説明

ミスト噴霧システム

【課題】本発明は、複数種類の薬液を含む水溶液を安定した濃度で常時供給してミストを形成することができるミスト噴霧システムを提供することを目的とするものである。
【解決手段】ミスト噴霧システムは、複数種類の薬剤が混合されて所定の濃度に調製された薬液を貯留する貯留槽33と、加圧された原料水を給水する給水管51に接続されて原料水を入水して流通させながら貯留槽33内の薬液を吸い上げて所定の混合率で原料水に混合して希釈した水溶液を出水する薬液投入器34と、薬液投入器34から供給管を介して供給される前記水溶液を屋内においてミスト状に噴霧するミスト発生器とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間が活動する空間に水溶液をミスト状に連続噴霧することで活動空間の環境を改善するミスト噴霧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より工場、養豚場、倉庫といった埃や塵が生じやすい環境では、水をミスト状に噴霧して、浮遊する埃や塵をミスト状に形成された水の微粒子で補足して落下させることで、作業環境を浄化することが行われている。また、近年では、温暖化等の環境意識の高まりとともに、夏の高温時に水をミスト状に噴霧し拡散させて蒸発させることで、気化熱を奪い冷却効果を得るシステムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、焼却炉の炉壁に付着したクリンカの除去作業時に発生する粉塵に対して、焼却炉内の上方に噴霧ノズルを設置して高圧ポンプから噴霧ノズルに水を圧送し、噴霧ノズルから下方に向けて水を噴霧して形成されたミストが焼却炉内を上方から覆い、浮遊している粉塵を捕捉して落下させることで、焼却炉内に浮遊する粉塵を減少させる焼却炉メンテナンス時の粉塵防止方法が記載されている。また、特許文献2では、水供給手段からのポンプを経由した加圧水を所定位置の噴霧ノズルへと給水し、微粒子化したミストを噴霧することで、噴霧されるミストの蒸発気化熱により冷却作用が発揮されて人間の体感温度を下げ清涼感を体感可能とし、また、埃や粉塵が浮遊する空間に噴霧することで、埃や粉塵を包み込んで沈下させる沈塵作用を発揮するようにしたミスト噴霧システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−336827号公報
【特許文献2】特開2010−78264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献に記載されているように、加圧した水を噴霧ノズルに供給してミストを発生させるようにしているが、加圧するためのポンプが必要となり、工場等のように常時ミストを発生させる必要がある場合にコスト負担が増加する課題がある。また、噴霧する水に界面活性剤、消臭剤、除菌剤等の薬剤を投入することで、薬剤による様々な効能を発揮させてさらに環境を改善することが期待されているが、そのためには薬剤を安定した濃度で常時供給可能なシステムを構築しなければならない。しかしながら、従来技術ではこうした点に十分対応できていないのが実状である。
【0006】
そこで、本発明は、複数種類の薬液を含む水溶液を安定した濃度で常時供給してミストを形成することができるミスト噴霧システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るミスト噴霧システムは、複数種類の薬剤が混合されて所定の濃度に調製された薬液を貯留する貯留槽と、原料水を加圧して給水する給水源と、給水される前記原料水を入水して流通させながら前記貯留槽内の前記薬液を吸い上げて所定の混合率で前記原料水に混合して希釈した水溶液を出水する薬液投入器と、前記薬液投入器から供給管を介して供給される前記水溶液をミスト状に噴霧するミスト発生器とを備えている。さらに、前記供給管は、複数の前記ミスト発生器に対応して複数配管されており、各供給管には前記水溶液の供給を制御する開閉弁が設けられている。さらに、前記貯留槽内の前記薬液を撹拌する撹拌器が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記の構成を備えることで、複数種類の薬液を含む水溶液を安定した濃度で常時供給してミストを噴霧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。
【図2】溶液供給装置に関する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。建屋Hの屋内には、天井に近い高さの位置に複数のミスト発生器10i(i=1,・・・,n)が取り付けられており、各ミスト発生器には、ミスト源となる水溶液を供給する供給管20i(i=1,・・・,n)が接続されている。供給管20iは、天井又は側壁面に沿って配管されて屋外の溶液供給装置30に接続されている。各供給管は、溶液供給装置30に接続された出力管22から分岐した分岐管にそれぞれ開閉弁21i(i=1,・・・,n)を介して接続されており、ミスト噴霧が必要な箇所に設置したミスト発生器に対応する開閉弁を開くことで効率よくミストを屋内の空間に噴霧させることができる。
【0012】
各供給管には空気管41が付随して配管されており、各ミスト発生器に空気管41が接続されている。空気管41は、屋外に設置された公知のアキュムレータ40に接続されて圧縮空気が供給されるようになっている。そして、各ミスト発生器に各供給管から水溶液が供給されるとともに空気管から圧縮空気が供給され、ミスト発生器のノズルから水溶液を圧縮空気とともに噴射することで、ミストが噴霧されるようになっている。噴霧されたミストは、屋内空間の空気中を漂い、塵や埃を補足して落下していくようになり、屋内空間の環境を改善することができる。建屋Hとしては、固体廃棄物等の廃棄物処理施設、解体工場、粉塵等が発生する製造工場、養豚場、牛舎等の環境条件が悪化しやすい人間の活動空間が挙げられる。
【0013】
図2は、溶液供給装置30に関する概略構成図である。溶液供給装置30は、筺体31の内部が上部空間及び下部空間に仕切られており、上部空間は後述する機器を設置する設置スペース32となっており、下部空間は原料水に薬剤を混合して所定の濃度に設定した薬液100を貯留する貯留槽33となっている。設置スペース32のほぼ中央部には、薬液投入器34が取り付けられている。薬液投入器34は、下方に吸引パイプ34aが延設されて薬液100中に差し込まれている。また、薬液投入器34の混合部34bの左右両側にはそれぞれ出水口部34c及び入水口部34dが設けられており、混合部34bと吸引パイプ34aとの間には薬液の混合率を調整する調整部34eが連通して設けられている。
【0014】
混合部34bの内部には、モータピストンが内蔵されており、入水口部34dから加圧された原料水が給水されて混合部34bを通過して出水口部34cに出水される際にモータピストンが水圧に応じて上下動するようになる。調整部34eの内部には、モータピストンの下方に接続されたインジェクタピストンが挿着されており、インジェクタピストンがモータピストンとともに連動することで混合部34b内の水の流れにより吸引パイプ34aから調整部34eに薬液が吸い上げられていく。調整部34eで設定された混合率で入水口部34dから出水口部34cに流通する原料水に混合されていくようになっている。こうした薬液投入器34は、動力が不要で、流水中に一定の混合率で薬液を投入することが可能で、ドサトロン インターナショナル社製薬液投入器(商品名;ドサトロン(登録商標))等の公知の機器を用いることができる。
【0015】
薬液投入器34の出水口部34cには出水パイプ35が接続されており、出水パイプ35は、筺体31の外側面まで配管された出力管22に接続されている。また、入水口部34dには入水パイプ36が接続されており、入水パイプ36は、筺体31の外側面まで配管された給水管51に接続されている。給水管51は、水道水や地下水といった原料水を加圧して給水する給水源から配管された接続管50に接続されており、常時原料水が加圧された状態で給水されるようになっている。
【0016】
したがって、給水管51及び入水パイプ36を通して原料水を薬液投入器34に給水することで、常時所定の混合率で薬液を原料水に混合して出水パイプ35を通して出力管22に供給することができる。出力管22に供給された薬液を含む水溶液は、分岐管を通り開閉弁21i(i=1,・・・,n)のうち開いた状態の開閉弁から供給管20i(i=1,・・・,n)に供給されてミスト発生器10i(i=1,・・・,n)から噴霧されるようになる。そして、水源の水圧によりミスト発生器に水溶液を加圧状態で供給することができるため、ポンプ等の加圧装置を用いなくてもミストを発生させることができる。
【0017】
また、開閉弁のうち開いた状態の弁の個数により供給管に供給される溶液量が変化するようになるが、薬液投入器34では供給する溶液量に応じて混合部34b内を流通する水量が変化し、それに対応して薬液の混合率が一定に保たれるようにモータピストン及びインジェクタピストンが自動的に調整される。そのため、水溶液の供給量の変動があった場合でも安定した濃度で水溶液が常時供給されるようになっている。したがって、屋内の一部の空間のみミストを噴霧した場合でも所定の濃度の水溶液をミスト状に散布して環境を改善することができる。
【0018】
設置スペース32には、薬液投入器34に隣接して撹拌器37が取り付けられている。撹拌器37は、貯留槽33内に延設された撹拌ロッド37a、撹拌ロッド37aの先端部に設けられた撹拌羽根37b及び撹拌ロッド37aに接続した駆動モータ37cを備えている。駆動モータ37cを回転駆動することで、撹拌ロッド37aを介して撹拌羽根37bが貯留槽33内中で回転して薬液100を撹拌し、薬液100中の薬剤の濃度を均一な状態に保つようにする。撹拌器37による撹拌動作は、定期的に動作するように駆動モータ37cを駆動制御してもよく、また薬液の投入時に撹拌動作を行うように駆動制御してもよい。
【0019】
また、設置スペース32には、液面検知器38が薬液投入器34に隣接して取り付けられている。液面検知器38は、貯留槽33内に延設された検知ロッド38aにリング状のフロート38bが上下動可能に設けられている。そして、貯留槽33内の液面に応じて上下動するフロート38bの検知ロッド38aにおける位置を電気的に検知する検知部38cが検知ロッド38aの上端部に接続されて設置スペース32内に取り付けられている。フロート38bが上下動する下限位置及び上限位置は予め設定されており、フロート38bが下限位置に到達した場合には、薬液の残量が少なくなったことを示す検知信号が検知部38cより出力されて表示部(図示せず)において薬液の補給を促す表示が行われる。また、薬液の補給が行われて貯留槽33内の液面が上昇してフロート38bが上限位置に到達した場合には、薬液が満水位置まで補給されたことを示す検知信号が検知部38cより出力されて表示部において薬液の補給を停止するよう表示が行われる。なお、薬液の補給は、筺体内部を仕切る隔壁に形成した開口部に取り付けた蓋体39を取り外して、開口部より貯留槽33内に薬液を投入して行われる。
【0020】
薬液は、水道水等の原料水に界面活性剤、消臭剤、除菌剤といった薬剤を混合して調製する。上述したドサトロン等の薬液投入器では、粘度が高い薬剤をそのまま用いた場合に薬剤の吸い上げが十分行われなくなる欠点があるが、予め薬剤を薄めて低粘度の状態で貯留槽に投入することで薬液投入器を十分に機能させて一定の混合率で薬液を供給することができる。また、強酸性又は強アルカリ性の薬剤を用いる場合には、薬液投入器にダメージを与えることになるが、貯留槽で適度な濃度に希釈して用いれば、こうしたダメージを避けることができる。
【0021】
また、薬液投入器では、薬液の混合率を高く設定することが困難で、ドサトロンの場合0.2%〜2%程度の混合率であるため、薬液の濃度が高濃度の場合や低濃度の場合には環境改善に有効な濃度に設定することが難しい。そのため、上述した実施形態では貯留槽内で予め薬液を適当な濃度に調整しておき、薬液投入器で原料水と混合することで最適な濃度に容易に設定することが可能となる。
【0022】
また、ミスト発生器では、0.1%程度の濃度の界面活性剤を用いてミストの生成を行うことができ、10%程度の濃度の界面活性剤を用いて多数の細かい泡を生成することができるが、こうした幅広い濃度調整を行う場合にも、貯留槽内の界面活性剤の濃度を薬液投入器の混合率を考慮して予め適当な濃度に調整しておくことで、ミスト発生器に供給する界面活性剤の濃度を所望の値に容易に設定することができる。
【0023】
また、複数種類の薬剤を用いる場合、散布に最適な各薬剤の濃度が異なるため、濃度調整を薬剤毎に行う必要があるが、貯留槽に薬剤を投入する際にそれぞれの濃度に応じて投入量を調整すればよく、貯留槽内で複数種類の薬剤をそれぞれ異なる濃度で容易に調製することができる。そして、薬液投入器の混合率を考慮して予め貯留槽内の各薬剤の濃度を調整しておけば、ミスト発生器から同時に複数種類の薬剤を所望の濃度で散布することができ、複数種類の薬剤が同時に効果を発揮することで人間の活動空間における環境条件を格段に向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0024】
10・・・ミスト発生器、20・・・供給管、21・・・開閉弁、22・・・出力管、30・・・溶液供給装置、31・・・筺体、32・・・設置スペース、33・・・貯留槽、34・・・薬液投入器、35・・・出水パイプ、36・・・入水パイプ、37・・・撹拌器、38・・・液面検知器、39・・・蓋体、40・・・アキュムレータ、41・・・空気管、50・・・接続管、51・・・給水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の薬剤が混合されて所定の濃度に調製された薬液を貯留する貯留槽と、原料水を加圧して給水する給水源と、給水される前記原料水を入水して流通させながら前記貯留槽内の前記薬液を吸い上げて所定の混合率で前記原料水に混合して希釈した水溶液を出水する薬液投入器と、前記薬液投入器から供給管を介して供給される前記水溶液をミスト状に噴霧するミスト発生器とを備えているミスト噴霧システム。
【請求項2】
前記供給管は、複数の前記ミスト発生器に対応して複数配管されており、各供給管には前記水溶液の供給を制御する開閉弁が設けられている請求項1に記載のミスト噴霧システム。
【請求項3】
前記貯留槽内の前記薬液を撹拌する撹拌器が設けられている請求項1又は2に記載のミスト噴霧システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−225516(P2012−225516A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90494(P2011−90494)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(510192927)
【出願人】(510192938)
【Fターム(参考)】