説明

マンホールポンプ施設

【課題】単にマンホール内部を二分割することによって、作業環境を悪臭や有毒ガスから完全に遮断し、補修作業などを安全かつ快適に行なうことができるとともに、十分な足場をマンホール内に確保して、安全かつ自在に補修作業などを行なうことができるマンホールポンプ施設を提供する。
【解決手段】頂部に開閉可能な進入開口11を有する有底筒体からなるマンホール12と、マンホール12の内部空間を下部汚水貯留空間13と上部作業空間14に仕切り、かつ上面に作業床面15を形成する気密隔壁16と、外部から汚水18を下部汚水貯留空間13内に流入させる汚水流入配管17と、下部汚水貯留空間13内の汚水18を外部に排出するための汚水排出ポンプ19とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、下水処理に用いられるマンホールポンプ施設に関する。
【0002】
【従来の技術】下水道は、生活環境の改善や水質の保全を図る上から、不可欠な生活基盤の一部となっており、その普及は、都市部から農山漁村部へと移行している。このような地域は、自然環境や社会環境が都市部と異なり、下水道施設もその地域にあった小規模な施設を必要としている。現在マンホールポンプ施設もそのような小規模施設として普及しつつある。
【0003】図7に、従来におけるマンホールポンプ施設90の1具体例を示す。図示するように、地中に有底筒状のマンホール91が埋設されており、その頂部に設けた進入開口88には蓋体(マンホール蓋)89が取り付けられる。マンホール91の底部92上には汚水排出ポンプ93が配設されている。また、マンホールの側壁にはマンホール91内に汚水94を流入させるための汚水流入配管95が開口している。また、汚水排出ポンプ93の流出口にはマンホール91の外部と連絡する汚水吐出管96が接続されている。
【0004】さらに、マンホール91の側壁内面にはガイドロッド97が同内面と平行にかつ垂直方向に伸延した状態で配設されている。そして、汚水排出ポンプ93に基端を取り付けたガイド部材98の先端がガイドロッド97に上下方向に摺動自在に取り付けられている。また、マンホール91の側壁内面には上下方向に一定の間隔を空けて複数のステップ99が取り付けられている。なお、図中におけるその他の構成要素について説明すると、100〜103は汚水吐出管96や汚水排出ポンプ93に取り付けられた各種弁を示しており、100は仕切弁、101は逆止弁、102は通気弁、103は簡易エア抜き弁を示す。また、104は汚水排出ポンプ93を吊り上げるために用いられる吊りチェーンを示す。
【0005】次に上記した構成を有するマンホールポンプ施設90の作動について説明すると、汚水流入配管95を通してマンホール91内に流入した汚水94は中継施設としてのマンホール91内の下部に貯留される。その後、汚水排出ポンプ93を駆動することによって、貯留された汚水を、汚水吐出管96を通してマンホールポンプ施設90の下流側に排出することができる。また、汚水排出ポンプ93が故障した場合は、作業者が進入開口88を通してマンホール91内に入り、吊りチェーン104を図示しないクレーンから降ろしてきた吊り具(図示しない)に係合し、クレーンを作動させることによって汚水排出ポンプ93をマンホール91の外部に取り出し補修を行なう。なお、図7において、105は吊りチェーン104を係止するためのフックである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような従来のマンホールポンプ施設90は、未だ、以下の解決すべき課題を有していた。即ち、従来のマンホールポンプ施設90においては、汚水排出ポンプ93を補修するに際して、作業者がマンホール91内に進入して、吊りチェーン104を吊り具105に係合したり、汚水排出ポンプ93をガイドロッド97から切り離す等の作業を行なわねばならない。しかし、マンホール91内は汚水94により悪臭が充満しており、かつ有毒ガスが発生している可能性があり、作業者は、劣悪かつ危険な環境下での補修作業を強いられることになる。
【0007】また、作業者は、このような補修作業を、十分な足場を確保できない状態、即ち、ステップ99のみを用いて行なわねばならず、その面でも補修作業の安全性を確保することが困難であった。本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、作業環境を悪臭や有毒ガスから完全に遮断して、補修作業などを安全かつ快適に行なうことができるとともに、十分な足場をマンホール内に確保して、安全かつ自在に補修作業などを行なうことができるマンホールポンプ施設を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明に係るマンホールポンプ施設は、頂部に開閉可能な進入開口を有する有底筒体からなるマンホールと、マンホールの内部空間を下部汚水貯留空間と上部作業空間に仕切り、かつ上面に作業床面を形成する気密隔壁と、外部から汚水を下部汚水貯留空間内に流入させる汚水流入配管と、下部汚水貯留空間内の汚水を外部に排出するための汚水排出ポンプとを具備することを特徴とする。
【0009】上記したように、上部作業空間は汚水が流入する下部汚水貯留空間から完全に気密状態で遮断されている。従って、下部汚水貯留空間において発生する悪臭や有毒ガスが上部作業空間内に流入することがなく、作業者は汚水排出ポンプの補修作業などを安全、容易かつ快適に行なうことができる。しかも、気密隔壁は、その上面に十分な広さの作業床面を形成することができるので、作業者は、十分な足場を確保しながら、汚水排出ポンプの補修作業等を行なうことができ、この面からも補修作業の安全性を十分に確保できる。さらに、単にマンホール内部を気密隔壁によって二分割するのみでマンホールポンプ施設を構築できるので、安価に安全かつ快適な作業環境を有するマンホールポンプ施設を構築できる。
【0010】また、本発明は、汚水排出ポンプを気密隔壁上に設置し、汚水排出ポンプの吸引口に、下端開口部を下部汚水貯留空間内の汚水内に浸漬する汚水吸上管の上端開口部を連通連結したことにも特徴を有する。このように、汚水排出ポンプを気密隔壁上に設置したことにより、作業者は、上部作業空間内で直接汚水排出ポンプを観察しながら、汚水排出ポンプを補修することができる。また、汚水排出ポンプが汚水中に浸漬されていないので、汚水排出ポンプの汚水による腐食を防止でき、汚水排出ポンプの耐久性を長年にわたって確保することができる。
【0011】本発明は、気密隔壁の一部を下方に凹設して下部汚水貯留空間内の汚水中に浸漬可能な有底筒状の凹部隔壁を形成し、凹部隔壁の底板上に汚水排出ポンプを設置したことにも特徴を有する。このように、凹部隔壁の底板上に汚水排出ポンプを設置したことにより、下部汚水貯留空間内の汚水の水位が、凹部隔壁の周側面とマンホールの内周面との間に形成される余裕空間内を上昇し、同水位が汚水排出ポンプのポンプ部より上方に位置すると、連通管現象によって汚水排出ポンプのポンプ部内にも汚水が自動的に流入することになる。従って、汚水排出ポンプとして、構造が複雑で繊維質のゴミで閉塞する可能性がある自吸式ポンプを使用する必要がなく、自吸式でないが繊維質のゴミに対応できる無閉塞ポンプを使用することができるので、より信頼性のあるマンホールポンプ施設を構築することができる。
【0012】本発明は、気密隔壁の一部を上方に凸設して凸設部の内側に下部汚水貯留空間内の汚水が流入する余裕空間を形成し、余裕空間内の汚水の水位を汚水排出ポンプのポンプ部より上方まで上昇可能としたことにも特徴を有する。このように、凸設部の内側に下部汚水貯留空間内の汚水が流入する余裕空間を形成し、余裕空間内の汚水の水位を汚水排出ポンプのポンプ部より上方まで上昇可能としたことにより、下部汚水貯留空間内の汚水の水位が余裕空間内を上昇し、同水位が汚水排出ポンプのポンプ部より上方に位置すると、連通管現象によって汚水排出ポンプのポンプ部内にも汚水が自動的に流入することになる。従って、汚水排出ポンプとして、構造が複雑で繊維質のゴミで閉塞する可能性がある自吸式ポンプを使用する必要がなく、自吸式でないが繊維質のゴミに対応できる無閉塞ポンプを使用することができるので、より信頼性のあるマンホールポンプ施設を構築することができる。
【0013】本発明は、下部汚水貯留空間内の汚水中に汚水排出ポンプを配設したことにも特徴を有する。このように、下部汚水貯留空間内の汚水中に汚水排出ポンプを配設したことにより、汚水排出ポンプとして、構造が複雑で繊維質のゴミで閉塞する可能性がある自吸式ポンプを使用する必要がなく、自吸式でないが繊維質のゴミに対応できる無閉塞ポンプを使用することができるので、より信頼性のあるマンホールポンプ施設を構築することができる。
【0014】本発明は、気密隔壁の汚水排出ポンプの直上方をなす部分にポンプ取出開口部を設け、ポンプ取出開口部に気密蓋を着脱自在に取り付けたことにも特徴を有する。このように、気密蓋を、着脱自在に取り付けたポンプ取出開口部を通して汚水排出ポンプを取り出すようにしたので、気密蓋を取り外して容易に汚水排出ポンプを下部汚水貯留空間から取り出すことができるとともに、通常時は、ポンプ取出開口部は気密蓋によって気密状態に閉じられているので、悪臭や有毒ガスが上部作業空間内に流出することがなく、上部作業空間を快適かつ安全な環境に維持することができる。
【0015】本発明は、気密蓋に汚水排出ポンプを一体的に連結したことにも特徴を有する。このように、気密蓋に汚水排出ポンプを一体的に連結したので、汚水排出ポンプの取出しを、気密蓋の取り外しと同時に行なうことができ、汚水排出ポンプの補修作業をより容易かつ円滑に行なうことができる。
【0016】本発明は、汚水排出ポンプをポンプ部とポンプ部を駆動するモータ部とから構成し、ポンプ部を下部汚水貯留空間内の汚水中に配設すると共に、モータ部を気密隔壁上に設置したことにも特徴を有する。このように、汚水排出ポンプをポンプ部とモータ部に二分割し、ポンプ部を汚水中に配設するとともに、モータ部を気密隔壁上に設置したので、モータ部のみが故障した場合、汚水排出ポンプ全体を取り外すことなく、汚水排出ポンプの補修を行なうことができる。また、モータ部の点検を定期的に快適かつ安全な環境下で行なうことができる。
【0017】また、上記目的を達成するための本発明に係るマンホールポンプ施設は、頂部に開閉可能な進入開口を有する有底筒体からなるマンホールと、マンホールの内部空間を竪壁部分で仕切り、マンホールの底面上に、汚水貯留空間と、上部が進入開口と連絡する作業空間とを形成する気密隔壁と、外部から汚水を汚水貯留空間内に流入させる汚水流入配管と、底面上に設置され、汚水貯留空間内の汚水を外部に排出するための汚水排出ポンプとを具備することを特徴とする。このように、マンホールの底面上に汚水排出ポンプを設置することができるので、汚水排出ポンプとして、構造が複雑で繊維質のゴミで閉塞する可能性がある自吸式ポンプを使用する必要がなく、自吸式でないが繊維質のゴミに対応できる無閉塞ポンプを使用することができるので、より信頼性のあるマンホールポンプ施設を構築することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、添付図に示す実施例を参照して、本発明に係るマンホールポンプ施設について詳細に説明する。
(第1実施の形態)まず、本実施の形態に係るマンホールポンプ施設10の構成について、図1を参照して説明する。
【0019】図示するように、本発明に係るマンホールポンプ施設10は、実質的に、地中に埋設され、頂部に開閉可能な進入開口11を有する有底筒体からなるマンホール12と、マンホール12の内部空間を下部汚水貯留空間13と上部作業空間14に仕切り、かつ上面に作業床面15を形成する気密隔壁16と、外部から汚水18を下部汚水貯留空間13内に流入させる汚水流入配管17と、下部汚水貯留空間13内の汚水18を外部に排出するための汚水排出ポンプ19とを具備する。
【0020】次に、上記した基本的構成を有するマンホールポンプ施設10の各構成要素について詳細に説明する。図示するように、マンホール12は、好ましくは中空筒状のコンクリート二次製品からなり、その頂部に設けた進入開口11は、地上面20と面一状態になっている。また、進入開口11には、開閉蓋(マンホール蓋〉21が着脱自在に取り付けられている。
【0021】気密隔壁16は、図示しない補強リブを下面に取り付けた平板からなり、その周縁部を所望の接合手段(溶接、ボルトなど)によってマンホール12の内周面に接合されている。マンホール12内の気密隔壁16の高さ方向取り付け位置は下部汚水貯留空間13内に貯留される汚水18の量および上部作業空間14内で作業を行なう作業者の作業の自由度等を考慮して設定できる。また、気密隔壁16は、汚水18から発生する有毒ガスまたは汚水18の付着による腐食を防止するため、好ましくはステンレス鋼鈑などの耐食性を有する板材から形成する。
【0022】汚水流入配管17は、図示の実施の形態では、上部作業空間14内にいったん進入させ、その後、気密隔壁16を貫通して下部汚水貯留空間13の上部に開口させている。しかし、汚水流入配管17は、上部作業空間14を介することなく直接下部汚水貯留空間13の上部に開口させることもできる。
【0023】本実施の形態では、汚水排出ポンプ19は、気密隔壁16の上面に形成した作業床面15の一周縁部上に設置されており、自吸式ポンプより構成されている。汚水排出ポンプ19の吸引開口部22は、気密隔壁16の中央部に設けた吸上管挿通開口部23を通して下部汚水貯留空間13内の汚水18中を下方に向けて伸延する汚水吸上管24の上端開口部25がフレキシブル接続管26を介して接続されている。また、汚水吸上管24の下端開口部27は、マンホール12の底部近傍で開口している。一方、汚水排出ポンプ19の排出開口部28はマンホールポンプ施設10の下流側配管を構成する汚水排出管29の上流側とエア抜き弁30、逆止弁32、仕切弁33を介して連通連結されている。
【0024】さらに、本実施の形態では、上部作業空間14内においてマンホール12の内周面であって、進入開口11の直下方をなす部分に、上下方向に所定の間隔を空けて複数のステップ31が取り付けられている。
【0025】次に、上記した構成を有するマンホールポンプ施設10における汚水排出ポンプ19の補修作業及び点検作業について説明する。例えば、汚水排出ポンプ19のモータ部に故障が生じた場合、作業者は開閉蓋21を取り外し、進入開口11より、ステップ31を用いて上部作業空間14内に入り、汚水排出ポンプ19のモータ部を補修する。具体的には、故障が簡単なものであれば、その場で補修を行ない、修理工場等での補修が必要であれば、汚水排出ポンプ19をいったん取り外し、外部に取り出し、補修後、再度上部作業空間14内に持ち込み取り付けることになる。この場合、本実施の形態では、汚水排出ポンプ19は、気密隔壁16によって下部汚水貯留空間13から完全に遮断された上部作業空間14内に設置されているので、作業者は悪臭や有毒ガスに悩まされることなく、快適かつ安全な環境下で、上記した補修作業を行なうことができる。作業者は、同様に、快適かつ安全な環境下で、点検作業も行なうことができる。
【0026】また、気密隔壁16は、その上面に十分な広さの作業床面15を有するので、作業者は十分な足場を確保することができ、安定した姿勢でしかも自在に補修を行なうことができ、作業の安全性を確保できるとともに作業を効率良く行なうことができる。特に、気密隔壁16を水平平板から形成した場合は、作業者はさらに安定した姿勢で作業を行なうことができる。また、気密隔壁16は、その上面に十分な広さの作業床面15を有するので、汚水排出ポンプ19、汚水排出管29、エア抜き弁30、逆止弁32、仕切弁33等のレイアウトを自在に行なうことができ、この面からも補修作業を行ないやすい環境をマンホール12内に形成することができる。
【0027】また、本実施の形態では、汚水排出ポンプ19、汚水排出管29、エア抜き弁30、逆止弁32、仕切弁33が、気密隔壁16によって下部汚水貯留空間13と完全に遮断されている上部作業空間14内に配置されているので、汚水18や汚水18から発生するガスの付着による汚水排出ポンプ19等の腐食を可及的に防止することができる。
【0028】さらに、本実施の形態では、既設のマンホールポンプ施設内の設備を取り外し、その後、気密隔壁16をマンホール12内に取り付け、気密隔壁16上に汚水排出ポンプ19を取り付けることによって、本実施の形態に係るマンホールポンプ施設10を構築することができる。この場合、既設のマンホールポンプ施設の有効利用を図ることができるという効果も奏することができる。
【0029】(第2実施の形態)本実施の形態に係るマンホールポンプ施設40は、図2に示すように、気密隔壁16の少なくとも一部を下方に凹設して下部汚水貯留空間13内の汚水18中に浸漬可能な有底筒状の凹部隔壁41を形成し、作業床面15を上面に形成する凹部隔壁41の底板42上に汚水排出ポンプ19を設置したことにも特徴を有する。なお、以下の各実施の形態において、第1の実施の形態に係るマンホールポンプ施設40と同様な構成及び機能を有する部材は、同一の符号で示す。
【0030】このように、本実施の形態では、凹部隔壁41の底板42上に汚水排出ポンプ19を設置したことにより、下部汚水貯留空間13内の汚水18の水位47が、凹部隔壁41の外周面43とマンホール12の周壁44の内周面との間に形成される余裕空間45内を上昇し、同水位47が汚水排出ポンプ19のポンプ部46より上方に位置すると、連通管現象によって汚水排出ポンプ19のポンプ部46内にも汚水18が自動的に流入することになる。従って、汚水排出ポンプ19として、構造が複雑で繊維質のゴミで閉塞する可能性がある自吸式ポンプを使用する必要がなく、自吸式でないが繊維質のゴミに対応できる無閉塞ポンプを使用することができるので、より信頼性のあるマンホールポンプ施設を構築することができる。また、この際、水位センサで、汚水排出ポンプ19のポンプ部46内に汚水18が自動的に流入したことを検出し、検出信号に基づいて汚水排出ポンプ19を駆動して汚水を自動的に排出することができる。
【0031】なお、気密隔壁16の凹設形態は、図2に示す形態に何ら限定されるものではなく、例えば、気密隔壁16を段丘状とした形態、気密隔壁16の中央部を隆起すると共に中央部の周りの環状周縁部を凹設した形態や、気密隔壁16を水平方向に交互に凹凸とした形態や、気密隔壁16を階段状とした形態とすることができる。
【0032】また、本実施の形態では、図3に示すように、気密隔壁16の中央部に開口部48を設け、その周囲に設けた環状台座49上にポンプ取付板50をボルト等で固定し、ポンプ取付板50上に仕切り弁51をボルト等で固定し、さらにポンプ取付板50の下面中央部に汚水吸上管24の上端開口部52を一体的に連通連結すると共に、仕切り弁51の上面に汚水排出ポンプ19を、その吸引開口部53が汚水吸上管24の上端開口部52と整合する状態でボルト等を用いて固定載置している。
【0033】このような構成とすることによって、汚水排出ポンプ19をマンホールポンプ施設40から取り出して補修する必要がある場合であっても、仕切り弁51を閉弁した後、仕切り弁51から汚水排出ポンプ19を容易かつ迅速に取り外して、補修を行なうことができる。なお、仕切り弁51から汚水排出ポンプ19を取り外しても、仕切り弁51が閉弁状態なので、悪臭や有毒ガス等の上部作業空間14への流入を確実に防止することができる。なお、本実施の形態では、図2に示すように、凹部隔壁41の底板42の隅部には結露捕集用溝54が設けられており、結露捕集用溝54内には逆止弁55を具備する結露水排出配管56を介して結露水を下部汚水貯留空間13内に流出する結露水排出用ポンプ57が配設されている。また、58はベント管である。
【0034】さらに、図2に示すように気密隔壁16の一部を凹設する代わりに、気密隔壁16の一部を上方に凸設して凸設部を形成し、該凸設部の内側に下部汚水貯留空間13内の汚水18が流入する余裕空間を形成し、余裕空間内の汚水18の水位を汚水排出ポンプ19のポンプ部〈ポンプケーシング〉より上方まで上昇可能としたことにも特徴を有する。この場合、汚水流入配管17を拡径して、その内部に余裕空間を形成するようにしてもよい。
【0035】このように、凸設部の内側に下部汚水貯留空間13内の汚水18が流入する余裕空間を形成し、余裕空間内の汚水18の水位を汚水排出ポンプ19のポンプ部より上方まで上昇可能としたことにより、下部汚水貯留空間13内の汚水18の水位が余裕空間内を上昇し、同水位が汚水排出ポンプ19のポンプ部より上方に位置すると、連通管現象によって汚水排出ポンプ19のポンプ部内にも汚水18が自動的に流入することになる。従って、汚水排出ポンプ19として、構造が複雑で繊維質のゴミで閉塞する可能性がある自吸式ポンプを使用する必要がなく、自吸式でないが繊維質のゴミに対応できる無閉塞ポンプを使用することができるので、より信頼性のあるマンホールポンプ施設を構築することができる。
【0036】(第3実施の形態)本実施の形態に係るマンホールポンプ施設60は、図4に示すように、下部汚水貯留空間13内の汚水18中に、汚水排出ポンプ19を配設したことに特徴を有する。このように、下部汚水貯留空間13内の汚水18中に汚水排出ポンプ19を配設したことにより、汚水排出ポンプ19として、構造が複雑で繊維質のゴミで閉塞する可能性がある自吸式ポンプを使用する必要がなく、自吸式でないが繊維質のゴミに対応できる無閉塞ポンプを使用することができるので、より信頼性のあるマンホールポンプ施設を構築することができる。
【0037】また、本実施の形態では、図4に示すように、汚水排出ポンプ19の直上方をなす気密隔壁16の部分にポンプ取出開口部61を設け、ポンプ取出開口部61に気密蓋62を着脱自在に取り付けている。このように、気密蓋62を着脱自在に取り付けたポンプ取出開口部61を通して汚水排出ポンプ19を取り出すようにしたので、気密蓋62を取り外して容易に汚水排出ポンプ19を下部汚水貯留空間13から取り出すことができる。また、通常時は、ポンプ取出開口部61は気密蓋62によって気密状態に閉じられているので、悪臭や有毒ガスが上部作業空間14内に流出することがなく、上部作業空間14を快適かつ安全な環境に維持することができる。さらに、気密蓋62を取り外した後に、別途用意した気密蓋でポンプ取出開口部61を塞ぐことによって、汚水排出ポンプ19の補修中でも、悪臭や有毒ガスの上部作業空間14内への流出を防止することができる。
【0038】また、本実施の形態では、図4に示すように、気密蓋62に汚水排出ポンプ19を一体的に連結したことにも特徴を有する。このように、気密蓋62に汚水排出ポンプ19を一体的に連結したので、汚水排出ポンプ19の取出しを、気密蓋62の取り外しと同時に行なうことができ、汚水排出ポンプ19の補修作業をより容易かつ円滑に行なうことができる。
【0039】(第4実施の形態)本実施の形態に係るマンホールポンプ施設70は、図5に示すように、汚水排出ポンプ19を、ポンプ部71と、同ポンプ部71を駆動するモータ部72とから構成し、ポンプ部71を下部汚水貯留空間13内の汚水18中に配設すると共に、モータ部72を気密隔壁16上に設置したことに特徴を有する。このように、汚水排出ポンプ19をポンプ部71とモータ部72に二分割し、ポンプ部71を汚水18中に配設するとともにモータ部72を気密隔壁16上に設置したので、モータ部72のみが故障した場合、汚水排出ポンプ19全体を取り外すことなく、モータ部72のみを取り外して、汚水排出ポンプ19の補修を行なうことができる。また、モータ部72の点検を、定期的に、快適かつ安全な環境下で行なうことができる。本実施の形態では、汚水排出ポンプ19の二分割構造は、気密隔壁16の中央部に設けた開口部73にポンプ取付板74を着脱自在に取り付け、ポンプ取付板74の下面に筒状の連絡フレーム75を介してポンプ部71のポンプケーシングを一体的に連結し、ポンプ取付板74の上面にボルト等でモータ部72のケーシングを着脱自在に連結し、さらに、ポンプ部71内のインペラをモータ部72内のモータと、連絡フレーム75内を伸延する長尺の中間シャフト76によって連結することによって構成している。
【0040】(第5実施の形態)本実施の形態に係るマンホールポンプ施設80は、図6に示すように、頂部に開閉可能な進入開口11を有する有底筒体からなるマンホール12と、マンホール12の内部空間を竪壁部分で仕切り、マンホール12の底面81上に、汚水貯留空間13と、上部が進入開口14と連絡する作業空間14とを形成する気密隔壁15と、外部から汚水を汚水貯留空間13内に流入させる汚水流入配管17と、底面81上に設置され、汚水貯留空間13内の汚水を外部に排出するための汚水排出ポンプ19とを具備する。
【0041】このように、マンホール12内の水平断面積を十分に確保できる等の場合には、マンホール12の底面81上に汚水排出ポンプ19を設置することができるので、汚水排出ポンプ19として、構造が複雑で繊維質のゴミで閉塞する可能性がある自吸式ポンプを使用する必要がなく、自吸式でないが繊維質のゴミに対応できる無閉塞ポンプを使用することができ、より信頼性のあるマンホールポンプ施設を構築することができる。。また、底面81を作業床面として用いて、汚水排出ポンプ19の補修を容易に行なうことができる。また、図示の実施の形態では、汚水貯留空間13を作業空間14の一側に並設しているが、作業空間14をマンホール12の底面81の中央部に配設し、汚水貯留空間13を作業空間14の周りに環状に配設することもできる。
【0042】以上、本発明を幾つかの実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に係る構成に限定されるものではなく、発明の技術的範囲内において各種変容例が考えられる。例えば、気密隔壁はマンホール内部の全面のみならず,一部のみ設けることもできる。また、気密隔壁は、マンホール内部への持ち込みを考慮して、分解組立構造とすることもできる。
【0043】
【発明の効果】本発明の主たる効果について説明すると、以上説明してきたように、本発明に係るマンホールポンプ施設は、上部作業空間を汚水が流入する下部汚水貯留空間から完全に気密状態で遮断することができるので、下部汚水貯留空間において発生する悪臭や有毒ガスが上部作業空間内に流入することがなく、作業者は汚水排出ポンプの補修作業などを安全、容易かつ快適に行なうことができる。しかも、気密隔壁はその上面に十分な広さの作業床面を形成することができるので、作業者は、十分な足場を確保しながら、汚水排出ポンプの補修作業等を行なうことができ、この面からも補修作業の安全性を十分に確保できる。また、単にマンホール内部を気密隔壁によって二分割するのみでマンホールポンプ施設を構築できるので、安価に安全かつ快適な作業環境を有するマンホールポンプ施設を構築できる。
【0044】また、汚水排出ポンプを気密隔壁上に設置した場合は、作業者は、上部作業空間内で直接汚水排出ポンプを観察しながら、汚水排出ポンプを補修することができる。また、汚水排出ポンプ、弁類、配管類が、汚水中に浸漬されていない、また、汚水から発生するガスと接触することがないので、汚水排出ポンプ等の汚水による腐食を防止でき、汚水排出ポンプの耐久性を長年にわたって確保することができる。
【0045】また、気密隔壁の一部を下方に凹設して設けた凹部隔壁の底板上に汚水排出ポンプを設置した場合、又は、気密隔壁の一部を上方に凸設して凸設部の内側に下部汚水貯留空間内の汚水が流入する余裕空間を形成し、余裕空間内の汚水の水位を汚水排出ポンプのポンプ部より上方まで上昇可能とした場合は、余裕空間内の水位が上昇すると、連通管現象によって汚水排出ポンプのポンプ部内にも汚水が自動的に流入することになるため、下部汚水貯留空間内の汚水の水位が余裕空間内を上昇し、同水位が汚水排出ポンプのポンプ部より上方に位置すると、連通管現象によって汚水排出ポンプのポンプ部内にも汚水が自動的に流入することになる。従って、汚水排出ポンプとして、構造が複雑で繊維質のゴミで閉塞する可能性がある自吸式ポンプを使用する必要がなく、自吸式でないが繊維質のゴミに対応できる無閉塞ポンプを使用することができるので、より信頼性のあるマンホールポンプ施設を構築することができる。
【0046】また、本発明は、下部汚水貯留空間内の汚水中に汚水排出ポンプを配設したことにより、汚水排出ポンプとして、構造が複雑で繊維質のゴミで閉塞する可能性がある自吸式ポンプを使用する必要がなく、自吸式でないが繊維質のゴミに対応できる無閉塞ポンプを使用することができるので、より信頼性のあるマンホールポンプ施設を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態に係るマンホールポンプ施設の構成説明図である。
【図2】本発明の第2実施の形態に係るマンホールポンプ施設の構成説明図である。
【図3】本発明の第2実施の形態に係るマンホールポンプ施設における汚水排出ポンプの分離構造の拡大説明図である。
【図4】本発明の第3実施の形態に係るマンホールポンプ施設の構成説明図である。
【図5】本発明の第4実施の形態に係るマンホールポンプ施設の構成説明図である。
【図6】本発明の第5実施の形態に係るマンホールポンプ施設の構成説明図である。
【図7】従来のマンホールポンプ施設の構成説明図である。
【符号の説明】
10 マンホールポンプ施設
11 進入開口
12 マンホール
13 下部汚水貯留空間
14 上部作業空間
15 作業床面
16 気密隔壁
17 汚水流入配管
18 汚水
19 汚水排出ポンプ
20 地上面
21 開閉蓋(マンホール蓋)
22 吸引開口部
23 吸上管挿通開口部
24 汚水吸上管
25 上端開口部
26 フレキシブル接続管
27 下端開口部
28 排出開口部
29 汚水排出管
30 エア抜き弁
31 ステップ
32 逆止弁
33 仕切弁
40 マンホールポンプ施設
41 凹部隔壁
42 底板
43 外周面
44 周壁
45 余裕空間
46 ポンプ部
47 水位
48 開口部
49 環状台座
50 ポンプ取付板
51 仕切り弁
52 上端開口部
53 吸引開口部
54 結露捕集用溝
55 逆止弁
56 結露水排出配管
57 結露水排出用ポンプ
58 ベント管
60 マンホールポンプ施設
61 ポンプ取出開口部
62 気密蓋
70 マンホールポンプ施設
71 ポンプ部
72 モータ部
73 開口部部
74 ポンプ取付板
75 連絡フレーム
76 中間シャフト
80 マンホールポンプ施設
81 底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】 頂部に開閉可能な進入開口を有する有底筒体からなるマンホールと、前記マンホールの内部空間を下部汚水貯留空間と上部作業空間に仕切り、かつ上面に作業床面を形成する気密隔壁と、外部から汚水を前記下部汚水貯留空間内に流入させる汚水流入配管と、前記下部汚水貯留空間内の前記汚水を外部に排出するための汚水排出ポンプとを具備することを特徴とするマンホールポンプ施設。
【請求項2】 前記汚水排出ポンプを前記気密隔壁上に設置し、前記汚水排出ポンプの吸引口に、下端開口部を前記下部汚水貯留空間内の前記汚水内に浸漬する汚水吸上管の上端開口部を連通連結したことを特徴とする請求項1記載のマンホールポンプ施設。
【請求項3】 前記気密隔壁の一部を下方に凹設して前記下部汚水貯留空間内の前記汚水中に浸漬可能な有底筒状の凹部隔壁を形成し、前記凹部隔壁の底板上に前記汚水排出ポンプを設置したことを特徴とする請求項2記載のマンホールポンプ施設。
【請求項4】 前記気密隔壁の一部を上方に凸設して凸設部を形成し、該凸設部の内側に前記下部汚水貯留空間内の前記汚水が流入する余裕空間を形成し、前記余裕空間内の前記汚水の水位を前記汚水排出ポンプのポンプ部より上方まで上昇可能としたことを特徴とする請求項2記載のマンホールポンプ施設。
【請求項5】 前記下部汚水貯留空間内の前記汚水中に前記汚水排出ポンプを配設したことを特徴とする請求項1記載のマンホールポンプ施設。
【請求項6】 前記気密隔壁の前記汚水排出ポンプの直上方をなす部分に該ポンプ取出開口部を設け、該ポンプ取出開口部に気密蓋を着脱自在に取り付けたことを特徴とする請求項5記載のマンホールポンプ施設。
【請求項7】 前記気密蓋に前記汚水排出ポンプを一体的に連結したことを特徴とする請求項6記載のマンホールポンプ施設。
【請求項8】 前記汚水排出ポンプをポンプ部と該ポンプ部を駆動するモータ部とから構成し、前記ポンプ部を前記下部汚水貯留空間内の前記汚水中に配設すると共に、前記モータ部を前記気密隔壁上に設置したことを特徴とする請求項1記載のマンホールポンプ施設。
【請求項9】 頂部に開閉可能な進入開口を有する有底筒体からなるマンホールと、前記マンホールの内部空間を竪壁部分で仕切り、前記マンホールの底面上に、汚水貯留空間と、上部が前記進入開口と連絡する作業空間とを形成する気密隔壁と、外部から汚水を前記汚水貯留空間内に流入させる汚水流入配管と、前記底面上に設置され、前記汚水貯留空間内の前記汚水を外部に排出するための汚水排出ポンプとを具備することを特徴とするマンホールポンプ施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2003−293444(P2003−293444A)
【公開日】平成15年10月15日(2003.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−92707(P2002−92707)
【出願日】平成14年3月28日(2002.3.28)
【出願人】(591013388)株式会社東洋電機工業所 (11)
【Fターム(参考)】