説明

ミスト発生装置

【課題】イオンを安定して発生させるとともに発生させたイオンをミストに帯電させることができるミスト発生装置を提供する。
【解決手段】ミスト発生装置1は、コロナ放電部10に、高圧電源回路11に電気的に接続可能な第1〜第3のグランド電極13a〜13cを有する。ミスト発生装置1は、第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度を検知する湿度センサ26と、高圧電源回路11に接続されるグランド電極を切り替えるグランド電極切替回路16と、制御部とを備える。第1〜第3のグランド電極13a〜13cは、コロナ放電部10からイオン吐出口14aに向けたマイナスイオンの吐出方向に沿って並設されている。制御部が第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度が所定値を超えたと判定するとグランド電極切替回路16によって高圧電源回路11に接続されるグランド電極をイオン吐出口14aから遠くなるように切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミストとイオンを異なる吐出口から吐出可能なミスト発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の肌にハリや潤いを与える目的で、マイナスイオンをミストに帯電させつつ、使用者に向けて吐出するミスト発生装置が使用されている。このようなミスト発生装置として、ヒータにより水を沸騰させて発生させたミスト(スチーム)と、コロナ放電により発生させたマイナスイオンとを使用者に向けて吐出可能なミスト発生装置が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1のミスト発生装置では、ミストを吐出させるミストノズルと、マイナスイオンを吐出させるイオンノズルが並設されるとともに、ミストノズルのミスト吐出口と、イオンノズルのイオン吐出口とが近接するように配置されている。そして、特許文献1では、ミストノズルの近傍に配設されたイオン吐出口からマイナスイオンを吐出することで、マイナスイオンとミストを混合し、マイナスイオンをミストに帯電させるようになっている。
【特許文献1】特開2003−159305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、電極にマイナスの高電圧を印加してマイナスイオンを発生させる場合、湿度が高くなるとコロナ放電が不安定となり、マイナスイオンの発生量が減少することが知られている。このため、ミスト吐出口から吐出されるミストによってイオン吐出口近傍の湿度が上昇することを抑制し、コロナ放電を安定させることが望まれている。しかしながら、特許文献1のミスト発生装置では、ミストノズルとイオンノズルを並設し、ミスト吐出口とイオン吐出口とを近接させることで、マイナスイオンをミストに帯電させやすくできる反面、吐出されるミストがイオン吐出口に接近しやすくなっていた。
【0004】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、イオンを安定して発生させるとともに発生させたイオンをミストに帯電させることができるミスト発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ミストを発生させるミスト発生手段と、前記ミスト発生手段で発生したミストを吐出させるミスト吐出口と、高圧電源回路を有するとともに、該高圧電源回路に電気的に接続された放電針、及び前記高圧電源回路に電気的に接続可能な複数のグランド電極を有し、コロナ放電によりイオンを発生させるイオン発生手段と、前記イオン発生手段で発生したイオンを吐出させるイオン吐出口と、前記複数のグランド電極付近の湿度を検知する湿度検知手段と、前記高圧電源回路に接続されるグランド電極を切り替えるグランド電極切替回路と、前記湿度検知手段から得られた湿度情報に基づき前記グランド電極切替回路を制御する制御手段とを備え、前記イオン発生手段から前記イオン吐出口に向けたイオンの吐出方向に沿って前記複数のグランド電極が並設されており、前記制御手段は、前記複数のグランド電極付近の湿度が所定値を超える場合に前記グランド電極切替回路によって前記高圧電源回路に接続されるグランド電極を前記イオン吐出口から遠くなるように切り替えることを要旨とする。
【0006】
これによれば、グランド電極付近の湿度が所定値を超えると、高圧電源回路に接続されるグランド電極がイオン吐出口から遠くなるように切り替わり、イオン発生手段においてイオンを発生させる部位がイオン吐出口から遠くなる。ミスト吐出口から吐出された後のミストは、イオン吐出口からイオン発生手段に向けて流れるが、イオンを発生させる部位がイオン吐出口から遠くなるため、イオンを発生させる部位にミストが接近しにくくなり、湿度を低く保つことができる。よって、イオン発生手段により、イオンを安定して発生させ、イオン発生量の減少を防止することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のミスト発生装置において、前記放電針を前記複数のグランド電極に対し接離させる方向へ移動させる移動手段を備え、前記制御手段は、前記複数のグランド電極付近の湿度が所定値を超える場合に前記移動手段を制御して、切り替えられたグランド電極と前記放電針との間隔が一定になるように前記放電針を移動させることを要旨とする。
【0008】
これによれば、高圧電源回路に接続されるグランド電極が切り替えられるのに伴い、移動手段により放電針も移動させて、高圧電源回路に接続されたグランド電極と放電針との間隔が一定に維持される。このため、グランド電極と放電針との間隔の変動に伴うコロナ放電の変動を防止して安定したコロナ放電を行うことができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のミスト発生装置において、前記湿度検知手段は、電気式湿度計であることを要旨とする。これによれば、電気式湿度計(容量性センサ又は抵抗性センサ)を用いたため、簡単な構成でグランド電極付近の湿度を正確に検知することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、イオンを安定して発生させるとともに発生させたイオンをミストに帯電させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のミスト発生装置を具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。なお、以下の説明においてミスト発生装置の「前」及び「後」は、図1に示す矢印Y1の方向を前後方向とし、「上」及び「下」は、図1に示す矢印Y2の方向を上下方向とする。
【0012】
図1に示すように、ミスト発生装置1の本体ケース2には、タンクホルダ3が設けられている。このタンクホルダ3には水などの液体を供給するタンク4が着脱可能に設けられている。タンク4は、図示しない止水ピンが設けられた蓋部4aにより給水用の開口部が閉止されるとともに、その蓋部4a(開口部)が下側となるようにタンクホルダ3内に配設されている。タンクホルダ3には、止水ピンに対応する形状の図示しない突出ピンが設けられている。タンク4は液体が注入された状態でタンクホルダ3に配設されることで、止水ピンが突出ピンにより押し込まれて水密性が解除されタンク4内の液体が流出されるものであり、タンクホルダ3にはタンク4から流出した液体が貯留される。
【0013】
タンクホルダ3は、液体供給路5を介して、本体ケース2内の下部に形成された液体溜り部6と接続されている。液体溜り部6には、液体供給路5を介してタンクホルダ3の液体が供給され、貯留されるようになっている。液体溜り部6の前後側面には、液体溜り部6に貯留された液体を加熱して沸騰させるヒータ7が設けられている。本実施形態では、液体溜り部6及びヒータ7がミスト発生手段としてのミスト発生部Mを構成している。液体溜り部6の上部には、本体ケース2の上下方向に沿って延びるミスト流路8が形成されている。
【0014】
図2に示すように、ミスト流路8の上部には、ミスト流路8の上部から前方へ向けて延びるとともに本体ケース2外へ突出するミストノズル9が形成されている。このミストノズル9における本体ケース2外に位置する前端(先端)には、ミストを本体ケース2外へ吐出するためのミスト吐出口9bが開口している。また、ミストノズル9の内側には、ミスト流路8を通過するミストをミスト吐出口9bから吐出させるミスト吐出路9aが形成されている。本実施形態では、ミスト流路8及びミスト吐出路9aにより、ミスト移送路が構成されている。そして、ヒータ7により液体溜り部6内の液体が加熱され、沸騰されることでミスト吐出口9bからミストが本体ケース2外へ吐出されるようになっている。なお、ヒータ7に印加する電圧値を変更することにより、吐出させるミスト量を制御することが可能となっている。
【0015】
本体ケース2において、ミストノズル9より上方には、イオンノズル14が配設されているとともに、このイオンノズル14は前側が本体ケース2外へ突出し、後側が本体ケース2内へ突出している。イオンノズル14の前端(先端)にはイオン吐出口14aが開口している。また、イオンノズル14の後側には、筒状をなす支持筒部15の前側が収容支持されるとともに、この支持筒部15はイオンノズル14の軸方向に沿って摺動可能にイオンノズル14に支持されている。
【0016】
本体ケース2において、ミストノズル9より上方には、マイナスイオンを発生させるイオン発生手段としてのコロナ放電部10が設けられている。このコロナ放電部10は、針状の放電針12と、グランドに電気的に接続された半円筒形状の第1〜第3のグランド電極13a〜13cと、放電針12及び第1〜第3のグランド電極13a〜13cそれぞれが電気的に接続可能な高圧電源回路11とから構成されている。そして、高圧電源回路11により、放電針12と、第1〜第3のグランド電極13a〜13cのうちのいずれかとの間に高電圧を印加しコロナ放電を発生させることによりマイナスイオンが発生するようになっている。コロナ放電部10で発生したマイナスイオンはイオン吐出口14aから本体ケース2外へ吐出されるようになっている。
【0017】
コロナ放電部10を具体的に説明すると、イオンノズル14内におけるイオン吐出口14a側には、第1〜第3のグランド電極13a〜13cが配置されている。第1〜第3のグランド電極13a〜13cにおいて、第1のグランド電極13aがイオンノズル14の前端に最も近い位置に配置され、この第1のグランド電極13aよりも本体ケース2側に第2のグランド電極13bが配置されるとともに、この第2のグランド電極13bよりも本体ケース2側に第3のグランド電極13cが配置されている。すなわち、イオンノズル14内には、イオン吐出口14aに向けたマイナスイオンの吐出方向m2(図1参照)に沿って、第1〜第3のグランド電極13a〜13cが並設されている。
【0018】
マイナスイオンの吐出方向m2に沿った隣り合うグランド電極間の間隔は全て同じになっている。また、支持筒部15は、支持筒部15の前側が第3のグランド電極13cより本体ケース2寄りの位置に収容支持されている。第1〜第3のグランド電極13a〜13cそれぞれと高圧電源回路11とにはグランド電極切替回路16が電気的に接続されている。このグランド電極切替回路16は、高圧電源回路11に接続されるグランド電極が、第1〜第3のグランド電極13a〜13cのいずれかになるように切り替える。
【0019】
第3のグランド電極13cより本体ケース2寄りの位置となる支持筒部15内には、放電針12が配置されている。放電針12は、支持筒部15内に設けられた支持部12aにより支持されている。ここで、第1のグランド電極13aと放電針12との間が一定の間隔kとなるように支持筒部15がイオンノズル14に支持された位置を、支持筒部15の初期位置とする。
【0020】
図1に示すように、イオンノズル14(イオン吐出口14a)は、ミストノズル9(ミスト吐出口9b)から所定範囲(1.5cm〜3cm)内の距離(本実施形態では2cm)離れた位置に配置されている。すなわち、イオン吐出口14aは、ミスト吐出口9bの近傍(付近)に配置されている。また、イオン吐出口14a及びミスト吐出口9bは、上下方向に沿って並設されているとともにイオンノズル14(イオン吐出口14a)が上方に、ミストノズル9(ミスト吐出口9b)が下方に配置されている。また、ミストノズル9のミストの吐出方向m1、及びイオンノズル14のマイナスイオンの吐出方向m2は何れも水平方向となっている一方で、両吐出方向m1,m2は相互に平行になっている。
【0021】
図2に示すように、本体ケース2内の上部には、放電針12を支持した支持筒部15を、第1〜第3のグランド電極13a〜13cに対して接離する方向へ移動させる移動手段として支持筒部移動機構20が設けられている。この支持筒部移動機構20は、正逆両方向へ回転可能なモータ21を備えるとともに、このモータ21の駆動力により回転する一対のローラ22a,22bを備え、ローラ22a,22bそれぞれは回転軸23a,23bによって回転可能に本体ケース2に支持されている。
【0022】
また、支持筒部移動機構20は、各ローラ22a,22bに一端が固定された金属線材製の連結部材24a,24bを備え、各連結部材24a,24bの他端それぞれは、支持筒部15の後端(基端)に固定されている。さらに、支持筒部移動機構20は、各連結部材24a,24bの一端側をガイド、支持する筒状をなすガイド部材25a,25bを備えるとともに、各ガイド部材25a,25bは本体ケース2内に位置決め固定されている。各ガイド部材25a,25b内には連結部材24a,24bが挿通支持されている。そして、図4(a)に示すように、モータ21が正方向へ回転すると、ローラ22a,22bは連結部材24a,24bを巻き取る方向へ回転し、図4(b)に示すように、モータ21が逆方向へ回転すると、ローラ22a,22bは連結部材24a,24bを送り出す方向へ回転するようになっている。
【0023】
また、イオンノズル14内の先端側には、イオンノズル14内で第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度を検知する湿度検知手段としての湿度センサ26が配置されている。なお、湿度センサ26は、電気式湿度計であり、容量性センサ又は抵抗性センサが用いられる。容量性センサは、感湿体を挟む2つの板状電極の間に交流電圧を印加することによって、感湿体の水分吸収に伴う誘電率の変化がもたらす電極間の静電容量の変化から湿度を測定するものである。抵抗性センサーは、感湿体の水分吸収に伴う導電性の変化を利用して湿度を測定するものである。
【0024】
また、図3に示すように、ミスト発生装置1は、ミスト発生装置1の動作を制御する制御手段としての制御部30を備えている。制御部30は、所定のプログラムに従って演算処理を行うCPUと、このCPUが実行するための各種プログラム等を記憶するメモリなどを備えるマイコンから構成されている。そして、制御部30(メモリ)にはミスト発生装置1の駆動制御プログラムが記憶されるとともに、この駆動制御プログラムによりミスト発生装置1の駆動が制御されるようになっている。
【0025】
制御部30には、ヒータ7、高圧電源回路11、グランド電極切替回路16、支持筒部移動機構20のモータ21、及び湿度センサ26が電気的に接続されている。制御部30は、ヒータ7に印加する電圧値を制御することにより、吐出させるミスト量を制御する。また、制御部30は、湿度センサ26から出力される湿度情報に基づきモータ21の駆動を制御する。なお、制御部30は、1回のモータ21の駆動時には所定回転数だけモータ21を正方向又は逆方向へ回転させて停止させるようになっており、1回のモータ21の駆動により支持筒部15は所定距離だけ移動(前進又は後進)した後、停止するようになっている。さらに、制御部30は、高圧電源回路11に印加する電圧を制御することにより、発生させるマイナスイオン量を制御する。
【0026】
制御部30には、湿度センサ26からの湿度情報と比較される基準湿度(所定値)が、第1の基準湿度と第2の基準湿度の2段階に分けて情報として記憶されている。第1及び第2の基準湿度それぞれは、コロナ放電部10によるマイナスイオンの発生量が減少する虞のある湿度より若干低い値に設定されるとともに、第1の基準湿度は第2の基準湿度より若干低い値に設定されている。
【0027】
次に、上述したミスト発生装置1の作用を説明する。なお、図1及び図2に示すように、ミスト発生装置1は、支持筒部15が初期位置に配置されているものとする。すなわち、支持筒部移動機構20において連結部材24a,24bがローラ22a,22bに巻き取られていない。そして、第1のグランド電極13aと放電針12とが一定の間隔kだけ離れた状態となっている。
【0028】
まず、タンク4内に水などの液体を注入してタンクホルダ3に設置すると、タンクホルダ3に設けられた突出ピンによってタンク4の蓋部4aの止水ピンがタンク4の内側に押し込まれ、蓋部4aの水密性が解除され、タンク4内の液体はタンクホルダ3に貯留され、液体供給路5に通水され液体溜り部6に液体が貯留される。
【0029】
この状態において図示しない電源スイッチの操作によりミスト発生装置1の電源が投入されると、制御部30はヒータ7を作動させる。すると、液体溜り部6内の液体が加熱され、沸騰する。この沸騰により発生した水蒸気は、ミスト流路8を通過する際にミストとなる。そして、ミスト流路8を下方から上方に向けて通過するミストは、ミスト吐出路9aに流入する。ミスト吐出路9aに流入したミストはミスト吐出口9bから本体ケース2外に吐出される。
【0030】
一方、制御部30は、グランド電極切替回路16によって高圧電源回路11に接続されるグランド電極を、第1のグランド電極13aに切り替える。そして、第1のグランド電極13aと放電針12との間に高電圧が印加されることにより発生したマイナスイオンはイオンノズル14のイオン吐出口14aから本体ケース2外へ吐出される。そして、イオン吐出口14aから吐出されたマイナスイオンは、ミストノズル9から吐出されたミストと混合されることで、ミストがマイナス帯電される。
【0031】
ミスト発生装置1において、制御部30は湿度センサ26からの湿度情報に基づき、第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度を推定するとともに、その推定された湿度と第1〜第2の基準湿度(所定値)とを比較する。そして、制御部30は、第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度が、予め設定された第1の基準湿度(所定値)を超えたと判定すると(超えた場合)、モータ21を正方向へ所定回転数だけ回転させ、その後、モータ21を停止させる。すると、図4(a)に示すように、ローラ22a,22bが正方向へ回転するとともに、連結部材24a,24bがローラ22a,22bに巻き取られ、支持筒部15が本体ケース2の内側に向けて所定距離だけ移動する。支持筒部15とともに放電針12が本体ケース2の内側に向けて移動し、第2のグランド電極13bと放電針12とが一定の間隔kだけ離間した状態となる。
【0032】
同時に、制御部30はグランド電極切替回路16によって、高圧電源回路11に接続されるグランド電極を、第1のグランド電極13aから第2のグランド電極13bに切り替える。すなわち、高圧電源回路11に接続されるグランド電極を、イオン吐出口14aから遠くなるように第1のグランド電極13aから第2のグランド電極13bに切り替える。
【0033】
すると、第2のグランド電極13bと放電針12との間に高電圧が印加されることによりマイナスイオンが発生し、発生したマイナスイオンはイオンノズル14のイオン吐出口14aから本体ケース2外へ吐出される。そして、イオン吐出口14aから吐出されたマイナスイオンは、ミストノズル9から吐出されたミストと混合されることで、ミストがマイナス帯電される。
【0034】
第2のグランド電極13bと放電針12とからマイナスイオンが発生している状態において、制御部30は湿度センサ26からの湿度情報に基づき、第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度を推定するとともに、その推定された湿度と第1〜第2の基準湿度(所定値)とを比較する。そして、制御部30は、第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度が、予め設定された第2の基準湿度(所定値)を超えたと判定すると(超えた場合)、モータ21を正方向へ所定回転数だけ回転させ、その後、モータ21を停止させる。すると、図4(b)に示すように、ローラ22a,22bが正方向へ回転するとともに、連結部材24a,24bがローラ22a,22bに巻き取られ、支持筒部15が本体ケース2の内側に向けて所定距離だけ移動する。支持筒部15とともに放電針12が本体ケース2の内側に向けて移動し、第3のグランド電極13cと放電針12とが一定の間隔kだけ離間した状態となる。
【0035】
同時に、制御部30は、グランド電極切替回路16によって、高圧電源回路11に接続されるグランド電極を第2のグランド電極13bから第3のグランド電極13cに切り替える。すなわち、高圧電源回路11に接続されるグランド電極を、イオン吐出口14aからさらに遠くなるように第2のグランド電極13bから第3のグランド電極13cに切り替える。
【0036】
すると、第3のグランド電極13cと放電針12との間に高電圧が印加されることにより発生したマイナスイオンはイオンノズル14のイオン吐出口14aから本体ケース2外へ吐出される。そして、イオン吐出口14aから吐出されたマイナスイオンは、ミストノズル9から吐出されたミストと混合されることで、ミストがマイナス帯電される。
【0037】
ミスト発生装置1において、第3のグランド電極13cと放電針12とからマイナスイオンが発生している状態において、制御部30は、湿度センサ26からの湿度情報に基づき、第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度を推定するとともに、その推定された湿度と第1〜第2の基準湿度とを比較する。そして、制御部30は、第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度が、予め設定された第2の基準湿度(所定値)より低いと判定するとグランド電極切替回路16によって、高圧電源回路11に接続されるグランド電極を第3のグランド電極13cから第2のグランド電極13bに切り替える。同時に、制御部30は、モータ21を逆方向へ回転させる。ローラ22a,22bが逆方向へ回転するとともに、連結部材24a,24bがローラ22a,22bから送り出され、支持筒部15が本体ケース2の外側に向けて移動する。すると、第2のグランド電極13bと放電針12とが一定の間隔kだけ離間した状態となるとともに、第2のグランド電極13bと放電針12との間に高電圧が印加されることによりマイナスイオンが発生するようになる。
【0038】
また、ミスト発生装置1において、第2のグランド電極13bと放電針12とからマイナスイオンが発生している状態において、制御部30は、湿度センサ26からの湿度情報に基づき、第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度を推定するとともに、その推定された湿度と第1〜第2の基準湿度とを比較する。そして、制御部30は、第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度が、予め設定された第1の基準湿度(所定値)より低いと判定するとグランド電極切替回路16によって、高圧電源回路11に接続されるグランド電極を第2のグランド電極13bから第1のグランド電極13aに切り替える。同時に、制御部30は、モータ21を逆方向へ回転させる。ローラ22a,22bが逆方向へ回転するとともに、連結部材24a,24bがローラ22a,22bから送り出され、支持筒部15が本体ケース2の外側に向けて移動する。すると、第1のグランド電極13aと放電針12とが一定の間隔kだけ離間した状態となるとともに、第1のグランド電極13aと放電針12との間に高電圧が印加されることによりマイナスイオンが発生するようになる。
【0039】
次に、マイナスイオンを帯電させたミストによる使用者の皮膚(肌)への効果について説明する。
一般に人間の表皮は、基底層、有棘層、顆粒層、及び角質層から構成されており、角質層が皮膚の最も外層側を構成している。角質層は、角質細胞と、この角質細胞の間を埋めるセラミドを主成分とした細胞間脂質により構成されている。十分な量のセラミド(細胞間脂質)によって角質細胞間が満たされている場合、角質層は、バリア性を発揮して皮膚からの水分の蒸散を抑制できるとともに、水分を保持することができる。その一方で、セラミドが不足すると、バリア性が低下して皮膚から水分が蒸散しやすくなるとともに、水分の保持量が低下する。
【0040】
マイナスイオンを帯電させたミストが使用者の肌に接触すると、使用者の皮膚の表面がマイナス帯電されるとともに、ミストにより水分が補給される。そして、皮膚表面がマイナス帯電されると、皮膚表面の微弱なマイナス電位を感知して顆粒層からセラミドの前駆体が角質層に向けて放出されるとともに、最終的にセラミドとなって角質細胞間を埋める。これにより、角質層において細胞間脂質量を増加させ、肌のバリア機能を改善(向上)するとともに、肌の水分保持量を増加(保湿力を向上)させることができる。そして、使用者の肌の肌理(キメ)を改善することができる。
【0041】
以上のことから、肌のバリア機能を改善するとともに保湿力を向上させるためには、より多くのマイナスイオンをミストに帯電させ、使用者の肌に付着させることが望ましい。このため、ミスト吐出口9bとイオン吐出口14aとをできるだけ相互に近接した位置に配設し、マイナスイオンをミストに帯電させ易くすることが好ましい。その一方で、ミスト吐出口9bとイオン吐出口14aとを近接させすぎることで、イオン吐出口14aからイオンノズル14内にミストが流入して第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度が上昇し、コロナ放電部10におけるマイナスイオンの発生量が減少するという問題が生じ得る。
【0042】
しかしながら、本実施形態のミスト発生装置1によれば、第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度が上昇してくると、放電針12をイオン吐出口14aから遠くなる方向へ移動させると同時に、放電針12に合わせて高圧電源回路11に接続するグランド電極をイオン吐出口14aから遠くなるように切り替えることができる。このため、マイナスイオンを発生させる部位をイオン吐出口14aから遠くすることにより、マイナスイオンを発生させる部位にミストが接近しにくくなって湿度が低く保たれる結果、安定してコロナ放電をさせることでマイナスイオン発生量の減少が防止される。
【0043】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)1つの放電針12に対し、第1〜第3のグランド電極13a〜13cをイオンノズル14内に並設するとともに、高圧電源回路11に接続されるグランド電極を切り替えるグランド電極切替回路16を設けた。そして、制御部30は、湿度センサ26からの湿度情報に基づき第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度が所定値を超える場合に、高圧電源回路11に接続されるグランド電極をイオン吐出口14aから遠くなるように切り替える。すなわち、第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度が湿度が上昇すると、マイナスイオンを発生させる部位をイオン吐出口14aから遠くなるようにする。このため、ミスト吐出口9bから吐出された後のミストが、マイナスイオンを発生させる部位に接近しにくくなって湿度を低く保つことができる。よって、コロナ放電部10により、マイナスイオンを安定して発生させ、マイナスイオン発生量の減少を防止することができ、その結果として、コロナ放電部10で発生させたマイナスイオンをミストに効率良く帯電させることができる。
【0044】
(2)高圧電源回路11に接続されるグランド電極が切り替えられるのに伴い、放電針12も移動させて、高圧電源回路11に接続されたグランド電極と放電針12との間に一定の間隔kが維持されるようにした。このため、グランド電極と放電針12との間隔を常に一定にし、間隔の変動に伴うコロナ放電の変動を防止して安定したコロナ放電を行うことができる。
【0045】
(3)制御部30は、湿度センサ26から得られた湿度情報に基づき第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度が所定値を超えた場合に、高圧電源回路11に接続されるグランド電極をイオン吐出口14aから遠くなるように切り替えるとともに放電針12を移動させる。一方、第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度が所定値を超えていないとき(湿度が低いとき)は、イオン吐出口14aに最も近い第1のグランド電極13aを用いてマイナスイオンを発生させる。よって、湿度の高さに応じて高圧電源回路11に接続されるグランド電極と放電針12の位置を適宜変更するため、ミスト発生装置1の使用時には常にマイナスイオンをミストに帯電させやすくすることができる。
【0046】
(4)湿度センサ26として、電気式湿度計(容量性センサ又は抵抗性センサ)を用いたため、簡単な構成で第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度を正確に検知することができる。
【0047】
(5)マイナスイオンをミストに帯電させるようにした。このため、使用者の皮膚表面をマイナス帯電させ、角質層の細胞間脂質(セラミド)の量を増加させることで、肌のバリア機能を改善するとともに保湿力を向上させることができる。
【0048】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、ミスト発生開始から所定時間経過した後に、制御部30がグランド電極切替回路16を制御して、高圧電源回路11に接続するグランド電極を第1のグランド電極13aから第2のグランド電極13bに切り替えるとともに、第2のグランド電極13bとの間に一定の間隔kが維持されるように放電針12を移動させてもよい。さらに、第2のグランド電極13bに切り替えてからも、所定時間経過した後に、制御部30がグランド電極切替回路16を制御して、高圧電源回路11に接続するグランド電極を第3のグランド電極13cに切り替え、かつ第3のグランド電極13cとの間に一定の間隔kが維持されるように放電針12を移動させてもよい。この場合、制御部30はタイマを備え、このタイマはミスト発生部Mによるミスト発生開始からの経過時間を計測する。そして、制御部30は、タイマからの時間情報に基づき、ミスト発生開始からの経過時間が所定時間に達すると、第1〜第3のグランド電極13a〜13c付近の湿度が所定値を超えたと推定し、グランド電極切替回路16を制御するとともに支持筒部移動機構20を駆動させる。
【0049】
○ 図5に示すように、実施形態において、放電針12は移動不能とし、高圧電源回路11に接続するグランド電極のみを湿度の上昇とともに切り替えるようにしてもよい。
○ イオンノズル14に設けられるグランド電極は2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0050】
○ 実施形態において、ミスト吐出口9b及びイオン吐出口14aは、左右方向に並ぶように配置してもよく、また、本体ケース2の上方や側方に向けて開口するように配置してもよい。
【0051】
○ 実施形態において、ミスト吐出口9bをミストノズル9の前端(先端)に形成するとともに、イオン吐出口14aをイオンノズル14の前端(前端)に形成したが、ミスト吐出口9b及びイオン吐出口14aを本体ケース2の外面から開口するようにして、ミストノズル9及びイオンノズル14が本体ケース2外へ突出していなくてもよい。
【0052】
○ 各実施形態において、ヒータ7により水を加熱してミストを発生するように構成したが、異なる機構によりミストを発生するようにしてもよい。例えば、超音波や、加湿エレメントを用いてミストを発生させてもよい。
【0053】
○ 各実施形態において、コロナ放電部10は、マイナスイオンを発生可能に構成したが、プラスイオンを発生可能に構成してもよい。この場合、放電針12及び第1〜第3のグランド電極13a〜13c間にプラスの高電圧を印加する。このように構成しても、コロナ放電部10において、イオンを発生させることができる。
【0054】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(1)ミストを発生させるミスト発生手段と、前記ミスト発生手段で発生したミストを吐出させるミスト吐出口と、高圧電源回路を有するとともに、該高圧電源回路に電気的に接続された放電針、及び前記高圧電源回路に電気的に接続可能な複数のグランド電極を有し、コロナ放電によりイオンを発生させるイオン発生手段と、前記イオン発生手段で発生したイオンを吐出させるイオン吐出口と、前記ミスト発生手段によるミスト発生開始からの経過時間を計測するタイマと、前記高圧電源回路に接続されるグランド電極を切り替えるグランド電極切替回路と、前記タイマから得られた時間情報に基づき前記グランド電極切替回路を制御する制御手段とを備え、前記イオン発生手段から前記イオン吐出口に向けたイオンの吐出方向に沿って前記複数のグランド電極が並設されており、前記制御手段は、前記タイマから得られた時間情報に基づき推定される複数のグランド電極付近の湿度が所定値を超える場合に前記グランド電極切替回路によって前記高圧電源回路に接続されるグランド電極を前記イオン吐出口から遠くなるように切り替えることを特徴とするミスト発生装置。
【0055】
(2)前記放電針を前記複数のグランド電極に対し接離させる方向へ移動させる移動手段を備え、前記制御手段は、前記タイマから得られた時間情報に基づき前記複数のグランド電極付近の湿度が所定値を超える場合に、切り替えられたグランド電極と前記放電針との間隔が一定になるように前記移動手段を移動させる技術的思想(1)に記載のミスト発生装置。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施形態におけるミスト発生装置の模式図。
【図2】実施形態におけるイオン吐出口近傍を示す模式断面図。
【図3】実施形態におけるミスト発生装置の電気的構成を示すブロック図。
【図4】(a)は第2のグランド電極に放電針を対向配置した状態を示す模式断面図、(b)は第3のグランド電極に放電針を対向配置した状態を示す模式断面図。
【図5】別例のミスト発生装置を示す部分模式断面図。
【符号の説明】
【0057】
M…ミスト発生手段としてのミスト発生部、1…ミスト発生装置、m2…イオンの吐出方向、9b…ミスト吐出口、10…イオン発生手段としてのコロナ放電部、11…高圧電源回路、12…放電針、13a〜13c…第1〜第3のグランド電極、14a…イオン吐出口、16…グランド電極切替回路、20…移動手段としての支持筒部移動機構、26…湿度検知手段としての湿度センサ、30…制御手段としての制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミストを発生させるミスト発生手段と、
前記ミスト発生手段で発生したミストを吐出させるミスト吐出口と、
高圧電源回路を有するとともに、該高圧電源回路に電気的に接続された放電針、及び前記高圧電源回路に電気的に接続可能な複数のグランド電極を有し、コロナ放電によりイオンを発生させるイオン発生手段と、
前記イオン発生手段で発生したイオンを吐出させるイオン吐出口と、
前記複数のグランド電極付近の湿度を検知する湿度検知手段と、
前記高圧電源回路に接続されるグランド電極を切り替えるグランド電極切替回路と、
前記湿度検知手段から得られた湿度情報に基づき前記グランド電極切替回路を制御する制御手段とを備え、
前記イオン発生手段から前記イオン吐出口に向けたイオンの吐出方向に沿って前記複数のグランド電極が並設されており、前記制御手段は、前記複数のグランド電極付近の湿度が所定値を超える場合に前記グランド電極切替回路によって前記高圧電源回路に接続されるグランド電極を前記イオン吐出口から遠くなるように切り替えることを特徴とするミスト発生装置。
【請求項2】
前記放電針を前記複数のグランド電極に対し接離させる方向へ移動させる移動手段を備え、前記制御手段は、前記複数のグランド電極付近の湿度が所定値を超える場合に前記移動手段を制御して、切り替えられたグランド電極と前記放電針との間隔が一定になるように前記放電針を移動させる請求項1に記載のミスト発生装置。
【請求項3】
前記湿度検知手段は、電気式湿度計である請求項1又は請求項2に記載のミスト発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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