説明

ミセル

【課題】リポポリ多糖類似体E5564に代表される化合物を患者に送達するための方法を提供する。
【解決手段】E5564のミセル、ミセルを含む溶液、ミセルを調製するための方法、およびミセルを患者に送達するための方法を開示する。このミセルは固定された、予め選択された流体力学的直径を有し、かつ塩基性または酸性の両親媒性化合物から形成される。ミセル含有水溶液を静脈内投与し、敗血症を治療する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2000年2月18日に提出された米国仮出願第60/183,768号に対して優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、ミセル、ミセルを含む溶液、ミセルを調製するための方法、およびミセルを患者に送達するための方法を提供する。ミセルは固定され、予め選択された流体力学的直径を持ち、かつ塩基性または酸性の両親媒性化合物から形成される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
両親媒性化合物は親水性(水を好む)と疎水性(水を嫌う)領域を持つ化合物である。臨界ミセル濃度、または「CMC」を超える濃度で水に分散させると、両親媒性化合物は自然にミセルへと自己会合する。ミセルはそれらが分散している溶媒の性質に応じた大きさを持つ。ミセルの大きさは、同等の球の直径で約200nmから数百nmに変化しうる。
【0004】
静脈内投与のために配合される薬物が、ミセルを形成する両親媒性化合物である場合、その薬物の薬物動態は形成されたミセルの大きさに依存しうる。薬物動態は、投与後の体内における薬物分布の時間経過を説明する。薬物の薬物動態は、体内における効力、代謝、分布、および/または毒性に、能動的または受動的に影響すると考えられる。他の投与経路では、ミセルの大きさも薬物動態に影響を与えうる。薬物がミセルの形態をとっている場合、作用部位に対するその薬物の送達の有効性は集合体の大きさに依存するが、それはミセルの大きさが拡散、細胞膜間輸送、ならびに酵素、輸送タンパク質および脂質との相互作用に影響を与える可能性があるためである。
【0005】
本発明の研究以前には、水中における両親媒性薬物の化合物のミセルの大きさは溶液の状態によって支配されることが知られており、そのため一旦薬物の配合が選択されると、予め決定されたミセルの大きさの分布が生じると予測された。薬学製剤中の送達された薬物ミセルの大きさを制御する能力は制限されており、したがって作用部位に薬物を送達させる速度の制御は、溶液中のミセルの大きさを制御できないために制限されていた。
【0006】
薬物の送達速度および薬物動態を制御できるように、水溶液中の両親媒性薬物化合物によって形成されたミセルの大きさを制御または固定することが、本技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、以下の段階を含む、ミセルを調製するための方法を提供する:酸性両親媒性化合物は少なくとも一個のイオン化可能な基を含む、ある量の少なくとも一つの酸性両親媒性化合物を提供する段階;その第1のアルカリ性水溶液は少なくとも一つの塩基性金属塩および少なくとも一つの中性塩を含み、第1のアルカリ性水溶液は予め決定された金属イオン濃度を有し、第1の水溶液中の酸性の両親媒性化合物の濃度はその酸性の両親媒性化合物の臨界ミセル濃度よりも高く、かつその第1のアルカリ性水溶液のpHおよび金属イオン濃度は予め選択された流体力学的直径を持つミセルを形成するのに効果的である、酸性両親媒性化合物を第1のアルカリ性水溶液に添加する段階、それによって予め選択された流体力学的直径を持つ酸性の両親媒性化合物のミセルを含む第2の水溶液を形成する段階。この方法はさらに、以下の段階を含む:第3の水溶液が緩衝液系または少なくとも一つの強酸を含む水溶液である、第2のアルカリ性水溶液を第3の水溶液に添加する段階;それによってその第4の水溶液中のミセルが、第2のアルカリ性水溶液中のミセルの固定され、予め選択された流体力学的直径と実質的に同一である、固定されて予め選択された流体力学的直径を持つ、第2のアルカリ性水溶液のpHに対して中性のpHを持つ第4の水溶液を形成する段階。
【0008】
本発明はまた、以下の段階を含む、ミセルを調整するための方法を提供する:少なくとも一個のイオン化可能な基を含む、ある量の少なくとも一つの塩基性両親媒性化合物を提供する段階;その塩基性両親媒性化合物を第1の酸性水溶液に添加する段階であって、ここでその第1の水溶液は少なくとも一つのプロトン性酸性の金属塩および少なくとも一つの中性金属塩を含み;その第1の水溶液は予め決定された濃度の金属イオンを有し、その第1の水溶液中の塩基性の両親媒性化合物の濃度は、その塩基性の両親媒性化合物の臨界ミセル濃度よりも高く、その第1の水溶液の酸性pHおよび金属イオン濃度は予め選択された流体力学的直径を持つミセルを形成するのに効果的である段階;それによって予め選択された流体力学的直径を持つ酸性の両親媒性化合物のミセルを含む、第2の水溶液を形成する段階。この方法はさらに、第2のアルカリ性水溶液を第3の水溶液に添加する段階であって、ここでその第3の水溶液が緩衝液系または少なくとも一つの強塩基を含む溶液である段階;それによって第2の酸性水溶液のpHに対して、中性のpHを持つ第4の水溶液を形成する段階であって、ここでその第4の水溶液中のミセルが、第2の酸性水溶液中のミセルの固定され、予め選択された流体力学的直径と実質的に同一である、固定され、予め選択された流体力学的直径を持つ段階を含む。
【0009】
本発明はまた、新規なミセル、ミセルを含む新規な水溶液、ならびにミセルおよび/またはミセルを含む水溶液を患者に送達する、新規な方法も提供する。
【0010】
本発明のこれらのおよび他の観点は、下記に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】Vmax/kTと塩濃度との間の関係を示すグラフである。
【図2】NaClを添加するにつれてミセルの流体力学的直径(光の分散強度、R90の増加により測定した)が増加することを示すグラフである。
【図3】NaClの添加によりナトリウム濃度が一定に保たれているアルカリ性溶液中のE5564のミセル流体力学的直径を示すグラフである。
【図4】pHが変化する、NaOH溶液に溶解させた後のpH7.6におけるリン酸塩緩衝溶液中のE5564のミセル流体力学的直径と、一定のナトリウム濃度(0.01N Na)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本明細書で用いる両親媒性化合物とは、水溶液中に分散させた場合にミセルを形成する、親水性部分と疎水性部分とを持つ化合物を意味する。本発明の両親媒性化合物は、好ましくは少なくとも一個のイオン化可能な基を含む。
【0013】
本明細書で用いたような臨界ミセル濃度(「CMC」)は、水溶液中で自発的にミセルが形成し始める両親媒性化合物の濃度である。「低」臨界ミセル濃度は、好ましくは10-6g/ml未満である。
【0014】
本明細書で用いた場合のミセルとは、両親媒性化合物またはイオンから自発的にかつ可逆的に形成されたある水溶性の集合体のことを言う。
【0015】
ミセルの流体力学的直径は、ミセルが同じ直径の球体としての流体力学的性質(例えば拡散係数)を持つことを示す。例えば、幅が5nmでかつ長さが9nmのミセルは、流体力学的直径が7nmである。
【0016】
本発明者らは、酸性または塩基性のpHで形成したミセルの流体力学的な直径は、酸性または塩基性のpHで実質的同一のままであり、かつミセルの流体力学的直径は、酸性または塩基性のpHを第2のより中性のpH値(すなわち、酸性または塩基性のpHに比較して中性)に調節した後は、一般的にミセルの流体力学的直径が増加すると考えられるが、実質的に同一のままである、固定化され(すなわち安定な)、予め選択された流体力学的直径のミセルを調製するための方法を発見した。この発見は、固定され、予め選択された流体力学的直径を持つミセルの薬学製剤を産生する方法を提供する。本発明の方法を用いて、最適の流体力学的直径を持つミセルを用いることによって、最適に望ましい薬物動態および薬物送達特性をもたらす薬物製剤を設計することができる。
【0017】
本明細書に説明された方法は、臨界ミセル濃度が低い、全ての酸性または塩基性の両親媒性化合物に適用可能である。好ましくは酸性または塩基性の両親媒性化合物には、少なくとも一個のイオン化可能な基が含まれる。臨界濃度が低い製剤では、ミセルの流体力学的直径の必要とされる安定性が提供できるように、薬物製剤の塩濃度を十分に低く保たなければならない。このように、そのような段階から形成されるミセルの流体力学的直径の安定性は、臨界ミセル濃度およびペアの粒子間ポテンシャルエネルギーによって支配される。
【0018】
ミセルは、結晶成長に似たモノマー仲介型過程を経て流体力学的直径を成長させうる。流体力学的直径の増加速度はモノマー濃度(すなわち、臨界ミセル濃度)に比例する。低い臨界ミセル濃度を持つ系では、この機構によるミセルの流体力学的直径の増加速度を十分緩慢にすることで、薬学的産生物として利用するのに必要とされる時間、ミセルが安定化できるようにする。
【0019】
ミセルはまた、粒子間作用のポテンシャルエネルギーによって支配される凝集および融合機構によって流体力学的直径を大きくさせることも可能である。凝集作用に対する傾向は、安定比Wとして表示することができる。ミセルの安定性はWとともに増加する。Wは溶液の塩濃度に逆比例し、またミセルの静電チャージに正比例する。したがって溶液の塩濃度が低くなった場合および/またはミセルの静電電荷が大きくなった場合には、ミセルの安定性は、凝集-融合機構による成長に相関して大きくなる。図1は、0.6Mを超える塩濃度でミセル間の最大相互作用ポテンシャルエネルギー(Vmax)がゼロであり、かつ凝集速度が制限的な拡散のみであることを示している。しかしながら塩濃度が減少する場合、Vmax/kTは増加し、かつ凝集速度はそれに応じて減少する。したがって塩濃度を調節することによって、この系に必要な安定性を与えることができる。
【0020】
酸性の両親媒性化合物を用いて望ましいミセル流体力学的直径を得るために、酸性の両親媒性化合物を予め決定されたpH値と一定の金属イオン濃度でアルカリ性水溶液に溶解させる。pHは、酸性の両親媒性化合物の少なくとも一個のイオン化可能な基のpKaよりも高くなくてはならない。アルカリ性水溶液は、少なくとも一個の塩基性金属塩、少なくとも一個の中性金属塩、および予め決定された金属塩濃度を水溶液に添加することによって調製される。好ましくは塩基性金属塩および中性金属塩は、同じ金属イオンを持っている。代表的な金属イオンには、限定されないが、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Fe2+、Fe3+、Al3+、Mn3+、Mn2+、Zn2+、Cu2+、Cu+、Ni2+、Sn2+、Na+、Li+、K+などが含まれる。好ましい金属イオンには、Na+、K+、Li+、Ca2+、Ba2+、Mg2+、およびAl3+が含まれる。本発明で有用な代表的な塩基性金属塩は、例えば前述した金属イオンの酸化物および水酸化物の塩である。本発明で有用な代表的な中性金属塩には、例えば前述した金属イオンのハロゲン化物塩(例えば、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物)が含まれる。アルカリ性水溶液に酸性の両親媒性化合物を添加すると、固定化され、予め選択された流体力学的直径を持つミセルが得られる。「固定化された」とは、流体力学的直径が安定である(すなわち、実質的に変化しない)ことを意味し、かつ「予め選択された」とは、流体力学的直径が最適のまたは望ましい薬学動態特性および/もしくは他の特性を持つように選択されたことを意味している。
【0021】
塩基性の両親媒性化合物を用いて望ましいミセル流体力学的直径を得るために、塩基性の両親媒性化合物を予め決定されたpH値と一定の金属イオン濃度で酸性水溶液に溶解させる。pH値は、塩基性の両親媒性化合物の少なくとも一個のイオン化可能な基のpKaよりも低くなくてはならない。酸性水溶液は、少なくとも一個のプロトン酸、少なくとも一個の中性金属塩、および予め決定された金属塩濃度を水溶液に添加することによって調製される。好ましくはプロトン酸と中性金属塩は、同じ金属イオンを持っている。代表的な金属イオンには、限定されないが、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Fe2+、Fe3+、Al3+、Mn3+、Mn2+、Zn2+、Cu2+、Cu+、Ni2+、Sn2+、Na+、Li+、K+などが含まれる。好ましい金属イオンには、Na+、K+、Li+、Ca2+、Ba2+、Mg2+、およびAl3+が含まれる。本発明で有用な代表的なプロトン酸は、例えば塩酸、リン酸、硫酸、酢酸、クエン酸、カルボン酸などである。本発明で有用な代表的な中性金属塩には、例えば前述した金属イオンのハロゲン化物の塩(例えば、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物)が含まれる。酸性水溶液に塩基性の両親媒性化合物を添加すると、固定化され、予め選択された流体力学的直径を持つミセルが得られる。
【0022】
アルカリ性または酸性の水溶液に含まれる両親媒性化合物の濃度は、両親媒性化合物の臨界ミセル濃度よりも高いと考えられる。予め選択された流体力学的直径のミセルが得られる条件は、pH値と塩濃度のマトリックスでミセルを調製することによって決定できる。ミセルの異なる流体力学的直径は、異なるpH値と塩濃度を持つ溶液中でミセルを調製することで生じる。それゆえ固定化され、予め選択された流体力学的な直径を持つミセルを含む溶液は、選択された濃度の酸性または塩基性の両親媒性化合物、pH、および金属イオン濃度に基づいて調製できる。
【0023】
上記に加えて本発明者らは意外なことに、酸性水溶液またはアルカリ性溶液中のミセルの流体力学的直径が、酸性水溶液またはアルカリ性溶液のpHが中性にされた場合(すなわちその場合、両親媒性化合物中のイオン化可能な基が、両親媒性化合物にある荷電したイオン化可能な基に関して中和される)、実質的に同一のままであることを発見した。
【0024】
特に、緩衝液系および/または少なくとも一つの強酸を含む水溶液が、アルカリ性水溶液のpHに相対して中性のpHを持つ水溶液を産生するのに十分な量で、酸性の両親媒性化合物のミセルを含むアルカリ性水溶液に添加される。相対的に中性のpHを持つ水溶液に含まれるミセルの流体力学的直径は、アルカリ性水溶液に含まれるミセルの流体力学的直径と実質的に同一のままであると考えられる。
【0025】
別の態様では、緩衝液系および/または少なくとも一つの強塩基を含む水溶液が、酸性水溶液のpHに相対的な中性のpHを持つ水溶液を産生するのに十分な量で、塩基性の両親媒性化合物のミセルを含む酸性水溶液に添加される。相対的に中性のpHを持つ水溶液中に含まれるミセルの流体力学的直径は、酸性水溶液に含まれるミセルの流体力学的直径と実質的に同一のままであると考えられる。
【0026】
本発明において、「塩基性」または「アルカリ性」のpH、および「中性」のpHという用語は相対的な用語である。例えば第1の水溶液が塩基性またはアルカリ性のpHであって、最終的な水溶液が中性のpHである場合には、中性のpHは塩基性またはアルカリ性の溶液のpHに比較して中性である。言い換えると、中性溶液のpHはアルカリ性溶液のpHよりも小さい。より好ましくは、第1の水溶液が塩基性またはアルカリ性のpHを有する場合には、pHは約9から約13であって、より好ましくは約10から約12である。第1のアルカリ性溶液に比較して中性のpHは好ましくは約4から9未満であって、より好ましくは約6から9未満、一層より好ましくは約7から9未満、さらにより好ましくは約7から約8、最も好ましくは約7.4から約7.6である。
【0027】
同様に「酸性」のpHおよび「中性」のpHという用語は相対的な用語である。例えば第1の水溶液が酸性のpHであって、最終的な水溶液が中性のpHである場合には、中性のpHは酸性溶液のpHに比較して中性である。言い換えると、中性溶液のpHは酸性溶液のpHよりも大きい。より好ましくは、第1の水溶液が酸性のpHである場合には、pHは約1から約6であって、より好ましくは約3から約5である。第1の酸性溶液に比較して中性のpHは好ましくは約6から約13であって、より好ましくは約7から約9、さらにより好ましくは約7から約8、最も好ましくは約7.4から約7.6である。
【0028】
相対的に中性のpHを持つ水溶液に含まれるミセルの流体力学的直径が、アルカリ性または酸性の水溶液中のミセルの流体力学的的直径と「実質的に同一」のままである場合には、「実質的に同一」とは、相対的に中性の溶液に含まれるミセルの流体力学的直径が4nmより大きく変化することはなく、より好ましくは2nmより大きく変化することがなく、さらにより好ましくは1nmより大きく変化することはなく、いっそうより好ましくは0.5nmより大きく変化することはなく、かつ最も好ましくはアルカリ性または酸性の溶液中のミセルの流体力学的直径から全く変化しないことを意味している。
【0029】
例えばリン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、マレイン酸緩衝液、炭酸緩衝液、重炭酸緩衝液、酒石酸緩衝液、トロメタミン緩衝液、トリエタノールアミン緩衝液、メグルミン緩衝液などを含む緩衝液系が、本技術分野で幾分知られていると考えられる。例えば、塩酸、硫酸、リン酸などを含む強酸が、本技術分野で幾分知られていると考えられる。
【0030】
本発明のミセルの流体力学的直径は、約1nmから約100nm、好ましくは約5nmから約50nm、より好ましくは約6nmから約20nm、さらにより好ましくは約7nmから約15nm、かつ最も好ましくは約7nmから約9nmでありうる。
【0031】
本発明のミセルの流体力学的直径は好ましくは、約5nmの流体力学的直径範囲、好ましくは約4nm、より好ましくは約3nm、最も好ましくは約2nmまたは約1nmの流体力学的直径範囲を意味する。例えば約2nmの流体力学的直径の範囲に関しては、流体力学的直径は約7nmから約9nmでありうる。または、流体力学的直径が約2nmから約4nm、または約3nmから約5nm、または約4nmから約6nm、または約5nmから約7nm、または約6nmから約8nm、または約8nmから約10nm、または約9nmから約11nm、または約10nmから約12nm、または約11nmから約13nm、または約12nmから約14nm、または約13nmから約15nm、または約14nmから約16nm、または約15nmから約17nm、または約16nmから約18nm、または約17nmから約19nm、または約18nmから約20nm、または約19nmから約21nm、または約20nmから約22nm、または約21nmから約23nm、または約22nmから約24nm、または約23nmから約25nm、または約24nmから約26nmでありうる。言い換えると、2nmの範囲(または5nmの範囲、または4nmの範囲、または3nmの範囲、または1nmの範囲)は、約1nmから約100nmの範囲内のどこかであればよく、好ましくは約5nmから約50nm、より好ましくは約6nmから約20nm、さらにより好ましくは約7nmから約15nm、かつ最も好ましくは約7nmから約9nmの範囲内のどこかでありうる。
【0032】
ミセルの流体力学的直径はまた、実質的に全てのミセルがほぼ同じ流体力学的直径(すなわち、または上述したとおりの流体力学的直径の範囲)を持っていることを意味する。「実質的に全てのミセルがほぼ同じ流体力学的直径を持っている」とは一般的に、50%を超えるミセルが上述したとおりの範囲内に入る流体力学的直径を有していることを意味し、好ましくは60%を超える、70%を超えるまたは80%を超えるミセルが上述した範囲内に入る流体力学的直径を有していることを意味し、さらにより好ましくは約90%、約95%、または約99%のミセルが上述したとおりの範囲内に入る流体力学的直径を有していることを意味し、最も好ましくは100%のミセルが上述したとおりの範囲内に入る流体力学的直径を有していることを意味する。
【0033】
本発明で使用するための酸性または塩基性の両親媒性化合物には、本技術分野で既知の任意の酸性または塩基性の両親媒性化合物が含まれる。好ましくはこの酸性または塩基性両親媒性化合物には少なくとも一個のイオン化可能な基が含まれる。酸性の両親媒性化合物の少なくとも一個のイオン化可能な基は、例えばリン酸類、カルボン酸類、硫酸類、スルホン酸類、スルフィン酸類、チオール類、アルコール類、エノール類などでありうる。塩基性の両親媒性化合物の少なくとも一個のイオン化可能な基は例えば、アミン類、ホスフィン類などでありうる。
【0034】
少なくとも一個のイオン化可能な基を含む例示的な酸性または塩基性の両親媒性化合物には、国際公開公報第96/39411号、ならびに米国特許第5,530,113号、第5,681,824号、第5,750,664号、第5,935,938号、および第6,184,366号に記載されている化合物が含まれるが、これらの開示は、その全体が本明細書に参照として組み入れられる。これらの化合物は一般に、式(A)、薬学的に許容されるそれらの塩、および/またはそれらの立体異性体(鏡像異性体および/またはジアステレオマーを含む)によって表示される。
【0035】
【化20】

式中、R1は、
【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

からなる群より選択され、
J、KおよびQはそれぞれ独立して直鎖状または分枝状のC1-15アルキルであり、
LはO、NまたはCであり、
MはOまたはNであり、
GはN、O、S、SOまたはSO2であり、
R2は直鎖状または分枝状のC5-15アルキルであり、
R3は、
【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

からなる群より選択され、
EはN、O、S、SOまたはSO2であり、
A、BおよびDはそれぞれ独立して直鎖状または分枝状のC1-15アルキル基であり、
R4は直鎖状もしくは分枝状のC4-20アルキル基または
【化34】

であり、
UおよびVはそれぞれ独立して直鎖状または分枝状のC2-15アルキル基であり、
Wは水素または直鎖状もしくは分枝状のC1-5アルキル基であり、
R5は水素、-J'、-J'-OH、-J'-O-K'、-J'-O-K'-OHまたはJ'-O-PO(OH)2であり、
J'およびK'はそれぞれ独立して直鎖状または分枝状のC1-5アルキル基であり、
R6はヒドロキシ、ハロゲン、C1-5アルコキシ基またはC1-5アシルオキシ基であり、
A1およびA2は、
【化35】

からなる群よりそれぞれ独立して選択され、
Zは化学式(A)直鎖状または分枝状のC1-10アルキル基である。
【0036】
「アルキル」という用語は、分枝状であっても直鎖状であってもよく、かつアルキル鎖に沿った任意の位置で、一個または複数のハロゲン原子で選択的に置換されていてもよい脂肪族の有機基のことをいう。「薬学的に許容される塩」という用語には、化合物と、有機または無機の酸または塩基との組み合わせから誘導される、化合物の塩が含まれる。代表的な薬学的に許容される塩には、リジン塩、トリス塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩などが含まれる。
【0037】
式(A)の好ましい化合物は式(1)、薬学的に許容されるその塩、および/またはその立体異性体(鏡像異性体および/またはジアステレオマーを含む)である。
【化36】

【0038】
好ましい態様においては、式(1)は式(1A)または薬学的に許容されるその塩であって、以下の式で表される。
【化37】

【0039】
化合物1Aがナトリウム塩(すなわち、両方の-OPO(OH)2基にある二つのハロゲン原子がナトリウムで置換されている)である場合には、化合物はE5564である。
【0040】
本発明で用いられる、国際公開公報第96/39411号、ならびに米国特許第5,530,113号、第5,681,824号、第5,750,664号、第5,935,938号、および第6,184,366号に記載されている他の好ましい化合物には、式(B)の化合物、薬学的に許容されるその塩、および/またはその立体異性体(鏡像異性体および/またはジアステレオマーを含む)が含まれる。
【化38】

式中、R1、R3およびR4は下記に定義したとおりであり、

式中、化合物(1)〜(10)のRAはCH2OCH3であって、かつ化合物(11)のRAはCH3である。
【0041】
本発明で用いることのできる他の具体的な両親媒性化合物には、その開示がその全体が本明細書に参照として組み入れられる、米国特許第5,530,113号に記載された化合物が含まれる。このような化合物には、以下の例示的な脂質A類似体:B274、B276、B286、B288、B313、B314、B379、B385、B387、B388、B398、B400、B479、B214、B218、B231、B235、B272、B287、B294、B300、B318、B377、B380、B406、B410、B425、B426、B427、B442、B451、B452、B459、B460、B464、B465、B466、B531、B415、B718、B587、B737、B736、B725、B763、B477、B510などが含まれる。
【0042】
上記の化合物を作成するための方法は、国際公開公報第96/39411号、ならびに米国特許第5,530,113号、第5,681,824号、第5,750,664号、第5,935,938号、および第6,184,366号に記載されており、その開示はその全体が本明細書に参照として組み入れられる。
【0043】
国際公開公報第96/39411号、ならびに米国特許第5,530,113号、第5,681,824号、第5,750,664号、第5,935,938号、および第6,184,366号に記載されているリポポリ多糖類は、治療および/または予防を必要としている患者の任意のリポポリ多糖仲介型疾患、例えば敗血症、敗血症(septicemia)(例えば内毒血症)、グラム陰性菌関連内毒血症(熱、全身性の炎症、多発性血管内凝血、低血圧、腎臓の機能不全および急性の腎障害、急性の呼吸障害症候群、成人の呼吸障害症候群、肝細胞の崩壊、ならびに/または心不全の徴候を伴う)、および種々の形態の敗血症ショック(例えば内毒素性のショック)を含む、疾患を治療および/または予防するために有用である。これらの特許および刊行物に記載されたリポポリ多糖類はまた、治療または予防を必要としている患者の異なる型の微生物、またはグラム陰性菌を含む微生物による感染に対する局所的または全身性の炎症反応を治療または予防するのに有用であり、かつ消化管からのグラム陰性菌または内毒素の移動に関連する疾患において有用である。これらの異常はともに、全身性炎症症候群またはSIRSと言われる。「患者」には動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトが含まれる。
【0044】
国際公開公報第96/39411号ならびに米国特許第5,530,113号、第5,681,824号、第5,750,664号、第5,935,938号、および第6,184,366号に記載されている化合物は、標的細胞のリポポリ多糖の活性化を適切に阻害できるようにする投与量で投与されるが、これらの投与量は、好ましくは0.01〜50mg/患者の間、より好ましくは0.05-25mgの間/患者、かつ最も好ましくは1〜12mg/患者の間である。最も好ましくはこの投与量は、望ましい血漿濃度が得られるように連続注入をしながら、または間欠的に投与しながら3日から6日をかけて投与される。しかしながらある特定の患者に対する特定の投与量レベルは、用いた特定の化合物の活性;治療される患者の年齢、体重、全身的な健康、および性別;投与の時間および経路;排泄速度;以前に投与された他の薬物;ならびに治療される特定の疾患の重症度を含む、さまざまな要因に依存する。
【0045】
本発明のミセル、およびミセルを含む溶液は、両親媒性化合物が治療または予防するのに役立つことが知られている、任意の疾患または異常を治療または予防するのに用いることができる。上述したように、例えばE5564は敗血症を治療するために役立つことが知られている。本発明においてミセルおよびミセルを含む溶液は好ましくは非経口で投与されるが、他の投与形態も利用できる(例えば、経口、局所、経皮、目)。本明細書で用いるような非経口という用語には、さまざまな注入技術を用いた、皮下、静脈内、筋肉内、および動脈内注入が含まれる。本明細書で用いた場合の動脈内および静脈内注入には、カテーテルを用いた投与が含まれる。例えばE5564を用いた場合には内毒血症を治療するために静脈内注入が行われるように、治療される組織または臓器に迅速に到達するのを可能にする投与法が、ある種の徴候に対して好まれる。
【0046】
活性成分を含む薬学的組成物は、意図した投与法に適した任意の形態でありうる。本発明の水溶液および/または懸濁液には、その製造方法に適した賦形剤と混合した活性材料が含まれる。このような賦形剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントガムおよびアカシアガムのような懸濁剤、また天然に生じるホスファチド(例えばレシチン)、アルキレンオキサイドと脂肪酸(例えばポリオキシエチレンステアレート)との縮合産生物、エチレンオキシドと長鎖の脂肪族アルコール(例えば、ヘプタデアエチレンオキシセタノール)との縮合産生物、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールアンヒドリド(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノ-オレエート)から誘導された部分エステルとの縮合産生物のような分散剤または湿潤剤が含まれる。水性の懸濁液はまた、n-プロピルp-ヒドロキシベンゾエートのエチルのような一つまたは複数の保存剤を含んでいてもよい。
【0047】
本発明の薬学的組成物は好ましくは、滅菌した注入可能な水性または油性の懸濁剤のような滅菌した注入可能な製剤の形態である。この懸濁剤は、上述した適当な分散剤または懸濁剤、および懸濁剤を用いて既知の技術にしたがって配合するとよい。滅菌した注入可能な調整剤はまた、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液のような、非毒性の非経口で許容される希釈剤または溶媒に入れた滅菌した注入可能な溶液剤もしくは懸濁剤であってもよいし、または凍結乾燥した粉末として調製されていてもよい。使用可能で許容できるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、および等張性の塩化ナトリウム溶液がある。さらに滅菌した固定油を、溶媒または懸濁用媒体として簡便に用いることができると考えられる。この目的では、合成のモノ-またはジグリセライドを含むあるブランドの固定油が使用可能である。さらにオレイン酸のような脂肪酸も注入可能な製剤において同様に用いられると考えられる。
【0048】
非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および意図した受容者の血液と等張の製剤にする溶質が含まれていてもよい、水性および非水性の等張性滅菌注入液、ならびに懸濁用薬剤および濃化用薬剤が含まれていてもよい水性および非水性の滅菌性懸濁剤が挙げられる。この製剤は、単位用量または多数回用量が密封された容器、例えばアンプルやバイアルで提示されてもよく、かつ使用する直前に例えば注入用の水のような滅菌した液状担体を添加することのみが必要とされる、凍結乾燥された(凍結乾燥)状態で保存されていてもよい。即時注入型の溶液剤および懸濁剤は、前述した種類の滅菌した粉末から調製することもできる。
【0049】
凍結乾燥した薬物製品を用いる場合、医者は通常、生理学的に許容できる溶液にその凍結乾燥した製剤を戻す。室温または冷蔵状態のいずれかでその戻した溶液を保存できると望ましい。本明細書に記載されたミセルを凍結乾燥した製剤は、ミセルの流体力学的直径の分布が変化しないままで、水または静脈内投与に適したブドウ糖水溶液を用いて再水和される。このように還元されたミセル溶液は、室温または冷蔵温度でミセルの流体力学的直径を変化させることなく保存することが可能である。
【実施例】
【0050】
以下の実施例は例示の目的のみであって、添付した特許請求の範囲を制限する意図はない。
【0051】
実施例1
E5564は、2個の糖部分と4個の長鎖脂肪酸部分を含むリポポリ多糖類似体であって、約1,401の分子量を有する。E5564を調製するための方法は米国特許第5,530,113号、第5,681,824号、第5,750,664号、第5,935,938号、および第6,184,366号、ならびに国際公開公報第96/39411号に記載されており、その開示内容はその全体が本明細書に参照として組み入れられる。pHおよび対イオン(例えば、ナトリウム)の濃度を調節することによって得られる、さまざまなミセル流体力学的直径を持つE5564薬物製剤は、以下のように合成した。
【0052】
E5564を60分間かけてNaOH溶液に溶解させた。NaOH溶液のpHは、それぞれの溶液中のNa+濃度が0.01Mで一定に維持されるように、NaOHとNaClの濃度を変化させることによって、9から13に変動させることができる。この溶液中のNa+濃度は約0から0.6Mの範囲内、好ましくは約0.001Mから約0.6Mの範囲内でありうる。E5564/NaOH溶液を続いてリン酸緩衝液と合わせることによって、pHが7.5の溶液が得られる。
【0053】
E5564ミセル流体力学的直径は、図3に示されているようにアルカリ性溶液のpHについて単調に減少する関数であって、7nmから9nmと同程度に小さい流体力学的直径を持つミセルを意外にも産生した。さらにE5564アルカリ性溶液のpHをリン酸緩衝液を添加することによってpH7.5に調節し、ミセルの流体力学的直径は図4に示されているように意外なことに同一(すなわち、7nmから9nm)のままであった。形成されたミセルの流体力学的直径は、製造に用いた条件下、および薬学的製品を使用する場合には安定(すなわち、固定化されている)であった。薬学的調製剤は、液状または凍結乾燥した形態でバイアルに梱包されることが多い。固定化された流体力学的直径のミセルは本明細書で記載されたように調製され、液状または凍結乾燥した形態で安定であった。
【0054】
実施例2
上記に記載したように調製された流体力学的直径が、7nmから9nmのE5564ミセル(表1)を凍結乾燥した。凍結乾燥した後そのミセルを水で還元し、その後ブドウ糖水溶液で希釈した(表2)。還元した溶液に含まれるE5564ミセルの流体力学的直径は、種々の条件下で水で戻した生理学的に許容される溶液中では7nmから9nmのままであった。E5564ミセルの流体力学的直径は、25℃で24時間、または2℃から8℃で72時間水で戻した場合は安定であった。E5564ミセルの流体力学的直径は、pHを7.4に維持した5%のブドウ糖水溶液と混合し、続いて25℃で24時間、または2℃から8℃で72時間保存した後では変化がなかった(表2)。E5564ミセルの流体力学的直径は、相対湿度が60%、25℃での凍結乾燥状態で、または冷蔵状態で保存された薬物製品として安定であった(表3)。さらに、本発明の方法によって調製されたミセルにおけるE5564ミセルの流体力学的直径は、典型的な注入装置を用いる模擬された投与条件下で安定であった(表4)。
【0055】
(表1) 凍結乾燥前のE5564溶液についてのミセル流体力学的直径のデータ

【0056】
(表2) 還元した混合溶液を保存した後のE5564ミセルの流体力学的直径

【0057】
(表3) 凍結乾燥した薬物製品を保存した後の還元した溶液における、E5564ミセルの流体力学的直径

【0058】
(表4) 投与装置を用いた刺激静脈内注入の前後における、E5564ミセルの流体力学的直径

【0059】
以下の条件を表4のデータに適用する:PVCを含まない液体経路を持つミクロボア60''(Microbore 60'')拡張セット、No. V6212(McGraw, Inc.)、ルーエルロック(Luer Lok)を持つ3ccのシリンジ、No. 309585(Beckman Dickenson)、I.V.カテーテル、JELCO、No.4050(Johnson & Johnson Medical Inc.)。「DLS」は動的光散乱法を意味する。
【0060】
実施例3
本発明の方法を用いて形成したミセル流体力学的直径は、塩を添加することによって不安定になった。図2は、添加したNaClを用いてミセルの流体力学的直径(光散乱強度、R90の増加によって測定する場合)が大きくなることを示している。E5564ミセルの流体力学的直径は、0.01MのNaClを添加した後、24時間は不変のままであった。ミセルの流体力学的直径の変化は、0.03Mまたはそれを超えるNaClを添加した24時間後に観察された。しかしながら0.07MまでのNaClが添加されても、ミセルの流体力学的直径は即時にはっきりとした変化は示さなかった。したがって要求される安定時間が24時間よりも短い場合には、より高い濃度の塩を添加してもよい。
【0061】
実施例4
E5664を水酸化ナトリウム水溶液に溶解してpH10.1にすることによって、流体力学的直径が7nmのE5564ミセルを形成した。続いてこの溶液をリン酸塩緩衝溶液を含む乳糖と合わせることによって、pH7〜8の溶液が得られた。このリン酸塩緩衝溶液中のE5564ミセルの流体力学的直径は7nmであった。その後この溶液を0.2μmのフィルターで濾過することによって、製薬的な製造をするのに簡便な方法で溶液を滅菌にすることができた。このミセルの流体力学的直径は、凍結乾燥して安定であった。この凍結乾燥した製品を水で再水和すると、E5564ミセルの流体力学的直径は7nmであった。
【0062】
本明細書に引用した全ての特許、特許出願、および刊行物は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0063】
本発明を詳細に上述したが、当業者は本発明または添付した特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、変化および修飾を加えることができることを認めると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、および/またはその立体異性体のミセルを調製するための方法:
ある量の化合物(1)を、少なくとも一つの塩基性金属塩、少なくとも一つの中性塩、および予め決定された濃度の金属イオンを含む第1のアルカリ性水溶液に添加する段階であって、ここで化合物(1)が以下である段階:
【化1】

それによって、
予め選択された流体力学的直径(hydrodynamic diameter)を持つ化合物(1)のミセルを含む、第2のアルカリ性水溶液を形成する段階。
【請求項2】
さらに以下の段階を含む、請求項1記載の方法:
第2のアルカリ性水溶液を、緩衝液系または少なくとも一つの強酸を含む第3の水溶液に添加する段階、それによって
第2のアルカリ性水溶液のpHに対して中性のpHを持つ第4の水溶液を形成する段階であって、ここで第4の水溶液が、第2のアルカリ性水溶液中の化合物(1)のミセルの、予め選択された流体力学的直径と実質的に同一である、予め選択された流体力学的直径を持つ化合物(1)のミセルを含む段階。
【請求項3】
化合物(1)がE5564である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
第2のアルカリ性水溶液のpHが約9から約13であり、塩基性金属塩がNaOHであり、中性金属塩がNaClであり、金属イオンが約0.001Mから約0.01Mの濃度のNa+であり、かつ予め選択された流体力学的直径が約5nmから約20nmである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
第2のアルカリ性水溶液のpHが約10から約12であり、Na+の濃度が約0.01Mであり、かつ予め選択された流体力学的直径が約7nmから約9nmである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
第4の水溶液のpHが約4から9未満であり、かつ予め選択された流体力学的直径が約5nmから約20nmである、請求項2記載の方法。
【請求項7】
第4の水溶液のpHが約7から約8であり、かつ予め選択された流体力学的直径が約7nmから約9nmである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
緩衝液系がリン酸緩衝液系、酢酸緩衝液系、クエン酸緩衝液系、マレイン酸緩衝液系、炭酸緩衝液系、重炭酸緩衝液系、酒石酸緩衝液系、トロメタミン緩衝液系、トリエタノールアミン緩衝液系、またはメグルミン緩衝液系であり、かつ強酸が一つもしくは複数の塩酸、硫酸またはリン酸である、請求項2記載の方法。
【請求項9】
請求項1または請求項2記載の方法によって産生したミセル。
【請求項10】
請求項9記載のミセルを患者に静脈内投与する段階を含む、患者にミセルを送達する方法。
【請求項11】
請求項9記載のミセルの有効量を患者に静脈内投与する段階を含む、治療を必要としている患者の敗血症を治療するための方法。
【請求項12】
請求項1または請求項2記載の方法によって調製したミセルを含む、水溶液。
【請求項13】
請求項12記載の水溶液を患者に静脈内投与する段階を含む、ミセルを含む水溶液を患者に送達する方法。
【請求項14】
請求項12記載の水溶液の有効量を患者に静脈内投与する段階を含む、治療を必要としている患者の敗血症を治療するための方法。
【請求項15】
化合物(1)、その薬学的に許容される塩、および/またはその立体異性体を含むミセルであって、該ミセルが約5nmから約20nmの流体力学的直径を持ち、化合物(1)が以下であるミセル:
【化2】

【請求項16】
化合物(1)がE5564である、請求項15記載のミセル。
【請求項17】
請求項15記載のミセルを患者に静脈内投与する段階を含む、患者にミセルを送達する方法。
【請求項18】
請求項15記載のミセルの有効量を患者に静脈内投与する段階を含む、治療を必要としている患者の敗血症を治療するための方法。
【請求項19】
化合物(1)、その薬学的に許容される塩、および/またはその立体異性体の少なくとも一つのミセルを含む水溶液であって、該ミセルが約5nmから約20nmの流体力学的直径を持ち、化合物(1)が以下である水溶液:
【化3】

【請求項20】
化合物(1)がE5564である、請求項19記載の水溶液。
【請求項21】
請求項19記載の水溶液を静脈内投与する段階を含む、患者にミセルを送達する方法。
【請求項22】
請求項19記載の水溶液の有効量を患者に投与する段階を含む、治療を必要としている患者の敗血症を治療するための方法。
【請求項23】
以下の段階を含む、ミセルを調製するための方法:
ある量の少なくとも一つの酸性の両親媒性化合物を提供する段階であって、該酸性両親媒性化合物が少なくとも一つのイオン化可能な基を含む段階、
該酸性の両親媒性化合物を、少なくとも一つの塩基性金属塩、少なくとも一つの中性金属塩、および予め決定された濃度の金属イオンを含む、第1のアルカリ性水溶液に添加する段階、それによって
予め選択された流体力学的直径を持つ酸性の両親媒性化合物のミセルを含む第2のアルカリ性水溶液を形成する段階。
【請求項24】
予め選択された流体力学的直径が約1nmから約100nmである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
第1のアルカリ性水溶液が、約9から約13のpHを有する、請求項23記載の方法。
【請求項26】
金属イオンが、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Fe2+、Fe3+、Al3+、Mn3+、Mn2+、Zn2+、Cu2+、Cu+、Ni2+、Sn2+、Na+、Li+およびK+からなる群より選択される、少なくとも一つの金属イオンである、請求項23記載の方法。
【請求項27】
金属イオンが、Na+、K+、Li+、Ca2+、Ba2+、Mg2+およびAl3+からなる群より選択される、少なくとも一つの金属イオンである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
酸性の両親媒性化合物が、式(A)の化合物、その薬学的に許容される塩、またはその立体異性体である、請求項23記載の方法:

式中、R1は、

からなる群より選択され、
J、KおよびQはそれぞれ独立して直鎖状または分枝状のC1-15アルキルであり、
LはO、NまたはCであり、
MはOまたはNであり、
GはN、O、S、SOまたはSO2であり、
R2は直鎖状または分枝状のC5-15アルキルであり、
R3は、

からなる群より選択され、
EはN、O、S、SOまたはSO2であり、
A、BおよびDはそれぞれ独立して直鎖状または分枝状のC1-15アルキル基であり、
R4は直鎖状もしくは分枝状のC4-20アルキル基または

であり、
UおよびVはそれぞれ独立して直鎖状または分枝状のC2-15アルキル基であり、
Wは水素または直鎖状もしくは分枝状のC1-5アルキル基であり、
R5は水素、-J'、-J'-OH、-J'-O-K'、-J'-O-K'-OHまたはJ'-O-PO(OH)2であり、
J'およびK'はそれぞれ独立して直鎖状または分枝状のC1-5アルキル基であり、
R6はヒドロキシ、ハロゲン、C1-5アルコキシ基またはC1-5アシルオキシ基であり、
A1およびA2は、

からなる群よりそれぞれ独立して選択され、
Zは直鎖状または分枝状のC1-10アルキル基である。
【請求項29】
以下の段階をさらに含む、請求項23記載の方法:
第2のアルカリ性水溶液を、緩衝液系または少なくとも一つの強酸を含む第3の水溶液に添加する段階、それによって
第2のアルカリ性水溶液のpHに対して中性のpHを持つ第4の水溶液を形成する段階であって、ここで第4の水溶液が、第2のアルカリ性水溶液中のミセルの予め選択された流体力学的直径と実質的に同一である、予め選択された流体力学的直径を持つミセルを含む段階。
【請求項30】
第4の水溶液の中性のpHが約4から9未満の間である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
緩衝液系がリン酸緩衝液系、酢酸緩衝液系、クエン酸緩衝液系、マレイン酸緩衝液系、炭酸緩衝液系、重炭酸緩衝液系、酒石酸緩衝液系、トロメタミン緩衝液系、トリエタノールアミン緩衝液系またはメグルミン緩衝液系であり、かつ強酸が塩酸、硫酸およびリン酸の少なくとも一つである、請求項29記載の方法。
【請求項32】
第4の水溶液を凍結乾燥する段階をさらに含む、請求項29の方法。
【請求項33】
請求項23または請求項29記載の方法によって産生したミセル。
【請求項34】
請求項33記載のミセルを患者に静脈内投与する段階を含む、ミセルを患者に送達する方法。
【請求項35】
請求項23または請求項29記載の方法によって産生した水溶液。
【請求項36】
請求項35記載の水溶液を患者に静脈内投与する段階を含む、ミセルを患者に送達する方法。
【請求項37】
以下の段階を含む、ミセルを調製するための方法:
少なくとも一つのイオン化可能な基を含む、ある量の少なくとも一つの塩基性の両親媒性化合物を提供する段階、
該塩基性の両親媒性化合物を、少なくとも一つのプロトン性酸性金属塩、少なくとも一つの中性金属塩、および予め決定された濃度の金属イオンを含む、第1の酸性水溶液に添加する段階、それによって
予め選択された流体力学的直径を持つ酸性の両親媒性化合物のミセルを含む第2の酸性水溶液を形成する段階。
【請求項38】
以下の段階をさらに含む、請求項37記載の方法:
第2の酸性水溶液を、緩衝液系または少なくとも一つの強塩基を含む第3の水溶液に添加する段階、それによって
第2の酸性水溶液のpHに対して中性のpHを持つ、第4の水溶液を形成する段階であって、ここで第4の水溶液が、第2の酸性水溶液中のミセルの予め選択された流体力学的直径と実質的に同一である、予め選択された流体力学的直径を持つミセルを含む段階。
【請求項39】
緩衝液系がリン酸緩衝液系、酢酸緩衝液系、クエン酸緩衝液系、マレイン酸緩衝液系、炭酸緩衝液系、重炭酸緩衝液系、酒石酸緩衝液系、トロメタミン緩衝液系、トリエタノールアミン緩衝液系またはメグルミン緩衝液系であり、かつ強塩基が水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
請求項37または請求項38記載の方法によって産生したミセル。
【請求項41】
請求項40記載のミセルを患者に静脈内投与する段階を含む、ミセルを患者に送達する方法。
【請求項42】
請求項37または請求項38記載の方法によって産生させた水溶液。
【請求項43】
請求項42記載の水溶液を患者に静脈内投与する段階を含む、ミセルを患者に送達する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−116860(P2012−116860A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25659(P2012−25659)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【分割の表示】特願2001−559478(P2001−559478)の分割
【原出願日】平成13年2月20日(2001.2.20)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】