説明

マンホールと接続本管の構築方法。

【課題】経済的にマンホール1と接続本管を構築する方法を提供する。
【解決手段】地中に鋼管2を圧入し、内部を泥水掘削し、底部にコンクリートを打設し、その上にプレキャスト枠11を順次積み上げてマンホール1を構築し、マンホール1の周囲と鋼管2の内部との間隔に流動化処理土4を充填し、
流動化処理土4の充填と平行して鋼管2を引き抜き、複数個所にマンホール1を構築する。その後、推進工法によって複数のマンホール1を貫通して、連続した接続本管を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールと接続本管の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市の下水道では、各戸で発生する汚水は、各戸側の汚水枡、枝管、本管マンホール、本管を経由して下水処理場へ送られる。
この内で、枝管を接続するマンホール、マンホールを経由して下水処理場へ汚水を導く本管は、都市開発の際に基幹インフラとして先行的に整備するものである。
本発明は、かかる基幹インフラとしてのマンホールと、マンホール間を連結する本管の構築方法に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−169542号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来ある程度深い本管を構築する場合に次のような問題があった。なおここで「ある程度深い」とは、開削工法は採用できず、推進工法を採用する場合を想定したものである。
<1> まずマンホールの設置個所で、シートパイルなどで防護して立坑を構築し、これらの各立坑を発進、到達立坑として推進工法によって本管を構築する方法を採用している。
<2> このような工程を繰り返して全立坑間を推進工法で接続し、各立坑において推進管を巻き込む形でマンホールを構築するものである。
<3> しかし上記のような従来の方法では、高価な推進工法を採用しているにもかかわらず、推進工法での施工区間がマンホールの間隔によって決まってしまい、その施工延長がせいぜい50m程度という不経済なものであった。
<4> このように推進工法は本来300m以上の長距離の構築が経済的であるのに、短距離の施工しか行なえず、その本来の機能を発揮できていない、という状況であった。
<5> さらに立坑の構築において、シートパイルを打設する方法では、土止め材を回収できるという経済性はあるが、泥水掘削を行うことができず工期が長くなるという問題があった。
<6> 水中掘削が可能な、鋼管を圧入するタイプでは水中コンクリートの打設によって鋼管の引き抜きができず、埋め殺しにせざるを得ない、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決するために、本発明のマンホールと接続本管の構築方法は、地中に鋼管を圧入し、内部を泥水掘削し、底部にコンクリートを打設し、その上にプレキャスト枠を順次積み上げてマンホールを構築し、マンホールの周囲と鋼管の内部との間隔に流動化処理土を充填し、流動化処理土の充填と平行して鋼管を引き抜き、こうして複数個所にマンホールを構築し、その後、推進工法によって複数のマンホールを貫通した接続本管を構築することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のマンホールと接続本管の構築方法は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1>1本の長距離推進トンネルによって、多数本のマンホールを順次貫通して射抜くことができるのできわめて経済的に下水道網を構築することができる。
<2>推進工法では300mを超えるような長距離推進が経済的であることが分かっていたが、上記したように従来はマンホールの間だけを推進工法によって接続するものであったために不経済なものであった。その点本発明の工法では多数のマンホールを1本の推進トンネルで連続して射抜くことができるから、長距離推進が可能となり経済的であるばかりでなく、工期の短縮も図ることができる。
<3>流動化処理土の充填の上昇にしたがって鋼管を徐々に引き抜いてゆく工法であるが、鋼管の内部に充填する材料がコンクリートではなく流動化処理土であるために鋼管の引き抜きは拘束されることがなく容易に行うことができ、経済的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のマンホールの構築中の説明図。
【図2】マンホールを構築する順序の説明図。
【図3】マンホールを構築する順序の説明図
【図4】マンホールを構築する順序の説明図
【図5】マンホールを構築する順序の説明図
【図6】マンホールを構築する順序の説明図
【図7】マンホールを構築する順序の説明図
【図8】完成した多数本のマンホールを1本の推進トンネルで射抜いて接続した状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
<1>鋼管の圧入、掘削。(図2)
新設するマンホール1の外径よりも大きい内径を有する鋼管2を地盤中に圧入する。そのような圧入装置は公知であり、どこでも利用することができる。
圧入した鋼管2の内部に泥水を供給しながら地上から掘削する。
【0010】
<2>基礎コンクリートの打設。(図3)
予定の孔底まで掘削したら、水中コンクリートによって、底部に基礎コンクリート21を打設する。
この基礎コンクリート21の水中での打設は、トレミー管を使用し、地上からコンクリートを流し込む公知の方法によって行う。
【0011】
<3>プレキャスト枠の積み重ね。(図1)
プレキャストマンホール1はプレキャスト枠11を積み重ねて構築する。
プレキャスト枠11は、例えば平面視が矩形、円形のコンクリート製の筒体であり、上下端面に凹凸の継手を形成してある。
さらにプレキャスト枠11の周囲には放射方向に向けてガイド材12を突設しておく。
このガイド材12の突出寸法は、プレキャスト枠11の外面と鋼管2の内面との間隔に等しい。
するとプレキャスト枠11の吊りおろし時に、放射方向に突出したガイド材12のローラーなどの滑り材が鋼管2の内面をスライドして下降するので、プレキャスト枠11を泥水中に吊り降ろした場合に、鋼管2の中心位置に正確に設置することができる。
【0012】
<4>最下段のプレキャスト枠。
最下段のプレキャスト枠11には下部に定着支柱13を突設してある。この支柱13は短いH型鋼などで構成する。
さらにその側面には、対向する面に貫通窓14を開設してある。
この貫通窓14は、後述する推進工法の推進機3が貫通するための穴である。
貫通窓14を推進機3が貫通するまでの間は、窓を破壊しやすいFRP製などの板で閉塞して、泥水、流動化処理土の内部への侵入を阻止する。
【0013】
<5>プレキャスト枠の吊りおろし。(図4)
まず最下段のプレキャスト枠11を、底部の基礎コンクリート21が硬化する以前に吊り降ろす。
するとプレキャスト枠11の下面の定着支柱13が底部の基礎コンクリート21内に浸入して固定することができる。
その結果、後述する鋼管2の引き抜き時にも、プレキャスト枠11の水平方向への位置ずれを阻止することができる。
最下段のプレキャスト枠11の上に、工場生産したプレキャスト枠11を順次吊り降ろして積み上げる。
この作業も泥水の中で行う。
【0014】
<6>流動化処理土の充填。(図5)
プレキャスト枠11の積み上げによってマンホール1が順次完成してゆくが、その積み上げと平行してマンホール1の周囲に、トレミー管を使用して流動化処理土4を充填する。
流動化処理土4の充填にしたがって泥水は鋼管2の上端から外部に越流する。
【0015】
<7>鋼管の引き抜き。(図6)
流動化処理土4の充填の最上面の上昇にしたがって鋼管2を徐々に引き抜いてゆく。
鋼管2の内部に充填する材料がコンクリートではなく流動化処理土4であるために鋼管2の引き抜きは拘束されることがなく容易に行うことができ、経済的に回収することができる。
さらに鋼管2の引き抜き跡には流動化処理土4が充填しているので、ボイリング崩壊を阻止して安全の鋼管2を引き抜くことができる。
【0016】
<8>マンホールの完成。(図7)
こうして鋼管2を回収し、周囲に流動化処理土4を充填した新たなマンホール1が完成する。
同様の工程を経て複数個所にマンホール1を新設する。
その場合に本発明の工法によればマンホール1とマンホール1の間の距離が近い場合でも、複数本のマンホール1を推進工法によって射抜いて長い接続本管で連結してゆく。
そのために、経済的に1本の連続した推進トンネル、すなわち接続本管によってマンホール1間を連結することができる。
このように本発明のマンホール1は、接続する本管の距離を考慮せずに自由な位置に新設することができる。
【0017】
<9>推進工法。(図8)
まず推進工法の発進用の推進立坑5を構築する。
この立坑5には元押しジャッキ51、推進台52、支圧板53などを備えている。
元押しジャッキ51によって、先頭の推進機3、および後続する推進管31を順次地中に圧入して、連続した推進トンネル32を構築してゆく。
推進工法に関する設備や工法などは公知である。
【0018】
<10>マンホール群の貫通。(図8)
推進トンネル32先端の推進機3がマンホール1に接近するが、マンホール1の周囲には流動化処理土4の層が形成してあるだけなので、推進機3は容易にマンホール1に到達することができる。
推進機3がマンホール1に到達したら、マンホール1の下部の貫通窓14からマンホール1内へ侵入する。
マンホール1の貫通窓14は、破壊しやすい板材で閉鎖してあるだけなので、容易に進入させることができる。
この際にマンホール1内部の底部にあらかじめ泥土を充填しておけば、進入時の逸泥などのトラブルの発生を阻止できる。
さらに推進機3を加圧推進することによって、推進機3はマンホール1を貫通して反対側の貫通窓14から地中へ抜け出してゆく。
以上の作業を繰り返すことによって、1本の長距離推進トンネル32によって、多数本のマンホール1を順次貫通して射抜くことができる。
最後に推進機3は到達立坑に到達して回収する。
【0019】
<11>不要管の撤去。
マンホール1内部に位置する推進管31は不要であるから、解体して撤去する。
その後にマンホール1と推進管31との取り付け部の止水処理などの内面仕上げを行う。
こうして推進管3で構成した、延長の長い推進トンネル32を接続本管として、複数個所のマンホール1群の間を連結した下水網が完成する。
【符号の説明】
【0020】
1:マンホール
11:プレキャスト枠
14:貫通窓
2:鋼管
3:推進機
31:推進管
32:推進トンネル
4:流動化処理土
5:推進縦坑

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に鋼管を圧入し、
内部を泥水掘削し、
底部にコンクリートを打設し、
その上にプレキャスト枠を順次積み上げてマンホールを構築し、
マンホールの周囲と鋼管の内部との間隔に流動化処理土を充填し、
流動化処理土の充填と平行して鋼管を引き抜き、
こうして複数個所にマンホールを構築し、
その後、推進工法によって複数のマンホールを貫通して、連続した接続本管を構築する、
マンホールと接続本管の構築方法。
【請求項2】
最下段のプレキャスト枠は、
その側面に貫通窓を開口してあり、
鋼管内部に打設した基礎コンクリートに固定してある、
請求項1記載のマンホールと接続本管の構築方法。
【請求項3】
プレキャスト枠はその周囲に、放射方向にガイド材を突設してあり、
プレキャスト枠の鋼管内への設置の際に、
ガイド材が鋼管内面をスライドするように構成した、
請求項1記載のマンホールと接続本管の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−23946(P2013−23946A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160942(P2011−160942)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】