説明

マンドレルの搬送装置

【課題】周辺他物に接することなく確実にフィラメントワインディング装置に対する搬送動作を行うことができるマンドレルの搬送装置を、低コストに提供する。
【解決手段】搬送装置は、所定間隔を置いて設置された一対のコンベアユニット7・8を含む。各コンベアユニット7(8)は、原動機9からの駆動力を受ける原動プーリ16と、原動プーリ16に対応して配置される従動プーリ17と、両プーリ16・17に巻き掛けられる無端ベルト18とを含む。無端ベルト18の外周面に、マンドレルMの軸方向両端のそれぞれに固定された軸状の取付治具4を保持して、マンドレルMを両持ち状に支持するための保持具21が設けられている。保持具21は、無端ベルト18の外周面に等間隔に設置されており、両コンベア7・8の無端ベルト18が同期回転されることで、水平姿勢を維持しながらマンドレルMを搬送できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントワインディング装置に対するマンドレルの供給動作、及び/又はフィラメントワインディング装置からのマンドレルの搬出動作を担う搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マンドレルに対する繊維束の巻き付け処理を行うフィラメントワインディング装置の分野においては、連続生産を目標とした全自動化システムの開発が進められている。かかる全自動化システムに対応したフィラメントワインディング装置では、マンドレルは装置近くに所定数ストックされ、そこから装置へ自動で供給される。また、繊維束の巻き付け処理が終了したマンドレルは、装置から自動で完成品のストック部へ搬出される。例えば巻き付け処理前のマンドレルの表面に対しては、脱脂処理、離形処理、塗装処理などの各種処理が施されている。このため搬送装置には、周辺他物と接することなく、マンドレルを搬送できることが要求される。
【0003】
公知の搬送装置としては、本出願人が提案した特許文献1に係る連続生産システムがある。そこでは、多関節のロボットハンド装置で搬送装置が構成されており、マンドレルの一側端をロボットハンドで把持して、これをフィラメントワインディング装置に搬送している。
【0004】
【特許文献1】特開2000−334853号公報(段落番号0012、図2、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、ロボットハンド装置で搬送装置を構成する場合は、予めロボットハンドの一連の動きや姿勢位置を教示しておくことで、マンドレルを周辺他物と接することなく、フィラメントワインディング装置へ供給し、あるいはフィラメントワインディング装置から搬出することができる。但し、ロボットハンド装置は高価であり、結果として連側生産システムの構築コストが高騰化することが避けられない。一次元、二次元、或いは三次元的にロボットハンドの姿勢位置を厳密に制御する必要があるため、ロボットハンドの姿勢や速度の教示に手間が掛かる点にも不利がある。ロボットハンドの旋回空間を確保する必要があり、搬送装置の周辺部構造の設計の自由度が低下する不利もある。
【0006】
本発明は以上のような問題を解決するためになされたものであり、周辺他物に接することなく確実にフィラメントワインディング装置に対する搬送動作を行うことができるマンドレルの搬送装置を、低コストに提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フィラメントワインディング装置に対するマンドレルの供給動作、及び/又はフィラメントワインディング装置からのマンドレルの搬出動作を担う搬送装置を対象とする。この搬送装置は、所定間隔を置いて設置された一対のコンベアユニットを含む。各コンベアユニットは、原動機からの駆動力を受ける原動プーリと、該原動プーリに対応して配置される従動プーリと、両プーリに巻き掛けられる無端ベルトとを含む。無端ベルトの外周面に、マンドレルの軸方向両端のそれぞれに固定された軸状の取付治具を保持して、マンドレルを両持ち状に支持するための保持具が設けられている。そして、保持具は、無端ベルトの外周面に等間隔に設置されており、両コンベアの無端ベルトが同期回転されることで、水平姿勢を維持しながらマンドレルを搬送することができるようになっている。
【0008】
原動機からの駆動力を受ける原動シャフトを有し、該原動シャフトに、一対のコンベアユニットの原動プーリが装着されている形態を採ることができる。
【0009】
両コンベアユニットは、基台上に支持されており、コンベアユニットの一方は、基台に対して固定された固定コンベアユニットであり、他方のコンベアユニットは、水平方向にスライド移動可能に構成された可動コンベアユニットであり、可動コンベアユニットをスライド移動させることで、両コンベアユニット間の対向間隔距離を変更できるようにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、原動機からの駆動力を受ける原動プーリと、該原動プーリに対応して配置される従動プーリと、両プーリに巻き掛けられる無端ベルトとを含む一対のコンベアユニットでマンドレルの搬送装置を構成した。かかる搬送装置は、ロボットハンド装置で構成されていた従来の搬送装置に比べて構造が簡単であり、したがって、製造コストを削減して、安価に搬送装置を提供することができる。ロボットハンド装置のように教示を行う必要がなく、その点でも搬送装置の低コスト化に貢献できる。
【0011】
一対のコンベアユニットで、マンドレルの軸方向両端のそれぞれに固定された軸状の取付治具を保持することで、マンドレルを両持ち状に支持する形態としたので、コンベアユニット間にマンドレル自身を架設状に保持することができる。これにより、脱脂処理、離形処理、塗装処理などの各種処理が施されたマンドレルを、コンベアユニットを含む周辺他物に接触させることなく搬送することができる。このことは、マンドレルの接触に起因する繊維束の巻き取り不良の発生を抑制できることを意味し、したがって搬送装置を含む連続生産システムの信頼性向上に貢献できる。
【0012】
両コンベアユニットの無端ベルトが同期回転される場合は、初期状態における無端ベルトの姿勢位置を揃えるだけで、マンドレルを水平姿勢に保って搬送することができる。これによれば、両保持部で均等にマンドレルの重量を支えることができるので、取付治具が保持具から滑動して、マンドレルがコンベアユニットから脱落することを防ぐことができる。
【0013】
原動機からの駆動力を受ける原動シャフトに、一対のコンベアユニットの原動プーリが装着されていると、簡単な構成で以って両コンベアユニットの無端ベルトを確実に同期回転させることができる。また、2台のコンベアユニットで原動機を共用できるので、各コンベアユニットに専用の原動機を備える形態に比べて原動機の数を減じて、搬送装置の製造コストを削減できる利点もある。
【0014】
基台に対して可動コンベアユニットをスライド移動させて、両コンベアユニット間の対向間隔距離を大小に変更することができるようにしていると、長さ寸法の異なる種々のマンドレルに対しても、それに応じた適正な対向間隔距離を与えて、マンドレルを両持ち状に支持することができる。つまり、可動コンベアユニットをスライド移動させるだけで、長さ寸法の異なる種々のマンドレルへの対応が可能であり、搬送装置を含む連続生産システムの構築コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1ないし図11は本発明に係るマンドレルの搬送装置の実施形態を示す。本実施形態に係る搬送装置は、最終製品が圧力容器であるマンドレルMを、フィラメントワインディング装置(以下、FW装置と記す)に搬送(供給)する。FW装置は、一群のクリールを支持する供給部と、供給部から送給される繊維束RをマンドレルMに巻き付ける巻付装置とを備えており、このうち巻付装置には、巻き付け処理が終了したマンドレルMを取り外し、あるいは新たなマンドレルMを装填するための着脱装置が設けられている。本実施形態の搬送装置は、この着脱装置に向けてマンドレルMを順次供給する。
なお、本実施形態においては、説明の便宜上、図1において矢印で示す方向を左右方向と規定し、当該左右方向と水平方向に直交する方向を前後方向と規定する(図2参照)。
【0016】
マンドレルMは、高強度アルミニウム材、ステンレス材などの金属材、あるいは樹脂成形品などで容器状に構成されており、図1に示すように、中央の円筒部1と、円筒部1の両端に連続するドーム部2と、各ドーム部2の頂部に突設される口部3とを一体に備えている。口部3のそれぞれには、軸状の取付治具4が装着固定されている。繊維束Rは、例えばガラス繊維と合成繊維とを混合した複合繊維の束からなる。先のクリールに巻き込まれた繊維束Rには、予め熱硬化性の樹脂が含浸させてある。なお、クリールから繰り出した繊維束Rに溶融した樹脂を含浸させた後、巻付装置に送給してもよい。
【0017】
図1および図2に示すように、搬送装置は、床面上に設置される基台6と、基台6上に所定間隔を置いて設置された一対のコンベアユニット7・8と、両コンベアユニット7・8の駆動源となるモータ(原動機)9と、モータ9からの駆動力を両コンベアユニット7・8に伝える原動シャフト10とで構成される。両コンベアユニット7・8は、マンドレルMの取付治具4・4を両持ち状に支持して、取付治具4・4が左右方向に伸びる水平姿勢を維持しながら、マンドレルMを着脱装置に供給する。
【0018】
図1において左側のコンベアユニット7が、基台6上に固定された固定コンベアユニットであるのに対して、右側のコンベアユニット8は、基台6に対して左右方向にスライド移動可能な可動コンベアユニットとして構成される。図2に示すように、基台6の右側上面には、前後一対のレール13・13が左右方向に走るように設けられており、これらレール13・13に沿って、可動コンベアユニット8は、左右の水平方向にスライド移動可能に構成されている。可動コンベアユニット8を左右方向にスライド移動させることで、両コンベアユニット7・8間の対向間隔距離を、マンドレルMおよび取付治具4の長さ寸法に合わせて変更することができる。また、可動コンベアユニット8には、これをレール13上の任意位置で遊動不能に固定するロック体(不図示)が設けられている。
【0019】
図2および図3に示すように、各コンベアユニット7(8)は、三角形状のユニットフレーム15と、ユニットフレーム15の前側下方に装着された原動プーリ16と、ユニットフレーム15の後側上方に装着された従動プーリ17と、両プーリ16・17に巻き掛けられた無端ベルト(以下、単にベルトと記す)18とで構成される。ベルト18は、その上辺側において、前側下方から後側上方にわたって登り傾斜するマンドレルMの搬送路を構成しており、その傾斜角度は約45度に設定されている。
【0020】
原動プーリ16および従動プーリ17は、外周面に多数の歯が形成された歯付きプーリであり、ベルト18は、その内周面に多数の歯が形成されたタイミングベルトである。これらベルト18およびプーリ16・17の歯を噛み合わせることによって、原動プーリ16の回転動力を、スリップすることなくベルト18に伝えることができる。
【0021】
ベルト18の外表面には、取付治具4を保持するための保持具21が、等間隔置きに複数個設けられている。各保持具21は、ベルト18の外表面に直交する方向に指向する係合面を備えており、これら外表面と係合面の二つの面で取付治具4を受け止めることで、マンドレルMを脱落不能に保持することができる。保持具21の幅寸法は、ベルト18の幅寸法と略同寸法に設定されている(図1参照)。また、ベルト18の上辺側内面には、該ベルト18を下支えして、マンドレルMの重みによるベルト18の凹みを規制するための規制板22が配置されている(図3参照)。規制板22は、その左右両端が、ユニットフレーム15に支持されている。
【0022】
図1に示すように、モータ9は、減速機23付きのモータであり、両コンベアユニット7・8の間で基台6上に固定されている。減速機23の出力は巻掛伝動機構24を介して原動シャフト10に連結されている。原動シャフト10は、基台6の左右端に固定した一対の軸受25・25で回転自在に支持されており、両コンベアユニット7・8の原動プーリ16・16が、原動シャフト10に装着されている。原動シャフト10の外周面、および両原動プーリ16・16の内周面には、互いに噛み合う多数のギヤ歯が形成されている(図3参照)。
すなわち、モータ9からの駆動力は、巻掛伝動機構24と1本の原動シャフト10とを介して、両原動プーリ16・16に伝えられる。これにて、両コンベアユニット7・8のベルト18・18が同期回転する。
【0023】
図3に示すように、着脱装置の近傍まで搬送されたマンドレルMは、着脱装置を構成する第1チャック29および第2チャック30により、搬送装置の搬送路からピックアップされる。チャック29・30は前後方向に移動可能に構成され、各々備える上下一対の挟持体31・32によりマンドレルMの取付治具4・4を挟持して、マンドレルMを搬送路からピックアップする。下方の挟持体32の下側には、これを上方の挟持体31に対して接離操作するエアシリンダ33が設けられており、これを操作して下方の挟持体32を上方の挟持体31に近接させることで、各取付治具4を両挟持体31・32間で確りと挟持できる。符号34は、マンドレルMに回転動力を伝えるための原動ギヤを示しており、第1チャック29にのみ設けられる。原動ギヤ34は、モータ35(図6参照)の駆動力を受けて回転駆動され、この回転動力は、一方の取付治具4の先端部に固定した受動ギヤ36(図1参照)を介して、マンドレルMに伝動される。
【0024】
マンドレルMに対する繊維束Rの巻付装置は、主として円筒部1に対して繊維束Rをフープ巻きするためのフープ巻きヘッド40と、円筒部1およびドーム部2に対して繊維束Rをヘリカル巻きするためのヘリカル巻きヘッド50とを備えている。図4に示すようにフープ巻きヘッド40は、中央に円形の開口41を有するフレーム42と、先の開口41に沿って旋回駆動される複数個のボビン43と、ボビン43を移行案内するガイド溝44と、図示していないボビン43の駆動機構などで構成してある。マンドレルMは、フレーム42と直交する状態で開口41の中央部分に支持される。したがって、ボビン43を旋回駆動することにより、ボビン43から繰り出される繊維束RをマンドレルMに巻き付けることができる。また、フレーム42をベース60の長手方向に沿って往復駆動することにより、繊維束RのマンドレルMに対する巻き付け位置を変更できる。
【0025】
図5においてヘリカル巻きヘッド50は、中央に円形の開口51を有する門形のフレーム52と、開口51の周縁に配置されるガイドリング53と、ガイドリング53の両側に配置される張力調整部54などで構成してある。図示していないが、ガイドリング53の周囲には一群の補助ガイドが配置され、ガイドリング53の内面には、ガイドリング53に貫通される一群のガイド穴に対応して開繊ガイドが設けてある。マンドレルMはフレーム52と直交する状態で開口51の中央部分に支持される。
【0026】
供給部から送給される繊維束Rは、フレーム52の外側方に配置したガイドローラで変向案内され、張力調整部54で所定の張力を付与されたのち、ガイドリング53のガイド穴へと案内される。フレーム52はベース60の長手方向の中央部分に固定してある。したがって、マンドレルMを往復操作しながら所定角度だけ回転操作することにより、ガイドリング53で案内された繊維束RをマンドレルMの周面の長手方向に沿って巻き付けることができる。
【0027】
着脱装置は、先に説明した第1・第2チャック29・30と、第2チャック30と同一構造の(原動ギヤ34を持たない)第3チャック38を一組にして構成される。第2チャック30は、マンドレルMの搬送(供給)装置からのピックアップと、搬送(搬出)装置に対するマンドレルMの受け渡しの時に動作するもので、マンドレルMに対して繊維束Rの巻き付け処理が行われる間は、第1チャック29と第3チャック38とにより取付治具4・4を支持する。各チャック29・30・38は、前後方向だけでなく左右方向にも移動可能に構成される。
【0028】
図6から図11に示すFW装置においては、2群のマンドレルMを交互に巻付装置に装填し、あるいは巻付装置から交互に取り外すので、2組の着脱装置を巻付装置に設けている。そして、各着脱装置に対して、本実施形態に係る搬送装置をそれぞれ配置することで、各着脱装置に対してマンドレルMを順次供給している。
なお、以下の各図においては、繊維束Rの巻き付け後のマンドレルを巻き付け前のマンドレルMと区別するために、符号RMで示している。また、2組の着脱装置のうち、図6に向かって右側の搬送装置に対応する着脱装置の第1〜第3のチャックを、左側の各チャック29・30・38と区別するために、符号129・130・138で示している。
【0029】
図6は、1つのマンドレルRMに対する巻き付け処理が終了した状態を示している。この状態では、各フープ巻きヘッド40から繰り出された繊維束Rの終端部分と、ヘリカル巻きヘッド50から繰り出された繊維束Rの終端部分とが、それぞれ受渡しリング63に巻き付けてある。この受渡しリング63とマンドレルRMの口部3との間には、もう1つの受渡しリング64が配されており、両受渡しリング63・64の間の繊維束Rをカッター65で切断することにより、取付治具4の先端側の受渡しリング63がマンドレルRMから切り離される。
【0030】
このマンドレルRMを巻付装置から取り外して、新たなマンドレルMを装填するまでの手順を、図7〜図9に示す。現在は、右側の着脱装置のチャック129・138でマンドレルRMを掴み保持しているため、新たなマンドレルMの装填には、左側の着脱装置が使用される。左側の着脱装置の第1チャック29と第2チャック30は、対応する搬送装置の搬送路の最下流位置で待機しているマンドレルMを、上述の手順でピックアップする。このとき、第1チャック29は、受動ギヤ36が固定された取付治具4の先端部を挟持し、第2チャック30は取付治具4の口部3寄りを挟持する。この状態でマンドレルMを巻き付け中心に位置させて、このマンドレルMと巻き付け後のマンドレルRMの取付治具4の側端どうしを接当させ、両マンドレルM・RMを同時に図7に向かって右方へ僅かに移動させる。
【0031】
次に、図8に矢印aで示すように、巻き付けが終了した状態のマンドレルRMの一方の取付治具4を第2チャック130で掴み、それまでこの取付治具4を保持していたチャック138を矢印bで示すように分離する。そして、両マンドレルM・RMを同時に矢印c方向へ移動操作することにより、巻き付けが終了したマンドレルRMが、不図示の搬出装置に対する受け渡し位置に移動され、新規なマンドレルMの一方の取付治具4が、フープ巻きヘッド40とヘリカル巻きヘッド50の開口41・51をくぐり抜ける。このとき、巻き付け後のマンドレルRMから切り離した受渡しリング63を、不図示の保持具で移動不能に位置保持しておくことにより、この受渡しリング63を新規なマンドレルMの側の取付治具4に移し変えることができる。つまり、各ヘッド40・50から繰り出される繊維束Rの巻付始端を、新規なマンドレルM側に渡すことができる。搬出装置に受け渡されたマンドレルRMは加熱工程へと送給され、そこで繊維束Rに含浸させた樹脂が硬化処理される。
【0032】
各ヘッド31・32の開口41・51をくぐり抜けた新規なマンドレルMの取付治具4には、図9に示すように、新たな受渡しリング64が外嵌される。さらに取付治具4の側端を矢印dのようにチャック38で掴んだのち、持ち換え用のチャック30を矢印eのように取付治具4から分離する。その後、マンドレルMを矢印f方向へ移動させて、受渡しリング63・64を口部3に隣接させる(図10参照)。
【0033】
以上により、新規なマンドレルMに対する繊維束Rの巻き付け準備が完了するので、以後は、図10に示すように、フープ巻きヘッド40とヘリカル巻きヘッド50とで繊維束Rを巻き付けて、マンドレルMの周囲に補強層を形成する。補強層が完成したら、繊維束Rを受渡しリング64に巻き付けて、巻き付け作業を終了する。この後、図11に示すように、両受渡しリング63・64の間の繊維束Rをカッター66で切断することにより、次の新規なマンドレルMの巻付始端となる側の受渡しリング64がマンドレルRMから切り離される。なお、この受渡しリング64の切り離しまでに、右側の着脱装置による搬出装置へのマンドレルRMの受け渡しは完了しており、リング64の切り離し後、右側の着脱装置の第1チャック129と第2チャック130とにより、新規なマンドレルMが搬送装置からピックアップされる。以後、上記の手順を繰り返し行うことにより、圧力容器のブランク体を連続して製造することができる。
【0034】
以上のように、本実施形態においては、モータ9からの駆動力を受ける原動プーリ16と、原動プーリ16に対応して配置される従動プーリ17と、両プーリ16・17に巻き掛けられる無端ベルト18とを含む一対のコンベアユニット7・8で、マンドレルMの搬送装置を構成した。かかる搬送装置は、ロボットハンド装置で構成されていた従来の搬送装置に比べて構造が簡単であり、したがって、製造コストを削減して、安価に搬送装置を提供することができる。
【0035】
また、一対のコンベアユニット7・8で、マンドレルMの軸方向両端のそれぞれに固定された軸状の取付治具4・4を保持することで、マンドレルMを両持ち状に支持する形態としたので、コンベアユニット7・8間にマンドレルM自身を架設状に保持することができる。これにより、脱脂処理、離形処理、塗装処理などの各種処理が施されたマンドレルMを、コンベアユニット7・8を含む周辺他物に接触させることなく搬送することができる。
【0036】
上記の実施形態では、本発明に係る搬送装置を用いて着脱装置にマンドレルMを供給する例を示したが、供給対象は着脱装置に限られるものではない。また、マンドレルMを搬出する場合にも使用でき、場合によっては、マンドレルMの供給路と搬出路とを1つの搬送装置に併設することができる。搬送装置の搬送路は上流側から下流側へと登り傾斜しているがこれに限られず、降り傾斜あるいは図12に示すように平坦な搬送路とすることもできる。この場合には、前後一対の保持具21・21で取付治具4を保持して、取付治具4(マンドレルM)の不用意な転動を規制することが好ましい。傾斜角度も45度に限らず自由に設定できる。傾斜角度が45度より大きく垂直に近い場合には、フックやこれに類する形状の保持具21を設けることが好ましい。原動プーリ16と従動プーリ17の一方を他方に対して揺動変位可能として、搬送路の角度を任意に変更できるように搬送装置を構成してもよい。基台6、モータ9及び原動シャフト10は、複数の搬送装置で共用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】搬送装置の正面図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】搬送装置と着脱装置の位置関係を示す図である。
【図4】フープ巻きヘッドを示す側面図である。
【図5】ヘリカル巻きヘッドを示す側面図である。
【図6】ワインディング製品の製造過程の第1過程を示す説明図である。
【図7】ワインディング製品の製造過程の第2過程を示す説明図である。
【図8】ワインディング製品の製造過程の第3過程を示す説明図である。
【図9】ワインディング製品の製造過程の第4過程を示す説明図である。
【図10】ワインディング製品の製造過程の第5過程を示す説明図である。
【図11】ワインディング製品の製造過程の終段過程を示す説明図である。
【図12】コンベアユニットの別実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
4 取付治具
7 (固定)コンベアユニット
8 (可動)コンベアユニット
9 原動機(モータ)
10 原動シャフト
16 原動プーリ
17 従動プーリ
18 無端ベルト
21 保持具
M マンドレル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントワインディング装置に対するマンドレルの供給動作、及び/又はフィラメントワインディング装置からのマンドレルの搬出動作を担う搬送装置であって、
搬送装置は、所定間隔を置いて設置された一対のコンベアユニットを有し、
各コンベアユニットは、原動機からの駆動力を受ける原動プーリと、該原動プーリに対応して配置される従動プーリと、両プーリに巻き掛けられる無端ベルトとを備え、
前記無端ベルトの外周面に、マンドレルの軸方向両端のそれぞれに固定された軸状の取付治具を保持して、マンドレルを両持ち状に支持するための保持具が設けられており、
前記保持具は、前記無端ベルトの外周面に等間隔に設置されており、両コンベアユニットの無端ベルトが同期回転するように構成されていることを特徴とするマンドレルの搬送装置。
【請求項2】
前記原動機からの駆動力を受ける原動シャフトを有し、該原動シャフトに、一対のコンベアユニットの原動プーリが装着されている請求項1記載のマンドレルの搬送装置。
【請求項3】
両コンベアユニットは、基台上に支持されており、
前記コンベアユニットの一方は、前記基台に対して固定された固定コンベアユニットであり、他方のコンベアユニットは、水平方向にスライド移動可能に構成された可動コンベアユニットであり、
前記可動コンベアユニットをスライド移動させることで、両コンベアユニット間の対向間隔距離を変更することができるようになっている請求項1又は2記載のマンドレルの搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−66818(P2009−66818A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235796(P2007−235796)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】