説明

ミストサウナ装置

【課題】浴室内のカビの繁殖を抑制するミストサウナ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】運転制御手段としての運転制御指示回路4により、浴室内にミスト噴霧運転を行い、40℃〜60℃の温水を加熱し気化した水蒸気を送風機108により浴室内に送ることで、浴室内壁面および浴室内の空気をカビの発生しない温湿度の40℃以上50℃以下、99%RH以上100%RH以下に、浴室内壁面温度をカビの発生しない浴室内壁面温度の40℃以上50℃以下にすることにより、カビの繁殖を抑制するミストサウナ装置が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室内にミストを発生させるミストサウナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のミストサウナ装置として、蒸発したミストを浴室内へ供給するミストサウナ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。以下、そのミストサウナ装置について図6を参照しながら説明する。
【0003】
図6に示すように、ミストサウナ装置101は、給湯暖房機102とループ状の循環管路で接続している熱交換器103と熱交換器上に流されて加熱され、蒸発してミストとなる温水を供給する給湯配管104から構成され、給湯配管104には、給湯加熱部に入る前の位置に流水スイッチ105が設けられ、お湯流量調整弁106が設けてある。また、ミスト発生手段107によりミスト化した水の粒子を浴室内に送り込むための送風機108、凝集した水滴を排水する排水受109を設けている。また、乾燥、暖房運転を制御する手段として浴室内の温湿度を検出する手段110が設けられたものである。
【0004】
浴室内に繁殖するカビを抑制するために、ミストサウナ装置101内部に換気扇を設け、浴室の使用が終了すると、浴室を乾燥させるために換気扇を運転するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3699289号公報
【特許文献2】特開2002−126033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来のミストサウナでは、浴室内のカビの繁殖の抑制には、浴室内を乾燥させて浴室内に付着した水分を除去する必要があるが、浴室内が高温高湿状態にある場合、カビの繁殖を抑制することができないという課題がある。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、浴室内が高温湿度状態であっても、浴室内のカビの繁殖を抑制することができるミストサウナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のミストサウナ装置は、上記目的を達成するために、ミストの噴霧により浴室内壁面および浴室内の空気をカビの発生しない温湿度にせしめる運転制御手段を備え、前記運転制御手段により、水温が40℃以上60℃以下で、粒径が0.1μm以上10μm以下であるミストを噴霧するミスト噴霧運転を1時間以上2時間以下行い、浴室内のカビの繁殖を抑制するものである。
【0009】
また、他の手段は、運転制御手段により、浴室内壁面の温度を45℃以上50℃以下、浴室内の温湿度を45℃以上50℃以下、99%RH以上100%RH以下の状態を30分以上持続させるものである。
【0010】
また、他の手段は、運転制御手段により、ミスト噴霧運転後に少なくとも浴室内の空気を排気する乾燥運転を行うものである。
【0011】
また、他の手段は、運転制御手段により、入浴中のミスト噴霧運転時間に応じて、入浴後のミスト噴霧運転時間を決定するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ミストの噴霧により浴室内壁面および浴室内の空気をカビの発生しない温湿度にせしめる運転制御手段を備えたことにより、浴室が高温高湿状態であっても、カビの繁殖を効率的に抑制することができるという効果のあるミストサウナ装置を提供することができる。
【0013】
また、ミストの噴霧により浴室内壁面および浴室内の空気温度を40℃以上50℃以下にせしめることにより、浴室内壁面に付着したカビ、浴室内の浮遊カビを抑制することができるという効果のあるミストサウナ装置を提供することができる。
【0014】
また、ミストの噴霧により浴室内の湿度を99%RH以上100%RH以下にせしめることにより、浴室内壁面に付着したカビ、浴室内の浮遊カビの抑制の確実性を高めることができるという効果のあるミストサウナ装置を提供することができる。
【0015】
また、ミストの噴霧により浴室内壁面の温度が40℃以上50℃以下、浴室内の温湿度が40℃以上50℃以下、99%RH以上100%RH以下にせしめることにより、浴室内壁面に付着したカビ、浴室内の浮遊カビの抑制の確実性をさらに高めることができるという効果のあるミストサウナ装置を提供することができる。
【0016】
また、ミストの水温が40℃以上60℃以下であることにより、安全で経済的なカビの繁殖抑制を行うことができるという効果のあるミストサウナ装置を提供することができる。
【0017】
また、ミストの粒径が0.1μm以上100μm以下であることにより、必要最低限のミスト噴射量でカビの繁殖を抑制できるという効果のあるミストサウナ装置を提供することができる。
【0018】
また、ミスト噴霧運転後に、乾燥運転を行い、浴室内の付着水を除去することで、カビの繁殖抑制の効率をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1のミストサウナ装置を示す側面構成図
【図2】同カビ抑制運転モードを示す図
【図3】本発明の実施の形態2のヒートショックによるCladosporium cladosporioidesの繁殖抑制効果を示す図
【図4】同温湿度ショックによるCladosporium cladosporioidesの繁殖抑制効果を示す図
【図5】同温湿度ショックによるAurepbasidium puluansの繁殖抑制効果を示す図
【図6】従来のミストサウナ装置を示す側面構成図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の請求項1記載のミストサウナ装置は、ミストの噴霧により浴室内壁面および浴室内の空気をカビの発生しない温湿度にせしめる運転制御手段を備え、前記運転制御手段により、水温が40℃以上60℃以下で、粒径が0.1μm以上10μm以下であるミストを噴霧するミスト噴霧運転を1時間以上2時間以下行い、浴室内のカビの繁殖を抑制することとしたものであり、浴室内が高温高湿条件下においても、温湿度ショックにより浮遊カビ、付着カビの活動を停止させるという作用を有する。
【0021】
また、運転制御手段により、浴室内壁面の温度を45℃以上50℃以下、浴室内の温湿度を45℃以上50℃以下、99%RH以上100%RH以下の状態を30分以上持続させることとしたものであり、浴室内の付着カビ、浮遊カビに温湿度ショックを与え、カビの活動を停止させるという作用を有する。
【0022】
また、運転制御手段により、ミスト噴霧運転後に少なくとも浴室内の空気を排気する乾燥運転を行うこととしたものであり、浴室内の付着水を除去することで、カビの繁殖抑制の効率をより高めることができるという作用を有する。
【0023】
また、運転制御手段により、入浴中のミスト噴霧運転時間に応じて、入浴後のミスト噴霧運転時間を決定することとしたものであり、省エネルギーなカビ繁殖抑制が達成できるという作用を有する。
【0024】
また、ミストの噴霧により浴室内壁面の温度が40℃以上50℃以下、浴室内の温湿度が40℃以上50℃以下、99%RH以上100%RH以下の状態を1時間以上持続させることとしたものであり、浴室内の付着カビ、浮遊カビに与える温湿度ショックの暴露時間を増やし、カビの活動を完全に停止させるという作用を有する。
【0025】
また、ミストの水温が40℃以上60℃以下であることとしたものであり、浴室内の部材や備品の劣化を防止するという作用を有する。
【0026】
また、ミストの粒径が0.1μm以上100μm以下であることとしたものであり、噴霧量に対するミストの表面積を大きくし、ミスト噴霧による浴室の温度の上昇効率を上げるという作用を有する。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
(実施の形態1)ミストサウナ装置の構成
図1は、本発明のミストサウナ装置の構成を示す図である。
【0029】
本発明のミストサウナ装置1は、浴室内の空気を排気する換気ボックス2と浴室内の乾燥、循環送風、ミストの発生、噴霧を行うミスト発生乾燥循環ボックス3と運転制御手段としての運転制御指示回路4から構成されている。
【0030】
換気ボックス2には、浴室に設置してあるミスト発生乾燥循環ボックス3を通過し、浴室内の空気を排気するための排気ファン5と浴室内の排気量を制御する排気ダンパー6を設けている。
【0031】
ミスト発生乾燥循環ボックス3には、熱源(図示せず)から給湯配管104を通して供給される温水をミスト化するためのミスト発生手段107と浴室内の温度を検出する温度検知手段7と浴室内の湿度を検出する湿度検知手段8と浴室内の湯気を凝集させる水蒸気凝集フィルタ9と凝集した水蒸気の水滴を排水する排水受109と浴室内の空気を加熱する熱交換器103を設けている。水蒸気凝集フィルタ9は、水蒸気が凝集捕集できればよく、例えば、エリミネータなどがある。
【0032】
運転制御手段としての運転制御指示回路4は、浴室内にミストの噴霧を行うミスト噴霧運転と浴室内の乾燥を行う乾燥運転を切り替えるものであり、ミスト発生乾燥循環ボックス3に備えられた送風機108、熱交換器103、ミスト発生手段107に配線で接続されている。
【0033】
ここで、ミスト噴霧運転とは、熱源から給湯配管104を通して供給される温水をミスト発生手段107によりミスト化したものを送風機108により浴室内に噴霧する運転である。また、乾燥運転とは、排気ファン5、排気ダンパー6により浴室内の空気を排気する運転、または浴室内の空気を排気しつつ熱交換器103により加熱する運転のことを指す。
【0034】
運転制御手段としての運転制御指示回路4によりミスト発生手段107を作動させ、熱源から給湯配管104を通って、送られた温水をミスト発生手段107によって、浴室内に噴霧することにより、浴室内の空気をカビの発生しない温湿度の40℃以上50℃以下、99%RH以上100%RH以下に、浴室内壁面温度をカビの発生しない温度の40℃以上50℃以下にせしめることとなる。ミスト発生手段107は、例えば0.1μm〜100μm程度の微細水滴、ミストが発生できればよく、水、温水のノズル噴霧、あるいは気化などがある。
【0035】
熱源で40℃以上60℃以下まで水を加熱し、ミスト発生手段107としてのノズル噴霧によりミスト化した温水を、浴室内に約1時間噴霧することで、噴霧されたミストの温度が浴室内の空気に伝わり、浴室内の温度を40℃以上50℃以下にせしめることができる。また、噴霧されたミストが浴室の内壁面に付着し、その熱が内壁面に伝わることにより、約1時間の運転で40℃以上50℃以下の状態が達成され、浴室内壁面および浴室内の空気をカビの発生しない温湿度にせしめることとなる。
【0036】
熱源で40℃以上60℃以下まで水を加熱し、ミスト発生手段107によりミスト化した温水を、浴室内に約1時間噴霧することで、ミストが浴室内に十分広がり、約1時間の運転で浴室内湿度99%RH以上100%RH以下が達成され、浴室内壁面および浴室内の空気をカビの発生しない温湿度にせしめることとなる。
【0037】
よって、熱源で40℃以上60℃以下まで水を加熱し、ミスト発生手段107によりミスト化した温水を、浴室内に約1時間噴霧することで、浴室内温湿度40℃以上50℃以下、99%RH以上100%RH未満、浴室内壁面温度40℃以上50℃以下が達成され浴室内壁面および浴室内の空気をカビの発生しない温湿度にせしめることとなる。
【0038】
ミスト噴霧運転により、浴室内を40℃以上、99%RH以上、浴室内壁面を40℃以上にせしめるためには、ミストの水温すなわちミスト噴霧口における水温が40℃以上である必要がある。また、60℃以上のミストを浴室内に噴霧すると、浴室内壁面の温度が浴室の部材やテレビなどの備品は正常に機能する温度の上限である50℃を上回る場合がある。よって、ミストの水温すなわちミスト噴射口における水温を40℃以上60℃以下に設定する必要があり、この水温設定は熱源における水の加熱を制御することにより達成される。
【0039】
ミスト噴霧運転で、給湯配管104から送られた温水をミスト化するミスト発生手段107は、給湯配管104から送られた温水を加熱し気化した水蒸気を送風機108により浴室内に送るマイクロミスト方式と、給湯配管104から送られた40℃〜60℃の温水を空気中にノズル噴霧で水破砕するスプラッシュ方式に分けられる。マイクロミスト方式では、粒子径0.1μmから10μmの水粒子を作ることができ、スプラシュ方式では、10μmから100μmの水粒子を作ることができる。
【0040】
ミスト噴霧運転は例えば、30℃、60%RHの浴室内で、スプラッシュ方式によるミスト噴霧運転を行うと、30分で浴室内温湿度40℃以上、99%RH、かつ浴室内壁面40℃以上の状態にさせることができるが、マイクロミスト方式によるミスト噴霧運転を行うと、浴室内温湿度40℃以上、99%RH、かつ浴室内壁面40℃以上の状態にするのに1時間の運転が必要である。よって、スプラシュ方式では30分、マイクロミスト方式では1時間ミスト噴霧運転を行うことにより、浴室内温湿度を40℃以上50℃以下、99%RH以上100%RH未満、浴室内壁面温度40℃以上50℃以下にせしめ、その後もミスト噴霧運転を継続して1時間以上行うことにより、浴室内温湿度を40℃以上50℃以下、99%RH以上100%RH未満、浴室内壁面温度40℃以上50℃以下を1時間以上維持でき、本発明のカビの繁殖抑制が達成される。
【0041】
浴室内の温度検知手段7は図1に示した通り、ミストサウナ装置101のミスト発生乾燥循環ボックス3の内部に設けるのが好ましいが、浴室内であればこれに限定されない。しかし、浴室内の水滴が付着する部位に設置する場合は、水滴の付着による検出阻害が起こらない手段を選択する必要がある。また、浴室内の温度検知手段7で浴室内の温度50℃以上を検知した場合は、浴室部材、浴室内テレビやラジオといった備品への悪影響を最小限に抑えるために、自動でミスト噴霧運転または乾燥運転が停止される運転制御手段を運転制御指示回路4に組み込むのが好ましい。
【0042】
浴室内の温度検知手段7としては、赤外線などにより、表面温度を計測するセンサがあるが、水滴が付着すると表面温度の計測ができないことがあるため、例えば、水滴が付着しにくく、耐水性を施した熱電対センサが好ましい。また、表面に撥水または疎水処理を施すのも有効である。浴室内の温度検知手段7は浴室内の温度を検出するものであり、例えば実際に浴室で起こりうる温度範囲である5℃以上60℃以下を検出できるものであるのが好ましい。
【0043】
浴室内の湿度検知手段8として、塩化リチウムやセラミックなどを素材とするセンサが挙げられるが、表面に付着した水滴と結合し、湿度の計測ができないことがある。素材に高分子を用いたこと湿度検知センサを利用すると水滴の付着による湿度計測阻害を最小限にすることが可能である。また、浴室内の湿度検知手段8は浴室内の湿度を検出するだけで良く、例えば、湿度検知範囲は40%RHから100%RHにするのが好ましい。 浴室内の湿度検知手段8は図1に示した通り、ミストサウナ装置101の内部に設けるのが好ましいが、浴室内であればこれに限定されない。しかし、浴室内の水滴が付着する部位に設ける場合は、水滴の付着による検出阻害が起こらない手段を選択する必要がある。
【0044】
浴室内への流入空気温度検知手段は流入空気の温度を検出できれば良く、またカビ発生の最低温度である25℃未満を正確に計測する必要はないため、例えば、25℃以上60℃以下であればよい。浴室内への流入空気温度検知手段は、直射日光が当たる場所、風が直接当たる場所は避けて設置するのが好ましい。また、水滴が付着する部位に浴室内への流入空気温度検知手段を設置する場合は、水滴の付着による検出阻害が起こらない手段を選択する必要がある。具体的な設置箇所として、脱衣所や浴室の屋根裏といった浴室に接している箇所が好ましい。
【0045】
浴室内への流入空気湿度検知手段は、流入空気の湿度を検出するだけで良く、例えば湿度検知範囲は40%RHから100%RHにするのが好ましい。浴室内への流入空気湿度検知手段は、直射日光が当たる場所、風が直接当たる場所は避けて設置するのが好ましい。また、水滴が付着する部位に浴室内への流入空気温度検知手段を設置する場合は、水滴の付着による検出阻害が起こらない手段を選択する必要がある。具体的な設置箇所として、脱衣所や浴室の屋根裏といった浴室に接している箇所が好ましい。
【0046】
浴室内の壁面の水滴有無判定手段(図示せず)は、例えばCCDカメラや赤外線検出ユニットを用い、浴室の壁面から放出される赤外線のエネルギー量を熱起電力に変換して絶対温度を算出し、その変化量が0になった際に、水滴なしと判断しても良い。浴室内の壁面の水滴有無判定手段の設置場所は、浴室内であれば特に限定されないが、特に、水滴付着量が多い浴室の床面が検知できる方が良いため、浴室の天井面付近に設置する方が好ましい。
【0047】
運転制御手段としての運転制御指示回路4は、浴室内にスプラッシュ方式、またはマイクロミスト方式により、40℃〜60℃の温水を浴室内に噴霧するミスト噴霧運転と排気ファン5、排気ダンパー6により浴室内の空気を排気する運転、または浴室内の空気を排気しつつ熱交換器103により加熱する運転である乾燥運転を浴室内、流入空気の温湿度に応じて切り替えるものである。ここで、ミスト噴霧運転、乾燥運転の切り替えは、浴室内の温度検知手段7、浴室内の湿度検知手段8、流入空気温度検知手段(図示せず)、流入空気湿度検知手段(図示せず)の出力値に応じて行われる。
【0048】
本発明による浴室内のカビ繁殖の抑制は、浴室内、また浴室内への流入空気の温湿度件に応じて運転する。一般的に、カビは25℃以下かつ75%RH以下の条件下では繁殖しないとされており、このような浴室の温湿度条件下では、ミスト噴霧運転によるカビの繁殖抑制を行わず、乾燥運転を行うことにより、浴室内のカビの繁殖を抑制できる。しかし、浴室内がカビの繁殖に良好な25℃以上75%RH以下の場合、ミスト噴霧運転を行った方がカビの繁殖を抑制できる場合もある。
【0049】
以下、浴室内の温湿度、流入空気の温湿度に応じた運転の詳細を記す。
【0050】
図2に本発明のミストサウナ装置を用いたカビ繁殖の抑制の運転例を示し、以下に浴室内、流入空気温湿度の値で場合分けされた本発明のカビ抑制運転を記す。
【0051】
図2に示す通り、浴室内がカビの繁殖しにくい温湿度条件である、25℃以下かつ75%RH以下である場合、浴室内の浮遊カビは活動しない条件にあると言える。しかし、浴室内の壁面がぬれた状態である場合、壁面に付着したカビは湿度100%RH条件にあると考えられるため、繁殖する可能性がある。よって、壁面を完全に乾燥させる作業が必要であり、乾燥運転を行う必要がある。ここで、乾燥運転は排気ファン5、排気ダンパー6により浴室内の空気を排気する運転、または浴室内の空気を排気しつつ熱交換器103により加熱する運転のどちらでも良い。また、浴室内の温湿度検知手段の出力値が定常値となった場合、完全に浴室内を乾燥させることができたと考えられ、乾燥運転を停止する。また、浴室内の温湿度検知手段の出力値と浴室外の温湿度検知手段の出力値が同じ値となった場合も、完全に浴室内を乾燥させることができたと考えられ、乾燥運転を停止する。また、浴室内の水滴の有無検知手段により、水滴なしと判断された場合も、完全に浴室内を乾燥させることができたと考えられ、乾燥運転を停止する。これらの作業により、浴室内の付着カビの繁殖も抑制することが可能である。
【0052】
図2に示す通り、浴室内がカビの繁殖可能な温湿度条件である、25℃以下かつ75%RH以下でなく、かつ浴室内への流入空気の温湿度が25℃以下かつ75%RH以下である場合、浴室内には水滴が残っている状態と考えられ、浴室の壁面に付着したカビの繁殖が起こる可能性がある。また、浴室内の温湿度条件も、カビの繁殖に良好な条件であるため、浴室内の浮遊カビも活動可能な状態であると考えられる。このような場合、乾燥運転を行って、浴室内の水分を完全に除去することで、浴室内を25℃以下かつ75%RH以下にさせることができ、浴室内の浮遊、付着カビの繁殖を抑制することが可能である。ここで、浴室内への流入空気の温湿度が25℃以下かつ75%RH以下という条件は、春期、秋期、冬期の雨以外の日の外気の温湿度に該当する。このような季節においては、ミスト噴霧によるカビの繁殖抑制を運転させる必要はなく、乾燥運転でカビ繁殖を抑制できるため、省エネルギーなカビ繁殖抑制が可能である。ここで、乾燥運転は排気ファン5、排気ダンパー6により浴室内の空気を排気する運転、または浴室内の空気を排気しつつ熱交換器103により加熱する運転のどちらでも良い。また、浴室内の温湿度検知手段の出力値が定常値となった場合、完全に浴室内を乾燥させることができたと考えられ、乾燥運転を停止する。また、浴室内の温湿度検知手段の出力値と浴室外の温湿度検知手段の出力値が同じ値となった場合も、完全に浴室内を乾燥させることができたと考えられ、乾燥運転を停止する。また、浴室内の水滴の有無検知手段により、水滴なしと判断された場合も、完全に浴室内を乾燥させることができたと考えられ、乾燥運転を停止する。これらの作業により、浴室内の付着カビの繁殖も抑制することが可能である。
【0053】
図2に示す通り、浴室内がカビの繁殖可能な温湿度条件である、25℃以上、75%RH以上であり、かつ浴室内への流入空気の温湿度が25℃以上、75%RH以上である場合、浴室を乾燥運転により完全に乾燥させても、浴室内が25℃以下かつ75%RH以下の状態になることは期待されない。このような浴室内、浴室内への流入空気の温湿度条件を満たすのは、夏期や梅雨期である。この場合、浴室内の浮遊カビ、付着カビ共に増殖可能な状態であると考えられる。乾燥運転のみでの浴室内のカビ繁殖抑制は期待されないことから、本発明によるミスト噴霧運転によるカビ繁殖の抑制が有効である。ミストを噴霧することで、浴室内壁面の温度を40℃以上50℃以下、浴室内の温湿度を40℃以上50℃以下、99%RH以上にせしめることで、浴室内に繁殖するカビを抑制することができる。この温湿度条件を1時間以上持続させることで、浴室内のカビの8割以上を抑制することができる。よって、ミスト噴霧運転後に、浴室内の温度が下がり、湿度が上がったとしても、浴室内に生きたカビがほとんど存在しないため、カビの繁殖は起こりえない。ここで、壁面温度が40℃以上50℃以下であるかを確認する手法の一つとして、壁面温度センサが挙げられる。この方法は赤外線センサを用いて非接触で壁面温度を測定する方法である。
【0054】
ミスト噴霧運転後に、乾燥運転を行い、浴室内の付着水を除去することで、カビの繁殖抑制の効率をより高めることができる。ここで、乾燥運転は排気ファン5、排気ダンパー6により浴室内の空気を排気する運転、または浴室内の空気を排気しつつ熱交換器103により加熱する運転のどちらでも良い。また、浴室内の温湿度検知手段の出力値が定常値となった場合、完全に浴室内を乾燥させることができたと考えられ、乾燥運転を停止する。また、浴室内の温湿度検知手段の出力値と浴室外の温湿度検知手段の出力値が同じ値となった場合も、完全に浴室内を乾燥させることができたと考えられ、乾燥運転を停止する。また、浴室内の水滴の有無検知手段により、水滴なしと判断された場合も、完全に浴室内を乾燥させることができたと考えられ、乾燥運転を停止する。これらの作業により、浴室内の付着カビの繁殖も抑制することが可能である。
【0055】
本発明によると、入浴者が入浴中に行うミスト噴霧運転は入浴者の快適性を高めると同時に、カビ抑制効果も得られるため、仮に入浴者が入浴中にX(例えば0.3〜0.5時間)時間ミスト噴霧を行って、入浴後にカビ抑制を行う場合、ミスト噴霧は1−X時間で良いので、省エネルギーなカビ繁殖抑制が達成できる。また、仮に入浴者が入浴中に1時間以上ミスト噴霧を行った場合、入浴後のカビ抑制は不要である。
【0056】
(実施の形態2)カビの繁殖抑制効果
浴室内に繁殖するカビとして最も有名なクラドスポリウム属真菌(Cladosporium cladosporioides 、NBRC6348、以下クラドスポリウム)を用いて、ヒートショックによる増殖抑制試験を行った。以下にその方法を記す。
【0057】
ポテトデキストロース寒天培地(以下PDA培地)により試験管で斜面培養したクラドスポリウムのコロニーを、滅菌水1mLでピペッティングして胞子を回収した。50mL容の遠沈管に胞子回収液1mLと24mLの滅菌水を加え、室温、200rpmの条件で10分間振とうし、供試液を得た。1.5mL容のマイクロチューブに供試液1mLを入れ、ブロックヒーターを用いて、ヒートショックを与えた後、シャーレに入れたPDA培地上に塗布し、25℃で4日間静地培養した。その後、目視でコロニー数をカウントし生存菌数を算出した。ヒートショック後の生存菌数をヒートショック前の生存菌数で除し、生存率を算出した。
【0058】
図3に示す通り、25℃または35℃で2時間ヒートショックを与えても、クラドスポリウムの生存率はほぼ100%であり、クラドスポリウムの繁殖を抑制することはできなかった。しかし、40℃のヒートショックでは1時間で約80%を抑制でき、2時間では約90%を抑制させることができた。また、45℃のヒートショックでは、0.5時間の暴露でほぼ全滅させることができた。
【0059】
このように、クラドスポリウムは水浸条件においても、40℃以上のヒートショックを1時間以上与えることにより死滅させることが可能であることが分かり、浴室内において壁面が水滴や結露濡れている場合も、乾燥させることなく抑制することが可能である。これは、浴室の壁面や床面、天井といった部分に付着した水滴の中に存在するカビも抑制できることを示している。
【0060】
同様に、クラドスポリウムを用いて、温湿度ショックによる増殖抑制試験を行った。その方法を以下に記す。
【0061】
ポテトデキストロース寒天培地(以下PDA寒天培地)により試験管で斜面培養したコロニーを滅菌水1mLでピペッティングすることにより、胞子を回収した。50mL容の遠沈管に胞子回収液1mLと24mLの滅菌水を加え、室温、200rpmで10分間振とうし、供試液を得た。25mL容の遠沈管に供試液0.1mLを入れ、約2時間かけて完全に風乾させた後、予め25、35、40または45℃かつ99%RHに設定された恒温恒湿槽に入れて、乾燥胞子に温湿度ショックを与えた。その後、遠沈管に滅菌水5mLを入れてボルテックスすることにより、乾燥胞子を滅菌水中に分散させ、シャーレに入れたPDA寒天培地上に塗布して25℃で4日間静地培養した。そして、目視でコロニー数をカウントし生存菌数を算出した。温湿度ショック後の生存胞子数を温湿度ショック前の生存胞子数で除し、生存率を算出した。
【0062】
図4に示す通り、クラドスポリウムは40℃、99%RH条件下に1時間暴露させることによりほぼ全滅させることができた。
【0063】
ここで、浴室にも多く存在する中温菌である、オーレオバシジウム(Aureobasidium puluans NBRC6353)を用いて実験を行った。図5に示す通り、40℃、99%RH条件下に1時間暴露させることにより、ほぼ全滅させることができた。
【0064】
以上より、浴室内に浮遊するカビや浴室内壁面の水滴がない部位に付着しているカビは40℃、99%RH条件に1時間暴露させることにより、ほぼ完全に死滅させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
ミストの噴霧により、浴室内が高温高湿条件であってものカビの繁殖を抑制することができ、浴室内を清潔に保つことができる。
【符号の説明】
【0066】
1 ミストサウナ装置
2 換気ボックス
3 ミスト発生乾燥循環ボックス
4 運転制御指示回路
5 排気ファン
6 排気ダンパー
7 温度検知手段
8 湿度検知手段
9 水蒸気凝集フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミストの噴霧により浴室内壁面および浴室内の空気をカビの発生しない温湿度にせしめる運転制御手段を備え、
前記運転制御手段により、水温が40℃以上60℃以下で、粒径が0.1μm以上10μm以下であるミストを噴霧するミスト噴霧運転を1時間以上2時間以下行い、浴室内のカビの繁殖を抑制することを特徴とするミストサウナ装置。
【請求項2】
運転制御手段により、浴室内壁面の温度を45℃以上50℃以下、浴室内の温湿度を45℃以上50℃以下、99%RH以上100%RH以下の状態を30分以上持続させることを特徴とする請求項1に記載のミストサウナ装置。
【請求項3】
運転制御手段により、ミスト噴霧運転後に少なくとも浴室内の空気を排気する乾燥運転を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のミストサウナ装置。
【請求項4】
運転制御手段により、入浴中のミスト噴霧運転時間に応じて、入浴後のミスト噴霧運転時間を決定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のミストサウナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−34898(P2013−34898A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−228605(P2012−228605)
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【分割の表示】特願2007−175831(P2007−175831)の分割
【原出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】