説明

ミクロゲル組成物およびその調製方法

本発明は、重量平均分子量が50,000を超えるミクロゲル粒子を含むミクロゲル組成物であって、コーンプレート型粘度計で測定した、ジオキサン中の前記ミクロゲルの60%w/w溶液の粘度が10Pa・s未満となる組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロゲル組成物、ミクロゲルバインダー成分を含有するコーティング組成物、ならびにミクロゲルおよびコーティング組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロゲルは、非常に高い分子量と、比較的低分子量の線状または分岐ポリマーと同様の溶解性および粘度とを併せ持つ高分子である。ミクロゲルは、ポリエチレンまたはポリカーボネートなどの従来の線状または分岐ポリマーと加硫天然ゴムなどの網目構造との間の構造である。ミクロゲルの大きさは、高分子量線状ポリマーに対応しているが、それらの内部構造は網目構造と類似している。
【0003】
ミクロゲルの性質は、発泡体または繊維用の最新材料配合物中、コーティング組成物、バインダー、および再分散性ラテックス中の添加剤などの、広範囲の用途で特に有用となる。ミクロゲルは、加工を容易にするため、ならびに最終製品の構造強度および寸法安定性を改善するためにも使用することができる。ミクロゲルのさらに別の可能性のある用途は、耐衝撃性ポリマーの添加剤である。従来の線状ポリマーのマトリックス中に埋め込まれたミクロゲルは、機械的張力を分散させることによって構造全体を安定化させる機能を果たすことができる。ミクロゲルは、生物系においても、および医薬用担体としても有用である。
【0004】
熱硬化性コーティングおよび熱可塑性コーティングは周知である。熱可塑性コーティングは、さらに重合しなくても必要な機械的強度特性が得られるよう十分に高分子量の少なくとも1種類のポリマーを含有する。一方、熱硬化性コーティングは、より低分子量のポリマーを含有し、所望の性質を得るために適用後にさらに重合される。これらの種類のコーティングのそれぞれに関する問題は、効率的なスプレー塗布のためにはかなりの量の溶媒を使用する必要があることである。組成物の揮発性有機含有物は安全性および環境的に重要な問題となるが、これらの使用は、スプレー塗布を可能とするために十分粘度を低下させるために必要であった。このことは、自動車の塗り替えなどの自動車のコーティングおよび適用において特に問題となっている。
【0005】
ミクロゲルの調製には多数の方法が使用されているが、しかし一般にこれらの方法には多数の重大な欠点がある。例えば、これらの系には複数の二重結合が存在するので、取り扱いが困難な網目構造の原因となり得る分子間反応が容易に進行する可能性があるため、ミクロゲルの調製には非常に注意する必要がある。OKay,O.およびFunke,W.がMACROMOLECULES,1990,23の2623〜2628ページに記載しているような他の方法では、高純度溶媒および試薬、ならびに不活性雰囲気が必要であり、望ましくない副反応によって複雑化している。ミクロゲルは独特の性質を有するにもかかわらず、調製が困難であるため、それらの潜在的および工業的使用が限定されている。
【0006】
本発明者らの同時係属出願のPCT/AU98/00015には、2段階でアルコキシアミンを架橋剤と反応させることを含むミクロゲルの調製方法が開示されている。
【0007】
その第1の段階は、ニトロキシドの媒介する制御重合方法を使用する線状プレポリマーの生成を含み、第2の段階は、多価オレフィンなどの架橋剤を使用してそれらのリビング末端上でこれらのプロポリマーを架橋させて星型ミクロゲルを生成することを含む。このミクロゲル生成段階は、ニトロキシドキャッピング基の解離によって、ニトロキシドでキャップされたリビングプレポリマーから生成される基によって、架橋剤の混入が進行するので、制御重合方法でもある。
【0008】
本発明者らの別の同時継続中の国際出願PCT/Au99/00345および米国特許第6,355,718号明細書では、この研究が広範囲の制御重合方法に拡張されている。この場合も2段階方法が、制御重合方法によりリビングプレポリマーを提供する第1の段階と、これらのリビング基を架橋性モノマーとともに重合させてミクロゲルを生成する第2の段階とを含む。リビング重合方法の例としては、ATRP、RAFT、またはその他のリビングフリーラジカル重合方法が挙げられる。
【0009】
制御重合によって生成したミクロゲルは、画定された星型構造を有する。腕の長さおよび数、ならびにコアの大きさおよび密度は、プレポリマーの長さ、重合の処方、およびその他の反応条件によって制御することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、コーティング組成物のバインダー中に使用するためにポリマーの充填率を高くすることができるミクロゲルを開発した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、重量平均分子量が50,000を超えるミクロゲル粒子を含むミクロゲル組成物であって、コーンプレート型粘度計で測定した、ジオキサン中の前記ミクロゲルの60%w/w溶液の粘度が10Pa・s未満となる組成物を提供する。本発明のミクロゲルの固有粘度は、ビスコテック粘度計(Viscotek Viscometer)で測定すると、典型的には0.5g/dL以下となる。キャピラリー粘度測定法で測定した固有粘度は一般に1dL/g未満となる。
【0012】
さらに別の態様では、本発明は、バインダーと液体担体とを含むコーティング組成物であって、前記バインダーが前述のミクロゲルを含み、前記ミクロゲルが前記液体担体中に溶解される組成物を提供する。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、
(i)有機溶媒中の溶液として一価不飽和モノマーと多価不飽和架橋性モノマーとを含むモノマー組成物を提供するステップと、
(ii)前記モノマーをフリーラジカル溶液重合によって重合させるステップであって、前記一価不飽和モノマーの反応性比が前記多価不飽和モノマーと大きく異なり、前記モノマー成分の濃度と、前記モノマー組成物中の架橋性モノマーの比率とが制御されることによって、重量平均分子量が少なくとも50000である分離したミクロゲル粒子の溶液が形成されるステップとを含む、ミクロゲル組成物の調製方法を提供する。
【0014】
多価不飽和モノマーの比率は、典型的には全モノマー成分の20重量%未満であり、より好ましくは全モノマー成分の15重量%未満である。
【0015】
最も好ましくは架橋性モノマーは全モノマーの0.1〜15重量%の範囲である。
【0016】
全モノマー濃度は典型的には5〜50重量%であり、より好ましくは10〜50重量%であり、さらにより好ましくは20〜45重量%であり、最も好ましくは25〜45重量%である。
【0017】
さらに本発明は、
(i)1つ以上の反応性官能基を含むポリマーと、
(ii)前記ポリマーの前記官能基の架橋に採用される架橋剤とを含み、
前述のミクロゲルを含む、ミクロゲルコーティング組成物を提供する。このミクロゲルは、反応性官能基を含む上記ポリマーであってもよいし、独立した成分であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
一態様において、本発明は、重量平均分子量が50,000を超えるミクロゲル粒子を含むミクロゲル組成物であって、コーンプレート型粘度計で測定した、ジオキサン中の前記ミクロゲルの60%w/w溶液の粘度が10Pa・s未満となる組成物を提供する。
【0019】
ミクロゲルの重量平均分子量は、好ましくは少なくとも100,000であり、より好ましくは少なくとも200,000であり、さらにより好ましくは少なくとも500,000であり、最も好ましくは少なくとも1,000,000である。
【0020】
本発明のミクロゲル粒子の大きさは、高分子量であるにも関わらず、典型的には直径が200nm未満であり、好ましくは100nm未満である。この大きさは一般に標準的なGPC法によって測定される。
【0021】
好ましい固有粘度(ビスコテック粘度測定法(Viscotek Viscometry)による)は0.3未満である。好ましい固有粘度(キャピラリー粘度測定法は)0.5未満であり、ジオキサン中60%溶液であるミクロゲル溶液の場合2Pa・s未満であり、さらにより好ましくは1.5Pa・s未満であり、最も好ましくは1Pa・s未満である。
【0022】
本発明の方法により形成されたミクロゲルは、驚くべきことに通常とは異なるレオロジー特性を示す。通常の線状ポリマーの場合、ポリマー溶液の粘度はその分子量(MW)に比例する。これは、MWが増加すると、ポリマーの粘度も増加することを意味する。しかし、本発明者らは、これらの星型ミクロゲルの挙動が非常に異なることを発見した。星型ミクロゲル溶液の粘度はその分子量に比例しない。ミクロゲルのMWが300Kから1.2百万に増加しても、その溶液の固有粘度は約0.2g/dlで一定に維持される。このような挙動は通常とは異なるものであり、これらの材料をコーティングまたは薬物送達に応用すると非常に大きな効果を得ることができる。通常、高分子量ポリマーは、コーティングにとって優れた機械的性質を付与するが、しかし、高粘度となるために通常は希釈が必要である。本明細書に記載のミクロゲルを使用すると、高い固形分で低粘度溶液を得ることができる。この結果、より優れたコーティングを得ることができ、コーティング工程に必要な溶媒が少なくなる。薬物送達においては、低粘度の官能化星型ミクロゲルによって、薬物分子を吸着するための媒体を得ることができ、使用中に長時間にわたって薬物分子を放出させることができる。
【0023】
さらに別の態様では、本発明は、バインダーと液体担体とを含むコーティング組成物であって、前記バインダーが前述のミクロゲルを含み、前記ミクロゲルが前記液体担体中に溶解される組成物を提供する。
【0024】
液体担体は、好ましくは有機溶媒である。好ましい有機溶媒は、芳香族炭化水素、例えばナフタレン、キシレン、およびトルエン、イソプロピルアルコール(IPA)、およびn−ブチルアルコールなどのアルコール、ヘプタンおよびミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素、メチルエチルケトンおよびMIEKなどのケトン類、ならびにテトラヒドロフランおよびジオキサンなどの複素環、からなる群より選択される。
【0025】
本発明のミクロゲルは、典型的には組成物の5〜90重量%の量で存在し、20〜80%が好ましい。
【0026】
本発明のミクロゲルは典型的には架橋したコアと、コアに結合した腕(arms)とを含む。コアは多価不飽和モノマーから形成され、腕は一般に一価不飽和モノマーから形成される。
【0027】
本発明のコーティング組成物は、好ましくは、バインダーと反応性である架橋剤を含む第2の成分を含む。この架橋剤は、ミクロゲル中に存在する官能基と反応性である場合もあり、バインダーの追加成分と反応性である場合もある。架橋剤成分は、例えばジイソシアネートまたはポリイソシアネート、ジエポキシモノマー、アミノ樹脂、またはシロキサンであってよい。バインダー中の反応性基は、ヒドロキシル、アミン、カルボキシル、アルコキシシラン、カルバメート、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0028】
より好ましいコーティング組成物は、熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマーから選択されるさらに別のポリマーバインダーも含む。バインダーは、主に被膜の品質と関係している。ポリマーバインダーの例としては、アルキド、ポリエステル、メラミン−ホルムアルデヒドなどのアミノ樹脂、アクリル樹脂、エポキシ、およびウレタンが挙げられる。
【0029】
基材に適用するために、ほとんどのコーティング系では、適用手順に適した粘度に調整するために溶媒を使用する必要がある。ほとんどの用途における粘度の必要条件は0.5〜10Pの範囲である。これは、温度、構造、および溶媒−バインダー相互作用などの変量によって影響されることがある。コーティング組成物中の顔料は、不透明性および色をコーティングに付与するために一般に使用される。
【0030】
追加のバインダーは、性質が熱可塑性であっても熱硬化性であってもよい。熱可塑性コーティングでは、被膜強度、硬度、および耐久性などの所望の機械的性質をコーティングに付与するために高分子量ポリマーが使用される。高分子量ポリマーの使用は、必要な用途に十分な程度まで粘度を低下させる必要があるため、コーティング組成物が低固形分であることを通常は意味する。
【0031】
一方、熱硬化性ポリマーコーティングでは、コーティングを基材に適用した後でさらに硬化または架橋して高分子量ポリマーを生成することができる低分子量反応物質が使用される。この被膜の機械的性質は、得られるポリマーのTg(ガラス転移温度)、およびその架橋密度に依存する。
【0032】
熱硬化性ポリマーバインダーは、アルキド、ポリエステル、メラミンホルムアルデヒド樹脂などのアミノ樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、およびウレタンからなる群より選択される樹脂を含むことができる。
【0033】
本発明のミクロゲルを含有するアクリル樹脂バインダーおよび/またはウレタン樹脂バインダーを主成分とするコーティングは、例えば自動車および工業用コーティングとして使用するための調製に特に好適である。本発明のミクロゲルを使用することによって、コーティング組成物の固形分を大幅に増加させながら、スプレー塗布に必要な比較的低粘度を維持することができる。
【0034】
本発明のミクロゲル、他のバインダー成分(存在する場合)、またはその両方は、ヒドロキシル、アミン、アルコキシシラン、およびカルボキシルなどの基を含み、この基によって、コーティングを硬化させるための架橋過程で組成物を反応させることができる。場合により使用される官能基は、ミクロゲルの架橋したまたはペンダント腕に存在することができる。この官能基の濃度および位置は、ミクロゲルの反応性に影響する。特に、官能基がコア中に存在する場合、これにより反応速度が低下して、そのため、バインダーのポリマーおよび架橋性成分を混合した後のポットライフが延長される。
【0035】
このように、本発明のコーティング組成物は、ヒドロキシ/メラミン、ヒドロキシイソシアネートエポキシ酸、エポキシバミン(epoxybamine)、およびカルバメート/メラミンなどの一連の架橋系に使用することができる。好ましくは、官能基含有ポリマーおよびミクロゲルが、有機溶媒中に溶解または分散する。必要に応じて、架橋性成分も有機溶媒中に溶解または分散させることができる。
【0036】
この実施形態のコーティング組成物は多成分系であってよい。成分の1つは、ヒドロキシル含有ポリマーおよびミクロゲルバインダー系を含むことができ、好ましくは有機溶媒、および場合により顔料および充填剤、助剤、および添加剤などの他の成分を含むことができる。別の成分は、ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート、1分子当たり少なくとも2つのエポキシド基を有するエポキシド化合物、アミノ樹脂、およびシロキサン架橋剤からなる群より選択される架橋剤を含むことができる。
【0037】
本発明のコーティング組成物は二液形態であってよく、すなわち、本発明の組成物が、別々に保管される2つの成分を含み、使用数時間前または適用中に混合することができる。
【0038】
この実施形態では、一方のパックがバインダー成分を含み、他方が架橋剤を含む。典型的には、バインダー成分はコーティング組成物の50〜90重量%(より好ましくは65〜90%)を構成し、架橋剤成分はコーティング組成物の10〜50重量%を構成する。
【0039】
バインダー成分中の好ましいヒドロキシル部分は、ヒドロキシアルキルアクリレートおよび(メタ)アクリレートなどのヒドロキシモノマーから誘導され、これらのアルキル基は1〜4個の範囲の炭素原子をアルキル基中に有する。例としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
アクリルバインダーの調製に使用することができるモノマー混合物は好ましくは、1〜18個の炭素原子をアルキル基中に有するアルキルアクリレートおよび対応する(メタ)アクリレート、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル;脂環式(メタ)アクリレート、例えば(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、および(メタ)アクリル酸イソブチルシクロヘキシル;アリール(メタ)アクリレート、例えば(メタ)アクリル酸ベンジル;(メタ)アクリル酸イソボルニル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル;(メタ)アクリル酸グリシジル;(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、またはそれらの組み合わせから選択される1種類以上のモノマーを含む。メチル、ブチル、n−ブチル、およびイソボルニルのメタクリル酸エステルが好ましい。これに加えて、スチレン、アルキルスチレン、ビニルトルエン、およびアクリロニトリルなどの他のモノマーを使用することもできる。
【0041】
メタクリル酸tert−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルによって意図するアミン部分を形成することができる。
【0042】
本発明のコーティング組成物の架橋性成分は、好ましくは、ポリイソシアネート架橋剤などの少なくとも2つのイソシアネート基を有する1種類以上の架橋剤を含む。従来の芳香族、脂肪族、脂環式のイソシアネート、三官能性イソシアネート、およびポリオールとジイソシアネートとのイソシアネート官能性付加体のあらゆるものを使用することができる。典型的には有用なジイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ビスシクロヘキシルジイソシアネート、テトラメチレンキシレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、2,3−ジメチルエチレンジイソシアネート、1−メチルトリメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンチレンジイソシアネート、1,4−シクロへキシレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)−メタン、および4,4−ジイソシアナトジフェニルエーテルである。揮発性形態の曝露の危険性を低下させるために、これらのイソシアネートのプレポリマー化された形態も一般的に使用される。
【0043】
本発明のミクロゲル組成物は、大きく減少した量の溶媒を使用してコーティング組成物中に使用しながら、加工可能な程度の粘度を維持することができる。これによって、揮発性成分および溶媒、ならびに有害となる可能性のある未反応試薬を制限しながら、高分子量材料の使用によって付与される望ましい機械的性質を維持することができるという利点を有する。これは、コストおよび環境問題の両方に関して非常に有益である。
【0044】
典型的には、本発明のコーティング組成物、5〜50%、好ましくは35%未満の有機担体を含む。
【0045】
本発明のミクロゲルは、制御された「リビング」プレポリマーのマクロモノマーを使用して得ることができ、または、架橋性モノマーと一価不飽和モノマーとを含み、成分の反応性および濃度において有意差を有するモノマー成分の選択が制御されるモノマー組成物のフリーラジカル重合によって直接調製することもできる。
【0046】
さらに別の態様では、本発明は、
(i)有機溶媒中の溶液として一価不飽和モノマーと多価不飽和架橋性モノマーとを含むモノマー組成物を提供するステップと、
(ii)前記モノマーをフリーラジカル溶液重合によって重合させるステップであって、前記一価不飽和モノマーの反応性比が前記多価不飽和モノマーと大きく異なり、前記モノマー成分の濃度と、前記モノマー組成物中の架橋性モノマーの比率とが制御されることによって、重量平均分子量が少なくとも50000である分離したミクロゲル粒子の溶液が形成されるステップとを含む、ミクロゲル組成物の調製方法を提供する。
【0047】
多価不飽和モノマーの比率は、典型的には全モノマー成分の20重量%未満であり、より好ましくは全モノマー成分の15重量%未満である。
【0048】
最も好ましくは架橋性モノマーは全モノマーの0.1〜15重量%の範囲である。
【0049】
全モノマー濃度は典型的には5〜50重量%であり、より好ましくは10〜50重量%であり、さらにより好ましくは20〜45重量%であり、最も好ましくは25〜45重量%である。
【0050】
フリーラジカル溶液重合によってモノマー組成物を重合させるステップは、典型的にはフリーラジカル開始剤を伴う。
【0051】
本発明では、従来のフリーラジカル重合方法を使用することができる。これらの方法では、重合は、開始剤と、1つの二重結合を有する少なくとも1種類のモノマーおよび少なくとも1種類の多価不飽和架橋剤を含有するモノマー組成物とによって開始される。このようなミクロゲルを調製するための重要な点は、a)モノマーと架橋剤との間の比率、および使用されるモノマーと架橋剤との全濃度、ならびにb)モノマーおよび架橋剤の反応性の差である。
【0052】
反応性比
2種類の異なるモノマーの反応性比(r)は、第1のモノマーと反応する第1のモノマーからの基の反応性を、第2のモノマーと反応する基の反応性で割ったものとして定義され、
反応性比r1=K11/K12
同様に、
反応性比r2=K22/K21
ここで、K11は、第1のモノマーと反応する第1のモノマーからの基の反応速度であり、K12は、第2のモノマーと反応する第1のモノマーからの基の反応速度である。
【0053】
架橋ポリマー成分の形成に使用される従来方法は、反応性比r1およびr2がほぼ同じになるように選択することよって行われる。r1=r2=1である場合、濃度に依存して統計学的にポリマー鎖に架橋剤が入り込む。これによって、無限に架橋した網目構造が得られる。
【0054】
架橋剤が一価不飽和モノマーよりも高い反応性を有することが好ましい。好ましくは、少なくとも1種類の架橋剤の少なくとも1種類のモノマー(r1)に対する反応性比(r)が少なくとも1.5である。より好ましくはこの比が1.5〜30の範囲である。一方、r2(一価不飽和モノマーの反応性比)は好ましくは0.5未満であり、より好ましくは0.1未満である。
【0055】
要求される反応性を有する架橋性モノマーの特に好ましい例は、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)である。最も好ましい一価不飽和モノマーは、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、およびアクリル酸C8〜C20アルキル(例えばアクリル酸ラウリル)などのより高次のアクリル酸アルキルなどのアクリレートである。
【0056】
1(EGDMA)は、ポリマー鎖に混入する場合の反応性がアクリル酸メチルよりも高い。MA/EGDMAから調製したミクロゲルは、MMA/EGDMAから生成したミクロゲルよりもはるかに低い粘度を示した。ここで、MMAおよびEGDMAの両方の二重結合の反応性は非常に類似している。ある条件下でMMAをエチレングリコールジアクリレート(EGDA)と反応させた場合、その結果得られるミクロゲルも低い粘度特性を示すことも分かった。大まかに言えば、特定の条件下で、モノマーおよび架橋剤の反応性が異なる場合、制御または半制御重合方法を使用して星型ミクロゲルとして生成されるミクロゲルと類似した特殊なレオロジー特性を有するミクロゲルを生成することが可能である。
【0057】
以下の表は、星型ミクロゲルを形成することが可能な反応性値を有する好適な架橋剤およびモノマーを挙げている。
【0058】
【表1】

【0059】
本発明の一実施形態では、架橋剤成分、一価不飽和モノマー成分、またはその両方は、コーティング組成物接着剤またはエラストマーの硬化に使用するための、ポリマーバインダーとの架橋に適合したモノマーを含む。
【0060】
この実施形態では、好ましい官能基が、ヒドロキシル、エポキシ、カルボン酸、アミン、アルコキシシラン、およびそれらの組み合わせから選択される。官能化モノマーの例としては、
(i)酸:アクリル酸、メタクリル酸
(ii)エポキシ:メタクリル酸グリシジル
(iii)ヒドロキシ:アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、およびメタクリレート類似体、
(iv)アミノ:メタクリル酸ジメチルアミノエチル、および
(v)シロキサン:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランおよび部分的又は完全に高級アルキルで置換した類似体が挙げられる。
【0061】
官能化一価不飽和モノマーが好ましく、ヒドロキシ官能化一価不飽和モノマーが特に好ましい。この実施形態では、全部の一価不飽和モノマー成分が官能化される必要はなく、ほとんどの場合、例えば該当の組成物の0.1〜30モル%、より好ましくは0.1〜10モル%の官能化モノマーの小さな割合で使用すれば十分となり得る。
【0062】
好ましい方法は一官能性モノマーとしてアクリレートを使用することであるが、一般に使用される官能化モノマーの多くはメタクリレートであってもよい。しかし、これらは一般に使用される全モノマーの小さな比率であるので(おそらくは全一官能性モノマーの10%未満)、あまり大きな悪影響がなく、これらを混入することもできる。
【0063】
モノマーおよび架橋剤の濃度
全モノマー濃度(本明細書では「T%」と記載)、およびモノマー組成物中の架橋性モノマーの比率(本明細書では「C%」と記載)の最適な組み合わせは、必要以上の実験を行うことなく、特定の系の場合に選択することができる。
【0064】
20重量%未満の架橋剤の所与の比率の場合、最適な全モノマー濃度は、ゲル化を起こすことなく少なくとも105の分子量の生成物を得るための濃度を選択することによって決定することができる。ゲル化は、全モノマー濃度または架橋性物質の比率のいずれかが高すぎる場合に生じる。全モノマー濃度が低すぎる、または架橋性物質の比率が低すぎる場合、結果として得られるフリーラジカル重合生成物は、比較的低分子量のポリマーとなる。
【0065】
重合は、有機溶媒の均一溶液中で実施される。ある種類の溶媒を使用することができる。好適な溶媒は、モノマーの性質、および効率的なラジカル重合を行うための必要条件を考慮して選択することができる。
【0066】
本発明の方法により形成されたミクロゲルは、驚くべきことに通常とは異なるレオロジー特性を示す。通常の線状ポリマーの場合、ポリマー溶液の粘度はその分子量(MW)に比例する。これは、MWが増加すると、ポリマーの粘度も増加することを意味する。しかし、本発明者らは、これらの星型ミクロゲルの挙動が非常に異なることを発見した。星型ミクロゲル溶液の粘度はその分子量に比例しない。ミクロゲルのMWが300Kから1.2百万に増加しても、その溶液の固有粘度は約0.2g/dlで一定に維持される。このような挙動は通常とは異なるものであり、これらの材料をコーティングまたは薬物送達に応用すると非常に大きな効果を得ることができる。通常、高分子量ポリマーは、コーティングにとって優れた機械的性質を付与するが、しかし、高粘度となるために通常は希釈が必要である。本明細書に記載のミクロゲルを使用すると、高い固形分で低粘度溶液を得ることができる。この結果、より優れたコーティングを得ることができ、コーティング工程に必要な溶媒が少なくなる。薬物送達においては、低粘度の官能化星型ミクロゲルによって、薬物分子を吸着するための媒体を得ることができ、使用中に長時間にわたって薬物分子を放出させることができる。
【0067】
ミクロゲル溶液を大量の極性溶媒、特にメタノールに加える(好ましくは滴下する)ことにより沈殿を誘発することによって、ミクロゲルを反応溶媒から分離することができる。次にこれらを、濾化、遠心分離機、または沈殿を回収するための他の好適な技術によって溶液から回収することができる。
【0068】
本発明者らの先行する発明の制御重合方法は効率的であり高品質のミクロゲルが得られるが、本発明の方法は、低分子量成分を使用するワンポット法でミクロゲルを生成することができる。さらに、従来の重合開始剤を使用できることで、さらにより効率的な調製を行うことができ、生成物の安定性を低下させたり除去が必要となる可能性があるラジカルキャッピング剤またはルイス酸が不要となる。
【0069】
本明細書の説明および請求項全体で、単語「含む(comprise)」およびその派生語、例えば「含んでいる(comprising)」および「含む(comprises)」は、他の添加剤または成分または整数を排除することを意図するものではない。
【0070】
これより、以下の実施例を参照しながら本発明を説明する。これらの実施例は本発明の例として提供されており、これらの実施例が本発明の範囲を限定するものでは決してないことを理解されたい。
【0071】
図面を参照しながら実施例を説明する。
【実施例1】
【0072】
a)PMMAマクロ開始剤「腕」(PMMA)の合成
メタクリル酸メチル(12.8mL、0.12mol)、CuBr(0.17g、1.2mmol)、PMDETA(0.25mL、1.20mmol)、およびp−トルエンスルホニルクロリド(p−TsCl、0.51g、2.7mmol)のp−キシレン(17.2mL)中の混合物を、シュレンク(Schlenk)フラスコに加え、3回の凍結−減圧−解凍サイクルで脱気した。次に、このフラスコを80の油浴に浸漬し、90時間加熱した。この反応混合物をTHF(100mL)中に溶解し、MeOH(2L)中で沈殿させた。減圧濾過で沈殿物を回収し、さらに沈殿を繰り返して、PMMAマクロ開始剤(1)を白色固体として得た(収率55%、Mw10.0k)。1HNMR(CDCl3、400MHz):7.74(d、J=8.2Hz、0.03H、ArH)、7.36(d、J=8.0Hz、0.03H、ArH)、3.60(s、3H、OCH3)、2.0〜1.7(m、2H、CH2)、1.02(s、0.45H、CH3)0.83(s、0.55H、CH3)。
【0073】
b)PMMA/MMA/EGDMA星型ミクロゲルの合成
(1)(0.62g、0.062mmol)、EGDMA(0.18mL、0.93mmol)、MMA(0.40mL、3.7mmol)、CuCl(6.2mg、0.062mmol)、およびbpy(29mg、0.19mmol)のp−キシレン(12.2mL)中の混合物を、マグネチックスターラーを取り付けたシュレンクフラスコに加えた。この混合物を3回の凍結−減圧−解凍サイクルで脱気した後、大気圧において100°に加熱した。90時間後、試料を反応混合物から取り出し、直接GCで分析した。この混合物をTHF(20mL)に溶解し、MeOH(1L)中で沈殿させ、濾過によって回収すると、無色固体が得られ、これをゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析した(0.98g、収率83%、Mw=569,400)。
【実施例2】
【0074】
Viscotek TriSec(登録商標)粘度計による固有粘度
THF中10〜20mg/mLの試料を調製した。ウォーターズ717プラス・オートサンプラー(Waters 717 Plus Autosampler)、ウォーターズ510HLPC(Waters 510 HLPC)ポンプに3つのフェノメネックス・フェノゲル(Phenomenex phenogel)カラム(500、104、および106Å)を取り付けたもの、これに直列に取り付けられた90°で操作されるワイアット・ドーンF(Wyatt Dawn F)レーザー測光計、並列に取り付けられたウォーターズ410(Waters 410)示差屈折計(RI)およびビスコテックT50A(Viscotek T50A)示差粘度計を取り付けたものを使用して、THF中のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定を行った。データ収集および解析は、Viscotek TriSEC(登録商標)ソフトウェアで行った。
【0075】
線状ポリメタクリル酸メチルと比較して、星型ミクロゲルは、同様の分子量のポリマーの場合、はるかに低い固有粘度を有することが分かった(図1)。
【実施例3】
【0076】
キャピラリー粘度測定法による粘度試験
実施例1、4、および5で調製した星型ミクロゲル、ワンポットミクロゲル、および線状ポリマー腕の固有粘度をウベローデ(Ubelhode)キャピラリー粘度測定法で測定した。THF中で濃度を変化させた試料を調製し、それぞれの流出時間を測定した。以下の式から、インヘレント粘度および還元粘度測定対試料濃度をプロットした。
相対粘度:ηrel=t/t0
比粘度:ηsp=[t−t0]/t0
還元粘度:ηred=ηsp/c
インヘレント粘度:ηinh=lnηrel/c
固有粘度:
【数1】

【0077】
固有粘度は、ハギンス(Huggins)プロット(還元粘度対濃度)およびクレーマー(Kraemer)プロット(インヘレント粘度対濃度)の両方でy軸(c=0)に外挿することによって求められる。線状ポリメタクリル酸メチル、ワンポットミクロゲル、および星型ミクロゲルについてキャピラリー粘度測定法によって測定した固有粘度のプロットを図2に示す。
【実施例4】
【0078】
MMAおよびEGDMAのワンポットフリーラジカル重合(15%T、3%C)
メタクリル酸メチル(2.8g)、エチレングリコールジメタクリレート(0.09g)、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、0.02g)のp−キシレン(16.2ml)中の混合物を、マグネチックスターラーを取り付けたシュレンクフラスコに加えた。この混合物を3回の凍結−減圧−解凍サイクルで脱気した後、100度で90時間加熱した。この混合物の試料をp−キシレン中で希釈(1:10)し、ガスクロマトグラフィーで分析してモノマーの転化率を求めた(MMA転化率92%;EGDMA転化率88%)。第2の試料をSEC(MWおよび粘度パラメータのため)で分析し、残りはメタノール中で沈殿させ、濾過すると白色固体が得られた(Mn64K;Mw201K;IVw0.20dL/g;Rgw10.3nm)。
【実施例5】
【0079】
MAおよびEGDMAのワンポットフリーラジカル重合(20%T、8%C)
アクリル酸メチル(4.8g)、エチレングリコールジメタクリレート(0.42g)、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、0.09g)のp−キシレン(21ml)中の混合物を、マグネチックスターラーを取り付けたシュレンクフラスコに加えた。この混合物を3回の凍結−減圧−解凍サイクルで脱気した後、100度で90時間加熱した。この混合物の試料をキシレン中で希釈(1:10)し、ガスクロマトグラフィーで分析した(MA転化率91%;EGDMA転化率90%)。第2の試料をSECで分析し、残りは溶媒を減圧除去することによって単離した(Mn26K;Mw3,615K;IVw0.49;Rgw31nm)。
【実施例6】
【0080】
MMAおよびEGDAのワンポットフリーラジカル重合(15%T、3%C)
メタクリル酸メチル(2.8g)、エチレングリコールジアクリレート(0.08g)、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、0.05g)のp−キシレン(16.2ml)中の混合物を、マグネチックスターラーを取り付けたシュレンクフラスコに加えた。この混合物を3回の凍結−減圧−解凍サイクルで脱気した後、100度で90時間加熱した。この混合物の試料をキシレン中で希釈(1:10)し、ガスクロマトグラフィーで分析した(MMA転化率90%;EGDA転化率89%)。第2の試料をSECで分析し、残りは溶媒を減圧除去することによって単離した(Mn30K;Mw59K;IVw0.14dL/g;Rgw6.2nm)。
【実施例7】
【0081】
[実施例3]
MA/EGDMAミクロゲルの調製のための処方
実施例5に記載の方法に従って、種々の処方のモノマーMA/EGDMAのワンポットフリーラジカル重合を行った。得られたポリマーについて試験すると、3つの領域に分類できることが分かった。A:ミクロゲル、B:マクロゲル、およびC:低MWポリマー。図3は処方計画(%T対%C)を示しており、ミクロゲル形成のためには領域Aが必要である。
【実施例8】
【0082】
[実施例4]
MMA/EGDAミクロゲルの調製のための処方
実施例に記載の方法に従って、種々の処方のモノマーMMA/EGDAのワンポットフリーラジカル重合を行った。得られたポリマーについて試験すると、3つの領域に分類できることが分かった。A:ミクロゲル、B:マクロゲル、およびC:低重量平均分子量ポリマー。図4は、処方計画(%T対%C)を示しており、ミクロゲル形成のためには領域Aが必要である。
【実施例9】
【0083】
コーンプレート型のカリムド・レオメーター(Carrimed Rheometer)CSL100(コーン2cm、角度2°、プレート間隙=54μm、25℃、空気圧2.5bar)を使用して、実施例4〜6のミクロゲルの粘度を分析した。ジオキサン中で濃度を変動させた試料(30〜70%w/w)を調製し、終夜静置して溶解させた。最終応力を変更することができる剪断応力スイープ方法を使用して測定を行った。測定した粘度データを剪断速度に対してプロットして、粘度特性を求めた。図5は、濃度(w/w%)の関数としてこれらの試料の粘度(Pa・s)を示している。
【実施例10】
【0084】
表2に、実施例5および6で調製した試料のSEC測定によるミクロゲルの分子特性を示した。
【表2】

【実施例11】
【0085】
図6は、ワンポットフリーラジカル重合により20T%および5C%の処方のMA/EGDMAから調製した試料を測定したGPCトレースを示している。
【実施例12】
【0086】
MA/EGDMA/HEA(20T/8C/2H)を使用したワンポットフリーラジカル重合
アクリル酸メチル(3.08mL、2.94g、34mmol)、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(0.059mL、0.060g、51mmol)、エチレングリコールジメタクリレート(0.25mL、0.26g、1.3mmol)、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(0.057g、35mmol)のp−キシレン(12.9mL)中の混合物を、マグネチックスターラーを取り付けたシュレンクフラスコに加えた。この混合物を、減圧下における3回の凍結−減圧−解凍サイクルで脱気し、密封して、90℃で18時間加熱した。この反応混合物を乾燥状態まで減少させ、試料をTHF中に溶解して、GPCで分析した。Mn8.1K;Mw273.9K;IVw0.205;Rgw9.83;ジオキサンにおいて固形分50%でのコーンプレート粘度(0.14Pa・s)。
【実施例13】
【0087】
a)ヒドロキシ官能性マクロモノマーの調製
機械的撹拌装置、温度計、冷却器、およびマントルヒーターを取り付けた5リットル丸底フラスコに、メタクリル酸イソブチル(IBMA、545g)、メタクリル酸2−エチルヘキシル(EHMA、583.7g)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA、95.6g)、およびトルエン(939.4g)を加えた。窒素下で混合物を撹拌し、加熱還流した。このバッチを還流状態に維持しながら、Vazo(登録商標)88(1,1−アゾビス(シアノシクロヘキサン)、1.1g)、HEMA(31.7g)、トルエン(60.1g)、およびコバルト酸ジアクアビス(ホウ素ジフルオロジメチルグリオキシマト)(32mg)の混合物を10分間かけて加えた。続いて、IBMA(388.6g)、EHMA(561.4g)、HEMA(103.6g)、トルエン(179.9g)、およびVazo(登録商標)88(4.0g)の混合物をバッチに240分間かけて加えながら、還流を維持した。続いてこのバッチの還流を30分間維持した後、Vazo(登録商標)88(1.0g)のトルエン(135.7g)中の溶液を60分間かけて加えながら、還流を維持した。このバッチの還流を60分間維持した後、室温まで冷却した。
【0088】
b)ミクロゲルの形成(開始剤+マクロモノマー)
EGDMA架橋剤(0.1g、0.50mmol)およびAIBN開始剤(0.02g)のp−キシレン(10mL)中の溶液をアルゴン存在下で脱気し、60℃に加熱した。アルゴンの雰囲気下でこの温度において、THF(10mL)中のマクロモノマー(実施例9a、0.033mmol)を1時間かけて滴下した。この反応物をさらに1時間撹拌し、THF(20mL)で希釈し、メタノール中に沈殿させ、濾過によって単離して、ミクロゲルを白色固体として得た。
【実施例14】
【0089】
a)マクロモノマーの調製(ATRP+連鎖移動)
PMMAマクロ開始剤(実施例1、0.6g、0.06mmol)のTHF(10mL)中の溶液に、THF(10mL)中の連鎖移動剤の5,10,15,20−テトラフェニル−21H、23H−プルフィンコバルト(II)(あらかじめ脱気した溶液、1.8g、2.7mmol)およびMMA(0.27g、2.7mmol)をシリンジで加えた。反応を90℃でさらに2時間続けた。続いて、生成物をTHFで希釈し、得られたマクロモノマーをメタノールから沈殿させた。
【0090】
b)ミクロゲルの形成(開始剤+マクロモノマー)
EGDMA架橋剤(0.1g、0.50mmol)およびAIBN開始剤(0.02g)のp−キシレン(10mL)中の溶液をアルゴン存在下で脱気し、60℃に加熱した。アルゴンの雰囲気下でこの温度において、THF(10mL)中のマクロモノマー(実施例10a、0.033mmol)を1時間かけて滴下した。この反応物をさらに1時間撹拌し、THF(20mL)で希釈し、メタノール中に沈殿させ、濾過によって単離して、ミクロゲルを白色固体として得た。
【実施例15】
【0091】
フィルムキャスト試験
イソシアネートバインダー(デュポン(Dupont)「イムロン(IMRON)5000」、193S活性化剤(Activator)、オリゴマーイソシアネートの混合物、1mL)を、酢酸エチル中からのポリマー溶液(25%w/w)に加えた。この混合物から50μLを採取して、プラスチックフレームを有する顕微鏡用ガラススライド(10×10×2mm)上にキャストし、周囲温度で静置して硬化させた。このフィルムをガラススライドから取り外し、遠心分離用バイアルに移した。THF(1mL)を試料に加え、振り混ぜて全ての可溶性材料を可溶化した。次にこのバイアルを6000rpmで5分間遠心分離した。上澄みの一部(0.5mL)を取り出し、THF(0.5mL)で置換した。この方法を3回繰り返して、あらゆる可溶性材料を除去し、真空デシケーター中で終夜乾燥した後、残りの不溶性材料の重量を求めた。キャストしたフィルムの溶解性の結果を以下の表に示す。
【0092】
【表3】

【0093】
これらの結果から、アクリル酸ヒドロキシエチル(HEAおよびHEMA)を含有して形成されたフィルムはTHF中に不溶性であったことが分かる。対照的に、ヒドロキシル官能性を含有せずに形成されたポリマーは、イソシアネートと架橋して網目構造を形成することがなく、有機溶媒THFに対して可溶性であった。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明のミクロゲルとPMMAの分子量による固有粘度の電荷を比較している。
【図2】星型ミクロゲル、フリーラジカル重合(FRP)により得られたワンポットミクロゲル、および線状PMMAのキャピラリー粘度測定法によって測定した固有粘度を比較したグラフである。
【図3】ミクロゲルの形成に必要な処方計画を示すグラフである。
【図4】MMA/EGDAポリマーの比較を示すグラフである。
【図5a】コーンプレート型粘度計で測定した星型ミクロゲルの粘度の比較を示すグラフである。
【図5b】コーンプレート型粘度計で測定した星型ミクロゲルの比較を示すグラフである。
【図6】3つの検出器による典型的なゲル浸透クロマトグラフィートレースのグラフであり、:屈折率(RI)、圧力差(DP)、および光散乱(LS)を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が50,000を超えるミクロゲル粒子を含むミクロゲル組成物であって、コーンプレート型粘度計で測定した、ジオキサン中の前記ミクロゲルの60%w/w溶液の粘度が10Pa・s未満となる組成物。
【請求項2】
前記重量平均分子量が少なくとも100,000である請求項1に記載のミクロゲル組成物。
【請求項3】
前記重量平均分子量が少なくとも200,000である請求項1に記載のミクロゲル組成物。
【請求項4】
前記ミクロゲル粒子の大きさが、標準的GPC法で測定した直径で200nm未満である請求項1に記載のミクロゲル組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のミクロゲル組成物を含むコーティング組成物であって、前記ミクロゲルが、前記コーティング組成物のバインダー成分の少なくとも一部を形成しており、前記ミクロゲルが液体担体中に溶解している組成物。
【請求項6】
前記有機溶媒が、芳香族炭化水素、アルコール類、脂肪族炭化水素、ケトン類、および複素環からなる群より選択される請求項5に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記ミクロゲルが、前記組成物の5〜90重量%の量で存在する請求項5に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記ミクロゲル粒子が、架橋したコアと、前記コアに結合した腕とを含み、前記コアが多価不飽和モノマーから形成され、前記腕が一価不飽和モノマーから形成される請求項5に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記バインダー中に存在する官能基と反応性である架橋剤を含む第2の成分をさらに含み、前記反応性官能基が前記ミクロゲル中および/または前記バインダーの追加成分中に存在する請求項5に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記架橋剤が、ポリイソシアネート、ジエポキシモノマー、アミン樹脂、シロキサン、およびそれらの2種類以上の混合物からなる群より選択される請求項9に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記バインダー中の反応性基が、ヒドロキシル、アミン、カルボキシル、アルコキシシラン、エポキシ、およびそれらの混合物からなる群より選択される請求項9に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマーから選択されるバインダーをさらに含む請求項9に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
アルキド、ポリエステル、メラミンホルムアルデヒド樹脂などのアミノ樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン、およびそれらの混合物からなる群より選択される熱硬化性ポリマーバインダー樹脂を含む請求項9に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
前記ミクロゲル粒子および場合により使用される他のポリマーバインダー成分から選択される前記バインダー成分の少なくとも一部の中に存在する官能基との硬化反応に適合した架橋剤をさらに含む請求項5に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
前記ポリマーバインダー組成物が、前記架橋剤と架橋するための反応性官能基を含む非ミクロゲルポリマーバインダー成分を含む請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
前記ミクロゲル粒子が、前記架橋剤と架橋するための反応性官能基を含む請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
前記ミクロゲルが、さらに、前記架橋剤と反応性の基を含む請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項18】
反応性官能基含有ポリマーと、ミクロゲルバインダー系と、場合により有機溶媒、顔料、充填剤、助剤、および添加剤などの他の成分とを含む第1の成分と、ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート、1分子当たり少なくとも2つのエポキシド基を有するエポキシド化合物、アミノ樹脂、およびシロキサン架橋剤からなる群より選択される架橋剤を含む第2の成分とを含む、コーティング組成物系。
【請求項19】
前記バインダー成分が、全組成物の50〜90重量%を構成し、前記架橋剤成分が、全組成物の10〜50重量%を構成する請求項9に記載のコーティング組成物。
【請求項20】
全組成物の35重量%未満の量の有機担体を含む請求項9に記載のコーティング組成物。
【請求項21】
一価不飽和モノマーおよび多価不飽和架橋性モノマーを有機溶媒中の溶液として含むモノマー組成物のフリーラジカル溶液重合によって調製された請求項1に記載のミクロゲル組成物であって、前記一価不飽和モノマーの反応性比が、前記多価不飽和モノマーと大きく異なり、前記モノマー組成物中の前記モノマー成分の濃度および架橋性モノマーの比率が、重量平均分子量が少なくとも50000の分離したミクロゲル粒子の溶液が得られるように制御される組成物。
【請求項22】
前記多価不飽和モノマーの比率が、全モノマー成分の15重量%未満である請求項21に記載のミクロゲル組成物。
【請求項23】
前記全モノマー濃度が、全組成物の10〜50重量%である請求項21に記載のミクロゲル組成物。
【請求項24】
前記ミクロゲルの調製に使用される前記全モノマーが、全組成物の25〜45重量%を構成する請求項21に記載のミクロゲル組成物。
【請求項25】
少なくとも1種類の架橋剤の少なくとも1種類のモノマーに対する反応性比(r)が、少なくとも1.5である請求項21に記載のミクロゲル組成物。
【請求項26】
前記一価不飽和モノマーの前記反応性比が0.5未満である請求項21に記載のミクロゲル組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−508207(P2006−508207A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554075(P2004−554075)
【出願日】平成15年11月27日(2003.11.27)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001580
【国際公開番号】WO2004/048428
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(500513701)ザ・ユニヴァーシティ・オヴ・メルボルン (2)
【Fターム(参考)】