説明

マンホールと更生管との接続具およびその設置方法

【課題】マンホールに接続されている更生管が地震等によりマンホールに対して斜めに傾くように移動した場合でも更生管の端部の破損を防ぐことができる、既設のマンホールの内部のみでの作業によって設置可能なマンホールと更生管との接続具の提供を課題とする。
【解決手段】接続具本体30は、マンホール50の内壁面に密着固定されるマンホール固定部31と、更生管の外周壁に密着固定される更生管固定部32と、マンホール固定部31と更生管固定部32との間に配設された屈曲部分を有する蛇腹部33とによって構成されている。この接続具本体30は弾性材料により一体的に形成されている。接続具本体30のマンホール50の内側に露出する部分はカバー部材10によって覆われる。20は蛇腹部保護部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古くなった既設の下水道管の内壁面に沿って新たに形成される更生管とマンホールとの接続具およびその設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、古くなって劣化してしまった下水道管を新たな下水道管にする場合、工事の利便性等の理由から、古い既設の下水道管の内壁面に沿って新たな下水道管(以下、「更生管」という)を形成するという工法が広く用いられている。
【0003】
この更生管が地震等により動いたときでも、マンホールと更生管との接続部分において更生管が破損しないような更生管とマンホールとの接続具が既に提案されている。
【0004】
このようなマンホールと更生管との従来の接続具の構成を図15に示す。
【0005】
図15において、マンホール50の底部には下水道管接続口51が設けられており、下水道管接続口51には古い既設の下水道管60が接続されている。この下水道管60の内部には、その内壁面に沿って更生管70が形成されている。更生管70の端部の外周壁とマンホール50との間には耐震用のゴムリング80が配設されている。
【0006】
このゴムリング80の部分の拡大図を図16に示す。
【0007】
図16に示したように、更生管70の端部はゴムリング80に接触した状態で支持されており、また、更生管70の端面はマンホール50の内壁面52側に露出した状態となっている。
【0008】
このように構成されたマンホールと更生管との従来の接続具(ゴムリング80)においては、地震等により更生管70がその長さ方向に移動した場合でも、その移動に伴って図17に示したように更生管70の端部の位置が移動するので、更生管70の端部には無理な力が加わらず、従って更生管70の端部の破損を防ぐことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のマンホール50と更生管70との接続具においては、地震等において更生管70がマンホール50に対して斜めに傾くように移動してしまうような場合には、更生管70の端部に無理な力が加わってしまい更生管の70の端部が破損してしまうという虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の問題点を解消するために本発明は、マンホールの下水道管接続口に接続されている既設の下水道管の内壁面に沿って形成される更生管と前記マンホールとの間に介装される接続具本体と、該接続具本体の前記マンホールの内側に露出している部分を覆うカバー部材とから構成されるマンホールと更生管との接続具であって、前記接続具本体は、前記マンホールの下水道管接続口の周辺部の内壁面に密着固定される略中空円盤状のマンホール固定部と、前記更生管の外周壁に密着固定される円筒状の更生管固定部と、該更生管固定部と前記マンホール固定部との間に配設された断面形状が屈曲部を有する形状となるような蛇腹部とからなり、且つ、前記マンホール固定部と前記蛇腹部と前記更生管固定部とは弾性材料により一体的に形成され、前記接続具本体の前記マンホールの内側に露出している部分を覆い前記マンホールの内壁面に固定される前記カバー部材は、前記更生管側から前記マンホールの内壁面側に至るその表面側の断面の形状が緩やかな曲線となるように構成されていることを特徴とするものである。ここで、前記接続具本体を覆う前記カバー部材と前記蛇腹部との間には蛇腹部保護部材が介装されていてもよい。
【0011】
また、以上のようなマンホールと更生管との接続具を設置する方法として本発明は、前記マンホールの下水道管接続口の周辺部の内壁面および該内壁面側に露出している前記既設の下水道管の端部を前記マンホール内部から掘削して前記接続具本体の設置可能な空間を確保する第1の工程と、該第1の工程により形成された前記空間に前記接続具本体を配設する第2の工程と、前記既設の下水道管の内壁面に沿って前記更生管を形成する第3の工程と、前記更生管の端部の外周壁に前記更生管固定部を密着固定する第4の工程と、前記接続具本体を前記カバー部材で覆い当該カバー部材および前記接続具本体のマンホール固定部を前記マンホールの内壁面に固定する第5の工程とを含むことを特徴とするものである。ここで、前記第2の工程には、前記接続具本体の前記蛇腹部に蛇腹部保護部材を装着する工程がさらに含まれていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マンホールに接続されている更生管が地震等によりマンホールに対して斜めに傾くように移動した場合でも更生管の端部の破損を防ぐことができる、既設のマンホールの内部のみでの作業によって設置可能なマンホールと更生管との接続具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1の構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示した接続具本体30の構成の説明図である。
【図3】図1に示した接続具本体30の構成の説明図である。
【図4】図1に示した蛇腹部保護部材20の構成の説明図である。
【図5】図1に示した蛇腹部保護部材20の構成の説明図である。
【図6】図1に示したカバー部材10の構成の説明図である。
【図7】本発明の実施例1の動作の説明図である。
【図8】本発明の実施例1の動作の説明図である。
【図9】本発明の実施例1の動作の説明図である。
【図10】本発明の実施例1の設置方法の説明図である。
【図11】本発明の実施例1の設置方法の説明図である。
【図12】本発明の実施例1の設置方法の説明図である。
【図13】本発明の実施例1の設置方法の説明図である。
【図14】本発明の実施例1の設置方法の説明図である。
【図15】従来のマンホールと更生管との接続具の構成を示す断面図である。
【図16】従来のマンホールと更生管との接続具の説明図である。
【図17】従来のマンホールと更生管との接続具の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1の構成を示す分解斜視図である。図1に示したように本実施例1は、カバー部材10,蛇腹部保護部材20,接続具本体30とによって構成されている。なお、50はマンホールを示している。
【0016】
以下、本実施例1の各部品について図を用いて詳しく説明する。
【0017】
図2,図3は接続具本体30の構成を示した図である。図2(a)は上部から視た図であり、52はマンホールの内壁面を示している。図2(b)は側面図、図2(c)は斜視図である。図3(a)は正面図、図3(b)は断面図である。
【0018】
図2,図3に示したように接続具本体30は、マンホールの内壁面52に密着固定が可能なように湾曲している略中空円盤状のマンホール固定部31と、更生管の外周壁に密着固定が可能な円筒状の更生管固定部32と、更生管固定部32とマンホール固定部31との間に配設された断面形状が屈曲部を有する形状となるように形成された蛇腹部33とによって構成されている。なお、このマンホール固定部31と更生管固定部32と蛇腹部33とからなる接続具本体30は、ゴムのような弾性材料によって一体的に形成されている。
【0019】
図4は、蛇腹部保護部材20の構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は断面図を示している。この蛇腹部保護部材20は、ゴムやスポンジ等の変形可能な材料によって構成されており、本実施例1においては、円筒状の側面部22と中空円盤状の上面部21とを有する形状に形成されている。このような形状に形成したのは、図5に示すように、接続具本体30の蛇腹部33への装着を容易に行えるようにするためである。従って、この蛇腹部保護部材20の形状は図4(a)〜(c)に示した形状に限られるものではない。
【0020】
図6は、カバー部材10の構成を示した図であり、(a)は上部から視た図、(b)は正面図、(c)は表面側から見た斜視図、(d)は裏面側から見た斜視図である。このカバー部材10は、接続具本体10のマンホールの内側に露出している部分を覆うために配設されるものであり、下水のなかのゴミ等によって接続具本体10が破損等しないように保護する機能を有している。
【0021】
図6(b),(c),(d)に示したように、本実施例1においては、カバー部材10は、下側が欠けたような形状となっているが、これは後述する本実施例1の設置作業において、この欠けた部分に相当する接続具本体30の部分はマンホールの内側に露出しないように設置されることになるためである。また、このカバー部材10の裏面側が湾曲した形状となっているのは、接続具本体30のマンホール固定部31の形状と同様にマンホール50の内壁面52に密着するような形状にしてあるためである。
【0022】
さらに、このカバー部材10の表面側の形状は、内側の更生管側から外側のマンホールの内壁面側に至るその断面形状が緩やかな曲線となるように形成されている(図7の断面形状参照)。これは、下水のなかのゴミ等がこのカバー部材10の表面に付着しないようにするためである。
【0023】
以上のように構成された本実施例1は、図7に示すように、接続具本体30のマンホール固定部31とカバー部材10とは共に複数個の固定ボルト34によってマンホール50の内壁面52に密着するように固定され、更生管固定部32は固定バンド35によって更生管32の外周壁に密着するように固定されるものである。
【0024】
以上のように構成された本実施例1をマンホール50と更生管70との間に介装した場合には、図7に示すように更生管70がマンホール50の内側方向に移動しても、図8に示すように更生管70がマンホール50の外側方向に移動しても、さらに図9に示すように更生管70がマンホール50に対して斜めに傾くように移動しても、蛇腹部33が変形するために更生管70の端部には無理な力が加わらず、従って更生管70の端部が破損するようなことはない。
【0025】
次に、本実施例1の設置方法について図10〜図14を用いて説明する。なお、以下に説明する本実施例1の設置の施工に関しては、全ての作業を既設のマンホールの内部で行なうことができる。
【0026】
先ず、下準備として、マンホール50の下水道管接続口51の周辺の内壁面52を穴掘削する工作機械を設置するための空間を確保するために、マンホール50の底面部53を予め定められた深さだけはつる作業を行う。
【0027】
次に、図10(b)に示したように穴掘削機90を設置して、下水道管接続口51の周辺のマンホール50の内壁面および既設の下水道管60の端部を所定の範囲だけ穴掘削して本実施例1に係る接続具本体30を設置することが可能な空間を確保する。
【0028】
さらに、図11(a)に示したように、接続具本体30およびカバー部材10の固定ボルト用のアンカー54を、穴開けドリル91によってマンホールの内壁面52に開けた下穴52aに打ち込む。
【0029】
次に、図11(b)に示したように、蛇腹部保護部材20を装着した接続具本体30をマンホール50の内壁面52に装着する。この際、マンホール固定部31は、両面接着テープ等で内壁面52に仮止めしておく。次に、図12(a)に示したように固定バンド35を緩めた状態で更生管固定部32に装着しておく。
【0030】
この状態で、既設の下水道管60の内部に更生管70を形成する作業を行い、図12(b)に示したように更生管固定部32を固定バンド35を用いて更生管70の端部の外周壁に密着固定する。
【0031】
次に、図13(a)に示したように複数個の固定ボルト34を用いてカバー部材10および接続具本体30のマンホール固定部31をマンホール50の内壁面52に密着固定し、図13(b)に示した状態にする。
【0032】
最後に、図14に示したように、下準備のはつり作業ではつった部分にインバート55を設置し、インバート55とマンホール50の底面部53との間の隙間にモルタル56を配設し、更生管70の端部とインバート55との間の段差部にコーキング材を配設して作業を終了する。
【0033】
以上のような既設のマンホールの内部のみでの本実施例1の設置作業により、接続具本体30がマンホール50の内側に露出しないような状態で本実施例1を設置することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 カバー部材
20 蛇腹部保護部材
21 上面部
22 側面部
30 接続具本体
31 マンホール固定部
32 更生管固定部
33 蛇腹部
34 固定ボルト
35 固定バンド
50 マンホール
51 下水道管接続口
52 内壁面
52a 下穴
53 底面部
54 アンカー
55 インバート
56 モルタル
57 コーキング材
60 既設の下水道管
70 更生管
80 ゴムリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールの下水道管接続口に接続されている既設の下水道管の内壁面に沿って形成される更生管と前記マンホールとの間に介装される接続具本体と、該接続具本体の前記マンホールの内側に露出している部分を覆うカバー部材とから構成されるマンホールと更生管との接続具であって、
前記接続具本体は、前記マンホールの下水道管接続口の周辺部の内壁面に密着固定される略中空円盤状のマンホール固定部と、前記更生管の外周壁に密着固定される円筒状の更生管固定部と、該更生管固定部と前記マンホール固定部との間に配設された断面形状が屈曲部を有する形状となるような蛇腹部とからなり、且つ、前記マンホール固定部と前記蛇腹部と前記更生管固定部とは弾性材料により一体的に形成され、
前記接続具本体の前記マンホールの内側に露出している部分を覆い前記マンホールの内壁面に固定される前記カバー部材は、前記更生管側から前記マンホールの内壁面側に至るその表面側の断面の形状が緩やかな曲線となるように構成されていることを特徴とするマンホールと更生管との接続具。
【請求項2】
前記接続具本体を覆う前記カバー部材と前記蛇腹部との間には蛇腹部保護部材が介装されていることを特徴とする請求項1に記載のマンホールと更生管との接続具。
【請求項3】
請求項1に記載のマンホールと更生管との接続具を既設のマンホールの内部のみでの施工によって設置する設置方法であって、
前記マンホールの下水道管接続口の周辺部の内壁面および該内壁面側に露出している前記既設の下水道管の端部を前記マンホール内部から掘削して前記接続具本体の設置可能な空間を確保する第1の工程と、
該第1の工程により形成された前記空間に前記接続具本体を配設する第2の工程と、
前記既設の下水道管の内壁面に沿って前記更生管を形成する第3の工程と、
前記更生管の端部の外周壁に前記更生管固定部を密着固定する第4の工程と、
前記接続具本体を前記カバー部材で覆い当該カバー部材および前記接続具本体のマンホール固定部を前記マンホールの内壁面に固定する第5の工程と
を含むことを特徴とするマンホールと更生管との接続具の設置方法。
【請求項4】
前記第2の工程には、前記接続具本体の前記蛇腹部に蛇腹部保護部材を装着する工程がさらに含まれることを特徴とする請求項3に記載のマンホールと更生管との接続具の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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