろ過、熱時ろ過、遠心分離が挙げられる。固液分離における分離温度は、5℃〜熟成温度とすることが好ましく、より好ましくは5〜45℃、特に好ましくは、10〜40℃である。この範囲内であるとマンデル酸類の回収率が高い点から好ましい。なお、「分離温度」とは析出したマンデル酸類と上記反応液を含むスラリー液の温度を意味する。固液分離は、不活性ガス雰囲気下又は大気中で実施する。着色を防止する点から不活性ガス雰囲気下で実
施することが好ましい。
【0034】
固液分離後の析出物は、必要に応じて洗浄を行う。洗浄に用いる溶媒は、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール溶媒、または、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等である。これらの溶媒は単一で用いても組み合わせて用いても良い。
【0035】
固液分離の際、品質上問題となる不純物が取込まれた場合には、例えば上述の溶媒で再溶解、再結晶、固液分離及び洗浄等を複数回繰り返すこともできる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく説明する。全ての結果は表1に纏めた。なお、マンデル酸類の化学純度、マンデル酸類の二量体の含有割合及び光学純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、下記の分析方法により測定した。
【0037】
<マンデル酸類の化学純度またはマンデル酸類結晶中の二量体含有割合>
試料調製方法: 試料20mgをキャリヤー25mLに溶解
装置: カラムオーブン 日本分光社製 865−CO
UV 日本分光社製 870−UV
ポンプ 日本分光社製 880−PU
インテグレーター 島津製作所社製 C−R3A
カラム: ODS−2(GLサイエンス社製)
キャリヤー: アセトニトリル:水=3/7(リン酸にてpH3に調整)
カラム温度: 40℃
流速: 1mL/min
波長: 220nm
検出限界値: マンデル酸類結晶中の二量体含有割合0.015%(面積百分率)
(マンデル酸類とその二量体の面積合計を100面積%とした場合)
<マンデル酸類の光学純度>
試料調製方法: 試料20mgをキャリヤー25mLに溶解
装置: カラムオーブン 日本分光社製 865−CO
UV 日本分光社製 870−UV
ポンプ 日本分光社製 880−PU
インテグレーター 島津製作所社製 C−R3A
カラム: CHIRALCEL OJ−H(4.6mm×250mm)ダイセル化学工業社製
キャリヤー: Hexane/IPA/トリフルオロ酢酸=90/10/0.1
カラム温度: 35℃
流速: 1.0ml/min
波長: 220nm
検出限界値: 99.9%ee
【0038】
[実施例1]
200mLフラスコに35%塩酸(36.0g)を加えた後、33〜35℃で、マンデロニトリル(29.2g)を添加し、同温度で4時間攪拌した後、水(62.4g)を加え、75〜80℃で3時間攪拌し加水分解を実施した。マンデル酸に対して、マンデロニトリルの存在比が2%(面積百分率)である溶液を冷却速度20℃/時間で55℃まで冷却し結晶を析出させ、6時間攪拌を継続し熟成した。その後、反応液を冷却速度5℃/時間で20℃まで冷却し、得られた結晶を濾別し、乾燥することで、白色結晶のマンデル酸(30.0g、化学純度99.8%)を得た。得られたマンデル酸の二量体の含有割合は0.08%(面積百分率)であった。
【0039】
[実施例2]
200mLフラスコに35%塩酸(45.0g)を加えた後、33〜35℃で、(S)−マンデロニトリル(36.5g、98.0%ee)を添加し、同温度で4時間攪拌した後、水(78.0g)を加え、75〜80℃で3時間攪拌し加水分解を実施した。(S)−マンデル酸に対して、(S)−マンデロニトリルの存在比が1.9%(面積百分率)である溶液を冷却速度20℃/時間で55℃まで冷却し結晶を析出させ、6時間攪拌を継続し熟成した。その後、反応液を冷却速度10℃/時間で20℃まで冷却し、得られた結晶を濾別し、乾燥することで、白色結晶の(S)−マンデル酸(37.0g、化学純度99.6%、光学純度99.9%ee)を得た。得られたマンデル酸の二量体の含有割合は0.09%(面積百分率)であった。
【0040】
[実施例3]
200mLフラスコに35%塩酸(45.0g)を加えた後、33〜35℃で、(S)−マンデロニトリル(36.5g、98.0%ee)を添加し、同温度で4時間攪拌した後、水(78.0g)を加え、55℃で加水分解を実施した。加水分解工程と熟成工程を同条件で行い(S)−マンデル酸に対して、(S)−マンデロニトリルの存在比が1.8%(面積百分率)である結晶の析出した溶液を12時間撹拌し熟成した。その後、反応液を20℃まで冷却し、得られた結晶を濾別し、乾燥することで、白色結晶の(S)−マンデル酸(36.5g、化学純度99.0%、光学純度99.9%ee)を得た。得られたマンデル酸の二量体の含有割合は0.10%(面積百分率)であった。
【0041】
[実施例4]
200mLフラスコに35%塩酸(45.0g)を加えた後、33〜35℃で、(S)−マンデロニトリル(36.5g、98.0%ee)を添加し、同温度で4時間攪拌した後、水(78.0g)を加え、50℃で加水分解を実施した。加水分解工程と熟成工程を同条件で行い(S)−マンデル酸に対して、(S)−マンデロニトリルの存在比が1.9%(面積百分率)である結晶の析出した溶液を24時間撹拌し熟成した。その後、反応液を20℃まで冷却し、得られた結晶を濾別し、乾燥することで、白色結晶の(S)−マンデル酸(36.1g、化学純度99.0%、光学純度99.9%ee)を得た。得られたマンデル酸の二量体の含有割合は検出限界値以下(N.D.)であった。
【0042】
[実施例5]
200mLフラスコに35%塩酸(45.0g)を加えた後、33〜35℃で、(R)−3−クロロマンデロニトリル(46.0g、98.0%ee)を添加し、同温度で4時間攪拌した後、水(78.0g)を加え、75〜80℃で3時間攪拌し加水分解を実施した。(R)−3−クロロマンデル酸に対して、(R)−3−クロロマンデロニトリルの存在比が2.0%(面積百分率)である溶液を冷却速度20℃/時間で55℃まで冷却し結晶を析出させ、6時間攪拌を継続し熟成した。その後、冷却速度10℃/時間で20℃まで冷却し、得られた結晶を濾別し、乾燥することで、白色結晶の(R)−3−クロロマンデル酸(44.0g、化学純度99.4%、光学純度99.9%ee)を得た。得られた(R)−3−クロロマンデル酸の二量体の含有割合は0.07%(面積百分率)であった

【0043】
[実施例6]
200mLフラスコに35%塩酸(45.0g)を加えた後、33〜35℃で、(R)−2−クロロマンデロニトリル(46.0g、98.0%ee)を添加し、同温度で4時間攪拌した後、水(78.0g)を加え、75〜80℃で3時間攪拌し加水分解を実施した。(R)−2−クロロマンデル酸に対して、(R)−2−クロロマンデロニトリルの存在比が1.9%(面積百分率)である溶液を冷却速度20℃/時間で50℃まで冷却し結晶を析出させ、8時間攪拌を継続し熟成した。その後、冷却速度5℃/時間で20℃まで冷却し、得られた結晶を濾別し、乾燥することで、白色結晶の(R)−2−クロロマンデル酸(43.8g、化学純度99.3%、光学純度99.9%ee)を得た。得られた(R)−2−クロロマンデル酸の二量体の含有割合は0.10%(面積百分率)であった。
【0044】
[比較例1]
200mLフラスコに35%塩酸(45.0g)を加えた後、33〜35℃で、(S)−マンデロニトリル(36.5g、98.0%ee)を添加し、同温度で4時間攪拌した後、水(78.0g)を加え、75〜80℃で3時間攪拌し加水分解を実施した。その後、反応液を冷却速度10℃/時間で20℃まで冷却し、得られた結晶を濾別し、乾燥することで、白色結晶の(S)−マンデル酸(37.0g、化学純度97.5%、光学純度99.9%ee)を得た。得られたマンデル酸の二量体の含有割合は1.60%(面積百分率)であった。
【0045】
[比較例2]
200mLフラスコに35%塩酸(45.0g)を加えた後、33〜35℃で、(S)−マンデロニトリル(36.5g、98.0%ee)を添加し、同温度で4時間攪拌した後、水(78.0g)を加え、75〜80℃で3時間攪拌し加水分解を実施した。(S)−マンデル酸に対して、(S)−マンデロニトリルの存在比が1.8%(面積百分率)である溶液を冷却速度20℃/時間で60℃まで冷却して6時間攪拌を継続し熟成した。その後、反応液を冷却速度10℃/時間で20℃まで冷却し、得られた結晶を濾別し、乾燥することで、白色結晶の(S)−マンデル酸(37.2g、化学純度97.9%、光学純度99.9%ee)を得た。得られたマンデル酸の二量体の含有割合は1.55%(面積百分率)であった。
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンデロニトリル類を鉱酸で加水分解し、マンデル酸類を製造する方法において、未反応マンデロニトリル類が存在する状態で且つ生成したマンデル酸類の一部を析出させた状態で反応熟成させることを特徴とするマンデル酸類の製造方法。
【請求項2】
マンデロニトリル類を鉱酸で加水分解し、マンデル酸類を製造する方法において、未反応マンデロニトリル類が存在する状態で且つ生成したマンデル酸類の50〜99.9重量%を加水分解反応液から析出させた状態で反応熟成させることを特徴とするマンデル酸類の製造方法。

【公開番号】特開2012−162582(P2012−162582A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129240(P2012−129240)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2005−27775(P2005−27775)の分割
【原出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】