説明

ミスト発生装置

【課題】本発明は、ノズル部材を用いない構成であっても、全ての噴射部から確実にミストが噴射されるミスト発生装置を提供することを目的とした。
【解決手段】ミスト発生装置1は、フロント部材7と、フロント部材7と対となって湯水が流入する空間12を形成するリア部材8と、フロント部材7とリア部材8との間に位置する閉塞部材9とを備えている。フロント部材7は、湯水を旋回して霧状の湯水を噴射する噴射部15を有している。リア部材8は、閉塞部材9を保持しその閉塞部材9とリア部材8との間に湯水を導入することができる保持部28を有している。閉塞部材9は、噴射部15と保持部28に挟まれた位置に配され、供給される湯水の水圧でフロント部材7側に押圧される。これにより、噴射部15に導入される湯水の吐出圧が一定以上に維持されてミストが噴射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水を霧状に噴射することができるミスト発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、供給された湯水を噴射する際に霧状にする複数のミスト発生ノズル部材(以下、単にノズル部材とも言う)と、その複数のノズル部材を保持可能なノズル保持部材とにより構成された浴室用のミスト発生装置がある(例えば、特許文献1)。この種のミスト発生装置は、ノズル保持部材の内部において、各ノズル部材が湯水供給主配管から分岐した分岐配管とそれぞれ接続されており、湯水がノズル部材に導入されると旋回流が発生し、噴射される際に湯水がミストとなるように構成されている。
【0003】
ところで、1つのノズル部材から発生可能なミストの量には限界がある。また、浴室内において、ミストによるサウナ効果、暖房効果、あるいはシャワー効果を図るためには、ミストを一定量以上発生させる必要がある。そのため、特許文献1のようなミスト発生装置では、ミストの量を増加させるために、ノズル保持部材にノズル部材を数多く配置させる必要がある。しかしながら、一般的にノズル部材は高価であり、ノズル部材の数を増やせばミスト発生装置の製造コストが増加するという不満があった。また、ノズル部材の数を増やせば、分岐配管の本数も増えるため、ノズル部材と分岐配管との接続作業の手間が増え、生産効率が低下し、さらに製造コストの増加を招く不満があった。
【0004】
そこで、本発明者らは、ノズル部材を用いることなく、前記したノズル保持部材に直接ノズル機能を具備させたミスト発生装置を開発した(例えば、特許文献2)。即ち、特許文献2に記載のミスト発生装置は、フロント部材とリア部材を有し、フロント部材とリア部材によってノズル機能が形成されている。
【0005】
これにより、特許文献2に記載のミスト発生装置は、特許文献1のようにノズル部材を用いる場合と比較すると、大幅な製造コストの低下に成功している。さらに、この構成により、湯水供給主配管から分岐させる分岐配管を接続する必要がないため、装置の小型化、薄型化が可能となり、利用できる範囲を広げることができた。例えば、シャワーのヘッドのように、手軽に把持して使用することを可能とした。
【0006】
ここで、特許文献2のミスト発生装置を用いて、ミストが噴射される仕組みを説明する。特許文献2のミスト発生装置は、フロント部材に湯水の旋回流を発生させる旋回流路が設けられ、リア部材には閉塞部が設けられている。そして、リア部材の閉塞部によって、旋回流路の湯水導入側開口を塞ぎ、湯水導入側開口に設けられたその開口の接線方向に延びる流路(以下、接線流路とも言う)から旋回流路に湯水を導入する構成がとられている。これにより、一定以上の圧力で湯水が旋回流路に導入されるため、旋回流路において湯水の旋回流が発生し、噴射側開口からミストが噴射する。即ち、この構成により、ミストのノズル機能が果たされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−79527号公報
【特許文献2】特開2008−200261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
逆に、湯水が接線流路を介さずに旋回流路に導入された場合は、旋回流路に導入される湯水が一定上の圧力に達せず、十分な旋回流を発生しない。これは、湯水の一部が接線流路から旋回流路に導入され、さらに別のルートから残りの湯水が旋回流路に導入される場合も同様である。これにより、ミストのノズル機能が正常に機能せず、噴射側開口からミストが噴射されなくなる。即ち、ミスト発生装置において、このノズル機能を正常に機能させるためには、接線流路以外の部分を閉塞部で隙間なく塞ぎ、一定以上の圧力の湯水が接線流路を介して旋回流路に吐出されることが重要である。
【0009】
ところが、特許文献2のミスト発生装置においては、フロント部材に設けられた旋回流路を、リア部材に設けられた閉塞部の平面によって押しつけて塞ぐ構成であるため、成形品の形状のバラツキによって、旋回流路の塞ぎ具合が不十分となって閉塞部のシール機能が十分に果たされない場合があった。これにより、旋回流路の一部においては、導入される湯水の圧力が一定上に達せず、噴射側開口からミストが噴射されない不具合が発生する場合があった。
【0010】
そこで、本発明では、従来技術の問題に鑑み、ノズル部材を用いない構成であっても、全ての噴射部から確実にミストが噴射されるミスト発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、供給された湯水を噴霧可能なミスト発生装置であって、霧状の湯水を噴射する噴射部を有したフロント部材と、フロント部材と対となって噴射部より湯水の流れ方向上流側の位置に湯水が流入する空間を形成するリア部材と、フロント部材とリア部材との間に位置し空間側から噴射部側に湯水が流入する通路以外の部分を閉塞できる閉塞部材とを備え、前記空間に流入した湯水が、前記通路から噴射部に導入されて噴霧されることを特徴とするミスト発生装置である。
【0012】
本発明のミスト発生装置は、閉塞部材をフロント部材やリア部材とは別部材とし、フロント部材とリア部材との間に、空間側から噴射部側に湯水が流入する通路以外の部分を閉塞するようにその閉塞部材を配し、その閉塞されていない通路を介して湯水を噴射部に導入し、噴霧する構成とされている。即ち、閉塞部材は、自重に加えて、例えば湯水の水圧や弾性体などの外力を作用させることができ、その作用により噴射部におけるシール性を向上させることが可能となる。これにより、従来技術に比べて閉塞部材のシール性が向上し、通路以外の場所から湯水が噴射部に漏洩することが防止される。従って、本発明によれば、噴射部に導入される湯水の吐出圧が低減しないため、全ての噴射部から確実にミストを噴射することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記閉塞部材は、供給される湯水の水圧によってフロント部材側に押圧されることを特徴とする請求項1に記載のミスト発生装置である。
【0014】
かかる構成によれば、供給される湯水の水圧によって閉塞部材がフロント部材側に押圧されるため、複数の閉塞部材を備えた場合であってもそれぞれの閉塞部材を確実に十分な力で押圧できる。これにより、噴射部のシール性を確実に向上させることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記閉塞部材をフロント部材側に付勢する弾性体を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のミスト発生装置である。
【0016】
かかる構成によれば、閉塞部材をバネなどの弾性体を用いてフロント部材側に付勢するため、従来技術より噴射部のシール性を向上させることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、リア部材には、フロント部材に設けられた噴射部に対応する位置に閉塞部材を囲繞して当該閉塞部材を保持する保持部が設けられ、前記保持部は、先端側で閉塞部材を保持するものであり、囲繞された内側に湯水を流入させる流入部を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のミスト発生装置である。
【0018】
かかる構成によれば、リア部材の保持部の先端側で閉塞部材を保持することができるため、閉塞部材が噴射部からずれることがない。また、保持部の内側に流入部を介して湯水を流入させることができるため、水圧によってフロント部材側に押圧することができる。即ち、本発明によれば、閉塞部材を一定の位置に固定しつつ、水圧による外力を閉塞部材に加えることができるため、少なくとも湯水が空間に供給される間は、閉塞状態から逸することがない。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記噴射部は、前記空間と外部を連通した流路を有し、フロント部材には、前記流路の導入側に閉塞部材が載置される載置部を有し、前記載置部に閉塞部材が載置された状態で、前記流路と連通する前記通路が確保されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のミスト発生装置である。
【0020】
かかる構成によれば、フロント部材に閉塞部材を載置する載置部が設けられいるため、閉塞部材の位置決めが容易である。
【0021】
請求項6に記載の発明は、フロント部材には、噴射部が設けられ閉塞部材が載置される複数の載置部を有し、前記載置部の一部又は全部が連結されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のミスト発生装置である。
【0022】
かかる構成によれば、噴射部が設けられた複数の載置部の一部又は全部が連結されているため、限られた領域に高い密度で噴射部を配置させることができる。これにより、装置を小型にしても、ミストの量を一定以上確保することができ、暖房効果、サウナ効果、シャワー効果を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のミスト発生装置では、
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係るミスト発生装置の設置状態を示す説明図である。
【図2】図1のミスト発生装置の分解斜視図である。
【図3】基本ユニットを示す分解斜視図である。
【図4】図3のフロント部材を別の角度から見た斜視図である。
【図5】図4のフロント部材をA方向から見た矢視図である。
【図6】フロント部材における図5の凸部を示すB−B断面図である。
【図7】図3のリア部材を別の角度から見た斜視図である。
【図8】図3の閉塞部材を別の角度から見た斜視図である。
【図9】保持部と閉塞部材と凸部との位置関係を概念的に示す斜視図である。
【図10】図9に示す保持部と閉塞部材と凸部を概念的に示すC−C断面図である。(太線の矢印は水圧による外力を示す)
【図11】別の実施形態に係るミスト発生装置のフロント部材を示す斜視図である。
【図12】図11のフロント部材に用いられる閉塞部材の斜視図である。
【図13】フロント部材に閉塞部材を配置した状態の平面図であって、噴射部を破線で示した図である。
【図14】図11のフロント部材に組み付けられるリア部材を示す斜視図である。
【図15】フロント部材と閉塞部材とリア部材の位置関係を概念的に示す断面図である。(太線の矢印は水圧による外力を示す)
【図16】閉塞部材にバネの外力を作用させた状態を概念的に示す断面図である。(太線の矢印は水圧及びバネによる外力を示す)
【図17】(a)は、1本の噴射部供給流路が設けられた凸部を示す平面図で、(b)は、3本の噴射部供給流路が設けられた凸部を示す平面図である。
【図18】凸部が連結した連結凸部を示す平面図である。
【図19】ミスト発生装置を浴室ユニットの点検口の天井パネルとして採用した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本実施形態に係るミスト発生装置1について説明する。
本実施形態のミスト発生装置1は、図1に示すように、浴室10内において、図示しない熱源機から供給された湯水を流す湯水供給配管11に接続されており、図2に示すように、複数の基本ユニット2と、その複数の基本ユニット2が一体的に装着される中間流路形成部材3と、基本ユニット2の一部を露出させ中間流路形成部材3の大半を覆う化粧部材5とによって構成されている。
【0026】
基本ユニット2は、図3に示すように、湯水をミスト状にして噴射する噴射部15を備えたフロント部材7と、フロント部材7と組み合わさり中間流路形成部材3に接続されるリア部材8と、フロント部材7とリア部材8との間に配されて噴射部15への湯水の流入を制限する閉塞部材9とによって構成されている。
【0027】
フロント部材7は、図3、4に示すように、ほぼ四角形の板状体であり、一方の壁面側(後述する旋回流路17側)に後述するリア部材8の装着部22が嵌合する被装着部21が設けられている。被装着部21は、円形状の窪みであり、フロント部材7の厚み方向(他方の壁面側)に沈んだ部分である。また、被装着部21には、その内周に沿って図示しないリング状のパッキンが配されている。なお、前記パッキンの内径の大きさは、後述するリア部材8の装着部22の外径の大きさとほぼ同じか、あるいは若干小さくされている。
【0028】
また、被装着部21の縁端より内側の領域においては、図4に示すように、フロント部材7の壁面から垂直に突出したほぼ円柱状の凸部14が複数設けられている。凸部14は、ほぼ等間隔に並べられると共に、円形を描くように配置されている。そして、その凸部14の位置に、フロント部材7の厚み方向に貫通した噴射部15と、噴射部15に湯水を供給する噴射部供給流路16と、後述する閉塞部材9が配置される台座20が形成されている。なお、本実施形態では、凸部14の数は12個である。
また、図3に示すように、フロント部材7における他方の壁面側(被装着部21が形成された壁面と反対側の壁面側)には、噴射部15に対応する位置に、椀状の厚み方向に窪んだ噴射凹部27が形成されている。
【0029】
噴射部15は、図5、6に示すように、旋回流路17と噴射流路18とが連通して形成されており、被装着部21が形成された壁面側(一方の壁面側)に旋回流路17が位置し、噴射凹部27が形成された壁面側(他方の壁面側)に噴射流路18が位置する。即ち、旋回流路17と噴射流路18は、フロント部材7の厚み方向中途で連通しており、双方の流路がフロント部材7における同一の壁面側に位置することはない。
【0030】
旋回流路17は、流路形状が円柱状の導入部25と、フロント部材7の一方の壁面側から噴射流路18との連通部に向かって内径が狭くなる円錐状の旋回部26を有している。
導入部25は、前記壁面側に位置するもので、凸部14の天面に形成された導入側開口25aと連通している。また、導入部25の内壁には、湯水が流入する開口30が2箇所設けられている。開口30は、後述する噴射部供給流路16と連通しており、後述する噴射部供給流路16に流入した湯水が旋回流路17に吐出される箇所である。
【0031】
旋回部26は、導入部25と後述する噴射流路18との間に位置しており、導入部25に導入された湯水を流路の壁面に沿って旋回させて、湯水の旋回流を効率的に発生させる箇所である。なお、導入部25と旋回部26の境界における旋回部26の内径の大きさは、導入部25の内径と同じ大きさとされている。
【0032】
噴射流路18は、流路形状が円柱状であり、導入部25の内径の大きさより小さい。具体的には、噴射流路18の内径の大きさは、旋回流路17と噴射流路18の境界における旋回流路17の内径の大きさと同じ大きさとされている。また、噴射流路18は、フロント部材7の壁面側に設けられた噴射側開口18aと連通している。なお、噴射側開口18aは、フロント部材7の噴射凹部27の底部に位置している。
【0033】
噴射部供給流路16は、前記したように、噴射部15に湯水を供給する流路であり、フロント部材7の凸部14に形成されている。また、噴射部供給流路16は、噴射部15の導入部25に形成された開口30と連通すると共に、凸部14の外側面側と天面側に開放部を有する溝状の流路である。そして、噴射部供給流路16は、導入部25の流路断面の接線方向に延びるように設けられている。
【0034】
また、噴射部供給流路16は、1つの噴射部15に対して2本ずつ設けられている。そして、その2本の噴射部供給流路16は、互いに平行であり且つずれた位置関係であり、さらに対向して配されている。換言すると、2つの噴射部供給流路16は、噴射部15に導入する湯水を同じ方向に流す位置関係である。これにより、各噴射部供給流路16から導入された湯水は、噴射部15内において衝突し合うようなことがない。具体的には、いずれの開口30から噴射部15に湯水が導入されたとしても、噴射部15の側面に沿って同一方向に旋回しながら吐出側開口18aに向かって流れる。
【0035】
台座(嵌合部)20は、凸部14における天面を、円状にフロント部材7の厚み方向に凹ませた部分であり、後述する閉塞部材9の一部が嵌り込む程度の大きさとされている。即ち、台座20は底面20a及び側面20bを備えており、底面20aに閉塞部材9が載置され、側面20bによって閉塞部材9が台座20の位置からずれることを阻止している。なお、台座20の底面20aには、噴射部15と、その噴射部15に湯水を導入する噴射部供給流路16が配置されている。
【0036】
リア部材8は、図3、7に示すように、フロント部材7とほぼ同じ大きさのほぼ四角形の板状体であり、リア部材8の一方の壁面側(フロント部材7が配置される側)に当該壁面から垂直に突出したリング状の装着部22が設けられている。なお、装着部22の外径の大きさは、フロント部材7の被装着部21に配された図示しないパッキンの内径の大きさとほぼ同じか、あるいは若干大きい程度とされている。即ち、装着部22は、図示しないパッキンが配された被装着部21に嵌合される部分である。
【0037】
また、装着部22の内側縁より内側の領域においては、湯水が導入される開口32と、フロント部材7に設けられた凸部14に相当する位置に保持部28が設けられている。
開口32は、リア部材8のほぼ中央に配置され、リア部材8を厚み方向に貫通した流路(ユニット導入流路)23と連通している。また、リア部材8における装着部22が配された壁面の反対側の壁面側(他方の壁面側)には、当該壁面から立設するようにユニット導入流路23の一部を形成する管状の継ぎ手部31が設けられている。即ち、継ぎ手部31に導入された湯水は、ユニット導入流路23を通過して開口32から吐出される。
【0038】
保持部28は、後述する閉塞部材9の一部を保持するものであり、図3に示すように、リア部材8の壁面から突出した4つの凸状円弧片33により形成されている。
凸状円弧片33は、側面40が円弧形状であり、各凸状円弧片33の側面40が同一円周上に並べられると共に、ほぼ等間隔となるように配置されている。即ち、凸状円弧片33に囲繞された部分は空間であり、凸状円弧片33同士の間隔(流入部)43を介して湯水を前記空間に導入することができる。
【0039】
また、凸状円弧片33の突端部には、リア側テーパー部41が設けられている。リア側テーパー部41は、4つの凸状円弧片33が形成する円の中心側に向かって下り勾配(図3の拡大図基準)とされている。換言すると、リア側テーパー部41は、図3の拡大図に示すように、外側面40a側の突端長さの方が、内側面40b側の突端長さより長くなるように設計されており、その突端長さが異なる端部同士を繋いだ傾斜面である。
なお、本実施形態では、凸状円弧片33の側面は、円弧を形成する中心角が70〜90度、好ましくは90度とされており、リア部材8の壁面からの突出長さが3〜4mm程度とされている。
【0040】
閉塞部材9は、ほぼ円柱状の部材で、一方の端面側に前記した凸状円弧片33のリア側テーパー部41と同一方向の勾配を有したテーパー部42が形成されている。即ち、閉塞部材9のテーパー部42は、図8を基準にすると、閉塞部材9の内側から外側に向かって下り勾配とされた傾斜面である。なお、本実施形態では、閉塞部材9のテーパー部42を保持部28に配置した際に、テーパー部42の傾斜面と、リア側テーパー部41の傾斜面が互いにほぼ平行な位置関係となるように設計されている。即ち、閉塞部材9の位置がずれるような状況が発生しても、保持部28のリア側テーパー部41が閉塞部材9の位置ずれを補正するガイド機能を果たす。
【0041】
また、閉塞部材9におけるテーパー部42が設けられた端部と反対側の端部(以下、閉塞側端部とも言う)44は、フロント部材7の台座20に配されると、旋回流路17の導入側開口25aを完全に閉塞する必要があるため、台座20の底面20aと密着しやすい平面にされている。
【0042】
中間流路形成部材3は、図2に示すように、タンク部47を有したマニホールドの機能を果たすものであって、タンク部47の吐出側に4つのユニット装着部45が設けられ、タンク部47の流入側に湯水供給配管11(図1)が接続される図示しない配管接続部が設けられている。即ち、湯水供給配管11を通過した湯水は、図示しない配管接続部からタンク部47に導入され、各ユニット装着部45から装着された基本ユニット2に分配供給される。
【0043】
化粧部材5は、ミスト発生装置1の美観を構成するもので、基本ユニット2が位置する4つのユニット露出部48と、中間流路形成部材3が嵌り込む図示しない中間流路装着部が設けられている。
ユニット露出部48は、ほぼ四角形の開口であり、フロント部材7の形状とほぼ同じ大きさにされている。
また、前記中間流路装着部は、中間流路形成部材3の大きさより若干小さい開口とされており、その開口には縁端を内側に折り込んだ爪部が備えられている。
【0044】
次に、ミスト発生装置1の組み立て構造について説明する。
本実施形態のミスト発生装置1は、図1、2に示すように、中間流路形成部材3の図示しない配管接続部が湯水供給配管11と接続されており、その中間流路形成部材3に基本ユニット2と化粧部材5が装着されている。基本ユニット2は、リア部材8の継ぎ手部31を介して中間流路形成部材3のユニット装着部45に装着され、化粧部材5は図示しない中間流路装着部が中間流路形成部材3における図示しない配管接続部側に位置するように配されている。この状態において、基本ユニット2におけるフロント部材7の噴射部15側の壁面が、化粧部材5のユニット露出部48から露出するように配置されている。
【0045】
また、基本ユニット2においては、フロント部材7の被装着部21と、リア部材8の装着部22を嵌合させて組み付けられている。フロント部材7とリア部材8との組み付けによって、フロント部材7とリア部材8との間に湯水が流入する空間12が形成される。なお、フロント部材7とリア部材8との組み付けには、被装着部21に装着部22を嵌合させて組み付ける手段に加えて、フロント部材7の被装着部21側の壁面であって被装着部21より外側の領域に、厚み方向に貫通しないネジ孔(図示しない)を設け、リア部材8に前記ネジ孔に対応する位置に厚み方向に貫通したネジ孔(図示しない)を設け、双方のネジ孔の位置を合わせてネジ等で締め付ける手段が併用されている。
【0046】
また、本実施形態では、フロント部材7とリア部材8との間に、閉塞部材9を配置させてミストを発生させるノズル機能を作用させる構成が形成されている。具体的には、フロント部材7の凸部14と、リア部材8の保持部28を対向するように配し、両者の間に閉塞部材9を配置させている。即ち、閉塞部材9が、図9、10に示すように、凸部14の台座20と保持部28のリア側テーパー部41の間に挟まれるように配され、閉塞部材9の閉塞側端部44が座面20の底面20aに密着する配置とされている。
【0047】
即ち、閉塞部材9をフロント部材7の座面20に配置した状態においては、閉塞部材9の閉塞側端部44によって噴射部15の導入側開口25aを閉塞している。これにより、リア部材8のユニット導入流路23から供給された湯水は、導入側開口25aを通じて噴射部15に流れることを阻止でき、閉塞部材9の側面側の噴射部供給流路16からのみ噴射部15に湯水を導入することができる。
【0048】
一方、閉塞部材9をフロント部材7の座面20に配置した状態においては、閉塞部材9のテーパー部42側が保持部28に保持された状態でもあり、閉塞部材9のテーパー部42側端部とリア部材8の壁面との間には空間が形成されている。そして、その空間に連通するように、凸状円弧片33により形成された流入部43が位置している。
従って、本実施形態では、閉塞部材9が、凸部14と保持部28に挟まれた位置からずれることがない構成であるが、リア部材8側からの外力や、フロント部材7側からの外力による若干の移動の余地を備えた構成である。換言すると、閉塞部材9に対して、リア部材8側からフロント部材7側に外力が加えられることで、閉塞部材9の噴射部15に対するシール力が向上する。
【0049】
次に、ミスト発生装置1の作用について説明する。
ミスト発生装置1は、浴室10内の混合栓55を操作して、適温の湯水が湯水供給配管11に供給されると、中間流路形成部材3を介して各基本ユニット2に湯水が導入されて、各噴射部15においてその湯水をミスト状にして噴射する。
【0050】
具体的には、中間流路形成部材3から各基本ユニット2に湯水が分配されると、その湯水は基本ユニット2のユニット供給流路23を介して、フロント部材7とリア部材8の間に形成された空間12に導入される。このとき、空間12に導入された湯水が、凸状円弧片33により形成された流入部43を介して、保持部28の内側に流れる。また、この状態においては、空間12内の圧力が大気圧より高くなっているため、湯水の流れは外部と連通した噴射部15に向かう方向に形成される。これにより、図10に示すように、保持部28の内側においては、閉塞部材9をフロント部材7側に押圧するような水圧が作用する。
【0051】
即ち、リア部材8のユニット供給流路23から湯水が供給されると、湯水は流入部43に流れて閉塞部材9をフロント部材7側に押圧するため、閉塞部材9と座面20との密着性を向上させることができる。これにより、閉塞部材9のシール力が増すため、噴射部供給流路16以外の経路から噴射部15に湯水が導入されることが確実に阻止される。即ち、本実施形態では、水圧により閉塞部材9のシール性を向上させることで、噴射部供給流路16から噴射部15に導入される吐出圧を低下させることがない。換言すると、噴射部15に導入される湯水の吐出圧を、一定以上に維持することが容易となる。
【0052】
ここで、上記したように、噴射部供給流路16は、旋回流路17の流路断面に対して接線方向に延びた流路である。そのため、閉塞部材9の作用により、噴射部供給流路16から噴射部15に一定以上の吐出圧で湯水が導入されると、湯水は旋回流路17の流路側面に沿って旋回流を発生させる。
【0053】
そして、その湯水の旋回流は、旋回流路17の旋回部26において、徐々に旋回の範囲が狭くされながら噴射側開口18aに向かって進行するため、進行するにしたがって、徐々に旋回速度が増す。そして、旋回速度が高速となった湯水が噴射側開口18aに至ると、旋回により生じた遠心力によって外部に拡散されてミストとなる。
【0054】
本実施形態のミスト発生装置1によれば、閉塞部材9が供給される湯水の水圧によってフロント部材7側に押圧されるため、全ての噴射部15における導入側開口25aがムラ無く高いシール性で閉塞することができる。これにより、いずれの噴射部15においても、導入される湯水の吐出圧が減じることがないため、全ての噴射側開口18aから確実にミストを噴射できる。即ち、本実施形態のミスト発生装置1によれば、一部の噴射部15からミストが発生しないという不具合が発生しないため、使用者に不快な思いをさせることなく暖房効果やサウナ効果、シャワー効果を提供することが可能となる。
【0055】
本実施形態では、噴射部15を設けたフロント部材7と、そのフロント部材7と対となって空間12を形成するリア部材8との間に、別部材とした閉塞部材9を配置したため、水圧などの外力を作用させて閉塞部材9のシール性を向上させることができる。これにより、従来技術のように成形品の部材形状のバラツキなどが原因で起こり得る一部の噴射部におけるシール性の低下を防止できる。
【0056】
また、上記実施形態によれば、ミストを発生するノズル構造を備えた所謂ノズル部材を用いる必要がない。そのため、従来と比べると、ミストの噴射部を多数に増やしても、ミスト発生装置の重量を各段に軽量化することが可能である。
【0057】
上記実施形態では、閉塞部材9をリア部材8の保持部28に保持させる構成を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、閉塞部材をフロント部材の噴射部に配置させただけの構成であっても構わない。以下、本実施形態と異なる構成に注目して説明する。
即ち、図11に示すように、フロント部材60には、噴射部63を囲むように台座部を形成する2つの「L」字型の台座形成部材65が設けられている。そして、その台座部形成部材65により囲まれた台座部に、四角形状の閉塞部材70が配置される。なお、閉塞部材70は、図12に示すように、一方の平面に外方向に突出した逸脱防止部75が設けられており、逸脱防止部75は後述するリア部材61側に配される。
【0058】
また、噴射部63には、流路断面の接線方向に延びた2つの噴射部供給流路64が接続されている。そして、閉塞部材70に噴射部63が閉塞された状態で、噴射部供給流路64を介して噴射部63に湯水を供給できるように、噴射部63と噴射部供給流路64にフロント部材60の壁面から突出した突出壁71を設け、フロント部材60の壁面から突出した部分に、噴射部63と噴射部供給流路64の一部が形成される構成とした。そのため、台座部に配置された閉塞部材70は、図13に示すように、突出壁71に載置されることとなる。これにより、噴射部63の導入側開口63aを閉塞しつつ、噴射部供給流路64の流路を確保することができる。
【0059】
一方、リア部材61には、上記実施形態で示した保持部28に相当する構成は備えず、図14に示すように、フロント部材60と組み付けられる側の壁面を単なる平面とした。そして、フロント部材60の台座部に閉塞部材70を配置し、そのフロント部材60とリア部材61を組み付けると、図15に示す状態となる。即ち、フロント部材60の台座部に配置された閉塞部材70は、閉塞部材70に設けられた逸脱防止部75によって、台座部の位置から逸脱することが防止される。そして、フロント部材60とリア部材61との間に形成された空間72に導入された湯水の水圧によって、閉塞部材70をフロント部材60側に押圧できるため、上記実施形態と同様の作用効果を発揮可能である。
【0060】
また、上記実施形態では、閉塞部材9、70を湯水の水圧によって、フロント部材7、60側に押圧する構成を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、水圧に加えて又は水圧と代えて、バネやゴムなどの弾性体79を閉塞部材9,70に作用させた構成であっても構わない。なお、図16に示す断面図は、水圧に加えて、バネの外力を閉塞部材に作用させた構成を示している。
【0061】
上記実施形態では、複数の基本ユニットを備えたミスト発生装置を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、上記した1つの基本ユニットをミスト発生装置としても構わない。あるいは、5つ以上の基本ユニットを組み合わせたミスト発生装置であっても構わない。
【0062】
上記実施形態では、2本の噴射部供給流路16を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、図17に示すように、1本であっても、3本以上であっても構わない。特に、噴射部供給流路16を複数本設ける場合においては、噴射部15,63に導入される湯水の流れが同じ方向となるように設計する必要がある。
【0063】
また、上記実施形態では、複数の凸部14がそれぞれ独立して配置された構成を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図18に示すように、複数の凸部が連結した連結凸部78としても構わない。これにより、噴射部を、限られた領域内に高い密度で配置することが可能となる。なお、連結凸部78に噴射部を設ける場合であっても、それぞれの噴射部及び噴射部供給流路を独立させた構成とすることが望ましい。
【0064】
上記実施形態のミスト発生装置1は、浴室10内の混合栓55から延びた湯水供給配管11に接続された構成を示したが、混合栓55より湯水の流れ方向上流側で分岐させた配管に接続した構成であっても構わない。
【0065】
ここで、上記したように、本発明によれば、ミストを発生するノズル構造を備えた所謂ノズル部材を用いる必要がないため、従来と比べると、本実施形態における基本ユニットを各段に軽量化することが可能である。
そこで、上記構成を備えたミスト発生装置を、図19に示すように、浴室ユニットにおける点検口の天井パネル80として用いることを考えた。これにより、浴室内の空間が、風呂設備で圧迫されることがないため、浴室空間を有効利用できる。また、浴室の天井からのミストの噴射が可能となり、暖房効果やサウナ効果、シャワー効果をより効率的なものとすることができる
また、浴室のリフォームなどでミスト機能を付加するような場合であっても、従来よりも安価に提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 ミスト発生装置
7、60 フロント部材
8、61 リア部材
9、70 閉塞部材
12 空間
14 凸部
15、63 噴射部
16 噴射部供給流路
20 台座(載置部)
28 保持部
43 流入部
78 連結凸部
79 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された湯水を噴霧可能なミスト発生装置であって、
霧状の湯水を噴射する噴射部を有したフロント部材と、フロント部材と対となって噴射部より湯水の流れ方向上流側の位置に湯水が流入する空間を形成するリア部材と、フロント部材とリア部材との間に位置し空間側から噴射部側に湯水が流入する通路以外の部分を閉塞できる閉塞部材とを備え、
前記空間に流入した湯水が、前記通路から噴射部に導入されて噴霧されることを特徴とするミスト発生装置。
【請求項2】
前記閉塞部材は、供給される湯水の水圧によってフロント部材側に押圧されることを特徴とする請求項1に記載のミスト発生装置。
【請求項3】
前記閉塞部材をフロント部材側に付勢する弾性体を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のミスト発生装置。
【請求項4】
リア部材には、フロント部材に設けられた噴射部に対応する位置に閉塞部材を囲繞して当該閉塞部材を保持する保持部が設けられ、
前記保持部は、先端側で閉塞部材を保持するものであり、囲繞された内側に湯水を流入させる流入部を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のミスト発生装置。
【請求項5】
前記噴射部は、前記空間と外部を連通した流路を有し、
フロント部材には、前記流路の導入側に閉塞部材が載置される載置部を有し、
前記載置部に閉塞部材が載置された状態で、前記流路と連通する前記通路が確保されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のミスト発生装置。
【請求項6】
フロント部材には、噴射部が設けられ閉塞部材が載置される複数の載置部を有し、
前記載置部の一部又は全部が連結されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のミスト発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−245223(P2011−245223A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124146(P2010−124146)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】