説明

マーク検出方法

【課題】 検出対象であるマークのエッジを正確に検出することが可能なマーク検出方法を提供する。
【解決手段】 Y方向に延びる直線状のマークを含む二次元画像を、X方向に微分した後、Y方向に射影加算する工程と、射影加算時におけるY方向に存在するエッジの数をX方向の領域毎に検出するエッジ数検出工程と、エッジ数検出工程で検出したX方向の領域毎のエッジの数が設定値以下のときに射影加算後のX方向の領域毎の加算値を減少させる加算値補正工程と、加算値補正工程により補正した射影加算後のX方向の領域毎の加算値に基づいて直線状のマークのエッジを検出するエッジ検出工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マークを含む二次元画像からマークのエッジを検出するマーク検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マークのエッジを検出する手法の一つとして、微分処理がある。ここで、微分とは、画像処理における端縁部分の抽出の手法であり、特定の画像に関し、互いに隣接する画素間、あるいは、一定間隔だけ離れた画素間の輝度の差分をとることである。また、直線状に延びるマークのエッジを検出するときには、射影加算が利用される。ここで、射影加算とは、特定の画像に対して一方向に値を加算することである。そして、取り込み画像に対してフィルタ等を利用して平滑化を実行することにより、ゴミの画像等のノイズを除去するようにしている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】2000年10月12日シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社発行、FEST Project編集委員会編「実践画像処理」第62乃至69頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のマーク検出方法によれば、コントラストの低いマークの近傍にコントラストの高いノイズが存在した場合、マークを正確に認識できないという問題が生じている。
【0005】
図5は、Y方向に延びる直線状のマーク101とノイズ102とを含む二次元画像をX方向に微分した後、Y方向に単純に射影加算した結果を模式的に示す説明図である。
【0006】
ここで、上述したように、微分とは、互いに隣接する画素間、あるいは、一定間隔だけ離れた画素間の輝度の差分をとることであり、図5に示すマーク101についてX方向に微分するとは、Y方向の各位置において、X方向に隣り合う画素間、あるいは、一定間隔だけ離れた画素間で輝度の差分をとることである。また、射影加算するとは、一方向に値を加算することであり、図5に示すマーク101について微分後に射影加算するとは、X方向の微分値をY方向に沿って加算することである。
【0007】
図5に示すように、二次元画像中に検出したい直線状のマーク101とともにゴミの画像等のノイズ102が存在した場合において、この二次元画像をX方向に微分した後、Y方向に射影加算した場合には、ノイズ102を示すピークP1と、直線状のマーク101のエッジを示す一対のピークP2およびP3を有する波形を得ることができる。このとき、直線状のマーク101のコントラストが低く、ノイズ102のコントラストが高い場合には、ノイズ102を示すピークP1と、直線状のマーク101のエッジを示す一対のピークP2およびP3とが同程度、あるいは、ノイズ102を示すピーク値P1の方が大きくなり、直線状のマーク101のエッジを特定することが困難であるという問題が生ずる。
【0008】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、検出対象であるマークのエッジを正確に検出することが可能なマーク検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、マークを含む二次元画像を、X方向に微分した後、Y方向に射影加算することにより、マークのエッジを検出するマーク検出方法において、前記射影加算時における前記Y方向に存在するエッジの数を、X方向の領域毎に検出するエッジ数検出工程と、前記射影加算後のX方向の領域毎の加算値を、前記エッジ数検出工程で検出したX方向の領域毎のエッジの数により補正する加算値補正工程と、前記加算値補正工程により補正した前記射影加算後のX方向の領域毎の加算値に基づいて前記マークのエッジを検出するエッジ検出工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記マークは、Y方向に延びる直線状のマークである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記加算値補正工程においては、前記エッジ数検出工程で検出したX方向の領域毎のエッジの数が設定値以下のときに、前記射影加算後のX方向の領域毎の加算値を減少させる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、必要なマークを他の情報と区別して、正確に検出することが可能となる。
【0013】
請求項2および請求項3に記載の発明によれば、直線状のマークとともにコントラストの高いノイズが存在した場合においても、ノイズの影響を防止して直線状のマークを正確に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明を適用する露光装置100を模式的に示す斜視図である。
【図2】基板2の移動機構を、カメラ15とともに模式的に示す概要図である。
【図3】この発明に係るマーク検出方法を示すフローチャートである。
【図4】Y方向に延びる直線状のマーク101とノイズ102とを含む二次元画像に対してこの発明を適用した結果を模式的に示す説明図である。
【図5】Y方向に延びる直線状のマーク101とノイズ102とを含む二次元画像をX方向に微分した後、Y方向に単純に射影加算した結果を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。最初に、この発明を適用する露光装置の構成について説明する。図1は、この発明を適用する露光装置100を模式的に示す斜視図である。
【0016】
この露光装置100は、半導体ウエハ等の基板2に対して、マスク3のパターンを露光するためのものであり、超高圧水銀灯等の光源4と、集光ミラー5と、ダイクロイックミラー6と、フライアイレンズ(複合レンズ)7と、コリメートミラー1とを備える。
【0017】
この露光装置100においては、光源4から出射された光は、集光ミラー5により集光されてダイクロイックミラー6に入射する。ダイクロイックミラー6においては、そこに入射した光のうち、露光に必要な波長の光のみがフライアイレンズ7に向けて反射される。そして、フライアイレンズ7を通過した光は、コリメートミラー1によりコリメートされて平行光となり、マスク3を介して基板2に照射される。このとき、マスク3および基板2は、フライアイレンズ7を通過した光が互いに重畳する領域に配置されており、均一な照度分布によりパターン露光を実行することが可能となる。
【0018】
図2は、基板2の移動機構を、カメラ15とともに模式的に示す概要図である。
【0019】
基板2は、支持部材13により支持されている。この支持部材13は、移動機構14により、X、Y、θ方向に移動可能となっている。そして、支持部材13により支持された基板2の画像は、カメラ15により撮像される。このような基板2には、アライメントマークやスクライブラインが形成されている。この露光装置100においては、アライメントマークやスクライブラインを検出することにより基板2の位置決めを実行している。このため、基板2に形成されたマークとしてのアライメントマークまたはスクライブラインを、ノイズの影響を受けることなく正確に検出する必要がある。
【0020】
次に、この発明に係るマーク検出方法について説明する。図3は、この発明に係るマーク検出方法を示すフローチャートである。また、図4は、Y方向に延びる直線状のマーク101とノイズ102とを含む二次元画像に対してこの発明を適用した結果を模式的に示す説明図である。
【0021】
直線状のマーク101を検出するときには、最初に、マーク101を含む二次元画像をX方向に微分する(ステップS1)。そして、この微分の結果をY方向に射影加算する(ステップS2)。ここでX方向およびY方向とは、基板2の主面に対して設定された互いに直交する二方向を指す。この方向は、露光装置100等に対して適宜設定される方向である。
【0022】
このとき、二次元画像中に検出したい直線状のマーク101とともにゴミの画像等のノイズ102が存在した場合において、この二次元画像をX方向に微分した後、Y方向に単純に射影加算した場合には、図5に示す場合と同様、ノイズ102を示すピークP1と、直線状のマーク101のエッジを示す一対のピークP2およびP3を有する波形とが認識される。このとき、直線状のマーク101のコントラストが低く、ノイズ102のコントラストが高い場合には、ノイズ102を示すピークP1と、直線状のマーク101のエッジを示す一対のピークP2およびP3とが同程度、あるいは、ノイズ102を示すピーク値P1の方が大きくなり、直線状のマーク101のエッジを特定することが困難となる。
【0023】
このため、この発明に係るマーク検出方法においては、Y方向の射影加算を実行したときのエッジ数を検出する(ステップS3)。すなわち、Y方向における所定の距離毎に、X方向の微分時に微分値が一定以上となったエッジの数を数える。そして、射影加算後のX方向の領域毎の加算値を、このエッジ数検出工程で検出したX方向の領域毎のエッジの数により補正する加算値補正工程を実行する(ステップS4)。
【0024】
より具体的には、この加算値補正工程においては、エッジ数検出工程(ステップS3)で検出したX方向の領域毎のエッジの数が設定値以下のときに、射影加算後のX方向の領域毎の加算値を減少させる。図4に示す実施形態の場合においては、直線状のマーク101はY方向の領域においてエッジ数が多いのに対して、ノイズ102はY方向の領域においてエッジ数が少なくなる。このため、エッジの数が設定値以下のときに、射影加算後のX方向の領域毎の加算値を減少させる処理を行った場合には、図4に示すように、ノイズ102を示すピークP1は、直線状のマーク101のエッジを示す一対のピークP2およびP3よりも小さな値となる。なお、エッジの数が設定値以下のときに、射影加算後の加算値をゼロとなるまで減少させるようにしてもよい。
【0025】
ここで、上記設定値は、検出したいマークの長さや予想されるノイズ102の大きさ等に基づいて、予め設定しておく。
【0026】
そして、直線状のマーク101のエッジを検出する(ステップS5)。この場合には、直線状のマーク101のコントラストが低くノイズ102のコントラストが高い場合であっても、加算値補正工程(ステップS4)においてノイズ102を示すピーク値を小さくする処理がなされていることから、エッジ検出時の閾値を適切に設定することにより、ノイズ102の影響を受けることなく、直線状のマーク101のエッジを検出することができる。
【0027】
なお、上述した実施形態においては、エッジ数検出工程で検出したX方向の領域毎のエッジの数が設定値以下のときに、射影加算後のX方向の領域毎の加算値を減少させる処理を行っているが、直線状のマークとともに存在する微小な欠陥等を検出するためには、エッジ数検出工程で検出したX方向の領域毎のエッジの数が設定値以上のときに、射影加算後のX方向の領域毎の加算値を減少させる処理を行ってもよい。このような構成を採用した場合においては、直線状のマークによるエッジを示すピーク値を小さなものとして、微小な欠陥等を容易に検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 コリメートミラー
2 基板
3 マスク
4 光源
5 集光ミラー
6 ダイクロイックミラー
7 フライアイレンズ
13 支持部材
14 移動機構
15 カメラ
100 露光装置
101 マーク
102 ノイズ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マークを含む二次元画像を、X方向に微分した後、Y方向に射影加算することにより、マークのエッジを検出するマーク検出方法において、
前記射影加算時における前記Y方向に存在するエッジの数を、X方向の領域毎に検出するエッジ数検出工程と、
前記射影加算後のX方向の領域毎の加算値を、前記エッジ数検出工程で検出したX方向の領域毎のエッジの数により補正する加算値補正工程と、
前記加算値補正工程により補正した前記射影加算後のX方向の領域毎の加算値に基づいて前記マークのエッジを検出するエッジ検出工程と、
を備えたことを特徴とするマーク検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載のマーク検出方法において、
前記マークは、Y方向に延びる直線状のマークであるマーク検出方法。
【請求項3】
請求項2に記載のマーク検出方法において、
前記加算値補正工程においては、前記エッジ数検出工程で検出したX方向の領域毎のエッジの数が設定値以下のときに、前記射影加算後のX方向の領域毎の加算値を減少させるマーク検出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−88836(P2013−88836A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225521(P2011−225521)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(396025872)株式会社大日本科研 (9)
【Fターム(参考)】