説明

マーカおよびカテーテル

【課題】通過性に優れたマーカおよびそのマーカを備えるカテーテルを提供する。
【解決手段】先端と基端とを有するカテーテルに設けられるマーカ50は、カテーテルの軸30に同軸状に設けられ、先端側縁部52と、基端側縁部53と、先端側縁部52と基端側縁部53とを連ねる壁部51とを有する。先端側縁部52および基端側縁部53は全体にわたって、カテーテルの軸30に垂直な面Pに対して傾斜している。詳細には、先端側縁部52および基端側縁部53は互いに平行な面を形成している。マーカ50は、医療器具をデリバリーするためのカテーテル、血栓吸引カテーテルなどの様々なカテーテルに設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに設けられるマーカに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、検査や治療をするために消化管や血管などの体内管腔に挿入される。カテーテル手技中に体内のカテーテル位置を確認できるように、カテーテルの先端部にはX線不透過性マーカが設けられている。例えば、特許文献1では、金、タングステン、イリジウム、またはこれらの合金からなる円筒形のX線不透過性マーカがカテーテルの先端部に設けられている。
【0003】
また、特許文献2には、カテーテルの回転状態を確認することができるように、白金などの金属材料から形成され、凸部を有するX線不透過性マーカがカテーテルの先端部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−535049号公報
【特許文献2】特開2011−10826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、カテーテルの検査や治療が必要な血管には狭窄した石灰化病変といったような硬く、狭い病変部が存在する場合がある。このような病変部をカテーテルの先端部が通過する際、マーカが病変部に引っかかり、通過できない虞があった。また、特許文献2のようにマーカが凸部を有する場合、その凸部だけは病変部に入り込めたとしてもマーカの凸部以外の部分が病変部に引っかかり、病変部を通過できない虞があった。
【0006】
また、このようなマーカの引っかかりは、カテーテルを病変部に挿入する際だけでなく、病変部からカテーテルを抜き取る際にも起こりうる。あるいは、あるカテーテルが別のカテーテルの内側を通っていく際にも、外側のカテーテルのある部分において内側が狭くなっている場合、そこでマーカが引っかかる虞もあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、通過性に優れたマーカおよびそのようなマーカを備えるカテーテルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等を説明する。
【0008】
第1の発明は、先端と基端とを有するカテーテルに設けられるマーカであって、前記マーカは、カテーテルの軸に同軸状に設けられ、先端側縁部と、基端側縁部と、前記先端側縁部と前記基端側縁部とを連ねる壁部とを有し、前記先端側縁部または前記基端側縁部のいずれか一方は全体にわたって、前記カテーテルの軸に垂直な面に対して傾斜していることを特徴とする。本構成では、先端側縁部および基端側縁部の少なくとも一方の全体がカテーテルの軸に垂直な面に対して傾斜しているため、このマーカを備えるカテーテルは狭い通路であっても良好に通過させることができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明のマーカにおいて、前記先端側縁部および前記基端側縁部の両方は全体にわたって、前記カテーテルの軸に垂直な面に対して傾斜していることを特徴とする。本構成では、先端側縁部および基端側縁部の両方がカテーテルの軸に垂直な面に対して傾斜しているため、カテーテルの挿入時および抜去時の両方において、狭い通路であってもカテーテルを良好に通過させることができる。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明のマーカにおいて、前記先端側縁部および前記基端側縁部の少なくとも一方は全体にわたって、前記カテーテルの軸に垂直な面に対して傾斜した平面を形成することを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1または第2の発明のマーカにおいて、前記先端側縁部および前記基端側縁部の少なくとも一方は全体にわたって、前記カテーテルの軸に垂直な面に対して傾斜した曲面を形成することを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、第1〜第4いずれかの発明のマーカにおいて、前記先端側縁部および前記基端側縁部は互いに平行な面を形成することを特徴とする。本構成では、マーカの全長を比較的短く維持したまま先端側縁部および基端側縁部を傾斜させた構成とすることができ、従って、カテーテルのマーカが取り付けられた部分の屈曲性を良好に保つことができる。
【0013】
第6の発明は、第1〜第5いずれかの発明のマーカにおいて、前記先端側縁部および前記基端側縁部と交わる、前記カテーテルの軸に垂直な面が存在することを特徴とする。本構成では、先端側縁部および基端側縁部と交わる、カテーテルの軸に垂直な面が存在するため、カテーテルが狭い通路を通過しようとする際に、先端側縁部および基端側縁部が形成する面が通路と平行になる方向にマーカが傾きながらカテーテルを通過させることができるので、このマーカを備えるカテーテルはより狭い通路を通過することができる。
【0014】
第7の発明は、第1〜第6いずれかの発明の前記マーカを備えるカテーテルを特徴とする。本構成では、上記1〜7のいずれかの発明の効果を有するカテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)はカテーテル組立体を説明するための図であり、(b)はインナカテーテルとアウタカテーテルとを組み合わせた状態を示す側面図である。
【図2】はアウタカテーテルの先端部を拡大して示す断面図である。
【図3】(a)はマーカを示す斜視図であり、(b)はマーカを示す側面図であり、(c)はマーカを示す正面図である。
【図4】(a)〜(d)はマーカを備えるカテーテルが石灰化病変を通過する場合を説明する図である。
【図5】(a)〜(g)はそれぞれ他の実施形態におけるマーカを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
【0017】
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。図1(a)はカテーテル組立体10を説明するための図であり、図1(b)はアウタカテーテル11とインナカテーテル12とを組み合わせた状態を説明する図であり、図2はアウタカテーテル11の先端部の断面図である。なお、カテーテル組立体10を操作する際に操作者に近い側を基端側とし、操作者から遠い側を先端側として説明する。
【0018】
図1(a)に示すように、カテーテル組立体10は、アウタカテーテル11とインナカテーテル12とを備えている。カテーテル組立体10は、例えば、冠動脈の狭窄部に挿入されて、バルーンカテーテルやステントデリバリーデバイス等の他の医療器具を導入するため、あるいは、血栓を吸引するため、といった目的で使用される。
【0019】
図1(a)に示すように、インナカテーテル12は、基端シャフト22と中間シャフト23と先端シャフト25とを備える。基端シャフト22は、ステンレス鋼により形成されている。中間シャフト23は、ナイロンから形成されており、基端シャフト22の先端部を覆うようにして、基端シャフト22の途中位置から先端シャフト25まで延びている。
【0020】
先端シャフト25の先端部にはインナチップ29が取り付けられており、先端シャフト25とインナチップ29とは、互いに硬度の異なるポリアミドエラストマー(PEBAX(登録商標))により形成されている。先端シャフト25の基端にはインナ基端側開口27が形成され、インナチップ29の先端にはインナ先端側開口28が形成されており、インナ基端側開口27とインナ先端側開口28との間には、ガイドワイヤを挿通させるためのインナ管孔26が形成されている。
【0021】
図1(a)に示すように、アウタカテーテル11は、先端11aと基端11bとを有し、全体として断面略円形の管状をなし、その中心を通る長手方向の軸30を有する。詳細には、アウタカテーテル11は、基端11b側に設けられたコネクタ31と、コネクタ31からアウタカテーテル11の先端11aまで延びるアウタシャフト33と、アウタシャフト33の基端部の周囲に取り付けられた保護部材32とを備える。アウタシャフト33は、環状の断面形状を有するチューブ状をなしており、その先端部において、それよりも基端側に比べて柔軟なアウタチップ34を備える。アウタシャフト33の外径は、例えば、0.5〜3mmとすることができ、本実施形態では1.72mmとなっている。また、アウタシャフト33の肉厚は、例えば、0.01〜0.2mmとすることができ、本実施形態では約0.1mmとなっている。
【0022】
アウタカテーテル11の基端11bにはアウタ基端側開口36が形成され、アウタカテーテル11の先端11aにはアウタ先端側開口37が形成されている。アウタ基端側開口36とアウタ先端側開口37の間には、インナカテーテル12を挿通可能な寸法を有するアウタ管孔38が延在している。カテーテル組立体10の一使用例では、図1(b)に示すようにアウタ管孔38にインナカテーテル12を挿入した状態でカテーテル組立体10が血管内に挿通される。
【0023】
図2に示すように、アウタシャフト33は、先端部の所定範囲を除いて複数の層から構成されている。詳細には、アウタシャフト33は、内層39と外層40と、内層39と外層40との間に設けられた補強層41とを備える。なお、アウタカテーテル11の先端部付近では、内層39とアウタチップ34との間に補強層41が挟まれた構造となっており、アウタカテーテル11の最先端部では、アウタチップ34のみの単層構造となっている。
【0024】
内層39は、アウタ管孔38に挿通されるインナカテーテル12やガイドワイヤに対する摺動性を良好なものとするために摩擦係数の低い材料から形成されており、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から形成されている。
【0025】
外層40は、ナイロン等のポリアミドまたはポリアミドエラストマーなどから形成されている。ここで、アウタカテーテル11の体内腔への送達性を良好なものとするために、アウタシャフト33の基端から先端に向かって柔軟になるように外層40を構成してもよい。すなわち、外層40の基端部を比較的硬い材料で形成し、外層40の中央部を基端部よりも柔軟な材料で形成し、外層40の先端部を中央部よりも更に柔軟な材料で形成してもよい。
補強層41は、アウタシャフト33の強度を向上させるためのものであって、複数本のステンレス鋼の線材を編み込むことにより形成された編組からなる。
【0026】
アウタチップ34は、ポリアミドエラストマーから形成されている。詳細には、アウタカテーテル11が血管内に挿通される際、血管が損傷する虞を低減させるために、アウタチップ34は外層40よりも柔軟な材料が選択されている。
【0027】
アウタチップ34と補強層41の間には、白金から形成された環状のX線不透過性のマーカ50が設けられている。詳細には、マーカ50は、その管形状の中心を通る軸を有しており、そのマーカ50の軸はアウタカテーテル11の軸30と一致している。換言すると、マーカ50は、アウタカテーテル11の軸30に同軸状に設けられている。マーカ50は、アウタカテーテル11の先端側を向く先端と、アウタカテーテル11の基端側を向く基端とを有する。マーカ50の先端は、内層39の先端および補強層41の先端とアウタカテーテル11の長手方向において同じ位置にある。なお、マーカ50は、白金以外の金属、例えば、金、ステンレス、タングステン、イリジウム、またはこれらの合金から形成することもできる。
図3(a)はマーカ50を示す斜視図、図3(b)はマーカ50を示す側面図、図3(c)はマーカ50を示す正面図である。
【0028】
図3(a)〜図3(c)に示すように、マーカ50は、先端側縁部52と、基端側縁部53と、先端側縁部52と基端側縁部53とを連ねる壁部51とを有する。先端側縁部52および基端側縁部53の両方は全体にわたって、アウタカテーテル11の軸30に垂直な面Pに対して傾斜している。ここで、例えば先端側縁部52の全体とは、軸30回りの先端側縁部52の全周のことであり、軸30に垂直な面Pとは、図3(b)に示すような仮想面とも呼べる仮想的な面Pのことである。換言すると、マーカ50は、円筒形の両端部を同じ方向に沿って軸30に対して斜めに切断したような形状を有し、先端側縁部52および基端側縁部53は全体にわたって、軸30に垂直な面Pに対して傾斜した平面を形成している。
【0029】
マーカ50は、側面から見た際には図3(b)に示すように平行四辺形状をなし、正面から見た際には図3(c)に示すように円環状をなしている。マーカ50は、電解研磨等により面取りされており、先端側縁部52および基端側縁部53にバリがでないようになっている。なお、マーカ50の端面は、図2に示すように、軸30に対して傾斜している。
マーカ50の外径は、例えば、本実施形態では1.68mmとなっている。またマーカ50の壁厚は、例えば、本実施形態では0.025mmとなっている。
【0030】
先端側縁部52および基端側縁部53は、互いに平行な平面を形成している。先端側縁部52と軸30との間の角度αは、基端側縁部53と軸30との間の角度βと同じであり、角度αおよび角度βは、30°〜150°とすることができ、好ましくは40°〜70°であり、本実施形態では56°となっている。なお、角度αと角度βは、互いに異なる値に設定することもできる。
【0031】
マーカ50の壁部51は、先端側非円筒形部51aと円筒形部51bと基端側非円筒形部51cを有する。先端側非円筒形部51aと円筒形部51bと基端側非円筒形部51cの軸30方向の長さは同一であり、本実施形態では0.5mmである。なお、先端側非円筒形部51aと円筒形部51bと基端側非円筒形部51cとの軸30方向の長さは任意であり、互いに異なる長さにしてもよい。あるいは、先端側非円筒形部51aと基端側非円筒形部51cとを同じ長さにし、円筒形部51bをそれらの長さよりも短く、または長くしてもよい。
【0032】
次に、図4(a)〜図4(d)を参照しながら、マーカ50を備えるカテーテル組立体10の作用について説明する。図4(a)〜図4(d)においては、左側が先端側、すなわち血管の末梢側となり、右側が基端側、すなわちカテーテル組立体10操作者の手元側となっている。
【0033】
図4(a)に示すように、カテーテル治療が必要とされる患者の血管壁BVには、石灰化病変CLが存在する場合がある。石灰化病変CLは硬く、その内腔は狭くなっており、カテーテルを挿通させることを困難にしている。通常、樹脂から形成されているシャフトは比較的変形しやすいため石灰化病変CLを比較的容易に通過することができるが、X線不透過性のマーカは概してシャフトよりも硬く、変形しにくいため、あるいは、マーカがあるためにシャフトの外径が大きくなるため、マーカのある箇所で石灰化病変CLに引っかかり、カテーテルをそれ以上進めることが困難になる場合がある。
【0034】
これに対して、マーカ50を備えるカテーテル組立体10は、以下に説明するように、このような石灰化病変CLが存在する場合であっても、良好に挿通させることができる。
【0035】
図4(a)に示すように、図示しないガイドワイヤをインナ管孔26に挿通させた状態でカテーテル組立体10をガイドワイヤに沿わせながら血管の中を血管末梢へ、すなわち先端側へと進めていく。マーカ50の先端側縁部52は傾斜しているので、カテーテル組立体10を押し進めると、図4(b)に示すように、まずは、マーカ50の先端、すなわち先端側縁部52の先端52aが石灰化病変CLの内腔に入り込む。ここで、先端側縁部52の基端52bがアウタチップ34を間に挟んで石灰化病変CLに当たるような状態になるが、先端側縁部52の基端52bも傾斜しているため、図4(c)に示すように、マーカ50は石灰化病変CL内に入り込むことができる。その後、更にカテーテル組立体10を押し進めると、図4(d)に示すように、マーカ50が設けられた部分が石灰化病変CLを通過することとなる。
【0036】
その後、カテーテル組立体10を所望の位置まで進め、アウタカテーテル11を保持したままインナカテーテル12を抜去する。次いで、バルーンカテーテルやステントデリバリーシステム等の治療に必要な医療器具をアウタカテーテル11のアウタ管孔38に挿通させ、所望の位置まで送達し、治療を行う。バルーンカテーテル等による治療後、アウタカテーテル11を血管から抜去することとなるが、その際にもマーカ50が設けられた部分が石灰化病変CLを通過する必要がある。
【0037】
マーカ50の基端側縁部53も傾斜しているため、上述のカテーテル組立体10を末梢側に進めるときと同様にして、マーカ50が設けられた部分が石灰化病変CLを通過することができる。
【0038】
また、従来のマーカにおいても、マーカをカテーテルに強固に取り付けることにより、マーカ位置の移動といった不具合を十分に防止していた。次に説明するように、本実施形態のマーカ50ではこのような不具合が起こる虞が更に低減されている。例えば、図4(d)に示す状態からアウタカテーテル11を抜去する際に、マーカ50が石灰化病変CLに引っかかる可能性も考えられる。この場合、マーカ50の基端側縁部53全体ではなく、基端側縁部53の一箇所のみが石灰化病変CLに引っかかることとなる。従って、アウタカテーテル11を抜去しようと基端側方向に力をかけた場合、石灰化病変CLにひっかかった一箇所を中心としてマーカ50を回転させるような力がマーカ50に作用し、マーカ50が石灰化病変CLにひっかかった状態から更にアウタカテーテル11を基端側に引いた場合でも、マーカ50位置が移動する虞がより一層低減されている。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果を奏する。
【0039】
マーカ50の先端側縁部52および基端側縁部53が軸30に垂直な面に対して傾斜しているため、カテーテル組立体10の挿入時および抜去時の両方において、石灰化病変CLが存在する血管であってもアウタカテーテル11を良好に通過させることができる。
【0040】
先端側縁部52および基端側縁部53は互いに平行な面を形成するので、マーカ50の全長を比較的短く維持しながら先端側縁部52および基端側縁部53を傾斜させた構成とすることができ、従って、アウタカテーテル11のマーカ50が取り付けられた部分の屈曲性を良好に保つことができる。
(他の実施形態)
本発明は上記第1の実施形態に限定されず、例えば以下のように実施してもよい。
【0041】
(1)上記第1の実施形態においては、先端側縁部52と基端側縁部53の両方が全体にわたって軸30に垂直な面Pに対して傾斜していたが、先端側縁部と基端側縁部の少なくとも一方が全体にわたって面Pに対して傾斜していればよく、また、マーカが円筒形部51bを備えていなくてもよい。例えば、第1の実施形態において、マーカ50を図5(a)〜図5(f)に示すようなマーカのいずれかに変えてもよい。図5(a)〜図5(f)は、それぞれ別の実施形態のマーカを示す側面図であって、反対側(すなわち紙面の裏側)から見た場合であっても同様の側面図となるようなマーカを示している。また、図5(a)〜図5(f)のマーカは、正面から見た際に図3(c)と同様の円環状をなしている。
【0042】
図5(a)に示すように、マーカ60は、先端側縁部62と基端側縁部63と、先端側縁部62と基端側縁部63とを連ねる壁部61とを有する。マーカ60は側面から見た際には台形状をなしている。先端側縁部62は全体にわたって、アウタカテーテル11の軸30に垂直な面Pに対して傾斜しており、基端側縁部63は全体にわたって、軸30に対して垂直な平面を形成している。
【0043】
図5(b)に示すように、マーカ70は、先端側縁部72と基端側縁部73と、先端側縁部72と基端側縁部73を連ねる壁部71とを有する。先端側縁部72は全体にわたって、アウタカテーテル11の軸30に垂直な面Pに対して傾斜しており、かつ、マーカ70の外側に向かって凸となる曲面を形成している。先端側縁部72の先端72aは、例えばマーカ60と比較して丸い形状を有しているため、アウタカテーテル11が屈曲した際であっても、先端側縁部72の先端72aがアウタカテーテル11に及ぼす圧力は比較的小さなものとなり、アウタカテーテル11が損傷する虞が低減されている。
【0044】
図5(c)に示すように、マーカ80は、先端側縁部82と基端側縁部83と、先端側縁部82と基端側縁部83とを連ねる壁部81とを有する。先端側縁部82は全体にわたって、アウタカテーテル11の軸30に垂直な面Pに対して傾斜しており、かつ、マーカ80の外側に向かって凹となる曲面を形成している。先端側縁部82の先端82aは、例えばマーカ60と比較して細くなっているため、狭窄部などの狭くなった通路に入り込みやすい。
【0045】
図5(d)に示すように、マーカ90は、先端側縁部92と基側縁部93と、先端側縁部92と基側縁部93とを連ねる壁部91とを有する。先端側縁部92は全体にわたって、アウタカテーテル11の軸30に垂直な面Pに対して傾斜しており、かつ、曲面を形成している。詳細には、先端側縁部92のうちの先端92a側の部分はマーカ90の外側に対して凸となる曲面を形成し、先端側縁部92のうちの基端92b側の部分はマーカ90の外側に対して凹となる曲面を形成している。
【0046】
図5(e)に示すように、マーカ100は、先端側縁部102と基端側縁部103と、先端側縁部102と基端側縁部103とを連ねる壁部101とを有する。先端側縁部102は全体にわたって、アウタカテーテル11の軸30に垂直な面Pに対して傾斜しており、かつ、平面と曲面との組み合わせからなる面を形成している。詳細には、先端側縁部102のうちの先端102a側の部分はマーカ100の外側に対して凸となる曲面を形成し、先端側縁部102のうちの基端102b側の部分は平面を形成している。
【0047】
上記のようなマーカ60,70,80,90,100を備えるアウタカテーテル11は、挿入時に石灰化病変CLを良好に通過することができる。また、先端側と基端側とを逆向きにしてマーカ60,70,80,90,100を取り付けたアウタカテーテル11は、抜去時に石灰化病変CLを良好に通過することができる。
【0048】
図5(f)に示すように、マーカ110は、先端側縁部112と基端側縁部113と、先端側縁部112と基端側縁部113とを連ねる壁部111とを有する。先端側縁部112および基端側縁部113はその全体にわたって、アウタカテーテル11の軸30に垂直な面Pに対して傾斜しており、かつ、互いに平行な平面を形成している。ここで、先端側縁部112および基端側縁部113の両方と交わる、アウタカテーテル11の軸30に垂直な面Pが存在している。換言すれば、第1の実施形態のマーカ50とは異なり、マーカ110は円筒形部を有していない。
【0049】
マーカ110を備えるアウタカテーテル11が図4(a)の石灰化病変CLよりも狭い病変部を通過する際には、先端側縁部112および基端側縁部113が形成する平面が血管と平行になる方向にマーカ110が傾きながら病変部を通過することができるので、マーカ110を備えるアウタカテーテル11はより細い通路であっても良好に通過することができる。
【0050】
(2)図5(a)〜図5(e)のマーカ60,70,80,90,100は、先端側縁部のみがアウタカテーテル11の軸30に垂直な面Pに対して傾斜しており、基端側縁部は軸30に対して垂直な面を形成していたが、これに代えて、基端側縁部の全体も軸30に垂直な面Pに対して傾斜させてもよい。この場合、基端側縁部の形状は、先端側縁部と同じでもよく、また異なっていてもよい。例えば、図5(g)に示すように、側面から見た際に等脚台形状となるようなマーカ120として本発明を実施してもよく、あるいは、図5(a)のマーカ60において、基端側縁部63を図5(d)に示す先端側縁部92の形状にしてもよい。
【0051】
(3)図3(a)〜図3(c)のマーカ50において、先端側縁部52および基端側縁部53は互いに平行な平面を形成していたが、これに代えて、互いに非平行な平面を形成するようにしてもよい。あるいは、先端側縁部52および基端側縁部53の一方または両方が曲面を形成するようにしてもよい。
【0052】
(4)図3(a)〜図3(c)のマーカ50において、先端側縁部52をアウタカテーテル11の軸30を中心として円周方向に所定角度回転(例えば、90°回転または180°回転)させたような構成としてもよい。
【0053】
(5)上記各実施形態では、正面から見た際には円環状となるように、全周方向にマーカ材料が存在するような環状となっていたが、これに代えて、環の一部が切りかかれた、例えば正面から見た際にC字型となるようなマーカに本発明を適用してもよい。
【0054】
(6)第1の実施形態では、マーカ50の先端が補強層41の先端に合うようにしてマーカ50が取り付けられていたが、これに代えて、マーカ50の先端を補強層41の先端から所定距離だけ基端側に離間させた状態でマーカ50が取り付けられてもよい。例えば、マーカ50の基端を外層40の先端に当接させた状態でマーカ50をアウタカテーテル11に取り付けてもよい。
【0055】
(7)第1の実施形態では、マーカ50はアウタカテーテル11の先端部に設けられていたが、マーカが設けられる箇所はこれに限定されない。例えば、マーカ50と同様の形状で小径のマーカをインナカテーテル12の先端部に設けてもよい。
【0056】
(8)本発明を適用したマーカを設けるカテーテルは、第1の実施形態のアウタカテーテル11に限定されない。例えば、バルーンカテーテル、吸引カテーテル、マイクロカテーテルなどといった他のカテーテルにも本発明を適用したマーカを設けることができる。
【符号の説明】
【0057】
10…カテーテル組立体、11…アウタカテーテル、11a…先端、11b…基端、30…軸、50,60,70,80,90,100,110,120…マーカ、51,61,71,81,91,101,111…壁部、52,62,72,82,92,102,112…先端側縁部、53,63,73,83,93,103,113…基端側縁部、P…面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端と基端とを有するカテーテルに設けられるマーカであって、
前記マーカは、カテーテルの軸に同軸状に設けられ、先端側縁部と、基端側縁部と、前記先端側縁部と前記基端側縁部とを連ねる壁部とを有し、前記先端側縁部および前記基端側縁部の少なくとも一方は全体にわたって、前記カテーテルの軸に垂直な面に対して傾斜していることを特徴とするマーカ。
【請求項2】
前記先端側縁部および前記基端側縁部の両方は全体にわたって、前記カテーテルの軸に垂直な面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のマーカ。
【請求項3】
前記先端側縁部および前記基端側縁部の少なくとも一方は全体にわたって、前記カテーテルの軸に垂直な面に対して傾斜した平面を形成することを特徴とする請求項1または2に記載のマーカ。
【請求項4】
前記先端側縁部および前記基端側縁部の少なくとも一方は全体にわたって、前記カテーテルの軸に垂直な面に対して傾斜した曲面を形成することを特徴とする請求項1または2に記載のマーカ。
【請求項5】
前記先端側縁部および前記基端側縁部は互いに平行な面を形成することを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載のマーカ。
【請求項6】
前記先端側縁部および前記基端側縁部と交わる、前記カテーテルの軸に垂直な面が存在することを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載のマーカ。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか一項に記載の前記マーカを備えることを特徴とするカテーテル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate