説明

ミクロゲル含有熱硬化性プラスチック組成物

【解決手段】本発明は、架橋ミクロゲルを含有する熱硬化性プラスチック組成物、その製造方法、及び成形品またはコーティングの製造におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ミクロゲルを含む熱硬化性プラスチック組成物、その製造方法、及び成形品またはコーティングを製造するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロゲルをエラストマーの特性をコントロールするために使用することは公知である(例えば、EP−A−405216、DE−A 4220563、GB−PS 1078400、DE 19701487、DE 19701489、DE 19701488、DE 19834804、DE 19834803、DE 19834802、DE 19929347、DE 19939865、DE 19942620、DE 19942614、DE 10021070、DE 10038488、DE 10039749、DE 10052287、DE 10056311及びDE 10061174)。EP−A−405216、DE−A−4220563及びGB−PS−1078400は、CR、BR及びNBRミクロゲルの二重結合含有ゴムとの混合使用を特許請求している。DE 19701489は、その後改質されるミクロゲルの二重結合含有ゴム(例えば、NR、SBR及びBR)との混合使用を開示している。
【0003】
熱硬化性プラスチック組成物の製造のためにミクロゲルを使用することはいずれの文献にも教示されていない。熱硬化性プラスチックは、不溶性で不融性の三次元構造を有する密に架橋されたポリマーである。熱硬化性プラスチックの公知例にはフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、RIMポリウレタン系等が含まれる。熱硬化性プラスチックは一般的には少なくとも2つの反応性でかなり高い官能性成分を混合することにより製造されている。反応物質の官能価は通常≧3である。成分を十分に混合したら、熱硬化性成分の混合物を金型に入れ、混合物を硬化させる。
【0004】
しかしながら、これらの樹脂系は多くの場合脆く、よって衝撃損傷を受けやすい。このタイプの樹脂系の衝撃強度を向上させるために多くの方法が研究されてきた。それらの研究の結果、多くの新規エポキシド樹脂モノマーが売られるようになった。樹脂の強度を向上させる他の試みは、樹脂系に可溶性熱可塑性プラスチックまたはエラストマーを配合することである。
【0005】
US−A−4,656,208は、反応性ポリエーテルスルホンオリゴマーを芳香族ジアミン硬化剤と反応させて複雑な多相ドメインが形成されている多相系を開示している。
【0006】
DE 3782589 T2(EP 0259100 B1)は、ゴム相を含むガラス質不連続相を有する熱硬化性プラスチックを開示している。熱硬化性プラスチック組成物の形成中に液体ゴムを使用することによりゴム相は熱硬化性プラスチック組成物の製造中にその場で形成される。
【0007】
US 5089560は、1〜25重量%の架橋カルボキシル化ゴムプラスチックが添加されている硬化性マトリックス樹脂組成物を開示している。ゴムプラスチックの最小粒子サイズは1〜75μmであり、これは1,000〜75,000nmに相当する。より小さなゴム粒子の使用は教示されていない。
【0008】
また、US 5532296(DE 69232851 T2に対応)は、予備成形粒子の形態の官能化軽度架橋エラストマーを全系の約1〜約10重量%含有する耐衝撃性熱硬化性樹脂系を開示している。粒子サイズは2〜75μmであり、これは2,000〜75,000nmに相当する。より小さなゴム粒子の使用は教示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第405216号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第4220563号明細書
【特許文献3】英国特許第1078400号明細書
【特許文献4】独国特許発明第19701487号明細書
【特許文献5】独国特許発明第19701489号明細書
【特許文献6】独国特許発明第19701488号明細書
【特許文献7】独国特許発明第19834804号明細書
【特許文献8】独国特許発明第19834803号明細書
【特許文献9】独国特許発明第19834802号明細書
【特許文献10】独国特許発明第19929347号明細書
【特許文献11】独国特許発明第19939865号明細書
【特許文献12】独国特許発明第19942620号明細書
【特許文献13】独国特許発明第19942614号明細書
【特許文献14】独国特許発明第10021070号明細書
【特許文献15】独国特許発明第10038488号明細書
【特許文献16】独国特許発明第10039749号明細書
【特許文献17】独国特許発明第10052287号明細書
【特許文献18】独国特許発明第10056311号明細書
【特許文献19】独国特許発明第10061174号明細書
【特許文献20】米国特許第4,656,208号明細書
【特許文献21】独国特許発明第3782589号明細書
【特許文献22】米国特許第5089560号明細書
【特許文献23】米国特許第5532296号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は特に、ショアー硬度を維持しながら熱硬化性プラスチック組成物の機械的特性、例えば衝撃強度及び破断点伸びを改善することであった。本発明の更なる目的は、分散エラストマー相が特に均質に分布している熱硬化性プラスチック組成物を再現よく提供することであった。本発明者らは、特に微細なミクロゲルを使用すると熱硬化性マトリックス中の機械的応力下で亀裂を生じさせる恐れがある巨視的な不均質性が防止され、少ない廃棄物で特に均質な成分が形成されることを知見した。
【0011】
更に、エラストマー相の現場形成に関連する問題、例えば乏しい再現性を避けるために所与の熱硬化性プラスチックのエラストマー相を前もって製造できるミクロゲル含有熱硬化性プラスチック組成物の製造方法も提供された。
【0012】
本発明者らは、特に熱硬化性プラスチック製造の前駆体中に別に製造した特に微細なゴムミクロゲルを細かく分散させることにより上記した目的が達成され得ることを立証し得た。表面上に特殊な官能基を有するゴム様ミクロゲルの使用が特に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明は、少なくとも1つの熱硬化性プラスチック材料(A)及び少なくとも1つの5〜500nmの平均一次(primary)粒子直径を有する架橋ミクロゲル(B)を含有する熱硬化性プラスチック組成物を提供する。
【0014】
ミクロゲルまたはミクロゲル相(B)
本発明の組成物中に使用されるミクロゲル(B)は、好ましくは架橋されたホモポリマーまたはランダムコポリマーをベースとするミクロゲルである。従って、本発明に従って好ましく使用されるミクロゲルは架橋ホモポリマーまたは架橋ランダムコポリマーである。用語「ホモポリマー」及び「ランダムコポリマー」は当業者に公知であり、例えばVollmert,「ポリマー化学(Polymer Chemistry)」,Springer(1973年)発行に記載されている。
【0015】
本発明の組成物中に使用される架橋ミクロゲル(B)は、好ましくは高エネルギー放射線により架橋されていないミクロゲルである。この場合、用語「高エネルギー放射線」は好適には0.1μm未満の波長を有する電磁波放射線を指す。
【0016】
高エネルギー放射線により完全に均質に架橋されたミクロゲルの使用は不利である。なぜならば、工業的規模で安全性の問題が持ち上がるからである。更に、突然の応力の場合、高エネルギー放射線により完全に均質に架橋されているミクロゲルを用いて製造した組成物中ではマトリックスと分散相間で引裂き作用が生じ、その結果機械的特性、膨潤挙動及び応力腐食割れ等が損なわれる。
【0017】
本発明の組成物中に含まれるミクロゲル(B)の一次粒子は、好ましくはほぼ球形の形状寸法を有する。適当な物理的方法(電子顕微鏡)により個別に検出され得、凝集相中に分散しているミクロゲル粒子をDIN 53206:1992−08(例えば、Rompp Lexikon,Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag(1998年)発行参照)に従って一次粒子と呼ぶ。「ほぼ球形の形状寸法」は、電子顕微鏡を用いた薄片観察でミクロゲルの分散一次粒子が実質的に円形部を形成しているように見え得る。従って、本発明の組成物は、現場方法により生成される通常不規則な形を有する分散ゴム相とは実質的に異なる。本発明の分散ミクロゲル粒子は、ミクロゲルゴム相を製造するために別の方法を用いる結果として、熱硬化性樹脂の製造用出発物質への分散中に実質的に変化することなく実質的に均一の球形形状を保持している。以下に記載する分散方法により、ミクロゲル及びその粒子直径分布の実質的な変化が熱硬化性プラスチック組成物の形成中に起こらないのでミクロゲルラテックス中のミクロゲルの微細粒子分布が熱硬化性プラスチック組成物にほぼ移される。
【0018】
本発明の組成物中に含まれるミクロゲル(B)の一次粒子において、各一次粒子の直径の偏差は好ましくは250%未満、より好ましくは200%未満、更により好ましくは100%未満、更により好ましくは80%未満、更により好ましくは50%未満である。この偏差は、
[(d1−d2)/d2]×100
(ここで、d1及びd2は一次粒子の任意部分の2つの任意直径であり、d1は>d2である)
として定義される。
【0019】
好ましくは、ミクロゲルの一次粒子の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%は250%未満、より好ましくは200%未満、更により好ましくは100%未満、更により好ましくは80%未満、更により好ましくは50%未満の直径偏差を示す。この直径偏差は
[(d1−d2)/d2]×100
(ここで、d1及びd2は一次粒子の任意部分の2つの任意直径であり、d1は>d2である)
として定義される。
【0020】
各粒子の直径の上記偏差は以下の方法により測定される。まず、実施例に記載するように、本発明の組成物の薄片の透過電子顕微鏡写真を作成する。その後、1,000〜2,000倍に拡大した透過電子顕微鏡写真を作成する。833.7×828.8nmの区域において10個のミクロゲル一次粒子の最大直径及び最小直径を手動でd1及びd2として測定する。全部で10個のミクロゲル一次粒子の偏差がそれぞれ250%未満、より好ましくは200%未満、更により好ましくは100%未満、更により好ましくは80%未満、更により好ましくは50%未満ならば、ミクロゲル一次粒子は上記した偏差を示す。
【0021】
組成物中のミクロゲルの濃度が目に見えるミクロゲル一次粒子がかなり重層されているほど十分高いならば、試験サンプルを適当に希釈することにより評価が容易となり得る。
【0022】
本発明の組成物において、ミクロゲル(B)の一次粒子は好ましくは5〜500nm、より好ましくは20〜400nm、更により好ましくは20〜300nm、更により好ましくは20〜250nm、更により好ましくは20〜99nm、更により好ましくは40〜80nmの平均粒子直径を示す。
【0023】
ミクロゲルの平均一次粒子直径は本発明の熱硬化性プラスチック組成物の製造中に基本的に変化しないので、熱硬化性プラスチック組成物中のミクロゲルの平均一次粒子直径は実際熱硬化性プラスチック材料(A)の出発物質またはその溶液中にミクロゲルを含む分散液中の平均一次粒子サイズに相当する。粒子直径は、超遠心分離することによりDIN 53206に従って前記分散液について測定し得る。平均一次粒子直径が確実に本発明の架橋熱硬化性プラスチック組成物中の規定範囲内にあるように、超遠心分離により測定した平均粒子直径が規定範囲内にある出発物質中のミクロゲルの分散液が特に使用される。このようにして得た本発明の組成物の電子顕微鏡写真は一次粒子直径及び実質的にその凝集物のほぼすべてが上記した範囲にあることを示している。
【0024】
更に、熱硬化性プラスチックの出発物質中に乾燥ミクロゲルを分散させる本発明の方法により、一次粒子段階を除き粒子が通常脱凝集される。一方、このことは、本発明の熱硬化性プラスチック組成物では、平均一次粒子サイズは好ましくは凝集物を含めたすべての粒子の平均粒子サイズ(本発明ではサイズ=直径)に実質的に相当することを意味する。本発明によれば、本発明の熱硬化性プラスチック組成物中のすべての粒子の平均直径は好ましくは5〜500nm、より好ましくは20〜400nm、更により好ましくは20〜300nm、更により好ましくは20〜250nm、更により好ましくは20〜99nm、更により好ましくは40〜80nmである。
【0025】
一方、本発明の熱硬化性プラスチック組成物中のすべての粒子の平均粒子直径は凝集物を実質的に含まないミクロゲル製造ラテックス中のすべての粒子の平均直径に実質的に相当する。熱硬化性プラスチックの製造中の硬化または架橋の結果として本発明の熱硬化性プラスチック組成物中のすべての粒子の平均直径は殆ど変化しないままであるので、慣用の方法、特に下記するように熱硬化性プラスチック材料(A)の出発物質中にミクロゲルを含む分散液を超遠心分離することにより測定され得、または熱硬化性プラスチックの製造中に十分に再分散されると仮定して、ミクロゲル製造ラテックスについて測定され得、熱硬化性プラスチック材料(A)とほぼ同等とみなされ得る。
【0026】
本発明の組成物において、使用するミクロゲル(B)は好適には23℃でトルエンに不溶なフラクション(ゲル含量)を少なくとも約70重量%、より好ましくは少なくとも約80重量%、更により好ましくは少なくとも約90重量%含む。トルエンに不溶なフラクションは23℃でトルエン中で測定する。ミクロゲル250mgを振とうしながら23℃でトルエン25ml中に24時間浸漬する。200,000rpmで遠心した後、不溶性フラクションを分離し、乾燥する。ゲル含量は乾燥残渣と秤量部分の商から求め、パーセンテージで示す。
【0027】
本発明の組成物において、使用するミクロゲル(B)は好適には23℃でトルエン中で80未満、より好ましくは60未満、更により好ましくは40未満の膨潤指数を示す。よって、ミクロゲルの膨潤指数(Qi)は特に好ましくは1−15と1−10の間であり得る。膨潤指数は、(200,000rpmで遠心した後)23℃でトルエン中に24時間浸漬した溶媒含有ミクロゲルの重量と乾燥ミクロゲルの重量から計算する。
【0028】
Qi=ミクロゲルの湿潤重量/ミクロゲルの乾燥重量
膨潤指数を測定するために、ミクロゲル250mgを振とうしながらトルエン25ml中に24時間浸漬する。ゲルを遠心分離し、湿潤時に秤量し、その後重量が一定になるまで70℃で乾燥した後再び秤量する。
【0029】
本発明の組成物において、使用するミクロゲル(B)は好適には−100℃〜+120℃、より好ましくは−100℃〜+50℃、更により好ましくは−80℃〜+20℃のガラス転移温度Tgを示す。
【0030】
本発明の組成物において、使用するミクロゲル(B)は好適には5℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上のガラス転移温度範囲を示す。完全に均質に放射線架橋されているミクロゲルとは対照的に、前記したガラス転移温度範囲を示すミクロゲルは通常完全に均質に架橋されていない。その結果、マトリックス相から分散相への弾性率の変化は直接的でない。従って、突然の応力の場合、マトリックスと分散相間に引裂き作用はなく、機械的特性、膨潤挙動及び応力腐食割れ等は有利に影響される。
【0031】
ミクロゲルのガラス転移温度(Tg)及びガラス転移温度範囲(ΔTg)は示差走査熱量計(DSC)により測定する。Tg及びΔTgを測定するために2回の冷却/加熱サイクルを実施する。第2加熱サイクルでTg及びΔTgを測定する。これらの要素を測定するために、特定のミクロゲル10〜12mgをPerkin−Elmer DSCサンプル容器(一般的なアルミニウム皿)に置く。第1のDSCサイクルは、まずサンプルを液体窒素で−100℃まで冷却し、その後20K/分の速度で+150℃まで加熱することにより実施する。第2DSCサイクルは、サンプル温度が+150℃に達したらサンプルを直ちに冷却することにより開始する。冷却は約320K/分の速度で実施する。第1サイクルのように、第2加熱サイクルではサンプルを再び+150℃まで加熱する。第2サイクルにおける加熱速度も20K/分である。Tg及びΔTgは第2加熱プロセスのDSC曲線でグラフに示す。この目的のために、3本の直線をDSC曲線上にプロットする。第1の直線はTg以下のDSC曲線の曲線部分上にプロットし、第2の直線はTgを通って延び、反転ポイントがある曲線の枝上にプロットし、第3の直線はTg上のDSC曲線の枝上にプロットする。このようにして2個の交差点がある3本の直線が得られる。各交差点は特徴的な温度により特徴づけられる。ガラス転移温度Tgは上記した2つの温度の平均値として得られ、ガラス転移温度範囲ΔTgは2つの温度間の差から得られる。
【0032】
本発明の組成物中に含まれ、高エネルギー放射線により架橋されていないホモポリマー及びランダムコポリマーをベースとするミクロゲル(B)はそれ自体公知の方法で製造され得る(例えば、EP−A−405216、EP−A−854171、DE−A 4220563、GB−PS 1078400、DE 197 01 489.5、DE 197 01 488.7、DE 198 34 804.5、DE 198 34 803.7、DE 198 34 802.9、DE 199 29 347.3、DE 199 39 865.8、DE 199 42 620.1、DE 199 42 614.7、DE 100 21 070.8、DE 100 38 488.9、DE 100 39 749.2、DE 100 52 287.4、DE 100 56 311.2及びDE 100 61 174.5参照)。特許(出願)明細書EP−A 405 216、DE−A 4220563及びGB−PS 1078400は、CR、BR及びNBRミクロゲルの二重結合含有ゴムとの混合使用を特許請求している。DE 197 01 489.5は、NR、SBR及びBRのような二重結合を含有するゴムを含む混合物中でのその後改質されるミクロゲルの使用を開示している。
【0033】
架橋ゴムミクロゲルの作成及び特徴は、US−A 5395891(BRミクロゲル)、US 6127488(SBRミクロゲル)及びDE 19701487(NBRミクロゲル)にも開示されている。これらの文献に開示されているミクロゲルは特定の官能基で改質されていない。特定の官能基を含むゴムミクロゲルは、特にUS 6184296、US 19919459及びDE 10038488に開示されている。これらの文献では、官能基化ミクロゲルは複数のプロセスステップで作成される。第1ステップでは、基本的ゴムラテックスを乳化重合により生成する。或いは、市販のゴムラテックスを出発物質として使用してもよい。その後のプロセスステップにおいて、好ましくはゴムラテックスを有機過酸化物で架橋することにより所望の架橋度(ゲル含量及び膨潤指数により特徴づけられる)を調節する。過酸化ジクミルとの架橋反応の実施はDE 10035493に開示されている。架橋反応後官能基化を実施する。US 6184296では架橋ゴム粒子を硫黄または硫黄含有化合物により改質し、DE 1 991 9459及びDE 10038488では架橋ゴムラテックスを官能モノマー(例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート及びヒドロキシブチルアクリレート)を用いてグラフト化する。
【0034】
上記特許明細書(出願明細書)に開示されている官能基化ミクロゲルの多段階合成と対照的に、本発明に従って使用されるミクロゲルは架橋及び官能基化が乳化重合(直接架橋されたミクロゲル)中に起こる1段階方法で作成することが好ましい。
【0035】
本発明によれば、用語「ミクロゲル」は好適には、特に下記ゴムを架橋することにより得られるゴム粒子を指す:
BR:ポリブタジエン、
ABR:ブタジエン/アクリル酸/C1−4アルキルエステルコポリマー、
IR:ポリイソプレン、
SBR:1〜90重量%、好ましくは5〜50重量%のスチレン含量を有するランダムスチレン/ブタジエンコポリマー、
X−SBR:カルボキシル化スチレン/ブタジエンコポリマー、
FKM:フッ素ゴム、
ACM:アクリレートゴム、
NBR:5〜100重量%、好ましくは10〜50重量%のアクリロニトリル含量を有するポリブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、
X−NBR:カルボキシル化ニトリルゴム、
CR:ポリクロロプレン、
IIR:0.5〜10重量%のイソプレン含量を有するイソブチレン/イソプレンコポリマー、
BIIR:0.1〜10重量%の臭素含量を有する臭素化イソブチレン/イソプレンコポリマー、
CIIR:0.1〜10重量%の塩素含量を有する塩素化イソブチレン/イソプレンコポリマー、
HNBR:部分及び完全水素化ニトリルゴム、
EPDM:エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー、
EAM:エチレン/アクリレートコポリマー、
EVM:エチレン/酢酸ビニルコポリマー、
CO及びECO:エピクロロヒドリンゴム、
Q:シリコーンゴム、
AU:ポリエステルウレタンポリマー、
EU:ポリエーテルウレタンポリマー、
ENR:エポキシ化天然ゴムまたはその混合物。
【0036】
非架橋ミクロゲル出発物質は好適には以下の方法:
1.乳化重合;
2.天然ゴムラテックスのような天然ラテックスも勿論使用し得る;
により作成される。
【0037】
本発明の熱硬化性プラスチック組成物においては、好ましくは使用されるミクロゲル(B)は乳化重合及び架橋により得られ得るものである。
【0038】
本発明に従って使用されるミクロゲルの乳化重合による製造においては、ラジカル重合可能なモノマー、例えばブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、イソプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、2−クロロブタジエン、2,3−ジクロロブタジエン、二重結合含有カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等)、二重結合含有ヒドロキシ化合物(例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)、ステアリルメタクリレート、アミン官能基化(メタ)アクリレート、アクロレイン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アリルウレア及びN−アリルチオウレア、第2級アミノ−(メタ)アクリル酸エステル、2−tert−ブチルアミノエチルメタクリレート及び2−tert−ブチルアミノエチルメタクリルアミド等が使用される。ゴムゲルを乳化重合中に、例えば架橋多官能性化合物との共重合により、または以下に記載するようなその後の架橋により直接架橋し得る。乳化重合中の直接架橋が好ましい。好ましい多官能性コポリマーは少なくとも2個、好ましくは2〜4個の共重合可能なC=C二重結合を含む化合物、例えばジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2−ポリブタジエン、N,N’−m−フェニレンマレイミド、2,4−トルイレンビス(マレイミド)及び/またはトリアリルトリメリテートである。多価(好ましくは、2価〜3価)C2−10アルコール、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、2〜20個、好ましくは2〜8個のオキシエチレン単位を含むポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、脂肪族ジオール、及びポリオール及びマレイン酸、フマル酸及び/またはイタコン酸の不飽和ポリエステルを含むソルビトールのアクリート及びメタクリレートも考えられる。
【0039】
乳化重合中のゴムミクロゲルへの架橋は、高変換が達成されるまで重合を続けることにより、モノマーフィードプロセスにおいては高内部変換を伴う重合により実施され得る。調節剤の非存在下で乳化重合を実施することも可能である。
【0040】
乳化重合後未架橋または軽度に架橋したミクロゲル出発物質を架橋するためには、乳化重合中に得たラテックスを使用することがベストである。天然ゴムラテックスもこのようにして架橋され得る。
【0041】
適当な架橋化学物質の例には有機ペルオキシド、例えばジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ビス−(t−ブチルペルオキシ−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキシン−3,2,5−ジヒドロペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス−(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、t−ブチルパーベンゾエート;及び有機アゾ化合物、例えばアゾ−ビス−イソブチロニトリル及びアゾ−ビス−シクロヘキサンニトリル;ジメルカプト及びポリメルカプト化合物、例えばジメルカプトエタン、1,6−ジメルカプトヘキサン、1,3,5−トリメルカプトリアジン;及びメルカプト末端ポリスルフィドゴム、例えばビス−クロロエチルホルマールとナトリウムポリスルフィドのメルカプト末端反応生成物が含まれる。
【0042】
勿論、後架橋を実施するための最適温度は架橋剤の反応性に依存する。後架橋は室温〜約180℃の温度で、場合により高圧下で実施され得る(Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,第4版,14/2巻,848頁参照)。ペルオキシドが特に好ましい架橋剤である。
【0043】
C=C二重結合含有ゴムも、US 5,302,696またはUS 5,442,009に開示されているようにC=C二重結合をヒドラジンまたは他の水素化剤(例えば、有機金属水素化物複合体)を用いて部分または場合により完全に水素化すると同時に分散液またはエマルションの形態のミクロゲルに架橋され得る。
【0044】
後硬化の前、その間またはその後に、粒子を場合により凝集により拡大してもよい。
【0045】
本発明に従って使用される作成方法において、不完全に均質に架橋され、上記した利点を示し得るミクロゲルが常に得られる。
【0046】
実質的に非反応基を特に表面に含まない非改質ミクロゲルも官能基を特に表面に含む改質ミクロゲルも本発明の組成物を製造するためのミクロゲルとして使用し得る。改質ミクロゲルは、すでに架橋されているミクロゲルをC=C二重結合に対して反応性である化学物質と化学反応させることにより作成され得る。前記した反応性化学物質は、特に極性基(例えば、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトリル等の基)及び硫黄含有基(例えば、メルカプト、ジチオカルバメート、ポリスルフィド、キサントゲネート、チオベンゾチアゾール及び/またはジチオリン酸基)及び/または不飽和ジカルボン酸基によりミクロゲルに化学的に結合し得る化合物である。これは、N,N’−m−フェニレンジアミンにも適用される。ミクロゲル改質の目的は、製造中の良好な分散性及び良好な結合をも得るためにマトリックスとのミクロゲル相容性を改善することである。
【0047】
特に好ましい改質方法には、ミクロゲルの官能性モノマーを用いるグラフト化及び低分子量物質との反応が含まれる。
【0048】
ミクロゲルの官能性モノマーを用いるグラフト化のための出発物質は好適には水性ミクロゲル分散液であり、この分散液をラジカル乳化重合の条件下で極性モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチル−(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル−(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル−(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、アクロレイン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アリル−ウレア及びN−アリル−チオアレア;第2級アミン−(メタ)アクリル酸エステル、例えば2−tert−ブチルアミノエチルメタクリレート及び2−tert−ブチルアミノエチルメタクリルアミドと反応させる。
【0049】
こうして、コア/シェル構造を有するミクロゲルが得られ、このシェルはマトリックスと高い相容性を示す。改質ステップで使用するモノマーを非改質ミクロゲルに対してできるだけ定量的にグラフトすることが望ましい。好適には、ミクロゲルを完全に架橋する前に官能性モノマーを添加する。
【0050】
ミクロゲルを低分子量物質で表面改質するためには、特に硫黄元素、硫化水素及び/またはアルキルポリメルカプタン(例えば、1,2−ジメルカプトエタンまたは1,6−ジメルカプトヘキサン);ジアリル及びジアルキルアリールジチオカルバメート、ジメチルジチオカルバメート及び/またはジベンジルジチオカルバメートのアルカリ金属塩;アルキル及びアリールキサントゲネート(例えば、カリウムエチルキサントゲネート及びナトリウムイソプロピルキサントゲネート);ジブチルジチオリン酸、ジオクチルジチオリン酸及びドデシルジチオリン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩との反応物が適当である。上記した反応は有利には硫黄の存在下で実施され得、このとき硫黄が導入され、ポリスルフィド結合が形成される。この化合物を添加するために、ラジカル開始剤、例えば有機または無機ペルオキシド及び/またはアゾ開始剤を添加し得る。
【0051】
二重結合含有ミクロゲルを例えばオゾン分解により、塩素、臭素及びヨウ素を用いるハロゲン化により改質することも可能である。改質ミクロゲルの更なる反応、例えばエポキシ化ミクロゲルからのヒドロキシ基改質ミクロゲルの生成もミクロゲルの化学的改質として理解される。
【0052】
好ましい実施態様において、ミクロゲルは特に表面でヒドロキシ基、エポキシ、アミン、酸無水物、イソシアネートまたは不飽和基(例えば、C=C)により改質する。ミクロゲルのヒドロキシ基含量は、DIN 53240に従って無水酢酸と反応させ、遊離した酢酸をKOHで滴定することによりmg KOH/g−ポリマーの単位のヒドロキシ価として測定する。ミクロゲルのヒドロキシ価は、好ましくは0.1〜100mg KOH/g−ポリマー、より好ましくは0.5〜50mg KOH/g−ポリマーである。
【0053】
改質剤の使用量はその効率及び個々の要件により決定され、使用するゴムミクロゲルの全量に基づいて0.05〜30重量%、特に好ましくは0.5〜10重量%の範囲である。
【0054】
改質反応は0〜180℃、好ましくは20〜95℃の温度で、場合により1〜30バールの圧力下で実施し得る。改質はそのまままたは分散液の形態のゴムミクロゲルに対し実施し得る。後者の場合、有機溶媒または水が反応媒体として使用され得る。特に好ましくは、改質は架橋ゴムの水性分散液中で実施する。
【0055】
改質ミクロゲル、特にヒドロキシ、エポキシ、アミン、酸無水物、イソシアヌレート改質したミクロゲルまたは不飽和基(例えば、C=C)で改質したミクロゲルの使用が好ましい。
【0056】
作成されたミクロゲルの平均直径は、例えばすべてのミクロゲル粒子の少なくとも75%が0.095〜0.105μmの範囲である粒度分布が達成されるように高精度で、例えば0.1μm(100nm)±0.01μm(10nm)で調節され得る。ミクロゲルの他の平均直径、特に5〜500nmの範囲の直径が得られ、等しい精度で使用される(すべての粒子の少なくとも75%が(超遠心分離により測定した)積算粒子サイズ分布曲線のピークの±10%の範囲内にある。)。
【0057】
こうすると、本発明の組成物中に分散させるミクロゲルの形状寸法をほぼ“ピンポイント”精度で調節することができ、よって本発明の組成物及び例えば該組成物から製造される熱硬化性材料の諸特性を調節することができる。
【0058】
この方法で製造したミクロゲルを、例えば蒸発、凝固、別のラテックスポリマーとの共凝固、凍結凝固(US−PS 2187146参照)または噴霧乾燥により後処理してもよい。噴霧乾燥による後処理の場合、CaCOまたはケイ酸のような市販の流動促進剤を添加してもよい。
【0059】
熱硬化性プラスチック材料(A)
本発明の熱硬化性プラスチック組成物は特に、使用温度範囲(約−150〜+200℃)で10MPa以上の剪断弾性率を示すものである。この剪断弾性率はDIN ISO 3721−1:1996に従って測定する。
【0060】
本発明の組成物では、熱硬化性プラスチック材料(A):ミクロゲル(B)の重量比は好適には0.5:99.5〜99.5:0.5、好ましくは1:99〜99:1、より好ましくは10:90〜90:10、特に好ましくは20:80〜80:20である。
【0061】
本発明の熱硬化性プラスチック組成物中の熱硬化性プラスチック材料(A)は、好ましくは熱硬化性縮合ポリマー、熱硬化性付加ポリマー及び熱硬化性重合材料からなる群から選択される。熱硬化性縮合ポリマーは好ましくはフェノール樹脂、アミノ樹脂、フラン樹脂及びポリイミドからなる群から選択され、熱硬化性付加ポリマーは好ましくはエポキシド樹脂及びポリウレタンからなる群から選択され、熱硬化性重合樹脂は好ましくはアリル化合物、不飽和ポリエステル、ビニルまたはアクリルエステルからなる群から選択される。好ましくは、熱硬化性プラスチック材料(A)は
ジアリルフタレート樹脂(PDAP)、
エポキシド樹脂(EP)、
ウレア−ホルムアルデヒド樹脂(UF)、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(MF)やメラミン−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(MPF)のようなアミノプラスチック樹脂、
メラミン−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(MP)、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(PF)、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂(CF)、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂(RF)やキシレノール−ホルムアルデヒド樹脂(XF)のようなフェノール樹脂、
フルフリルアルコール−ホルムアルデヒド樹脂(FF)、
不飽和ポリエステル樹脂(UP)、
ポリウレタン樹脂(PU)、
反応射出成形ポリウレタン樹脂(RIM−PU)、
フラン樹脂、
ビニルエステル樹脂(VE,VU)、
ポリエステル−メラミン樹脂、及び
ジアリルフタレート(PDAP)またはジアリルイソフタレート(PDAIP)樹脂の混合物
からなる群から選択される。
【0062】
RIMポリウレタン、アミノプラスチック樹脂及びフェノール樹脂、エポキシ樹脂及びUP樹脂として公知のものが特に好ましい。
【0063】
このタイプの熱硬化性プラスチック材料それ自体は公知である。このプラスチック材料の製造に関しては、例えばSaechtling,Kunststoff Taschenbuch,28版,4.17章;Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第5版,A26巻,665頁以降,「熱硬化性樹脂(Thermosets)」(この場合、特に製造方法);上記Ullmann,9巻,547頁,「エポキシ樹脂(Epoxy Resins)」;Rompp Lexikon Chemie,10版H−L,熱硬化性材料に関する項目及びこの項目で引用されている文献;Elias,Makomolekule,2巻,Technologie,第5版,15.6章,「Duroplaste」を参照し得、上記した従来技術、特にエポキシ樹脂系に関する従来技術、例えばUS 5089560、US 5532296、EP 0259100、EP 0525418等を参照し得る。
【0064】
本発明の熱硬化性プラスチック組成物は、好ましくは1つ以上のプラスチック材料添加剤を含有する。好ましくは、前記添加剤は充填剤、強化材、顔料、UV吸収剤、難燃剤、脱泡剤、脱気剤、湿潤剤、分散剤、繊維、織物、触媒、増粘剤、沈降防止剤、防縮剤、チキソトロープ剤、離型剤、流量調整剤、つや消し剤、腐食防止剤、スリップ剤及び殺生剤からなる群から選択される。好ましくは、前記プラスチック材料添加剤は無機及び/または有機充填剤(例えば、おが屑、セルロース、コットンステープル、レーヨンかせ、鉱物繊維、鉱物粉末、雲母、長繊維、短繊維、ガラスマット、炭素繊維)、可塑剤、無機及び/または有機顔料、難燃剤、農薬(例えば、シロアリ用)、げっ歯類等からの保護手段及び他の慣用のプラスチック材料添加剤から選択される。繊維状充填剤が特に好ましい。前記添加剤は本発明の組成物中に該組成物の全量に基づいて最高約40重量%、好ましくは最高20重量%の量含有させ得る。
【0065】
本発明は、熱可塑性プラスチック組成物を製造するための架橋ミクロゲル(B)の使用にも関する。
【0066】
本発明の熱可塑性プラスチック組成物は、特に
a)熱硬化性プラスチック材料(A)を形成し得、場合によりプラスチック材料添加剤(有利には分散前に添加する)を含有する1つ以上の出発物質またはその溶液中にミクロゲル(B)を分散させるステップ、
b)場合により、更なる成分を添加するステップ、
c)得られた分散液を硬化するステップ
を含む方法により製造される。
【0067】
特に好ましくは、ステップc)は成形と同時に実施する。
【0068】
この目的で、熱硬化性プラスチック材料(A)を形成し得る上記出発物質は好ましくはモノマー、オリゴマー(プレポリマー)または架橋剤から選択される。
【0069】
熱硬化性プラスチック材料(A)を形成し得る好ましい出発物質は、
ポリオール及びその混合物、
脂肪族ポリオール及びその混合物、
脂肪族ポリエーテルポリオール及びその混合物、
脂肪族ポリエステルポリオール及びその混合物、
芳香族ポリエステルポリオール及びその混合物、
ポリエーテルポリエステルポリオール及びその混合物、
不飽和ポリエステル及びその混合物、
芳香族アルコールまたはその混合物、
スチレン、
ポリイソシアネート、
イソシアネート樹脂、
エポキシド樹脂、
フェノール樹脂、
フラン樹脂、
カプロラクタム、
ジシクロペンタジエン、
脂肪族ポリアミン、
ポリアミドアミン、
芳香族ポリアミン、
(メタ)アクリレート、
ポリアリル化合物、
ビニルエステル、
状態Aの熱硬化性縮合ポリマー、及び
上記出発物質の誘導体または溶液
からなる群から選択される。
【0070】
脂肪族ポリオール及びその混合物、芳香族アルコール、スチレン及び不飽和ポリエステルが特に好ましい。
【0071】
特に、上記した更なる成分は熱硬化性プラスチック材料を形成するための更なる(第2)成分、特に硬化剤、例えばポリイソシアネート、ポリアミン、ホルムアルデヒドドナー、スチレン等である。これらの成分は繊維状充填剤を含めた上記したプラスチック材料添加剤でもあり得る。
【0072】
硬化は、熱硬化性プラスチック材料に対する一般的な条件下で実施する。
【0073】
本発明の方法の特に好ましい実施態様では、ミクロゲル(B)及び熱硬化性プラスチック材料を形成し得る出発物質を一緒にホモジナイザー、ボールミル、ビードミル、ロールミル、三本ローラー、一軸または多軸スクリュー押出機、ニーダー及び/または高速攪拌機において処理する。前記出発物質は場合によりプラスチック材料添加剤を含有し、この添加剤を分散前に添加することが有利である。
【0074】
好ましい実施態様では、ミクロゲル(B)及び熱硬化性プラスチック材料を形成し得る出発物質をホモジナイザー、ビードミル、三本ローラー及び/または高速攪拌機により分散させる。ビードミルの欠点は、粘度範囲が比較的限られている(通常、希薄な組成物)こと、クリーニングが複雑なこと、使用し得る組成物の製品交換が高価なこと、及びボール及び粉砕器具が摩耗することである。
【0075】
特に好ましくは、本発明の組成物はホモジナイザーまたは三本ローラーにより均質化される。三本ローラーの欠点は、粘度範囲が比較的限られている(通常、非常に希薄な組成物)こと、処理量が少ないこと、及び操作が開放モードであること(操作中の保護が不十分)である。
【0076】
非常に好ましくは、本発明の組成物を形成し得る出発物質(前駆物質)はホモジナイザーにより均質化される。ホモジナイザーにより、低粘度組成物及び高粘度組成物が高い処理量で処理され得る(高い融通性)。製品交換は比較的迅速で簡単である。
【0077】
熱可塑性プラスチック材料を形成し得る出発物質中にミクロゲル(B)をホモジナイザーの均質化バルブで分散させる(図1参照)。
【0078】
本発明で使用される方法では、凝集物を集合体及び/または一次粒子に分解する。凝集物は物理的にばらばらの単位であり、その分散中一次粒子のサイズは変化しないままである。
【0079】
均質化しようとする生成物を低速で均質化バルブに入れ、均質化ギャップにおいて高速に加速させる。主に乱流及びキャビテーションの結果としてギャップの後ろで分散が生ずる(William D.Pandolfe,Peder Baekgaard,Marketing Bulletin of the APV Homogeniser Group−「高圧ホモジナイザー:方法、生成物及び適用(High−pressure homogenisers:processes,product and applications)」。
【0080】
ホモジナイザーに導入する際の本発明に従って使用される予備段階のミクロゲル分散液の温度は好適には−40〜140℃、好ましくは20〜80℃である。
【0081】
均質化しようとする組成物は、好適にはデバイス中で20〜4000バール、好ましくは100〜2000バール、非常に好ましくは300〜1500バールの圧力で均質化する。サイクル回数は所望する分散液の品質により決定され、1〜40回、好ましくは1〜20回、より好ましくは1〜10回、更により好ましくは1〜4回の範囲で変更され得る。
【0082】
従って、本発明により製造された熱可塑性プラスチック組成物は特に微細な粒子分布を有する。これは、特にホモジナイザーでミクロゲル含有前駆体を処理した結果として達成され、液体前駆体の各種粘度及び必要な温度に関する方法の融通性の点及び分散液の品質の点で特に有利である。元のミクロゲルラテックス中へのミクロゲルの粒子分布を含めて熱硬化性プラスチック材料を形成し得る出発物質中にミクロゲル(B)が微細に分布されると、従来技術では不可能であったが熱硬化性プラスチック材料(A)中にミクロゲルが特に効果的に分布される。
【0083】
こうして、熱硬化性プラスチック組成物の機械的特性が驚くほど改善される。
【0084】
有利には、場合により硬化剤を添加して生ずる硬化の結果として熱硬化性材料が形成されるまで得られた熱硬化性材料前駆体のミクロゲルペーストは保存され得る。微細に分布されると、明らかな沈降はない。
【0085】
本発明はまた、上記した方法により得られ得る熱硬化性プラスチック組成物に関する。
【0086】
本発明は更に、本発明の熱硬化性プラスチック組成物の成形品として、コーティングまたは結合材としての使用に関する。本発明は、ミクロゲル充填プレプレグとして公知のものの製造をも含む。本発明は更に、本発明の熱硬化性プラスチック組成物の電子部品(例えば、電子デバイス用ハウジングとして)及び建築部材(例えば、建築材料として)における使用に関する。
【0087】
本発明は更に、熱硬化性プラスチック材料(A)を形成し得る1つ以上の出発物質(通常1分子あたり≧3の平均官能価を有する反応物質を含有する)またはその溶液における好ましくは5〜500nmの平均一次粒子直径を有するミクロゲルのレオロジー添加剤として、特に増粘剤及び/またはチキソトロープ剤としての使用、並びに1つ以上の5〜500nmの平均一次粒子直径を有する架橋ミクロゲル(B)及び1つ以上の熱硬化性プラスチック材料(A)を形成し得る出発物質(この出発物質の少なくとも20重量%は≧3の平均官能価を有する架橋性成分からなる)を含む組成物にも関する。
【0088】
下記実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例の開示内容に限定されない。
【実施例】
【0089】
ミクロゲル作成及び特徴付けの例
ミクロゲル作成の例:
以下の実施例で使用したミクロゲルOBR 980、OBR 1009、OBR 1135、OBR 1155、OBR 1209、OBR 1212、OBR 1225、OBR 1236、OBR 1283、OBR 1320D、Micromorph 4P(OBR 1209)の作成を以下に説明する。
【0090】
OBR 980、OBR 1009及びOBR 1135と呼ばれるミクロゲルは、下表に示す量のジクミルペルオキシド(DCP)を架橋のために使用してDE 10035493 A1及びWO 02/08328の教示に従って作成した。
【0091】
【表1】

【0092】
ミクロゲルOBR 1209、1212、1225、1236、1283及びOBR 1320 Dは乳化重合により作成した。モノマーとして、ブタジエン、スチレン、トリメチロールプロパン、トリメタクリレート(TMPTMA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)及びメタクリル酸(MAS)を使用した。ミクロゲルの作成に使用したモノマー及び基本的組成物成分を下表に要約する。
【0093】
【表2】

【0094】
ミクロゲルを作成するために、表に示す量の乳化剤Mersolat K30/95及びTCDを水に溶解し、40L容量のオートクレーブに入れた。オートクレーブを3回排気し、窒素を導入した。次いで、表に特定したモノマーを添加した。モノマーを撹拌しながら30℃で乳化剤溶液中に乳化させた。次いで、水(171g)、エチレンジアミンテトラ酢酸(Merck−Schuchardt)(1.71g)、硫酸鉄(II)7水和物(1.37g)、ナトリウムホルムアルデヒド−スルホキシレート水和物(Merck−Schuchardt)(3.51g)及びリン酸トリナトリウム12水和物(5.24g)を添加した。
【0095】
Mersolat K30/95(10.53g)を含む水(250g)中に溶解した50% p−メンタンヒドロペルオキシド(Akzo−Degussa製Trigonox NT 50)(5.8g)を添加することにより、反応を開始した(この目的で使用した水の量は表中に示す水の総量中に含まれる。)。
【0096】
2.5時間反応させた後、反応温度を40℃に上げた。更に1時間反応させた後、同一量の開始剤溶液(NT 50/水/Mersolat K30/95)を後活性化した。この場合、重合温度を50℃に上げた。重合変換率が>95%に達したら、水(500g)に溶解したジエチルヒドロキシルアミン(23.5g)を含む水溶液を添加することにより重合を停止した(この目的で使用した水の量は表中に示す水の総量中に含まれる。)。
【0097】
次いで、水蒸気でストリッピングすることにより、未反応のモノマーをラテックスを除去した。
【0098】
ラテックスを濾過し、US 6399706の実施例2と同様に安定剤を添加し、混合物を凝固し、乾燥させた。
【0099】
ゲルを、超遠心分離によりラテックス状態で(直径及び比表面積)、トルエン中の溶解度については固体生成物として(OH価及びCOOH価)、DSC(ガラス転移温度/TG及びTg範囲)により特徴づけた。
【0100】
ゲルを、ラテックス状態及び一部を超遠心分離によりポリオール中に再分散させた状態で(直径d及び比表面積Ospez)、トルエン中の溶解度については固体生成物として(ゲル含量、膨潤指数(QI))、酸定量により(OH価及びCOOH価)、DSC(ガラス転移温度/TG及びTg範囲)により特徴づけた。
【0101】
使用するミクロゲルの分析データを下表に要約する。
【0102】
【表3】

【0103】
表中、
spez=比表面積(m/g)、
50(d)はDIN 53206に従って質量分布の中央または中心値として定義され、その値の上及び下に全粒子サイズの半分がそれぞれ位置している。ラテックスの粒子直径は超遠心分離により測定する(W.Scholtan,H.Lange,”Bestimmung der Teilchengrossenverteilung von Latices mit der Ultrazentrifuge”,Kolloid−Zeitshrift und Zeitschrift fur Polymer,250:752(1972);H.G.Mulle,「分散液の粒子サイズ分布の分析遠心による自動測定(Automated determination of particle-size distributions of dispersions by analytical ultracentrifugation)」,Colloid Polym.Sol.,267:1113(1989);H.G.Muller,「分析超遠心分離における干渉オプティックによる非常に広い粒子サイズ分布の測定(Determination of very broad particle size distributions via interference optics in the analytical ultracentrifuge)」,Progr.Colloid Polym.Sci.,127:9(2004))。
【0104】
ラテックス及び本発明の組成物中の一次粒子についての直径d50は実施例1に示すように実際同一である。なぜならば、ミクロゲル粒子のサイズが本発明の組成物の製造中に実際変わらないままであるからである。これは、周囲媒体中のミクロゲルが膨潤しないことを意味する。
【0105】
ゲル転移温度:
Tg及びガラス転移温度範囲を測定するためにPerkin−Elmer DSC−2デバイスを使用した。
【0106】
膨潤指数:
膨潤指数は次のように測定した。膨潤指数は23℃でトルエン中に24時間浸漬させた溶媒含有ミクロゲルの重量及び乾燥ミクロゲルの重量から算出した。
【0107】
膨潤指数=ミクロゲルの湿重量/ミクロゲルの乾燥重量。
【0108】
膨潤指数を測定するために、ミクロゲル250mgを振とうしながらトルエン25ml中に24時間浸漬させる。20,000rpmで遠心した後、トルエン中に浸漬させた(湿潤)ゲルを湿ったまま秤量し、その後一定の重量に達するまで70℃で乾燥し、再び秤量する。
【0109】
OH価(ヒドロキシ価):
OH価(ヒドロキシ価)はDIN 53240に従って測定し、物質1gを無水酢酸でアセチル化したときに遊離する酢酸の量に等しいKOHの量(mg)に相当する。
【0110】
酸価:
酸価はDIN 53402に従って測定し、物質1gを中和するのに必要なKOHの量に相当する。
【0111】
ゲル含量:
ゲル含量は23℃でトルエンに不溶性のフラクションに相当する。次のようにして測定する。
【0112】
ゲル含量は乾燥残渣と秤量部分の商から求め、重量%で示す。
【0113】
ガラス転移温度:
ガラス転移温度は上記したように測定した。
【0114】
ゲル転移温度範囲:
ガラス転移温度範囲は上記したように測定した。
【0115】
熱硬化性樹脂製造のための前駆物質におけるミクロゲルペースト作成の例:
OBR 1236及びBayflex TP PU 33IF20をベースとするミクロゲルの作成
Bayflex TP PU 33IF20中のヒドロキシゲル改質SBRゲル(OBR 1236)
下記実施例は、主に約40nmの平均粒子直径を有する一次粒子を含む組成物がホモジナイザー中でSBRをベースとするヒドロキシ基改質ミクロゲルを用いて900〜1,000バールを負荷することにより製造され得ることを立証する。
【0116】
下表はミクロゲルペーストの組成物を示す:
1.Bayflex TP PU 33IF20 85,000、
2.OBR 1236 15,000、
合計 100,000。
【0117】
Bayflex TP PU 33IF20は、Bayer AG製の(ポリエーテルベースの)生成物/ポリオールであり、ジエチルメチルベンゼンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン及びアルキルアミノポリ(オキシアルキレン)オールを含有している。HST9317及びHST9354は使用したポリエーテルの種類の点で異なる。
【0118】
OBR 1236は、RheinChemie Rheinau GmbH製の架橋表面改質SBRベースのゴムゲルである。
【0119】
本発明の組成物を製造するために、Bayflex TP PU 33IF20を用意し、高速撹拌機で撹拌しながらOBR 1236を添加した。
【0120】
混合物を少なくとも1日放置した後、更にホモジナイザーを用いて処理した。
【0121】
組成物を周囲温度でホモジナイザーに導入し、バッチ毎にホモジナイザー中を900〜1,000バールで4回通した。第1サイクル中ミクロゲルペーストを約40℃に加熱し、第2サイクル中は約70℃に加熱した。次いで、ミクロゲルペーストを周囲温度に冷却し、第3及び第4サイクルにおいて分散させた。
【0122】
下記実施例に記載の組成物も同様に製造した。ただし、サイクルの回数または均質化圧力の違いは各実施例に示す。
【0123】
実施例1:Bayflex TP PU 33IF20及びOBRをベースとするミクロゲルペーストの超遠心分離及び光散乱による特徴づけ
1. 微分及び積分質量分布の超遠心分離方法による測定
上記で得た組成物を各種方法により特徴づけた。こうして、本発明方法の可能性が例として立証される。
【0124】
図2はOBR 1236ラテックスの粒子サイズ分布を示す。図3はBayflex TP PU 33IF20中に再分散させたOBR 1236の粒子サイズ分布を示す。
【0125】
図2及び図3は、固体OBR 1236をBayflex TP PU 33IF20中に再分散させることができたことを明らかに示している。OBR 1236ラテックス及び再分散OBR 1236の平均粒子直径はほんの僅かしか異ならない。Bayflex TP PU 33IF20中のOBR 1236の直径が通常より小さいのは水よりも高いBayflex TP PU 33IF20の圧縮性のせいである(図3)。いずれの材料も主に一次粒子を含む。
【0126】
2. 平均流体的直径の光散乱による測定
このサンプルについて平均流体的直径をALV相関器により光散乱させることにより調べた。
【0127】
サンプル 直径
OBR 1236(4:15%)1) 89.0nm
OBR 1236(4:15%)2) 85.7nm
1) 前濾過なしの希釈サンプル、
2) 1.0μm注入前面フィルターを用いて前濾過した希釈サンプル。
【0128】
超遠心分離測定の違いは、大きな粒子が動的光散乱において不釣り合いに大きいという事実による。
【0129】
更に、超遠心分離方法は非常に正確な分布を与え、動的光散乱は分布を与えず、むしろ平均流動的直径を与える。
【0130】
実施例2:ミクロゲル含有Bayflex TP PU 33IF20ペーストのレオロジー
表2中の組成物は製造例に記載した組成物に相当する。ミクロゲルの量の違いを示した。
【0131】
ポリエーテルベースのポリオールであるBaydur TP PU 1498 mod−HST9516はBayer AG製の製品であり、アルキルアミノポリ(オキシアルキレン)オール、ジエチルメチルベンゼンジアミン及びアルキルアミノカルボン酸アミドを含む。20℃でDIN 53019に従う粘度は約2,000Pasである(安全性情報シート(093398/05))。
【0132】
ポリエーテルポリオールであるDesmophen TP PU 3218はBayer AG製の製品である。25℃でDesmophen TP PU 3218のDIN 53019に従う粘度は約2,000Pasである(安全情報シート(048252/09))。
【0133】
20℃でBayflex TP PU 33IF20のDIN 53019に従う粘度は約2,000Pasである(0922459/09)。
【0134】
【表4】

【0135】
表2は、OBR 1236がBayflex TP PU 33IF20に対して顕著な増粘効果を有することを示す。OBR 1236によりTP PU 33IF20をチキソトロピーとする。
【0136】
分散液の品質が良くなると、粘度は低下する。
【0137】
表3中の混合物はBayflex TP PU 33IF20及びOBR 1230Dからなる。ミクロゲルのそれぞれの量及び分散条件を記載する。
【0138】
【表5】

【0139】
OBR 1230Dは、Bayflex TP PU 33IF20,HST9317中よりもBayflex TP PU 33IF20,HST9354中で高い粘度を有する。各種の液体マトリックスにおけるミクロゲルの顕著な増粘効果は60℃であっても明白である。
【0140】
表4中の混合物はDesmophen TP PU 3218及びOBR 1236からなる。ミクロゲルのそれぞれの量及び分散条件を記載する。以下から明らかなように、適当なミクロゲル濃度でミクロゲルペーストは三本ローラーを用いて作成され得る。
【0141】
【表6】

【0142】
OBR 1236もDesmophen TP PU 3218に対して顕著な増粘硬化を有する。OBR 1236によりDesmophen TP PU 3218は高チキソトロピーとなる。このようにミクロゲルにより適当な組成物が驚くほど顕著に増粘することから、前記ミクロゲルのレオロジー添加剤としての有用性が示される。
【0143】
実施例3:RC−PUR KE 9686及びRC−DUR 302系を用いるミクロゲル含有熱硬化性プラスチック組成物の製造
本実施例は、例示したペーストのレオロジー特性、ミクロゲル含有ペーストを硬化剤成分と機械的に反応させて熱硬化性材料を形成する方法及び得られた熱硬化性材料について測定した機械的特性を示す。
【0144】
RC−PUR KE 9686はポリウレタン製造用にRheinchemie Rheinau GmbHから市販されている製品(A成分)であり、関連B成分の脂肪族イソシアネートであるRC−DUR 0302もRheinchemie Rheinau GmbHから市販されている。20℃でのRC−PUR KE 9686の粘度は2,600Pasである(技術情報シートRC−PUR KE 9686:バージョン1/2000)。
【0145】
a) ミクロゲル含有RC−PUR KE 9686ペーストのレオロジー
表5は、ミクロゲル含有ペースト(OBR 1209、OBR 1212、OBR 1225)の異なる剪断率及び20℃での粘度を示す。
【0146】
【表7】

【0147】
表5中の値から、ミクロゲルOBR 1209、OBR 1212及び特にOBR 1225は異なる剪断率でミクロゲル濃度が高くなると粘度を増加させることが明らかである。
【0148】
これらのミクロゲルによる粘度の増加は上記ミクロゲルの場合より小さく、これらのミクロゲルは例えば加工性も良好でありながら機械的特性に著しい影響を与えるためにミクロゲル濃度が高いことが望ましい用途に対して特に有用である。
【0149】
b) ミクロゲル含有熱硬化性材料前駆体ペーストとRC−DUR 302の混合
RC−DUR 302(イソシアネート(イソ))を2−K定圧装置を用いてミクロゲル含有ポリオールペーストに添加し、混合物をブレンドし、金型に注いだ。
【0150】
Tペーストは含水量を低下させるために使用したUOPの製品である。
【0151】
【表8】

【0152】
c) 標本の作成
引張試験用標本を打ち抜き、ショアー硬度測定用標本をb)のように注型した成形品から切り出す。標本はなめらかな縁を有し、切欠きもエアポットもあってはならない。
【0153】
d) ショアー硬度
表7は、ショアーD硬度測定の結果を示す。
【0154】
【表9】

【0155】
RC−PUE KE 9686は最高14重量%のミクロゲルを添加しても生じたPUのショアー硬度に対して有意な影響がないことを示し得る。
【0156】
測定値はすべて同一範囲(80〜83ショアー硬度D)にある。すなわち、破断点伸びは以下に示すようにミクロゲルの添加により著しく増加するが、高いショアー硬度は維持することができる(表8)。
【0157】
e) RC−PUR KE 9686及びRC−DUR 302系に対する引張試験
表8は、標本について測定した引張試験の結果を示す。これらの標本はb)及びc)に記載したように作成した。
【0158】
【表10】

【0159】
表8から、ミクロゲル非含有RC−PUR KE 9686と比較して破断点伸びεbreakはミクロゲルの添加の結果として上昇することが明らかである。
【0160】
f) ミクロゲル含有RC−PUR KE 9686及びRC−DUR 302系のシャルピー衝撃強度
DIN 53453に従う試験片を標本として使用した。
【0161】
【表11】

【0162】
表9から、(PUをベースとする)ミクロゲル(OBR 1209、OBR 1212)をたった5重量%添加することにより衝撃強度が有意に上昇することは明らかである。これはOBR 1225では不可能であった。
【0163】
実施例4:ミクロゲル含有Epilox希釈剤P13−26及びEpilox硬化剤IPDを含む熱硬化性プラスチック組成物の製造
本実施例は、ミクロゲル非含有及びミクロゲル含有エポキシド樹脂ペーストを硬化剤成分と反応させて熱硬化性材料を形成する方法及び得られた熱硬化性材料についての機械的特性の測定を記載する。
【0164】
シクロヘキサンジメタノールをベースとするジグリシジルエーテルであるEpilox希釈剤P13−26はLeuna−Harze GmbHから市販されているエポキシド樹脂(EP)製造用製品であり、Epilox硬化剤IPDもLeuna−Harze GmbHから市販されている脂環式ポリアミンである。
【0165】
Disperbyk 2070(分散剤)及びByk A 530(脱気剤)はByr−Chemie GmbHから市販されている。
【0166】
OBR 980はRheinchemie Rheinau GmbH/Lanxessからの実験室生成物である。これについては製造実施例に記載されている。
【0167】
ミクロゲル非含有及びミクロゲル含有エポキシド樹脂ペーストを等モル混合物で硬化剤成分(Epilox硬化剤IPD)と反応させて、熱硬化性材料を形成した。注ぎは手動で実施した。
【0168】
ミクロゲル非含有EP混合物及び20% OBR 980含有EP混合物のショアーD硬度を下表10に示す。
【0169】
【表12】

【0170】
20重量%のOBR 980を含む材料はミクロゲル非含有材料に比して低い硬度を有している。引張試験と同様に、このことからEP材料中のミクロゲルネットワークが示唆される(表11)。
【0171】
【表13】

【0172】
20重量%のOBR 980で破断点伸びの著しい上昇が観察される。破断点伸びはミクロゲル非含有EPと比較して500%以上上昇した。
【0173】
実施例5:各種のポリオール−、ポリイソシアネート−またはエポキシ樹脂をベースとするミクロゲルペーストのレオロジー特性に関する特徴付け
表12は、ミクロゲル含有ペースト(OBR 1009、OBR 1155、RFL 403A)の異なる剪断率及び20℃での粘度を示す。
【0174】
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を主成分とする製品であるDesmodur PA09はBayer Materis Scienceから市販されている。DIN 53019に従う粘度は約500mPasである(安全情報シート045598/14)。反応的に希釈したエポキシ樹脂であるEpilox T19−36/1000はLeuna−Harze GmbHから市販されている。DIN 53015に従う粘度は1150mPasである(情報シートT19−36,2000年12月)。ヘキサンジオールジグリシジルエーテルであるEpilox P 13−20はLeuna−Harze GmbHから市販されている。25℃で、DIN 53015に従う粘度は200mPasである(情報シートP13−20,2001年3月)。
【0175】
ミクロゲル含有前駆物質を特定圧力下でホモジナイドー中に分散させた。
【0176】
【表14】

【0177】
表12中の値から、レオロジーはミクロゲルの添加によりアインシュタインの粘度式(M.Mooney,「球状粒子の濃縮懸濁液の粘度(The viscosity of a concentrated suspension of spherical particles)」,J.Colloid.Sci.,6:162(1951))から予想される以上に非常に著しく影響されることが明らかである。
【0178】
ミクロゲルはポリイソシアネート及びエポキシド樹脂中で高い増粘効果をも有することを示し得る。これはレオロジー添加剤として適している。
【0179】
驚くことに、Epilox P 13−20に60重量%ほどのRFL 403Aを配合することができた。高剪断率で、5s−1の剪断率νで297,000mPasの粘度を有するこの固体ペーストはたった4,2000mPas(ν=1000s−1)の粘度を示す。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】ホモジナイザーバルブの操作モードを示す。
【図2】OBR 1236ラテックスの粒子サイズ分布を示す。
【図3】Bayflex TP PU 33IF20中に再分散させたOBR 1236の粒子サイズ分布を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの熱硬化性プラスチック材料(A)及び少なくとも1つの5から500nmの平均一次粒子直径を有する架橋ミクロゲル(B)を含有する熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの熱硬化性プラスチック材料(A)及び少なくとも1つの高エネルギー放射線により架橋されていないホモポリマーまたはランダムコポリマーをベースとするミクロゲル(B)を含有する熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項3】
ミクロゲル(B)の一次粒子がほぼ球形の形状寸法を有する請求項1または2に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項4】
[(d1−d2)/d2]×100
(ここで、d1及びd2は一次粒子の任意部分の2つの任意直径であり、d1は>d2である。)
として定義されるミクロゲル(B)の各一次粒子の直径の偏差が250%未満である請求項1から3のいずれか1項に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項5】
ミクロゲル(B)が23℃でのトルエン不溶分を少なくとも約70重量%含む請求項1から4のいずれか1項に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項6】
ミクロゲル(B)が23℃でトルエン中で80未満の膨潤指数を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項7】
ミクロゲル(B)が−100℃から+120℃のガラス転移温度を示す請求項1から6のいずれか1項に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項8】
ミクロゲル(B)が約5℃以上のガラス転移温度範囲を有する請求項1から7のいずれか1項に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項9】
ミクロゲル(B)が乳化重合により得られ得る請求項1から8のいずれか1項に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項10】
−150℃から+200℃の温度範囲で10MPa以上の剪断弾性率を示す請求項1から9のいずれか1項に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項11】
熱硬化性プラスチック材料(A)/ミクロゲル(B)の重量比が0.5:99.5から99.5:0.5である請求項1から10のいずれか1項に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項12】
熱硬化性プラスチック材料(A)/ミクロゲル(B)の重量比が10:90から90:10、特に20:80から80:20である請求項1から11のいずれか1項に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項13】
ミクロゲル(B)が官能基を含む請求項1から13のいずれか1項に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項14】
官能基がヒドロキシ、エポキシ、アミン、酸無水物、イソシアネートまたは不飽和基である請求項13に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項15】
熱硬化性プラスチック材料(A)が熱硬化性縮合ポリマー、熱硬化性付加ポリマー及び熱硬化性重合樹脂からなる群から選択される請求項1から14のいずれか1項に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項16】
熱硬化性縮合ポリマーがフェノール樹脂、アミノ樹脂、フラン樹脂及びポリイミドからなる群から選択され、熱硬化性付加ポリマーがエポキシド樹脂及びポリウレタンからなる群から選択され、熱硬化性重合樹脂がアリル化合物、不飽和ポリエステル、ビニルまたはアクリルエステルからなる群から選択される請求項15に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項17】
熱硬化性プラスチック材料(A)が
ジアリルフタレート樹脂(PDAP)、
エポキシド樹脂(EP)、
ウレア−ホルムアルデヒド樹脂(UF)やメラミン−ホルムアルデヒド樹脂(MF)のようなアミノプラスチック樹脂、
メラミン−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(MP)、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(PF)、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂(CF)、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂(RF)やキシレノール−ホルムアルデヒド樹脂(XF)のようなフェノール樹脂、
フルフリルアルコール−ホルムアルデヒド樹脂(FF)、
不飽和ポリエステル樹脂(UP)、
ポリウレタン樹脂(PU)、
反応射出成形ポリウレタン樹脂(RIM−PU)、
フラン樹脂、
ビニルエステル樹脂(VE,VU)、
ポリエステルメラミン樹脂、及び
ジアリルフタレート(PDAP)またはジアリルイソフタレート(PDAIP)樹脂の混合物
からなる群から選択される請求項1から16のいずれか1項に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項18】
熱硬化性プラスチック材料(A)がエポキシド樹脂、アミノプラスチック樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及び反応射出成形ポリウレタン樹脂からなる群から選択される請求項1から17のいずれか1項に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項19】
1つ以上のポリマー添加剤を含有する請求項1から18のいずれか1項に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項20】
添加剤が充填剤、強化材、顔料、UV吸収剤、難燃剤、脱泡剤、脱気剤、湿潤剤、分散剤、繊維、織物、触媒、増粘剤、沈降防止剤、防縮剤、チキソトロープ剤、離型剤、流量調整剤、つや消し剤、腐食防止剤、スリップ剤及び殺生剤からなる群から選択される請求項19に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項21】
熱硬化性プラスチック組成物の製造のための5から500nmの平均一次粒子直径を有する架橋ミクロゲル(B)の使用。
【請求項22】
a)熱硬化性プラスチック材料(A)を形成し得、場合によりポリマー添加剤(有利には分散前に添加する)を含有する1つ以上の出発物質またはその溶液中に5から500nmの平均一次粒子直径を有するミクロゲル(B)を分散させるステップ、
b)場合により、更なる成分を添加するステップ、
c)得られた分散液を硬化または架橋するステップ
を含む請求項1から20のいずれか1項に記載の熱硬化性プラスチック組成物の製造方法。
【請求項23】
ステップc)を成形と同時に実施する請求項22に記載の方法。
【請求項24】
熱硬化性プラスチック材料(A)を形成し得る出発物質がモノマー、オリゴマー(プレポリマー)、またはその硬化剤または架橋剤から選択される請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
熱硬化性プラスチック材料(A)を形成し得る出発物質が
ポリオール及びその混合物、
脂肪族ポリエーテルポリオール及びその混合物、
脂肪族ポリエステルポリオール及びその混合物、
芳香族ポリエステルポリオール及びその混合物、
ポリエーテルポリエステルポリオール及びその混合物、
不飽和ポリエステル及びその混合物、
芳香族アルコールまたはその混合物、
スチレン、
ポリイソシアネート、
イソシアネート樹脂、
エポキシド樹脂、
フェノール樹脂、
フラン樹脂、
カプロラクタム、
ジシクロペンタジエン、
脂肪族ポリアミン、
ポリアミドアミン、
芳香族ポリアミン、
(メタ)アクリレート、
ポリアリル化合物、
ビニルエステル、
状態Aの熱硬化性縮合ポリマー、及び
上記出発物質の誘導体または溶液
からなる群から選択される請求項22から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
ミクロゲル(B)及び熱硬化性プラスチック材料を形成し得る出発物質を一緒にホモジナイザー、ボールミル、ビードミル、ロールミル、三本ローラー、一軸もしくは多軸スクリュー押出機、ニーダー及び/または高速攪拌機において処理する請求項22から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
ミクロゲル(B)及び熱硬化性プラスチック材料を形成し得る出発物質を一緒にホモジナイザーにおいて処理する請求項22から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
請求項22から27のいずれか1項に記載の方法により得ることができる熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項29】
少なくとも1つの熱硬化性プラスチック材料を形成し得る出発物質及び少なくとも1つの5から500nmの平均一次粒子直径(分散液を超遠心分離することによりDIN 53206に従って測定)を有する架橋ミクロゲル(B)を含む分散液を硬化または架橋することにより得ることができる熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項30】
分散液をホモジナイザー、ボールミル、ビードミル、ロールミル、三本ローラー、一軸または多軸スクリュー押出機、ニーダー及び/または高速攪拌機、好ましくはホモジナイザーにおいて処理することにより得る請求項29に記載の熱硬化性プラスチック組成物。
【請求項31】
請求項1から20、29及び30のいずれか1項の熱硬化性プラスチック組成物または請求項22から27のいずれか1項に記載の方法により得ることができる熱硬化性プラスチック組成物の成形品、コーティングまたは結合材としての使用。
【請求項32】
請求項1から20、29及び30のいずれか1項の熱硬化性プラスチック組成物または請求項22から27のいずれか1項に記載の方法により得ることができる熱硬化性プラスチック組成物の電子部品または建築部材における使用。
【請求項33】
通常≧3/分子の平均官能価を有する反応物質を含有する熱硬化性プラスチック材料(A)を形成し得る1つ以上の出発物質またはその溶液における5から500nmの平均一次粒子直径を有するミクロゲルのレオロジー添加剤として、特に増粘剤及び/またはチキソトロープ剤としての使用。
【請求項34】
1つ以上の5から500nmの平均一次粒子直径を有する架橋ミクロゲル(B)及び1つ以上の熱硬化性プラスチック材料(A)を形成し得る出発物質を含有し、出発物質の少なくとも20重量%が≧3の平均官能価を有する架橋性成分からなる組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−91802(P2013−91802A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−210(P2013−210)
【出願日】平成25年1月4日(2013.1.4)
【分割の表示】特願2005−267965(P2005−267965)の分割
【原出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】