説明

ミクロエマルジョンが基になった組織を処理する方法および組成物

本発明は、後で組織を染色する目的でパラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルに脱パラフィンを受けさせる方法および組成物に向けたものである。本組成物はミクロエマルジョンであり、これには水/油/界面活性剤ミクロエマルジョンが含まれ得、これは場合により共界面活性剤を含有していてもよい。本ミクロエマルジョンを用いると、キシレンもトルエンも用いることなく脱パラフィンを実施することが可能になりかつまた脱水用アルコール組成物も再水和用アルコール組成物も中間的に用いることなく溶媒交換を実施することも可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記述する発明は、一般的解剖病理学分野、詳細には、化学的、免疫組織化学的またはインシトゥハイブリッド形成が基になった組成物を用いて後で染色する目的で生物学的サンプル、特に組織断片を準備することに向けたものである。本組織調製方法および組成物は、組織を更にまたは可能ならば同時に染色する準備ができるように脱パラフィン(deparaffinization)そして組織内の流体に溶媒交換を受けさせる新規な方法および組成物を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
生物学的組織サンプルの分析は、病理学者がいろいろな病気(癌および感染病を包含)を診断しようとする時に用いかつ医学研究者が細胞構造の情報を得ようとする時に用いる価値有る診断具である。
【0003】
生物学的組織サンプルから情報を得るには、一般に、分析用サンプルを調製する予備操作を数多く実施する必要がある。試験用組織サンプルを調製する手順には数多くの変形が存在し、そのような変形は、当該方法を個々の組織に適合させる微調整であるか、或は当該組織サンプルの中の特定の化学物質または生物学的マーカーを同定する個々の技術をより良好に適合させようとすることが理由であると見なすことができる。しかしながら、基本的な調製技術は本質的に同じである。生物学的組織サンプルは固形組織、例えば組織生検などに由来するか或は液体が基になった細胞懸濁液調製物、例えば塗布標本(例えばPAP塗布標本)、骨髄または細胞懸濁液などに由来し得る。
【0004】
そのような手順は、典型的に、当該組織に固着、脱水、浸潤そしてパラフィンワックスへの埋め込みを受けさせ、前記組織をガラススライドの上に置きそして次に前記サンプルを染色し、前記組織にいろいろな成分の検出による標識を付け、組織断片の格子解析、例えば電子顕微鏡などによる解析を実施するか、或はサンプル細胞を培養皿の中で増殖させると言った処理を包含し得る。
【0005】
分析を行うか或は試験を行うかに応じて、サンプルを情報内容に関して分析することができるようする前に、それにいろいろな予備段階または処理または手順を受けさせてもよい。そのような手順は典型的に複雑でありかつ時間を消費し、高価および/または毒性材料がしばしば用いられるきちんと順番が決まったいくつかの段階を必要とする。
【0006】
例えば典型的な組織サンプルでは、いろいろな細胞の互いの関係を測定することができるか或は異常を見つけだすことができるように、光学的顕微鏡検査を実施することが行われ得る。このように、組織サンプルは光を透過し得るように極めて薄い組織片でなければならない。その組織サンプルもしくはスライス(しばしば「断片」と呼ぶ)の平均厚は2から10ミクロメートル(1ミクロメートル=ミリメートルの1/1000)の桁である。典型的には、組織サンプルを凍結させるか或は細胞構造物を保存するばかりでなくまたいくらか起こるさらなる酵素作用(この作用の結果として当該組織が腐敗または自己分解を起こすであろう)も停止させる材料(定着剤)の中に固定する。
【0007】
次に、固定後、水混和性アルコール、典型的にはエタノールを用いてそれの濃度を高くしていって前記サンプルから水を除去することで、前記組織サンプルに脱水を受けさせる。次に、前記アルコールを、パラフィンワックスと混ざり合う化学品、典型的には非極性材料、または組織サンプルの中に染み込みかつ薄い断片を崩壊も分裂も無しに調製するに適した粘ちょう度を与え得る含浸剤である他のある種の可塑性物質に置き換える。その水
または水が基になった溶液を除去しそしてそれを非極性材料、例えば非極性有機溶媒などに置き換える過程は「溶媒交換」と呼ばれる、と言うのは、それは当該組織を水/アルコール/非極性有機溶媒の比率がいろいろである溶媒溶液と当該組織の中の水が別の流体[または、組織を埋め込む時、半固体状パラフィンワックス(これはまた一般にパラフィンとも呼ばれる)]に置き換わるまで逐次的に接触させることを伴うからである。溶媒交換はいずれの方向でも実施可能である、即ちそれは両方向方法、例えば水を除去してそれを非極性材料に置き換える方法、および非極性材料を除去してそれを水に置き換える方法である。
【0008】
次に、ミクロトームを用いて、そのパラフィンに埋め込まれている組織サンプルから薄いスライスを切り取る。そのスライスの厚みは5から6ミクロメートルの桁であると同時に直径は5000から20000ミクロンの桁であり得る。その切り取った薄い断片を水浴の上に浮かせることで前記断片を広げるか或は平にする。次に、その断片をガラススライド、通常は寸法が約2.5x8センチメートル(1x3インチ)のスライドの上に置く。
【0009】
次に、前記パラフィンワックスまたは他の含浸剤を溶媒交換で除去、例えば当該サンプルをパラフィン用溶媒、例えばキシレン、トルエンまたはリモネンなどと接触させた後に前記溶媒をアルコールで除去しそしてそのアルコールをアルコール/水の混合物(アルコール濃度を逐次的に低くして行く)で最終的に当該組織が水または水溶液でもう一度湿るまで除去する。サンプルを水で湿らせると細胞構成要素を水溶性化学品および免疫化学的色素で染色することが可能になる。この過程は脱パラフィン過程として知られる。
【0010】
そのような脱パラフィン過程のある面が近年改善された。現在では、毒性のあるパラフィン用溶媒、例えばキシレンおよびトルエンなどの代わりに毒性が低い非極性有機溶媒、例えばテルペン油[例えばAmeriClear(商標)、Baxter Healthcare Diagnostics、McGaw Park、IL]、イソパラフィン系炭化水素、例えばMicron Diagnostics(Fairfax、VA)のMicroClear(商標)など、およびHistolene、即ちd−リモネンが96%のデワクサー(dewaxer)(Fronine Pty Ltd、Riverstone、New South Wales、オーストラリア)が用いられている。また、新規な自動化方法も初めて公開された。例えば、熱水と界面活性剤のみを用いてパラフィンワックスを組織断片から除去する自動化方法が特許文献1に記述されている。そのような方法は、液化したパラフィンと熱水が混和し得ることを利用して液化パラフィンを組織から物理的に分離することに頼っている。そのような方法はBENCHMARK(商標)シリーズの自動化組織染色装置で幅広く用いられている。
【0011】
パラフィンに埋め込まれている組織に脱パラフィンを受けさせる方法および組成物が特許文献2に記述されている。そのような方法は、組織化学的分析を行う前にパラフィンワックスに埋め込まれている標本を脱蝋用組成物と接触させることで標本に染み込んでいる蝋を溶解させることを伴う。その脱蝋用組成物には、具体的に、芳香炭化水素、テルペンおよびイソパラフィン系炭化水素から成る群から選択されるパラフィン溶解用有機溶媒、極性有機溶媒、および標本と結合している蝋を溶かす界面活性剤が入っている。組成物に更に水を含有させてもよい。そのような組成物の示された利点は、それにはキシレンもトルエンも望ましくない同様なパラフィン用溶媒も必要でない点にある。しかしながら、実際の組成物は全部が極性有機溶媒、典型的には水混和性アルコールを多量に必要とする。
【0012】
毒性もしくは有害な化学品を必要としない改善された組織調製方法、そして組織が染色操作を受け入れるように組織サンプルを処理する時に要する時間および段階が少ない方法が求められているままである。
【0013】
【特許文献1】Ventana Medical Systemsの米国特許第6544798号
【特許文献2】米国特許第6632598号(Zhang他)
【発明の開示】
【0014】
本発明は、パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルからパラフィンが基になった埋め込み用媒体を除去する方法に向けたものであり、この方法は、前記パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルを界面活性剤と非極性有機溶媒と水を含んで成っていて前記界面活性剤が前記水と前記非極性有機溶媒の両方に可溶である脱パラフィン用ミクロエマルジョンと接触させることで、前記パラフィンを前記ミクロエマルジョンに移行させ、そして前記ミクロエマルジョンを除去することを含んで成る。前記界面活性剤が前記非極性有機溶媒と水の両方に個別に溶解するのが好ましい。
【0015】
本発明は、また、パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルを染色の目的で準備する方法にも向けたものであり、この方法は、前記パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルに脱パラフィンを前記パラフィンを非極性有機溶媒に溶解させることで受けさせ、そして前記脱パラフィンを受けた組織の中の前記非極性有機溶媒に界面活性剤と非極性有機溶媒と水を含んで成っていて前記界面活性剤が前記水と前記非極性有機溶媒(また油とも呼ぶ)の両方に可溶であるミクロエマルジョンを用いた交換を受けさせることを含んで成る。界面活性剤が多量に入っている水中油ミクロエマルジョンが好適である。前記界面活性剤が油と水の両方に溶解するのが好適である。
【0016】
本発明は、また、パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルを染色の目的で準備する方法にも向けたものであり、この方法は、前記パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルに脱パラフィンを前記パラフィンを非極性有機溶媒に溶解させることで受けさせ、そして前記脱パラフィンを受けた組織の中の前記非極性有機溶媒に界面活性剤と非極性有機溶媒と水と極性有機共界面活性剤を含んで成っていて前記界面活性剤が前記水と前記非極性有機溶媒の両方に可溶であるミクロエマルジョンを用いた交換を受けさせることを含んで成る。
【0017】
本発明を実施する方法
本発明は異なる3つの態様に向けたものである。1番目の態様は、パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルからパラフィンが基になった埋め込み用媒体を除去する方法であり、この方法は、前記パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルを界面活性剤と非極性有機溶媒と水を含んで成っていて前記界面活性剤が前記水と前記非極性有機溶媒の両方に可溶である脱パラフィン用ミクロエマルジョンと接触させることで、前記パラフィンを前記ミクロエマルジョンに移行させた後、前記ミクロエマルジョンを除去することを含んで成る。前記ミクロエマルジョンの組成は、界面活性剤と非極性有機溶媒と水の3成分組成である。非イオン性界面活性剤が好適である、と言うのは、それを用いると後でイオン性染色液を用いた染色手順が複雑にならないからである。1つの好適な組成には界面活性剤:油:水が4:1:1(重量/重量)の組成が含まれる。
【0018】
2番目の態様は、パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルを染色の目的で準備する方法に向けたものであり、この方法は、前記パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルに脱パラフィンを前記パラフィンを非極性有機溶媒に溶解させることで受けさせた後、前記脱パラフィンを受けた組織の中の前記非極性有機溶媒に界面活性剤と非極性有機溶媒と水を含んで成っていて前記界面活性剤が前記水と前記非極性有機溶媒の両方に可溶であるミクロエマルジョンを用いた交換を受けさせることを含んで成る。1番目の脱パラフィン段階によって、パラフィン埋め込み用媒体が組織から取り除かれることを確保す
る。次の交換段階で、前記非極性有機溶媒をミクロエマルジョン(これは組織を次の段階まで静止状態に保持するに適する)と交換する。次の段階で、前記ミクロエマルジョンを水が基になった液体または油が基になった液体のいずれかと交換することができる。組織技術者は、そのような態様を用いて中間的なアルコール濯ぎを用いる必要のない染色手順を作り出すことができる。このような態様の利点は重要であり、そのような利点には、アルコール廃棄物がないことと出費が低いことが含まれる。また、そのような方法を用いると、溶媒交換を実施する時に従来技術で行われていたアルコール濃度を漸次変える多段階を実施する必要がなくなる。
【0019】
3番目の態様は、パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルを染色の目的で準備する方法に向けたものであり、この方法は、前記パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルに脱パラフィンを前記パラフィンを非極性有機溶媒に溶解させることで受けさせた後、前記脱パラフィンを受けた組織の中の前記非極性有機溶媒に界面活性剤と非極性有機溶媒と水と極性有機共界面活性剤を含んで成っていて前記界面活性剤が前記水と前記非極性有機溶媒の両方に可溶であるミクロエマルジョンを用いた交換を受けさせることを含んで成る。前記2番目の態様との主な差は、脱パラフィン用組成物に追加的に極性有機共界面活性剤、例えば典型的にはアルコール、ジオールまたはグリコールなども含有させる点にある。
【0020】
「ミクロエマルジョン」は一般に油、水、界面活性剤および共界面活性剤で構成されている1−5。HoarおよびSchulmanが言葉「ミクロエマルジョン」を初めて紹介し、彼らは、通常の粗エマルジョンを中鎖のアルコールで漸増することで得られる透明な溶液であるとして定義した。そのようなミクロエマルジョン系では一般に短鎖から中鎖のアルコールが共界面活性剤であると見なされる。そのような系に界面活性剤と場合により共界面活性剤を存在させると界面張力が非常に低くなる。従って、ミクロエマルジョンは熱力学的に安定でありかつ自然発生的に生じ、平均液滴直径は1から100μmである7−9。「水中油ミクロエマルジョン」は、モルを基準にして水の濃度の方が油の濃度より高いミクロエマルジョンである。「脱パラフィン用ミクロエマルジョン」は、溶解用界面活性剤が実質的な量で入っている水中油系を包含する特殊なサブセットである。脱パラフィン用ミクロエマルジョンの油成分はパラフィン溶媒であり、このことは、ミクロエマルジョンがパラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルの中のパラフィンと接触すると前記パラフィンが前記油に溶解することを意味する。そのような油を本明細書では一般に非極性有機溶媒と呼ぶが、これらの用語を全体に渡って互換的に用いる。
【0021】
「交換用組成物」は、界面活性剤:水組成物、界面活性剤:油組成物または界面活性剤:油:水組成物であるが、これらに、場合により、脱パラフィンを受けたスライドに残存する非極性有機溶媒を除去する能力を有する共界面活性剤を含有させてもよい。好適な界面活性剤:水組成物は、非イオン性界面活性剤が水に約20重量%入っている組成物、例えばTomadol 1−73B(Tomah Inc.、Milton、Wisconsin)およびTergitol 15−S−7(SigmaAldrich Inc.、St.Louis、ミズリー州)などである。
【0022】
界面活性剤:油の組成を有する他の交換用組成物は、油を水と交換するか或は水を油と交換する能力を有する。いくつか組成物を本明細書の表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
そのような交換用組成物を用いると、油を主に含有する組織サンプルの中で油を水と交換する方法が可能になり、この方法は、前記組織サンプルを界面活性剤が油に入っていて前記界面活性剤がまた水にも可溶である交換用組成物と接触させることを含んで成る。驚くべきことに、組成物1−5もまた逆の様式、即ち水を主に含有する組織サンプルの中で水を油と交換する様式で用いることができる。
【0025】
生物学的サンプルには、パラフィン、パラフィン/寒天またはパラフィンが基になった他の媒体の中に埋め込まれている組織断片、人工細胞株のいずれも含まれる。パラフィンが基になった埋め込み用媒体は組織技術の通常の技術を持つ技術者に良く知られている。
【0026】
界面活性剤が非極性有機溶媒中で示す溶解度を測定する目的で、約0.5グラムの界面活性剤を約10グラムの非極性溶媒に添加しそしてその混合物を約10から約30秒間混合もしくは渦巻き撹拌することによる「溶解度試験」を実施し、混合物が透明または半透明であることは互いに混和することを示している。界面活性剤が水中で示す溶解度を測定する目的で、約0.5グラムの界面活性剤を約10グラムの水に添加しそしてその混合物を約10から約30秒間混合もしくは渦巻き撹拌することによる「溶解度試験」を実施し、混合物が透明または半透明であることは互いに混和することを示している。その混合物の粘度が高くなる可能性はあるが、目で見た透明性には影響がない。この溶解度試験を意図した脱パラフィン方法の使用温度、典型的には約15Cから約50Cで実施すべきである。このような試験を用いて当該界面活性剤が水と油の両方に互いに溶解することを示す。
【0027】
「非極性有機溶媒」は、沸点が室温である25Cより充分に高く、好適には110C以上、より好適には約140Cから約250Cである、即ち本発明で用いる温度(通常は15から50℃)で液相の状態でありかつ生物学的標本の埋め込みで用いるパラフィンを溶かし得る非極性炭化水素もしくは炭化水素混合物(例えば石油の蒸留で得られる如き)である。そのような非極性有機溶媒は長鎖の直鎖および分枝アルカン炭化水素の複雑な混合物で有り得、それは例えば脂肪酸と高級グリコールのエステルなどを含有する。パラフィンが25Cの当該溶媒中で示す溶解度は典型的に溶媒1リットル当たり少なくとも0.1グラムのパラフィン、好適には溶媒100ml当たり0.1グラム、より好適には溶媒10ml当たり0.1グラムであり、最も好適には、溶液の重量で表して当該溶媒の約50%に相当する量のパラフィンを溶かし得る。そのような非極性有機溶媒は更に極性有機共界面活性剤(本発明の脱パラフィン用ミクロエマルジョンで用いる場合)とも混和する。
【0028】
非極性有機溶媒の例には、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、テルペン、他の油および石油溜分が含まれる。好適な非極性有機溶媒は毒性効果をほとんどか或は全くもたらさな
い。その上、好適な溶媒は、Environmnetal Protection Agencyが有害排気物として分類分けしない溶媒である。その上、パラフィン溶解用の好適な溶媒は、可燃性が最小限であるように、約60Cより高い引火点を示す。好適な溶媒は、更に、毒性も発癌性も腐食性も示さない。イソパラフィン系炭化水素が好適なパラフィン溶解用溶媒の例であるが、その理由は、一部として、毒性、発癌性、腐食性および燃焼性がないことにある10。好適なイソパラフィンは、炭素骨格長が約C10からC15の範囲の分枝脂肪族炭化水素またはこれらの混合物である。1つの好適なイソパラフィン炭化水素混合物は引火点が約74Cの混合物である。別の好適なパラフィン溶解用溶媒は、150Cから約250Cの沸点の範囲で留出するC10からC50の分枝もしくは直鎖炭化水素鎖の混合物であり、これはCH(2n+m)[式中、n=10−50およびm=0−4]の一般式で表される。
【0029】
特に好適な非極性有機溶媒には、NORPAR 15、ミネラルスピリット、またはVentanaのLIQUID COVERSILIP(商標)が含まれる。NORPAR
15は、高(>95%)直鎖パラフィン炭化水素液(ExxonMobil Chemical)であり、これは名目上直鎖C15を含んで成っていて、低揮発性で高沸点である。ミネラルスピリットは短鎖の直鎖および分枝脂肪族炭化水素を含んで成り、別の好適なパラフィン溶解用有機溶媒である。好適なテルペンはリモネンである。使用可能な他のテルペンにはテルピン、テルピネンおよびテルピネオールが含まれる。あまり好適ではないが、そのような溶媒は芳香族炭化水素溶媒、例えばアルキルベンゼン、例えばトルエンなど、またはジアルキルベンゼン、例えばキシレンなどである。トルエンおよびキシレンはあまり好適でない、と言うのは、それらは毒性がありかつ有害廃棄物として等級付けされるからである。その上、以下に考察するように、キシレンまたはトルエンを本発明の態様で用いる場合でも、結果としてアルコール廃棄物が生じることはなく、それの代わりに有害ではない水性洗浄液が生じる。
【0030】
「極性有機共界面活性剤」または「共界面活性剤」は、水と油に個別に溶解する極性有機溶媒を含んで成り、それにはケトンおよび低級アルコール(多価アルコール、ジオールおよびグリコールを包含)および低級エーテルが含まれる。好適なアルコールおよびジオールはC2からC8のアルコールおよびジオールである。エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオールおよびこれらの混合物が最も好適である。好適なケトン溶媒は典型的にC3からC5ケトンである。最も好適なケトン溶媒はアセトンおよびメチルエチルケトンである。好適なエーテルはC2からC6のエーテルである。特に好適な極性有機共界面活性剤は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、アリルアルコール、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオールおよびこれらの混合物から成る群から選択した共界面活性剤である。アセトニトリル、ジメチルスルホキサイドおよびジメチルホルムアミドはあまり好適ではない極性有機共界面活性剤である。その上、そのような極性有機共界面活性剤は極性有機溶媒の混合物であってもよい。そのような共界面活性剤は好適には油と水の両方に溶解する。
【0031】
「界面活性剤」には、水と混和し得る親水性部分と非極性有機溶媒と混和し得る親油部分を含有して成る分子構造を有する化合物が含まれる。本発明の組成物で使用可能な界面活性剤にはポリエチレングリコールが基になった非イオン性界面活性剤が含まれ、それは式:
−X−(CHCHO)−R
[式中、R1は、約C4から約C20の長鎖の直鎖もしくは分枝アルカン炭化水素であり、Xは、エーテル、エステル、カーボネート、ベンジルまたはソルビトールを含んで成る連結基であり、nは約5から約30であり、そしてR2は水素である]
で表される。別法として、R1はポリプロピレンオキサイド、ポリシロキサンまたはフルオロアルカンを含んで成っていてもよい。別法として、R2は約C1から約C20の直鎖もしくは分枝アルカン炭化水素、アルキルカルボン酸、アルキルスルホネート、アルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アルキル第四級アミン、ポリプロピレンオキサイド、ポリシロキサンまたはフルオロアルカンを含んで成っていてもよい。
【0032】
前記式で表される好適な界面活性剤は非極性有機溶媒と水の両方に個別に溶解し得る。好適な非イオン性界面活性剤の例には、直鎖脂肪アルコールのエチレンオキサイド縮合物[例えば商標Tomadol(商標)の下で販売]、分枝脂肪アルコールのエチレンオキサイド縮合物[例えば商標Tomadol(商標)、Tomadyne(商標)、Tergitol(商標)およびMerpol(商標)の下で販売]、および直鎖脂肪酸のエチレンオキサイド縮合物[例えば商標Colamulse(商標)の下で販売]、およびこれらの混合物が含まれる。特に好適な界面活性剤には、Tomadol 1−5、91−6、1−7、23−6.5、91−8、900および1−73B(Tomah Inc.、Milton、Wisconsin)、Tomadyne dL(Tomah Inc.、Milton、Wisconsin)、Tergitol 15−S−7および15−S−9(SigmaAldrich Inc.、St.Louis、ミズリー州)、Merpols SHおよびOJ(SigmaAldrich Inc.、St.Louis、ミズリー州)、ポリエチレングリコール400ラウレート[「Colamulse FE」、Colonial Inc.、South Pittsburg、テネシー州]、およびヘキサエチレングリコールトリデカンエーテル(SigmaAldrich Inc.、St.Louis、ミズリー州)が含まれる。
【0033】
本発明の脱パラフィン用ミクロエマルジョンは界面活性剤と油と水を含有して成っていて、前記界面活性剤の重量パーセントは約5%から約90%であり、前記油の重量パーセントは約5%から約90%でありそして水の重量パーセントは0%から約90%である。好適な態様には組成物A(Tomadol 96−1とNORPAR 15と水がそれぞれ4:1:1の重量比、即ち個々の重量パーセントが67%/16.5%/16.5%)が含まれる。
【0034】
本発明の交換用組成物は界面活性剤と油と水を含有しかつ場合により共界面活性剤を含有して成っていて、前記界面活性剤の重量パーセントは約5%から約95%であり、前記油の重量パーセントは0%から約95%であり、水の重量パーセントは0%から約95%でありそして前記共界面活性剤の重量パーセントは0%から約50%である。好適な態様には組成物B[Tomadyne dL:NORPAR 15:水が5:1:5の重量比(または個々の重量パーセントが45.5%/9%/45.5%)]が含まれる。別の好適な組成物は組成物C[Tomadol 1−73B:NORPAR 15:水:イソプロパノールが4:1:1:0.5の重量比(または個々の重量パーセントが62%/15%/15%/8%)]である。以下の実施例は本明細書で考察する本発明の態様の例示であり、決して添付請求項を限定する目的で示すものでない。
【実施例1】
【0035】
脱パラフィン用組成物Aを用いた1段階脱パラフィン
パラフィンに埋め込まれている数種の組織標本[パラフィンに埋め込まれていてSuperfrost Plus(商標)顕微鏡用スライド(Erie Scientific、Portsmouth、NH)に取り付けられているいろいろなブロックから得た4ミクロンの断片]に脱パラフィンを以下のプロトコルに従って受けさせた。91−6界面活性剤を4グラム秤取り、NORPAR 15を1グラム加え、混合した後、混合を行いながら水を1グラム添加して透明な溶液を生じさせることで組成物Aを生じさせた。次に、各スライドをDISCOVERY(商標)自動化スライド染色装置(Ventana M
edical Systems,Inc.、Tucson、AZ)の上に充填した後、温度を45Cになるようにプログラムした。脱パラフィン用組成物Aと前記組織断片の接触を1.0mlのミクロエマルジョンを手で前記組織とガラス表面全体にそれがスライドの縁から出て行かないでそれらを実質的に覆うように付着させることで実施した。前記スライドとサンプルをある温度で4分間インキュベートした。次に、そのスライドを界面活性剤が入っている緩衝液であるEZ Prep(商標)(PN 950−102、Ventana)で2回洗浄することで前記ミクロエマルジョンを除去した。次に、スライドを水道水で穏やかに洗浄した後、目による検査の準備でガラスカバースリップを取り付けた。そのスライドを部屋の照明にかざして見かけ上残存するパラフィンを目で検査した。加うるに、明視野拡大ばかりでなく偏光(これは特にいくらか残存するパラフィンを可視化するに有効である)も用いて目による検査を実施した。特定のパラフィンブロックサンプルではスライド上に時折残存する油性を観察したが、それは、恐らくは、パラフィン内に少量存在する不純物によるものであろう。そのような残存油性は、45Cの時間を長くするか或はミクロエマルジョンの塗布数を多くすると観察されなくなった。前記組成物を手で1.0mlの体積で付着させる代わりに前記材料を現存するあらゆる自動化分与装置の配管に加えることも可能であると考えている。
【実施例2】
【0036】
交換用組成物Bを用いた2段階脱パラフィン
パラフィンに埋め込まれている数種の組織標本[各々、パラフィンに埋め込まれていてSuperfrost Plusスライドに取り付けられているいろいろなブロックから得た厚みが約4ミクロンの標本]に脱パラフィンを以下のプロトコルに従って受けさせた。前記スライドを最初にDISCOVERY(商標)自動化スライド染色装置(Ventana Medical Systems,Inc.、Tucson、AZ)の上に充填した後、温度を45Cになるようにプログラムした。最初に前記DISCOVERY装置を用いて高純度のLIQUID COVERSLIP(商標)(Ventana)を自動的に付着させた。前記組織断片の上のLIQUID COVERSLIPをある温度で2分間インキュベートすることでパラフィンを溶解させた。次に、その断片を界面活性剤が入っている緩衝液であるDISCOVERY EZ Prep(商標)(Ventana)で濯ぐことでLIQUID COVERSLIPの大部分を濯ぎ流した。Tomadyne dL界面活性剤を5グラム秤取り、NORPAR 15を1グラム加え、混合した後、混合を行いながら水を5グラム添加して透明な溶液を生じさせることで、交換用組成物B(Tomadyne dL:NORPAR 15:水がそれぞれ5:1:5の重量比)を作成した。次に、交換用組成物Bと前記脱パラフィンを受けさせた組織断片の接触を1.0mlのミクロエマルジョンを手で前記組織とガラス表面にそれがスライドの縁から出て行かないでそれらを実質的に覆うように付着させることで実施した。前記スライドとサンプルをある温度で2分間インキュベートした。次に、そのスライドをEZ Prepで2回濯ぐことで前記ミクロエマルジョンを除去した。スライドを残存蝋または油性に関して実施例1に記述したようにして検査した。前記スライドは本質的に全く残留物を示さなかった。
【実施例3】
【0037】
交換用組成物Cを用いた2段階脱パラフィン
パラフィンに埋め込まれている組織標本(Superfrost Plus顕微鏡用スライドに取り付けられている厚みが4ミクロンの標本)に脱パラフィンを以下のプロトコルに従って受けさせた。手で2mlのNORPAR 15を前記組織断片の上に25Cで4分間付着させることでパラフィンを溶解させた。次に、前記スライドを吸収用タオルで乾燥させることで余分なNORPAR 15を濯ぎ落とした。1グラムのNORPAR 15に4グラムのTomadol 1−73Bを溶解させ、混合を行いながら水を1グラム添加して透明な溶液を生じさせそして混合を行いながらイソプロパノールを0.5グラ
ム添加して透明な溶液を生じさせることで、交換用組成物C(Tomadol 1−73B:NORPAR 15:水:イソプロパノールがそれぞれ4:1:1:0.5の重量比)を作成した。次に、交換用組成物Cと前記脱パラフィンを受けさせた組織断片の接触をミクロエマルジョンを手で前記組織にそれがスイドの縁から出て行かないでそれを実質的に覆うように約2ml付着させることで実施した。前記スライドとサンプルを25Cで4分間インキュベートした。次に、そのスライドを25Cの流れる水道水で穏やかに濯ぐことで前記ミクロエマルジョンを除去したが、ゲルの形成は全く観察されなかった。そのスライドとサンプルを空気で乾燥させ、そしてパラフィンワックスが残存油性無しに除去されたことが分かった。
【実施例4】
【0038】
追加的交換用組成物D−I
1グラムのNORPAR 15に4グラムのTergitol 15−S−7を溶解させ、混合を行いながら水を1グラム添加して透明な溶液を生じさせそして混合を行いながらイソプロパノールを0.25グラム添加して透明な溶液を生じさせることで、交換用組成物D(Tergitol 15−S−7:NORPAR 15:水:イソプロパノールがそれぞれ4:1:1:0.25の比率)を作成した。
【0039】
1グラムのNORPAR 15に4グラムのColamulse FEを溶解させ、混合を行いながら水を1グラム添加して透明な溶液を生じさせそして混合を行いながらイソプロパノールを0.25グラム添加して透明な溶液を生じさせることで、交換用組成物E(Colamulse FE:NORPAR 15:水:イソプロパノールがそれぞれ4:1:1:0.25の比率)を作成した。
【0040】
1グラムのNORPAR 15に4グラムのTomadol 900を溶解させ、混合を行いながら水を1グラム添加して透明な溶液を生じさせそして混合を行いながらイソプロパノールを0.5グラム添加して透明な溶液を生じさせることで、交換用組成物F(Tomadol 900:NORPAR 15:水:イソプロパノールがそれぞれ4:1:1:0.5の比率)を作成した。
【0041】
1グラムのNORPAR 15に4グラムのTergitol 15−S−9を溶解させ、混合を行いながら水を1グラム添加して透明な溶液を生じさせそして混合を行いながらイソプロパノールを1.25グラム添加して透明な溶液を生じさせることで、交換用組成物G(Tergitol 15−S−9:NORPAR 15:水:イソプロパノールがそれぞれ4:1:1:1.25の比率)を作成した。
【0042】
1グラムのNORPAR 15に4グラムのTomadol 91−6を溶解させ、混合を行いながら水を1グラム添加して透明な溶液を生じさせそして混合を行いながらイソプロパノールを0.5グラム添加して透明な溶液を生じさせることで、交換用組成物H(Tomadol 91−6:NORPAR 15:水:イソプロパノールがそれぞれ4:1:1:0.5の比率)を作成した。
【0043】
1グラムのNORPAR 15に4グラムのTomadol 23−6を溶解させ、混合を行いながら水を1グラム添加して透明な溶液を生じさせそして混合を行いながらイソプロパノールを1グラム添加して透明な溶液を生じさせることで、交換用組成物I(Tomadol 23−6.5:NORPAR 15:水:イソプロパノールがそれぞれ4:1:1:1の比率)を作成した。
【実施例5】
【0044】
交換用組成物D−Iを用いた2段階脱パラフィン
パラフィンに埋め込まれている組織標本にNORPAR 15に続いて実施例4の交換用組成物DからIを用いた脱パラフィンを実施例3に示したプロトコルを用いて受けさせた。交換用組成物は全部が水道水濯ぎ後にゲル形成を全く示さず、かつ交換用組成物は全部が顕微鏡用スライドからのパラフィンワックスの除去を残存油性無しにもたらすことが分かった。
【実施例6】
【0045】
交換用組成物JおよびKを用いた2段階脱パラフィン
パラフィンに埋め込まれている組織標本(Superfrost Plus顕微鏡用スライドに取り付けられている厚みが4ミクロンの標本)に脱パラフィンを以下のプロトコルに従って受けさせた。前記スライドを最初にDISCOVERY自動化スライド染色装置の上に充填した後、温度を55Cになるようにプログラムした。最初に前記DISCOVERY装置を用いて高純度のLIQUID COVERSLIP(商標)(Ventana)を自動的に付着させた。前記組織断片の上のLIQUID COVERSLIPをある温度で2分間インキュベートすることでパラフィンを溶解させた。次に、その断片をREACTION BUFFER(商標)(Ventana)で濯ぐことでLIQUID
COVERSLIPの大部分を濯ぎ流した。個々の界面活性剤を水に溶解させた後に撹拌を透明になるまで実施することで2種類の交換用組成物J(Tomadol 1−73B:水)およびK(Tergitol 15−S−9:水)[それぞれ界面活性剤:水の重量比が1:4(重量)]を作成した。次に、前記組成物の両方のそれぞれと前記脱パラフィンを受けさせた組織断片の接触を1.0mlの前記界面活性剤:水混合物を付着させることで実施した。前記スライドとサンプルをある温度で2分間インキュベートすることで残存するLIQUID COVERSLIPを除去した。次に、そのスライドをREACTION BUFFERの標準的自動化「DUAL RINSE」で2回濯ぐことで前記界面活性剤:水混合物を除去した。検査した時、残存油も蝋も全く観察されなかった。
【実施例7】
【0046】
追加的交換用組成物L−P
油を水と交換および水を油と交換する組成物の下記の実施例を例として示す。これらの実施例は2方向交換を示し得る、即ちそれらは油を水と交換しかつ水を油と交換する能力を有する。
【0047】
Tomadol 1−73B(4グラム)とNORPAR 15(1グラム)を透明になるまで混合することで交換用組成物Lを調製した。
【0048】
Colamulse FE(4グラム)とNORPAR 15(1グラム)を透明になるまで混合することで交換用組成物Mを調製した。
【0049】
Tomadol 1−5(4グラム)とNORPAR 15(1グラム)を透明になるまで混合することで交換用組成物Nを調製した。
【0050】
Tomadol 91−6(4グラム)とNORPAR 15(1グラム)を透明になるまで混合することで交換用組成物Oを調製した。
【0051】
Tergitol 15−S−7(4グラム)とNORPAR 15(1グラム)を透明になるまで混合することで交換用組成物Pを調製した。
【実施例8】
【0052】
油を水と交換
実施例7の交換用組成物にこれらがスライド上の油を水と交換(アルコール溶液を中間
的に用いることなく)する能力を有するか否かに関する検査を受けさせた。裸の(即ち組織サンプルを含有しない)Superfrost PlusスライドにLIQUID COVERSLIPを約0.5ml付着させることで、それが前記スライドの表面を実質的に覆うようにした。次に、そのスライドを傾けることで余分な油を除去した後、吸収用タオルを用いて乾燥させた。そのスライドに個別に交換用組成物L−Pを約1ml付着させることで、その組成物が縁から出ることなく各スライドの表面を実質的に覆うようにした。そのスライドを25Cで4分間インキュベートした。次に、そのスライドを傾けることで余分な組成物を除去した後、吸収用タオルを用いて乾燥させた。そのスライドを個別に約250mlの水に25Cで4分間浸漬したが、ゲルの生成は全く観察されなかった。そのスライドを取り出し、カバースリップを取り付けた後、40xの偏光顕微鏡で検査した。組成物は全部が油性を全く示さなかった。それとは対照的に、交換用組成物L−Pを用いないで交換を受けさせたスライド、即ちスライドを約0.5mlのLIQUID COVERSLIPで覆い、吸収用タオルを用いて乾燥させ、約250mlの水に25Cで4分間浸漬し、取り出した後、カバースリップを取り付けた場合には、カバースリップとスライドの間に捕捉されている膜層の中に油滴が有意な量で存在することが分かった。
【実施例9】
【0053】
水を油と交換
実施例7の交換用組成物にこれらがスライド上の水を油と交換(アルコール溶液を中間的に用いることなく)する能力を有するか否かに関する検査を受けさせた。裸の(即ち組織サンプルを含有しない)Superfrost Plusスライドに水を約0.5ml付着させることで、それが前記スライドの表面を実質的に覆うようにした。次に、そのスライドを傾けることで余分な水を除去した後、吸収用タオルを用いて乾燥させた。そのスライドに個別に交換用組成物L−Pを約1ml付着させることで、それが縁から出ることなく各スライドの表面を実質的に覆うようにした。そのスライドを25Cで4分間インキュベートした。次に、そのスライドを傾けることで余分な交換用組成物を除去した後、吸収用タオルを用いて乾燥させた。そのスライドを個別に約40mlのLIQUID COVERSLIPに25Cで4分間浸漬したが、ゲルの生成は全く観察されなかったか或はゲルの生成は非常に僅かであった。そのスライドを取り出し、カバースリップを取り付けた後、40xの偏光顕微鏡で検査した。あらゆる組成物に関して、カバースリップとスライドの間に捕捉されている液膜の中に残存する水の量は痕跡量のみであることが分かった。それとは対照的に、交換用組成物L−Pを用いないで交換を受けさせたスライド、即ちスライドを約0.5mlの水で覆い、吸収用タオルを用いて乾燥させ、約40mlのLIQUID COVERSLIPに25Cで4分間浸漬し、取り出した後、カバースリップを取り付けた場合には、カバースリップとスライドの間に捕捉されている膜層の中に水滴が有意な量で存在することが分かった。
【0054】
本明細書に開示する態様にいろいろな修飾を成すことができることは理解されるであろう。従って、この上で行った説明は限定として解釈されるべきでなく、単に、好適な態様の例示であるとして解釈されるべきである。本分野の技術者は本明細書に添付する請求項の範囲および精神の範囲内の他の修飾形を思いつくであろう。引用する特許および文献は全部引用することによって全体が明らかに本明細書に組み入れられる。
【0055】
【表2】

【0056】
産業用途
開示する発明は、病理学者または他の医学専門家が疑われる病気状態を測定しようとする時に病気にかかっていると疑われる患者から採取した組織のさらなる顕微鏡分析および評価を行う目的でそれを調製しかつ染色しようとする時に産業的に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルからパラフィンベースの埋め込み用媒体を除去する方法であって、
前記パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルを界面活性剤と非極性有機溶媒と水を含んで成っていて前記界面活性剤が前記水と前記非極性有機溶媒の両方に可溶である脱パラフィン用ミクロエマルジョンと接触させることで、前記パラフィンを前記ミクロエマルジョンに移行させ、そして
前記ミクロエマルジョンを除去する、
ことを含んで成る方法。
【請求項2】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記界面活性剤をエトキシル化アルキルアルコールおよびエトキシル化アルキルカルボン酸から本質的に成る群から選択する請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ミクロエマルジョンの除去がそれを濯ぎ流すことを含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項5】
下記の構造式:
−X−(CHCHO)−R
[式中、R1は、約C5から約C30の長鎖の直鎖もしくは分枝アルカン炭化水素であり、Xは、エーテル、エステル、カーボネート、ベンジルまたはソルビトールを含んで成る連結基であり、nは約5から約20であり、そしてR2は水素である]
で表される請求項1記載の界面活性剤。
【請求項6】
前記界面活性剤をTomadol 1−5、Tomadol 91−6、Tomadol 1−7、Tomadol 23−6.5、Tomadol 91−8、Tomadol 1−73B、Tomadol 900;ポリエチレングリコール400ラウレート;Tergitol 15−S−7、Tergitol 15−S−9およびヘキサエチレングリコールトリデカンエーテルから成る群から選択する請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記非極性有機溶媒をテルペン、アルキルベンゼン、芳香族溶媒、直鎖パラフィン油および分枝パラフィン油から成る群から選択する請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記非極性有機溶媒がLIQUID COVERSLIPを含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記非極性有機溶媒がNORPAR 15を含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記脱パラフィン用ミクロエマルジョンが有する水:界面活性剤が重量で表して約0:1から約10:1の範囲である請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記脱パラフィン用ミクロエマルジョンが有する水:非極性有機溶媒が重量で表して約0:1から約10:1の範囲である請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記脱パラフィン用ミクロエマルジョンが界面活性剤を約5%から約90%の重量パーセント、油を約5%から約90%の重量パーセントおよび水を0%から約90%の重量パーセントで含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項13】
パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルを染色のために準備する方法であって、
前記パラフィンを非極性有機溶媒で溶解させることにより、前記パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルを脱パラフィンし、そして
前記脱パラフィンを受けた組織の中の前記非極性有機溶媒と、界面活性剤と水を含んで成っていて前記界面活性剤が前記水と前記非極性有機溶媒の両方に可溶である交換用組成物とを交換する、
ことを含んで成る方法。
【請求項14】
前記交換用組成物がTomadol 1−73B:水およびTergitol 15−S−7:水をそれぞれ1:4の重量比で含んで成る請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記脱パラフィン段階に場合により前記サンプルを加熱することも含めてもよい請求項13記載の方法。
【請求項16】
パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルを染色の目的で準備する方法であって、
前記パラフィンを非極性有機溶媒で溶解させることにより、前記パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルを脱パラフィンし、そして
前記脱パラフィンを受けた組織の中の前記非極性有機溶媒と、界面活性剤と非極性有機溶媒と水を含んで成っていて前記界面活性剤が前記水と前記非極性有機溶媒の両方に可溶であるミクロエマルジョンとを交換する、
ことを含んで成る方法。
【請求項17】
パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルを染色のために準備する方法であって、
前記パラフィンを非極性有機溶媒で溶解させることにより、前記パラフィンに埋め込まれている生物学的サンプルを脱パラフィンし、そして
前記脱パラフィンを受けた組織の中の前記非極性有機溶媒と、界面活性剤と非極性有機溶媒と水と極性有機共界面活性剤を含んで成っていて前記界面活性剤が前記水と前記非極性有機溶媒の両方に可溶であるミクロエマルジョンとを交換する、
ことを含んで成る方法。
【請求項18】
前記極性有機共界面活性剤をC−1からC−5アルコール、C−3からC−5ケトン、C−2からC−6エーテルおよびC−2からC−8ジオールから成る群から選択する請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記極性有機共界面活性剤がメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、t−ブタノール、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールおよびオクタンジオールから成る群から選択した溶媒もしくは溶媒混合物を含んで成る請求項17記載の方法。
【請求項20】
非極性有機溶媒を含有する脱パラフィン組織サンプルを後の染色のために準備する方法であって、前記組織を、界面活性剤と非極性有機溶媒と水を含んで成っていて前記界面活性剤が前記水と前記非極性有機溶媒の両方に可溶であるミクロエマルジョンと、前記非極性有機溶媒が前記ミクロエマルジョンに置き換わるに充分な時間接触させることを含んで成る方法。
【請求項21】
水を主に含有する組織サンプルの中で水を油と交換する方法であって、前記組織サンプルを界面活性剤が油に入っていて前記界面活性剤がまた水にも可溶である交換用組成物と
接触させることを含んで成る方法。
【請求項22】
油を主に含有する組織サンプルの中で油を水と交換する方法であって、前記組織サンプルを界面活性剤が油に入っていて前記界面活性剤がまた水にも可溶である交換用組成物と接触させることを含んで成る方法。
【請求項23】
油を主に含有する組織サンプルの中で油を水と交換する方法であって、前記組織サンプルを界面活性剤が水に入っていて前記界面活性剤がまた油にも可溶である交換用組成物と接触させることを含んで成る方法。
【請求項24】
水を主に含有する組織サンプルの中で水を油と交換する方法であって、前記組織サンプルを界面活性剤が水に入っていて前記界面活性剤がまた油にも可溶である交換用組成物と接触させることを含んで成る方法。

【公表番号】特表2008−524584(P2008−524584A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546680(P2007−546680)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/041853
【国際公開番号】WO2006/065442
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(599075070)ベンタナ・メデイカル・システムズ・インコーポレーテツド (31)
【Fターム(参考)】