説明

ミスト発生装置およびこれを備えた浴室暖房装置

【課題】簡易な構造によって、所望領域に対するミストの供給量を多くすることが可能なミスト発生装置を提供する。
【解決手段】ロータ2を内部に収容し、かつロータ2から飛散してきた水を衝突させることによりミストを発生させる複数の衝突壁部12を形成しているケース1を備えている、ミスト発生装置MGであって、複数の衝突壁部12は、ロータ2の周りに放射状に並び、かつロータ2の法線方向に延びたリブ状に形成され、複数の衝突壁部12どうしの隙間11は、ケース1の内外を連通させるように形成され、隙間11のうち、ケース1の外周寄りの開口部分は、ミスト噴出口13とされ、複数の衝突壁部12に水が衝突して発生したミストは、隙間11を通過してミスト噴出口13からケース1の周囲に噴出するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば浴室において水(温水も含む)を霧状に噴出し、ミストによるサウナ効果、暖房効果、あるいはシャワー効果などを得る用途に好適なミスト発生装置、およびこれを備えた浴室暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば浴室に設置して使用されるミスト発生装置の具体例としては、特許文献1に記載のものがある。同文献に記載されたミスト発生装置は、浴室の床上などに設置されるケース内に、モータにより駆動回転自在な水平状の円板が設けられており、この円板上にその上方から水が供給されると、この水は遠心力によって前記円板の周囲に飛散し、前記円板の周囲に配された複数の衝突壁部に衝突するように構成されている。この衝突により、水の微細水滴化が図られ、ミストが発生する。このミストは、前記ケースの上面部に形成されている開口部を通過して前記ケースの上方に吹き出す。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、解決すべき課題があった。
【0004】
すなわち、ミストはケースの上方に向けて吹き出すようにされているが、この方向は、水が遠心力によって前記円板から前記複数の衝突壁部に向けて進行する方向とは相違している。このため、多くのミストを勢いよく上向きに進行させることは難しく、ケース内において発生したミストの多くはケース内に籠もったままとなって、ケース内において粒径が大きい水滴となり易い。また、前記ミストの吹き出し方向は、重力に逆らう方向であり、ミストを高く上昇させることも難しい。このようなことから、ミストの吹き出し量および吹き出し高さが不足気味となり、たとえば浴室または浴室の一部の領域に多くのミストを充満させることが難しいものとなっていた。さらに、前記従来技術においては、浴室の床面上にミスト発生装置を設置するために、浴室においてその設置スペースを確保するのに苦慮するといった不具合もあった。
【0005】
前記した不具合を改善する策としては、前記ミスト発生装置を浴室の天井部などに設置し、前記ケースから上向きに吹き出されたミストを下向きにガイドするダクトを設けることが考えられる。ところが、このような手段を用いた場合には、装置全体が大型化ならびに複雑化することに加え、ミストがダクト内を通過する際に、このダクトと接触することによって水滴化し、浴室内へのミスト供給量はかなり少なくなる。また、ダクト内において発生した水滴が浴室内に滴下するといった新たな不具合も生じる。
【0006】
なお、前記とは異なる他の従来例としては、特許文献2,3に記載されたものもある。ところが、特許文献2に記載されたものは、特許文献1に記載されたものと同様に、床面上に設置して使用されるタイプであり、浴室用などには不向きである。また、同文献2に記載されたものは、ケースの周壁部に1つのミスト吹き出し口が形成されているだけであるために、このミスト吹き出し口から離れた箇所で発生したミストを効率良くミスト吹き出し口まで導いて外部に吹き出させることが難しく、ミストの吹き出し量が少なくなり易い。一方、特許文献3の第1図に記載されたものは、ケース内において発生したミストをケースの側部に設けられている開口部からケース外部に噴出させるようにしているが、ミストはリング状の衝突壁に衝突してこの衝突壁の周囲において発生した後に、下方からの送風によってダクト状の通路を通過してからケースの開口部に到達するようにされている。これでは、ミストの多くは、開口部に到達するまでの間に水滴となり、やはりミストの吹き出し量は少ない。
【0007】
【特許文献1】特開平8−182727号公報
【特許文献2】特開平6−269699号公報
【特許文献3】特公平1−13014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、簡易な構造によって、所望領域に対するミストの供給量を多くすることが可能なミスト発生装置、およびこれを備えた浴室暖房装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
本発明の第1の側面により提供されるミスト発生装置は、供給されてきた水を遠心力により周囲に飛散させることが可能なロータと、このロータの周囲において互いに間隔を隔てて位置し、かつ前記ロータから飛散してきた水を衝突させることによりミストを発生させることが可能な複数の衝突壁部と、前記ロータを内部に収容しており、かつ前記複数の衝突壁部を形成しているケースと、このケース内において発生したミストを前記ケースの外部に噴出させるための複数のミスト噴出口と、を備えている、ミスト発生装置であって、前記複数の衝突壁部は、前記ロータの周りに放射状に並び、かつ前記ロータの法線方向に延びたリブ状に形成され、前記複数の衝突壁部どうしの隙間は、前記ケースの内部と外部とを連通させるように形成され、前記隙間のうち、前記ケースの外周寄りの開口部分は、前記各ミスト噴出口とされており、前記複数の衝突壁部に水が衝突することによって発生したミストは、前記隙間を通過して前記各ミスト噴出口から前記ケースの周囲に噴出するように構成されていることを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、複数の衝突壁部に水が衝突することにより発生したミストは、その後複数の衝突壁部どうしの隙間およびこれに連通した複数のミスト噴出口を通過して、ケースの周壁部の周囲に直ちに噴出することとなる。ロータから略水平方向に水を飛散させて複数の衝突壁部に衝突させた場合、ミストはそのまま略水平方向に進行してケース外部に勢いよく噴出することとなる。このようなことから、本発明においては、ケース内において発生したミストがミスト噴出口を通過するまでにケース内面に接触して水滴となる機会を少なくし、ケースの外部に噴出するミストの量を多くすることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、ミストの供給先となる空間部の上方に位置する部位を取り付け対象として、この取付け対象部位に前記ケースを取り付け可能とする取付手段を、さらに備えており、前記取付手段は、前記各ミスト噴出口よりも上方に位置しており、前記各ミスト噴出口を前記取付け対象部位よりも下方に配置可能とされている。
【0013】
このような構成によれば、本発明のミスト発生装置は、取付手段を利用することにより、たとえば浴室の天井部、あるいは天井部に設置された浴室暖房装置など、ミストの供給先となる空間部の上方に位置する部位に対してケースを取り付け、このケースの下方の空間部に対してミストを好適に供給することができる。複数のミスト噴出口は、前記取付手段よりも下方に位置するために、ミスト噴出口から噴出されたミストが下降する際に、このミストがたとえば前記取付手段などに接触するようなことも好適に回避される。したがって、ミスト発生装置の取付け箇所の下方空間部に対し、多くのミストを効率良く供給することができる。もちろん、本発明によれば、ミストを下向きに供給するためのダクトを別途必要とすることはなく、全体の構成の簡素化を図ることができる。また、床面設置型ではないために、浴室に設置するような場合に、その設置スペースを確保するのに苦慮す
るといった不具合も解消される。
【0014】
本発明の第2の側面により提供されるミスト発生装置を備えた浴室暖房装置は、浴室の上部に設置されるケースと、前記浴室の空気を前記ケース内に吸入し、かつこの空気を送風口から前記浴室に吹き出すファンと、このファンの駆動により前記ケース内に吸入された空気を加熱可能な加熱手段と、を備えている浴室暖房装置であって、本発明の第1の側面により提供されるミスト発生装置をさらに備えており、このミスト発生装置は、前記複数のミスト噴出口が前記浴室暖房装置のケースの底部よりも下方に位置するようにして前記浴室暖房装置に取付けられていることを特徴としている。
【0015】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供されるミスト発生装置について述べたのと同様な効果が得られる。また、浴室暖房装置がミスト発生装置のブラケットとしての役割を果たすこととなり、ミスト発生装置の施工作業の省略化あるいは簡略化を図ることもできる。ミスト発生装置の複数のミスト噴出口は、浴室暖房装置のケースの底部よりも下方に位置しているために、ミスト発生装置によって発生させたミストが浴室暖房装置のケース上などに降りかかるような不具合も好適に回避される。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るミスト発生装置の一例を示す断面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】図1に示すミスト発生装置で用いられているケースの平面図である。
【図5】本発明に係るミスト発生装置を備えた浴室暖房装置の一例を示す断面図である。
【図6】図5に示す浴室暖房装置の作用を示す断面図である。
【図7】図5に示す浴室暖房装置の作用を示す断面図である。
【図8】本発明に係るミスト発生装置を備えた浴室暖房装置の他の例を示す断面図である。
【図9】本発明に係るミスト発生装置の他の例を示す断面図である。
【図10】(a)は、本発明に係るミスト発生装置の他の例を示す断面図であり、(b)は、その作用の原理説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1〜図4は、本発明が適用されたミスト発生装置およびこれに関連する構成の一例を示している。図1によく表われているように、本実施形態のミスト発生装置MGは、ケース1、ロータ2、およびモータMを備えている。
【0020】
ケース1は、合成樹脂製であり、その全体の概略形状は、上部が開口した平面視円形のカップ状である。このケース1は、上部に設けられた複数のネジ孔10、リブ状の複数の衝突壁部12、複数のミスト噴出口13、貯水部14、および複数の空気流入口15を有している。
【0021】
複数のネジ孔10は、ケース1を所望箇所に取り付けるための部分であり、本発明でいう取付手段の一例に相当する。図4に示すように、このネジ孔10は、ケース1のリング状の上部にたとえば等間隔で3箇所設けられている。本実施形態においては、ケース1の
取付け対象が、図5〜図7を参照して後述する浴室暖房装置H1,H2のパネル41とされている。このパネル41に対するケース1の取付けは、ケース1の上面部をパネル41の下面に当接させて、パネル41の上方側からネジ体90をネジ孔10に螺合させることによりなされている。
【0022】
複数の衝突壁部12は、ロータ2が回転してこのロータ2からその外周に水が飛散したときにこの水を衝突させるための部位であり、図2および図4に示すように、ケース1の中心軸周りに略等間隔で放射状に並んだリブとして構成されている。各衝突壁部12は、厚みが一様でケース1の半径方向に延びている。複数のミスト噴出口13は、隣り合う衝突壁部12どうしの隙間11に連通し、かつケース1の周壁部に開口している。より具体的には、ケース1は、その上部側と下部側とがリブ状の複数の衝突壁部12を介して繋がった形態とされており、衝突壁部12どうしの隙間11のうち、ケース1の最も外周寄りの部分がそのまま開口している。この開口部分がミスト噴出口13である。
【0023】
貯水部14は、ケース1の底部に形成されており、この貯水部14には適当量の水を貯留可能である。貯水部14への給水手段としては、たとえば図3に示すように、パネル41に設けられた孔部410に給水用のチューブ(図示略)を差し込み、このチューブからケース1内に給水を行なう手段を用いることができる。もちろん、他の手段を用いることができる。ケース1の周壁部のうち、少なくとも底部寄りの部分は、底部に接近するほどその内径が小さくなるように形成されており、このことにより貯水部14の小容量化が図られている。これに伴い、ケース1の周壁部のうち、ミスト噴出口13の形成箇所近傍から貯水部14にわたる範囲の内面の大部分は、傾斜面とされており、内面に付着した水滴が貯水部14に円滑に流れ込むように構成されている。衝突壁部12の内向き面(ケース1の中心方向を向く面)もその一部は水滴ガイド用の傾斜面とされている。
【0024】
複数の空気流入口15は、ケース1内にその下方から外部空気を流入させるための部分である。本実施形態においては、ケース1の底部またはその近傍から上向きに起立して設けられた筒状部15aの内部が空気流入口15となっている。このような構成によれば、空気流入口15の上部を貯水部14の水面よりも高くし、貯水部14の水が空気流入口15からケース1の下方に流れ落ちないようにすることができる。また、空気流入口15の上部がロータ2の後述する回転板20に接近するために、この回転板20の下方領域に対して外部空気を確実かつ十分に供給することも可能となる。
【0025】
ロータ2は、モータMの軸部30により支持されてケース1内において回転自在であり、中空円板状の回転板20と、この回転板20の中央部分から下向きに突出した管状の揚水部21とを有している。揚水部21の下端部は、貯水部14の水に浸漬可能な高さである。ロータ2が高速回転すると、揚水部21の内部空間21aに存在する水が遠心力によって揚水部21の内周面に沿った水膜となって上昇し、回転板20の上面まで揚げられる。すると、この水は、回転板20が高速回転する際の遠心力によって、回転板20の中央寄り領域から外周方向に向けて加速されて水膜状となり、この回転板20の周囲に飛散して複数の衝突壁部12に衝突する。
【0026】
モータMは、パネル41上に取り付けられており、ケース1の外部に配されている。パネル41は、モータMとケース1との間を仕切る役割も果たしている。ただし、パネル41へのモータMの取り付け部分においては、外部空気をケース1内に対してその上方側から流入させるための空気流通部33が形成されている。この空気流通部33は、モータMを支持する板部31とパネル41との間にスペーサ32を介在させて形成された隙間33aと、パネル41に形成され、かつ隙間33aを通過してきた外部空気をケース1内に流入させる開口部33bとを含んで構成されている。開口部33bは、ロータ2の回転板20の上方に位置している。
【0027】
次に、前記したミスト発生装置MGの作用について説明する。なお、このミスト発生装置MGを浴室暖房装置と組み合わせた場合の詳細な作用については後述する。
【0028】
まず、ミストを発生させるには、ケース1の貯水部14に水を貯留させた状態において、ロータ2を高速回転させる。このことにより、既述したとおり、ロータ2の揚水部21によって貯水部14の水が回転板20の上面まで揚げられてから、この回転板20の周囲に高速で飛散し、複数の衝突壁部12に衝突する。このことにより、ミストが発生する。水が回転板20から飛散する方向は、回転板20の略接線方向であるのに対し、複数の衝突壁部12はそれとは略直交する向きに延びたリブ状であるために、これらの衝突壁部12に対して水を効率良く衝突させることができる。
【0029】
次いで、前記のようにして発生したミストは、衝突壁部12どうしの隙間11、およびミスト噴出口13をそのまま通過し、ケース1の周壁部の周囲に噴出する。ロータ2からの水の飛散方向は水平方向であるが、ケース1内において発生したミストの外部への噴出方向もそれと一致している。したがって、ミストの噴出が勢いよくなされる。また、ミストの多くは、衝突壁部12の隙間11内において発生するが、この隙間11からミスト噴出口13に至るまでの経路は、ストレートであり、しかもその距離は短い。したがって、ケース1内において発生したミストはケース1の外部に噴出され易く、ミスト噴出口13に到達するまでの間に水滴となる割合が少なくなる。このため、ミストの噴出量を多くすることができる。
【0030】
ケース1の周囲に噴出されたミストは、その後重力により下降していくが、このミストの噴出領域の直下には、モータMやケース1の一部など、ミストの下降を妨げる部分は存在しない。したがって、ケース1の外部に噴出されたミストが下降していく過程において、ミスト発生装置MGの一部分に接触して水滴となる可能性も非常に低くすることができる。このようなことから、ミスト発生装置MGの下方領域には、多くのミストを供給することが可能となり、このミスト発生装置MGがたとえば浴室の天井部またはその近傍に配置されている場合には、浴室または浴室の一部の領域にミストを大量に供給し、充満させることができる。
【0031】
ミスト発生装置MGにおいてミストを発生させる場合においても、やはり一部のミストはケース1内において水滴化する。また、複数の衝突壁部12に衝突したにも拘わらず、ミスト化されない水も発生し得る。このような水は、ケース1の内壁面を伝って貯水部14に戻される。ケース1の内面の広い領域が傾斜面とされているために、貯水部14に向けて水を円滑に流れ込ませることが可能である。このように、ケース1の外部に噴出されなかった水が貯水部14に戻されると、この水は、ロータ2によって再度吸い上げられてからミスト発生に繰り返し利用されることとなる。したがって、ミストとして外部に噴出されなかった水の処理に苦慮するといった不具合も適切に回避される。また、水の消費量を抑制し、外部から貯水部14への給水量を少なくすることもできる。
【0032】
貯水部14は、既述したように、ケース1の貯水部14の上側領域よりも小径化され、小容量化が図られている。このような構成によれば、ミスト発生装置MGの運転を停止させた場合の残水量を少なくすることができる。衛生面などの観点からすると、ミスト発生装置MGの運転停止時においてケース1内に多くの水が残存することは好ましいものではなく、ケース1の内部を早期に乾燥させることが望まれる。これに対し、本実施形態によれば、そのような要望にも的確に応え得ることとなる。
【0033】
ロータ2を高速回転させた際には、回転板20の周辺空気が旋回し、乱流を生じる。この乱流は、回転板20の表面上の水膜を乱したり、あるいは衝突壁部12に対する水の衝
突動作を乱し、ミストの粒子径が不均一化する要因となる。これに対し、本実施形態においては、回転板20の上方および下方領域に対して、ケース1の外部の空気が空気流通部33および空気流入口15を介して供給される。このことにより、前記した回転板20の周辺空気が乱流になることを抑制し、粒子径が微細かつ均一化されたミストが多く発生する効果が得られる。空気流通部33および空気流入口15のうち、いずれか一方のみが設けられているに過ぎない場合であっても、前記した乱流を抑制する効果が得られるものの、それら双方が設けられていることによって前記した乱流を抑制する効果はより高いものとなる。
【0034】
次に、前記したミスト発生装置MGを備えた浴室暖房装置の一例について、図5を参照して説明する。
【0035】
図5に示す浴室暖房装置H1は、ユニットバスなどの浴室の天井板80に取り付けられており、ケース4、ファン50、および加熱手段の一例としての熱交換器51を備えている。ケース4は、ファン50および熱交換器51を内部に収容し、かつ天井板80の上面側に設置される下部開口状のケース本体部40と、これとは別体のパネル41とを有している。パネル41は、本発明でいう浴室暖房装置のケースの底部の一例に相当する。このパネル41は、天井板80に形成された開口部80aおよびケース本体部40の下部開口部を塞ぐように、天井板80に取り付けられている。このパネル41には、給気口41aおよび送風口41bが設けられている。送風口41bには、送風方向を変更自在とするルーバ42が設けられている。
【0036】
この浴室暖房装置H1は、ファン50が駆動すると、給気口41aからケース4内に空気が吸入され、この空気が熱交換器51により加熱されるようにされている。熱交換器51は、たとえば内部に加熱湯水が流通可能とされたフィン付の複数のチューブを用いて構成されており、空気はこれら複数のチューブ間を通過する際に加熱される。この加熱された空気は、ルーバ42までガイドされて吹き出される。ミスト発生装置MGは、パネル41のうち、ルーバ42の側方に取り付けられている。
【0037】
次に、ミスト発生装置MGを備えた浴室暖房装置H1の作用について説明する。
【0038】
まず、図5に示したように、送風口41bからミスト発生装置MGの下方または下方近傍に向けて加熱空気を吹き出させると、ミスト発生装置MGによって発生されたミストがこの加熱空気によって加熱されるとともに、この加熱空気の流れに乗って浴室内の一定領域に送られる。したがって、ユーザは、暖かいミストを浴びることができる。熱交換器51の加熱動作を停止させておけば、非加熱のミストを浴びることもできる。
【0039】
次いで、ミスト発生装置MGを停止させる場合には、たとえば図6に示すように、ルーバ42の角度を変更し、送風口41bから吹き出される加熱空気がミスト発生装置MGのケース1に当たるように設定する。このようにすると、ケース1が加熱され、このケース1内に残存している水、あるいはケース1の外面に付着している水を積極的に蒸発させ、その乾燥を促進することができる。このことにより、ケース1内が不衛生になることを好適に防止することができる。
【0040】
図7に示す状態は、浴室暖房装置H1の運転が停止し、送風口41bが閉じられた状態である。このような状態であっても、ミスト発生装置MGを単独で運転させて浴室内にミストを供給することができる。この場合は、ミスト発生装置MGのケース1の周囲に噴出されたミストが自然落下するだけであるが、このような態様でのミスト供給も趣向に富んだものとなる。
【0041】
このように、ミスト発生装置MGを浴室の上部に取り付けられる浴室暖房装置H1に組み付けた場合には、ミストを浴室の上部からその下方領域に向けて効率よく供給することができる。浴室暖房装置H1のパネル41は、ミスト発生装置MGの取り付け用のブラケットとしての役割を果たすこととなるために、ミスト発生装置MGの専用のブラケットが不必要となり、また設置作業も簡略化される。さらに、既述したように、浴室暖房装置H1からの送風を利用してミストをガイドすることに加えて、ミスト発生装置MGのケース1を早期に乾燥させ得る効果も得られ、実用性に優れる。
【0042】
図8〜図10は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0043】
図8に示す実施形態においては、浴室暖房装置H2が浴室の側壁81の天井に近い位置へ取り付けられるいわゆる壁掛けタイプとして構成されている。より具体的には、この浴室暖房装置H2は、ファン50が駆動すると、ケース4の上部の給気口41aから浴室の空気がケース4内に流入し、熱交換器51によって加熱されてからケース4の正面または側面の送風口41bから浴室に吹き出されるように構成されている。ミスト発生装置MGは、この浴室暖房装置H2のケース4のうち、最も高さが低い底部41Aに取り付けられている。
【0044】
本実施形態においては、たとえば同図に示すように、ルーバ42からの送風がミスト発生装置MGの近傍を通過すると、ミストがこの送風に乗って一定領域に導かれる。その際に、前記ミストを必要に応じて加熱することも可能である。本実施形態においては、図5〜図7に示した先の実施形態と比較すると、ルーバ42からの送風をミスト発生装置MGのケース1に対して直接当てることが難しく、この点が相違するものの、それ以外については先の実施形態について述べたのと同様な効果が得られる。
【0045】
図9に示す実施形態のミスト発生装置は、モータMを囲んで支持する補助ケース70を具備している。この補助ケース70は、本発明でいう取付手段の具体例に相当しており、この下部には、ネジ体90を介してケース1が接続されている。補助ケース70は、たとえばその上部にネジ体挿通用の複数の孔部70aが設けられたフランジ70bを有しており、所望の取付け対象となる壁部41Bの下面部にボルト・ナット91a,91bなどのネジ部材を利用して取り付け可能である。
【0046】
本実施形態のミスト発生装置は、補助ケース70を利用することにより、たとえば浴室暖房装置の底部、あるいは浴室の天井部などに取り付けて使用することが可能となる。したがって、浴室暖房装置が設置されていない浴室に設置する場合、あるいは浴室暖房装置に対してミスト発生装置を後付けするような場合に便利である。
【0047】
図10(a)に示す実施形態においては、ロータ2Aの揚水部21Aが非管状であり、上端ほど外径が大きくなる逆円錐台状または逆円錐状に形成されている。このような構成によれば、ロータ2Aを高速回転させると、貯水部14の水が揚水部21Aの外周面に沿った膜状となって回転板20の下面部まで上昇する。すると、この回転板20が高速回転する際の遠心力によって、前記の水は回転板20の下面部において加速されて膜状となり、周囲に飛散する。
【0048】
揚水部21Aの外周面上に水膜が形成されて上昇する原理について、図10(b)を参照して簡単に説明する。揚水部21Aの外周面上の水膜の微小要素ΔWについて考察すると、前記外周面と直交する方向には、揚水部21Aの外周面に対する水の付着力Fが生じている。また、微小要素ΔWの質量をmとすると、鉛直方向の下向きにはmgが作用するが、これは、分力mgn,mgtに分解することができる。水平方向には、遠心力C(C=
mrω2,r:偏心距離,ω:角速度)が作用するが、これは分力Cn,Ctに分解することができる。微小要素ΔWが揚水部21の外周面から吹き飛ばされないためには、次の式(1)の釣り合い関係があればよい。
F=Cn+mgn 式(1)
ここで、微小要素ΔWの質量mは、m≒0であるために、mgnは小さく、また遠心力Cおよびその分力Cn、についても小さくし、前記の式(1)を満足させることが可能である。
また、微小要素ΔWが上昇するためには、次の式(2)の関係があればよい。
t>mgt 式(2)
ここで、mgnは小さい一方、Ctについては、たとえばロータ2Aの回転速度を高めて、角速度ωを大きくすることによりその値を増大させることができる。したがって、前記の式(2)についても満足させることができる。
【0049】
本実施形態においても、貯水部14内の水を複数の衝突壁部12に向けて飛散させてミストを適切に発生させることが可能である。なお、図1〜図4に示した実施形態のロータ2においても、揚水部21の外周面は上方ほど大径となっているために、このロータ2の回転速度を高くすることにより、貯水部14の水を揚水部21の外周面から回転板20の下面部に対しても進行させることが可能である。このようにすると、衝突壁部12に向けて飛散する水の量を多くしてミスト発生量をさらに多くする効果が期待できる。
【0050】
本発明は上述した実施形態に限定されない。本発明に係るミスト発生装置、およびこれを備えた浴室暖房装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0051】
たとえば、ロータとしては、その上面上に給水管などを利用して直接給水がなされ、この水がそのまま遠心力によって周囲に飛散するようにしたものを採用することもできる。複数の衝突壁部は、必ずしも厚みが一定のリブ状でなくてもよい。たとえば、厚みを不均一として、複数の衝突壁部どうしの隙間の寸法がミスト噴出口に接近する部分ほど幅広となるように形成してもかまわない。また、複数の衝突壁部およびミスト噴出口は、ロータの周囲の全周にわたって設けることが好ましいものの、一部の領域にはそれらをあえて設けないようにし、その部分からのミスト噴出が防止された構成とすることもできる。ケースは下部ほど直径または幅が小さくなる形状とすることが好ましいものの、やはりこれに限定されない。
【0052】
本発明でいう取付手段としては、ボルト・ナットなどのネジ体、ネジ体挿通孔、あるいはネジ孔などの手段に代えて、または加えて、それ以外の種々の手段を用いることが可能である。本発明に係るミスト発生装置は、浴室(シャワールームを含む)でのミスト発生に好適であるが、これ以外の箇所に設置して使用することも可能である。ミストの使用目的も問わない。
【符号の説明】
【0053】
MG ミスト発生装置
H1,H2 浴室暖房装置
M モータ
1 ケース(ミスト発生装置の)
2,2A ロータ
4 ケース(浴室暖房装置の)
10 ネジ孔(取付手段)
11 隙間(衝突壁部どうしの)
12 衝突壁部
13 ミスト噴出口
14 貯水部
15 空気流入口
20 回転板
21,21A 揚水部
33 空気流通部
41 パネル(浴室暖房装置のケースの底部)
42 ルーバ
41b 送風口
41A 底部(浴室暖房装置のケースの)
50 ファン
51 熱交換器(加熱手段)
70 補助ケース(取付手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給されてきた水を遠心力により周囲に飛散させることが可能なロータと、
このロータの周囲において互いに間隔を隔てて位置し、かつ前記ロータから飛散してきた水を衝突させることによりミストを発生させることが可能な複数の衝突壁部と、
前記ロータを内部に収容しており、かつ前記複数の衝突壁部を形成しているケースと、
このケース内において発生したミストを前記ケースの外部に噴出させるための複数のミスト噴出口と、
を備えている、ミスト発生装置であって、
前記複数の衝突壁部は、前記ロータの周りに放射状に並び、かつ前記ロータの法線方向に延びたリブ状に形成され、
前記複数の衝突壁部どうしの隙間は、前記ケースの内部と外部とを連通させるように形成され、前記隙間のうち、前記ケースの外周寄りの開口部分は、前記各ミスト噴出口とされており、
前記複数の衝突壁部に水が衝突することによって発生したミストは、前記隙間を通過して前記各ミスト噴出口から前記ケースの周囲に噴出するように構成されていることを特徴とする、ミスト発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のミスト発生装置であって、
ミストの供給先となる空間部の上方に位置する部位を取り付け対象として、この取付け対象部位に前記ケースを取り付け可能とする取付手段を、さらに備えており、
前記取付手段は、前記各ミスト噴出口よりも上方に位置しており、前記各ミスト噴出口を前記取付け対象部位よりも下方に配置可能とされている、ミスト発生装置。
【請求項3】
浴室の上部に設置されるケースと、
前記浴室の空気を前記ケース内に吸入し、かつこの空気を送風口から前記浴室に吹き出すファンと、
このファンの駆動により前記ケース内に吸入された空気を加熱可能な加熱手段と、
を備えている浴室暖房装置であって、
請求項1または2に記載のミスト発生装置をさらに備えており、
このミスト発生装置は、前記複数のミスト噴出口が前記浴室暖房装置のケースの底部よりも下方に位置するようにして前記浴室暖房装置に取付けられていることを特徴とする、ミスト発生装置を備えた浴室暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−106111(P2012−106111A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−53880(P2012−53880)
【出願日】平成24年3月10日(2012.3.10)
【分割の表示】特願2007−106567(P2007−106567)の分割
【原出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】