説明

マンホールポンプ装置及びその運転方法

【課題】 簡単な構造で異物によるポンプの閉塞事故を効果的に防ぐことができるマンホールポンプ装置を提供する。
【解決手段】汚水流入管22から流入する汚水中の異物を捕捉するストレーナ20を設置し、ストレーナ20はその一端が汚水流入管22に連通し他端がポンプ30の吐出部32に連通しており、さらに汚水流入管22とストレーナ20の間に逆止弁23が設置され、逆止弁23とストレーナ20を接続する配管21に分岐部25が設けられ、分岐部25に、ストレーナ20を通過したポンプ30の吐出水をマンホール10外へ送る吐出配管21を接続したことで、ストレーナ20ポンプ30の吐出水を通過させて逆洗し、捕捉した異物を除去するように構成したマンホールポンプ装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水の中継輸送用の圧送設備として用いられるマンホールポンプ装置及びその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水の中継輸送に用いられるマンホールポンプ装置(マンホール式下水中継ポンプ設備)の従来例として、図1に示すものがある(特許文献1)。同図に示すマンホールポンプ装置100は、マンホール10と、マンホール10内に設置され汚水を吸い上げてマンホール10外へ移送するポンプ(水中ポンプ)30とを備えて構成されている。マンホール10は、コンクリート製等で、筒状に形成された側壁10bの上端に地上に開口する開口部10aを備え、開口部10aには蓋12が取り付けられている。一方、マンホール10の底部10cにはポンプ取付台13が設置され、このポンプ取付台13に汚水が溜まる凹部13aが形成されている。
【0003】
そして、ポンプ取付台13の上面に、ポンプ30を着脱可能に設置するポンプ着脱装置15が設置され、ポンプ着脱装置15には、マンホール10内に垂直に立設されたガイドパイプ16の下端部が取り付けられている。そして、このガイドパイプ16にガイドされて昇降可能となるようにポンプ30が設置されている。ポンプ30は、チェーン等の吊下手段17によって垂下されて開口部10aからマンホール10内に搬入され、ガイドパイプ16でガイドされながらマンホール10内を降下するようになっており、マンホール10内の底部10cまで降下し、その位置でポンプ着脱装置15に取り付けられて設置される。この設置位置で、ポンプ30の吸込口31がポンプ取付台13の凹部13a内に配置され、ポンプ30の吐出口32がポンプ着脱装置15に取り付けられた曲管18の一端18aに連通接続されるようになっている。曲管18は、水平方向に開口する一端18aと上方に向かって開口する他端18bとの間が略直角に屈曲している。曲管18の他端18bには、略垂直に設置された直線状の吐出配管14の下端14aが接続され、吐出配管14の上端は、側壁10bを貫通してマンホール10の外部へ連通している。一方、マンホール10には、マンホール10の外部から連通してマンホール10内に開口する汚水流入管11が設置されている。
【0004】
このマンホールポンプ装置100は、汚水流入管11からマンホール10内に汚水(下水)が流入して所定水位まで溜まると、水位計(図示せず)がこれを検出することで、ポンプ30の運転が開始されてマンホール10内の汚水が吸い上げられ、この汚水が吐出配管14を通ってマンホール10外へ圧送される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このマンホールポンプ装置100では、汚水流入管11からマンホール10内に流入する汚水には、固形物を含む様々な異物が混入している。そのため、異物が混入した汚水がポンプ30に吸い込まれることで、しばしばポンプ30の閉塞事故やポンプ30内部での異物の絡み付きによる過電流保護装置の作動などのトラブルが発生していた。マンホールポンプ装置100は、生活排水などの下水の圧送に用いられるため、その機能停止は住民生活に多大な影響を及ぼす可能性があり、加えて、閉塞したポンプ30から異物を除去する作業は、マンホール10内に作業員が入り込んで行うため衛生上の問題がある。このため、マンホールポンプ装置100における異物によるポンプ30の閉塞事故を未然に防ぐ対策が必要である。
【0006】
そこで、従来のマンホールポンプ装置100では、ポンプ30に、比較的閉塞のおそれが少ない構造のポンプを用いている。図2は、従来のマンホールポンプ装置100に用いるボルテックス形ポンプ30−1の構造例を示す図である。ボルテックス形ポンプ30−1は、電動機33が収納された本体部35の下部にケーシング(ポンプケーシング)34が設置され、電動機33の回転軸36に取り付けられた羽根車37がケーシング34内に配置されている。そしてケーシング34の下端に吸込口31が設けられ、側部に吐出口32が設けられると共に、ケーシング34の羽根車37の下側には、大きな空隙34aが形成されている。これにより、比較的径の大きな異物を含む汚水が吸込口31から吸い込まれてケーシング34内に入っても、異物が羽根車37に衝突したり絡み付いたりすることなく空隙34aを通過して、吐出口32から吐出される。したがって閉塞事故が起こりにくい。
【0007】
一般に、いわゆる汚物用ポンプ(比較的径の大きな異物を含む汚水に用いられるポンプ)には、上記のボルテックス形ポンプ30−1のように、そのポンプの吐出口の径寸法に対して70%以上の径寸法を有する異物がケーシング内を通過しても閉塞しない構造のポンプが用いられている。一方、いわゆる一般汚水用あるいは雑排水用のポンプ(比較的径の大きな異物を含まない汚水に用いられるポンプ)には、そのポンプの吐出口の径寸法に対して50%以下の径寸法の異物でなければケーシング内を通過できない構造のポンプも用いられている。従来のマンホールポンプ装置100では、汚水中に径寸法の大きな異物が含まれるため、上記のいわゆる汚物用ポンプを設置しなければならず、一般排水用あるいは雑排水用のポンプは設置することができなかった。
【0008】
ところが、ボルテックス形ポンプ30−1などのいわゆる汚物用ポンプは、異物の通過性能に重点を置いて設計されているため、一般排水用ポンプと比較してポンプ効率が大きく劣る。そのため、ボルテックス形ポンプ30−1で一般排水用のポンプと同程度の揚水性能を発揮するには、より大きな出力の電動機を採用する必要があり、マンホールポンプ装置100の設置コストが増大してしまう。また、大きな出力の電動機は消費電力が大きく、運転コストも増大してしまう。
【0009】
一方、従来のマンホールポンプ装置の他の例として、ポンプの閉塞事故を防止するため、あらかじめポンプに流入する汚水に含まれる異物を取り除く目的で、マンホール内にし渣分離槽を設けたものがある(特許文献2)。この種のマンホールポンプ装置によれば、汚水に含まれる大きな径の異物(し渣)がし渣分離槽で取り除かれて、マンホール内に流入しないので、ボルテックス形ポンプ30−1よりもポンプ効率が良い一般排水用ポンプを設置することが可能となる。しかしこの場合、し渣分離槽をマンホール内に設置しなければならないため、マンホールポンプ装置が大掛かりでその構造も複雑になり、設置コストが増大してしまう。またマンホールの内部が狭い場合、し渣分離槽を設置できないことがある。
【特許文献1】特開平11−132198号公報
【特許文献2】特開2004−332365号公報
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、簡単な構造で異物によるポンプの閉塞事故を効果的に防ぐことができると共に、小型で揚水性能の優れたポンプを設置できるマンホールポンプ装置及びその運転方法を提供することにある。
【0011】
上記課題を解決するため本願の請求項1に記載の発明は、マンホールと、前記マンホール内に汚水を流入させる汚水流入管と、前記マンホール内の汚水を吸い上げてマンホール外へ移送するポンプとを備えたマンホールポンプ装置において、前記汚水流入管から流入する汚水を通過させて該汚水中の異物を捕捉するストレーナを装備し、前記ストレーナは前記ポンプの揚水により逆洗され、捕捉した異物を除去するように構成したことを特徴とする。
【0012】
本願の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマンホールポンプ装置において、前記ストレーナはその一端が逆止弁を経由して前記汚水流入管に連通し、他端が前記ポンプの吐出部に連通しており、前記汚水流入管から流入する汚水が前記ストレーナを通過して前記ポンプの吐出部から前記ポンプ内に流入し、前記ポンプの吸込部から前記マンホール内に流出するように構成したことを特徴とする。
【0013】
本願の請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のマンホールポンプ装置において、前記逆止弁と前記ストレーナを接続する配管に分岐部が設けられ、該分岐部に、前記ストレーナを通過した前記ポンプの吐出水を前記マンホール外へ送る吐出配管が接続されていることを特徴とする。
【0014】
本願の請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマンホールポンプ装置において、前記ポンプとして、その内部を通過可能な異物の径寸法が、吐出口径の50%以下の径寸法であるポンプを設置したことを特徴とする。
【0015】
本願の請求項5に記載の発明は、マンホールと、前記マンホール内に汚水を流入させる汚水流入管と、前記マンホール内の汚水を吸い上げてマンホール外へ移送するポンプとを備えたマンホールポンプ装置の運転方法において、ストレーナを装備し、前記汚水流入管からの汚水を前記ストレーナを通過させて該汚水中の異物を捕捉した後、該汚水を前記マンホール内に流入させ、該マンホール内の汚水の水位が所定レベル以上となったら、前記ポンプを運転し、該ポンプの揚水により前記ストレーナを逆洗して該ストレーナに捕捉された異物を除去することを特徴とする。
【0016】
本願の請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のマンホールポンプ装置の運転方法において、前記汚水流入管からの汚水を前記ストレーナを通過させた後、前記ポンプを経由して前記マンホール内に流入させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本願の請求項1に記載の発明によれば、汚水流入管から流入する汚水を通過させて該汚水中の異物を捕捉するストレーナを具備したので、簡単な構成で、マンホール内に流入する汚水中に含まれる異物を除去してマンホール内への流入を防ぐことができ、ポンプが異物を吸い込んで閉塞することを防止できる。加えて、ストレーナはポンプの揚水により逆洗され、捕捉した異物を除去するように構成したので、ポンプを運転する度に、その吐出水でストレーナを洗浄することができる。したがって、メンテナンスをしなくても、ストレーナに付着した異物を効果的に除去してその目詰まりを防止できるので、ストレーナの異物除去機能を長期間に渡って維持可能となり、マンホールポンプ装置のメンテナンスの手間が軽減される。
【0018】
また、本願の請求項1に記載の発明によれば、マンホール内に流入する汚水中に含まれる異物をストレーナで除去して該異物のマンホール内への流入を防ぐことができるので、異物による閉塞の防止に重点を置いて設計されたポンプ以外のポンプでも設置することができ、このようなポンプとして、比較的小さな電動機を備えた小型でポンプ効率の良いポンプを設置できるので、マンホールポンプ装置の設置コスト及び運転コストを低減することが可能となる。
【0019】
本願の請求項2に記載の発明によれば、ストレーナはその一端が逆止弁を経由して汚水流入管に連通し、他端がポンプの吐出部に連通しており、汚水流入管から流入する汚水がストレーナを通過してポンプの吐出部からポンプ内に流入し、ポンプの吸込部からマンホール内に流出するように構成したので、簡単な構成でかつ小さな設置スペースで、ポンプ停止時には、汚水流入管からの汚水をストレーナ及びポンプ内を経由してマンホール内に流入させる一方、ポンプ運転時には、ポンプの排水を、汚水流入管から流入する汚水とは逆方向にストレーナに通過させることでストレーナを逆洗することが可能なマンホールポンプ装置を提供できる。
【0020】
本願の請求項3に記載の発明によれば、逆止弁とストレーナを接続する配管に分岐部が設けられ、該分岐部に、ストレーナを通過したポンプの吐出水をマンホール外へ送る吐出配管が接続されているので、簡単な構成でかつ小さな設置スペースで、ポンプ停止時には、汚水流入管からの汚水をストレーナ及びポンプ内を経由してマンホール内に流入させる一方、ポンプ運転時には、ポンプの吐出水を、汚水流入管から流入する汚水とは逆方向にストレーナに通過させることでストレーナを逆洗すると共に、このポンプの吐出水を汚水流入管に逆流させることなく吐出配管を通してマンホール外へ送ることが可能なマンホールポンプ装置を提供できる。
【0021】
本願の請求項4に記載の発明によれば、その内部を通過可能な異物の径寸法が、吐出口径の50%以下の径寸法であるポンプを設置したので、このようなポンプとして、比較的小さな電動機を備えた小型でポンプ効率の良いポンプを設置できるので、マンホールポンプ装置の設置コスト及び運転コストを低減することが可能となる。
【0022】
本願の請求項5に記載の発明によれば、マンホールポンプ装置の運転方法において、汚水流入管からの汚水をストレーナを通過させて該汚水中の異物を捕捉した後、該汚水をマンホール内に流入させ、該マンホール内の汚水の水位が所定レベル以上となったら、ポンプを運転し、該ポンプの揚水によりストレーナを逆洗して該ストレーナに捕捉された異物を除去するので、マンホール内へ流入する汚水中に含まれる異物を除去でき、ポンプが異物を吸い込んで閉塞することを防止できる。また、ストレーナがポンプの揚水により逆洗され、捕捉した異物を除去するので、ポンプを運転する度に、その吐出水でストレーナを洗浄することができる。したがって、ストレーナに付着した異物を効果的に除去してその目詰まりを防止できるので、ストレーナの異物除去機能を長期間に渡って維持可能となり、マンホールポンプ装置のメンテナンスの手間が軽減される。
【0023】
本願の請求項6に記載の発明によれば、汚水流入管からの汚水をストレーナを通過させた後、ポンプを経由してマンホール内に流入させるので、マンホールポンプ装置の構成が簡単で、且つ小さなスペースに設置できるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態においては、上記従来例と共通する部分には同一の符号を付し、その部分の詳細な説明は省略する。
〔第1実施形態〕
図3は、本発明の第1実施形態にかかるマンホールポンプ装置の概略側断面図である。同図に示すマンホールポンプ装置1は、マンホール10の底部10cにポンプ30が設置され、このポンプ30の吐出口32に接続された曲管18に、接続用の配管19が取り付けられ、さらに配管19にストレーナ20が接続されている。ストレーナ20は、その内部の図示は省略するが、管路内の流路断面に異物を補足して汚水をろ過する網目状部材を設置した構成で、下記する汚水流入管22から流入する汚水(下水)がストレーナ20の網目状部材を通過する際に、異物が引っ掛かって捕捉されるようになっている。なお、このストレーナ20に点検用及び部品交換用のハンドホール(図示せず)を設けておくと、メンテナンスの作業が容易になりその時間短縮が可能となる。
【0025】
そして、ストレーナ20には、略垂直に設置された直線状の吐出配管21の下端が接続されている。吐出配管21は、その上端が側壁10bを貫通してマンホール10の外部へ連通している。一方、マンホール10内には、マンホール10の外部から連通する汚水流入管22が設置され、この汚水流入管22の流出側端部22aに逆止弁23が設置されている。逆止弁23は、汚水流入管22からマンホール10内に向かう方向には汚水を流すが、その逆方向、すなわちマンホール10内から汚水流入管22に流れ込もうとする汚水に対しては、その汚水の圧力によって弁が閉じるように構成されている。この逆止弁23には、異物の閉塞に対して安全な、弁体がボール状のものを用いるのが好ましい。さらに逆止弁23には配管24が接続され、この配管24が、吐出配管21の途中に設けた分岐部25に接続されていて、逆止弁23の一端と吐出配管21が連通接続されている。
【0026】
すなわち、このマンホールポンプ装置1では、ストレーナ20の一方の端部20bが逆止弁23を介して汚水流入管22に接続されており、他方の端部20aが配管19及び曲管18を介してポンプ30の吐出口(吐出部)32に接続されている。また、汚水流入管22とストレーナ20の間に逆止弁23が設置され、逆止弁23とストレーナ20の間の配管24と吐出配管21に分岐部25が設けられ、この分岐部25で逆止弁23に連通する配管24と吐出配管21が分岐している。
【0027】
一方、マンホール10内のポンプ取付台13の上面には、マンホール10内の水位を検出する水位センサ29が設置されている。ここで用いられる水位センサ29は、一般にピエゾ抵抗効果式あるいは静電容量式の圧力センサを組み込んだものがあり、これらは水圧を検知して電気信号に変換する機能を備えている。
【0028】
次に、このマンホールポンプ装置1の運転手順について説明する。まずポンプ30を運転していない状態で、汚水流入管22からマンホール10内に汚水が流入する。この流入する汚水は、逆止弁23を通過して配管24の先に設けられた分岐部25を経由して吐出配管21を下降し、ストレーナ20を上から下向きに通過する。汚水がストレーナ20を通過する際に、汚水中に含まれる異物が網目状部材に引っ掛かって捕集される。ストレーナ20を通過した汚水は、配管19及び曲管18を通ってポンプ30の吐出口32からポンプ30内に流入し、ポンプ30の吸込口(吸込部)31から流出してマンホール10内に溜まる。
【0029】
マンホール10内に汚水が溜まり、水位センサ29の出力が予め設定されたポンプ始動水位に達したら、ポンプ30を始動させて揚水を開始する。ポンプ30の運転により、マンホール10内の汚水が吸込口31から吸い込まれて、吐出口32から吐出される。吐出口32から吐出された汚水は、曲管18及び配管19を通ってストレーナ20を下から上向きに通過する。この際にストレーナ20を通過する汚水(ポンプ30の吐出水)は、上記の汚水流入管22から流入する汚水が通過する向きとは逆向きに通過する。このようにポンプ30の吐出水がストレーナ20を通過することで、ストレーナ20がポンプ30の揚水によって逆洗され、網目状部材に付着していた固形状や繊維状の異物が洗い流されて除去されるので、ストレーナ20の目詰まりを効果的に防止できる。ストレーナ20を通過したポンプ30の吐出水は、吐出配管21を上昇してその上端からマンホール10外へ排出される。この際、吐出配管21を上昇する汚水の一部が分岐部25から汚水流入管22へ流れ込もうとするが、逆止弁23が汚水の水圧(ポンプ30の吐出水圧)で閉じられるので、汚水流入管22に逆流することがない。
【0030】
このようにマンホールポンプ装置1では、汚水流入管22から流入する汚水を通過させて異物を捕捉するストレーナ20を備えたので、簡単な構成で、マンホール10内に流入する汚水中に含まれる異物を除去してマンホール10内への異物の流入を防ぐことができ、ポンプ30の異物による閉塞を防止できる。加えて、ストレーナ20に汚水流入管22から流入する汚水を通過させる方向とは逆方向にポンプ30の吐出水を通過させてストレーナ20で捕捉された異物を除去しその目詰まりを防止するように構成したので、ポンプ30を運転する度にその吐出水でストレーナ20を洗浄できる。したがって、メンテナンス作業をせずとも、ストレーナ20の目詰まりを防止できるので、ストレーナ20の異物除去機能を長期間に渡って維持可能となり、マンホールポンプ装置1のメンテナンスの手間が軽減される。
【0031】
また、ストレーナ20の一方の端部20bを汚水流入管22に連通させ、他方の端部20aをポンプ30の吐出口32に連通させたので、簡単な構成でかつ小さな設置スペースで、ポンプ30の停止時には、汚水流入管22からの汚水をストレーナ20及びポンプ30を経由してマンホール10内に流入させる一方、ポンプ30の運転時には、ポンプ30の吐出水を、汚水流入管22から流入する汚水とは逆方向にストレーナ20に通過させることが可能となる。
【0032】
さらに、汚水流入管22とストレーナ20の間に逆止弁23が設置され、逆止弁23とストレーナ20を接続する配管24及び吐出配管21に分岐部25が設けられ、この分岐部25で配管24と吐出配管21が分岐しているので、簡単な構成でかつ小さな設置スペースで、ストレーナ20を通過したポンプ30の吐出水を汚水流入管22に逆流させずに吐出配管21を通してマンホール10の外へ送ることが可能となる。
【0033】
マンホールポンプ装置1では、マンホール10内に流入する汚水に含まれる異物をストレーナ20で除去できるので、大きな径の異物を含む汚水がポンプ30に吸い込まれるおそれがない。したがってポンプ30に、上記のいわゆる一般汚水用あるいは雑排水用のポンプを用いることが可能である。図4は、マンホールポンプ装置1に用いられるノンクロッグ形ポンプ30−2の概略側断面図である。このノンクロッグ形ポンプ30−2は、羽根車37−2の大きさを、図3に示すボルテックス形ポンプ30−1の羽根車37よりも大きく構成し、ケーシング34−2内の汚水が通過するスペースを小さく構成したもので、吸い込まれた汚水のほぼすべてが羽根車37−2を通過するため、ボルテックス形ポンプ30−1と比較して揚水性能やポンプ効率が良い。しかしその構造上、ケーシング34内の羽根車37−2の下側の空隙34aがほとんどないので、ボルテックス形ポンプ30−1のように大きな径の異物を含む汚水を通過させることができず、いわゆる無閉塞性が若干劣るものである。
【0034】
図5は、同一出力のボルテックス形ポンプ30−1とノンクロッグ形ポンプ30−2の性能曲線を示すグラフである。同図に示すように同一の出力では、ボルテックス形ポンプ30−1よりもノンクロッグ形ポンプ30−2の方がその揚水性能及びポンプ出力が優れている。したがってボルテックス形ポンプ30−1と同程度の揚水性能を有するノンクロッグ形ポンプ30−2は、ボルテックス形ポンプ30−1よりも小さな出力の電動機を備えていれば足りる。このように本発明にかかるマンホールポンプ装置1は、ボルテックス形ポンプ30−1を設置していた従来のマンホールポンプ装置100と比較して、出力の小さな電動機を備えた小型でポンプ効率の良いポンプを設置できるので、設備の設置コストを低減でき、また消費電力を低く抑えて運転コストを低減することが可能となる。
【0035】
このようにマンホールポンプ装置1では、マンホール10に流入する汚水に含まれる比較的大きな径の異物をストレーナ20で除去できるので、ポンプ30は、吐出口32の径寸法に対して50%以下の径寸法の異物でなければそのケーシング内を通過できない構造の一般排水用あるいは雑排水用のポンプでもよい。このようなポンプは、上記のノンクロッグ形ポンプ30−2のように、異物を通過させる能力よりも高い効率を有することに重点を置いて設計された小型のポンプなので、マンホールポンプ装置1の設置コスト及び運転コストを低減することが可能となる。
【0036】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態にかかるマンホールポンプ装置を説明する。本実施形態にかかる図面及びその説明においては、上記の第1実施形態と共通する構成部分には同一の符号を付す。なお、以下で説明する事項以外の事項や図示する以外の部分については、第1実施形態と同じである。以下の他の実施形態においても同様とする。図5は、本発明の第2実施形態にかかるマンホールポンプ装置1−2の構成を示す模式図である。本実施形態が第1実施形態と相違する点は、マンホール10内に2台のポンプ30a,30bを設置した点である。即ち、図5に示す第1実施形態におけるポンプ取付台13上に、それぞれにポンプ着脱装置15とガイドパイプ16を備えたポンプ30と同一構成の2台のポンプ30a,30bを、同図の紙面手前側と奥側に適当な間隔で並べて設置したもので、これら2台のポンプ30a,30bは、それぞれのガイドパイプ16でマンホール10内を昇降可能になっている。そして図6に示すように、これら2台のポンプ30a、30bの吐出口32a,32bに接続された配管26aと配管26bが合流して一本の配管27に接続されており、この配管27に一台のストレーナ20が設置されている。このように、本実施形態のマンホールポンプ装置1−2は、一台のストレーナ20を2台のポンプ30a,30bで共有する構成である。なお、それぞれの配管26a,26bには弁28a,28bが取り付けられており、この弁28a,28bを開閉することで、汚水を流入出させるポンプ30a,30bを選択できるようになっている。
【0037】
このマンホールポンプ装置1−2では、汚水流入管22から流入した汚水は、第1実施形態と同様、逆止弁23と分岐部25を通ってストレーナ20を通過する。そしてストレーナ20を通過した汚水は、配管26a又は26bに流れ込みポンプ30a又は30bを通過してマンホール10内に流入する。このときいずれかの弁28a,28bを閉じればポンプ30a又は30bの一方にのみ汚水を流入させることができる。一方、水位センサ29(図3参照)がポンプ始動水位を検出したら、ポンプ30a又は30bのいずれかを運転して、マンホール10内に溜まった汚水を吸い上げる。ポンプ30a又は30bの吐出水が配管26a又は26bを通って配管27に入り、ストレーナ20を通過することで、第1実施形態と同様に、ストレーナ20に付着している異物が除去されてその目詰まりが防止される。ストレーナ20を通過したポンプ30a又は30bの吐出水は、吐出配管21を上昇してマンホール10外へ排出される。なおここでは、両方のポンプ30a,30bを同時に運転してマンホール10内の汚水を吸い上げることも可能である。
【0038】
〔第3実施形態〕
図7は、本発明の第3実施形態にかかるマンホールポンプ装置1−3の構成を示す模式図である。本実施形態が第2実施形態と相違する点は、各ポンプ30a,30bに接続された配管26a,26bにそれぞれストレーナ20a,20bを設置した点である。即ち、第2実施形態では、一台のストレーナ20を2台のポンプ30a,30bで共有していたが、本実施形態では、それぞれのポンプ30a,30bごとにストレーナ20a,20bを設置している。狭いマンホール10内に各種機材を設置する場合は、本実施形態のようにポンプ30a,30bごとにストレーナ20a,20bを設けることで、より小さなストレーナを分散して配置するようにした方が、各種機材の配置が行い易い場合があるためである。
【0039】
上記各実施形態のマンホールポンプ装置では、ストレーナ20の一端20aに配管19と曲管18を介してポンプ30の吐出口32を接続することで、ポンプ30の吐出水が常にストレーナ20を通過してマンホール10外に送られるように構成したが、本発明にかかるマンホールポンプ装置は、ストレーナ20がポンプ30の揚水(吐出水)で逆洗されるように構成したものであれば、ポンプ30の吐出水が常にストレーナ20を通過するように構成していなくてもよく、例えば、図示は省略するが、ストレーナ20の端部20aとポンプ30の吐出口32とを連通する配管に分岐管及び流路切換手段(切換弁)を設置することで、ポンプ30の吐出水をストレーナ20に通過させずに分岐管を通して直接マンホール10外へ送る流路を別に設けても良い。また、ストレーナ20の端部20aとポンプ30の吐出口32とを連通する配管に、その一端がマンホール10内に開口する分岐管及び流路切換手段(切換弁)を設置することで、汚水流入管22から流入する汚水がストレーナ20を通過した後、ポンプ30に流入せずにこの分岐管を通って直接マンホール10内に流入するように構成することも可能である。
【0040】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来のマンホールポンプ装置の概略側断面図である。
【図2】ボルテックス形ポンプの概略側断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるマンホールポンプ装置の概略側断面図である。
【図4】ノンクロッグ形ポンプの概略側断面図である。
【図5】ボルテックス形ポンプとノンクロッグ形ポンプの性能曲線を示すグラフである。
【図6】本発明の第2実施形態にかかるマンホールポンプ装置の構成を示す模式図である。
【図7】本発明の第3実施形態にかかるマンホールポンプ装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0042】
1〜1−3 マンホールポンプ装置
10 マンホール
11 汚水流入管
12 蓋
13 ポンプ取付台
14 吐出配管
15 ポンプ着脱装置
16 ガイドパイプ
17 吊下手段
18 曲管
19 配管
20 ストレーナ
21 吐出配管
22 汚水流入管
23 逆止弁
24 配管
25 分岐部
26a 配管
26b 配管
27 配管
28a 弁
28b 弁
29 水位センサ
30 ポンプ
30−1 ノンクロッグ形ポンプ
30−2 ボルテックス形ポンプ
31 吸込口
32 吐出口
33 電動機
34 ケーシング
34−2 ケーシング
34a 空隙
35 本体部
36 回転軸
37 羽根車
37−2 羽根車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールと、前記マンホール内に汚水を流入させる汚水流入管と、前記マンホール内の汚水を吸い上げてマンホール外へ移送するポンプとを備えたマンホールポンプ装置において、
前記汚水流入管から流入する汚水を通過させて該汚水中の異物を捕捉するストレーナを装備し、
前記ストレーナは前記ポンプの揚水により逆洗され、捕捉した異物を除去するように構成したことを特徴とするマンホールポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のマンホールポンプ装置において、
前記ストレーナはその一端が逆止弁を経由して前記汚水流入管に連通し、他端が前記ポンプの吐出部に連通しており、前記汚水流入管から流入する汚水が前記ストレーナを通過して前記ポンプの吐出部から前記ポンプ内に流入し、前記ポンプの吸込部から前記マンホール内に流出するように構成したことを特徴とするマンホールポンプ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のマンホールポンプ装置において、
前記逆止弁と前記ストレーナを接続する配管に分岐部が設けられ、該分岐部に、前記ストレーナを通過した前記ポンプの吐出水を前記マンホール外へ送る吐出配管が接続されていることを特徴とするマンホールポンプ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマンホールポンプ装置において、
前記ポンプとして、その内部を通過可能な異物の径寸法が、吐出口径の50%以下の径寸法であるポンプを設置したことを特徴とするマンホールポンプ装置。
【請求項5】
マンホールと、前記マンホール内に汚水を流入させる汚水流入管と、前記マンホール内の汚水を吸い上げてマンホール外へ移送するポンプとを備えたマンホールポンプ装置の運転方法において、
ストレーナを装備し、
前記汚水流入管からの汚水を前記ストレーナを通過させて該汚水中の異物を捕捉した後、該汚水を前記マンホール内に流入させ、該マンホール内の汚水の水位が所定レベル以上となったら、前記ポンプを運転し、該ポンプの揚水により前記ストレーナを逆洗して該ストレーナに捕捉された異物を除去することを特徴とするマンホールポンプ装置の運転方法。
【請求項6】
請求項5に記載のマンホールポンプ装置の運転方法において、
前記汚水流入管からの汚水を前記ストレーナを通過させた後、前記ポンプを経由して前記マンホール内に流入させることを特徴とするマンホールポンプ装置の運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate