説明

マンホールの浮上防止装置

【課題】地震時におけるマンホール浮上防止装置を提供する。
【解決手段】マンホールの側壁を貫通する貫通管31と、貫通管31のマンホール外側に接続され地中に配設された透水性を有する可撓性管体22と、貫通管31のマンホール内側に接続され、地中の自然水位より高い開口位置を備えた内管25とからなる水圧減殺装置20をマンホール10に添着し、地震時に地下水をマンホール10内に噴出させ、マンホール10の周囲の水圧上昇を減殺し、マンホール10の浮上りを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールの浮上防止装置に関する。さらに詳しくは、地震時にマンホールが浮上って地上に突出することを防止する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
道路の路床内に立設され路面に上面鉄蓋を備えたマンホールが、地震時に路面上に突出し、緊急車輌等の運行に支障を生ずる問題がある。このようなマンホールの地上への突出を防止する措置を講ずることは、地震対策上非常に重要なことである。
【0003】
地震時にマンホールが押上げられて地上に突出するメカニズムは必ずしも明らかではないが、地震時に地盤が流動化し、マンホールの下面に作用する地下水の間隙水圧の上昇とマンホールの浮力の作用によって押上げられるものであると推定される。従って、その対策として、マンホール周囲の地下水の揺動や水圧上昇を減殺することによって、マンホールの押上げを防止することができると考えられる。
【0004】
液状化による下水道施設への影響に対処する設計が求められている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
地盤の液状化は、地下水位の高い、緩い飽和砂質地盤が地震等により急速な繰返し荷重を受けることにより、砂の粒子間における間隙水圧が増大してせん断抵抗力が急激に減少し、液体のように挙動する現象である。液状化が発生すると、砂が地上に噴き上げる噴砂現象や噴水現象が見られ、地盤は圧縮されて沈下するとともに傾斜地盤や護岸近傍では側方流動に伴う地盤の移動により地盤内の杭や埋設管に大きな被害が生じる危険性がある。
【0006】
また、十勝沖地震(2003年)や新潟県中越地震(2004年)では、周辺地盤が液状化のおそれのない地盤において、埋戻し土の液状化が発生し、管路施設に大きな被害が発生した。被害の特徴は、開削で施工した管路の掘削部の路面沈下や管路の浮上がりがほとんどであった。特に新潟県中越地震ではマンホールの突出が1,400箇所以上発生した。
【0007】
埋め戻し材の砂の液状化により管きょ及びマンホールが浮上するメカニズムは、マンホールの山砂などによる埋戻し部が地震時に地盤沈下を生じ、埋戻し材の体積収縮を生ずると共に過剰間隙水圧が発生し、激しく液状化した埋戻し土がマンホールや地下配管等の下側にまわり込み、マンホールや地下配管等を上方に押上げるものである。
【0008】
このような考え方に立脚して、マンホール周囲の地下水の揺動や局部的な水圧上昇を防止する技術として、マンホールの内腔部の空部にマンホール周囲の水を噴出させる技術がある。(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
この技術はマンホールの周囲に排水管を設け、その下端は地下水位より下方に、上端は地下水位面より上方で地表面より低い位置に開口させ、マンホールに過剰間隙水流入口を設けたものである。この技術は、泥土詰りや作動不良を生じやすく、正常作動が最も必要な地震時に、十分な水の通路確保ができるか否か、十分な圧力抜き効果を期待できるか否かという問題がある。
【0010】
また、マンホール内にマンホール基礎底板を貫通して下方に伸び、マンホール内で地下水位より上方まで立ち上る水抜管を設けた技術もある(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
この技術は、マンホール外側に設ける水抜管や礫材から成る埋戻し層などが詰るという欠点を除去しようとするものである。しかし、水中開口は管端開口のみであり、断面積が小さく、流入抵抗が大きいので良好な作動が阻害されるおそれがある。
【0012】
周辺地盤の液状化対策工法として、上記非特許文献1は、
a)地下水位以下の締固め、置換、固化を行う。
【0013】
b)掘削断面内を透水性の高い砕石等で地下水位より上方まで埋戻し、地震時の過剰間隙水の発生を抑制する。
【0014】
c)杭やアンカーを支持層に固定し、浮上りに抵抗させる。
【0015】
d)例えば砕石ドレーンによる地下杭を構築し、間隙水を地下水位の上又はマンホール内に排水させ、過剰間隙水圧を消散させる。
などの工法を掲げている。
【特許文献1】特開平8−92984号公報
【特許文献2】特開2007−218072号公報
【非特許文献1】日本水道協会:下水道施設の耐震対策指針と解説−2006年版−
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者らは、以上の現状に鑑み、実験を重ねて研究した結果、マンホール周囲に起る地震時の水圧上昇を効果的に抑止する技術を開発した。
【0017】
本発明はこのような実験によって確認した事実に基づき、地震時におけるマンホール周囲の水圧上昇を減殺し、マンホールの浮上を防止する効果的な装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、次の技術手段を講じたことを特徴とする。すなわち、本発明は、マンホールの側壁を貫通する貫通管と、該貫通管のマンホール外側に接続され地中に配設された透水性を有する可撓性管体と、該貫通管のマンホール内側に接続され、地中の自然水位より高い開口位置を備えたマンホール内管とを備えたことを特徴とするマンホールの浮上防止装置である。
【0019】
本発明の装置はマンホールの側壁を貫通する貫通管を多数設けることができる。貫通管の形状は流動抵抗を極力少なくする形状とすることが好ましい。
【0020】
また、マンホール外側に配設する透水性を有する可撓管は、任意の長さ、任意の配列、任意の深さ等に自由に配設することができ、透水開口面積を大きくとることができる。
【0021】
上記本発明において前記透水性を有する可撓性管体は、スパイラル状の骨格リブ内に設けた筒状フィルタと、該骨格リブ外径に外嵌するプラスチック螺子管と、管端部蓋とから成り、該管端部蓋は蓋面に加圧により破壊する膜体(例えば、スリット入りゴム弾性体等)を備えた部材であるとすると好適である。
【0022】
筒状フィルタは、ポリプロピレン製の筒状フィルタが好適であり、高強度で透水性に優れ、土砂の流入を防ぐと共に筒全体面から水が流入する。また取扱い重量が軽く、柔軟性に優れているので各種の接続部分を使用することによって現場の実情に合わせた自由な長さ、形状、配設位置に配管することが可能である。
【0023】
プラスチック螺子管は、スパイラル状の骨格リブに外嵌する雌ねじ状の内溝を備えた薄肉管であって、筒状フィルタの接続部や保護すべき部分に設ける。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、大きな透水開口面積を有する可撓性管体を地中に自在に配設することができ、地震時の間隙水圧の上昇時にマンホール周囲の地下水を透水性の可撓性管体を通してマンホール内に導きその圧力上昇を防止させ、マンホールの底板が下方から押上げられる力を低減させると共に、間隙水圧の上昇に伴って、マンホール内に流入する地下水の重量によって、浮力を低減させて、地上への突出を防止することができる。
【0025】
従って、地震発生の緊急時における道路の交通障害等を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例を示すマンホールの縦断面図、図2はその平面図である。図1、図2は地中に埋設されている状態のマンホールを示しているが、周囲の地盤や土砂は図示省略してある。
【0027】
マンホール10は、上端蓋部11、傾斜筒躯体12、円筒躯体13及び底板14から構成されている。躯体13に貫通管21が壁を貫通して設けられている。
【0028】
貫通管21はマンホール壁貫通部に水膨張ゴムリング等から成るシール部材30と、このシール部材30を保持する膨張系モルタル31を備え、貫通部から漏水しないように保持されている。
【0029】
貫通管21のマンホール外側には透水性を有する可撓性管体22が連結されている。可撓性管体22は継手や保護を必要とする部分に外筒23を備え、かつ可撓性管体22の端部には蓋24が施されている。この蓋24は、マンホール敷設時において、底板14の深さ位置となるまで埋設することが、マンホール最下端の間隙水圧の上昇低減に寄与する効果が高くなる。管体22は筒状フィルタなど透水性を有する材料から成っている。
【0030】
貫通管21のマンホール内側には内管25が接続されている。内管25は可撓性を有するプラスチックホースなどでよく、マンホール10の内壁面に取付具32によって取り付けられている。内管25の上端開口26はマンホール10の周囲の地下水位面60より僅か高い位置に開口するように、切断して長さを調整する。
【0031】
本発明のマンホール浮上防止装置20は、これらの管体から成っており、平常時に管体の内部には地下水が充満している。マンホール浮上防止装置20は図2に示すように、1個のマンホール10に複数個設けられており、地中管50と干渉しないように配設することができる。また、複数個を設置したとき、地中管50と干渉する場合は、可撓性管体22を使用しているので図1に示すように地中管50を回避するように配設することができる。
【0032】
マンホールより外側の可撓性管体22は、図1,図2では単に上下に垂下しているが、これは一例であって、地中にどのような配置形状で配設されていてもよい。また管端の蓋24は、可撓性管体22内に土砂が容易に進入しないように設けたものであるが、間隙水圧が上昇した場合には開口するような機構のものとしてもよい。
【0033】
図3に可撓性管体22の構造例を示した。
【0034】
可撓性管体22は外周にスパイラル状の骨格リブ41を有し、その内部に筒状フィルタ42を取付け、筒状フィルタ42を不織布43を用いて骨格リブ41の内面に強力に接着したものである。可撓性管体22としては例えば内径50〜200mmφのものを用いる。
【0035】
図3は、可撓性管体22の模式的部分断面図であって、図の上部は外形を示し、中間部はフィルタ42を切断除去して管体の内部を見た図を示し、下部は不織布43を切断除去した内部及び管端部蓋24の取付状態を示したものである。骨格リブ41は、強力な可撓性材料例えばポリプロピレン樹脂長尺材をスパイラル状に成形して成り、土圧に耐える寸法を備えている。可撓性管体22はこのスパイラル構造によって、円筒形を保つと共に、長手方向の可撓性を付与されている。
【0036】
フィルタ42は透水性を有し、砂や砂利を通さない膜体であって、例えば、高強度ポリプロピレン製フィルタをスパイラル状に配設し、骨格リブ内側に添着したものである。
【0037】
不織布43はフィルタ42の継目44を骨格リブ41の内面に圧着して固定するものである。
【0038】
可撓性管体22の下端は管端部蓋24で塞がれ、土砂が可撓性管体22中に浸入しないようにしている。この蓋24はプラスチック製又はゴム製などとする。図4にこの管端部蓋24の底面図を示すように、蓋24の中央部に例えば十字形の弱め部又は切込みを設け、管端部蓋24の下面に大きな衝撃圧などが発生したとき、弱め部又は切込み27が開いて蓋24が開放するようにしておくと好適である。
【0039】
また、図1に示すようにこのスパイラル骨格リブ41に外嵌するスパイラル内面溝を備えた筒体23を用いることによって、可撓性管体22を容易に結合したり、必要部分を保護したりすることができる。
【0040】
なお、骨格リブ41と同様のスパイラルリブを備えたY字継手、T字継手や十字継手を用い、筒体23によりこれらと可撓性管体22とを結合することによって、可撓性管体の分岐管や集合管を容易に形成することができる。
【0041】
本発明のマンホールの浮上防止装置は以上のように構成されているので、平常時は地下水が充満しており、地震時には管体22のフィルタを通して広い流入面積を通って地下水が管内に進入しマンホール内に噴出する。従って、マンホール周囲の水圧上昇が抑制されると共にマンホールの浮上性が減殺され、マンホールの地上への突出を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例の装置を示すマンホールの一部断面を示した側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】可撓性管体の実施例の説明図である。
【図4】可撓性管体下端の蓋の底面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 マンホール
11 上端蓋部
12 傾斜筒躯体
13 円筒躯体
14 底板
20 浮上防止装置
21 貫通管
22 可撓性管体
23 外筒
24 管端部蓋
25 内管
26 開口
27 弱め部又は切込み
30 シール材
31 樹脂系モルタル
32 取付材
41 骨格リブ
42 筒状フィルタ
43 不織布
44 継目
50 地中管
60 地下水位面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールの側壁を貫通する貫通管と、該貫通管のマンホール外側に接続され地中に配設された透水性を有する可撓性管体と、該貫通管のマンホール内側に接続され、地中の自然水位より高い開口位置を備えた内管とを備えたことを特徴とするマンホールの浮上防止装置。
【請求項2】
前記透水性を有する可撓性管体は、スパイラル状の骨格リブ内に設けた筒状フィルタと、該骨格リブ外径に外嵌するプラスチック螺子管と、管端部蓋とから成り、該管端部蓋は蓋面に加圧により破壊する膜体を備えた部材であることを特徴とする請求項1記載のマンホールの浮上防止装置。
【請求項3】
前記マンホール内側に接続される内管は、可撓性を有し、自在に切断して長さ調整可能としたことを特徴とする請求項1又は2記載のマンホールの浮上防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−228392(P2009−228392A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78808(P2008−78808)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(591027422)株式会社ニチコン (12)
【出願人】(591197699)日本高圧コンクリート株式会社 (20)
【Fターム(参考)】