説明

マーク計測方法及び装置、露光方法及び装置、並びに露光システム

【課題】 スキャタロメトリを用いて、アライメントを高精度にかつ効率的に行う。
【解決手段】 ロットの先頭ウエハ上のウエハマークからの所定次数の回折光の強度を波長別に検出するステップ102と、その検出結果に基づいてスキャタロメトリ解析によってそのウエハマークの断面形状を求め、この断面形状からそのウエハマークの位置のオフセットを求めるステップ103と、そのウエハ又は2枚目以降のウエハ上のウエハマークの位置をアライメントセンサを用いて計測するステップ104と、この計測値をそのステップ103で求められたオフセットを用いて補正し、この補正された結果に基づいてそのウエハのアライメントを行うステップ105とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるスキャタロメトリ(Scatterometry) 又はリフレクトメトリ(Reflectometry) を用いて、マークの位置に関する情報を求めるためのマーク計測技術に関し、例えば半導体素子、撮像素子(CCD等)、又は表示素子(液晶表示素子等)等の各種デバイスのマスクパターンを基板上に転写する露光工程においてマスク及び基板のアライメントを行う場合等に使用して好適なものである。また、本発明は、そのマーク計測技術を用いた露光技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体素子や液晶表示素子を製造するためのリソグラフィ工程中の露光工程においては、ステッパーやスキャニングステッパー等の露光装置を用いて、マスクとしてのレチクル(又はフォトマスク等)に形成された微細なパターンの像が、フォトレジスト等の感光材料が塗布された基板としてのウエハ(又はガラスプレート等)上に投影露光される。ウエハ上には複雑な回路を多数の層(レイヤ)に亘って所定の位置関係で形成する必要があるため、ウエハ上の2層目以降の露光に際しては、レチクル及びウエハ上のアライメントマークの位置の検出結果に基づいて、レチクルのパターン像をウエハ上の各ショット領域に既に形成されている回路パターンに高精度に位置合わせ(アライメント)した状態で、レチクルのパターン像の露光が行われる。アライメント精度に対する要求は、パターンの微細化と共に厳しくなってきており、アライメントには様々の工夫がなされている。
【0003】
従来、レチクル上のアライメントマークの検出(レチクルアライメント)には、露光光を用いてCCDカメラなどで撮像したマークの画像データを画像処理してマーク位置を計測するVRA(Visual Reticle Alignment)方式などが使用されている(例えば、特開平7−176468号公報参照)。一方、ウエハ上のアライメントマークの検出(ウエハアライメント)方式としては、CCDカメラなどで撮像したマークの画像データを画像処理してマーク位置を計測するFIA(Field Image Alignment)方式が主に用いられている(例えば、特開平7−183186号公報参照)。ところが、このような大開口数の光学系によってマーク像を結像する方式は、光学系の収差やマーク歪み(例えば断面形状の非対称性)などの影響を受け易い傾向がある。
【0004】
そのため、最近、光学系の収差、マーク歪み等の影響を原理的に受けにくいマーク計測方法として、いわゆるスキャタロメトリ(Scatterometry) を用いる方法が提案されている。スキャタロメトリを用いる方法とは、計測対象の2層のマークに所定帯域幅の検出光を照射し、それらのマークから発生する所定の一つの次数の回折光、又は所定の一つの方向への光束(反射光等)を波長別に分光して検出し、得られた波長別の反射率又は透過率(分光反射率又は分光透過率)等の計測結果を用いて、2層のマークの相対位置ずれ量を求める方法である(例えば、特許文献1参照)。この方法において、その2層のマークに対して検出光を垂直入射させて、それらのマークからの正反射光を受光する方式はリフレクトメトリ(Reflectometry) とも呼ばれている。
【0005】
また、スキャタロメトリを用いた従来の別のマーク計測方法は、第1レイヤ及び第2レイヤに同一ピッチの第1及び第2の1対のマークを計測方向に近接して形成しておき、その第1及び第2の1対のマークにそれぞれレイヤ間で設計上で+1/4ピッチ及び−1/4ピッチの相対位置ずれ量を与えておくものである(例えば、非特許文献1参照)。この場合、その第1レイヤに対してその第2レイヤの相対位置ずれが生じていると、その第1及び第2の1対のマークの相対位置ずれ量の絶対値が逆方向に変化することを利用して、それらのマークからの光束の分光反射率の計測結果に基づいて、その第2レイヤの相対位置ずれ量を計測することができる。
【特許文献1】特開2003−68639号公報
【非特許文献1】H. Huang, G. Raghavendra, A. Sezginer, K. Johnson, F. Stanke, M. Zimmerman, C. Cheung, M. Miyagi and B. Singh, "Scatterometry-Based Overlay Metrology", Metrology, Inspection, and Process Control for Microlithography, SPIE(米国), Bellingham, 2003, Vol. 5038, p. 132-143
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の如く、スキャタロメトリ(又はリフレクトメトリ)を用いたマーク計測方法では、所定次数の回折光又は正反射光等の実質的に一つの方向に発生する光束のみを検出すればよい。そのため、開口数の小さい単純な光学系が使用でき、光学系の収差の影響は極めて小さくなり、マーク歪みの影響等も小さくなる点で、原理的には従来のFIA方式等の結像方式よりも優れている。
【0007】
しかしながら、スキャタロメトリを用いた計測方法では、例えば1対のマークからの光束の分光反射率(実測値)を計測した後、コンピュータのソフトウェア上で1対のマークの位置ずれ量を次第に変えながら、それに対応して観察される分光反射率のパターン(理論値)を求め、その理論値がその実測値に収束するまでその計算を繰り返していた。従って、計算量が多く計算時間も長くなるため、例えば露光装置に対して連続して搬送されて来る全部のウエハに対して、計測対象の全部のアライメントマークの位置をスキャタロメトリを用いて計測するのでは、アライメント時間が長くなり、露光工程のスループットが低下する恐れがある。
【0008】
一方、FIA方式のような結像方式のアライメントセンサは、計測効率の点では優れているが、上述のように光学系の収差やマーク歪み等の影響を受け易いという問題がある。
本発明は斯かる点に鑑み、マーク歪み等の影響を軽減できると共に、複数のマークを計測するときの計測効率も高く維持できるマーク計測技術を提供することを目的とする。
更に本発明は、スキャタロメトリ又はリフレクトメトリを用いて、アライメントを高精度に、かつ効率的に行うことができる露光技術を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるマーク計測方法は、マークの位置に関する情報を求めるためのマーク計測方法において、そのマークに検出用の光を照射し、そのマークから発生する所定次数の回折光又はそのマークから所定方向に発生する光を波長別に検出する第1工程(ステップ102)と、その第1工程の検出結果に基づいてそのマークの断面形状に関する情報を求め、この断面形状に関する情報からそのマークの位置に関するオフセットを求める第2工程(ステップ103)とを有するものである。
【0010】
斯かる本発明によれば、そのマークから発生する光が波長別に検出され、その検出結果より例えばスキャタロメトリ又はリフレクトメトリに基づいた計算によってそのマークの断面形状が求められる。そして、仮にそのマークに歪み等が生じていても、その断面形状からそのマークを通常のマーク検出系で検出したときのオフセットを高精度に求めることができる。従って、それ以降の同種のマークの計測は、通常のマーク検出系を用いて高精度に、かつ効率的に行うことができる。
【0011】
本発明において、その第2工程は、一例としてそのマークの断面形状を規定する所定のパラメータの値を変えながらそのマークから発生する光の波長別の強度分布を計算する工程と、この工程で計算された強度分布がその第1工程で検出された光の波長別の強度分布に近いときのその所定のパラメータの値を特定する工程と、この工程で特定されたその所定のパラメータの値で規定されるそのマークの計測された断面形状から所定のマーク検出系で検出されるそのマークの位置を予測する工程と、この工程で予測されるそのマークの位置とそのマークの計測された断面形状中の所定の層のマーク位置との位置ずれをそのオフセットとして求める工程とを有する。
【0012】
このように計測された波長別の強度分布と計算によって求められた波長別の強度分布とができるだけ一致するように、そのマークの断面形状を求めることによって、高解像度の光学系を用いることなく、そのマークの断面形状を正確に求めることができる。更に、その断面形状からマーク検出系で検出されるマーク位置が予測できるため、そのマーク位置と本来のマーク位置(例えば所定の層でのマーク位置)とのオフセットも正確に求めることができる。
【0013】
本発明において、そのマーク又はそのマークと同種類のマークの位置を計測する第3工程(ステップ104)と、その第2工程で求められたオフセットを用いてその第3工程で計測されたマークの位置を補正する第4工程(ステップ105)とを更に有することができる。その第3工程は例えば通常の結像方式のマーク検出系を用いて効率的に実行できる。
【0014】
また、その第1工程において、そのマークから発生する所定の複数次数の回折光又はそのマークから所定の複数の方向に発生する光をそれぞれ波長別に検出してもよい。このように複数次数の回折光又は複数方向に発生する光を検出することによって、そのマークの非対称な断面形状も求めることができる。
また、その第1工程において、そのマークから発生する0次から±n次(nは1以上の整数)までの回折光を検出してもよい。nの数が小さい程、光学系の構成が単純化できて光学系の収差が低減する一方で、nの数が大きい程、より完全な断面形状を求めることができる。
【0015】
次に、本発明によるマーク計測装置は、マーク(WM)の位置に関する情報を求めるためのマーク計測装置において、そのマークに検出用の光を照射し、そのマークから発生する所定次数の回折光又はそのマークから所定方向に発生する光を複数の波長別に検出する分光検出装置(40,50)と、その分光検出装置の検出結果に基づいてそのマークの断面形状に関する情報を求め、この断面形状に関する情報からそのマークの位置に関するオフセットを求める演算装置(49)とを有するものである。
【0016】
本発明によれば、その分光検出装置の検出結果より例えばスキャタロメトリ又はリフレクトメトリに基づいた計算によってそのマークの断面形状、ひいてはそのマークを通常のマーク検出系で検出したときのオフセットを高精度に求めることができる。従って、それ以降の同種のマークの計測は、通常のマーク検出系を用いて高精度に、かつ効率的に行うことができる。
【0017】
本発明において、その演算装置は、一例として、そのマークの断面形状を規定する所定のパラメータの値を変えながらそのマークから発生する光の波長別の強度分布を計算し、このように計算された強度分布がその分光検出装置で検出された光の波長別の強度分布に近いときのその所定のパラメータの値を特定し、このように特定されたその所定のパラメータの値で規定されるそのマークの計測された断面形状から所定のマーク検出系で検出されるそのマークの位置を予測し、このように予測されるそのマークの位置とそのマークの計測された断面形状中の所定の層のマーク位置との位置ずれをそのオフセットとして求める。これによって、そのマークの断面形状及びオフセットを正確に求めることができる。
【0018】
また、本発明において、そのマークの位置を光学的に検出するマーク検出系(12)と、そのマーク検出系の検出結果をその演算装置によって求められたオフセットを用いて補正する補正装置(4)とを更に有することができる。
また、その分光検出装置は、そのマークから発生する0次から±n次(nは1以上の整数)までの回折光を検出することができる。
【0019】
次に、本発明による露光方法は、露光ビームで第1物体(R)を照明し、その露光ビームでその第1物体を介して露光位置に配置された第2物体(W)を露光する露光方法において、その第2物体をその露光位置まで搬送する経路上で、その第2物体上のマークに検出用の光を照射し、そのマークから発生する所定次数の回折光又はそのマークから所定方向に発生する光を波長別に検出する第1工程(ステップ102)と、その第1工程の検出結果に基づいてそのマークの断面形状に関する情報を求め、この断面形状に関する情報からそのマークの位置に関するオフセットを求める第2工程(ステップ103)と、その第2物体に対応する露光対象の物体をその露光位置の近傍に配置した状態で、その物体上のそのマークに対応するマークの位置を光学的に計測する計測する第3工程(ステップ104)と、その第2工程で求められたオフセットを用いてその第3工程で計測されたマークの位置を補正し、この補正された結果に基づいてその物体の位置合わせを行う第4工程(ステップ105)とを有するものである。
【0020】
本発明によれば、その第2工程において、例えばスキャタロメトリ又はリフレクトメトリを用いて、そのマークの位置に関するオフセットを求めることができ、このオフセットをその第4工程で用いることによって、その物体の位置合わせ(アライメント)を高精度に、かつ効率的に行うことができる。
本発明において、その第2物体が感光材料の塗布された基板である場合、一例としてその第1工程は、その基板上にその感光材料を塗布する直前、その感光材料を塗布した直後、その基板を搬送する経路上、又はその基板を露光する直前に実行される。
【0021】
また、本発明による露光装置は、露光ビームで第1物体(R)を照明し、その露光ビームでその第1物体を介して第2物体(W)を露光する露光装置において、本発明のマーク計測装置(40A)を備え、そのマーク計測装置を用いて、その第1物体又はその第2物体上のマークの位置に関する情報を求めるものである。本発明によれば、そのマーク計測装置を用いてそのマークの位置に関するオフセットを求めることで、それ以降のその第1物体又は第2物体の位置合わせを高精度に、かつ効率的に行うことができる。
【0022】
また、本発明による露光システムは、露光ビームで第1物体を照明し、その露光ビームでその第1物体を介して第2物体を露光する露光装置(35;35A)と、その第2物体上に感光材料を塗布する塗布装置(33)と、その塗布装置とその露光装置との間でその第2物体を搬送する搬送装置(34)とを有する露光システムにおいて、その露光装置、その塗布装置、及びその搬送装置のうちの少なくとも1つの装置が、本発明のマーク計測装置(40,49,50)を備えたものである。
【0023】
この場合、より正確には、そのマーク計測装置中の分光検出装置の光学系の部分がその露光装置、その塗布装置、及びその搬送装置のうちの少なくとも1つの装置に備えられていればよく、そのマーク計測装置中の信号処理系及び演算装置は、別の場所に設置されていてもよい。本発明によれば、例えばそのマーク計測装置を用いてその第2物体上のマークの位置に関するオフセットを求めることで、それ以降のその第2物体の位置合わせを高精度に、かつ効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、そのマークの断面形状に関する情報からそのマークの位置に関するオフセットを求めているため、そのオフセットを用いることによって、マーク歪み等の影響を軽減できると共に、複数のマークを計測するときの計測効率も高く維持できる。
また、本発明において、そのオフセットを用いてそれ以降に計測されたマークの位置を補正し、この補正された結果に基づいて物体の位置合わせを行う場合には、実質的にスキャタロメトリ又はリフレクトメトリを用いて、アライメントを高精度にかつ効率的に行うことができる。
【0025】
また、マークから発生する所定の複数次数の回折光又はそのマークから所定の複数の方向に発生する光をそれぞれ波長別に検出することによって、そのマークの非対称な断面形状をも求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい第1の実施形態につき図1〜図6を参照して説明する。本例は、スキャタロメトリ(Scatterometry) 方式で被検マークのアライメント時のオフセットを求める場合に、本発明を適用したものである。
図1(A)は本例の露光システムを示し、この図1(A)において、その露光システムは、コータ・デベロッパ33と、ステッパー等の一括露光型又はスキャニング・ステッパー等の走査露光型の露光装置35と、搬送系34(搬送装置)と、不図示のホストコンピュータとを備えている。この場合、コータ・デベロッパ33は、感光材料としてのフォトレジストを基板としてのウエハ上に塗布するコータ部(塗布装置)と、露光後のウエハ上のフォトレジストを現像する現像部とを含んでいる。また、露光装置35は、露光ビームでマスク(第1物体)としてのレチクルを照明する照明光学系と、その露光ビームのもとでそのレチクルのパターンの像を基板(第2物体)としてのウエハ上に投影する投影光学系と、レチクル及びウエハを保持してそれぞれ駆動するステージ系と、ウエハ上のアライメントマーク(以下、「ウエハマーク」と言う。)の位置を検出する結像方式のアライメントセンサ12(通常の光学式のマーク検出系)とを備えている。
【0027】
本例のアライメントセンサ12は、例えば特開平7−183186号公報で開示されているようなFIA(Field Image Alignment)方式である。露光装置35の露光光源を除く部分は、内部に温度及び湿度が所定状態に制御され、かつ高度に防塵処理が施された空気が供給されている環境チャンバ内に収納されている。また、搬送系34は、コータ・デベロッパ33から露光装置35にフォトレジストの塗布されたウエハWを搬送すると共に、露光装置35からコータ・デベロッパ33に露光済みのウエハを搬送するウエハローダ系を備えている。
【0028】
本例では、スキャタロメトリ方式でウエハW上のウエハマークの断面形状を求めるために、コータ・デベロッパ33内に分光反射率検出装置40(分光検出装置の光学系)が設置されている。図2は、図1(A)のコータ・デベロッパ33内で分光反射率検出装置40が使用されている状態を示し、この図2において、ウエハWは、図1(A)のコータ・デベロッパ33内のコータ部でフォトレジストが塗布されてから、露光装置35に搬送される直前のものである。ウエハWの上面の複数のショット領域にはそれまでのプロセスによってそれぞれ凹凸パターンよりなるウエハマークWMが形成されており、そのウエハWの上面にフォトレジストが塗布されている。本例ではその内の所定の1つのウエハマークWM(被検マーク)を計測対象とする。ウエハマークWMは、第1方向に沿って所定ピッチで形成された第1のライン・アンド・スペースパターン(以下、「L/Sパターン」と言う。)と、その第1方向に直交する第2方向に沿って所定ピッチで形成されたL/Sパターンとを含んでいる。以下、そのウエハWの載置面に平行な平面内において、その第1方向及び第2方向に沿ってそれぞれX軸及びY軸を取り、その載置面に垂直な方向にZ軸を取って説明する。
【0029】
図4(A)はそのウエハマークWMの内でX軸に沿って形成されたL/SパターンよりなるX軸マーク63Xの一部の断面形状を示す拡大図であり、図4(A)に示すように、X軸マーク63XはピッチPで断面形状がほぼ対称なマークである。X軸マーク63X上にはフォトレジスト64が塗布されている。一例として、ピッチPは数100nm〜数μm程度であり、X軸マーク63Xの外形は1辺の長さが数μm〜数10μm程度の矩形領域である。この場合、ウエハマークWM中でY軸を計測方向とするY軸マーク(不図示)は、ほぼそのX軸マーク63XをZ軸に平行な軸の周りに90°回転した形状である。なお、Y軸マークは、X軸マーク63XをY方向に挟むように2箇所に配置される場合、又はこの逆の場合もあり得る。
【0030】
図2に戻り、ウエハWは不図示のウエハホルダを介してウエハテーブル41上に真空吸着によって保持されている。ウエハテーブル41はZ方向の位置を制御するためのZステージ42上に固定され、Zステージ42はXYステージ43上に固定されている。XYステージ43は、定盤44上のほぼ水平で高い平面度を有するガイド面(XY平面に平行な面)上にX方向、Y方向に移動できるように載置されている。XYステージ43は、駆動モータ及びボールねじ等を含む駆動機構(不図示)によって定盤44上でX方向、Y方向に駆動される。
【0031】
ウエハテーブル41(ウエハW)のX方向、Y方向の位置は、レーザ干渉計45によって例えば10〜1nm程度の分解能で計測されており、ウエハテーブル41のZ軸の周りの回転角(ヨーイング量)も計測されている。これらの計測値は装置全体の動作を制御する制御用コンピュータ48及びステージ駆動系46に供給されており、ステージ駆動系46は、その計測値及び制御用コンピュータ48からの制御情報に基づいて、その駆動機構を介してXYステージ43(ウエハW)の位置を制御する。また、ステージ駆動系46は、制御用コンピュータ48からの制御情報に基づいてZステージ42の高さを制御する。
【0032】
本例のウエハテーブル41の上方には、分光反射率検出装置40が不図示のコラムによって支持されており、分光反射率検出装置40からの検出信号が信号処理装置50に供給され、信号処理装置50で求められた分光反射率(詳細後述)の情報が解析用コンピュータ49(演算装置)に供給されている。分光反射率検出装置40及び信号処理装置50が分光検出装置に対応し、分光反射率検出装置40、信号処理装置50、及び解析用コンピュータ49がマーク計測装置に対応している。解析用コンピュータ49は、後述のようにウエハマークのオフセットを求め、このオフセットの情報を不図示のホストコンピュータを介して図1(A)の露光装置35の主制御系(補正装置)に供給する。
【0033】
図2の分光反射率検出装置40において、不図示のハロゲンランプ等の白色光源から射出された光が光ファイバ・バンドル51を介して導かれている。光ファイバ・バンドル51から射出されて不図示のフィルタ板によって波長選択された300〜1000nm程度の波長域の検出光DLは、コンデンサレンズ52によって照明視野絞り53上に集光される。照明視野絞り53の絞りを通過した検出光DLは、レンズ54を介してビームスプリッタ55に入射し、ビームスプリッタ55で反射された検出光DLは、第1対物レンズ56を介してウエハW上のウエハマークWMに垂直に入射する。本例では、予め例えば不図示の撮像装置でウエハマークWMの位置を検出しておくことによって、ウエハマークWM中のX軸マーク63X(図4(A)参照)のほぼ中央に検出光DLが照射されている。この際に、検出光DLは、X軸マーク63X上に照射されればよいだけであるため、レーザ干渉計45の計測精度としては通常の露光装置で要求される程の精度は必要がない。
【0034】
この際に、ウエハマークWMに照射される検出光DLの光量は、その上のフォトレジストを感光させる恐れの無い低レベルに抑えられている。
また、例えばビームスプリッタ55を中心としてレンズ54に対向するようにフォトダイオード等の光電センサ(不図示)が設置され、この光電センサに検出光DLから分岐された一部の光が入射している。この光電センサの検出信号が信号処理装置50に供給されている。この際に、予めその光電センサの検出信号から検出光DLのウエハWの上面での光量(例えば不図示の照度計等で計測される値)を求めるための換算係数が求められており、その換算係数が信号処理装置50内の記憶部に格納されている。信号処理装置50内の演算処理部では、その光電センサの検出信号とその換算係数とを用いて、検出光DLのウエハW上での光量(例えば照度)を随時求めることができる。
【0035】
そして、所定の回折光としてのウエハWのウエハマークWMからの正反射光62A、+1次回折光62B、及び−1次回折光62Cのみが、第1対物レンズ56及びビームスプリッタ55を経て開口絞り57を通過して第2対物レンズ58に至る。第1対物レンズ56、ビームスプリッタ55、開口絞り57、及び第2対物レンズ58よりなる受光光学系の光軸BXは、Z軸に平行である。この場合、ウエハマークWMでの回折及び反射によって計測方向(ここではX方向)に発生する±2次以上の回折光は、第1対物レンズ56には入射しないか、又は開口絞り57で遮光される。このように本例は、正反射光(0次光)及び±1次回折光のみを検出できればよいため、第1対物レンズ56及び第2対物レンズ58としては、開口数(NA)が比較的小さい簡単な光学系を使用することができる。
【0036】
なお、ウエハマークWMの断面形状が計測方向に対称である場合に、その断面形状を求めるためには、ウエハマークWMからの正反射光62Aのみを検出すればよい。このように被検マークからの正反射光のみを検出するスキャタロメトリ技術は、リフレクトメトリ(Reflectometry) とも呼ぶことができる。また、そのように正反射光62Aのみを検出する場合には、第1対物レンズ56及び第2対物レンズ58の開口数(NA)は例えば0.1程度まで小さくできるため、更に光学系を簡素化することができる。
【0037】
開口絞り57を通過した光の内の正反射光62Aは、第2対物レンズ58によって集光されて、Y方向に所定ピッチで形成された回折格子59A(分光光学系)を経て、1次元のCCD型等の撮像素子60A(光電センサ)の撮像面に回折パターンを形成する。また、開口絞り57を通過した光の内の±1次回折光62B及び62Cは、第2対物レンズ58によって集光されて、それぞれミラー61A及び61Bで反射された後、回折格子59Aと同様の回折格子59B及び59Cを経て、撮像素子60Aと同様の撮像素子60B及び60Cの撮像面に回折パターンを形成する。回折格子59A〜59Cとしては、回折効率を高めるために位相型の回折格子、例えばブレーズド型の回折格子が望ましい。
【0038】
図3は、図2の分光反射率検出装置40の要部をX方向に見た側面図であり、この図3において、第2対物レンズ58によって集光された正反射光62Aは、回折格子59Aでの例えば1次の回折によってY方向に波長別のJ個の光束74j(j=1〜J)に分光される。検出光DL(正反射光62A)の波長域をλ1〜λ2とすると、そのJ個の光束74j の中心波長λj 及び分割幅Δλは近似的に次のようになる。
【0039】
λj=λ1+(j−1)Δλ …(1)
Δλ=(λ2−λ1)/(J−1) …(2)
本例の波長域は300〜1000nmであり、波長の分割数Jを例えば20〜200程度とすると、波長の分割幅Δλは35〜3.5nm程度である。そして、分光されたJ個の光束74j はそれぞれ撮像素子60Aの対応するj番目の画素71j に入射して光電変換される。従って、本例の撮像素子60A(及び撮像素子60B,60C)は、J個以上の画素が一次元的に配列されたものである。各画素71j (j=1〜J)で光電変換された検出信号は、順次図2の信号処理装置50内でアナログ/デジタル(A/D)変換されて第1メモリに格納される。
【0040】
同様に、図2の第2対物レンズ58によって集光された±1次回折光62B及び62Cは、それぞれミラー61A及び61Bで反射された後、回折格子59B及び59Cでの例えば1次の回折によってY方向に波長別のJ個の光束に分光される。そして、このように分光された2組のJ個の光束は、撮像素子60B及び60Cの対応する画素で光電変換された後、信号処理装置50内でA/D変換されてその第1メモリに格納される。本例では、光ファイバ・バンドル51から撮像素子60A〜60Cまでの部材、及びミラー61A,61Bより分光反射率検出装置40が構成されている。
【0041】
また、図2において、予めウエハWの代わりに例えば高反射率の平板(基準板)を設置して、検出光DLの光量を所定レベルに設定した状態で、撮像素子60Aの各画素の検出信号が信号処理装置50内に取り込まれてA/D変換されている。そして、そのA/D変換して得られた値を、その検出光DLの光量に対応する値で除算して得られた値が、検出光DLの波長λj (j=1〜J)毎の相対レベルを示すデータとして第2メモリに格納されている。そこで、信号処理装置50内の演算処理部では、検出光DLの今回の光量にその第2メモリから読み出した相対レベルを乗ずることによって、検出光DLの波長λj (j=1〜J)毎の光量に対応する値を求める。次に、その演算処理部では、その第1メモリに格納されている3列の各画素の検出信号をその検出光DLの波長λj毎の光量に対応する値で除算することによって、正反射光62A(0次光)、+1次回折光62B、及び−1次回折光62Cのそれぞれにおいて、J個の波長λj毎の反射率である分光反射率R1(λ),R2(λ),及びR3(λ)を求める。この3組の分光反射率R1(λ)〜R3(λ)のデータは、信号処理装置50内の第3メモリに格納される。このように分光反射率検出装置40の検出信号を用いて被検マークからの光の分光反射率を求める動作は、第1工程とみなすことができる。
【0042】
図5(A),(B),(C)の曲線71A,71B,及び71Cはそれぞれ、上記のようにして計測されたウエハマークWM(より正確には図4(A)のX軸マーク63X)からの正反射光、+1次回折光、及び−1次回折光に対する分光反射率の一例を示し、この図5(A),(B),(C)において、横軸は検出光DLの波長λ(nm)の一部(300〜800m)、縦軸はその波長λでの反射率R1(λ),R2(λ),R3(λ)を表している。実際には波長λに関しては分割幅Δλで分割された複数の波長λjでの反射率R(λj)が計測されるため、曲線71A〜71Cはその離散的な計測値を補間したものである。
【0043】
次に、そのようにして求められた3組の分光反射率R1(λ)〜R3(λ)のデータは、図2の信号処理装置50から解析用コンピュータ49に供給される。解析用コンピュータ49(演算装置)では、3組の分光反射率R1(λ)〜R3(λ)のデータを用いてスキャタロメトリ方式で、次のようにして図4(A)のX軸マーク63X(ウエハマークWMの一部)の断面形状を近似的に求める。更に、解析用コンピュータ49では、そのようにして求めた断面形状から、そのX軸マーク63Xの位置を図1(A)のアライメントセンサ12(マーク検出系)で計測するときのオフセットを求める。これらの一連の動作は、第2工程とみなすことができる。
【0044】
先ず、図4(A)に示すように、X軸マーク63Xの断面形状が対称であることが予め分かっている場合、又はその断面形状をほぼ対称であると仮定してもよい場合の動作につき、次の計算工程(1)〜オフセット決定工程(1)に分けて説明する。この場合には、図2において、ウエハマークWMからの正反射光62Aのみを使用するだけで、その断面形状を求めることができる。
【0045】
[計算工程(1)]
ここでは、図4(A)のX軸マーク63XのピッチPの範囲(Xの値が0〜Pの範囲とする)内の断面66を、図6(A)に示すように、ウエハWよりなる基板65H上の複数(ここでは6層)の中間層65B〜65Gの開口パターンの集合体であると仮定する。この場合、その上に更にフォトレジスト64よりなる感光層65Aが形成されている。また、感光層65A、中間層65B〜65G、及び基板65Hの波長λj(j=1〜J)毎の屈折率及び透過率の値、並びに中間層65B〜65Gの厚さは既知で、それらの値は解析用コンピュータ49内の記憶部に格納されているものとする。この条件下で、中間層65Bからの感光層65Aの厚さをd1、中間層65Bから中間層65Gまでの各層がそれぞれ開口となる位置のX座標をx1,x2,…,x6とすると、これらの厚さd1及びX座標xi(i=1〜6)が、その断面66の形状を規定する所定のパラメータとなる。
【0046】
また、ここでは断面66はX方向に対称であると仮定しているため、X座標xiの値は次のように0からP/2までの範囲の値である。
0≦xi≦P/2(i=1〜6) …(3)
このとき、例えば中間層65Bの開口が終わる位置のX座標x11は、次のように中心点(X=P/2)に関してX座標x1に対して対称となるため、別個のパラメータとする必要はない。他のX座標x2〜x6についても同様である。
【0047】
x11=P/2+(P/2−x1)=P−x1 …(4)
次に、上記の各パラメータを初期値に設定する。そのためには、一例として感光層65Aの厚さd1を設計上の厚さd0として、中間層65B〜65Gの開口の位置xiをP/4(即ち、ラインとスペースとの比が1:1)とする。
その後、計算上の検出光DLの波長を上記(1)式の波長λjの初期値(=λ1)に設定して、その波長λ1で光量が1の光が図6(A)の断面66を持つマークに垂直に入射した場合の感光層65Aの表面A、中間層65B〜65Gの表面B〜G、及び基板65Hの表面Hでの正反射光(0次光)の光量の和を計算する。具体的に、上記のように、感光層65A、中間層65B〜65G、及び基板65Hの波長λj(j=1〜J)毎の屈折率及び透過率の値、並びに中間層65B〜65Gの厚さが既知であるため、これらの値を用いて感光層65Aの上面A、中間層65B〜65Gの上面B〜G、及び基板65Hの上面Hで正反射される波長λ1の光のうちで、実際に上面Aの上方に向かう光の光量を計算すればよい。このように計算される光量、即ち波長λ1の光に対する反射率RC1(λ1)は、上記のパラメータ(厚さd0、及び開口のX座標xi(=P/4))の関数である。
【0048】
次に、波長λ1に順次(2)式の分割幅Δλを加算して得られる波長(λ1+Δλ),(λ1+2・Δλ),…の光についても、同様にして図6(A)のマークに対する反射率RC1(λ1+Δλ),RC1(λ1+2・Δλ),…を計算することによって、図5(A)の点列72Aで示すように、計算上の分光反射率RC1(λj)(j=1〜J)を求める。この分光反射率RC1(λj)が波長別の強度分布に対応する。なお、このように所定のパラメータを仮定して分光反射率を計算する方法の詳細は、例えば文献(J. L. Opsal, H. Chu, and Y. Wen, "Fundamental solutions for real-time optical CD metrology", Metrology Inspection, and Process Control for Microlithography XVI, D. Herr, Ed., Vol. 4689, p. 163-176, SPI, Bellingham, 2002)にも開示されている。
【0049】
[選択工程(1)]
ここでは、一例として、図5(A)の曲線71Aの実測された分光反射率R1(λj)と点列72Aの計算された分光反射率RC1(λj)との各波長λj(j=1〜J)毎の差分の自乗和を、計算誤差E(d0,xi(=P/4))として求める。次に、感光層65Aの厚さd1を次第に所定ステップ量k・Δdだけ変化させて、それぞれ上記の計算工程(1)を実行して分光反射率RC1(λj)を計算した後、計算誤差E(d0+k・Δd,xi)(k=±1,±2,…)を求める。そして、計算誤差Eが最も小さくなるときのkの値k’(ここではk’=0も含まれる)を選択する。これによって、感光層65Aの厚さd1は次のように決定される。
【0050】
d1=d0+k’・Δd …(5)
次に、この決定された厚さd1の値を用いて、図6(A)の層65Bの開口のX座標x1の値をP/4に対して所定ステップ量k・Δxだけ変化させて、上記の計算工程(1)を実行して分光反射率RC1(λj)を計算した後、計算誤差E(d1,x1=P/4+k・Δx,xi)(k=0,±1,±2,…;i=2〜6)を求める。そして、計算誤差Eが最も小さくなるときのkの値k’を選択する。これによって、X座標x1は次のように決定される。
【0051】
x1=P/4+k’・Δx …(6)
同様にして、他の層65C〜65Gについても、順次開口のX座標x2〜x6の値を次第に変えながらそれぞれ上記の計算工程(1)を実行して、計算誤差Eが最も小さくなるときの値を選択すればよい。これによって、図6(A)に示すように、厚さd1及びX座標x1〜x6の値が決定されて、その断面66の形状が決定される。
【0052】
なお、より計算精度を向上するためには、一度それらの厚さd1及びX座標x1〜x6の値を決定した後、再び厚さd1及びX座標x1〜x6の値を僅かに変化させながらそれぞれ上記の計算工程を実行して、その計算誤差Eが最も小さくなるときの値を選択してもよい。これによって、計算された分光反射率RC1(λj)が更に実測された分光反射率R1(λj)に近づくように、それらのパラメータの値(被検マークの断面形状)を決定することができる。
【0053】
但し、仮に感光層65Aの厚さd1が予めほぼ正確に求められている場合には、その厚さd1をその求められている値に固定して、パラメータの数を減らしてもよい。これによって、計算時間を短縮することができる。逆に、例えば中間層65B〜65Gの内の所定の層の厚さもパラメータに加えるなどして、パラメータの数を増加させてもよい。これによって、断面形状の計算精度が向上する場合がある。上記の計算工程(1)及び選択工程(1)のように、所定のパラメータを設定し、計算された分光反射率が計測された分光反射率にできるだけ近づくようにそのパラメータの値を決定する処理を、以下では「スキャタロメトリ解析」と呼ぶ。
【0054】
[予測工程(1)]
この工程では、上記の工程で決定された厚さd1及びX座標x1〜x6の値を用いて、図6(A)の断面66のマーク、ひいては図4(A)のX軸マーク63Xの1つのスペース部を図1(A)のアライメントセンサ12で検出するときの位置を予測する。この例の断面66は対称であるため、アライメントセンサ12で検出されるそのマーク(スペース部)のX方向の位置は、その対称の中心であるX=P/2の位置となる。
【0055】
[オフセット決定工程(1)]
この工程では、一例として、上記の工程で予測されたそのアライメントセンサ12を用いて図6(A)の断面66のマークを計測するときのX方向の位置と、その断面66中の所定の層(例えば中間層65C等)のマーク(開口部)の位置との位置ずれを求める。この位置ずれ量が、そのアライメントセンサ12を用いて図4(A)のX軸マーク63Xの位置を計測するときのオフセットに対応する。この例では、図6(A)の断面66は対称であり、各中間層65B〜65Gの開口(各層のマーク)の位置と、その断面66全体としての位置とは等しいため、そのオフセットは0となる。
【0056】
但し、より高精度にオフセットを求めるために、上記のパラメータ(厚さd1、X座標x1〜x6)の値の組み合わせの異なるマーク毎に実際にアライメントセンサ12を用いて位置検出を行った結果に基づいて重ね合わせ露光を行って、現像後に重ね合わせ誤差を計測してもよい。この場合、計測された重ね合わせ誤差がオフセットとなり、一例としてこのオフセットが上記の互いに値の組み合わせの異なる複数の組のパラメータ(厚さd1、X座標x1〜x6)に対するテーブルとして記憶される。この場合、上記の選択工程(1)で決定されたパラメータの組がそのテーブルに無いときには、そのテーブル内のデータの補間によって対応するオフセットを求めても良い。ここでは、そのようにして求めた図6(A)のX方向のオフセットをΔx1とする。
【0057】
なお、ウエハマークWMには、X軸マークの他にY軸マークも含まれているが、両者の断面形状はほぼ同じと考えられるため、X軸マークのオフセットをY軸マークのオフセットとして用いてもよい。但し、例えば図2においてウエハWを90°回転して、Y軸マークについて上記の分光反射率の計測、及びスキャタロメトリ解析を行ってその断面形状を求め、それに基づいてオフセットを別途求めてもよい。そのオフセットΔx1(及びY軸マークのオフセット)の情報は、図2の解析用コンピュータ49から不図示のホストコンピュータを介して図1(A)の露光装置35の主制御系(補正装置)に供給される。
【0058】
次に、図1(A)において、オフセット計測の終わったウエハWは、搬送系34を介して露光装置35のウエハステージ(不図示)上にロードされる。そして、アライメントセンサ12によってウエハW上の所定個数のウエハマークの座標が計測される(第3工程)。次に、そのアライメントセンサ12の計測値が上記のオフセットを用いて補正され、この補正後の計測値に基づいてウエハWのアライメントが行われ、この結果に基づいてウエハW上の各ショット領域にレチクルのパターンの像が重ね合わせて露光される(第4工程)。この際に、本例では、ウエハマークWMの断面形状を求めて、そのマークをアライメントセンサ12で計測するときのオフセットを求めているため、ウエハWのアライメント精度が向上し、重ね合わせ精度等も向上する。
【0059】
なお、本例では図6(A)において、断面66の感光層65Aの厚さd1、及び中間層65B〜65Gにおける開口の位置x1〜x6が求められる。そこで、これらの値が設計値に対してずれている場合に、対応する工程に対してそのずれ量を補正するように補正指令を発するようにしてもよい。これによって、デバイスをより高精度に製造することが可能となる。
【0060】
これまでの動作は、X軸マーク63Xの断面形状が対称である場合の動作である。しかしながら、ウエハマークWMは実際には或る程度の非対称性を有しているため、より高精度にウエハマークWMの断面形状を求めるためには、その断面形状が非対称であることを前提とすることが望ましい。ここでは、図2の分光反射率検出装置40による計測対象は、図4(B)に示すように、ウエハマークWM中のピッチPで断面形状が計測方向(X方向)に非対称のX軸マーク63XAであるとする。この場合には、図2において、ウエハマークWMからの正反射光62Aの他に、±1次回折光62B,62Cも使用する必要がある。以下、上記の計算工程(1)〜オフセット決定工程(1)に対応させて、非対称な断面形状を求めて、その場合のオフセットを求める動作の一例につき説明する。
【0061】
[計算工程(2)]
ここでは、図4(B)のX軸マーク63XAのピッチPの範囲内の断面66Aを、図6(B)に示すように、基板65H(ウエハW)上の複数の中間層(ここでは6層)65B〜65Gの開口パターンの集合体であると仮定する。この場合も、その上に感光層65A(フォトレジスト64)が形成されている。また、図6(A)の場合と同様に、感光層65A、中間層65B〜65G、及び基板65Hの波長λj(j=1〜J)毎の屈折率及び透過率の値、並びに中間層65B〜65Gの厚さは既知とする。この条件下で、感光層65Aの厚さをd1、中間層65Bから中間層65Gまでの各層がそれぞれ開口となる位置のX座標をx1,x2,…,x6として、その各開口が終わる位置のX座標をx11,x12,…,x16とすると、これらの厚さd1及びX座標xi,x1i(i=1〜6)が、その断面66Aの形状を規定する所定のパラメータとなる。X座標xi,x1iは次の条件を満たす必要がある。
【0062】
0≦xi≦x1i≦P(i=1〜6) …(7)
次に、上記の各パラメータを初期値に設定する。そのためには、一例として感光層65Aの厚さd1を設計上の厚さd0として、中間層65B〜65Gの開口の開始位置xiをP/4、終了位置x1iを3P/4(即ち、ラインとスペースとの比が1:1)とする。
その後、計算上の検出光DLの波長を上記(1)式の波長λjの初期値(=λ1)に設定して、計算工程(1)と同様に、その波長λ1で光量が1の光が図6(B)の断面66Aを持つマークに垂直に入射した場合の感光層65Aの上面A、中間層65B〜65Gの上面B〜G、及び基板65Hの上面Hでの正反射光62Aの光量の和(反射率)RC1(λ1)を計算する。更に、本例では、その波長λ1で光量が1の光がその断面66Aを持つマークに垂直に入射した場合の、上面A〜Hでの+1次回折光62Bの光量の和(反射率)RC2(λ1)、及び−1次回折光62Cの光量の和(反射率)RC3(λ1)を計算する。このように計算される反射率RC1(λ1),RC1(λ1),RC1(λ1)は、上記のパラメータ(厚さd0、及び開口のX座標xi(=P/4),x1i(=3P/4))の関数である。
【0063】
次に、波長λ1に順次(2)式の分割幅Δλを加算して得られる波長(λ1+Δλ),(λ1+2・Δλ),…の光についても、同様にして図6(B)のマークに対する反射率RC1(λ1+r・Δλ),RC2(λ1+r・Δλ),RC(λ1+r・Δλ)(r=1,2,…)を計算する。これによって、図5(A)の点列72A、図5(B)の点列72B、及び図5(C)の点列72Cで示すように、計算上の正反射光の分光反射率RC1(λj)、及び±1次回折光の分光反射率RC2(λj),RC3(λj)(j=1〜J)(波長別の強度分布)が求められる。なお、正反射光の分光反射率RC1(λj)に対して、図5(B)及び(C)の点列72B及び72Cで示すように、±1次回折光の分光反射率RC2(λj),RC3(λj)の計算の間隔(波長幅)を広くすることも可能である。これによって計算量の大幅な増加を避けることができると共に、分光反射率R2(λ),R3(λ)の計測の間隔も広くできるため、図2の分光反射率検出装置40中の±1次回折光62B,62Cの検出系(回折格子59B,59C及び撮像素子60B,60C等)の構成を簡素化することができる。
【0064】
[選択工程(2)]
ここでは、一例として、図5(A)〜(C)の曲線71A〜71Cの実測された分光反射率R1(λj),R2(λj),R3(λj)と点列72A〜72Cの計算された分光反射率RC1(λj),RC2(λj),RC3(λj)との各波長λj(j=1〜J)毎のそれぞれの差分の自乗和を、計算誤差E(d0,xi(=P/4),x1i(=3P/4))として求める。次に、感光層65Aの厚さd1を次第に所定ステップ量k・Δdだけ変化させて、それぞれ上記の計算工程(2)を実行して分光反射率RC1(λj),RC2(λj),RC3(λj)を計算して、計算誤差Eが最も小さくなるときのkの値k’(ここではk’=0も含まれる)を選択する。これによって、感光層65Aの厚さd1が決定される。
【0065】
次に、この決定された厚さd1の値を用いて、図6(B)の中間層65Bの開口のX座標x1の値をP/4に対して所定ステップ量k・Δxだけ変化させて、上記の計算工程(2)を実行して分光反射率RC1(λj),RC2(λj),RC3(λj)を計算して、計算誤差Eが最も小さくなるときのkの値k’を選択する。これによって、X座標x1の値も決定される。同様にして、開口が終わる位置のX座標x11については、その値を3P/4に対して次第に変化させたときに、計算誤差Eが最も小さくなるときの値として決定することができる。同様にして、他の中間層65C〜65Gについても、順次開口のX座標x2〜x6,x12〜x16の値を次第に変えながらそれぞれ上記の計算工程(2)を実行して、計算誤差Eが最も小さくなるときの値を選択すればよい。これによって、図6(B)に示すように、厚さd1及びX座標x1〜x6,x11〜x16の値が決定されて、その断面66Aの形状が決定される。
【0066】
なお、より計算精度を向上するためには、一度それらの厚さd1及びX座標x1〜x6,x11〜x16の値を決定した後、再び厚さd1及びX座標x1〜x6,x11〜x16の値を僅かに変化させながらそれぞれ上記の計算工程を実行して、その計算誤差Eが最も小さくなるときの値を選択してもよい。但し、仮に感光層65Aの厚さd1が予めほぼ正確に求められている場合には、その厚さd1をその求められている値に固定して、パラメータの数を減らしてもよい。
【0067】
また、ここでは正反射光(0次光)62Aの他に、±1次回折光62B,62Cを検出しているが、例えば正反射光62Aの他に+1次回折光62B(又は−1次回折光62C)のみを検出し、この検出結果を用いてスキャタロメトリ解析を行ってもよい。これによっても、ウエハマークの非対称な断面形状を求めることが可能である。更に、正反射光62Aを用いることなく、±1次回折光62B,62Cのみを検出し、この検出結果を用いてスキャタロメトリを行ってもよい。更に、断面形状をより高精度に求めるために、正反射光及び±1次回折光に加えて±2次以上の高次の回折光を検出し、これらの検出結果を用いてスキャタロメトリ解析を行ってもよい。
【0068】
[予測工程(2)]
この工程では、上記の工程で決定された厚さd1及びX座標x1〜x6,x11〜x16の値を用いて、図6(B)の断面66Aのマーク、ひいては図4(B)のX軸マーク63XAの1つのスペース部を図1(A)のアライメントセンサ12で検出するときの位置を予測する。最も単純なモデルとしては、次式のようにアライメントセンサ12でそのマークを検出したときの−X方向のエッジ位置xLを最上層の開口のX座標x1と最下層の開口のX座標x6との中間値として、+X方向のエッジ位置xRを最上層の開口のX座標x11と最下層の開口のX座標x16との中間値とすることである。
【0069】
xL=(x1+x6)/2 …(8)
xR=(x11+x16)/2 …(9)
従って、アライメントセンサ12で検出されるそのマーク(スペース部)のX方向の位置xCは、次のようにそれらのエッジ位置の中央の値となる。
xC=(xL+xR)/2=(x1+x11+x6+x16)/4 …(10)
なお、このモデルの他に、例えば上層の開口の位置ほど高い重みをつけてそのマーク位置xCを計算するモデルや、更にはその断面形状に基づいてアライメントセンサ12で結像されるマーク像の光量分布を計算するモデルなども使用することができる。
なお、上述のスキャタロメトリ解析によりマーク構造(図6の各レイヤー(層)の開口位置のエッジパラメータ)を特定した後でマークの左右の各エッジ位置(xL,xR)を算出する際に、使用者の所望の(重ね合わせをしたい)レイヤーにおけるマークの開口位置を用いてエッジ位置を計算するようにしても良い。例えば、プロセスプログラム上で、次の露光レイヤーは図5のレイヤー65Cに対して高精度に重ね合わせさせたいことが予め判っている場合には、エッジパラメータx2をマークの左エッジとして決定するようにしたり、あるいは、エッジパラメータとしては全て(x1〜x6)を計算上使うけれども、そのうちのx2の重みを大きくして重み付け平均演算をするようにしても良い。
【0070】
[オフセット決定工程(2)]
この工程では、一例として、上記の工程で予測されたそのアライメントセンサ12を用いて図6(B)の断面66Aのマークを計測するときのX方向の位置xCと、その断面66A中の所定の中間層(例えば中間層65Cとする)のマーク(開口部)の位置(x2+x12)/2との位置ずれを求める。この位置ずれΔx2は、次のようになる。
【0071】
Δx2=(x2+x12)/2−xC …(11)
この位置ずれΔx2が、そのアライメントセンサ12を用いて図4(B)のX軸マーク63XAの位置を計測するときのオフセットに対応する。このオフセットΔx2の情報も図2の解析用コンピュータ49から不図示のホストコンピュータを介して図1(A)の露光装置35の主制御系(補正装置)に供給されて、アライメントセンサ12の計測値の補正に用いられる。なお、この場合にも、実際にアライメントセンサ12を用いて位置検出を行った結果に基づいて重ね合わせ露光を行って、現像後に重ね合わせ誤差を計測し、この計測結果に基づいてそのオフセットを決定してもよい。
【0072】
このように本例では、スキャタロメトリ解析を行ってウエハマークWMの断面形状を求めているため、従来はテストプリントを行って確認する以外に適当な方法の無かったアライメントセンサ12のオフセットを、ウエハの搬送経路上で迅速に求めることができる。更に、その断面形状には感光層の厚さやウエハ上の各層のマーク形状(幅及び中心位置)も含めることができるため、それらの情報を前の工程にフィードバックすることによって、デバイスをより高精度に製造できる。
【0073】
また、分光検出装置としての分光反射率検出装置40中の結像光学系は比較的小さい開口数の簡単な構成の光学系を使用することができる。しかも、その計測結果には、その結像光学系の収差の影響は殆どない。また、ウエハマークからの反射光又は回折光をそのまま受光して分光しているため、仮に計測中に図2のXYステージ43の振動等があっても、その計測結果は殆ど影響を受けないという利点もある。なお、本例の分光反射率検出装置40は、デジタル方式で離散的な波長毎の反射率を求めているが、例えば図2の撮像素子60A〜60Cの代わりにフォトダイード等の光電センサを用いて、回折格子59A〜59Cを次第に回転して分光を行うアナログ方式の分光反射率検出装置を使用してもよい。
【0074】
なお、上記の実施形態では、図1(A)のコータ・デベロッパ33内でフォトレジストが塗布された後のウエハW上のウエハマークWMの断面形状を求めている。しかしながら、図4(C)に示すように、フォトレジストが塗布される直前の段階で、ウエハW上のウエハマークWM(X軸マーク63XA)に図2の分光反射率検出装置40から検出光DLを照射して、スキャタロメトリ解析によってそのウエハマークWMの断面形状を求めてもよい。この場合には、フォトレジストが無いため、その断面形状をより正確に求めることができる。また、レジストを塗布した後にも、同じウエハマークWM(63XA)の断面形状を再度スキャタロメトリ解析によって求めるようにしておき、マーク上のレジストプロファイル(厚み、うねり等)については、この(レジスト塗布後の)スキャタロメトリ解析の結果に基づいて求めるようにしても良い。
【0075】
また、上記の実施形態では、図1(A)に示すように、分光反射率検出装置40をコータ・デベロッパ33内に設置しているが、その構成の他に図1(B)に示すように、分光反射率検出装置40を搬送系34の内部又はその近傍に設置してもよく、図1(C)又は図1(D)に示すように、分光反射率検出装置40を露光装置35又は露光装置35A内(露光装置を囲む環境チャンバ内)に設置してもよい。即ち、分光反射率検出装置40は、ウエハがレチクルのパターン像の露光位置に配置されるまでの搬送経路に沿った任意の位置に配置することができる。
【0076】
また、図1(D)の例は、2台のウエハステージ8A及び8Bを備えたダブル・ウエハステージ方式の露光装置35Aに分光反射率検出装置40を備えたものである。この方式では、一方のウエハステージ8A(又は8B)上のウエハW1に対して投影光学系PLを介して露光を行っている間に、他方のウエハステージ8B(又は8A)上のウエハW2に対してアライメントセンサ12によってウエハマークの位置を検出してアライメントを行うことができるため、露光工程のスループットが向上する。この例では更に、投影光学系PLとアライメントセンサ12との間に分光反射率検出装置40が配置されている。そこで、例えばアライメントセンサ12による計測が終了して、投影光学系PLの下方に移動するウエハステージ8B上のウエハW2の所定のウエハマークに分光反射率検出装置40から検出光を照射して、スキャタロメトリ解析によってオフセットを求め、先のアライメントセンサ12による計測結果を補正することによって、スループットを殆ど低下させることなく、アライメント精度を向上できる。この場合、分光反射率検出装置40を用いてスキャタロメトリ解析を行うのは、例えば1ロットの先頭から1枚又は数枚のウエハとすることによって、更にスループットの低下を抑制することができる。
【0077】
次に、本発明の第2の実施形態につき図7〜図10を参照して説明する。本例は、露光装置に備えられたアライメントセンサ内に分光反射率検出装置を組み入れた(計測系の一部光路(17〜23)を兼用した)ものである。このような構成とすることで、アライメントセンサ12(撮像素子29,31)でのマーク検出動作と並行して(同時に)分光反射率検出装置40Aでの分光反射率検出動作を行うことができる。
図7は、本例で使用される走査露光型の投影露光装置を示し、この図7において、露光時には、KrF(波長248nm)又はArF(波長193nm)よりなるエキシマレーザ光源等の露光光源(不図示)から供給された露光ビームとしての露光光ILは、照明光学系1を介してマスクとしてのレチクルRのパターン面の細長い照明領域を均一な照度分布で照明する。照明光学系1は、照度分布均一化用のオプティカル・インテグレータ、照明領域を規定する視野絞り(レチクルブラインド)、及びコンデンサレンズ系等から構成されている。
【0078】
そして、露光光ILのもとで、レチクルR上の回路パターンの一部の像が、両側テレセントリックな投影光学系PLを介して投影倍率β(βは1/5,1/4等)で、ウエハW上の一つのショット領域上の細長い露光領域に投影される。ウエハWは例えば半導体(シリコン等)又はSOI(silicon on insulator)等の直径が150〜300mm程度の円板状の基板であり、その表面にフォトレジストが塗布されている。レチクルR及びウエハWはそれぞれ第1物体及び第2物体(又は単に物体)ともみなすことができる。以下、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内で図7の紙面に平行にX軸を取り、図7の紙面に垂直にY軸を取って説明する。本例の走査露光時のレチクルR及びウエハWの走査方向はY方向である。
【0079】
このとき、レチクルRはレチクルステージ2(第1ステージ)上に吸着保持され、レチクルステージ2は、レチクルベース3上にエアーベアリングを介してY方向に一定速度で駆動され、かつX方向、Y方向、及びZ軸の周りの回転方向に微動できるように載置されている。レチクルステージ2のX方向、Y方向の位置、及び回転角はレチクルステージ駆動系5内のレーザ干渉計によって計測されている。この計測値及び装置全体の動作を制御するコンピュータよりなる主制御系4(補正装置)からの制御情報に基づいて、レチクルステージ駆動系5は、リニアモータ等の駆動機構(不図示)を介してレチクルステージ2の速度及び位置を制御する。
【0080】
一方、ウエハWは不図示のウエハホルダを介してウエハテーブル6上に真空吸着によって保持されており、このウエハテーブル6がZ方向の位置及びX軸、Y軸の周りの傾斜角を制御するためのZチルトステージ7上に固定され、Zチルトステージ7はXYステージ8(第2ステージ)上に固定されている。XYステージ8は、定盤よりなるウエハベース9上にエアーベアリングを介してY方向に一定速度で移動でき、かつX方向、Y方向にステップ移動できるように載置されている。また、投影光学系PLの下部側面に、ウエハWの表面に複数のスリット像を斜めに投影する投射光学系11Aと、ウエハWからの反射光を受光してそのスリット像を再結像して、この再結像された像のシフト量に応じた信号を出力する受光光学系11Bとからなる斜入射方式の多点のオートフォーカスセンサ(11A,11B)が配置されている。走査露光時には、このオートフォーカスセンサ(11A,11B)の計測値に基づいてウエハステージ駆動系10は、Zチルトステージ7を介してオートフォーカス方式でウエハWの表面を投影光学系PLの像面に合わせ込む。
【0081】
ウエハテーブル6、Zチルトステージ7、及びXYステージ8よりウエハステージが構成されている。ウエハテーブル6(ウエハW)のX方向、Y方向の位置及び回転角は、ウエハステージ駆動系10内のレーザ干渉計によって例えば1〜0.1nm程度の位置分解能で計測されている。この計測値及び主制御系4からの制御情報に基づいて、ウエハステージ駆動系10は、リニアモータ等の駆動機構(不図示)を介してXYステージ8(ウエハステージ)の速度及び位置を制御する。更に、ウエハベース9の+Y方向の近傍にウエハローダ系(不図示)が配置されている。
【0082】
そして、ウエハWに対する走査露光時には、レチクルステージ2及びXYステージ8を駆動して、露光光ILの照明領域及びこれに投影光学系PLに関して共役な露光領域に対してそれぞれレチクルRとウエハW上の一つのショット領域とをY方向に同期走査する動作と、XYステージ8を駆動してウエハWをX方向、Y方向にステップ移動する動作とが繰り返される。この動作によって、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハW上の各ショット領域にレチクルRのパターン像が露光される。
【0083】
さて、この露光が重ね合わせ露光であるとすると、その露光前に予めレチクルRのアライメント及びウエハWのアライメントを行っておく必要がある。そのため、レチクルRの上方には、例えば特開平7−176468号公報等に開示されているレチクルアライメント顕微鏡(不図示)が配置されている。そして、このレチクルアライメント顕微鏡によってレチクルR上の所定のアライメントマーク(レチクルマーク)と、ウエハテーブル6上の所定の基準マーク(不図示)との位置ずれ量を検出し、この位置ずれ量に基づいてレチクルRの位置及び回転角が補正される。
【0084】
また、ウエハW上の各ショット領域にはそれぞれアライメントマークとしてのウエハマークが付設されており、そのウエハマークの位置を検出するために、投影光学系PLの側面にオフ・アクシス方式でFIA(Fie1d Image A1ignment )方式よりなる画像処理方式のアライメントセンサ12が配置されている。アライメントセンサ12は、白色光で被検マークを照明する照明系と、その被検マークの拡大像を形成する検出用光学系と、その像を撮像するCCD型の2次元撮像素子と、分光反射率検出装置40Aとを備えると共に、内部にオートフォーカスセンサ(不図示)を備えている。
【0085】
アライメントセンサ12からの撮像信号より、アライメント信号処理系32は被検マークの検出中心(指標マークの中心)からの位置ずれ量を求めて主制御系4に供給する。主制御系4は、その位置ずれ量を後述のように分光反射率検出装置40Aを用いて求めたオフセットで補正し、ウエハステージ駆動系10内のレーザ干渉計を介して検出されるウエハテーブル6(ウエハW)のX座標、Y座標にその補正後の位置ずれ量を加算することによって、その被検マークのステージ座標系(X,Y)での配列座標を求めることができる。
【0086】
また、レチクルRのアライメント時に、ウエハテーブル6上の別の基準マークの位置をアライメントセンサ12を介して検出することによって、レチクルRのパターン像の中心とアライメントセンサ12の検出中心との間隔であるベースライン量が求められて、主制御系4の記憶部に記憶される。これ以後は、アライメントセンサ12の検出結果を例えば特公平4−47968号公報で開示されているエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)方式で統計処理して得られるウエハW上の各ショット領域の配列座標を、そのベースライン量分だけずらすことによって、ウエハW上の各ショット領域に既に形成されている回路パターンと、レチクルRのパターン像とを高精度に重ね合わせて露光することができる。
【0087】
次に、本例のアライメントセンサ12の構成につき説明する。図7において、不図示の検出用光源から光ファイバー13を介して導かれた近赤外及び可視の広帯域の光(白色光)を含むアライメント用の検出光は、レンズ14、照明視野絞り15、レンズ16、ビームスプリッタ17、第1対物レンズ18、落射照明用のミラー19、レンズ20、及び指標マークが形成された指標板(不図示)を介してウエハW上の検出対象のマークとしてのウエハマークWMを照明する。ウエハマークWMでの反射、散乱、及び回折によって上方に向かう光(以下、「マーク光」と呼ぶ)は、指標板(不図示)、レンズ20、ミラー19、第1対物レンズ18、ビームスプリッタ17を経てミラー22に至る。
【0088】
ミラー22で上方に反射されたマーク光の大部分は、第2対物レンズ23、ビームスプリッター21、レンズ24、開口絞り25、レンズ26、及びミラー27を経てビームスプリッタ28に至る。ビームスプリッタ28で反射されたマーク光は、CCD型の2次元撮像素子29の撮像面にウエハマークWMの拡大像を形成し、ビームスプリッタ28を透過してミラー30で反射されたマーク光は、CCD型の2次元撮像素子31の撮像面に指標マークの拡大像(デフォーカスされたウエハマークの像も重畳されている)を形成する。撮像素子29及び31の撮像信号はアライメント信号処理系32に供給されている。この場合、指標板、レンズ20、ミラー19、第1対物レンズ18、ビームスプリッタ17、ミラー22、第2対物レンズ23、ビームスプリッター21、レンズ24、開口絞り25、レンズ26、ミラー27、及びビームスプリッタ28よりアライメントセンサ12の検出用光学系が構成され、この検出用光学系は広帯域の検出光のもとでウエハW上のウエハマークWMの拡大像を撮像素子29上に形成する。また、検出用光学系は、指標マークの像を撮像素子31上に形成するためにも兼用されている。その検出用光学系のウエハW上での光軸を光軸BXと呼ぶ。
【0089】
また、ビームスプリッター21で反射されたマーク光が検出光として分光反射率検出装置40Aに入射する。分光反射率検出装置40Aは、図2の分光反射率検出装置40中の開口絞り57、第2対物レンズ58、ミラー61A,61B、回折格子59A〜59C、及び撮像素子60A〜60Cを含んで構成されている。即ち、分光反射率検出装置40Aは、図2の分光反射率検出装置40と同様に、ウエハマークWMからの正反射光及び±1次回折光の波長別の光量(分光反射率)を検出することができる。更に、分光反射率検出装置40Aは、図2の信号処理装置50及び解析用コンピュータ49を含み、信号処理装置50は分光反射率の情報を解析用コンピュータ49に供給し、解析用コンピュータ49はそれに基づいてスキャタロメトリ解析によって被検ウエハマークの断面形状、ひいてはそのオフセットを求め、このオフセットの情報を図7の主制御系4に供給する。即ち、本例の分光反射率検出装置40Aは、そのままマーク計測装置に対応している。なお、アライメントセンサ12の検出用光学系は図7の構成には限定されず、例えば特開平7−183186号公報に開示されているような種々の構成を取り得る。
【0090】
次に、本例のウエハマークの一例につき図8を参照して説明する。
図8(A)は、図7のウエハWを示す拡大平面図であり、図8(A)において、ウエハWの表面はX方向、Y方向に所定ピッチで複数のショット領域SAに区分され、各ショット領域SAにそれぞれ凹凸パターンよりなる2次元のウエハマークWMが形成されている。ウエハマークWMは、図8(B)に示すように、X方向に所定ピッチで凹部と凸部とを格子状に形成したX軸マーク63XAと、このX軸マーク63XAをY方向に挟むように、Y方向に所定ピッチで凹部と凸部とを格子状に形成した2つのY軸マーク63Yとを備えている。
【0091】
例えばEGA方式でアライメントを行う場合には、図7のアライメントセンサ12によって図8(A)のウエハWの周辺部にほぼ均等に配列されたショット領域A1〜A10に形成されたウエハマークWMのX方向、Y方向の位置がそれぞれ検出される。
図9(A)は、図7の撮像素子29の撮像面29aに形成されるウエハマークWMの拡大像(X軸マーク63XAの像63XAI及び2つのY軸マーク63Yの像63YI)の一例を示し、図9(A)において図8(A)のウエハW上のX方向、Y方向に対応する方向をそれぞれx方向、y方向としてある。そのX軸マークの像63XAIのx方向の位置を求めるために、先ずx軸に平行な走査線67に沿って撮像素子の信号を読み出すことによってx軸の撮像信号が得られる。同様にx軸に平行な他の走査線に沿って読み出すことで多数の撮像信号が得られ、これらの撮像信号は図7のアライメント信号処理系32に供給される。アライメント信号処理系32では、一例として所定範囲のx軸に平行な複数の走査線に沿って得られる撮像信号をそれぞれデジタル化して加算(又は平均)することによって、図9(C)に示すようなX軸マーク63XAの波形データI(x)を得る。波形データI(x)は、撮像面上のx方向の位置(例えば画素の番号で表される)に対応させてアライメント信号処理系32内のメモリに格納される。ウエハW上のX方向の長さと撮像面29a上のx方向の長さとの比の値は、主制御系4及びアライメント信号処理系32内の記憶部に記憶されている。
【0092】
図9(B)は、ウエハマークWM中のX軸マーク63XAの非対称な断面形状の一例を示し、図9(C)の波形データI(x)は、図9(B)のX軸マーク63XAに対して或るフォーカス位置で検出される撮像信号をデジタル化したものである。この例の波形データI(x)は、ウエハマーク63XAの各段差部でそれぞれ値がパルス状に低下する信号となっている。この場合には、一例として所定のスライスレベルで波形データI(x)を2値の複数のパルスで表し、これら複数のパルスのx方向の位置を平均化することでX軸マークの像63XAIのx方向の位置を求めることができる。
【0093】
しかしながら、本例の図9(B)のX軸マーク63XAの断面形状は非対称であるため、アライメントセンサ12で検出した位置と、目標とするマーク位置との間にオフセットΔx2が残存している。以下では、そのオフセットΔx2を求めて補正する動作の一例につき、図10のフローチャートを参照して説明する。
先ず、図10のステップ101において、1ロットの先頭のフォトレジストが塗布されたウエハ(ウエハWとする)が図7のウエハステージのウエハテーブル6上にロードされる。この際に、ウエハW上の不図示のサーチアライメントマークの位置をアライメントセンサ12によって検出することによって、ウエハWの大まかなアライメントが行われる。次のステップ102において、ウエハW上の最初に検出すべきウエハマークWM(図8(A)のショット領域A1のウエハマークWM)の中心が、ほぼアライメントセンサ12の光軸BX上に位置決めされる。この状態で、アライメントセンサ12からウエハマークWMに検出光が短時間だけ照射され、ウエハマークWMからの正反射光及び±1次回折光を分光反射率検出装置40Aで受光することによって、それぞれの波長別の強度(分光反射率)が検出される。
【0094】
次のステップ103において、第1の実施形態と同様にその分光反射率を用いてスキャタロメトリ解析を行うことによって、ウエハマークWMの断面形状を規定する複数のパラメータの値が決定され、これによって実質的にその断面形状が復元される。また、本例の分光反射率検出装置40A内の解析用コンピュータには、その断面形状に応じたアライメントセンサ12の計測値のオフセットがテーブルとして記憶されており、そのテーブルのデータを補間することによって、その断面形状に応じたアライメントセンサ12の計測値のオフセット(ここでは図9(B)のX軸マーク63XAに対するオフセットΔx2)が求められて、主制御系4に供給される。そのオフセットは、Y軸マークのオフセットとしても用いられる。
【0095】
次のステップ104において、アライメントセンサ12を用いて、図8(A)のウエハW上の断面形状の復元が行われたウエハマークを含むショット領域A1〜A10上の各ウエハマークWMのX方向、Y方向の位置が計測されて、これらの計測値が主制御系4に供給される。次のステップ105において、主制御系4は、アライメントセンサ12の計測値からステップ103で求められたオフセットの補正を行い、この補正後の計測値を用いて例えばEGA方式でウエハWの全部のショット領域の配列座標を求める。これでウエハWのアライメント(位置合わせ)が完了し、次のステップ106において、図7の露光装置を用いて、ウエハWの各ショット領域にレチクルRのパターンが転写される。
【0096】
次のステップ107において、1ロットのウエハの露光が終了したかどうかが判定され、露光が終了していない場合には、動作はステップ108に移行して、ウエハステージ(ウエハテーブル6)上のウエハWが次の露光対象のウエハと交換される。その後、動作はステップ104に戻り、交換後のウエハに対してアライメントセンサ12を用いてのウエハマークの位置計測が行われた後、その計測値のオフセット補正(ステップ105)、及びそのウエハの露光(ステップ106)が行われる。そのオフセット補正に際しては、先頭のウエハWに対してステップ103でスキャタロメトリ解析によって求められたオフセットが共通に使用される。そして、ステップ107において、露光対象のウエハが尽きた時点で露光工程が終了する。
【0097】
以上のように本例によれば、1ロットの先頭のウエハに対してスキャタロメトリ解析によってウエハマークの断面形状、ひいてはオフセットを求めているため、ウエハマークの断面形状に依らずに高精度にアライメントを行うことができる。また、スキャタロメトリ解析を行うのは先頭ウエハの1番目のショット領域のウエハマークだけであるため、スループットは殆ど低下することがない。なお、例えばウエハマークの断面形状の計測精度を向上させたい場合には、先頭から所定の複数枚のウエハについて、更にそれらのウエハの複数個のショット領域のウエハマークについてスキャタロメトリ解析を行って断面形状を求めるようにしてもよい。
【0098】
また、上記の実施形態では、ウエハ上のアライメントマークの断面形状を求めるためのスキャタロメトリ解析を行っているが、その他に又はそれと共に、レチクルR上のアライメントマークの断面形状を求めるためにスキャタロメトリ解析を行うようにしてもよい。
なお、上記の実施の形態の露光装置は、複数のレンズから構成される照明光学系等を露光装置本体に組み込み光学調整をして、多数の機械部品からなるレチクルステージやウエハステージを露光装置本体に取り付けて配線や配管を接続し、更に総合調整(電気調整、動作確認等)をすることにより製造することができる。なお、その露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0099】
また、上記の実施の形態の露光装置を用いて半導体デバイスを製造する場合、この半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、このステップに基づいてレチクルを製造するステップ、シリコン材料からウエハを形成するステップ、上記の実施の形態の投影露光装置によりアライメントを行ってレチクルのパターンをウエハに露光するステップ、エッチング等の回路パターンを形成するステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、及び検査ステップ等を経て製造される。
【0100】
なお、本発明は、一括露光型の露光装置にも同様に適用することができる。また、本発明の露光装置の用途としては半導体デバイス製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
【0101】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明をデバイス製造技術に適用することによって、重ね合わせ精度等が向上するため、各種デバイスを高精度に、かつ高いスループットで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】(A)は本発明の第1の実施形態の露光システムの概略構成を示す図、(B)、(C)、及び(D)はそれぞれ露光システムの別の構成例を示す図である。
【図2】その第1の実施形態の分光反射率検出装置40を使用している状態を示す図である。
【図3】図2の分光反射率検出装置40を+X方向に見た側面図である。
【図4】(A)は図2のウエハマークWM中のX軸マーク63Xの一部の構成を示す拡大断面図、(B)は断面形状が非対称なX軸マーク63XAの一部の構成を示す拡大断面図、(C)はフォトレジストを塗布する前の図4(B)のマークを示す拡大断面図である。
【図5】(A)はウエハマークからの正反射光に対して図2の分光反射率検出装置40を介して計測される分光反射率の一例を示す図、(B)はウエハマークからの+1次回折光に対して同様に計測される分光反射率の一例を示す図、(C)はウエハマークからの−1次回折光に対して同様に計測される分光反射率の一例を示す図である。
【図6】(A)は断面形状が対称のマークを規定する複数のパラメータを説明するための図、(B)は断面形状が非対称のマークを規定する複数のパラメータを説明するための図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の投影露光装置の構成を示す図である。
【図8】(A)は図7のウエハW上のショット配列の一例を示す平面図、(B)は図8(A)中のウエハマークWMを示す拡大平面図である。
【図9】(A)は図7の撮像素子29で撮像される画像の一例を示す図、(B)はウエハマークWMの一部のマークの断面形状を示す拡大断面図、(C)は図9(B)のマークに対応する撮像信号の一例を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の露光動作の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0104】
R…レチクル、W…ウエハ、WM…ウエハマーク、12…アライメントセンサ、33…コータ・デベロッパ、34…搬送系、35,35A…露光装置、40,40A…分光反射率検出装置、49…解析用コンピュータ、50…信号処理装置、56,58…対物レンズ、59A,59B,59C…回折格子、60A,60B,60C…撮像素子、62A…正反射光(0次光)、62B,62C…1次回折光、63X,63XA…X軸マーク、64…フォトレジスト、65A…感光層、65B〜65G…中間層、65H…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マークの位置に関する情報を求めるためのマーク計測方法において、
前記マークに検出用の光を照射し、前記マークから発生する所定次数の回折光又は前記マークから所定方向に発生する光を波長別に検出する第1工程と、
前記第1工程の検出結果に基づいて前記マークの断面形状に関する情報を求め、該断面形状に関する情報から前記マークの位置に関するオフセットを求める第2工程とを有することを特徴とするマーク計測方法。
【請求項2】
前記第2工程は、前記マークの断面形状を規定する所定のパラメータの値を変えながら前記マークから発生する光の波長別の強度分布を計算する工程と、
該工程で計算された強度分布が前記第1工程で検出された光の波長別の強度分布に近いときの前記所定のパラメータの値を特定する工程と、
該工程で特定された前記所定のパラメータの値で規定される前記マークの計測された断面形状から所定のマーク検出系で検出される前記マークの位置を予測する工程と、
該工程で予測される前記マークの位置と前記マークの計測された断面形状中の所定の層のマーク位置との位置ずれを前記オフセットとして求める工程とを有することを特徴とする請求項1に記載のマーク計測方法。
【請求項3】
前記マーク又は前記マークと同種類のマークの位置を計測する第3工程と、
前記第2工程で求められたオフセットを用いて前記第3工程で計測されたマークの位置を補正する第4工程とを更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のマーク計測方法。
【請求項4】
前記第1工程において、前記マークから発生する所定の複数次数の回折光又は前記マークから所定の複数の方向に発生する光をそれぞれ波長別に検出することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のマーク計測方法。
【請求項5】
前記第1工程において、前記マークから発生する0次から±n次(nは1以上の整数)までの回折光を検出することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のマーク計測方法。
【請求項6】
マークの位置に関する情報を求めるためのマーク計測装置において、
前記マークに検出用の光を照射し、前記マークから発生する所定次数の回折光又は前記マークから所定方向に発生する光を複数の波長別に検出する分光検出装置と、
前記分光検出装置の検出結果に基づいて前記マークの断面形状に関する情報を求め、該断面形状に関する情報から前記マークの位置に関するオフセットを求める演算装置とを有することを特徴とするマーク計測装置。
【請求項7】
前記演算装置は、前記マークの断面形状を規定する所定のパラメータの値を変えながら前記マークから発生する光の波長別の強度分布を計算し、このように計算された強度分布が前記分光検出装置で検出された光の波長別の強度分布に近いときの前記所定のパラメータの値を特定し、このように特定された前記所定のパラメータの値で規定される前記マークの計測された断面形状から所定のマーク検出系で検出される前記マークの位置を予測し、このように予測される前記マークの位置と前記マークの計測された断面形状中の所定の層のマーク位置との位置ずれを前記オフセットとして求めることを特徴とする請求項6に記載のマーク計測装置。
【請求項8】
前記マークの位置を光学的に検出するマーク検出系と、
前記マーク検出系の検出結果を前記演算装置によって求められたオフセットを用いて補正する補正装置とを更に有することを特徴とする請求項6又は7に記載のマーク計測装置。
【請求項9】
前記分光検出装置は、前記マークから発生する0次から±n次(nは1以上の整数)までの回折光を検出することを特徴とする請求項6〜8の何れか一項に記載のマーク計測装置。
【請求項10】
露光ビームで第1物体を照明し、前記露光ビームで前記第1物体を介して露光位置に配置された第2物体を露光する露光方法において、
前記第2物体を前記露光位置まで搬送する経路上で、前記第2物体上のマークに検出用の光を照射し、前記マークから発生する所定次数の回折光又は前記マークから所定方向に発生する光を波長別に検出する第1工程と、
前記第1工程の検出結果に基づいて前記マークの断面形状に関する情報を求め、該断面形状に関する情報から前記マークの位置に関するオフセットを求める第2工程と、
前記第2物体に対応する露光対象の物体を前記露光位置の近傍に配置した状態で、前記物体上の前記マークに対応するマークの位置を光学的に計測する計測する第3工程と、
前記第2工程で求められたオフセットを用いて前記第3工程で計測されたマークの位置を補正し、該補正された結果に基づいて前記物体の位置合わせを行う第4工程とを有することを特徴とする露光方法。
【請求項11】
前記第2物体は感光材料の塗布された基板であり、
前記第1工程は、前記基板上に前記感光材料を塗布する直前、前記感光材料を塗布した直後、前記基板を搬送する経路上、又は前記基板を露光する直前に実行されることを特徴とする請求項10に記載の露光方法。
【請求項12】
露光ビームで第1物体を照明し、前記露光ビームで前記第1物体を介して第2物体を露光する露光装置において、
請求項6〜9の何れか一項に記載のマーク計測装置を備え、
前記マーク計測装置を用いて、前記第1物体又は前記第2物体上のマークの位置に関する情報を求めることを特徴とする露光装置。
【請求項13】
露光ビームで第1物体を照明し、前記露光ビームで前記第1物体を介して第2物体を露光する露光装置と、
前記第2物体上に感光材料を塗布する塗布装置と、
前記塗布装置と前記露光装置との間で前記第2物体を搬送する搬送装置とを有する露光システムにおいて、
前記露光装置、前記塗布装置、及び前記搬送装置のうちの少なくとも1つの装置が、請求項6〜9の何れか一項に記載のマーク計測装置を備えたことを特徴とする露光システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−12867(P2006−12867A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183146(P2004−183146)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】