説明

ミスト噴霧装置

【課題】水ミスト運転開始時に温水戻り温度監視制御を実行した後に、加熱殺菌直後のミスト用熱交換器からの温水が浴室内に噴霧されるのを防止すると共に、残水の排水操作が不要な排水レス仕様にする。
【解決手段】ミスト用熱交換器11の加熱殺菌用の温水戻り温度監視制御を実行するミスト噴霧装置3において、機器ケーシング25の空気吸込口33から浴室13内の空気を吸い込み、空気吹出口30から空気を吹き出す送風手段と、送風手段の駆動時に浴室13内の空気により冷却される冷却用給水管路20cとを設け、ミスト噴霧装置3の運転開始時に温水戻り温度監視制御を実行した後で、ミスト用熱交換器11への温水供給を停止し且つ送風手段を駆動した状態で、ミスト用熱交換器11からの非加熱のミスト用水を冷却用給水管路20cを経由してミストノズル10から噴霧させる水ミスト運転を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト噴霧装置に関し、詳しくはミスト用熱交換器の加熱殺菌を行い、その後、低温の水ミスト噴霧運転を行うミスト噴霧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴室内にミストサウナ用の水を噴霧するミストノズルと、ミストノズルに水を供給するミスト用給水管路と、ミスト用給水管路に配置されてミストノズルへのミスト用水の供給を行う給水手段と、ミストノズルに供給される水を熱源機からの温水により加熱するミスト用熱交換器とを備えたミスト噴霧装置が知られている。
【0003】
また従来から、ミスト用熱交換器内にレジオネラ菌などの雑菌が繁殖している場合の対策として、ミスト用熱交換器とミストノズルとの間にノズル開閉弁を備え、ノズル開閉弁より上流側に排水管路を分岐させて排水弁を開閉させることで、ミスト噴霧装置を長期間使用しない場合であっても、ミスト運転開始時にミスト用給水管路内の残水がミストノズルから浴室内に噴出されるのを防止できるようにしたミスト噴霧装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、上記特許文献1の従来例では、ミスト用熱交換器内部の残水の排水操作が必要となるため、ミスト噴霧装置を浴室に設置する際に、残水を予備排水するための配管が必要となり、ミスト噴霧装置内部の配管を行う上で設計上の制約が生じるという問題があり、さらに無駄な水の廃棄を伴うという問題もある。
【0005】
そこで他の従来例として、ミスト運転開始時に前記ミスト用熱交換器からの温水戻り温度を監視し、この監視結果に基づき、温水戻り温度が所定温度以上であることを所定時間以上継続したことを判定した後にミスト噴霧を開始するように温水戻り温度監視制御を実行する温水戻り温度監視部を備えたミスト噴霧装置が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
上記特許文献2の従来例では、温水戻り温度監視制御の実行によりミスト噴霧を開始する前にミスト用熱交換器を所定温度以上、所定時間以上継続して加熱できるので、もしも、ミスト用熱交換器内にレジオネラ菌などの雑菌が繁殖していたとしても、その雑菌を死滅させることが可能となり、ミスト運転開始時に加熱殺菌が自動的に行われるので、上記特許文献1における不具合はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−241224号公報
【特許文献2】特開2008−110021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、最近、夏場などの気温が高い時候においては、ミスト用熱交換器で熱源機からの温水による加熱を行わずに、給水手段からの低温水をミストノズルから噴霧することで浴室内において涼を求める水ミスト運転を行いたいという要望が高まっている。
【0009】
しかし、前記特許文献2においては、温水ミスト運転を行う場合はミスト運転開始時に加熱殺菌を行なっても特段の支障は生じないが、水ミスト運転を行う場合は、ミスト運転開始時に加熱殺菌を行ない、その後、熱源機からの温水の供給を停止しても、ミスト用熱交換器はしばらく高温状態にあるため、ミスト用熱交換器からの温水がミストノズルから浴室内に噴霧されてしまい、十分に冷却された水ミストが噴霧されるまで時間がかかるという不都合が生じる。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、水ミスト運転開始時にミスト用熱交換器の加熱殺菌のための温水戻り温度監視制御を実行した後に、ミスト用熱交換器からの温水が浴室内に噴霧されるのを防止できると共に、残水の排水操作が不要な排水レス仕様にできるミスト噴霧装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、本発明は、浴室13内にミスト用水を噴霧するミストノズル10と、ミストノズル10への給水を行うミスト用給水管路20と、ミストノズル10に供給される水を熱源機14からの温水により加熱するミスト用熱交換器11とを備えると共に、ミスト運転開始時に前記ミスト用熱交換器11からの温水戻り温度を監視し、この監視結果に基づき、温水戻り温度が所定温度以上であることを所定時間以上継続したことを判定した後にミスト噴霧を開始するように温水戻り温度監視制御を実行する温水戻り温度監視部6とを備えたミスト噴霧装置であって、ミスト噴霧装置3が収納される機器ケーシング25の空気吸込口33から浴室13内の空気を吸い込み、空気吹出口30から空気を吹き出すための送風手段を設けると共に、前記ミスト用熱交換器11から前記ミストノズル10へのミスト用水の供給経路を、前記空気吸込口33から前記空気吹出口30に至る通風経路に配置されて前記送風手段の駆動時に浴室13内の空気により冷却される冷却用給水管路20cにより構成し、ミスト噴霧装置3の運転開始時に前記温水戻り温度監視制御を実行した後に、前記ミスト用熱交換器11への前記熱源機14からの温水の供給を停止し且つ前記送風手段を駆動した状態で、ミスト用熱交換器11からの非加熱のミスト用水を冷却用給水管路20cを経由してミストノズル10から噴霧させる水ミスト運転を実行することを特徴としている。
【0012】
このような構成とすることで、水ミスト運転開始時にミスト用熱交換器11内部の加熱殺菌のための温水戻り温度監視制御を実行した後に、ミスト用熱交換器11からの温水を冷却用給水管路20cを経由させることで浴室13内の空気との熱交換により当該温水を冷却できるので、低温水としてミストノズル10から噴霧できるようになる。しかも、加熱殺菌直後の温水を予備排水するための配管を別途設ける必要もなくなる。
【0013】
前記送風手段の駆動時においても浴室13内の空気との熱交換が抑制される非冷却用給水管路20hを設け、前記ミスト用熱交換器11から前記ミストノズル10へのミスト用水の供給経路として、前記冷却用給水管路20cと前記非冷却用給水管路20hとを選択自在とするのが好ましい。この場合、冷却用給水管路20cと非冷却用給水管路20hとを選択することにより、送風手段による浴室13内の空気とミスト用水との冷却のための熱交換が促進される水ミスト運転と、冷却は無用である場合に当該熱交換が抑制される温水ミスト運転または水ミスト運転とを適宜に切り替え可能となる。
【0014】
前記ミスト用熱交換器11から前記ミストノズル10に供給されるミスト用水の温度を検出するミスト温度センサー18を設け、水ミスト運転開始時には前記冷却用給水管路20cを選択し、運転開始から所定時間経過後にミスト温度センサー18からの検出温度が予め定めた設定温度以下になった時点で前記冷却用給水管路20cから前記非冷却用給水管路20hに切り替えるのが好ましい。この場合、水ミスト運転開始時に、温水戻り温度監視制御を実行した後に水ミスト噴霧を行う場合に、運転開始から所定時間を経過すると、前記ミスト用熱交換器11からのミスト用水の温度より浴室13内の温度の方が高い(暖かい)場合には、空気吸込口33から吸い込まれる浴室13内の暖かい空気により冷却用給水管路20cが加熱されてしまい、冷却用給水管路20cを通過するミスト用水の温度が上昇する可能性がある。そこで、運転開始時から所定時間を経過後に、ミスト温度センサー18で検出されるミスト用水の温度が予め設定された設定温度以下になった時点で、冷却用給水管路20cから非冷却用給水管路20hに切り替えることで、浴室13内の空気との熱交換が抑制されている非冷却用給水管路20hを経由してミストノズル10に供給されることとなり、浴室13内の空気の温度に影響されることなく、水ミストの低温状態を維持できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、水ミスト運転開始時に温水戻り温度監視制御を実行した後に、加熱殺菌直後のミスト用熱交換器からの温水を浴室内の空気を利用して冷却することにより、水ミスト噴霧開始までに時間がかからず、特に夏場などの気温が高い時候において、涼を求める水ミスト運転を行いたいという要望に即座に応えられるものとなる。しかも加熱殺菌直後の温水を排出操作が不要な排水レス仕様となるから、ミスト噴霧装置の配管を行う上で設計上の制約がなく、排水配管を不要とし、さらに水の廃棄を伴わずに省資源化を図ることができるものである。
【0016】
また本発明は、水ミスト運転や温水ミスト運転など、ミスト噴霧温度が異なる運転モードの切り替えに容易に対応できるものである。
【0017】
また本発明は、水ミスト運転開始から所定時間経過後に、十分に温度が低下したミスト用水の温度が、空気吸込口から吸い込まれる浴室内の空気との熱交換により加熱されてしまうことによる温度上昇を防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に用いるミストサウナ機能付き浴室暖房乾燥機の配管図である。
【図2】同上のミストサウナ機能付き浴室暖房乾燥機の側面断面図である。
【図3】同上の浴室暖房乾燥機本体の機器ケーシングのグリル板を取り外した状態の斜視図である。
【図4】同上の浴室の天井部にミストサウナ機能付き浴室暖房乾燥機を設置した場合の斜視図である。
【図5】同上の制御部の温水戻り温度監視部に関連するブロック図である。
【図6】同上の温水ミスト運転開始時に加熱殺菌を行う場合のシーケンスを説明するフローチャートである。
【図7】(a)は図6のステップn3に対応する弁開閉状態の説明図であり、(b)は図6のステップn7に対応する弁開閉状態の説明図である。
【図8】同上の水ミスト運転開始時の加熱殺菌シーケンス及び水ミスト運転開始から所定時間経過後のミスト温度上昇防止動作を説明するフローチャートである。
【図9】(a)は図8のステップn4に対応する弁開閉状態の説明図であり、(b)は図8のステップn8に対応する弁開閉状態の説明図である。
【図10】(a)は図8のステップn11に対応する弁開閉状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態に用いるミストサウナ機能付き浴室暖房乾燥機1の配管図であり、図2は浴室暖房乾燥機1の側面断面図であり、図3は浴室暖房乾燥機本体2からグリル板25aを取り外した状態の斜視図であり、図4は浴室暖房乾燥機1を浴室13の天井部に設置した状態の説明図である。
【0021】
ミストサウナ機能付き浴室暖房乾燥機1は、浴室13(図4)内に温風を供給する浴室暖房乾燥機本体2と、浴室13内にミスト噴霧を行うミスト噴霧装置3とで構成されている。なお図4中の15は浴室13の外部に設置されるリモコン操作部であり、温水ミスト運転スイッチ、水ミスト運転スイッチ、暖房運転スイッチ、換気運転スイッチ、乾燥運転スイッチ、涼風運転スイッチ等が設けられている。
【0022】
浴室暖房乾燥機本体2は、図1、図2に示すように、循環用ファン5と、循環用ファン5により通風される空気を熱源機14(図4)から 供給される温水により加熱する暖房用熱交換器7と、暖房用熱交換器7への温水の供給量を調節する熱動弁8とを備えている。暖房用熱交換器7は、熱源機14からの温水が循環する温水循環管路16の途中に配置され、熱動弁8を開放することで、循環用ファン5からの風が暖房用熱交換器7により加熱されて、下方の空気吹出口30から浴室13内に供給されるようになっている。さらに温水循環管路16の途中には、後述のミスト用熱交換器11を加熱するためのミスト加熱用管路19がバイパス接続されている。ミスト加熱用管路19の上流端は温水循環管路16の熱動弁8よりも上流位置に分岐接続され、ミスト加熱用管路19の下流端は温水循環管路16の暖房用熱交換器7よりも下流位置に合流している。図1中の9は浴室温度センサー、17は温水往き温度センサー、24はミストノズル10の内部への雑菌の侵入防止のための逆止弁、26は換気用ファンであり、図2中の27は空気吸込口33に設けられるグリル板、28は空気吹出口30に設けられる可動ルーバー、34は排気エルボである。
【0023】
浴室暖房乾燥機本体2の機器ケーシング25の上部にはミストボックス32(図1)が設けられている。ミストボックス32には、ミスト用給水管路20の一部が配管されており、ミスト用給水管路20の途中には後述のミスト用熱交換器11が配置されている。ミスト用熱交換器11よりも上流側は、給水電磁弁22及びストレーナ23を介して、外部の水道管に接続されている。
【0024】
ミスト用給水管路20のミスト用熱交換器11よりも下流側の部分は浴室暖房乾燥機本体2の機器ケーシング25内に配管されていると共に、機器ケーシング25内に設置される第1及び第2ノズル開閉弁29a,29bを介して、ミスト用水を噴霧するミストノズル10に接続されている(図2では、ノズル開閉弁29a,29bの記載を省略している)。これらミスト用給水管路20と、ミストボックス32のミスト用熱交換器11及び給水電磁弁22と、機器ケーシング25内のノズル開閉弁29a,29b及びミストノズル10とで、ミスト噴霧装置3が構成されている。
【0025】
上記ミストボックス32内部には、上記温水循環管路16から分岐されたミスト加熱用管路19の一部が配管されていると共に、ミスト加熱用管路19からミスト用熱交換器11に供給される水温が適切になったときに温水の出湯量の調節を行う水比例弁12と、ミスト用熱交換器11からの循環温水の戻り温度を検知するための温水戻り温度センサー21とが設置されている。さらにミスト用熱交換器11から吐出する水の温度を検知するためのミスト温度センサー18が設置されている。
【0026】
上記ミストボックス32内部に収納されるミスト用熱交換器11は、例えば複数枚の伝熱プレートを積層したプレート式の液−液熱交換器で構成されている。ミスト用熱交換器11の一次側には上記温水循環管路16にバイパス接続されたミスト加熱用管路19が接続され、二次側にはミスト用給水管路20が接続され、ミスト加熱用管路19に配置した水比例弁12を開くことで、ミスト用熱交換器11の一次側に温水が供給され、これにより二次側を通過するミスト用水が加熱されるようになっている。
【0027】
一方、機器ケーシング25に設置されるミストノズル10は、機器ケーシング25のグリル板25aに設けた開口部25c(図3)に嵌め込まれる前パネル25bのノズル用開口孔から浴室13内に臨んで配置されている。本例ではミストノズル10は3個設けられ、例えば、ノズル開閉弁29a側の1個のミストノズル10aは、マイルドなミストサウナ(ミスト噴霧量が例えば0.5リットル/min)を得るためのものであり、ノズル開閉弁29b側の2個のミストノズル10b,10cはハードなミストサウナ(ミスト噴霧量が例えば1.0リットル/min)を得るためのものである。
【0028】
ここで本発明においては、ミスト用熱交換器11とノズル開閉弁29a,29bとの間に、ミスト切替ユニットが設けられている。ミスト切替ユニットは、冷却用のミスト切替弁29cと冷却用給水管路20cとが直列接続された冷却用ユニットと、非冷却用のミスト切替弁29hと非冷却用給水管路20hとが直列接続された非冷却用ユニットとが、並列接続されている。冷却用のミスト切替弁29cを開き、非冷却用のミスト切替弁29hを閉じると、ミスト用熱交換器11からのミスト用水は分岐点51から冷却用給水管路20cのみを通って合流点52からミストユニット連絡管20r(図2の破線部分)へ供給されるようになり、逆に、冷却用のミスト切替弁29cを閉じ、非冷却用のミスト切替弁29hを開くと、ミスト用熱交換器11からのミスト用水は分岐点51から非冷却用給水管路20hのみを通って合流点52からミストユニット連絡管20rへ供給されるようになっている。ミストユニット連絡管20rは、ノズル開閉弁29a,29bに接続されている(図2では、ノズル開閉弁29a,29bの記載を省略している)。
【0029】
ここで、上記冷却用給水管路20cは、機器ケーシング25の通風経路に臨む位置に配置されている。本例では、循環用ファン5がONとなり、空気吹出口30を経由して浴室13に送風されたときに空気吸込口33を経由して吸い込まれる浴室13内の空気と接するように、暖房用熱交換器7に流入する経路に臨ませてループ状に配置されている。
【0030】
上記非冷却用給水管路20hは、機器ケーシング25の通風経路から熱的に遮蔽された位置に配置されている。本例では、循環用ファン5がONとなり、空気吹出口30を経由して浴室13に送風されたときに空気吸込口33を経由して吸い込まれる浴室13内の空気と接しないように、暖房用熱交換器7に流入する経路から離して配置されている。
【0031】
上記ミストユニット連絡管20rは、上記非冷却用給水管路20hと同様、循環用ファン5がONとなり、空気吹出口30を経由して浴室13に送風されたときに空気吸込口33を経由して吸い込まれる浴室13内の空気と接しないように、暖房用熱交換器7に流入する通風経路から離して配置されている。
【0032】
浴室13内部の温度及び噴霧されるミスト温度は、制御部4により制御される。制御部4は、図5に示すように、リモコン操作部15から指令されるリモコン信号以外に、浴室温度センサー9、温水往き温度センサー17、ミスト温度センサー18、温水戻り温度センサー21からの各検知信号を受信すると共に、各検知結果に基づいて浴室暖房乾燥機本体2及びミスト噴霧装置3の各構成部品を駆動制御するマイクロコンピュータにより構成される。
【0033】
上記制御部4は、ミスト運転開始時に温水戻り温度監視制御を実行する温水戻り温度監視部6を備えている。温水戻り温度監視部6は、ミスト用熱交換器11からの温水戻り温度をサーミスタ等からなる温水戻り温度センサー21で監視すると共に、この監視結果に基づき、温水戻り温度が所定温度以上であることを所定時間以上継続したことを判定した後にミスト噴霧を開始するための加熱殺菌シーケンスを具備している。ここにおいて所定温度とは例えば70℃、所定時間とは例えば30秒とされるが、勿論この数値に限定されるものではなく、ミスト用熱交換器11内部を加熱殺菌できる範囲内で適宜設定変更自在である。
【0034】
次に、温水ミスト運転制御の一例を、図6、図7(a)(b)を参照して説明する。なお図7(a)、(b)において、各弁8、12、22、29c、29h、29a、29b等の開いた状態を白色で表し、閉じた状態を黒色で表している。
【0035】
リモコン操作部15の温水ミスト運転スイッチを押すと制御部4にミストサウナ運転開始を指令する信号が送られる。このとき、温水ミスト運転または水ミスト運転停止状態が第2所定時間(例えば24時間)未満であれば浴室温度センサー9により浴室温度が25℃以上であることを検出(図6のステップn5)した後ただちに、温水ミスト運転を開始する。(図6において、後述するステップn4の判定は行わずスキップされ、後述のn1、n2、n3の処理の後ただちに後述のn5の判定処理を行い、後述のn6、n7の処理を行う)。
【0036】
一方、ミスト運転停止状態が第2所定時間(例えば24時間)以上の場合は、温水ミスト運転用の温水戻り温度監視制御(加熱殺菌シーケンス)を実行する。
【0037】
温水ミスト運転用の温水戻り温度監視制御は、先ず、温水供給用の熱源機14(図4)に運転信号を出し、熱源機14が暖房運転を開始する。次いで、温風側の熱動弁8、ミスト側の水比例弁12がそれぞれ開き、80℃の循環温水が温水循環管路16内及びミスト加熱用管路19内を循環し始める(図6のステップn1)。次いで、温水往き温度が60℃以上になると、循環用ファン5がONとなり、浴室13に温風を送る浴室暖房運転を実行する(図6のステップn2→n3、図7(a)の状態)。この段階ではミスト噴霧は開始されない。
【0038】
その後、温水戻り温度センサー21で、ミスト用熱交換器11からの温水戻り温度が70℃以上を検出したときにタイマー計時を行ない、70℃以上が30秒以上経過すると、ミスト用熱交換器11の加熱を終了する(図6のステップn4→n5)。これにより、以下の表1に基づき、ミスト用熱交換器11を70℃以上で5秒間以上に加熱殺菌したことが保証される。その後、浴室温度が25℃以上になると給水手段を構成する給水電磁弁22及び非冷却用のミスト切替弁29hを開くと共に、ノズル開閉弁29a,29bの両方又は一方を開いて、温水ミスト噴霧を開始する(図6のステップn6→n7、図7(b)の状態)。ただし、温水戻り温度監視制御において「70℃以上で且つ30秒以上経過」であるとの判定が終了しない限り、ミスト噴霧は開始されない。
【0039】
以下の表1は、温水戻り温度が70℃に達したときから5秒〜60秒後の各部の温度データを示したものである。試験条件として給水温度を17℃、水圧を0.2MPa、外気温を20℃とした。
【0040】
【表1】

上記の表1によれば、ミスト用熱交換器11からの温水戻り温度が、70℃に到達した後、30秒以上経過した場合に、ミスト用熱交換器11の内面温度が72.0℃以上で30秒間に加熱されたこととなり、レジオネラ菌が死滅すると考えられる。
【0041】
ここで、非冷却用給水管路20h及びミストユニット連絡管20rは、それぞれ、循環用ファン5がONとなり空気吹出口30を経由して浴室13に送風されたときに空気吸込口33を経由して吸い込まれる浴室13内の空気が暖房用熱交換器7に流入する経路から離して配置されているから、温水ミスト運転時においては、ミスト用熱交換器11からミストノズル10に供給される温水が浴室13内の空気により冷却されることがない。
【0042】
次に、水ミスト運転制御の一例を、図8、図9、図10を参照して説明する。なお図9(a)、(b)、図10において、各弁8、12、22、29c、29h、29a、29b等の開いた状態を白色で表し、閉じた状態を黒色で表している。
【0043】
リモコン操作部15の水ミスト運転スイッチを押すと制御部4に水ミスト運転開始を指令する信号が送られる。このとき、温水ミスト運転または水ミスト運転停止状態が第2所定時間(例えば24時間)未満であればただちにミスト噴霧を開始可能とする(図8のステップn12、n13→n11)。
【0044】
一方、ミスト運転停止状態が第2所定時間(例えば24時間)以上の場合は、水ミスト運転用の温水戻り温度監視制御(加熱殺菌シーケンス)を実行する。
【0045】
水ミスト運転用の温水戻り温度監視制御は、先ず、温水供給用の熱源機14(図4)に運転信号を出し、熱源機14が暖房運転を開始し、次いで、ミスト側の水比例弁12が開き、ミスト加熱用管路19内を80℃の循環温水が循環し始める(図8のステップn1→n2→n3)。このとき温風側の熱動弁8を閉じた状態にする点で、温水ミスト運転開始時の加熱殺菌シーケンスとは異なる。
【0046】
そして、温風側の熱動弁8が閉じた状態、つまり80℃の循環温水が暖房用熱交換器7には供給されていない状態で、循環用ファン5がONとなり、浴室13内の空気を循環させる(図8のステップn4)。このとき、80℃の循環温水が暖房用熱交換器7には供給されていないので浴室13は暖房されず、浴室13内の空気が循環するだけの送風運転が実行されている(図9(a)の状態)。この点で温水ミスト運転開始時の加熱殺菌シーケンスとは異なる。
【0047】
その後、温水戻り温度センサー21が、ミスト用熱交換器11を循環する温水戻り温度が70℃以上を検出するとタイマー計時を行ない、30秒以上経過すると、ミスト用熱交換器11の加熱を終了する(図8のステップn5→n6)。この加熱終了は、温水ミスト運転開始時の加熱終了と同じであり、上記の表1に基づき、ミスト用熱交換器11を70℃以上で5秒間以上に加熱殺菌したことが保証される。
【0048】
この水ミスト運転時の温水戻り温度監視制御では、加熱殺菌後にミスト側の水比例弁12を閉じ、80℃の循環温水のミスト加熱用管路19内での循環を停止させるものであり、この点で、温水ミスト運転開始時の加熱殺菌シーケンスとは異なる。
【0049】
そして、ミスト加熱用管路19内での温水循環が停止すると、給水手段を構成する給水電磁弁22を開き、非冷却用のミスト切替弁29hを閉じ、冷却用のミスト切替弁29cを開くと共に、ノズル開閉弁29a,29bの両方又は一方を開いて、水ミスト噴霧を開始する(図8のステップn7→n8、図9(b)の状態)。ただし、温水ミスト運転開始時の場合と同様に、温水戻り温度監視制御において「70℃以上で且つ30秒以上経過」であるとの判定が終了しない限り、ミスト噴霧は開始されない。つまり、水ミスト運転を行う場合も、上記表1によれば、ミスト用熱交換器11からの温水戻り温度が、70℃に到達して後、30秒以上経過した場合に、ミスト用熱交換器11の内面温度が72.0℃以上で30秒間に加熱されたこととなり、レジオネラ菌が死滅すると考えられる。
【0050】
そして、温水戻り温度監視制御を終了した後は、ミスト用熱交換器11からのミスト用水は冷却用のミスト切替弁29cから冷却用給水管路20cを経由して冷やされ、その後ノズル開閉弁29a,29bの両方又は一方を経由して噴霧が開始されることになる。
【0051】
このとき、冷却用給水管路20cは、循環用ファン5がONとなり、空気吹出口30を経由して浴室13に送風されたときに空気吸込口33を経由して吸い込まれる浴室13内の空気が暖房用熱交換器7に流入する経路に配置されているから、加熱殺菌直後のミスト用熱交換器11の加熱状態がしばらく続いても、ミスト用熱交換器11からの温水は冷却用給水管路20cを通過する間に、空気吸込口33を経由して吸い込まれる浴室13内の空気により冷却されることになる。したがって、加熱殺菌直後のミスト用熱交換器11からの温水がそのままミストノズル10から噴霧されてしまうという不都合は生じない。
【0052】
また本例では、水ミスト噴霧を開始してから第3所定時間が経過した後は、ミスト温度センサー18による検出温度に基づき冷却用のミスト切替弁29c及び非冷却用のミスト切替弁29hの開閉を以下のように制御する。
【0053】
つまり、水ミスト運転開始から第3所定時間(例えば25秒)が経過し(図8のステップn9)、更にミスト温度センサー18の検出温度が予め定めた供給経路切り替え用設定温度(例えば25℃)以下を検出したときは(図8のステップn10)、冷却用のミスト切替弁29cを閉じて、非冷却用のミスト切替弁29hを開き(図8のステップn11)、ミスト用水を冷却用給水管路20cを経由させず、非冷却用給水管路20hを経由せるようにしている(図10の状態)。
【0054】
このようにすることで、ミスト用熱交換器11からのミスト用水の温度より浴室13内の温度の方が高い(暖かい)状態に至った場合にも、十分に温度が低下したミスト用熱交換器11を通過したミスト用水が冷却用給水管路20cを通過する間に、空気吸込口33を経由して吸い込まれる浴室13内の空気により加熱されてしまうことによる水ミスト噴霧温度の上昇を防止している。
【0055】
すなわち、非冷却用給水管路20h及びミストユニット連絡管20rは、循環用ファン5がONとなり空気吹出口30を経由して浴室13に送風されたときに空気吸込口33を経由して吸い込まれる浴室13内の空気が暖房用熱交換器7に流入する経路から離して配置されているから、水ミスト運転開始から所定時間経過してミスト用熱交換器11からのミスト用水の温度より浴室13内の温度の方が高い(暖かい)状態に至った場合にも、ミスト用水が浴室13内の空気により暖められることがない。
【0056】
上記構成によれば、水ミスト運転の開始時に、ミスト用熱交換器11内部の加熱殺菌を実行しても、加熱殺菌直後のミスト用熱交換器11からの温水がミストノズル10から噴霧されてしまうという不都合が生じない。従って、水ミスト運転ミスッチのON操作から低温の水ミストが噴霧するまでに時間がかからず、特に夏場などの気温が高い時候において、給水手段からの低温水を直接、ミストノズル10から噴霧することで浴室内において涼を求める水ミスト運転を行いたいという要望に即座に応えられるものとなる。そのうえ、ミスト噴霧装置3を浴室13に設置する際に、予備排水のための配管を設置する必要がなく、ミスト噴霧装置3の設計上の制約がなくなると共に、予備排水による無駄な水の廃棄をなくすことができる利点もある。
【0057】
さらに本例では、水ミスト運転においてミスト噴霧を開始して第3所定時間(例えば25秒)が経過し、ミスト温度センサー18の検出温度が供給経路切り替え用設定温度(例えば25℃)以下を検出したときに非冷却用のミスト切替弁29hを開いて、ミスト用水を非冷却用給水管路20hを経由させることで、浴室13内の空気によるミスト温度上昇を防止しているが、他の例として、第3所定時間(例えば25秒)が経過し且つ供給経路切り替え用設定温度(例えば25℃)以下となったときに、冷却用のミスト切替弁29cを開い状態をそのまま継続し、循環用ファン5をOFFにしてもよいものであり、この場合、空気吸込口33を経由して吸い込まれる浴室13内の空気により冷却用給水管路20cが加熱されてしまうことによる水ミスト噴霧温度の上昇を防止することが可能となる。
【0058】
上述の実施例においては、水ミスト運転開始時には前記冷却用給水管路20cを選択し、運転開始時から所定時間経過後にミスト温度センサー18からの検出温度が予め定めた設定温度以下になった時点で前記冷却用給水管路20cから前記非冷却用給水管路20hに切り替える場合の予め定めた設定温度を例えば25℃とする場合を示したが、予め定めた設定温度として固定値の25℃を用いるのではなく、固定値の25℃に代えて循環用ファン5を駆動したときに浴室温度センサー9により検出される浴室温度を予め定めた設定温度として用いても良いものである。
【符号の説明】
【0059】
1 浴室暖房乾燥機
2 浴室暖房乾燥機本体
3 ミスト噴霧装置
4 制御部
5 循環用ファン
6 温水戻り温度監視部
7 暖房用熱交換器
8 熱動弁
10 ミストノズル
11 ミスト用熱交換器
12 水比例弁
13 浴室
14 熱源機
18 ミスト温度センサー
20 ミスト用給水管路
20c 冷却用給水管路
20h 非冷却用給水管路
25 機器ケーシング
30 空気吹出口
33 空気吸込口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室内にミストサウナ用の水を噴霧するミストノズルと、ミストノズルへの給水を行うミスト用給水管路と、ミストノズルに供給される水を熱源機からの温水により加熱するミスト用熱交換器とを備えると共に、ミスト運転開始時に前記ミスト用熱交換器からの温水戻り温度を監視し、この監視結果に基づき、温水戻り温度が所定温度以上であることを所定時間以上継続したことを判定した後にミスト噴霧を開始するように温水戻り温度監視制御を実行する温水戻り温度監視部とを備えたミスト噴霧装置であって、
ミスト噴霧装置が収納される機器ケーシングの空気吸込口から浴室内の空気を吸い込み、空気吹出口から空気を吹き出すための送風手段を設けると共に、前記ミスト用熱交換器から前記ミストノズルへのミスト用水の供給経路を、前記空気吸込口から前記空気吹出口に至る通風経路に配置されて前記送風手段の駆動時に浴室内の空気により冷却される冷却用給水管路により構成し、ミスト噴霧装置の運転開始時に前記温水戻り温度監視制御を実行した後に、前記ミスト用熱交換器への前記熱源機からの温水の供給を停止し且つ前記送風手段を駆動した状態で、ミスト用熱交換器からの非加熱のミスト用水を冷却用給水管路を経由してミストノズルから噴霧させる水ミスト運転を実行することを特徴とするミスト噴霧装置。
【請求項2】
前記送風手段の駆動時においても浴室内の空気との熱交換が抑制される非冷却用給水管路を設け、前記ミスト用熱交換器から前記ミストノズルへのミスト用水の供給経路として、前記冷却用給水管路と前記非冷却用給水管路とを選択自在としたことを特徴とする請求項1記載のミスト噴霧装置。
【請求項3】
前記ミスト用熱交換器から前記ミストノズルに供給されるミスト用水の温度を検出するミスト温度センサーを設け、水ミスト運転開始時には前記冷却用給水管路を選択し、運転開始から所定時間経過後にミスト温度センサーからの検出温度が予め定めた設定温度以下になった時点で前記冷却用給水管路から前記非冷却用給水管路に切り替えることを特徴とする請求項2記載のミスト噴霧装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−193952(P2011−193952A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62131(P2010−62131)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(301071893)株式会社ハーマン (94)
【Fターム(参考)】