説明

ミクロな流体の分析システムの製造に用いるための融合可能な導電性インク

【課題】分析装置内での電極への頑健かつ強固な電気的な接続を提供する分析装置の製造に用いることができる材料を提供することを目的とする。
【解決手段】ミクロな流体の分析システムを製造するのに用いられる融合可能な導電性インクは、白金および炭素を含有する超微粉末、ポリビスフェノールA−コ−エピクロロヒドリン−グリシジル・エンドキャップポリマー、および溶剤を含んでいる。さらに、超微粉末のポリビスフェノールA−コ−エピクロロヒドリン−グリシジル・エンドキャップポリマーに対する比率は、3:1から1:3までの範囲内にある。融合可能な導電性インクは、電極、導電性トレース、および/または、導電性接触パッドを形成するために、ミクロな流体のシステムの製造で用いられる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、大まかに言って、分析装置に関し、より詳しく言うと、ミクロな流体の分析システムの製造に用いる材料に関する。
【0002】
〔背景技術〕
流体サンプルに基づく分析装置(すなわち、流体の分析装置)では、必要な流体サンプルが、信頼できる分析結果を得るために、高い程度の正確度(accuracy)および精密度(precision)で制御されなければならない。そのような制御は、例えば10nl(ナノリットル)から100μl(マイクロリットル)までの少ない体積の流体サンプルを用いる「ミクロな流体の(microfluidic)」分析装置に関しては特に保証されている。そのようなミクロな流体の分析装置では、流体サンプルは、典型的には、例えば10μmから500μm程度の寸法のマイクロチャネル(microchannel)に収容されマイクロチャネル内で移送される。
【0003】
マイクロチャネル内の少ない体積の流体サンプルの制御(例えば、移送、位置検出、流量の測定、および/または、体積の測定)は、間質液(ISF)のサンプルのブドウ糖濃度の測定などのさまざまな分析手技の成功には欠かせないものである。例えば、信頼できる結果を得るためには、分析が開始される前に流体サンプルが検出領域に到達していることを確かめるために、流体サンプルの位置を知ることが必要な場合がある。
【0004】
しかし、かなり小さい寸法の流体サンプルおよびミクロな流体の分析装置のマイクロチャネルは、そのような制御を問題のあるものにする可能性がある。例えば、マイクロチャネルおよび周囲の構造(例えば、基板および電極)は、一体的な構造上の結合性の欠如によって影響を受けて、マイクロチャネルが適正に液密および/または気密ではないことがある。
【0005】
さらに、ミクロな流体の分析装置は、被検体の決定、および、流体サンプルの制御(例えば、流体サンプルの位置の検出、および、流体サンプルの移送)などのさまざまな目的で電極を用いることが多い。しかし、ミクロな流体の分析装置で用いられる電極は、かなり小さく本質的に壊れやすい。その結果、電極は不完全なすなわち弱い接触になりやすく、結果的に動作中の偽りの信号(spurious signal)および/または有害な信号(deleterious signal)を生み出すことになる。
【0006】
したがって、当該分野では、分析装置内での電極への頑健かつ強固な電気的な接続を提供する分析装置の製造に用いることができる材料が依然として必要とされている。さらに、その材料は、分析装置内のいずれのマイクロチャネルも本質的に液密および/または気密になるようにするものでなければならない。
【0007】
〔発明の開示〕
本発明の実施の形態に基づく融合可能な導電性インクは、ミクロな流体のシステム内での電極への頑健かつ強固な電気的な接続が提供されるように、ミクロな流体のシステムを製造するのに用いることができる。さらに、融合可能な導電性インクは、ミクロな流体のシステム内のマイクロチャネルが液密および/または気密になるようにするためにも用いることができる。
【0008】
本発明の実施の形態に基づく融合可能な導電性インクは、白金および炭素を含有する超微粉末、ポリビスフェノールA−コ−エピクロロヒドリン−グリシジル・エンドキャップポリマー(poly(bisphenol A-co-epichlorohydrin)-glycidyl end capped polymer)、および、溶剤を含んでいる。さらに、超微粉末のポリビスフェノールA−コ−エピクロロヒドリン−グリシジル・エンドキャップポリマーに対する比率は、3:1から1:3までの範囲内にある。
【0009】
本発明に基づく融合可能な導電性インクは、電極、導電性トレース、および/または、導電性接触パッドを形成するために、ミクロな流体のシステムの製造で用いられる。さらに、融合可能な導電性インクは、融合可能なので、そのインクで形成された電極および導電性トレースは、絶縁基板およびラミネート層と融合して、液密および/または気密なマイクロチャネルの形成を援助する。さらに、融合可能な導電性インクで形成された導電性トレースは、導電性接触パッドと融合して、導電性トレースを介した導電性接触パッドおよび電極の強固かつ頑健な電気的な接続を提供する。
【0010】
本発明の特徴および利点が、本発明の原理が用いられた例示的な実施の形態を記載した以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによって、より良く理解されるであろう。
【0011】
〔好ましい実施の形態の詳細な説明〕
本明細書を通して一貫性を保つため、および、本発明を明瞭に理解するために、以下の定義が本明細書で用いられる用語について行われる。
【0012】
用語「融合された」は、溶融によって、または、あたかも溶融によって、一体にされている状態を意味する。
【0013】
用語「融合する」は、溶融によって、またはあたかも溶融によって、一体化しつつあるふるまいを意味している。
【0014】
当業者は、本発明の実施の形態に基づくミクロな流体の分析システムが、例えば、さまざまな分析装置の副システムとして、用いられることに気づくであろう。例えば、本発明の実施の形態は、図1に示されたシステム100の分析モジュールとして用いることができる。システム100は、体液のサンプル(例えば、間質液(ISF)サンプル)を抽出しサンプル中の被検体(たとえば、グルコース)をモニタリングするように構成されている。システム100は、使い捨て式のカートリッジ112(破線で示された箱に取り囲まれている。)、局所コントローラモジュール114、および遠隔コントローラモジュール116を含んでいる。
【0015】
システム100では、使い捨て式のカートリッジ112は、体(B、例えば、使用者の皮膚の層)から体液のサンプル(具体的には、間質液(ISF)サンプル)を抽出するためのサンプリングモジュール118と、体液中の被検体(例えば、グルコース)を測定するための分析モジュール120とを含んでいる。サンプリングモジュール118は、当業者に知られた任意の適切なサンプリングモジュールであってよく、分析モジュール120は、本発明の実施の形態に基づくミクロな流体の分析モジュールであってよい。適切なサンプリングモジュールの例が、国際出願第PCT/GB01/05634号(2002年6月27日に国際公開第WO02/49507A1号として公開された。)、および、米国特許出願第10/653,023号に記載されており、両方ともその全体が本明細書に参照されて組み込まれる。しかし、システム100では、サンプリングモジュール118は、使い捨て式のカートリッジ112のコンポーネントなので、使い捨て式であるように構成されている。
【0016】
図2は、本発明に基づくミクロな流体の分析システムの理解に関連する、位置電極、マイクロチャネル、分析センサ、およびメーターの構成200の簡単化した模式図である。構成200は、第1の位置電極202、第2の位置電極204、電気インピーダンスメーター206、タイマー208、マイクロチャネル210、および分析センサ212を含んでいる。図2の構成では、波状の線がマイクロチャネル210内の流体サンプル(例えば、間質液(ISF)、血液、尿、血漿(plasma)、血清(serum)、緩衝液、または、試薬などの流体サンプル)を示している。
【0017】
構成200は、マイクロチャネル210内の流体サンプルの位置または流量を測定するために用いることができる。図2の構成では、被検体センサ212は、第1の位置電極202および第2の位置電極204の中間に配置されている。電気インピーダンスメーター206は、第1の位置電極202および第2の位置電極204の間の電気インピーダンスを測定するように適合されている。そのような電気インピーダンスの測定は、例えば、連続的なまたは交流の電圧を第1の位置電極202および第2の位置電極204の間に印加して、マイクロチャネル内で第1の位置電極202および第2の位置電極204の間の流体サンプルによって形成された導電路のインピーダンスが測定できるようにするために電圧源を用い、流体サンプルの存在を示す信号を得ることによって、行われる。
【0018】
さらに、電気インピーダンスメーター206が、第1の位置電極202および第2の位置電極204の間に流体サンプルが存在することによるインピーダンスの変化を測定すると、信号がタイマー208に送られて、流体サンプルが最初に第1の位置電極202および第2の位置電極204の間に到達した時刻が記録される。測定されたインピーダンスが、流体が第2の位置電極204に到達したことを示すと、別の信号がタイマー208に送られる。流体サンプルが最初に第1の位置電極202および第2の位置電極204の間に到達した時刻と、流体サンプルが第2の位置電極204に到達した時刻との時間差は、流体サンプルの流量の測定に用いることができる(第1の位置電極202および第2の位置電極204の間のマイクロチャネル210の容積が分かっていることを前提とする)。さらに、流体サンプルの流量および/または流体サンプルの位置が分かると、流体サンプルの全体積を求めることができる。さらに、流体サンプルが第2の位置電極204に到達した時刻を示す信号は、動作上の使用目的で、局所コントローラモジュール(例えば、図1および図2の局所コントローラモジュール114)にも送られてよい。
【0019】
本発明の実施の形態に基づくミクロな流体の分析システムが用いられるミクロな流体の分析装置のさらなる説明は、米国特許出願第10/811,446号に記載されており、当該出願は参照されてその全体が本明細書に組み込まれる。
【0020】
図3、図4、および図5は、本発明の例示的な実施の形態に基づく流体サンプル中の被検体をモニタリングするためのミクロな流体の分析システム300の簡単化された模式図である。ミクロな流体の分析システム300は、分析モジュール302および電気装置304(例えば、メーターおよび/または電源)を含んでいる。
【0021】
分析モジュール302は、上面308を備えた絶縁基板306を含んでいる。上面308は内部にマイクロチャネル310を含んでいる。分析モジュール302は、絶縁基板306の上面308に配置された3個の導電性接触パッド312、マイクロチャネル310の上に配置された3個の電極314、電極314の各々および導電性接触パッド312の各々に接続された導電性トレース316、およびラミネート層318をも含んでいる。ラミネート層318は、電極314、導電性トレース316、および、絶縁基板306の上面308の一部の上に配置されている。
【0022】
電気装置304は、3個のばね接触部320(そのうちの一つが図5に示されている。)およびシャーシ322を含んでいる(図5を参照のこと)。ミクロな流体の分析システム300の導電性接触パッド312は、ばね接触部320を介して電気装置304と電気的に接続するためのアクセス可能な露出面324および露出面326を含んでいる。
【0023】
絶縁基板306は、当業者に知られた任意の適切な材料で作られていてよい。例えば、絶縁基板306は、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、および、それらの任意の組み合わせなどの絶縁ポリマーで作られていてよい。電気装置および導電性接触パッドを電気的に接続できるようにするために、絶縁基板が本質的に非圧縮性で電気装置に挿入するための十分な剛性を有していることがとりわけ有益である。絶縁基板306は、任意の適切な厚さであってよく、典型的には約2mmの厚さである。
【0024】
導電性接触パッド312は、例えば、以下に記載される導電性インクおよび導電性顔料(例えば、射出成形法および印刷法で用いるのに適したグラファイト、白金、金、および、銀が添加されたポリマー)などの当業者に知られた任意の適切な導電性材料で作られていてよい。
【0025】
導電性接触パッドは、任意の適切な厚さであってよい。しかし、電気装置を頑健かつ強固に接続できるようにするためには、導電性接触パッドの厚さは、5μmから5mmまでの範囲内にあるのが有益であり、約50μmの厚さがより好ましい。これに関しては、導電性接触パッドの厚さを電極または導電性トレースよりもかなり厚くして、電極および電気装置の(導電性トレースおよび導電性接触パッドを介した)頑健かつ強固な接続ができるようにし、同時に電極および導電性トレースを比較的薄くできることが注目されなければならない。
【0026】
電極314および導電性トレース316も、以下に限定されないが、写真印刷法、スクリーン印刷法、および、フレキソ印刷法で通常用いられている導電性材料などの任意の適切な材料で作られていてよい。炭素、貴金属(例えば、金、白金、および、パラジウム)、貴金属の合金、だけでなく、電位差を形成する(potential-forming)金属酸化物および金属塩が、電極および導電性トレースのための材料に含まれる成分の例である。導電性インク(例えば、アメリカ合衆国ミシガン州48060ポート・ヒューロン(Port Huron)、ワシントンアベニュー(Washington Ave)1600のアチェソン・コロイズ・カンパニー(Acheson Colloids Company)からエレクトロダグ418SS(Electrodag(登録商標)418 SS)として市販されている銀導電性インク)が電極314および導電性トレース316を形成するために用いられてよい。電極314および導電性トレース316の典型的な厚さは、例えば、20μmである。
【0027】
複数の電極がある場合では、各電極は、国際特許出願第PCT/US97/02165号(1997年8月21日にWO97/30344号として公開された。)に記載された導電性インクのような同じ導電性インクを用いて形成されていてよく、または、電極の各々に対して望ましいさまざまな特性を与える別々の導電性インクを用いて形成されていてもよい。
【0028】
ラミネート層318も、以下に限定されないが、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、およびポリエステルなどの当業者に知られた任意の適切な材料で作られていてよい。本発明の実施の形態に基づくミクロな流体の分析システムの製造は、ラミネート層318がしなやかなおよび/または曲げやすいシートの形状である場合に、簡単化できる。例えば、ラミネート層318は、実質的に5μmから実質的に500μmまでの範囲内の厚みのしなやかなシートであってよい。これに関しては、約50μmの厚さのラミネート層が製造を容易にすることに関して有益であることが見出されている。ラミネート層318は、典型的には、絶縁基板306よりも薄く、分析モジュール302の製造中に熱がラミネート層318から絶縁基板306に容易に伝わるよう十分に薄い。
【0029】
本質的に液密および/または気密なマイクロチャネルは、ミクロな流体の分析システム300で、(i)マイクロチャネル310が本質的に液密および/または気密になるように、ラミネート層318が絶縁基板306の上面308の一部と融合しているとき、および/または、(ii)マイクロチャネル310が本質的に液密および/または気密になるように、電極314および/または導電性トレース316を絶縁基板306の上面308と融合させたとき、達成できる。そのような融合した構造を得るための例示的な方法が、以下に詳細に記載される。
【0030】
図6は、3個のばね接触部320’(そのうちの一つが図6で図示されている。)およびシャーシ322’を含む別の電気装置304’に接続されたミクロな流体の分析システム300の分析モジュール302を示している(図6を参照のこと)。図6は、アクセス可能な露出面326と結合したばね接触部320’を示している。
【0031】
図3、図4、図5、および図6の実施の形態では、導電性接触パッド312は、上面308の凹部328内に配置されている。導電性接触パッド312を絶縁基板306の上面の凹部に配置することによって、導電性接触パッド312は、電極および導電性トレースの厚みより大きい厚みで容易に形成でき、電気装置を導電性接触パッドの上面(アクセス可能な露出面324など)および側面(例えば、アクセス可能な露出面326)の何れからでも頑健かつ強固に結合できるようになる。しかし、図7は、導電性接触パッドが絶縁基板の本質的に平坦な上面に配置されている別の構成を示している。図7は、本発明に基づくミクロな流体の分析システムの分析モジュール700を示している。分析モジュール700は、上面708を備えた絶縁基板706を含んでいる。上面708はマイクロチャネル710を有している。
【0032】
分析モジュール700も、絶縁基板706の上面に配置された導電性接触パッド712、マイクロチャネル710の上に配置された電極714、電極714および導電性接触パッド712に接続された導電性トレース716、および、ラミネート層718を含んでいる。ラミネート層718は、電極714、導電性トレース716、および絶縁基板706の上面708の一部の上に配置されている。
【0033】
本発明の開示を知ると、当業者は、本発明に基づくミクロな流体の分析システムの分析モジュールが、複数のマイクロチャネル、複数の電極(例えば、複数の作用電極および基準電極)、複数の導電性トレース、および、複数の導電性接触パッドを含んでいてよいことに気づくであろう。さらに、絶縁基板およびラミネート層は任意の適切な形状であってよい。例えば、絶縁基板およびラミネート層は、円形の形状を有していて、導電性接触パッドが円形の絶縁基板の周縁部に配置されていてよい。
【0034】
図8は、ミクロな流体システム用のアクセス可能な導電性接触パッドを備えた分析モジュールを製造する方法800のステージを示すフロー図である。方法800は、ステップ810に示されているように、上面、上面内の少なくとも一つのマイクロチャネル、および、上面に配置された少なくとも一つの導電性接触パッドを備えた絶縁基板を形成する過程を含んでいる。図9Aは、そのような形成過程の結果を、絶縁基板950、絶縁基板950の上面952、マイクロチャネル954、および導電性接触パッド956として示している。
【0035】
任意の適切な方法が、ステップ810を実行するために用いられてよい。例えば、マイクロチャネルは、エッチング法(etching techniques)、アブレーション法(ablation techniques)、射出成形法(injection moulding techniques)、または、熱型押法(hot embossing techniques)を用いて、絶縁基板の上面に形成されてよい。射出成形法が用いられる場合、絶縁ポリマー材料(高温および高圧の条件下で良好に成形型内に流れ込むことが知られている。)が用いられてよい。そのような絶縁ポリマー材料の例として、以下に限定されないが、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、およびポリエステルがある。さらに、導電性接触パッドは、例えば、導電性インクのスクリーン印刷によって、または、絶縁基板を形成する間に導電性接触パッドを同時に成形することによって、形成されてよい。
【0036】
図8のステップ820に記載されているように、少なくとも一つの電極および少なくとも一つの導電性トレースが底面に配置されたラミネート層が製造される。図9Aは、さらに、そのような製造過程の結果を、ラミネート層958、電極960、および導電性トレース962として示している。電極および導電性トレースは、例えば、当業者に知られた任意の適切な導電性インクによる印刷法によって、ラミネート層上に形成されてよい。
【0037】
次に、方法800のステップ830で、ラミネート層が、
(1)ラミネート層の底面の少なくとも一部が、絶縁基板の上面の少なくとも一部と接着され、
(2)電極が少なくとも一つのマイクロチャネルに露出され、
(3)導電性トレースの各々が、少なくとも一つの導電性接触パッドと電気的に接触し、
(4)導電性接触パッドの少なくとも一つの表面が、露出されていて電気的に接続するためにアクセス可能な状態に留まる、
ように、絶縁基板に接着される。図9Bは、ステップ830の結果の構造を示している。
【0038】
接着ステップ830の間、ラミネート層は、少なくとも一つのマイクロチャネルが本質的に液密、または、さらに本質的に気密になるように、絶縁基板の上面の一部と融合される。そのような融合は、十分な熱および/または圧力を加えて、ラミネート層および絶縁基板の局部的な軟化および/または溶融を起こすことによって達成される。熱および/または圧力は、例えば、加熱ローラによって加えられる。以下に拘束されないが、そのような融合は物理的な接着を原因とするものであって、化学的な接着を原因とするものではないこと、および、融合は、溶融状態のラミネート層および絶縁基板の材料の間の表面のぬれ(surface wetting)、および、固体状態での「機械的な定着(mechanical keying)」の結果であることが前提とされている。機械的な定着は、一方の材料が、第2の材料内に存在するまたは第2の材料内で発達した空隙内に物理的に侵入することを含む機構によって、2つの材料の表面が結合することを意味している。
【0039】
融合および液密および/または気密なマイクロチャネルの形成を可能にするためには、ラミネート層および絶縁基板の溶融特性が予め決められていなければならない。例えば、ラミネート層および絶縁基板の表面が、ラミネート層および絶縁基板の界面の十分なぬれが起こり、続いてラミネート層および絶縁基板の溶融部分の流れ込みおよび混合が起こるように、接着ステップの間に本質的に同時に溶融状態になることが有益である。その後の冷却によって、液密および/または気密なマイクロチャネルを形成するような形態でその上にラミネート層が配置された絶縁基板の一部に融合されたラミネート層が製造される。
【0040】
ラミネート層および絶縁基板の両方がポリスチレンで形成されている場合、融合は、例えば3秒間に亘る3750.3トル(5バール)の圧力および120℃の温度で生ずる。液密、または、さらに気密なマイクロチャネルの形成をさらに強化するために、接着ステップは、導電性トレースおよび/または電極が絶縁基板の上面と融合するように、実施されてもよい。そのような場合には、導電性トレース(および/または電極)が作られる材料は、ラミネート層および絶縁基板の融合と同じ圧力、温度、および時間の条件下で絶縁層と融合するように、予め決められている。しかし、導電性トレース(および/または電極)が形成される材料は、接着ステップの間に重要な定義(significant definition)を失ってはならない。
【0041】
さらに、導電性トレースおよび導電性接触パッドの電気的な接続を強化するために、導電性トレースおよび導電性接触パッドは、接着ステップの間に融合する材料(例えば、過剰な導電性顔料を含む材料)で作られていてよい。しかし、導電性トレースおよび導電性接触パッドの電気的な接続は、接着ステップの間に形成された物理的な機械的接触によって形成されてもよい。
【0042】
接着ステップの典型的な条件は、例えば、80℃から200℃までの範囲内の温度、実質的に375.03トル(0.5バール)から実質的に7500.6トル(10バール)までの範囲内の圧力、および、実質的に0.5秒から実質的に5秒までの範囲内の期間である。
【0043】
〔実施例−分析モジュールの製造〕
本発明に基づくミクロな流体の分析装置のある実施の形態が、ポリスチレン材料(すなわち、ドイツ国ルードビッヒシャフェン(Ludwigshafen)D−67056のビー・エー・エス・エフ・アクティエンゲゼルシャフト・ビジネス・ユニット・ポリスチレン(BASF Aktiengesellschaft, Business Unit Polystyrene)から市販されているポリスチロール144C(Polystyrol 144C))で形成された絶縁基板と、別のポリスチレン材料(すなわち、ドイツ国ノーデンハム(Nordenham)26954、ノードドイッチェ・ゼーカベルベルケ(Norddeutsche Seekabelwerke)のエヌ・エス・ダブリュー・クンスツストッフテヒニーク(NSW Kunststofftechnik)から市販されているノーフレックス・フィルム(Norflex(登録商標) Film))で形成されたラミネート層とを用いて、製造された。
【0044】
電極および導電性トレースが、導電性インクを用いて、ラミネート層に印刷された。さらに、導電性接触パッドが、同じ導電性インクを用いて、絶縁基板に印刷された。導電性トレース、導電性接触パッド、および電極を印刷するのに用いられた導電性インクは、以下の重量パーセントの組成を有していた。
重量比が1:9の白金および炭素を含有する超微粉末(例えば、イギリス国SG8 6NT、サウス・ケンブリッジシェア(South Cambridgeshire)、メルドレス(Meldreth)、ノース・エンド(North End)、ユニット1Aロング・バーン(Unit 1A Long Barn)のエム・シー・エー・サービシス(MCA Services)から入手可能なMCA 20V 白金炭素(platinized carbon))を18.5%、
ポリビスフェノールA−コ−エピクロロヒドリン−グリシジル・エンドキャップポリマー(poly(bisphenol A-co-epichlorohydrin)-glycidyl end capped polymer:例えば、オランダ国3190ANホーフリート・ライト(Hoogvliet Rt)ピーオーボックス606のレゾリューション・ユアロップ・ビー・ブイ(Resolution Europe BV)、レゾリューション・エンハンスト・プロダクツ(Resolution Enhanced Products)から入手可能なエピコート1055(Epikote(商標)1055))を19.0%、および、
メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)溶剤(ベルギー国2650エデゲム(Edegem)、プリンスボーデビィンラーン(Prins Boudewijnlaan)41のダウ・ベネルクス・ビー・ブイ(Dow Benelux B. V.)から入手された。)を62.5%
【0045】
すぐ上の詳細な導電性インクの組成は、ポリスチレン製のラミネート層およびポリスチレン製の絶縁基板に用いるのに(以下に記載されるように)とりわけ有益である。しかし、大まかに言って、導電性インクの組成は、超微粉末のポリマーに対する重量比が実質的に3:1から実質的に1:3までの範囲内に保たれる限り変えられてよい。
【0046】
本発明の開示を知ると、当業者は、導電性インク内の溶剤の百分率が、ラミネート層および/または絶縁基板に導電性インクを塗付するのに用いられる方法(例えば、スプレー塗装(spray coating)、熱型押(hot embossing)、および、フレキソ印刷(flexographic printing))に合わせて変えることができることに気づくであろう。さらに、例えば、アルコール系溶剤(alcohols)、メチルエチルケトン、ブチルグリコール(butyl glycol)、ベンジルアセテート、エチレングリコールジアセテート、イソホロン、および、芳香族炭化水素系溶剤などの任意の適切な溶剤が、メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)の代わりに用いられてもよい。
【0047】
次に、絶縁基板が、ラミネート層および絶縁基板の軟化および融合が起こるように加えられた温度および圧力の条件下でラミネート層に接着された。温度および圧力は、ラミネート層および絶縁基板を30mm/秒から3mm/秒までの範囲内の速度で加熱ローラに通すことで、ラミネート層および絶縁基板に加えられた。
【0048】
さらに、温度および圧力は、導電性インクの軟化、導電性インクと絶縁基板の融合、および、導電性インクとラミネート層の融合を起こすのに十分であった。そのような軟化および融合にもかかわらず、導電性インクはその導電特性を保持していた。したがって、上記導電性インクは融合可能な導電性インクとも呼ばれる。
【0049】
接着ステップの間に用いられた温度は、典型的には、80℃から150℃までの範囲内にあり、より詳しく言うと、実質的に120℃であり、接着ステップの間に用いられた圧力は、典型的には750.06トル(1バール)から7500.6トル(10バール)までの範囲内にあり、より詳しく言うと、実質的に3750.3トル(5バール)であった。
【0050】
接着ステップは、絶縁基板、ラミネート層、および、導電性インクの間の物理的接触の何れの点の間にも空隙を形成することなく、液密なマイクロチャネルを形成した。
【0051】
最適な融合を促進するために、導電性インクの溶融点が、ラミネート層および絶縁基板の溶融点に対して+30℃から−50℃までの範囲内にあることが望ましい。さらに、導電性インクの溶融点が、絶縁基板の溶融点に対して0℃から−30℃までの範囲内にあることが望ましく、より好ましくは、導電性インクの溶融点が、絶縁基板の溶融点に対して−5℃から−15℃までの範囲内にある。これに関して、エピコート(Epikote)1055に関して報告された溶融点は、79℃から87℃までの範囲内にあり、ラミネート層および絶縁基板が形成されるポリスチレンの溶融点は90℃である。
【0052】
さらに、導電性インクから形成されたコンポーネント(例えば、電極、導電性トレース、および、導電性接触パッド)と絶縁基板またはラミネート層との融合を促進するために、絶縁基板およびラミネート層が形成される高分子材料の分子量よりも小さい分子量の成分を含む導電性インクを用いることが有益である。
【0053】
本明細書に記載された本発明の実施の形態のさまざまな変形が本発明を実施するにあたって用いられることもあることが理解されなければならない。特許請求の範囲が本発明の範囲を定義すること、および、特許請求の範囲の範囲内の構造およびその等価物が特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
【0054】
この発明の具体的な実施態様は以下の通りである。
(1)ミクロな流体の分析システムの製造に用いるための融合可能な導電性インクであって、
白金および炭素を含有する超微粉末と、
ポリビスフェノールA−コ−エピクロロヒドリン−グリシジル・エンドキャップポリマー(poly(bisphenol A-co-epichlorohydrin)-glycidyl end capped polymer)と、
溶剤と、を含み、
前記超微粉末の前記ポリビスフェノールA−コ−エピクロロヒドリン−グリシジル・エンドキャップポリマーに対する比率が、3:1から1:3までの範囲内にある、
融合可能な導電性インク。
(2)前記実施態様(1)記載の融合可能な導電性インクであって、
前記超微粉末が、重量比が実質的に1:9の白金および炭素を含有する、
融合可能な導電性インク。
(3)前記実施態様(1)記載の融合可能な導電性インクであって、
前記溶剤が、メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)(Methyl Carbitol (Diethylene Glycol Monomethyl Ether))である、
融合可能な導電性インク。
(4)前記実施態様(1)記載の融合可能な導電性インクであって、
前記融合可能な導電性インクが、
重量比が1:9の白金および炭素を含有する超微粉末を18.5%と、
ポリビスフェノールA−コ−エピクロロヒドリン−グリシジル・エンドキャップポリマーを19.0%と、
メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)溶剤を62.5%と、の重量百分率の組成を有する、融合可能な導電性インク。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に基づくミクロな流体の分析装置が用いられる、体液を抽出し体液中の被検体をモニタリングするためのシステムを示す簡単化されたブロック図である。
【図2】本発明に基づくミクロな流体の分析装置の実施の形態に関連する、位置電極、マイクロチャネル、分析センサ、およびメーターの構成の簡単化された模式図である。
【図3】本発明の例示的な実施の形態に基づくミクロな流体の分析システムの分析モジュールの(隠れた要素を破線で示した)簡単化された上面図である。
【図4】図3の線A−Aに沿った図3の分析モジュールの簡単化された断面図である。
【図5】ミクロな流体の分析システムの電気装置と電気的に接続された図3の分析モジュールの簡単化された断面図である。
【図6】別の電気装置と電気的に接続された図3の分析モジュールの簡単化された断面図である。
【図7】本発明に基づくミクロな流体の分析システムの別の分析モジュールの簡単化された断面図である。
【図8】本発明に基づく方法の、ある実施の形態を示すフロー図である。
【図9A】図8の方法の過程を例示した断面図である。
【図9B】図8の方法の過程を例示した断面図である。
【符号の説明】
【0056】
100 システム
112 カートリッジ
114 局所コントローラモジュール
116 遠隔コントローラモジュール
118 サンプリングモジュール
120 分析モジュール
200 構成
202 第1の位置電極
204 第2の位置電極
206 電気インピーダンスメーター
208 タイマー
210 マイクロチャネル
212 分析センサ
300 ミクロな流体の分析システム
302 分析モジュール
304 電気装置
304’ 電気装置
306 絶縁基板
308 上面
310 マイクロチャネル
312 導電性接触パッド
314 電極
316 導電性トレース
318 ラミネート層
320 ばね接触部
320’ ばね接触部
322 シャーシ
322’ シャーシ
324 露出面
326 露出面
328 凹部
700 分析モジュール
706 絶縁基板
708 上面
710 マイクロチャネル
712 導電性接触パッド
714 電極
716 導電性トレース
718 ラミネート層
950 絶縁基板
952 上面
954 マイクロチャネル
956 導電性接触パッド
958 ラミネート層
960 電極
962 導電性トレース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロな流体の分析システムの製造に用いるための融合可能な導電性インクであって、
白金および炭素を含有する超微粉末と、
ポリビスフェノールA−コ−エピクロロヒドリン−グリシジル・エンドキャップポリマー(poly(bisphenol A-co-epichlorohydrin)-glycidyl end capped polymer)と、
溶剤と、を含み、
前記超微粉末の前記ポリビスフェノールA−コ−エピクロロヒドリン−グリシジル・エンドキャップポリマーに対する比率が、3:1から1:3までの範囲内にある、
融合可能な導電性インク。
【請求項2】
請求項1記載の融合可能な導電性インクであって、
前記超微粉末が、重量比が実質的に1:9の白金および炭素を含有する、
融合可能な導電性インク。
【請求項3】
請求項1記載の融合可能な導電性インクであって、
前記溶剤が、メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)(Methyl Carbitol (Diethylene Glycol Monomethyl Ether))である、
融合可能な導電性インク。
【請求項4】
請求項1記載の融合可能な導電性インクであって、
前記融合可能な導電性インクが、
重量比が1:9の白金および炭素を含有する超微粉末を18.5%と、
ポリビスフェノールA−コ−エピクロロヒドリン−グリシジル・エンドキャップポリマーを19.0%と、
メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)溶剤を62.5%と、の重量百分率の組成を有する、
融合可能な導電性インク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公開番号】特開2006−164950(P2006−164950A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−284859(P2005−284859)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America
【Fターム(参考)】