説明

ミシン目付包装用2層フィルム及び包装袋

【課題】 透明性、バリア性に優れ、かつ開封性良好で低コストで製造可能なミシン目付包装用2層フィルムを得ることを目的とする。
【解決手段】 包装袋の外層を形成する合成樹脂フィルムであって、内側面に印刷用のインキ層が形成されると共に、予め当該フィルム面を貫通するミシン目が形成された基材合成樹脂フィルム層と、上記包装袋の内層を形成する合成樹脂フィルムであって、熱シール可能な合成樹脂フィルム層と、上記基材合成樹脂フィルム層と上記熱シール可能な合成樹脂フィルム層とを接合するガスバリア性接着剤層とから構成され、上記ガスバリア性接着剤層は耐熱性のある樹脂を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性を有する多層構造の包装フィルムに関し、特に開封用のミシン目を有するミシン目付包装用2層フィルム及びそれを利用した包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水蒸気、酸素の遮断が必要な内容物に対して、積層フィルムの1層に設けたミシン目等の切れ目で、円滑かつ確実に開封することができる包装用フィルムは、「ミシン目を入れるフィルム層」(基材層)、「水蒸気・酸素遮断性を持ったフィルム層」(ガスバリア層)、「熱シールができるフィルム層」(熱溶着層)からなる多層フィルムからなり、これらのフィルム層間を接着剤層で接合することにより積層ラミネートフィルムとして構成されていた。
【0003】
具体的には、図4(a)に示すように、包装袋として構成された場合の外側から内側に向かって、ミシン目を入れるフィルム層10/デザイン等を印刷するインキ層11/接着剤層12/水蒸気・酸素遮断性を持ったフィルム層13/接着剤層14/熱シールができるフィルム層15から構成されており、少なくとも3種類のフィルム層10,13,15を接着剤層12,14で接合する構成であった。
【0004】
または、図4(b)に示すように、包装袋として構成された場合の外側から内側に向かって、水蒸気・酸素遮断性を持ったフィルム13/インキ層11/接着剤層12/ミシン目を入れるフィルム層10/接着剤層14/熱シールができるフィルム層15から構成されており、上記と同様に少なくとも3種類のフィルム層10,13,15を接着剤層12,14で接合する構成であった。
【0005】
また、ガスバリア性フィルム、ミシン目を有する基材フィルム、及び熱溶着フィルムからなる積層フィルムでは、各層を接着剤層により貼り合わせることにより構成されているが、確実なガスバリア性を確保するため、ガスバリア層と基材層との間に金属酸化物による蒸着薄膜層を備えるものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−58590号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来の3層構造の包装フィルムは、水蒸気・酸素遮断性を持つガスバリアフィルム4に加えて2層の接着剤層12,14が必要であるため、コスト高となり、より低コストで製造可能なガスバリア性の高い包装フィルムが望まれている。
【0008】
また、上記特許文献1の包装フィルムでは、金属酸化物蒸着薄膜層を使用しており、食品等の包装フィルムとしては高価であるとの課題がある。
【0009】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、開封性に優れ、しかもガスバリア性が高く、低コストで製造容易なミシン目付包装用2層フィルム及び包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、包装袋の外層を形成する合成樹脂フィルムであって、内側面に印刷用のインキ層が形成されると共に、予め当該フィルム面を貫通するミシン目が形成された基材合成樹脂フィルム層と、上記包装袋の内層を形成する合成樹脂フィルムであって、熱シール可能な合成樹脂フィルム層と、上記基材合成樹脂フィルム層と上記熱シール可能な合成樹脂フィルム層とを接合するガスバリア性接着剤層とから構成され、上記ガスバリア性接着剤層は耐熱性のある樹脂を使用したものであることを特徴とするミシン目付包装用2層フィルムにより構成される。
【0011】
このように構成すると、バリア性接着剤を用いたドライラミネート法或いはバリア性接着剤をアンカーコート剤として用いた押出ラミネート法により、ガスバリア性が高く、加熱処理を行っても開封性の損なわれないミシン目付包装用2層フィルムが低コストで実現できる。
【0012】
第2に、上記基材合成樹脂フィルム層、熱シール可能な合成樹脂フィルム層及びガスバリア性接着剤層は共に透明な樹脂により構成されたものであることを特徴とする上記第1記載のミシン目付包装用2層フィルムにより構成される。
【0013】
このように構成すると、ガスバリア性の高い透明の包装用2層フィルムを低コストで製造することが可能となる。
【0014】
第3に、2枚の上記ミシン目付包装用2層フィルムの熱シール可能な合成樹脂フィルム面同士の周囲を熱溶着して包装袋を形成し、上記基材合成樹脂フィルム層に形成されたミシン目により開封用切れ目を形成してなる上記第1又は2に記載のミシン目付包装用2層フィルムによる包装袋により構成される。
【0015】
このように構成すると、ガスバリア性が高く、加熱処理を行っても開封性の損なわれない包装袋を低コストで実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したので、ガスバリア性接着剤を用いることで、蒸着フィルムを用いることなく、ガスバリア性が高く、加熱処理を行っても開封性の損なわれないミシン目付包装用2層フィルムを低コストで実現することができる。
【0017】
また、ガスバリア性能を維持しながら透明性の高いミシン目付包装用2層フィルムを低コストで実現できる。
【0018】
また、ガスバリア性が高く、加熱処理を行っても開封性の損なわれない包装袋を低コストで実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るミシン目付包装用2層フィルムを示す断面図である。
【図2】同上2層フィルムから包装袋を形成する状況を示す当該2層フィルムの正面図である。
【図3】同上2層フィルムにより形成した包装材の断面図である。
【図4】(a)(b)共に従来の水蒸気・酸素遮断性多層フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のミシン目付包装用2層フィルム及び包装袋について詳細に説明する。
【0021】
(多層包装用フィルムの構成)
図1に示すように、ミシン目を入れる基材合成樹脂フィルム層1と熱シールができる熱溶着性合成樹脂フィルム層(合成樹脂フィルム層)2とをバリア性接着剤層(ガスバリア性接着剤層)3で接合して食品等の包装用2層フィルム4を形成する。
【0022】
上記基材合成樹脂フィルム層1、熱溶着性合成樹脂フィルム層2及びバリア性接着剤層3はそれぞれ透明であって上記基材合成樹脂フィルム層1の内面側に文字、写真等を記した印刷を施してインキ層5を形成することにより、当該文字等を基材合成樹脂フィルム層1表面側から透視することができる。
【0023】
各フィルム層1,2及び接着剤層3は透明であるため、インキ層5が存在しなければ、内容物を外部から透視することができる。或いはインキ層5が存在しても、インキ層5が存在しない部分においては、内容物を外部から透視することができる。
【0024】
(基材合成樹脂フィルム層1)
上記基材合成樹脂フィルム層1は、ミシン目6が貫通状態で設けられると共に、フィルムに機械的強度を与えるものであるから、機械的強度を有する材質、例えば二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、二軸延伸ポリエステルフィルム等の二軸延伸フィルム、或いは延伸ナイロンフィルム等が用いられる。何れも透明なフィルムが用いられる。
【0025】
(熱溶着性合成樹脂フィルム層2)
上記熱溶着性合成樹脂フィルム層2としては、低温度で溶融する低融点ポリマー層であることが好ましく、例えば無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)、低密度ポリエチレン無延伸フィルム等を使用する。この熱溶着性合成樹脂フィルム層2も透明なフィルムが用いられる。
【0026】
(バリア性接着剤層3)
上記バリア性接着剤層3としては、例えば、活性水素含有化合物を主成分とする成分と、有機ポリイソシアネート化合物を主成分とする成分からなる2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物から構成されるものが知られており(例えば特開2005−161690)、市販品としては三菱瓦斯化学工業株式会社製のガスバリア性ドライラミネート用接着剤である「マクシーブ」(登録商標)を用いることができる。このバリア性接着剤も無色透明のものを用いることが好ましい。
【0027】
また、本発明で使用するバリア性接着剤は耐熱性のある樹脂、例えば、2液硬化型ポリウレタン系樹脂組成物を使用している。ボイル殺菌、レトルト殺菌等の熱処理を必要とする内容物を入れる場合は、120℃以下の熱処理が必要となる。よって、耐熱性のあるバリア性接着剤を使用することで、上記熱処理を行っても水蒸気・酸素遮断性機能が劣化することがなく、ミシン目による易開封性の低下のない包装用フィルムが可能となる。
【0028】
(インキ層5)
上記インキ層は、基材合成樹脂フィルム1の裏面側(包装袋の内面側)に予め設けられるものであり、商品名、内容物の写真、説明文等が印刷される。
【0029】
(ミシン目6)
上記ミシン目(開封用切れ目)6は上記基材合成樹脂フィルム層1に貫通形成される。ミシン目6の形状としては、色々なものが考えられるが、例えば図2に示すように「ハ」の字として、上記基材合成樹脂フィルム層1の長手方向に直交する方向に、一定間隔毎に予め形成される。
【0030】
(包装用2層フィルム4の製造方法)
本発明に係る包装用2層フィルム4は、従来公知のドライラミネート法又は押出ラミネート法の何れの方法でも製造することができる。
【0031】
まず、基材合成樹脂フィルムは、当該フィルムのロールからフィルムを引き出しながら、多色グラビア印刷機にて内面側(一面側)に印刷を施してインキ層5を形成し、例えばグラビア印刷機の最終印刷部においてローラに「ハ」の字のミシン目刃をフィルムの進行方向に直交する方向に設け、当該ローラを回転させることにより、上記ミシン目刃により、上記フィルムの一定間隔毎に「ハ」の字ミシン目6を貫通形成して行き(図2)、再び巻き取って行く。
【0032】
ドライラミネート法の場合は、熱溶着性合成樹脂フィルムを引き出しながら、バリア性接着剤を塗布してゆき、乾燥させてバリア性接着剤層3を形成した後、上記バリア接着剤を塗布した面に、上記基材合成樹脂フィルムのインキ層5の形成された面を貼り合わせて行くことにより、ミシン目付包装用2層フィルム4を製造することができる。
【0033】
押出ラミネート法の場合は、上記バリア性接着剤をAC剤(アンカーコート剤)として使用する。上記ミシン目6及びインキ層5の形成された基材合成樹脂フィルムをロールから引き出しながら、上記インキ層5の形成された面にAC剤として上記バリア接着剤を塗布して行く。その後、上記AC剤を乾燥させてバリア性接着剤層3を形成した後、AC剤塗布面に押出機から熱溶着性合成樹脂を押し出して行き、熱溶着性合成樹脂フィルム層2を形成し、ミシン目付包装用2層フィルム4を製造することができる。
【0034】
(包装袋の製造)
上記ミシン目付包装用2層フィルム4を使用して包装袋を製造するには、2つの上記包装用2層フィルム4のロールから各々2層フィルム4を引き出し、2枚のフィルム4の各々の熱溶着性合成樹脂フィルム層2の面を対向させ(図2,3)、その両側部7a,7bと長手方向と直交する直線部7cを加熱して対向する熱溶着性合成樹脂フィルム層2,2を熱シールし、一単位毎(図2のa,a’位置)に切断することで包装袋8を形成することができる。その後は、包装袋8に内容物を入れ、開口部を密閉する。
【0035】
上記包装袋8を開封する場合は、包装袋8の側部7aから幅方向線に八の字形ミシン目6に沿ってフィルムを引裂くことによって容易に開封が可能となる。
【0036】
以上のように、本発明は、ミシン目6が貫通形成されると共にインキ層5の形成された基材合成樹脂フィルムに、バリア性接着剤を用いて熱溶着合成樹脂フィルムを貼り合わせることによりミシン目付包装用2層フィルム4を構成したので、水蒸気・酸素遮断性を持ったガスバリア用の専用フィルム(例えば、Kナイロン、MXDナイロン、KOP(登録商標)等)を使用する必要がなく、高い水蒸気・酸素遮断性を有し、良好な直線カット性を有する2層フィルムを低コストで製造することができる。
【0037】
また、ガスバリア性接着剤層3として耐熱性のある樹脂を使用することで、例えば内容物を収納し密封後に、ボイル殺菌、レトルト殺菌等の熱処理(120℃以下)を必要とする内容物用の包装材としても使用することができる。即ち、熱処理を行っても、上記接着剤3がミシン目6に浸透すること等がないため、熱処理後もミシン目6の易カット性を損なうことがなく、しかも水蒸気、酸素のガスバリア性を維持し得る包装用2層フィルムを実現し得るものである。
【実施例】
【0038】
基材合成樹脂フィルムとして、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、バリア性接着剤として、2液硬化型ポリウレタン系樹脂組成物、熱溶着性合成樹脂フィルムとして、無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用し、基材合成樹脂フィルムにグラビア印刷機で印刷を施した後、「ハ」の字のミシン目6を貫通形成した。その後、ドライラミネート法によりバリア性接着剤を使用して上記基材合成樹脂フィルムのインキ層5の形成された面に、熱溶着性合成樹脂フィルムを張り合わせることでミシン目付包装用2層フィルム4を形成した。
【0039】
そして上記包装用2層フィルム4の2枚の両側部、直線部7a,7b,7cの三辺を熱溶着によりシールして包装袋8を形成し、内容物を収納して残りの1辺を熱溶着によりシールして内容物を密封し、90℃の殺菌熱処理を行った。その後、バリア性をテストしたところ、70.0ml/m・day・MPa以下のバリア性を持たせることができた。
【0040】
従って、本発明のミシン目付包装用2層フィルム4を使用した包装袋8は、Kナイロン、MDXナイロン、KOP(登録商標)等の水蒸気、酸素遮断性を持ったバリア性合成樹脂フィルムをガスバリア層として使用した場合と同等のバリア性を有することが確認でき、基材合成樹脂フィルム層1を貫通するミシン目6を有するにもかかわらず、良好なバリア性能を発揮し得ることが確認できた。
【0041】
よって、基材合成樹脂フィルム層1として、Kナイロン、MDXナイロン、KOP(登録商標)を使用してこれらのフィルムにミシン目6を貫通形成しても、上記バリア性接着剤3を使用して上記と同様に本発明のミシン目付包装用2層フィルム4とすることで、さらなる水蒸気・酸素遮断性(バリア性)を確保することができることがわかった。
【0042】
本発明は上述のように、ガスバリア性接着剤を用いることで、蒸着フィルム等のバリア性フィルムを用いることなく、ガスバリア性が高く、加熱処理を行っても開封性の損なわれないミシン目付包装用2層フィルムを低コストで製造することができるものである。
【0043】
また、ガスバリア性能を維持しながら透明性の高いミシン目付包装用2層フィルムを低コストで製造することができるので、食品包装袋等として非常に有効である。
【0044】
また、ガスバリア性が高く、加熱処理を行っても開封性が損なわれないので、ボイル殺菌、レトルト殺菌の必要な内容物を入れる包装用フィルムとしても極めて有効である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のミシン目付包装用2層フィルムは、食品分野に限らず、薬品、化学品、化粧品等のガスバリア性の必要な内容物の包装フィルムとして広く用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 基材合成樹脂フィルム層
2 熱溶着性合成樹脂フィルム層(合成樹脂フィルム層)
3 ガスバリア性接着剤層(バリア性接着剤層)
4 包装用2層フィルム(ミシン目付包装用2層フィルム)
5 インキ層
6 ミシン目
8 包装袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装袋の外層を形成する合成樹脂フィルムであって、内側面に印刷用のインキ層が形成されると共に、予め当該フィルム面を貫通するミシン目が形成された基材合成樹脂フィルム層と、
上記包装袋の内層を形成する合成樹脂フィルムであって、熱シール可能な合成樹脂フィルム層と、
上記基材合成樹脂フィルム層と上記熱シール可能な合成樹脂フィルム層とを接合するガスバリア性接着剤層とから構成され、
上記ガスバリア性接着剤層は耐熱性のある樹脂を使用したものであることを特徴とするミシン目付包装用2層フィルム。
【請求項2】
上記基材合成樹脂フィルム層、熱シール可能な合成樹脂フィルム層及びガスバリア性接着剤層は共に透明な樹脂により構成されたものであることを特徴とする請求項1記載のミシン目付包装用2層フィルム。
【請求項3】
2枚の上記ミシン目付包装用2層フィルムの熱シール可能な合成樹脂フィルム面同士の周囲を熱溶着して包装袋を形成し、
上記基材合成樹脂フィルム層に形成されたミシン目により開封用切れ目を形成してなる請求項1又は2に記載のミシン目付包装用2層フィルムによる包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−31439(P2011−31439A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178656(P2009−178656)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(591230664)丸東産業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】