説明

ミスト生成器

【課題】専用センサを用いることなくミスト生成器の傾きを検知し、傾きに応じてミスト生成器の動作を制御することが可能なミスト生成器を提供することにある。
【解決手段】本発明のミスト生成器は、貯水タンクと、霧化部と、液体に電圧を印加する印加部と、霧化部及び印加部の制御を行う制御部と、この電圧を検知する検知部とを備えている。またミスト生成器は、貯水タンクから霧化部へ液体を搬送する搬送路と、液体を加圧して霧化部へ液体を搬送する加圧部を備えている。検知部は、複数の導電部材を備えている。制御部は、複数の導電部材により検知された複数の電圧の差分を算出する。そして差分が所定値を超える場合に、ミスト生成器が所定の傾斜角度を超えて傾斜しているとみなす。ミスト生成器が所定の傾斜角度を超えて傾斜していることを検知した場合に、制御部は霧化部または加圧部に対して駆動を停止するよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載されて噴霧を行うミスト生成器に関するものであり、特に電極を用いて渇水検知を行うミスト生成器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミスト生成器において、様々な形態や特徴を備えたミスト生成器が開発されている。例えば、水や電解水等の液体からミスト(=霧)を生成し、噴霧することで車中の空気を清浄する移動体用のミスト生成器等が実用化されている。
【0003】
また、水溶液タンクの内部に、水溶液の水位を検知するための電極を備えたミスト生成器が実用化されている。このタイプのミスト生成器は、水溶液タンクの内部に、電圧を印加するための電極と、この電圧を水溶液を介して検知する渇水検知センサとを備えている。
【0004】
渇水検知センサは、その下端が水溶液タンクの底から所定距離だけ高い位置となるよう、設けられている。つまり水溶液が減少した場合に、渇水検知センサの下端が水溶液に接触しなくなることで、渇水を検知する。
【0005】
上記のようなミスト生成器は、動作中に所定以上の角度で傾いたり、或いは転倒したりした場合に、ミスト生成器の周辺がミストで濡れる可能性がある。或いはミスト噴出ができない状態で、動作が継続する可能性がある。このような状態が長時間続くと、ミスト生成器の内部装置にダメージが発生する可能性がある。
【0006】
特に超音波振動子を用いてミストを行うタイプや、空気圧送出装置を用いて空気圧により水溶液の搬送を行うタイプのミスト生成器は、所定の傾斜角度を超えて傾斜している状態(以下、「傾倒」という)において、不要な動作によりダメージを受ける可能性が高い。従って傾倒時に、その動作を迅速に停止させることが望ましい。
【0007】
上記に関連して特許文献1には、持ち運び可能な噴霧装置(=ミスト生成器)が開示されている。この噴霧装置は、加湿用の液体を貯えるための液体貯留手段と、貯えられている液体を上方に供給する液体供給手段とを備えている。また、ハウジング内の上部に設けられ、液体供給手段から供給を受けて、液体からミストを作るミスト生成手段を備えている。
【0008】
またこの噴霧装置は、ミスト生成手段の上方に、ミスト生成手段によって生成されたミストを通す開口を備えている。また、ハウジングの上端にオン位置とオフ位置との間で回動可能に設けられる蓋と、蓋がオン位置に回動された時に開口と連通する放出口とを備えている。これにより、ミストが開口及び放出口を通って放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−168328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のようなミスト生成器において、傾きや転倒を検知しようとした場合、加速度センサや、傾倒を検知するための専用センサをその内部に設ける必要があった。加速度センサや専用センサは、ミスト生成器の傾きを検知すると、その検知信号をマイコンに送信する。これを受けたマイコンは、ミスト生成器の各部を停止する制御を行う。
【0011】
しかしながら加速度センサや専用センサを携帯用のミスト生成器に搭載することは、コストアップにつながると共に、省サイズ化の妨げになるという問題があった。
【0012】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、電極を用いて水溶液タンクの渇水を検知するミスト生成器であって、加速度センサや角速度センサ、或いは専用センサを用いることなくミスト生成器の傾きを検知し、傾きに応じてミスト生成器の動作を制御することが可能なミスト生成器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器は、内部に液体を貯える貯水タンクと、液体を霧化する霧化部と、電圧を印加する印加部と、電圧を検知する検知部と、前記霧化部、前記印加部、及び前記検知部の制御を行う制御部とを備えるミスト生成器において、前記検知部は、前記印加部により印加された電圧を前記貯水タンクに貯えられた液体を介して検知する導電部材を複数備え、前記制御部は、複数の前記導電部材により検知された複数の電圧の差分を算出し、前記差分が予め定められた値を超える場合に、前記ミスト生成器が予め定められた傾斜角度を超えて傾斜していると判定することを特徴とする。
【0014】
この構成によると、本発明のミスト生成器は、貯水タンクと、霧化部と、電圧を印加する印加部と、この電圧を検知する検知部と、各部の制御を行う制御部とを備えている。検知部は、貯水タンクに貯えられた液体に接触して電圧を検知する導電部材を、複数備えている。制御部は、複数の導電部材により検知された複数の電圧の差分を算出する。そしてこの差分が所定値を超える場合に、ミスト生成器が所定の傾斜角度を超えて傾斜していると判定する。
【0015】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器が備える前記制御部は、前記ミスト生成器が予め定められた傾斜角度を超えて傾斜していると判定した場合に、前記霧化部に対して駆動を停止するよう制御することを特徴とする。
【0016】
この構成によると、制御部は、ミスト生成器が傾斜していることを上記の差分に基づいて判定した場合に、霧化部に対して駆動を停止するよう制御する。つまり傾斜時はミスト生成を行わないように制御する。
【0017】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器は、前記貯水タンクに貯えられている液体を前記霧化部へ搬送するための流動経路の一部を形成する搬送路と、前記貯水タンクに貯えられている液体を加圧することにより、該液体を、前記搬送路を介して前記霧化部へ到達するように付勢する加圧部とを備え、前記制御部は、前記ミスト生成器が予め定められた傾斜角度を超えて傾斜していることを検知した場合に、前記加圧部に対して駆動を停止するよう制御することを特徴とする。
【0018】
この構成によると、ミスト生成器は、貯水タンクから霧化部へ液体を搬送するための搬送路を備えている。また、貯水タンクに貯えられている液体を加圧することにより、搬送路を介して霧化部へ液体を搬送する加圧部を備えている。制御部は、ミスト生成器が所定の傾斜角度を超えて傾斜していることを検知した場合に、加圧部に対して駆動を停止するよう制御する。つまり傾斜時は液体搬送を行わないように制御する。
【0019】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器が備える前記制御部は、前記ミスト生成器が予め定められた傾斜角度を超えて傾斜していることを検知した回数が予め定められた回数を超えた場合に、前記霧化部または前記加圧部に対して駆動を停止するよう制御することを特徴とする。
【0020】
この構成によると、制御部は、ミスト生成器が傾斜していることを検知した回数が所定回数を超えた場合に、霧化部または加圧部に対して駆動を停止するよう制御する。
【0021】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器が備える前記制御部は、前記ミスト生成器が予め定められた傾斜角度を超えて傾斜していることを検知している時間が予め定められた時間を超えた場合に、前記霧化部または前記加圧部に対して駆動を停止するよう制御することを特徴とする。
【0022】
この構成によると、制御部は、ミスト生成器が傾斜していることを検知している時間が所定時間を超えた場合に、霧化部または加圧部に対して駆動を停止するよう制御する。
【0023】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器が備える前記検知部は、前記貯水タンクの内部において垂直方向に設けられた板状部材である電極板を前記導電部材として備え、前記印加部は、水平方向において、前記ミスト生成器の中心の近傍に位置するよう設けられており、前記電極板は、水平方向において、前記印加部を円心とする円の円周上に位置するよう設けられていることを特徴とする。
【0024】
この構成によると、検知部は、貯水タンクの内部において垂直方向に設けられた板状部材である電極板を導電部材として備えている。印加部は、水平方向におけるミスト生成器の中心の近傍に設けられている。また電極板は、印加部を円心とする水平方向の円の、円周上に設けられている。つまり各電極板から印加部までの水平方向の距離がほぼ等しくなる位置関係で、各部材が設けられている。
【0025】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器が備える前記霧化部は、超音波振動子を含み、前記超音波振動子を用いて液体を霧化するとともに、前記貯水タンクの上方に設けられており、前記搬送路は、鉛直上向きに前記流動経路を形成し、前記加圧部は、前記貯水タンクの外部から前記貯水タンクの内部へ空気を送り込んで前記貯水タンク内の空気圧を増加させることにより前記貯水タンクに貯められている液体を加圧し、該液体を前記搬送路を介して押し上げて前記霧化部へ搬送することを特徴とする。
【0026】
この構成によると、霧化部は超音波振動子を含み、この超音波振動子を用いて液体を霧化するとともに、貯水タンクの上方に設けられている。また搬送路は、鉛直上向きに流動経路を形成している。また加圧部は、貯水タンクの外部から貯水タンクの内部へ空気を送り込んで空気圧を増加させることにより液体を加圧し、搬送路を介して液体を押し上げて霧化部へ搬送する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、加速度センサや傾倒を検知する専用センサ等を装置に追加することなく、ミスト生成器の傾きや転倒を検知することができる。これにより、より少ないコストで検知を行うことができるとともに、装置の省サイズの点でも有利である。
【0028】
また本発明によれば、検知された電圧の大きさではなく、検知された複数の電圧の差分を用いて傾倒の判定を行う。従って、水溶液の水質に応じて検知電圧の大きさが変化したとしても、本発明では電圧の大きさではなく差分を用いるため、水質の影響を受けることなく傾倒の判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のミスト生成器の構成を示す上面図及び断面側面図である。
【図2】本発明のミスト生成器の霧化部の構成を示す模式図である。
【図3】本発明のミスト生成器の電気回路構成を示すブロック図である。
【図4】本発明のミスト生成器の貯水タンクを示す上面断面図である。
【図5】本発明のミスト生成器の非傾倒時の内部構成を示す断面側面図である。
【図6】本発明のミスト生成器の傾倒時の内部構成を示す断面側面図である。
【図7】本発明のミスト生成器の傾倒時の内部構成を示す断面側面図である。
【図8】本発明のミスト生成器の電圧検知実験の結果を示すテーブル図である。
【図9】本発明のミスト生成器の電圧検知実験の結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施形態は一例であり、本発明はここに示す実施形態に限定されるものではない。
〈1.内部構成について〉
図1は、本発明の一実施形態に係るミスト生成器100の内部構成を示す模式図である。ミスト生成器100は、ミスト生成器100が搭載されている車両10の車内に対してミストを生成して噴霧するための装置である。なおミスト生成器100は、車両10に着脱可能な構造となっている。またミスト生成器100の各部は、特に材質に言及していない限り、例えばプラスチック成形品として形成される。
【0031】
図1(a)は、ミスト生成器100を上面から見た上面図である。図1(b)は、ミスト生成器100を側面から見た断面側面図である。ミスト生成器100は、充電可能なバッテリ(不図示)等を電源として作動するもので、直径10cm、高さ20cm程度の円筒形状をしている。なお図1(b)においては、図中の下方向が、ミスト生成器100の下部方向を示している。
【0032】
図1に示すようにミスト生成器100は、放出板101、超音波振動子102(=霧化部)、水溶液タンク103(=貯水タンク)、導水管104(=搬送路)、電極群105(=印加部)、渇水検知センサ106(=検知部)、空気圧送出装置107(=加圧部)、及び制御基板200を備えている。
【0033】
放出板101は、ミストを放出するために微細な穴が中央部に設けられた板状部材である。超音波振動子102は、導水管104を介して押し上げられ、放出板101の下方に到達した水溶液を振動動作により霧状にする円盤形状の部材である。
【0034】
そして霧状となった水溶液、つまりミストを、放出板101を通してミスト生成器100の装置外部へ噴射する。これにより、ミストを生成して外部に放出するというミスト生成器100の主目的が達成される。
【0035】
水溶液タンク103は、上記の超音波振動子102がミスト生成に用いる水溶液を貯える。導水管104は、上下方向(鉛直方向)に伸びた略管状の部材として、ミスト生成器100のハウジングに固定されて形成されている。導水管104の上端と下端は開口されており、導水管104の下端から入った水溶液がその内部を流動し、その上端から出ることが可能となっている。
【0036】
導水管104の下端は、水溶液タンク103内へ突出するように設計されている。一方、導水管104の上端の近傍には、放出板101及び超音波振動子102が配置されている。これにより導水管104は、水溶液タンク103の内部から放出板101及び超音波振動子102へ向かうように、水溶液の流動経路を形成している。
【0037】
なお導水管104の下端は、水溶液タンク103の底から所定距離だけ離れるように設定されている。また導水管104の形状としては、上述した通り略管状が好適であるが、水溶液の流動経路を形成する限り、種々の形状が採用され得る。
【0038】
電極群105は、電圧を印加するための電極である。この電圧は、後述する渇水検知センサ106により渇水検知に用いられる。電極群105は、例えば陽極電極、及び陰極電極の一対の電極板を含むように構成されている。なお、電極群105が含む電極板は、例えばチタンまたはルテニウム系材料に白金をコーティングし、その外側にイリジウムをコーティングすることにより形成されている。また電極板は、例えばリード線等を用いて電圧が印加される。
【0039】
図4は、電極群105と、後述する渇水検知センサ106との位置関係を示した上面断面図である。図4に示すように電極群105は、ミスト生成器100を上方から見た場合における、ミスト生成器100の中心付近に位置するよう、水溶液タンク103内に設けられている。
【0040】
渇水検知センサ106は、複数の電極板(=導電部材)を用いて水溶液タンク103に存在する水溶液を検知する。渇水検知センサ106は、その下端が水溶液タンク103の底から所定距離だけ上方となるように設けられている。そして水位がこの高さを下回った場合に、渇水が発生したことを検知する。
【0041】
渇水検知センサ106は、電極群105に加えられた電圧を、水溶液を介して検知する。そして検知結果を、マイコン201へ送信する。これにより水溶液の液面を検知する。具体的な渇水検知センサ106の構成としては例えば、チタンまたはルテニウム系材料に白金をコーティングし、その外側にイリジウムをコーティングすることにより形成されている。
【0042】
渇水検知センサ106は、例えば図1に示すように、電極板106a〜電極板106cの三つの電極板を含む。これら三つの電極板は、図4に示すように、電極群105を中心とした円周上に位置するよう、設けられている。つまり、電極群105から各電極板への距離がほぼ等しくなるように設けられている。また電極板間の相互距離もほぼ等しく、且つ水溶液タンク103の外縁にできるだけ近い位置となるように設けられている。このため、三つの電極板の水平方向の位置関係は、正三角形に近い状態となっている。
【0043】
空気圧送出装置107は、空気の吸込口と吹出口を有しており、吸込口から吸い込んだ空気を、吹出口から吹き出す動作(以下、「送風動作」という)を行う。空気圧送出装置107は、吸込口がミスト生成器100の外部(大気中)に開放されるように設置されている。また、吹出口がミスト生成器100の下部に向くように設置されている。
【0044】
空気圧送出装置107が送風動作を行っていない状態では、水溶液タンク103の内部に存在している空気、及び導水管104の内部に存在している空気の圧力は、ほぼ大気圧に等しい。そのためこの状態では、水面より高い位置に設置されている超音波振動子102には、水溶液タンク103内の水溶液は供給されない。
【0045】
空気圧送出装置107が送風動作を行うことにより、外部から水溶液タンク103の空気層へ空気を送り込む(図1の矢印α)。これにより、水溶液タンク103内の空気圧は、大気圧に圧力P(送風動作によって新たに加わる圧力)の分だけ増加したものとなる。水溶液タンク103内の空気圧は、送風動作が継続されている間、この状態に維持される。
【0046】
空気圧を増加させると、水溶液タンク103内の水溶液が加圧される。そして水溶液の水圧が増加することにより、導水管104の内部において、水溶液タンク103内の水溶液が押し上げられる。このように水溶液タンク103内の水溶液は、加圧されることにより超音波振動子102の近傍へ到達するように付勢され、超音波振動子102へ継続的に供給される。この結果、ミストが生成される。
【0047】
なお、導水管104に存在していた空気は通気フィルタ(不図示)によりミスト生成器100の外部へ放出される。なお通気フィルタは、空気は通すが水溶液は通さない止水膜を含む構造をしている。これにより、送風動作により水溶液タンク103内の水溶液が押し上げられた場合に、導水管104等に存在する空気が水溶液の押し上げを阻害するのを回避する。また止水膜により、水溶液がミスト生成器100の外部へ漏れ出すのを防止する。
【0048】
制御基板200は、ミスト生成器100の各部を制御する制御回路、またはマイコン等を含む基板である。制御基板200は、ミスト生成器100のハウジング(図1の例では給水タンク103の上方)に設けられたスペースに収納されている。
【0049】
制御基板200は、リード線等により超音波振動子102、電極群105、及び渇水検知センサ106と接続されている。また制御基板200は少なくとも、図3に示すマイコン201(=制御部)、振動子駆動回路202(=霧化部)、電極駆動回路203(=印加部)、及び空気圧送出装置駆動回路204(=加圧部)を含むように構成されている。なお、各部の詳細については後述する。
〈2.超音波振動子の構成について〉
図2は、本発明の一実施形態に係る超音波振動子102周辺の構成を示す模式図である。図2(a)は、超音波振動子102を斜め上方から見た状態を表している。図2(b)は、線分AA’を含む面を断面とした場合の断面図(ただし制御基板200等の部分は断面図となっていない)を表している。
【0050】
図2に示すように、超音波振動子102はドーナツ型形状(断面は略長方形)をしており、外縁が円形である放出板101の上面に接着されている。放出板101は、例えばステンレスによって形成された略板状の部材であり、その中央の所定領域(超音波振動子102に囲まれた領域の一部)に、メッシュ部101aが設けられている。
【0051】
メッシュ部101aは、ミストが通過できる程度の大きさの微小孔が多数設けられたメッシュ状に形成されている。超音波振動子102は、圧電セラミックにより形成されている。超音波振動子102の表面に形成された電極膜と放出板101との間に、ハウジング内に設置された制御基板200によって所定電圧が印加されると、高周波(超音波)振動が発生する。これにより、水溶液を霧状にしてミストを生成する。
〈3.制御基板の構成について〉
図3は、本発明の一実施形態に係る制御基板200の構成、及び制御基板200に接続される部材の構成を示すブロック図である。図3に示すように制御基板200は、マイコン201、振動子駆動回路202、電極駆動回路203、及び空気圧送出装置駆動回路204を備えている。また、制御基板200に接続される部材として、図1に図示した部材の他に、起動スイッチ301、及び電源部302が存在する。
【0052】
マイコン201は、ミスト生成器100の各部材の駆動を有機的に制御して、ミストの生成を統括制御するものである。またマイコン201は、振動子駆動回路202〜空気圧送出装置駆動回路204に対する駆動制御や、電源部302に対する電圧制御を行う機能を備える。また、後述する傾倒検知を行うための各種演算を行う。
【0053】
振動子駆動回路202は、超音波振動子102に対する駆動電圧の印加の実施/未実施を選択的に行う回路である。また振動子駆動回路202は、印加する駆動電圧の大きさを変更することにより、生成されるミストの量を調整する機能を備える。
【0054】
電極駆動回路203は、電極群105に対する駆動電圧の印加の実施/未実施を選択的に行う回路である。
【0055】
空気圧送出装置駆動回路204は、空気圧送出装置107に対する駆動電圧の印加の実施/未実施を選択的に行う回路である。また空気圧送出装置駆動回路204は、印加する駆動電圧の大きさを変更することにより、空気圧送出装置107が発生させる空気圧の量を調整する機能を備える。
【0056】
起動スイッチ301は、ミスト生成器100の稼働状態のON/OFFを切り替えるためのリミットスイッチである。ただし起動スイッチがOFFされている状態でも、起動スイッチ301はマイコン201対して微小電流を流す。これによりマイコン201はスタンバイ状態を維持することが可能である。
【0057】
電源部302は、外部電源(不図示)より電力の供給を受け、DC/ACの変換等を行い、ミスト生成器100の各部に対して電源電圧を与える。電源部302は例えば、外部電源より電力供給を受けるための電源コードを接続する接続端子(不図示)を備えている。
【0058】
或いは電源部302は、電源として乾電池或いは二次電池を使用することにより、外部電源から切り離された状態でミスト生成器100の駆動を可能とする形態であってもよい。二次電池としては例えば、充電式アルカリ電池やリチウムイオンバッテリ等を用いることが可能である。
〈4.検知処理について〉
次に、マイコン201が実施する渇水検知処理及び傾倒検知処理について、図5〜図7を用いて説明する。図5は、ミスト生成器100を側面から見た断面側面図であり、傾倒が発生してない状態を示している。図6及び図7は、ミスト生成器100が外部より衝撃を受ける等により傾倒した状態を示している。
【0059】
まず渇水検知処理について説明すると、図5の状態において、起動スイッチ301により電源部302が起動されると、マイコン201は振動子駆動回路202及び空気圧送出装置駆動回路204を制御する。これにより、ミスト生成処理を開始する。また電極駆動回路203を制御して電極群105を駆動させるとともに、電極群105に印加された電圧を水溶液を介して渇水検知センサ106により検知する電圧検知処理を開始する。
【0060】
この状態においてマイコン201は、渇水検知センサ106を用いて、水溶液タンク103に渇水が発生しているか否かの判定を行う。具体的には例えば、電極板106a〜電極板106cの全てが電圧を検知できなくなった場合に渇水が発生しているとみなす。
【0061】
これはつまり、送風動作により水溶液タンク103内の水溶液が減少し、水溶液の水位が電極板106a〜電極板106cの下端より低くなり、電極板106a〜電極板106cが水溶液に接触しなくなった状態を示している。なお、電極板106a〜電極板106cが水溶液に接触している状態であっても、検知される電圧が所定電圧を下回った場合に渇水が発生しているとみなす形態でもよい。これは、後述する図8及び図9に示すように、電極板と水溶液との接触面が減少するにつれ検知電圧が低下する特性を利用するものである。
【0062】
渇水が検知された場合、マイコン201は振動子駆動回路202、電極駆動回路203、及び空気圧送出装置駆動回路204に対して、駆動電圧の印加を停止するよう指示する。これにより、ミスト生成、電極群105の駆動、及び送風動作が停止される。
【0063】
なお渇水検知後も、電極駆動回路203を所定時間だけ継続して動作させることにより、水溶液の補充の監視を行う形態でもよい。この場合、所定時間内に電極板106a〜電極板106cのいずれかが再び所定電圧を検知すると、マイコン201は振動子駆動回路202及び空気圧送出装置駆動回路204に対して、駆動電圧の印加を再開するよう指示する。つまり水溶液が補充されたとみなし、ミスト生成処理を再開する。
【0064】
次に傾倒検知処理について説明すると、図5の状態においてマイコン201は、渇水検知センサ106を用いて、ミスト生成器100の傾倒が発生したか否かの判定を行う。具体的には例えば、電極板106a〜電極板106cが検知している電圧の最大値と最小値との差分(以下、「検知電位差」という)を常時、または所定の間隔で監視する。そして検知電位差が所定の閾値を超えた場合に、傾倒が発生したとみなす。
【0065】
これはつまり、図6や図7に示すように、傾倒により水溶液タンク103内の水溶液分布に偏りが発生し、電極板106a〜電極板106cのそれぞれの水溶液接触面に差違が生じた状態となっていることを意味する。
【0066】
図6の例では、電極板106cの水溶液接触面が最も大きく、電極板106aの水溶液接触面が最も小さい。従って電極板106cが検知する電圧は、電極板106bが検知する電圧よりも大きくなる。また電極板106bが検知する電圧は、電極板106aが検知する電圧よりも大きくなる。
【0067】
さらに図7の例では、電極板106aが水溶液に非接触の状態となっている。従って電極板106aからは、電圧が検知されない。電極板106b及び電極板106cは水溶液に接触しているが、電極板106cが電極板106bよりも水溶液接触面が大きい。このため、電極板106cが検知する電圧は、電極板106bが検知する電圧よりも大きくなる。なお電圧が検知されない場合、便宜上「0Vの電圧が検知されている」とみなして検知電位差の算出を行うものとする。
【0068】
水溶液接触面の差により生じる検知電圧の差の具体的な例を、以下に示す。図8は、タンク中央の電極群105に24Vの電圧を印加し、実験用の電極板の水深、つまり水溶液接触面を変えながら電圧を測定した結果である。また図9は、この結果をグラフ化したものである。四回の測定を行った結果、いずれも水深が大きくなる程、電圧が大きくなった。また水深と電圧の関係は、図9に示すようにほぼ直線の関係、つまり、正比例の関係になった。
【0069】
この実験結果では、水深の違いによる電圧の変化の割合は、平均して10mmあたり約0.33V程度であった。このため例えば、上述した閾値を0.5Vに設定しておくと、電極板106a〜電極板106cの水深差が約15mmとなった時点で、検知電位差が閾値を超えることとなる。
【0070】
水溶液タンク103内の水溶液の残量等にもよるが、上記のように検知電位差が0.5Vを超えた時点で傾倒を検知するようにしておけば、ある程度傾いた状態、もしくは転倒した状態を検知することができる。
【0071】
なお、図8における二回目及び四回目の実験は、電極群105と実験用の電極板との距離を、一回目及び三回目と異なる距離にして測定している。電圧を印加している電極群105との距離が変わると、検知される電圧の大きさも変わる。このため、電極群105と電極板106a〜電極板106cとの距離は、それぞれほぼ等しくする必要がある(図4)。なお上記の実験は、一般家庭に供給される水道水を使用して実施したものである。
【0072】
傾倒が検知された場合、マイコン201は振動子駆動回路202、電極駆動回路203、及び空気圧送出装置駆動回路204に対して、駆動電圧の印加を停止するよう指示する。これにより、ミスト生成処理、電極群105の駆動、及び送風動作が停止される。
【0073】
さらにマイコン201は、ミスト生成器100が傾倒したことを示す傾倒通知を実施する。具体的には例えば、ミスト生成器100のハウジングに設けられたスピーカ(不図示)よりアラーム音声を出力することにより、傾倒通知を実施する。
【0074】
なお傾倒検知後も、電極駆動回路203を所定時間だけ継続して動作させることにより、傾倒しているミスト生成器100が使用者により通常の状態に復帰されるのを監視する形態でもよい。この場合、所定時間内に再び検知電位差が閾値を下回ると、マイコン201は振動子駆動回路202及び空気圧送出装置駆動回路204に対して、駆動電圧の印加を再開するよう指示する。つまり傾倒状態ではなくなったとみなし、ミスト生成処理を再開する。
【0075】
なお上記の実験値はあくまで一例であり、実際には上記の閾値(=0.5V)や傾倒判定条件に幅をもたせておくことが望ましい。例えば、傾倒が検知された時点で即座にミスト生成処理の停止及び傾倒通知を行うのではなく、検知後に所定条件が満たされた場合に、ミスト生成処理の停止及び傾倒通知行う形態でもよい。
【0076】
具体的には例えば、上記の検知電位差と閾値との判定処理を所定間隔、例えば一秒毎に行い、検知電位差が閾値を超えた回数が所定回数を超えた場合、例えば連続して五回を超えた場合に、ミスト生成処理の停止及び傾倒通知を行う形態でもよい。
【0077】
或いは、検知電位差が閾値を超えている状態が継続している時間の長さを、計時部(不図示)により計時する形態でもよい。この場合、上記の状態が継続している時間が所定時間、例えば10秒を超えた場合に、ミスト生成処理の停止及び傾倒通知を行う。これにより例えば、車両1が走行中に一時的に激しく揺れた場合や、勾配の大きい坂道を走行する等により一時的に車体が傾いた場合等に、傾倒が発生したと誤認識することを回避できる。
【0078】
以上に説明した本実施形態によれば、渇水検知センサ106を用いて算出される検知電位差に基づいてミスト生成の傾倒を検知し、検知結果に基づいてミスト生成器100の動作制御を行う。このため、加速度センサや傾倒検知のための専用センサを用いる場合と比較して、コスト及び省サイズの点で有利である。
[その他の実施の形態]
以上、好ましい実施の形態及び実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。
【0079】
従って本発明は、以下の形態にも適用可能である。
【0080】
(A)上記実施形態では、本発明の構成を実施する装置として、車載用のミスト生成器100を例に説明しているが、これ以外のミスト生成器において実施する形態でもよい。例えば、旅客機や船舶等に搭載されて使用されるミスト生成器において、本発明を実施する形態でもよい。また、持ち運んで使用する携帯用のミスト生成器において、本発明を実施する形態でもよい。
【0081】
(B)上記実施形態では、水溶液タンク103に貯えられている水溶液を加圧する加圧装置として空気圧送出装置107を用いているが、これ以外の装置により水溶液を加圧する形態でもよい。例えば、水溶液タンク103を徐々に変形させ、水溶液タンク103内のスペースを減縮させることで、水溶液タンク103内の水溶液を加圧する形態でもよい。
【0082】
(C)上記実施形態では、導水管104として、ミスト生成器100のハウジング内において上下方向に伸びた略管状の部材を例に説明を行っているが、これ以外の形状または組成をした構成でもよい。例えば、導水管104が流線形状をしており、ハウジングの外部を経由して水溶液の流動経路を形成する形態でもよい。また例えば、導水管104とミスト生成器のハウジングとが一体形成されている形態でもよい。また導水管104の代わりに吸水棒を設けることにより、毛細血管現象による吸引を利用して水溶液を搬送する形態でもよい。
【0083】
(D)上記実施形態では、ミスト生成器100の中心を円心とする円の円周上に三つの電極板を設けているが、設ける電極板の数は三つに限定されるものではない。例えば、二つの電極板を設ける形態でもよい。ただしこの場合、部材にかかるコストは低減できるが、傾倒方向によっては検知電位差が閾値を超えない可能性がある。このため、精度を優先するのであれば、三つ以上の電極板を設ける形態が好ましい。
【符号の説明】
【0084】
10 車両
100 ミスト生成器
101 放出板
102 超音波振動子(霧化部)
103 水溶液タンク(貯水タンク)
104 導水管(搬送路)
105 電極群(印加部)
106 渇水検知センサ(検知部、導電部材)
107 空気圧送出装置(加圧部)
200 制御基板
201 マイコン(制御部)
202 振動子駆動回路(霧化部)
203 電極駆動回路(印加部)
204 空気圧送出装置駆動回路(加圧部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯える貯水タンクと、
液体を霧化する霧化部と、
電圧を印加する印加部と、
電圧を検知する検知部と、
前記霧化部、前記印加部、及び前記検知部の制御を行う制御部とを備えるミスト生成器において、
前記検知部は、前記印加部により印加された電圧を前記貯水タンクに貯えられた液体を介して検知する導電部材を複数備え、
前記制御部は、複数の前記導電部材により検知された複数の電圧の差分を算出し、前記差分が予め定められた値を超える場合に、前記ミスト生成器が予め定められた傾斜角度を超えて傾斜していると判定すること
を特徴とするミスト生成器。
【請求項2】
前記制御部は、前記ミスト生成器が予め定められた傾斜角度を超えて傾斜していると判定した場合に、前記霧化部に対して駆動を停止するよう制御すること
を特徴とする請求項1に記載のミスト生成器。
【請求項3】
前記ミスト生成器は、前記貯水タンクに貯えられている液体を前記霧化部へ搬送するための流動経路の一部を形成する搬送路と、前記貯水タンクに貯えられている液体を加圧することにより、該液体を、前記搬送路を介して前記霧化部へ到達するように付勢する加圧部とを備え、
前記制御部は、前記ミスト生成器が予め定められた傾斜角度を超えて傾斜していることを検知した場合に、前記加圧部に対して駆動を停止するよう制御すること
を特徴とする請求項2に記載のミスト生成器。
【請求項4】
前記制御部は、前記ミスト生成器が予め定められた傾斜角度を超えて傾斜していることを検知した回数が予め定められた回数を超えた場合に、前記霧化部または前記加圧部に対して駆動を停止するよう制御すること
を特徴とする請求項3に記載のミスト生成器。
【請求項5】
前記制御部は、前記ミスト生成器が予め定められた傾斜角度を超えて傾斜していることを検知している時間が予め定められた時間を超えた場合に、前記霧化部または前記加圧部に対して駆動を停止するよう制御すること
を特徴とする請求項3に記載のミスト生成器。
【請求項6】
前記検知部は、前記貯水タンクの内部において垂直方向に設けられた板状部材である電極板を前記導電部材として備え、
前記印加部は、水平方向において、前記ミスト生成器の中心の近傍に位置するよう設けられており、
前記電極板は、水平方向において、前記印加部を円心とする円の円周上に位置するよう設けられていること
を特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のミスト生成器。
【請求項7】
前記霧化部は、超音波振動子を含み、前記超音波振動子を用いて液体を霧化するとともに、前記貯水タンクの上方に設けられており、
前記搬送路は、鉛直上向きに前記流動経路を形成し、
前記加圧部は、前記貯水タンクの外部から前記貯水タンクの内部へ空気を送り込んで前記貯水タンク内の空気圧を増加させることにより前記貯水タンクに貯められている液体を加圧し、該液体を前記搬送路を介して押し上げて前記霧化部へ搬送すること
を特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のミスト生成器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−47358(P2012−47358A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187306(P2010−187306)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】