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ミオスタチン/Smadシグナル阻害剤
説明

ミオスタチン/Smadシグナル阻害剤

【課題】ミオスタチン/Smadシグナル阻害剤を提供する。
【解決手段】紅茶抽出物を有効成分とするミオスタチン/Smadシグナル阻害剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミオスタチン/Smadシグナル阻害剤、サテライト分化促進剤、筋量増加剤及び筋萎縮抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通手段の発達や情報・通信技術の発展に伴い、運動が不足している。運動不足による筋量・筋力の低下は、運動機能の低下の原因となり、特に高齢者にとっては、加齢による筋変化と相俟って、その後の生活の質(QOL)に重大な悪影響をもたらすと考えられる。筋委縮、筋量・筋力の低下を基盤とする日常動作中の転倒、及びそれに伴う骨折等は高齢者における主要な寝たきりの原因である。
一般的に、筋委縮、筋量・筋力の低下を防ぐ手段としては、適度な運動を実践する、或いはリハビリテーションを実践する等がある。しかし、時間的・物理的理由、モチベーションの維持の困難さ等から現実的には難しく、より効果的な方法が望まれている。
【0003】
斯かる観点から、栄養学的アプローチにより運動機能を調節し得る成分の探索が行われ、例えば、プロアントシアニジンを有効成分とする筋萎縮抑制剤(特許文献1)、果実由来のポリフェノールを有効成分とする筋張力増強剤及び体脂肪調整剤(特許文献2)等が提案されている。また、発酵茶から抽出された高分子ポリフェノールを有効成分とする筋肉遅筋化促進剤(特許文献3)が提案されている。
しかしながら、従来の方法は効果の面で十分とは云えず、また、特許文献3では、持久性運動と組み合わせたときの骨格筋の筋線維タイプの変化(IIbからIIaへの移行、遅筋化)促進が検討されているものの、運動不足や加齢等に伴う筋委縮、筋量の低下に対する効果は何ら検討されていない。
【0004】
一方、ミオスタチンは、形質転換成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリーに属し、筋肉成長を負に調節することにおいて役割を果たしていると考えられている。ミオスタチンは、筋芽細胞の増殖及び分化を阻害すること(非特許文献1)、サテライト細胞の増殖を抑制し、サテライト細胞を休止状態としていること(非特許文献2)等が明らかにされている。また、ミオスタチン欠損マウスでは正常なマウスよりも筋線維の過形成及び肥大のために骨格筋量が約2倍に増大すること(非特許文献3)、さらに、ミオスタチンの内因性阻害剤であるフォリスタリンの過剰発現マウスで筋量増加が認められること(非特許文献4)が報告されている。
したがって、細胞におけるミオスタチンの活性を阻害することで、サテライト細胞の活性を高め筋肉の肥大・再生を促し、筋量の調節・増加による筋萎縮の予防、改善等が期待できる。
【0005】
ミオスタチンは、アクチビンII型受容体(ActRII)に結合し、さらにI型受容体(ALK4又はALK5)のリン酸化を引き起こすことで、細胞内シグナルカスケードが働く。リン酸化されたI型受容体は細胞内のSmad2、3をリン酸化し、リン酸化されたSmad2、3はヘテロダイマーを形成し、さらにSmad4との複合体を形成することで核内へと移行可能となり、標的遺伝子上流のSBE(Smad binding element)に結合し、転写を開始することが知られている(非特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−338464号公報
【特許文献2】国際公開第2005/074962号
【特許文献3】特開2010−37323号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Thomas et al., J Biol Chem 2000 275:40235−40243
【非特許文献2】McCroskery S et al.,J Cell Biol. 2003 162:1135−1147
【非特許文献3】McPherron AC et al., NATURE 1997 387:83−90
【非特許文献4】Gioson H et al.,Am J Physiol Endocrinol Metab 2009 297:E157−E164
【非特許文献5】Joulia−Ekaza D et al.,Curr Opin Pharmacol. 2007 7:310−5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ミオスタチン/Smadシグナル阻害剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、ミオスタチンの細胞内シグナル伝達(ミオスタチン/Smadシグナル)を阻害する物質について鋭意研究を重ねた結果、紅茶抽出物に優れたミオスタチン/Smadシグナル阻害作用があること、さらにサテライト細胞の分化を促進する作用があることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)に係るものである。
(1)紅茶抽出物を有効成分とするミオスタチン/Smadシグナル阻害剤。
(2)紅茶抽出物を有効成分とするサテライト細胞分化促進剤。
(3)紅茶抽出物を有効成分とする筋量増加剤。
(4)紅茶抽出物を有効成分とする筋萎縮抑制剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明のミオスタチン/Smadシグナル阻害剤等は、細胞におけるミオスタチンのシグナル伝達を阻害し、また、サテライト細胞の分化を促進することから、筋量の増加、筋萎縮の抑制等の効果を発揮し得る医薬品、医薬部外品、食品等として、或いはこれらへ配合するための素材又は製剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】紅茶抽出物のミオスタチン/Smadシグナル依存的な転写活性(ルシフェラーゼ活性)を示す図である。
【図2】紅茶抽出物によるサテライト細胞分化に関与するMyHC1遺伝子の発現量を示す図である。
【図3】紅茶抽出物によるミオスタチン遺伝子の発現量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において「ミオスタチン/Smadシグナル」とは、ActRII、Smadタンパク質が関与するミオスタチンの細胞内シグナル伝達経路であり、「ミオスタチン/Smadシグナル阻害」とは、例えば、ミオスタチンのActRIIへの結合阻害、Smadタンパク質の不活性化等により当該シグナル伝達のいずれかを減少、調節或いは阻害することを意味する。これにより細胞におけるミオスタチンの活性を抑制することができる。「ミオスタチン/Smadシグナル阻害作用」は、後記実施例に示すように、Smad複合体のSBEへの結合、ルシフェラーゼ遺伝子の発現を判別することにより評価することができる。
【0014】
本明細書において、「サテライト細胞」とは、筋の細胞膜間に存在する未分化の幹細胞であり、「サテライト細胞の分化促進」とは、サテライト細胞の活性化、細胞分裂、分化によって既存の筋細胞に融合或いは細胞自身によって筋管細胞形成へと導くことを意味する。
【0015】
本明細書において、「筋量増加」とは、例えばサテライト細胞の増殖及び筋繊維への融合により筋肉組織中の筋繊維断面積又は筋繊維径が増加すること、また筋蛋白の合成速度が分解速度を上回ることにより、筋組織中の蛋白質重量が増加し、筋重量が増加することを意味する。
また、「筋萎縮」とは、筋蛋白の分解速度が合成速度を上回ることにより筋細胞が減少・縮小し、筋量が低下することをいい、長期間の安静臥床や骨折等によるギプス固定、あるいは微小重力暴露によるもの(廃用性筋萎縮という)と筋萎縮性側策硬化症(ALS)等の疾病による進行性筋萎縮に大別される。さらに、加齢に伴っても筋萎縮と同様の症状が起きることがあり、これは加齢性筋減弱症(サルコペニア)と呼ばれている。したがって「筋萎縮の抑制」とは、不活動や加齢、疾病等による筋量の低下を抑制することをいう。
【0016】
本明細書において、「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処理行為を含まない概念である。
【0017】
本明細書において、「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転、疾患、症状又は状態の悪化の防止、抑制又は遅延、あるいは疾患又は症状の進行の逆転、防止、抑制又は遅延をいう。
【0018】
本明細書において、「予防」とは、個体における疾患若しくは症状の発症の防止、抑制又は遅延、あるいは個体の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。
【0019】
本発明に用いられる紅茶抽出物は、紅茶から得られた抽出物を意味し、紅茶としては、Camellia属、例えばC.sinensis、C.assaimica又はそれらの雑種から得られる茶葉から発酵工程を経て製茶された紅茶が挙げられる。紅茶葉としては、特に限定されず、例えば、ヌワラエリヤ、ウバ、ディンブラ、ダージリン、アッサム、スリランカ等が挙げられ、これらは1種又は2種以上混合して使用することができる。
紅茶抽出物を得る方法としては、特に限定されず、固液抽出、液液抽出、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、超音波抽出、マイクロ波抽出、攪拌等の手段を用いることができる。
【0020】
抽出のための溶剤には、極性溶剤、非極性溶剤のいずれをも使用することができる。溶剤の具体例としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;及び超臨界二酸化炭素;ピリジン類;油脂、ワックス等その他オイル類等の有機溶剤;並びにこれらの混合物が挙げられる。好適には、水、アルコール類、アルコール−水混合液が挙げられ、水がより好ましい。
【0021】
紅茶葉から抽出する時の溶剤の温度は、風味の観点から70〜100℃(沸騰水)が好ましく、更に好ましくは80〜100℃(沸騰水)である。紅茶葉からの抽出時の溶剤の量は、紅茶葉に対して5〜70質量倍が好ましく、更に好ましくは5〜60質量倍である。紅茶葉からの抽出時間は30秒〜60分が好ましく、より好ましくは30秒〜40分、更に好ましくは30秒〜30分である。
【0022】
紅茶抽出物は、抽出液や画分をそのまま用いてもよく、適宜な溶媒で希釈した希釈液として用いてもよく、或いは濃縮エキスや乾燥粉末としたり、ペースト状に調製したものでもよい。また、凍結乾燥し、用時に、通常抽出に用いられる溶剤、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、水・エタノール混液、水・プロピレングリコール混液、水・ブチレングリコール混液等の溶剤で希釈して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0023】
本発明の紅茶抽出物は、食品上・医薬品上許容し得る規格に適合し本発明の効果を発揮するものであれば粗精製物であってもよく、さらに得られた粗精製物を公知の分離精製方法を適宜組み合わせてこれらの純度を高めてもよい。精製手段としては、有機溶剤沈殿、遠心分離、限界濾過膜、高速液体クロマトグラフやカラムクロマトグラフ等が挙げられる。
【0024】
後記実施例で示すとおり、本発明の紅茶抽出物は、ミオスタチン/Smadシグナルに着目した、SBEを利用したレポータージーンアッセイ系において優れたミオスタチン/Smadシグナル阻害作用を示した。また、本発明の紅茶抽出物は、筋分化に関するMyHC1(Myosin heavy chain1)遺伝子の発現を亢進し、他方、ミオスタチン遺伝子の発現を抑制した。
ミオシン重鎖(MyHC)は筋肉の主要構成タンパク質であり、筋収縮において重要な役割を担っている。MyHC遺伝子発現の亢進は筋収縮タンパク質の合成を亢進し、その結果筋繊維の肥大や骨格筋肥大をもたらす。また、ミオスタチン遺伝子の発現が抑制されたことから、筋肉減少シグナルが解除され、タンパク質合成、骨格筋肥大をもたらすものと考えられる。
したがって、本発明の紅茶抽出物は、細胞におけるミオスタチンのシグナル伝達を阻害し、また、サテライト細胞の分化を促進することが有用と考えられる各種疾病や症状の予防、改善又は治療に有効であると考えられる。例えば、本発明の紅茶抽出物は、筋量の増加、筋萎縮の抑制に有効であると考えられる。
【0025】
本発明の紅茶抽出物は、ミオスタチン/Smadシグナルの阻害のため、サテライト細胞の分化促進のため、或いは筋量の増加、筋萎縮の抑制のために使用することができる。当該使用は、ヒト若しくは非ヒト動物、又はそれらに由来する検体における使用であり得、また治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。
【0026】
また、本発明の紅茶抽出物は、ミオスタチン/Smadシグナル阻害剤、サテライト細胞分化促進剤、筋量増加剤、筋萎縮抑制剤(以下、ミオスタチン/Smadシグナル阻害剤等)として使用することができ、さらにこれらの剤を製造するために使用することができる。このとき、当該ミオスタチン/Smadシグナル阻害剤等には、本発明の紅茶抽出物を単独で、又はこれ以外に、必要に応じて適宜選択した担体等の、配合すべき後述の対象物において許容されるものを使用してもよい。なお、当該製剤は配合すべき対象物に応じて常法により製造することができる。
【0027】
当該ミオスタチン/Smadシグナル阻害剤等は、ミオスタチン/Smadシグナルの阻害、サテライト細胞の分化促進、筋量の増加、筋萎縮の抑制効果を発揮する、ヒト若しくは動物用の医薬品、医薬部外品、食品又は飼料の有効成分として配合して使用することができる。食品としては、ミオスタチン/Smadシグナルの阻害、サテライト細胞の分化促進、筋量の増加、筋萎縮の抑制等の生理機能をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した飲食品、機能性飲食品、病者用飲食品、特定保健用食品等に応用できる。
【0028】
本発明のミオスタチン/Smadシグナル阻害剤等を医薬品(医薬部外品も含む)の有効成分として用いる場合、これらは任意の投与形態で投与され得る。投与形態としては、経口、経腸、経粘膜、注射等が挙げられる。経口投与のための製剤の剤型としては、例えば錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、徐放性製剤、懸濁液、エマルジョン剤、内服液、糖衣錠、丸剤、細粒剤、シロップ剤、エリキシル剤等が挙げられる。非経口投与としては、静脈内注射、筋肉注射剤、吸入、輸液、坐剤、吸入薬、経皮吸収剤、点眼剤、点鼻剤等が挙げられる。
このような種々の剤型の医薬製剤を調製するには、本発明のミオスタチン/Smadシグナル阻害剤等を単独で、又は他の薬学的に許容される担体と組み合わせて使用してもよい。斯かる担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、希釈剤等が挙げられる。
【0029】
これらの投与形態のうち、好ましい形態は経口投与でありミオスタチン/Smadシグナル阻害剤等を含む製剤中の本発明の紅茶抽出物の含有量(抽出物の乾燥物換算)は、一般的に0.00001〜10質量%とするのが好ましく、0.0001〜1質量%とするのがより好ましい。
【0030】
本発明のミオスタチン/Smadシグナル阻害剤等を食品の有効成分として用いる場合、当該食品の形態は、固形、半固形又は液状であり得、例えば、パン類、ケーキ類、麺類、菓子類、ゼリー類、冷凍食品、アイスクリーム類、乳製品、飲料等の各種食品の他、上述した経口投与製剤と同様の形態(錠剤、カプセル剤、シロップ等)が挙げられる。
種々の形態の食品を調製するには、本発明のミオスタチン/Smadシグナル阻害剤等を単独で、又は他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて用いることができる。当該食品中の本発明の紅茶抽出物の含有量(抽出物の乾燥物換算)は、一般的に0.01〜100質量%とするのが好ましく、0.1〜100質量%とするのがより好ましく、更に好ましくは1〜100質量%とするのが好ましい。
【0031】
また、本発明のミオスタチン/Smadシグナル阻害剤等を、飼料の有効成分として用いる場合には、当該飼料としては、例えば牛、豚、鶏、羊、馬等に用いる家畜用飼料、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、マグロ、ウナギ、タイ、ハマチ等に用いる魚介類用飼料、犬、猫、小鳥、リス等に用いるペットフード等が挙げられる。
尚、飼料を製造する場合には、本発明のミオスタチン/Smadシグナル阻害剤等の他に、牛、豚、羊等の肉類、蛋白質、穀物類、ぬか類、粕類、糖類、野菜、ビタミン類、ミネラル類等一般に用いられる飼料原料、更に一般的に飼料に使用されるゲル化剤、保型剤、pH調整剤、調味料、防腐剤、栄養補強剤等を組み合わせて用いることができる。
また、飼料中の、本発明の紅茶抽出物の含有量は、その使用形態により異なるが、乾燥物換算で、通常0.0001〜20質量%であり、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい
【0032】
本発明のミオスタチン/Smadシグナル阻害剤等の投与量又は摂取量は、対象者の状態、体重、性別、年齢又はその他の要因に従って変動し得るが、経口投与又は摂取の場合成人1人当たり、紅茶抽出物(乾燥物換算)として、1日あたり0.01mg〜100mg/kgとすることが好ましく、更に0.1mg〜10mg/kgとするのが好ましい。
また、上記製剤は、任意の投与計画に従って投与又は摂取され得るが、1日1回〜数回に分けて投与又は摂取することが好ましい。
投与又は摂取対象者としては、それを必要としている者であれば特に限定されないが、本発明のミオスタチン/Smadシグナル阻害剤等はミオスタチン/Smadシグナルの阻害、サテライト細胞の分化促進、筋量の増加、筋萎縮の抑制を図ることができることから、特に、運動愛好者やアスリート、ロコモティブシンドローム発症者、加齢性筋減弱症(サルコペニア)者、神経・筋疾患(炎症性筋疾患、内科的疾患に伴うミオパチー、筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、ミトコンドリア脳筋症、糖原病等)者、運動不足者、ベッドレスト者、外科的/内科的疾患後のリハビリトレーニング者における投与又は摂取が有効である。
【実施例】
【0033】
製造例1[紅茶抽出物の調製]
(1)紅茶抽出物A
SD紅茶エキスパウダー#16691(ケニア産紅茶のスプレードライ品、三栄源エフエフアイ(株)製)を濃度1(w/v)%となるように20(v/v)%エタノール水に溶解し、試験サンプルとした。
【0034】
(2)紅茶抽出物B
市販紅茶葉(三井農林(株)製)7gを、90℃の蒸留水400mLにて1分間抽出した後、2号ろ紙(ADVANTEC)でろ過し、抽出液を得た。得られた抽出液を凍結乾燥し、紅茶抽出物1.37gを得た。これを濃度1(w/v)%となるように20(v/v)%エタノール水に溶解し、試験サンプルとした。
【0035】
(3)紅茶抽出物C
SD紅茶エキスパウダー#16693(ケニア産紅茶のスプレードライ品、三栄源エフエフアイ(株)製)を濃度1(w/v)%となるように20(v/v)%エタノール水に溶解し、試験サンプルとした。
【0036】
(4)紅茶抽出物D
FD紅茶エキスパウダー#16600(ケニア産紅茶のフリーズドライ品、三栄源エフエフアイ(株)製)を濃度1(w/v)%となるように20(v/v)%エタノール水に溶解し、試験サンプルとした。
【0037】
(5)紅茶抽出物E
FD中国紅茶エキスパウダー#16342(中国産紅茶のフリーズドライ品、三栄源エフエフアイ(株)製)を濃度1(w/v)%となるように20(v/v)%エタノール水に溶解し、試験サンプルとした。
【0038】
実施例1[ミオスタチン/Smadシグナル阻害活性試験]
HEK293細胞(ヒト胎児由来腎細胞)を96穴プレートに播種し、DMEM(10% FBS)中で一晩培養した。CignalTM Reporter Assay Kits(SABiosciences)に含まれるCignal Reporter plasmid(ホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流にSBEをつないだレポータープラスミドと内部標準用ウミシイタケルシフェラーゼが40:1の比率で混合されたもの)を、トランスフェクション試薬(Lipofectamine 2000;Invitrogen)を用いて細胞に導入した。その6時間後に、被験物質として終濃度0.002(w/v)%の紅茶抽出物A〜Eをそれぞれ含むDMEM(0.2% FBS)へと培地交換を行い、さらに2時間後にミオスタチン(0.05μg/mL;PEPROTECH)を含むDMEM(0.2% FBS)を加え、一晩培養した。翌日、Dual−Glo(登録商標)Luciferase Reporter Assay System(Promega)を用い、ルミノメーターにてホタル及びウミシイタケルシフェラーゼ活性を各々測定した。コントロールとして紅茶抽出物の代わりに20(v/v)%エタノールを用いた。結果を図1に示す。
【0039】
ミオスタチン/Smadシグナル依存的な転写活性(ルシフェラーゼ活性)は以下のように定義した。
ミオスタチン/Smadシグナル依存的な転写活性(ルシフェラーゼ活性)=(ホタルルシフェラーゼ活性)/(ウミシイタケルシフェラーゼ活性)
ミオスタチン/Smadシグナル阻害活性測定試験の結果は、ミオスタチン非刺激のルシフェラーゼ活性を0%、Myostatin刺激によるルシフェラーゼ活性を100%とした際の転写活性化率を%表示し、50%以上の抑制を示したものをミオスタチン/Smadシグナル阻害剤とした。
数値は平均値±標準誤差(Average(Ave)±standard error(SE))で示した。群間の統計学的有意差については、コントロール群に対するt−testを行ない、p値が0.01未満の場合を有意差ありとし、図に**を示した。
【0040】
図1に示すように、各種紅茶抽出物によりミオスタチン/Smadシグナル依存的な転写活性(ルシフェラーゼ活性)が約50%以上抑制され、紅茶抽出物は、有意なミオスタチン/Smadシグナル阻害作用を有していることが確認された。
【0041】
実施例2[ヒト成人骨格筋由来の初代培養サテライト細胞の分化誘導条件下での遺伝子発現解析]
ヒト成人骨格筋由来の初代培養サテライト細胞(Lonza)を12穴プレートに播種し、24時間後に、MyHC1(Myosin heavy chain1)の遺伝子発現を検討するため、被験物質として終濃度0.002(w/v)%の紅茶抽出物A〜Eをそれぞれ含むDMEM培地(2% Horse Serum)と交換を行い、分化誘導を開始した。分化誘導後48時間培養し、PBSで洗浄後、細胞を回収し、−80℃にて保存した。また、ミオスタチンの遺伝子発現を検討するため、被験物質として終濃度0.004(w/v)%の紅茶抽出物A〜Eをそれぞれ含むDMEM培地(2% Horse Serum)と交換を行い、分化誘導を開始した。分化誘導後24時間培養し、PBSで洗浄後、細胞を回収し、−80℃にて保存した。コントロールとして紅茶抽出物の代わりに20(v/v)%エタノールを用いた。
【0042】
遺伝子発現解析
遺伝子発現解析用のサンプルからのRNAの調製は、RNeasy Micro Kit(QIAGEN)を用い、添付プロトコルに従い行った。調製したRNAは濃度をそろえ、65℃、10分間の熱処理を行い、急冷後に使用した。逆転写には、125ng相当のRNAを使用し、20μLの反応液(1×PCR buffer II(Roche)、5mM MgCl2(Roche)、1mM dNTP mix(Takara),2.5mM Oligo d(T)18 mRNA primer(New England Biolabs)、1U/μl RNase inhibitor(Takara))を調製した。反応は42℃,60分→52℃、30分→99℃、5分→4℃で行い、得られたcDNAは、使用時まで−20℃で保存した。また、定量的PCRのスタンダード用として、500ng相当のRNAを使用し、同様の反応系で逆転写を行った。
逆転写反応によって得られたcDNAを鋳型として、ABI PRISM7500 Real−time PCR System(Applied Biosystems)にて定量的PCRを行った。スタンダード用cDNAを7段階希釈したものをスタンダードとして、作成した標準曲線に基づき、定量を行った。反応液は、Fast SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)10μL、100μM Forward primer 0.2μL、100μM Reverse primer 0.2μL、dH2O 4.6μL、cDNA 5μLとなるように調製した。定量的PCRの温度条件は50℃2分、95℃10秒の後、95℃15秒と60℃1分の反応を40サイクル繰り返した。
筋分化に関与する遺伝子MyHC1(Myosin heavy chain1)、ミオスタチンを定量的PCRにて測定した。結果を図2〜図3に示す。
表1に、定量的PCRに用いたプライマーの配列を示す。
【0043】
【表1】

【0044】
結果
試験結果は平均値±標準誤差(Average(Ave)±standard error(SE))で表し、36B4の発現量を内部標準として補正し、相対的mRNA発現量として表した。有意差検定はt−testを用いて行い、p値が0.05未満のもの、0.01未満のものを統計学的有意差があるとした(*:p<0.05、**:p<0.01)。
図2及び3より、紅茶抽出物は、MyHC1遺伝子の発現を有意に亢進し(図2)、他方、ミオスタチン遺伝子の発現を有意に抑制した(図3)。
このことから、紅茶抽出物にはサテライト細胞の分化促進作用があることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紅茶抽出物を有効成分とするミオスタチン/Smadシグナル阻害剤。
【請求項2】
紅茶抽出物を有効成分とするサテライト細胞分化促進剤。
【請求項3】
紅茶抽出物を有効成分とする筋量増加剤。
【請求項4】
紅茶抽出物を有効成分とする筋萎縮抑制剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−91608(P2013−91608A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233590(P2011−233590)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】