説明

マーキングを有する電子写真用ローラ

【課題】耐久性に優れ、錆の発生や摺動性、組立て性の不具合が無く、かつ樹脂層の特性値や再使用回数に従い識別するための、マーキングを有する電子写真用ローラを提供する。
【解決手段】金属製のメッキ層を有する軸体の樹脂層から突出した部分に、レーザ照射により酸化膜(マーキング)を形成し、そのマーキングの幅Wを40μm以上とし、かつ、盛り上りの突起高さHを10μm以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザープリンター等の電子写真装置に用いられる、判別のためのマーキングを有する電子写真用ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、レーザープリンター等の電子写真装置には、画像形成のための帯電、露光、現像、転写、クリーニング及び定着の各プロセスにおいて、それぞれの必要な特性に応じたローラが用いられている。例えば、帯電ローラ、現像ローラ及び転写ローラは、導電性や強度を有する金属性の軸体上に導電性樹脂層が設けられた導電性ローラである。そして、金属製の軸体として、加工性やコストの観点から鉄を主成分とする棒材を、面取り加工などを施した後に、防錆を目的としたメッキ処理が行われたものが用いられている。
【0003】
これらの電子写真用ローラは、各プロセス或いは機種毎に必要な特性があるのであるが、1種類のローラで複数のプロセスに対応可能な場合や、複数の機種に対応可能な場合がある。ただ、複数のプロセスや複数の機種に対応するためには、外観上は同一であっても、用途に応じた特性値(抵抗値、硬さ、外径など)が識別できることが望ましい。
【0004】
また、ローラをリサイクルやリユースするには、その使用回数を判別し、再使用が可能であるかどうかを判定できることが必要である。
【0005】
すなわち、出来上がったローラには、その特性値で識別するために製造後にマーキングを付すことが必要である。したがって、予め軸体にマーキングを施すことでは目的は達成出来ない。
【0006】
ローラ或いはその樹脂層自体にマーキングした例として、以下のものが知られている。
組み込まれているローラの利用回数を組み込む際の部材に切り欠き、刻み、インク塗布等の識別マークを付したものを用いている(特許文献1)。また、マグローラ製造に際し、軸体挿入方向或いは取り付け方向の誤り防止のために、樹脂製のマグローラの定まった片側にインク、塗料、窪み等の目印を設けている(特許文献2)。さらに、給紙ローラ等のように表面が正回転と逆回転で性能が異なる小ローラ部材を複数組み合わせるローラにおいて、小ローラ部材の組み立て方向を誤らないためにその側面にレーザにより窪みを設け、マーキングしている(特許文献3)。
【0007】
また、ローラ部品にレーザ照射を用いた技術として、金属圧延ローラの表面へ凹凸を形成すること(特許文献4)やローラのシャフト表面を洗浄すること(特許文献5)が知られている。
【0008】
しかしながら、インクや塗料を用いたマーキング方法においては、人手による搬送や実際の使用後に消失してしまい、ローラの組立て時や再使用時に識別が不可能となる場合がある。また、金属メッキ層を有する軸体に切り欠きや刻みを設けた場合には、マーキング部分に錆が発生するという問題がある。さらに、公知のレーザ照射の方法を用いても、軸体にメッキ層を有する電子写真用ローラのマーキング方法としては、錆の発生や、軸体の摺動性確保、また装置への組立て性確保に課題がある。なお、組み立てる際の保持部材等に識別マークを付しておいても、ローラ自体が単独にあるときは判別できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平07−302033号公報
【特許文献2】特開平11−204326号公報
【特許文献3】特開2002−002020号公報
【特許文献4】特開昭64−022406号公報
【特許文献5】特開2008−083129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、それ自体で容易に使用目的、使用回数等が識別でき、かつ、識別のためのマーキングに基づく錆等の発生がない、マーキングを有する電子写真用ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討し、ローラの軸体の樹脂層から突き出た部分に、レーザにより、使用目的、使用回数等の所定のマーキングするに際し、処理部に生ずる盛り上がり等を管理するとよいことを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明は、メッキ層を有する金属製の軸体と、その外周に少なくとも1層の樹脂層を有し、樹脂層から突出した軸体部にマーキングを有する電子写真用ローラであって、該マーキングが、レーザ照射により形成された酸化膜であり、その幅Wが40μm以上であり、かつ、盛り上りの突起高さHが10μm以下であることを特徴とする電子写真用ローラである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子写真用ローラは、ローラの使用目的(抵抗値、硬さ)や使用回数等の識別が容易であり、かつ、軸体にレーザによりマーキングされているにかかわらず、錆の発生がなく、組み立て時の不具合の発生もない。また、該電子写真用ローラは、電子写真装置に組み込んだときの取り付け不良の発生がなく、良好な性能がそのまま達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の電子写真用ローラの概略の(a)正面図及び(b)側面図である。
【図2】本発明のマーキング装置の概略の(a)正面図及び(b)側面図である。
【図3】本発明のマーキング部の概略断面図である。
【図4】本発明の電子写真用ローラの電気抵抗測定機の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明が対象とする電子写真用ローラは、主として帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等の、導電性の軸体上に導電性の樹脂層が少なくとも1層形成され、さらにその外に必要により表面樹脂層が形成されたローラである。
【0016】
本発明の電子写真用ローラの概略を図1に示す。なお、図1において(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【0017】
本発明の電子写真用ローラは金属製の軸体1上に、導電性を付与したジエン系ゴム、シリコーンゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴムの如き弾性を有する樹脂からなる樹脂層2を形成することにより得られる。また、樹脂層2の外周に、耐摩耗性や帯電特性制御、表面形状制御のために、必要に応じて表面樹脂層3を設けても良い。表面樹脂層3の原料樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、尿素樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂あるいはポリアミド樹脂が挙げられる。
【0018】
前記樹脂層2及び表面樹脂層3に導電性を付与するために、カーボンブラック等の導電剤を配合することが好ましい。導電剤としては、以下のものを挙げることができる。有機金属塩等のイオン導電性化合物;カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、銅、錫、ステンレス鋼の各種導電性金属又は合金;酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫―酸化アンチモン固溶体、酸化錫―酸化インジウム固溶体の各種導電性金属酸化物;これらの導電性材料で被覆された絶縁性物質の微粉末等の電子導電性物質。
【0019】
表面樹脂層3には、表面形状を制御するために、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂の如き樹脂の微粒子を混合して用いても良い。
【0020】
導電性の軸体1としては、その材質が良導電性の金属であれば特に制限は無い。また、その形状は円柱状又は円筒状である。軸体の外径としては、例えば、2mm以上10mm以下の範囲であることが好ましい。良導電性の金属として、具体的に、鉄合金、アルミニウム合金、チタン合金、銅合金、ニッケル合金(例えば、ステンレス)、ジュラルミン、真鍮、青銅等を挙げることができる。また、軸体として、さらに金属メッキ、酸化処理等の防錆処理を行ったものを使用することが好ましい。特に、加工性が良好で安価であることから、鉄合金に無電解ニッケルメッキを施した軸体が好ましい。無電解ニッケルメッキの厚さは、防錆性とコストの観点から、2μm乃至10μmが好ましく、更に好ましくは3μm乃至7μmである。
【0021】
樹脂層形成後に、例えば電気抵抗を測定し、各種プロセスで用いるローラに好適な抵抗値に従い、識別用のマーキング4を軸体1の樹脂層2から突出した軸体部1aに施す。例えば帯電ローラとして好適な電気抵抗が1×106Ω乃至1×108Ωで、転写ローラとして好適な電気抵抗が1×108Ω乃至1×1010Ωである時、1×108Ωを閾値として、一方にマーキングを施すことにより、帯電ローラと転写ローラを判別できる。
【0022】
また、印字速度の異なる電子写真装置に用いる現像ローラにおいて、その電気抵抗の適正値が異なる場合も、樹脂層形成後に電気抵抗を測定した後に、その閾値で判別し、マーキングすることにより、電気抵抗の異なる2種類の現像ローラを得ることができる。
【0023】
またマーキング4は、電子写真用ローラを使用後に回収して、再使用する場合の目印としても用いることができる。例えば、回収した電子写真用ローラを再使用する度に突出した軸体部1aにマーキングすることによって、当該電子写真用ローラの寿命或いは使用回数を知ることができる。
【0024】
マーキングする方法として、例えば、電気抵抗測定後に、突出した軸体部1aの表面円周上にレーザ照射により酸化膜を生じさせ、それにより識別可能なマーキング4を形成する方法がある。
【0025】
マーキングするのに使用するレーザ照射装置としては、YAGレーザ、エキシマレーザ、CO2レーザ及びファイバレーザが支障なく使用できる。特に、出力安定性に優れ、処理時間短縮が可能となる、ファイバレーザが好ましい。
【0026】
図2は、レーザ照射によるマーキングの様子を示す図((a)正面図、(b)側面図)である。
【0027】
レーザ照射装置5は、レーザ光6が軸体1に垂直となるようにし、かつ軸体1の外周面からレーザ照射装置までの距離は、使用するレーザ照射装置固有の照射距離になるように設置されている。軸体1は回転機構を有する把持体(不図示)により両端から把持し、矢印に示すように回転させながらレーザ光6を照射する。
【0028】
レーザ照射の際のレーザ出力Pは10W乃至30Wが好ましく、特に好ましくは10W乃至20Wである。レーザ出力が10Wに満たないと短時間では目視可能なマーキングが軸体表面に形成されず、照射時間を長時間とすることが必要であり、生産性が悪化するので好ましくない。また、レーザ出力が30Wを超える場合、照射部分の削れが深くなりすぎ、軸体1のメッキ層と軸体金属との界面に錆が発生したり、削れによりマーキング端部に大きく盛り上りが生じたりする。削れが深すぎて錆が発生すると、摺動性悪化や電気接点不良といった問題が生じることがある。また、盛り上りが大きいと、電子写真装置に組み込む際に障害となり、組立て性が悪化するという問題もある。なお、レーザ出力が30Wを超える場合、照射時間を短くすることで、上記問題を解決することも可能であるが、例えば、軸体全周に均一なマーキングを形成するには安定性に問題が発生することが多い。
【0029】
レーザ照射時間T(秒)は、レーザ照射の出力にもよるが、軸体の周囲にマーキングするために、少なくとも軸体が1回転するのに必要な時間であれば良く、通常、軸体の直径をD(mm)としたとき、D/3以上5D/6以下であることが好ましい。なお、この際の軸体は照射時間内に軸体が1回転以上回転するようにすればよく、その回転数V(rps)は、好ましくはV≧6/Dとすることがうまくマーキングをするために望ましい。
【0030】
レーザ照射により軸体にマーキングした際に、マーキング部分の断面は図3に示すようになる。すなわち、軸体表面にマーキング7(幅W(μm))が形成され、レーザ光があたることによる削れによって溝部分8(深さL(μm))が形成される。その削れにより溝部分8の端部に盛り上り9(突起高さH(μm))が生じる。
【0031】
マーキング部分の形状としては、幅Wは40μm以上、突起高さHは10μm以下、深さLが20μm以下、特に、軸体外周のメッキ層の厚さをM(μm)としたとき、下記式(1)を満足することが好ましい。
1≦L≦M+3 式(1)
【0032】
なお、マーキングの幅Wが50μm以上であると視認性が良好となるので好ましく、電子写真用ローラの機能に弊害が無ければ特に上限は定めるものではないが、軸体のマーキング可能範囲にもよるが、通常、1mm以下であることが好ましい。溝部分の深さLが大きい(すなわち、削れがはなはだしい)場合、軸体の金属部も削られることになり、メッキ層との界面に錆の発生が顕著になる。溝部分の深さLが20μm以下であれば実用上問題ないレベルである。深さLが(M+3)μm以下であれば、錆の発生は僅かであるためより好ましい。また、電子写真用ローラの電子写真装置への組立て性のために、レーザ照射で生成する盛り上りの突起高さHが10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることが更に好ましい。突起高さHが10μmを超えると、電子写真装置に組み込む際に、軸受け部や他の摺動部品とのすべり性が損なわれ、組立て性が悪化することが多い。なお、突起高さが10μm超のマーキングが施された場合、組み立て性が保たれるような軸受け部や摺動部品を取ると、組み立て精度が悪化するので望ましくない。
【0033】
また、レーザ照射時にはマーキング部分から削り粉が発生するので、削り粉のマーキングの極近傍への飛散や軸体表面への付着が生じる。そのため、削り粉を清掃する手段を設けておくことが好ましい。清掃は、レーザ照射中や照射後に軸体を回転させたまま、スポンジや布などからなるワイパーを押し当てれば良い。なお、清掃時間は軸体が1周以上回転でき、軸体がきれいにできるならば、特に制限されるものではない。
【0034】
以上、単にマーキングできればよいことで、軸体を回転させてマーキングすることを示したが、照射するレーザ光を移動して、マーキングを文字や複雑な形状とすることもできる。さらに、単に軸体の回転により軸体に環状のマーキングを施した場合は、ローラの判別(種類、使用回数等)はマーキングの幅、本数等で区別すればよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて、本発明を説明する。
【0036】
[製造例1] 現像ローラの作成
(原料ローラの作成)
まず、外径6mm、長さ264mm、片端部を駆動軸とするための面取り加工が施された硫黄複合快削鋼からなる棒に、厚さ7μmの無電解ニッケルメッキを施した軸体を用意した。この軸体を、内径12mmの円筒状金型内に同心となるように設置し、樹脂層を形成する材料として、液状導電性シリコーンゴム(東レダウコーニングシリコーン株式会社製、ASKER−C硬度50度品)を金型内に注入した。その後、円筒状金型を温度130℃のオーブンに入れて20分間加熱し、室温まで冷却した後に、軸体と一体となった樹脂層を円筒状金型から脱型した。次いで、得られたローラを温度200℃のオーブンに入れて、4時間2次加硫を行い、軸体の外周に厚み3mmの樹脂層を形成し、原料ローラを得た。
【0037】
(表面樹脂層の形成:現像ローラの作成)
ポリウレタン樹脂「ニッポラン5230」(商品名、日本ポリウレタン工業株式会社製)をメチルエチルケトン(MEK)に溶解した。この溶液に、導電剤としてカーボンブラック「MA230」(商品名三菱化学株式会社製)を、ポリウレタン樹脂の固形分100質量部に対して20質量部となるよう添加し、ボールミルにて5時間処理して、カーボンブラックが分散された樹脂塗料を得た。次いで、ウレタン粒子「アートパールC−800T」(商品名、根上工業株式会社製)を、ポリウレタン樹脂の固形分100質量部に対し30質量部添加して十分に攪拌した後、MEKを加えて粘度が7mPa・sとなるように調整し、表面樹脂層用塗料を得た。なお、粘度は、E型粘度計「RE115L」(商品名、東機産業株式会社製)を用いて測定した(コーン角度1°34′の標準コーンロータ、液温度25℃、コーンロータ回転数20rpm)。得られた塗料に上記原料ローラをディッピングして、樹脂層の表面に塗布した後、温度80℃のオーブンで15分間乾燥して、樹脂層の外周に厚さ10μmの表面樹脂層を作製し、電子写真用の現像ローラを得た。
【0038】
[実施例1]
製造例1で作成した現像ローラの電気抵抗を測定し、1×107Ω以下のものと1×107Ω超のものに分けた。1×107Ω以下のローラについて、軸体の面取り側から10mmの位置に、ローラ回転数0.5rpsで回転させながら、レーザにてマーキングして、マーキングされた現像ローラを得た。なお、レーザ照射装置として、CO2レーザマーカ「LP−431U」(商品名、SUNX社製)を用い、照射距離は111mmであり、レーザ出力30Wで8秒間照射とした。
【0039】
(現像ローラの電気抵抗の測定)
電気抵抗の測定は、図6に示すようにして行った。すなわち、外径30mm、長さ300mmのステンレス製ドラム10に、軸体に荷重14(片側4.9N)をかけ、現像ローラ15を平行に押し当てる。この状態でステンレス製ドラム10を回転させ、現像ローラを60rpmで連れ回りさせる。回転が一定になったところで電源11から軸体に50Vの電圧を印加する。このときにステンレス製ドラム10から基準抵抗(10kΩ)11にかかる電圧を電圧計12により測定する。基準抵抗の抵抗値と基準抵抗にかかる電圧より基準抵抗に流れる電流を求め、ローラの実抵抗(Ω)を算出する。
【0040】
[実施例2]
現像ローラの回転数を2rpsとし、レーザ照射装置をファイバレーザマーカ(LP−F13W:SUNX社製)に換え、照射距離:190mm、レーザ出力:10W、照射時間:3秒とした以外は、実施例1と同様にして、マーキングを有する現像ローラを得た。
【0041】
[実施例3]
レーザ出力を16Wとした以外は、実施例2と同様にして、マーキングを有する現像ローラを得た。
【0042】
[実施例4]
ローラ回転数を3rpsとし、レーザ出力を20Wとした以外は、実施例2と同様にして、マーキングを有する現像ローラを得た。
【0043】
[実施例5]
ローラ回転数を1rpsとし、照射時間を2秒とした以外は、実施例2と同様にして、マーキングを有する現像ローラを得た。
【0044】
[実施例6]
照射時間を5秒とした以外は、実施例4と同様にして、マーキングを有する現像ローラを得た。
【0045】
[実施例7]
レーザ照射後に、回転させながらマーキング部に不織布「ベンコットM−3(商品名、旭化成せんい株式会社製)を2秒間押し当てて清掃を行なった以外は、実施例3と同様にして、マーキングを有する現像ローラを得た。
【0046】
[実施例8]
レーザ照射後に、回転させながらマーキング部に不織布「ベンコットM−3」(商品名)を2秒間押し当てて清掃を行なった以外は、実施例1と同様にして、マーキングを有する現像ローラを得た。
【0047】
[比較例1]
レーザ出力を8Wとし、照射時間を1秒とした以外は、実施例4と同様にして、マーキングを有する現像ローラを得た。
【0048】
[比較例2]
レーザマーキングに代えて、インクジェットプリンタ「MK−9000)(商品名:株式会社キーエンス製:ヘッドML−9010)を用いる、幅0.2mmのインクマーキングにした以外は、実施例1と同様にして、マーキングを有する現像ローラを得た。
【0049】
[比較例3]
レーザの照射時間を10秒とした以外は、実施例1と同様にして、マーキングを有する現像ローラを得た。
【0050】
上記マーキングを有する現像ローラの製造条件を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
得られたマーキングを有する現像ローラに付き、マーキングの幅、深さ及び高さ、マーキング部及びその周辺部のさびの発生状況、マーキングの視認性、カ−トリッジへの組立て性及び現像ローラとしての耐久性を下記により評価し、表2に示した。
【0053】
(マーキングの幅W、深さL及び高さHの測定)
得られた現像ローラのマーキング部を、表面粗さ測定機「サーフコーダSE−3500」(商品名、株式会社小坂研究所)を用いて軸方向に測定し、得られた断面曲線から、マーキング部の幅(W)、深さ(L)及び高さ(H)を測定した。測定条件:測定長さ2.5mm、カットオフ0.8mm、測定速度0.1mm/sec。
【0054】
(マーキングの視認性)
マーキング部を目視及び対物レンズ200倍のビデオマイクロ「VH−8000」(商品名、株式会社キーエンス製)により観察し、軸体全周においてマーキングが認識可能であるか(視認性)を、下記基準で判定した。
◎:目視にて全周判定可能。
○:目視にて部分的に読み取り可能。
△:拡大観察(200倍)すれば、部分的に読み取り可能。
×:拡大観察(200倍)でも、部分的に読み取り不可能。
【0055】
(組立て性)
レーザービームプリンタ「サテラLBP5050」(商品名、キヤノン株式会社製)のシアントナーカートリッジに現像ローラとして組み込む際、軸受け部分との摺動性から、組立て性の優劣を、下記基準で判定した。
○:組立てに、特に不具合なし。
△:若干の引っ掛りがあるが、問題なく組立てられる。
×:組立てが困難である。
【0056】
(耐久性)
組立て性の試験で現像ローラを組み込んだシアントナーカートリッジをレーザービームプリンタ本体に装着し、30℃/80%RH環境にて1%印字耐久試験を行う。耐久3000枚印字後に現像ローラを取り出し、マーキング部を観察し、耐久性を下記基準で判定した。
○:耐久試験では、消失しなかった。
×:耐久試験で消失した。
【0057】
(錆の発生状況)
得られたマーキングを有する現像ローラを、40℃/95%RH環境に1ヵ月放置し、マーキング部とその周辺における錆の発生を目視及び対物レンズ200倍のビデオマイクロ「VH−8000」(商品名)により観察し、錆の発生状況を下記基準で判定した。
◎:錆の発生なし。
○:部分的ではあるが、僅かに発生した。
△:全周にわたり、僅かに発生した。
×:全周にわたり、かなり発生した。
【0058】
【表2】

【0059】
上記結果から明らかなように、本発明に従う現像ローラ(実施例1乃至8)は、いずれの項目についても実用上問題ないレベルであった。一方、マーキングをインクジェットでした現像ローラ(比較例2)では耐久性に問題があった。また、マーキングの幅が狭い現像ローラ(比較例1)では視認性に問題があった。さらに、マーキングの突起高さが大きい現像ローラ(比較例3)では、マーキングの溝部分が深くなりすぎ、全周に錆が発生すると共に、突起高さHが10μmを超えるため、カートリッジの組立てが困難であった。
【0060】
すなわち、本発明の電子写真用ローラは、錆の発生や摺動性、組立て性の不具合の無いマーキングがされているので、樹脂層の特性値や再使用回数に従い識別する機能を満たすことができる。
【符号の説明】
【0061】
1 軸体
1a 樹脂層2から突出した軸体部
2 樹脂層
3 表面樹脂層
4 マーキング
5 レーザマーカ
6 レーザ光
7 マーキング(幅(W))
8 溝部分(深さ(L))
9 盛り上り(高さ(H))
10 ステンレス製ドラム
11 電源
12 基準抵抗(10kΩ)
13 電圧計
14 荷重
15 現像ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッキ層を有する金属製の軸体と、その外周に少なくとも1層の樹脂層を有し、樹脂層から突出した軸体部に、マーキングを有する電子写真用ローラであって、
該マーキングが、レーザ照射により形成された酸化膜であり、その幅Wが40μm以上であり、かつ、盛り上りの突起高さをHが10μm以下であることを特徴とするマーキングを有する電子写真用ローラ。
【請求項2】
前記マーキングの幅Wが50μm以上で、突起高さHが5μm以下であり、軸体外周のメッキ層の厚さをM(μm)としたとき、マーキングの溝部分の深さL(μm)が下記の式(1)を満足することを特徴とする請求項1に記載のマーキングを有する電子写真用ローラ。
1≦L≦M+3 式(1)
【請求項3】
前記レーザ照射にファイバレーザを用い、レーザ出力Pが10W乃至20Wであり、レーザ照射時間T(秒)は、軸体の直径をD(mm)としたとき、D/3以上5D/6以下であり、軸体の回転数V(rps)は、V≧6/Dであることを特徴とする請求項1又は2に記載のマーキングを有する電子写真用ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−7997(P2011−7997A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150897(P2009−150897)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】