説明

マンホール鉄蓋の食い込み解除装置

【課題】簡単で、かつ、設置スペースをとらない構造であるにもかかわらず、作業中の重心ずれによる転倒などを防止するとともに、一般的な低コストの単動式ジャッキの使用を可能とする。
【解決手段】マンホール10の鉄蓋14の食い込み解除装置であって、ジャッキ40と、マンホール10の片側に設置可能で、かつ、鉄蓋14の開放用孔14aの真上にジャッキ40の昇降ヘッド46が位置するように、ジャッキ40を載せることが可能なジャッキ台20と、このジャッキ台の上下両側に上梁32、下梁33をそれぞれ位置させることができる枠形状のフックフレーム30と、このフックフレームの下梁33に設けられ、開放用孔14aにその真上から係合させることができるフック36とを備えている。フックフレーム30の上梁32が、ジャッキ40の昇降ヘッド46によって下側から支持されるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールの鉄蓋を開放する際に、マンホールの受け枠に対する鉄蓋の食い込みを解除するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マンホールの鉄蓋は、車両の通行などによる荷重を繰り返して受けているとともに、鉄蓋と受け枠との間の僅かな隙間に砂塵やその他の異物が浸入しており、これらが原因となって鉄蓋が受け枠に強力に食い込んでいる。そこで、通信工事などの作業をマンホール内で行うために鉄蓋を開ける場合、まず、受け枠に対する鉄蓋の食い込みを解除する必要がある。
【0003】
従来、マンホールの受け枠に対する鉄蓋の食い込みを解除する手段として、例えば特許文献1に開示されている技術がある。この技術では、マンホールの直径よりも長い支持軸の一端寄りに、テコの下端近くが結合されている。そして、支持軸の両端部に大径の車輪が設けられているとともに、テコの下端部に小径の車輪が設けられている。また、支持軸には、鉄蓋の孔に係合可能なフックを備えている。このフックを鉄蓋の孔に係合させてテコを傾けることにより、このテコが小径の車輪および大径の車輪を順に支点を変えながら鉄蓋を持ち上げる。
【0004】
しかしながら、マンホールの受け枠に対する鉄蓋の食い込みを解除するには、非常に大きな力(約1×104 N)を必要とするため、テコを利用しても人力では限界がある。そこで、鉄蓋の食い込みを解除するための充分な力を得る手段として、油圧シリンダやジャッキを利用することが考えられる。
【0005】
例えば特許文献2には、マンホールの受け枠を取り外すための油圧シリンダを用いた装置が開示されている。この技術では、3本の脚で支えられた支持フレームの中央に油圧シリンダが上向きに配置されている。この油圧シリンダの作動によって昇降する可動フレームに、支持フレームを通過して下方へ延びるロッド部材が設けられ、このロッド部材の下端部にフックが設けられている。そして、マンホールの受け枠を取り外すには、各脚でマンホールを跨いだ格好に装置を設置し、フックを受け枠に係合させる。この状態で、油圧シリンダを作動させて可動フレームを上昇させることにより、受け枠を地面から引き抜いて取り外す。
【特許文献1】実開昭61−146546号公報
【特許文献2】特開2001−40686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示されている装置は、その構造が大型、かつ複雑であり、マンホールの場所によっては設置スペースの確保が困難である。また、高価な油圧シリンダを使用しているため、仮にこの装置をマンホールの受け枠に対する鉄蓋の食い込みを解除する装置として利用するにしても、コスト的に合わない。
【0007】
そこで、構造の簡素化を図り、かつ、設置スペースを小さくするために、上記の装置をマンホールの片側に配置する形式に改良することも可能である。しかし、その場合には鉄蓋の孔に係合させたフックと、このフックを引き上げる油圧シリンダの軸線とが互いに偏倚することになる。その結果、作業中の重心ずれによって装置が転倒するおそれがある。
【0008】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その一つの目的は、簡単で、かつ、設置スペースをとらない構造であるにもかかわらず、作業中の重心ずれによる転倒などを防止するとともに、一般的な低コストの単動式ジャッキの使用を可能とすることである。
本発明の他の目的は、マンホール周辺の路面を傷めることを防止し、また、作業現場での設置や撤去の簡素化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、マンホールの受け枠に対する鉄蓋の食い込みを解除するために用いる解除装置であって、昇降ヘッドに揚力を与えて上昇させることが可能なジャッキと、マンホールの片側に設置可能で、かつ、鉄蓋に設けられている開放用孔の真上に昇降ヘッドが位置するようにジャッキを載せることが可能なジャッキ台と、このジャッキ台の上下両側に上梁、下梁をそれぞれ位置させることができる枠形状のフックフレームと、このフックフレームの下梁に設けられ、鉄蓋の開放用孔に対してその真上から係合させることができるフックとを備えている。そして、フックフレームの上梁が、ジャッキ台に載せたジャッキの昇降ヘッドによって下側から支持されるように設定されている。
【0010】
この構成によれば、鉄蓋の開放用孔にフックを係合させ、かつ、ジャッキの昇降ヘッドを上昇させてマンホールの鉄蓋を受け枠から引き離すとき、フックとジャッキの昇降ヘッドとを同軸線上に位置させることができる。これにより、マンホールの片側にのみ配置した簡単で、かつ、設置スペースをとらない構造であるにもかかわらず、作業中の重心ずれによる転倒などを防止でき、また、一般的な低コストの単動式ジャッキを使用して安定した作業を行うことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載されたマンホール鉄蓋の食い込み解除装置であって、ジャッキ、ジャッキ台、およびフックフレームがそれぞれ個別の部品である。そして、ジャッキ台は、マンホールの受け枠に沿った円弧形状で、この受け枠上に載せることができる支持脚と、この支持脚の上部に位置するジャッキ載置部と、支持脚の下部に形成され、フックフレームの下梁を位置させることが可能な開放部とを備えている。
【0012】
これにより、マンホールの鉄蓋を受け枠から引き離すときの荷重の反力が、ジャッキ台の支持脚を通じてマンホールの受け枠で受けられ、マンホール周辺の路面を傷めることが防止される。また、ジャッキ、ジャッキ台、およびフックフレームといった少ない部品点数で構成されていることから、作業現場での設置や撤去が簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
図1は、蓋で閉ざされたマンホールの平面図、図2は図1の縦断面図である。周知のように、マンホール10を構成するコンクリート壁の上縁には、リング形状をした鉄製の受け枠12が固定されている。この受け枠12の内側に、鉄蓋14を嵌め込むことで、マンホール10を閉ざしている。受け枠12の内周面と鉄蓋14の外周面とは、鉄蓋14の径方向へのがたつきを抑えるために、互いにテーパー面になっている(図2)。このテーパー面の間に、既に述べたように砂塵などが浸入し、受け枠12に鉄蓋14が強力に食い込む原因となる。なお、鉄蓋14には、180°間隔で対向する外周寄りの箇所において、開放用孔14a,14b(通称「コジリ孔」)が設けられている。
【0014】
図3は、鉄蓋14の食い込み解除装置を構成するジャッキ台20を表した外観斜視図である。図4は、同じく鉄蓋14の食い込み解除装置を構成するフックフレーム30を表した外観斜視図である。この解除装置は、大別してジャッキ台20、フックフレーム30、およびジャッキ40(図6)の3部材によって構成される。
【0015】
ジャッキ台20は、図3で示すように金属板を円弧形状に曲げ成形した支持脚22と、ジャッキ40を載せるためのジャッキ載置部24とを備えている。支持脚22は、図1の仮想線で示すように、受け枠12の一部にちょうど載るように、この受け枠12の曲率に倣って曲げられている。また、支持脚22には、その下側から上側に向けて矩形状に切り取った格好の開放部22aが形成されている。ジャッキ載置部24は支持脚22の上部に固定され、この支持脚22の円弧形状によってつくり出された上面を被うように位置している。そして、ジャッキ載置部24の前後両端部には、上向きに張り出した立上がり片24a,24bがそれぞれ設けられている。これらの立上がり片24a,24bの間に、ジャッキ40が載せられる。
【0016】
フックフレーム30は、図4で示すように上梁32および下梁33の両端部を左右の連結棒34でそれぞれ結合した矩形の枠形状をしている。そして、下梁33の中間部には、下方へ延びる軸35が設けられ、その下端部にはフック36が固定されている。この36は、マンホール10の鉄蓋14における開放用孔14aに差し込んで係合させることができる。その様子が図5(a)(b)に示されている。
【0017】
図5(a)は開放用孔14aにフック36を差し込む直前状態の斜視図であり、図5(b)は開放用孔14aにフック36を係合させた状態の斜視図である。これらの図面で示すように、開放用孔14aにフック36を係合させるには、まず、鉄蓋14に対してフックフレーム30を図5(a)で示す向きとし、かつ、開放用孔14aの真上にフック36を位置させる。この状態で、フックフレーム30を下ろして開放用孔14a内にフック36を差し込んだ後、図5(b)で示すようにフックフレーム30全体を軸35の軸線回りにほぼ90°回転させる。これによって開放用孔14aにフック36が係合する。このようにして、フック36を開放用孔14aに係合させたら、ジャッキ台20およびジャッキ40をセットする。これらのセットを終えた解除装置が図6に示されている。
【0018】
図6は、現場に設置された解除装置の作業開始前の状態を表した部分断面図である。図7は、同じく解除装置の作業完了状態を表した部分断面図である。これらの図面で示すように、ジャッキ台20は、その支持脚22の開放部22aにフックフレーム30の下梁33を位置させ、かつ、支持脚22をマンホール10の受け枠12上に載せた状態で設置される。つまり、ジャッキ台20は、支持脚22がフックフレーム30の下梁33を跨いだ状態に設置される。
【0019】
ジャッキ40は、一般的な油圧作動式で、かつ安価な単動式が使用されており、手動操作によってシリンダ42内からロッド44を油圧力で突出させることができ、このロッド44先端の昇降ヘッド46を上昇させることができる。このジャッキ40をジャッキ台20のジャッキ載置部24上に載せ、昇降ヘッド46によってフックフレーム30の上梁32を下側から支持する。このとき、図1で示す二本の仮想線L1,L2の交点Xにジャッキ40の軸線を合わせ、かつ、ジャッキ40の軸線とフックフレーム30の連結棒34とが平行になるように配慮する。これにより、鉄蓋14における開放用孔14aの真上にジャッキ40の昇降ヘッド46が位置する。
【0020】
このようにして設置された解除装置は、フックフレーム30のフック36と、シリンダ42の昇降ヘッド46とがほぼ同軸線上に位置している。そこで、ジャッキ40を操作して昇降ヘッド46を上昇させることにより、ジャッキ台20に対してフックフレーム30が真っ直ぐに持ち上げられ、フック36を通じてマンホール10の受け枠12から鉄蓋14が引き離される(図7)。つまり、受け枠12に対する鉄蓋14の食い込みが解除され、その後は一般的な鉄蓋開閉用の工具(図示省略)を使用して鉄蓋14をマンホール10から除去する。
【0021】
鉄蓋14の食い込み解除作業において、フック36と昇降ヘッド46とがほぼ同軸線上に位置していることから、例え路面が傾斜している場合でも、作業中の重心ずれによって装置が転倒するなどのトラブルが防止される。また、作業中においてジャッキ台20にかかる荷重は、支持脚22を通じてマンホール10の受け枠12で受け止められているので、マンホール10周辺の路面を陥没させるなどの不具合も解消される。しかも、本実施の形態の食い込み解除装置は、マンホール10の片側に配置されるので、その設置スペースが小さくて済み、スペースに制約のある現場にも対応できる。さらに、ジャッキ台20、フックフレーム30、およびジャッキ40といった小型で、かつ、少ない部品で構成されていることから、作業現場での設置や撤去も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】蓋で閉ざされたマンホールの平面図
【図2】図1の縦断面図
【図3】ジャッキ台を表した外観斜視図
【図4】フックフレームを表した外観斜視図
【図5】鉄蓋の開放用孔にフックを係合させるための作業を表した斜視図
【図6】食い込み解除装置の作業開始前の状態を表した部分断面図
【図7】食い込み解除装置の作業完了状態を表した部分断面図
【符号の説明】
【0023】
10 マンホール
12 受け枠
14 鉄蓋
14a 開放用孔
20 ジャッキ台
30 フックフレーム
36 フック
40 ジャッキ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールの受け枠に対する鉄蓋の食い込みを解除するために用いる解除装置であって、昇降ヘッドに揚力を与えて上昇させることが可能なジャッキと、マンホールの片側に設置可能で、かつ、鉄蓋に設けられている開放用孔の真上に昇降ヘッドが位置するようにジャッキを載せることが可能なジャッキ台と、このジャッキ台の上下両側に上梁、下梁をそれぞれ位置させることができる枠形状のフックフレームと、このフックフレームの下梁に設けられ、鉄蓋の開放用孔に対してその真上から係合させることができるフックとを備え、フックフレームの上梁が、ジャッキ台に載せたジャッキの昇降ヘッドによって下側から支持されるように設定されているマンホール鉄蓋の食い込み解除装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたマンホール鉄蓋の食い込み解除装置であって、ジャッキ、ジャッキ台、およびフックフレームがそれぞれ個別の部品であり、ジャッキ台は、マンホールの受け枠に沿った円弧形状で、この受け枠上に載せることができる支持脚と、この支持脚の上部に位置するジャッキ載置部と、支持脚の下部に形成され、フックフレームの下梁を位置させることが可能な開放部とを備えているマンホール鉄蓋の食い込み解除装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−28743(P2006−28743A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204572(P2004−204572)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000232494)日本電話施設株式会社 (12)
【Fターム(参考)】