説明

マンホール蓋受枠の設置装置

【課題】内型枠の内壁を確実に保持することができ、しかも、マンホールに落下させることのないようにしたマンホール蓋受枠の設置装置を提供する。
【解決手段】本発明のマンホール蓋受枠の設置装置は、マンホール蓋受枠Bの下面と調整コンクリートブロックDとの間に、流動式コンクリートEを打込むに際し、前記打込み部位の内側に配置した内型枠Fの内面を保持できる複数個の円弧枠2を拡張・縮小可能に備えた支持体3と、該支持体3を前記マンホール蓋受枠Bの上縁B′に係留できる係留部材4とからなり、周囲の円弧枠2を縮小させた状態で内型枠Fの内面に設置でき、その設置時に支持体3を係留部材4でマンホール内に落下させない状態とし、しかも、設置後、円弧枠2を拡張させることにより内型枠Fをしっかり押圧して密閉保持できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路下のマンホールに通じる縦穴の上部に、蓋が道路面に沿うようにマンホール蓋受枠を設置する際に、該蓋受枠の下面と調整コンクリートブロックとの間に、流動式コンクリートを打込むときに使用する内型枠を、その内面から確実に密閉保持できるようにしたマンホール蓋受枠の設置装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路下のマンホールに通じる縦穴の上部に、蓋が道路面に沿うように蓋の高さや傾きを調整する工法として特開2003−147794号があった。この工法によると、マンホール蓋受枠の下面と、上部コンクリートブロックとの間に、流動式コンクリートを打込むときに、その打込み部位の内側及び外側に沿って内型枠及び外型枠を配置することと、外型枠側から流動式コンクリートを打込むようにしたことの記載がある。
【特許文献1】特開2003−147794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記工法では内型枠の保持についての記載がない。もちろん、外型枠は土圧を利用すれば確実に保持できるが、内型枠はマンホールに通じる縦穴を跨いで複数個所を支えることになるが、設置に多くの労力と時間が掛かったばかりでなく、支え部材などを、縦穴を通してマンホール内に落下させるおそれがあった。また、内型枠の支えが不十分(不確実)であると、流動式コンクリートがコンクリートブロックと内型枠の隙間からマンホールに通じる縦穴の内面に垂れ、その壁面を汚すことがあった。
【0004】
本発明は、上記の問題を解消したもので、その目的とするところは、部材などをマンホール内に落下させることがなく、内型枠の内壁を確実に密閉保持することができ、しかも、設置のための労力と時間を節約できるようにしたマンホール蓋受枠の設置装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明のマンホール蓋受枠の設置装置は、マンホール蓋受枠の下面と調整コンクリートブロックとの間に、流動式コンクリートを打込むに際し、前記打込み部位の内側に配置した内型枠の内面を保持できる複数個の円弧枠を拡張・縮小可能に備えた支持体と、該支持体を前記マンホール蓋受枠の上縁に係留できる係留部材とからなることを特徴とし、周囲の円弧枠を縮小させた状態で内型枠の内面に設置でき、その設置時に支持体を係留部材でマンホール内に落下させない状態とし、しかも、設置後、円弧枠を拡張させることにより内型枠をしっかり押圧して密閉保持できるように構成した。
【0006】
また、請求項2に記載のマンホール蓋受枠の設置装置は、前記支持体が、前記円弧枠の内面側に水平方向に設けた筒状枠に通したリング状の主枠と、該主枠の内側に梁部材を介して同レベルに設けた内枠とからなり、前記筒状枠の内壁と前記主枠との間に拡張方向に付勢されたバネ材を介装し、かつ、前記筒状枠の上面及び下面の透孔を通して前記円弧枠と前記主枠との間に楔体を介装したことを特徴とし、円弧枠をバネ材の作用で通常では縮小した状態にし、内型枠の内壁にセットした後、楔体により拡大方向に移動させて前記内型枠を確実に押圧保持できるように構成した。
【0007】
さらに、請求項3に記載のマンホール蓋受枠の設置装置は、前記係留部材が、前記主枠と内枠との間の梁部材に、基端部を立ち上がり及び横臥可能に軸支したレバーの先端部に、横臥時に上縁となる面にフック片を設けたことを特徴とし、片手で支持体を支持し、他方の手で横臥していた係留部材を立ち上げつつ蓋受枠の上縁に引っ掛けることができるように構成した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マンホール蓋受枠の下面と調整コンクリートブロックとの間に、流動式コンクリートを打込むに際し、内型枠の内面を保持できる複数個の円弧枠を拡張・縮小可能に備えた支持体を、マンホール内に落下させない状態で内型枠の内面に設置でき、しかも、設置後、円弧枠を拡大させて内型枠をしっかり密閉保持できる。したがって、設置しようとするマンホール蓋受枠をマンホール内に落下させることがないばかりでなく、内型枠を確実に支持することから流動式コンクリートを垂らして縦穴の内壁を汚すことがない等の各種の優れた効果を奏するものである。
【0009】
また、請求項2の発明によれば、円弧枠はバネ材の作用で縮小した状態を保ち、内型枠の内面において、楔体の作用によりバネ材に抗して円弧枠を拡大できるという優れた効果を奏するものである。
【0010】
また、請求項3の発明によれば、片手で支持体を支持し、他方の手で横臥していた係留部材を立ち上げることによりマンホール蓋受枠の上縁に容易に引っ掛けることができるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の態様を添付図面に基づいて説明する。図1は本願設置装置の平面図、図2は本願設置装置の斜視図、図3はバネ材と楔体の作用を示し、(a)は円弧枠の縮小時、(b)は円弧枠の拡大時、図4は本願設置装置をセットした場合の側面断面図、図5は円弧枠を拡大した状態を示す本願設置装置の側面断面図、図6はセットに当たって本願設置装置を持ち上げでいる斜視図、図7はマンホール蓋受枠とマンホールの上部構造を示す縦断面図である。
【0012】
図1、図2において、1は本願設置装置である。本願設置装置1は、図7の如く、マンホール(図示せず)に通じる縦穴Aの上部に、マンホール蓋受枠Bをその蓋(図示せず)が道路面Cに沿うように高さ(傾き)を調整して設置するために使用するものである。すなわち、本願設置装置1は、前記マンホール蓋受枠Bの下面と、調整コンクリートブロックDとの間に、流動式コンクリートEを打込むときに、その打込み部位の内側に沿って配置した内型枠(通常、内壁をステンレス板、主部を20mm厚のエラスタイトとした複合材)Fをその内面から保持することによりマンホール蓋受枠Bの設置作業を効率良く行えるようにする。なお、前記流動式コンクリートEの打込み部位の外側には土圧により保持された外型枠Gが配置される。該外型枠Gの一部には、流動式コンクリートEを矢印の如く流し込むための樋体Hが作成されている。
【0013】
前記本願設置装置1は、周囲に複数個(図面上では6個)の円弧枠(外方に膨む)2を拡大・縮小可能に備えた支持体3と、該支持体3を、図4、図5の如く、前記マンホール蓋受枠Bの上縁B′に係留できる係留部材とからなる。
【0014】
前記円弧枠2は、その縮小時には、前記内型枠Fの内径より若干小さくなり、拡大時には、前記内型枠Fを、流動式コンクリートEの打込み部位、すなわち、マンホール蓋受枠Bの下面と、調整コンクリートブロックDとの間を密閉するように強く押しつけることができるようになっている。つまり、1つ1つの円弧枠2は、適当な手段(後記する手段には限らない)により拡張・縮小可能になっている。
【0015】
前記支持体3は、前記円弧枠2の内面に水平方向に設けた筒状枠21に通したリング状の主枠31と、該主枠31の内側に梁部材32を介して同レベルに設けた内枠33とからなる。前記主枠31は、複数個の円弧ブロックをボルト/ナットにより径が調整できるように円形に結合(接続)している。すなわち、前記内型枠Fの内径(内型枠の素材の厚さにより異なる)に合わせて主枠31の径が決定できるようになっている。前記内枠33は、前記主枠31に梁部材32を介して連繋しているもので、梁部材32自体が頑強であるため、後記するレバー41を軸支する構造材として、或いは、後記する把持棒6を支持する構造材として利用できる。
【0016】
前記筒状枠21の内面と前記主枠31との間には拡張方向に付勢されたバネ材22が介装されている。該バネ材22は、該筒状枠21を主枠31から離す方向に突っ張っているため、筒状枠21と一体の各円弧枠2は、縮小されている。
【0017】
一方、前記筒状枠21の上面及び下面には円弧枠2に接して透孔23が設けられ、該透孔23には、図3(a)、(b)の如く、楔体5が貫通している。該楔体5は前記円弧枠2と前記主枠31との間には介装されているもので、その外縁、すなわち、前記各円弧枠2の背面(内面)に接する側は直線51となり、内縁、すなわち、前記主枠31の外側に接する側は、傾斜部52を中央にし、上が高部53、下が低部54になっている。
【0018】
前記楔体5は、これを図3(a)の如く、上方に移動させ、その低部54が主枠31に接した位置では、前記バネ材22が拡張方向に働き、前記筒状枠21を、図において右方向に付勢するから、各円弧枠2の内面は内型枠Fから離れる方向(縮小状態)になる。
【0019】
一方、前記楔体5を、図3(b)の如く、下方に移動させ、その高部53が主枠31に接した位置では、前記主枠31により押されて楔体の直線51は各円弧枠2の内面を図において左方向(拡大方向)に押すから、各円弧枠2は前記バネ材22に抗して内型枠Fの内面を外向きに圧迫するようになる。
【0020】
前記楔体5は、平時には、その傾斜部52と低部54の境界部を、図3(a)の如く、前記主枠31の肩部に乗せて静止した状態(各円弧枠2を縮小させた状態)に保っているもので、ニュートラル状態にある。また、楔体5の上下端部には、前記筒状枠21の上面又は下面の透孔23に接して止めるストッパ体55が貫通状に設けられている。このストッパ体55は、楔体5をマンホール内に落下させないための手段である。
【0021】
前記係留部材4は、前記主枠31と前記内枠33との間に渡設した近接した2つの梁部材32、32間に、基端部を立ち上がり及び横臥可能に軸支したレバー41の先端部の外面(横臥時の上向き面)にフック片42を忍び返し状に突設してなる。このフック片42は、前記レバー41を立ち上げると、前記マンホール蓋受枠Bの上縁B′に係留できるように対向する。このレバー41の内面側(横臥時の下向き面)には、金属丸棒を凹状に曲げてなる把持環43を設け、この把持環43を、図6の如く、握って立ち上げることにより前記マンホール蓋受枠Bの上縁B′にフック片42を係留し易くしている。
【0022】
また、前記主枠31と前記内枠33との間に渡設した広幅に対向した2つの梁部材32、32間には、図6の如く、握れるように把持棒6が水平に設けられている。この把持棒6は、前記把持環43とともに、本願設置装置1を持ち上げるためのものである。
【0023】
前記本願設置装置1には、図1、図2の如く、T形具7が含まれている。このT形具7は、通常では、その先端部71を前記内枠33に固設した鞘体8に差し込まれ、邪魔にならないように水平に納まっている。このT型具7は、その頭部73を把持し、先端部71を鞘体8から抜き、前記楔体5を下向きに押し込むこと、又は押し込まれた楔体5の上端部のストッパ体55に、先端部71を引っ掛けて上向きに引き上げるように使用するものであるが、その使用中にマンホールに落下しないように、前記内枠33との間に連繋具(紐体や鎖体)72を介して連繋されている。なお、T型具7の先端部71は、その端縁が図1の破線の如く凹形になり、前記楔体5の上端縁も凹形になっている。これはT型具7の頭部73を把持して、図5の如く、楔体5を下向きに押し込むときに、凹形同士が互いに噛み合って滑らないようにし、押し込み作業を安全かつ楽に行えるようにしている。
【0024】
図4は、前記内型枠Fの内面に、本願設置装置1を、設置(セット)した状態であり、楔体5は、図3(a)と同様にニュートラル状態になっている。図5は、前記楔体5の総てを、前記T形具7の頭部73を把持し、その先端部71で下向きに押し下げた状態を示している。この状態では、前記円弧枠2は外方に押し出され、内型枠Fを確実に圧迫させている状態である。
【0025】
以下、本願設置装置1の作用について説明する。まず、図7の如く、マンホール(図示せず)に通じる縦穴Aの上部に、マンホール蓋受枠Bの下面と、調整コンクリートブロックDとの間の内側に内型枠Fを当てる。外側には外型枠Gが土圧により保持し、該外型枠Gの一部に流動式コンクリートEを流し込む樋体Hを作成する。
【0026】
次いで、本願設置装置1を、把持棒6を左手で握り、レバー41の把持環43を右手で握って持ち上げる。このときレバー41は立ち上がった状態になるから、先端部に設けたフック片42をマンホール蓋受枠Bの上縁B′に引っ掛ける。一つのフック片42がマンホール蓋受枠Bの上縁B′に係留された後、空いた右手により総てのレバー41のフック片42をマンホール蓋受枠Bの上縁B′に引っ掛けると、レバー41の長さは共通であることから本願設置装置1は、内型枠Fの内面において水平に保たれる。
【0027】
次に、本願設置装置1の内枠33に固設した鞘体8に先端部を差し込んでいたT形具7を抜き、その端縁の凹形を、前記楔体5の上端の凹形に噛み合わせて下向きに押し込む。これにより楔体5は確実に押し込まれて各円弧枠2を拡大方向に付勢し、前記内型枠Fを外方へ圧迫させて確実に抑えるようになる。
【0028】
次いで、外型枠Gの一部に設けた樋体Hより流動式コンクリートEを流し込むと、該流動式コンクリートEは、マンホール蓋受枠Bの下面と、調整コンクリートブロックDとの間に流入するが、前記内型枠Fは各円弧枠2の拡大により外方へ強く圧迫させられているため、調整コンクリートブロックDと内型枠Fの間が密閉され、流入した流動式コンクリートEがマンホールに通じる縦穴Aに漏れ、内壁を汚すことがない。
【0029】
前記流動式コンクリートEの養生後、本願設置装置1を取り外こととなるが、この取り外しには、前記T形具7の先端部を、前記楔体5の上端部に貫通しているストッパ体55の下に潜り込ませてから上向きに力を加えれば楔体5は上動し、内型枠Fを外方へ向けて圧迫していた円弧枠2をバネ材22の作用で縮小方向に付勢される。前記T形具7を用いて上動させるのは、3個程度であって残りの楔体5は素手により上動させ得る。しかる後、把持軸6とレバー43を握って本願設置装置1を持ち上げるようにして内型枠Fから取り外すこととなる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本願設置装置は、マンホール蓋受枠の下面と調整コンクリートブロックとの間に、流動式コンクリートを打込むに際し、装置本体などをマンホール内に落下させない状態で、労力時間を少なくして内型枠をしっかり密閉保持させることができ、流動式コンクリートが漏れてマンホールに通じる縦穴の内壁を汚すこともなく、道路上にマンホール蓋受枠を設置する土木業者をはじめ、ビル床に配線孔や空気孔を設置する建築業者など産業上広く利用することができる技術である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本願設置装置の平面図である
【図2】本願設置装置の斜視図である。
【図3】バネ材と楔体の作用で、(a)は円弧枠の縮小時、(b)は円弧枠の拡大時である。
【図4】本願設置装置をセットした場合の側面断面図である。
【図5】円弧枠を拡大した状態の本願設置装置の側面断面図である。
【図6】セットに当たって本願設置装置を持ち上げでいる斜視図である。
【図7】マンホール蓋受枠とマンホールの上部構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 本願設置装置
2 円弧枠
21 筒状枠
22 バネ材
23 透孔
3 支持体
31 主枠
32 梁部材
33 内枠
4 係留部材
41 レバー
42 フック片
43 把持環
5 楔体
51 直線
52 傾斜部
53 高部
54 低部
55 ストッパ体
6 把持軸
7 T形具
71 先端部
72 連繋具(紐体や鎖体)
73 頭部
8 鞘体
A 縦穴
B マンホール蓋受枠
B′ 上縁
C 道路面
D 調整コンクリートブロック
E 流動式コンクリート
F 内型枠
G 外型枠
H 樋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホール蓋受枠の下面と調整コンクリートブロックとの間に、流動式コンクリートを打込むに際し、前記打込み部位の内側に配置した内型枠の内面を保持できる複数個の円弧枠を拡張・縮小可能に備えた支持体と、該支持体を前記マンホール蓋受枠の上縁に係留できる係留部材とからなることを特徴とするマンホール蓋受枠の設置装置。
【請求項2】
前記支持体が、前記円弧枠の内面側に水平方向に設けた筒状枠に通したリング状の主枠と、該主枠の内側に梁部材を介して同レベルに設けた内枠とからなり、前記筒状枠の内壁と前記主枠との間に拡張方向に付勢されたバネ材を介装し、かつ、前記筒状枠の上面及び下面の透孔を通して前記円弧枠と前記主枠との間に楔体を介装したことを特徴とする請求項1に記載のマンホール蓋受枠の設置装置。
【請求項3】
前記係留部材が、前記主枠と内枠との間の梁部材に、基端部を立ち上がり及び横臥可能に軸支したレバーの先端部に、横臥時に上縁となる面にフック片を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のマンホール蓋受枠の設置装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−23835(P2013−23835A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156981(P2011−156981)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(599004298)有限会社町田工業所 (4)
【Fターム(参考)】