説明

マンホール密閉装置の取付治具および取付方法

【課題】マンホールから外部への漏れを抑制することができるマンホール密閉装置の取付治具および取付方法を提供すること。
【解決手段】マンホール密閉装置の取付治具20は、受圧板2に形成され、かつ外蓋に対して受圧板2を保持する保持ボルトが締結される保持ボルト用締結穴2bに締結されることで受圧板2を取付治具20に固定する位置決めボルト24が挿入される位置決めボルト用貫通穴21bと、マンホールに形成され、かつマンホールに対して外蓋を固定する固定ボルトが締結される固定ボルト用締結穴に締結されるガイドピンが挿入されるガイドピン用貫通穴21aとを有する治具本体21を備える。この取付治具20は、位置決めボルト24により受圧板2を固定し、固定ボルト用締結穴に締結されるガイドピンをガイドピン用貫通穴21aに挿入することで、マンホール12内に受圧板2を挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール密閉装置の取付治具および取付方法に関し、さらに詳しくは、マンホールに形成されたマンホール内に受圧板を挿入するマンホール密閉装置の取付治具およびこの取付治具を用いた取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電、化学、石油精製、鉄鋼等の種々のプラントでは、内部に水を導入して加熱したり、内部にガスを貯留したり、内部に液体や気体を導入して化学反応させたりするために、内部の圧力が外部の圧力よりも高くなる圧力容器が用いられている。このような種々のプラントに用いられる圧力容器は、大型のものであり、保守点検時に作業者がこの圧力容器の内部に出入できるマンホールが形成されている。このマンホールは、図14に示すように、圧力容器110の外壁111に形成されており、圧力容器110の内部と外部とを連通するものである。
【0003】
このマンホール100は、圧力容器110の使用時に、内部の液体や気体が外部に漏洩するのを確実に防止するため、外部から確実に密閉することが必要となる。そこで、従来においては、特許文献1に示すようなマンホール密閉装置が提案されている。この従来のマンホール密閉装置101は、同図に示すように、シール板102と、外蓋103とにより構成されている。シール板102は、マンホール100の外部側の端部に配置され、その外周面がこのマンホール100の外部側の端部に溶接される(同図に示すX)。これにより、マンホール100の外部側の端部が閉塞される。外蓋103は、マンホール100の外部側の端部に溶接されたシール板102を覆うように配置され、複数本のボルト104をこの外蓋103に形成されたボルト穴103aに挿入し、圧力容器110の外壁111に形成された締結穴111aに締結することで、マンホール100に固定される。
【0004】
上記従来のマンホール密閉装置101では、圧力容器110の使用中に内部の圧力が外部の圧力よりも高くなると、この内部の圧力を受けてシール板102が軸方向のうち外部側に変形しようとするが、このシール板102の外部側に位置する外蓋103がこのシール板102の変形を抑制する。つまり、圧力容器110の内部の圧力は、シール板102ではなく外蓋103が受けることとなり、これにより外部から確実に密閉できるものである。
【0005】
しかしながら、従来のマンホール密閉装置101では、作業者による圧力容器110の内部の保守点検時には、マンホール100の外部側の端部に溶接されているシール板102を取り外す必要があった。また、作業者による保守点検後には、再びシール板102をマンホール100の外部側の端部に溶接する必要があった。これらにより、従来のマンホール密閉装置101では、煩雑なマンホール開閉作業で必要があった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−95382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、煩雑なマンホール開閉作業を抑制するために、マンホールとこのマンホールの密閉装置との間で溶接を行わずに、マンホールの外部側の端部を閉塞し、外部から確実に密閉するマンホールの密閉装置が考えられる。このマンホールの密閉装置においては、マンホール内に受圧板を挿入して、この受圧板が受ける圧力容器の内部の圧力により、軸方向に押圧され径方向に膨張するシール部材を用いたマンホールの密閉装置が考えられる。このマンホールの密閉装置では、この受圧板をマンホール内に挿入する必要があるが、この受圧板を挿入する際に、受圧板によりマンホールの内周面を傷つける虞がある。マンホールの内周面を傷つけると、このマンホール内周面とシール部材との間から、圧力容器の内部から液体や気体が外部に流出するという虞がある。
【0008】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、マンホールから外部への漏れを抑制することができるマンホール密閉装置の取付治具および取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明では、圧力容器の内外を連通するマンホール内に配置され、当該圧力容器の内部の圧力を受ける受圧板と、前記受圧板が受けた前記圧力により前記外部側へ押圧されることで膨張するシール部材と、前記マンホールの外部側の端面に固定される外蓋と、からなるマンホール密閉装置の取付治具であって、前記受圧板に形成され、かつ前記外蓋に対して前記受圧板を保持する保持ボルトが締結される保持ボルト用締結穴に締結されることで当該受圧板を当該取付治具に固定する位置決めボルトが挿入される位置決めボルト用貫通穴と、前記マンホールに形成され、かつ前記マンホールに対して前記外蓋を固定する固定ボルトが締結される固定ボルト用締結穴に締結されるガイドピンが挿入されるガイドピン用貫通穴と、を有する治具本体を備えることを特徴とする。
【0010】
また、この発明では、圧力容器の内外を連通するマンホール内に配置され、当該圧力容器の内部の圧力を受ける受圧板と、前記受圧板が受けた前記圧力により前記外部側へ押圧されることで膨張するシール部材と、前記マンホールの外部側の端面に固定される外蓋と、からなるマンホール密閉装置の取付方法であって、前記マンホールに形成され、かつ前記マンホールに対して前記外蓋を固定する固定ボルトが締結される固定ボルト用締結穴にガイドピンを締結する工程と、上記マンホール密閉装置の取付治具に前記受圧板を固定する工程と、前記治具本体の前記ガイドピン用貫通穴に前記ガイドピンを挿入することで、前記取付治具に固定された前記受圧板をマンホール内に挿入する工程と、含むことを特徴とする。
【0011】
これらの発明によれば、位置決めボルト用貫通穴に挿入された位置決めボルトにより受圧板を取付治具に固定した状態で、ガイドピン用貫通穴にガイドピンを挿入すると、マンホールの中心とこの取付治具に固定された受圧板の中心とが軸方向においてほぼ一致する。従って、このガイドピン用貫通穴にガイドピンを挿入した状態で、取付治具をマンホール側に移動させると、マンホールの中心と受圧板の中心とが軸方向においてほぼ一致した状態で、受圧板をマンホール内に挿入することができる。これにより、取付治具によりマンホール内に挿入される受圧板がマンホールを損傷することを抑制することができる。
【0012】
また、この発明では、上記マンホール密閉装置の取付治具および取付方法において、前記治具本体の前記受圧板が固定される一方の面に固定されるスペーサをさらに備え、当該スペーサの軸方向の厚みは、前記マンホール密閉装置が前記マンホールに取り付けられた際における前記受圧板の取付位置から前記マンホールの外部側の端面までの距離以上であることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、受圧板は、治具本体の一方の面に固定されるスペーサを介して取付治具に固定された状態で、マンホール内に挿入される。そして、この取付治具は、治具本体の一方の面がマンホールの外部側の端面に当接するまで、受圧板をマンホール内に挿入される。このとき、この受圧板は、スペーサの厚み分、すなわちマンホール密閉装置がこのマンホールに取り付けられた際における受圧板の取付位置からこのマンホールの外部側の端面までの距離以上まで、マンホールの外部側の端面からマンホール内に挿入される。従って、取付治具によりマンホール内に挿入された受圧板は、マンホール密閉装置がマンホールに取り付けられた際における取付位置まで挿入されているので、改めて軸方向における位置を調整する必要がなく、マンホールの損傷をさらに抑制することができる。
【0014】
また、この発明では、上記マンホール密閉装置の取付治具および取付方法において、前記治具本体の前記受圧板が固定される面と対向する他方の面に固定されるバランス部材をさらに備え、前記バランス部材は、前記取付治具を吊り上げた際に、前記治具本体に固定された受圧板の軸方向が水平あるいはほぼ水平となる形状であることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、受圧板が固定された取付治具は、バランス部材により、この取付治具を吊り上げた際に、水平あるいはほぼ水平を維持することができる。従って、圧力容器にマンホールが水平方向に形成されている場合に、固定ボルト用締結穴に締結されたガイドピンに、治具本体に形成されたガイドピン用貫通穴を容易に挿入することができる。これにより、マンホール密閉装置の取付時における作業性を向上することができる。
【0016】
また、この発明では、上記マンホール密閉装置の取付方法において、前記マンホール内に挿入された前記受圧板から前記取付治具を取り外す工程と、前記外蓋の前記固定ボルトが挿入される固定ボルト用貫通穴に前記ガイドピンを挿入するとともに、前記マンホールに対して当該外蓋を仮止めする工程と、前記外蓋に対して前記受圧板を保持ボルトにより保持する工程と、前記ガイドピンを取り外す工程と、前記仮止めされた外蓋を前記マンホールに対して固定ボルトにより固定する工程と、をさらに含むことを特徴とする。
【0017】
また、この発明によれば、ガイドピンは、マンホールに対して外蓋を固定ボルトにより仮止めし、この外蓋に対して受圧板を保持ボルトにより保持した後に、取り外される。従って、このガイドピンを外蓋の受圧板に対する位置決めと、マンホールに対する位置決めとに用いることができ、外蓋に対して受圧板を容易に保持することができるとともに、マンホールに対して外蓋を容易に固定することができる。これにより、マンホール密閉装置の取付時における作業性を向上することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明にかかるマンホール密閉装置の取付治具および取付方法は、マンホール内へ受圧板を挿入する際に、このマンホールが損傷することを抑制することができるので、マンホールから外部への漏れを抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0020】
図1−1は、圧力容器のマンホールの構成例を示す図である。図1−2は、圧力容器のマンホールの断面図を示す図(図1−1のA−A断面図)である。図2−1は、受圧板の構成例を示す図である。図2−2は、受圧板の断面図を示す図(図2−1のB−B断面図)である。図3−1は、シールリングの構成例を示す図である。図3−2は、シールリングの断面図を示す図(図3−1のC−C断面図)である。図4−1は、受け座の構成例を示す図である。図4−2は、受け座の断面図を示す図(図4−1のE−E断面図)である。図5−1は、外蓋の構成例を示す図である。図5−2は、外蓋の断面図を示す図(図5−1のF−F面図)である。
【0021】
マンホール密閉装置1は、受圧板2と、シールリング3と、受け座4と、外蓋5とにより構成されている(図13参照)。このマンホール密閉装置1は、図1−1および図1−2に示すような圧力容器10の外壁11に水平方向に形成されたマンホール12に取り付けられるものである。このマンホール密閉装置1は、この圧力容器10の内外を連通するマンホール12に取り付けられることで、このマンホール12の外部側の端部を密閉するものである。このマンホール12の外部側の端部周囲、すなわち端面12aには、マンホール12の中心O1を中心とする半径R1の円周上に、複数個の固定ボルト用締結穴13a,13b(この実施例では、固定ボルト用締結穴13aが8個、固定ボルト用締結穴13bが4個)が等間隔で形成されている。なお、固定ボルト用締結穴13bは、後述するガイドピン30を締結するものでもある。
【0022】
受圧板2は、マンホール12内に配置され、圧力容器10の内部の圧力である内圧を受けるものである。この受圧板2は、図2−1および図2−2に示すように、圧力容器10の内部の圧力である内圧により変形し難い材料、例えば金属材料などで形成されている。この受圧板2は、円板形状であり、マンホールの内径D1よりも、若干小さい直径D2により形成されている。この受圧板1の軸方向において対向する面のうち一方の面2a(外部側の面)には、この受圧板2の中心O2を中心とする半径R2の円周上に、複数個の保持ボルト用締結穴2b(この実施例では、4個)が等間隔に形成されている。この受圧板2の軸方向において一方の端部(外部側の端部)には、シールリング3および受け座4が挿入される段差部2cが形成されている。
【0023】
シールリング3は、マンホール12内に配置された受圧板2の段差部2cに挿入されるシール部材であり、この受圧板2が受けた内圧により、外部側に押圧されるものである。このシールリング3は、図3−1および図3−2に示すように、開口部3aを有するリング形状に、圧力を受けることで膨張する材料、例えば膨張黒鉛などで形成されている。このシールリング3は、外径D3がマンホール12の内径D1とほぼ同一となるように、内径D4が受圧板2の段差部2cにおける直径D5とほぼ同一となるように形成されている。
【0024】
受け座4は、シールリング3が挿入されたマンホール12内に配置された受圧板2の段差部2cに挿入されるものであり、シールリング3と外蓋5との間に配置されるものである。この受け座4は、図4−1および図4−2に示すように、開口部4aを有するリング形状に、例えば金属材料など形成されている。この受け座4は、外径D6がマンホール12の内径D1とほぼ同一となるように、内径D7が受圧板2の段差部2cにおける直径D5とほぼ同一となるように形成されている。なお、シールリング3および受け座4は、それぞれの厚みW1,W2を合わせた長さが、受圧板2の段差部の軸方向の長さW3よりも長くなるように設定される。従って、受圧板2の段差部2cにシールリング3および受け座4を挿入した際に、この受け座が段差部2cから外部側に突出することとなる(図13参照)。
【0025】
外蓋5は、マンホール12の外部側の端面に固定されるものである。この外蓋5は、図5−1および図5−2に示すように、例えば金属材料などで形成されている。この外蓋5は、円板形状であり、上記外壁11の固定ボルト用締結穴13a,13bのそれぞれに対応する複数個の固定ボルト用貫通穴5a,5b(この実施例では、固定ボルト用貫通穴5aが8個、固定ボルト用貫通穴5bが4個)が形成されている。つまり、この外蓋5の中心O3を中心とする半径R1の円周上に、外壁11に形成される固定ボルト用締結穴13a,13bと同じ間隔で固定ボルト用貫通穴5a,5bが形成されている。なお、固定ボルト用貫通穴5bは、後述するガイドピン30が挿入されるものでもある。また、外蓋5は、受圧板2の保持ボルト用締結穴2bのそれぞれに対応する複数個の保持ボルト用貫通穴5c(この実施例では、4個)が形成されている。つまり、この外蓋5の中心O3を中心とする半径R2の円周上に、受圧板2に形成される保持ボルト用締結穴2bと同じ間隔で保持ボルト用貫通穴5cが形成されている。ここで、5dは、受圧板2を取り外す際に、シールリング3との間に若干の隙間を設けるためのジャッキボルト穴である。
【0026】
次に、上記マンホール密閉装置1をマンホール12に取り付ける取付治具20について説明する。図6−1は、マンホール密閉装置の取付治具の裏面図である。図6−2は、マンホール密閉装置の取付治具の側面図である。図6−1および図6−2に示すように、この取付治具20は、マンホール密閉装置1のうち受圧板2をマンホール12内に挿入するものである。この取付治具20は、治具本体21と、バランス部材22と、スペーサ23とにより構成されている。治具本体21は、平板形状であり、対向する図示しない平面のうち、一方の面にバランス部材22が、他方の面にスペーサ23がそれぞれ固定される。
【0027】
この治具本体21は、平板形状に、例えば金属材料などで形成されている。また、治具本体21は、外壁11、すなわちマンホール12の端面12aの固定ボルト用締結穴13bのそれぞれに対応する複数個のガイドピン用貫通穴21a(この実施例では、合計4個)が形成されている。つまり、この治具本体21の中心O4を中心とする半径R1の円周上に、外壁11に形成される固定ボルト用締結穴13bと同じ間隔でガイドピン用貫通穴21aが形成されている。また、治具本体21は、受圧板2の保持ボルト用締結穴2bのそれぞれに対応する複数個の位置決めボルト用貫通穴21b(この実施例では、合計4個)が形成されている。つまり、治具本体21の中心O4を中心とする半径R2の円周上に、受圧板2に形成される保持ボルト用締結穴2bと同じ間隔で位置決めボルト用貫通穴21bが形成されている。また、治具本体21には、その長手方向の一方の端部に吊り上げ用部材21c,21cが形成されている。この吊り上げ用部材21c,21cは、図示しない吊り上げ手段により、取付治具20を吊り上げる際に用いられるものである。
【0028】
バランス部材22は、治具本体21の一方の面の中央部に固定されており、その断面形状がT字形状の形鋼であり、この一方の面から水平方向に延在して形成されている。このバランス部材22の長さは、この取付治具20を後述する吊り上げ手段であるチェーンブロック40により吊り上げた際に、治具本体21に固定された受圧板2の軸方向が水平あるいはほぼ水平となるように設定されている。つまり、バランス部材22は、取付治具20が吊り上げられた際に、治具本体21に固定された受圧板2の軸方向が水平あるいはほぼ水平となる形状である。これにより、受圧板2が固定された取付治具20は、このバランス部材22により、吊り上げ手段により吊り上げた際に、水平あるいはほぼ水平に維持される。
【0029】
スペーサ23は、ほぼ円板形状に、例えば金属材料などで形成されている。また、このスペーサ23は、治具本体21の他方の面の中央部に、その図示しない中心とこの治具本体21の中心O4と軸方向において一致するように固定されている。このスペーサ23は、治具本体21に形成された位置決めボルト用貫通穴21bのそれぞれと連通する複数個の連通穴23a(同図においては、合計4個)が形成されている。このスペーサ23は、その軸方向の厚みW4がマンホール密閉装置1がマンホール12に取り付けられた際における受圧板2の取付位置からマンホール12の外部側の端面12aまでの距離以上に設定されている。この実施例では、スペーサ23の軸方向の厚みW4は、シールリング3の厚みW1および受け座4の厚みW2を合わせたものから受圧板2の段差部の軸方向の長さW3を引いた長さとなる。これは、マンホール12内で受圧板2が外蓋5に対して保持された際に、受圧板2と外蓋5との間の隙間、すなわち受圧板2の取付位置(一方の面2a)から端面12aまで距離W5が、シールリング3の厚みW1および受け座4の厚みW2を合わせたものから受圧板2の段差部の軸方向の長さW3を引いた長さとほぼ同一となるためである。
【0030】
次に、この発明にかかるマンホール密閉装置1の取付方法について説明する。図7−1〜図12は、マンホール密閉装置の取付方法を示す図である。図13は、マンホール密閉装置の取付状態を示す図である。
【0031】
まず、図7−1および図7−2に示すように、ガイドピン30をマンホール12に締結する。これは、複数本のガイドピン30をマンホール12の端面12aに形成された固定ボルト用締結穴13bにそれぞれ締結することで行う。ここで、ガイドピン30は、棒形状に、例えば金属材料により形成されている。このガイドピン30は、その一方の端部に後述する固定ボルト7と同様のネジが形成されている。また、ガイドピン30は、その直径が取付治具20のガイドピン用貫通穴21aの直径および外蓋5の固定ボルト用貫通穴5bの直径よりも若干小さくなるように形成されている。つまり、ガイドピン30がガイドピン用貫通穴21aに挿入された取付治具20および固定ボルト用貫通穴5bに挿入された外蓋5は、このガイドピン30により、軸方向に摺動可能に支持されることとなる。
【0032】
次に、図8−1および図8−2に示すように、シールリング3を受圧板2に取り付けた後に、この受圧板2を取付治具20に固定する。具体的には、取付治具20の治具本体21の一方の面(スペーサ23が取り付けられている側の面)と、シールリング3が取り付けられた受圧板2の面2aとを対向させる。そして、この治具本体21の他方の面から複数本の位置決めボルト24を位置決めボルト用貫通穴21bを介して、受圧板2の保持ボルト用締結穴2bにそれぞれ締結する。これにより、受圧板2は、スペーサ23を介して治具本体21に固定される。
【0033】
次に、圧力容器10の外部で、かつマンホール12近傍に予め取り付けられているあるいは新たに取り付けた吊り上げ手段である図示しないチェーンブロックのチェーン40,40を吊り上げ用部材21cに取り付ける。次に、この図示しないチェーンブロックにより、取付治具20に固定された受圧板2とマンホール12とがほぼ対向する位置まで、この取付治具20を吊り上げる。このとき、上述のように、受圧板2が固定された取付治具20は、治具本体21に固定されたバランス部材22により、水平あるいはほぼ水平に維持される。
【0034】
このとき、図示しないチェーンブロックにより吊り上げられた受圧板2が固定された取付治具20は、水平あるいはほぼ水平を維持しているため、少ない力、例えば作業員一人程度の力で、取付治具20を図8−2の矢印Gに示すように、マンホール12に向かって移動させることができる。従って、圧力容器11にマンホール12が水平方向に形成されている場合に、固定ボルト用締結穴13bに締結されたガイドピン30に治具本体21に形成されたガイドピン用貫通穴21aを容易に挿入することができる。これにより、マンホール密閉装置1の取付時における作業性を向上することができる。
【0035】
次に、図9−1および図9−2に示すように、取付治具20を軸方向のうちマンホール側に移動させることで、治具本体21のガイドピン用貫通穴21aに、固定ボルト用締結穴13bに締結されたガイドピン30をそれぞれに挿入する。このとき、取付治具20に固定された受圧板2の中心(図2−1のO2)とマンホールの中心(図1−1のO1)とは、軸方向においてほぼ一致することとなる。そして、取付治具20を軸方向のうちマンホール側にさらに移動させることで、取付治具20に固定された受圧板2をマンホール12内に挿入する。このとき、治具本体21の一方の面がマンホール12の端面12aに当接するまで、取付治具20を軸方向のうちマンホール側に移動する。
【0036】
次に、図10−1および図10−2に示すように、マンホール12内に挿入された受圧板2から取付治具20を取り外す。これは、保持ボルト用締結穴2bにそれぞれ締結された複数本の位置決めボルト24を取り外し、ガイドピン30がガイドピン用貫通穴21aから引き抜かれるまで、取付治具20を軸方向の外部側に移動することで行われる。これにより、受圧板2は、マンホール12内に挿入されたままとなる。
【0037】
次に、受け座4を図10−2の矢印Hに示すように、マンホール12内に挿入する。具体的には、すでにシールリング3が挿入されている段差部2cに、受け座4の開口部4aを段差部2cに挿入する。
【0038】
次に、図11−1および図11−2に示すように、外蓋5を軸方向のうちマンホール側に移動させるとともに、この外蓋5の固定ボルト用貫通穴5bに、固定ボルト用締結穴13bに締結されたガイドピン30をそれぞれに挿入する。これは、図示しないチェーンブロックのチェーン40を取付用穴5dに取付け、この図示しないチェーンブロックにより、外蓋5をこの外蓋5とマンホール12とがほぼ対向する位置まで吊り上げた状態で行われる。このとき、外蓋5のマンホール12と対向する面がマンホール12の端面12aに当接するまでマンホール側に移動させる。これにより、外蓋5の保持ボルト用貫通穴5cの中心と、マンホール12内に挿入された受圧板2の保持ボルト用締結穴2bの中心O4とが軸方向においてほぼ一致する。
【0039】
ここで、治具本体21の一方の面に固定されるスペーサ23を介して取付治具20に固定された状態でマンホール12内に挿入された受圧板2は、受圧板2と外蓋5との間の隙間、すなわち受圧板2の取付位置(一方の面2a)から端面12aまで距離W5が、スペーサの厚みW4となる。従って、取付治具20によりマンホール12内に挿入された受圧板2は、少なくともマンホール密閉装置1がマンホール12に取り付けられた際における取付位置まで挿入されているので、改めて軸方向における位置を調整する必要がなく、マンホール12の損傷を抑制することができ、作業性の低下を抑制することができる。
【0040】
次に、マンホール10に対して外蓋5を仮止めする。これは、固定ボルト用貫通穴のうち、ガイドピン30が挿入されている固定ボルト用貫通穴5bを除く固定ボルト用貫通穴5aに固定ボルト7(図13参照)をそれぞれ挿入し、マンホール12の端面12aに形成された固定ボルト用締結穴13aにそれぞれ締結することで行われる。
【0041】
次に、図12に示すように、外蓋5に対して受圧板2を保持する。これは、外蓋5の保持ボルト用貫通穴5cに複数本の保持ボルト6(実施例では、4本)をそれぞれ挿入し、受圧板2の面2aに形成された保持ボルト用締結穴2bにそれぞれ締結することで行われる。これにより、受圧板2は、軸方向のうち外部側への移動のみが許容された状態で、外蓋5に保持される。
【0042】
次に、ガイドピン30をマンホール12から取り外す。これは、マンホール12の端面12aに形成された固定ボルト用締結穴13bにそれぞれ締結された複数本のガイドピン30を取り外すことで行われる。
【0043】
次に、図13に示すように、仮止めされた外蓋5をマンホール12に対して固定する。これは、固定ボルト用貫通穴のうち、ガイドピン30が挿入されていた固定ボルト用貫通穴5bに固定ボルト7(図13参照)をそれぞれ挿入し、マンホール12の端面12aに形成された固定ボルト用締結穴13bにそれぞれ締結することで行われる。
【0044】
これにより、マンホール密閉装置1は、マンホール12に取り付けられる。このマンホール密閉装置1では、圧力容器10の内圧が外部の圧力よりも上昇すると、この受圧板2が軸方向のうち外部側に押圧される。ここで、外蓋5に保持されている受圧板2は、マンホール12に固定されている外蓋5に対して軸方向のうち外部側への移動が可能である。従って、受け座4を介して外蓋5により軸方向のうち外部側への移動が規制されているシールリング3は、受圧板2により、軸方向のうち外部側へ押圧される。これにより、受圧板2の段差部2cに挿入されているシールリング3は、径方向、特に外側に膨張し、マンホール12と確実に当接することで、マンホールと12と受圧板2との間をシールする。つまり、マンホール密閉装置1は、マンホール12の外部側の端部を密閉する。
【0045】
以上のように、治具本体21に形成されたガイドピン用貫通穴21aおよび位置決めボルト用貫通穴21bの位置関係は、ガイドピン30が固定ボルト用締結穴13bに締結され、位置決めボルト24が保持ボルト用締結穴2bに締結されることから、外蓋5に形成された固定ボルト用貫通穴5bおよび保持ボルト用貫通穴5cとの位置関係と一致することとなる。従って、受圧板2を固定した状態で、ガイドピン用貫通穴21aにガイドピン30を挿入すると、マンホールの中心O1とこの取付治具20に固定された受圧板2の中心O2とを軸方向においてほぼ一致させることができる。このガイドピン用貫通穴21aにガイドピン30を挿入した状態で、取付治具20をマンホール側に移動させると、マンホール12の中心O1と受圧板2の中心O2とが軸方向においてほぼ一致した状態で、受圧板2をマンホール12内に挿入することができる。これにより、取付治具20によりマンホール12内に挿入される受圧板2がマンホール12を損傷することを抑制することができるので、マンホール12から外部への漏れを抑制することができる。
【0046】
また、ガイドピン用貫通穴21aには、それぞれ複数本のガイドピン30が挿入される。従って、取付治具20が受圧板2のマンホール12内への挿入の際に、その中心O4を中心に回転することを抑制することができる。これにより、マンホール12内へ挿入中の受圧板2が回転することで、このマンホールを損傷することを抑制することができるので、マンホールから外部への漏れをさらに抑制することができる。
【0047】
また、ガイドピン30は、マンホール12に対して外蓋5を固定ボルト7により仮止めし、この外蓋5に対して受圧板2を保持ボルト6により保持した後に、取り外される。従って、ガイドピン30を外蓋5の受圧板2に対する位置決めと、マンホール12に対する位置決めとに用いることができ、外蓋5に対して受圧板2を容易に保持することができるとともに、マンホール12に対して外蓋5を容易に固定することができる。これにより、マンホール密閉装置1の取付時における作業性を向上することができる。
【0048】
なお、マンホール12に取り付けられたマンホール密閉装置1をこのマンホール12から取り外すには、この発明にかかるマンホール密閉装置1の取付方法を逆の順序で行えば良い。簡略して説明すると、まず、マンホール12の固定ボルト用締結穴13bに締結している固定ボルト7を取り外し、ガイドピン30を固定ボルト用締結穴13bに締結する。次に、マンホール12の固定ボルト用締結穴13aに締結している固定ボルト7を取り外すとともに、受圧板2の保持ボルト用締結穴2bに締結している保持ボルト6を取り外す。次に、外蓋5を図示しないチェーンブロックによりガイドピン30から引き抜く。次に、受け座4およびシールリング3の順番で取り外す。そして、取付治具20を図示しないチェーンブロックにより吊り上げ、この取付治具20にマンホール12内に挿入されている受圧板2を固定し、引き抜くことで行う。
【0049】
なお、上記実施例においては、取付治具20を吊り上げ手段により吊り上げる場合について説明したが、この発明はこれに限定されるものではない。例えば、取付治具20を鉛直方向に移動可能な台車に取り付けても良い。この場合は、バランス部材22が必要となくなる。
【0050】
また、上記実施例におけるマンホール密閉装置1は、シールリング3は、受け座4を介して外蓋5により、軸方向のうち外部側への移動が規制されているがこの発明はこれに限定されるものではない。例えば、外蓋5と受け座4との間に、規制部材を配置し、この規制部材により、シールリング3の軸方向のうち外部側への移動を規制しても良い。具体的には、分割可能なリング状の規制部材をマンホール12に形成された円周状の溝に挿入することで、シールリング3が受圧板2により軸方向のうち外部側に押圧された際に、このシールリング3が軸方向のうち外部側へ移動することを規制して、その径方向に膨張させ、シールすることができるように、分割されているものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、この発明にかかるマンホール密閉装置の取付治具および取付方法は、受圧板を有するマンホール密閉装置に有用であり、特に、マンホールから外部への漏れを抑制するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1−1】圧力容器のマンホールの構成例を示す図である。
【図1−2】圧力容器のマンホールの断面図を示す図(図1−1のA−A断面図)である。
【図2−1】受圧板の構成例を示す図である。
【図2−2】受圧板の断面図を示す図(図2−1のB−B断面図)である。
【図3−1】シールリングの構成例を示す図である。
【図3−2】シールリングの断面図を示す図(図3−1のC−C断面図)である。
【図4−1】受け座の構成例を示す図である。
【図4−2】受け座の断面図を示す図(図4−1のE−E断面図)である。
【図5−1】外蓋の構成例を示す図である。
【図5−2】外蓋の断面図を示す図(図5−1のF−F面図)である。
【図6−1】マンホール密閉装置の取付治具の裏面図である。
【図6−2】マンホール密閉装置の取付治具の側面図である。
【図7−1】マンホール密閉装置の取付方法を示す図である。
【図7−2】マンホール密閉装置の取付方法を示す図である。
【図8−1】マンホール密閉装置の取付方法を示す図である。
【図8−2】マンホール密閉装置の取付方法を示す図である。
【図9−1】マンホール密閉装置の取付方法を示す図である。
【図9−2】マンホール密閉装置の取付方法を示す図である。
【図10−1】マンホール密閉装置の取付方法を示す図である。
【図10−2】マンホール密閉装置の取付方法を示す図である。
【図11−1】マンホール密閉装置の取付方法を示す図である。
【図11−2】マンホール密閉装置の取付方法を示す図である。
【図12】マンホール密閉装置の取付方法を示す図である。
【図13】マンホール密閉装置の取付状態を示す図である。
【図14】従来のマンホール密閉装置を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 マンホール密閉装置
2 受圧板
2a 面
2b 保持ボルト用締結穴
2c 段差部
3 シールリング(シール部材)
3a 開口部
4 受け座
4a 開口部
5 外蓋
5a,5b 固定ボルト用貫通穴
5c 保持ボルト用貫通穴
5d ジャッキボルト穴
6 保持ボルト
7 固定ボルト
10 圧力容器
11 外壁
12 マンホール
12a 端面
13a,13b 固定ボルト用締結穴
20 取付治具
21 治具本体
21a ガイドピン用貫通穴
21b 位置決めボルト用貫通穴
21c 吊り上げ用部材
22 バランス部材
23 スペーサ
23a 連通孔
24 位置決めボルト
30 ガイドピン
40 チェーンブロック(吊り上げ手段)
100 マンホール
101 マンホール密閉装置
102 シール板
103 外蓋
103a ボルト穴
104 ボルト
110 圧力容器
111a 締結穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器の内外を連通するマンホール内に配置され、当該圧力容器の内部の圧力を受ける受圧板と、前記受圧板が受けた前記圧力により前記外部側へ押圧されることで膨張するシール部材と、前記マンホールの外部側の端面に固定される外蓋と、からなるマンホール密閉装置の取付治具であって、
前記受圧板に形成され、かつ前記外蓋に対して前記受圧板を保持する保持ボルトが締結される保持ボルト用締結穴に締結されることで当該受圧板を当該取付治具に固定する位置決めボルトが挿入される位置決めボルト用貫通穴と、
前記マンホールに形成され、かつ前記マンホールに対して前記外蓋を固定する固定ボルトが締結される固定ボルト用締結穴に締結されるガイドピンが挿入されるガイドピン用貫通穴と、
を有する治具本体を備えることを特徴とするマンホール密閉装置の取付治具。
【請求項2】
前記治具本体の前記受圧板が固定される一方の面に固定されるスペーサをさらに備え、当該スペーサの軸方向の厚みは、前記マンホール密閉装置が前記マンホールに取り付けられた際における前記受圧板の取付位置から前記マンホールの外部側の端面までの距離以上であることを特徴とする請求項1に記載のマンホール密閉装置の取付治具。
【請求項3】
前記治具本体の前記受圧板が固定される面と対向する他方の面に固定されるバランス部材をさらに備え、
前記バランス部材は、前記取付治具を吊り上げた際に、前記治具本体に固定された受圧板の軸方向が水平あるいはほぼ水平となる形状であることを特徴とする請求項1または2に記載のマンホール密閉装置の取付治具。
【請求項4】
圧力容器の内外を連通するマンホール内に配置され、当該圧力容器の内部の圧力を受ける受圧板と、前記受圧板が受けた前記圧力により前記外部側へ押圧されることで膨張するシール部材と、前記マンホールの外部側の端面に固定される外蓋と、からなるマンホール密閉装置の取付方法であって、
前記マンホールに形成され、かつ前記マンホールに対して前記外蓋を固定する固定ボルトが締結される固定ボルト用締結穴にガイドピンを締結する工程と、
前記請求項1〜3のいずれか1つに記載のマンホール密閉装置の取付治具に前記受圧板を固定する工程と、
前記治具本体の前記ガイドピン用貫通穴に前記ガイドピンを挿入することで、前記取付治具に固定された前記受圧板をマンホール内に挿入する工程と、
を含むことを特徴とするマンホール密閉装置の取付方法。
【請求項5】
前記マンホール内に挿入された前記受圧板から前記取付治具を取り外す工程と、
前記外蓋の前記固定ボルトが挿入される固定ボルト用貫通穴に前記ガイドピンを挿入するとともに、前記マンホールに対して当該外蓋を仮止めする工程と、
前記外蓋に対して前記受圧板を保持ボルトにより保持する工程と、
前記ガイドピンを取り外す工程と、
前記仮止めされた外蓋を前記マンホールに対して固定ボルトにより固定する工程と、
をさらに含むことを特徴とするマンホール密閉装置の取付方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−155054(P2007−155054A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353518(P2005−353518)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】