ミストサウナ装置
【課題】本発明は、カビを抑制する効果が高い自動乾燥機能をもつミストサウナ装置を提供すること。
【解決手段】空気環境検知手段20によって検知した浴室内の空気環境と、結露時間算出手段8によって算出した浴室内に結露が発生している時間、および浴室乾燥判定手段11によって実行された乾燥時間とから、結露が発生して乾燥完了までにカビが成長したかどうかをカビ判定手段12によって判定する。カビが発生したと判定されたとき、防カビ運転を実行する。
【解決手段】空気環境検知手段20によって検知した浴室内の空気環境と、結露時間算出手段8によって算出した浴室内に結露が発生している時間、および浴室乾燥判定手段11によって実行された乾燥時間とから、結露が発生して乾燥完了までにカビが成長したかどうかをカビ判定手段12によって判定する。カビが発生したと判定されたとき、防カビ運転を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カビを抑制する効果を高めたミストサウナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のミストサウナ装置として、浴室内に繁殖するカビを抑制するために、ミストサウナ装置101と換気扇を連動させて運転するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。以下、そのミストサウナ装置について図10を参照しながら説明する。
【0003】
図10はミストサウナ装置101と、制御線によって連結され、連動する換気扇102があり、これらの制御を行なう制御装置103と、操作を行なう操作部104から構成される。ミストサウナ運転が終了すると、自動で換気扇を運転し、所定時間駆動させたのち換気扇の自動停止までを行なうシステムであり、ミストサウナ浴で発生した結露によってカビが発生することを防止するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−126033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来のミストサウナ装置では、換気扇を自動で運転するものの、発生した大量の結露を乾燥させるには多大な時間がかかってしまい、カビは乾燥するまでの結露している時間で増殖し、繰り返すことで汚れが蓄積していく。結果として、浴室を乾燥させていてもカビが発生してしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、カビの発生要因となる浴室内に結露が発生している時間を検知し、カビが発生しない乾燥条件となるように時間を考慮した浴室乾燥の運転制御を行なうことで、カビを抑制する効果を高めることができるミストサウナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のミストサウナ装置は、上記目的を達成するために、浴室内の換気や浴室乾燥の運転制御を行なう運転制御手段と、浴室内の結露時間を算出する結露時間算出手段と、浴室内の空気環境を検知する空気環境検知手段と、浴室乾燥を行っている間に前記空気環境検知手段による浴室空気の変化の検知に基づいて浴室乾燥時刻を判定する浴室乾燥判定手段を備え、前記空気環境検知手段により検知した浴室内の空気環境と、前記結露時間算出手段により算出した結露時間に基づいて、カビ汚染を判定するカビ判定手段を備え、前記カビ判定手段によりカビ汚染と判定した時期に、カビを抑制する防カビ運転モードを実行することを特徴とするミストサウナ装置としたものである。
【0008】
これにより、カビの発生要因となる浴室の空気環境と結露時間からカビが繁殖する条件であったかを判定し、短期的な汚染だけでなく長期的に蓄積して汚染する可能性があるかを判定することができ、精度を高めたカビの抑制を行なうことができるミストサウナ装置を提供することができる。また、これにより、空気環境や浴室の使用状況などの影響によりカビが少しずつ繁殖し、長期的にカビが蓄積してカビ汚染が発生する可能性が高まったときに、蓄積したカビの増殖を停止し、蓄積をリセットすることができ、清潔性を高めたミストサウナ装置を提供することができる。
【0009】
また、他の手段は、ミストを生成するミスト生成手段を備え、防カビ運転モードにおいて前記ミスト生成手段によって一定時間浴室内にミストを噴霧することを特徴とする請求項15に記載のミストサウナ装置としたものである。
【0010】
これにより、カビの増殖を停止させる高い効果を得ることができ、清潔性を高めたミストサウナ装置を提供することができる。
【0011】
また、他の手段は、カビ判定手段によりカビ汚染と判定した時期になった場合、カビ汚染時期であることを出力するカビ出力手段を備えることを特徴とする請求項14から16のいずれかに記載のミストサウナ装置としたものである。
【0012】
これにより、使用者は浴室にカビが発生する可能性をランプ、LED表示やアラーム音などで知ることができ、浴室使用時間を短くしてカビの繁殖を低減し、また清掃する最適なタイミングを知ることができるミストサウナ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、入浴やミストサウナ浴によって発生した結露によるカビの繁殖を精度よく判定することで日常のカビの蓄積を防止できるため、カビの発生リスクを軽減して清潔な状態を維持することができるという効果が得られる。
【0014】
また、カビの発生を抑制することで、浴室の掃除を軽減できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1のミストサウナ装置の防カビ乾燥運転の構成を示すブロック図
【図2】同実施の形態1の温度センサによる入浴開始の検知方法を示すグラフ
【図3】同実施の形態1の湿度センサによる入浴開始の検知方法を示すグラフ
【図4】同実施の形態1のミストサウナ装置の浴室乾燥の動作を表すフローチャート
【図5】同実施の形態1の浴室乾燥判定手段の動作を表すフローチャート
【図6】同実施の形態1のカビ判定手段の動作を表すフローチャート
【図7】本発明の実施の形態2の温湿度条件ごとのカビを抑制する乾燥時間を示すグラフ
【図8】本発明の実施の形態3の湿熱によるカビ菌糸成長停止効果を示すグラフ
【図9】本発明の実施の形態3の防カビ運転の動作を表すフローチャート
【図10】従来のミストサウナ装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態として、請求項1記載の発明は、浴室内の換気や浴室乾燥の運転制御を行なう運転制御手段と、浴室内の結露時間を算出する結露時間算出手段と、浴室内の空気環境を検知する空気環境検知手段と、浴室乾燥を行っている間に前記空気環境検知手段による浴室空気の変化の検知に基づいて浴室乾燥時刻を判定する浴室乾燥判定手段を備え、前記空気環境検知手段により検知した浴室内の空気環境と、前記結露時間算出手段により算出した結露時間に基づいて、カビ汚染を判定するカビ判定手段を備え、前記カビ判定手段によりカビ汚染と判定した時期に、カビを抑制する防カビ運転モードを実行することを特徴とするミストサウナ装置としたものであり、カビの繁殖要因である結露時間を算出できるという作用を有し、浴室の使用状況によって長期的に少しずつ蓄積したカビの汚れにつながる繁殖があるかを判定することができるという作用を有する。また、長期的に蓄積したカビの繁殖を抑制し、カビ汚れの発生を抑制することができるという作用を有する。
【0017】
また、請求項2記載の発明は、ミストを生成するミスト生成手段を備え、防カビ運転モードにおいて前記ミスト生成手段によって一定時間浴室内にミストを噴霧することを特徴とする請求項1に記載のミストサウナ装置としたものであり、高い効果でカビの繁殖を抑制することができるという作用を有する。
【0018】
また、請求項3記載の発明は、カビ判定手段によりカビ汚染と判定した時期になった場合、カビ汚染時期であることを出力するカビ出力手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載のミストサウナ装置としたものであり、カビの繁殖の蓄積があることを浴室使用者が知ることができるという作用を有し、清掃などのカビの防除行動へとつなげることができるという作用を有する。
【0019】
(実施の形態1)ミストサウナ装置の構成
図1は、本発明のミストサウナ装置の防カビ乾燥運転、防カビ運転を行なうための構成を示すブロック図である。
【0020】
ミストサウナ装置1は、浴室内に微細なミストサウナを供給し、ミストサウナ浴を行なうための装置であるが、それによって発生した結露を乾燥させる浴室乾燥機能をもつものとする。ミストサウナ装置1の構成は、浴室内の空気を排気する換気運転を行なうための換気手段である換気ボックス2と、浴室内の空気を循環送風させる循環送風運転を行なうための循環送風手段である送風機3、空気を加熱して循環送風手段とあわせて加熱循環送風運転を行なうための空気加熱手段である熱交換器4、微細なミストを発生するミスト生成手段であるミスト発生部5これらの運転方法の制御を行なう制御部6からなる。
【0021】
制御部6は、浴室のカビを抑制するために、ミストサウナ装置1の運転パターン、運転アルゴリズムを制御するための運転制御手段7と、運転制御手段の運転制御方法を決める手段として浴室内の結露時間を算出する結露時間算出手段8、入浴が開始されたか否かを判定し入浴開始時刻を判定する入浴判定手段9、乾燥方法を決定する乾燥方法決定手段10、浴室内の乾燥状態や乾燥完了をセンサ信号から判定する浴室乾燥判定手段11、空気環境を示すセンサ信号と結露時間からカビの蓄積を判定するカビ判定手段12がある。これらは各種センサ信号を受信し、換気ボックス2や送風機3のモーターや、熱交換器4のバルブなどの制御信号を出力する制御部6に搭載された制御回路もしくはプログラムである。
【0022】
結露時間算出手段8は、浴室内の結露時間を算出する手段であり、乾燥方法決定手段10は、結露時間に基づいて乾燥方法を決定する手段である。すなわち、結露時間が長くなることによってカビが増殖しやすくなるため、結露時間が長い場合には、乾燥方法決定手段10によって短い時間で乾燥させる運転方法を選択、決定し、結露時間が短い場合には、低消費電力の運転方法で乾燥させる運転方法を選択、決定する。結露時間の算出は、入浴判定手段9によって判定した入浴開始の時刻から、防カビ起動手段13による操作信号の時刻までの時間の長さから求める。また、これに留まらず、結露を直接検知するような結露センサや赤外線センサの信号の変化から算出することもできる。例えば、サーモパイル型センサを使用し、壁面付近の温度を検知しつつ、温度変化から入浴の検知や、乾燥完了の検知をしても良い。尚、入浴開始時刻とは、この場合、人が浴室に入り、入浴を開始した時刻を指すが、入浴前の浴槽の湯はりを行なった時刻を入浴開始時刻としても良い。
【0023】
入浴判定手段9によって入浴開始時刻を判定するには、浴室内の環境変化から入浴開始を検知する入浴検知手段14の検知信号を用いる。例えば、入浴検知手段14によって検知した浴室の環境を示す検知信号と、入浴判定手段9で記憶された閾値を比較して、検知信号が閾値を越えた場合に入浴ありと判断する。入浴検知手段14としては、例えば、温度センサ15、湿度センサ16、人感センサ17、照明を検知する照度センサ18などを少なくとも一つ以上使用するが、これら以外にも、入浴に伴う特徴的な音を検知する手段や、本体、浴室内に付帯する給湯器、照明器具、またはテレビなどの映像機器の操作信号なども使用できる。入浴検知手段14としてセンサを用いる場合、ミストサウナ装置1内部の風路上や、浴室側のパネル表面などに配置することが好ましい。
【0024】
使用者が制御部6の操作を行なうための操作手段であるリモコン19は、ミストサウナ装置1の制御部6と有線、または無線で接続可能な構成とする。リモコン19には、浴室乾燥方法や風量、入力熱量、運転時間、風向角度などを設定するボタンが設けてある。また、防カビに最適化された運転制御を行なうプログラムを起動する防カビ起動手段13として、例えば防カビ起動ボタンを設けて、浴室使用者がカビを抑制するために複雑な運転制御プログラムを設定することなく、防カビ起動ボタンを押下、または接触することで、使用環境や空気環境に合わせた最適な浴室乾燥の運転制御を自動で行なうことを可能とするものである。
【0025】
結露時間算出手段8によって算出した結露時間に基づいて乾燥方法決定手段10で乾燥方法が決められるが、浴室内の空気環境を検知する空気環境検知手段20を使用し、検知した空気環境と結露時間とを元に浴室乾燥の運転制御を行なうことで、防カビ効果の高い浴室乾燥を行なうことができる。例えば、空気環境検知手段20によって検知した入浴前の空気環境がカビの増殖に好適であった場合、入浴に伴う結露の発生によってカビの増殖が促進される恐れがあるため、乾燥方法決定手段10では短時間で乾燥させることができる乾燥方法を判定し、運転制御手段7にて実行する。空気環境検知手段20は、温度を検知するための手段である温度センサ15、相対湿度を検知するための手段である湿度センサ16を用いる。
【0026】
温度センサ15として、例えば、水滴が付着しにくく、耐水性を施したサーミスタや熱電対センサが好ましい。また、表面に撥水または疎水処理を施すのも有効である。実際に浴室で起こりうる温度範囲である5℃以上60℃以下の範囲で検出できるものであるのが好ましい。ミストサウナ装置1の内部に設けるのが好ましいが、浴室内や浴室から連通する風路内であればこれに限定されない。しかし、浴室内の水滴が付着する部位に設置する場合は、水滴の付着による検出阻害が起こらない手段を用いる。
【0027】
また、湿度センサ16として、塩化リチウムやセラミックなどを素材とするセンサが挙げられるが、表面に付着した水滴と結合し、湿度の計測ができないことがある。素材表面に高分子膜を配した湿度センサを利用すると水滴の付着による湿度計測阻害を最小限にすることが可能である。また、浴室内の湿度を検出するため、例えば湿度検知範囲は20%から100%の範囲で計測できるものを使用することが好ましい。循環風路上などミストサウナ装置1の内部に設けるのが好ましいが、浴室内、浴室から連通する風路内であればこれに限定されない。
【0028】
入浴検知手段14として温度センサ15を使用する場合、図2に示すような入浴開始時の温度上昇を検知することで判定する。判定方法としては、例えば、あらかじめ入浴を示す温度の下限閾値を入浴判定手段9に記憶させ、温度センサ15が読み込んだ値と閾値とを比較して、閾値以上の温度になった場合に入浴ありと判定することが好ましい。但し、季節や浴室の大きさなどの影響を考慮する必要があり、あらかじめ実験を行なって、精度よく入浴を検知する閾値を求めることが重要である。
【0029】
また、入浴検知手段14として湿度センサ16を使用する場合、図3に示すような入浴開始時の相対湿度上昇を検知することで判定する。判定方法としては、例えば、入浴を示す相対湿度の下限閾値を入浴判定手段9に記憶させ、湿度センサ16で読み込んだ値と閾値とを比較して、閾値以上の相対湿度になった場合に入浴ありと判定することが好ましい。湿度を検知するセンサは、材料の特性上、一般に加湿方向と除湿方向とで出力信号にヒステリシスを持つ場合が多い。そこで、誤検知を防ぐために、初期に一定の乾燥状態があった後の信号のみを用いることや、下限閾値を高く設定することなどによって、精度を高めることが重要である。
【0030】
入浴検知手段14として、人検知手段である人感センサ17を使用する場合、ミストサウナ装置1の天井パネルに設け、浴室内の人の存在を検知する。人感センサ17として、赤外線センサなどが使用できるが、結露の影響による誤検知を防止するためポリエチレンやシリコーン樹脂など赤外線を透過する材料で保護カバーを設けることが好ましい。浴室内に清掃などで短期間に入室した場合と、入浴とを識別するために、一定時間連続して検知した場合に入浴検知手段14において入浴と判定するなどの制御方法をとることが好ましい。
【0031】
入浴検知手段14として、照明検知手段を使用する場合、照明の明るさを検知する照度センサ18を使用することができる。これは、浴室内の天井パネルに上に設けることが好ましい。また、照明の明るさではなく浴室内の照明の操作信号を検知することで判定することができる。この場合、制御部6に照明の制御線を接続し、照明検知手段は制御部6に設ける。いずれの場合においても、一時的な照明の使用と識別するために、一定時間連続して検出された場合に入浴判定手段9によって入浴ありと判定するなどの制御方法をとることが好ましい。
【0032】
入浴判定手段9として、操作手段であるリモコン19の操作信号を使用する場合、入浴やサウナ浴時の常時換気運転の停止信号や、ミストサウナ運転の起動信号を入浴検知信号として使用する。
【0033】
このような入浴検知手段14は、単独で使用するよりも複数組み合わせて使用することで精度を高めることができるので好ましい。
【0034】
図4は、ミストサウナ装置1の浴室乾燥の運転制御、防カビ運転の動作を表すフローチャートである。ミストサウナ装置1は空気環境検知手段20として温度センサ15と湿度センサ16を備える。温度センサ15および湿度センサ16は入浴検知手段14としても使用する。
【0035】
ミストサウナ装置1は、入浴が開始される前には、一定時間毎に温度および湿度のデータを読み込み、一定時間毎に入浴判定手段9の内部メモリに上書き保存させておく。尚、入浴開始が検知されて以降のデータは、上書きせず、最新のデータを入浴前の温度および湿度の値とする。検知した温度および湿度は、入浴判定手段9に記憶させている温度下限閾値と湿度下限閾値と比較し、いずれの値も閾値を上回った場合、入浴ありと判定する。入浴を検知するための温度は夏期、冬期とも共通として使用できるような値を用いるとよく、例えば27℃、湿度は90%とする。尚、判定精度を高めるために、一定時間連続で閾値を上回った場合に、入浴ありとする。入浴ありと判定した場合、制御部6に含まれるタイマと比較して入浴開始時刻を算出し、結露時間算出手段8の内部メモリに記憶させておく。
【0036】
入浴開始後、浴室乾燥の運転を起動するための防カビ起動手段13が起動されるまでは、浴室内が結露で覆われている入浴時間であると考える。防カビ起動手段13が押下されたのち、入浴終了と判断し、入浴終了時刻を算出する。入浴終了時刻は、一時的に入浴判定手段9の内部メモリに記憶させる。続いて、結露時間の算出を結露時間算出手段8にて行なうが、入浴判定手段9の内部メモリに記憶された入浴開始時刻と入浴終了時刻の値を読み込み、2つの時刻の差を算出して、結露時間とする。算出した結露時間は内部メモリに記憶させておく。
【0037】
算出した結露時間と、既に検知して記憶させている入浴前の温度および湿度とから、乾燥方法決定手段10にてカビを抑制する最適な乾燥方法を決定する。まず、算出した結露時間を、内部メモリに記憶してある結露時間の判定値と比較し、結露時間が長いか短いかを判定する。続いて記憶している入浴前の温度および湿度を、内部メモリの温度下限閾値Tm2、湿度下限閾値Hm2と比較する。結露時間が長く、温度および湿度がともに高い場合、カビが増殖しやすいため、短時間で乾燥させる必要があり、加熱循環送風運転を選択、決定する。一方、結露時間が短く、温度および湿度がともに小さい場合、カビは比較的増殖しにくいため、乾燥方法は、使用エネルギーを抑えた循環送風運転とする。また、その中間の場合には、乾燥方法は、初期に加熱循環送風運転を短時間実施し、乾燥を促進させたのち、循環送風運転に切り替え、使用エネルギーを抑える。これによって循環送風運転単独の場合に比べ、乾燥時間の短縮を図ることができ、加熱循環送風に比べ使用エネルギーも削減することができる。このような乾燥方法決定手段10は、結露時間と入浴前の温度および湿度から運転方法の選択、決定を行なう。
【0038】
浴室の乾燥方法が選択され、実行されているとき、浴室内が乾燥したかどうかを浴室乾燥判定手段11にて判定し、浴室乾燥の自動停止を行なう。浴室乾燥判定手段11の動作を示すフローチャートを図5に示す。浴室乾燥の運転開始後、まず、使用した乾燥方法が加熱循環送風であったかを判定する。加熱循環送風であった場合、温度での乾燥完了判定は難しく、湿度センサ16によって検知した相対湿度の変化によって乾燥の判定を行なう。乾燥が進むにつれて相対湿度は低下し、乾燥が完了すると相対湿度の低下が止まり、一定の値を示すようになる。このように一定時間毎に読み込んだ相対湿度が一定になった場合、乾燥完了と判定する。一方、乾燥方法として加熱を使用していない場合、温度センサ15と湿度センサ16により検知した温度と湿度と、記憶させていた入浴前の温度および湿度の値と比較することにより乾燥の判定を行なう。浴室の乾燥が進むにつれて、入浴前の温度および湿度の値に近づき、乾燥が完了すると同程度の値を示すようになる。このように、温度と相対湿度が入浴前の値以下になるか、同程度の値になった場合、乾燥完了と判定して、浴室乾燥を終了させる。また、加熱を使用した場合と同様に、相対湿度の低下が止まったことから乾燥完了を判定してもよい。
【0039】
浴室乾燥を行なった時間を算出し、浴室乾燥判定手段11の内部メモリに記憶させる。乾燥時間のデータは、カビの判定などに利用するためのものである。
【0040】
空気環境検知手段20によって検知した浴室内の空気環境と、結露時間算出手段8によって算出した浴室内に結露が発生している時間、および浴室乾燥判定手段11によって実行された乾燥時間とから、結露が発生して乾燥完了までにカビが成長したかどうかをカビ判定手段12によって判定する。空気環境がカビにとって好適な温湿度環境であった場合、結露とともに増殖するため、カビは成長ありと判定し、結露時間と乾燥時間の合計時間がカビ成長時間となる。一方、空気環境がカビにとって増殖できない環境であった場合、カビの活性は低く、結露によっても増殖しづらく、成長なしと判定する。
【0041】
カビの成長は蓄積するため、成長した時間から、カビの重量、構成成分の量、色の濃さなどのカビの増殖量を示す数値に変換、もしくは増殖時間の値を累積することでカビの発生時期を予測できる。カビは成長を開始した後、好適条件では2〜3日程度で目視により発生が認識できる程度まで成長する。例えば、結露時間が6時間であったとき、同条件を8日から12日程度繰り返した場合にカビが発生すると推定できる。カビの発生時期を推測する精度を高めるためには、浴室環境を再現し、カビが発生するまでの時間や、増殖量を示す数値を予め実験で求めておくことが重要である。
【0042】
カビ判定手段12の一例をフローチャートにて図6に示す。乾燥完了後、カビ判定を開始するが、内部メモリに記憶されている入浴前の温度、湿度、結露時間、乾燥時間を読み込み、カビ判定手段12の内部メモリに記憶させているデータテーブルを参照、比較して、カビの増殖有無の判定を行なう。データテーブルの一例を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1は、結露時間と乾燥時間の合計時間から求めた乾燥保持時間と、入浴前の温度および湿度からカビの増殖有無を割り当てた表である。温度および湿度が高い場合はカビが増殖し、低くなると、結露時間と乾燥時間の合計時間の長さに応じて増殖有無が変化する。表1は乾燥保持時間が12時間である場合のテーブルであるが、A、B、Cで示された温度と相対湿度の範囲は、それぞれカビの増殖量を示す値が入る。この場合、Aは増殖なしで、B、Cは増殖ありを示し、Cが大きい値である。尚、このようなデータテーブルは、ある程度セグメント化した乾燥保持時間ごとに作成し、記憶させておく。カビの増殖ありと判定した場合、増殖量を算出する。算出した増殖量は、内部メモリに記憶しているカビの増殖量に累積し、保存する。保存した後、別の内部メモリに記憶しているカビの発生を示すカビ増殖量累積値の下限閾値Pと比較し、上回った場合、カビの発生ありと判定する。
【0045】
カビ判定手段12でカビの繁殖時期が近づいたと判定された場合、使用者が知ることができるようカビ出力手段21として、カビ表示部を設ける。例えばLEDや液晶表示などで行なう場合にはリモコン19に設置するのがよく、一方、音声で表示する場合にはリモコン19や制御部6などに配置することが好ましい。
【0046】
カビが発生したと判定されたとき、防カビ起動手段13を押下すると、防カビ運転を実行できる。防カビ運転は、湿度や温度をコントロールすることによって、カビの成長を停止させ、抑制する効果をもつ運転方法である。カビの増殖を抑制できる乾燥の自動運転と、カビが増殖した可能性がある場合に、カビを抑制するカビ抑制運転を備えることで、浴室の清潔性を高めたミストサウナ装置とすることができる。
【0047】
(実施の形態2)乾燥方法決定手段によるカビを抑制するための乾燥方法の決定方法
カビは、一般的に相対湿度85から100%、温度摂氏15℃から30℃以下で増殖することが知られている。特に、相対湿度90%を超えると増殖が急激に増加することが知られている。浴室内がこのような高湿度になる要因は、外気の影響よりも、入浴による結露の影響が支配的であると考えることができる。更に、浴室は通常、結露と乾燥が繰り返されているため、カビの増殖に影響する因子は、結露している時間と、乾燥している状態の二つの影響を合わせたものであると考えることができる。
【0048】
そこで、カビが増殖、または増殖が抑制される条件を検討するため、以下のような試験を行なった。まず、供試菌として、浴室に見られるカビの最頻種であるクラドスポリウムを選択し、これをポテトデキストロース寒天培地上で、28℃にて前培養して、胞子を形成させた。胞子を白金耳で回収し、滅菌したグルコースペプトン液体培地に懸濁し、28℃で一晩振とう培養して、小さな菌糸の塊を形成させた。得られた菌糸を回収し、滅菌蒸留水で洗浄した後、スライドグラス上に付着させ、試験片とした。この試験片を温度と相対湿度、時間を変えた様々な乾燥条件で曝露したのち、結露状態に移した後の増殖の有無、増殖時間を顕微鏡で観察した。その結果の一例を表2に示す。乾燥状態から結露した後、増殖開始までの停止期間が存在し、乾燥時間が長くなると増殖が抑制されることが確認された。
【0049】
【表2】
【0050】
また、温度と相対湿度によって、カビが増殖抑制される時間が異なった。図7に示すように、例えば、相対湿度65%では、20℃では約8時間の乾燥保持時間を与えることで増殖を抑制することができたが、25℃では12時間の乾燥保持時間が必要であった。
【0051】
これを元に、結露時間算出手段によって算出した結露時間と、温度および相対湿度の空気環境から、カビの抑制に必要な乾燥時間を得ることができる。例えば、結露時間が8時間、室外の空気が温度15℃、相対湿度65%であった場合、カビを抑制するために6時間乾燥保持時間を与える必要があり、24時間サイクルで考えた場合に10時間で浴室を乾燥完了させる必要があることがわかる。この場合、10時間で乾燥できれば良いため、エネルギー使用量の少ない換気運転や、循環送風運転を選択する。一方、結露時間が同じ8時間でも、室外の空気が25℃、65%であった場合、カビを抑制するために12時間乾燥保持時間を与える必要があり4時間で乾燥完了させる必要があることになる。そのため、この場合の運転方法としては加熱循環送風を選択する。このように、温度と相対湿度ごとの必要乾燥保持時間のデータテーブルを作成し、カビ判定手段12に記憶させることで、浴室の使用状況や温湿度が異なる場合でも、使用者が複雑な運転制御を行なうことなくカビを抑制する最適な運転制御方法を自動で簡便に行なうことができる。さらに消費エネルギーを抑えて通年で清潔性の高い浴室を維持することができ、浴室の清掃頻度の低減や、浴室や機器の汚染による劣化を防止することができるミスとサウナ装置1とすることができる。
【0052】
(実施の形態3)湿熱による防カビ運転制御
カビはミストサウナのような湿熱を与えると増殖できなくなることが知られている。そこで、以下のような試験を行い、湿熱でカビを抑制できる条件を検証した。まず、実施の形態2のカビ胞子を、滅菌したグルコースペプトン液体培地に懸濁した。これをシャーレに入れ、温度25℃で一晩前培養した。前培養した後、顕微鏡下において菌糸先端の成長速度を測定しながら温度40℃にて約1時間曝露し、再び温度25℃に戻すときの、カビの菌糸成長速度変化を測定した。結果を図8に示す。
【0053】
これによると、加熱なしと比較して、40℃にて1時間程度湿熱を与えることで、カビ菌糸先端の成長を停止させ、増殖を抑制できることが判る。カビの増殖が蓄積した場合に、浴室内をミストサウナによって湿熱状態にすることで、カビの繁殖を防止することができる。
【0054】
ミストサウナ装置1のミスト発生部5は、供給された冷水、または温水を加圧噴霧、超音波噴霧、静電霧化し、もしくは衝突破砕と組み合わせることで、ミストを含んだ空気を生成する。防カビ運転モードでカビを抑制するためには、ミストを含んだ空気を熱交換器4で加熱し、または熱交換器4で加熱した空気とミストを混合して高温のミストにした状態で浴室内に噴霧することが重要である。また、温水を直接ノズルなどで浴室に噴霧してもよい。生成するミストは、直径0.1μmから100μm、好ましくは10μm以下とすることで、浴室内に過度に結露を発生させることなく、壁面付近に薄い結露膜を作製し、壁面の温度を上昇させてカビの抑制効果を得ることができる。また、このような粒径のミストを用いることより、防カビ運転を実施した後の乾燥時間が短いため、少ない消費電力で乾燥を行なうことができる。
【0055】
カビ判定手段12に記憶されたカビの増殖累積値が、カビ汚れが発生する可能性を示す値になったとき、カビ出力手段21においてカビの発生を通知する。カビ出力手段21の通知を受けた使用者は、浴室内を洗剤や漂白剤によって清掃行動に移り、浴室内のカビの発生を自主的に抑制することができる。一方、カビ出力手段21でカビの発生のお知らせを出力しているときに使用者が防カビ起動手段13を実行した場合、カビを抑制するための防カビ運転が実行される。防カビ運転は、ミストサウナを一定時間浴室内に噴霧し、浴室壁面を高温高湿度にすることで、カビの成長を停止させるためのものである。
【0056】
図9は防カビ運転の動作の一例を示すフローチャートである。カビ判定手段12にてカビ発生と判定されたとき、防カビ起動手段13を起動すると、カビを抑制するためのミストサウナ運転を開始する。制御部6に含まれるタイマと比較して、時間のカウントを行ない、予め設定した時間運転を行なったのち、防カビ運転を停止する。防カビ運転を停止後、内部メモリのカビ増殖量累積値をリセットする。リセットすることで、再びカビが増殖し、汚れが発生する時期を精度よく判定することができる。ミストサウナによる防カビ運転を行なった後、浴室内に残る結露を除去するため、浴室乾燥を行なう。カビを抑制した直後であるため、循環送風運転により低消費電力で乾燥させる運転方法を行なうことが好ましい。これにより、梅雨時などカビが発生しやすい時期に、カビの蓄積を防止することができ、通年で清潔性の高い浴室を維持することができるミスとサウナ装置1とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
高いカビ抑制効果によって、浴室のカビによる汚染による環境悪化を抑制することができ、快適性の高いミストサウナ装置を提供できる。
【符号の説明】
【0058】
1 ミストサウナ装置
2 換気ボックス
3 送風機
4 熱交換器
5 ミスト発生部
6 制御部
7 運転制御手段
8 結露時間算出手段
9 入浴判定手段
10 乾燥方法決定手段
11 浴室乾燥判定手段
12 カビ判定手段
13 防カビ起動手段
14 入浴検知手段
15 温度センサ
16 湿度センサ
17 人感センサ
18 照度センサ
19 リモコン
20 空気環境検知手段
21 カビ出力手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、カビを抑制する効果を高めたミストサウナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のミストサウナ装置として、浴室内に繁殖するカビを抑制するために、ミストサウナ装置101と換気扇を連動させて運転するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。以下、そのミストサウナ装置について図10を参照しながら説明する。
【0003】
図10はミストサウナ装置101と、制御線によって連結され、連動する換気扇102があり、これらの制御を行なう制御装置103と、操作を行なう操作部104から構成される。ミストサウナ運転が終了すると、自動で換気扇を運転し、所定時間駆動させたのち換気扇の自動停止までを行なうシステムであり、ミストサウナ浴で発生した結露によってカビが発生することを防止するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−126033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来のミストサウナ装置では、換気扇を自動で運転するものの、発生した大量の結露を乾燥させるには多大な時間がかかってしまい、カビは乾燥するまでの結露している時間で増殖し、繰り返すことで汚れが蓄積していく。結果として、浴室を乾燥させていてもカビが発生してしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、カビの発生要因となる浴室内に結露が発生している時間を検知し、カビが発生しない乾燥条件となるように時間を考慮した浴室乾燥の運転制御を行なうことで、カビを抑制する効果を高めることができるミストサウナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のミストサウナ装置は、上記目的を達成するために、浴室内の換気や浴室乾燥の運転制御を行なう運転制御手段と、浴室内の結露時間を算出する結露時間算出手段と、浴室内の空気環境を検知する空気環境検知手段と、浴室乾燥を行っている間に前記空気環境検知手段による浴室空気の変化の検知に基づいて浴室乾燥時刻を判定する浴室乾燥判定手段を備え、前記空気環境検知手段により検知した浴室内の空気環境と、前記結露時間算出手段により算出した結露時間に基づいて、カビ汚染を判定するカビ判定手段を備え、前記カビ判定手段によりカビ汚染と判定した時期に、カビを抑制する防カビ運転モードを実行することを特徴とするミストサウナ装置としたものである。
【0008】
これにより、カビの発生要因となる浴室の空気環境と結露時間からカビが繁殖する条件であったかを判定し、短期的な汚染だけでなく長期的に蓄積して汚染する可能性があるかを判定することができ、精度を高めたカビの抑制を行なうことができるミストサウナ装置を提供することができる。また、これにより、空気環境や浴室の使用状況などの影響によりカビが少しずつ繁殖し、長期的にカビが蓄積してカビ汚染が発生する可能性が高まったときに、蓄積したカビの増殖を停止し、蓄積をリセットすることができ、清潔性を高めたミストサウナ装置を提供することができる。
【0009】
また、他の手段は、ミストを生成するミスト生成手段を備え、防カビ運転モードにおいて前記ミスト生成手段によって一定時間浴室内にミストを噴霧することを特徴とする請求項15に記載のミストサウナ装置としたものである。
【0010】
これにより、カビの増殖を停止させる高い効果を得ることができ、清潔性を高めたミストサウナ装置を提供することができる。
【0011】
また、他の手段は、カビ判定手段によりカビ汚染と判定した時期になった場合、カビ汚染時期であることを出力するカビ出力手段を備えることを特徴とする請求項14から16のいずれかに記載のミストサウナ装置としたものである。
【0012】
これにより、使用者は浴室にカビが発生する可能性をランプ、LED表示やアラーム音などで知ることができ、浴室使用時間を短くしてカビの繁殖を低減し、また清掃する最適なタイミングを知ることができるミストサウナ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、入浴やミストサウナ浴によって発生した結露によるカビの繁殖を精度よく判定することで日常のカビの蓄積を防止できるため、カビの発生リスクを軽減して清潔な状態を維持することができるという効果が得られる。
【0014】
また、カビの発生を抑制することで、浴室の掃除を軽減できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1のミストサウナ装置の防カビ乾燥運転の構成を示すブロック図
【図2】同実施の形態1の温度センサによる入浴開始の検知方法を示すグラフ
【図3】同実施の形態1の湿度センサによる入浴開始の検知方法を示すグラフ
【図4】同実施の形態1のミストサウナ装置の浴室乾燥の動作を表すフローチャート
【図5】同実施の形態1の浴室乾燥判定手段の動作を表すフローチャート
【図6】同実施の形態1のカビ判定手段の動作を表すフローチャート
【図7】本発明の実施の形態2の温湿度条件ごとのカビを抑制する乾燥時間を示すグラフ
【図8】本発明の実施の形態3の湿熱によるカビ菌糸成長停止効果を示すグラフ
【図9】本発明の実施の形態3の防カビ運転の動作を表すフローチャート
【図10】従来のミストサウナ装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態として、請求項1記載の発明は、浴室内の換気や浴室乾燥の運転制御を行なう運転制御手段と、浴室内の結露時間を算出する結露時間算出手段と、浴室内の空気環境を検知する空気環境検知手段と、浴室乾燥を行っている間に前記空気環境検知手段による浴室空気の変化の検知に基づいて浴室乾燥時刻を判定する浴室乾燥判定手段を備え、前記空気環境検知手段により検知した浴室内の空気環境と、前記結露時間算出手段により算出した結露時間に基づいて、カビ汚染を判定するカビ判定手段を備え、前記カビ判定手段によりカビ汚染と判定した時期に、カビを抑制する防カビ運転モードを実行することを特徴とするミストサウナ装置としたものであり、カビの繁殖要因である結露時間を算出できるという作用を有し、浴室の使用状況によって長期的に少しずつ蓄積したカビの汚れにつながる繁殖があるかを判定することができるという作用を有する。また、長期的に蓄積したカビの繁殖を抑制し、カビ汚れの発生を抑制することができるという作用を有する。
【0017】
また、請求項2記載の発明は、ミストを生成するミスト生成手段を備え、防カビ運転モードにおいて前記ミスト生成手段によって一定時間浴室内にミストを噴霧することを特徴とする請求項1に記載のミストサウナ装置としたものであり、高い効果でカビの繁殖を抑制することができるという作用を有する。
【0018】
また、請求項3記載の発明は、カビ判定手段によりカビ汚染と判定した時期になった場合、カビ汚染時期であることを出力するカビ出力手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載のミストサウナ装置としたものであり、カビの繁殖の蓄積があることを浴室使用者が知ることができるという作用を有し、清掃などのカビの防除行動へとつなげることができるという作用を有する。
【0019】
(実施の形態1)ミストサウナ装置の構成
図1は、本発明のミストサウナ装置の防カビ乾燥運転、防カビ運転を行なうための構成を示すブロック図である。
【0020】
ミストサウナ装置1は、浴室内に微細なミストサウナを供給し、ミストサウナ浴を行なうための装置であるが、それによって発生した結露を乾燥させる浴室乾燥機能をもつものとする。ミストサウナ装置1の構成は、浴室内の空気を排気する換気運転を行なうための換気手段である換気ボックス2と、浴室内の空気を循環送風させる循環送風運転を行なうための循環送風手段である送風機3、空気を加熱して循環送風手段とあわせて加熱循環送風運転を行なうための空気加熱手段である熱交換器4、微細なミストを発生するミスト生成手段であるミスト発生部5これらの運転方法の制御を行なう制御部6からなる。
【0021】
制御部6は、浴室のカビを抑制するために、ミストサウナ装置1の運転パターン、運転アルゴリズムを制御するための運転制御手段7と、運転制御手段の運転制御方法を決める手段として浴室内の結露時間を算出する結露時間算出手段8、入浴が開始されたか否かを判定し入浴開始時刻を判定する入浴判定手段9、乾燥方法を決定する乾燥方法決定手段10、浴室内の乾燥状態や乾燥完了をセンサ信号から判定する浴室乾燥判定手段11、空気環境を示すセンサ信号と結露時間からカビの蓄積を判定するカビ判定手段12がある。これらは各種センサ信号を受信し、換気ボックス2や送風機3のモーターや、熱交換器4のバルブなどの制御信号を出力する制御部6に搭載された制御回路もしくはプログラムである。
【0022】
結露時間算出手段8は、浴室内の結露時間を算出する手段であり、乾燥方法決定手段10は、結露時間に基づいて乾燥方法を決定する手段である。すなわち、結露時間が長くなることによってカビが増殖しやすくなるため、結露時間が長い場合には、乾燥方法決定手段10によって短い時間で乾燥させる運転方法を選択、決定し、結露時間が短い場合には、低消費電力の運転方法で乾燥させる運転方法を選択、決定する。結露時間の算出は、入浴判定手段9によって判定した入浴開始の時刻から、防カビ起動手段13による操作信号の時刻までの時間の長さから求める。また、これに留まらず、結露を直接検知するような結露センサや赤外線センサの信号の変化から算出することもできる。例えば、サーモパイル型センサを使用し、壁面付近の温度を検知しつつ、温度変化から入浴の検知や、乾燥完了の検知をしても良い。尚、入浴開始時刻とは、この場合、人が浴室に入り、入浴を開始した時刻を指すが、入浴前の浴槽の湯はりを行なった時刻を入浴開始時刻としても良い。
【0023】
入浴判定手段9によって入浴開始時刻を判定するには、浴室内の環境変化から入浴開始を検知する入浴検知手段14の検知信号を用いる。例えば、入浴検知手段14によって検知した浴室の環境を示す検知信号と、入浴判定手段9で記憶された閾値を比較して、検知信号が閾値を越えた場合に入浴ありと判断する。入浴検知手段14としては、例えば、温度センサ15、湿度センサ16、人感センサ17、照明を検知する照度センサ18などを少なくとも一つ以上使用するが、これら以外にも、入浴に伴う特徴的な音を検知する手段や、本体、浴室内に付帯する給湯器、照明器具、またはテレビなどの映像機器の操作信号なども使用できる。入浴検知手段14としてセンサを用いる場合、ミストサウナ装置1内部の風路上や、浴室側のパネル表面などに配置することが好ましい。
【0024】
使用者が制御部6の操作を行なうための操作手段であるリモコン19は、ミストサウナ装置1の制御部6と有線、または無線で接続可能な構成とする。リモコン19には、浴室乾燥方法や風量、入力熱量、運転時間、風向角度などを設定するボタンが設けてある。また、防カビに最適化された運転制御を行なうプログラムを起動する防カビ起動手段13として、例えば防カビ起動ボタンを設けて、浴室使用者がカビを抑制するために複雑な運転制御プログラムを設定することなく、防カビ起動ボタンを押下、または接触することで、使用環境や空気環境に合わせた最適な浴室乾燥の運転制御を自動で行なうことを可能とするものである。
【0025】
結露時間算出手段8によって算出した結露時間に基づいて乾燥方法決定手段10で乾燥方法が決められるが、浴室内の空気環境を検知する空気環境検知手段20を使用し、検知した空気環境と結露時間とを元に浴室乾燥の運転制御を行なうことで、防カビ効果の高い浴室乾燥を行なうことができる。例えば、空気環境検知手段20によって検知した入浴前の空気環境がカビの増殖に好適であった場合、入浴に伴う結露の発生によってカビの増殖が促進される恐れがあるため、乾燥方法決定手段10では短時間で乾燥させることができる乾燥方法を判定し、運転制御手段7にて実行する。空気環境検知手段20は、温度を検知するための手段である温度センサ15、相対湿度を検知するための手段である湿度センサ16を用いる。
【0026】
温度センサ15として、例えば、水滴が付着しにくく、耐水性を施したサーミスタや熱電対センサが好ましい。また、表面に撥水または疎水処理を施すのも有効である。実際に浴室で起こりうる温度範囲である5℃以上60℃以下の範囲で検出できるものであるのが好ましい。ミストサウナ装置1の内部に設けるのが好ましいが、浴室内や浴室から連通する風路内であればこれに限定されない。しかし、浴室内の水滴が付着する部位に設置する場合は、水滴の付着による検出阻害が起こらない手段を用いる。
【0027】
また、湿度センサ16として、塩化リチウムやセラミックなどを素材とするセンサが挙げられるが、表面に付着した水滴と結合し、湿度の計測ができないことがある。素材表面に高分子膜を配した湿度センサを利用すると水滴の付着による湿度計測阻害を最小限にすることが可能である。また、浴室内の湿度を検出するため、例えば湿度検知範囲は20%から100%の範囲で計測できるものを使用することが好ましい。循環風路上などミストサウナ装置1の内部に設けるのが好ましいが、浴室内、浴室から連通する風路内であればこれに限定されない。
【0028】
入浴検知手段14として温度センサ15を使用する場合、図2に示すような入浴開始時の温度上昇を検知することで判定する。判定方法としては、例えば、あらかじめ入浴を示す温度の下限閾値を入浴判定手段9に記憶させ、温度センサ15が読み込んだ値と閾値とを比較して、閾値以上の温度になった場合に入浴ありと判定することが好ましい。但し、季節や浴室の大きさなどの影響を考慮する必要があり、あらかじめ実験を行なって、精度よく入浴を検知する閾値を求めることが重要である。
【0029】
また、入浴検知手段14として湿度センサ16を使用する場合、図3に示すような入浴開始時の相対湿度上昇を検知することで判定する。判定方法としては、例えば、入浴を示す相対湿度の下限閾値を入浴判定手段9に記憶させ、湿度センサ16で読み込んだ値と閾値とを比較して、閾値以上の相対湿度になった場合に入浴ありと判定することが好ましい。湿度を検知するセンサは、材料の特性上、一般に加湿方向と除湿方向とで出力信号にヒステリシスを持つ場合が多い。そこで、誤検知を防ぐために、初期に一定の乾燥状態があった後の信号のみを用いることや、下限閾値を高く設定することなどによって、精度を高めることが重要である。
【0030】
入浴検知手段14として、人検知手段である人感センサ17を使用する場合、ミストサウナ装置1の天井パネルに設け、浴室内の人の存在を検知する。人感センサ17として、赤外線センサなどが使用できるが、結露の影響による誤検知を防止するためポリエチレンやシリコーン樹脂など赤外線を透過する材料で保護カバーを設けることが好ましい。浴室内に清掃などで短期間に入室した場合と、入浴とを識別するために、一定時間連続して検知した場合に入浴検知手段14において入浴と判定するなどの制御方法をとることが好ましい。
【0031】
入浴検知手段14として、照明検知手段を使用する場合、照明の明るさを検知する照度センサ18を使用することができる。これは、浴室内の天井パネルに上に設けることが好ましい。また、照明の明るさではなく浴室内の照明の操作信号を検知することで判定することができる。この場合、制御部6に照明の制御線を接続し、照明検知手段は制御部6に設ける。いずれの場合においても、一時的な照明の使用と識別するために、一定時間連続して検出された場合に入浴判定手段9によって入浴ありと判定するなどの制御方法をとることが好ましい。
【0032】
入浴判定手段9として、操作手段であるリモコン19の操作信号を使用する場合、入浴やサウナ浴時の常時換気運転の停止信号や、ミストサウナ運転の起動信号を入浴検知信号として使用する。
【0033】
このような入浴検知手段14は、単独で使用するよりも複数組み合わせて使用することで精度を高めることができるので好ましい。
【0034】
図4は、ミストサウナ装置1の浴室乾燥の運転制御、防カビ運転の動作を表すフローチャートである。ミストサウナ装置1は空気環境検知手段20として温度センサ15と湿度センサ16を備える。温度センサ15および湿度センサ16は入浴検知手段14としても使用する。
【0035】
ミストサウナ装置1は、入浴が開始される前には、一定時間毎に温度および湿度のデータを読み込み、一定時間毎に入浴判定手段9の内部メモリに上書き保存させておく。尚、入浴開始が検知されて以降のデータは、上書きせず、最新のデータを入浴前の温度および湿度の値とする。検知した温度および湿度は、入浴判定手段9に記憶させている温度下限閾値と湿度下限閾値と比較し、いずれの値も閾値を上回った場合、入浴ありと判定する。入浴を検知するための温度は夏期、冬期とも共通として使用できるような値を用いるとよく、例えば27℃、湿度は90%とする。尚、判定精度を高めるために、一定時間連続で閾値を上回った場合に、入浴ありとする。入浴ありと判定した場合、制御部6に含まれるタイマと比較して入浴開始時刻を算出し、結露時間算出手段8の内部メモリに記憶させておく。
【0036】
入浴開始後、浴室乾燥の運転を起動するための防カビ起動手段13が起動されるまでは、浴室内が結露で覆われている入浴時間であると考える。防カビ起動手段13が押下されたのち、入浴終了と判断し、入浴終了時刻を算出する。入浴終了時刻は、一時的に入浴判定手段9の内部メモリに記憶させる。続いて、結露時間の算出を結露時間算出手段8にて行なうが、入浴判定手段9の内部メモリに記憶された入浴開始時刻と入浴終了時刻の値を読み込み、2つの時刻の差を算出して、結露時間とする。算出した結露時間は内部メモリに記憶させておく。
【0037】
算出した結露時間と、既に検知して記憶させている入浴前の温度および湿度とから、乾燥方法決定手段10にてカビを抑制する最適な乾燥方法を決定する。まず、算出した結露時間を、内部メモリに記憶してある結露時間の判定値と比較し、結露時間が長いか短いかを判定する。続いて記憶している入浴前の温度および湿度を、内部メモリの温度下限閾値Tm2、湿度下限閾値Hm2と比較する。結露時間が長く、温度および湿度がともに高い場合、カビが増殖しやすいため、短時間で乾燥させる必要があり、加熱循環送風運転を選択、決定する。一方、結露時間が短く、温度および湿度がともに小さい場合、カビは比較的増殖しにくいため、乾燥方法は、使用エネルギーを抑えた循環送風運転とする。また、その中間の場合には、乾燥方法は、初期に加熱循環送風運転を短時間実施し、乾燥を促進させたのち、循環送風運転に切り替え、使用エネルギーを抑える。これによって循環送風運転単独の場合に比べ、乾燥時間の短縮を図ることができ、加熱循環送風に比べ使用エネルギーも削減することができる。このような乾燥方法決定手段10は、結露時間と入浴前の温度および湿度から運転方法の選択、決定を行なう。
【0038】
浴室の乾燥方法が選択され、実行されているとき、浴室内が乾燥したかどうかを浴室乾燥判定手段11にて判定し、浴室乾燥の自動停止を行なう。浴室乾燥判定手段11の動作を示すフローチャートを図5に示す。浴室乾燥の運転開始後、まず、使用した乾燥方法が加熱循環送風であったかを判定する。加熱循環送風であった場合、温度での乾燥完了判定は難しく、湿度センサ16によって検知した相対湿度の変化によって乾燥の判定を行なう。乾燥が進むにつれて相対湿度は低下し、乾燥が完了すると相対湿度の低下が止まり、一定の値を示すようになる。このように一定時間毎に読み込んだ相対湿度が一定になった場合、乾燥完了と判定する。一方、乾燥方法として加熱を使用していない場合、温度センサ15と湿度センサ16により検知した温度と湿度と、記憶させていた入浴前の温度および湿度の値と比較することにより乾燥の判定を行なう。浴室の乾燥が進むにつれて、入浴前の温度および湿度の値に近づき、乾燥が完了すると同程度の値を示すようになる。このように、温度と相対湿度が入浴前の値以下になるか、同程度の値になった場合、乾燥完了と判定して、浴室乾燥を終了させる。また、加熱を使用した場合と同様に、相対湿度の低下が止まったことから乾燥完了を判定してもよい。
【0039】
浴室乾燥を行なった時間を算出し、浴室乾燥判定手段11の内部メモリに記憶させる。乾燥時間のデータは、カビの判定などに利用するためのものである。
【0040】
空気環境検知手段20によって検知した浴室内の空気環境と、結露時間算出手段8によって算出した浴室内に結露が発生している時間、および浴室乾燥判定手段11によって実行された乾燥時間とから、結露が発生して乾燥完了までにカビが成長したかどうかをカビ判定手段12によって判定する。空気環境がカビにとって好適な温湿度環境であった場合、結露とともに増殖するため、カビは成長ありと判定し、結露時間と乾燥時間の合計時間がカビ成長時間となる。一方、空気環境がカビにとって増殖できない環境であった場合、カビの活性は低く、結露によっても増殖しづらく、成長なしと判定する。
【0041】
カビの成長は蓄積するため、成長した時間から、カビの重量、構成成分の量、色の濃さなどのカビの増殖量を示す数値に変換、もしくは増殖時間の値を累積することでカビの発生時期を予測できる。カビは成長を開始した後、好適条件では2〜3日程度で目視により発生が認識できる程度まで成長する。例えば、結露時間が6時間であったとき、同条件を8日から12日程度繰り返した場合にカビが発生すると推定できる。カビの発生時期を推測する精度を高めるためには、浴室環境を再現し、カビが発生するまでの時間や、増殖量を示す数値を予め実験で求めておくことが重要である。
【0042】
カビ判定手段12の一例をフローチャートにて図6に示す。乾燥完了後、カビ判定を開始するが、内部メモリに記憶されている入浴前の温度、湿度、結露時間、乾燥時間を読み込み、カビ判定手段12の内部メモリに記憶させているデータテーブルを参照、比較して、カビの増殖有無の判定を行なう。データテーブルの一例を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1は、結露時間と乾燥時間の合計時間から求めた乾燥保持時間と、入浴前の温度および湿度からカビの増殖有無を割り当てた表である。温度および湿度が高い場合はカビが増殖し、低くなると、結露時間と乾燥時間の合計時間の長さに応じて増殖有無が変化する。表1は乾燥保持時間が12時間である場合のテーブルであるが、A、B、Cで示された温度と相対湿度の範囲は、それぞれカビの増殖量を示す値が入る。この場合、Aは増殖なしで、B、Cは増殖ありを示し、Cが大きい値である。尚、このようなデータテーブルは、ある程度セグメント化した乾燥保持時間ごとに作成し、記憶させておく。カビの増殖ありと判定した場合、増殖量を算出する。算出した増殖量は、内部メモリに記憶しているカビの増殖量に累積し、保存する。保存した後、別の内部メモリに記憶しているカビの発生を示すカビ増殖量累積値の下限閾値Pと比較し、上回った場合、カビの発生ありと判定する。
【0045】
カビ判定手段12でカビの繁殖時期が近づいたと判定された場合、使用者が知ることができるようカビ出力手段21として、カビ表示部を設ける。例えばLEDや液晶表示などで行なう場合にはリモコン19に設置するのがよく、一方、音声で表示する場合にはリモコン19や制御部6などに配置することが好ましい。
【0046】
カビが発生したと判定されたとき、防カビ起動手段13を押下すると、防カビ運転を実行できる。防カビ運転は、湿度や温度をコントロールすることによって、カビの成長を停止させ、抑制する効果をもつ運転方法である。カビの増殖を抑制できる乾燥の自動運転と、カビが増殖した可能性がある場合に、カビを抑制するカビ抑制運転を備えることで、浴室の清潔性を高めたミストサウナ装置とすることができる。
【0047】
(実施の形態2)乾燥方法決定手段によるカビを抑制するための乾燥方法の決定方法
カビは、一般的に相対湿度85から100%、温度摂氏15℃から30℃以下で増殖することが知られている。特に、相対湿度90%を超えると増殖が急激に増加することが知られている。浴室内がこのような高湿度になる要因は、外気の影響よりも、入浴による結露の影響が支配的であると考えることができる。更に、浴室は通常、結露と乾燥が繰り返されているため、カビの増殖に影響する因子は、結露している時間と、乾燥している状態の二つの影響を合わせたものであると考えることができる。
【0048】
そこで、カビが増殖、または増殖が抑制される条件を検討するため、以下のような試験を行なった。まず、供試菌として、浴室に見られるカビの最頻種であるクラドスポリウムを選択し、これをポテトデキストロース寒天培地上で、28℃にて前培養して、胞子を形成させた。胞子を白金耳で回収し、滅菌したグルコースペプトン液体培地に懸濁し、28℃で一晩振とう培養して、小さな菌糸の塊を形成させた。得られた菌糸を回収し、滅菌蒸留水で洗浄した後、スライドグラス上に付着させ、試験片とした。この試験片を温度と相対湿度、時間を変えた様々な乾燥条件で曝露したのち、結露状態に移した後の増殖の有無、増殖時間を顕微鏡で観察した。その結果の一例を表2に示す。乾燥状態から結露した後、増殖開始までの停止期間が存在し、乾燥時間が長くなると増殖が抑制されることが確認された。
【0049】
【表2】
【0050】
また、温度と相対湿度によって、カビが増殖抑制される時間が異なった。図7に示すように、例えば、相対湿度65%では、20℃では約8時間の乾燥保持時間を与えることで増殖を抑制することができたが、25℃では12時間の乾燥保持時間が必要であった。
【0051】
これを元に、結露時間算出手段によって算出した結露時間と、温度および相対湿度の空気環境から、カビの抑制に必要な乾燥時間を得ることができる。例えば、結露時間が8時間、室外の空気が温度15℃、相対湿度65%であった場合、カビを抑制するために6時間乾燥保持時間を与える必要があり、24時間サイクルで考えた場合に10時間で浴室を乾燥完了させる必要があることがわかる。この場合、10時間で乾燥できれば良いため、エネルギー使用量の少ない換気運転や、循環送風運転を選択する。一方、結露時間が同じ8時間でも、室外の空気が25℃、65%であった場合、カビを抑制するために12時間乾燥保持時間を与える必要があり4時間で乾燥完了させる必要があることになる。そのため、この場合の運転方法としては加熱循環送風を選択する。このように、温度と相対湿度ごとの必要乾燥保持時間のデータテーブルを作成し、カビ判定手段12に記憶させることで、浴室の使用状況や温湿度が異なる場合でも、使用者が複雑な運転制御を行なうことなくカビを抑制する最適な運転制御方法を自動で簡便に行なうことができる。さらに消費エネルギーを抑えて通年で清潔性の高い浴室を維持することができ、浴室の清掃頻度の低減や、浴室や機器の汚染による劣化を防止することができるミスとサウナ装置1とすることができる。
【0052】
(実施の形態3)湿熱による防カビ運転制御
カビはミストサウナのような湿熱を与えると増殖できなくなることが知られている。そこで、以下のような試験を行い、湿熱でカビを抑制できる条件を検証した。まず、実施の形態2のカビ胞子を、滅菌したグルコースペプトン液体培地に懸濁した。これをシャーレに入れ、温度25℃で一晩前培養した。前培養した後、顕微鏡下において菌糸先端の成長速度を測定しながら温度40℃にて約1時間曝露し、再び温度25℃に戻すときの、カビの菌糸成長速度変化を測定した。結果を図8に示す。
【0053】
これによると、加熱なしと比較して、40℃にて1時間程度湿熱を与えることで、カビ菌糸先端の成長を停止させ、増殖を抑制できることが判る。カビの増殖が蓄積した場合に、浴室内をミストサウナによって湿熱状態にすることで、カビの繁殖を防止することができる。
【0054】
ミストサウナ装置1のミスト発生部5は、供給された冷水、または温水を加圧噴霧、超音波噴霧、静電霧化し、もしくは衝突破砕と組み合わせることで、ミストを含んだ空気を生成する。防カビ運転モードでカビを抑制するためには、ミストを含んだ空気を熱交換器4で加熱し、または熱交換器4で加熱した空気とミストを混合して高温のミストにした状態で浴室内に噴霧することが重要である。また、温水を直接ノズルなどで浴室に噴霧してもよい。生成するミストは、直径0.1μmから100μm、好ましくは10μm以下とすることで、浴室内に過度に結露を発生させることなく、壁面付近に薄い結露膜を作製し、壁面の温度を上昇させてカビの抑制効果を得ることができる。また、このような粒径のミストを用いることより、防カビ運転を実施した後の乾燥時間が短いため、少ない消費電力で乾燥を行なうことができる。
【0055】
カビ判定手段12に記憶されたカビの増殖累積値が、カビ汚れが発生する可能性を示す値になったとき、カビ出力手段21においてカビの発生を通知する。カビ出力手段21の通知を受けた使用者は、浴室内を洗剤や漂白剤によって清掃行動に移り、浴室内のカビの発生を自主的に抑制することができる。一方、カビ出力手段21でカビの発生のお知らせを出力しているときに使用者が防カビ起動手段13を実行した場合、カビを抑制するための防カビ運転が実行される。防カビ運転は、ミストサウナを一定時間浴室内に噴霧し、浴室壁面を高温高湿度にすることで、カビの成長を停止させるためのものである。
【0056】
図9は防カビ運転の動作の一例を示すフローチャートである。カビ判定手段12にてカビ発生と判定されたとき、防カビ起動手段13を起動すると、カビを抑制するためのミストサウナ運転を開始する。制御部6に含まれるタイマと比較して、時間のカウントを行ない、予め設定した時間運転を行なったのち、防カビ運転を停止する。防カビ運転を停止後、内部メモリのカビ増殖量累積値をリセットする。リセットすることで、再びカビが増殖し、汚れが発生する時期を精度よく判定することができる。ミストサウナによる防カビ運転を行なった後、浴室内に残る結露を除去するため、浴室乾燥を行なう。カビを抑制した直後であるため、循環送風運転により低消費電力で乾燥させる運転方法を行なうことが好ましい。これにより、梅雨時などカビが発生しやすい時期に、カビの蓄積を防止することができ、通年で清潔性の高い浴室を維持することができるミスとサウナ装置1とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
高いカビ抑制効果によって、浴室のカビによる汚染による環境悪化を抑制することができ、快適性の高いミストサウナ装置を提供できる。
【符号の説明】
【0058】
1 ミストサウナ装置
2 換気ボックス
3 送風機
4 熱交換器
5 ミスト発生部
6 制御部
7 運転制御手段
8 結露時間算出手段
9 入浴判定手段
10 乾燥方法決定手段
11 浴室乾燥判定手段
12 カビ判定手段
13 防カビ起動手段
14 入浴検知手段
15 温度センサ
16 湿度センサ
17 人感センサ
18 照度センサ
19 リモコン
20 空気環境検知手段
21 カビ出力手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室内の換気や浴室乾燥の運転制御を行なう運転制御手段と、浴室内の結露時間を算出する結露時間算出手段と、浴室内の空気環境を検知する空気環境検知手段と、浴室乾燥を行っている間に前記空気環境検知手段による浴室空気の変化の検知に基づいて浴室乾燥時刻を判定する浴室乾燥判定手段を備え、前記空気環境検知手段により検知した浴室内の空気環境と、前記結露時間算出手段により算出した結露時間に基づいて、カビ汚染を判定するカビ判定手段を備え、前記カビ判定手段によりカビ汚染と判定した時期に、カビを抑制する防カビ運転モードを実行することを特徴とするミストサウナ装置。
【請求項2】
ミストを生成するミスト生成手段を備え、防カビ運転モードにおいて前記ミスト生成手段によって一定時間浴室内にミストを噴霧することを特徴とする請求項1に記載のミストサウナ装置。
【請求項3】
カビ判定手段によりカビ汚染と判定した時期になった場合、カビ汚染時期であることを出力するカビ出力手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載のミストサウナ装置。
【請求項1】
浴室内の換気や浴室乾燥の運転制御を行なう運転制御手段と、浴室内の結露時間を算出する結露時間算出手段と、浴室内の空気環境を検知する空気環境検知手段と、浴室乾燥を行っている間に前記空気環境検知手段による浴室空気の変化の検知に基づいて浴室乾燥時刻を判定する浴室乾燥判定手段を備え、前記空気環境検知手段により検知した浴室内の空気環境と、前記結露時間算出手段により算出した結露時間に基づいて、カビ汚染を判定するカビ判定手段を備え、前記カビ判定手段によりカビ汚染と判定した時期に、カビを抑制する防カビ運転モードを実行することを特徴とするミストサウナ装置。
【請求項2】
ミストを生成するミスト生成手段を備え、防カビ運転モードにおいて前記ミスト生成手段によって一定時間浴室内にミストを噴霧することを特徴とする請求項1に記載のミストサウナ装置。
【請求項3】
カビ判定手段によりカビ汚染と判定した時期になった場合、カビ汚染時期であることを出力するカビ出力手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載のミストサウナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−99548(P2013−99548A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−287086(P2012−287086)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2008−225532(P2008−225532)の分割
【原出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2008−225532(P2008−225532)の分割
【原出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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