説明

ミスト装置及びミスト機能付き浴室乾燥機

【課題】 ノズルの詰まり防止・詰まり解消を、特別な装置等を追加設置することなしに既存の構成要素を用いた制御により実現し得るミスト装置やミスト機能付き浴室乾燥機を提供する。
【解決手段】 噴霧弁62を閉、排水弁81と給水弁61を開にして特定通路領域Sに給水しミスト用水を充填した後に、全弁62,81,61を閉にして特定通路領域Sを密閉閉め切り状態にする。水比例弁142を開にして熱源機4からの熱源用温水を液・液熱交換器7に導入して特定通路領域S内のミスト用水を加熱し、昇温に伴う膨張により特定通路領域Sの内圧を上昇させる。所定内圧まで上昇した時点で噴霧弁と給水弁を開にして高圧のミスト用水をノズル5,5からミストにして噴出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室等の室内空間に対し加熱された湯水をミストにして噴霧することによりサウナ感を得るためなどに用いられるミスト装置、及び、浴室の室内空間に対し温風を吹き出すことにより乾燥させる浴室乾燥機に対し上記のミストを噴霧するというミスト機能を付加したミスト機能付き浴室乾燥機に関し、特にミストを噴霧するためのノズルの目詰まりの発生を回避したり発生した目詰まりを解消したりするための技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、ミストが噴霧される吹出口又は噴射口(以下、総称して「ノズル」という)の詰まりを防止するための技術が種々提案されている。例えば、水垢等の付着は湿潤・乾燥を繰り返すことが引き金となって生じるとの観点から、スチーム(高湿度温風)の吹き出し運転が停止している間もノズルを湿潤状態にして乾燥させないようにするために、ノズル近傍に貯水タンクを設置しこの貯水タンクから給水される水を溜めて運転停止時のノズルに供給するようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。あるいは、ノズルをポリプロピレン、ポリチレン又はフッ素樹脂等の撥水性樹脂材料で構成したり、同材料でコーティングしたり、あるいは、金属メッキしたりする一方、配管上流側に空圧機構を備え、ミスト噴霧の使用後に空圧機構を作動させて配管内の残水をノズルから外に吹き飛ばすようにしたものも知られている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3252084号公報
【特許文献2】特開2002−13748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の如き従来の技術では、いずれもノズルの詰まり防止のために特別な装置を追加する必要があり、そのためにコストが嵩んだり、スペースを取られてコンパクト化の要請に反したりする事態を招いている。又、その上に、ミスト装置を新規に設置する場合にはノズル詰まりの防止対策を施したものを設置し得るものの、既に設置されているミスト装置等に対しては対策することができずに、取り替えざるを得ないという不経済さを招くことにもなる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ノズルの詰まり防止あるいは詰まり解消を、特別な装置等の追加設置を必要とすることなく実現し得るミスト装置又はミスト機能付き浴室乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、ミスト装置に係る第1発明では、既に備えている構成要素を活用してそれらの作動制御によりノズルの掃除機能を果たさせるようにしたものであり、その掃除機能の原理として、ノズルの上流側配管のある領域を密閉状態に閉め切り、その閉め切った領域内に残留する滞留水を昇温させて膨張させることにより内圧を高め、高まった内圧の下でノズルからミスト放出(ミスト噴出)させるという掃除作動を実行させることにより、詰まり解消や詰まり防止を図るようにしたものである。
【0007】
すなわち、第1発明では、ミストを噴霧するノズルと、このノズルに対しミスト用水を供給する供給通路と、この供給通路に介装されて上記ミスト用水を加熱する加熱手段と、上記ミスト用水の供給切換及びミストの噴霧切換のための弁と、この弁の開閉切換作動制御を行う制御手段とを備えたミスト装置を対象にして、制御手段に次の掃除運転制御モードを備えることとした。すなわち、上記制御手段に対し、上記供給通路の上記加熱手段を挟んだ部分である特定通路領域を弁の開閉切換作動制御により内部にミスト用水が充填された状態で密閉閉め切りし、この密閉閉め切り状態において上記加熱手段を加熱作動制御して上記特定通路領域内のミスト用水を昇温させることによりその特定通路領域の内圧を所定内圧値まで昇圧させ、昇圧後の特定通路領域内のミスト用水を上記弁の開閉切換作動制御により上記ノズルから噴出させるように構成された掃除運転制御モードを備えることとした(請求項1)。
【0008】
又、より具体的には、ミストを噴霧するノズルと、このノズルに対しミスト用水を供給する供給通路と、この供給通路に介装されて上記ミスト用水を加熱する加熱手段と、この加熱手段の上流側の供給通路に介装された給水弁と、上記加熱手段の下流側であって上記ノズルの上流側の供給通路に介装された噴霧弁と、これら給水弁及び噴霧弁の開閉切換作動制御並びに上記加熱手段の加熱作動制御によりミスト運転を実行する制御手段とを備えたミスト装置を対象にして、上記制御手段に上記ノズルを掃除するための掃除運転を実行する次の如き掃除運転制御モードを備えることとした。すなわち、上記掃除運転制御モードとして、上記給水弁及び噴霧弁の開閉切換作動により上記供給通路の内の加熱手段を挟んだ給水弁から噴霧弁までの間の特定通路領域を内部にミスト用水が充填された状態で密閉閉め切りする密閉制御と、この密閉閉め切り状態において上記加熱手段を加熱作動させて上記特定通路領域内のミスト用水を昇温させることによりその特定通路領域の内圧を所定内圧値まで昇圧させる昇圧制御と、昇圧制御後の特定通路領域内のミスト用水を上記ノズルから噴出させる噴出制御とを順に実行する構成とした(請求項2)。
【0009】
以上の第1発明の場合、高圧のミスト用水が供給されてノズルからミストとして噴出されることにより、ノズルに付着していた水垢等を引き剥がして詰まり解消が図られたり、ノズルに付着しかかっている水垢等を吹き飛ばして詰まり発生の予防が図られたりすることになる。そして、このような掃除機能が、ミスト装置に通常備えられている各種弁と加熱手段とを活用しそれらの作動制御を行うことによって実現され、昇圧のための特別な機器類の追加を必要とすることもない。
【0010】
かかる第1発明においては、上記加熱手段と噴霧弁との間の供給通路から分岐する排水通路をさらに備え、上記密閉制御として上記排水通路に介装された排水弁の開閉切換作動をも併せて行う構成とすることができる(請求項3)。この場合、前回のミスト運転終了後に供給通路内の水抜きが上記排水通路を通して行われていたとしても、上記排水弁の開閉切換作動を行うことで排水弁を境界とする特定通路領域内に対しミスト用水を確実に充填させることが可能になる。
【0011】
又、以上の第1発明において、さらに報知手段を備え、上記掃除運転制御モードとして、上記掃除運転を実行するに先だって掃除運転を実行する旨を、及び/又は、上記掃除運転の実行中に掃除運転の実行中である旨を上記報知手段により報知させる報知制御をさらに備える構成とすることができる(請求項4)。このようにすることにより、異常ではなくて掃除運転が自動で実行されていることがユーザに把握される上に、比較的高温のミストが勢いよく噴出されることになるため、それを事前に把握してそのミストに晒されることを回避することも可能となる。
【0012】
一方、以上のいずれかのミスト装置が併設され、加熱手段と、この加熱手段による加熱を受けて温風を生成し浴室空間に吹き出させる送風機とを備えたミスト機能付き浴室乾燥機を対象とする第2発明では、上記掃除運転制御モードとして、昇圧後の特定通路領域内のミスト用水を上記ノズルから噴出させる際に、併せて上記送風機を強制作動させる制御を行う構成とした(請求項5)。この第2発明の場合、併設されたミスト装置の掃除運転の際には比較的高温のミスト噴出となるものの、そのミストがノズルから出た瞬間に上記送風機による強制的な風の流れと接触して混合・拡散されるため、ユーザがその後にミストに触れたとしても体感温度を下げることが可能となる。
【0013】
さらに、第2発明においては、回転角度を変更させることにより浴室空間に対する吹き出しの向きを強制的に変更調整する駆動式ルーバーをさらに備えるようにし、上記掃除運転制御モードとして、昇圧後の特定通路領域内のミスト用水を上記ノズルから噴出させる際に、併せて上記ルーバーを予め設定された掃除モード角度に強制回転作動させる制御を行うように構成することができる。そして、その際の掃除モード角度として、上記ノズルから噴出されるミストの流れを浴室空間内の人体が不存在であると予測される箇所に向けて強制的に変更させ得る回転角度を設定することができる(請求項6)。このようにすることにより、上記の強制的な風の流れとの接触による混合・撹拌に加え、ノズルから噴出されるミストの流れの向きが強制的に変更されて確実に人体とは接触しないようにされることになる。
【発明の効果】
【0014】
以上、説明したように、請求項1〜請求項4のいずれかのミスト装置によれば、高圧のミスト用水の供給によりノズルからミストを噴出させることができ、この噴出時の圧力によりノズルに付着していた水垢等を引き剥がしての詰まり解消や、ノズルに付着しかかっている水垢等を吹き飛ばして詰まり発生の予防等を確実に図ることができることになる。そして、このような掃除機能を、ミスト装置に通常備えられている各種弁と加熱手段とを活用しそれらの作動制御を行うことによって実現されるため、昇圧のための特別な機器類の追加を必要とすることもなく、又、掃除機能のない既存のミスト装置に対しても適用可能となる。
【0015】
特に、請求項3によれば、前回のミスト運転終了後に供給通路内の水抜きが上記排水通路を通して行われていたとしても、排水弁の開閉切換作動を行うことで排水弁を境界とする特定通路領域内に対しミスト用水を確実に充填させることもできるようになる。
【0016】
請求項4によれば、報知手段による報知によって、異常ではなくて掃除運転が自動で実行されていることをユーザに把握させることができる上に、比較的高温のミストが勢いよく噴出されることになったとしても、それを事前に把握させてそのミストに晒されることのないように回避することを促進させることができるようになる。
【0017】
一方、請求項5又は請求項6のミスト機能付き浴室乾燥機によれば、併設されたミスト装置の掃除運転の際には比較的高温のミストが噴出されるものの、そのミストをノズルから出た瞬間に送風機による強制的な風の流れと接触させることができ、空気との積極的かつ強制的な混合・拡散によってユーザがミストに触れたとしても体感温度を大幅に下げることができるようになる。
【0018】
特に請求項6によれば、上記の強制的な風の流れとの接触による混合・撹拌に加え、ノズルから噴出されるミストの流れの向きを強制的に変更させて確実に人体とは接触しないようにさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係るミスト装置2及びこのミスト装置2を併設することによりミスト機能が付与されたミスト機能付き浴室乾燥機3を示したものである。本実施形態では、ミスト装置2でのミスト用水を加熱・昇温させるための熱源、及び、浴室乾燥機での浴室内の循環内気を加熱・昇温させるための熱源として、熱源機4から延びる暖房用の温水循環系を通して供給される暖房用高温水(熱媒体)を共用する構成を採用したものを示している。従って、かかる熱媒体以外の他のもの(例えば電気ヒータ等)を熱源(加熱源)として用いたものに対し本発明を適用してもよく、又、互いに独立した個別の熱源を用いたものに本発明を適用してもよく、限られない。又、図示した浴室乾燥機3は浴室空間R(図2参照)の天井R1にはめ込まれる天井設置タイプのものであるが、これに限らず、浴室空間Rの側壁R2等に取り付けられる壁掛け設置タイプのものに本発明を適用してもよい。以下、詳細に説明する。
【0021】
上記ミスト装置2は、1又は2以上の任意数(図例では2つ)のミスト噴霧用のノズル(噴霧口)5,5と、これらノズル5,5まで図外の給水源(例えば水道管等)から給水されるミスト用水を供給する供給通路6と、この供給通路6の途中においてミスト用水を加熱する加熱手段としての液・液熱交換器7とを備えている。そして、上記供給通路6の5の上流側位置には同じく電磁弁により構成された噴霧弁62,62が介装されている。又、液・液熱交換器7と各噴霧弁62との間の供給通路6から排水通路8が分岐されており、この排水通路8は、電磁弁により構成された排水弁81及びバキュームブレーカ82を介して、機外に延ばされている。図1中の符号63は逆止弁、64はストレーナ、65はガバナであり、それぞれ給水弁61よりも上流側の供給通路6に介装されている。又、符号66はミスト用水の温度を検出するミスト用水温度センサであり、このミスト用水温度センサ66は液・液熱交換器よりも下流側であって各噴霧弁62よりも上流側の供給通路6に配設されている。
【0022】
上記浴室乾燥機3は、浴室空間Rの内気を取り込んで再び吹き出させる内気循環通路9と、この内気を循環送風させるための送風機(循環ファン)10と、取り込んだ内気を加熱・昇温させるための加熱手段としての放熱用熱交換器11とを主要構成要素として備えており、これらがハウジング12内に内蔵されている。そして、ハウジング12の下面側の本体グリル13(図3参照)が浴室天井R1から浴室空間Rに臨んで露出するように設置されている。上記内気循環通路9は、送風機10の作動により浴室空間Rの内気を本体グリル13の空気吸込口131から吸い込んだ後、放熱用熱交換器11の外面側を通過させてルーバー132の開口から再び浴室空間Rに向けて吹き出させるようになっている。上記の内気が上記放熱用熱交換器11の外面側を通過する際に熱交換器11から放熱を受け、この放熱により加熱・昇温された内気が浴室空間Rに戻されるようになっている。
【0023】
上記熱源機4は、温水循環式の温水暖房機能を備えたものであり、燃焼熱により加熱した所定温度の温水を熱源として1又は2以上の暖房端末に対し個別の循環路を通して循環供給させるものである。そして、上記の暖房端末の一つとして浴室乾燥機3の放熱用熱交換器11が設定され、さらに同様に暖房端末の一つとしてミスト装置2の液・液熱交換器7が設定されている。熱源機4から熱源用の温水を供給するために延ばされた温水往き通路14の下流側は二つに分岐され、一方が熱動弁により構成された供給切換弁141を介して放熱用熱交換器11の入口に連通接続され、他方が閉止機能付きの水比例弁142を介して液・液熱交換器7の入口に連通接続されている。そして、液・液熱交換器7の出口側と、放熱用熱交換器11の出口側とは互いに合流され、熱交換後に低温となった温水が温水戻り通路15を通して上記熱源機4に戻されるようになっている。上記供給切換弁141が開作動されると放熱用熱交換器11に熱源用温水が供給されて内気の加熱が可能となり、閉作動されると熱源用温水の供給が遮断されて内気の加熱も停止されることになる。他方、上記水比例弁142は開度調整が可能となっており、開度調整により熱源用温水の供給程度が変更されて液・液熱交換器7での加熱度合が変更されるようになっている。又、上記水比例弁142が全閉作動されると、熱源用温水の供給が遮断されるためミスト用水の加熱も停止されることになる。図1中の符号143は熱源用温水の温度を検出する熱源用温水温度センサである。
【0024】
上記のミスト装置2が併設された浴室乾燥機3はその運転作動がコントローラ16によって制御されるようになっている。このコントローラ16はリモコン161や熱源機4の熱源機コントローラ41と有線又は無線により通信可能に接続され、予め組み込まれたプログラムに基づき各種検出信号、熱源機41からの指令もしくは送出情報、あるいは、リモコン161からの入力信号等を受けて各種の運転制御(制御モード)を実行するようになっている。
【0025】
例えばミスト運転制御モードでは、リモコン161からミスト運転のON操作信号が出力されると、まず全噴霧弁62,62を閉状態にしたまま給水弁61及び排水弁81を開作動させて供給通路6内に給水する一方、水比例弁142を所定開度に開作動させて液・液熱交換器7に熱源用温水を循環供給させる。ミスト用水温度センサ66による検出温度が所定のミスト用温度まで昇温すれば、排水弁81を閉作動させ噴霧弁62,62を開作動させる。これにより、昇温されたミスト用水が各ノズル5に供給され、各ノズル5からミストMとなって浴室空間Rに向けて噴霧されることになる。そして、ユーザ操作によりリモコン161からミスト運転のOFF操作信号が出力されると、水比例弁142を全閉作動させる一方、給水弁61及び噴霧弁62,62を閉作動させる。この際、排水弁81等の開閉作動により給水弁61よりも下流側の供給通路6内に残留するミスト用水の水抜きを実行するようになっている。
【0026】
以上の構成を前提として、各ノズル5の詰まり発生を予防したり、各ノズル5に発生した詰まりを解消したりするために、上記コントローラ16に組み込まれた掃除運転制御モードについて、以下説明する。
【0027】
掃除運転制御モードによる処理の概略は次の通りである。すなわち、まず、弁開閉切換作動によってミスト装置2の通路内(配管内)にある特定通路領域S(図1に点線で囲む領域参照)内にミスト用水を充填(充満)させ、ミスト用水が充填された状態でその特定通路領域Sを密閉閉め切りする。弁開閉切換作動の対象は噴霧弁62,62、給水弁61及び排水弁81である。次に、水比例弁142の開作動制御により液・液熱交換器に熱源用温水を導入して上記特定通路領域S内に充填されたミスト用水を所定温度まで加熱させ、加熱に伴うミスト用水の膨張により特定通路領域内の内圧を所定値まで昇圧させる。そして、昇圧すれば昇圧状態のミスト用水を各ノズル5,5に供給して各ノズル5,5から噴出させる。つまり、高圧のミスト用水をノズル5,5に供給して噴出させることにより詰まり解消や詰まり予防を図るようにし、その高圧の圧力を既に備えられている構成要素の作動制御、すなわち、供給通路6等に介装されている各種弁61,62,81及び水比例弁142の切換作動制御により得られるようにし、制御モードの追加だけで特別な構成要素の追加設置を不要にしたのである。本実施形態での特定通路領域Sとは、液・液熱交換器7を挟んだ給水弁61から噴霧弁62,62までの供給通路6の部分及びこれに分岐連通した排水弁81までの排水通路8の部分である。つまり、3種類の弁61,62,81を閉作動させることにより密閉閉め切り状態にすることができる通路領域のことである。
【0028】
次に、上記の掃除運転制御モードについて、図4及び図5を参照しつつ詳細に説明する。掃除運転制御モードの実行指令(詳細は後述する)が例えばリモコン161の掃除運転スイッチのON操作により出力されると制御が開始され、まず、噴霧弁62,62を閉状態に維持しつつ給水弁61及び排水弁81を開作動させ(ステップS1)、この状態を設定時間α秒が経過するまで持続させる(ステップS2でNO)。これにより、前段階のミスト運転終了後に水抜きされている特定通路領域Sに対し開状態の給水弁61を通して給水が流入し、内部の空気が同じく開状態の排水弁81及び排水通路8を通して外部に排出されて流入水の先端が排水弁81位置まで到達する。上記の設定時間α秒は特定通路領域Sの末端まで給水が流入して充填されるために要する時間であり、通路もしくは配管長さにもよるが例えば1〜2秒の値が設定される。そして、α秒が経過すれば(ステップS2でYES)、まず排水弁81を閉作動させ(ステップS3)、水充填の確実を期すための設定時間β秒(例えば0.5秒)の経過後に(ステップS4でYES)、給水弁61を閉作動させる(ステップS5)。なお、ステップS2でのα秒の経過により水の充填はほぼ完了しているため、ステップS3〜S5の代わりに排水弁81と給水弁61とを同時に閉作動させるようにしてもよい。以上で特定通路領域Sの内部がミスト用水を充填させた状態で密閉閉め切り状態にされる。かかるステップS1〜ステップS5が密閉制御を構成する。
【0029】
次に、熱源機4のコントローラ41に対して熱源用温水(暖房温水)の循環供給要求指令を出力し(ステップS6)、熱源機4の暖房運転をONに切換制御(例えば熱源機4の側の熱動弁を熱源機4の側の作動制御により開切換)させる。これにより、温水往き通路14に熱源用温水が供給可能となる。そして水比例弁142を開作動させて(ステップS7)、上記熱源用温水を液・液熱交換器7に対し導入し、温水戻り通路15を通して循環供給させる。液・液熱交換器7に導入された熱源用温水による熱交換加熱により上記特定通路領域S内のミスト用水が加熱・昇温され、それに伴い体積が膨張し、特定通路領域S内の内圧が上昇することになる。この内圧上昇の程度はミスト用水の昇温の程度と関係付けられるため、そのミスト用水の温度上昇を監視することで把握することができる。このため、ミスト用水温度センサ66の検出温度が、内圧上昇完了温度として予め試験等により定めて設定した設定温度Tp以上に到達したか否かにより、所定の内圧値まで内圧上昇が完了したか否かを判定することとし、上記検出温度が設定温度Tp以上に到達するまで液・液熱交換器7による熱交換加熱を続行させる(ステップS8でNO)。
【0030】
そして、上記検出温度が設定温度Tp以上に到達すれば(図5の点P参照)、つまり、特定通路領域Sの内圧が所定の内圧値まで上昇完了すれば(ステップS8でYES)、噴霧弁62,62及び給水弁61を開作動させる(ステップS9)。これにより、内圧上昇した状態のミスト用水を各ノズル5,5からミストとして噴出させ、この噴出により各ノズル5,5の内面に付着しそうな水垢等や、既に付着している水垢等を外部に吹き飛ばす。上記のステップS9でのミストの噴出は、図5に示すようにミスト用水の温度がミスト過昇防止温度Tx(例えば75℃)を超えない範囲で所定時間継続させ、所定時間経過の後に水比例弁142を閉作動させればよい。以上で掃除運転制御が終了する。上記のステップS6からステップ8でYESになるまでが昇圧制御を構成し、それ以降が噴出制御を構成している。
【0031】
なお、給水弁61が、これを閉作動させても給水は停止し得るものの内圧は上流側に伝搬されてしまうタイプのものであっても、その上流側にある逆止弁63に対し内圧上昇が作用することによりこの逆止弁63を完全に遮断させることができ、この逆止弁63までの部分で特定通路領域を構成しこの特定通路領域を密閉閉め切り状態にすることができるようになる。
【0032】
このような掃除運転制御モードの実行指令は、上述の如くリモコン161を用いたユーザ操作に基づいて出力させるようにしてもよいが、さらに自動にて出力させるようにしてもよい。例えば、ミスト運転がユーザにより実行されれば、そのミスト運転毎に掃除運転制御モードの実行指令を毎回自動出力させるようにしてもよいし、あるいは、定期的もしくはミスト運転の実行回数毎に実行指令を自動出力させてもよい。ミスト運転毎に毎回とは例えばミスト運転の開始前又はミスト運転の終了時に掃除運転を実行させるというものである。定期的にとは例えば24時間毎、48時間毎もしくは1週間毎にというものである。又、ミスト運転の実行回数毎にとは例えばミスト運転5回毎にというものである。さらには、ミスト運転の不実行期間が所定の設定期間を超えたときには実行指令を出力しておき、次回のミスト運転の実行前に掃除運転が自動的に実行されるようにしてもよい。
【0033】
又、掃除運転制御モードにより各ノズル5からミストを噴出させる際には、そのミストが高温となるおそれがあるため、各ノズル5からのミスト噴出と併せて送風機10を強制作動制御して浴室空間Rに風の流れを強制的に形成し、この風の流れにより上記のミストを拡散させるようにしてもよい。このようにすることにより、各ノズル5から噴出時点のミストは高温であっても、各ノズル5から出た瞬間に上記の風の流れにより空気と積極的に混ざり合って広範囲に拡散されるようになるため、ミストがユーザにたとえ触れてもユーザが感じる体感温度を格段に下げることができる。
【0034】
さらに、上記掃除運転制御モードにより各ノズル5からミストを噴出させる際には、そのミストが高温となるおそれがあるため、各ノズル5から噴出されるミストの向きを積極的に変更させるようにしてもよい。掃除運転が実行される時にはユーザは浴室外にいるのが通常であるためさほど考慮する必要はないが、特にミスト運転の開始前に掃除運転を実行させる場合に上記のミストの向きを変更させることは好ましいものとなる。具体的には、図2に示すように上記と同様に送風機10を強制作動させる一方、本体グリル13の駆動式ルーバー132を所定の掃除モード角度になるようにその駆動モータを回転作動制御する。これにより、浴室乾燥機3から吹き出される風によって各ノズル5から吹き出されるミストが浴室の側壁R2に向けて流れるようにミストの流れを強制的に変更させるようにすればよい。上記の掃除モード角度は、要するに浴室空間R内でユーザ(人体)が存在しないであろうと予測される箇所に向けてミストの流れの向きが強制的に変更される回転角度に設定すればよく、通常は各ノズル5に対し天井近傍の側壁R2に向けて流れる風を強制的に吹き出させる回転角度を固定値として設定すればよい。
【0035】
制御の具体例を図6に基づいて説明すると、ミスト運転のON操作指令が出力されれば(ステップS21でYES)、ルーバー132をそれまでにユーザがリモコン161等により設定したユーザ設定角度に回転移動させ(ステップS22)、掃除運転制御モードの開始(実行指令の出力)がなければこれを継続させる(ステップS23でNO)。これが原則であるが、掃除運転制御モードの実行指令が出力されれば(ステップS23でYES)、ルーバー132を強制的に掃除モード角度に回転移動させ(ステップS24)、掃除運転が終了するまでこの状態に維持する(ステップS25でNO)。そして、掃除運転が終了すれば(ステップS25でYES)、ルーバー132を原則どおりユーザ設定角度に回転移動させてミスト運転を開始させる(ステップS26)。
【0036】
加えて、上記の掃除モード角度として上記の固定値の他に浴室空間R内の人体の存在を検出し、その検出結果に応じて他の回転角度値を設定するようにしてもよい。例えば、ユーザは浴室空間R外であり人体の存在は検出されない場合には念のため上記の固定値を設定する一方、ユーザが浴室空間R内であり人体の存在が検出された場合にはその検出された人体の位置とは逆側もしくは異なる側に向いた回転角度を設定するようにしてもよい。上記の人体の存在を検出する検出手段としては次のようなものを用いればよい。例えば浴槽内に人体が存在するか否かは水位センサの検出値の変動状況あるいは浴槽内に設置した心拍センサを用いた人体の心拍検出により把握することができ、浴室空間Rにユーザが存在するか否かは浴室入口の赤外線センサによる入退室の検出や、浴室内に設置した画像認識装置による監視状況により把握することができる。
【0037】
さらに、掃除運転制御モードが実行される際には、その掃除運転制御モードの制御内容の一部として、リモコン161や例えば図2に符号411で示す浴室リモコン等のその他のリモコンを報知手段として用い、掃除運転制御モードの制御開始前にユーザに掃除運転が開始される旨や、又は、制御の実行中に掃除運転が現在行われている旨等について、音声案内、警告灯の点灯・点滅、又は、表示部に対する文字案内表示等により報知させるようにしてもよい。上記の浴室リモコン411の場合には、熱源機コントローラ41を介して指令信号を出力させればよい。あるいは、これらに代えて又はこれらに加えて、本体グリル13に警告灯の点灯・点滅や警告音の吹鳴等を行うようにしてもよい。例えば図3に示すように本体グリル13に運転ランプ133に加えて警告ランプ(例えばLED)134や警報ブザー135を設け、上記掃除運転制御モードの制御内容の一部として、掃除運転の開始前や開始後の実行中は警告ランプ134の点灯・点滅や、警報ブザー135の吹鳴を行わせるようにしてもよい。
【0038】
以上の掃除運転制御モードについては、事前に工場等でコントローラ16に組み込まれた状態で新設される場合のみならず、既設のミスト装置等のコントローラに対しても基板の交換・追加もしくは上書きインストールの実行等により後から追加することができる。これにより、既設のミスト装置等であっても、本発明による作用効果を得ることができるようになる。
【0039】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、供給通路6が水抜きされた状態から制御を開始させた例を示したが、前段階で水抜きされずに通路内にミスト用水が充満(充填)している状態であれば、噴霧弁62,62、給水弁61及び排水弁81は閉状態に維持されて特定通路領域Sは既に密閉閉め切り状態にされているため、掃除運転制御モードとしてはミスト用水の充填及び密閉閉め切りにするための制御を省略することができる。
【0040】
又、上記の実施形態では、ミスト装置2が浴室乾燥機3に併設された場合を説明したが、これに限らず、ミスト装置を単独に設置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態を示す模式図である。
【図2】浴室を側面からみた説明図である。
【図3】浴室天井に設置された浴室乾燥機を下から見た一部切欠斜視図である。
【図4】掃除運転制御モードの制御内容を示すフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートに対応させたタイムチャートである。
【図6】ルーバーの角度変更制御に関するフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
2 ミスト装置
3 浴室乾燥機
5 ノズル
6 供給通路
7 液・液熱交換器(加熱手段)
8 排水通路
10 送風機
11 放熱用熱交換器(加熱手段)
16 コントローラ(制御手段)
61 給水弁
62 噴霧弁
81 排水弁
132 駆動式ルーバー
161 リモコン(報知手段)
411 浴室リモコン(報知手段)
S 特定通路領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミストを噴霧するノズルと、このノズルに対しミスト用水を供給する供給通路と、この供給通路に介装されて上記ミスト用水を加熱する加熱手段と、上記ミスト用水の供給切換及びミストの噴霧切換のための弁と、この弁の開閉切換作動制御を行う制御手段とを備えたミスト装置であって、
上記制御手段は、
上記供給通路の上記加熱手段を挟んだ部分である特定通路領域を弁の開閉切換作動制御により内部にミスト用水が充填された状態で密閉閉め切りし、この密閉閉め切り状態において上記加熱手段を加熱作動制御して上記特定通路領域内のミスト用水を昇温させることによりその特定通路領域の内圧を所定内圧値まで昇圧させ、昇圧後の特定通路領域内のミスト用水を上記弁の開閉切換作動制御により上記ノズルから噴出させるように構成された掃除運転制御モードを備えている
ことを特徴とするミスト装置。
【請求項2】
ミストを噴霧するノズルと、このノズルに対しミスト用水を供給する供給通路と、この供給通路に介装されて上記ミスト用水を加熱する加熱手段と、この加熱手段の上流側の供給通路に介装された給水弁と、上記加熱手段の下流側であって上記ノズルの上流側の供給通路に介装された噴霧弁と、これら給水弁及び噴霧弁の開閉切換作動制御並びに上記加熱手段の加熱作動制御によりミスト運転を実行する制御手段とを備えたミスト装置であって、
上記制御手段は上記ノズルを掃除するための掃除運転を実行する掃除運転制御モードを備えており、
上記掃除運転制御モードは、上記給水弁及び噴霧弁の開閉切換作動により上記供給通路の内の加熱手段を挟んだ給水弁から噴霧弁までの間の特定通路領域を内部にミスト用水が充填された状態で密閉閉め切りする密閉制御と、この密閉閉め切り状態において上記加熱手段を加熱作動させて上記特定通路領域内のミスト用水を昇温させることによりその特定通路領域の内圧を所定内圧値まで昇圧させる昇圧制御と、昇圧制御後の特定通路領域内のミスト用水を上記ノズルから噴出させる噴出制御とを順に実行するように構成されている
ことを特徴とするミスト装置。
【請求項3】
請求項2に記載のミスト装置であって、
上記加熱手段と噴霧弁との間の供給通路から分岐する排水通路をさらに備え、上記密閉制御は上記排水通路に介装された排水弁の開閉切換作動をも併せて行うように構成されている、ミスト装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のミスト装置であって、
報知手段をさらに備え、
上記掃除運転制御モードは、上記掃除運転を実行するに先だって掃除運転を実行する旨を、及び/又は、上記掃除運転の実行中に掃除運転の実行中である旨を上記報知手段により報知させる報知制御をさらに備えている、ミスト装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のミスト装置が併設され、加熱手段と、この加熱手段による加熱を受けて温風を生成し浴室空間に吹き出させる送風機とを備えたミスト機能付き浴室乾燥機であって、
上記掃除運転制御モードは、昇圧後の特定通路領域内のミスト用水を上記ノズルから噴出させる際には、併せて上記送風機を強制作動させる制御を行うように構成されていることを特徴とするミスト機能付き浴室乾燥機。
【請求項6】
請求項5に記載のミスト機能付き浴室乾燥機であって、
回転角度を変更させることにより浴室空間に対する吹き出しの向きを強制的に変更調整する駆動式ルーバーをさらに備え、
上記掃除運転制御モードは、昇圧後の特定通路領域内のミスト用水を上記ノズルから噴出させる際には、併せて上記ルーバーを予め設定された掃除モード角度に強制回転作動させる制御を行うように構成され、
上記掃除モード角度として、上記ノズルから噴出されるミストの流れを浴室空間内の人体が不存在であると予測される箇所に向けて強制的に変更させ得る回転角度が設定されている、ミスト機能付き浴室乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−151845(P2007−151845A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351504(P2005−351504)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【出願人】(503116659)ノーリツエレクトロニクステクノロジー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】