説明

ミッドカイン様タンパク質

本発明は、ISNP106タンパク質は、既知ミッドカインファミリーメンバーの新規スプライシング変種(swall|P21741|MK_HUMAN)であるという発見を基にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既知のミッドカインファミリーのメンバー(swall|P21741|MK_HUMAN)の新規スプライシング変種として本発明において同定したINSP106と称する新規タンパク質に関し、又このタンパク質及びコード遺伝子由来の核酸配列を疾患の診断、予防及び治療に使用することに関する。既知のミッドカインと比較したINSP106の変種を説明する遺伝子モデルは、P21741に存在する離れた第4のコーディングエクソンを有する代わりに、第3のコーディングエクソンが3'方向へ伸張されていることを示している(図1)。
本明細書に引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、参照により完全に本明細書に含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
薬剤の発見プロセスにおいて、機能ゲノム学の時代の到来にあわせて根幹的な革命が現在進行している。“機能ゲノム学”という用語は、対象のタンパク質配列に機能を帰属させるためにバイオインフォマティクスツールを利用するアプローチに用いられる。そのようなツールは、配列データの生成速度が、これらタンパク質配列に機能を割り当てる研究室の能力をはるかに越えているのでますます必要性を増している。
バイオインフォマティクスツールの潜在能力及び精度が高まっているために、前記ツールは通常の生化学的特徴付け技術と急速に置き換えられつつある。実際、本発明の同定に用いた高度なバイオインフォマティクスツールは、今や、高い信頼性をもつ結果を出力する能力を有する。
配列データが利用可能になるにつれ、種々の研究機関及び企業組織がそれらを調査し、重要な発見が絶え間なく達成され続けている。しかしながら、研究及び薬剤発見のための標的として、更なる遺伝子及びそれらがコードするポリペプチドを同定し特徴付ける必要性は引き続き存在している。
【0003】
最近になって、機能が未知の配列を評価する驚くべきツールが、本出願人により開発された。このツールは、WO01/69507の主題でありバイオペンジウム(Biopendium)検索データベースと称する、データベースシステムである。このデータベースシステムは、独自仕様の技術を使用し作成された一体化されたデータリソース及び全ての利用可能なタンパク質又は核酸配列の網羅的(all-by-all)比較から作成された包含情報からなる。
別個のデータリソースに由来するこれらの配列データ統合の背景にある目的は、配列自体と各配列に関する情報との両方に関連している可能な限り多くのデータを、ひとつの統合されたリソースへ一体化することである。各配列に関連する全ての利用可能なデータ(利用可能な場合は、コードされたタンパク質の三次元構造に関するデータを含む)は、ひとつに統合されて、各配列について既知の情報を最大限に利用でき、よって、これらの配列比較から最も根拠のある予測を作成することを可能にする。データベースで作成され、各配列エントリー(sequence entry)を随伴するアノテーションは、配列情報に生物学的に関連性のある背景情況(relevant context)を付与する。
このデータリソースは、配列のみからタンパク質機能の正確な推定を可能にしている。従来の技術を用いては、同じ機能的ファミリーの他のタンパク質に対して高度の配列同一性(約20%〜30%を上回る同一性)を示すタンパク質についてのみ正確な推定が可能であった。正確な推定は、機能がわかっている他の関連タンパク質に対して非常に低い配列相同性を示すタンパク質については不可能である。
【0004】
選択的プレmRNAスプライシングは主要な細胞プロセスであって、このプロセスにより、多くは組織特異的パターンで、単独の遺伝子の一次転写産物から機能的に多様なタンパク質が産生される。
実験的に、スプライシング変種は、偶然の単離、それに続く変種mRNAの配列決定により同定される。しかしこの実験的手法は、ヒトのトランスクリプトームについては網羅的には完了しておらず(なぜなら、これは、あらゆる可能な環境条件下で全てのヒト組織から全てのmRNAを体系的に単離すること及び配列決定することを必要とすることから)、またこの実験の制限のために、多数のスプライシング変種が未だ同定されていないままである。
本発明者らは、ヒトミッドカイン遺伝子のスプライシング変種の存在に関して、独自仕様のバイオインフォマティクス法を使用して、意図的な方向性のある検索を行った。この方法により、実験により既知のスプライシング変種の限定的なデータセットを用い、予想されるスプライシング変種のはるかに大きいセットへ拡大することができる。
【0005】
[分泌タンパク質の導入]
細胞外タンパク質を生成しかつ分泌する細胞の能力は、多くの生物学的プロセスの中心である。酵素、増殖因子、細胞外マトリックスタンパク質及びシグナル伝達分子は全て、細胞により分泌される。このことは、分泌小胞の形質膜との融合を介する。全てではないが、ほとんどの場合において、タンパク質は、シグナルペプチドによって、小胞体に向けられて分泌小胞へ入れられる。シグナルペプチドは、細胞質から分泌小胞のような膜結合した区画へのポリペプチド鎖の輸送に影響を及ぼすcis作用配列である。分泌小胞を標的とするポリペプチドは、細胞外マトリックスに分泌されるか、又は細胞膜に保持されるかのいずれかである。細胞膜に保持されたポリペプチドは、1又は2以上の膜貫通ドメインを有するであろう。細胞の機能において重要な役割を果たす分泌タンパク質の例は、サイトカイン、ホルモン、細胞外マトリックスタンパク質(接着分子)、プロテアーゼ並びに他の増殖因子及び分化因子である。
【0006】
[増殖因子]
増殖因子は、in vivo及びin vitroの両方において細胞増殖を誘導する共通の特性を共有するポリペプチドの比較的大きいグループを表している。増殖因子は、ふたつの重要な点において、インスリン又は成長ホルモンのような古典的内分泌ホルモンとは異なる。第一に、内分泌ホルモンは典型的には、特定の腺(例えばインスリンの場合は膵臓)で合成されるのに対し、増殖因子は、多くの種類の細胞及び組織において合成されることが多い。第二に、古典的内分泌ホルモンは、合成部位で体液に放出され、血流によりそれらの標的組織に運搬される。増殖因子の印象的特質は、ほとんどの場合、これらは、合成された組織内で局所的に作用することである(Heath, JK. (1993) “Growth Factors”, Oxford University Press, Oxford, UK, pp.15-33において検証)。
【0007】
増殖因子は、配列類似性のレベルは高くないが、これはファミリーに分類することができる。血小板由来増殖因子ファミリー(PDGF-A、PDGF-B及びVEGF)、上皮増殖因子ファミリー(EGF、TGF-α、アンフィレグリン(amphiregulin))、線維芽細胞増殖因子ファミリー(FGF、FGF4、FGF5、及びFGF7)、インスリン様増殖因子(IGF-I、IGH-II、及びプロインスリン)、神経栄養増殖因子(neurotrophic growth factor)ファミリー(NGF)及びトランスフォーミング増殖因子ファミリー(TGF-β1〜3、骨形成タンパク質2〜7、及びミュラー管抑制物質)。
増殖因子は、細胞外因子であって、生物学的作用を発揮するために、標的細胞の原形質膜上に位置する特異的な高親和性受容体と相互作用する。多種多様な増殖因子受容体の分子特性は、それら増殖因子が次の限られたファミリーに属することを明らかにした;チロシンキナーゼ受容体、Gタンパク質共役型(associated)7ヘリックス受容体、及びセリン/トレオニンキナーゼ受容体。チロシンキナーゼ受容体は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及びチロシンキナーゼ活性を有する細胞内ドメインにより特徴付けられる。セリン/トレオニンキナーゼ増殖因子受容体は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを有し、チロシン受容体に類似している。前記細胞内ドメインは、固有のセリン/トレオニンキナーゼ活性を有する。
【0008】
増殖因子機能の調節不能は、数多くの様々な疾患表現型を生じ、その疾患表現型としては、癌(Bartucci M et al, (2001) Cancer Res. Sep 15; 61(18): 6747-54;Dias S et al., (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. Sep 11; 98(19): 10857-62;Djavan B et al., (2001) World J Urol. Aug; 19(4): 225-33)、炎症(Fiocchi C. (2001) J Clin Invest. Aug; 108(4): 523-6;Hodge S et al., (2001) Respirology. Sep; 6(3): 205-211;Fenwick SA et al., (2001) J Anat. Sep; 199(Pt 3): 231-40)、神経障害(Cooper JD et al., (2001) Proc Natl Acad Sci U S A. Aug 28; 98(18): 10439-44;Fahnestock M et al, (2001) Mol Cell Neurosci. Aug; 18(2): 210-20)、代謝障害(Vickers MH et al., (2001) Endocrinology. Sep; 142(9): 3964-73)、アテローム動脈硬化症(Oemar, B. S., et al. (1997) Human connective tissue Growth factor is expressed in advanced atherosclerotic lesions. Circulation, 95(4), 831-839)、強皮症などの線維症障害(Isarahi, A. et al. (1995) Significant correlation between connective tissue growth factor gene expression and skin sclerosis in tissue sections from patients with systemic sclerosis. J. Invest. Dermatol. 105,280-284)及び糖尿病性ネフロパシー(Abdel Wahab, N. et al. (1996) Expression of extracellular matrix molecules in human mesangial cells in response to prolonged hyperglycemia. Biochem. J. 316,985-992) が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0009】
ミッドカイン(MK)は、神経突起伸長、神経細胞生存及びプラスミノーゲンアクチベーター活性を増強する、13kDaのヘパリン-結合ポリペプチドである。MKは、構造上ふたつのドメインに分かれており、生物学的活性の大部分は、C末端側ドメイン上に位置する。MK二量体は、活性型であること、また内皮細胞へ、恐らくは神経細胞へもシグナルを与えることが示されている。MKの頭−頭型(head-to head)の二量体モデルが推定されている(Iwasaki et al, 1997)。この二量体は、C末端ドメインの二量体境界面で融合しているヘパリン結合部位を有し、MK上のヘパリン結合部位は、ヘパリンの硫酸基クラスターに適合する。これらの特徴は、前記二量体の提唱された強力なヘパリン結合活性及び生物学的活性と一致している。
報告されたミッドカイン機能は、胚の神経細胞を維持及び分化すること、並びに神経突起伸長を増強しすること;特定の細胞株の分裂を促進すること(Muramatsu, H. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 177: 652-658, 1991;及び、Michikawa, M. et al., J. Neurosci. Res. 35: 530-539,1993;Muramatsu, H. et al., Dev. Biol. 159: 392-402,1993);胚の発達を調節すること(Kadomatsu, K. et al., J. Cell. Biol. 110: 607-616, 1990;Mitsiadis, T. A. et al., Development 121: 37-51,1995)などを含む。更に、報告によれば、抗ミッドカイン抗体はin vitroにおける歯牙発生を阻害する(Mitsiadis, T. A. et al, J. Cell. Biol. 129: 267-281,1995)。MKは、ウシの大動脈上皮細胞においてプラスミノーゲンアクチベーター活性を促進して、強化されたフィブリン溶解をもたらすことも知られている(Kojima et al., 1995)。
【0010】
ミッドカインは、損傷を受けた組織及び一部の疾患の回復において重大な役割を果たすことが明らかとなっている。ミッドカインの発現パターンは、様々なヒトの癌腫において研究された。これらの研究は、胃癌、結腸癌、膵癌、肺癌、胸部癌及び肝癌を含む様々な癌において、ミッドカインの発現が増加したことを明らかにした(Tsutsui, J. et al., Cancer Res. 53: 1281-1285, 1993;Aridome, K. et al., Jap. J. Cancer Res. 86: 655-661, 1995;及び、Garver, R. I. et al., Cancer 74: 1584-1590, 1994)。ミッドカインの高レベル発現は、神経芽腫の患者の予後不良に相関している(Nakagawara, A. et al., Cancer Res. 55: 1792-1797, 1995)。ミッドカインは、アツルハイマー病を患う患者の大部分の老人斑に蓄積している(Yasuhara, O. et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 192: 246-251,1993)。ミッドカインは、脳梗塞の初期には浮腫を伴う領域において発現される(Yoshida, Y. et al., Dev. Brain Res. 85: 25-30,1995)。これらの知見は、ミッドカインが、損傷を受けた組織の回復と、いくつかの疾患の徴候である組織異常とに関連し得ることを示している。
ミッドカイン活性は、好中球機能障害(例えば、怠け者白血球(化学走化性欠損白血球)症候群)及び炎症性疾患にも関連している(EP 998,941)。
従って、分泌されたタンパク質の同定、特に増殖因子の同定は、前述の、病態につながる根本的経路と病態に関連する根本的経路とを一層理解し、またこれら障害を治療するためのより有効な遺伝子療法及び/又は薬物療法を開発する上で非常に重要である。
【発明の開示】
【0011】
[本発明]
本発明は、INSP106タンパク質が、既知のミッドカインファミリーのメンバーの新規なスプライシング変種(swall|P21741|MK_HUMAN)であるという発見を基にしている。
既知のミッドカインとの比較においてINSP106内の変種を説明する遺伝子モデルは、P21741に存在する離れた4番目のコーティングエクソンを有する代わりに、3番目のコードディングエクソンが3'方向へ伸張していることを示している(図1)。
マルチプルアラインメントは、疎水性プロリン‘区域(tract)'が、C末端尾部のINSP106予想をどのように伸長しているかを示している(図2)。
【0012】
C末端尾部の除去が、ミッドカインの神経突起伸長活性及びプラスミノーゲンアクチベーター増強活性を低下することが示されている。これらの尾部は、「結合しているヘパリン中のCドメインの機能が妨害されないように、N及びCドメインが立体配置することを容易にする」こともわかっている(Akhter et al, 1998)。最近発表されたデータによると、ミッドカインと50%の相同性を共有するプレイオトロフィン(pleiotrophin)のリジンに富む尾部の除去が、受容体への結合を妨害することを示している(Pierrot et al, 2001)。
ミッドカインのヘパリンへの結合には、N及びCの両ドメインが関連する頭-頭型の二量体の形成が必要である(Iwasaki et al,1997)。ミッドカイン二量体は、タンパク質チロシンリン酸化酵素ξ(PTPξ)受容体へ結合し、MAPキナーゼ経路を開始する(Muramatsu et al, 2002)。特定の理論と結びつけることを欲するものではないが、INSP106がドミナントネガティブアンタゴニストとして作用して;プロリン‘区域'が受容体結合を妨害し得ると考えられる(図3)。
【0013】
本発明の第一の特徴の一態様において、配列番号10(既知のミッドカインファミリーのメンバー(swall|P21741|MK_HUMAN)のエクソン4)に記載のアミノ酸配列を含まないが、以下の(i)から(iii)のいずれかであるポリペプチドが提供される:
(i)配列番号2(INSP0106のエクソン3)に記載のアミノ酸配列を含む、又はこれらからなるポリペプチド;
(ii)少なくとも配列番号8のフラグメント(好ましくは、少なくとも1、2、3、4、6、8、10、12又は14アミノ酸)を含む、配列番号2のフラグメントを含むか又は配列番号2のフラグメントからなるポリペプチドであって、配列番号4若しくは配列番号6(各々、完全長INSP0106配列のシグナルペプチド配列を有するものと有さないものである)の活性を有するか、又は配列番号2を含むポリペプチドに特異的な抗原決定基を有する、ポリペプチド;又は
(iii)配列番号4又は配列番号6の活性を有するか又は配列番号2を含むポリペプチドに特異的な抗原決定基を有し、(i)若しくは(ii)の機能的等価物を含むか又はこれからなるポリペプチド。
【0014】
配列番号2に記載された配列を有するポリペプチドは、これ以降は“INSP106エクソン3novポリペプチド”と称する。配列番号4に記載された配列を有するポリペプチドは、これ以降は“シグナルペプチドを含むINSP106完全長ポリペプチド” と称する。配列番号6に記載された配列を有するポリペプチドは、これ以降は“シグナルペプチドを除いたINSP106完全長ポリペプチド”と称する。配列番号8に記載された配列を有するポリペプチドは、これ以降は“ポリペプチドINSP106のエクソン3伸長部分”と称する。この配列は、このように既知のミッドカインP21741のエクソン3の伸長部分を形成するアミノ酸を含む。
配列番号10に記載された配列を有するポリペプチドは、swall|P21741|MK_HUMANのエクソン4であり、本発明の部分を形成しない。
【0015】
本明細書において使用される用語“INSP106ポリペプチド”は、INSP106エクソン3novポリペプチド、シグナルペプチドを含むINSP106完全長ポリペプチド、シグナルペプチドを除くINSP106完全長ポリペプチド及びポリペプチドINSP106のエクソン3伸長部分を含むか又はこれらからなるポリペプチドを含む。
“配列番号4又は配列番号6の活性”を有するポリペプチドとは、モノマー又はポリマー(例えば二量体)型で存在するポリペプチドを指す。
好ましくは、“配列番号4又は配列番号6の活性”を有するポリペプチドは、swall|P21741|MK_HUMANと比べ、ミッドカインの低下した神経突起促進活性及び/又は低下したプラスミノーゲンアクチベーター増強活性を有する。
好ましくは、“配列番号4又は配列番号6の活性”を有するポリペプチドは、swall|P21741|MK_HUMAN(配列番号12)活性を調節する(好ましくは、拮抗する)。好ましくは、“配列番号4又は配列番号6の活性”を有するポリペプチドは、swall|P21741|MK_HUMAN(配列番号12)の神経突起促進活性を阻害するか、又はswall|P21741|MK_HUMAN(配列番号12)のプラスミノーゲンアクチベーター増強活性を阻害する。
【0016】
特定の理論によって拘束されることを欲するものではないが、本発明のタンパク質は、swall|P21741|MK_HUMANを調節(例えば拮抗)すること、またこの能力はINSP0106の伸長したC末端尾部に起因することが考えられる。
“配列番号2を含むポリペプチドに特異的な抗原決定基”を有するポリペプチドとは、配列番号4又は配列番号6のポリペプチドは保持するが、既知のミッドカインファミリーメンバーであるswall|P21741|MK_HUMANは保持しない抗原決定基を指す。このような抗原決定基は、配列番号8の範囲内に位置するアミノ酸配列からなっていてもよく、又は配列番号8のN末端側に位置する配列番号2の一部(すなわち、P21741のエクソン3によりコードされた配列に対応するアミノ酸配列)との接合部に広がるアミノ酸配列からなっていてもよい。以下で説明するように、このような抗原決定基は、本発明のポリペプチドに対し、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体などの免疫特異的なリガンドを作製するために使用することができる。
【0017】
本発明の第一の特徴の(i)の好ましい特徴において、配列番号4若しくは配列番号6に記載されたアミノ酸配列を含む(好ましくは、これらからなる)ポリペプチド又はそれらの機能的等価物が提供される。
好ましくは、本発明の第一の特徴のポリペプチドは、配列番号2若しくは配列番号8に記載のアミノ酸配列、又は配列番号2若しくは配列番号8に記載のアミノ酸配列の少なくとも70%、80%、90%若しくは95%を含む。本発明の第一の特徴の別の態様において、本発明のポリペプチドの機能的等価物は、配列番号2若しくは配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して、又は配列番号2若しくは配列番号8に記載のアミノ酸配列の少なくとも70%、80%、90%若しくは95%を表す配列に対して、少なくとも70%、80%、90%又は95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことが好ましい。
【0018】
好ましくは、本発明の第一の特徴のポリペプチドは、配列番号10に記載のアミノ酸配列のフラグメント;配列番号10に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%若しくは95%の配列同一性を有するアミノ酸配列;又は、配列番号10に記載のアミノ酸配列の少なくとも70%、80%、90%若しくは95%を表すフラグメントに対して少なくとも60%、70%、80%、90%若しくは95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含まない。
【0019】
第二の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする精製核酸分子を提供する。
本発明の第二の特徴の第一態様において、精製核酸分子は、配列番号1(INSP106のエクソン3novポリペプチドをコードしている)、配列番号3(シグナルペプチドを含むINSP106完全長ポリペプチドをコードしている)、配列番号5(シグナルペプチドを除くINSP106完全長ポリペプチドをコードしている)、配列番号7(ポリペプチドINSP106のエクソン3伸長部分をコードしている)に記載の核酸配列を含むか若しくはこれらからなっており、又はこれらの配列のいずれかひとつの余剰的(redundant)等価物若しくはフラグメントである。
既知のミッドカインファミリーのメンバー(swall|P21741|MK_HUMAN)のコード配列(及びそれによりコードされたポリペプチド)は、本発明の範囲から特に除外される。同様に、表1に示したESTセットは、本発明の範囲から特に除外される。
【0020】

【0021】
本発明の第二の特徴のひとつの好ましい態様において、図6に示すヌクレオチド配列を含むか又はこれらからなる核酸が提供される。この核酸分子は、一本鎖であっても(図6に示すヌクレオチド配列を含むか若しくはこれらからなるか、又はそれらの相補体である)、又は二本鎖であってもよい。
【0022】
第三の特徴において、本発明は、高ストリンジェンシー条件下で配列番号3又は配列番号5とはハイブリダイズするが、高ストリンジェンシー条件下でP21741(配列番号11)とはハイブリダイズしない、精製核酸分子を提供する。好ましくは、高ストリンジェンシー条件下で配列番号2とハイブリダイズする本発明の第三の特徴の核酸分子が提供される。本発明の第三の特徴の別の態様において、P21741及びINSP0106に共通である第3エクソンの一部(すなわち、P21741のエクソン3に等価な配列)と配列番号7に示す伸長した第3エクソン配列(ポリペプチドINSP106のエクソン3伸長部分をコードしている)との間の接合部に広がる核酸配列と、高ストリンジェンシー条件下にて、ハイブリダイズする核酸分子が提供される。
第四の特徴では、本発明は、本発明の第二又は第三の特徴の核酸分子を含むベクター、例えば発現ベクターなどを提供する。
第五の特徴では、本発明は、本発明の第四の特徴のベクターで形質転換されている宿主細胞を提供する。
【0023】
第六の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドと特異的に結合するリガンドを提供する。
本発明のポリペプチドに対するリガンドは、様々な形態であってもよく、天然又は改変された基質、酵素、受容体、2000Daまで、好ましくは800Da又はそれ未満までの小さな天然又は合成の有機分子のような小型有機分子、無機分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、それらの構造的又は機能的模倣物を含む。
このような化合物は、本明細書で開示されるようなアッセイ及びスクリーニング法を用いて同定することができる。
第七の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現を変化させるか、又は本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性を調節するのに有効な化合物を提供する。
本発明の第七の特徴の化合物は、前記ポリペプチドの遺伝子発現レベル又は活性を増加させ得るか(アゴニスト作用)、又は低下させ得る(アンタゴニスト作用)。
重要なことに、INSP106ポリペプチドの機能を同定することによって、疾患の治療及び/又は診断に有効な化合物を同定することが可能であるスクリーニング方法のデザインが可能になる。そのような方法を用いて、本発明の第六及び第七の特徴のリガンド及び化合物を同定することができる。これらの方法は、本発明の特徴に含まれる。
【0024】
第八の特徴では、本発明は、ミッドカインが関係している疾患の診断又は治療で使用するために、本発明の第一の特徴のポリペプチド、本発明の第二若しくは第三の特徴の核酸分子、本発明の第四の特徴のベクター、本発明の第六の特徴のリガンド、又は本発明の第七の特徴の化合物を提供する。このような疾患及び障害は、生殖障害、細胞増殖性疾患で、新生物、メラノーマ、肺、結腸直腸、乳房、膵臓、頭部及び頚部及び他の固形腫瘍;胃癌、結腸癌、膵癌、肺癌、胸部癌及び肝癌;骨髄増殖性障害で、例えば白血病、非ホジキンリンパ腫、白血球減少症、血小板減少症、血管新生障害、カポジ肉腫;自己免疫/炎症障害で、アレルギー、炎症性腸疾患、膵炎、関節炎、乾癬、尋常性乾癬、気道炎症、喘息及び臓器移植の拒絶反応など;心血管系障害で、高血圧、浮腫、狭心症、アテローム性動脈硬化症、血栓症、敗血症、ショック、再灌流性障害、及び虚血、特に虚血性心疾患など;神経障害で、中枢神経系疾患、アルツハイマー病、脳外傷、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症及び疼痛;発育障害;代謝障害で、糖尿病、骨粗鬆症及び肥満、AIDS、腎疾患、特に特発性ネフローゼ症候群など;フィブリン溶解に関連する障害;好中球機能障害(例えば、怠け者白血球(化学走化性欠損白血球)症候群);炎症性疾患;創傷治癒障害;肺損傷;感染症で、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症及び寄生体感染症など、並びに他の病態を含み得る。
【0025】
好ましくは、本発明の一部(本発明の第一の特徴のポリペプチド、本発明の第二若しくは第三の特徴の核酸分子、本発明の第四の特徴のベクター、本発明の第六の特徴のリガンド、又は本発明の第七の特徴の化合物)を用い、異常な神経突起成長促進活性、神経突起機能、プラスミノーゲンアクチベーター活性、ヘパリン結合活性、ES細胞株の生存/分化、胚の発達の調節及び歯牙発生が関係する障害を治療する。
これらの部分は、前述の疾患及び障害を治療するための医薬品の製造において使用されてもよい。
第九の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現レベル又は本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性レベルを前記患者由来の組織で評価する工程、及び前記発現又は活性レベルをコントロールレベルと比較する工程を含む患者の疾患を診断する方法を提供し、この場合前記コントロールレベルと異なるレベルは疾患を示している。前記の方法は、好ましくはin vitroで実施されるであろう。同様な方法は、患者における疾患の治療的処置のモニタリングに使用され得、この場合、時間の経過にしたがってポリペプチド又は核酸分子の発現若しくは活性レベルがコントロールレベルに向かって変化することは、疾患の寛解を示している。
【0026】
本発明の第一の特徴のポリペプチドを検出する好ましい方法は、以下の工程を含む:(a)本発明の第六の特徴のリガンド(例えば抗体)と生物学的サンプルとを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適した条件下で接触させる工程;及び(b)前記複合体を検出する工程。
本発明の第九の特徴によると、例えば短いプローブによる核酸ハイブリダイゼーション法、点変異分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、及び、抗体を用いて異常なタンパク質レベルを検出する方法といった種々の異なる方法が存在することは、当業者には明らかであろう。同様の方法を短期又は長期ベースで用いて、モニターされる疾患の治療的処置を可能にすることができる。本発明はまた、前記疾患診断方法に有用なキットも提供する。
好ましくは、本発明の第九の特徴により診断される疾患は、ミッドカインが関連する疾患である。
【0027】
第十の特徴において、本発明は、増殖因子として又は増殖因子活性のモジュレーターとしての、本発明の第一の特徴のポリペプチドの使用を提供する。好ましくは、本発明は、P21741様活性のモジュレーターとして;好ましくは、P21741様活性のアンタゴニストとしての、本発明の第一の特徴のポリペプチドの使用を提供する。“P21741様活性”は、P21741が保持する(しかし、類似するタンパク質が保持することもある)活性、例えばヘパリン結合活性、神経突起伸長増強活性、神経生存の促進及びプラスミノーゲンアクチベーター活性などを指す。本発明のポリペプチドの適切な使用としては、細胞の増殖、代謝又は分化のレギュレーターとしての使用、受容体/リガンド対の一部としての使用、及び先に列記するもののような、生理学的又は病理学的状態に関する診断マーカーとしての使用が挙げられる。
本発明のポリペプチドは、神経突起成長、神経細胞生存、プラスミノーゲン活性化、ヘパリン結合、胚の神経細胞の維持及び分化、ES細胞株の維持及び分化の調節(例えば、拮抗)のために使用されて、胚発達、歯牙発生及び組織修復を調節してもよい。
第十一の特徴では、本発明は医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、本発明の第一の特徴のポリペプチド、又は本発明の第二若しくは第三の特徴の核酸分子、又は本発明の第四の特徴のベクター、又は本発明の第六の特徴のリガンド、又は本発明の第七の特徴の化合物を医薬的に許容できる担体と組合せて含有する。
【0028】
第十二の特徴では、本発明は、治療又は診断において使用するための、本発明の第一の特徴のポリペプチド、又は本発明の第二の若しくは第三の特徴の核酸分子、又は本発明の第四の特徴のベクター、又は本発明の第六の特徴のリガンド、又は本発明の第七の特徴の化合物を提供する。これらの分子は、疾患の治療のための医薬品の製造においても使用することができる。
第十三の特徴では、本発明は患者の疾患を治療する方法を提供し、前記方法は、本発明の第一の特徴のポリペプチド、又は本発明の第二若しくは第三の特徴の核酸分子、又は本発明の第四の特徴のベクター、又は本発明の第六の特徴のリガンド、又は本発明の第七の特徴の化合物を患者に投与することを含む。
本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現、又は本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性が、健常対象者の発現又は活性レベルと比較したとき罹患対象者で低下する疾患については、前記患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物はアゴニストであるべきである。逆に、前記天然の遺伝子の発現、又は前記ポリペプチドの活性が、健常な対象者の発現又は活性レベルと比較したとき罹患対象者で上昇する疾患については、前記患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物はアンタゴニストであるべきである。このようなアンタゴニストの例にはアンチセンス核酸分子、リボザイム及びリガンド(例えば抗体)が含まれる。
好ましくは、疾患は、ミッドカインが関連する疾患である。
【0029】
第十四番目の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドを高レベル、低レベル、又は異常なレベルで発現させるように形質転換したトランスジェニック又は遺伝子ノックアウト非ヒト動物を提供する。前記トランスジェニック動物は、疾患の研究用モデルとして非常に有用であり、さらに前記疾患の治療又は診断に有効な化合物の同定を目的とするスクリーニング方法で用いることもできる。
本発明を利用するために用いることができる標準的な技術及び方法の要旨は、下記で提供される。本発明は、記載される特定の方法論、プロトコル、細胞株、ベクター及び試薬に限定されないことは理解されよう。本明細書で用いられる専門用語は単に特定の態様を説明するためのものであり、前記用語によって本発明の範囲を限定しようとするものではないこともまた理解されよう。本発明の範囲は添付の請求の範囲の用語によってのみ限定される。
本明細書では、ヌクレオチド及びアミノ酸についての標準的な略語が用いられる。
【0030】
本発明の実施では別に指示がなければ、分子生物学、微生物学、リコンビナントDNA技術及び免疫学の通常の技術が用いられるであろう。前記技術は当業者の技術範囲内である。
前記のような技術は、文献で完全に説明されている。特に適切な解説書の例には以下が含まれる:Sambrook Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition (1989); DNA Cloning, Vol. I and II ( D.N. Glover ed. 1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait ed. 1984);Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames & S.J. Higgins eds. 1984);Transcription and Translation (B.D. Hames & S.J. Higgins eds. 1984);Animal CellCulture (R.I. Freshney ed. 1986);Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);the Methods in Enzymology series (Academic Press, Inc.)特にVol. 154 & 155;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.H. Miller and M.P. Calos eds. 1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Mayer and Walker, eds. 1987, Academic Press, London);Scopes, (1987) Protein Purification: Principles and Practice, Second Edition (Springer Verlag, NY);及びHandbook of Experimental Immunology, Vols. I-IV (D.M. Weir and C.C. Blackwell eds. 1986)。
【0031】
本明細書において用いる“ポリペプチド”という用語は、ペプチド結合又は改変ペプチド結合によって互いに結合した2個又は3個以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質が含まれる。前記改変ペプチド結合によるものは、すなわちペプチドイソスターである。この用語は、短鎖(ペプチド及びオリゴペプチド)及び長鎖(タンパク質)の両方を指す。
本発明のポリペプチドは成熟タンパク質の形態を有するものでもよく、またプレ-、プロ-又はプレプロ-タンパク質であってプレ-、プロ-又はプレプロ-部分の切断によって活性化されて活性な成熟ポリペプチドを生じるタンパク質でもよい。そのようなポリペプチドでは、プレ-、プロ-又はプレプロ-配列がリーダー配列若しくは分泌配列であっても、又は成熟ポリペプチド配列の精製のために用いられる配列であってもよい。
本発明の第一の特徴のポリペプチドは、融合タンパク質の一部分を形成することができる。例えば、1個又は2個以上の付加アミノ酸配列を含むことがしばしば有利であり、前記付加アミノ酸配列は、分泌若しくはリーダー配列、プロ-配列、精製に役立つ配列、又は例えばリコンビナント形成の間により高いタンパク質安定性を付与する配列を含んでもよい。あるいは、又は前記に加えて、前記成熟ポリペプチドを別の化合物、例えば前記ポリペプチドの半減期を増加させるような化合物(例えばポリエチレングリコール)と融合させることができる。
【0032】
ポリペプチドは、天然のプロセス(例えば翻訳後プロセッシング)によって、又は本技術分野で周知の化学的改変技術によって改変された、20の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含んでいてもよい。本発明のポリペプチドに一般的に存在する公知の改変には、グリコシル化、脂質付加、硫化、γ-カルボキシル化(例えばグルタミン酸残基の)、ヒドロキシル化及びADP-リボシル化がある。他の可能な改変には、アセチル化、アシル化、アミド化、フラビンの共有結合付加、ヘム部分の共有結合付加、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合付加、脂質誘導体の共有結合付加、ホスファチジルイノシトールの共有結合付加、架橋、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、GPIアンカー形成、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク分解性プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、タンパク質へのトランスファーRNA媒介性アミノ酸付加(例えばアルギニル化)及びユビキチン結合が含まれる。
改変は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖及びアミノ末端又はカルボキシ末端を含むポリペプチド内のいずれの場所に存在してもよい。実際、共有結合改変によるポリペプチドのアミノ末端若しくはカルボキシ末端又はその両端の閉塞(blockage)は、天然に存在するポリペプチド及び合成ポリペプチドで一般的であり、そのような改変は本発明のポリペプチドにも存在し得る。
【0033】
ポリペプチド内に生じる改変は、多くの場合ポリペプチドが生成される方法の関数であろう。組換えによって生成されるポリペプチドについて、改変の性質及び程度は大部分が、特定の宿主細胞の翻訳後改変能力及び問題のポリペプチドのアミノ酸配列に存在している改変シグナルによって決定されるであろう。例えば、グリコシル化パターンは、異なる種類の宿主細胞間で変動する。
本発明のポリペプチドは、任意の適切な様式で調製することができる。そのようなポリペプチドには、単離された天然に存在するポリペプチド(例えば、細胞培養物から精製される)、組換え的に生成されたポリペプチド(融合タンパク質を含む)、合成的に生成されたポリペプチド、又は前記方法の組合せによって生成されたポリペプチドが含まれる。
本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドは、INSP106ポリペプチドと相同なポリペプチドであり得る。本明細書で用いる用語として、2種のポリペプチドが、ポリペプチドの一方の配列が他方のポリペプチドの配列に対して充分に高い同一性又は類似性を有する場合、“相同である”と称される。“同一性”とは、アラインメントを施した配列のどの特定の場所においても、アミノ酸残基が前記配列間で同一であることを示す。“類似性”は、アラインメントを施した配列のいずれの特定の場所においても、アミノ酸残基が前記配列間で類似の種類であることを示す。同一性及び類似性の度合いは、容易に計算できる(Computational Molecular Biology, A.M. Lesk ed., Oxford University Press, New York, 1988;Biocomputing. Informatics and Genome Projects, D.W. Smith ed., Academic Press, New York, 1993;Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, A.M. Griffin and H.G. Griffin eds., Humana Press, New Jersey, 1994;Sequence Analysis in Molecular Biology, G. von Heinje, Academic Press, 1987;及びSequence Analysis Primer, M. Gribskov and J. Devereux eds., M. Stockton Press, New York, 1991)。
【0034】
したがって、相同なポリペプチドには、INSP106ポリペプチドの天然の生物学的変種(例えば前記ポリペプチドが由来した種における対立形質変種又は地理的変種)及び変異体(例えばアミノ酸置換、挿入又は欠失を含む変異体)が含まれる。前記変異体は、1又は2以上のアミノ酸残基が保存的又は非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)で置換されているポリペプチドを含んでもよく、さらにそのような置換アミノ酸残基は遺伝コードでコードされたものでもそうでなくてもよい。典型的な前記の置換は、Ala、Val、Leu及びIle間で;SerとThr間で;酸性残基AspとGlu間で;AsnとGln間で;塩基性残基LysとArg間で;又は芳香族残基PheとTyr間で生じる。特に好ましいものは、いくつか(すなわち5から10、1から5、1から3、1から2、又は単に1つ)のアミノ酸が任意の組合せで置換、欠失又は付加された変種である。とりわけ好ましいものは、タンパク質の特性及び活性を変化させないサイレント置換、付加及び欠失である。また、その際とりわけ好ましいものは、保存的置換である。前記変異体にはまた、1又は2以上のアミノ酸残基が置換基を含むポリペプチドも含まれる。
【0035】
好ましくは、本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドは、INSP106配列の完全長にわたり70%、80%又は90%以上の、INSP106ポリペプチド又はそれらの活性なフラグメントとの配列同一性を有する。より好ましいポリペプチドは、各々、INSP106配列の完全長にわたり92%、95%、98%又は99%以上の同一性を有する。
好ましくは、本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドは、配列番号8に記載のアミノ酸配列と60%、70%、80%、90%、92%、95%、98%又は99%以上の配列同一性を有する配列を含む。
一態様において、少なくとも配列番号8のフラグメントを含む、本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドが提供される。
好ましくは、本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドは、配列番号2又は配列番号8を含む。
【0036】
本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドはまた、構造についてのアラインメントの1つ又は2つ以上の技術を用いて同定されたポリペプチドであってもよい。例えば、バイオペンジウム検索データベースの作製に用いられる検索ツールの一角を構成するインファーマティカ=ゲノムスレッダー(Inpharmatica Genome Threader)技術を用いて(同時係属PCT特許出願WO 01/69507を参照されたい)、INSP106ポリペプチドと比較して低い配列同一性しかもたないが、配列番号4又は配列番号6の活性を有すると予測される、現在は機能が未知のポリペプチドを同定することができ、この方法はINSP106ポリペプチド配列と有意な構造相同性を共有することに基づき、本発明の第一の特徴のポリペプチドを利用する。“顕著な構造的相同性”とは、インファーマティカ=ゲノムスレッダーが、2つのタンパク質は10%以上の確実性を有して構造的相同性を共有すると予測することを意味する。
【0037】
本発明の第一の特徴のポリペプチドは、INSP106ポリペプチドのフラグメント及びINSP106ポリペプチドの機能的等価物のフラグメントも含むが、但しこれらのフラグメントは、配列番号4若しくは配列番号6の活性を維持するか、又は配列番号2を含むポリペプチドに特異的な抗原決定基を有する。
本明細書において用いる、“フラグメント”という用語は、INSP106ポリペプチド又はその機能的等価物の1のアミノ酸配列の一部(全体ではないが)と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。前記フラグメントは、前記配列に由来する少なくともn個の連続するアミノ酸を含むべきであり、さらに個々の配列に応じてnは好ましくは7又はそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25又はそれより大きい)。小さなフラグメントは、抗原決定基を構成することができる。
【0038】
そのようなフラグメントは、“独立的存在(free-standing)”、すなわち、他のアミノ酸若しくはポリペプチドの一部でもなく、他のアミノ酸若しくはポリペプチドの一部に融合されているのでもないものであってよく、又はより大きなポリペプチドに含まれて、前記ポリペプチドの一部分又は領域を形成してもよい。より大きなポリペプチドの内部に含まれている場合、本発明のフラグメントは、最も好ましくは連続するただ1つの領域を形成する。例えばある種の好ましい態様は、前記フラグメントのアミノ末端に融合したプレ−及び/若しくはプロ−ポリペプチド領域を有するフラグメント、並びに/又は前記フラグメントのカルボキシ末端に融合した付加的領域を有するフラグメントに関する。しかしながら、いくつかのフラグメントがただ1つのより大きなポリペプチドの内部に含まれていてもよい。
【0039】
本発明のポリペプチド又はその免疫原性フラグメント(少なくとも1つの抗原決定基を含む)を用いて、例えばポリクローナル又はモノクローナル抗体といった、前記ポリペプチドに免疫特異的なリガンドを作製することができる。そのような抗体を用いて、本発明のポリペプチドを発現しているクローンを単離若しくは同定するか、又はアフィニティークロマトグラフィーで本発明のポリペプチドを精製することができる。前記抗体はまた、当業者には明らかなように、他の用途のうち診断的又は治療的補助としても用いることができる。
“免疫特異的”という用語は、前記抗体が、既知のミッドカインファミリーメンバーswall|P21741|MK_HUMANに対する親和性よりも、配列番号4又は配列番号6のポリペプチドに対して実質的に強い親和性を有することを意味する。本明細書で用いる“抗体”という用語は、完全な分子だけでなく問題の抗原決定基と結合することができるそのフラグメント、例えばFab、F(ab’)2及びFvも指す。したがって、そのような抗体は、本発明の第一の特徴のポリペプチドと結合する。
【0040】
”実質的に強い親和性”とは、既知のミッドカインファミリーのメンバーswall|P21741|MK_HUMANに対する親和性と比べて、配列番号4又は配列番号6のポリペプチドに対する親和性において測定可能な増加が存在することを指す。
好ましくは、この親和性は、既知のミッドカインファミリーのメンバーswall|P21741|MK_HUMANについてよりも、配列番号4又は配列番号6のポリペプチドについて少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、100倍、103倍、104倍、105倍又は106倍より大きい。
ポリクローナル抗体が所望される場合、選択される哺乳類(例えばマウス、ウサギ、ヤギ又はウマ)が、本発明の第一の特徴のポリペプチドで免疫され得る。動物を免疫するために用いられるポリペプチドは、リコンビナントDNA技術によって誘導されてもよく、又は化学的に合成されてもよい。所望する場合には、前記ポリペプチドを担体タンパク質と結合させることができる。前記ポリペプチドと化学的に結合させることができる一般的に用いられ得る担体には、ウシ血清アルブミン、チログロブリン及びキーホールリンペットヘモシアニンが含まれる。次に、前記担体結合ポリペプチドが用いられて、動物が免疫される。免疫した動物から血清が採集され、既知の方法(例えばイムノアフィニティークロマトグラフィー)にしたがって処理される。
【0041】
本発明の第一の特徴のポリペプチドに対するモノクローナル抗体もまた、当業者は容易に生成できる。ハイブリドーマ技術を用いてモノクローナル抗体を作製する一般的な方法論は、周知である(例えば以下を参照されたい:G. Kohler & C. Milstein, Nature 256:495-497(1975); Kozbor et al., Immunology Today 4:72(1983); Cole et al., 77-96 “Monoclonal Antibody and Cancer Therapy”, Alan R. Liss, Inc. (1985))。
本発明の第一の特徴のポリペプチドに対して生成されたモノクローナル抗体のパネル(panels)を種々の特性、すなわちアイソタイプ、エピトープ、親和性などについてスクリーニングすることができる。モノクローナル抗体は、それらを作らせた個々のポリペプチドの精製に特に有用である。あるいは、対象のモノクローナル抗体をコードする遺伝子を、例えば当技術分野で知られるPCR技術によってハイブリドーマから単離し、さらにクローニングし適切なベクターで発現させることができる。
また、非ヒト可変領域がヒト定常領域と結合又は融合されているキメラ抗体(例えば以下を参照されたい:Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:3439(1987))も有用であり得る。
【0042】
抗体は、例えばヒト化により、改変して個体での免疫原性を減少させることができる(例えば以下を参照されたい:Jones et al., Nature,321:522(1986); Verhoeyen et al., Science, 239:1534(1988); Kabat et al., J. Immunol., 147:1709(1991); Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:10029(1989); Gorman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:34181(1991); Hodgson et al., Bio/Technology 9:421(1991))。本明細書で用いられる“ヒト化抗体”という用語は、非ヒトドナー抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメイン中のCDRアミノ酸及び選択した他のアミノ酸がヒト抗体の等価なアミノ酸に代えて置換されている抗体分子を指す。したがって、ヒト化抗体はヒトの抗体とよく似ているが、ドナー抗体の結合能力を有する。
また別の選択肢では、前記抗体が、2つの異なる抗原結合ドメインを有し、その各ドメインは異なるエピトープに向けられている“二重特異性”抗体であってもよい。
ファージディスプレー技術を用いて、本発明のポリペプチドに対する結合活性を有する抗体をコードしている遺伝子を、関連する抗体の保有についてスクリーニングされたヒト由来のリンパ球のPCR増幅V-遺伝子レパートリー、又は未感作ライブラリーのいずれかから選択することができる(J. McCafferty et al., (1990) Nature 348:552-554; J. Marks et al., (1992) Biotechnology 10:779-783)。前記抗体の親和性は、鎖のシャッフリングによって改善することもできる(T. Clackson et al., (1991) Nature 352:624-628)。
上記の技術によって作製された抗体は、ポリクローナルであれモノクローナルであれ、免疫アッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)で試薬として用いることができるという点で、更なる有用性を有する。これらの用途では、これら抗体を、分析的に検出可能な試薬(例えば放射性同位元素、蛍光分子又は酵素)で標識することができる。
【0043】
本発明の第二及び第三の特徴の好ましい核酸分子は、配列番号2、配列番号4、配列番号6又は配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むか若しくはこれらからなるポリペプチド配列をコードするもの及び前記ポリペプチド配列に機能的に等価なポリペプチド配列をコードするものである。これら核酸分子は、本明細書に記載した方法及び用途で用いることができる。本発明の核酸分子は、好ましくは本明細書で開示される配列に由来する少なくともn個の連続するヌクレオチドを含み、この場合、前記個々の配列に応じてnは10又はそれより大きい(例えば12、14、15、18、20、25、30、35、40又はそれより大きい)。
本発明の核酸分子は、上記で述べた核酸分子に相補的な配列も含む(例えばアンチセンス又はプローブとしての目的のために)。
本発明の核酸分子は、RNA(例えばmRNA)、又はDNA(例えばcDNA、合成DNA又はゲノムDNAを含む)の形態であってもよい。そのような核酸分子は、クローニングによって、化学合成によって、又はそれらの組合せによって得ることができる。前記核酸分子は、固相ホスホルアミダイト化学合成のような技術を用いる化学合成によって、ゲノム又はcDNAライブラリーから、又は生物体からの分離によって調製することができる。RNA分子は、一般的にはDNA配列のin vitro又はin vivo転写によって作製され得る。
【0044】
核酸分子は、二本鎖でも一本鎖でもよい。一本鎖DNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)でも、非コード鎖(アンチセンス鎖とも称される)でもよい。
“核酸分子”という用語には、DNA及びRNAのアナログ(例えば改変骨格を含むもの)、並びにペプチド核酸(PNA)も含まれる。本明細書で用いられる“PNA”という用語は、アンチセンス分子又は抗遺伝子(anti-gene)作用因子を指し、長さが少なくとも5ヌクレオチドであってアミノ酸残基のペプチド骨格に結合されたオリゴヌクレオチドを含み、このペプチド骨格は好ましくはリジンで終わる。前記末端リジンは当該組成物に可溶性を付与する。PNAは、PEG化(pegylated)されて細胞内での寿命が延長されてもよく、細胞内では、PNAは優先的に相補性一本鎖DNA及びRNAと結合して転写物の伸長を停止させる(P.E. Nielsen et al. (1993) Anticancer Drug Des. 8:53-63)。
【0045】
本発明のポリペプチドをコードする核酸分子は、本明細書で開示される1又は2以上の核酸分子のコード配列と同一であり得る。
これらの分子はまた、遺伝コードの縮退の結果として、配列番号2、配列番号4、配列番号6又は配列番号8をコードする配列と異なる配列を有することもある。
そのような核酸分子には、それ自体で成熟なポリペプチドのコード配列;成熟ポリペプチドのコード配列及び付加コード配列(例えばリーダー配列又は分泌配列をコードするもの)、例えばプロ-、プレ-又はプレプロ-ポリペプチド配列をコードするもの;前述の付加的コード配列を伴なって、又は伴なわないで、さらに付加的な非コード配列(非コード5’及び3’配列を含む)を伴なう成熟ポリペプチドのコード配列が含まれるが、ただしこれらに限定されず、前記の非コード5'及び3'配列は、例えば転写される非翻訳配列で、転写(終止シグナルを含む)、リボソーム結合及びmRNA安定性において役割を果たすものである。前記核酸分子は、更なる機能性を提供するアミノ酸のような付加アミノ酸をコードする付加配列を含むこともできる。
【0046】
本発明の第二及び第三の特徴の核酸分子は、本発明の第一の特徴のポリペプチド及びフラグメントの機能的等価物及びそれらのフラグメントもコードし得る。そのような核酸分子は、天然に存在する変種(例えば天然に存在する対立形質変種)であっても、又は前記分子は天然に存在することが知られていない変種であってもよい。前記のような天然に存在しない核酸分子の変種は、突然変異誘発技術(核酸分子、細胞又は生物に対して適用される技術が含まれる)によって達成できる。
このような変種の中では、特にヌクレオチドの置換、欠失又は挿入によって前述の核酸分子と異なる変種が挙げられる。置換、欠失又は挿入には、1個又は2個以上のヌクレオチドが関与し得る。変種は、コード領域又は非コード領域又はその両方において変化していてもよい。コード領域における変化は、保存的又は非保存的なアミノ酸の置換、欠失又は挿入を生成し得る。
本発明の核酸分子はまた、多様な理由で、当技術分野で一般的に知られている方法を用いて操作されてもよく、前記方法としては、遺伝子産物(ポリペプチド)のクローニング、プロセッシング及び/又は発現の改変が挙げられる。ランダムフラグメント化によるDNAシャッフリングならびに遺伝子フラグメント及び合成オリゴヌクレオチドのPCRリアッセンブリーは、ヌクレオチド配列の操作に用いられ得る技術に含まれる。部位特異的突然変異誘発を用いて、新規な制限部位の挿入、グリコシル化パターンの変更、コドンの優先性の変化、スプライシング変種の生成、変異の導入などを行うことができる。
【0047】
本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする核酸分子は、結合核酸分子が融合タンパク質をコードするように、異種配列に連結されてもよい。前記のような結合核酸分子は本発明の第二又は第三の特徴に包含される。例えば、本発明のポリペプチドの活性の阻害物質についてペプチドライブラリーをスクリーニングするために、前記のような結合核酸分子を用いて、市販の抗体により認識され得る融合タンパク質を発現させることは、有用であり得る。融合タンパク質はまた、本発明のポリペプチド配列と異種タンパク質配列との間に位置する切断部位を含むように操作し、それによって前記ポリペプチドを異種タンパク質から切り離して精製することができるようにしてもよい。
本発明の核酸分子には、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子と部分的に相補的であり、したがってそのコード核酸分子とハイブリダイズする(ハイブリダイゼーション)アンチセンス分子も含まれる。そのようなアンチセンス分子(例えばオリゴヌクレオチド)は、当業者にはよく知られるように、本発明のポリペプチドをコードする標的核酸を認識し、その標的核酸と特異的に結合してその転写を妨げるようにデザインすることができる(例えば以下の文献を参照されたい:J.S. Cohen, Trends in Pharm. Sci., 10:435(1989);J. Okano, Neurochem. 56:560(1991);J. O‘ Connor, Neurochem. 56:560(1991); Lee et al., Nucleic Acids Res. 6:3073(1979);Cooney et al., Science 241:456(1988);Dervan et al., Science 251:1360(1991))。
【0048】
本明細書で用いられる“ハイブリダイゼーション”という用語は、2つの核酸分子が水素結合によって互いに会合することを指す。典型的には、1つの分子が固相支持体に固定され、他方は溶液中で遊離しているであろう。次に、2つの分子は、水素結合に適した条件下で互いに接触させられ得る。前記結合に影響する因子には以下が含まれる:溶媒の種類及び体積;反応温度;ハイブリダイゼーションの時間;攪拌;液相分子の固相支持体への非特異的結合を妨害する薬剤(デンハルト試薬、又はBLOTTO);分子の濃度;分子の結合速度を増加させる化合物の使用(硫酸デキストラン又はポリエチレングリコール);及びハイブリダイゼーションに続く洗浄条件のストリンジェンシー(Sambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。
完全に相補的な分子と標的分子とのハイブリダイゼーションの阻害は、当業者に知られるハイブリダイゼーションアッセイを用いて調べることができる(例えばSambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。したがって、実質的に相同な分子は、文献(G.M. Wahl and S.L. Berger, 1987, Methods Enzymol. 152:399-407;A.R. Kimmel, 1987, Methods Enzymol. 152:507-511)で教示されるように、完全に相同な分子と標的分子との結合を種々のストリンジェンシー条件下で競合させ阻害するであろう。
“ストリンジェンシー”とは、異なる分子の会合よりも非常に類似した分子の会合に適したハイブリダイゼーション反応の条件を指す。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、以下を含む溶液(50%のホルムアミド、5倍のSSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5倍のデンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、及び20μg/mLの変性せん断サケ精子DNA)中で42℃にて一晩インキュベーションし、続いてフィルターを約65℃にて0.1倍のSSC中で洗浄すると定義される。低ストリンジェンシー条件は、35℃にて実施されるハイブリダイゼーション反応を含む(Sambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。好ましくは、ハイブリダイゼーションに用いられる条件が高ストリンジェンシー条件である。
【0049】
本発明のこの特徴の好ましい態様は、INSP106ポリペプチドをコードする核酸分子の全長にわたって少なくとも80%、85%若しくは90%同一である核酸分子、及びそのような核酸分子と実質的に相補的な核酸分子である。
好ましくは、本発明のこの特徴の核酸分子は、そのようなコード配列の全長にわたって少なくとも92%同一である領域又はこれらと相補的な核酸分子を含む。これに関しては、コード配列の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%又は99%同一の核酸分子が特に好ましい。この特徴の好ましい態様は、配列番号4又は6と同じ生物学的機能又は活性を実質的に保持するポリペプチドをコードする核酸分子である。
本発明はまた、以下の工程を含む、本発明の核酸分子を検出する方法を提供する:(a)二重鎖を形成するハイブリダイゼーション条件下で、本発明の核酸プローブを生物学的サンプルと接触させる工程;及び、(b)形成された前記の二重鎖を全て検出する工程。
【0050】
本発明に従って利用し得るアッセイに関連して下記でさらに考察するように、上述の核酸分子をRNA、cDNA又はゲノムDNAに対するハイブリダイゼーションプローブとして用いて、INSP106ポリペプチドをコードする完全長cDNA及びゲノムクローンを単離し、さらにINSP106ポリペプチドをコードする遺伝子と高い配列類似性を有する相同遺伝子又はオーソログ遺伝子のcDNA又はゲノムクローンを単離することができる。
これに関しては、当技術分野で公知である他の技術のうち、特に以下の技術を利用することができ、これらの技術は、例示として下記で考察される。DNAのシークエンシング及び解析の方法は周知であって、当技術分野では一般的に利用可能であり、本明細書で考察される本発明の態様の多くを実施するために実際に用いることができる。そのような方法では、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、シークエナーゼ(US Biochemical Corp., Cleaveland, OH)、Taqポリメラーゼ(Perkin Elmer)、耐熱性T7ポリメラーゼ(Amersham, Chicago, IL)、又はポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼの組合せ(例えば市販(Gibco/BRL, Gaithersburg, MD)のELONGASE増幅システムで見出されるようなもの)のような酵素を利用することができる。好ましくは、シークエンシング過程は、例えばハミルトンマイクロラブ(Hamilton Micro Lab)2200(Hamilton, Reno, NV)、ペルティエサーマルサイクラー(Peltier Thermal Cycler)PTC200(MJ Research, Watertown, MA)、ABIカタリスト並びに373及び377DNAシークエンサー(Perkin Elmer)のような機器を用いて自動化することができる。
【0051】
INSP106ポリペプチドの機能と等価な機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子を単離する方法の1つは、当技術分野で知られている標準的な手法を用い、天然のプローブ又は人工的に設計したプローブによりゲノムライブラリー又はcDNAライブラリーを探索することである(例えば以下の文献を参照されたい:“Current Protocols in Molecular Biology”, Ausubel et al.(eds). Greene Publishing Association and John Wiley Interscience, New York, 1989, 1992)。特に有用なプローブは、配列番号7又は核酸配列が配列番号7の少なくとも一部を含む配列番号4若しくは6の核酸配列に由来する核酸配列に一致するか、又は前記配列と相補的であって、少なくとも15、好ましくは少なくとも30、さらに好ましくは少なくとも50の連続する塩基を含むプローブである。前記のようなプローブは、分析的に検出可能な試薬で標識して、前記プローブの識別を容易にすることができる。有用な試薬には、放射性同位元素、蛍光色素、及び検出可能な生成物の形成を触媒し得る酵素が含まれるが、ただしこれらに限定されない。これらのプローブを用いて、当業者は、ヒト、哺乳類又は他の動物供給源から対象のタンパク質をコードするゲノムDNA、cDNA又はRNAポリヌクレオチドの相補的なコピーを単離し、近縁配列、例えば前記のファミリー、タイプ及び/又はサブタイプに属するまた別のメンバーについて、前記の供給源をスクリーニングすることができるであろう。
【0052】
多くの場合、単離されるcDNA配列は不完全で、ポリペプチドをコードする領域は短く(通常は5'末端で)切断されているであろう。完全長cDNAを得るために、又は短いcDNAを伸長させるために、いくつかの方法が利用可能である。そのような配列は、部分的なヌクレオチド配列を用い、上流の配列(例えばプロモーター及び調節エレメント)を検出するための当技術分野で公知である種々の方法を用いて伸長させることができる。例えば、使用され得るある方法は、cDNA末端迅速増幅法(RACE;例えば以下を参照されたい:Frohman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1988) 85:8998-9002)に基づく。前記技術の最近の改変(例えばマラソン(Marathon)(商標)技術(Clontech Laboratories Inc.)により例示される)は、より長いcDNAの検索を顕著に単純化している。“制限部位”PCRと称されるわずかに異なる技術では、普遍的プライマーを用いて、既知の遺伝子座に近接する未知の核酸配列が検索される(G. Sarkar (1993) PCR Methods Applic. 2:318-322)。逆PCRも、既知の領域に基づく多様なプライマーを用いて、配列を増幅すること又は伸長することに用いられ得る(T. Triglia et al. (1988) Nucleic Acids Res. 16:8186)。使用され得る別の方法は捕捉PCRで、この方法は、ヒト及び酵母の人工染色体DNAにおける既知配列に近接しているDNAフラグメントのPCR増幅を含む(M. Lagerstrom et al. (1991) PCR Methods Applic. 1:111-119)。未知配列を検索するために用いられ得る別の方法は、パーカーの方法である(J.D. Parker et al.(1991) Nucleic Acids Res. 19:3055-3060)。さらに、ゲノムDNAを少しずつ移動して調べるためにPCR、入れ子(nested)プライマー及びプロモーターファインダーTM(PromoterFinderTM)ライブラリー(Clontech, Palo Alto, CA)を用いてもよい。この方法ではライブラリーのスクリーニングが不要で、イントロン/エクソン結合部の発見に有用である。
完全長cDNAをスクリーニングする場合、より大きなcDNAを包含するようにサイズ選択されたライブラリーを用いることが好ましい。さらにまた、遺伝子の5’領域を含む配列をより多く含むという点で、ランダムプライミングした(random-primed)ライブラリーが好ましい。ランダムプライムライブラリーの使用は、オリゴd(T)ライブラリーが完全長cDNAを生成できない状況で特に好まれ得る。ゲノムライブラリーは、5’非転写調節領域に配列を伸長させるために有用であり得る。
【0053】
本発明のある態様では、染色体上の位置特定のために、本発明の核酸分子を用いることができる。この技術では、核酸分子は個々のヒト染色体上の特定の位置に対して特異的に標的化され、個々のヒト染色体上の特定の位置とハイブリダイズさせることができる。本発明の関連配列の染色体上へのマッピングは、遺伝子関連疾患に関する配列の相関性確認において重要な工程である。いったん染色体の正確な位置に配列がマッピングされたら、前記配列の染色体上の物理的な位置を遺伝子地図データと相関させることができる。そのようなデータは、例えば以下で見出すことができる:V. McKusick, Mendelian Inheritance in Man(ジョーンズホプキンス大学、ウェルチ医学図書館を通じてオンラインで利用可能である)。同じ染色体領域にマッピングされた遺伝子と疾患との関係を、次に連鎖解析(物理的に近接する遺伝子の同時遺伝(coinheritance))によって同定する。これにより、ポジショナルクローニング又は他の遺伝子発見技術を用いて疾患遺伝子を検索する研究者に貴重な情報が提供される。いったん疾患又は症候群の位置が遺伝連鎖によって特定のゲノム領域で大まかに限局されたら、前記領域にマッピングされるいずれの配列も、更なる解析のための関連遺伝子又は調節遺伝子となることができる。前記核酸分子はまた、正常な個体、キャリア個体又は罹患個体間で転座、逆位などによる染色体位置上の相違を検出するために用いることができる。
【0054】
本発明の核酸分子はまた、組織分布同定(tissue localisation)のために貴重である。そのような技術は、ポリペプチドをコードするmRNAの検出によって、組織中の前記ポリペプチドの発現パターンの決定を可能にする。これらの技術には、in situハイブリダイゼーション技術及びヌクレオチド増幅技術(例えばPCR)が含まれる。これらの研究から得られる結果は、生物内での前記ポリペプチドの正常な機能を示唆する。さらに、変異遺伝子によってコードされるmRNAの発現パターンと正常mRNA発現パターンとの比較研究によって、変異ポリペプチドの疾患における役割に対する貴重な洞察が提供される。そのような不適切な発現は時間的、位置的又は量的性質を有する場合もある。
遺伝子サイレンシングアプローチを実施して、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の内在性発現をダウンレギュレートすることもできる。RNA干渉(RNAi)(S.M. Elbashir et al. Nature 2001, 411, 494-498)は、使用可能な配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのための1つの方法である。短いdsRNAオリゴヌクレオチドをin vitroで合成して細胞内に導入する。これらdsRNAの配列特異的結合によって標的mRNAの分解が開始され、標的タンパク質の発現が減少又は阻害される。
上記に述べた遺伝子サイレンシングの有効性は、ポリペプチド発現の測定(例えばウェスタンブロットによる)、又はTaqManによる方法を用いるRNAレベルの測定によって評価することができる。
【0055】
本発明のベクターは本発明の核酸分子を含み、クローニングベクターでも発現ベクターでもよい。本発明のベクターで形質転換、トランスフェクト又は形質導入され得る本発明の宿主細胞は、原核細胞でも真核細胞でもよい。
好ましい本発明のベクターは、添付する図面に示されているものを含む。
本発明のポリペプチドは、宿主細胞内に含まれるベクター中の前記ポリペプチドをコードする核酸分子の発現によって、リコンビナント形態で調製することができる。前記のような発現方法は当業者によく知られており、多くは以下の文献でより詳細に記述されている:Sambrook et al.(上掲書)及びFernandez & Hoeffler(1998, eds. “Gene Expression Systems. Using nature for the art of Expression”, Academic Press, San Diego, London, Boston, New York, Sydney, Tokyo, Toronto)。
【0056】
一般的には、要求される宿主でポリペプチドを生成させるために、核酸分子の維持、増殖又は発現に適したいずれの系又はベクターも用いることができる。周知であり日常的である種々の技術のいずれによっても(例えば前掲書(Sambrook et al.)に記載されたようなもの)、適切なヌクレオチド配列を発現系に挿入することができる。一般的には、コード遺伝子は制御エレメント(例えばプロモーター、リボソーム結合部位(細菌での発現の場合)、及び場合によってオペレーター)の制御下に置かれ、それによって所望のポリペプチドをコードするDNA配列を形質転換宿主細胞でRNAに転写させることができる。
適切な発現系の例には、例えば染色体系、エピソーム系及びウイルス由来系、例えば以下に由来するベクターが含まれる:細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入エレメント、酵母染色体エレメント、ウイルス、例えばバキュロウイルス、パポーバウイルス(例えばSV40)、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルス、又は上記の組合せ、例えばプラスミドとバクテリオファージの遺伝子エレメントに由来するもの(例えばコスミド及びファージミドを含む)。ヒト人工染色体(HAC)もまた、プラスミドに包含させ発現させるよりも大きいDNAフラグメントを搬送するのに用いることができる。
【0057】
特に適切な発現系には、リコンビナントバクテリオファージ、プラスミド又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された微生物(例えば細菌);酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)又は細菌発現ベクター(例えばTi又はpBR322プラスミド)で形質転換した植物細胞系;又は動物細胞系が含まれる。無細胞翻訳系もまた、本発明のポリペプチドの生成に用いることができる。
本発明のポリペプチドをコードする核酸分子の宿主細胞への導入は、多くの標準的な実験室マニュアル(例えば、Davis et al., BasicM ethods in Molecular Biology (1986)及び上掲書(Sambrook et al.))に記載された方法によって達成できる。特に適切な方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン仲介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、陽イオン脂質仲介トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスダクション、擦過ローディング(scrape loading)、弾道導入又は感染が含まれる(以下を参照されたい:Sambrook et al.(1989)上掲書;Ausubel et al.(1991)上掲書;Spector, Goldman & Leinwald,(1998))。真核細胞では、発現系は、その系の要求に応じて一過性(例えば、エピソーム性)又は永続的(染色体組込み)であり得る。
【0058】
コード核酸分子は、所望であれば、例えば翻訳ポリペプチドの小胞体内腔、細胞膜周辺腔又は細胞外環境への分泌のために、シグナルペプチド又はリーダー配列のような制御配列をコードする配列を含んでいても、又は含んでいなくてもよい。これらのシグナルは前記ポリペプチドにとって内因性であってもよく、又は異種シグナルであってもよい。リーダー配列は、翻訳後プロセッシングで細菌宿主によって取り除くことができる。
コントロール配列の他に、宿主細胞の増殖に関連して前記ポリペプチドの発現の調節を可能にする調節配列を付加することが望ましい場合がある。調節配列の例は、化学的又は物理的刺激(調節化合物の存在を含む)又は多様な温度若しくは代謝条件に応答して遺伝子の発現を増加させたり低下させたりする配列である。調節配列は、ベクターの非翻訳領域、例えばエンハンサー、プロモーター並びに5’及び3’非翻訳領域である。これらは、宿主細胞タンパク質と相互作用して、転写及び翻訳を実行する。そのような調節配列は、その強度及び特異性を変化させることができる。利用されるベクター系及び宿主に応じて、多くの適切な転写及び翻訳エレメント(構成性及び誘発性プロモーターを含む)を用いることができる。例えば、細菌系でクローニングするときは、誘発性プロモーター、例えばBluescriptファージミド(Stratagene, La Jolla, CA)又はpSportl(商標)プラスミド(Gibco BRL)などのハイブリッドlacZプロモーターを用いることができる。バキュロウイルスポリヘドリンプロモーターは、昆虫細胞で用いることができる。植物細胞ゲノムに由来するプロモーター又はエンハンサー(例えば熱ショック、RUBISCO及び貯蔵タンパク質遺伝子)又は植物ウイルスに由来するプロモーター又はエンハンサー(例えばウイルスプロモーター又はリーダー配列)は、ベクターへクローニングすることができる。哺乳類細胞系では、哺乳類遺伝子由来又は哺乳類ウイルス由来のプロモーターが好ましい。配列の多数コピーを含む細胞株の作製が必要な場合、SV40又はEBVをベースとするベクターが、適切な選択マーカーとともに用いられ得る。
【0059】
発現ベクターは、特定の核酸コード配列を適切な調節配列とともにベクター内に配置させることができるように構築され、前記コード配列の調節配列に関する位置及び向きは、前記コード配列が調節配列の“制御”下で転写されるような位置及び向きである(すなわちコントロール配列にてDNA分子と結合するRNAポリメラーゼは、前記コード配列を転写する)。いくつかの事例では、前記配列を適切な向きで制御配列に付属させることができるように(すなわちリーディングフレームを維持するために)、前記配列を改変する必要があるであろう。
コントロール配列及び他の調節配列は、ベクターへの挿入の前に核酸コード配列に連結させることができる。あるいは、コントロール配列及び適切な制限部位を既に含む発現ベクターへ、コード配列を直接クローニングすることができる。
リコンビナントポリペプチドの長期的かつ高収量の生成のためには、安定な発現が好ましい。例えば、対象のポリペプチドを安定に発現する細胞株は、ウイルスの複製起点及び/又は内因性発現エレメント並びに選択マーカー遺伝子を同じ又は別個のベクター上に含む発現ベクターを用いて形質転換させることができる。ベクターの導入に続き、選択培地に切り替える前に細胞を栄養(enriched)培地で1-2日間増殖させることができる。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することで、選択マーカーの存在によって、導入された配列をうまく発現する細胞の増殖及び回収が可能になる。安定して形質転換された細胞の耐性クローンは、細胞の種類に適した組織培養技術を用いて増殖させることができる。
【0060】
発現のための宿主として利用可能な哺乳類細胞株は当技術分野で公知であり、米国菌培養収集所(American Type Culture Collection, ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株が含まれる。そのような細胞株には、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベイビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎(COS)細胞、C127細胞、3T3細胞、BHK細胞、HEK293細胞、ボウズ(Bowes)メラノーマ細胞及びヒト肝細胞癌(例えばHepG2)細胞及び他の多数の細胞株が挙げられるが、これだけに限られない。
バキュロウイルス系では、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系のための材料は、特にインビトロジェン(Invitrogen, San Diego, CA)からキットの形態で(“MaxBac”キット)商業的に入手可能である。そのような技術は一般的に当業者に知られており、文献には完全に記載されている(Summers & Smith, Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987))。この系での使用に特に適切な宿主細胞には、昆虫細胞、例えばドロソフィラ(Drosophila)S2細胞及びスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞が含まれる。
【0061】
当技術分野で公知である多くの植物細胞培養及び植物体(whole plant)遺伝子発現系が存在する。適切な植物細胞遺伝子発現系の例には、米国特許第5,693,506号、5,659,122号及び5,608,143号に記載されるものが含まれる。植物細胞培養における遺伝子発現の更なる例は、文献に記載されている(Zenk (1991) Phytochemistry 30:3861-3863)。
特に、プロトプラストを単離し、これを培養して完全な再生植物を形成することが可能な植物は全て利用することができ、それによって移入遺伝子を含む完全な植物が回収できる。特に、サトウキビ、サトウダイコン、綿花、果実及び他の樹木、マメ類及び野菜の主要な種の全てを含む(ただしこれらに限定されない)全ての植物は、培養細胞又は培養組織から再生させることができる。
【0062】
特に好ましい細菌宿主細胞の例には、連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌(E. coli)、ストレプトマイセス及びバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)細胞が含まれる。
真菌での発現に特に適切な宿主細胞の例には、酵母細胞(例えばS.セレビシエ(cerevisiae))及びアスペルギルス細胞が含まれる。
【0063】
形質転換細胞株の回収に用いることができる多くの選択系は、当技術分野で公知である。そのような例としては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(M. Wigler et al.(1977) Cell 11:223-32)及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(I. Lowy et al.(1980) Cell22:817-23)の遺伝子が挙げられ、これらはそれぞれtk-又はaprt±細胞で用いることができる。
さらにまた、抗代謝物質耐性、抗生物質耐性又は除草剤耐性を選択基準として用いてもよい。例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)はメトトレキセートに対する耐性を付与し(M. Wigler et al.(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. 77:3567-70)、nptはアミノグリコシド系ネオマイシン及びG-418に対する耐性を付与し(F. Colbere-Garapin et al.(1981) J. Mol. Biol. 150:1-14)、さらにals又はpatはそれぞれクロロスルフロン(chlorsulfuron)及びホスフィノトリシン(phosphinotricin)アセチルトランスフェラーゼに対する耐性を付与する。さらに別の選択可能な遺伝子が報告されており、それらの例は当業者には明白であろう。
マーカー遺伝子の発現の有無は対象の遺伝子も存在することを示唆するが、対象の遺伝子の存在及び発現を確認する必要があり得る。例えば、関連配列がマーカー遺伝子配列内に挿入されている場合、マーカー遺伝子機能が存在しないことによって、適切な配列を含む形質転換細胞を識別することができる。あるいは、マーカー遺伝子は、ただ1つのプロモーターの制御下に、本発明のポリペプチドをコードする配列とともに直列に配置することができる。通常、誘発又は選択に応答するマーカー遺伝子の発現は、直列遺伝子の発現も示している。
【0064】
あるいは、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含み、前記ポリペプチドを発現する宿主細胞は、当業者に知られている多様な手法で同定することができる。前記手法には、DNA-DNA又はDNA-RNAハイブリダイゼーション及びタンパク質バイオアッセイ、例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)又はイムノアッセイ技術(例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び放射性イムノアッセイ(RIA))が含まれ(ただしこれらに限定されない)、核酸又はタンパク質の検出及び/又は定量のためにメンブレン、溶液又はチップをベースとする技術が含まれる(例えば以下を参照されたい:R. Hampton et al.(1990) Serological Methods, A Laboratory Manual, APS Press, St Paul, MN;及びD.E. Maddox et al.(1983) J. Exp. Med. 158:1211-1216)。
【0065】
多様な標識及び結合技術が当業者に知られており、種々の核酸及びアミノ酸アッセイで用いることができる。本発明のポリペプチドをコードする核酸分子に近縁な配列を検出するための標識ハイブリダイゼーションプローブ又はPCRプローブの作製手段には、標識したポリヌクレオチドを用いるオリゴ標識、ニックトランスレーション、末端標識又はPCR増幅が含まれる。あるいは、本発明のポリペプチドをコードする配列をベクターにクローニングしてmRNAプローブを作製することができる。そのようなベクターは当技術分野で公知であって、商業的に入手可能であり、適切なRNAポリメラーゼ(例えばT7、T3又はSP6)及び標識ヌクレオチドを添加することによりin vitroでRNAプローブを合成することに用いられ得る。これらの手法は、商業的に入手可能な種々のキット(Pharmacia & Upjohn (Kalamazoo, MI); Promega (Madison, WI); U.S. Biochemical Corp., (Cleaveland, OH))を用いて実施することができる。
検出を容易にするために用いられ得る適切なレポーター分子又は標識には、放射性核種、酵素及び蛍光、化学発光又は色素生産性物質、基質、コファクター、阻害剤、磁性粒子などが挙げられる。
【0066】
本発明の核酸分子は、トランスジェニック動物(特にげっ歯類動物)の作製にも用いることができる。そのようなトランスジェニック動物は、本発明の別の特徴を構成する。そのような作製は、体細胞の改変によって局部的に、又は遺伝性改変を導入する生殖細胞系列療法によって実施することができる。前記のようなトランスジェニック動物は、本発明のポリペプチドのモジュレーターとして有効な薬剤分子のための動物モデルを作製するために特に有用であり得る。
ポリペプチドは、周知の方法によってリコンビナント細胞培養物から回収し精製することができ、硫安又はエタノール沈澱、酸性抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸化セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーが含まれる。高性能液体クロマトグラフィーは、精製に特に有用である。単離及び精製の間にポリペプチドが変性した場合には、タンパク質のリフォールディングのためによく知られている技術を用いて活性な高次構造を再生することができる。
【0067】
所望の場合には、可溶性タンパク質の精製を容易にするポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列に本発明のポリペプチドをコードする配列を連結させることにより特殊化したベクター構築物も、タンパク質の精製を容易にするために用いることができる。そのような精製促進ドメインの例には、金属キレートペプチド(例えば固定化金属上での精製を可能にするヒスチジン-トリプトファンモジュール、固定化免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン、及びFLAGS伸長/アフィニティー精製システム(Immunex Corp., Seattle, WA)で用いられるドメイン)が含まれる。切断可能なリンカー配列(例えばXA因子又はエンテロキナーゼ(Invitrogen, San Diego, CA)に特異的なもの)を精製ドメインと本発明のポリペプチドとの間に包含させて、精製を容易にすることに用いてもよい。そのような発現ベクターの1つは、チオレドキシン又はエンテロキナーゼ切断部位に先行するいくつかのヒスチジン残基と融合させた本発明のポリペプチドを含む融合タンパク質の発現を提供する。ヒスチジン残基は、IMAC(固定金属イオンアフィニティークロマトグラフィー;J. Porath et al.(1992) Prot. Exp. Purif. 3:263-281)により精製を容易にし、一方、チオレドキシン又はエンテロキナーゼ切断部位は、融合タンパク質からポリペプチドを精製するための手段を提供する。融合タンパク質を含むベクターについての考察は以下で提供される:D.J. Kroll et al.(1993) DNA Cell Biol. 12:441-453)。
【0068】
スクリーニングアッセイで使用するためにポリペプチドを発現させる場合は、前記ポリペプチドを発現する宿主細胞の表面で前記ポリペプチドを生成させることが一般には好ましい。この場合、宿主細胞はスクリーニングアッセイで使用する前に、例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)又はイムノアフィニティー技術のような技術を用いて収穫することができる。ポリペプチドが培養液中に分泌される場合は、前記培養液を回収して発現されたポリペプチドを回収及び精製することができる。ポリペプチドが細胞内で生成される場合、ポリペプチドを回収する前に、先ず初めに細胞を溶解させねばならない。
本発明のポリペプチドを用いて、種々の薬剤スクリーニング技術のいずれかで化合物ライブラリーをスクリーニングすることができる。そのような化合物は、本発明のポリペプチドの遺伝子発現レベル又は活性レベルを活性化させる(アゴニスト作用)か、又は阻害する(アンタゴニスト作用)ことができ、本発明のさらなる特徴を形成し得る。好ましい化合物は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現を変化させることに有効であるか、又は本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性を調節することに有効である。
【0069】
アゴニスト化合物又はアンタゴニスト化合物は、例えば細胞、無細胞調製物、化学物質ライブラリー又は天然物混合物から単離することができる。これらのアゴニスト又はアンタゴニストは、天然又は改変された基質、リガンド、酵素、レセプター、又は構造的若しくは機能的模倣物質であってもよい。前記のようなスクリーニング技術の適切な概論については、以下を参照されたい:Coligan et al.(1991) Current Protocols in Immunology 1(2):Chapter 5。
良好なアンタゴニストである可能性が高い化合物は、本発明のポリペプチドと結合し、結合しているときに前記ポリペプチドの生物学的作用を誘発しない分子である。強力なアンタゴニストには、本発明のポリペプチドと結合し、それによって本発明のポリペプチドの活性を阻害又は消滅させる小型有機分子、ペプチド、ポリペプチド及び抗体が含まれる。そのようなやり方で、前記ポリペプチドと正常な細胞の結合分子との結合が阻害され、その結果前記ポリペプチドの正常な生物学的活性が阻害され得る。
このようなスクリーニング技術で用いられる本発明のポリペプチドは、溶液中で遊離していても、固相支持体に固定されていても、細胞表面に保持されていても、又は細胞内に位置していてもよい。一般に、このようなスクリーニングの方法は、前記のポリペプチドを発現している適切な細胞又は細胞膜を用いることを含み、前記細胞又は細胞膜をテスト化合物と接触させて、結合又は機能的応答の刺激若しくは阻害を観察する。続いて前記テスト化合物と接触させた細胞の機能的応答を、前記テスト化合物と接触させなかったコントロール細胞と比較する。このようなアッセイによって、前記ポリペプチドの活性化によって生じるシグナルをテスト化合物がもたらすか否かを、適切なアッセイを用いて評価することができる。活性化の阻害剤は、一般的には既知のアゴニストの存在下でアッセイを行われ、テスト化合物の存在下でのアゴニストによる活性化の影響が観察される。
【0070】
本発明のポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニスト化合物を同定する好ましい方法は、以下の工程を含む:
(a)本発明の第一の特徴のポリペプチドをその表面に発現している細胞を、前記ポリペプチドとの結合を許容する条件下で被験化合物と接触させる工程であって、前記ポリペプチドは、前記化合物とポリペプチドとの結合に応答して検出可能なシグナルを提供することができる第二の成分と結合されており;さらに
(b)前記化合物と前記ポリペプチドとの相互作用によって生じるシグナルのレベルを測定することにより、前記化合物が前記ポリペプチドと結合しこれを活性化するか又は阻害するかを決定する工程。
本明細書に説明される種類のアッセイで検出可能なシグナルを生成する方法は、当業者に公知である。特定の例としては、GAL4 DNA結合ドメインに融合している本発明のポリペプチド又はLBDのようなフラグメントを発現している構築体を、リポータープラスミド、例えばpFR-Luc(Stratagene Europe, Amsterdam, The Netherlands)と一緒に細胞へコトランスフェクションすることである。この特定のプラスミドは、ルシフェラーゼ遺伝子の発現を制御するGAL4結合部位の5個のタンデム反復を伴う、合成プロモーターを含む。細胞へ潜在的なリガンドが追加された場合、これは、GAL4-ポリペプチド融合体と結合し、ルシフェラーゼ遺伝子の転写を誘導するであろう。ルシフェラーゼ発現のレベルは、ルミネセンス測定器を用い、その活性により、モニタリングすることができる(例えば、Lehman et al JBC 270,12953, 1995; Pawar et al JBC, 277,39243, 2002を参照のこと)。
【0071】
本発明のポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定するさらに好ましい方法は、以下の工程を含む:
(a)前記ポリペプチドをその表面に発現している細胞を、前記ポリペプチドとの結合を許容する条件下で被験化合物と接触させる工程であって、前記ポリペプチドは、前記化合物とポリペプチドとの結合に応答して検出可能なシグナルを提供することができる第二の成分と結合されており;さらに
(b)前記化合物と前記ポリペプチドとの相互作用によって生じるシグナルレベルを前記化合物が存在しないときのシグナルレベルと比較することにより、前記化合物が前記ポリペプチドと結合しこれを活性化するか又は抑制するかを決定する工程。
さらに好ましい態様では、上述の一般的な方法が、前記ポリペプチドに対する標識又は非標識リガンドの存在下でアゴニスト又はアンタゴニストの同定を行う工程をさらに含み得る。
【0072】
本発明のポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法の別の態様は、以下の工程を含む:
本発明のポリペプチドをその表面に有する細胞とリガンドとの結合又は前記のポリペプチドを含む細胞膜とリガンドとの結合の抑制を、前記ポリペプチドとの結合を許容する条件下で候補化合物を存在させて決定する工程、及び前記ポリペプチドに結合したリガンドの量を決定する工程。リガンドの結合の減少をひき起こし得る化合物は、アゴニスト又はアンタゴニストであると考えられる。好ましくは、前記リガンドが標識されている。
より詳しくは、アンタゴニスト又はアゴニスト化合物をポリペプチドについてスクリーニングする方法は以下の工程を含む:
(a)本発明のポリペプチドをその表面に発現している全細胞又は本発明のポリペプチドを含む細胞膜と、標識リガンドとをインキュベートする工程;
(b)前記全細胞又は細胞膜と結合した標識リガンドの量を測定する工程;
(c)工程(a)の標識リガンド及び前記全細胞又は細胞膜の混合物に候補化合物を添加し、前記混合物を平衡化させる工程;
(d)前記全細胞又は細胞膜と結合した標識リガンドの量を工程(c)の後で測定する工程;さらに
(e)工程(b)及び工程(d)で結合した標識リガンドの相違を比較する工程であって、それにより工程(d)結合の減少をひき起こす化合物はアゴニスト又はアンタゴニストであると考える前記工程。
【0073】
本発明のINSP106ポリペプチドは、免疫系での細胞増殖及び移動などのプロセスを含む、様々な生理学的及び病理学的プロセスを調節することができる。本発明のポリペプチドは、胚の発達、歯牙発生及び組織修復を調節するための、神経突起成長、神経細胞生存、プラスミノーゲン活性化、ヘパリン-結合、胚の神経細胞の維持及び分化、ES細胞株の維持及び分化の調節(例えば拮抗)のために使用することができる。従って、INSP106ポリペプチドの生物学的活性は、様々な適切なアッセイを用い、このような調節活性の研究を可能にするシステムにおいて実験することができる。適切なアッセイは、Akhter, S., Tanaka, I. T., Kojima, S. , Muramatsu, H. , Inui, T. , Kimura, T. , Kaneda, N. , Talukder, A. H., Muramatsu T (1998) “Clusters of Basic Amino Acids in Midkine: Roles in Neurite- Promoting Activity and Plasminogen Activator-Enhancing Activity” J. Biochem. 123, 1127-1136、及びその中の参考文献により説明されている。
【0074】
例えば細胞成長阻害を観察するために、固形又は液体培地を使用することができる。固形培地において、成長阻害を受ける細胞は、形成されたコロニーのサイズを比較することにより、対象細胞群から容易に選択することができる。液体培地において、成長阻害は、培養培地の濁度又はDNA内の標識チミジンの組込みを測定することにより、スクリーニングすることができる。典型的には、新たに合成されたDNAへのヌクレオシドアナログの組込みを用い、細胞集団における増殖(すなわち、活性細胞成長)を測定する。例えばブロモデオキシウリジン(BrdU)を、DNA標識試薬として使用することができ、抗-BrdUマウスモノクローナル抗体を、検出試薬として使用することができる。この抗体は、ブロモデオキシウリジンを組込んだDNAを含む細胞にのみ結合する。免疫蛍光法、免疫組織法、ELISA、及び比色法を含む多くの検出方法を、このアッセイと組合せて使用することができる。ブロモデオキシウジシン(BrdU)及び抗-BrdUマウスモノクローナル抗体を含むキットは、Boehringer Mannheim (Indianapolis, IN)から市販されている。
【0075】
INSP106ポリペプチドは、上記のアッセイにおいて用量依存的な様式で多様な生理学的及び病理学的プロセスを調節することが判明するであろう。したがって、INSP106ポリペプチドの“機能的等価物”には、上記アッセイにおいて用量依存的な様式で同じ調節的活性のいずれかを示すポリペプチドが含まれる。用量依存的活性の程度はINSP106ポリペプチドのそれと同一である必要はないが、好ましくは前記“機能的等価物”は、所定の活性アッセイにおいてINSP106ポリペプチドと比較して実質的に類似の用量依存性を示すであろう。
上述のある態様では、単純な結合アッセイを用いてもよく、この場合、テスト化合物のポリペプチド保持表面への付着が、直接的又は間接的にテスト化合物と結合させた標識手段によって検出されるか、又は標識競合物質との競合を含むアッセイで検出される。別の態様では、競合薬剤スクリーニングアッセイを用いることができ、この場合、ポリペプチドと特異的に結合することができる中和抗体が、結合についてテスト化合物と競合する。このようにして、前記抗体を用いて、前記ポリペプチドに対し特異的な結合親和性を保有する一切のテスト化合物の存在を検出することができる。
【0076】
前記ポリペプチドをコードするmRNAの細胞内産生に対する添加テスト化合物の影響を検出するアッセイをデザインすることもできる。例えば、当技術分野で既知標準的な方法によりモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を用いてポリペプチドの分泌レベル又は細胞結合レベルを測定するELISAを構築することができ、前記ELISAを用いて、適切に操作された細胞又は組織からのポリペプチド生成を阻害又は増強し得る化合物について検索することができる。続いて、前記ポリペプチドと被験化合物との結合複合体の形成を測定することができる。
さらにまた本発明の範囲内に含まれるアッセイ方法は、過剰発現アッセイ又は除去(ablation)アッセイで本発明の遺伝子及びポリペプチドの使用を必要とするものである。前記のアッセイは、これらの遺伝子/ポリペプチドの細胞内レベルの操作及びこの操作事象による前記被操作細胞の生理機能に対する影響の評価を含む。例えばそのような実験によって、特定の遺伝子/ポリペプチドが関与するシグナル伝達経路及び代謝経路の詳細が明らかにされ、本研究対象のポリペプチドが相互作用するポリペプチドのアイデンティティーに関する情報がもたらされ、さらに関連遺伝子及びタンパク質を調節する方法についての手がかりが提供される。
【0077】
使用され得る別の薬剤スクリーニング技術は、対象のポリペプチドに対して適切な結合親和性を有する化合物の高速大量処理スクリーニングを提供する(国際特許出願WO84/03564を参照されたい)。前記方法では、多数の異なる小型のテスト化合物が固相支持体上で合成され、次に本発明のポリペプチドと反応させられ洗浄され得る。ポリペプチドを固定する方法の1つは、非中和抗体を使用することである。続いて、当技術分野で周知の方法を用いて、結合ポリペプチドを検出することができる。精製ポリペプチドはまた、前述の薬剤スクリーニング技術で使用するために、プレート上に直接被覆させることができる。
当技術分野で既知標準的なレセプター結合技術により膜結合レセプター又は可溶性レセプターを同定するのに、本発明のポリペプチドが用いられ得る。前記標準的な技術は、例えばリガンド結合アッセイ及び架橋アッセイであり、そのようなアッセイでは、ポリペプチドが放射性同位体で標識されているか、化学的に改変されているか、又はその検出若しくは精製を容易にするペプチド配列と融合されており、推定上のレセプター供給源(例えば細胞の組成物、細胞膜、細胞上清、組織抽出物又は体液)とインキュベートされる。結合の有効性は、生物物理的技術、例えば表面プラズモン共鳴及び分光法を用いて測定することができる。結合アッセイは、レセプターの精製及びクローニングのために用いることができるが、ポリペプチドとそのレセプターとの結合に競合する前記ポリペプチドのアゴニスト及びアンタゴニストを同定するためにも用いることができる。スクリーニングアッセイを実施する標準的方法は、当技術分野ではよく理解されている。
【0078】
本発明のINSP106ポリペプチドは、細胞成長及び細胞転移(癌細胞転移を含む)を含む、様々な生理学的及び病理学的プロセスを調節することができる。従って、INSP106ポリペプチドの生物学的活性は、様々な適切なアッセイを使用し、そのような調節活性の研究を可能にするシステムにおいて試験することができる。
例えば、細胞転移に対する本発明のINSP106ポリペプチドの作用を観察するために、Ohtakiらの論文(Nature. 2001 May 31; 411(6837): 613-7)又はそこに引用された刊行物に説明された1種又はそれよりも多い方法を使用することができる。
【0079】
本発明のINSP106ポリペプチドは、本発明のINSP106ポリペプチドと相互作用する受容体を同定及び特徴決定するために使用することもできる。同定及び特徴決定のために適した方法は、Hinumaらの論文(Nat Cell Biol. 2000 Oct; 2(10): 703-8)及び国際特許公開WO01/17958又はそこに引用された刊行物に説明された方法を含むが、これらに限定されるものではない。
INSP106ポリペプチドは、先に説明されたアッセイにおいて用量-依存的様式で、様々な生理学的及び病理学的プロセスを調節することがわかっている。従ってINSP106ポリペプチドの“機能的等価物”は、用量-依存的様式で前述のアッセイの同じ調節活性のいずれかを示すポリペプチドを含む。用量-依存的活性の程度は、INSP106ポリペプチドのそれと同じである必要はないが、好ましくは“機能的等価物”は、所定の活性アッセイにおいてINSP106ポリペプチドと比べ実質的に類似した用量依存性を示すであろう。
【0080】
本発明はまた、上記で述べるアゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、レセプター、基質、酵素を同定する方法に有用なスクリーニングキットを含む。
本発明は、上記アゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、レセプター、基質及び酵素、並びに上記で述べる方法によって発見され、本発明のポリペプチドの活性又は抗原性を調節する他の化合物を含む。
本発明はまた、本発明のポリペプチド、核酸、リガンド又は化合物を適切な医薬担体と組合せて含む医薬組成物を提供する。これらの組成物は、下記で詳細に説明するように、治療用若しくは診断用試薬として、ワクチンとして、又は他の免疫原性組成物として適切であり得る。
本明細書で用いられる専門用語にしたがえば、ポリペプチド、核酸、リガンド又は化合物[X]を含む組成物は、組成物中のX+Yの合計の少なくとも85質量%がXである場合に不純物(本明細書中ではY)を“実質的に含まない”。好ましくは、Xが組成物中のX+Yの合計の少なくとも約90質量%、より好ましくは少なくとも約95質量%、98質量%又は99質量%を構成する。
【0081】
本医薬組成物は、好ましくは治療的に有効な量の本発明のポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物を含むべきである。本明細書で用いられる“治療的に有効な量”という用語は、標的疾患又は症状を治療、緩和若しくは予防するために、又は検出可能な治療効果若しくは予防効果を示すために必要な治療薬剤の量を指す。いずれの化合物についても、治療的に有効な投与量は、最初に細胞培養アッセイ(例えば新生物細胞培養アッセイ)又は動物モデル(通常はマウス、ウサギ、イヌ又はブタ)のいずれかで概算することができる。動物モデルは、適切な濃度範囲及び投与経路の決定にも用いることができる。次にそのような情報を用いて、ヒトで有用な投与用量及び投与経路を決定することができる。
ヒト対象者に対する正確な有効量は、疾患状態の重篤度、対象者の全身の健康状態、対象者の年齢、体重及び性別、食事、投与時間及び投与回数、併用薬剤、反応感受性及び治療に対する忍容性/応答性に依存するであろう。この量は、日常的検査により決定することができ、それは臨床医の判断の範囲内である。一般には、有効用量は、0.01mg/kgから50mg/kg、好ましくは0.05mg/kgから10mg/kgであろう。本組成物は、患者に個別に投与されてもよく、又は他の薬剤、医薬品又はホルモンと一緒に投与されてもよい。
【0082】
医薬組成物はまた、治療薬の投与のために医薬的に許容できる担体を含むことができる。そのような担体には、抗体及び他のポリペプチド、遺伝子並びに他の治療薬剤(例えばリポソーム)が含まれるが、ただし担体がそれ自体で前記組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を誘発せず、かつ不都合な毒性をもたらすことなく投与され得ることを条件とする。適切な担体は、大型でゆっくりと代謝される巨大分子、例えばタンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー及び不活性ウイルス粒子であり得る。
医薬組成物に、医薬的に許容できる塩、例えば鉱酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などのような);及び有機酸の塩(酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などのような)を用いることができる。医薬的に許容できる担体についての綿密な考察は以下のテキストで入手可能である:Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)。
治療用組成物中の医薬的に許容できる担体は、さらに液体、例えば水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールを含むことができる。さらに、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝物質などのような助剤が、前記組成物中に存在していてもよい。そのような担体は、患者が摂取できるように、前記医薬組成物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして製剤化することを可能にする。
いったん製剤化されたら、本発明の組成物を直接対象者に投与することができる。治療される対象者は動物で、特にヒト対象者が治療され得る。
【0083】
本発明で用いられる医薬組成物は、多数の経路(経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜下腔内、心室内、経皮的アプリケーション(例えばWO98/20734を参照)、皮下、腹腔内、鼻内、腸内、局所、舌下、膣内又は直腸的手段が挙げられるが、ただしこれらに限定されない)によって投与できる。遺伝子銃又はハイポスプレーもまた、本発明の医薬組成物の投与に用いることができる。典型的には、本治療用組成物は、注射用物質(液体溶液又は懸濁剤のいずれか)として調製できる。注射に先立ち液体ビヒクルで溶液又は懸濁液とするのに適する固体を調製することもできる。
本組成物の直接的デリバリーは一般に、皮下、腹腔内、静脈内又は筋肉内に注射することによって達成されるか、又は組織の間隙腔に送達されるであろう。前記組成物はまた、病巣に投与してもよい。投薬治療は、単回投与スケジュールでも反復投与スケジュールでもよい。
本発明のポリペプチドの活性が特定の疾患状態において過剰である場合には、いくつかのアプローチが利用可能である。あるアプローチは、医薬的に許容できる担体とともに上記のような阻害化合物(アンタゴニスト)を、前記ポリペプチドの機能を阻害するのに有効な量で対象者に投与することを含む。前記ポリペプチドの機能の阻害は、例えばリガンド、基質、酵素、レセプターの結合を遮断することによって、又は第二のシグナルを阻害することによって成され、それによって異常な症状が緩和される。好ましくは、前記アンタゴニストが抗体である。最も好ましくは、そのような抗体が、先に記載するような免疫原性を最少にするキメラ抗体及び/又はヒト化抗体である。
【0084】
別のアプローチでは、問題のリガンド、基質、酵素、レセプターに対する結合親和性を保持する該ポリペプチドの可溶形を投与することができる。典型的には、前記ポリペプチドは、関連部分を保持するフラグメントの形態で投与することができる。
また別のアプローチでは、前記ポリペプチドをコードする遺伝子の発現は、内部で生成される又は別々に投与されるアンチセンス核酸分子(上述のような)の使用といった発現遮断技術を用いて、阻害することができる。遺伝子発現の改変は、ポリペプチドをコードする遺伝子の制御領域、5'領域又は調節領域(シグナル配列、プロモーター、エンハンサー及びイントロン)に対して相補的な配列又はアンチセンス分子(DNA、RNA又はPNA)をデザインすることによって達成できる。同様に、阻害は“三重らせん”塩基対方法論を用いて達成することができる。三重らせん対形成は、ポリメラーゼ、転写因子又は調節分子の結合のために二重らせんが充分に開く能力を阻害することから有用である。三重らせんDNAを用いる近年の治療上の進歩は、文献に記載されている(J.E. Gee et al.(1994) In:B.E. Huber & B.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NY)。相補的配列又はアンチセンス分子をデザインし、リボソームに対する結合を妨げて転写を妨害することによってmRNAの翻訳を遮断することもできる。そのようなオリゴヌクレオチドは投与されてもよいし、またin vivoでの発現によりin situで生成させてもよい。
【0085】
さらに、本発明のポリペプチドの発現は、そのコードmRNA配列に特異的なリボザイムを用いることによって妨げることができる。リボザイムは、天然又は合成であり得る触媒的活性型のRNAである(例えば以下を参照されたい:N. Usman et al., Curr. Opin. Struct. Biol.(1996) 6(4):527-533)。合成リボザイムをデザインして、選択した位置でmRNAを特異的に切断し、それによってmRNAの機能的ポリペプチドへの翻訳を妨げることができる。リボザイムは、通常RNA分子で見出されるような、天然のリボースリン酸骨格及び天然の塩基を用いて合成され得る。或いは、リボザイムは、非天然の骨格(例えば2'-O-メチルRNA)を用いて合成されて、リボヌクレアーゼ分解から保護されてもよく、また改変塩基を含んでいてもよい。
RNA分子は、細胞内安定性及び半減期を増加させるように改変されてもよい。可能な改変には、RNA分子の5'及び/又は3’末端へのフランキング配列の付加、又は分子の骨格内でホスホジエステル結合に代わるホスホロチオエート又は2'-O-メチルの使用が含まれるが、ただしこれらに限られない。この概念は、PNAの生成にも受け継がれ、内因性エンドヌクレアーゼによって同様に容易には認識されないイノシン、ケオシン(queosine)及びブトシン(butosine)のような非慣用塩基、ならびにアセチル-、メチル-、チオ-及び同様な改変形態のアデニン、シチジン、グアニン、チミン及びウリジンの包含によってPNA分子の全てに広げられ得る。
本発明のポリペプチド及びその活性の過小発現に関連する異常な状態を治療するためには、いくつかのアプローチも利用可能である。あるアプローチは、前記ポリペプチドを活性化する化合物(すなわち上記で述べたアゴニスト)の治療的に有効な量を対象者に投与し、異常な状態を緩和することを含む。あるいは、本ポリペプチドの治療量を適切な医薬担体と組合せて投与し、関連性のあるポリペプチド生理学的バランスを回復させることができる。
【0086】
遺伝子治療を用い、対象者の関連細胞によって本ポリペプチドの内因性産生を行わせることができる。遺伝子治療は、欠陥のある遺伝子を修正した治療用遺伝子と置き換えることによって、前記ポリペプチドの不適切な生成を永久的に治療することに用いられる。
本発明の遺伝子治療は、in vivo又はex vivoで実施することができる。ex vivo遺伝子治療は、患者の細胞の単離及び精製、治療用遺伝子の導入、及び遺伝的に改変した細胞を患者に戻して導入することを必要とする。対照的に、in vivo遺伝子治療は、患者の細胞の単離及び精製を必要としない。
治療用遺伝子は、患者に投与するために、典型的には“パッケージング”されている。遺伝子デリバリービヒクルは、リポソームのような非ウイルス性、又は、例えばK.L. Berkner (1992) Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:39-66に記載されているアデノウイルスのような複製欠損ウイルス若しくはN. Muzyczka (1992) Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:97-129及び米国特許第5,252,479号に記載されているアデノ付随ウイルス(AAV)ベクターであり得る。例えば、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子は、複製欠損レトロウイルスベクターで発現させるために、操作され得る。次に、この発現構築物は単離されて、前記ポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルスプラスミドベクターで形質導入したパッケージ細胞に導入され、その結果、前記パッケージ細胞は、対象の遺伝子を含有する感染性ウイルス粒子を産生することができるようになる。これらのプロデューサー細胞は、in vivoで細胞を操作するため及びin vivoでポリペプチドを発現させるために、対象者に投与することができる(以下を参照されたい:Gene Therapy and Other Molecular Genetic- based Therapeutic Approaches, Chapter 20(及びその中に引用された文献), “Human Molecular Genetics” (1996) T. Strachan & A.P. Read, BIOS Scientific Publishers Ltd.)。
【0087】
別のアプローチは“裸のDNA”の投与で、この場合、治療用遺伝子が血流又は筋肉組織に直接注射される。
本発明のポリペプチド又は核酸分子が疾患をひき起こす原因物質である場合には、本発明は、前記疾患をひき起こす原因物質に対する抗体を生成するワクチンとして用いることができる前記ポリペプチド又は核酸分子を提供する。
本発明のワクチンは、予防的(すなわち、感染を防ぐ)であっても治療的(すなわち、感染後の疾患を治療する)であってもよい。そのようなワクチンは、免疫性を付与する抗原、免疫原、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を、通常は上記で述べた医薬的に許容できる担体と組合せて含む。前記担体には、組成物を投与される個体に対して有害な抗体の産生をそれ自体で誘発しない担体のいずれもが含まれる。さらに、これらの担体は免疫刺激剤(“アジュバント”)として機能してもよい。さらにまた、前記抗原又は免疫原は、細菌の類毒素(例えばジフテリア、破傷風、コレラ、H.ピロリ菌(pyroli)由来の類毒素)及び他の病原体と結合されてもよい。
ポリペプチドは胃で分解されるので、ポリペプチドを含むワクチンは、好ましくは非経口的に(例えば皮下、筋肉内、静脈内又は皮内注射)投与される。非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤をレシピエントの血液に対して等張にする溶質を含んでもよい、水性及び非水性の無菌注射溶液、並びに懸濁剤又は増粘剤を含んでもよい、水性及び非水性の無菌懸濁剤が含まれる。
本発明のワクチン製剤は、単位用量又は複数単位用量の容器で提供されてもよい。例えば、密封されたアンプル及びバイアルでの提供は、使用直前に無菌液状担体を添加することのみを必要とする凍結乾燥状態で保存することができる。投与量はワクチンの比活性に依存し、日常的な検査によって容易に決定することができる。
【0088】
例えば、国際特許出願W098/55607に説明されたように、本発明のポリペプチドに結合する抗体を遺伝子的に送達することも、有効である。
射出注入(jet injection)(例えば、www.powderject.com)と称される技術も、ワクチン組成物の製剤において有用であることがある。
多くの適切な予防注射の方法及びワクチン送達システムが、国際特許出願WO00/29428に説明されている。
本発明はまた、診断薬としての本発明の核酸分子の使用に関する。本発明の核酸分子により特徴付けられ、機能不全に付随する遺伝子の変異型の検出は、前記遺伝子の過小発現、過剰発現又は位置的若しくは時間的発現の変化から生じる疾患の診断、又はそのような疾患に対する感受性の診断を規定するか又はそれら診断に付け加えることができる診断ツールを提供する。前記遺伝子に変異を保有する個体は、種々の技術によってDNAレベルで検出することができる。
診断のための核酸分子は、対象者の細胞、例えば血液、尿、唾液、組織生検又は剖検材料から入手できる。ゲノムDNAを直接検出に用いてもよいし、又はPCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)若しくは他の増幅技術を分析に先立って用いることによって、ゲノムDNAを酵素的に増幅してもよい(以下の文献を参照されたい:Saiki et al., Nature 324:163-166(1986);Bej et al., Crit. Rev. Biochem. Molec. Biol., 26:301-334(1991);Birkenmeyer et al., J. Virol. Meth., 35:117126(1991);Van Brunt, J., Bio/Technology, 8:291-294(1990))。
【0089】
ある態様では、本発明のこの特徴は、本発明のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現レベルを評価すること、及び前記発現レベルをコントロールのレベルと比較することを含む、患者における疾患を診断する方法を提供する。この場合、前記コントロールレベルと異なるレベルは疾患を示唆する。前記方法は、以下の工程を含み得る:
a)本発明の核酸分子と核酸プローブとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で、患者由来の組織サンプルを前記核酸プローブと接触させる工程;
b)工程a)で用いた条件と同じ条件下で、コントロールサンプルを前記プローブと接触させる工程;及び、
c)前記サンプル中のハイブリッド複合体の存在を検出する工程;
この場合、コントロールサンプル中のハイブリッド複合体レベルと異なるハイブリッド複合体レベルが患者サンプルで検出されることは、疾患を示唆する。
本発明のさらなる特徴は、以下の工程を含む診断方法を含む:
a)疾患について検査される患者から、組織サンプルを入手する工程;
b)前記組織サンプルから、本発明の核酸分子を単離する工程;及び、
c)疾患に付随する前記核酸分子における変異の存在を検出することによって、患者を疾患について診断する工程。
上記に記載した方法における核酸分子の検出を補助するために、増幅工程、例えばPCRの使用が含まれ得る。
【0090】
正常な遺伝子型と比較すると、増幅産物におけるサイズの変化によって、欠失及び挿入が検出される。点変異は、増幅DNAを本発明の標識RNAとハイブリダイズさせるか、あるいは本発明の標識アンチセンスDNA配列とハイブリダイズさせることによって同定することができる。完全にマッチした配列は、RNase消化によって、又は溶融温度における差異を評価することによって、ミスマッチを有する二重鎖と区別することができる。DNAをストリンジェントな条件下で前記DNAとハイブリダイズする核酸プローブと接触させてハイブリッド二本鎖分子を形成させること(前記ハイブリッド二本鎖は、疾患に付随する変異に対応するいずれかの部分で前記核酸プローブ鎖のハイブリダイズしていない部分を有する)、及び、前記プローブ鎖のハイブリダイズしていない部分の有無を前記DNA鎖の対応部分における疾患付随変異の有無を示すものとして検出することによって、患者における変異の有無を検出することができる。
前記のような診断は特に出生前検査で有用であり、新生児検査でもなお有用である。
【0091】
参照遺伝子と“変異”遺伝子との間の点変異及び他の配列的相違は、他の周知の技術、例えば直接DNAシークエンシング又は一本鎖構造多型性(Orita et al., Genomics, 5:874-879(1989))によって同定できる。例えば、シークエンシングプライマーは、二本鎖PCR産物又は改変PCRによって作製された一本鎖テンプレート分子とともに用いることができる。配列決定は、放射能標識ヌクレオチドを用いる通常の方法によって、又は蛍光タグを用いる自動シークエンシング法によって実施される。クローン化DNAセグメントを、特異的DNAセグメントを検出するためのプローブとして用いることもできる。
この方法の感受性は、PCRと併用したとき極めて増強される。さらに、点変異及び他の配列の変動(例えば多型性)は、例えば対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドをただ1つのヌクレオチドが異なる配列のPCR増幅に用いることによって、上記のように検出することができる。
DNA配列の相違はまた、変性剤の存在下又は非存在下でのゲル内のDNAフラグメントの電気泳動移動度における変化によって、又は直接DNAシークエンシング(例えば、Myers et al., Science (1985) 230:1242)によっても検出することができる。特定の位置における配列の変化はまた、RNase及びS1保護のようなヌクレアーゼ保護アッセイによって、又は化学切断法(Cotton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1985) 85:4397-4401を参照)によっても明らかにすることができる。
【0092】
ミクロ欠失、異数性、転座、逆位のような変異は、通常のゲル電気泳動及びDNAシークエンシングの他に、in situ分析によっても検出できる(例えば以下を参照されたい:Keller et al., DNA Probes, 2nd Ed., Stockton Press, New York, N.Y., USA(1993))。すなわち、細胞内のDNA又はRNA配列は、それらを単離及び/又はメンブレン上に固定する必要なしに、変異について分析することができる。蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)は、現在のところ最も一般的に用いられている方法で、FISHに関する多数の概論が存在する(例えば以下を参照されたい:Trachuck et al., Science, 250, 559-562(1990);及びTrask et al., Trends, Genet., 7, 149-154(1991))。
本発明の別の態様では、本発明の核酸分子を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築して、遺伝的変種、変異及び多型性の効率的スクリーニングを実施することができる。アレイ技術方法はよく知られていて一般的な応用性を有しており、遺伝子発現、遺伝連鎖及び遺伝的可変性を含む分子遺伝学における種々の疑問に取り組むのに用いることができる(例えば以下を参照されたい:M. Chee et al., Science (1996), 274:610-613)。
【0093】
ある態様では、前記アレイが、以下の文献に記載されている方法にしたがって調製され使用される(PCT出願WO95/11995(Chee et al.);D.J. Lockhart et al.(1996) Nat. Biotech. 14:1675-1680;M. Schena et al.(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 93:10614-10619)。オリゴヌクレオチド対は、2つから100万個を越える範囲にわたり得る。前記オリゴマーは、光誘導化学法を用いて基板上の指定領域で合成される。基板は、紙、ナイロン又は他の種類のメンブレン、フィルター、チップ、ガラススライド若しくは他の適切な固相支持体のいずれであってもよい。別の特徴では、オリゴヌクレオチドは、PCT特許出願(WO95/251116, Baldeschweiler et al.)に記載されているように、化学的結合方法及びインクジェット応用装置を用いることによって基板表面上で合成することができる。別の特徴では、ドット(又はスロット)ブロットに類似する“格子化(gridded)”アレイが、真空系、熱結合方法、UV結合方法、機械的又は化学的結合方法を用いて基質表面にcDNAフラグメント又はオリゴヌクレオチドを配置すること及び連結させることに用いられ得る。上述するようなアレイは、手動で、又は利用可能な装置(スロットブロット又はドットブロット装置)、材料(適切な固相支持体すべて)及び機械(ロボット機器を含む)を用いて作製することができ、8、24、96、384、1536又は6144個のオリゴヌクレオチド、又は2つから100万個を越える範囲の他のいずれの数をも含むことができる(このことは、アレイ自体を商業的に入手可能な計測器の有効利用に向くものとしている)。
【0094】
上記で考察する方法の他に、対象者に由来するサンプルから、ポリペプチド又はmRNAの異常な増加又は低下のレベルを決定することを含む方法によって、疾患を診断することができる。発現低下又は発現増加は、例えば、核酸増幅、一例を挙げるとPCR、RT-PCR、RNase保護、ノーザンブロット法及び他のハイブリダイゼーション方法のようなポリヌクレオチドの定量のために当技術分野で周知の方法のいずれかを用いて、RNAレベルで測定することができる。
宿主に由来するサンプルで本発明のポリペプチドレベルを決定することに用いることができるアッセイ技術は当業者によく知られており、また上記でいくらか詳細に考察されている(ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、ウェスタンブロット分析及びELISAアッセイを含む)。本発明のこの特徴では、以下の工程を含む診断方法が提供される:(a)上記のようなリガンドを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適する条件下で、生物学的サンプルと接触させる工程;及び(b)前記複合体を検出する工程。
ELISA、RIA及びFACSのようなポリペプチドレベルを測定するためのプロトコルは、ポリペプチド発現の変化レベル又は異常レベルを診断するための基礎をさらに提供することができる。ポリペプチド発現の正常値又は標準値は、正常な哺乳類対象体(好ましくはヒト)から得られた体液又は細胞抽出物を、複合体形成に適した条件下で、前記ポリペプチドに対する抗体と混合することによって確立される。標準的な複合体形成量は、種々の方法、例えば分光測定方法によって定量することができる。
【0095】
本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体は、前記ポリペプチドの発現によって特徴付けられる症状又は疾患の診断のために、又は本発明のポリペプチド、核酸分子、リガンド及び他の化合物を用いて治療されている患者をモニターするアッセイにおいて、用いることができる。診断目的に有用な抗体は、治療薬として上記で述べたのと同じ様式で調製することができる。前記ポリペプチドについての診断アッセイは、前記抗体及び標識を用いてヒトの体液又は細胞若しくは組織の抽出物中のポリペプチドを検出する方法を含む。前記抗体は改変して、又は改変せずに用いることができ、さらにそれらをレポーター分子と共有結合又は非共有結合によって結合させることによって標識することができる。当技術分野で既知多様なレポーター分子を用いることができ、それらのいくつかは上記に記載されている。
生検組織由来の、対象者、コントロール及び疾患サンプルで発現されているポリペプチドの量は、標準値と比較される。標準値と対象者の値との間の偏差は疾患診断のためのパラメータを確立する。診断アッセイを用いて、ポリペプチド発現の有無及び過剰を識別し、治療的処置の間のポリペプチドレベルの調節をモニターすることができる。そのようなアッセイはまた、動物実験、臨床試験又は個々の患者の治療モニタリングにおける特定の治療的処置方法の有効性を評価することに用いることができる。
【0096】
本発明の診断キットは、以下を含み得る:
(a)本発明の核酸分子;
(b)本発明のポリペプチド;又は
(c)本発明のリガンド。
本発明のある特徴では、診断キットが、ストリンジェントな条件下で本発明の核酸分子とハイブリダイズする核酸プローブを含む第一の容器;前記核酸分子を増幅させるために有用なプライマーを含む第二の容器;及び、疾患の診断を容易にするために前記プローブ及びプライマーの使用についての指示書を含み得る。前記キットは、ハイブリダイズしていないRNAを消化するための薬剤を保持している第三の容器をさらに含んでもよい。
本発明の別の特徴では、診断キットが核酸分子のアレイを含んでもよく、前記核酸分子の少なくとも1つが本発明の核酸分子であってもよい。
本発明のポリペプチドを検出するために、診断キットは、本発明のポリペプチドと結合する1種う又は2種以上の抗体;及び、前記抗体と前記ポリペプチドとの間の結合反応の検出に有用な試薬;を含み得る。
【0097】
このようなキットは、ミッドカインが関連している疾患又は障害の診断、又は疾患若しくは障害の易罹患性の診断において使用されるであろう。このような疾患及び障害は、生殖障害、細胞増殖性疾患で、新生物、メラノーマ、肺、結腸直腸、乳房、膵臓、頭部及び頚部及び他の固形腫瘍;胃癌、結腸癌、膵癌、肺癌、胸部癌、及び肝癌;骨髄増殖性障害で、例えば白血病、非-ホジキンリンパ腫、白血球減少症、血小板減少症、血管新生障害、カポジ肉腫;自己免疫/炎症障害で、アレルギー、炎症性腸疾患、膵炎、関節炎、乾癬、尋常性乾癬、気道炎症、喘息、及び臓器移植の拒絶反応など;心血管系障害で、高血圧、浮腫、狭心症、アテローム性動脈硬化症、血栓症、敗血症、ショック、再潅流性外傷、及び虚血、特に虚血性心疾患など;神経障害で、中枢神経系疾患、アルツハイマー病、脳外傷、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、及び疼痛;発育障害;代謝障害で、糖尿病、骨粗鬆症及び肥満、AIDS、腎疾患、特に特発性ネフローゼ症候群など;フィブリン溶解に関連した障害;好中球機能障害(例えば、怠け者白血球(化学走化性-欠損白血球)症候群);炎症疾患;創傷治癒障害;肺損傷;感染症で、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、及び寄生体感染症など、並びに他の病態を含むことができる。好ましくは、疾患は、ミッドカインが関連したものである。
本発明の種々の特徴及び態様は、特にINSP106ポリペプチドに関連する実施例を介して、これからより詳細に説明されるであろう。
本発明の範囲を逸脱することなく細部の改変がなされ得ることは、理解されるであろう。
【0098】
(実施例)
実施例1
選択的プレ-mRNAスプライシングは、多くは組織特異的パターンで、単独の遺伝子の一次転写産物から機能的に多様なタンパク質を作成することができる主要な細胞プロセスである。
実験的に、スプライシング変種は、偶然の単離、それに続く変種mRNAの配列決定により同定される。しかし、この実験的手法は、ヒトトランスクリプトームについては徹底的に完全ではなく(これは、あらゆる可能な環境条件下での全ヒト組織からの全mRNAの系統的単離及び配列決定を必要とするからである)、かつこの実験上の制約のために、未だ同定されていない多くのスプライシング変種が残っている。
【0099】
ヒトミッドカイン遺伝子のスプライシング変種の存在に関して、独自仕様のバイオインフォマティクス法を使用し、意図的な方向性のある検索を行った。この方法により、実験により既知スプライシング変種の限定されたデータセットを用い、推定されたスプライシング変種のはるかに大きいセットへ拡大することができる。
既知ミッドカインとの比較においてINSP106内の変種を例証する遺伝子モデルは、P21741に存在する個別の4番目のエクソンを有する代わりに、3番目のコードしているエクソンが、3'方向へ延長されていることを示している(図1)。
複数のアラインメントは、疎水性プロリン‘トラクト'がC末端尾部で推定INSP106をどのように延長するかを示している(図2)。
【0100】
実施例2:INSP106機能の生物学的関連の探索に適した神経生物学的アッセイ
多くの神経生物学に関連するアッセイを開発し、INSP106機能の生物学的関連の研究及び治療に有用な部分の同定に使用している。ここで本発明の好ましい態様において、1又は2以上の下記のアッセイを使用し、治療に有用な部分を同定する。
【0101】
A.稀突起膠細胞のアッセイ:
稀突起膠細胞は、CNSにおけるミエリン形成に寄与している。多発性硬化症において、これらは最初に攻撃を受ける細胞であり、それらの喪失は、大きい行動上の欠陥につながる。炎症を抑制することに加え、MSにおいて生じた病巣の不完全な再髄鞘化を増強することが、MSの治療戦略として提唱されている。ニューロン同様、成熟稀突起膠細胞は分裂しないが、新規稀突起膠細胞は前駆細胞から生じ得る。これらの前駆細胞は成人脳内には非常に少なく、例え胚においてであっても前駆細胞の数はハイ-スループットスクリーニングには適していない。従って、下記の基準を満たす稀突起膠細胞株を求めることは有用である:高い増殖能、ハイ-スループットスクリーニングと両立する培養条件、及び始原の(primary)稀突起膠細胞において作用することがわかっているタンパク質により分化を誘導する可能性。
【0102】
Oli-neuは、t-neuオンコジーンによる稀突起膠細胞前駆体の不死化により得られるマウス細胞株である。これらは、若い稀突起膠細胞の生物学を研究するための代表的細胞株として、よく研究され、受入れられている(例えば、Schuster et al. , J. Neurosci. Res. 2003 Aug 1; 73(3): 324-33参照されたい)。この細胞株を用い、2種のアッセイを開発した。第一の種類のアッセイは、稀突起膠細胞増殖を刺激する因子を同定するために使用することができ、他方の種類は、稀突起膠細胞分化を促進する因子を同定するために使用することができる。両事象は、脱髄疾患の再建を補助し及び修復する観点で重要である。
【0103】
これらのアッセイは、MO3-13のようなヒト細胞株にも関連し得る。MO3-13は、横紋筋肉腫細胞の成人稀突起膠細胞との融合から生じる(McLaurin et al., J Neurobiol. 1995 Feb; 26(2): 283-93参照)。これらの細胞は、稀突起膠細胞へ分化する能力を低下し、それらの増殖率は、増殖アッセイを可能にするには不充分である。それにもかかわらず、これらは、稀突起膠細胞のある特徴を発現し、それらの形態は、核移行試験に良く適合している。MO3-13細胞における3種の転写因子NF-κB、Stat-1及びStat-2の核移行を基にしたアッセイを開発した。Jak/Stat転写経路は、IFNα、β、γ、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-6及びIL-5)又はホルモン(例えば、GH、TPO、EPO)などの多くの因子により活性化される複雑な経路である。これらの応答の特異性は、活性化されたStatsの組合せに依存する。例えば、注目すべきことに、INF-βは、Stat1、2及び3の核移行を活性化する。これとは対照的に、INF-γは、Stat1のみを活性化する。同じ方法で、多くのサイトカイン及び増殖因子は、NF-κBの移行を誘導する。このようなアッセイにおいて、目標は、INSP106タンパク質により活性化される経路の像を得ることである。従って、これらのアッセイは、INSP106ポリペプチドが、Jak/Stat転写経路において重要な役割を果たすかどうかを研究する方法を提供する。PI3K、CREB及びMEK経路のようなその他の重要な経路の活性化を研究する相補的アッセイは、INSP106の完全なシグナル(full signalosome)像を提供するために利用されてもよい。
【0104】
B. 星状膠細胞アッセイ
星状膠細胞の生物学は非常に複雑であるが、ふたつの一般的な状態が認められている。星状膠細胞は‘静止'状態において、グルタミン酸をポンプ輸送すること並びにニューロン及び稀突起膠細胞にエネルギーに富む基層(energetic substratum)を提供することにより、ニューロンの代謝及び興奮のレベルを調節する。星状膠細胞は‘活性化'状態において、ケモカイン及びサイトカイン、更には一酸化窒素を生成する。第一の状態は、正常及び健常と考えることができるのに対し、第二の状態は、炎症、卒中及び神経変性疾患に関連している。この活性化状態が持続する場合、これは病態とみなすことができる。
【0105】
星状膠細胞活性化を調節する多くの因子及び多くの経路が知られている。INSP106は、星状膠細胞活性化を調節するかどうかを同定するためのアッセイは、星細胞腫起源のヒト細胞株であるU373細胞を使用してもよい。NF-κB、c-Jun及びStatは、星状膠細胞活性化において極めて重要な役割を果たすことがわかっているシグナル伝達分子である。従って、NF-κB、c-Jun及びStat-1、2及び3の核移行を基にした一連のスクリーニングを開発した。これらの経路の始原型(prototypical)のアクチベーターは、IL-1b、IFN-β又はIFN-γである。本アッセイの目的は、INSP106タンパク質自体が治療薬として使用することができるかどうかを同定することと、診断的又は治療的用途のため標的化できるタンパク質及び受容体を同定することである。
【0106】
C. ニューロンアッセイ
ニューロンは、非常に複雑かつ多様な細胞であるが、これらは全て、共通してふたつのことを有する。第一に、これらは分裂後細胞であること、第二に、これらは他の細胞を神経支配することである。これらの生存は、神経支配された標的細胞により産生されることが多い栄養因子の存在に関連している。多くの神経変性疾患において、標的神経支配の喪失は、細胞体の無栄養及びアポトーシスによる細胞死につながる。従って、標的の欠乏を補充する栄養因子の同定は、神経変性疾患の治療において非常に重要である。従って、ラットPC12細胞のサブクローンであるNS1細胞を使用する生存力アッセイを提起することが可能である。これらの細胞は、数年来使用されており、これらの細胞について多くの神経生物学的知識が最初に得られ、その後、初代ニューロンがニューロンの生存及び分化に関連した経路(MEK、PI3K、CREB)を含むことが確認された。対照的に、マウスの神経芽腫であるN2A細胞株は、古典的神経栄養因子には反応しないが、Jun-キナーゼインヒビターは、血清涸渇により誘導されたアポトーシスを妨害する。従って、これらのふたつの細胞株に関する独立したアッセイを開発することは、生存を促進するタンパク質の様々な種類を同定する助けとなるであろう。
【0107】
前記アッセイを用い、INSP106ポリペプチド又は関連した細胞種は、増殖及び分化の両方を促進するかどうかを同定することができる。INSP106ポリペプチドは特異的にニューロン分化を促進するかどうかを同定するために、神経突起伸長を基にしたNS1分化アッセイを開発した。神経変性疾患における軸索又は樹状突起の出芽を促進することは二つの理由で利点であろう。これは最初に、変性ニューロンが再生し及び標的細胞との接触を再確立することを補助する。第二に、これは、パーキンソン病又はADなどの神経変性疾患の終末相を遅延する補償現象である、健常な繊維からのいわゆる側枝出芽を増強する。
【0108】
D. 内皮細胞アッセイ
脳と血管の間の血液脳関門(BBB)は、皮質性脊髄液と血清との組成の間の差異によるものである。BBBは、内皮細胞と星状膠細胞の間の密な接触から生じる。これは、脳内の白血球の進入を防止することにより、免疫寛容状態を維持し、かつ同じ細胞内シグナル伝達経路を使用するふたつの並行する内分泌系の発達を可能にする。しかし、多くの疾患又は外傷において、BBBの保全性(integrity)は変更され、白血球及び血清タンパク質が脳に進入し、神経炎症を誘発する。BBBの簡単なin vitroモデルはないが、ヒト胚性臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)のような、始原の内皮細胞の培養は、BBB生物学の一部の特徴を模倣すると考えられる。例えばBBB漏出は、細胞内カルシウム放出を刺激するタンパク質により誘導される。BBBの保全性を調節するタンパク質を同定する観点から、HUVECを用いて、トロンビンを伴う又は伴わないカルシウム動員(mobilization)アッセイを開発した。
【0109】
実施例3:INSP106のクローニング
cDNAライブラリー
ヒトcDNAライブラリー(バクテリオファージラムダ(λ)ベクター)を、Stratagene又はClontechから購入するか、若しくは製造元(Stratagene及びClontech)のプロトコルに従い、Serono Pharmaceutical Research Instituteで、λZAP、λGT10、λGT11、又はTriplEx2ベクターにおいて調製した。バクテリオファージλDNAは、製造元(Promega社、Madison WI)の指示に従い、Wizard Lamda Preps DNAを用い、感染した大腸菌宿主株の小規模培養から調製した。
【0110】
ヒトcDNA鋳型の調製
第一鎖cDNAを、様々なヒト組織総RNAサンプル(Clontech、Stratagene、Ambion、Biochain Institute及び自家調製物)から、Superscript II RNase H-逆転写酵素(Invitrogen)を製造元のプロトコルに従い使用し調製した。オリゴ(dT)15プライマー(500μg/ml, Promega)1μL、ヒト総RNA 2μg、10mM dNTP混合液(中性pHでdATP、dGTP、dCTP、及びdTTP、各10mM)1μLならびに滅菌水を、1.5mlのエッペンドルフチューブ中で、最終容積12μLとし、65℃で5分間加熱し、その後氷上で急冷した。これらの内容物を、短時間の遠心により収集し、5X第一鎖緩衝液4μL、0.1M DTT 2μL、及びRNaseOUT組換えリボヌクレアーゼインヒビター(40ユニット/μL, Invitrogen)1μLを添加した。このチューブの内容物を、緩徐に混合し、42℃で2分間インキュベーションし、その後SuperScript II酵素1μL(200ユニット)を添加し、ピペッティングで穏やかに混合した。この混合液を、42℃で50分間インキュベーションし、その後70℃で15分間加熱することにより失活した。cDNAに相補的なRNAを除去するために、大腸菌RNase H(Invitrogen)1μL(2ユニット)を添加し、反応混合液を37℃で20分間インキュベーションした。最終の21μLの反応混合液を、滅菌水を179μL添加することにより希釈し、総容積200μLとした。第一鎖cDNAサンプルを、5種のサンプルのプールと一緒にし、各プールは、各cDNA鋳型1μLを含有した。各プール5μLを、増幅反応の鋳型として使用した。
【0111】
PCRのための遺伝子特異的クローニングプライマー
18から25塩基長を有するPCRプライマー対を、Primer Designer Software (Scientific & Educational Software, PO Box 72045, Durham, NC 27722-2045, USA)を用い、仮想cDNAの完全なコード配列の増幅のためにデザインした。PCRプライマーは、55±10℃に近いTm及びGC含量40〜60%を有するように最適化した。ほとんど又は非-特異的プライミングを伴う、標的配列(INSP106)について高い選択性を有するプライマーを選択した。
【0112】
様々なヒトcDNAからのINSP106のPCR増幅
遺伝子-特異的クローニングプライマー(INSP106-CP1及びINSP106-CP2, 図5、図6及び表2)をデザインし、推定INSP106の全471bpコード配列にわたる546bpのcDNAフラグメントを増幅した。このプライマー対を、幅のあるλcDNAライブラリーサンプル及びヒトcDNAサンプルのプールと共にPCR鋳型として使用した。PCRは、1X AmpliTaq(登録商標)緩衝液50μL、200μL dNTP、各クローニングプライマー50ピコモル、AmpliTaq (Perkin Elmer)2.5ユニット、及び各λcDNAライブラリー鋳型100ng又は各cDNAプール5μLを含有する、最終容積50μLで、下記のようにプログラムされたMJ Research DNA Engineを使用し行った:94℃、2分; 94℃で1分、65℃で1分、及び72℃で1分を40サイクル;引き続きの72℃で7分を1サイクル、ならびに4℃の保持サイクル。増幅産物は、1X TAE緩衝液(Invitrogen)において0.8%アガロースゲル上で可視化した。予想された分子量で移動したPCR産物は、Wizard PCR Preps DNA Purification System (Promega)を用い、直接精製した。PCR産物は、滅菌水50μLで溶出し、直接サブクローニングするか、若しくは20℃で貯蔵するかのいずれかを行った
【0113】
PCR産物のサブクローニング
PCR産物を、インビトロジェン社(Invitrogen Corporation)から購入したTAクローニングキットを用い製造元に指定されている条件を用いて、トポイソメラーゼI改変クローニングベクター(pCR4-TOPO)中にサブクローニングした。簡単に記すと、4μLのゲル精製PCR産物を、1μLのTOPOベクター及び1μLの塩溶液とともに室温にて15分間インキュベートした。続いて前記反応混合物で大腸菌株TOP10(Invitrogen)を次のように形質転換した:ワンショットTOP10細胞の50μLアリコートを氷上で解凍してから、2μLのTOPO反応物を添加した。前記混合物を氷上で15分間インキュベートし、続いて42℃にて正確に30秒間インキュベーションすることによってヒートショック処理した。サンプルを氷上に戻し、250μLの温SOC培地(室温)を添加した。サンプルを、振盪しながら(220rpm)37℃にて1時間インキュベートした。続いて形質転換混合物をアンピシリン(100μg/mL)含有L-ブロス(LB)プレート上に蒔いて、37℃で一晩インキュベートした。
【0114】
コロニーPCR
滅菌爪楊枝を用い、コロニーを、滅菌水50μL中に接種した。続いて接種物の10μLアリコートを、1X AmpliTaq(登録商標)緩衝液、200μM dNTP、20ピコモルT7プライマー、20ピコモルT3プライマー、1ユニットAmpliTaq(登録商標)(Perkin Elmer)を含有する、全反応容積20μLで、MJ Research DNA Engineを用い、PCRを行った。サイクリング条件は以下の通りであった:94℃で2分;94℃で30秒、48℃で30秒及び72℃で1分を30サイクル。続いて更なる分析の前に、サンプルを4℃で維持した(保持サイクル)。
PCR反応産物を、1X TAE緩衝液中において1%アガロースゲル上で分析した。予想されるPCR産物サイズ(546bp cDNA+複数のクローニング部位又はMCSのために105bp)を示すコロニーを、アンピシリン(100μg/ml)含有L-ブロス(LB)5mL中で、220rpmで振盪しながら37℃で一晩増殖させた。
【0115】
プラミドDNAの調製及びシークエンシング
プラスミドDNA調製物及び配列決定したミニプレッププラスミドDNAを、Qiaprep Turbo9600自動システム(Qiagen)又はWizard Plus SVミニプレップキット(Promega Cat.# 1460)を用い、製造元の指示にしたがって5mLの培養物から調製した。プラスミドDNAを100μLの滅菌水に溶出させた。そのDNA濃度を、エッペンドルフBO分光計を用いて測定した。BigDye Terminatorシステム(Applied Biosystems Cat.# 4390246)を用い製造元の指示にしたがいながら、プラスミドDNA(200〜500ng)をT7、T3、INSP106-SP1及びINSP106-SP2プライマーと共にDNAシークエンシングした。プライマー配列は、表2に示した。シークエンシング反応物を、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーンアッププレート(Millipore cat. # LSKS09624)を用い精製し、続いてApplied Biosystems 3700シークエンサーで分析した。
推定されたINSP106 ORF配列との100%合致を含むクローンを、配列分析により同定した。この配列は、ヒトSK-N-MC、SK-N-AS、TE671、KELLY及びU-373細胞株由来のcDNA鋳型のプールから増幅した。クローニングしたcDNAフラグメントの配列は、図6に示している。クローニングしたPCR産物(pCR4-TOPO-INSP106)(プラスミドID. 13 864)のプラスミドマップは、図7に示した。
【0116】
INSP106のHEK293/EBNA細胞における発現のためのプラスミド構築
次にDNAシークエンシングにより同定した、INSP106の完全なコード配列(ORF)を含むpCR4-TOPOクローン(pCR4-TOPO-INSP106、プラスミドID. 13864)(図7)を、ゲートウェイ(登録商標)クローニングシステム(Invitrogen)を用いる、哺乳類細胞発現ベクターpEAK12d(図9)及びpDEST12.2(図10)への挿入断片のサブクローニングに使用した。
【0117】
インフレーム6HISタグ配列に融合されたゲートウェイ互換性INSP106 ORFの作成
ゲートウェイクローニングプロセスの第一段階は、ふたつのPCR反応工程に関連しており、これはattB1組換え部位及びコザック配列が5'末端にフランキングし、並びにインフレーム6ヒスチジン(6HIS)タグ、停止コドン及びattB2組換え部位をコードしている配列が3'末端にフランキングしたINSP106のORF(ゲートウェイ互換性cDNA)を作成する。推定されたINSP106配列は、主に4プロリン残基の並び(run)をコードしている、15C塩基の並びをその3'末端に含んだ。これは、この領域の増幅及びシークエンシングを困難にし、この問題点を改善するために、逆増幅プライマーINSP106-EX2がデザインされ(表2)、この領域のコドン使用頻度を変更した。
【0118】
第一のPCR反応液(最終容積50μL)は以下を含む:1.5μLのpCR4-TOPO-INSP106(プラスミドID 13864)、1.5μL dNTP(10mM)、5μLの10X Pfxポリメラーゼ緩衝液、1μL MgSO4(50mM)、0.5μLの各遺伝子特異的プライマー(100μM)(INSP106-EX1及びINSP106-EX2)、2.5μL 10X Enhancer(登録商標)溶液(Invitrogen)及び1μL Platinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)。このPCR反応は、初期変性工程95℃で2分、続けて94℃で15秒、55℃で30秒及び68℃で2分を15サイクル;及び4℃の保持サイクルであった。反応産物を、1%アガロースゲル(1X TAE)上で分析した。正確なサイズ(468bp)のPCR産物を、製造元の指示に従い、Qiagen MinElute DNA精製システム(Qiagen)を用い、10μL EB緩衝液(10mM Tris.Cl, pH8.5)で溶出し、ゲル精製した。
第二のPCR反応(最終容積50μL)は、8μLの精製されたPCR1産物、1.5μL dNTP(10mM)、5μLの10X Pfxポリメラーゼ緩衝液、1μL MgSO4(50mM)、0.5μLの各ゲートウェイ改変プライマー(100μM)(GCPフォワード及びGCPリバース)、及び0.5μL Platinum Pfx DNAポリメラーゼを含んだ。第二のPCR反応条件は、95℃で1分;94℃で15秒、50℃で30秒及び68℃で2分30秒を4サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒及び68℃で2分30秒を19サイクル;その後の、4℃の保持サイクルであった。PCR産物を、製造元の指示に従い、Wizard PCR prep DNA精製システム(Promega)を用い、ゲル精製した。
【0119】
ゲートウェイ互換性INSP106 ORFのゲートウェイエントリーベクターpDONR221及び発現ベクターpEAK12d及びpDEST12.2へのサブクローニング
ゲートウェイクローニングプロセスの第二段階は、下記のような、ゲートウェイ改変PCR産物のゲートウェイエントリーベクターpDONR221(Invitrogen, 図8)へのサブクローニングに関連している:5μLのPCR2の精製産物を、1μL pDONR221ベクター(0.15μg/μL)、2μL BP緩衝液及び1.5μL BPクロナーゼ酵素混合液(Invitrogen)と共に、最終容積10μL、室温で1時間インキュベーションした。反応を、プロテイナーゼK(2μg)を添加することにより停止し、さらに10分間37℃でインキュベーションした。この反応のアリコート(2μL)を用い、下記のように、大腸菌DH10B細胞をエレクトロポレーションにより形質転換した:DH1OBエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)のアリコート(30μL)を、氷上で解凍し、BP反応混合液2μLを添加した。この混合液を、冷却した0.1cmのエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞をBiorad Gene Pulser(登録商標)を製造元の推奨に従い使用し、エレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後直ちに、予め室温に温めたSOC培地(0.5mL)を添加した。この混合液を、15mlスナップキャップ付きチューブに移し、37℃で1時間振盪(220rpm)しながらインキュベーションした。次に形質転換混合物(10μL及び50μL)のアリコートを、カナマイシン(40μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に接種し、37℃で一晩インキュベーションした。
プラスミドミニプレップDNAを、QiaPrep Turbo 9600ロボット型システム(Qiagen)を用い、多くの得られたコロニーの5ml培養液から調製した。プラスミドDNA(200-500ng)に、製造元の指示に従いBigDyeTerminatorシステム(Applied Biosystems cat. #4390246)を用い、21M13、M13Rev、INSP106-SP1、及びINSP106-SP2プライマーによるDNAシークエンシングを施した。これらのプライマー配列は、表2に示している。シークエンシング反応物を、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore cat. #LSKS09624)を用いて精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサー上で分析した。
【0120】
次に正確な配列を含む1のクローンに由来したプラスミド溶離液(2μL) (pENTR-INSP106-6HIS、プラスミドID 14342, 図11)を、最終容積10μL中に1.5μLのpEAK12dベクター又はpDEST12.2ベクターのいずれか(図9及び10)(0.1μg/μL)、2μL LR緩衝液及び1.5μL LRクロナーゼ(Invitrogen)を含む組換え反応において使用した。この混合物を室温で1時間インキュベーションし、プロテイナーゼK(2μg)を添加することにより停止し、さらに10分間37℃でインキュベーションした。この反応のアリコート(1μL)を用い、下記のように、大腸菌DH10B細胞をエレクトロポレーションにより形質転換した:DH1OBエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)のアリコート(30μL)を、氷上で解凍し、LR反応混合液1μLを添加した。この混合液を、冷却した0.1cmのエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞をBiorad Gene Pulser(登録商標)を製造元の推奨プロトコルに従い使用し、エレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後直ちに、予め室温に温めたSOC培地(0.5mL)を添加した。この混合液を、15mlスナップキャップ付きチューブに移し、37℃で1時間振盪(220rpm)しながらインキュベーションした。次に形質転換混合物(10μL及び50μL)のアリコートを、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に接種し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0121】
プラスミドミニプレップDNAを、QiaPrep Turbo 9600ロボット型システム(Qiagen)を用い、多くの得られたコロニーの5ml培養液から調製した。pEAK12dベクター中のプラスミドDNA(200-500ng)に、先に説明したように、pEAK12F、pEAK12R、INSP106-SP1、及びINSP106-SP2プライマーによるDNAシークエンシングを施した。pDEST12.2ベクター中のプラスミドDNA(200-500ng)に、先に説明したように、21M13、M13Rev、INSP106-SP1、及びINSP106-SP2プライマーによるDNAシークエンシングを施した。これらのプライマー配列は、表2に示している。
配列確認したクローン(pEAK12d-INSP106-6HIS、プラスミドID14344、図12、及びpDEST12.2-INSP106-6HIS、プラスミドID 14421、図9)の各々の培養物500mlから、Sambrook J.らの説明した方法(1989、Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press)を用い、CsCl勾配精製したマキシプレップDNAを調製した。プラスミドDNAを、滅菌水中に濃度1μg/μLで再懸濁し、-20℃で貯蔵した。














【0122】
表2
INSP106クローニング及びシークエンシングのためのプライマー

下線付き配列=コザック配列
“”付き配列=停止コドン
[]内配列=Hisタグ
【0123】
実施例4:INSP106の発現及び精製
ここで本明細書に明らかにされたヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を基に、INSP106ポリペプチドのin vivoにおける組織分布及び発現レベルを決定するために、更なる実験を行った。
INSP106の転写産物の存在を、様々なヒト組織に由来したcDNAのPCRにより調べた。INSP106転写産物は、試験したサンプル中で非常に低いレベルで存在することがある。従って、RNA調製物中の少量のゲノム混入は、偽陽性の結果を生じるので、様々なヒト組織中の転写産物の存在を証明する実験のデザインには細心の注意が必要である。従って全てのRNAは、逆転写に使用する前に、DNAseで処理されなければならない。加えて各組織に関して、対照反応は、逆転写が起こらないよう設定するのがよい(-ve RTコントロール)。
例えば、各組織からの総RNA 1μgを使用し、Multiscript逆転写酵素(ABI)及びランダムヘキサマープライマーを用い、cDNAを作成してもよい。各組織について、逆転写酵素以外の構成要素が添加された対照反応が設定される(-ve RTコントロール)。PCR反応は、各組織について、逆転写されたRNAサンプル及びマイナスRTコントロールに対し、設定される。INSP101特異的プライマーは、本明細書に提供された配列情報を基に容易にデザインされる。逆転写されたサンプルの正確な分子量の産物の存在は、マイナスRTコントロール中の産物の非存在と共に、その組織における転写産物の存在の証拠となる。INSP106転写産物をスクリーニングするためには、前述のように作成されたもののみではなく、いずれか適切なcDNAライブラリーを使用することができる。
INSP106ポリペプチドの組織分布パターンはさらに、これらのポリペプチドの機能に関連した有用な情報を提供するであろう。
加えてここで明らかにした発現ベクターを使用し、更なる実験を行うことができる。これらのベクターによる哺乳類細胞株のトランスフェクションは、INSP106ポリペプチドの高レベルの発現を可能にし、その結果INSP106ポリペプチドの機能特性に関する継続した研究を可能にする。下記の材料及び方法は、そのような実験の適切なものの例である:
【0124】
細胞培養
エプスタイン-バーウイルス核抗原を発現しているヒト胚性腎293細胞(HEK293-EBNA, Invitrogen)を、Ex-細胞VPRO血清-非含有培地(シードストック、維持培地、JRH)において懸濁状態で維持した。トランスフェクションの16-20時間前に(-1日目)、細胞を、2個のT225フラスコに播種した(2%FBS播種培地(JRH)を含むDMEM/F12(1:1)中に2x105細胞/mlの密度でフラスコあたり50ml)。次の日(トランスフェクション0日目)、JetPEI(登録商標)試薬を用いトランスフェクションを行った(プラスミドDNA 2μL/μg、PolyPlus-トランスフェクション)。各フラスコについて、プラスミドDNAを、GFP(蛍光レポーター遺伝子)DNAで同時-トランスフェクションした。トランスフェクション混合物は、2個のT225フラスコに加え、37℃(5%CO2)で6日間インキュベーションした。陽性トランスフェクションの確認は、1日目及び6日目に定量的蛍光試験により行った(Axiovert 10 Zeiss)。
6日目に(採集日)、2つのフラスコから上清をプールし、遠心分離し(例えば、4℃、400g)、固有の識別票を付したポットに入れた。6His-タグ付加タンパク質のQCのために(内部バイオプロセッシングQC)、1個のアリコート(500μL)を保持した。
大規模化バッチは、トランスフェクション試薬としてPolysciencesからのポリエチレンイミンにより、BP/PEI/HH/02/04を参照し、“浮遊細胞のPEIトランスフェクション”と称されるプロトコルに従い作成した。
【0125】
精製方法
C-末端6Hisタグを伴う組換えタンパク質を含有する培養培地サンプルを、冷緩衝液A(50mM NaH2PO4;600mM NaCl;8.7%(w/v)グリセロール、pH7.5)で希釈した。このサンプルを、滅菌フィルター(Millipore)で濾過し、滅菌培養角ビン(Nalgene)で4℃で維持した。
精製は、自動サンプル添加装置(Labomatic)に連結したVISIONワークステーション(Applied Biosystems)で4℃で実施した。精製方法は、以下の2つの連続する工程を含んでいた:Niイオンで荷電されているPoros 20 MC (Applied Biosystems)カラム(4.6x50mm, 0.83ml)での金属アフィニティークロマトグラフィー、続いてセファデックスG-25中型(Amersham Pharmacia)カラム(1,0x10cm)でゲルろ過。
最初のクロマトグラフィー工程のために、金属アフィニティーカラムを30カラム容積のEDTA溶液(100mM EDTA;1M NaCl;pH8.0)で再生させ、15カラム容積の100mM NiS04溶液で洗浄し、10カラム容積の緩衝液Aで洗浄し、続いて7カラム容積の緩衝液B(50mM NaH2PO4;600mM NaCl;8.7%(w/v)グリセロール、400mMイミダゾール、pH7.5)で洗浄し、最後に15カラム容積の緩衝液A(15mMのイミダゾールを含む)で平衡化した。Lobomaticサンプル添加装置でサンプルを200mlのサンプルループに移し、続いてNi金属アフィニティーカラムに流速10ml/分で装荷した。前記カラムを12カラム容積の緩衝液Aで洗浄し、続いて28カラム容積の緩衝液(20mMのイミダゾールを含む)で洗浄した。20mMのイミダゾール洗浄の間に、緩く付着していた混入タンパク質はカラムから溶出した。リコンビナントHis-タグ付加タンパク質を、流速2ml/分、10カラム容積の緩衝液Bで最後に溶出させ、この溶出タンパク質を採集した。
【0126】
二番目のクロマトグラフィー工程のために、セファデックスG-25ゲルろ過カラムを、2mlの緩衝液D(1.137M NaCl;2.7mM KCl;1.5mM KH2PO4;8mM Na2HPO4;pH7.2)で再生し、続いて4カラム容積の緩衝液C(137mM NaCl;2.7mM KCl;1.5mM KH2PO4;8mM Na2HPO4;20%(w/v)グリセロール;pH7.4)で平衡化した。Niカラムから溶出したピーク画分は、VISIONに統合されているサンプル添加装置を自動的に通過して、セファデックスG-25カラムに装荷され、2ml/分の流速の緩衝液Cでタンパク質を溶出した。前記画分を、滅菌遠心分離フィルター(Millipore)で濾過し、凍結して-80℃で保存した。サンプルのアリコートを、抗-His抗体を用い、SDS-PAGE(4-12% NuPAGEゲル;Novex)ウェスタンブロットで分析した。NuPAGEゲルは、0.1%クマーシーブルーR250染色液(30%メタノール、10%酢酸)で室温で1時間染色し、続けて20%メタノール、7.5%酢酸で、バックグラウンドが透明になりタンパク質バンドが明確に視認できるまで、脱染した。
電気泳動に続いて、タンパク質をゲルからニトロセルロースメンブレンへ移した。前記メンブレンを、5%粉乳を含む緩衝液E(137mM NaCl;2.7mM KCl;1.5mM KH2PO4;8mM Na2HPO4;0.1% Tween 20、pH7.4)で室温にて1時間ブロッキングし、続いて2.5%粉乳を含む緩衝液E中でふたつのウサギポリクローナル抗体混合物(G-18及びH-15、各々0.2μg/mL;Santa Cruz)と共に4℃で一晩インキュベーションした。室温でさらに1時間インキュベーションした後、前記メンブレンを緩衝液E(10分、3回)で洗浄し、続いて2.5%粉乳を含む緩衝液Eで1/3000に希釈したHRP-結合抗-ウサギ二次抗体(DAKO, HRP 0399)と室温で2時間インキュベーションした。緩衝液Eで洗浄(10分、3回)した後、前記メンブレンをECLキット(Amersham Pharmacia)で1分間処理した。続いて前記メンブレンをハイパーフィルム(Amersham Pharmacia)に露光し、前記フィルムを現像してウェスタンブロット画像を視覚的に分析した。
【0127】
クマーシー染色により検出可能なタンパク質バンドを示したサンプルについて、ウシ血清アルブミンを標準とし、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を用いて、タンパク質濃度を決定した。
さらに、細胞株におけるポリペプチドの過剰発現又は発現のノックダウンを使用し、宿主細胞ゲノムの転写活性に対する作用を決定することができる。INSP106ポリペプチドの二量体化パートナー、コアクチベーター及びコリプレッサーは、ウェスタンブロットと組合せた免疫沈降及び質量分析と組合せた免疫沈降により同定することができる。
【0128】
(配列情報)
配列番号1:INSP106エクソン3novヌクレオチド配列

1 CCGACTGCAA GTACAAGTTT GAGAACTGGG GTGCGTGTGA TGGGGGCACA
51 GGCACCAAAG TCCGCCAAGG CACCCTGAAG AAGGCGCGCT ACAATGCTCA
101 GTGCCAGGAG ACCATCCGCG TCACCAAGCC CTGCACCCCC AAGACCAAAG
151 CAAAGGCCAA AGGTCAGCGA AAGGAGAAGG GGGTGGGGCT GTCGCGGGGG
201 GCTGCCCCCC CCCCCCCCCG CCTGTGA

配列番号2:INSP106エクソン3novポリペプチド

1 DCKYKFENWG ACDGGTGTKV RQGTLKKARY NAQCQETIRV TKPCTPKTKA
51 KAKGQRKEKG VGLSRGAAPP PPRL*
【0129】
配列番号3:INSP106完全長ポリペプチド(シグナルペプチドを含む)のINSP106ヌクレオチド配列

1 ATGCAGCACC GAGGCTTCCT CCTCCTCACC CTCCTCGCCC TGCTGGCGCT
51 CACCTCCGCG GTCGCCAAAA AGAAAGATAA GGTGAAGAAG GGCGGCCCGG
101 GGAGCGAGTG CGCTGAGTGG GCCTGGGGGC CCTGCACCCC CAGCAGCAAG
151 GATTGCGGCG TGGGTTTCCG CGAGGGCACC TGCGGGGCCC AGACCCAGCG
201 CATCCGGTGC AGGGTGCCCT GCAACTGGAA GAAGGAGTTT GGAGCCGACT
251 GCAAGTACAA GTTTGAGAAC TGGGGTGCGT GTGATGGGGG CACAGGCACC
301 AAAGTCCGCC AAGGCACCCT GAAGAAGGCG CGCTACAATG CTCAGTGCCA
351 GGAGACCATC CGCGTCACCA AGCCCTGCAC CCCCAAGACC AAAGCAAAGG
401 CCAAAGGTCA GCGAAAGGAG AAGGGGGTGG GGCTGTCGCG GGGGGCTGCC
451 CCCCCCCCCC CCCGCCTGTG A

配列番号4:INSP106完全長ポリペプチド(シグナルペプチドを含む)

1 MQHRGFLLLT LLALLALTSA VAKKKDKVKK GGPGSECAEW AWGPCTPSSK
51 DCGVGFREGT CGAQTQRIRC RVPCNWKKEF GADCKYKFEN WGACDGGTGT
101 KVRQGTLKKA RYNAQCQETI RVTKPCTPKT KAKAKGQRKE KGVGLSRGAA
151 PPPPRL*
【0130】
配列番号5: INSP106完全長ポリペプチド(シグナルペプチドを除く)のINSP106ヌクレオチド配列

1 AAAAAGAAAG ATAAGGTGAA GAAGGGCGGC CCGGGGAGCG AGTGCGCTGA
51 GTGGGCCTGG GGGCCCTGCA CCCCCAGCAG CAAGGATTGC GGCGTGGGTT
101 TCCGCGAGGG CACCTGCGGG GCCCAGACCC AGCGCATCCG GTGCAGGGTG
151 CCCTGCAACT GGAAGAAGGA GTTTGGAGCC GACTGCAAGT ACAAGTTTGA
201 GAACTGGGGT GCGTGTGATG GGGGCACAGG CACCAAAGTC CGCCAAGGCA
251 CCCTGAAGAA GGCGCGCTAC AATGCTCAGT GCCAGGAGAC CATCCGCGTC
301 ACCAAGCCCT GCACCCCCAA GACCAAAGCA AAGGCCAAAG GTCAGCGAAA
351 GGAGAAGGGG GTGGGGCTGT CGCGGGGGGC TGCCCCCCCC CCCCCCCGCC
401 TGTGA

配列番号6:INSP106完全長ポリペプチド(シグナルペプチドを除く)

1 KKKDKVKKGG PGSECAEWAW GPCTPSSKDC GVGFREGTCG AQTQRIRCRV
51 PCNWKKEFGA DCKYKFENWG ACDGGTGTKV RQGTLKKARY NAQCQETIRV
101 TKPCTPKTKA KAKGQRKEKG VGLSRGAAPP PPRL*
【0131】
配列番号7:INSP106のエクソン3伸張部分のヌクレオチド配列

1 GTCAGCGAAA GGAGAAGGGG GTGGGGCTGT CGCGGGGGGC TGCCCCCCCC
51 CCCCCCCGCC TGTGA

配列番号8:INSP106のエクソン3伸張部分のポリペプチド

1 GQRKEKGVGL SRGAAPPPPR L
【0132】
配列番号9:swall|P21741|MK_HUMANのエクソン4のヌクレオチド配列

1 CCAAGAAAGG GAAGGGAAAG GACTAG

配列番号10:swall|P21741|MK_HUMANのエクソン4にコードされているアミノ酸

1 AKKGKGKD
【0133】
配列番号11:MDK_known:P21741のヌクレオチド配列

1 ATGCAGCACC GAGGCTTCCT CCTCCTCACC CTCCTCGCCC TGCTGGCGCT
51 CACCTCCGCG GTCGCCAAAA AGAAAGATAA GGTGAAGAAG GGCGGCCCGG
101 GGAGCGAGTG CGCTGAGTGG GCCTGGGGGC CCTGCACCCC CAGCAGCAAG
151 GATTGCGGCG TGGGTTTCCG CGAGGGCACC TGCGGGGCCC AGACCCAGCG
201 CATCCGGTGC AGGGTGCCCT GCAACTGGAA GAAGGAGTTT GGAGCCGACT
251 GCAAGTACAA GTTTGAGAAC TGGGGTGCGT GTGATGGGGG CACAGGCACC
301 AAAGTCCGCC AAGGCACCCT GAAGAAGGCG CGCTACAATG CTCAGTGCCA
351 GGAGACCATC CGCGTCACCA AGCCCTGCAC CCCCAAGACC AAAGCAAAGG
401 CCAAAGCCAA GAAAGGGAAG GGAAAGGACT AG

配列番号12:MDK_known:P21741のアミノ酸配列

1 MQHRGFLLLT LLALLALTSA VAKKKDKVKK GGPGSECAEW AWGPCTPSSK
51 DCGVGFREGT CGAQTQRIRC RVPCNWKKEF GADCKYKFEN WGACDGGTGT
101 KVRQGTLKKA RYNAQCQETI RVTKPCTPKT KAKAKAKKGK GKD
【0134】
(参照文献)
1. Akhter, S., Tanaka, I.T., Kojima, S., Muramatsu, H., Inui, T., Kimura, T., Kaneda, N., Talukder, A.H., Muramatsu T (1998) Clusters of Basic Amino Acids in Midkine: Roles in Neurite-Promoting Activity and Plasminogen Activator-Enhancing Activity. J. Biochem. 123, 1127-1136.

2. Iwasaki, W., Nagata, K., Hatanaka, H., Inui, T. Kimura, T., Muramatsu, T., Yoshida, K., Tasumi, M., and Inagaki, F. (1997) Solution structure of midkine, a new heparin binding growth factor. EMBO. 16, 6936-6946.

3. Muramatsu. T. (2002) Midkine and Pleiotrophin: Two related Proteins involved in development, Survival, Inflammation and Tumorigenesis. J. Biochem. 132, 359-371.

4. Pierrot, I.B., Delbe, J., Caruelle, D., Barritault, D., Courty, J., and Milhet P.E. (2001) The Lysine-rich C-terminal Tail of HARP is required fir Mitogenic and Tumor Formation Activites. J. Biol. Chem. 276, 12228-12234.

5. Kojima, S. , Muramatsu, H. , Amanuma, H. and Muramatsu, T. (1995) Midkine enhances fibrinolytic activity of bovine endothelial cells. J. Biol. Chem., 270, 9590-9596.
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】既知のヒトミッドカイン遺伝子(P21741)及びスプライシング変種INSP106の機構を示す。
【図2】矢印で示しているP21741(第1列)及びINSP106(第2列、アラインメントにおいてsv1-chr11と称す)を含む多数のミッドカインファミリーメンバーのアラインメントを示す。
【図3】INSP106のドミナントネガティブ機能を示す。
【図4】既知のミッドカイン(P21741、アラインメントにおいてswallと称する)対INSP106(アラインメントにおいてchr11と称する)のアラインメントを示す。
【図5】予想INSP106ヌクレオチド配列と翻訳を示す。
【図6】プライマーINSP106-CP1及びINSP106-CP2を使用しクローニングした、INSP106 PCR産物のヌクレオチド配列と翻訳を示す。
【図7】pCR4-TOPO-INSP106のマップを示す。
【図8】pDONR 221のマップを示す。
【図9】発現ベクターpEAK12dのマップを示す。
【図10】発現ベクターpDEST12.2.のマップを示す。
【図11】pDONR221-INSP106-6HISのマップを示す。
【図12】pEAK12d-INSP106-6HISのマップを示す。
【図13】pDEST12.2-INSP106-6HISのマップを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号10に記載のアミノ酸配列を含まない、以下の(i)から(iii)のいずれかのポリペプチド:
(i)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(ii)配列番号2のフラグメントを含むポリペプチドであって、少なくとも配列番号8のフラグメントを含み、配列番号4若しくは配列番号6(i)の活性を有するか又は配列番号2を含むポリペプチドに特異的な抗原決定基を有する、前記ポリペプチド;又は、
(iii)配列番号4若しくは配列番号6の活性を有するか又は配列番号2を含むポリペプチドに特異的な抗原決定基を有する、(i)又は(ii)の機能的等価物を含むポリペプチド。
【請求項2】
(i)配列番号4若しくは配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むか又は配列番号4若しくは配列番号6に記載のアミノ酸配列からなっていてもよい、ポリペプチド;
(ii)配列番号4若しくは配列番号6のフラグメントを含むか又は配列番号4若しくは配列番号6のフラグメントからなっていてもよいポリペプチドであって、ここで前記フラグメントは配列番号8若しくは配列番号2を含み、配列番号4若しくは配列番号6の活性を有するか又は配列番号2を含むポリペプチドに特異的な抗原決定基を有する、前記ポリペプチド;又は
(iii)配列番号4若しくは配列番号6の活性を有するか又は配列番号2を含むポリペプチドに特異的な抗原決定基を有する、(i)又は(ii)の機能的等価物を含むポリペプチドであって、好ましくは前記機能的等価物が配列番号8若しくは配列番号2を含む前記ポリペプチド;
のいずれかである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列番号4又は配列番号6に記載のアミノ酸配列からなる、請求項1又は2記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列番号2、配列番号4、配列番号6又は配列番号8に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%又は90%の配列同一性を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項の(iii)記載の機能的等価物であるポリペプチド。
【請求項5】
配列番号8に記載のアミノ酸配列と60%、70%、80%、90%、92%、95%、98%又は99%以上の配列同一性を有する配列を含む、請求項1、2、又は3記載のフラグメント又は機能的等価物であるポリペプチド。
【請求項6】
配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1、2、3又は5のいずれか1項記載の機能的等価物であるポリペプチド。
【請求項7】
配列番号2若しくは配列番号8に記載のアミノ酸配列に由来する7以上のアミノ酸残基からなり、配列番号2を含むポリペプチドに特異的な抗原決定基を有する、請求項1、2又は5記載のフラグメントであるポリペプチド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドをコードしている精製mRNA核酸分子若しくは精製cDNA核酸分子又はそれらの相補核酸分子。
【請求項9】
配列番号1、配列番号3、配列番号5若しくは配列番号7に記載の核酸配列を含むか又はそれらの余剰的等価物若しくはフラグメントである、請求項8記載の精製核酸分子。
【請求項10】
配列番号1、配列番号3、配列番号5若しくは配列番号7に記載の核酸配列からなるか又はそれらの余剰的等価物若しくはフラグメントである、請求項8記載の精製核酸分子。
【請求項11】
高ストリンジェンシー条件下で配列番号3又は配列番号5とハイブリダイズするが、高ストリンジェンシー条件下で配列番号11とはハイブリダイズしない、精製核酸分子。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項13】
請求項12記載のベクターで形質転換されている、宿主細胞。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドに特異的に結合する、リガンド。
【請求項15】
抗体である、請求項14記載のリガンド。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドの発現又は活性のレベルを増加又は減少させる、化合物。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドに、そのポリペプチドのいかなる生物学的作用をも誘導せずに結合する、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
天然の又は改変されている基質、リガンド、酵素、受容体又は構造的若しくは機能的模倣物である、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
疾患の治療又は診断に使用するための、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子、請求項12記載のベクター、請求項13記載の宿主細胞、請求項14又は15記載のリガンド、請求項16〜18のいずれか1項記載の化合物。
【請求項20】
患者由来の組織において、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドをコードしている天然遺伝子の発現レベルを評価するか、又は請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドの活性を評価すること;及び
前記発現レベル又は活性をコントロールレベルと比較すること;
を含み、ここで、コントロールレベルと異なるレベルは疾患を示している、患者の疾患を診断する方法。
【請求項21】
In vitroで実施される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
(a)請求項14又は15記載のリガンドを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適した条件下で生物学的サンプルと接触させる工程;及び
(b)前記複合体を検出する工程;
を含む請求項20又は21記載の方法。
【請求項23】
(a)患者由来の組織サンプルを核酸プローブと、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子と前記プローブとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で接触させる工程;
(b)コントロールサンプルを、工程(a)で用いられるのと同じ条件下で前記プローブと接触させる工程;及び
(c)前記サンプルにおけるハイブリッド複合体の存在を検出する工程;
を含み、ここでコントロールサンプルのハイブリッド複合体のレベルと異なった患者サンプルのハイブリッド複合体レベルの検出は疾患を示している、請求項20又は21記載の方法。
【請求項24】
(a)患者の組織由来の核酸サンプルを核酸プライマーと、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子と前記プライマーとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で接触させる工程;
(b)コントロールサンプルを、工程(a)で用いられるのと同じ条件下で前記プライマーと接触させる工程;
(c)前記サンプルの核酸を増幅させる工程;及び、
(d)患者サンプル及びコントロールサンプルの両サンプルから、増幅核酸レベルを検出する工程;
を含み、ここでコントロールサンプルの増幅核酸レベルと顕著に異なった患者サンプルの増幅核酸レベルの検出は疾患を示唆している、請求項20又は21記載の方法。
【請求項25】
(a)疾患について検査される患者から、組織サンプルを入手する工程;
(b)前記組織サンプルから、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子を単離する工程;及び、
(c)前記疾患の指標として疾患に付随する変異の存在を前記核酸分子中で検出することによって、疾患について患者を診断する工程;
を含む請求項20又は21記載の方法。
【請求項26】
核酸分子を増幅させて増幅産物を生成し、前記増幅産物で変異の有無を検出することをさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
該核酸分子を、該核酸分子にハイブリダイズする核酸プローブとストリンジェントな条件下で接触させて、疾患に付随する変異に対応する任意の部分に前記核酸プローブ鎖の非ハイブリダイズ部分を有するハイブリッド二本鎖分子を形成させること;及び
疾患に付随する変異の有無の指標として前記プローブ鎖の非ハイブリダイズ部分の有無を検出すること;
によって、前記患者における変異の有無を検出する請求項25又は26記載の方法。
【請求項28】
該疾患が、生殖障害、細胞増殖性疾患で、新生物、メラノーマ、肺、結腸直腸、乳房、膵臓、頭部及び頚部及び他の固形腫瘍;胃癌、結腸癌、膵癌、肺癌、胸部癌、及び肝癌;骨髄増殖性障害で、例えば白血病、非-ホジキンリンパ腫、白血球減少症、血小板減少症、血管新生障害、カポジ肉腫;自己免疫/炎症障害で、アレルギー、炎症性腸疾患、膵炎、関節炎、乾癬、尋常性乾癬、気道炎症、喘息及び臓器移植の拒絶反応など;心血管系障害で、高血圧、浮腫、狭心症、アテローム性動脈硬化症、血栓症、敗血症、ショック、再灌流傷害及び虚血、特に虚血性心疾患など;神経障害で、中枢神経系疾患、アルツハイマー病、脳外傷、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症及び疼痛;発育障害;代謝障害で、糖尿病、骨粗鬆症及び肥満、AIDS、腎疾患、特に特発性ネフローゼ症候群など;フィブリン溶解に関連した障害;好中球機能障害(例えば、怠け者白血球(化学走化性欠損白血球)症候群);炎症性疾患;創傷治癒障害;肺損傷;感染症で、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症及び寄生体感染症など、並びに他の病態を含むが、これらに限定されるものではない、請求項20〜27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
該疾患が、ミッドカインが関与している疾患である、請求項20〜27のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
増殖因子として又は増殖因子活性のモジュレーターとしての、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドの使用。
【請求項31】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子、請求項12記載のベクター、請求項13記載の宿主細胞、請求項14若しくは15記載のリガンド又は請求項16〜18のいずれか1項記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項32】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド又は請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子を含む、ワクチン組成物。
【請求項33】
生殖障害;細胞増殖性疾患で、新生物、メラノーマ、肺、結腸直腸、乳房、膵臓、頭部及び頚部その他の固形腫瘍;胃癌、結腸癌、膵癌、肺癌、胸部癌及び肝癌;骨髄増殖性障害で、例えば白血病、非ホジキンリンパ腫、白血球減少症、血小板減少症、血管新生障害、カポジ肉腫;自己免疫/炎症障害で、アレルギー、炎症性腸疾患、膵炎、関節炎、乾癬、尋常性乾癬、気道炎症、喘息、及び臓器移植の拒絶反応など;心血管系障害で、高血圧、浮腫、狭心症、アテローム性動脈硬化症、血栓症、敗血症、ショック、再灌流性障害及び虚血、特に虚血性心疾患など;神経障害で、中枢神経系疾患、アルツハイマー病、脳外傷、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症及び疼痛;発育障害;代謝障害で、糖尿病、骨粗鬆症及び肥満、AIDS、腎疾患、特に特発性ネフローゼ症候群など;フィブリン溶解に関連した障害;好中球機能障害(例えば、怠け者白血球(化学走化性欠損白血球)症候群);炎症性疾患;創傷治癒障害;肺損傷;感染症で、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症及び寄生体感染症など;並びに、その他病態の治療用医薬品の製造に使用するための、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子、請求項12記載のベクター、請求項13記載の宿主細胞、請求項14若しくは15記載のリガンド、請求項16〜18のいずれか1項記載の化合物又は請求項31記載の医薬組成物。
【請求項34】
ミッドカインタンパク質が関与する疾患の治療用医薬品の製造に使用するための、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子、請求項12記載のベクター、請求項13記載の宿主細胞、請求項14若しくは15記載のリガンド、請求項16〜18のいずれか1項記載の化合物又は請求項31記載の医薬組成物。
【請求項35】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子、請求項12記載のベクター、請求項13記載の宿主細胞、請求項14若しくは15記載のリガンド、請求項16〜18のいずれか1項記載の化合物又は請求項31に記載の医薬組成物を、患者に投与することを含む、患者の疾患を治療する方法。
【請求項36】
罹患対象者での天然遺伝子の発現又はポリペプチドの活性が、健常対象者での該発現又は活性のレベルと比較した場合に低い疾患に対して、患者に投与されるポリペプチド、核酸分子、ベクター、リガンド、化合物又は組成物がアゴニストである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
罹患対象者での天然遺伝子の発現又はポリペプチドの活性が、健常対象者での該発現又は活性のレベルと比較した場合に高い疾患に対して、患者に投与されるポリペプチド、核酸分子、ベクター、リガンド、化合物又は組成物がアンタゴニストである、請求項35記載の方法。
【請求項38】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドの発現若しくは活性のレベル又は請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子の発現レベルを、患者由来の組織で一定期間にわたってモニターすることを含む、患者の疾患の治療的処置をモニタリングする方法であって、
ここで、前記一定期間にわたる発現又は活性のレベルがコントロールレベルに向かって変化することは、前記疾患の寛解を示す前記方法。
【請求項39】
疾患の治療及び/又は診断で有効な化合物を同定する方法であって、
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド又は請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子を、前記ポリペプチド又は核酸分子に対し結合親和性を有すると疑われる1又は2以上の化合物と接触させること;及び、
前記核酸分子又はポリペプチドと特異的に結合する化合物を選択すること;
を含む前記方法。
【請求項40】
請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む第一の容器;
前記核酸分子の増幅に有用なプライマーを含む第二の容器;及び、
疾患の診断を容易にするための前記プローブ及びプライマーの使用説明書;
を含む、疾患の診断に有用なキット。
【請求項41】
ハイブリダイズしないRNAを消化するための薬剤を保有する第三の容器をさらに含む、請求項40のキット。
【請求項42】
核酸分子のアレイを含むキットであって、
前記核酸分子の少なくとも1つが請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子である前記キット。
【請求項43】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドと結合する1又は2以上の抗体;及び、
前記抗体と前記ポリペプチドとの間の結合反応の検出に有用な試薬;
を含むキット。
【請求項44】
形質転換されており、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドをより高いレベル、より低いレベル、又は異常なレベルで発現する、非ヒトトランスジェニック動物又は非ヒトノックアウト動物。
【請求項45】
請求項44記載の非ヒトトランスジェニック動物を候補化合物と接触させること、及び、前記動物の疾患に対する前記化合物の作用を決定することによって、疾患の治療に有効な化合物をスクリーニングする方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【公表番号】特表2006−525783(P2006−525783A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558824(P2004−558824)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/GB2003/005374
【国際公開番号】WO2004/052928
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(504238862)アレス トレイディング ソシエテ アノニム (24)
【Fターム(参考)】