説明

マンホールと流水管の浮上防止方法とその地下埋設流水装置。

【課題】既設マンホールについて従来のように周囲を開削することなく、浮上防止に現実的且つ有用で施工が容易な組立マンホールの浮上防止方法であるばかりでなく、連接された流水管の外れ防止にも役立つマンホールと流水管の浮上防止方法とその地下埋設流水装置を提供する。
【解決手段】 組立マンホール1,1間に複数の連接した流水管3,3・・を配置した地下埋設流水装置において、前記組立マンホール1内面にセグメント状の浮上防止用重量体4を固定し、その浮上防止用重量体4に設けた固定部7,7に前記連接した流水管3,3・・の内壁に沿って挿通したロープ5の両端を緊張固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールと流水管の浮上防止方法とその地下埋設流水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、阪神・淡路や中越地震地において、土壌の液状化(流動化)により、数多くの組立マンホールが浮き上がり、重要なライフラインである下水道の機能障害はもとより、交通機能に支障を及ぼし、被害者の救援活動の障害になったことは記憶に新しいところである。
【0003】
そして、2005年1月号の下水道協会誌Vol.42No.507の68頁表−2によれば、新潟県中越地震における組立マンホールの浮上がり、沈下は1,365件であったと報告されており、現在、国土交通省下水道部を初めとして下水道の技術分野において、その解決策について種々検討がなされ、また、種々の浮上防止対策工法が提案されている。
【0004】
砂のような粒子の集合体である材料は、粒状体と呼ばれ、この粒状体には特有の性質としてダイレタンシーと称される性状、すなわち、せん断によって体積が変化する現象がある。例えば、粒状体はせん断力によって形状は変化するが、体積変化は起きない。ところが、粒状体は、ゆる詰めの状態のものにせん断力を加えると、蜜詰めの状態に変化して体積が収縮する。
【0005】
乾燥した砂では、このような体積変化は瞬時に起きるが、水で飽和した砂では、間隙水が外部へ排出するのに必要な分だけ時間がかかることになるため、地震のような強い振盪による急激なせん断変形が生じる場合には排水が間に合わず、体積収縮を起こそうとすることになり、それにつれて有効応力が減少するため、砂は強度を失って、最終的には液体のような様相を呈することになる。これが液状化のメカニズムである。
【0006】
そして、このようにして土壌が液状化した場合、多量の水分を含んだ土砂の比重は1.0以上2.0となる。
【0007】
一方、組立マンホール(地下構造物)は、内部が空洞で、コップ状になっているので、液状化した土壌より見かけ比重が小さいため、地震の際の土壌が泥水化した時、浮上し始め、組立マンホールの下に浮遊している砂粒子が潜り込み、地震の終了と共に、砂粒子はそのまま再結合し、組立マンホールは浮上したままとなる。
【0008】
また、マンホールとマンホールを継ぐ流水管群も、土壌の流動化により上下に振れ、流水管の接続部が外れてしまうことがあり、マンホールに接続される流水管がマンホールの上下動により外れてしまうことが多い。
【0009】
この土壌の流動化による組立マンホールの浮上並びに流水管の外れを防止する方法として、従来、底版、直壁及び斜壁等を一体化した組立マンホールの質量を大きくする、埋め戻し材料を選定して圧密度を高くする、埋め戻しを固化改良土で行うなどの技術や、アンカーでマンホールと流水管を地盤に拘束する方法などが提案されている。
【0010】
大地震発生が間近であることが叫ばれている今日、新設のものは勿論のこと特に既設組立マンホールの浮上防止と流水管接続部の外れを、現実的且つ有用な手法、すなわち、施工を容易、且つ効率的、継続的に行うことが出来、しかも有効な効果が得られる浮上防止方法の出現が望まれている。
【0011】
そこで、本願発明者はマンホールの浮上防止については、特許文献2に示すように組立マンホールの直壁にフランジ状の重量体を取り付けて組立マンホールの見掛け比重を増す浮上防止方法とその組立マンホールを発案したが、この浮上防止方法では既設の組立マンホールにも適応できるが、既設の組立マンホールの場合、見掛け比重を増すための重量体であるフランジを施工する際には、組立マンホールの周りのアスファルトや地層を開削する作業が必要となり、施工コストと施工期間がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実用新案登録第3120761号公報
【特許文献2】特開2007−262747号公報
【特許文献3】特開2006−183450号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】2005年1月号下水道協会誌Vol.42No.507
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、既設マンホールについて従来のように、周囲を開削することなく浮上防止に現実的且つ有用で施工が容易な組立マンホールの浮上防止方法であるばかりでなく、連接された流水管の外れ防止にも役立つマンホールと流水管の浮上防止方法とその地下埋設流水装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、請求項1記載の発明は、組立マンホールに流水管を連接した地下埋設流水装置において、前記連接された流水管内壁に沿ってロープまたはケーブルを挿通させ、そのロープまたはケーブルの両端を、前記流水管に接続したマンホールにそれぞれ緊張固定したことを特徴とするマンホールと流水管の浮上防止方法である。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記組立マンホールの内側に浮上防止用重量体を設けて、組立マンホールの見掛け比重を1.0以上とし、この浮上防止用重量体に前記ロープまたはケーブルの両端を緊張固定したことを特徴とするマンホールと流水管の浮上防止方法である。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の発明において、前記一連の流水間の一部の流水管内面に浮上防止兼用の補強体を固定したことを特徴とするマンホールと流水管の浮上防止方法である。
【0018】
請求項4記載の発明は、連接された流水管内壁に沿ってロープまたはケーブルを挿通させて、そのロープまたはケーブルの両端を、前記流水管に接続した組立マンホールに緊張固定したことを特徴とする地下埋設流水装置である。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記組立マンホールの内側に浮上防止用重量体を設けて、組立マンホールの見掛け比重を1.0以上とし、この浮上防止用重量体に前記ロープまたはケーブルの両端を緊張固定したことを特徴とする地下埋設流水装置である。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項4または請求項5記載の発明において、前記一連の流水管の一部の流水管の内面に浮上防止兼用の補強体を固定したことを特徴とする地下埋設流水装置である。
【0021】
本発明において、使用するロープまたはケーブルとしては、通常は表面にプラスチックコート(例えばナイロン12の被覆)等を施して防蝕処理した金属ワイヤが用いられ、またロープまたはケーブルの緊張には実施例に示すような緊張装置や、ターンバックルが用いられる。装着後または事前にこれらの部材に防蝕処理を施すことは勿論である。
【0022】
また浮上防止用重量体及び補強体としては通常金属製(実施例ではダクタイル製の鋳物)のものが用いられるが、コンクリート製または合成樹脂性のものを用いることもでき、セグメント状の物としてマンホールまたは流水管の内面に固定される。そしてこれらの取付物にも装着後吹付け等により防蝕用被覆材を施すようにする。
【0023】
また、流水管の口径が大きく、作業員が中にまでに入れる場合には、張設したロープまたはケーブルの適数箇所をひ状の止具で流水管の内壁に固定させる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明にかかる組立マンホールに流水管を連接した地下埋設流水装置におけるマンホールと流水管の浮上防止方法は、ロープまたはケーブルを流水管に挿通して、両端を組立マンホールに緊張固定するという方法であるため、新設の場合は勿論のこと、既設の地下埋設流水管装置の浮上防止方法として、施工が極めて簡単且つ容易であるので優れた方法である。
【0025】
しかも、ロープまたはケーブルによって、数珠繋ぎ状態にマンホールと流水管が一連になるので、一連の流水管はマンホールの、またマンホールは一連の流水管のアンカーとしての役目をして、互いに浮上防止作用をする。
【0026】
そして内壁に、組立マンホールの見掛け比重を1.0以上とする浮上防止用重量体を付した組立マンホールは、流動化試験後、地表に突出(浮上)することがないという実験結果が得られているので、地下埋設流水装置の浮上防止効果が一層向上される。
【0027】
また、本発明において、前記重量体及び補強体として、金属製、コンクリート製、合成樹脂性の単独またはそれらを組合わせたものを用い、劣化した既設組立マンホールまたは流水管の内壁面にモルタル等の結合材で結合することにより、組立マンホールまたは流水管を補強構成させることができ、従って浮上防止効果に加えて劣化したマンホールの交換工事は不要とり、また流水管の更生に役立ち、その経済効果は大である。
【実施例1】
【0028】
図1は本発明の実施例を示す一部截断側面図で1,1は土壌2に埋設された組立マンホール、3,3・・・は連接して前記組立マンホール1,1に接続された流水管であり、組立マンホール1,1の内壁には、ダクタイル鋳鉄製のセグメント状の浮上防止用重量体4,4・・・が固定されている。
【0029】
5は表面にプラスチックコートを施した金属ワイヤを用いたロープで、両端に図2に示すようなネジ棒6,6が接続され、このロープ5を一連の流水管3,3・・・の内壁に沿って挿通した後、上部のロープ5は前記浮上防止用重量体4に設けた固定部7の透孔7aに前記ネジ棒6を挿し、ネジ棒6に螺合した緊締ナット8で、ロープ5を緊張固定させる。下部のロープ5は組立マンホール1の下部に設けた固定部1aに同様にして緊張固定する。
【0030】
なお、口径の大きい流水管の場合は、ロープ5の中間に図3に示すようなターンバックル9を設けてロープを緊張させたり、中間部分をひ状止具で流水管3の内面に固定することが好ましい。
【0031】
以上のように構成した地下埋設流水装置は、マンホール1,1と流水管群3,3・・・がロープ5によって数珠繋ぎ状に結び付けられていることになるので、地震の際の土壌2の液状化時に、マンホール1,1と流水管3,3・・は相互にアンカーとしての役目を果たし、浮上防止と、外れを抑制する。
【0032】
マンホール1の内面に取り付ける浮上防止用重量体4の総重量は、マンホール全体の見掛け比重が土壌2の比重よりも大きくなるように設計される。
【0033】
既設地下埋設流水装置では、内面の劣化を更生するため、マンホールと流水管内面のリフォームが行われる。
【0034】
図4は、その際本発明に係る浮上防止工法の適用に当って、浮上防止兼用の補強体10を流水管3の内面に取付けた実施例を示すもので、補強体10は劣化した流水管3の補強と、加重による浮上防止作用の向上と、ロープ5の係止部10a、10bによる中間止め機能を持たせたものである。なお、浮上防止兼用の補強体10を取付けた後、クリーニングした流水管3の内面と共に表面を防蝕処理を施すものである。
【0035】
既設組立マンホールにおいて、内面をクリーニング後、浮上防止用重量体4をタイルを貼付けるように装着することにより、劣化した既設組立マンホールの更生にも役立つ効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例の構成を示す一部截断側面図。
【図2】実施例におけるロープ両端固定部の構造を示す断面図。
【図3】ターンバックルの一例を示す斜視図。
【図4】流水管の補強体取付部の構造を示す断面図。
【図5】図4のA−A線断面図。
【符号の説明】
【0037】
1 組立マンホール
2 土壌
3 流水管
4 浮上防止重量体
5 ロープ
6 ネジ棒
7 固定部
7a 透孔
8 緊締ナット
9 ターンバックル
10 補強体
10a,10b 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組立マンホールに流水管を連接した地下埋設流水装置において、前記連接された流水管内壁に沿ってロープまたはケーブルを挿通させ、そのロープまたはケーブルの両端を、前記流水管に接続したマンホールにそれぞれ緊張固定したことを特徴とするマンホールと流水管の浮上防止方法。
【請求項2】
前記組立マンホールの内側に浮上防止用重量体を設けて、組立マンホールの見掛け比重を1.0以上とし、この浮上防止用重量体に前記ロープまたはケーブルの両端を緊張固定したことを特徴とする請求項1記載のマンホールと流水管の浮上防止方法。
【請求項3】
前記一連の流水管の一部の流水管内面に浮上防止兼用の補強体を固定したことを特徴とする請求項1または請求項2記載のマンホールと流水管の浮上防止方法。
【請求項4】
連接された流水管内壁に沿ってロープまたはケーブルを挿通させて、そのロープまたはケーブルの両端を、前記流水管に接続した組立マンホールに緊張固定したことを特徴とする地下埋設流水装置。
【請求項5】
前記組立マンホールの内側に浮上防止用重量体を設けて、組立マンホールの見掛け比重を1.0以上とし、この浮上防止用重量体に前記ロープまたはケーブルの両端を緊張固定したことを特徴とする請求項4記載の地下埋設流水装置。
【請求項6】
前記一連の流水管の一部の流水管の内面に浮上防止兼用の補強体を固定したことを特徴とする請求項4または請求項5記載の地下埋設流水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−21318(P2011−21318A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164671(P2009−164671)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(591116092)株式会社福原鋳物製作所 (23)
【Fターム(参考)】