説明

ミクロトーム

【課題】切断刃の交換が容易であるとともに、試料の交換時において切断刃に技師の手指の接触を防止することができるミクロトームを提供する。
【解決手段】
ミクロトーム10は、試料Sを保持する試料ホルダ32と、切断刃15を保持する切断刃ホルダ16と、切断刃ホルダ16の切断刃15が試料ホルダ32から離間した待機領域R1、及び試料ホルダ32の試料を切断する切断領域R3を含むように切断刃ホルダ16を移動する切断刃移動機構20を備える。ミクロトーム10は、切断刃ホルダ16が待機領域R1に位置する際にのみ、切断刃15よりも試料ホルダ32側に位置するとともに切断刃15よりも下方に位置して切断刃15の刃先に人の手指が触れないようにガードするガード部40eを有する安全ガード40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に病理学的試料を薄片状に切断して検鏡試片を得るためのミクロトームに関し、特に滑走式のミクロトームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、主に病理学的試料を薄片状に切断して検鏡試片を得るための滑走式ミクロトームが知られている。滑走式ミクロトームは、切断刃を保持する切断刃ホルダをレール上に水平移動自在に配置した切断刃移動機構と、試料を保持した試料ホルダを上下方向に昇降自在に配置する試料ホルダ上下位置調整機構とを備えている。そして、滑走式ミクロトームでは、切断刃移動機構の切断刃の移動軌跡上に、試料を突出させるように試料ホルダ上下位置調整機構を操作者は手動で操作し、その後、切断刃移動機構の切断刃ホルダを手動で操作して、切断刃の移動軌跡から上方に突出した部分を切断刃によって切断することにより、検鏡試片を得るようにしている。
【0003】
ところで、上記のようなミクロトームにおいて試料を交換する場合は、切断刃ホルダを切断刃移動機構を介して前記試料ホルダから離間させて待機位置に位置させている。しかし、試料ホルダと待機位置に位置する切断刃ホルダの離間距離が短いため、切断刃ホルダに保持された切断刃の刃先に技師の手が触れてしまい、手指に傷を付けてしまう問題がある。このため、特許文献1ではこの問題を解消するために、切断刃ホルダに四角枠状をなす安全ガードの一辺を上下方向に回転自在に支持した構成が提案されている。この特許文献1では、試料の切断時に前記安全ガードを予めその一辺が切断刃の刃先の前上方に位置させた状態でマグネットにより保持され、この状態で切断作業が行われるようにしている。又、特許文献1では、前記安全ガードを跳ね上げして切断刃の刃先前方にあった安全ガードの一辺を除去した上で、切断刃の交換を行うようにしている。ところが、特許文献1の場合、下記の問題がある。
【0004】
(1) 検鏡資料の切断時において、安全ガードの一辺が切断刃の刃先の前上方に位置しているため、薄切り時に試料の上方を安全ガードが通過する。このため、切断刃の刃先と試料を注視する技師にとっては見づらく、うっとしくなる問題があった。
【0005】
(2) 又、薄切りされた試料は切断刃ホルダ上にカールした状態で取り残されるが、技師がこの試料をピンセットで一枚ずつ採取する際、前記安全ガードが邪魔になり、採取しずらい問題がある。
【0006】
(3) 又、前記安全ガードは回転自在に支持されているため、切断刃の交換時には、手動で安全ガードを跳ね上げた状態にし、交換終了時には手動で安全ガードをその一辺が切断刃の刃先の前上方に位置させた状態に回転させる必要があり、安全ガードの配置作業が繁雑となる問題がある。
【0007】
(4) 又、安全ガードに回転支持するための機構が必要であったり、切断時に切断刃の刃先の前上方に一辺が位置するように保持するためマグネットを使用する等、機構が複雑となる問題もある。
【0008】
この問題を解決するために、特許文献2では、切断刃ホルダに安全カバーが着脱自在に取付けられるとともに該安全カバーの中央部において、作業者側の一部を開口する切欠部が形成された技術が提案されている。
【特許文献1】実用新案登録番号第3033094号
【特許文献2】特開2003−130767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2では、上記(1)、(2)、(4)の問題はないが、切断刃の交換時には、安全カバーを取り外すか、或いは、切断刃ホルダを安全カバーの横から取り外して交換する必要があり、切断刃の交換が行いにくい問題があった。又、特許文献2では、待機位置に切断刃ホルダが位置している場合、安全カバーの一部が開口して切断刃の刃先が露出されているため、露出された切断刃の刃先に技師の手が触れてしまう問題がある。
【0010】
前記問題は、ロータリ式のミクロトームにおいても同様の問題がある。一般にロータリ式のミクロトームは、切断刃ホルダは切断時には固定され、試料ホルダは上下動自在に支持されている。そして、試料ホルダを切断刃ホルダへ移動することによって、試料を薄片状に切断する。従って、試料ホルダを切断終了後、切断ホルダから離間した待機位置に位置させた状態で試料交換を行う際に、切断刃ホルダに保持された切断刃に技師の手指が触れてしまい、手指に傷を付けてしまう問題がある。
【0011】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は切断刃の交換が容易であるとともに、試料の交換時において切断刃に技師の手指の接触を防止することができるミクロトームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、試料を保持する試料ホルダと、切断刃を保持する切断刃ホルダと、前記切断刃ホルダの切断刃が前記試料ホルダから離間した待機領域、及び前記試料ホルダの試料を切断する切断領域を含むように前記切断刃ホルダを移動する切断刃移動機構とを備えたミクロトームにおいて、前記切断刃ホルダが前記待機領域に位置する際にのみ、前記切断刃よりも前記試料ホルダ側に位置するとともに該切断刃よりも下方に位置して該切断刃の刃先に人の手指が触れないようにガードするガード部を有する安全ガードを備えたことを特徴とするミクロトームを要旨とするものである。
【0013】
請求項2の発明は請求項1において、前記安全ガードのガード部は、切断刃の刃先と平行に配置されていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記安全ガードのガード部の基端が上方に折り曲げ形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項において、前記切断刃移動機構には、前記切断刃において該切断機構上方に位置する部位の刃先よりも切断方向側に位置し、かつ該切断刃よりも下方に位置するガード部材を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、試料を保持する試料ホルダと、切断刃を保持する切断刃ホルダと、前記試料ホルダの試料が前記切断刃ホルダから離間した待機領域、及び前記切断刃ホルダの切断刃により切断される切断領域を含むように前記試料ホルダを移動する試料ホルダ移動機構とを備えたミクロトームにおいて、前記試料ホルダが待機領域に位置する際にのみ、前記切断刃よりも前記試料ホルダ側に位置して、人の手指が触れないようにガードするガード部を有する安全ガードを備えたことを特徴とするミクロトームを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1発明によれば、切断刃を交換する際、切断刃を覆う安全ガードはないため、切断刃の交換が容易であるとともに、試料の交換時においては、ガード部により切断刃の刃先に技師の手指の接触を防止できる。
【0017】
請求項2の発明によれば、安全ガードのガード部が切断刃の刃先と平行に配置されていることにより、刃先に対するガード部の配置が効率的になり、コスト低減を図ることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、前記安全ガードのガード部の基端が上方に折り曲げ形成されていることにより、上方に折り曲げされていない場合に比べてよりガード部を刃先に接近させることができ、手指の刃先に触れる空間域を減らすことができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、切断刃において切断刃移動機構上方に位置する部位の刃先よりも切断方向側に位置し、かつ該部位よりも下方に位置するガード部材により、該部位の刃先による技師の手指の傷付きを防止できる。
【0020】
請求項5の発明によれば、切断刃を交換する際、切断刃を覆う安全ガードはないため、切断刃の交換が容易であるとともに、試料の交換時においては、ガード部により切断刃の刃先に技師の手指の接触を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明を滑走式のミクロトームに具体化した第1実施形態を図1〜4を参照して説明する。なお、本明細書では、後述する切断刃15の移動方向において、切断刃15が試料Sを切断する切断方向を前方向とし、ミクロトーム10を前から見た場合を基準として、同移動方向に直交する方向を左右方向とする。
【0022】
図1に示すように、ミクロトーム10の機台11は、略ボックス状に形成されるとともに該機台11側部には機台11よりも高さを有するテーブル12が設けられている。テーブル12上面は前後方向に水平に延出されて滑走面12aが形成されている。テーブル12の滑走面12a上には前後方向に沿って移動するスライダ13が嵌合されている。スライダ13はテーブル12の右側面に沿って下方に延出されたハンドル部19が設けられており、技師が該ハンドル部19を把持して前後方向に操作可能である。
【0023】
スライダ13上面にはホルダ支持体14が設けられ、該ホルダ支持体14上には切断刃15を水平に保持する切断刃ホルダ16が設けられている。図1に示すように切断刃ホルダ16の上部の前面には、切断刃15を差し入れ可能に凹部16bが形成されている。該凹部16b内に切断刃15を差し入れた状態で切断刃ホルダ16上部に設けられたレバー16aを操作すると、図示しない押圧部材が切断刃15を凹部16bの側面に押圧することにより切断刃15を着脱可能に取着する。
【0024】
切断刃15は該切断刃15の進行方向(すなわち、前方向A)に対して引き角θが0〜90°となるように切断刃ホルダ16により保持される。なお、引き角θを90°未満にすることにより、切断刃15の尖端のアールを小さくすることができ、切れ味が良くなる。なお、一般には、滑走式のミクロトームでは、引き角θは45°が好ましいとされている(図2では、切断刃15は引き角θが45°で図示されている。)。
【0025】
又、本実施形態では、切断刃ホルダ16の下部に設けられた台はホルダ支持体14の上面に対し螺合された締付ボルト17によりホルダ支持体14に対して締付け固定されるとともに、締付ボルト17の締付けを緩めることにより切断刃ホルダ16は締付ボルト17を中心に回転変位可能である。従って、上記切断刃15の引き角θは、切断刃ホルダ16の回転変位に応じて変更可能である。
【0026】
滑走面12aを有するテーブル12を滑走するスライダ13は切断刃移動機構20を構成する。
図1及び図3に示すように機台11上面において、その中央部より前部寄り位置には、ホルダ支持部材31を介して試料ホルダ32が設けられている。ホルダ支持部材31は機台11内に配置された上下位置調節機構33に作動連結されている。
【0027】
上下位置調節機構33は、機台11の左側面に設けられた高さ調整ハンドル34が回転操作されると、その回動量に応じてホルダ支持部材31を介して試料ホルダ32の高さを荒調整する。又、上下位置調節機構33は、機台11の前面に設けられた試料厚み設定ダイヤル35が回動操作されると、その回動操作量に応じてホルダ支持部材31を介して試料ホルダ32の高さを微調整する。
【0028】
又、上下位置調節機構33は、機台11の左側面に設けられたレバー36が上下方向に操作されると、その操作回数に応じてホルダ支持部材31を介して試料ホルダ32の高さを調整する。
【0029】
試料ホルダ32の上面には上方へ突出された固定爪32aが形成されるとともに該固定爪32aに対して可動爪32bがその下部において図示しないスプリングの付勢力に抗して上下方向へ揺動自在に取着されている。そして、図2及び図3に示すように可動爪32bには試料ホルダ32から前方へ突出された操作杆32cが上下方向に操作されることにより、固定爪32aと協働して試料Sを着脱自在に挟着可能である。
【0030】
前記スライダ13が図2に示すように滑走面12a上を滑走することにより、切断刃ホルダ16は前後方向に延びる移動領域Rを移動する。なお、図2では、移動領域Rは切断刃ホルダ16の後端の変位位置を基準に図示されている。移動領域Rは待機領域R1、中間領域R2及び切断領域R3に区分される。待機領域R1は移動領域Rの後部領域であり、切断刃15が切断を行わない場合に待機する領域である。切断領域R3はスライダ13が移動する際に、切断刃ホルダ16に保持された切断刃15が試料ホルダ32に保持された試料Sを切断する領域である。中間領域R2は待機領域R1と切断領域R3の中間に位置する領域である。
【0031】
機台11の後部側面には、安全ガード40が取付けされている。安全ガード40は図1〜4に示すように一本の金属製の線材から形成されている。安全ガード40は水平にかつ平行に延びる一対の取付部40aと、各取付部40aの先端から上方に同じ高さとなるように延出された柱状部40bと、柱状部40bから前方へ水平にかつ平行に延出された一対のアーム部40c,40d及び両アーム部40c,40d間を連結するガード部40eからなる。
【0032】
前記一対の取付部40aは図4に示すように機台11の側壁11aに対して、同じ高さ位置となるように形成された一対の取付孔11bに対して着脱自在に挿通されている。なお、図4において、取付部40aの外周にはストッパ40fが突出され、ストッパ40fにより取付孔11bに対する取付部40aの取付位置が規定されている。
【0033】
又、安全ガード40のアーム部40c,40dは、図1、図3に示すように機台11の上面の上方に位置するとともに、切断刃ホルダ16に保持された切断刃15よりも下方に位置するように配置されている。そして、テーブル12に近位に位置するアーム部40cはテーブル12に遠位に位置するアーム部40dよりも長くされており、図2及び図3に示すようにアーム部40c,40d間を連結するガード部40eは本実施形態では、試料ホルダ32に保持された切断刃15の刃先と平行になるように配置されている。すなわち、ガード部40eは、本実施形態では、引き角θと合うように配置されている。又、アーム部40c,40dが切断刃15よりも下方に位置するように配置されているため、ガード部40eも切断刃15よりも下方に位置する。
【0034】
又、ガード部40eは、図2に示すように切断刃ホルダ16が待機領域R1内に位置する際に、切断刃15の刃先よりも前方に位置するように配置されている。このことによって、待機領域R1に切断刃ホルダ16が位置する際、ガード部40eによって技師の手指が切断刃15に触れないようにされている。
【0035】
従って、本実施形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1) 本実施形態の滑走式のミクロトーム10では、試料Sを保持する試料ホルダ32と、切断刃15を保持する切断刃ホルダ16と、切断刃ホルダ16の切断刃15が試料ホルダ32から離間した待機領域R1、及び試料ホルダ32の試料を切断する切断領域R3を含むように切断刃ホルダ16を移動する切断刃移動機構20とを備える。又、ミクロトーム10は、切断刃ホルダ16が待機領域R1に位置する際にのみ、切断刃15よりも試料ホルダ32側に位置するとともに切断刃15よりも下方に位置して切断刃15の刃先に人の手指が触れないようにガードするガード部40eを有する安全ガード40を備える。この結果、本実施形態では、切断刃15を交換する際、切断刃15を覆う安全ガードはなく、切断刃15及び切断刃ホルダ16の上方には邪魔なものが存在しない。このため、切断刃15の交換が容易である。又、試料Sの交換時においては、待機領域R1に切断刃ホルダ16を移動した状態で行う。この状態では、切断刃15の刃先は、図2に示すようにガード部40eによりガードされて切断刃15の刃先に技師の手指が触れることがない。この結果、試料Sの交換時に技師の手指が傷つけることがない。
【0036】
(2) 本実施形態では、安全ガード40のガード部40eは、切断刃15の刃先と平行に配置されている。このことにより、切断刃15の刃先に対するガード部40eの配置が効率的になり、ガード部40eを必要最小限の大きさ(長さ)にすることができるため、材料費低減によりコスト低減を図ることができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に本発明をロータリ式のミクロトーム100に具体化した第2実施形態を図5(a)、(b)を参照して説明する。図5(a)はロータリ式のミクロトーム100の概略図である。
【0038】
ミクロトーム100は台座101上に機構部ケース102が設けられるとともに、機構部ケース102には試料ホルダ103が上下動自在に支持されている。すなわち、機構部ケース102内には回転運動を上下動の直線運動に変換する試料ホルダ移動機構としての上下動機構部104が設けられ、機構部ケース102の側面に設けられた操作ノブ105を回転操作することにより、上下動機構部104はその回転操作量に応じて試料ホルダ103を上下動する。本実施形態において、試料ホルダ103の上下動の範囲は、図5に示す移動領域Rとなっている。なお、図5においては、移動領域R10は試料ホルダ103の中心軸の変位位置を基準に図示されている。試料ホルダ103には図5(b)に示すように、略コ字状をなす安全ガード106が取着されている。この安全ガード106は、鉛直方向にかつ平行に延びる一対のアーム部106a,106bと、両アーム部106a,106b間を連結するガード部106cからなる。ガード部106cの両端は、図5(a)に示すように切断刃ホルダ200側へ折り曲げされている。なお、ガード部106cは、後述する切断刃ホルダ200に取着された切断刃205に対しては干渉しない位置に配置されるとともに、平行となるように配置されている。
【0039】
又、台座101上には切断刃ホルダ200が配置され、切断刃ホルダ200は台座101上に設けられたガイドレール108により機構部ケース102に対して接近移動可能であるとともに、図示しないロック装置によりロックされて位置保持が可能である。そして、図5(a)に示すように、切断刃ホルダ200の上部にはチャンネル状の取付溝204が形成され、取付溝204内に切断刃205が配置されている。切断刃205は図5(a)においては、紙面に直交する方向に延出されている。すなわち、切断刃205のり引き角は90°とされている。切断刃205は切断刃ホルダ200の上面から螺入されたボルト206の締付けにより、取付溝204内に配置された押圧部材207を介して締付け固定されている。又、ボルト206が緩められて押圧部材207の切断刃205に対する締付けが解除されることにより切断刃205の交換が可能となっている。
【0040】
図5に示すように切断刃205が切断刃ホルダ200に取付された状態で、試料ホルダ103が移動されることにより切断刃205により切断される領域をR11で示す。そして、本実施形態では切断刃205により切断されずに、試料ホルダ103が待機する領域(待機領域R12)は移動領域R10の上端であるワンポイントである。
【0041】
このワンポイントの待機領域R12に試料ホルダ103が位置する際に、安全ガード106のガード部106cは図5(a),(b)に示すように切断刃205の刃先よりも上方に配置される。そして、この位置に試料ホルダ103が位置する際には切断刃205とガード部106c間には手指が入らない間隔とされている。
【0042】
従って、第2実施形態のロータリ式のミクロトーム100では、試料ホルダ103が待機領域R12に位置する際にのみ、切断刃205よりも試料ホルダ103側に位置して、人の手指が触れないようにガードするガード部106cを有する安全ガード106を備えるようにした。この結果、切断刃205を交換する際、切断刃205を覆う安全ガードはないため、切断刃205の交換が容易にすることができる。又、試料Sの交換時においては、ガード部106cにより切断刃205の刃先に技師の手指の接触を触れないようにすることができ、手指の傷付きが防止できる。
【0043】
なお、前記実施形態は、以下の別の態様に変更してもよい。
○ 前記滑走式のミクロトームの実施形態の構成に対して、さらに、図6に示すようにホルダ支持体14に対してガード部材50を設けてもよい。なお、図6においては、説明の便宜上、ホルダ支持体14上に設けられる切断刃ホルダ16、切断刃15は省略されている。このガード部材50は、金属製の線材にて略コ字状に形成され、その両端がホルダ支持体14の左右両側部に固定されている。そして、両端から前方へ水平に延びた一対のアーム部50a,50bの先端間が第2ガード部50cにより連結されている。なお、この例では、安全ガード40のガード部40eを第1ガード部としている。第2ガード部50cは、図2の2点鎖線で示すように切断刃ホルダ16に保持された切断刃15の刃先よりも前方(切断方向側)に突出されるとともに、かつ、該切断刃15の刃先よりも下方に位置し、ガード部40eと平行に配置されている。
【0044】
このようにガード部材50が構成されることにより、切断刃15において切断刃移動機構20上方に位置する部位の刃先よりも切断方向側に位置し、かつ該部位よりも下方に位置するガード部材50により、該部位の刃先による技師の手指の傷付きを防止できる。
【0045】
○ 前記滑走式のミクロトームの実施形態の構成中、図7に示すように安全ガード40のガード部40eの各端部である基端を上方に折り曲げ形成してもよい。このように構成することにより、基端が上方に折り曲げされていない場合に比べてよりガード部40eを切断刃15の刃先に接近させることができ、手指の刃先に触れる空間域を減らすことができる。
【0046】
○ 前記滑走式のミクロトームの実施形態では、安全ガード40のアーム部40c,40dは水平にかつ平行に延出するようにしたが、水平に限定されるものではなく、前記実施形態よりも柱状部40bの高さを低くして、アーム部40c,40dを斜め上方に延出するようにしてもよい。又は、反対に、前記実施形態よりも柱状部40bの高さを高くして、アーム部40c,40dを斜め下方に延出し、途中で水平に配置するようにしてもよい。又、前記実施形態ではアーム部40c,40dは互いに平行に配置したが、平行に限定するものではなく非平行としてもよい。
【0047】
○ 前記滑走式のミクロトームの実施形態では、安全ガード40の取付部40aを機台11の側壁11aの取付孔11bに着脱自在に差し込みしたが、図4において、機台11内に突出した取付部40aに対してナットを着脱自在に螺着するようにしてもよい。この場合、機台11には外部から前記ナットが操作できる操作口を設けるものとする。
【0048】
○ 前記滑走式のミクロトームの実施形態では、安全ガード40のアーム部40c,40d間を連結する複数の連結部材を格子状に配置してもよい。この連結部材により、アーム部40c,40d間に手指が入らなくすることができ、より安全にすることができる。この連結部材は例えばガード部40eと平行に配置したり、非平行に配置してもよい。
【0049】
○ 前記滑走式のミクロトームの実施形態では安全ガード40は金属製の線材にて形成されていたが、金属製の線材に限定されるものではなく、他にプラスチック製や木製等から形成してもよく、或いは線材の代わりに板材にて形成してもよい。
【0050】
○ 第1実施形態では安全ガード40のアーム部40c,40dに長さに差異を設けたが、同じであってもよい。
○ 第2実施形態においては、待機領域R12はワンポイントとしたが、第1実施形態と同様に幅を持たせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態のミクロトームの正面図。
【図2】同じくミクロトームの平面図。
【図3】同じくミクロトームを示す斜視図。
【図4】同じくガードの支持構造を示す断面図。
【図5】(a)第2実施形態のミクロトームの概略説明図、(b)は試料ホルダ103が待機領域R12に位置する際の安全ガード106と切断刃205の位置関係を示す説明図。
【図6】他の実施形態の安全ガードの説明図。
【図7】他の実施形態の安全ガードの説明図。
【符号の説明】
【0052】
10,100…ミクロトーム、13…スライダ、15…切断刃、
16…切断刃ホルダ、20…切断刃移動機構、32…試料ホルダ、50…ガード部材、 104…上下動機構部(試料ホルダ移動機構)、S…試料、
R,R10…移動領域、R1,R12…待機領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持する試料ホルダと、切断刃を保持する切断刃ホルダと、
前記切断刃ホルダの切断刃が前記試料ホルダから離間した待機領域、及び前記試料ホルダの試料を切断する切断領域を含むように前記切断刃ホルダを移動する切断刃移動機構とを備えたミクロトームにおいて、
前記切断刃ホルダが前記待機領域に位置する際にのみ、前記切断刃よりも前記試料ホルダ側に位置するとともに該切断刃よりも下方に位置して該切断刃の刃先に人の手指が触れないようにガードするガード部を有する安全ガードを備えたことを特徴とするミクロトーム。
【請求項2】
前記安全ガードのガード部は、切断刃の刃先と平行に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のミクロトーム。
【請求項3】
前記安全ガードのガード部の基端が上方に折り曲げ形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のミクロトーム。
【請求項4】
前記切断刃移動機構には、
前記切断刃において該切断機構上方に位置する部位の刃先よりも切断方向側に位置し、かつ該切断刃よりも下方に位置するガード部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載のミクロトーム。
【請求項5】
試料を保持する試料ホルダと、切断刃を保持する切断刃ホルダと、
前記試料ホルダの試料が前記切断刃ホルダから離間した待機領域、及び前記切断刃ホルダの切断刃により切断される切断領域を含むように前記試料ホルダを移動する試料ホルダ移動機構とを備えたミクロトームにおいて、
前記試料ホルダが待機領域に位置する際にのみ、前記切断刃よりも前記試料ホルダ側に位置して、人の手指が触れないようにガードするガード部を有する安全ガードを備えたことを特徴とするミクロトーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−51636(P2008−51636A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227612(P2006−227612)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000112473)フェザー安全剃刀株式会社 (17)
【Fターム(参考)】