ミスト発生装置及び美容装置
【課題】霧化部の構成を最適化して、より良質なミストを放出することのできるミスト発生装置を提供すること。
【解決手段】ミスト発生装置3は、複数の微細孔が形成された霧化部11を有する振動板12と、この振動板12を膜振動させる振動発生手段としての圧電振動子13とを備える。そして、ミスト放出面12aにおける各微細孔の開口径は、7.5μm〜12.5μmに設定される。
【解決手段】ミスト発生装置3は、複数の微細孔が形成された霧化部11を有する振動板12と、この振動板12を膜振動させる振動発生手段としての圧電振動子13とを備える。そして、ミスト放出面12aにおける各微細孔の開口径は、7.5μm〜12.5μmに設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト発生装置及び美容装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の微細孔が形成された振動板を膜振動させることにより、その各微細孔に供給される液体を霧化してミストを発生させるミスト発生装置がある。
例えば、特許文献1には、円環板状に形成された圧電振動子を振動発生手段として、その孔部を覆うように振動板を貼り合わせる構成が開示されている。すなわち、このような構成を採用することで、効率良く、振動板を膜振動させることができる。そして、その圧電振動子の孔部を覆う部分に複数の微細孔を形成して霧化部とすることにより、高効率且つ安定的にミストを発生させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−207800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、ミスト発生装置では、その放出するミストの質が、使用感に大きな影響を与える。特に、美容装置に用いる場合においては、その粒径が「濡れ性(しっとり感や潤い感等)」を左右し、放出範囲の広さが「使いやすさ」を演出する。そして、これらミストの質を決定する各要素は、その振動板に形成する微細孔、すなわち霧化部の構成に依存することから、その最適化が重要な課題となっている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、霧化部の構成を最適化して、より良質なミストを放出することのできるミスト発生装置及び美容装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、本発明のミスト発生装置は、複数の微細孔が形成された霧化部を有する振動板と、前記霧化部に液体を供給する供給手段と、前記振動板を膜振動させる振動発生手段とを備え、前記振動板の膜振動に基づき前記霧化部に供給された液体を霧化するミスト発生装置であって、ミスト放出面における前記微細孔の開口径が7.5μm〜12.5μmであること、を特徴とする。
【0007】
上記構成のミスト発生装置においては、前記各微細孔の開口径が8μm〜12μmであることが好ましい。
上記構成のミスト発生装置においては、前記霧化部の外径が3.5mm〜4.2mmであること、が好ましい。
【0008】
上記構成のミスト発生装置においては、前記各微細孔の孔間距離が120μm〜135μmであることが好ましい。
上記構成のミスト発生装置においては、前記各微細孔の開口径が10μm〜11μmであることが好ましい。
【0009】
上記構成のミスト発生装置においては、前記振動発生手段は、円環板状に形成された振動子を有し、前記振動板は、前記振動子の孔部を覆うように、該振動子に貼り合わされるものであって、前記振動子の外径は12mm〜18mmであり、前記外径に対する内径の比率は36%〜59%であることが好ましい。
【0010】
本発明の美容装置は、上記何れかに記載のミスト発生装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、霧化部の構成を最適化して、より良質なミストを放出することが可能なミスト発生装置及び美容装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】美容装置の斜視図。
【図2】ミスト発生装置の正面図。
【図3】ミスト発生装置の断面図。
【図4】微細孔の断面図。
【図5】ミスト発生装置の作用説明図。
【図6】ハウジング内におけるミスト発生装置の配置を模式的に示す断面図。
【図7】各微細孔の孔径と発生するミストの粒径との関係を示すグラフ。
【図8】実測データの説明図。
【図9】霧化部の外径が粒径の均一性に与える影響を示すグラフ。
【図10】霧化部の外径とミストの放出範囲(の直径)との関係を示すグラフ。
【図11】各微細孔の孔間距離がミスト放出量に与える影響を示すグラフ。
【図12】(a)〜(d)圧電振動子の外径に対する内径の比率(開口比率)が周波数特性に与える影響を示す波形図。
【図13】(a)〜(d)開口比率を一定とした場合に圧電振動子の大きさが周波数特性に与える影響を示す波形図。
【図14】圧電振動子の外径及び内径の組み合わせとミスト放出量との関係を示すグラフ。
【図15】外径及び内径の組み合わせに付された評価点を示す説明図。
【図16】評価点に基づく圧電振動子の最適形状を示す等高線図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をミスト発生装置が内蔵された携帯型の美容装置に具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の美容装置1は、略円筒状に形成されたハウジング2を備えている。また、ハウジング2内には、美容液や水等の液体を霧化してミストを発生させるミスト発生装置3、及びその制御回路4が収容されている。そして、ハウジング2の周面2aには、その発生させたミストをハウジング2の外部に放出する放出口5が形成されている。
【0014】
具体的には、本実施形態のハウジング2は、一端側(同図中、下側の端部)に他の部分よりも大径に形成された把持部6を備えており、放出口5は、その他端側(同図中、上側の端部近傍)に形成されている。また、ハウジング2の周面2aには、湾曲板状のカバー7が軸方向移動可能に嵌合されている。そして、本実施形態では、このカバー7を摺動させることにより、その放出口5を閉塞し又は外部に開放することが可能になっている。
【0015】
さらに、このカバー7は、ミスト発生装置3のスイッチを兼ねており、ミスト発生装置3は、カバー7が放出口5を開放する位置に移動することにより作動する。そして、そのカバー7が放出口5を閉塞する方向に操作されることにより停止するようになっている。
【0016】
すなわち、美容装置1の使用者は、把持部6を把持し、カバー7を操作することにより施術を行う。そして、放出口5から放出されるミストを顔等の施術部位に当てることにより、肌に潤いを与える等の美容効果が得られるようになっている。
【0017】
図2及び図3に示すように、ミスト発生装置3は、複数の微細孔10が形成された霧化部11を有する振動板12と、この振動板12を膜振動させる振動発生手段としての圧電振動子13とを備えている。
【0018】
詳述すると、本実施形態の圧電振動子13は、円環板状に形成されている。また、振動板12は、円板状に形成されている。なお、振動板12は、圧電振動子13の外径よりも小さく且つ圧電振動子13の孔部14よりも大きな外径を有している。そして、振動板12は、圧電振動子13の孔部14を覆うように、同圧電振動子13に貼り合わされている。
【0019】
具体的には、振動板12は、その中心が一致するように圧電振動子13の一面(供給側平面13b)に接着されている。なお、本実施形態では、両者の接触面形状は、圧電振動子13の孔部14を囲む円環状になっている。そして、各微細孔10が形成された霧化部11は、振動板12における圧電振動子13の孔部14に対応する位置、詳しくは、振動板12及び圧電振動子13と中心が一致する円形状の範囲に設定されている。
【0020】
図3及び図4に示すように、本実施形態の振動板12は、その圧電振動子13に貼り合わされた側の面(各図中、左側の面)がミストを放出するミスト放出面12aとなっている。そして、ミスト放出面12aとは反対側の面(各図中、右側の面)がミストの原料となる液体が供給される液体供給面12bとなっている。
【0021】
すなわち、各微細孔10は、液体供給面12b側の開口径Dinよりもミスト放出面12a側の開口径Doutの方が小さくなるように形成されている。具体的には、各微細孔10は、ミスト放出面12a側から液体供給面12b側に向かって、その内径が指数曲線状に拡開するような断面形状を有している。そして、本実施形態の振動板12は、これにより、その膜振動に基づいて、液体供給面12b側に供給される液体を霧化し、ミスト放出面12a側から放出することが可能になっている。
【0022】
図2及び図3に示すように、本実施形態の圧電振動子13は、円環板状に形成された圧電体15と、この圧電体15の両面15a,15bにそれぞれ形成された一対の薄膜電極16a,16bとを備えてなる。また、これらの各薄膜電極16a,16bには、それぞれ、リード線17a,17bが接続されている。なお、圧電体15の一方の面15aには、他方の面15bに設けられた薄膜電極16bに連続する折り返し部18が形成されており、リード線17bは、この折り返し部18において薄膜電極16bに接続されている。そして、本実施形態の圧電振動子13は、これらのリード線17a,17bを介して制御回路4(図1参照)から入力される電力に基づいて、振動板12を膜振動させるような振動を発生する。
【0023】
具体的には、図5に示すように、圧電振動子13は、薄膜電極16a,16b(図3参照)への電圧印加により生ずる圧電体15の歪みに基づいて、径方向(同図中、上下方向)に拡縮する態様で振動する。そして、振動板12は、圧電振動子13の縮径時には、その液体供給面12b側(同図中、右側)が凸となる態様で湾曲し、圧電振動子13の拡径時には、そのミスト放出面12a側(同図中、左側)が凸となる態様で湾曲する。
【0024】
本実施形態のミスト発生装置3は、この一連の動きが高速で繰り返されることにより生ずる振動板12の膜振動(いわゆる超音波振動)に基づいて、その霧化部11、詳しくは、各微細孔10に供給された液体を霧化する。そして、その発生したミストMをミスト放出面12a側に放出する構成になっている。
【0025】
さらに詳述すると、図6に示すように、本実施形態の美容装置1において、ハウジング2には、その内部空間と放出口5とを接続するノズル20が設けられている。また、ノズル20のハウジング内開口部21には、保持部材としてのノズルパッキン22が固定されている。そして、ミスト発生装置3は、その圧電振動子13の一面(放出側平面13a、ミスト放出面12a側の面)が、このノズルパッキン22に当接する態様で、ハウジング2内に収容されている。
【0026】
具体的には、ノズルパッキン22は、ハウジング内開口部21の連通孔23に対応する貫通孔24を有しており、ミスト発生装置3は、その霧化部11が貫通孔24を介して連通孔23に臨む位置に配置されている。また、ノズルパッキン22におけるミスト発生装置3側の面(同図中、右側の面)には、その貫通孔24の周縁を包囲するように円環状の突部25が形成されている。そして、ノズルパッキン22は、その突部25が圧電振動子13の放出側平面13aに密着することで、ノズル20とミスト発生装置3との間、詳しくは、ハウジング内開口部21の連通孔23と圧電振動子13の孔部14との間を液密に接続する構成になっている。
【0027】
一方、圧電振動子13における放出側平面13aとは反対側の面(供給側平面13b、液体供給面12b側の面)には、タンクパッキン27が取着されている。また、タンクパッキン27には、振動板12の液体供給面12bに臨む位置に開口する略円筒状の接続部28が形成されている。そして、この接続部28には、供給手段としてのタンク29が液密に取着されている。
【0028】
すなわち、振動板12の液体供給面12bには、タンク29内に貯留された液体Lが供給される。なお、本実施形態では、圧電振動子13は、ノズルパッキン22及びタンクパッキン27とともに、ノズル20のハウジング内開口部21側に押し付けられる態様で、図示しない固定部材によりハウジング2に固定されている。そして、圧電振動子13の供給側平面13b及び振動板12の液体供給面12bとタンクパッキン27とが密着することにより、その液体供給面12bとタンク29とが液密に接続されるようになっている。
【0029】
ここで、図2及び図6に示すように、本実施形態では、圧電振動子13の放出側平面13aには、その孔部14の周縁を囲むように、薄膜電極16aの存在しない無電極部30が形成されている。そして、ノズルパッキン22(の突部25)は、この無電極部30に当接するようになっている。
【0030】
すなわち、振動板12の液体供給面12bに液体Lが接触し続けることで、その液体Lが各微細孔10を介してミスト放出面12aに滲み出すことがある。そして、その滲み出した液体Lが放出側平面13aの薄膜電極16aに付着することで、ショートやマイグレーション等の発生要因となるおそれがある。
【0031】
しかしながら、上記のように、ノズルパッキン22に接触する部分を無電極部30とする。つまり、シール部材としてのノズルパッキン22により、圧電振動子13の孔部14と薄膜電極16aとを液密に区画することで、ミスト放出面12aに滲み出した液体Lが薄膜電極16aに付着することを防止することができる。そして、本実施形態の美容装置1では、これにより、高い信頼性を確保することが可能になっている。
【0032】
(霧化部の最適設計)
上述のように、ミスト発生装置3が放出するミストの質は、その霧化部11の構成に依存する。この点を踏まえ、本願出願人は、霧化部11の各構成要素が、その放出されるミストの質に与える影響について検証を行なった。なお、本実施形態では、圧電振動子13の厚み(T)は0.5mm、振動板12の厚みは30μmとなっている。
【0033】
図7は、霧化部11に形成された各微細孔10の孔径、すなわちミスト放出面12aにおける開口径Dout(の平均値)と、その発生するミストの粒径PDとの関係を示すグラフであり、図8は、その実測データである。そして、図7中の式は、両者の相関を示す近似曲線の式である。
【0034】
ミスト発生装置3が放出するミストを顔等の施術部位に当てる場合、いわゆる化粧崩れをおこすことなく、潤い感やしっとり感を与える最適な濡れ性を実現するためには、そのミストの粒径PDを10μm〜20μmにすることが望ましい。そして、図7に示すように、この最適な粒径範囲に対応する各微細孔10の孔径(開口径Dout)は、8μm〜12μmである。したがって、各微細孔10の孔径は、8μm〜12μmとすることが望ましい。
【0035】
また、両者の相関を示す近似曲線を下方になぞることで、各微細孔10の孔径が7.5μm程度でも、10μmに近いミストの粒径PDの値が得られることが分かる(図8参照、実測データNo.10)。そして、美容装置1としての使用状態における施術部位との距離のバラつきを考慮し、この程度の誤差(孔径:0.5μm)を許容するとすれば、各微細孔10の孔径(開口径Dout)の取りうる範囲は、7.5μm〜12.5μmとなる。
【0036】
さらに、最も適切な粒径PDが、15μm(10μm〜20μmの中間値)であるとすれば、これに対応する各微細孔10の孔径の最適範囲は、10μm〜11μmであると推測される。なお、これは、両者の相関を示す近似曲線において、その粒径PDが15μmを示すときの値(孔径=約10.5μm)と、その近傍の実測データ(図8参照、実測データNo.42)における値に基づくものである。
【0037】
そして、本実施形態のミスト発生装置3では、以上の検証を踏まえ、その霧化部11における各微細孔10の孔径(開口径Dout)の値は、8μm〜12μmに設定されている。
【0038】
また、本願出願人は、霧化部11の外径(霧化部径)D_αが粒径PDの均一性に与える影響、及び霧化部11の外径(霧化部径)D_αとミストの放出範囲(の直径)との関係について検証を行った。
【0039】
図9に示すように、放出されるミストの粒径PDは、霧化部11の外径D_αが小さい程、その均一性が高くなる傾向がある。すなわち、霧化部11の外径D_αを拡大することで、その中心部と周縁部との間の振動振幅差もまた大きくなる。そして、これにより霧化が不安定化することで、その放出されるミストの粒径PDにバラつきが生ずることになる。
【0040】
しかしながら、図10に示すように、ミストの放出範囲(の直径)は、霧化部11の外径D_αに略比例する。このため、その粒径PDの均一性を重視して霧化部11の外径D_αを小さな値に設定することで、美容装置1として施術に必要な放出範囲が確保できなくなるおそれがある。
【0041】
ここで、本実施形態では、使用状態における美容装置1の放出口5(図1参照)と施術部位との距離は、約15cm程度と推定されており、図10に示されたミスト放出範囲の直径もまた、15cm離れた位置の値となっている。また、その施術に適したミスト放出範囲の直径は、約5cm程度と推定されている。そして、本実施形態では、この施術に適したミスト放出範囲の直径(5cm)に対応する値(3.5mm)が、霧化部11の外径D_αに関する最適値として選択されている。
【0042】
なお、美容装置1としての利用を考慮した場合、そのミスト放出範囲の直径は、最適値である5cmより多少広くともよい。したがって、図9及び図10に基づいて、その霧化部11の外径D_αが取りうる範囲は、3.5mm〜4.2mmとすることができる。
【0043】
さらに、本願出願人は、図11に示すように、各微細孔10の孔間距離X(中心間距離)がミスト放出量に与える影響についても検証を行った。
すなわち、孔間距離Xが大きい場合には、単位面積当たりの開口面積が減少することで、その霧化能力が低下する。そして、孔間距離Xが小さい場合には、各微細孔10から放出されたミストが結合する現象が発生する。
【0044】
この点、図11に示すように、各微細孔10の孔間距離Xが135μmである場合には、そのミスト放出量が安定する。そして、本実施形態では、この検証結果に基づいて、各微細孔10の孔間距離Xは、135μmに設定されている。
【0045】
なお、図11に示すように、孔間距離Xが最適値である135μmから乖離することにより生ずる影響は、その値が135μmよりも小さい値である方が少ない。したがって、同図に基づいて、その孔間距離Xの取りうる範囲は、120μm〜135μmとすることができる。
【0046】
本実施形態のミスト発生装置3では、このような検証に基づいて、その霧化部11の最適化が図られている。そして、これにより、より良質なミストを放出することが可能となっている。
【0047】
(圧電振動子の最適設計)
また、振動発生手段を構成する振動子の周波数特性は、その形状に依存する。この点を踏まえ、本願出願人は、その環状板状をなす圧電振動子13の形状、すなわち、外径OD及び内径ID(図3参照)がミスト放出の安定性に与える影響について検証を行なった。
【0048】
図12(a)〜(d)は、圧電振動子13の外径ODに対する内径IDの比率(開口比率)が当該圧電振動子13の周波数特性に与える影響を示している。そして、図13(a)〜(d)は、その開口比率(ID/OD)を一定とした場合に圧電振動子13の大きさが周波数特性に与える影響を示している。
【0049】
なお、これらの各図において「Z」はインピーダンス、「P」は位相を示している。そして、周知のように、その「共振点の数(下側のピーク)」及び「位相の反転」の少ない方が、より周波数特性が良好であることを示している。
【0050】
すなわち、図12(a)〜(d)に示すように、圧電振動子13は、その開口比率(ID/OD)が大きいほど、その周波数特性が良好となる。そして、図13(a)〜(d)に示すように、その開口比率(ID/OD)を一定とした場合には、その大きさ(外径OD)が大きいほど、より良好な周波数特性を示す傾向がある。
【0051】
しかしながら、開口比率(ID/OD)が大きい、或いは外径ODが大きいということは、その内径IDもまた大きいということである。そして、これにより、振動板12が大型化することで、図5に示されるような膜振動以外の振動モード、すなわち霧化に適さない振動モードが発生する可能性がある。
【0052】
これを裏付けるように、図12(a)〜(d)の比較例では、図12(c)の条件(OD=16mm、ID=7mm)において、その霧化が最も安定した。そして、その内径IDの拡大(図12(b)の条件:ID=8mm、及び図12(a)の条件:ID=9mm)に従って、その安定性が低下する傾向が確認された。なお、図12(d)の条件(OD=15mm、ID=5mm)でも、その霧化に安定性の低下が見られたが、これは、その周波数特性の低下によるものと考えられる。
【0053】
また、図14は、圧電振動子13の外径OD及び内径IDの組み合わせとミスト放出との関係を示すものであり、そのミストの放出量(霧化量)は、概ねその開口比率(ID/OD)が50%以下である場合に安定する。そして、圧電振動子13の外径ODが14mm〜16mmにある場合に、その霧化が最も安定する傾向が確認された。
【0054】
これらの各図に示される検証を踏まえ、本願出願人は、その外径OD及び内径IDの組み合わせについて、図15に示されるような評価点を付与することとした。
詳述すると、「ミストの放出が確認された場合」「その霧化が安定的である場合」「周波数特性に優れている場合」に、それぞれ「1点」ずつを付与する。ただし、周波数特性に優れている場合であっても霧化が不安定である場合には、その評価点を「0点」とした。そして、その評価の結果を図16に示すような等高線図に表すことで、最適な振動子の形状を考察した。
【0055】
すなわち、図16中、領域β1は、圧電振動子13としての最適な形状を示す外径OD及び内径IDの範囲に対応し、領域β2は、その安定的なミスト放出を考慮した上で、その外径OD及び内径IDが取り得る範囲に対応する。したがって、圧電振動子13の開口比率(ID/OD)は、36%〜59%であることが好ましく、さらに40%〜54%であることがより好ましい。また、その霧化安定性を重視すれば、その開口比率(ID/OD)は、50%以下に設定することが望ましく、圧電振動子13の外径ODは、14mm〜16mmであることが望ましい。そして、圧電振動子13の内径IDは、6mm〜8mmであることが望ましい。
【0056】
以上の考察を踏まえ、本実施形態のミスト発生装置3では、圧電振動子13の外径ODは16mm、その内径は7mmに設定されている。そして、これにより、安定的にミストを放出することができるとともに、その良好な周波数特性に基づいて、制御性に優れたミスト発生装置3を形成することが可能となっている。
【0057】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ミスト発生装置3は、複数の微細孔10が形成された霧化部11を有する振動板12と、この振動板12を膜振動させる振動発生手段としての圧電振動子13とを備える。そして、ミスト放出面12aにおける各微細孔10の開口径Doutは、7.5μm〜12.5μmに設定される。
【0058】
上記構成によれば、いわゆる化粧崩れをおこすことなく、潤い感やしっとり感を与える最適なミスト粒径(10μm〜20μm)を実現して、良質なミストを放出することができる。さらに、この各微細孔10の開口径Doutを8μm〜12μmに設定することで、より良質なミストを放出することができる。そして、その開口径Doutを10μm〜11μmに設定することで、より一層、良質なミストを放出することができる。
【0059】
(2)霧化部11の外径D_αは、3.5mmに設定される。これにより、その使用状態におけるミスト放出範囲の直径を最適な値にすることができる。
(3)各微細孔10の孔間距離Xは、135μmに設定される。すなわち、孔間距離Xが大きい場合には、単位面積当たりの開口面積が減少することで、その霧化能力が低下する。そして、孔間距離Xが小さい場合には、各微細孔10から放出されたミストが結合する現象が発生する。しかしながら、上記構成によれば、安定的なミスト放出を実現することができる。
【0060】
(4)振動板12は、円環板状に形成された圧電振動子13の孔部14を覆うように、該圧電振動子13に貼り合わされる。そして、圧電振動子13の外径ODは、12mm〜18mmに設定されるとともに、その外径ODに対する内径IDの比率は、36%〜59%に設定される。
【0061】
上記構成によれば、安定的にミストを放出することができるとともに、その良好な周波数特性に基づいて、制御性に優れたミスト発生装置3を形成することができる。その結果、より良質なミストを放出することができるようになる。
【0062】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、本発明をミスト発生装置3が内蔵された携帯型の美容装置1に具体化した。しかし、これに限らず、本発明は、据え置き型の美容装置、或いは美容装置以外に用いられるミスト発生装置に適用してもよい。
【0063】
・上記各実施形態では、ミスト発生装置3は、円環板状に形成された圧電振動子13の孔部14を覆うように円板状の振動板12を貼り合わせることにより形成されることとした。しかし、圧電振動子及び振動板の形状、並びに両者の接触面形状は、必ずしもこれに限るものではない。例えば、筒状の圧電振動子や矩形状の振動板を用いてもよく、また、圧電振動子が複数の孔を有するものであってもよい。ただし、効率良く振動板を膜振動させる観点では、上記各実施形態に示される圧電振動子及び振動板の形状が好ましい。
【0064】
・上記実施形態では、圧電振動子13の厚み(T)は0.5mm、振動板12の厚みは30μmとしたが、これらの値は、適宜変更してもよい。
・また、特許文献1に記載されているように支持部材(支持板)で振動板12を圧電振動子13に挟み込む構成としてもよい。これにより、その周波数特性を改善して霧化特性を安定化することができる。なお、支持部材の素材としては、例えば、ステンレス(SUSやNi鋼等)等を用いるとよい。
【符号の説明】
【0065】
1…美容装置、3…ミスト発生装置、10…微細孔、Dout…開口径、X…孔間距離、11…霧化部、D_α…外径、12…振動板、12a…ミスト放出面、12b…液体供給面、13…圧電振動子、13a…放出側平面、13b…供給側平面、OD…外径、ID…内径、14…孔部、15…圧電体、15a,15b…面、16a,16b…薄膜電極、22…ノズルパッキン、24…貫通孔、25…突部、27…タンクパッキン、29…タンク、30…無電極部、L…液体、M…ミスト、PD…粒径。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト発生装置及び美容装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の微細孔が形成された振動板を膜振動させることにより、その各微細孔に供給される液体を霧化してミストを発生させるミスト発生装置がある。
例えば、特許文献1には、円環板状に形成された圧電振動子を振動発生手段として、その孔部を覆うように振動板を貼り合わせる構成が開示されている。すなわち、このような構成を採用することで、効率良く、振動板を膜振動させることができる。そして、その圧電振動子の孔部を覆う部分に複数の微細孔を形成して霧化部とすることにより、高効率且つ安定的にミストを発生させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−207800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、ミスト発生装置では、その放出するミストの質が、使用感に大きな影響を与える。特に、美容装置に用いる場合においては、その粒径が「濡れ性(しっとり感や潤い感等)」を左右し、放出範囲の広さが「使いやすさ」を演出する。そして、これらミストの質を決定する各要素は、その振動板に形成する微細孔、すなわち霧化部の構成に依存することから、その最適化が重要な課題となっている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、霧化部の構成を最適化して、より良質なミストを放出することのできるミスト発生装置及び美容装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、本発明のミスト発生装置は、複数の微細孔が形成された霧化部を有する振動板と、前記霧化部に液体を供給する供給手段と、前記振動板を膜振動させる振動発生手段とを備え、前記振動板の膜振動に基づき前記霧化部に供給された液体を霧化するミスト発生装置であって、ミスト放出面における前記微細孔の開口径が7.5μm〜12.5μmであること、を特徴とする。
【0007】
上記構成のミスト発生装置においては、前記各微細孔の開口径が8μm〜12μmであることが好ましい。
上記構成のミスト発生装置においては、前記霧化部の外径が3.5mm〜4.2mmであること、が好ましい。
【0008】
上記構成のミスト発生装置においては、前記各微細孔の孔間距離が120μm〜135μmであることが好ましい。
上記構成のミスト発生装置においては、前記各微細孔の開口径が10μm〜11μmであることが好ましい。
【0009】
上記構成のミスト発生装置においては、前記振動発生手段は、円環板状に形成された振動子を有し、前記振動板は、前記振動子の孔部を覆うように、該振動子に貼り合わされるものであって、前記振動子の外径は12mm〜18mmであり、前記外径に対する内径の比率は36%〜59%であることが好ましい。
【0010】
本発明の美容装置は、上記何れかに記載のミスト発生装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、霧化部の構成を最適化して、より良質なミストを放出することが可能なミスト発生装置及び美容装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】美容装置の斜視図。
【図2】ミスト発生装置の正面図。
【図3】ミスト発生装置の断面図。
【図4】微細孔の断面図。
【図5】ミスト発生装置の作用説明図。
【図6】ハウジング内におけるミスト発生装置の配置を模式的に示す断面図。
【図7】各微細孔の孔径と発生するミストの粒径との関係を示すグラフ。
【図8】実測データの説明図。
【図9】霧化部の外径が粒径の均一性に与える影響を示すグラフ。
【図10】霧化部の外径とミストの放出範囲(の直径)との関係を示すグラフ。
【図11】各微細孔の孔間距離がミスト放出量に与える影響を示すグラフ。
【図12】(a)〜(d)圧電振動子の外径に対する内径の比率(開口比率)が周波数特性に与える影響を示す波形図。
【図13】(a)〜(d)開口比率を一定とした場合に圧電振動子の大きさが周波数特性に与える影響を示す波形図。
【図14】圧電振動子の外径及び内径の組み合わせとミスト放出量との関係を示すグラフ。
【図15】外径及び内径の組み合わせに付された評価点を示す説明図。
【図16】評価点に基づく圧電振動子の最適形状を示す等高線図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をミスト発生装置が内蔵された携帯型の美容装置に具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の美容装置1は、略円筒状に形成されたハウジング2を備えている。また、ハウジング2内には、美容液や水等の液体を霧化してミストを発生させるミスト発生装置3、及びその制御回路4が収容されている。そして、ハウジング2の周面2aには、その発生させたミストをハウジング2の外部に放出する放出口5が形成されている。
【0014】
具体的には、本実施形態のハウジング2は、一端側(同図中、下側の端部)に他の部分よりも大径に形成された把持部6を備えており、放出口5は、その他端側(同図中、上側の端部近傍)に形成されている。また、ハウジング2の周面2aには、湾曲板状のカバー7が軸方向移動可能に嵌合されている。そして、本実施形態では、このカバー7を摺動させることにより、その放出口5を閉塞し又は外部に開放することが可能になっている。
【0015】
さらに、このカバー7は、ミスト発生装置3のスイッチを兼ねており、ミスト発生装置3は、カバー7が放出口5を開放する位置に移動することにより作動する。そして、そのカバー7が放出口5を閉塞する方向に操作されることにより停止するようになっている。
【0016】
すなわち、美容装置1の使用者は、把持部6を把持し、カバー7を操作することにより施術を行う。そして、放出口5から放出されるミストを顔等の施術部位に当てることにより、肌に潤いを与える等の美容効果が得られるようになっている。
【0017】
図2及び図3に示すように、ミスト発生装置3は、複数の微細孔10が形成された霧化部11を有する振動板12と、この振動板12を膜振動させる振動発生手段としての圧電振動子13とを備えている。
【0018】
詳述すると、本実施形態の圧電振動子13は、円環板状に形成されている。また、振動板12は、円板状に形成されている。なお、振動板12は、圧電振動子13の外径よりも小さく且つ圧電振動子13の孔部14よりも大きな外径を有している。そして、振動板12は、圧電振動子13の孔部14を覆うように、同圧電振動子13に貼り合わされている。
【0019】
具体的には、振動板12は、その中心が一致するように圧電振動子13の一面(供給側平面13b)に接着されている。なお、本実施形態では、両者の接触面形状は、圧電振動子13の孔部14を囲む円環状になっている。そして、各微細孔10が形成された霧化部11は、振動板12における圧電振動子13の孔部14に対応する位置、詳しくは、振動板12及び圧電振動子13と中心が一致する円形状の範囲に設定されている。
【0020】
図3及び図4に示すように、本実施形態の振動板12は、その圧電振動子13に貼り合わされた側の面(各図中、左側の面)がミストを放出するミスト放出面12aとなっている。そして、ミスト放出面12aとは反対側の面(各図中、右側の面)がミストの原料となる液体が供給される液体供給面12bとなっている。
【0021】
すなわち、各微細孔10は、液体供給面12b側の開口径Dinよりもミスト放出面12a側の開口径Doutの方が小さくなるように形成されている。具体的には、各微細孔10は、ミスト放出面12a側から液体供給面12b側に向かって、その内径が指数曲線状に拡開するような断面形状を有している。そして、本実施形態の振動板12は、これにより、その膜振動に基づいて、液体供給面12b側に供給される液体を霧化し、ミスト放出面12a側から放出することが可能になっている。
【0022】
図2及び図3に示すように、本実施形態の圧電振動子13は、円環板状に形成された圧電体15と、この圧電体15の両面15a,15bにそれぞれ形成された一対の薄膜電極16a,16bとを備えてなる。また、これらの各薄膜電極16a,16bには、それぞれ、リード線17a,17bが接続されている。なお、圧電体15の一方の面15aには、他方の面15bに設けられた薄膜電極16bに連続する折り返し部18が形成されており、リード線17bは、この折り返し部18において薄膜電極16bに接続されている。そして、本実施形態の圧電振動子13は、これらのリード線17a,17bを介して制御回路4(図1参照)から入力される電力に基づいて、振動板12を膜振動させるような振動を発生する。
【0023】
具体的には、図5に示すように、圧電振動子13は、薄膜電極16a,16b(図3参照)への電圧印加により生ずる圧電体15の歪みに基づいて、径方向(同図中、上下方向)に拡縮する態様で振動する。そして、振動板12は、圧電振動子13の縮径時には、その液体供給面12b側(同図中、右側)が凸となる態様で湾曲し、圧電振動子13の拡径時には、そのミスト放出面12a側(同図中、左側)が凸となる態様で湾曲する。
【0024】
本実施形態のミスト発生装置3は、この一連の動きが高速で繰り返されることにより生ずる振動板12の膜振動(いわゆる超音波振動)に基づいて、その霧化部11、詳しくは、各微細孔10に供給された液体を霧化する。そして、その発生したミストMをミスト放出面12a側に放出する構成になっている。
【0025】
さらに詳述すると、図6に示すように、本実施形態の美容装置1において、ハウジング2には、その内部空間と放出口5とを接続するノズル20が設けられている。また、ノズル20のハウジング内開口部21には、保持部材としてのノズルパッキン22が固定されている。そして、ミスト発生装置3は、その圧電振動子13の一面(放出側平面13a、ミスト放出面12a側の面)が、このノズルパッキン22に当接する態様で、ハウジング2内に収容されている。
【0026】
具体的には、ノズルパッキン22は、ハウジング内開口部21の連通孔23に対応する貫通孔24を有しており、ミスト発生装置3は、その霧化部11が貫通孔24を介して連通孔23に臨む位置に配置されている。また、ノズルパッキン22におけるミスト発生装置3側の面(同図中、右側の面)には、その貫通孔24の周縁を包囲するように円環状の突部25が形成されている。そして、ノズルパッキン22は、その突部25が圧電振動子13の放出側平面13aに密着することで、ノズル20とミスト発生装置3との間、詳しくは、ハウジング内開口部21の連通孔23と圧電振動子13の孔部14との間を液密に接続する構成になっている。
【0027】
一方、圧電振動子13における放出側平面13aとは反対側の面(供給側平面13b、液体供給面12b側の面)には、タンクパッキン27が取着されている。また、タンクパッキン27には、振動板12の液体供給面12bに臨む位置に開口する略円筒状の接続部28が形成されている。そして、この接続部28には、供給手段としてのタンク29が液密に取着されている。
【0028】
すなわち、振動板12の液体供給面12bには、タンク29内に貯留された液体Lが供給される。なお、本実施形態では、圧電振動子13は、ノズルパッキン22及びタンクパッキン27とともに、ノズル20のハウジング内開口部21側に押し付けられる態様で、図示しない固定部材によりハウジング2に固定されている。そして、圧電振動子13の供給側平面13b及び振動板12の液体供給面12bとタンクパッキン27とが密着することにより、その液体供給面12bとタンク29とが液密に接続されるようになっている。
【0029】
ここで、図2及び図6に示すように、本実施形態では、圧電振動子13の放出側平面13aには、その孔部14の周縁を囲むように、薄膜電極16aの存在しない無電極部30が形成されている。そして、ノズルパッキン22(の突部25)は、この無電極部30に当接するようになっている。
【0030】
すなわち、振動板12の液体供給面12bに液体Lが接触し続けることで、その液体Lが各微細孔10を介してミスト放出面12aに滲み出すことがある。そして、その滲み出した液体Lが放出側平面13aの薄膜電極16aに付着することで、ショートやマイグレーション等の発生要因となるおそれがある。
【0031】
しかしながら、上記のように、ノズルパッキン22に接触する部分を無電極部30とする。つまり、シール部材としてのノズルパッキン22により、圧電振動子13の孔部14と薄膜電極16aとを液密に区画することで、ミスト放出面12aに滲み出した液体Lが薄膜電極16aに付着することを防止することができる。そして、本実施形態の美容装置1では、これにより、高い信頼性を確保することが可能になっている。
【0032】
(霧化部の最適設計)
上述のように、ミスト発生装置3が放出するミストの質は、その霧化部11の構成に依存する。この点を踏まえ、本願出願人は、霧化部11の各構成要素が、その放出されるミストの質に与える影響について検証を行なった。なお、本実施形態では、圧電振動子13の厚み(T)は0.5mm、振動板12の厚みは30μmとなっている。
【0033】
図7は、霧化部11に形成された各微細孔10の孔径、すなわちミスト放出面12aにおける開口径Dout(の平均値)と、その発生するミストの粒径PDとの関係を示すグラフであり、図8は、その実測データである。そして、図7中の式は、両者の相関を示す近似曲線の式である。
【0034】
ミスト発生装置3が放出するミストを顔等の施術部位に当てる場合、いわゆる化粧崩れをおこすことなく、潤い感やしっとり感を与える最適な濡れ性を実現するためには、そのミストの粒径PDを10μm〜20μmにすることが望ましい。そして、図7に示すように、この最適な粒径範囲に対応する各微細孔10の孔径(開口径Dout)は、8μm〜12μmである。したがって、各微細孔10の孔径は、8μm〜12μmとすることが望ましい。
【0035】
また、両者の相関を示す近似曲線を下方になぞることで、各微細孔10の孔径が7.5μm程度でも、10μmに近いミストの粒径PDの値が得られることが分かる(図8参照、実測データNo.10)。そして、美容装置1としての使用状態における施術部位との距離のバラつきを考慮し、この程度の誤差(孔径:0.5μm)を許容するとすれば、各微細孔10の孔径(開口径Dout)の取りうる範囲は、7.5μm〜12.5μmとなる。
【0036】
さらに、最も適切な粒径PDが、15μm(10μm〜20μmの中間値)であるとすれば、これに対応する各微細孔10の孔径の最適範囲は、10μm〜11μmであると推測される。なお、これは、両者の相関を示す近似曲線において、その粒径PDが15μmを示すときの値(孔径=約10.5μm)と、その近傍の実測データ(図8参照、実測データNo.42)における値に基づくものである。
【0037】
そして、本実施形態のミスト発生装置3では、以上の検証を踏まえ、その霧化部11における各微細孔10の孔径(開口径Dout)の値は、8μm〜12μmに設定されている。
【0038】
また、本願出願人は、霧化部11の外径(霧化部径)D_αが粒径PDの均一性に与える影響、及び霧化部11の外径(霧化部径)D_αとミストの放出範囲(の直径)との関係について検証を行った。
【0039】
図9に示すように、放出されるミストの粒径PDは、霧化部11の外径D_αが小さい程、その均一性が高くなる傾向がある。すなわち、霧化部11の外径D_αを拡大することで、その中心部と周縁部との間の振動振幅差もまた大きくなる。そして、これにより霧化が不安定化することで、その放出されるミストの粒径PDにバラつきが生ずることになる。
【0040】
しかしながら、図10に示すように、ミストの放出範囲(の直径)は、霧化部11の外径D_αに略比例する。このため、その粒径PDの均一性を重視して霧化部11の外径D_αを小さな値に設定することで、美容装置1として施術に必要な放出範囲が確保できなくなるおそれがある。
【0041】
ここで、本実施形態では、使用状態における美容装置1の放出口5(図1参照)と施術部位との距離は、約15cm程度と推定されており、図10に示されたミスト放出範囲の直径もまた、15cm離れた位置の値となっている。また、その施術に適したミスト放出範囲の直径は、約5cm程度と推定されている。そして、本実施形態では、この施術に適したミスト放出範囲の直径(5cm)に対応する値(3.5mm)が、霧化部11の外径D_αに関する最適値として選択されている。
【0042】
なお、美容装置1としての利用を考慮した場合、そのミスト放出範囲の直径は、最適値である5cmより多少広くともよい。したがって、図9及び図10に基づいて、その霧化部11の外径D_αが取りうる範囲は、3.5mm〜4.2mmとすることができる。
【0043】
さらに、本願出願人は、図11に示すように、各微細孔10の孔間距離X(中心間距離)がミスト放出量に与える影響についても検証を行った。
すなわち、孔間距離Xが大きい場合には、単位面積当たりの開口面積が減少することで、その霧化能力が低下する。そして、孔間距離Xが小さい場合には、各微細孔10から放出されたミストが結合する現象が発生する。
【0044】
この点、図11に示すように、各微細孔10の孔間距離Xが135μmである場合には、そのミスト放出量が安定する。そして、本実施形態では、この検証結果に基づいて、各微細孔10の孔間距離Xは、135μmに設定されている。
【0045】
なお、図11に示すように、孔間距離Xが最適値である135μmから乖離することにより生ずる影響は、その値が135μmよりも小さい値である方が少ない。したがって、同図に基づいて、その孔間距離Xの取りうる範囲は、120μm〜135μmとすることができる。
【0046】
本実施形態のミスト発生装置3では、このような検証に基づいて、その霧化部11の最適化が図られている。そして、これにより、より良質なミストを放出することが可能となっている。
【0047】
(圧電振動子の最適設計)
また、振動発生手段を構成する振動子の周波数特性は、その形状に依存する。この点を踏まえ、本願出願人は、その環状板状をなす圧電振動子13の形状、すなわち、外径OD及び内径ID(図3参照)がミスト放出の安定性に与える影響について検証を行なった。
【0048】
図12(a)〜(d)は、圧電振動子13の外径ODに対する内径IDの比率(開口比率)が当該圧電振動子13の周波数特性に与える影響を示している。そして、図13(a)〜(d)は、その開口比率(ID/OD)を一定とした場合に圧電振動子13の大きさが周波数特性に与える影響を示している。
【0049】
なお、これらの各図において「Z」はインピーダンス、「P」は位相を示している。そして、周知のように、その「共振点の数(下側のピーク)」及び「位相の反転」の少ない方が、より周波数特性が良好であることを示している。
【0050】
すなわち、図12(a)〜(d)に示すように、圧電振動子13は、その開口比率(ID/OD)が大きいほど、その周波数特性が良好となる。そして、図13(a)〜(d)に示すように、その開口比率(ID/OD)を一定とした場合には、その大きさ(外径OD)が大きいほど、より良好な周波数特性を示す傾向がある。
【0051】
しかしながら、開口比率(ID/OD)が大きい、或いは外径ODが大きいということは、その内径IDもまた大きいということである。そして、これにより、振動板12が大型化することで、図5に示されるような膜振動以外の振動モード、すなわち霧化に適さない振動モードが発生する可能性がある。
【0052】
これを裏付けるように、図12(a)〜(d)の比較例では、図12(c)の条件(OD=16mm、ID=7mm)において、その霧化が最も安定した。そして、その内径IDの拡大(図12(b)の条件:ID=8mm、及び図12(a)の条件:ID=9mm)に従って、その安定性が低下する傾向が確認された。なお、図12(d)の条件(OD=15mm、ID=5mm)でも、その霧化に安定性の低下が見られたが、これは、その周波数特性の低下によるものと考えられる。
【0053】
また、図14は、圧電振動子13の外径OD及び内径IDの組み合わせとミスト放出との関係を示すものであり、そのミストの放出量(霧化量)は、概ねその開口比率(ID/OD)が50%以下である場合に安定する。そして、圧電振動子13の外径ODが14mm〜16mmにある場合に、その霧化が最も安定する傾向が確認された。
【0054】
これらの各図に示される検証を踏まえ、本願出願人は、その外径OD及び内径IDの組み合わせについて、図15に示されるような評価点を付与することとした。
詳述すると、「ミストの放出が確認された場合」「その霧化が安定的である場合」「周波数特性に優れている場合」に、それぞれ「1点」ずつを付与する。ただし、周波数特性に優れている場合であっても霧化が不安定である場合には、その評価点を「0点」とした。そして、その評価の結果を図16に示すような等高線図に表すことで、最適な振動子の形状を考察した。
【0055】
すなわち、図16中、領域β1は、圧電振動子13としての最適な形状を示す外径OD及び内径IDの範囲に対応し、領域β2は、その安定的なミスト放出を考慮した上で、その外径OD及び内径IDが取り得る範囲に対応する。したがって、圧電振動子13の開口比率(ID/OD)は、36%〜59%であることが好ましく、さらに40%〜54%であることがより好ましい。また、その霧化安定性を重視すれば、その開口比率(ID/OD)は、50%以下に設定することが望ましく、圧電振動子13の外径ODは、14mm〜16mmであることが望ましい。そして、圧電振動子13の内径IDは、6mm〜8mmであることが望ましい。
【0056】
以上の考察を踏まえ、本実施形態のミスト発生装置3では、圧電振動子13の外径ODは16mm、その内径は7mmに設定されている。そして、これにより、安定的にミストを放出することができるとともに、その良好な周波数特性に基づいて、制御性に優れたミスト発生装置3を形成することが可能となっている。
【0057】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ミスト発生装置3は、複数の微細孔10が形成された霧化部11を有する振動板12と、この振動板12を膜振動させる振動発生手段としての圧電振動子13とを備える。そして、ミスト放出面12aにおける各微細孔10の開口径Doutは、7.5μm〜12.5μmに設定される。
【0058】
上記構成によれば、いわゆる化粧崩れをおこすことなく、潤い感やしっとり感を与える最適なミスト粒径(10μm〜20μm)を実現して、良質なミストを放出することができる。さらに、この各微細孔10の開口径Doutを8μm〜12μmに設定することで、より良質なミストを放出することができる。そして、その開口径Doutを10μm〜11μmに設定することで、より一層、良質なミストを放出することができる。
【0059】
(2)霧化部11の外径D_αは、3.5mmに設定される。これにより、その使用状態におけるミスト放出範囲の直径を最適な値にすることができる。
(3)各微細孔10の孔間距離Xは、135μmに設定される。すなわち、孔間距離Xが大きい場合には、単位面積当たりの開口面積が減少することで、その霧化能力が低下する。そして、孔間距離Xが小さい場合には、各微細孔10から放出されたミストが結合する現象が発生する。しかしながら、上記構成によれば、安定的なミスト放出を実現することができる。
【0060】
(4)振動板12は、円環板状に形成された圧電振動子13の孔部14を覆うように、該圧電振動子13に貼り合わされる。そして、圧電振動子13の外径ODは、12mm〜18mmに設定されるとともに、その外径ODに対する内径IDの比率は、36%〜59%に設定される。
【0061】
上記構成によれば、安定的にミストを放出することができるとともに、その良好な周波数特性に基づいて、制御性に優れたミスト発生装置3を形成することができる。その結果、より良質なミストを放出することができるようになる。
【0062】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、本発明をミスト発生装置3が内蔵された携帯型の美容装置1に具体化した。しかし、これに限らず、本発明は、据え置き型の美容装置、或いは美容装置以外に用いられるミスト発生装置に適用してもよい。
【0063】
・上記各実施形態では、ミスト発生装置3は、円環板状に形成された圧電振動子13の孔部14を覆うように円板状の振動板12を貼り合わせることにより形成されることとした。しかし、圧電振動子及び振動板の形状、並びに両者の接触面形状は、必ずしもこれに限るものではない。例えば、筒状の圧電振動子や矩形状の振動板を用いてもよく、また、圧電振動子が複数の孔を有するものであってもよい。ただし、効率良く振動板を膜振動させる観点では、上記各実施形態に示される圧電振動子及び振動板の形状が好ましい。
【0064】
・上記実施形態では、圧電振動子13の厚み(T)は0.5mm、振動板12の厚みは30μmとしたが、これらの値は、適宜変更してもよい。
・また、特許文献1に記載されているように支持部材(支持板)で振動板12を圧電振動子13に挟み込む構成としてもよい。これにより、その周波数特性を改善して霧化特性を安定化することができる。なお、支持部材の素材としては、例えば、ステンレス(SUSやNi鋼等)等を用いるとよい。
【符号の説明】
【0065】
1…美容装置、3…ミスト発生装置、10…微細孔、Dout…開口径、X…孔間距離、11…霧化部、D_α…外径、12…振動板、12a…ミスト放出面、12b…液体供給面、13…圧電振動子、13a…放出側平面、13b…供給側平面、OD…外径、ID…内径、14…孔部、15…圧電体、15a,15b…面、16a,16b…薄膜電極、22…ノズルパッキン、24…貫通孔、25…突部、27…タンクパッキン、29…タンク、30…無電極部、L…液体、M…ミスト、PD…粒径。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の微細孔が形成された霧化部を有する振動板と、
前記霧化部に液体を供給する供給手段と、
前記振動板を膜振動させる振動発生手段とを備え、
前記振動板の膜振動に基づき前記霧化部に供給された液体を霧化するミスト発生装置であって、
ミスト放出面における前記微細孔の開口径が7.5μm〜12.5μmであること、
を特徴とするミスト発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のミスト発生装置において、
前記各微細孔の開口径が8μm〜12μmであること、
を特徴とするミスト発生装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のミスト発生装置において、
前記霧化部の外径が3.5mm〜4.2mmであること、
を特徴とするミスト発生装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のミスト発生装置において、
前記各微細孔の孔間距離が120μm〜135μmであること、
を特徴とするミスト発生装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のミスト発生装置において、
前記各微細孔の開口径が10μm〜11μmであること、
を特徴とするミスト発生装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のミスト発生装置において、
前記振動発生手段は、円環板状に形成された振動子を有し、
前記振動板は、前記振動子の孔部を覆うように、該振動子に貼り合わされるものであって、
前記振動子の外径は12mm〜18mmであり、前記外径に対する内径の比率は36%〜59%であること、を特徴とするミスト発生装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のミスト発生装置を備えた美容装置。
【請求項1】
複数の微細孔が形成された霧化部を有する振動板と、
前記霧化部に液体を供給する供給手段と、
前記振動板を膜振動させる振動発生手段とを備え、
前記振動板の膜振動に基づき前記霧化部に供給された液体を霧化するミスト発生装置であって、
ミスト放出面における前記微細孔の開口径が7.5μm〜12.5μmであること、
を特徴とするミスト発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のミスト発生装置において、
前記各微細孔の開口径が8μm〜12μmであること、
を特徴とするミスト発生装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のミスト発生装置において、
前記霧化部の外径が3.5mm〜4.2mmであること、
を特徴とするミスト発生装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のミスト発生装置において、
前記各微細孔の孔間距離が120μm〜135μmであること、
を特徴とするミスト発生装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のミスト発生装置において、
前記各微細孔の開口径が10μm〜11μmであること、
を特徴とするミスト発生装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のミスト発生装置において、
前記振動発生手段は、円環板状に形成された振動子を有し、
前記振動板は、前記振動子の孔部を覆うように、該振動子に貼り合わされるものであって、
前記振動子の外径は12mm〜18mmであり、前記外径に対する内径の比率は36%〜59%であること、を特徴とするミスト発生装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のミスト発生装置を備えた美容装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−22198(P2013−22198A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159065(P2011−159065)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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