説明

ミスト発生装置及び美容装置

【課題】より均一にミストを放出することができるミスト発生装置を提供すること。
【解決手段】ミスト発生装置は、複数の微細孔10が形成された霧化部11を有する振動板12と、この振動板12を膜振動させる振動発生手段としての圧電振動子とを備える。そして、霧化部11には、振動板12が膜振動する際の振動振幅Aの大きさに基づいて、霧化効率εの異なる複数(2つ)の領域(γ1,γ2)が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト発生装置及び美容装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の微細孔が形成された振動板を膜振動させることにより、その各微細孔に供給される液体を霧化してミストを発生させるミスト発生装置がある。
例えば、特許文献1には、円環板状に形成された圧電振動子を振動発生手段として、その孔部を覆うように振動板を貼り合わせる構成が開示されている。すなわち、このような構成を採用することで、効率良く、振動板を膜振動させることができる。そして、その圧電振動子の孔部を覆う部分に複数の微細孔を形成して霧化部とすることにより、高効率且つ安定的にミストを発生させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−207800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多くの場合、その霧化部における振動振幅は、必ずしも一様にならない。例えば、上記従来の構成の場合、その霧化部が形成される円形部分(圧電振動子の孔部を覆う部分)の振動振幅分布は、中心部に最大振幅領域を有する略同心円状のものとなる。このため、振動振幅の大きな中心部では多量のミストが発生する一方、振動振幅が小さい周縁部ではそのミスト発生量が少なくなる傾向があり、その結果、霧化部から放出されるミストに濃度や勢いのムラが生ずるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、より均一にミストを放出することができるミスト発生装置及び美容装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、本発明のミスト発生装置は、複数の微細孔が形成された霧化部を有する振動板と、前記霧化部に液体を供給する供給手段と、前記振動板を膜振動させる振動発生手段とを備え、前記振動板の膜振動に基づき前記霧化部に供給された液体を霧化するミスト発生装置であって、前記霧化部には、前記膜振動の振動振幅に基づいて、霧化効率の異なる複数の領域が設定されること、を特徴とする。
【0007】
上記構成のミスト発生装置においては、前記霧化部は、相対的に前記振動振幅の小さい領域では前記霧化効率が高く、前記振動振幅の大きい領域では前記霧化効率が低くなるように形成されることが好ましい。
【0008】
上記構成のミスト発生装置においては、前記各領域のミスト発生量が均等になるように前記各領域の霧化効率が設定されることが好ましい。
上記構成のミスト発生装置においては、ミスト放出面における領域面積に対する前記微細孔の開口面積の比率が前記領域毎に異なることが好ましい。
【0009】
上記構成のミスト発生装置においては、前記ミスト放出面における前記微細孔の開口径及び単位面積当たりの前記微細孔の数の少なくとも何れかにより前記開口面積の比率が規定されることが好ましい。
【0010】
上記構成のミスト発生装置においては、ミスト放出面における前記微細孔の開口径が前記領域毎に異なることが好ましい。
上記構成のミスト発生装置においては、単位面積当たりの前記微細孔の数が前記領域毎に異なることが好ましい。
【0011】
上記構成のミスト発生装置においては、前記各微細孔の断面形状により前記各領域の前記霧化効率が設定されることが好ましい。
上記構成のミスト発生装置においては、前記各微細孔の断面形状が前記領域毎に異なることが好ましい。
【0012】
上記構成のミスト発生装置においては、前記振動発生手段は、円環板状に形成されるとともに、前記振動板は、前記振動発生手段の孔部を覆うように、該振動発生手段に貼り合わされることが好ましい。
【0013】
上記構成のミスト発生装置においては、前記霧化部は、中心部が最大となる同心円状の振動振幅分布を有するとともに、前記霧化効率は、前記振動振幅分布に従って設定されることが好ましい。
【0014】
本発明の美容装置は、上記何れかに記載のミスト発生装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、より均一にミストを放出することが可能なミスト発生装置及び美容装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】美容装置の斜視図。
【図2】ミスト発生装置の正面図。
【図3】ミスト発生装置の断面図。
【図4】微細孔の断面図。
【図5】ミスト発生装置の作用説明図。
【図6】ハウジング内におけるミスト発生装置の配置を模式的に示す断面図。
【図7】第1の実施形態におけるミスト均一化構造を模式的に示す平面図。
【図8】第2の実施形態におけるミスト均一化構造を模式的に示す平面図。
【図9】第3の実施形態におけるミスト均一化構造を模式的に示す断面図。
【図10】別例のミスト均一化構造を模式的に示す平面図。
【図11】別例のミスト均一化構造の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下、本発明をミスト発生装置が内蔵された携帯型の美容装置に具体化した第1の実施形態について説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の美容装置1は、略円筒状に形成されたハウジング2を備えている。また、ハウジング2内には、美容液や水等の液体を霧化してミストを発生させるミスト発生装置3、及びその制御回路4が収容されている。そして、ハウジング2の周面2aには、その発生させたミストをハウジング2の外部に放出する放出口5が形成されている。
【0019】
具体的には、本実施形態のハウジング2は、一端側(同図中、下側の端部)に他の部分よりも大径に形成された把持部6を備えており、放出口5は、その他端側(同図中、上側の端部近傍)に形成されている。また、ハウジング2の周面2aには、湾曲板状のカバー7が軸方向移動可能に嵌合されている。そして、本実施形態では、このカバー7を摺動させることにより、その放出口5を閉塞し又は外部に開放することが可能になっている。
【0020】
さらに、このカバー7は、ミスト発生装置3のスイッチを兼ねており、ミスト発生装置3は、カバー7が放出口5を開放する位置に移動することにより作動する。そして、そのカバー7が放出口5を閉塞する方向に操作されることにより停止するようになっている。
【0021】
すなわち、美容装置1の使用者は、把持部6を把持し、カバー7を操作することにより施術を行う。そして、放出口5から放出されるミストを顔等の施術部位に当てることにより、肌に潤いを与える等の美容効果が得られるようになっている。
【0022】
図2及び図3に示すように、ミスト発生装置3は、複数の微細孔10が形成された霧化部11を有する振動板12と、この振動板12を膜振動させる振動発生手段としての圧電振動子13とを備えている。
【0023】
詳述すると、本実施形態の圧電振動子13は、円環板状に形成されている。また、振動板12は、円板状に形成されている。なお、振動板12は、圧電振動子13の外径よりも小さく且つ圧電振動子13の孔部14よりも大きな外径を有している。そして、振動板12は、圧電振動子13の孔部14を覆うように、同圧電振動子13に貼り合わされている。
【0024】
具体的には、振動板12は、その中心が一致するように圧電振動子13の一面(供給側平面13b)に接着されている。なお、本実施形態では、両者の接触面形状は、圧電振動子13の孔部14を囲む円環状になっている。そして、各微細孔10が形成された霧化部11は、振動板12における圧電振動子13の孔部14に対応する位置、詳しくは、振動板12及び圧電振動子13と中心が一致する円形状の範囲に設定されている。
【0025】
図3及び図4に示すように、本実施形態の振動板12は、その圧電振動子13に貼り合わされた側の面(各図中、左側の面)がミストを放出するミスト放出面12aとなっている。そして、ミスト放出面12aとは反対側の面(各図中、右側の面)がミストの原料となる液体が供給される液体供給面12bとなっている。
【0026】
すなわち、各微細孔10は、液体供給面12b側の開口径Dinよりもミスト放出面12a側の開口径Doutの方が小さくなるように形成されている。具体的には、各微細孔10は、ミスト放出面12a側から液体供給面12b側に向かって、その内径が指数曲線状に拡開するような断面形状を有している。そして、本実施形態の振動板12は、これにより、その膜振動に基づいて、液体供給面12b側に供給される液体を霧化し、ミスト放出面12a側から放出することが可能になっている。
【0027】
図2及び図3に示すように、本実施形態の圧電振動子13は、円環板状に形成された圧電体15と、この圧電体15の両面15a,15bにそれぞれ形成された一対の薄膜電極16a,16bとを備えてなる。また、これらの薄膜電極16a,16bには、それぞれ、リード線17a,17bが接続されている。なお、圧電体15の一方の面15aには、他方の面15bに設けられた薄膜電極16bに連続する折り返し部18が形成されており、リード線17bは、この折り返し部18において薄膜電極16bに接続されている。そして、本実施形態の圧電振動子13は、これらのリード線17a,17bを介して制御回路4(図1参照)から駆動電力が供給されることにより、振動板12を膜振動させるような振動を発生する。
【0028】
具体的には、図5に示すように、圧電振動子13は、薄膜電極16a,16b(図3参照)への電圧印加により生ずる圧電体15の歪みに基づいて、径方向(同図中、上下方向)に拡縮する態様で振動する。そして、振動板12は、圧電振動子13の縮径時には、その液体供給面12b側(同図中、右側)が凸となる態様で湾曲し、圧電振動子13の拡径時には、そのミスト放出面12a側(同図中、左側)が凸となる態様で湾曲する。
【0029】
本実施形態のミスト発生装置3は、この一連の動きが高速で繰り返されることにより生ずる振動板12の膜振動(いわゆる超音波振動)に基づいて、その霧化部11、詳しくは、各微細孔10に供給された液体を霧化する。そして、その発生したミストMをミスト放出面12a側に放出する構成になっている。
【0030】
さらに詳述すると、図6に示すように、本実施形態の美容装置1において、ハウジング2には、その内部空間と放出口5とを接続するノズル20が設けられている。また、ノズル20のハウジング内開口部21には、シール部材及び保持部材としてのノズルパッキン22が固定されている。そして、ミスト発生装置3は、その圧電振動子13の一面(放出側平面13a、ミスト放出面12a側の面)が、このノズルパッキン22に当接する態様で、ハウジング2内に収容されている。
【0031】
具体的には、ノズルパッキン22は、ハウジング内開口部21の連通孔23に対応する貫通孔24を有しており、ミスト発生装置3は、その霧化部11が貫通孔24を介して連通孔23に臨む位置に配置されている。また、ノズルパッキン22におけるミスト発生装置3側の面(同図中、右側の面)には、その貫通孔24の周縁を包囲するように円環状の突部25が形成されている。そして、ノズルパッキン22は、その突部25が圧電振動子13の放出側平面13aに密着することで、ノズル20とミスト発生装置3との間、詳しくは、ハウジング内開口部21の連通孔23と圧電振動子13の孔部14との間を液密に接続する構成になっている。
【0032】
一方、圧電振動子13における放出側平面13aとは反対側の面(供給側平面13b、液体供給面12b側の面)には、タンクパッキン27が取着されている。また、タンクパッキン27には、振動板12の液体供給面12bに臨む位置に開口する略円筒状の接続部28が形成されている。そして、この接続部28には、供給手段としてのタンク29が液密に取着されている。
【0033】
すなわち、振動板12の液体供給面12bには、タンク29内に貯留された液体Lが供給される。なお、本実施形態では、圧電振動子13は、ノズルパッキン22及びタンクパッキン27とともに、ノズル20のハウジング内開口部21側に押し付けられる態様で、図示しない固定部材によりハウジング2に固定されている。そして、圧電振動子13の供給側平面13b及び振動板12の液体供給面12bとタンクパッキン27とが密着することにより、その液体供給面12bとタンク29とが液密に接続されるようになっている。
【0034】
ここで、図2及び図6に示すように、本実施形態では、圧電振動子13の放出側平面13aには、その孔部14の周縁部に、薄膜電極16aの存在しない無電極部30が形成されている。そして、ノズルパッキン22(の突部25)は、この無電極部30に当接するようになっている。
【0035】
すなわち、振動板12の液体供給面12bに液体Lが接触し続けることで、その液体Lが各微細孔10を介してミスト放出面12aに滲み出すことがある。そして、その滲み出した液体Lが放出側平面13aの薄膜電極16aに付着することで、ショートやマイグレーション等の発生要因となるおそれがある。
【0036】
しかしながら、上記のように、ノズルパッキン22に接触する部分を無電極部30とすることで、ミスト放出面12aに滲み出した液体Lが薄膜電極16aに付着することを防止することができる。そして、本実施形態の美容装置1では、これにより、高い信頼性を確保することが可能になっている。
【0037】
(ミスト均一化構造)
次に、本実施形態のミスト発生装置におけるミスト均一化構造について説明する。
図7に示すように、本実施形態では、霧化部11には、振動板12が膜振動する際の振動振幅Aの大きさに基づいて、霧化効率εの異なる複数(2つ)の領域(γ1,γ2)が設定されている。具体的には、霧化部11(振動板12)は、その中心部に設定された第1領域γ1の霧化効率ε1よりも、周縁部に設定された第2領域γ2の霧化効率ε2の方が相対的に高くなるように形成されている。
【0038】
詳述すると、本実施形態では、第1領域γ1及び第2領域γ2は、ミスト放出面12aにおける領域面積に対する各微細孔10の開口面積の比率(開口比率α)が相違する。具体的には、第1領域γ1よりも第2領域γ2の方が、各微細孔10の開口面積が占める割合が高くなっている。そして、この開口比率αの違い(α1<α2)によって、第1領域γ1及び第2領域γ2に異なる霧化効率ε(ε1<ε2)が設定されている。
【0039】
さらに詳述すると、本実施形態の霧化部11は、そのミスト放出面12aにおける開口径Dout(図4参照)が異なる複数種(二種類)の微細孔10(10a,10b)を有している。そして、本実施形態では、その開口径Dout(D1,D2)が異なる各微細孔10a,10bの配置に基づいて、第1領域γ1及び第2領域γ2の開口比率α(α1,α2)が規定されている。
【0040】
具体的には、第1領域γ1には、相対的に小さな開口径D1(例えば8μm)を有する微細孔10aが形成される一方、第2領域γ2には、より大きな開口径D2(例えば10μm)を有する微細孔10bが形成される(D1<D2)。なお、単位面積当たりの微細孔10の数は、第1領域γ1及び第2領域γ2ともに同一である。そして、本実施形態では、これにより、第2領域γ2の開口比率α2は、第1領域γ1の開口比率α1よりも大きな値となっている。
【0041】
すなわち、本実施形態のミスト発生装置3は、円環板状に形成された圧電振動子13の孔部14を覆うように円板状の振動板12を貼り合わせることにより形成される。したがって、その霧化部11は、中心部が最大となる略同心円状の振動振幅分布を有する。また、霧化効率εは、単位振動エネルギー当たりのミスト発生量に表される。そして、その霧化に費やされる振動エネルギーは、微細孔10が形成された部位における振動振幅Aの大きさと正の相関(二乗に比例)を有している。
【0042】
この点を踏まえ、本実施形態の霧化部11は、相対的に振動振幅Aの小さい第2領域γ2では霧化効率εが高く、振動振幅Aの大きい第1領域γ1では霧化効率εが低くなるように形成されている(ε1<ε2)。そして、これにより、これら第1領域γ1及び第2領域γ2におけるミスト発生量が均等となるようにすることで、その霧化部11から放出されるミストの均一化が図られている。
【0043】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ミスト発生装置3は、複数の微細孔10が形成された霧化部11を有する振動板12と、この振動板12を膜振動させる振動発生手段としての圧電振動子13とを備える。そして、霧化部11には、振動板12が膜振動する際の振動振幅Aの大きさに基づいて、霧化効率εの異なる複数(2つ)の領域(γ1,γ2)が設定される。
【0044】
すなわち、霧化効率εは、単位振動エネルギー当たりのミスト発生量に表される。そして、その霧化に費やされる振動エネルギーは、微細孔10が形成された部位における振動振幅Aの大きさと正の相関(二乗に比例)を有している。したがって、上記構成によれば、各領域(γ1,γ2)におけるミスト発生量を精度良く制御することができる。
【0045】
これを利用して、相対的に振動振幅Aの小さい領域(γ2)では霧化効率εが高く、振動振幅Aの大きい領域(γ1)では霧化効率εが低くなるように霧化部11を形成する(ε1<ε2)。そして、各領域(γ1,γ2)におけるミスト発生量が均等となるようにすることで、その霧化部11から放出されるミストを均一化することができる。その結果、より広い範囲に対してムラなくミストを放出することができるようになる。
【0046】
特に、美容装置1では、ミスト発生装置3の放出するミストが、顔等の繊細な部位に当てられる。したがって、上記構成により、均一なミストを放出することで、その使用感を向上させることができる。
【0047】
(2)各領域(γ1,γ2)は、ミスト放出面12aにおける領域面積に対する各微細孔10の開口面積の比率(開口比率α)が相違する。すなわち、霧化効率εは、開口比率αに依存する。したがって、開口比率αの違い(α1<α2)により、各領域(γ1,γ2)に異なる霧化効率ε(ε1,ε2)を設定することができる。
【0048】
(3)霧化部11は、そのミスト放出面12aにおける開口径Doutが異なる複数種(二種類)の微細孔10(10a,10b)を有する。そして、その開口径Dout(D1,D2)が異なる各微細孔10a,10bの配置に基づいて、各領域(γ1,γ2)の開口比率α(α1,α2)が規定される。これにより、容易且つ高精度に、各領域(γ1,γ2)に異なる霧化効率ε(ε1,ε2)を設定することができる。
【0049】
(4)ミスト放出面12aにおける各微細孔10(10a,10b)の開口径Dout(D1,D2)が領域(γ1,γ2)毎に異なる。これにより、簡素な構成にて、各領域(γ1,γ2)に異なる霧化効率ε(ε1,ε2)を設定することができる。
【0050】
(5)ミスト発生装置3は、円環板状に形成された圧電振動子13の孔部14を覆うように円板状の振動板12を貼り合わせることにより形成される。このような構成とすることで、効率良く振動板を膜振動させることができる。その結果、高効率且つ安定的にミストを発生させることができる。また、これにより、その霧化部11の振動振幅分布は、中心部が最大となる同心円状のものになる。そして、その振動振幅分布に従って、その中心部に近い領域ほど低い霧化効率εを設定することにより、効果的に、その霧化部11から放出されるミストを均一化することができる。
【0051】
[第2の実施形態]
以下、本発明を具体化した第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
図8に示すように、本実施形態では、第1領域γ1及び第2領域γ2に形成される単位面積当たりの各微細孔10の数が異なっている。具体的には、第1領域γ1よりも第2領域γ2の方が、より多くの微細孔10を有している。なお、ミスト放出面12aにおける各微細孔10の開口径Doutは、第1領域γ1及び第2領域γ2ともに同一である。そして、本実施形態では、これにより、相対的に振動振幅Aの小さい第2領域γ2について、振動振幅Aの大きい第1領域γ1よりも高い霧化効率ε(ε1<ε2)が設定されるようになっている。
【0053】
このような構成としても、上記第1の実施形態と同様に、容易且つ高精度に各領域(γ1,γ2)の開口比率α(α1,α2)を制御することができる。そして、これにより、容易且つ高精度に、各領域(γ1,γ2)に異なる霧化効率ε(ε1,ε2)を設定することができる。
【0054】
[第3の実施形態]
以下、本発明を具体化した第3の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0055】
図9に示すように、本実施形態の霧化部11は、その断面形状が異なる複数種(二種類)の微細孔10(10c,10d)を有している。そして、その断面形状の異なる各微細孔10c,10dの配置に基づいて、第1領域γ1及び第2領域γ2に異なる霧化効率ε(ε1,ε2)が設定されている。
【0056】
具体的には、第2領域γ2には、上記第1実施形態における微細孔10と同様、ミスト放出面12a側から液体供給面12b側に向かって、その内径が指数曲線状に拡開するような断面形状を有した微細孔10cが形成されている。これに対し、第1領域γ1には、ミスト放出面12a側から液体供給面12b側に向かって、その内径が直線的に拡開するような断面形状を有した微細孔10dが形成されている。なお、ミスト放出面12aにおける開口比率αは、第1領域γ1及び第2領域γ2ともに同一である。そして、本実施形態では、これにより、相対的に振動振幅Aの小さい第2領域γ2について、振動振幅Aの大きい第1領域γ1よりも高い霧化効率ε(ε1<ε2)が設定されるようになっている。
【0057】
すなわち、内径が直線的に拡開するような断面形状を有した微細孔10dは、内径が指数曲線状に拡開するような断面形状を有した微細孔10cよりも、その霧化能力が低い。したがって、その領域内に形成された微細孔10(10c,10d)の断面形状により、各領域(γ1,γ2)に異なる霧化効率ε(ε1,ε2)を設定することができる。
【0058】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、本発明をミスト発生装置3が内蔵された携帯型の美容装置1に具体化した。しかし、これに限らず、本発明は、据え置き型の美容装置、或いは美容装置以外に用いられるミスト発生装置に適用してもよい。
【0059】
・上記各実施形態では、ミスト発生装置3は、円環板状に形成された圧電振動子13の孔部14を覆うように円板状の振動板12を貼り合わせることにより形成されることとした。しかし、圧電振動子及び振動板の形状、並びに両者の接触面形状は、必ずしもこれに限るものではない。例えば、筒状の圧電振動子や矩形状の振動板を用いてもよく、また、圧電振動子が複数の孔を有するものであってもよい。すなわち、本発明は、その霧化部に形成される振動振幅分布が同心円状ではないものに適用してもよい。ただし、効率良く振動板を膜振動させる観点では、上記各実施形態に示される圧電振動子及び振動板の形状が好ましい。そして、その同心円状の振動振幅分布もまた、振動振幅の大きさに基づく霧化効率εの設定(領域設定)を高精度且つ容易に行うことが可能な点で好ましい。
【0060】
・上記各実施形態では、霧化部11には、その振動振幅Aの大きさに基づいて、霧化効率ε(ε1,ε2)の異なる第1領域γ1及び第2領域γ2が設定されることとした。しかし、これに限らず、その霧化効率εの異なる領域の数は、任意に設定してもよい。例えば、図10に示すように、その振動振幅分布に従って、3つの領域(第1領域γ1〜第3領域γ3)を設定する。そして、その中心部に近い領域ほど、その霧化効率ε(ε1<ε2<ε3)を低くする等としてもよい。
【0061】
・さらに、その振動振幅分布に従う霧化効率εの設定を精緻化する、すなわち設定する領域数を増やすことで、図11に示すように、その霧化部の霧化効率εが連続的に変化するようにしてもよい。これにより、その放出されるミストをより均一なものとすることができる。
【0062】
・上記第1の実施形態では、ミスト放出面12aにおける微細孔10(10a,10b)の開口径Dout(D1,D2)が領域(γ1,γ2)毎に異なることとした。しかし、これに限らず、各領域(γ1,γ2)が、ともに開口径Doutの異なる複数種の微細孔10(10a,10b)を有する。そして、その領域内における存在比率(例えば、微細孔10aの数/微細孔10bの数)により、各領域(γ1,γ2)の開口比率α(α1,α2)を規定する構成であってもよい。
【0063】
・また、上記第2の実施形態では、単位面積当たりの微細孔10の数が領域(γ1,γ2)毎に異なることとした。しかし、これに限らず、ミスト放出面12aにおける微細孔10(10a,10b)の開口径Dout(D1,D2)及び単位面積当たりの微細孔10の数の少なくとも何れかにより、各領域(γ1,γ2)の開口比率α(α1,α2)を規定する構成としてもよい。
【0064】
・上記第3の実施形態では、各微細孔10(10c,10d)の断面形状が領域(γ1,γ2)毎に異なることとした。しかし、これに限らず、各領域(γ1,γ2)が、ともに断面形状の異なる複数種の微細孔10(10c,10d)を有する。そして、その領域内における存在比率(例えば、微細孔10cの数/微細孔10dの数)により、各領域(γ1,γ2)の霧化効率ε(ε1,ε2)を設定する構成であってもよい。
【0065】
・上記第1及び第2の実施形態では、開口比率αにより各領域(γ1,γ2)の霧化効率ε(ε1,ε2)を設定し、第3の実施形態では、各微細孔10(10c,10d)の断面形状により各領域(γ1,γ2)の霧化効率ε(ε1,ε2)を設定する構成とした。しかし、これに限らず、開口比率α及び各微細孔10(10c,10d)の断面形状の少なくとも何れかにより、各領域(γ1,γ2)の霧化効率ε(ε1,ε2)を設定する構成であってもよい。
【0066】
・上記各実施形態では、各微細孔10(10c)は、その内径が指数曲線状に拡開するような断面形状を有することとした。しかし、これに限らず、例えば、その内径が双曲線状に拡開するような断面形状を有するものであってもよい。すなわち、その霧化能力を考慮した場合には、その内周面の傾斜が、液体供給面12b側からミスト放出面12a側に向かって次第に急峻になるような断面形状とすることが望ましい。
【0067】
・上記第3の実施形態では、微細孔10dの断面形状をその内径が直線的に拡開するものとすることにより、内径が指数曲線状に拡開するような断面形状を有する微細孔10cに対し、相対的な霧化能力差を設定することとした。しかし、これに限らず、例えば、ミスト放出面12a側の開口径Doutに対する液体供給面12b側の開口径Dinの比率(Dout/Din)を変えることにより、各微細孔10の霧化能力を調整する構成であってもよい。
【0068】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)ミスト放出面における開口径が異なる複数種の前記微細孔を有すること、を特徴とするミスト発生装置。
【0069】
(ロ)断面形状が異なる複数種の前記微細孔を有すること、を特徴とするミスト発生装置。
上記構成により、霧化能力の異なる複数の領域を設定することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…美容装置、3…ミスト発生装置、10,10a,10b,10c,10d…微細孔、11…霧化部、12…振動板、12a…ミスト放出面、12b…液体供給面、13…圧電振動子、13a…放出側平面、13b…供給側平面、14…孔部、15…圧電体、16a,16b…薄膜電極、22…ノズルパッキン、24…貫通孔、25…突部、27…タンクパッキン、29…タンク、30…無電極部、L…液体、M…ミスト、A…振動振幅、ε,ε1,ε2,ε3…霧化効率、γ1…第1領域、γ2…第2領域、α,α1,α2…開口比率、Din,Dout,D1,D2…開口径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の微細孔が形成された霧化部を有する振動板と、
前記霧化部に液体を供給する供給手段と、
前記振動板を膜振動させる振動発生手段とを備え、
前記振動板の膜振動に基づき前記霧化部に供給された液体を霧化するミスト発生装置であって、
前記霧化部には、前記膜振動の振動振幅に基づいて、霧化効率の異なる複数の領域が設定されること、を特徴とするミスト発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のミスト発生装置において、
前記霧化部は、相対的に前記振動振幅の小さい領域では前記霧化効率が高く、前記振動振幅の大きい領域では前記霧化効率が低くなるように形成されること、
を特徴とするミスト発生装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のミスト発生装置において、
前記各領域のミスト発生量が均等になるように前記各領域の霧化効率が設定されること、を特徴とするミスト発生装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のミスト発生装置において、
ミスト放出面における領域面積に対する前記微細孔の開口面積の比率が前記領域毎に異なること、を特徴とするミスト発生装置。
【請求項5】
請求項4に記載のミスト発生装置において、
前記ミスト放出面における前記微細孔の開口径及び単位面積当たりの前記微細孔の数の少なくとも何れかにより前記開口面積の比率が規定されること、
を特徴とするミスト発生装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のミスト発生装置において、
ミスト放出面における前記微細孔の開口径が前記領域毎に異なること、
を特徴とするミスト発生装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のミスト発生装置において、
単位面積当たりの前記微細孔の数が前記領域毎に異なること、
を特徴とするミスト発生装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか一項に記載のミスト発生装置において、
前記各微細孔の断面形状により前記各領域の前記霧化効率が設定されること、
を特徴とするミスト発生装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか一項に記載のミスト発生装置において、
前記各微細孔の断面形状が前記領域毎に異なること、を特徴とするミスト発生装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れか一項に記載のミスト発生装置において、
前記振動発生手段は、円環板状に形成されるとともに、
前記振動板は、前記振動発生手段の孔部を覆うように、該振動発生手段に貼り合わされること、を特徴とするミスト発生装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項10の何れか一項に記載のミスト発生装置において、
前記霧化部は、中心部が最大となる同心円状の振動振幅分布を有するとともに、前記霧化効率は、前記振動振幅分布に従って設定されること、を特徴とするミスト発生装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項11の何れか一項に記載のミスト発生装置を備えた美容装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−22196(P2013−22196A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159063(P2011−159063)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】