説明

ミキサ車

【課題】ミキサドラム内に付着した生コンクリートが許容量を超えたこと報知する。
【解決手段】ミキサ車100は、生コンクリートを搭載可能なミキサドラム2と、作動油の油圧によってミキサドラム2を回転駆動する駆動装置5と、駆動装置5によるミキサドラム2の駆動状態を検出する圧力センサ5aと、ミキサドラム2内の生コンクリートを排出した後、圧力センサ5aによって検出された駆動状態の変動の大きさと、予め定められた設定値と、を比較することによって、ミキサドラム2の回転むらの大きさを判定するコントローラ10と、コントローラ10にて、圧力センサ5aによって検出された駆動状態の変動の大きさが設定値に達しと判定された場合に、ミキサドラム2の回転むらの大きさが許容値に達したことを運転者に報知する報知装置35と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサ車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、生コンクリートを搭載可能なミキサドラムを備えるミキサ車が用いられている。
【0003】
特許文献1には、ミキサドラム内に洗浄水を噴射可能な洗浄ノズルを備えるミキサ車が開示されている。このミキサ車では、洗浄ノズルから洗浄水を噴射することによって、ミキサドラム内に付着した生コンクリートを洗浄している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−199859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のミキサ車のように洗浄機能を有していてもなお、ミキサドラム内に付着した生コンクリートを完全に除去することは困難である。そのため、ミキサドラム内にて、除去しきれなかった生コンクリートが固化するおそれがある。ミキサドラム内に付着して固化したコンクリートは、ハツリと呼ばれる作業によって定期的に除去する必要があるが、ミキサドラム内を細部まで視認することができないため、コンクリートの除去が必要な状態であるか否かの確認が困難であった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ミキサドラム内に付着して固化したコンクリートの除去が必要であることを運転者に報知可能なミキサ車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、生コンクリートを搭載可能なミキサドラムを備えるミキサ車において、作動流体の流体圧によって前記ミキサドラムを回転駆動する駆動装置と、前記駆動装置による前記ミキサドラムの駆動状態を検出する駆動状態検出器と、前記ミキサドラム内の生コンクリートを排出した後、前記駆動状態検出器によって検出された駆動状態の変動の大きさと予め定められた設定値とを比較することによって、前記ミキサドラムの回転むらの大きさを判定するコントローラと、前記コントローラにて、前記駆動状態検出器によって検出された駆動状態の変動の大きさが前記設定値に達したと判定された場合に、前記ミキサドラムの回転むらの大きさが許容値に達したことを運転者に報知する報知装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ミキサドラムの駆動状態の変動の大きさが予め設定された設定値に達した場合に、ミキサドラムの回転むらが許容値に達したことが、報知装置から運転者に報知される。ミキサドラムにおける駆動状態の変動の大きさは、ミキサドラム内に付着した生コンクリートの量が増加するほど大きくなる。そのため、ミキサドラム内の生コンクリートを排出した後、ミキサドラムにおける駆動状態の変動の大きさが設定値に達したかを判定することによって、ミキサドラム内に付着して固化したコンクリートの除去が必要であるか否かを判定することができる。したがって、ミキサドラム内に付着したコンクリートの除去が必要であることを運転者に報知可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係るミキサ車の平面図である。
【図2】ミキサ車の制御ブロック図である。
【図3A】ミキサ車における生コンクリートの付着状態を示すミキサドラムの側面の断面図である。
【図3B】図3Aにおける正面の断面図である。
【図4】ミキサ車の作用を説明するグラフ図である。
【図5】ミキサ車においてミキサドラムの回転むらの大きさが許容値に達したことを運転者に報知するルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態によるミキサ車100について説明する。
【0011】
まず、図1及び図2を参照して、ミキサ車100の全体構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、ミキサ車100は、運転室11と架台1とを備える車両である。ミキサ車100は、架台1に搭載されて生コンクリートを搭載可能なミキサドラム2と、ミキサドラム2を回転駆動する駆動装置4と、ミキサドラム2の回転を制御するコントローラ10と、を備える。ミキサ車100は、ミキサドラム2内に生コンクリートを搭載して運搬するものである。
【0013】
ミキサドラム2は、架台1に回転可能に搭載される有底円筒形の容器である。ミキサドラム2は、回転軸が車両の前後方向を向くように搭載される。ミキサドラム2は、車両の後部に向かって徐々に高くなるように、前後に傾斜して搭載される。
【0014】
ミキサドラム2は、その後端に開口部が形成され、開口部から生コンクリートの投入と排出とが可能である。ミキサドラム2は、ミキサ車100に搭載された走行用のエンジン3を動力源として回転駆動される。
【0015】
駆動装置4は、エンジン3の回転によって駆動され、作動流体の流体圧によってミキサドラム2を回転駆動するものである。エンジン3におけるクランクシャフトの回転運動は、エンジン3から動力を常時取り出すための動力取り出し機構9(PTO:Power take−off)と、動力取り出し機構9と駆動装置4とを連結するドライブシャフト8(図2参照)と、によって駆動装置4に伝達される。
【0016】
図2に示すように、動力取り出し機構9には、回転数を検出し、検出した回転数に応じた回転数信号をコントローラ10に出力する回転センサ9aが設けられる。回転センサ9aを用いて、ドライブシャフト8の回転数を検出するような構成としてもよい。
【0017】
駆動装置4では、作動流体として作動油が用いられる。なお、作動油ではなく、他の非圧縮性流体を作動流体として用いてもよい。図1に示すように、駆動装置4は、エンジン3によって駆動されて作動流体を吐出する流体圧ポンプとしての油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5によって駆動されてミキサドラム2を回転駆動する流体圧モータとしての油圧モータ6と、を備える。駆動装置4は、ミキサドラム2を正逆転及び増減速させることが可能である。
【0018】
油圧ポンプ5は、動力取り出し機構9を介してエンジン3から常時取り出される動力によって回転駆動される。そのため、油圧ポンプ5の回転数は、車両の走行状態に伴うエンジン3の回転数の変化に、大きく影響を受ける。そこで、ミキサ車100では、エンジン3の回転速度に応じてミキサドラム2が目標回転状態となるように、コントローラ10によって油圧ポンプ5と油圧モータ6との動作を制御している。
【0019】
油圧ポンプ5は、容量が可変な斜板型アキシャルピストンポンプである。油圧ポンプ5は、コントローラ10からの制御信号を受信してポンプの傾転角を正転方向又は逆転方向に切り換える。油圧ポンプ5は、その傾転角を調整するための電磁弁を備える。油圧ポンプ5は、電磁弁が切り換えられることによって吐出方向と吐出容量が調整される。
【0020】
油圧ポンプ5から吐出された作動油は油圧モータ6に供給され、油圧モータ6が回転する。油圧モータ6には、減速機7を介してミキサドラム2が連結される。これにより、ミキサドラム2が、油圧モータ6の回転に伴って回転する。
【0021】
油圧ポンプ5によってミキサドラム2が正転運転されるときには、ミキサドラム2内の生コンクリートが攪拌される。一方、油圧ポンプ5によってミキサドラム2が逆転運転されるときには、ミキサドラム2内の生コンクリートが後端の開口部から外部へと排出される。油圧ポンプ5には、吐出される作動油の圧力を検出する圧力検出器としての圧力センサ5a(図2参照)が設けられる。
【0022】
図2に示すように、圧力センサ5aは、検出した作動油の圧力に応じて、コントローラ10に負荷圧力信号を出力する。なお、圧力センサ5aを油圧ポンプ5に設けるのではなく、油圧モータ6に設け、油圧モータ6における作動油の圧力を検出するようにしてもよい。このように、圧力センサ5aは、駆動装置4における作動油の圧力を検出するものである。
【0023】
油圧モータ6は、容量が可変な斜板型アキシャルピストンモータである。油圧モータ6は、油圧ポンプ5から吐出された作動油の供給を受けて回転駆動される。油圧モータ6は、コントローラ10からの二速切換信号を受信してモータの傾転角を調整する電磁弁を備える。油圧モータ6は、電磁弁が切り換えられることによって、高速回転用の小容量と通常回転用の大容量との二段階に容量が切り換えられる。油圧モータ6には、回転数を検出する回転数検出器としての回転センサ6a(図2参照)が設けられる。
【0024】
図2に示すように、回転センサ6aは、油圧モータ6の回転方向と回転数とを検出し、コントローラ10に回転方向信号と回転数信号とを出力する。
【0025】
ここで、図2では、油圧ポンプ5の吐出圧を検出する圧力センサ5aが、駆動状態検出器として用いられている。圧力センサ5aと、油圧モータ6の回転数を検出する回転センサ6aとは、ともに駆動装置4によるミキサドラム2の駆動状態を検出するものである。駆動状態の変動とは、ミキサドラム2を回転駆動する油圧ポンプ5の吐出圧の変動や、ミキサドラム2を回転駆動する油圧モータ6の回転数の変動など、駆動装置4におけるミキサドラム2の回転駆動における各種の状態の変動のことである。
【0026】
よって、回転センサ6aを駆動状態検出器として用いてもよい。即ち、ミキサ車100では、圧力センサ5aと回転センサ6aとの少なくともいずれ一方が、駆動状態検出器として用いられる。
【0027】
コントローラ10は、駆動装置4の制御を行うものであり、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)などを備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAMなどをROMに格納されたプログラムに従って動作させることによって駆動装置4の制御が実現される。
【0028】
図2に示すように、コントローラ10には、運転者が運転室11内のイグニッションスイッチを操作することによってエンジン3が始動すると、イグニッション電源が入力される。これにより、電源リレー21が切り換えられ、メインバッテリ23からのメイン電源がコントローラ10に供給され、コントローラ10が駆動される。
【0029】
また、ミキサ車100は、水が溜められる水タンク12と、水タンク12内の水を吸い込んで吐出する水圧ポンプ13と、水圧ポンプ13とミキサドラム2との間に設けられる開閉弁14と、を備える。
【0030】
水圧ポンプ13と開閉弁14とは、水タンク12からミキサドラム2内に水を供給する供給通路に設けられる。水圧ポンプ13は、コントローラ10からの起動信号によって起動する。開閉弁14は、コントローラ10からの開閉信号によって開閉する。
【0031】
水タンク12内の水は、水圧ポンプ13が起動するとともに、開閉弁14が開状態に切り換えられることによって、ミキサドラム2内に供給される。水タンク12には、プラントなどにて外部の水道から水を補給可能である。
【0032】
次に、図2を参照して、ミキサ車100における制御について説明する。
【0033】
コントローラ10は、演算したエンジン3の回転数に応じて、ミキサドラム2の回転方向と回転数とが目標回転状態となるように、油圧ポンプ5と油圧モータ6との動作を制御する。具体的には、コントローラ10は、ミキサドラム2の回転方向と回転数とが目標回転状態となるように、油圧ポンプ5の吐出方向と吐出容量を演算するとともに、油圧モータ6の容量を演算して、油圧ポンプ5に制御信号を出力し、油圧モータ6に二速切換信号を出力する。
【0034】
コントローラ10には、油圧ポンプ5から圧力センサ5aを通じて負荷圧力信号が入力されるとともに、油圧モータ6から回転センサ6aを通じて回転方向信号と回転数信号が入力される。コントローラ10は、これらの入力信号に基づいて、油圧ポンプ5と油圧モータ6との動作を制御する。
【0035】
コントローラ10は、ミキサドラム2内の生コンクリートを排出した後、即ち、ミキサドラム2内の生コンクリートを排出しきった状態にて、ミキサドラム2の回転むらの大きさを判定する回転むら判定部15を備える。ミキサドラム2の回転むらについては、後で図3Aから図4を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
回転むら判定部15は、駆動状態検出器によって検出された駆動状態の大きさと、予め設定された設定値と、を比較することによって、ミキサドラム2の回転むらの大きさを判定する。具体的には、以下のとおりである。
【0037】
駆動状態検出器として圧力センサ5aを用いる場合には、回転むら判定部15は、圧力センサ5aによって検出された油圧ポンプ5における吐出圧の変動の大きさと、予め定められた設定値と、を比較することによって、ミキサドラム2の回転むらの大きさを判定する。
【0038】
このときの設定値は、圧力センサ5aによって検出された作動油の圧力の変動の大きさとして、ミキサドラム2の回転むらの大きさの許容値に基づいて予め設定される設定圧力変動幅である。回転むら判定部15は、ミキサドラム2の回転に伴う圧力センサ5aによって検出された圧力の変動の大きさが、設定圧力変動幅に達したかを判定する。
【0039】
一方、駆動状態検出器として回転センサ6aを用いる場合には、回転むら判定部15は、回転センサ6aによって検出された油圧モータ6における回転数の変動の大きさと、予め設定された設定値と、を比較することによって、ミキサドラム2の回転むらの大きさを判定する。
【0040】
このときの設定値は、回転センサ6aによって検出された油圧モータ6の回転数の変動の大きさとして、ミキサドラム2の回転むらの大きさの許容値に基づいて予め設定される設定回転数変動幅である。回転むら判定部15は、ミキサドラム2の回転に伴う回転センサ6aによって検出された回転数の変動の大きさが、設定回転数変動幅に達したかを判定する。
【0041】
運転室11内には、パーキングブレーキ31と、ミキサドラム2を操作するための操作装置32と、運転者に対する報知装置35と、が配置される。
【0042】
パーキングブレーキ31には、パーキングブレーキ31のレバー位置を検出する検出器が設けられる。パーキングブレーキ31がかけられている場合には、検出器から停車信号がコントローラ10へと出力される。
【0043】
操作装置32には、ミキサドラム2の回転方向及び回転数を切り換えるためのつまみ型の操作スイッチ32aと、ミキサドラム2の回転を非常停止させるための停止スイッチ32bと、ミキサドラム2を自動的に攪拌回転させるための自動攪拌スイッチ32cと、ミキサドラム2内に付着して固化したコンクリートが許容量に達したかを判定するための付着判定モードスイッチ32dと、が設けられる。
【0044】
運転者が各スイッチ32a〜32dを操作することに基づいて、操作装置32からコントローラ10に対して指令信号が出力される。コントローラ10は、その指令信号に基づいて、ミキサドラム2の目標回転状態、具体的には回転方向と回転数を決定する。
【0045】
ここで、ミキサドラム2の回転動作について説明する。自動攪拌スイッチ32cがオンである場合において、パーキングブレーキ31からの停車信号がなく、車速が所定速度以上である場合には、コントローラ10は、車両が走行中であると判定する。これにより、コントローラ10は、生コンクリートの排出を防止するとともに生コンクリートの品質を保つため、ミキサドラム2を自動的に攪拌回転させる。
【0046】
これに対して、自動攪拌スイッチ32cがオフである場合には、コントローラ10は、車両が走行中であっても、操作装置32を操作してミキサドラム2を逆回転させることを可能とする。これにより、例えば、細長い溝に生コンを供給するときなどに、車両を極低速で走行させながら、ミキサドラム2内の生コンを外部へと排出することが可能である。また、パーキングブレーキ31から停車信号が出力されている場合も、コントローラ10は、ミキサドラム2内の生コンクリートを外部へと排出できるように、操作装置32を操作してミキサドラム2を逆回転させることを可能とする。
【0047】
報知装置35は、回転むら判定部15による判定に基づいて、油圧ポンプ5の吐出圧の変動の大きさが設定値に達した場合に、ミキサドラム2の回転むらの大きさが許容値に達したことを運転者に報知するものである。報知装置35は、音によって運転者に報知するブザーや、運転者に視認可能なように報知するランプなどである。
【0048】
ミキサ車100の後部には、ミキサ車100の外部にてミキサドラム2の操作を可能とするための後部操作装置38が配置される。後部操作装置38には、操作装置32と同様に、ミキサドラム2の回転方向及び回転数を切り換えるためのつまみ型の操作スイッチ38aと、ミキサドラム2の回転を非常停止させるための停止スイッチ38bと、が設けられる。運転者が後部操作装置38を操作することに基づいて、後部操作装置38からコントローラ10に対して指令信号が出力される。
【0049】
また、ミキサ車100には、ミキサ車100の外部にてミキサドラム2内部の自動洗浄、及び生コンクリートの混練操作を可能とするための自動洗浄・混練操作装置39が配置される。
【0050】
次に、図3A及び図3Bを参照して、ミキサドラム2内へのコンクリート40の付着について説明する。
【0051】
図3Aに示すように、ミキサドラム2内には、二条の螺旋状に形成されるブレード2aが設けられており、ミキサドラム2の後端部には開口部2bが形成されている。これにより、ミキサドラム2が逆転運転したときに、ミキサドラム2内の生コンクリートを開口部2bから外部へ排出することが可能である。
【0052】
運転者は、ミキサドラム2の逆転運転によってミキサドラム2内の生コンクリートを排出しきった後、ミキサドラム2内に水を入れて洗浄する。図2に示すコントローラ10によって、水タンク12からミキサドラム2への水の供給と、ミキサドラム2の回転と、を制御して、自動的に洗浄するような構成であってもよい。
【0053】
しかしながら、開口部2bからミキサドラム2の内部を隅々まで視認することは困難である。図3Bに示すように、生コンクリートはミキサドラム2の内周に沿って付着するため、付着した生コンクリートを開口部2bから視認できないおそれがある。そのため、図3Aに示すように、ミキサドラム2内を洗浄してもなお、ブレード2aの陰などに、生コンクリートが付着したまま残ることがある。
【0054】
ミキサドラム2内に付着した生コンクリートは、時間が経つと固化してコンクリート40となる。ミキサドラム2内にコンクリート40が付着すると、ミキサドラム2の容積が小さくなり、ミキサドラム2内に搭載できる生コンクリートの量が少なくなる。また、固化したコンクリート40が、生コンクリートの排出用の通路を狭くして、生コンクリートの排出を妨げるおそれがある。そのため、ミキサドラム2内に付着して固化したコンクリート40を、ハツリと呼ばれる作業によって、手動で定期的に削り取って除去する必要がある。
【0055】
従来は、例えば、数ヶ月に一度のように経過時間に基づいてコンクリート40の除去を行ったり、生コンクリートを運搬した回数に基づいてコンクリート40の除去を行ったりしていた。これらの方法は、実際にミキサドラム2内にて固化したコンクリート40の量に基づくものではない。そのため、ミキサドラム2内にて固化したコンクリート40の量が少ないにも関わらず除去を行ったり、ミキサドラム2内にて固化したコンクリート40の量が多いにも関わらずそのまま使用を続けたりするおそれがあった。そこで、本発明のミキサ車100では、ミキサドラム2の回転むらの大きさに基づいて、コンクリート40の除去が必要であることを運転者に報知している。
【0056】
ミキサドラム2内に生コンクリートが付着して固化すると、固化したコンクリート40に更に生コンクリートが付着して固化する。これにより、ミキサドラム2内では、コンクリート40が全周にまんべんなく付着するのではなく、特定の部分に偏って付着して固化する。そのため、ミキサドラム2を、固化したコンクリート40が付着した状態で回転させると、ミキサドラム2に回転むらが生じる。
【0057】
次に、図4を参照して、ミキサドラム2の回転むらについて説明する。
【0058】
図4において、横軸は、時間[s]であり、縦軸は、圧力センサ5aによって検出した油圧ポンプ5の吐出圧[Pa]である。
【0059】
図4に示すように、ミキサドラム2内に生コンクリートが付着して固化した状態では、油圧ポンプ5の吐出圧に変動が生じる。具体的には、コンクリート40が固化した部分を上昇させるように回転する際には、負荷が大きくなるため、油圧ポンプ5の吐出圧は上昇する。一方、コンクリート40が固化した部分が上死点を超えて下降するような場合には、負荷が小さくなるため、油圧ポンプ5の吐出圧は下降する。
【0060】
油圧ポンプ5における吐出圧の変動の大きさは、ミキサドラム2内にて固化したコンクリート40の量が増えるほど大きくなる。そこで、ミキサ車100では、油圧ポンプ5における吐出圧の変動の大きさに基づいて、ミキサドラム2内にて固化したコンクリートの量が許容量に達したかを判定している。
【0061】
駆動状態検出器として回転センサ6aを用いた場合は、以下のとおりである。
【0062】
ミキサドラム2内に生コンクリートが付着して固化した状態では、油圧モータ6の回転数に変動が生じる。具体的には、コンクリート40が固化した部分が最下位置点を超えて上昇する場合には、負荷が大きくなるため、油圧モータ6の回転数は下降する。一方、コンクリート40が固化した部分が最上位置点を超えて下降する場合には、負荷が小さくなるため、油圧モータ6の回転数は上昇する。
【0063】
油圧モータ6における回転数の変動の大きさは、ミキサドラム2内にて固化したコンクリート40の量が増えるほど大きくなる。そこで、ミキサ車100では、油圧モータ6における回転数の変動の大きさに基づいて、ミキサドラム2内にて固化したコンクリートの量が許容量に達したかを判定している。
【0064】
次に、図5を参照して、ミキサ車100においてコントローラ10が実行するミキサドラム2の回転むらの大きさが許容値に達したことを運転者に報知するルーチンについて説明する。コントローラ10は、このルーチンをエンジン3の運転中に例えば10ミリ秒ごとの一定時間隔で繰り返し実行する。ここでは、駆動状態検出器として圧力センサ5aを用いた場合についてのみ説明するが、駆動状態検出器として回転センサ6aを用いた場合にも同様の制御が実行される。
【0065】
運転者は、ミキサドラム2内の生コンクリートを排出しきった後、ミキサドラム2内に水を入れて洗浄する。洗浄用の水を排出しきった後、運転者は、付着判定モードスイッチ32dを操作する。このように、ミキサ車100では、ミキサドラム2内の生コンクリートを排出しきった状態にて、ミキサドラム2における駆動状態の変動の大きさが許容値に達したかを判定する。
【0066】
ステップS1では、コントローラ10は、付着判定モードスイッチ32dが操作されたかを判定する。ステップ1にて、付着判定モードスイッチ32dが操作されたと判定された場合には、ステップ2に移行する。
【0067】
ステップS2では、コントローラ10は、ミキサドラム2を計測回転に切り換える。ここでいう計測回転とは、ミキサドラム2の回転むらが顕著に表れるような回転速度の回転である。計測回転におけるミキサドラム2の回転速度は、撹拌回転と比較して速い回転速度に設定される。これにより、ミキサドラム2の回転むらの計測に要する時間を短縮することが可能である。なお、計測回転におけるミキサドラム2の回転速度は、撹拌回転と同一の回転速度であってもよく、また、撹拌回転と比較して遅い回転速度であってもよい。これらの場合であっても、ミキサドラム2の回転むらを計測することは可能である。
【0068】
ステップS3では、圧力センサ5aによって検出される油圧ポンプ5の吐出圧の変動の大きさが設定圧力変動幅に達したかが、回転むら判定部15によって判定される。これにより、コントローラ10は、ミキサドラム2内に付着した生コンクリートの除去が必要であるか否かを判定することができる。
【0069】
ステップS3にて、油圧ポンプ5における吐出圧の変動の大きさが設定圧力変動幅に達したと判定された場合には、ステップS4に移行する。一方、ステップS3にて、油圧ポンプ5における吐出圧の変動の大きさが設定圧力変動幅に達していないと判定された場合には、リターンする。
【0070】
ステップS4では、油圧ポンプ5の吐出圧の変動の大きさが設定圧力変動幅に達したことによって、ミキサドラム2の回転むらの大きさが許容値に達したことを、コントローラ10が、報知装置35から運転者に報知する。これにより、ミキサドラム2内に付着した生コンクリートの除去が必要であることが運転者に報知される。
【0071】
このように、ミキサ車100では、ミキサドラム2の回転むらの大きさに基づいて、コンクリート40の除去が必要であることを運転者に報知している。そのため、ミキサドラム2内にて固化したコンクリート40の量が少ないにも関わらず除去を行ったり、ミキサドラム2内にて固化したコンクリート40の量が多いにも関わらずそのまま使用を続けたりすることを防止できる。
【0072】
ステップS5では、ミキサドラム2の回転速度を、計測回転から撹拌回転に切り換える。ミキサドラム2が撹拌回転に切り換えられたら、ミキサドラム2の回転むらの大きさが許容値に達したかの判定を完了し、リターンする。
【0073】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0074】
ミキサドラム2の駆動状態の変動の大きさが予め設定された設定値に達した場合に、ミキサドラム2の回転むらが許容値に達したことが、報知装置35から運転者に報知される。ミキサドラム2における駆動状態の変動の大きさは、ミキサドラム2内に付着した生コンクリートの量が増加するほど大きくなる。そのため、ミキサドラム2内の生コンクリートを排出しきった状態にて、ミキサドラム2における駆動状態の変動の大きさが許容値に達したかを判定することによって、ミキサドラム2内に付着したコンクリート40の除去が必要であるか否かを判定することができる。したがって、ミキサドラム内に付着したコンクリート40の除去が必要であることを報知可能である。
【0075】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、生コンクリートを運搬するミキサ車に適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
100 ミキサ車
2 ミキサドラム
2a ブレード
3 エンジン
4 駆動装置
5 油圧ポンプ
5a 圧力センサ
6 油圧モータ
6a 回転センサ
10 コントローラ
15 回転むら判定部
32 操作装置
35 報知装置
40 コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生コンクリートを搭載可能なミキサドラムを備えるミキサ車において、
作動流体の流体圧によって前記ミキサドラムを回転駆動する駆動装置と、
前記駆動装置による前記ミキサドラムの駆動状態を検出する駆動状態検出器と、
前記ミキサドラム内の生コンクリートを排出した後、前記駆動状態検出器によって検出された駆動状態の変動の大きさと予め定められた設定値とを比較することによって、前記ミキサドラムの回転むらの大きさを判定するコントローラと、
前記コントローラにて、前記駆動状態検出器によって検出された駆動状態の変動の大きさが前記設定値に達したと判定された場合に、前記ミキサドラムの回転むらの大きさが許容値に達したことを運転者に報知する報知装置と、を備えることを特徴とするミキサ車。
【請求項2】
前記駆動状態検出器は、前記駆動装置における作動流体の圧力を検出する圧力検出器であり、
前記設定値は、前記圧力検出器によって検出された作動流体の圧力の変動の大きさとして、前記ミキサドラムの回転むらの大きさの前記許容値に基づいて予め設定される設定圧力変動幅であり、
前記コントローラは、前記ミキサドラムの回転に伴う前記圧力検出器によって検出された圧力の変動の大きさが、前記設定圧力変動幅に達したかを判定することを特徴とする請求項1に記載のミキサ車。
【請求項3】
前記駆動装置は、
作動流体を吐出する流体圧ポンプと、
前記流体圧ポンプが吐出した作動流体によって駆動され、前記ミキサドラムを回転駆動する流体圧モータと、を備え、
前記圧力検出器は、前記流体圧ポンプの吐出圧又は前記流体圧モータにおける流体圧を検出することを特徴とする請求項2に記載のミキサ車。
【請求項4】
前記駆動装置は、
作動流体を吐出する流体圧ポンプと、
前記流体圧ポンプが吐出した作動流体によって駆動され、前記ミキサドラムを回転駆動する流体圧モータと、を備え、
前記駆動状態検出器は、前記流体圧モータの回転数を検出する回転数検出器であり、
前記設定値は、前記回転数検出器によって検出された前記油圧モータの回転数の変動の大きさとして、前記ミキサドラムの回転むらの大きさの前記許容値に基づいて予め設定される設定回転数変動幅であり、
前記コントローラは、前記ミキサドラムの回転に伴う前記回転検出器によって検出された回転数の変動の大きさが、前記設定回転数変動幅に達したかを判定することを特徴とする請求項1に記載のミキサ車。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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