説明

マーキングを施したフィルムを製造するための方法および装置

【課題】記号、グラフィック、文字および数字などのマーキングを施した熱可塑性樹脂からなるフィルムを製造するにあたり、インクを用いない方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂が押出成形機1内において溶融されて押出ノズル10から溶融流30として放出されて少なくとも1つの冷却ローラ20,21,22の表面上を案内されてフィルム31へと冷却される際に、溶融流30および/またはこれによって形成されるフィルム31は、少なくとも1つの冷却ローラ20,21,22の表面における、マーキング40,41に対応する部分領域において残りの表面とは異なる冷却力を付与されるように処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記号、グラフィック、文字および数字などのマーキングを施したフィルムを製造するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造後のフィルムに印刷することによって熱可塑性樹脂からなるフィルムに対してマーキングを施すことは公知である。ここでは7色までのインクをフィルムの上に塗布する例えばフレキソ印刷機などが用いられる。ここでは画像および/またはレタリングなどの形状を有するマーキングが得られる。
【0003】
しかしながら多くの場合にはこのような画像やレタリングをカラーで表す必要はない。例えば「白」などの単色であっても多くの場合は十分である。さらに、例えば製品が塗布されたインクと接触してはならない場合に印刷では問題が生じる場合がある。多くの場合、使用されるインクは低温においてはフィルムに対して十分付着しないため、例えば冷凍用袋において規定では色の耐熱性が付与されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらに公知の方法を用いたフィルムの印刷は、常に改善に値すると思われるような特別な手間を伴うものである。したがって本発明の課題は、これらを用いることで従来技術における欠点が解消されるような冒頭において述べた方法および装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解消するために本発明においては、特許請求項1における特徴を有する方法が提案されている。
【0006】
また本課題を解消するための装置は、特許請求項7の主題である。
【0007】
本発明の好ましい実施例および展開例は、それぞれ従属するクレームの主題である。
【0008】
本発明による方法は、溶融流および/またはこれによって形成されるフィルムは、少なくとも1つの冷却ローラの表面におけるマーキングに対応する部分領域において残りの表面とは異なる冷却力を付与される(冷却力の影響をおよぼされる)ように処理されることを特徴とするものである。
【0009】
したがって本発明は、従来技術において公知であるように押出ノズルからの放出の直後に溶融流を冷却ローラの表面を介して冷却することによって、形成されるフィルムの強い、時には急激な冷却が実施され、これによってこのフィルムに対して通常高透明度と高光沢が付与されるという効果を利用するものである。
【0010】
ここで本発明で提案されているとおり溶融流および/またはこれによって形成されるフィルムが少なくとも1つの冷却ローラの表面におけるマーキングに対応する部分領域において残りの表面とは異なる冷却力を付与されるように処理されると、目的とされる透明度または光沢などにおける違いを既にフィルムの押出工程において得ることが可能となり、公知であるような方法を用いて印刷工程を実施することなく画像やレタリングなどがこうして得られたフィルムの上にこれらの違いがマーキングとして表される。したがってレタリングおよび/または画像の形におけるマーキングの付与は、フィルムの製造時に一連で実施され得、製造されたフィルムはもはや実際の印刷工程自体が省略され得るだけではなく、このための準備あるいは前処理などのいかなる手段をも必要としない。
【0011】
例えばそれ自体透明であるフィルムを製造する際に、表面におけるマーキングに対応する部分領域においては対応する冷却ローラの残りの表面領域よりも冷却力が低くなっていることでマーキングの透明度と光沢が低くなり、フィルムにおいて不透明なマーキングとして表現されることでフィルムにおいて所望するマーキングを製造することが可能であることが理解される。以下においてこの方法をポジティブ方法と称する。
【0012】
しかしながら同様に高透明度と高光沢度を得るために必要な冷却力をマーキングを生成したい冷却ローラの表面上における部分領域のみに対して与え、冷却ローラ上におけるそれ以外あるいは残りの表面領域に対してはより低い冷却力を付与することによって後者をより低い透明度とより低い光沢を有することで実質的に不透明に表現することも可能であり、このことを以下においてネガティブ方法と称する。
【0013】
この点においてマーキング形成方法に応じてポジティブ方法またはネガティブ方法においてマーキングに対応する表面上の部分領域において少なくとも1つの冷却ローラの残りの表面に比してより高いあるいはより低い冷却力が得られる。
【0014】
この点において本発明の提案によって生成可能なマーキングは,冷却に伴うフィルムの局所的な特性変化に基づくものであり、フィルムが完全に冷却していない間は相当する構成を有する冷却ローラを用いて生成され得る。したがってマーキングは、第1の冷却ローラとその上に積載された溶融流の領域だけではなく、フィルムが完全に冷却する前であれば溶融流から形成されるフィルムがこれらを介して案内される、下流側の冷却ローラの領域においても生成され得る。本発明の効果を強調するために複数の冷却ローラを介して異なる冷却力を組み合わせて付与することも考えられ得る。しかしながらこのためには各冷却ローラを調和して同期させることが必要となる。
【0015】
冷却ローラの表面領域に対して異なる冷却力を付与するには、例えば表面領域を異なる強度において能動的に冷却することや表面領域が異なる熱伝導性を有するように形成することが可能である。
【0016】
本発明における一つの提案によると、表面におけるマーキングに対応する部分領域を残りの表面を形成する素材に比してより高いあるいはより低い熱伝導性を有する素材を用いて形成することが可能である。
【0017】
このようなより高いあるいはより低い熱伝導性を有する素材は、例えば、表面コーティングとして、少なくとも1つの冷却ローラの表面上に塗布されるか、挿入部分として、冷却ローラの表面上に設けられる対応する凹部内に挿入され得る。
【0018】
より低い冷却力およびより低い熱伝導性を得るために、例えばラッカー・コーティング、紙または樹脂の層などの適切な熱絶縁性を有する素材を、適用されるポジティブ方法またはネガティブ方法のいずれかに応じてマーキングに対応する表面の部分領域か冷却ローラの残りの表面を覆うように冷却ローラの表面に施すことが可能である。
【0019】
本発明における別の提案によると、溶融流および/またはこれによって形成されるフィルムは、冷却力の向上のために静電気を帯電させることによって少なくとも1つの冷却ローラの表面に対して引き付けられるか、冷却力の低減のためにこのローラから反発されるようにすることも可能である。相当する素材選択によって、冷却されることによってフィルムを形成する溶融流との接触によってマーキングを生成すべき表面上の部分領域において静電気による引き付けあるいは反発の程度をポジティブ方法またはネガティブ方法のうちそれぞれに応じて所望する形で弱めたり高めたりすることが、可能であることが、想定され得る。
【0020】
冒頭で述べた課題を解消するための本発明における装置は、冷却ローラの表面がマーキングに対応する部分領域において残りの表面に対して異なる熱伝導性を有することを特徴とするものである。
【0021】
この場合、実施されるポジティブ方法またはネガティブ方法に応じてマーキングに対応する部分領域の熱伝導性は、冷却ローラの残りの表面における熱伝導性に比してより高くあるいはより低く構成される。
【0022】
例えばラッカーまたは樹脂あるいは紙の層からなる、より低い熱伝導性を有するコーティングをマーキングに対応する部分領域にコーティングする他にも、冷却ローラの表面に、所望するマーキングに対応する部分領域に対応した切り欠きが設けられる、スリーブ状のカバーを取り付けることによって、この領域においてその下における冷却ローラの表面に対してアクセスすることができる一方、残りの部分領域においてはこのスリーブ状のカバーが冷却ローラの表面を形成するようにすることも可能である。カバーの素材を選択することによって、この領域において冷却ローラの表面に比してより高いあるいはより低い熱伝導性を得ることが可能となる。
【0023】
冷却ローラは、円筒状であっても球体であってもよく、さらに前述のスリーブ状のカバーに代えて冷却ローラの円周に相当する長さの素材バンドを導入することも、部分領域および残りの領域において対応して異なる冷却力および/または熱伝導性を有する追加の表面を本発明によって製造されるフィルムの搬送路に導入し、押出ノズルからの放出後、その上を通ってフィルムが案内されるようにすることも可能である。
【0024】
冷却ローラの表面が生成すべきマーキングの領域においてさらにテクスチャリング(Texturierung)を有する場合、この領域においてフィルムに対して軽いエンボス加工を施すことが可能となり、これによってマーキングがより良好に見えるようになり、鋭角な輪郭を有するように形成される。
【0025】
本発明の更なる展開例および詳細は、以下において実施例を示す図面に基づいて詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明における、マーキングが施されたフィルムを製造するための装置の概略図である。
【図2】本発明によるフィルムである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1からはフィルムを製造するための方法と装置が見受けられ、このフィルムに対して図2における描写に従ってマーキングが施される。
【0028】
ここでフィルム31は、例えば中央領域において、連続的にのびるストライプ41でありそれ以外では透明に形成されたフィルム上で例えば軽い不透明に見えるストライプ41の中に規則的に繰り返されるように配置されるレタリング40を有する形態で、連続的なマーキングを有する。
【0029】
このようなフィルムの製造には、少なくとも1台の押出成形機1が用いられ、この押出成形機内においてはそれ自体公知である方法によって使用される熱可塑性樹脂を用いて溶融物を製造し、その後、この溶融物が押出成形機1の下流側に設けられた押出ノズル10を介して溶融流30として排出されて第1の冷却ローラ20の上に積載される。この冷却ローラ20は、温度調整されており、矢印で示された回転方向に対して回転可能に駆動されるが、その際に、冷却ローラ20の冷却されている表面に基づく積載される溶融流30に対して存在する温度勾配に基づいて、溶融流30に対して冷却力を発揮し、この冷却力によって溶融流が最速で冷却されることによって溶融流30は、冷却ローラ20上に積載される過程においてフィルム31へと徐々に冷却されて、さらに自身の高い透明度と光沢を得ることになる。
【0030】
これに加え、形成されるフィルム31は、その後ここでは2つであると例示される、別の冷却ローラ21、22を介して案内されてから更なる加工に供される。
【0031】
溶融流30からフィルム31への冷却が完全に終了していない各冷却ローラ20、21、22のそれぞれの表面領域において、冷却力を段階的に変更することによってフィルム31の透明度と光沢に対して影響を及ぼすことが可能である。
【0032】
冷却ローラ20、21、22のうち1つあるいはそれ以上の冷却ローラが図1における図面平面に対して垂直に延伸する長手方向軸に対して異なる冷却力を有するように、例えば、そこでマーキング40、41が形成されることになる領域が、冷却ローラ20または21あるいは22の残りの表面領域よりも低い熱伝導性を有するコーティングを設けられていることによって、図2におけるマーキング40、41が連続してフィルム表面上に形成される。
【0033】
第1の冷却ローラ20の領域においてもっとも大きな効果を得ることが可能であることは自明であるが、別の冷却ローラ21、22の領域においても同様にフィルム31の表面上においてさらにこのようなマーキング40、41を生成することが可能である。
【0034】
したがって、前述の方法および装置を用いることによって、フィルムの表面上に連続的に繰り返されるように製造されるべき、レタリングおよび/または画像などの形におけるマーキングを別途印刷することなく熱可塑性樹脂を用いてフィルムを製造することが可能となる。ここではマーキングを生成するために透明度および/または光沢度に関する構成条件の変化を用いるだけで印刷用インクを使用することがないため、内容物を汚す可能性のある印刷用インクおよび/または印刷用インクが樹脂フィルム上に十分に付着しないことに伴う問題が生じない。
【0035】
さらにこのようなマーキングを施したフィルムを製造する際の製造コストを著しく低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 押出成形機
10 押出ノズル
20,21,22 冷却ローラ
30 溶融流
31 フィルム
40,41 マーキング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーキング(40、41)が施された、熱可塑性樹脂からなるフィルム(31)を製造するための方法であって、この熱可塑性樹脂は押出成形機(1)内において溶融されて押出ノズル(10)より溶融流(30)として放出され、少なくとも1つの冷却ローラ(20、21、22)の表面上に放出されてフィルム(31)へと冷却される方法において、前記溶融流(30)および/またはこれによって形成されるフィルム(31)が前記少なくとも1つの冷却ローラ(20、21、22)の表面上における、マーキング(40、41)に対応する部分領域に対してその他の表面と比して異なる冷却力が付与されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記マーキング(40、41)に対応する表面上の部分領域において、少なくとも1つの冷却ローラ(20、21、22)における残りの表面に比してより高いあるいはより低い冷却力が得られるようにすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マーキング(40、41)に対応する表面上の部分領域は、残りの表面を形成する素材に比してより高いあるいはより低い熱伝導性を有する素材を用いて形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記より高いあるいはより低い熱伝導性を有する素材は、表面コーティングとして、少なくとも1つの冷却ローラ(20、21、22)の表面上に塗布されるか、挿入部分として、対応する凹部を設けられる冷却ローラ(20、21、22)の表面に対して挿入されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融流(30)および/またはこれによって形成されるフィルム(31)は、静電気帯電によって少なくとも1つの冷却ローラ(20、21、22)の表面上に対して引き付けられるまたは反発されることを特徴とする、請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記マーキングに対応する表面上の部分領域における静電気帯電の効果は、残りの表面における効果に比して異なるように構成されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
マーキング(40、41)が施された、熱可塑性樹脂からなるフィルム(31)を製造するための装置であって、この熱可塑性樹脂を用いて溶融流を生成するための少なくとも1つの押出成形機(1)と、この少なくとも1つの押出成形機の下流側に設けられる押出ノズル(10)と、この押出ノズル(10)から放出可能な溶融流(30)が積載可能である、少なくとも1つの冷却ローラ(20、21、22)とを有する装置において、冷却ローラ(20、21、22)の表面は、マーキング(40、41)に対応する部分領域において残りの表面に比して異なる熱伝導性を有することを特徴とする装置。
【請求項8】
前記マーキング(40、41)に対応する部分領域における熱伝導率は、冷却ローラ(20、21、22)の残りの表面における熱伝導性に比してより高くあるいはより低く構成されることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記マーキング(40、41)に対応する冷却ローラ(20、21、22)の表面に対してより低い熱伝導性を有するコーティングが施されることを特徴とする、請求項7または8の装置。
【請求項10】
前記コーティングは、ラッカーまたは紙あるいは樹脂の層を用いて形成されることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
冷却ローラ(20、21、22)の表面上にマーキング(40、41)に対応する部分領域において切り欠きが設けられたスリーブ状のカバーが取り付けられており、このスリーブ状のカバーは、冷却ローラ(20、21、22)の表面に比してより高いあるいはより低い熱伝導性を有する素材を用いて形成されることを特徴とする、請求項7または8に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−232586(P2012−232586A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−102136(P2012−102136)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【出願人】(510252841)ライフェンホイザー ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー マシーネンファブリーク (3)
【Fターム(参考)】