説明

マンホール蓋開け器

【課題】小さな労力でマンホール蓋を引上げて横にずらすことができ作業性を向上させたマンホール蓋開け器を提供するものである。
【解決手段】キャスター16を取付けたキャスター支持板17の上部に、傾斜したレバー9の先端側を固定し、このレバー9の先端に、T形状の引上げ突起部18をキャスター支持板17から前方に突出して形成し、レバー9の先端側上部に、フック状の引上げ突起部21を回動自在に取付け、前記レバー9の後端に、こじ開け部3を形成して、前記T形状またはフック状の引上げ突起部18、23をマンホール蓋6A、6Bに形成した引上げ孔7A、7Bに挿入して、レバー9を押し下げることによりキャスター16を回動支点として、テコの作用によりマンホール蓋6A、6Bを持ち上げるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール蓋開け器の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下に埋設した下水道を定期点検する時には、マンホール蓋を開けてここからマンホール内に入って、下水道の点検を行なっている。このマンホール蓋を開ける場合、従来はシャフトの下端にフックを取付けた開閉治具(特許文献1)や図10に示すように、シャフト1の下端にT形状の引上げ突起部2を形成し、後端に切頭角錐状のこじ開け部3を形成し、中間にハンドル4を十字状に取付けたマンホール蓋開け器5が用いられていた。
【0003】
マンホール蓋6Aは、鋳物で円板状に形成され、この外周に平面U形状をなす1個の引上げ孔7Aと平面U形状をなす2個の引き起こし孔8、8が120度間隔で形成されている。平面U形状をなす引上げ孔7Aの内側には、図11に示すように鈎形のストッパー10が回動自在に取付けられ、リング状の外枠11の内側に形成された係止部12に係合して、外れて浮き上がらないようになっている。
【0004】
このマンホール蓋開け器5を使用してマンホール蓋6を開ける場合、先ずマンホール蓋開け器5を反転させて、こじ開け部3を周囲の2カ所の引き起こし孔8、8に差し込んでマンホール蓋6を少し浮かせるように引き起こして、リング状の外枠11とマンホール蓋6との間に詰まった土砂を落とす。
【0005】
次に図11に示すように、T形状の引上げ突起部2を引上げ孔7Aに差し込むと、ここに取付けられたストッパー10が押されて回動し、図12に示すようにストッパー10が係止部12から外れる。この後、レバー9を90度横に回転させると引上げ孔7Aの横の底面にT形状の引上げ突起部2が係合した状態となる。次にハンドル4を両手で持ってマンホール蓋6をリング状の外枠11から引上げ、次いで横にずらして取外している。
【0006】
しかしながら従来のマンホール蓋開け器5では、ハンドル4を両手で持って重いマンホール蓋6を引上げるため、大きな労力が必要で作業性が悪く、その軽減が望まれていた。
【特許文献1】特開2002−138504
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題を改善し、小さな労力でマンホール蓋を引上げて横にずらすことができ作業性を向上させたマンホール蓋開け器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1記載のマンホール蓋開け器は、キャスターを取付けたキャスター支持板の上部に、レバーの先端側を固定し、このレバーの先端に、T形状またはフック状の引上げ突起部をキャスター支持板から前方に突出して形成すると共に、前記レバーの後端に、こじ開け部を形成して、前記引上げ突起部をマンホール蓋に形成した引上げ孔に挿入して、レバーを押し下げることによりキャスターを回動支点として、テコの作用によりマンホール蓋を持ち上げるようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項2記載のマンホール蓋開け器は、キャスターを取付けたキャスター支持板の上部に、レバーの先端側を固定し、このレバーの先端に、T形状の引上げ突起部をキャスター支持板から前方に突出して形成し、レバーの先端側上部に、フック状の引上げ突起部を回動自在に取付け、前記レバーの後端に、こじ開け部を形成して、前記T形状またはフック状の引上げ突起部をマンホール蓋に形成した引上げ孔に挿入して、レバーを押し下げることによりキャスターを回動支点として、テコの作用によりマンホール蓋を持ち上げるようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項3記載のマンホール蓋開け器は、キャスターを取付けたキャスター支持板の上部に、レバーの先端側を固定し、このレバーの先端に、アームを斜め上方に突設し、このアームの先端側にT形状の引上げ突起部とフック状の引上げ突起部をそれぞれ回動自在に取付け、前記レバーの後端に、こじ開け部を形成して、前記T形状またはフック状の引上げ突起部をマンホール蓋に形成した引上げ孔に挿入して、レバーを押し下げることによりキャスターを回動支点として、テコの作用によりマンホール蓋を持ち上げるようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る請求項1記載のマンホール蓋開け器によれば、引上げ突起部をマンホール蓋に形成した引上げ孔に挿入して、レバーを押し下げることによりキャスターを回動支点として、テコの作用により僅かな力でマンホール蓋を引き上げることができ、更にレバーを横方向に引っ張ると、キャスターによりマンホール蓋を横方向にずらして外枠から容易に外すことができる。
【0012】
また請求項2記載のマンホール蓋開け器によれば、T形状の引上げ突起部と、この上にフック状の引上げ突起部を回動自在に取付け、マンホール蓋の引上げ孔の構造に応じて選択できるので、1台で2種類のマンホール蓋を開けることができる。
【0013】
また請求項3記載のマンホール蓋開け器によれば、レバーの先端にアームを斜め上方に突設し、このアームにT形状の引上げ突起部とフック状の引上げ突起部をそれぞれ回動自在に取付け、マンホール蓋の引上げ孔の構造に応じて選択できるので、1台で2種類のマンホール蓋を開けることができると共に、アームにより高く引き上げられるので横方向への引き出しが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の実施の一形態を図1ないし図3を参照して詳細に説明する。図1において15はマンホール蓋開け器を示すもので、これは2個のキャスター16を取付けたキャスター支持板17の上部に、傾斜したレバー9の先端側を固定し、このレバー9の先端側のキャスター支持板17から前方に突出した部分にブロック状の支持突起19を下方に向かって突設すると共に、この前方にT形状の引上げ突起部18を形成し、前記レバー9の後端に切頭角錐状のこじ開け部3を形成し、更にレバー9の中間にハンドル4を十字状に取付けたものである。
【0015】
上記構成のマンホール蓋開け器15の使用方法について説明すると、先ずマンホール蓋開け器15を反転させて、図10に示すマンホール蓋6Aの周囲の2か所の引き起こし孔8、8にこじ開け部3を差し込んでマンホール蓋6Aを浮かせるように少し引き起こして、リング状の外枠11とマンホール蓋6Aとの間に詰まった土砂を落とす。
【0016】
次に図11に示すようにT形状の引上げ突起部2を引上げ孔7Aに差し込むと、ここに取付けられたストッパー10が押されて回動し、図12に示すようにストッパー10が係止部12から外れる。この後、図2に示すように、マンホール蓋開け器15を90度横に回転させると引上げ孔7Aの横の底面に、T形状の引上げ突起部18が係合し、支持突起19が路面20に接触する。
【0017】
次にレバー9を押し下げると、支持突起19が支点となって、マンホール蓋6がテコの作用により僅かな力で少し引き上げられる。更にレバー9を押し下げると、今度は図3に示すようにキャスター16が路面20に接地して、支持突起19が離れ、このキャスター16が支点となって、テコの作用により僅かな力でマンホール蓋6Aが引き上げられる。この後、レバー9を横方向に引っ張ると、キャスター16により容易に横方向にずれてマンホール蓋6Aを外枠11から外すことができる。
【0018】
なお上記説明では支持突起19を取付けた場合について示したが、キャスター16が支点となるので支持突起19がない構造でも引きあげることができる。支持突起19があると、最も大きな力が必要とされる最初の引き上げ時に、支点から作用点までの距離と、支点から力点までの距離の比率、すなわちテコ比が大きくなり僅かな力で引き上げられるので作業が更に容易となる。
【0019】
図4および図5は本発明の他の実施の形態を示すもので、これは2個のキャスター16を取付けたキャスター支持板17の上部に、傾斜したレバー9の先端側を固定し、このレバー9の先端側のキャスター支持板17から前方に突出した部分にフック状の引上げ突起部21を設け、前記レバー9の後端に切頭角錐状のこじ開け部3を形成し、更にレバー9の中間にハンドル4を十字状に取付けたものである。
【0020】
上記構成のマンホール蓋開け器15は、図5に示すように引上げ孔7Bが断面U形に形成され、この下部にL形のストッパー10を一体に形成し、これがリング状の外枠11の内側に設けたL形の係止部12に係合した構造のマンホール蓋6Bを外す場合に使用するものである。
【0021】
次に上記構成のマンホール蓋開け器15の使用方法について説明すると、フック状の引上げ突起部21を、マンホール蓋開け器15の断面U形に形成された引上げ孔7Bに挿入して、レバー9を下げるとキャスター16が路面20に接地して、このキャスター16が支点となって、テコの作用により小さな力でマンホール蓋6Bが引き上げられる。この後、ハンドル4を持ってレバー9を横方向に引っ張ると、キャスター16により容易に横方向にずれてマンホール蓋6Bを外枠11から外すことができる。
【0022】
図6および図7は本発明の他の実施の形態を示すもので、これは2個のキャスター16を取付けたキャスター支持板17の上部に、傾斜したレバー9の先端側を固定し、レバー9の先端に、T形状の引上げ突起部18をキャスター支持板17から前方に突出して形成し、更にレバー9の先端側上部に、フック状の引上げ突起部21を支持軸22で回動自在に取付けたものである。
【0023】
図6に示す状態では図2および図3に示すように、T形状の引上げ突起部18をマンホール蓋6Aの平面U形の引上げ孔7Aに差し込んでから、マンホール蓋開け器15を90度横に回転させ、レバー9を押し下げると、キャスター16が支点となって、マンホール蓋6Aをテコの作用により小さな力で引き上げることができる。
【0024】
またマンホール蓋6Bを開ける時には、図7に示すフック状の引上げ突起部21を前方に回動させて、T形状の引上げ突起部18の前方に突出させた状態にする。この状態にして図5と同様に、フック状の引上げ突起部21をマンホール蓋6Bの断面U形に形成された引上げ孔7Bに挿入して、レバー9を下げることによりこのキャスター16が支点となって、テコの作用により小さな力でマンホール蓋6Bを引き上げることができる。従って1台のマンホール蓋開け器15で2種類のマンホール蓋6A、6Bを開けることができる。
【0025】
図8および図9は本発明の他の実施の形態を示すもので、これは2個のキャスター16を取付けたキャスター支持板17の上部に、傾斜したレバー9の先端側を固定し、このレバー9の先端に、アーム23を斜め上方に突設し、このアーム23の先端側にT形状の引上げ突起部18と、更にこの上方にフック状の引上げ突起部21を支持軸22で回動自在に支持したものである。
【0026】
またマンホール蓋6Aを開ける時には、図8に示す状態にして、アーム23に吊下げられているT形状の引上げ突起部18を図2および図3に示すように、マンホール蓋6Aの平面U形の引上げ孔7Aに手で差し込んでから、マンホール蓋開け器15を90度横に回転させて、次いでレバー9を押し下げると、キャスター16が支点となって、マンホール蓋6Aをテコの作用により小さな力で高く引き上げることができる。
【0027】
またマンホール蓋6Bを開ける時には、図9に示すようにフック状の引上げ突起部21を前方に回動させて、T形状の引上げ突起部18の前方に吊下げた状態にする。次に、フック状の引上げ突起部21を手で持ってマンホール蓋6Bの断面U形に形成された引上げ孔7Bに挿入してから、レバー9を下げることによりこのキャスター16が支点となって、テコの作用により小さな力でマンホール蓋6Bを高く引き上げることができ、更にキャスター16により横方向に引出すのが容易である。従って1台のマンホール蓋開け器15で2種類のマンホール蓋6A、6Bを開けることができると共に、アーム23により高く引き上げられるので横方向への引き出しが容易となる。
【0028】
なお上記説明ではレバー9をキャスター支持板17に傾斜して取付け、テコの作用により体重をかけてマンホール蓋6A、6Bを引き上げ易くした構造について示したが、レバー9をキャスター支持板17にほぼ水平に取付けた構造でも良い。またキャスター16は2個に限らず1個でも良い。更にキャスター16は一方向に固定したものに限らず、回動する構造でも良く、またボール状に任意の方向に回転できるものを用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0029】
なお上記説明では下水道のマンホール蓋を開ける場合について示したが、地中に埋設した電力ケーブルや通信ケーブルのマンホール蓋や、雨水用の桝に取付けた蓋を開ける場合など広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の一形態によるマンホール蓋開け器の斜視図である。
【図2】図1のマンホール蓋開け器のT形状の引上げ突起部を、マンホール蓋の引上げ孔に挿入した状態を示す断面図である。
【図3】レバーを押し下げてマンホール蓋を引上げている状態を示す断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態によるマンホール蓋開け器の斜視図である。
【図5】図4のマンホール蓋開け器のフック状の引上げ突起部を、マンホール蓋の引上げ孔に挿入した状態を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態によるマンホール蓋開け器の斜視図である。
【図7】図6に示すフック状の引上げ突起部を使用する場合のマンホール蓋開け器の斜視図である。
【図8】本発明の他の実施の形態によるマンホール蓋開け器の側面図である。
【図9】図8に示すフック状の引上げ突起部を使用する場合のマンホール蓋開け器の側面図である。
【図10】従来のマンホール蓋開け器を示す斜視図である。
【図11】従来のマンホール蓋開け器をマンホール蓋の引上げ孔に挿入する状態を示す断面図である。
【図12】図11のマンホール蓋開け器をマンホール蓋の引上げ孔に挿入してロックを解除した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 シャフト
2 T形状の引上げ突起部
3 こじ開け部
4 ハンドル
5 マンホール蓋開け器
6A、6B マンホール蓋
7A、7B 引上げ孔
8 引き起こし孔
9 レバー
10 ストッパー
11 リング状の外枠
12 係止部
15 マンホール蓋開け器
16 キャスター
17 キャスター支持板
18 T形状の引上げ突起部
19 支持突起
20 路面
21 フック状の引上げ突起部
22 支持軸
23 アーム




【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスターを取付けたキャスター支持板の上部に、レバーの先端側を固定し、このレバーの先端に、T形状またはフック状の引上げ突起部をキャスター支持板から前方に突出して形成すると共に、前記レバーの後端に、こじ開け部を形成して、前記引上げ突起部をマンホール蓋に形成した引上げ孔に挿入して、レバーを押し下げることによりキャスターを回動支点として、テコの作用によりマンホール蓋を持ち上げるようにしたことを特徴とするマンホール蓋開け器。
【請求項2】
キャスターを取付けたキャスター支持板の上部に、レバーの先端側を固定し、このレバーの先端に、T形状の引上げ突起部をキャスター支持板から前方に突出して形成し、レバーの先端側上部に、フック状の引上げ突起部を回動自在に取付け、前記レバーの後端に、こじ開け部を形成して、前記T形状またはフック状の引上げ突起部をマンホール蓋に形成した引上げ孔に挿入して、レバーを押し下げることによりキャスターを回動支点として、テコの作用によりマンホール蓋を持ち上げるようにしたことを特徴とするマンホール蓋開け器。
【請求項3】
キャスターを取付けたキャスター支持板の上部に、レバーの先端側を固定し、このレバーの先端に、アームを斜め上方に突設し、このアームの先端側にT形状の引上げ突起部とフック状の引上げ突起部をそれぞれ回動自在に取付け、前記レバーの後端に、こじ開け部を形成して、前記T形状またはフック状の引上げ突起部をマンホール蓋に形成した引上げ孔に挿入して、レバーを押し下げることによりキャスターを回動支点として、テコの作用によりマンホール蓋を持ち上げるようにしたことを特徴とするマンホール蓋開け器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−161423(P2006−161423A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354754(P2004−354754)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(500140507)
【Fターム(参考)】