説明

マンノースの苦味を抑制させたマンノース含有組成物

【課題】
マンノースの苦味が抑制され、より飲食に抵抗感の少ないマンノース含有組成物を提供することにある。
【解決手段】
マンノース100質量部に対し、マンノース以外の単糖を20質量部以上50質量部以下、二糖を5質量部以上含有するマンノース含有組成物であり、好ましくは、マンノース以外の単糖が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、アラビノース、キシロースからなる群から選ばれた少なくとも1種であり、二糖が、マンノビオース及び/又はスクロースである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンノースの苦味を抑制させた飲食しやすいマンノース含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マンノースは、動物や植物などの生体内に含有される糖類の構成成分であり、六炭糖の一種である。マンノースは多糖類の状態で天然に存在し、たとえば、果実や果皮などに含まれている。マンノースのホモ多糖類としては、例えば、ゾウゲヤシ、アブラヤシ等植物由来のβ−1,4−マンナン等が挙げられる。一方、マンノースのヘテロ多糖類としては、こんにゃくのグルコマンナン等が挙げられる。
【0003】
マンノースは、ヒトやその他の動物に対して細菌感染阻害効果を有することが知られており、細菌感染抑制剤として用いられている。例えば、腸管を経由して感染する有害細菌に起因する家畜等の感染予防を目的として、マンノースを飼料に配合することが検討されている(例えば、特許文献1参照)。また、コプラミールにヘミセルラーゼ溶液を作用させてマンノースを遊離させて得られるマンノース含有コプラミールがマンノース含有飼料として利用できることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
マンノースには、マクロファージ活性化による創傷治癒の促進効果、乳がん細胞の増殖抑制効果といった様々な機能が存在することが知られ、最近では、マンノースが糖尿病性白内障の進行を抑制したり、マンノースの経口投与により先天的糖化障害の症状が改善したりするという報告もある。従って、今後、マンノースは、ヒトやその他の動物に対して、機能性食品として重要な役割を果たすものと予想される。
【0005】
マンノースの摂取は、マンノース自身又はマンノースを含有する食物等を摂取することにより可能である。しかし、該食物中に含まれるマンノースの量が微量であるため、マンノースを含有する食物を摂取しても効果が薄い。そのため、マンノースの機能をより効果的に発現させるためには、高純度化されたマンノースを経口投与により摂取する方法が好ましい。しかしながら、マンノースは独特の苦味を有するため、ヒトが摂取する場合には抵抗感を感じる場合もあり、そのまま経口摂取することは困難であるという問題があった(例えば、特許文献3参照)。そのため、容易に経口摂取しうる苦味が抑制されたマンノース含有組成物が求められていた。
【0006】
マンノースの製造方法としては、ゾウゲヤシの種子から得られるマンナンを酸加水分解する方法(例えば、非特許文献3参照)、コプラミール又はパーム核ミールにヘミセルラーゼを作用させる方法(例えば、特許文献2、特許文献4参照)が知られている。また、マンノースイソメラーゼを用いてフルクトースから、及びグルコースイソメラーゼとマンノースイソメラーゼを用いてグルコースから、それぞれマンノース含有糖液を得る方法が報告されている(例えば、非特許文献2)。さらに、特許文献5に代表されるようにD−グルコースとモリブデン酸等の金属を含む水溶液を加熱エピメリ化し、マンノース含有糖液を製造する試みがなされている。しかしながら、いずれも該糖液などの摂取に適した味覚についての記載はなく、マンノースの苦味が抑制された摂取しやすいマンノース含有組成物は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−38064号公報
【特許文献2】国際公開第99/08544号明細書
【特許文献3】特開2000−50813号公報
【特許文献4】特開2002−51795号公報
【特許文献5】特公昭63−12072号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H.S. Isbell,Method in Carbohydrate Chemistry, R.L.Wistler, M.L.Wolfrom Eds(Academic Press, New York,1962)pp 145−147
【非特許文献2】高崎義幸、「食品工業」、vol.38、p.40−45 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記のようにマンノースの苦味が抑制され、より飲食に抵抗感の少ないマンノース含有組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、マンノースに対し、他の糖を所定量含有することにより、マンノースの苦味が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)マンノース100質量部に対し、マンノース以外の単糖を20質量部以上50質量部以下、二糖を5質量部以上含有するマンノース含有組成物。
(2)植物由来のヘミセルロースを加水分解して得られる(1)記載のマンノース含有組成物。
(3)マンノース以外の単糖が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、アラビノース、キシロースからなる群から選ばれた少なくとも1種である(1)又は(2)記載のマンノース含有組成物。
(4)二糖が、マンノビオース及び/又はスクロースである(1)〜(3)いずれかに記載のマンノース含有組成物。
(5)ヘミセルロースが、マンナン、グルコマンナン若しくはガラクトマンナンを含む(2)〜(4)いずれかに記載のマンノース含有組成物。
(6)マンナン、グルコマンナン若しくはガラクトマンナンを含む植物が、コプラミール、パーム核ミールである(2)〜(5)いずれかに記載のマンノース含有組成物。
(7)マンノース100質量部に対し、マンノース以外の単糖を20質量部以上50質量部以下、二糖を5質量部以上含有する飲食品。
(8)マンノース100質量部に対し、マンノース以外の単糖を20質量部以上50質量部以下、二糖を5質量部以上含有する経口摂取用医薬品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マンノースの苦味を効果的に抑制させることができるため、より飲食に抵抗感の少ないマンノース含有組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のマンノース含有組成物は、マンノースの苦味を抑制することを目的として、マンノース以外の単糖及び二糖量をマンノース量に対して特定量含有するものである。
【0013】
マンノースは六単糖の一種である。マンノースは、多糖の形で自然界に広く存在し、なかでも、植物のヘミセルロースに多く存在する。本発明において植物のヘミセルロースとは、植物細胞壁に含まれるセルロース以外の水不溶の多糖類をいう。
【0014】
本発明で用いられるマンノースを得る方法は特に制限されず、植物ヘミセルロースや微生物多糖を加水分解して得る方法、グルコースまたはフルクトースを酵素あるいは化学的に異性化して得る方法、マンニトールを酸化して得る方法などが挙げられる。なかでも、植物ヘミセルロースを加水分解して得られるマンノースを用いることが、安全性およびコストの観点から、最も好ましい。
【0015】
植物のヘミセルロースとしては、特に限定されず、マンナン、グルコマンナン、ガラクトマンナン等を構成成分として含有するものが挙げられる。このうち、マンノースを容易に精製しうる観点から、マンナン、グルコマンナンを含有するものがより好ましい。さらに、マンノースを多く含有する観点から、マンナンが最も好ましい。
【0016】
植物のヘミセルロースを加水分解してマンノースを得る際に、マンナンを用いる場合において、マンナンの原料としては、特に限定されないが、パーム(アブラヤシ)、ココヤシ、ゾウゲヤシ、コーヒー、サイハイラン、コンニャクイモ等が挙げられる。なかでも、苦味抑制度の観点、およびマンナンを多く含有するといった観点から、パームの中でもパーム核が最も好ましい。
【0017】
植物のヘミセルロースを加水分解する場合には、酸、アルカリ、酵素を用いて加水分解したり、高温高圧の環境下で加水分解したりすることができる。このうち、副産物が少ない点、加水分解工程における設備の制限が少ない点、および環境への負荷が少ない点で、酵素を用いて加水分解し、マンノースを得ることが最も好ましい。具体的には、パーム核ミール、ココヤシ、コーヒー豆、グアー豆(グアーガム)、コンニャクイモなどの植物のヘミセルロースに対し、例えば、反応温度20〜70℃で、反応時間2〜72時間の条件下、マンナナーゼ、ガラクトマンナナーゼなどの酵素を作用させて処理する方法が挙げられる。また、酸による加水分解方法としては、鉱酸あるいは有機酸の存在下で、反応温度60〜120℃、反応時間2〜30時間で処理することが挙げられる。該加水分解に使用する酸の濃度は0.05〜6Nが好ましく、酸の種類としては、例えば、塩酸、硫酸、シュウ酸等が挙げられる。
【0018】
上記の条件により、植物のヘミセルロースに酸あるいは酵素を作用させると、該ヘミセルロースを構成するマンナン、グルコマンナン、若しくはガラクトマンナンが分解され、マンノース、グルコース、ガラクトース、アラビノース、キシロース等の単糖が遊離される。得られた糖液は、必要に応じて精製を行い、マンノースの含有率をさらに高めることが可能である。精製法としては、骨炭、活性炭、炭酸飽充法、吸着樹脂、マグネシア法などで脱色を行い、イオン交換樹脂、イオン交換膜、電気透析等で脱塩、脱酸を行う。精製法の組み合わせおよび精製条件としては、マンノースを含む反応液中の色素、塩、および酸等の量およびその他の要因に応じて適宜選択すればよい。
【0019】
本発明のマンノース含有組成物は、マンノース100質量部に対し、マンノース以外の単糖を20質量部以上50質量部以下含有し、20質量部以上45質量部以下含有することが好ましく、20質量部以上40質量部以下含有することがより好ましい。
【0020】
本発明において、マンノース以外の単糖としては、特に限定されないが、グルコース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、フルクトース等が挙げられる。マンノース以外の単糖の中でも、特に、グルコースとフルクトースの含有量を20質量部以上45質量部以下とすることにより、マンノースの苦味をより効果的に抑制することができる。
【0021】
さらに、本発明のマンノース含有組成物は、マンノース100質量部に対し、二糖を5質量部以上含有している必要があり、10質量部以上含有することが好ましく、15質量部以上含有することがより好ましい。
【0022】
本発明の二糖としては、特に限定されないが、スクロース、乳糖、マルトース、マンノビオース、ガラクトピラノシル−マンノピラノース、マンノピラノシル−ガラクトピラノース、キシロピラノシル−マンノピラノース、マンノピラノシル−キシロピラノース、グルコピラノシル−マンノピラノース、マンノピラノシル−グルコピラノース、フルクトピラノシル−マンノピラノース、マンノピラノシル−フルクトピラノース、アラビノピラノシル−マンノピラノース、マンノピラノシル−アラビノピラノースなど、マンノースやマンノース以外の単糖を構成成分とする二糖が挙げられる。二糖の中でも、特に、マンノビオース及び/又はスクロースの含有量を10質量部以上とすることにより、マンノースの苦味をより効果的に抑制することができる。
【0023】
マンノース以外の単糖の含有量が、マンノース100質量部に対して、20質量部未満の場合、及び/又は二糖類の含有量が、マンノース100質量部に対して、5質量部未満である場合には、マンノース含有組成物におけるマンノース由来の苦味が効果的に抑制されず、マンノース含有組成物は、飲食として適さない場合がある。またマンノース以外の単糖の含有量が、マンノース100質量部に対して50質量部を超える場合、マンノース以外の単糖の含有量に見合った苦味抑制効果は得られない。
【0024】
上記のようなヘミセルロースを加水分解する等の手段で得られたマンノースは、通常液状組成物であり、マンノース以外の単糖及び二糖を含有している場合がある。該マンノース液状組成物中のマンノース以外の単糖及び二糖の含有量が、本発明で規定する特定量含まれていれば、該液状組成物をそのまま本発明のマンノース含有組成物として用いることができるが、マンノースの苦味を抑制する効果の観点から、該液状組成物に、さらにマンノース以外の単糖及び二糖を添加して、それらの含有量を調整してもよい。
【0025】
本発明のマンノース含有組成物において、マンノース以外の単糖及び二糖の量を特定することにより、マンノース含有組成物の苦味が抑制される理由は明らかではないが、マンノース以外の単糖及び二糖類による味覚効果が、マンノースによる苦味を効果的にマスキングしているものと推測される。
【0026】
本発明のマンノース含有組成物は、本発明の効果を損なわない限り、薬学分野において公知慣用な担体を用いることにより、製剤化し、種々の剤形とすることができる、剤形としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤等の固形製剤;溶液剤、懸濁剤、乳剤などの液体製剤が挙げられる。なかでも、服用しやすさの観点から、細粒剤、散剤とすることが好ましい。
【0027】
固形製剤を調製する場合に用いられる担体としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、矯味矯臭剤、着色剤等が挙げられる。
【0028】
賦形剤としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット、デキストリン、デンプン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、プルラン、無水ケイ酸、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
【0029】
結合剤としては結晶セルロース、白糖、マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、水、エタノール等が挙げられる。
【0030】
崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、結晶セルロース等が挙げられる。滑沢剤としてはステアリン酸およびその金属塩、タルク、ホウ酸、脂肪酸ナトリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、無水ケイ酸等が挙げられる。矯味矯臭剤としては白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0031】
液体製剤を調製する場合に用いられる担体としては、緩衝剤、安定化剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。緩衝剤としてはクエン酸塩、コハク酸塩等が挙げられる。安定化剤としてはレシチン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロースが挙げられる。矯味矯臭剤としては、上記の固形製剤を調製する際に用いられる矯味矯臭剤と同様のものが挙げられる。
【0032】
製剤化のためには、例えば、上記した担体等を本発明のマンノース含有組成物に添加した後、公知慣用の方法により、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ゲル状、ペースト状、乳状、懸濁状、液状等の経口投与に適した形態に成形すればよい。
【0033】
また、本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、糖アルコール類、塩類、油脂類、アミノ酸類、有機酸類、果汁、野菜汁、香料、アルコール類、グリセリン等を含有することができる。
【0034】
本発明の飲食品としては、特に制限はされないが、柑橘果汁や野菜果汁などを含む果実飲料又は野菜ジュース、コーラやジンジャーエール又はサイダーなどの炭酸飲料、スポーツドリンクなどの清涼飲料水、コーヒー、紅茶や抹茶などの茶系飲料、ココアや乳酸菌飲料などの乳飲料などの飲料一般;ヨーグルト、ゼリー、プディング及びムースなどのデザート類;ケーキや饅頭などといった洋菓子及び和菓子を含む焼き菓子や蒸し菓子などの製菓;果実フレーバーソースやチョコレートソースを含むソース類;チューイングガム、ハードキャンディー、ヌガーキャンディー、ゼリービーンズなどの菓子類を挙げることができる。
【0035】
さらに、飲食品として、蛋白質、食物繊維、ミネラル、ビタミン、香料、果汁、酸味料、調味料などを配合した低カロリーのダイエット食品、あるいは、高カロリー流動食やチューブ流動性、低浸透圧、耐加熱処理性を有する液状栄養食などの医療用食品が挙げられる。
【0036】
経口摂取用医薬品の形状としては、特に限定されず、錠剤、顆粒剤、カプセル剤などの固形製剤、溶液剤、懸濁剤などの液体製剤などが挙げられる。
【0037】
本発明のマンノース含有組成物を、飲食品(食品組成物)や経口摂取用医薬品(医薬組成物)に適用すると、喫食しやすい飲食品、服用しやすい経口摂取用医薬品を得ることができる。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例を掲げて更に具体的に本発明の方法を説明するが、本発明の技術的範囲は以下の例に制限されるものではない。
<マンノース及びマンノース以外の単糖、二糖類の分析>
マンノース及びマンノース以外の単糖、二糖類の濃度はHPLCにより分析した。分析条件を以下に示す。
(1)ガラクトース、マンノース、フルクトースの分析条件
HPLC分析条件カラム:Aminex HPX87P(7.8×300mm、BIO RAD製)、移動相:水、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出:示差屈折計(RI)。
(2)グルコース、アラビノース、マンノビオースの分析条件
HPLC分析条件カラム:Aminex HPX87H(7.8×300mm、BIO RAD製)、移動相:0.005N 硫酸、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出:示差屈折計(RI)。
標準物質 ガラクトース:商品名「D−(+)−ガラクトース」(ナカライテクス製)
アラビノース:商品名「L−(+)−アラビノース」(ナカライテクス製)
マンノース:商品名「D−(+)−マンノース」(ナカライテクス製)
フルクトース:商品名「D−(−)−フルクトース」(ナカライテクス製)
グルコース:商品名「D−(+)−グルコース」(ナカライテクス製)
マンノビオース:商品名「β1,4−マンノビオース」(Carbosyn th製)
【0039】
比較例1
市販のマンノース粉末(SWANSON HEALTH PRODUCTS社製、商品名「D−Mannose」)を後述する比較例2のマンノース濃度と同じになるように水に溶解し、官能試験に用いた。
【0040】
比較例2
パーム核ミール10gに1Mシュウ酸2mL、水28mL加えpH3.8に調整後、酵素マンナナーゼBGMアマノ(天野エンザイム製 マンナナーゼ)0.03g、を加え、60℃で48時間振とう反応させ、80℃30分の失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学製:PK216)10mL、弱塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学製:WA30)10mLで脱塩を行った後、除菌ろ過を行い、ろ液の糖成分をHPLC分析した。このろ液を官能試験に用いた。
【0041】
実施例1〜3
比較例2において得られたろ液に、グルコース(商品名「D−(+)−グルコース」(ナカライテクス製))、ガラクトース(商品名「D−(+)−ガラクトース」(ナカライテクス製))、アラビノース(商品名「L−(+)−アラビノース」(ナカライテクス製))、フルクトース(商品名「D−(−)−フルクトース」(ナカライテクス製))及びマンノビオース(商品名「β1,4−マンノビオース」(Carbosynth製))を表1の組成となるように添加し、マンノース含有組成物を得た。
【0042】
実施例4
パーム核ミール(カーギル社製)10gに、水22mL、1M硫酸8mLを加え、pH0.8に調整した後、85℃、0.5時間の前加水分解処理を行った。放冷後、1M水酸化ナトリウム3mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行い、水50mLで水押しを行い、パーム核ミールを洗浄した。洗浄したパーム核ミールを回収し、水24mL、1M硫酸を加え、pH3.6に調整した後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で48時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0043】
実施例5〜7
実施例4において得られたろ液に、グルコース(商品名「D−(+)−グルコース」(ナカライテクス製))、ガラクトース(商品名「D−(+)−ガラクトース」(ナカライテクス製))、アラビノース(商品名「L−(+)−アラビノース」(ナカライテクス製))、フルクトース(商品名「D−(−)−フルクトース」(ナカライテクス製))及びマンノビオース(商品名「β1,4−マンノビオース」(Carbosynth製))を表2の組成となるように添加し、マンノース含有組成物を得た。
【0044】
<官能試験>
被験者6人による官能試験を実施した。試験は実施例および比較例の溶液を試飲し、下記の基準に従って評価した。
評価基準:5点:苦味を感じない
4点:僅かに苦味を感じるものの問題なく飲用できる
3点:やや苦味を感じるが飲用できる
2点:苦味を感じ飲用には苦痛を感じる
1点:非常に苦味を感じ飲用困難
0点:著しく苦味を感じ飲用不可。
検体を試飲する前にうがいを行ない、試飲時に前の検体が影響しないようにした。評価結果は6人の平均値で表した。
【0045】
実施例、比較例で得られたろ液の糖組成の分析結果(マンノースを100質量部とした場合の各糖の割合)および官能試験の結果を表1、2に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
比較例1〜2に比べ、マンノース以外の単糖及び二糖量が本発明の範囲内である実施例1〜7は、官能試験の評価基準の点数が高く、得られたマンノース含有組成物は苦味が抑制されたものであった。特に、マンノース以外の単糖の中でも、グルコースとフルクトースの含有量を20質量部以上45質量部以下とした実施例2、3、5、6は、マンノースの苦味をより顕著に抑制することができた。さらに、二糖の中でも、特に、マンノビオースの含有量を10質量部以上とした実施例1、2、4、5、6は、マンノースの苦味をより効果的に抑制することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンノース100質量部に対し、マンノース以外の単糖を20質量部以上50質量部以下、二糖を5質量部以上含有するマンノース含有組成物。
【請求項2】
植物由来のヘミセルロースを加水分解して得られる請求項1記載のマンノース含有組成物。
【請求項3】
マンノース以外の単糖が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、アラビノース、キシロースからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2記載のマンノース含有組成物。
【請求項4】
二糖が、マンノビオース及び/又はスクロースである請求項1〜3いずれか1項に記載のマンノース含有組成物。
【請求項5】
ヘミセルロースが、マンナン、グルコマンナン若しくはガラクトマンナンを含む請求項2〜4いずれか1項に記載のマンノース含有組成物。
【請求項6】
マンナン、グルコマンナン若しくはガラクトマンナンを含む植物が、コプラミール、パーム核ミールである請求項2〜5いずれか1項に記載のマンノース含有組成物。
【請求項7】
マンノース100質量部に対し、マンノース以外の単糖を20質量部以上50質量部以下、二糖を5質量部以上含有する飲食品。
【請求項8】
マンノース100質量部に対し、マンノース以外の単糖を20質量部以上50質量部以下、二糖を5質量部以上含有する経口摂取用医薬品。



【公開番号】特開2012−206963(P2012−206963A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72631(P2011−72631)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】