説明

ミクストメディア美術作品および制作方法

ミクストメディア美術作品の制作方法は、金属シートを切断することと、該金属シートの外側表面に接着層を塗着することと、該接着層に一つ以上のポリマー層を塗着することであって、該一つ以上のポリマー層が該外側表面に像を作り出すことと、該金属シートを変形して三次元の外側表面を制作することとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ミクストメディア美術作品およびかかる美術作品の制作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芸術とは、感覚または感情に訴えるように要素を意図的に配置する過程または作品である。音楽および文学を含めた多様な範囲の人間活動、制作、および表現方法を包含する。芸術の意味は、美学として知られる哲学の一分野で探究されている。
【0003】
芸術形式とは、芸術表現が取る特定の形または質である。使用されるメディア(媒体)が形式に影響することが多い。例えば、立体作品という形式は三次元の空間に存在し、重力に左右される。ゆえに特定のメディアの制約および制限は、形式的質と呼ばれる。別の例を挙げると、絵画の形式的質は、カンバスのテクスチャ、カラー、およびブラシのテクスチャである。ビデオゲームの形式的質は、非直線性、双方向性、およびバーチャル存在である。特定の美術作品の形式は、メディアの形式的質とアーティストの意図の両方によって決定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
美術作品に対する社会の関心が復活した結果、伝統的な美術形式、オリジナルな伝統的作品の再現、新しいタイプの美術作品または美術形式の需要が生まれた。したがって、二次元の絵画であれ、三次元の作品であれ、またはその組合せであれ、独自的な美術作品をもたらす新しい美術形式に対する要求が常に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態において、ミクストメディア美術作品を制作する方法は、金属シートを切断することと、金属シートの外側表面に接着層を塗着することと、接着層に一つ以上のポリマー層を塗着することであって、一つ以上のポリマー層が外側表面に像を作り出すことと、金属シートを変形させて三次元の外側表面を作り出すことと、を含む。
【0006】
別の実施形態において、自立型ミクストメディア美術作品を制作する方法は、金属シートを切断することと、金属シートの外側表面に接着層を塗着することと、接着層に一つ以上のポリマー層を塗着することであって、一つ以上のポリマー層が外側表面に像を作り出すことと、金属シートを変形させて中空の三次元物品を作り出すことであって、金属シート重複部および三次元物品の縁部が物品の内側へのアクセスを可能にする孔を含むことと、三次元物品に支持を与えるように構成された支持充填材料で物品の内側を裏込め充填することと、を含む。
【0007】
ミクストメディア美術作品は、外側と内側とを含む三次元物品に変形される金属シートと、内側に配置されて三次元物品に支持を実現する支持充填材料と、外側に配置される接着層と、接着層に配置される一つ以上のカラーポリマー層であって、外側に像を作り出す一つ以上のポリマー層と、一つ以上のカラーポリマー層の各々の間に交替配置方式で配置される一つ以上の透明層であって、一つ以上のカラーポリマー層の間で光線を透過させるように構成される交互配置透明層と、一つ以上のポリマー層および一つ以上の透明層のすべての上に配置される一つ以上のポリマー仕上げ層であって、三次元外側表面の一つ以上の波状起伏にプールを形成して表面で反射する光線にレンズ効果を付与するように構成された一つ以上のポリマー仕上げ層と、を含む。
【0008】
以下の図面、詳細な説明、および例によって、本発明がさらに説明される。
【0009】
さて、数枚の図において同様の要素に同じような番号が付けられた例示的な図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】金属シートを切断する例示的実施形態を示す。
【図2】図1の金属シートを洗浄および/または研磨する例示的実施形態を示す。
【図3】金属シートに接着層を塗着する例示的実施形態を示す。
【図4】一つ以上のポリマー層を塗着して像を作り出す例示的実施形態を示す。
【図5】一つ以上のポリマー層を乾燥/硬化させる例示的実施形態を示す。
【図6】コーティングされた金属シートを変形させて三次元表面を形成する例示的実施形態を示す。
【図7】支持層を構築する例示的実施形態を示す。
【図8】金属シートを支持層に固定する例示的実施形態を示す。
【図9】金属シートを支持層に固定する例示的実施形態を示す。
【図10】金属シートを仕上げて支持フレームに密着させる例示的実施形態を示す。
【図11】支持フレームの裏側支持体に貫通孔を穿設する例示的実施形態を示す。
【図12】金属シートの内側表面と裏側支持体との間の空隙に裏込め充填材料を充填する例示的実施形態を示す。
【図13】三次元表面にポリマー仕上げ層を塗着した後の完成したミクストメディア美術作品の例示的実施形態を示す。
【図14】支持基体を備える自立型ミクストメディア美術作品の例示的実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここに開示されるのは、ミクストメディア美術作品を制作する方法とこれにより形成される美術作品である。概して、ここで説明するミクストメディア美術作品を制作する方法は、金属シートを所望のサイズおよび形状に切断することと、金属シートの外側表面を洗浄することと、一つ以上のポリマーの層を外側表面に塗着して像(イメージ)を作り出すことと、金属シートおよび一つ以上のポリマー層を成形して像の三次元レリーフを制作することとを含む。ここで使用される際に、「ミクストメディア美術作品」の語は概して、多様な三次元美術形式を含むものとする。例示的な美術形式は、支持フレームに取り付けられ得るか垂直表面に掛けられるタイプなどの平面美術、自立型美術作品などの立体作品、およびその他を含み得る。制作される美術作品の形式の相違は、像が配置される金属シートの三次元レリーフの規模に部分的に左右される。金属シートを大規模に三次元変形させると、支持構造を必要としない自立型立体作品が得られる。金属シートの表面のレリーフ隆起部など、小規模の三次元変形では、構造的支持および耐久性のため支持フレームへ固定されて例えば壁などに美術作品を展示することを可能にする、より平面状の美術形式が得られる。また、ここで使用される際に、「ポリマー」は、金属シートの表面に配置される一つ以上の層のいずれかを指すものとする。例示的なポリマーは、層を金属に結合するため、または、層どうしを結合させるための接着剤、カラーおよび/または視覚的効果のためのアクリル樹脂、保護コーティング、光線の反射および透過に影響するコーティング、およびその他を限定的でなく含み得る。
【0012】
ここで説明する方法により形成されるミクストメディア美術作品は、ユニークな美術形式を生み出す。すなわち、これらの方法により形成される三次元表面は、波立っている水を通して像を見ているように鑑賞者が感じる視覚的効果を生むのである。静止した像が、あたかも波立っている水の表面下にあるように見える。すなわち、例えばカラーおよび透明のポリマーによる交替配置層など様々なポリマー層が、振動したり動いたり生きている像であるような幻影を美術作品に与えるのに役立つ。
【0013】
上述したように、三次元表面を有する美術作品を制作するための方法は、金属シートを所望のサイズおよび形状に切断することを含む。金属シートに有用な金属は、三次元表面となるように変形が可能ないかなる金属をも含み得て、次にアクリル樹脂、接着剤、およびその他などがこの上に接着されたポリマー層を有し得る。金属シートとしての使用のための例示的な金属は、ステンレス鋼、銅、金、銀、アルミニウム、亜鉛、スズ、鉛、遷移金属、以上の組合せ、その合金、およびその他を限定的でなく含み得る。金属シートの厚さに関しては特に制限はなく、金属シートの形状、サイズ、または最初のテクスチャについても制限はない。しかし、金属シートの最初のサイズおよび形状について何らかの検討を行うことは可能である。ある実施形態では、金属シートの最初の形状は、美術作品の所望の最終形状に基づいて選択される。同様に、金属シートの最初のサイズ(寸法または面積など)は、美術作品の所望の最終寸法に基づいて選択することができる。例えばある実施形態では、制作方法の一部としてシートが受ける変形のため、金属シートの最終寸法(およびこれにより配置された像)は、金属シートの最初の寸法よりも小さい。一実施形態では、金属シートおよび三次元像の最終サイズは、金属シートの最初のサイズおよび最初の二次元像よりも約5パーセント(%)から約35%小さい。同じように、金属シートの厚さに関する制限はないとしても、選択される厚さは、三次元表面が形成される方法に影響を与えるだろう。このような方法については、以下で詳述する。
【0014】
図1は、ここで説明する方法のための金属シート100の切断を写真のように描いたものである。図1の特定実施形態では、金属シート100はアルミニウム箔ロール102から切断されて、矩形の形状を有する。アルミニウムシートの厚さは、標準的なはさみを用いてシートを切断できるようなものである。これより厚みのある金属シートであれば、剪断機、ナイフ、のこぎり、レーザ、ウォータージェット、およびその他など、他の道具を必要とするだろう。
【0015】
任意の実施形態では、金属シート100の外側表面104(つまり像が作り出される表面)は、一つ以上のポリマー層を塗着する準備として洗浄、研磨、およびその他を受けてよい。ポリマー層の塗着のため外側表面の準備をするのに、金属シートの表面をきれいにすることが知られている洗浄液および/または研磨剤が使用され得る。図2は、洗浄および研磨が行われた図1の金属シートの外側表面を精密に描いたものである。図2の特定実施形態では、エアゾール洗浄スプレーが使用され、ハンドタオルまたはぼろ布を用いて表面がきれいに拭き取られて光沢が付与され得る。
【0016】
金属シートが所望のサイズおよび形状に切断されて金属シートの外側表面が任意で洗浄および/または研磨された後に、外側表面に接着層が塗着される。美術的な像を生み出す次のポリマー層を金属シートに接着させて三次元形成ステップの間ずっと接着状態を維持するために、接着層が塗着される。接着層は、外側表面104を完全に被覆するか、この表面の選択した領域のみを被覆するように塗着され得る。有用な接着層は、アクリル樹脂などのポリマー層を金属に固定接着させることのできる接着剤を含む。例示的な接着剤は、シラン系エポキシ、紫外線(UV)安定化エポキシ、海洋エポキシ(marine-based epoxies)、およびその他などのエポキシ樹脂を限定的でなく含み得る。一実施形態では、接着層はできる限り薄いが、それでも、ポリマー層が金属シートから剥離するのを防止するのに必要な接着性を付与する。一実施形態では、接着層はUV安定化海洋エポキシを含む。このような薄くて展延性の層を形成するため、UV安定化海洋エポキシは、アセトンなど適当な溶剤で希釈される。
【0017】
図3は、金属シート100の外側表面104への接着層106の塗着の例示的実施形態を写真のように示す。図3の特定実施形態では、ブラシにより接着剤が金属シートに塗着される。他の実施形態では、スプレー、流し込み、コーティング、およびその他など、何らかの方法で接着層が塗着され得る。
【0018】
接着層の塗着の後、アーティストが所望する像を制作するため一つ以上のポリマー層が金属シートに塗着され得る。一実施形態では、ポリマーの塗着に先立って接着剤が硬化/乾燥される。このプロセスは、透明、半透明、一部透明、および不透明の多様なポリマーおよび金属層を変形可能な金属シートの表面に塗着することを伴う。これらの層は、動きのある表面を作り出す無作為かつ規則的で意図的かつ偶発的な表面テクスチャとなるように手作業または機械的に金属を変形させるなどのために、金属シートへの可撓性接着および層間接着を必要とする。そのため、各層または複数層は、カラー、不透明性、透明性、半透明性、以上の組合せ、およびその他が様々なものであり得る。やはり、ここで説明する制作方法は記述的プロセスであるため、バラつきが大きくてもよい。そのため、何枚の層が金属シートに塗着されてもよい。層の数は、結果的に得られる所望の像に左右されるだろう。例えば、一実施形態では、美術作品は金属シート上に一つの層を含み得る。別の実施形態において美術作品は、金属シート上に複数の層を含み得る。複数の層を含む実施形態では、異なるカラー、透明性、不透明性、その他を、層の各々が美術作品の像に付与することができる。例を挙げると、半透明層は、像の層を通して金属をきらめかせ、そのカラーを強め得る。像を形成するには、単層のカラーポリマー(つまり、アクリル絵具)が使用されても、多層の多色ポリマーが使用されてもよい。やはりここで使用される際に、ポリマー層は概して、金属シートに接着される不透明層、半透明層、透明層、カラー層、以上の組合せを限定的でなく意味するものとする。例示的なポリマー層は、アクリル絵具を限定的でなく含み得る。アクリル絵の具の種類は、ロープレックス、ラテックス、ラテックスエナメル、家庭用塗料、スプレー、およびその他を限定的でなく含み得る。加えて、抑制剤、フローリリースリキッド(flow release liquids)、アクリルメディア、およびゲルによってアクリル絵具が改質されてもよく、これらが単独で、または油性および水性の絵具およびインク、クレヨン、油絵具、スティック(sticks)およびマーカ、およびその他など、他の大部分のメディアとの組合せで使用されてもよい。ポリマー層の種類に関係なく、主要な特性は、接着層の上に配置される次の各層が層の各表面にすぐ隣接する層に接着されることである。例えば、接着層に配置されたポリマー層は、接着層と、その上に配置される任意の次のポリマー層の両方に接着される。
【0019】
金属シートそのものと同じように、シートに付加されるポリマー層の各々は、アーティストが所望する適当な視覚的効果を付与するのに必要ないかなる厚さを有してもよい。各層は、厚さが同じであっても厚さが異なっていてもよい。ポリマー層またはポリマー層の組合せは、アーティストが思い描いた像の平面(例えば二次元)状態を形成する。さらに、金属シートまたは前に塗着されたポリマー層の全体を塗着層が被覆しているわけではないのでこれらの空白エリアに異なるカラーのポリマー層が塗られるという点で、塗着されたアクリル樹脂の層は構成要素としてだけでなく遮断要素(stopouts)としても使用可能である。さらに、三次元表面の形成前であっても、異なるカラーまたは半透明性の他の層がこれらのエリアで露出されるおよび/または塗着されるように、アクリル樹脂の層がツール(尖筆、指の爪など)で加工されて乾燥したアクリル絵具が除去されてもよい。さて、美術的な像108を作り出すため金属シートおよび接着層に一つ以上のポリマー層を塗着することを写真のように示す図4を参照する。
【0020】
一実施形態では、特定の層間接着特性に合わせてポリマー層が選択され得る。言い換えると、一実施形態では、金属シートを成形することにより三次元表面が制作される際に一つ以上のポリマー層の小片が剥離されるか剥落されるように、ポリマー層が選択され得る。このような実施形態では、使い古した、風化した、年月を経たようなテクスチャを持つ美術作品が制作される。ポリマー層の剥離または剥落が望ましい実施形態では、上述したように接着層を使用せずにアクリル絵具などの一つ以上のポリマー層を塗着することが可能であってよい。この実施形態では、金属シートの外側表面に塗着されたベースポリマー層は、次の層がシートから引き剥がされるのを防止するのに充分な接着性を付与し得るが、一つ以上の層の剥離または剥落が防止されるほど強力に金属シートに接着されることはない。
【0021】
別の実施形態では、一つ以上の着色ポリマー層の塗着の前に、任意で透明(つまりクリア)層が接着層に配置され得る。一つ以上のポリマー層の間にも透明層が塗着されてもよい。例えば、美術作品は、着色ポリマー層と透明(つまりクリア)ポリマー層による交替配置層を包含してもよい。このような実施形態では、上述したように、着色層は不透明、半透明、透明、またはその組合せでよい。この時、各着色層の間に、任意の透明層が追加されてもよい。交互に配置された透明層により、着色層の間を光線が透過でき、ここで説明する水のような効果を持つように外観を向上させる。透明層を形成するのにいかなる透明ポリマーが使用されてもよい。一実施形態では、透明層はポリウレタンを含む。
【0022】
カラーポリマー、接着剤、および/または透明層が塗着されて、塗着の際に個別に、または最後の最外層の塗着の後に一回のみ、乾燥および/または硬化される。層を乾燥させるには、層の厚さとポリマー化プロセスに対する湿度および温度の影響とに応じて、通常は約16から24時間以上の時間で充分である。限定ではないが、太陽、加熱ランプ、ドライヤ、およびその他などの熱源への露出は、乾燥時間を加速させ得る。さらに、薄いポリマー層であれば乾燥時間は短くなるだろう。図5は、ポリマー層の乾燥を加速させるための熱源、本実施形態では加熱ランプの使用を、写真のように示している。
【0023】
一つ以上のポリマー層が乾燥した後、金属シートが変形されて美術作品の三次元表面が制作される。ポリマー層により制作される像108となるように三次元表面112を制作することのできる何らかの手段により、金属シートおよびポリマー層が変形され得る。上述したように、変形の方法は、金属シートの厚さとこれへのポリマー層の種類および数などに部分的に左右される。例えば、厚いステンレス鋼製金属シートが使用される場合には、ハンマー、パンチ、万力、機械、またはこのような厚さの金属シートを変形させるのに適した他の同様のツールを用いて、シートを変形させることが必要であってよい。アルミニウム箔などの薄いおよび/または可鍛性の金属が使用される別の実施形態では、単純にシートを変形させて、(図6に示されているように)アーティストの手で三次元表面を制作することが可能であってよい。繰り返しになるが、変形の方法は金属シートの標準厚さに左右されるであろう。金属シートを変形、圧壊、屈曲、陥没させることが可能な方法は、ここで説明する三次元美術作品を制作するのに適している。使用される方法と芸術的な構想とに応じて、様々な視覚的アピールを持つ像が得られる多様な形状および表面テクスチャが作り出され得る。
【0024】
別の可変要素は、変形が行われる規模を含む。例えば、大規模な変形は、自立型支持体を美術作品に付与するほど大きく金属シートが変形されている立体作品または他の自立型美術作品を作り出す。狭い範囲での高衝撃の(つまり小規模な)変形の例では、三次元表面が制作されるが、美術作品全体は、直立または壁取り付けのための支持フレームへの取り付けに適した平面形状である。やはり図6は、金属シートおよびポリマー層が手で変形されて三次元表面が制作される方法の実施形態を写真のように示している。
【0025】
上述したように、ある実施形態では、この時点で立体作品または自立型美術作品が制作されており、それからポリマー層でコーティングされ得て、所望の表面仕上げおよび保護が与えられる。しかし他の実施形態では、所望の形状(輪郭)、構造的支持、耐久性、または上記のすべてを付与する支持フレームを三次元物品が必要とする。例えば、美術作品の所望の外周縁形状を模倣するように支持フレームが構築されてもよい。実質的に平面状で矩形の美術作品の場合には、美術作品の形状を模倣するように矩形の支持フレームが構築され得る。図6は、このような支持フレーム114の例示的実施形態であり、美術作品がフレームの周縁の内側に固定され得るか、美術作品がフレームの上に固定され得るため、支持体が美術作品の後方にあって外側表面104からは見えない。周縁に沿って、カンバス、ボード、プレスボード、またはその他などの裏側支持体116が支持フレームにより設けられ得る。図7は、支持フレームの構造を写真のように示す。図7の特定実施形態では、支持フレームは矩形の形状を有しており、額縁に似ている。
【0026】
次に、変形された金属シートおよびポリマー層が支持フレームに接着され得る。この方法ステップは、支持フレームに合わせた金属シートのさらなる成形を必要とすることができる。限定ではないが、接着剤、留め具、釘、ステープル(stables)、および一つの物品を別のものに固定する他の同様の方法など、多様な方法によって、金属シートが支持フレームに固定され得る。図8〜9は、新たに成形された支持フレームに金属シートを固定する方法ステップを写真のように示す。図に示された実施形態では、金属シートが最初に支持フレーム114(図8)の周囲で変形され、金属シートの外側表面(つまり支持フレームの正面側)に所望の外観を与える定位置に置かれた状態で、金属シートが支持フレームに固定される。図9は、美術作品がハンマーおよび釘で支持フレームに固定される様子を示す。変形方法のように、美術作品を支持フレームに固定する手段は、金属シートに使用される金属の標準厚さおよび種類に左右される。
【0027】
ある実施形態では、美術作品が支持フレームに適切に固定されて、アーティストの意図したイメージを立体的な三次元表面がもたらすように、金属シートとポリマー層とを延伸することが必要であってもよい。図10は、支持フレームの裏側を仕上げて金属シートに密閉する様子を写真のように示す。やはり、変形およびコーティング後の金属シートを剛性支持フレームに接着するため、支持フレーム縁部に沿って接着される、および/または機械的に係止されることができる。金属シート100は、支持フレーム114の縁部118に密閉される。
【0028】
美術作品の三次元表面の上にあるレリーフ、隆起部、テクスチャなどの規模に応じて、支持フレームと金属シートの内側表面との間にこのようなテクスチャにより制作される空隙を充填することが有益であり得る。支持/一体性を付与する裏込め充填剤がないと、圧壊、陥没、変形、およびその他などのダメージを表面の三次元テクスチャが受けやすくなることで、アーティストが描いた芸術的イメージを壊すことになる。一実施形態では、このようなことが発生するのを防止するため、(図12に示されているように)支持フレームの裏側にアクセス孔120が穿設されるとよい。アクセス孔120から、裏込め充填支持材料が注入され得る。例示的な裏込め充填材料は、三次元表面を支持してイメージの変化を防止する。例示的な裏込め充填材料は、凝固ポリマーの形の接着剤、硬化または凝固すると固体で結合力の高い構造(液状ゴム)となる石材/ポリマーのスラリー、スプレーフォーム間隙充填剤、海洋フォーム(marine foams)、およびその他を限定的でなく含み得る。やはり、裏側支持体と三次元金属シートの内側表面との間の空隙のサイズは、一体性および耐久性を美術作品に付与するのに適した裏込め充填材料の種類を決定する。
【0029】
変形された金属コーティング構造を支持フレームに装着した後に、表面イメージについてのアーティストの構想を完全なものにするのに必要な再加工(つまり変形その他)が、三次元外側表面に行われ得る。アーティストは、絵筆、尖筆、ねじ回し、その他などのツールにより、取り付けられた変形後の金属コーティング構造を再加工し得る。
【0030】
最終ステップでは、三次元ミクストメディア美術作品が一つ以上の保護仕上げ層でコーティングされる。保護コーティングは、美術作品の外側表面を保護するのに必要ないかなる厚さを有してもよい。また保護仕上げ層は、光沢または平面反射など、所望の仕上げを美術作品に付与するように構成され得る。最終保護コーティング層も水平配向で塗着され得て、コントロールされた興味深い光線反射および透過の効果を塗着方法によって付与できるような様々な厚さを持つポリマーのプールを作り出す。三次元表面112の波状起伏にあるポリマーのプールは、光線のレンズ効果を生み出すことができる。これは、仕上げ後のミクストメディア美術作品にさらに独自性を付与する。図13は、ここで説明した方法により制作された最終ミクストメディア美術作品150を写真のように示す。
【0031】
上述したように、ミクストメディア美術作品の別の実施形態は、壁などの垂直表面と同一平面に取り付けられることが必要でないかこれが意図されていない自立型で立体作品タイプの物品である。このような構造は、上述した、より平面的なアートとほとんど同じ方法で形成されることができ、唯一の相違は、三次元表面を制作するのに金属シートが変形される程度である。事実、三次元というより、平面タイプのミクストメディア美術作品150の表面では、自立型構造として、または自立型の作品を形成するように支持基体とともに展示されることが可能な三次元形状を金属シートが持つように、このシートは大きく変形され得る。例えば、一実施形態では、縁部を重ねることによりバッグ形状となるように金属シートが折り畳まれ得て、三次元形状の表面には小孔のみが残される。立体作品に支持を与えるように、この孔から裏込め充填剤が導入(注入など)され得る。裏込め充填材料は、上述した材料のいずれでもよい。例えば、自己硬化型で二要素から成る海洋フォーム(marine foam)の使用が可能である。立体作品が重量のある金属製の工業製品のような外観を持つが実際には軽量で場所移動が容易であることが望ましい時には、フォームは有用な裏込め充填材料であり得る。ある実施形態では、例えば金属シートの孔から延出する基部となる支持体を自立型美術作品がさらに含み得る。基部となる支持体は、立体作品のスタンドとなるか、または、床、岩、別の美術作品、地面、およびその他など、別の物品へ立体作品を取り付けるのに使用されてもよい。図14は、自立型立体作品200としてのミクストメディア美術作品の例示的実施形態を示す。ミクストメディア立体美術作品200は、外側と内側とを含む三次元物品202に変形される金属シートと、内側に配置されて三次元物品に支持を与える支持充填材料と、外側に配置される接着層と、接着層に配置される一つ以上のカラーポリマー層であって、該一つ以上のポリマー層が外側に像204を作り出す一つ以上のポリマー層と、三次元物品202に装着される基部となる支持体206と、を含む。
【0032】
単数形の“a”、“an”、および“the”は、文脈から反対の意味であることが明らかでなければ複数の指示対象を含む。同じ特徴または要素についての全範囲の終点は、単独で組合せ可能であって、記載された終点を含む。すべての言及は、参考としてここに含まれている。本文全体で使用される際に、「配置される」、「接触した」、およびその変形は、個々の材料、物質、層、膜、およびその他の間における完全または部分的な物理的接触を指す。さらに、「第1」、「第2」、およびその他は、何らかの順序、量、または重要性を意味するのではなく、むしろ要素と要素を区別するために使用されている。
【0033】
特定の実施形態について図示および説明してきたが、発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変形および置換が可能である。したがって、本発明は限定ではなく例として説明されていることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属シートを切断することと、
前記金属シートの外側表面に接着層を塗着することと、
前記接着層に一つ以上のポリマー層を塗着することであって、前記一つ以上のポリマー層が前記外側表面に像を作り出すことと、
前記金属シートを変形して三次元外側表面を作り出すことと、
を含む、ミクストメディア美術作品の制作方法。
【請求項2】
該美術作品が自立型立体作品である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該美術作品が垂直表面に取り付けられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記一つ以上のポリマー層の間の一つ以上の接着層をさらに含み、前記一つ以上のポリマー層を接合するように前記接着層が構成される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記三次元外側表面と反対の内側表面において前記金属シートに支持フレームを装着することをさらに含み、前記支持フレームが裏側支持体を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記裏側支持体に孔を穿設することと、前記変形金属シートと前記裏側支持体との間の一つ以上の空隙を充填支持材料で裏込め充填することとをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記接着層を塗着する前に前記金属シートの前記外側表面を洗浄することをさらに含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記一つ以上のポリマー層がカラーである、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記一つ以上のカラーポリマー層を透明層と交替で配置することをさらに含み、交互に配置された前記透明層が、前記一つ以上のカラーポリマー層の間に光線を透過させるように構成される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記三次元外側表面に一つ以上のポリマー仕上げ層を塗着することをさらに含む、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記一つ以上のポリマー仕上げ層が、前記三次元外側表面の一つ以上の波状起伏にプールを形成して、前記表面で反射する光線にレンズ効果を付与するように構成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
金属シートを切断することと、
前記金属シートの外側表面に接着層を塗着することと、
前記接着層に一つ以上のポリマー層を塗着することであって、前記一つ以上のポリマー層が前記外側表面に像を作り出すことと、
前記金属シートを変形して中空の三次元物品を制作することであって、前記金属シート重複部と前記三次元物品との縁部が、該物品の内部へのアクセスを設ける孔を含むことと、
前記三次元物品に支持を与えるように構成された支持充填材料により前記物品の前記内部を裏込め充填することと、
を含む、自立型ミクストメディア美術作品の制作方法。
【請求項13】
前記三次元物品に基部となる支持体を装着することをさらに含む、請求項12の方法。
【請求項14】
基部となる支持体を第2の物品に装着することをさらに含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記三次元物品に一つ以上のポリマー仕上げ層を塗着することをさらに含む、請求項12乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記一つ以上のポリマー仕上げ層が、前記三次元物品の一つ以上の波状起伏にプールを形成して、前記表面で反射する光線にレンズ効果を付与する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法により制作される美術作品。
【請求項18】
請求項12乃至16のいずれか1項に記載の方法により制作される美術作品。
【請求項19】
外側と内側とを含む三次元物品に変形される金属シートと、
前記内側に配置されて前記三次元物品に支持を与える支持充填材料と、
前記外側に配置される接着層と、
前記接着層に配置される一つ以上のカラーポリマー層であって、前記外側に像を作り出す一つ以上のポリマー層と、
前記一つ以上のカラーポリマー層の各々の間に交替方式で配置される一つ以上の透明層であって、交互に配置された前記透明層が、前記一つ以上のカラーポリマー層の間に光線を透過させるように構成される、一つ以上の透明層と、
前記一つ以上のポリマー層および前記一つ以上の透明層のすべての上に配置される一つ以上のポリマー仕上げ層であって、前記三次元外側表面の一つ以上の波状起伏にプールを形成して、前記表面で反射する光線にレンズ効果を付与するように構成された一つ以上のポリマー仕上げ層と、
を備える、ミクストメディア美術作品。
【請求項20】
前記三次元物品に装着される基部となる支持体をさらに含む、請求項19のミクストメディア美術作品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−530621(P2012−530621A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516330(P2012−516330)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/039149
【国際公開番号】WO2010/148292
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511308554)