説明

ミトコンドリアをターゲティングするポリペプチド

ミトコンドリアに非ミトコンドリアタンパク質を送達する方法が提供される。また、ミトコンドリアターゲティング配列(MTS)、核外移行シグナル(NES)およびコードされたタンパク質に融合されたDNA結合性ポリペプチドをコードするコード配列を含む核酸構築物も提供される。前記構築物は、ミトコンドリアにDNA結合性タンパク質を正常に送達する。上記の構築物に基づくキメラのメチラーゼはミトコンドリアに正常に送達され、それによってmtDNAの改変がもたらされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミトコンドリアに対するポリペプチドのターゲティングに関する。特に、本発明は、ミトコンドリアへの送達に抵抗性がある非常に強い核局在化を有するポリペプチド等のミトコンドリアに対して異種のポリペプチドのミトコンドリアターゲティングに関する。更に本発明は、ミトコンドリアに送達されるポリペプチドを使用してミトコンドリアDNAを修飾する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
ミトコンドリアは、エネルギー代謝、アポトーシス及び老化に中心的な役割を果たす真核細胞において見られる細胞器官である。ミトコンドリアは特異なミトコンドリアゲノムを含み、ヒトミトコンドリアは、酸化的リン酸化機構の必須成分をコードするそれ自身の16,569bpのDNA(mtDNA)の2〜10個のコピーを含む。これによって、ミトコンドリアは、タンパク質がミトコンドリア中で直接合成されるという点で核とはほとんど無関係なものとなる。ミトコンドリアDNAは、イントロンを有さない遺伝子を含む環状の2本鎖分子であるという点で、原核生物のDNAに似ており;更にその遺伝暗号は、「正常」な普遍的遺伝暗号とは異なる。
【0003】
核DNAの単一コピーとは対照的に、各細胞においてmtDNAの多数のコピーが存在する結果として、ミトコンドリアは突然変異誘発に高い感受性がある。更に、ヌクレオチド除去修復機構等の、ミトコンドリアにおける特定の修復機構が欠けている。
【0004】
ヒトmtDNAにおける点変異、欠失又は再配列は、酸化的リン酸化を阻害し、現在治療法がない一連の遺伝病を引き起こす。例えば、レーベル遺伝性視神経症(LHON)は、mtDNAにおける複合体IのND4サブユニットをコードする遺伝子中のG11778A点変異によって引き起こされる。ニューロパシー、失調及び色素性網膜炎(NARP)並びに母性遺伝性リー症候群(MILS)は、更に通常、mtDNAにおけるATPシンターゼ6遺伝子中のT8993G点変異に起因する。MELAS(ミトコンドリア脳筋症;乳酸アシドーシス;脳卒中)は、MELAS症候群の80%の原因となるA3243G突然変異を含む種々のミトコンドリア遺伝子(通常はtRNALeu)における突然変異によって引き起こされる。MERRF(ミオクローヌスてんかん;赤色ぼろ線維)は、ミトコンドリアのtRNALysにおける突然変異に一般に関連しており;心筋症は、tRNAIleにおける突然変異と多くの場合関連しており;ミオパシー、難聴及び糖尿病もまた、全てミトコンドリアと関連がある。
【0005】
mtDNAの自己複製、維持及び発現の方法については、更に相当な不確実性がある。細胞内のミトコンドリアにおける特定のmtDNA配列を操作又は修飾する能力があれば、正常なmtDNAのプロセスの考察が容易になり、ミトコンドリアDNA配列の変化に起因する疾患の治療の開発も可能になる。しかし、この目的を達成することは、遺伝的方法においてミトコンドリア内にDNAの外来性のコピーを送達する等の標準的な遺伝子治療の方法が問題を含んだままであるので、困難であることが分かっている。
【0006】
ミトコンドリアは、それ自身のゲノムを含むが、細胞質のリボソームで産生して核遺伝子中でコードされた多数のタンパク質(約1000個と評価される)を取り込む。ミトコンドリア内に取り込むための核タンパク質は、関連の細胞器官へポリペプチドを再配置するシグナル配列を有し;これらは、ミトコンドリアターゲティング配列(MTS)として知られている。
【0007】
Tanaka et al.(2002)J Biomed Sci 9:534−541では、SmaIエンドヌクレアーゼが、チトクロームc酸化酵素のサブユニットIV MTSに融合されることによってミトコンドリアに送達されることを報告された。SmaIは、例えばNARP又はMILSにおいてT8993Gの突然変異の結果としてmtDNAで発現する配列CCC//GGGを切断する。突然変異体のミトコンドリアDNAは制限酵素によって切断された。突然変異体のミトコンドリアDNAは通常、野生型mtDNAと共存するので(異形成として知られている現象(卵子における複数のミトコンドリアの母性遺伝に起因する))、突然変異体DNAの破壊によって野生型DNAを含むミトコンドリアが細胞中で優位になることが可能になり、疾患症状を治療することができる。しかし、天然由来の制限酵素の特異性は数に限りがあるため、この方法は、修正可能な突然変異に対する適用としては限られている。
【0008】
ミトコンドリアの外部のこのような課題を解決するために、制限エンドヌクレアーゼのDNA切断ドメインとDNA結合ドメインとの間の融合が行われた。ジンクフィンガーDNA結合ドメインをキメラ制限エンドヌクレアーゼに変換する方法は、Kim et al.,(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:1156−1160、に記載されている。
【0009】
MTSは、当該技術分野で知られており、例えば、Pfanner&Geissler,Nature Reviews Mol Cell Biol.2:339−49、で概説され、それは参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
米国特許出願第US2004/0072774号には、細胞質中で合成されたポリペプチドをミトコンドリアに移すためのMTSの使用が記載される。US2004/0072774において提供されるMTSの例としては、ヒトチトクロームc酸化酵素サブユニットVIIIのN末端領域、ヒトATPシンターゼのサブユニットcのP1アイソフォームのN末端領域、及びアルデヒドデヒドロゲナーゼターゲティング配列のN末端領域が挙げられる。
【0011】
しかし、US2004/0072774は、DNA結合性ポリペプチド以外のポリペプチドの送達に関する。例えば、US2004/0072774は、野生型配列を有する天然のミトコンドリアポリペプチドを導入することによってミトコンドリア病が補正され得ることを示唆する。
【0012】
DNA結合性タンパク質は、細胞の核における遺伝子発現を調節するために用いられてきた。組換えZFPは、培養細胞(例えば、Pomerantz et al.,Science 267:93−96(1995);Liu et al.,PNAS 94:5525−5530(1997);及びBeerli et al.,PNAS 95:14628−14633 (1998)参照)及び外来染色体配列(Choo et al.,Nature 372:642−645(1994))において一時的に発現したリポーター遺伝子の遺伝子発現を調節する能力を有することが報告された。
【0013】
より最近の研究によって、培養細胞[Beerli et al.(2000)PNAS 97:1495−1500;Zhang et al.(2000)J.Biological Chemistry 275:33850−33860;Liu et al.(2001)J.Biological Chemistry 276:11323−11334]及び動物全身[Rebar et al.(2002)Nature Medicine 8:1427−1432;Dai et al.(2004)Circulation 110:2467−2475]における天然状態の内在性の染色体遺伝子の発現を調節するために転写活性化ドメイン及び転写抑制ドメインへのZFP融合の使用が示される。
【0014】
特に、Beerliらは、合理的な設計によって産生されたジンクフィンガーポリペプチドを使用して内在性のerbB−2及びerbB−3遺伝子を標的とした。Beerliらは、ZFPに融合された、KRAB及びVP64の抑制ドメイン及び活性化ドメインを使用して、内在性のerbB−2及びerbB−3遺伝子の発現のアップレギュレーション及びダウンレギュレーションを認めることができた。Zhangらは、VP16トランス活性化ドメインに結合されたZFPを使用して内在性のエリトロポイエチン遺伝子を活性化した。ZFPは合理的な設計によって得られ、それをテストして内在性及びトランスフェクトEPO遺伝子をトランス活性化するその能力を判定した。10nM未満の解離定数を有するZFPはトランスフェクトEPO鋳型を活性化することに効果的であることが判明し;これらのサブセットは内在性遺伝子をトランス活性化することに効果的であった。Liuらは、内在性VEGF−A遺伝子を調節するために、DNアーゼIの過敏性の分析によってマップされたVEGF−A遺伝子内のクロマチン領域を開放するために標的としたZFPを使用した。Rebarら及びDaiらは、それぞれマウスモデル及びウサギにおける血管形成を誘導するために内在性VEGF−A遺伝子を標的とした。
【0015】
FokIからのIIS型制限酵素切断ドメインに対するZFP融合を用いて所定部位で染色体DNAの切断に触媒作用を起こし、それによって標的突然変異誘発[非特許文献1;非特許文献2]及び標的相同組換え[非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5]の両方が促進された。
【0016】
Lloydらは、ZFPを用いて植物遺伝子において標的突然変異誘発を誘導した。この手順において、ZFNを用いて特異的なゲノム部位で2本鎖切断を引き起こした。非相同末端再結合(NHEJ)による後の修復は、植物においてエラーを起こしやすいことが知られており、切断部位で突然変異を生じる。熱ショックプロモーターにより駆動されたZFN遺伝子及びその標的の両方を担持する構築物がシロイヌナズナ・ゲノムに導入された。苗発育中の熱ショックによるZFN発現の誘導によって、1つの標的につき0.2回の突然変異の頻度でZFN認識配列において突然変異が生じた。特徴を記述された106個のZFN誘導突然変異の内、83個(78%)が1〜52bpの単純な欠失であり(4bpの中央値)、14個(13%)が1〜4bpの単純な挿入であり、そして9個(8%)が挿入を伴う欠失であった。
【0017】
Porteus及びBaltimoreは、ZFP−FokI融合を用いてヒト細胞内の外来性の統合染色体GFP遺伝子内の遺伝子欠損の修正を示すことができた。Bibikovaらは、ショウジョウバエ胚内のyellow遺伝子座においてZFP−FokI融合が介在する標的組換えを示した。Urnovらはは、ZFP−FokI融合タンパク質を使用して、ヒト細胞内において、内在IL−2Rγ遺伝子座で標的組換えを20%に近い頻度で得た。ZFP融合なしで、標的組換えは、約50万個の内で約1〜2個の細胞の頻度で発現する。
【0018】
しかしながら、上記の構築物のいずれもミトコンドリアにおいて使用されてこなかった。それ故、ZEP等のDNA結合性タンパク質をミトコンドリアにおいて使用することができるのか、そしてその場合においてかかるタンパク質がどのようにミトコンドリアに対して標的とされ得るのかについて確認する必要がある。
【非特許文献1】Bibikova et al.(2002)Genetics 161:1169−1175
【非特許文献2】Lloyd et al.(2005)PNAS 102:2232−2237
【非特許文献3】Porteus and Baltimore(2003)Science 300:763
【非特許文献4】Bibikova et al.(2003)Science 300:764
【非特許文献5】Urnov et al.(2005)Nature 435:646−651
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の要旨)
本発明者らは、ミトコンドリアに対してあらゆる所望のポリペプチドを標的とすることが、単にそれにミトコンドリアターゲティング配列(MTS)を融合することによってでは可能ではないことを発見した。転写因子等のDNA結合性ポリペプチドが包含される多くのポリペプチドは、細胞過程におけるそれらの正常な役割に適するように、核局在化の方へ強く偏ると思われる。MTSの使用は、ミトコンドリアの環境に異種のDNA結合性ポリペプチドの送達に十分でないと思われる。
【0020】
本発明は、ミトコンドリアへDNA結合性ポリペプチドを送達するための方法及び組成物を提供する。更に、本発明は、ミトコンドリア基質内のミトコンドリアに対して異種のDNA結合性タンパク質の使用を提供する。
【0021】
それ故、第1の態様においては、ミトコンドリアターゲティング配列(MTS)及び核外移行シグナル(NES)に融合させた、DNA結合性ポリペプチドをコードするコード配列を含む核酸構築物が提供される。
【0022】
好ましくは、ミトコンドリアのゲノムを修飾するために用いられ得る、転写活性化ドメイン又は転写抑制ドメイン、制限酵素或いは他のDNA修飾酵素等のエフェクター分子(即ち、機能的ドメイン)が、DNA結合性タンパク質に融合される。
【0023】
好ましくは、機能的ドメインは、制限エンドヌクレアーゼのDNA切断ドメインである。IIs型制限エンドヌクレアーゼは、通常は分離可能なDNA結合ドメイン及びDNA切断ドメインを有する。それ故、任意の所望位置でmtDNAを切断し得、そして任意の標的配列に合わせて調整され得る特異性を有する人工制限酵素を産生するために、切断ドメインを代替的なDNA結合タンパク質に付けることができる。それ故、好ましくは、制限エンドヌクレアーゼはIIs型制限エンドヌクレアーゼである。IIs型制限エンドヌクレアーゼの例としては、FokI,BpmI,BsgI and MboIIが挙げられる。
【0024】
転写活性化ドメインや転写抑制ドメイン等の、代替的なエフェクター分子及び機能的ドメインを用いて、mtDNA遺伝子の転写を修飾することができる。
【0025】
好都合にも、DNA結合性タンパク質が結合する配列(「標的配列」)は、ミトコンドリアゲノム内の固有の部位である。この部位は好ましくはミトコンドリア病又は遺伝病と関連しており、このことは、それが、ミトコンドリア病又は遺伝病において発現する突然変異の部位か、若しくはその近くにあることを意味する。このような方法において、疾患と関連した突然変異が起こるミトコンドリアゲノムだけが、本発明のポリペプチドによって影響される。例えば、上記のように、前記部位は、疾患と関連する点変異の部位であってよい。
【0026】
エフェクター分子が制限酵素である場合、前記固有の部位は、好ましくは野生型ミトコンドリアで発現しない。このように、突然変異を有するミトコンドリアゲノムは、選択的に不活性化され得る。
【0027】
しかしながら、前記機能的ドメインが転写調節ドメインである場合、前記部位は、野生型ミトコンドリアゲノム内、しかし好ましくは融合ポリペプチドの結合が遺伝子発現に影響を及ぼさない場所に発現し得る。
【0028】
ミトコンドリア病又は遺伝病に「関連すること」によって、核酸結合タンパク質の結合の部位も通常突然変異の結果としてミトコンドリア病又は遺伝病の原因となるミトコンドリアゲノム内でのみ発現するということが示されることが意図されるか、若しくは、前記部位がミトコンドリア病又は遺伝病と関連する遺伝子の調節の原因となる場所であることが示されることが意図される。
【0029】
本発明に記載の核酸は、真核細胞において発現することが可能で、且つ核酸の転写及び翻訳を確保するために必要な調節配列を含むベクター内に存在することができる。前記ベクターは、真核細胞において一時的に発現することができるか、若しくは安定して発現することができる。MVA、レンチウイルスベクター及びアデノ関連ウィルスベクター等の突然変異体が包含される、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、サイトメガロウィルスベクター、ワクシニア及び他のポックスウイルス等のウィルスベクターの使用は、当該技術分野で知られており、そしてin vivoにおける真核細胞の形質転換の有効な手段である。
【0030】
有利な点としては、DNA結合性ポリペプチドはミトコンドリアに対して異種である。ミトコンドリアの環境に固有ではないタンパク質は、ミトコンドリアに送達することがより困難であると考えられ、本発明の方法は、そのようなポリペプチドの送達に特に有利である。
【0031】
好ましくは、本発明において有用なDNA結合性タンパク質は、転写因子、特に転写因子のDNA結合ドメインに由来する。特に好ましいDNA結合性タンパク質は、ジンクフィンガーポリペプチドである。
【0032】
DNA結合性タンパク質は天然のタンパク質であり得るか、若しくはライブラリー、必要に応じて、更に本明細書において記載されるような、ランダム化されたか或いは部分的にランダム化されたポリペプチドのライブラリーから選択され得る。更に、DNA結合性タンパク質及び特にZFPは、確立された原理を用いて合理的に設計され得る。
【0033】
本発明に記載のベクターは、ミトコンドリアの基質にDNA結合性ポリペプチドを送達するために使用することができる。そのようなポリペプチドは、ミトコンドリアDNAの修飾、ミトコンドリアの遺伝子発現の調節、又は他の所望の目的のために使用することができる。
【0034】
更なる一態様において、本発明の第1の態様による核酸構築物によって形質転換された真核細胞が提供される。また、本発明の核酸構築物によってコードされたタンパク質を含む細胞も提供される。
【0035】
本発明の更なる一態様において、
(a)mtDNA中の特異的部位(即ち、標的配列)と結合するDNA結合性ポリペプチド;
(b)機能的ドメインのエフェクター分子;
(c)ミトコンドリアターゲティング配列(MTS);及び
(d)核外移行配列(NES)、を含む融合タンパク質が提供される。
【0036】
好ましくは、本発明に記載の融合タンパク質は、上記態様において説明されたような属性及び特徴を有する。好都合にも、融合タンパク質は、部位特異的方法でmtDNAに結合して、それを修飾する。特に好ましい一実施形態において、前記融合タンパク質は、特定のmtDNA分子を認識及び破壊することができる。
【0037】
本発明は、本発明の上記態様による核酸ベクターを含む医薬組成物を更に提供するものである。前記医薬組成物は、注射或いは別の方法による生物への投与に適切な形態の核酸構築物を含む。ウィルスベクターは、多細胞生物における細胞の伝達に使用することができる。本発明に記載の医薬組成物は、ミトコンドリア異常を伴う疾患を治療する方法に有用であり、その方法は、それを必要とする被験体に本発明に記載の核酸構築物を含む組成物を投与することを含む。
【0038】
また、ミトコンドリア病の治療のための医薬組成物の調製における本明細書に記載されるような核酸構築物の使用も提供される。
【0039】
なお更なる一態様において、ミトコンドリアにポリペプチドを送達する方法であって、次のステップ:
(a)本発明の第1の態様による核酸構築物を調製すること;及び
(b)核酸構築物を真核細胞内に導入すること、を含み、前記構築物が発現して前記ポリペプチドを産生し、そして前記ポリペプチドがミトコンドリアに入るような方法が提供される。
【0040】
更なる一態様において、本発明は、ミトコンドリア基質内のミトコンドリアに対して異種のDNA結合性タンパク質の使用を提供するものである。本発明者らは、ZFP等の核に由来するDNA結合性タンパク質がそのDNA結合活性をミトコンドリア内に有することを見出した。従って、ミトコンドリアの遺伝子発現を調節する方法であって、ミトコンドリアに対して異種のDNA結合性タンパク質を該ミトコンドリアに送達することを含む方法が提供される。好ましくは、前記DNA結合性タンパク質はZFPである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
(発明の詳細な説明)
特に定義されない限り、本明細書に用いられる全ての技術的及び科学的な用語は、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技法及び生化学における)によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。分子的、遺伝子的及び生化学的な方法(本明細書に参照により組み込まれるSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.and Ausubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology(1999)4th Ed(and periodic supplements);John Wiley&Sons,Inc.を一般に参照されたい)、化学法、医薬製剤及び患者への送達及び患者の治療のために標準的技法が用いられる。
【0042】
A.DNA結合性ポリペプチド
「DNA結合性ポリペプチド」という用語には、核酸と結合又は会合し得る任意のポリペプチドが包含される。この結合又は会合は、任意の種類の可逆的又は不可逆的な会合を介することができる。「DNA結合性ポリペプチド」という用語は、本明細書において広範囲に使用される。しかしながら、DNA以外の他のタイプの核酸が関連していてもよい。従って、一般に上記の用語は「核酸結合分子」という用語と置き換えることができるということが意図される。核酸は、一般にRNA又はDNAであり、2本鎖又は1本鎖である。しかしながら、本発明の好ましい一態様において、「DNA」に対する参照は、文字通りの意味のデオキシリボ核酸を意味し、特に本発明に記載のDNA結合性タンパク質についての標的であるミトコンドリア(mt)DNAを指す。ポリペプチドは、更にミトコンドリアRNAを標的とすることができる。
【0043】
本発明のDNA結合性ポリペプチドは、好ましくはミトコンドリアに非相同である。このことは、それらが、核内でコードされ且つ細胞質からミトコンドリアに送り出されるか、或いは野生型の形態でミトコンドリアゲノム内でコードされるかのいずれのミトコンドリアタンパク質でもないことを意味する。
【0044】
本発明に記載のポリペプチドとしては、バクテリオファージ粒子の表面にディスプレイされるポリペプチドを挙げることができる。また、本発明によるポリペプチドとしては、バクテリオファージ粒子の外面上のエンベロープタンパク質の不可欠の部分として示されるポリペプチドのライブラリーも挙げることができる。ランダム化されたポリペプチドをコードするライブラリーの産生方法は、当該技術分野で知られており、本発明において適用することができる。例えば、国際公開第96/06166号;同第98/53057号;同第00/42219号及び同第01/40798号参照されたい。ランダム化は全体又は部分であってよく;部分的ランダム化の場合、選択されたコドンは、好ましくはアミノ酸についての任意のものをコードし、終止コドンについてはコードしない。
【0045】
ポリペプチドをライブラリーから選択する別の方法としては、ツーハイブリッド選択や細菌ディスプレイが挙げられる。ジンクフィンガーのツーハイブリッド選択は、Jounget al.97(13):7382(2000)、に記載されている。このシステムは、Hu,J.C.,Kornacker,M.G.&Hochschild,A.(2000)Methods 20,80−94;Dove,S.L.,Joung,J.K.&Hochschild,A.(1997)Nature(London)386,627−630;並びにDove,S.L.&Hochschild,A.(1998)Genes Dev.12,745−754、に記載されるスクリーンの改変である。そのスクリーンにおいて、イーストツーハイブリッドシステムのように、lacZリポーター遺伝子の転写活性化につながる方法で相互作用する2種の融合タンパク質がある。1つのタンパク質は、別のドメイン(X)に融合されるDNA結合ドメイン(DBD)から構成される。もう1つのタンパク質は、大腸菌RNAポリメラーゼのサブユニットに融合される更なるドメイン(Y)を含む。このアレンジメントにおいて、lacZ発現の活性化には、適切なタンパク質−DNA及びタンパク質−タンパク質の相互作用が必要とされる。即ち、DBDは、プロモーターの近くに配置されるDNA結合部位(DBS)と結合しなければならず、そしてドメインXは、同時にドメインYと相互作用してプロモーターにRNAポリメラーゼを補充しなければならず、これによって転写を活性化する。このシステムの主な長所は、ほとんど全てのタンパク質−DNA(DBD−DBS)又はタンパク質−タンパク質(X−Y)の相互作用が転写活性化を媒介しなければならないということである。しかしながら、lacZはこのシステムにおけるリポーター遺伝子として使用されるので、候補を視覚的表現型によって同定しなければならない(例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルb−D−ガラクトシドプレートには青色)。従って、10〜10より大きなサイズのライブラリーをスクリーンニングするために前記システム(この形態における)を容易に用いることはできない。それを使用して大きさが10より大きいライブラリーを解析することができるようにこの上述のシステムを改善するために、Jounget al.では、前記lacZ遺伝子を選択可能なイーストHIS3遺伝子と置き換えられた。
【0046】
DNA結合性ポリペプチドは、DNA結合性タンパク質(例えば、DNA修復酵素、ポリメラーゼ、レコンビナーゼ、メチラーゼ、制限酵素、複製因子、ヒストン又はDNA結合構造タンパク質(例えば染色体骨格タンパク質))であるか、若しくはそれに由来するものであり;好ましくは、該ポリペプチドは転写因子に由来する。「由来する」は、DNA結合性ポリペプチドが、転写因子、転写因子のフラグメント、転写因子に相同の配列、或いは転写因子、転写因子のフラグメント又は転写因子に相同の開始配列から完全に又は部分的にランダム化されたポリペプチドの内の好ましくは1つ以上を含むことを意味する。最も好ましくは、DNA結合性ポリペプチドは、下記に定義される相同性算出アルゴリズムの内の1つを使用して、1つ以上の転写因子に対して少なくとも40%相同的、より好ましくは少なくとも60%相同的、更により好ましくは少なくとも75%相同的、又は更に、例えばより85%又は90%又は更に95%超相同的なポリペプチドを含む。
【0047】
DNA結合性ポリペプチドは、とりわけ、任意のタンパク質のDNA結合部分、例えばジンクフィンガー転写因子、Zif268、ATFファミリー転写因子、ATF1、ATF2、bZIPタンパク質、CHOP、NF−κB、TATA結合タンパク質(TBP)、MDM、c−jun、elk、血清反応因子(SRF)、三重複合体因子(TCP);KRUPPEL、奇数番目の体節を欠いた、偶数番目の体節を欠いた、及び他のキイロショウジョウバエ(D.melanogaster)転写因子;イースト転写因子(例えばGCN4、ガラクトース誘導性転写因子のGALファミリー);細菌性転写因子又はリプレッサー(例えばlacI)或いはそのフラグメント又は誘導体を含み得る。当業者によって、誘導体は、例えば少なくとも40%又はそれ以上の整数値の配列相同性であれば、それが由来する分子に機能的及び/又は構造的に関連があると判断されるであろう。
【0048】
DNA結合性ポリペプチドは、ランダム化されないポリペプチド、例えば天然由来のポリペプチドの「野生型」又は対立遺伝子変異体であり得、或いは相互に共有結合する天然由来のポリペプチドの非天然由来の組み合わせであり得、或いは特異的な突然変異体であり得、或いは完全又は部分的にランダム化されたポリペプチドであり得、好ましくは本明細書において記載されるようなDNA結合性タンパク質に構造的に関連し得る。
【0049】
これらのDNA結合性ポリペプチドは、バクテリオファージ粒子の表面にディスプレイされ得、そして特定の実施形態においては、部分的にランダム化されたジンクフィンガータイプの転写因子であり、好ましくはジンクフィンガータイプの転写因子に少なくとも40%の相同性(本明細書において記載されるように)を有する。
【0050】
場合によっては、配列相同性は、構造的に重要な残基、或いは進化的に保存されることが知られているか若しくは疑われる残基に関して判断され得る。かかる例においては、特定の構造的配座について変異性であるか必須ではないことが知られている残基を相同性算出からあらかじめ計算に入れることができる。例えば、本明細書において説明されるように、ジンクフィンガーは、立体的なジンクフィンガー構造の形成に重要な特定の残基を有することで知られる。これらの場合、相同性は、フィンガー構造全体を含み得る約30の残基の中の該重要なアミノ酸残基の内の約7個について認めることができる。
【0051】
本明細書で用いられる場合、相同性という用語は構造的相同性を指す。構造的相同性は、2個以上の分子の炭素原子の主鎖の主要部の構造的RMS偏差を比較して推定することができる。前記偏差が5Å以下、好ましくは3Å以下、より好ましくは1.5Å以下である場合、好ましくは、分子は構造的に相同であると考えることができる。必ずしも構造的に相同的な分子が有意な配列相同性を示すというわけではない。
【0052】
上記に記載の通り、DNA結合性ポリペプチドは、DNAを結合しない分子を除去するように核酸に対する分子の結合を判定するための当該技術分野で知られているルーチンアッセイを使用して、本発明の方法でテストされる前に事前にスクリーニングすることができる。例えば、DNA結合性ポリペプチド又はDNA結合性ポリペプチドのライブラリーを核酸に接触させ、そして結合を判定する。洗浄ステップ後に例えば蛍光を調べることによって結合を容易に判定することができるように、例えば蛍光団/蛍光色素等の検出可能な標識で核酸を標識付けすることができる。
【0053】
結合性ポリペプチドが接触する核酸は、ランダムなオリゴヌクレオチドライブラリー又は超音波破砕されたゲノムDNA等の非特異的核酸であり得る。或いは、特異的な配列又は配列の部分的にランダム化されたライブラリーを使用することができる。
【0054】
本発明は、本発明のポリペプチドをコードするDNA結合性ポリペプチド及び核酸配列を提供する。上記のように、本発明の核酸及びポリペプチドのフラグメント、突然変異体、対立遺伝子及び他の誘導体は、好ましくは該配列との実質的な相同性を有する。本明細書で用いられる場合、「相同性」は、当業者によって類似であると判定されるに十分な特徴が2つの構成要素によって共有されることを意味する。好ましくは、相同性を用いて配列同一性を指す。従って、本発明の該DNA結合性ポリペプチドの誘導体は、好ましくは該分子との実質的な配列同一性を有する。
【0055】
本発明の文脈において、相同配列は、例えば本明細書における配列表に示すように、少なくとも5、好ましくは8、10、15、20、30、40又は更にそれより多い残基または塩基について、本発明の分子(即ちその配列)と少なくとも60、70、80又は90%同一(或いはその間の任意の整数値)、好ましくは少なくとも95又は98%同一である任意の配列を含むものとする。特に、通常は、必須ではない隣接した配列よりむしろ機能的に重要であると考えることができる分子の領域を基準にして相同性を判断しなければならない。本発明の文脈において、相同性は、類似性(即ち、類似の化学的性質/官能性を有するアミノ酸残基)に関しても判断され得るが、配列同一性に関して相同性を発現することが好ましい。
【0056】
相同性比較は、目で、又はより普通には配列比較プログラムを用いて実施することができる。これらの商業的に入手可能なコンピュータプログラムは、2つ以上の配列間の相同性の割合を算出することができる。
【0057】
相同性の割合は、連続した配列について算出され得、即ちある配列は別の配列と配置され、ある配列内の各アミノ酸は一度に他の配列、即ち1つの残基内の対応するアミノ酸と直接比較される。これは、「ギャップのない」アラインメントと呼称される。通常、かかるギャップのないアラインメントは、比較的少ない数の残基(例えば50未満の連続したアミノ酸)についてのみ実施される。
【0058】
これは非常に単純且つ整合的な方法であるにもかかわらず、例えば、その他の場合の1対の同一の配列において1つの挿入又は欠失によって以下のアミノ酸残基のアライメントがずれることを考慮することができず、従ってグローバルアラインメントを実施する際に相同性の割合が大きく低下する可能性が出てくる。従って、大部分の配列比較方法は、全体的な相同性スコアを過度にペナルティを科すことなく可能な挿入及び欠失が考慮される最適なアラインメントを生じるように設計される。これは、局所的な相同性を最大にしようとするために「ギャップ」を配列アラインメント内に挿入することによって達成される。
【0059】
しかしながら、同じ数の同一のアミノ酸について、できるだけ少ない数のギャップを有する配列アラインメント(2つの比較された配列間のより高い関連性を反映する)が多くのギャップを有するものより高いスコアを達成するように、これらのより複雑な方法は、アラインメント内で生じる各ギャップに「ギャップペナルティ」を割り当てるものである。ギャップの存在について比較的高いコストを課し、ギャップ中の各配列残基についてより小さいペナルティを科する「アフィンギャップコスト(affine gap cost)」が通常は使用される。これは、最も普通に使用されるギャップスコアリングシステム(gap scoring system)である。もちろん、高いギャップペナルティは、より少ないギャップを有する最適化されたアライメントを生じる。ほとんどのアライメントプログラムは、ギャップペナルティが修飾されるのを可能にする。しかしながら、配列比較のためにそのようなソフトウェアを使用するときには、デフォルト値を用いるのが好ましい。例えば、GCGウィスコンシンベストフィットパッケージ(GCG Wisconsin Bestfit package)(以下参照)を用いる際には、アミノ酸配列についてのデフォルトギャップペナルティはギャップについて−12、かつ各伸長について−4である。
【0060】
それ故、最大の相同性の割合の計算は、まず、ギャップペナルティを考慮して、最適アライメントの生成を必要とする。そのようなアライメントを行うための適当なコンピュータプログラムは、GCGウィスコンシンベストフィットパッケージ(University of Wisconsin,U.S.A.;Devereux et al.,1984,Nucleic Acid Research 12:387)である。配列比較を行うことができる他のソフトウェアの例としては、BLASTパッケージ(Ausubel et al.,1999 ibid−Chapter 18)、FASTA(Atschul et al.,1990,J.Mol.Biol.,403−410)及び比較ツールのGENEWORKS総合ソフトウェア(GENEWORKS suite)が挙げられるが、それらに限定されることはない。BLAST及びFASTAの両方が、オフライン及びオンラインサーチのために入手可能である(Ausubel et al.,1999 ibid,7−58〜7−60参照)。しかしながら、GCGベストフィットプログラムを使用することが好ましい。
【0061】
最終的な相同性の割合は、同一性によって測定することができるが、アライメントプロセスはそれ自体、通常は、全か無かの対比較に基づかない。その代わり、化学的類似性又は進化による距離に基づく各対の比較にスコアを割り当てる、見積られた類似性スコアマトリックス(scaled similarity score matrix)を一般に使用する。一般に使用されるそのようなマトリックスの例は、BLOSUM62マトリックスであり、これは、プログラムのBLAST総合ソフトウェアのためのデフォルトマトリックスである。GCGウィスコンシンプログラムは、一般に、パブリックデフォルト値(public default value)又は、与えられるならば、カスタムシンボル比較表(custom symbol comparison table)(更なる詳細についてはユーザーマニュアル参照)を使用する。GCGパッケージについてはパブリックデフォルト値を使用することが好ましく、或いは他のソフトウェアの場合には、デフォルトマトリックス、例えばBLOSUM62を使用することが好ましい。
【0062】
ソフトウェアが最適アライメントを生じたならば、相同性の割合、好ましくは配列同一性の割合を計算することが可能である。ソフトウェアは、通常は配列比較の一部としてこれを行い、数で表した結果を生じる。
【0063】
本発明によるDNA結合性ポリペプチドとしては、任意の原子、イオン、分子、巨大分子(例えばポリペプチド)又は核酸(例えばDNA)に結合することが可能なかかる構成要素の組み合わせを挙げることができる。好都合にも、本発明に記載される分子としては、核酸結合モチーフが判明している又は疑われるポリペプチドのファミリーを挙げることができる。これらには、例えば、ジンクフィンガータンパク質(下記参照)が包含され得る。また、本発明に記載の分子としては、当業者に知られているヘリックス・ターン・ヘリックスタンパク質、ホメオドメイン、ロイシンジッパータンパク質、ヘリックス・ループ・ヘリックスタンパク質又はβシートモチーフも挙げることができる。
【0064】
本発明によれば、核酸結合分子のライブラリーを提供するために、1つ以上の既知であるか疑わしい核酸結合ポリペプチドのDNA結合モチーフを有利にランダム化することができる。
【0065】
結晶構造は、当該技術分野で知られている方法によって、核酸結合タンパク質の関連DNA結合領域を選択又は予測する際に有利に用いられ得る。
【0066】
同じ構造的ファミリーの内のタンパク質のDNA結合領域は、多くの場合保存されるか、若しくは相互に、例えばジンクフィンガーαヘリックス、ロイシンジッパー塩基性領域、ホメオドメインヘリックス3に相同である。
【0067】
例えばヘリックス・ターン・ヘリックス(HTH)ファミリー及び/又はプローブ・ヘリックス(PH)ファミリーに由来する転写因子の他のファミリー、C4亜鉛結合ファミリー(ホルモン受容体(HR)ファミリーを含む)、Gal4ファミリー、c−mybファミリー、他のジンクフィンガーファミリー、又は当業者に知られているDNA結合性タンパク質の任意の他のファミリーが、本発明の文脈において使用され得る。
【0068】
これらのファミリーの1つ以上に由来する1つ以上のポリペプチドを都合よくランダム化して本発明に用いるための分子のライブラリーを提供することができる。好ましくは、核酸結合に重要であることが知られているアミノ酸残基をランダム化することができる。しかし、DNAに接触するアミノ酸が存在する2次構造の要素の外側のアミノ酸配列に対する改変によって分子のDNA結着性に影響を及ぼし得る配座変化が引き起こされる可能性があることから、DNA結合性ポリペプチドの他の領域をランダム化することは望ましい可能性がある。
【0069】
例えば、ランダム化はジンクフィンガーポリペプチドの改変を伴うことができ、該改変はDNA又はタンパク質のレベルにおいて達成される。ジンクフィンガーポリペプチドの突然変異誘発及びスクリーニングは、任意の適切な手段によって達成され得る。好ましくは、突然変異誘発は、例えば突然変異体ポリペプチドコードしこれらを発現して種々の異なるタンパク質を得る新規な遺伝子を合成することによって、核酸レベルで実施される。或いは、所望の突然変異遺伝子を得るために、例えば部位特異的又はランダムな突然変異誘発によって既存の遺伝子自体を変異させることができる。更なる選択肢は、単一のポリペプチドにおいて、個々のジンクフィンガー等の天然由来のDNA結合ドメインのランダムなアレンジメントを生成することである。
【0070】
突然変異は、当業者に知られている任意の方法によって実施され得る。しかしながら、対象のタンパク質をコードする核酸配列の部位特異的変異誘発が好ましい。M13等の1本鎖ファージを使用する方法からPCRに基づく技法(”PCR Protocols:A guide to methods and applications”,MA.Innis,D.H.Gelfand,J.J.Sninsky,T.J.White(eds.)Academic Press,New York,(1990)参照)まで、部位特異的変異誘発のための多くの方法が当該技術分野で知られている。好ましくは、商業的に入手可能なAltered Site II Mutagenesis System(Promega)を製造業者の説明書に従って使用することができる。
【0071】
本明細書において提供されるコードによって残基の選択が得られる場合、ジンクフィンガー結合のモチーフのランダム化は、好ましくはアミノ酸残基に関する(下記参照)。例えば、好ましくは疎水性アミノ酸を回避しつつ+1位、+5位及び+8位が都合よくランダム化され;また、核酸への結合に関与する位置、特に−1位、+2位、+3位及び+6位は、好ましくは下記に関する基準によって得られる選択内でランダム化され得る。
【0072】
突然変異遺伝子によって産生されるタンパク質のスクリーニングは、遺伝子を発現させ、次いでタンパク質産物の結合能力をアッセイすることによって好ましくは実施される。これが達成され得る単純且つ都合のよい迅速な方法はファージディスプレイによるものであって、突然変異体ポリペプチドは、糸状バクテリオファージのコートタンパク質を有する融合タンパク質(例えば、バクテリオファージm13の、又はバクテリオファージFdの遺伝子IIIの微量コートタンパク質pII)として発現し、そして突然変異遺伝子で形質転換されるバクテリオファージのキャプシドにディスプレイされる。親和性精製によって、標的核酸配列をプローブとして使用して直接ファージ面のタンパク質と結合させ、そして有利な突然変異体を有するファージを選択する。次いで、所望のファージのための突然変異体プールを濃縮して最終的に好ましいクローンを単離するために、細菌性宿主における継代によってファージを増幅し、選択及び増幅の更なるラウンドに供する。ファージディスプレイのための詳細な方法は当該技術分野で知られており、例えば米国特許第5,223,409号;Choo and Klug,(1995)Current Opinions in Biotechnology 6:431−436;Smith,(1985)Science 228:1315−1317;及びMcCafferty et al.,(1990)Nature 348:552−554、に記載され、全ては参照により本明細書に組み込まれる。ファージディスプレイ用のベクターシステム及びキットは、例えばPharmaciaから商業的に入手できる。
【0073】
ジンクフィンガーポリペプチド等の特異的なペプチドリガンドは、lacリプレッサーLaclのC末端に結合するペプチドの大きなライブラリーを使用して、親和性選択によって標的に対する結合について更に選択され得る(Cull et al.,(1992)Proc Natl Acad Sci USA,89,1865−9)。大腸菌において発現する場合、リプレッサーのタンパク質は、プラスミド上のlacオペレータ配列に結合することによってコードプラスミドに物理的にリガンドを結合する。
【0074】
完全にin vitroのポリソームディスプレーシステムもまた報告されており(Mattheakis et al.,(1994)Proc Natl Acad Sci USA,91,9022−6)、新生ペプチドは、それをコードするRNAにリボソームを介して物理的に結合される。米国特許第6,733,970号も参照されたい。
【0075】
更なるin vitroの選択方法については、国際公開第98/37186号、同第2004/22746号及び英国特許第2,338,237号に記載される。
【0076】
ツーハイブリッド選択法は、国際公開第01/88197号に開示される。
【0077】
更にまた、ポリペプチドは、物理的コンパートメント、例えばin vitroの皿のウェル又は細胞下コンパートメントに分割することができ、或いは小さな流体粒子又は液滴(例えば乳剤)に分割することができ;この主題における更なる教示は、Griffiths et al.(国際公開第99/02671号参照)及びChoo et al.(国際公開第02/18648号)に見出すことができる。
【0078】
本発明に用いられるライブラリーは、選択が下記で参照される基準において得られる位置でランダム化することができる。これらの基準によって、所定の位置における所望のコドン利用に関するインフォームドチョイスを当業者が行うことが可能になる。
【0079】
PHファミリーポリペプチドの認識ヘリックスは、核酸におけるリン酸塩の結合に関与する重要な構造要素である保存されたArg/Lys残基を含む。塩基特異性は、ヘリックスのアミノ酸1、4、5及び8に起因する。これらの残基は好都合にも変化し得るものであって、アミノ酸1は、Asn、Asp、His、Val、Ileから選択されてA、C、G又はTに結合する可能性をもたらす。同様に、アミノ酸4は、Asn、Asp、His、Val、Ile、Gln、Glu、Arg、Lys、Met又はLeuから選択されてA,C,G又はTに結合する可能性をもたらす。好ましくは、(Suzuki et al.,1994:PNAS vol 91 pp12357−61)で説明される基準は、塩基特異的な方法であるにせよ、或いはリン酸塩主鎖に対する結合を介してであるにせよ、核酸を有する分子の相互作用に影響を及ぼすそれらのアミノ酸をランダム化するために使用され、それによって本発明の方法に用いるための核酸結合分子のライブラリーが得られる。
【0080】
同様に、ヘリックス・ターン・ヘリックス(HTH)ファミリーのポリペプチド分子をランダム化して分子のライブラリーを得ることができ、少なくともその幾つかは、本発明の方法で使用される際に好ましくは核酸を結合し得る。特に、アミノ酸1、2、5及び6は、HTHモチーフにおける塩基特異的な核酸結合において保存され、機能することが知られている。その結果、少なくともアミノ酸1、2、5又は6は、本発明による使用のための分子を産生するようにランダム化されることが好ましい。例えば、アミノ酸1、5及び6は、Asn、Asp、His、Val、Ile、Glu、Gln、Arg、Met、Lys又はLeuから選択することができ、そしてアミノ酸2は、Asn、Asp、His、Val、Ile、Glu、Gln、Arg、Met、Lys、Leu、Cys、Ser、Thr又はAlaから選択することができる。
【0081】
本発明の方法において好都合に使用され得る転写因子の別のファミリーは、ホルモン受容体型転写因子が包含されるC4ファミリーである。このファミリーのポリペプチドを用いて、核酸との会合がリガンドによって調節可能である核酸結合分子の選択に使用される分子を提供することができる。C4のモチーフのアミノ酸1、4、5及び9は、DNAの接触に関与することが知られており、従って好ましくはこれらの残基を改変してリガンド依存した方法でDNAを結合する複数の異なる分子が得られる。例えば、アミノ酸1及び5はAsn、Asp、His、Val、Ile、Glu、Gln、Arg、Met、Lys又はLeuから選択され、そしてアミノ酸4及び9はGln、Glu、Arg、Lys、Leu又はMetから選択される。
【0082】
DNA結合性ポリペプチドの特に好ましい例としては、当該技術分野でよく知られているように、ジンクフィンガーとして知られる結合モチーフを介して標的核酸配列と結合するCys2−His2ジンクフィンガー結合タンパク質がある。ジンクフィンガー核酸結合タンパク質における各ジンクフィンガーには、核酸結合配列において核酸の三つ組又は重なる四つ組への結合を決定する役割がある。好ましくは、各結合タンパク質には、2つ以上のジンクフィンガー、例えば2、3、4、5、6又はそれより多くのジンクフィンガーがある。
【0083】
ジンクフィンガーの一般的な構造はαヘリックスに結合するβターンを含むものであって、前記βターンは前記ヘリックスに対するアミノ末端基である。ジンクフィンガー内の4つのアミノ酸残基は、前記フィンガーの構造を安定させる亜鉛イオンを配位する。最初の2つの亜鉛配位残基(多くの場合、システイン残基)は、βターン内に位置する。その他の2つの亜鉛配位残基(多くの場合、ヒスチジン残基)は、ジンクフィンガーのαヘリックス部分内に位置する。標準的な亜鉛配位残基の内の1つが異なるアミノ酸(例えばCys3−Hisジンクフィンガー)で置換された修飾ジンクフィンガーは、国際公開第02/57293号に記載されており、本明細書に記載されるポリペプチドにおいて使用され得る。
【0084】
ジンクフィンガー結合モチーフは、当業者によく知られた構造であり、例えば、Miller et al.,(1985)EMBO J.4:1609−1614;Berg(1988)PNAS(USA)85:99−102;Lee et al.,(1989)Science 245:635−637に記載され、USSN第08/422107号に対応する国際特許出願WO96/06166号及びWO96/32475号を参照されたい(これらは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0085】
本明細書で使用される「核酸」とは、天然の核酸塩基又は合成の塩基又はそれらの混合物から構成されるRNA及びDNAの両方を指す。しかしながら、好ましくは、本発明の結合タンパク質はDNA結合性タンパク質である。
【0086】
一般に、好ましいジンクフィンガーのフレームワークは、以下の構造を有する。
【0087】
【数1】

ここで、Xは任意のアミノ酸であり、下付き添字の数はXで表される残基の可能な数を示す。
【0088】
好ましい本発明の態様において、ジンクフィンガーの核酸結合モチーフは、以下の1次構造を有するモチーフとして表される。
【0089】
【数2】

ここで、X(X、X及びXを含む)は任意のアミノ酸である。X2−4及びX2−3は、それぞれ2又は4或いは2又は3のアミノ酸の存在を指す。共に亜鉛金属原子を配位するCys残基及びHis残基は、αヘリックスの+4位のLeu残基のように、太字のテキストにおいてマークされ、通常は不変である。
【0090】
この表現に対する改変は、アミノ酸の挿入、変異又は欠失によって、必ずしもジンクフィンガーの機能を無効にすることなく生じるか若しくは生じさせることができる。例えば、第2のHis残基はCysで置換することができることが知られており(Krizek et al.,(1991)J.Am.Chem.Soc.113:4518−4523)、そして幾つかの状況では+4のLeuがArgと置換され得ることが知られている。Xの前のPhe残基は、Trp以外の任意の芳香族で置換することができる。更に、実験によって、好ましい構造からの逸脱及びジンクフィンガーに対する残基の割当が許容され、特定の核酸配列に対する結合に有益であることが更に証明され得る。しかしながら、このことを考慮に入れる場合でさえ、4つのCys残基又はHis残基と接触する亜鉛原子によって配位されるαヘリックスを含む一般的な構造は変化しない。本明細書で使用される上記の構造(A)及び(B)は、Cys2−His2タイプの全てのジンクフィンガー構造を表す例示的な構造として取り上げられる。
【0091】
好ましくは、XはF/γ−X又はP−F/γ−Xである。この文脈において、Xは任意のアミノ酸である。好ましくは、この文脈において、XはE、K、T又はSである。Q、V、A及びPは、あまり好ましくないが想定される。残留するアミノ酸は可能なままである。
【0092】
好ましくは、X2−4は、4つではなく2つのアミノ酸からなる。これらのアミノ酸で第1のものは、任意のアミノ酸であってよいが、S、E、K、T、P及びRが好ましい。好都合には、それはP又はRである。任意のアミノ酸を用いることができるが、これらのアミノ酸の第2のものは好ましくはEである。
【0093】
好ましくは、XはT又はIである。
【0094】
好ましくは、XはS又はTである。
【0095】
好ましくは、X2−3は、G−K−A、G−K−C、G−K−S又はG−K−Gである。しかしながら、例えばM−R−N又はM−Rの形態においては、好ましい残基からの逸脱が可能である。
【0096】
好ましくは、リンカーはT−G−E−K又はT−G−E−K−Pである。
【0097】
上記で述べたように、主要な結合−相互作用は、アミノ酸−1、+2、+3及び+6において生じる。アミノ酸+4及び+7は、ほとんど不変である。残留するアミノ酸は、基本的には任意のアミノ酸でもあってよい。好ましくは、+9位は、Arg又はLysが占める。好都合には、+1位、+5位及び+8位は疎水性アミノ酸でない、即ち、PheやTrpやTyrではない。
【0098】
従って、上記をまとめると、最も好ましい態様においては、所定の核酸の四つ組と特に結合するジンクフィンガー核酸結合モチーフにおけるあらゆる残基を定義することが可能である。
【0099】
本明細書において提供されるコードは全く厳密なものであるというわけではなく、ある種の選択が提供される。例えば、+1位、+5位及び+8位は、任意のアミノ酸割当を有することができるが、一方で他の位置は、ある種の選択肢を有することができ、例えば、この基準によって、中心的なT残基に対する結合のために、Ala、Ser又はValのいずれか1つを+3位で使用することができる。最も広義には、あらゆる定義された標的核酸の四つ組に結合し得る極めて大きい数のタンパク質が記載される。
【0100】
しかしながら、好ましくは、可能性の数は著しく減少してよい。例えば、重要でない残基+1、+5及び+8には、デフォルトオプションとしてそれぞれ残基Lys、Thr及びGlnが占めることができる。他の選択の場合、例えば、最初に与えられたオプションは、デフォルトとして使用され得る。従って、上記のコードによって、標的の四つ組と結合する単一の定義されたポリペプチド(「デフォルト」ポリペプチド)の設計が可能になる。
【0101】
ジンクフィンガー結合タンパク質のαヘリックスは、ジンクフィンガーのN末端からC末端の配列に対応するために1次核酸配列が3’側から5’側にかけて配置されるように核酸鎖に逆平行に並ぶ。核酸配列は、従来は5’側から3’側にかけて並びにアミノ酸配列N末端からC末端にかけて記されるため、核酸配列及びジンクフィンガータンパク質を慣行に従って並べる場合、核酸の鎖が3’側から5’側にかけて並ぶことからジンクフィンガーの1次相互反応は核酸の鎖に対して起こるという結果となる。これらの慣行は、本明細書において用いられる命名法において採用される。しかしながら、自然界においては、タンパク質GLIのフィンガー4等の特定のフィンガーは核酸の+鎖と結合するということに留意しなければならない(Suzuki et al.,(1994)NAR 22:3397−3405並びにPavletich and Pabo,(1993)Science 261:1701−1707参照)。本発明に記載のDNA結合性ポリペプチドへのかかるフィンガーの組込みが想定される。
【0102】
本発明には、以下の出版番号を有するPCT特許出願におけるジンクフィンガーポリペプチドについて記載される基準を取り込むことができる:国際公開第98/53057号、同第98/53060号、同第98/53058号及び同第98/53059号。これらの文書においては、合理的な設計によって所望の核酸配列を結合し得るジンクフィンガーポリペプチドを設計するための改良された技法が記載される。例えば国際公開第96/06166号に記載されるファージディスプレイ等の選択手順と組み合わせて、これらの技法は、実際に任意の所望の配列を確認し得るジンクフィンガーポリペプチドの産生を可能にする。
【0103】
合理的な設計によって部分的に産生されるZFPは、上記のもの等の設計基準による残基の選択によって1つ以上のアミノ酸位を決定することによって変異を低下させたライブラリーから選択されるZFPであってよい。合理的な設計で完全に産生されるZFPは、ライブラリーから選択なしに設計基準から設計される。
【0104】
上記教示に従って設計及び/又は選択されるジンクフィンガー結合モチーフは、多数のジンクフィンガーを有する核酸結合ポリペプチド分子に結合され得る。好ましくは、タンパク質は少なくとも2個のジンクフィンガーを有する。自然界において、Tramtrack等の2個のジンクフィンガーのタンパク質が知られているが、ジンクフィンガー結合タンパク質は、一般に少なくとも3個のジンクフィンガーを有する。少なくとも3個のジンクフィンガーの存在が好ましい。核酸結合タンパク質は、必要なフィンガーの端を端に、N末端をC末端に結合することによって構成される。好ましくは、これは、全ての結合タンパク質をコードする複合核酸コード配列を産生するためにジンクフィンガーをコードする関連の核酸配列を共に結合することによって生じさせる。
【0105】
「リーダー」ペプチドをN末端フィンガーに付加することができる。好ましくは、リーダーペプチドは、MAEEKPである。
【0106】
更に、リンカーを用いてジンクフィンガーモチーフを共に結合してDNA結合性ポリペプチドを作製することができ、かかるリンカーは、WO200153480号に記載されており、そして通常はGEKP、GERP、GQKP及びGQRPから選択される標準的なリンカー配列の構造を有する。より好ましくは、リンカー配列は、GGEKP、GGQKP、GGSGEKP、GGSGQKF、GGSGGSGEKP及びGGSGGSGQKPから選択される配列を含む。また、インターフィンガー(inter−finger)リンカーに関する更なる開示については、米国特許第6,479,626号及び第6,903,185号を参照されたい。
【0107】

B.エフェクター分子及び機能的ドメイン
本発明によれば、ミトコンドリアの効果を媒介するために、エフェクター分子又は機能的ドメインが好ましくはDNA結合性タンパク質に融合される。本発明のDNA結合性タンパク質は、遺伝子発現の調節のための転写調節ドメインと任意に会合し得る。DNA結合性タンパク質は、1つ以上の調節ドメイン、或いは2つ以上の調節ドメイン、即ち同じドメイン又は2つの異なるドメインの2つのコピーである2つ以上のドメインと共有結合又は非共有結合で会合し得る。調節ドメインは、例えば融合タンパク質の一部としてアミノ酸リンカーを介してDNA結合性タンパク質に共有結合することができる。DNA結合性タンパク質はまた、例えばロイシンジッパー、STATタンパク質N末端ドメイン又はFK506結合タンパク質等、非共有の二量体化ドメインを介して調節ドメインと会合することができる(例えば、O’Shea,Science 254:539(1991),Barahmand−Pour et al.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.211:121−128(1996);Klemm et al.,Annu.Rev.Immunol.16:569−592(1998);Klenim et al.,Annu.Rev.Immunol.16:569−592(1998);Ho et al.,Nature 382:822−826(1996);及びPomeranz et al.,Biochem.37:965(1998)参照)。調節ドメインは、DNA結合性タンパク質のC末端又はN末端を含む任意の適切な位置でDNA結合性タンパク質と会合することができる。
【0108】
DNA結合性タンパク質に付加するための一般的な調節ドメインとしては、例えば、転写因子(アクティベーター、リプレッサー、コアクティベーター、コリプレッサー)、サイレンサー、核ホルモン受容体、腫瘍遺伝子転写因子(例えば、myc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリーメンバー等);DNA修復酵素並びにその関連因子及び修飾子;DNA再構成酵素並びにその関連因子及び修飾因子;クロマチン関連タンパク質及びその修飾因子(例えばキナーゼ、アセチラーゼ及びデアセチラーゼ);及びDNA修飾酵素(例えばメチルトランスフェラーゼ、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ)並びにその関連因子及び修飾因子に由来するエフェクタードメインが挙げられる。
【0109】
調節ドメインを得ることができる転写因子ポリペプチドとしては、調節転写及び基底転写に関与するものが挙げられる。かかるポリペプチドとしては、転写因子、そのエフェクタードメイン、コアクティベーター、サイレンサー、核ホルモン受容体(例えば、転写に関与するタンパク質及び核酸要素の概要については、Goodrich et al.,Cell 84:825−30(1996);一般の転写因子についての概要は、Barnes&Adcock,Clin.Exp.Allergy 25 Suppl.2:46−9(1995)並びにRoeder,Methods Enzymol.273:165−71(1996)を参照)。転写因子を専門とするデータベースが知られている(例えば、Science 269:630(1995)参照)。核ホルモン受容体の転写因子は、例えばRosen et al.,J.Med Chem.38:4855−74(1995)に記載される。転写因子のC/EBPファミリーの概要は、Wedl et al.,Immunobiology 193:171−85(1995)に示される。核ホルモン受容体によって転写調節を媒介するコアクティベーター及びコリプレッサーは、例えばMeier,Eur.J.Endocrinol.134(2):158−9(1996);Kaiser et al.,Trends Biochem.Sci.21:342−5(1996);及びUtley et al.,Nature 394:498−502(1998)で概説される。血液生成の調節に関与するGATA転写因子は、例えばSimon,Nat.Genet.11:9−11(1995);Weiss et al.,Exp.Hematol.23:99−107に記載される。TATAボックス結合タンパク質(TBP)及びその関連のTAFポリペプチド(TAP30、TAF55、TAF80、TAF110、TAF150及びTAF250が包含される)は、Goodrich及びTjian、Curr.Opin.Cell Biol.6:403−9(1994)及びHurley,Curr.Opin.Struct.Biol.6:69−75(1996)に記載される。例えば、転写因子のSTATファミリーは、Barahmand−Pour et al.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.211:121−8(1996)で概説される。疾患に関与する転写因子は、Aso et al.,J.Clin.Invest.97:1561−9(1996)で概説される。
【0110】
一実施形態において、ヒトKOX−1タンパク質に由来するKRAB抑制ドメインは、転写リプレッサーとして使用される(Thiesen et al.,New Biologist 2:363−374(1990);Margolin et al.,PNAS 91:4509−4513(1994);Pengue et al.,Nuc.Acids Res.22:2908−2914(1994);Witzgall et al.,PNAS 91:4514−4518(1994);また実施例IIIも参照)。別の一実施形態において、KAP−1(KRABコリプレッサー)は、KRABと共に使用される(Friedman et al.,Genes Dev.10:2067−2078(1996))。或いは、KAP−1を単独でDNA結合性タンパク質と使用することができる。転写リプレッサーとして働く他の好ましい転写因子及び転写因子ドメインとしては、MAD(例えば、Sommer et al.,J.Biol.Chem.273:6632−6642(1998);Gupta et al.,Oncogene 16:1149−1159(1998);Queva et al.,Oncogene 16:967−977(1998);Larsson et al.,Oncogene 15:737−748(1997);Laherty et al:,Cell 89:349−356(1997);及びCultraro et al.,Mol.Cell.Biol.17:2353−2359(1997)参照);FKHR(横紋筋肉腫遺伝子内のフォークヘッド;Ginsberg et al.,Cancer Res.15:3542−3546(1998);Epstein et al.,Mol.Cell.Biol.18:4118−4130(1998));EGR−1(初期成長反応遺伝子産物−1;Yan et al.,PNAS 95:8298−8303(1998);及びLiu et al.,Cancer Gene Ther.5:3−28(1998));ets2リプレッサー因子リプレッサードメイン(ERD;Sgouras et al.,EMBO J.14:4781−4793(1995));及びMAD smSIN3相互作用ドメイン(SID;Aysr et al.,Mol.Cell.Biol.16:5772−5781(1996))、が挙げられる。
【0111】
一実施形態において、HSV VP16活性化ドメインが転写アクティベーターとして使用される(例えば、Hagmann et al.,J.Virol.71:5952−5962(1997)参照)。活性化ドメインを与え得る他の好ましい転写因子としては、VP64活性化ドメイン(Seipel et al.,EMBO J.L1:49614968(1996));核ホルモン受容体(例えば、Torchia et al.,Curr.Opin.Cell:Biol.10:373−383(1998));核因子κBのp65サブユニット(Bitko&Barik,J.Virol.72:5610−5618(1998)並びにDoyle&Hunt,Neuroreport 8:2937−2942(1997));及びEGR−1(初期成長反応遺伝子産物−1;Yan et al.,PNAS 95:8298−8303(1998);及びLiu et al.,Cancer Gene Ther.5:3−28(1998))が挙げられる。
【0112】
また、遺伝子調節に関与するポリペプチドを修飾するキナーゼ、ホスファターゼ及び他のタンパク質は、DNA結合性タンパク質のための調節ドメインとして有用である。かかる修飾因子は、例えばホルモン類によって媒介される転写のオン/オフの切換に多くの場合関与する。転写調節に関与するキナーゼは、Davis,Mol.Reprod.Dev.42:459−67(1995),Jackson et al.,Adv.Second Messenger Phosphoprotein Res.28:279−86(1993)及びBoulikas,Grit.Rev.Eukayot.Gene Expr.5:1−77(1995)に概説されるが、一方でホスファターゼは、例えばSchonthal&Semin,Cancer Biol.6:239−48(1995)に概説される。核チロシンキナーゼは、Wang,Trends Biochem.Sci.19:373−6(1994)に記載される。
【0113】
前述のように、有用なドメインはまた、腫瘍遺伝子の遺伝子産物(例えば、myc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリーメンバー)並びにその関連因子及び修飾因子から得られることができる。腫瘍遺伝子は、例えば、Cooper,Oncogenes,2nd ed.,The Jones and Bartlett Series in Biology,Boston,Mass.,Jones and Bartlett−Publishers,1995、に記載される。ets転写因子は、Waslylk et al.,Eur.J.Biochem.211:7−18(1993)及びCrepieuxet al.,Crit Rev.Oncog.5:615−38(1994)に概説される。Myc腫瘍遺伝子は、例えば、Ryanet al.,Biochem.J.314:713−21(1996)に概説される。jun及びfos転写因子は、The Fos and Jun Families of Transcription Factors,Angel&Herrlich,eds.(1994)に記載される。max腫瘍遺伝子は、Hurlin et al.,Cold Spring Harb.Symp.Quant.Biol.59:109−16に概説される。myb遺伝子ファミリーは、Kanei−Ishii et al.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.211:89−98(1996)に概説される。mosファミリーは、Yew et al.,Curr.Opin.Genet.Dev.3:19−25(1993)に概説される。
【0114】
エフェクタードメインとしては、DNA修復酵素並びにその関連因子及び修飾因子から得られる調節ドメインが挙げられる。DNA修復系は、例えば、Vos,Curr.Opin.Cell Biol.4:385−95(1992);Sancar,Ann.Rev.Genet 29:69−105(1995);Lehmann,Genet Eng.17:1−19(1995);及びWood,Ann.Rev.Biochem.65:135−67(1996)で概説される。また、DNA再構成酵素並びにその関連因子及び修飾因子は、調節ドメインとして使用され得る(例えば、Gangloff et al.,Experientia 50:261−9(1994);Sadowski,FASEB J.7:760−7(1993)参照)。
【0115】
同様に、調節ドメインは、DNA修飾酵素(例えばDNAメチルトランスフェラーゼ、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ)並びにその関連因子及び修飾因子に由来し得る。ヘリカーゼは、Matson et al.,Bioessays,16:13−22(1994)に概説され、メチルトランスフェラーゼは、Cheng,Curr.Opin.Struct.Biol.5:4−10(1995)に記載される。また、ヒストンデアセチラーゼ等のクロマチン関連タンパク質及びその修飾因子(例えばキナーゼ、アセチラーゼ及びデアセチラーゼ)(Wolffe, Science 272:371−2 (1996))は、選択のDNA結合性タンパク質に対する付加のためのドメインとして有用である。一実施形態において、調節ドメインは、転写リプレッサーとして働くDNAメチル基転移酵素である(例えば、Van den Wyngaert et al.,FEBS Lett.426:283−289(1998);Flynn et al.,J.Mol.Biol.279:101−116(1998);Okano et al.,Nucleic Acids Res.26:2536−2540(1998);並びにZardo&Caiafa,J.Biol.Chem.273:16517−16520(1998)参照)。
【0116】
別の一実施形態においては、Fok1等のIIs型エンドヌクレアーゼを機能的ドメインとして使用してDNA切断を引き起こす(例えば、国際公開第95/09233号及びPCT/US94/01201号参照)。かかる切断は、標的とされた突然変異誘発及び/又は標的とされた組換えを促進するために有用であり得る。例えば、国際公開第03/80809号、同第03/87341号、同第2004/37977号及び同第2005/14791号を参照されたい。該突然変異誘発又は標的とされた組換えが、遺伝子内で、その遺伝子を不活性化するように生じる場合、その結果は前記遺伝子の発現の抑制であり得る。
【0117】
クロマチン及びDNAの構造、運動及び局所化を制御する因子並びにその関連因子及び修飾因子;微生物(例えば、原核生物、真核生物及びウイルス)に由来する因子、及びそれらに会合又はそれらを修飾する因子はまた、キメラタンパク質を得るために用いることができる。一実施形態において、リコンビナーゼ及びインテグラーゼは、調節ドメインとして使用される。一実施形態において、ヒストンアセチルトランスフェラーゼは、転写アクティベーターとして使用される(例えば、Jin&Scotto,Mol.Cell.Biol.18:4377−4384(1998);Wolffe,Science 272:371−372(1996);Taunton et al.,Science 272:408−411(1996);及びHassig et al.,PNAS 95:3519−3524(1998)参照)。別の一実施形態においては、ヒストンデアセチラーゼが転写性リプレッサーとして使用される(例えば、Jin&Scotto,Mol.Cell.Biol.18:4377−4384(1998);Syntichaki&Thireos,J.Biol.Chem.273:24414−24419(1998);Sakaguchi et al.,Genes Dev.12:2831−2841(1998);及びMartinez et al.,J.Biol.Chem.273:23781−23785(1998)参照)。
【0118】
特定の実施形態において、エフェクター分子又は機能的ドメインは、制限エンドヌクレアーゼである。好都合には、それはIIs型制限エンドヌクレアーゼのDNA切断ドメインであり、最も好都合には、それはFokIである。ジンクフィンガー―ヌクレアーゼ融合の概要については、Durai et al.,Nucleic Acids Research 2005 33(18):5978−5990;また、Chadrasegaran and Smith,Biol Chem.1999 Jul−Aug;380(7−8):841−8を参照されたい。IIs型制限エンドヌクレアーゼは当該技術分野で知られており、Szybalski et al.,Gene.1991 Apr;100:13−26.Erratum in:Gene 1991 Dec 20;109(l):169に概説される。
【0119】

C.ミトコンドリアのターゲティングシグナル及び核外移行シグナル
ミトコンドリアターゲティングシグナル(MTS)は、当該技術分野で知られており、ミトコンドリア膜全体のパッセンジャーポリペプチドの輸送を行い、ミトコンドリア膜内のそれらの固定を促進する。通常は、MTSは、荷電性の疎水性且つヒドロキシル化されたアミノ酸残基である。MTSの例としては、ヒトチトクロームc酸化酵素サブユニットVIIIのN末端領域、ヒトATPシンターゼのサブユニットcのP1アイソフォームのN末端領域、又はアルデヒドデヒドロゲナーゼ標的配列のN末端領域が挙げられる。ミトコンドリア輸送メカニズム及びMTSは、Pfanner and Geissler,Nature Reviews Mol Cell Biol 2:339−349に概説される。ミトコンドリアにポリペプチドを送達するMTSの具体的な使用については、米国特許第2004/0072774号及びTanaka et al.,2002 J Biomed Sci 9:534−541に記載される。
【0120】
核外移行シグナル(NES)は当該技術分野で知られている。代表的なNESは、ロイシン及びイソロイシンを含む疎水性アミノ酸が豊富である。1つのエクスポートのメカニズムにおいて、ロイシンの豊富なNESは、核からのエクスポートを媒介するCRM1/exportin1と相互作用する。NESとしては、プロテインキナーゼ阻害剤(LALKLAGLDIN)、HIV−1 Rev(LQLPPLERLTLD)及びMAPキナーゼキナーゼ(LGLKLEELELE)、MVM NS2(MTKKF−GTLTI)、NMD3(LAEML−EDLHI)、An3(LDQQF−AGLDL)、IκBα(MVKEL−QEIRL)、サイクリンB1(LCQAF−SDVIL)及びTFIIIA(L−PVL−ENLTL)に由来するものが知られている。新規なNESの設計についての概要並びに教示については、Kutay and Guettinger,TRENDS in Cell Biology Vol.15 No.3 March 2005を参照されたい。
【0121】
MTS及びNESは、当該技術分野で知られている手順によってDNA結合性タンパク質と融合させることが可能であり、米国特許第2004/0072774号、Tanakaet al.,2002 J Biomed Sci 9:534−541並びにKutay and Guettinger,TRENDS in Cell Biology Vol.15 No.3 March 2005に記載される。
【0122】

D.DNA結合性タンパク質をコードする核酸ベクター
本発明によるDNA結合性タンパク質をコードする核酸は、操作及び発現用のベクター内に組み込むことができる。この文脈において、DNA結合性タンパク質は、本発明の方法に必要なNES及びMTSを含むものと理解される。ベクターを両方のクローニング目的で使用して必要な構築物を作製し、そしてミトコンドリアに対する核酸結合タンパク質の送達のために真核細胞内で構築物を発現する。
【0123】
本明細書で使用されるベクター(又はプラスミド)とは、発現又は複製のために非相同の核酸を細胞に導入するために用いられる個別の要素を指す。そのようなビヒクルの選択及び使用は十分に当業者の技術の範囲内である。多くのベクターが入手可能であり、適切なベクターの選択は、ベクターの用途、即ちそれはDNA増幅に用いられるものなのか若しくは核酸発現に用いられるものなのかかどうか、ベクターに挿入されるDNAのサイズ並びにベクターで形質転換される宿主細胞に依存する。各ベクターは、その機能(DNAの増幅又はDNAの発現)及びそれが適合する宿主細胞に依存する各種の成分を含む。前記ベクター成分としては、以下の:複製開始点、1個以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、転写終結配列及びシグナル配列の内の1つ以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
発現ベクター及びクローニングベクターの両方は、ベクターが1つ以上の選択された宿主細胞において自己複製するのを可能にする核酸配列を一般に含む。通常は、クローニングベクターにおいて、この配列は、ベクターが宿主染色体DNAとは無関係に自己複製するのを可能にするものであり、且つ複製開始点又は自己複製配列を含む。かかる配列は、種々の細菌、イースト及びウィルスについてよく知られている。プラスミドpBR322からの複製開始点は大部分のグラム陰性菌に適切であり、2μプラスミド開始点はイーストに適切であり、そして各種のウィルス開始点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス)は哺乳類細胞のクローニングベクターに有用である。一般に、哺乳動物発現ベクターが高レベルのDNA複製にコンピテントな哺乳類細胞(例えばCOS細胞)に使用されない限り、成分の複製開始点は哺乳動物発現ベクターのために必要とされない。
【0125】
大部分の発現ベクターはシャトルベクターである。即ちそれらは、生物の少なくとも1つの類において複製が可能であるが、発現のために生物の別の類にトランスフェクトすることができる。例えば、ベクターは、宿主細胞染色体とは無関係に自己複製することができない場合であっても、大腸菌内でクローン化され、次いで同じベクターがイースト、哺乳動物又は植物細胞内にトランスフェクトされる。DNAは、PCRによって増幅され得、そしていかなる複製成分も有さない宿主細胞内に直接トランスフェクトされ得る。
【0126】
好都合には、発現及びクローニングベクターは、選択可能なマーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含むことができる。この遺伝子は、選択培養培地中で増殖する形質転換された宿主細胞の生存又は増殖に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含むベクターで形質転換されない宿主細胞は、培養培地中において生存しない。代表的な選択遺伝子は、抗生物質及び他の毒素(例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート又はテトラサイクリン)に対する耐性を与えるタンパク質をコードし、栄養要求性欠乏を補完し、そして複合培地から入手不可能な重要な栄養物質を供給する。
【0127】
ベクターの複製は大腸菌内で都合よく行われることから、大腸菌の遺伝標識及び大腸菌の複製開始点が好都合に含まれる。これらは、抗生物質(例えばアンピシリン)に対する耐性を与える大腸菌複製開始点及び大腸菌遺伝標識を含むpBR322、Bluescript(登録商標)ベクター又はpUCプラスミド(例えばpUC18又はpUC19)等の大腸菌プラスミドから得ることができる。
【0128】
哺乳類細胞のための適切な選択マーカーは、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR、メトトレキセート耐性)、チミジンキナーゼ或いはG418又はハイグロマイシンに対する抵抗性を与える遺伝子等のDNA結合性タンパク質の核酸を取り上げるのにコンピテントな細胞の同定を可能にする。哺乳類の細胞形質転換体は、マーカーを取り上げて発現した形質転換体だけが生存するのに独自に適する選択圧の下で配置される。DHER又はグルタミン合成酵素(GS)マーカーの場合、選択圧は、圧力が次第に増加し、それによって選択遺伝子と、DNA結合性タンパク質をコードする結合されたDNAとの両方の増幅(その染色体組込み部位で)が引き起こされる条件下で形質転換体を培養することによってかけることができる。増幅は、増殖に重要なタンパク質の産生をより必要とする遺伝子が、所望のタンパク質をコードし得る密接に関連した遺伝子と共に組換え細胞の染色体内で一列に反復されるプロセスである。所望のタンパク質の増加量は、通常増幅されたDNAから合成される。
【0129】
発現ベクター及びクローニングベクターは、宿主生物によって認識され、そしてDNA結合性タンパク質をコードする核酸に操作可能な状態で結合されるプロモーターを通常含む。かかるプロモーターは誘導性又は構成的であってよい。プロモーターは、制限酵素での消化によって原料DNAからプロモーターを除去し、単離したプロモーター配列をベクターに挿入することによって、DNA結合性タンパク質をコードするDNAに操作可能な状態で結合される。天然のDNA結合性タンパク質のプロモーター配列及び多くの異種プロモーターの両方を使用してDNAをコードするDNA結合性タンパク質の発現を引き起こすことができる。
【0130】
哺乳類宿主のベクターからのDNA結合性タンパク質遺伝子転写は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウィルス、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス(CMV)、レトロウイルス及びシミアンウィルス40(SV40)等のウィルスのゲノムに由来する、アクチンプロモーター又は非常に強いプロモーター(例えばリボソームタンパク質プロモーター)等の異種の哺乳類のプロモーターに由来する、及び通常DNA結合性タンパク質配列に会合するプロモーターに由来するプロモーターによって制御されるが、それはかかるプロモーターが宿主細胞系と適合している場合においてである。
【0131】
高等真核生物によるDNA結合性タンパク質をコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増大させることができる。エンハンサーは、向き及び位置について比較的独立している。多くのエンハンサー配列は、哺乳類の遺伝子(例えばエラスターゼ及びグロビン)から知られている。しかしながら、通常は、真核細胞ウィルスからエンハンサーを使用する。例としては、複製開始点(bp100〜270)の後半側上SV40エンハンサー、及びCMV初期プロモーターエンハンサーが挙げられる。エンハンサーは、DNA結合性タンパク質DNAの5’側又は3’側の位置でベクター中にスプライスされ得るが、好ましくはプロモーターから5’側の部位に位置する。
【0132】
好都合には、本発明によるDNA結合性タンパク質をコードする真核生物発現ベクターは、遺伝子座制御領域(LCR)を含むことができる。LCRは宿主細胞クロマチンに組込んだ導入遺伝子の高レベルの組込み部位非依存性発現を導くことができ、それは、ベクターの染色体組込みが生じる永続的に形質転換した真核生物細胞株の文脈において、或いはトランスジェニック動物においてDNA結合性タンパク質遺伝子が発現する場合に特に重要である。
【0133】
また、真核生物ベクターは、転写の終了及びmRNAの安定化に必要な配列を含むことができる。かかる配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの5’側及び3’側の非翻訳領域から一般に入手できる。
【0134】
発現ベクターは、そのようなDNAの発現が可能なプロモーター領域等の調節配列と有効に結合する核酸を発現することが可能な任意のベクターを含む。従って、発現ベクターとは、適切な宿主細胞内への導入の際にクローン化DNAの発現をもたらす組換えDNA又はRNA構築物(例えばプラスミド、ファージ、組換えウィルス又は他のベクター)を指す。適切な発現ベクターは、当業者によく知られており、そして真核細胞及び/又は原核細胞において複製可能であるものを含み、且つエピソームのままであるか若しくは宿主細胞ゲノム内に組込まれるものを含む。例えば、DNA結合性タンパク質をコードするDNAは、例えばCMVエンハンサーに基づくベクター(例えばpEVRF等)の哺乳類細胞のcDNAの発現に適切なベクター内に挿入され得る(Matthias, et al.,(1989)NAR 17,6418)。
【0135】
本発明によるベクターの構造は、従来のライゲーション法を使用する。単離されたプラスミド又はDNA断片は、必要なプラスミドを作製するために望まれる形態で切断、調整及び再ライゲーションされる。所望により、構成されたプラスミドの正しい配列を確認するための分析を既知の方法で実施する。発現ベクターを構成し、in vitroで転写物を調製し、DNAを宿主細胞に導入し、そしてDNA結合性タンパク質の発現及び機能を評価するための分析を実施する適切な方法は、当業者に知られている。遺伝子の存在、増幅及び/又は発現は、例えば、本明細書において提供される配列に基づき得る適切に標識されたプローブを使用して、従来のサザンブロット法、mRNAの転写を数量化するためのノーザンブロット法、ドットブロット法(DNA又はRNA分析)又はin situハイブリダイゼイションによって、直接試料において測定することができる。当業者は、所望によりこれらの方法がどのように修正され得るのかについて容易に想定するであろう。
【0136】
本発明の別の一実施形態によって、上記の核酸を含む細胞が提供される。原核生物、イースト及び高等真核細胞等のかかる宿主細胞は、DNAを複製し、そしてDNA結合性タンパク質を産生するために使用することができる。本発明のベクターを含む真核生物によって、本発明によるDNA結合性タンパク質が産生され、そしてそれがミトコンドリアに運ばれる。適切な原核生物としては、真正細菌(例えば、大腸菌(例えば大腸菌K−12株、DH5α及びHB101)又は桿菌等のグラム陰性菌又はグラム陽性菌)が挙げられる。ベクターをコードするDNA結合性タンパク質に適切な更なる宿主としては、糸状菌又はイースト(例えばサッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae))等の真核微生物が挙げられる。高等真核細胞としては、植物細胞及び動物細胞(例えば昆虫や脊椎動物の細胞、特にヒト細胞、非ヒト哺乳類細胞又は他の多細胞生物に由来する有核細胞等の哺乳類細胞)が挙げられる。近年、培養(組織培養)における脊椎動物細胞の増殖はルーチンの手順となっている。有用な哺乳類宿主細胞株の例としては、上皮細胞株又は線維芽細胞株(例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、NIH 3T3細胞、HeLa細胞又は293Tの細胞)が挙げられる。この開示に関する宿主細胞は、in vitro培養における細胞並びに多細胞の宿主生物内の細胞を含む。
【0137】
DNAは、当該技術分野で知られている方法を用いて、細胞に安定して組み込むことができ、若しくは一時的に発現させることができる。安定トランスフェクト細胞は、選択可能なマーカー遺伝子を有する発現ベクターに細胞を接触させ、そしてマーカー遺伝子を発現する細胞について選択的な条件下でトランスフェクト細胞を増殖させることによって調製することができる。一時的なトランスフェクタントを調製するために、細胞をリポーター遺伝子でトランスフェクトしてトランスフェクション効率を調べることができる。
【0138】
かかる安定的又は一時的にトランスフェクトされる細胞を産生するために、DNA結合性タンパク質をコードする十分な量の核酸で前記細胞をトランスフェクトしてDNA結合性タンパク質の発現を可能にする。DNA結合性タンパク質をコードするDNAの正確な量は、実験に基づいて決定することができ、そして特定の細胞及びアッセイのために最適化することができる。
【0139】
宿主細胞は、本発明の上述の発現又はクローニングベクターでトランスフェクトされるか若しくは好ましくは形質転換され、そしてプロモーターの誘導、形質転換体の選択又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適するように修飾された従来の栄養培地中で培養される。異種DNAは、当該技術分野で知られている任意の方法(例えば、リン酸カルシウム共沈法又はエレクトロポレーションによる異種DNAをコードするベクターでのトランスフェクション)によって宿主細胞に導入されることができる。トランスフェクションの数多くの方法は当業者に知られている。異種DNAの作用の任意の徴候が宿主細胞内で生じる場合、成功したトランスフェクションが一般に認められる。形質転換は、使用される特定の宿主細胞に適切な標準的技法を使用して達成される。
【0140】
適切な発現ベクター内へのクローン化DNAの組込み、プラスミドベクター或いは1つ以上の異なる遺伝子をそれぞれコードするか又は直鎖状DNAとのプラスミドベクターの併用での真核細胞のトランスフェクション、並びにトランスフェクト細胞の選択は、当該技術分野でよく知られている(例えば、Sambrook et al.,(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press)。
【0141】
トランスフェクト又は形質転換された細胞は、当該技術分野で知られている培地及び培養方法を用いて好ましくは条件下で培養され、それによって、DNAによってコードされたDNA結合性タンパク質が発現される。適切な培地の組成物は当業者に知られており、そのためそれは容易に調製され得る。また、適切な培養培地は商業的に入手可能である。
【0142】
E.真核細胞
本発明の核酸構築物は、構築物内の、構築物によってコードされるDNA結合ペプチドを発現するために、真核細胞内に導入される。真核細胞は、例えば、動物細胞、菌類の細胞又は植物細胞であってよい。本発明の一実施形態において、真核細胞は、骨髄細胞、生殖系列細胞、分裂終了細胞(例えば中枢神経系の細胞)、前駆細胞及び幹細胞が包含される哺乳類の細胞である。特定の実施形態において、前記細胞は、ヒト細胞株に由来する細胞(例えばHeLa細胞)又は1次細胞が包含されるヒト細胞である。
【0143】
本発明の核酸構築物は、当該技術分野で知られているトランスフェクション又は形質転換の標準的方法によって真核細胞内に導入され得る。構築物が細胞内に導入され得る方法の例としては、限定されるものではないが、エレクトロポレーション、DEAEデキストラントランスフェクション、リン酸カルシウムトランスフェクション、カチオン性リポソーム融合、プロトプラスト融合、in vivoの電場の作成、DNAコーティング微粒子銃、組換え複製−欠損ウィルスの注射、相同組換え、ex vivo遺伝子治療、ウィルスベクター及び裸のDNA転移又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。遺伝子治療に適した組換えウィルスベクターとしては、レトロウイルス、レンチウイルス、HSV、アデノウイルス、アデノ関連ウィルス、セムリキ森林熱ウィルス、サイトメガロウィルス並びにワクシニアウイルス及びその誘導体(例えばMVA)等のウィルスのゲノムに由来するベクターが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0144】
従来の手順を用いて核酸構築物をin vitroで真核細胞内に導入して本発明のペプチドの細胞の発現を達成することができる。次いで、ペプチドを発現する真核細胞を哺乳類に導入して、機能性ペプチドがin vivoでミトコンドリア内に発現するような細胞を有する哺乳類を提供することができる。そのようなex vivo遺伝子治療法において、真核細胞は、哺乳類から好ましくは除去され、核酸構築物を組込むための技法に供され、次いで哺乳類に再導入される。しかしながら、真核細胞はまた、同じ種又は異なる種のいずれかの哺乳類以外の生物に由来し得る。
【0145】
F.使用
本発明は、真核細胞内のミトコンドリアに送達されるDNA結合性タンパク質を提供するものである。DNA結合性タンパク質は、一旦ミトコンドリア内に入ると、多くの活性を媒介することができる。
【0146】
従って、本発明によるDNA結合性タンパク質は、診断法や調査ツールが包含される広い種類の用途に用いられ得る。本発明によるDNA結合性ポリペプチドは、好ましくは異なる標的mtDNA分子間を分化させることができる。
【0147】
更なる一実施形態において、mtDNA標的配列についての結合アフィニティーは、W0200073434号に記載されるように、DNA結合性リガンドによって任意に調節される。本発明によるDNA結合性ポリペプチドは、ミトコンドリアの遺伝子発現の切換又は調節、並びにmtDNAの切断によるミトコンドリアの遺伝子欠損の修正に有用である。
【0148】
例えばジンクフィンガーDNA結合ドメイン及びDNA切断ドメインを含む融合ポリペプチドを使用するミトコンドリア核酸配列の特異的な切断によって、或いはジンクフィンガーに対する転写調節ドメインの融合によって、ミトコンドリア遺伝子転写の調節において本発明による標的とされるmtDNA結合ポリペプチド(例えばジンクフィンガー)を更に用いて、ジンクフィンガー結合配列を有する遺伝子からの転写を活性化又は抑制することができる。
【0149】
ミトコンドリア病の補正
本発明は、とりわけ、ミトコンドリアゲノムの修飾又はミトコンドリア遺伝子発現の調節によるミトコンドリア病の補正のための手段を提供するものである。
【0150】
「ミトコンドリア病」は、ミトコンドリアの活性又は機能の欠陥、特にmtDNAの突然変異に起因又は関連するミトコンドリアの活性又は機能の欠陥を特徴とする症状、疾患又は障害である。ミトコンドリア病の例としては、老化;AD(アルツハイマー病);ADPD(アルツハイマー病及びパーキンソン病);アミノグリコシド誘導性難聴;心筋症;CPEO(慢性進行性外眼筋麻痺);脳筋症;FBSN(家族性両側性線条体壊死);FICP(致死性小児性心筋症プラス(Fatal Infantile Cardiomyopathy Plus)、MELAS関連心筋症);LDYT(レーベル遺伝性視神経症及びジストニー);LHON(レーベル遺伝性視神経症);LIMM(致死性小児性ミトコンドリアミオパシー(Lethal Infantile Mitochondrial Myopathy));MM(ミトコンドリアミオパシー);MMC(母性ミオパシー及び心筋症(Maternal Myopathy and Cardiomyopathy));MELAS(ミトコンドリアミオパシー、脳症、乳酸アシドーシス、及び脳卒中様発作);MERRF(脳卒中様発作を伴うミオクローヌス癲癇);MERRF(ミオクローヌス癲癇及び赤色ぼろ筋線維);MILS(母性遺伝性リー症候群);ミトコンドリアミオパシー;NARP(神経性筋力低下、失調及び色素性網膜炎;この遺伝子座の別の表現型はリー病として報告される);PEO;SNE(亜急性壊死性脳症);MHCM(母性遺伝性肥大性心筋症);CPEO(慢性進行性外眼筋麻痺);KSS(キーンズ・セイアー症候群);DM(糖尿病);DMDF(糖尿病+難聴);CIPO(ミオパシー及び眼筋麻痺を伴う慢性的腸偽閉塞(Chronic Intestinal Pseudoobstruction with myopathy and Ophthalmoplegia));DEAF(母性遺伝性難聴又はアミノグリコシド誘導性難聴);PEM(進行性脳症)及びSNHL(感音難聴)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0151】
本発明の一実施形態において、ミトコンドリア病はmtDNAにおいて突然変異(例えば点変異)と関連する。本明細書で用いられる「突然変異」は、遺伝物質における永続的な伝播性(transmassible)の変異である。本明細書において更に用いられる「野生型」という用語は、天然の原料(例えば、自然集団において)において最もよく認められるような特定の遺伝子(又はその遺伝子産物)についての特徴的な遺伝子型(又は表現型)を意味する。
【0152】
in vivoにおける遺伝子発現の調節
本発明の特定の実施形態において、DNA結合性ポリペプチドは、mtDNA内の標的配列に結合し得るものであり、in vivoでのミトコンドリア遺伝子からの発現を調節するために用いられる。
【0153】
標的ミトコンドリア遺伝子は、突然変異ミトコンドリア遺伝子であって、その配列が野生型遺伝子とは異なるものである。そのような場合、ミトコンドリアDNAを、例えば切断によって破壊して、異形成の結果としての遺伝子欠損を補正することができる。DNA結合性ポリペプチドは、標的mtDNA配列を含む宿主細胞に存在する核酸構築物から通常は発現する。核酸構築物は、宿主細胞のゲノム内に任意に安定して組込まれる。
【0154】
本発明による細胞は、標的mtDNA配列、及び細胞内のDNA結合性ポリペプチドの発現を導き得る構築物を含む。
【0155】
DNA結合性ポリペプチドを発現するための適切な構築物は、当該技術分野で知られており、上記のセクションDに記載される。コード配列が構成的に発現され得るか、若しくはその発現が調節され得る。発現は、遍在性又は組織特異的であり得る。適切な調節配列は当該技術分野で知られており、それはまた上記のセクションDに記載される。従って、DNA構築物は、宿主細胞内でDNA結合性ポリペプチドの発現を導き得る調節配列に操作可能な状態で結合されるDNA結合性ポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0156】
核酸構築物を細胞内に導入するための技法は、原核生物細胞及び真核生物細胞の両方について当該技術分野で知られている。これらの技法の多くは、下記においてトランスジェニック生物の産生に関するセクション中で示される。
【0157】
ここで「多細胞生物」という用語は、ミトコンドリアを含むヒト以外のすべての多細胞植物及び動物を意味し、即ち具体的には原核生物は除外される。また、前記用語は、胚形成期及び胎児期を包含する全ての発育段階の生物個体も包含する。「トランスジェニック」多細胞生物は、組換えウィルスの微量注入又は感染による等、細胞下レベルでの意図的な遺伝子操作によって直接的又は間接的に受け取られた遺伝情報を有する細胞を含む任意の多細胞生物である。好ましくは、前記生物は、本明細書において定義されるようなDNA結合性ポリペプチドをコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列を含むことにより、トランスジェニックである。
【0158】
本文脈における「トランスジェニック」は、古典的な異種交配又は体外受精を包含せず、1個以上の細胞に組換えDNA分子が投与される生物をむしろ意味する。1つ以上のトランスジェニック生物の後続の古典的な異種交配又は体外受精によって得られるトランスジェニック生物は、「トランスジェニック」という用語の範囲内に含まれる。
【0159】
「生殖細胞系トランスジェニック生物」という用語は、遺伝情報を取り出して生殖細胞系細胞内に組み込み、その結果前記情報を後代に伝える能力を与えたトランスジェニック生物を意味する。かかる後代が、実際、その情報の一部又は全てを有する場合、それらもまた本発明の範囲内のトランスジェニック多細胞生物である。
【0160】
前記生物に導入される情報は、レシピエントが帰属する(即ち「異種の」)動物の種に対して異種であり得る、或いは特定の個体のレシピエントに対してのみ異種であり得る、或いはレシピエントによってすでに所有される遺伝情報であり得る。最後のケースにおいて、導入された遺伝子は、天然の遺伝子よりも異なって発現し得る。
【0161】
「操作可能な状態で結合された」とは、ポリヌクレオチド配列が共有結合するコード配列及び非コード配列の発現をもたらすのに必要なポリヌクレオチド配列を指す。かかる制御配列の性質は、宿主生物によって異なる。原核生物においては、かかる制御配列としては、一般にプロモーター、リボゾーム結合部位及び転写終結配列が挙げられ、真核生物においては、制御配列としては、エンハンサー、プロモーター、リボソーム結合部位、スプライス部位、転写終結配列、ポリアデニル化配列、絶縁体要素及び基質付着部位が挙げられるが、これらに限定されるものではない。「制御配列」という用語は、その存在が発現に影響し得る構成要素を少なくとも包含することが意図され、そしてまたその存在が有利な更なる構成要素、例えばリーダー配列及び融合パートナー配列を包含し得る。本発明の文脈において、必須の制御配列としてはMTS及びNESが挙げられ、他の配列が必要とされ得る。エフェクター分子を含む融合パートナーは、一般的に「DNA結合性ポリペプチド」という用語に包含される。
【0162】
核酸構成要素が宿主ゲノムに取り込まれる場合、特定のゲノムの文脈におけるポリペプチドの発現を可能にする配列を含むことが重要である。1つの可能なアプローチは、相同組換えを使用して、その発現を同等の配列と調整することが望ましい内在性遺伝子の全部又は一部を置換することであり、ここで調節領域は本発明のDNA結合性タンパク質についての結合部位を含む。このことによって、前記遺伝子は、本発明のDNA結合性タンパク質による調節以外の内在性遺伝子と同じ転写調節メカニズムの影響下にあることが保証される。或いは、相同組換えが同様の方法で用いられ得るが、また、前記遺伝子が調節の種々の形態の影響下にあるように調節配列で置換される。
【0163】
しかしながら、DNA結合性ポリペプチド又は標的DNAのいずれかをコードする構築物がゲノム内にランダムに配置される場合、その領域内のクロマチンは転写を起こさず、濃縮型形態にある可能性がある。このことが生じる場合、ポリペプチドは発現することができず、これらは位置依存性効果と称される。この課題を解決するために、転写的にコンピテントな開放的な配座において介在性のクロマチンを維持する遺伝子座制御領域(LCR)を含むことが望ましい可能性がある。LCR(スカフォールド結合領域(scaffold attachment regions (SARs))又はマトリックス結合領域(matrix attachment regions (MARs))としても知られている)は当該技術分野でよく知られており、例としてはニワトリリゾチームA要素があり(Stief et al.,1989,Nature 341:343)、それは関連する表現可能な遺伝子周辺に位置して遺伝子の全体的な発現の増大をもたらし、そして生物のゲノム内への組込みの際に位置依存性効果を低下させ得る(Stief et al.,(1989)前掲)。別の例としては、Langet al.,1991,Nucl.Acid.Res.19:5851−5856に記載されるCD2遺伝子LCRがある。
【0164】
従って、多細胞生物のゲノム内にDNA結合性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を導入するための本発明に用いられるポリヌクレオチド構築物は、コード配列の発現を導き得る調節配列に操作可能な状態で結合したDNA結合性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を通常は含む。更に、ポリヌクレオチド構築物は、組込みを促進するために宿主細胞ゲノムに相同なフランキング配列を含むことができる。別のアプローチは、宿主ゲノム(例えばレトロウイルス)に組込むことができるウィルスベクターを使用することである。
【0165】
任意には、本発明で用いられるヌクレオチド構築物は、更にフランキングLCRを含む。
【0166】
DNA結合性ポリペプチドを発現するトランスジェニック生物の作製
本発明のトランスジェニック生物は、好ましくは多細胞の真核生物、例えば動物、植物又は菌類である。動物としては、刺胞動物門、有櫛動物門、扁形動物門、線形動物門、環形動物門、軟体動物門、鋏角亜門、単枝亜門、甲殻亜門及び脊索動物門の系統の動物が挙げられる。単枝亜門としては、昆虫(例えば有翼昆虫)を包含する六脚上綱の亜門が挙げられる。脊索動物門としては、脊椎動物の群(例えば哺乳類、鳥、爬虫類及び両生類)が挙げられる。哺乳類の特定例としては、非ヒト霊長類、ネコ、イヌ、有蹄類(例えばウシ、ヤギ、ブタ、ヒツジ及びウマ)及び齧歯類(例えばマウス、ラット、スナネズミ及びハムスター)が挙げられる。
【0167】
植物としては、種子を有する植物である被子植物及び球果植物が挙げられる。被子植物としては、双子葉植物及び単子葉植物が挙げられる。双子葉植物の例としては、タバコ(ニコチアナプルムバギニフォリア(Nicotiana plumbaginifolia)及びニコチアナタバカム(Nicotiana tabacum))、アラビドプシス(シロイヌナズナ)、セイヨウアブラナ、クロガラシ、毛朝鮮朝顔、ウィキア・ナルボネンシ(Vicia narbonensis)、ソラマメ、エンドウ(エンドウマメ)、カリフラワー、カーネーション及びレンズマメ(Lens culinaris)が挙げられる。単子葉植物の例としては、穀類(例えば小麦、オオムギ、オート麦及びトウモロコシ)が挙げられる。
【0168】
トランスジェニック動物の作製
トランスジェニック動物を作製するための技法は、当該技術分野でよく知られている。この主題に関する有用な一般的テキストは、Houdebine,Transgenic animals−Generation and Use(Harwood Academic,1997)であり、魚からマウスやウシまでのトランスジェニック動物を作製するために用いられる技法の広範囲にわたる概要である。
【0169】
現在、胚顕微操作の技術の進歩は、例えば哺乳類の受精卵内に非相同のDNAを導入することを可能にする。例えば、全能性幹細胞又は多能性幹細胞は、微量注入、リン酸カルシウム媒介沈殿、リポソーム融合、レトロウイルス感染又は他の手段によって形質転換され得、次いで前記形質転換細胞は胚に導入され、次いで前記胚はトランスジェニック動物に発育する。一方法において、発育する胚は所望のDNAを含むレトロウイルスで感染させ、前記感染胚からトランスジェニック動物が作製される。別の一実施形態において、適切なDNAは、好ましくは単細胞期に胚の前核又は細胞質に同時注入され、そして成熟したトランスジェニック動物に前記胚を発育させることができる。それらの技法はよく知られている。Hogan et al.,Manipulating the Mouse Embryo,(Cold Spring Harbor Press 1986);Krimpenfort et al.,Bio/Technology 9:844(1991);Palmiter et al.,Cell,41:343(1985);Kraemer et al.,Genetic manipulation of the Mammalian Embryo,(Cold Spring Harbor Laboratory Press 1985);Hammeret et al.,Nature,315:680(1985);Wagner et al.,米国特許第5,175,385号;Krimpenfort et al.,米国特許第5,175,384号が包含される哺乳類の受精卵内への非相同のDNAの微量注入のための標準的実験法の概要を参照されたい。それらの各内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0170】
トランスジェニック動物を作製するために用いられる別の一方法は、標準的方法によって前核期の卵子内に核酸を微量注入することを含む。次いで、注入された卵子を培養し、その後偽妊娠レシピエントの卵管内に移植する。
【0171】
また、トランスジェニック動物は、Schnieke,A.E. et al.,1997,Science,278:2130及びCibelli,J.B.et al.,1998,Science,280:1256に記載されるような核移植技術によって作製することもできる。この方法を使用して、ドナー動物からの繊維芽細胞は、関連する核酸配列を組み込むプラスミドで安定してトランスフェクトされる。次いで安定したトランスフェクタントが除核卵母細胞に融合され、培養され、そして雌性のレシピエントに移植される。例えば、ミトコンドリアの遺伝子発現を調節する本発明によるDNA結合性タンパク質を発現するトランスジェニック動物を作製することができる。
【0172】
トランスジェニック配列の存在についての動物の分析は、通常は標準的方法の後にPCRかサザンブロット分析のいずれかを行うことによって実施される。
【0173】
ウシ等のトランスジェニック哺乳類の作製の具体例によって、DNA結合性ポリペプチドをコードする配列を含むヌクレオチド構築物は、例えば米国特許第4,873,191号に記載される技法を用いて、哺乳類から新しく摘出された卵巣から得られる卵母細胞内に微量注入される。卵母細胞は卵胞から吸引され、次いで沈殿させ、その後、ヘパリンで受精能を獲得し、そして可動性分画を単離するためにパーコール勾配で前分別した解凍された凍結精子で受精を行う。
【0174】
前記受精卵母細胞は、注入用前核を視覚化するために、例えば8分間、15,000gで遠心分離され、次いで卵管組織調整培地中で接合糸期から桑実期又は胚盤胞期まで培養される。この培地は、卵管からこすり落される管腔組織を用いて調製され、培養培地中で希釈される。接合子は、微量注入後2時間以内に培養培地中に配置される。
【0175】
次いで、ウシ等の予定レシピエント哺乳類においては、例えばコプロスタノールを投与することによって発情を同期化する。発情は2日以内に生じ、発情して5〜7日後に前記胚を前記レシピエントに移植する。成功した移植は、サザンブロットによって後代において評価され得る。
【0176】
或いは、所望の構築物は、胚性幹細胞(ES細胞)内に導入することが可能であり、そして前記細胞は、導入遺伝子による修飾を確実にするために培養される。次いで、修飾された細胞を胞胚期に注入し、そして胞胚を偽妊娠宿主に置換する。その結果生じる後代は、ES細胞及び宿主細胞に関するキメラであり、ES後代を含むだけの非キメラ株は、従来の交雑育種を使用して得ることが可能である。この技法は、例えば国際公開第91/10741号に記載される。
【0177】
トランスジェニック植物の作製
トランスジェニック植物を作製する技法は、当該技術分野でよく知られている。通常は、全植物、細胞又はプロトプラストのいずれも、DNA結合性ポリペプチド又は標的DNAをコードする適切な核酸構築物で形質転換することが可能である(核酸構築物の例については上記を参照)。形質転換DNA構築物を細胞内に導入する方法は多くあるが、全てが植物細胞へのDNAの送達に適切というわけではない。適切な方法としては、アグロバクテリウム感染(とりわけ、Turpen et al.,1993,J.Virol.Methods,42:227−239)或いは例えばPEG介在形質転換、エレクトロポレーション又はDNA被覆粒子の加速によるDNAの直接的な送達が挙げられる。加速方法が一般に好ましく、例えば微粒子銃が挙げられる。米国特許第5,874,265号から得られる、トランスジェニック植物(特に単子葉植物)を作製するための代表的なプロトコールは、以下に記載される。
【0178】
植物細胞に形質転換DNA部分を送達する方法の一例は、微粒子銃である。この方法では、非生物学的粒子が核酸でコーティングされ得、推進力によって細胞内に送達される。典型的な粒子としては、タングステン、金、プラチナ等を含むものが挙げられる。
【0179】
双子葉植物及び単子葉植物の両方を再現的に安定して形質転換する有効な手段であることに加えて、微粒子銃の特定の長所は、プロトプラストの単離もアグロバクテリウム感染に対する感受性も必要ないということである。加速によって植物細胞にDNAを送達する方法の例示の実施形態は、Biolistics Particle Delivery Systemであって、それを用いて、DNAでコーティングされた粒子を、懸濁液中で培養される植物細胞でカバーされるフィルタ面上に、ステンレス鋼やNytexスクリーン等のスクリーンで推進することができる。スクリーンは、タングステン−DNA粒子が大きな凝集体中のレシピエント細胞に送達されないようにタングステン−DNA粒子を分散させる。発射装置と衝突される細胞との間にスクリーンが介在しない場合、発射体は凝集し、高頻度の形質転換を達成するには大き過ぎる可能性があると考えられる。これは、大き過ぎる発射体によってレシピエント細胞に加えられる損傷に起因し得る。
【0180】
衝撃のために、懸濁液中の細胞は、好ましくはフィルター上に濃縮される。衝突される細胞を含むフィルターは、巨大粒子発射阻止プレート(macroprojectile stopping plate)より短い適切な距離で配置される。所望により、一つ以上のスクリーンはまた、銃と衝突される細胞との間に位置する。本明細書において記載される技法を用いることにより、衝突されたフィルター上にマーカー遺伝子(「病巣」)を一時的に発現する細胞の最高1000以上のクラスターを得ることができる。衝撃の48時間後の外来性の遺伝子産物を発現する病巣内の細胞の数は、多くの場合1から10個の範囲であり、平均は2〜3個である。
【0181】
上記で考察される方法のいずれかによってレシピエント細胞への外来性DNAの送達を行った後、好ましいステップは、更なる培養及び植物再生のための形質転換細胞の同定である。このステップは、直接スクリーン可能な形質について、或いは衝突された培養物を選択剤又は剤に曝露することによって培養物をアッセイすることを含む。
【0182】
スクリーン可能なマーカー形質の一例としては、トウモロコシにおけるR遺伝子座の制御下で産生される赤い色素がある。この色素は、このステージで増殖を補助することが可能な栄養培地を含む固体支持体上の細胞を培養すること、例えば18℃及び180μEm−2−1超で細胞をインキュベーションすること、及び着色されたコロニー(細胞の可視凝集体)から細胞を選択することによって検出することが可能である。これらの細胞は、懸濁液中又は固体培地中のいずれかで更に培養することが可能である。
【0183】
形質転換細胞を同定する方法の例示的な一実施形態は、選択剤(例えば代謝阻害剤、抗生物質、除草剤等)に衝突された培養物を曝露することを含む。形質転換され、且つ使用する選択剤に対する耐性を付与するマーカー遺伝子を安定して組込んだ細胞は、培養において成長及び分裂するであろう。感受性細胞は、更なる培養に適さないであろう。
【0184】
bar−ビアラホス選択的系を使用するために、フィルター上の衝突された細胞は、非選択的液体培地中で再懸濁され、培養され(例えば1〜2週間)、そして1〜3mg/Lのビアラホスを含む固形培地を覆うフィルターへ移される。1〜3mg/Lの範囲が通常は好ましいが、0.1〜50mg/Lの範囲で本発明の実施における有用性が認められることが提唱される。衝撃に用いられるフィルターの種類は、特に重要であるとは考えられないが、固体、多孔質、不活性の任意の支持体を含むことができる。
【0185】
選択剤に対する曝露を耐え抜く細胞は、植物の再生を補助する培地中で培養することが可能である。組織は、約2〜4週間ホルモン類と共に塩基性培地に維持され、次いでホルモン類なしで培地へ移される。2〜4週後、シュート生長によって、別の培地に移す時が示される。
【0186】
再生は、形質転換されたカルスからより成熟した植物への逐次的な発育段階の間にその組成物が修飾されて適切な栄養物質及びホルモンのシグナルを提供する培地の進行を通常は必要とする。発育する苗木は、例えば約85%の相対湿度、600ppmのCO及び250μEm−2−1の光で環境的に制御されたチャンバーにおいて土壌に移されて硬化する。植物は、グロースチャンバー内又は温室内のいずれかで好ましくは成熟する。再生には、通常は約3〜12週間かかる。再生中、細胞は、組織培養容器内の固体培地で成長する。かかる容器の例示の実施形態はペトリ皿である。再生する植物は、好ましくは約19℃〜28℃で成長する。再生する植物がシュート生長及び根生長のステージに達した後、それらは更なる成長及びテストのために温室に移され得る。
【0187】
ゲノムDNAをカルス細胞株及び植物から単離して、PCR及び/又はサザンブロット法等の当業者によく知られた技法を用いることにより外来性の遺伝子の存在を判定することができる。
【0188】
遺伝情報を挿入する技法が幾つか存在するが、2つの主要な原理は、遺伝情報の直接的な導入及びベクター系を用いた遺伝情報の導入である。一般的な技法の概要は、Potrykus(Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol[1991]42:205−225)及びChristou(Agro−Food−Industry Hi−Tech March/April 1994 17−27)による論文において見出すことができる。
【0189】
従って、一態様において、本発明は、本発明によるDNA結合性ポリペプチド又は標的DNAをコードする構築物を担持し、且つ生物(例えば植物)のゲノム内に構築物を導入することが可能なベクター系に関する。
【0190】
ベクター系は1つのベクターを含むことができるが、それは、少なくとも2つのベクターを含むことができる。2つのベクターの場合、そのベクトル系はバイナリーベクター系と通常呼ばれる。バイナリーベクター系は、Gynheung An et al.,(1980),Binary Vectors,Plant Molecular Bioloy Manual A3,1−19において更に詳細に記載される。
【0191】
所定のプロモーター又はヌクレオチド配列又は構築物を有する植物細胞の形質転換のための広範囲に使用される1つの系は、アグロバクテリウムツメファシエンスに由来するTiプラスミドの使用、又はアグロバクテリウムリゾゲネスに由来するRiプラスミドの使用に基づく(An et al.,(1986),Plant Physiol.81,301−305及びButcher D.N.et al.,(1980),Tissue Culture Methods for Plant Pathologists,eds.:D.S.Ingrams and J.P.Helgeson,203−208)。
【0192】
幾つかの異なるTiプラスミド及びRiプラスミドについては、上記に記載の植物又は植物細胞構築物の作製に適切なものが作製されてきた。
【0193】
ここで、例証を示すだけで非限定的な以下の実施例によって本発明を説明する。
【実施例】
【0194】
実験手順
mtDNA標的を結合するためのジンクフィンガータンパク質のエンジニアリング及び設計
mtDNAに特異的なZFPのエンジニアリング
結合ジンクフィンガーに適切な多くの可能な標的部位は、mtDNAにおいて同定されてきた。これらは、wt mtDNAのDループ領域内の部位、並びに遺伝的障害に関与する点変異(例えばNARP T8993G)を含む配列を含む。可能な結合剤は、Sangamo BioSciences Inc.によって作製された、予め選択された2フィンガーモジュールのアーカイブから集められ、Isalan et al.(Isalan,M.,Klug,A.&Choo,Y.Nat Biotechnol 19,656−60(2001))に記載のZif268ランダム化ライブラリーに基づいた。DNA結合ドメインは、2×2設計の3フィンガー又は4フィンガーのタンパク質として設計され、選択的にそれらの標的配列を結合する能力についてテストされた。更に、非結合3フィンガータンパク質ZFP−cont及び非ミトコンドリア特異性を有する6フィンガータンパク質(Papworth,M.et al.Proc Natl Acad Sci USA 100,1621−6(2003))を対照として使用した。
【0195】
MTS−ZFPのための発現ベクターの作製
MTS−ジンクフィンガー融合タンパク質(MTS−ZFP)を作製するため、設計されたジンクフィンガーをコードするDNAは、PCRによって修飾されてc−myc(EQKLISEEDL)又はHA(YPYDVPDYA)エピトープ標識をZFPのC末端に導入し、そして固有のXhoI(5’)及びEcoRI(3’)制限部位でフランクされた。これらは、以下のN末端MTS配列の内の1つをコードする固有のXbaI(5’)及びXhoI(3’)制限部位でフランクされたPCR増幅DNA断片で結合された:(i)ヒトチトクロームc酸化酵素(C8)のサブユニットVIIIに由来する33アミノ酸(aa)プレ配列、(ii)ヒトATPシンターゼF1βサブユニット(F)に由来する51aaプレ配列、(iii)コナミドリムシATPシンターゼサブユニット6(R)に由来する109aaプレ配列、(iv)トリパノソーマブルース(T1)に由来するタンパク質MP42の54aaプレ配列、(v)トリパノソーマブルース(T2)に由来するタンパク質MP63の59aaプレ配列、及び(vi)Leishmania tarentolae(T3)に由来するタンパク質7bの64aaプレ配列(これはMTS及び更なるN末端配列を含む)。全てのMTS−ZFP構築物は、XbaI(5’)−EcoRI(3’)フラグメントとしてpcDNA3.1(−)(Invitrogen)内に挿入され、そしてそれらの配列を確認した。
【0196】
更にクローン30について、BamHI部位が配置されたATPシンターゼのF1βサブユニットに対するヒトmRNAに由来する3’側UTRに対応するPCR増幅フラグメントをF−ZNF30のBamHI部位内に挿入することによって、プラスミドF−ZFP30−3’UTRを作製した。
【0197】
更なるC末端のドメインを有するMTS−ZFPの作製
プラスミドのC8−ZFP−GFP系列を作製するために、pEGFP−N2ベクター(Clontech)のBglI及びEcoRI部位内にフランクで付加され且つC末端GFPタンパク質を有するフレーム内でクローン化される固有のBglII(5’側)及びEcoRI(3’側)部位を有するC8−ZFP鋳型から、C8MTS−ジンクフィンガー及びエピトープ標識融合物をコードするDNA断片をPCR増幅した。
【0198】
XbaI制限部位を含む5’側F特異的プライマーと、末端の3’側で付加されたMVM(VDEMTKKFGTLTIHDTEK)及びBamHI部位のNS2タンパク質に由来するNES配列を更に含む3’エピトープ標識特異的プライマーとを使用して、F−ZFP鋳型からF MTSジンクフィンガータンパク質及びエピトープ標識をコードするDNA断片をPCR増幅することによって、プラスミドのF−ZFP−NES系列を作製した。その結果生じるF−ZFP−NES XbaI−BamHIフラグメントをpcDNA3.1(−)(Invitrogen)のXbaI及びBamHI部位内にクローン化し、そしてそれらの配列を確認した。
【0199】
その後、トランスフェクトされたクローンのピューロマイシン選択を可能にするpIRESpuro3ベクター(Clontech)(F−ZFP−NES−puro)において、選択されたF−ZFP−NESクローンも発現させた。鋳型としてのpmaxGFP(Amaxa,GmbH)及びXhoIフランク特異的プライマーを使用し、そしてその結果生じる産物をpcDNA3.1(−)主鎖内のF−ZFP−NESのXhoI部位内に挿入して、Potellina種に由来するGFPをコードするDNA断片をPCR増幅することによって、前記F−GFP−ZFP−NESを作製した。構築物のこの系列を更に使用して、F−GFP−ZFP−NES内のNESから上流のEcoRI部位内に、17aaの長い可撓性リンカー([SGGGG]3SS)をコードするEcoRIフランクPCRフラグメント及びhDNMT3a触媒ドメイン(残基592〜909)を挿入することによって、F−GFP−ZFP−meth−NESを設計した。
【0200】
より長期間キメラメチラーゼの発現を促進し、トランスフェクトされた集団においてメチラーゼ陽性細胞を富化するために、F−ZEP−NES−puro(図3A)のEcoRI部位内に、リンカー(上記参照)及びEcoRI部位によってフランクされたhDNMT3aの触媒ドメインについてコードするPCR増幅領域を挿入することによって、pIRESpuro3においてF−ZFP−meth−NES発現カセットを作製した。ZFPドメイン(F−meth−NES)が欠けている類似の構築物を対照として設計した(図3A)。
【0201】
ゲルリターデイションアッセイ
3−フィンガーペプチドZFPNARP及びZFPcont並びにそれらの誘導体をin vitroで合成し、既に述べた方法を用いてゲルリターデイションアッセイに供した(Moore,M.,Klug,A.&Choo,Y.Proc Natl Acad Sci USA 98,1437−41(2001))。ZFPNARPは、37bpプローブに組み込まれたNARP変異(T8993G)を含むその完全長標的部位に対して、並びにNARP−C変異(T8993C)及びwt配列を含んだ結合部位において1bp置換を有する密接に関連した部位に対してテストされた。また、適切なDNA配列に対するジンクフィンガータンパク質の結合も、更なるドメイン(例えばN末端MTS FやC末端メチラーゼドメイン)及びNESの存在下でテストされた。
【0202】
また、ミトコンドリアに標的化されたF−ZFPNARPを一時的に発現する細胞からのミトコンドリア抽出物についても、ゲルリターデイションアッセイを実施した。この場合、トランスフェクションの24時間後、細胞を収集し、そして無損傷のミトコンドリアを下記のように単離した(「細胞分画」参照)。その後、音波処理によってミトコンドリアタンパク質を可溶化し、ミトコンドリア抽出物(約2〜2.5μgのタンパク質)が、上記のような特異的DNA標的についてのin vitroでのゲルリターデイションアッセイに用いられた。
【0203】
哺乳類の細胞株のトランスフェクション
哺乳類細胞のトランスフェクションの全ては、Cell Line Nucleofector(Amaxa biosystems)、バッファーキットV(Amaxa biosystems)及びQiafilter MidiPrep Kit(Qiagen)によって精製されたプラスミドDNAを用いて実施された。COS−7細胞については、プログラムA−24が製造業者によって推奨されるように用いられ、一方で細胞株143B(TK−)及び143Bについては、NARPサイブリッドプログラムI−13が実験的に最適になるように決定された。免疫検出研究のために、ジンクフィンガー構築物を一時的な系において24〜36時間発現させた。一方でメチル化の研究については、トランスフェクションの12時間後に培養培地に添加された0.5μg/mLのピューロマイシンを有するpIRESpuro3ベクター(Clontech)を使用して、hDNMT3aの触媒ドメインを含むタンパク質を60時間発現させた。
【0204】
一時的に発現させたジンクフィンガータンパク質の免疫検出
一時的に発現されたジンクフィンガータンパク質は、免疫蛍光法又は免疫ブロット法のいずれかによって解析された。免疫蛍光法のために意図された付着細胞をカバーグラス上で成長させ、そして必要であれば、ミトコンドリアを視覚化するために、培養培地に添加されたMitotracker CMXRed(Molecular Probes)で30分間染色した。次いで細胞をPBSで洗浄し、そして4%ホルムアルデヒド/PBSで直接カバーガラス上に固定した。1%TrironX−100での透過化処理及びPBSにおける洗浄の後、1:100の希釈度で使用されるエピトープ標識に対する抗体(HA標識(Roche)に対するマウスモノクローナル抗体12CA5又はc−myc(Santa Cruz)に対するマウス9E10モノクローナル抗体)を用いて、ジンクフィンガータンパク質を視覚化した。その後、1:100の希釈度で使用されるFITC(ベクター)に結合する2次抗体抗マウスIgGでインキュベーションを行った。TFAM及びmtSSBを有するZFP構築物の共局在研究については、Mitotracker染色ステップを省略した。固定細胞をTFAM又はmtSSB抗血清でインキュベートし、その後テキサスRedと結合した二次抗体で行った。次いでBioRadコンフォーカル顕微鏡を使用して免疫蛍光法について検討した。免疫ブロット分析について、ニトロセルロース膜へ移され、特異的抗体でブロットされるSDS−PAGEに、全体の細胞溶解液又はタンパク質分画(下記参照)に対応する等量のタンパク質が供される。ブロットは、HRP結合2次抗体で更にインキュベートされ、ECL(Amersham)を使用して視覚化された。
【0205】
mtDNAの標識化
BrdUを使用する143B(TK−)wt又はT8993Gサイブリッド細胞におけるmtDNAの代謝標識化は、Garrido et al.(Garrido,N.et al.Mol Biol Cell 14,1583−96(2003))に従って、以下の改変を行って実施された。15μMの終濃度でのトランスフェクションの12時間後にBrdUを添加し、細胞を18〜24時間インキュベートした。固定化、透過化処理(上記参照)及び脱水/再水和ステップの後、DNAは、2MのHClで10分間変性され、次いでPBS及びddHOで大量に洗浄された。mAb抗BrdU(Roche)及びTexas Redに結合した2次抗マウス抗体を使用して、組み込まれたBrdUを検出した。
【0206】
細胞分画
Minczuk et al(Minczuk,M.et al.Nucleicr Acids Res 30,5074−86(2002))に記載されるように、143B wt又はT8993Gサイブリッド細胞に由来するミトコンドリアを単離した。次いで、図3Bに示す濃度でプロテイナーゼKで補充された1×IB緩衝液(40mMのトリス−HCl、pH7.4、25mMのNaCl及び5mMのMgCl)中でミトコンドリアの分画をインキュベートした。ZFPタンパク質構築物を検出するために、タンパク含有量について正規化される細胞成分分画を抗HA−mAbで解析した。また、前記分画を確認するために、マーカータンパク質(抗TFAM血清及び抗GAPDH mAb(Abcam))に対する抗体を使用するブロット法を実施した。
【0207】
シトシンのメチル化の検出
シトシンのメチル化の研究のための全体の細胞DNAサンプルは、DNeasy Tissue Kit(Qiagen)を使用して単離され、そしてEZ DNA Methylation Kit(Zymo Research)を使用して製造業者の説明書に従って重亜硫酸塩変換に供された。その結果生じるDNAは、重亜硫酸塩変換mtDNAのH鎖に特異的なプライマーを使用するmtDNAフラグメントのPCR増幅のための鋳型として用いられた。その結果生じるPCR産物は、TOPO−TA Cloning Kit for Sequencing(Invitrogen)を用いてクローン化され、そしてそれらの配列が解析された。
【0208】
実施例1
ミトコンドリアにZFPを送達するための戦略
ジンクフィンガーは、大部分が核内で働くために進化的に適応したDNA結合性タンパク質である。核局在化シグナル(NLS)が存在しない場合でさえ、それらは多くの場合核内に局在する(Papworth,M.,Kolasinska,P.&Minczuk,M.Gene in press(2005))。mtDNAを操作するデザイナーZFPを使用するために、それらは、ミトコンドリアに効果的に標的とされなければならないと同時に、毒性であり得る核DNAへの結合を回避するために核に不在でなければならない(具体例は、Papworm et al.Proc Natl Acad Sci USA 100,1621−6(2003)に考察される)。大部分のミトコンドリアのタンパク質は、核内遺伝子によってコードされ、切断可能なN末端ミトコンドリアのターゲティング配列(MTS)によって細胞質から取り込まれる。MTSは、長さ及び組成が大きく異なり、種々のタンパク質に合わせて個別に調整されると思われる(Pfanner,N.&Geissler,A.Nat Rev Mol Cell Biol 2,339−49(2001))。N末端にMTSを融合することによって、ミトコンドリアに各種の外来性のタンパク質を送達することが可能になる。
【0209】
ミトコンドリアへのZFP送達を発現及び最適化させるために、2フィンガーユニットの対を融合することによって設計された4フィンガーZFPのライブラリー(Moore,M.,Klug,A.&Choo,Y.Proc Natl Acad Sci USA. 98,1437−41(2001))を、天然のミトコンドリアタンパク質に由来するMTSによってミトコンドリアに入るその能力についてテストした(表1)。使用されたジンクフィンガーペプチドは、DNA接触ヘリックス中に含まれるアミノ酸において大部分が互いに密接に関連及び相違する(表1)(完全な配列については、図5を参照)。種々のMTSとのジンクフィンガー融合及び更なるC末端のGFPの有無における細胞内局在化の研究によって、核のみ、各種の比率でのミトコンドリア及び核、及びミトコンドリアのみを含むZFP(表1)について可能な細胞内の送達先の範囲が明らかにされた。多様な局在化において同一のパターンが、3フィンガータンパク質のファミリーについて認められた(データは示されない)。MTS−ZFP融合へのC末端GFPの付加によってミトコンドリアの取り込みが抑制され、MTSに結合した6フィンガーZFPが全く取り込まれなかった(データは示されない)。これによって、ZFPのミトコンドリアの取り込みにおいてサイズの制限がある可能性が示唆された。取り込みに関する非常に密接に関連したZFPとサイズ制限との間の局在化パターンの多様性は、ミトコンドリアにZFP及びその誘導体を導くという我々の目的にとって予期しない最初の妨げであった。それ故、我々の第1の課題は、ミトコンドリアにZFPを輸送するための一般的なシステムを開発することであった。
【0210】
このことを検討するために、我々は、ZFPクローン30(ZFP30)を、ミトコンドリアへの取り込みが最も困難であるという理由でケーススタディとして選択した(表1参照)。我々は、ミトコンドリアの取り込みを促進することが知られているATPシンターゼのF1βサブユニットについて、ジンクフィンガーモチーフを含む内在性ミトコンドリアタンパク質に由来するMTS並びにヒトmRNAに由来する3’UTRを含むZFP30との融合において幾つかのMTSをテストした(Izquierdo,J.M.&Cuezva,J.M.Biochem J 346 Pt 3,849−55(2000))(図1A)。全てのこれらの融合タンパク質は核内に局所化した。ヒトミトコンドリアATPシンターゼ(Fで示される)のF1βサブユニットに由来するMTSを使用した際、ミトコンドリアの局在化が稀に認められた(図1A、矢印7)。
【0211】
大部分は、核局在化及び細胞質に由来する全てのMTS−ZFP30融合の欠如によって(図1A)、フィンガー2及びフィンガー4のDNA認識ヘリックス内の塩基性アミノ酸の1群が介在する可能性のある非常に効率的な核ターゲティングが示唆される(表1及び図5参照)。ZFPの核内移行を防止するために、我々は、核外移行シグナル(NES)が、核内の新生ポリペプチドの隔離を阻止すること、又は再び外部へルート変更することのいずれかによってミトコンドリアの取り込みを促進し、従ってそれによってミトコンドリアによる取り込みの時間が与えられる可能性があると仮定した。このことをテストするために、我々は、ヒトミトコンドリアのATPシンターゼ(F)のF1βサブユニットに由来するMTS及びマウスの微小ウィルスの非構造タンパク質2に由来するNESにZFP30を融合させ(Eichwald,V.,Daeffler,L.,Klein,M.,Rommelaere,J.&Salome,N.J Virol 76,10307−19(2002))、F−ZFP30−NESタンパク質を産生した。
【0212】
F−ZFP30−NES融合の免疫蛍光検査研究によって、それはミトコンドリアに効率的に標的化され、そして核に存在しないことが示された(図1B)。対照実験において、ZFP30及びNESを含んでなるがMTSを含まない融合タンパク質が核内に更に認められたが、このことは、単独ではミトコンドリアの取り込みシグナルとして機能し得ないNESを示す(データは示されない)。更なるドメインを融合することでF−ZFPNESタンパク質のサイズを更に増大させることは、効果的なミトコンドリアの取り込みにつながった(図1B)。それ故、N末端F MTSと共にNESを使用することによって、ZFP融合タンパク質の範囲の効果的なミトコンドリア取り込みが促進された。このアプローチは、他のZFP及びその誘導体によって機能し(表2)、3及び6フィンガーZFPについて効果的であった(データは示されない)。ZFPに融合された大きな外来性のドメインから構成されるミトコンドリアタンパク質に送達するこの能力は、特異的mtDNA配列に標的化されるキメラ酵素を作製する可能性をもたらした。
【0213】
【表1】

表1 ミトコンドリアに標的化されたZFPの多様な局在化パターン
Zif268の主鎖に作製された4フィンガー(F1、F2、F3及びF4)を含むジンクフィンガーペプチド(ZFP)のファミリーを選択してmtDNAの配列を結合させた。連続した12bp結合部位(リンカーなしでクローンによって結合)、又は12bp結合部位の中に1bpギャップを含む非連続の部位(F2とF3との間にGGGリンカーを含むクローンによって結合)のいずれかがある。連続したフィンガーのDNA接触ヘリックスのアミノ酸配列(αヘリックスの先頭に対してアミノ酸位が−1〜6)は、ボールド体(ZFP配列)で、直接DNAと接触するアミノ酸と共に各クローンについて示される。ヒトATPアーゼ(Fで示される)のF1βサブユニット又はヒトチトクロームc酸化酵素(C8)のサブユニットVIIIのN末端ミトコンドリアターゲティング配列をZFPに融合し、免疫蛍光法によって更なるC末端GFP(必要な場合、C8−ZFP−GFP)の有無についてそれらの細胞内局在化を解析した。クローンは、核(N)のみ、ミトコンドリアのみ(M)並びに大部分はミトコンドリア(M/N)又は大部分は核(N/M)のいずれかの同一の細胞内のミトコンドリアと核との混合を含む細胞内局在化の各種のパターンを示した。
【0214】
バックグランドの細胞質内局在化は、ほとんど認められず、それ故にこれらの研究において省略された。同一のライブラリーに由来し、DNA接触ヘリックスの外側の同一のアミノ酸配列を含むZFPは、共に表の上下の部分にグループ分けされる。更なる研究のために使用するクローン30は網掛けされる。ZFPの多様な細胞内局在化の類似パターンが、COS−7又は143Bのいずれかにおいて認められた。
【0215】
【表2】

表2 核外移行シグナル及び外来性ドメインに融合されたミトコンドリアに標的化されたZFPの局在化
MTS F(表1に示されるZFPクローン番号及び配列)を含む多くのZFPタンパク質は、C末端NESに融合され、そして更なるドメイン(GFP(F−GFP−ZFP−NES)、hDNMT3aメチラーゼ(F−ZFP−meth−NES)の触媒ドメイン或いはGFP及びhDNMT3a(F−GFP−ZFP−meth−NES)の触媒ドメインの両方が包含される)に結合する際にミトコンドリアに入るその能力についてテストされた。個々のクローンの細胞内局在化は、免疫蛍光法を用いて評価され、タンパク質がミトコンドリア内にのみ位置する場合はミトコンドリア(M)と記載され、ミトコンドリアに選好性を有する両コンパートメント内にタンパク質が認められる場合はミトコンドリア−核(M/N)と記載された。COS−7と143Bのいずれにおいても同じ結果が得られた。
【0216】
実施例2
特定のmtDNA配列を結合するミトコンドリア標的化ZFPの作製
次のステップは、特定のmtDNA配列に選択的に結合するZFPを作製することであった。このために、我々は、mtDNA内の9bp配列GCCCGGGCCを結合するように設計された、ミトコンドリアに標的化された3フィンガータンパク質F−ZFPNARPを作製した(図2A)。太字のGは、mtDNA内の8993位にあり、ミトコンドリア病(神経原性筋力低下、失調及び色素性網膜炎(NARP)並びに母性遺伝性リー症候群(MILS))の原因となる突然変異を示す。野生型(wt)配列は、この位置にTを有する。ゲルリターデイションアッセイ(図2B)によって評価されるように、in vitroにおけるFZFPNARPは、具体的にはGCCCGGGCCを含むオリゴヌクレオチドを結合した。それに対して、GCCCTGGCC(wt)かGCCCCGGCCのいずれかを含むオリゴヌクレオチドは、F−ZFPNARPによって結合されなかった(図2B)。更に、ZFPのin vitroにおける結合の研究によって、NESの付加はDNA結合に影響を及ぼさなかったことが示された(データは示されない)。FZFPNARPとしての同一サイズの対照(F−ZFPcont)は、テストされた3つのDNA配列のいずれとも結合せず(図2B)、それ故にミトコンドリアに対してZFPを標的とする任意の非配列特異的効果についての対照として更に使用することが可能であった。それ故、F−ZFPNARPは、T8993G変異を含む配列と非常に特異的に結合するが、単一のbpによって異なるwt mtDNAには結合しない。
【0217】
外来性のZFPがミトコンドリア内に亜鉛を組み込み、正確に折りたたまれるのかどうかについては不明であった。これは、F−ZFPNARPを発現する細胞に由来するミトコンドリアの抽出物を用いてin vitroの結合の研究において扱われた(図20)。これらの実験によって、これらの細胞に由来するミトコンドリアが、in vitroで発現されたF−ZFPNARPと同じようにしてGCCCGGGCCを結合したDNA結合活性を含んだことが示された。これは非特異的DNA結合に起因したものではなかったが、それは、F−ZFPcontを発現する細胞に由来するミトコンドリアの抽出物がこれらのDNAオリゴマーを阻害しなかったためであった(データは示されない)。それ故、ZFPは、標的DNA配列の選択的な結合が可能な活性化状態のままの細胞内でミトコンドリアに送達することが可能である。
【0218】
実施例3
特定のmtDNA配列に対するキメラZFP−メチラーゼの標的化
次のステップは、F−ZFPNAKPが、選択的に突然変異体GCCCGGGCC mtDNA配列に活性を修飾するDNAを導くことができるかどうかについて検討することであった。DNA修飾活性として、我々は、ヒトDNMT3a DNAメチルトランスフェラーゼの触媒ドメインを選択した。この酵素は、基質としてS−アデノシルメチオニン(SAM)を使用して5−メチルシトシン(m5C)に対するCpG部位において主にシトシンをメチル化する。Zif268に由来するZFP及び触媒DNAメチルトランスフェラーゼドメインを含むキメラタンパク質は、in vitro(Xu,G.L.&Bestor,T.H.Nat Genet 17,376−8(1997);McNamara,A.R.,Hurd,P.J.,Smith,A.E.&Ford,K.G.Nucleic Acids Res 30,3818−30(2002))及びin vivo(Carvin,C.D.,Parr,R.D.&Kladde,M.P.Nucleic Acids Res 31,6493−501(2003))において配列特異的DNAメチル化に触媒作用を及ぼすことが既に示されている。ヒトmtDNAにおける内在性のシトシンのメチル化は極めて限定的であるが(Shmookler Reis,R.J.&Goldstein,S.J Biol Chem 258,9078−85(1983);Maekawa,M.et al.Clin Chem 50,1480−1(2004))、SAMはミトコンドリアの中に存在する(Agrimi,G.et al.Biochem J 379,183−90(2004))。メチラーゼを使用することの主要な長所は、その活性が配列特異的な5Cメチル化の程度によって容易に評価され得るということにある(Frommer,M.et al.Proc Natl Acad Sci USA 89,1827−31(1992))。
【0219】
可撓性リンカー及びC末端NESを使用してヒトDNMT3a(meth)のメチラーゼドメインにF−ZFPNAKP構築物を融合してF−ZFPNARP−meth−NESを得た(図3A)。F−ZFPNARP−meth−NESがヒト細胞において発現される場合、MTS Fは、従来のミトコンドリアの取り込み経路による取り込みと一致する成熟タンパク質から切断されることが明らかになった。単離されたミトコンドリアがプロテイナーゼKでインキュベートされた場合、FZFPNARP−meth−NESの成熟形態は、ミトコンドリアの基質タンパク質mtTFAMと同程度にタンパク質分解が保護され(Kang,D.&Hamasaki,N.Ann N Y Acad Sci 1042,101−8(2005))、一方でGAPDH(ミトコンドリア外膜に結合したタンパク質)(Hartmann,C.M.,Gehring,H.&Christen,P.Eur J Biochem 218,905−10(1993);Taylor,S.W.et al.Nat Biotechnol 21,281−6(2003))が分解された(図3B)。更なる免疫蛍光法実験によって、F−ZFPNARP−meth−NESは、ミトコンドリアのヌクレオイドに認められた常在性のタンパク質に特有の点状のパターン(図3C、1〜3)におけるミトコンドリアの中でMitoTracer Redと共局在したことが示された(Garrido,N.et al.Mol Biol Cell 14,1583−96(2003))。ヌクレオイドにおけるその局在化は、その分布を、ヌクレオイドの一部であることが知られているミトコンドリアの転写因子、mtTFAM(図3C、4〜6)及び更にミトコンドリアの単鎖DNA結合性タンパク質mtSSB(図示せず)と比較することによって確認された(Garrido,N.et al.Mol Biol Cell 14,1583−96(2003))。最終的な確認は、F−ZFPNARP−meth−NESが、BrdU(図30、7〜9)又はPicoGreen(図6参照)に標識されたmtDNA自体と共局在したことを示すことから得られた。それ故、F−ZFPNARP−meth−NESは、細胞の中でミトコンドリアによって取り上げられ、基質内のmtDNAに局所化する。
【0220】
実施例4
キメラZFPメチラーゼによるmtDNAの配列特異的in vivoメチル化
最終の目的は、F−ZFPNARP−meth−NESが、標的とされたGCCCGGGCC配列に隣接したCpG部位においてシトシンの5Cメチル化を選択的に増加させたかどうかを判定することである。F−ZFPNARP−meth−NES構築物は、mtDNAにおいて8993位でGを含むNARP細胞において発現され、そして更にこの位置でTを有するwt細胞で発現された。F−ZFPNARP−meth−NESによるmtDNAメチル化の配列特異性を評価するために、我々は重亜硫酸塩法を使用した(Frommer, M.et al.Proc Natl Acad Sci USA 89,1827−31(1992))。この技法は、m5Cを変化させずに残しつつDNAを重亜硫酸塩で処理して全てのシトシンをウラシルに変換することからなる。F−ZFPNARP−meth−NES又は対照構築物(図4)でトランスフェクトされたwt又はNARP細胞のいずれかに由来する全体のDNAが抽出され、次いで目的のGCCCGGGCC配列を含む重亜硫酸塩変換mtDNA H鎖の120bpフラグメントがPCRによって増幅され、クローン化された。2つの独立した実験からの統計学的に有意な数のクローンが構築物ごとにランダムに選択され、シーケンスされ、そして対照配列と比較して、どのシトシンがメチル化されたのかを示した(図7及び8参照)。GCCCGGGCC配列を囲むCpGジヌクレオチドのメチル化は、F−ZFPNARP−meth−NESを発現するNARP細胞に由来するクローンの23%に認められた(図4、右)。それに対して、F−ZFPNARP−meth−NESを発現するwt細胞において、類似の領域におけるCpGメチル化の程度は約6倍低く、CpGメチル化の背景レベルと区別がつかなかった。同様に、F−ZFPcont−meth−NESがNARP細胞において発現された場合、解析された領域においてCpGメチル化の約6倍低かった。ZFPのないミトコンドリアに標的化されたメチラーゼドメイン、F−meth−NES(図3A参照)は、NARP細胞において発現され、更にF−ZFPNARP−meth−NESよりもCpGメチル化レベルのはるかな低下(2.6倍)を引き起こした。更に、F−meth−NES対照は、全ての解析された領域の全体にわたって広がったメチル化されたGpG部位を示した(図4、左)。F−meth−NESと比較した、wt細胞において発現したF−ZFPcontmeth−NES又はF−ZFPNARP−meth−NESについて認められたメチル化レベルの低下は、既に報告されたようにZFPに対する融合によるメチルトランスフェラーゼDNAの親和性の低下に起因する可能性があった(Xu,G.L.&Bestor,T.H.Nat Genet 17,376−8(1997))。これらの対照によって、F−ZFPNARP−meth−NESの発現におけるGCCCGGGCC配列の周辺のCpGメチル化の増加は、ミトコンドリアにおけるメチラーゼの存在の単純な結果ではなかったことが示される。更にまた、CpGメチル化の増加は、GCCCGGGCC配列へのF−ZFPNARP−meth−NESの配列特異的結合の結果であるが、それは、この部位(領域380〜570及び13500〜13650)から非常に離れたmtDNAの他の領域におけるCpGメチル化の増加が認められなかったためであった。
【0221】
GCCCGGGCCから下流に3bpのCpG部位についてF−ZFPNARP−meth−NES介在メチル化(クローンの約18%)の高い選好が認められた(図4、左のCpG−cで示される)。それに対して、GCCCGGGCCから下流に11bp位置したCpG部位のメチル化は認められなかった(図4、左のCpG−b)。高度にメチル化されたCpG−c部位は、hDNMT3aメチラーゼ(ACGC)について最も好ましい配列関係にあるが、一方でメチル化されていないCpG−bは最も好ましくないヌクレオチドがフランクされる(CCGC)(Handa,V.&Jeltsch,A.J Mol Biol 348,1103−12(2005))。更に、hDNMT3aによって触媒作用を及ぼされるメチル化は、非対称であり、強い鎖選好選択を示す(Lin,I. G.,Han, L.,Taghva,A.,O’Brien,L.E.&Hsieh,C.L.Mol Cell Biol 22,704−23(2002))。それ故、CpG−bのメチル化は、主にL鎖に生じ、従って、高いピリミジン含有量のためにL鎖に適用することが困難なこの部分の重亜硫酸塩配列決定によっては検出されなかった可能性がある。2つのCpGジヌクレオチドのメチル化が、F−ZFPNARP−meth−NESが結合するGCCCGGGCC配列(図4のd及びeで示される)に認められなかった。しかしながら、これらのCpG部位のメチル化は、擬及びF−meth−NESトランスフェクト細胞において検出された。このことは、F−ZFPNARP−meth−NES結合によってこれらのCpG部位のメチル化から保護されることと一致している。上記の知見は、F−ZFPNARP−meth−NESがGCCCGGGCC配列に結合し、可撓性リンカーによってメチラーゼが選択的にCpG−cに接近することが可能になることを示唆する(図4)。in vitroで、Zif268−M.SssI融合は、好ましくは結合部位から上流に16〜22bpに位置するCpG部位でシトシンをメチル化したが(Xu,G.L.&Bestor,T.H.Nat Genet 17,376−8(1997))、一方でイーストにおいては、Zif268−M.SssIは、強い部位選好を有する結合部位の両側の5〜52bpに位置するCpGsをメチル化した(Carvin,C.D.,Parr,R.D.&Kladde,M.P.Nucleic Acids Res 31,6493−501(2003))。それ故、我々の結果は、ZFPsに結合したメチラーゼの以前のin vivo研究に一致している。内在性タンパク質との相互作用、メチラーゼドメイン及びZFPを分離するリンカーの柔軟性、並びにDNAに結合した標的化メチラーゼに対する特定のCpGのヘリックス面の関係は、幾つかの部位の選択的なin vivoでのメチル化に寄与することができた。
【0222】
F−ZFPNARP−meth−NESを発現するNARP細胞において、シトシンのメチル化には、GCCCGGGCC配列の近くの塩基置換が多くの場合付随した(データは示されない)。これらの突然変異は、NARPとwt細胞のいずれの非メチル化クローンにおいても検出されなかった。その標的部位に対するF−ZFPNARP−meth−NESの結合及び/又はmtDNAのメチル化のいずれも、この領域のmtDNA複製の適合度に影響を及ぼす可能性がある。この問題は現在検討されている。
【0223】
我々の研究はまた、F−ZFPNARP−meth−NESを発現する細胞におけるGCCCGGGCCの近くで、クローンのそれぞれ約4%、2.5%及び1%において、CpA、CpT及びCpCジヌクレオチドにおいてメチル化が高まったことを示した(図4)。それに対して、F−ZFPNARP−meth−NESを発現するwt細胞のこの領域において、或いはF−ZFPcontmeth−NES又はF−meth−NESを発現するNARP細胞において、非CpGメチル化のレベルの大きな低下が認められた(図4)。この結果は、DNMT3aメチラーゼが、あまり効果的でないにせよ、in vivo及びin vitroで非CpGジヌクレオチドにおけるシトシンをメチル化することもできるという報告と一致する(Gowher,H.&Jeltsch,A.J Mol Biol 309,1201−8(2001);Aoki,A.et al.Nucleic Acids Res 29,3506−12(2001);Mund,C.et al.Biochem J 378,763−8(2004);Ramsahoye,B.H.et al.Proc NatI Acad Sci USA 97,5237−42(2000))。更に、ジヌクレオチドCpG、CpA、CpT、CpCにおいて認められたメチル化の全体的な相対的比率は、これらの部位についてのDNMT3aメチラーゼの既知の傾向に非常に一致する。標的とされたGCCCGGGCC配列を囲む領域の非CpGメチル化の上昇は、それ故、ZFPによってそこで導かれる酵素の高濃度の結果である可能性があった。要約すると、我々は、標的とされたメチラーゼによるmtDNAの部位の配列特異的メチル化を示した。
【0224】
考察
我々は、ミトコンドリアに対して酵素的に活性なキメラZFPを標的とすることが可能であることを示した。従来のMTSは、信頼性が高いミトコンドリアの局在化を確実にするには十分でなかった。そして我々は、MTSと共にNESを融合タンパク質のC末端に組み込む必要があった。この再ルーチング戦略は、ZFPsがミトコンドリアのみに向けられたことを確実にすることに効果的であったことを立証した。核局在化が問題を含む場合、C末端NESを組み込むこの戦略は、ミトコンドリアを標的としたZFPsの使用に必須であるだけでなく、ミトコンドリア及び他の細胞器官に対してタンパク質を標的とすることに一般的に用いることが可能である。in vitro研究におけるように、ミトコンドリアの中で、ZFPは正確に折りたたまれ、そして適当なDNA配列を同じ配列識別に結合した。重要なことに、このZFPは、ミトコンドリアにおいて発現された場合、既に報告された核ZFPsと同様に、確認された9個の塩基対の内の単一の点変異によって異なる突然変異体とwt mtDNAとの間を区別することができた(Choo,Y.,Sanchez−Garcia,I.&Klug,A.Nature 372,642−5(1994))。前記ZFPは、DNA修飾酵素活性をmtDNAの特定の位置に標的化した。原理の証明としてここで選択された活性はメチラーゼドメインであった。その理由は、配列特異的なメチル化は、活性が真に配列依存的であるかどうかを確認するために容易に評価され得るからである。これによって、ZFPに対するメチラーゼの結合がmtDNAの配列特異的な修飾につながったことが確認された。各種の配列特異性を有する広範囲にわたるZFPを設計することが可能であるため、ここで報告されるアプローチは、ミトコンドリア内のDNA配列のかなりの範囲に対する選択的な標的化に有用であり得た。このことは、ZFPが特定のエフェクタードメインに結合し、次いでミトコンドリア内の所定のDNA配列と結合することに向けられることを可能にする。例えば、ヌクレアーゼドメインに結合したZFPは、wt mtDNAを無損傷のままにして変異を選択的に分解するために使用することが可能である。これは、異種形成(heteroplasmic)ミトコンドリア病に対する可能な治療として使用することが可能である。
【0225】
これらの疾患に対する1つの可能な治療戦略は、変異したmtDNAの複製の選択的阻害に基づき得る。変異したmtDNAのコピー数を減少させることによって、細胞はwt mtDNAによって再び増殖することが可能になり、従ってそれによりミトコンドリアの機能が回復し、そして疾患表現型が消失した。別の応用は、mtDNAの複製及び転写のための調節領域を検討することであった。要約すると、我々は、配列特異的なZFPに対する結合によって、mtDNAの特定の配列に各種の活性を標的化するための方法を開発した。
【0226】
上記の明細書で言及された全ての刊行物は、本明細書に参照により組み込まれている。
【0227】
本発明の記載された方法及びシステムの各種の改変及び変更は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者には明らかであろう。本発明は具体的な好ましい実施形態と関連して記載されたが、請求される本発明をかかる具体的な実施形態に過度に限定してはならないと理解されなければならない。実際、分子生物学又は関連分野の当業者に直ちに明らかである本発明を実施するための記載された形態の各種の改変は、以下の請求項の範囲内にあることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0228】
【図1】ZFPの細胞内局在化に対する種々のミトコンドリアターゲティング配列(MTS)及び更なる配列の作用。一時的にトランスフェクトされたCOS−7細胞における免疫蛍光法によって、ZFPクローン30(ZFP30)に由来する構築物の細胞内局在化を解析し、その際にミトコンドリアは、エピトープ標識に対する抗体によって検出されるMitotracker CMX Red及びZFPで、その後FITCに結合する2次抗体で染色された。(A)は、種々のMTSの状況下並びにC末端のGFP(2)又は3’UTR(8)等の更なる配列の有無において最初にテストされたZFP30に由来する赤(MitoTracker由来)及び緑の蛍光の結合した局在化画像を示す。内在性のミトコンドリアタンパク質に由来する以下のN末端MTSをテストした。C8:ヒトチトクロームc酸化酵素のサブユニットVIIIに由来(1及び2)、T1:トリパノソーマブルセイ(Tryphanosoma brucei)に由来するジンクフィンガータンパク質MP42に由来(3)、T2:トリパノソーマブルセイ(T. brucei)に由来するジンクフィンガータンパク質MP63に由来(4)、T3:Leishmania tarentolaeに由来するジンクフィンガー7bタンパク質に由来(5)、R:コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)に由来するATPシンターゼのサブユニット6に由来(6)、及びF:ATPシンターゼのヒトF1βサブユニットに由来(7及び8)。F−ZFP30(7)は部分的なミトコンドリアの局在(7の矢印)を示す唯一の構築物であり、それ故、それを用いてNESを含む構築物のファミリーを設計した(パネルB)。(B)は、更なるドメインの有無においてNES(1)を含むF−ZFP30に由来する赤(MitoTracker由来)及び緑の蛍光の結合した局在化画像を示す。テストされた融合タンパク質としては、48kDaのサイズの産物を形成するGFPを組み込んだF−GFP−ZFP30−NES(2)、61kDaの産物を生じるhDNMT3aメチラーゼの触媒ドメインを組み込んだF−ZFP30−meth−NES(3)、及び86kDaの融合タンパク質を生じるGFPとhDNMT3aの触媒メチラーゼドメインとの両方を組み込んだF−GFP−ZFP30−meth−NES(4)が挙げられる。Mitotrackerを含むZFP30の共局在は、デジタル的に結合された画像で黄色に見える。
【図2】NARPに特異的なミトコンドリアF−ZFPNARPの設計及びDNA結合。(A)3−フィンガータンパク質F−ZFPNARPによるDNA認識。Zif268系F−ZFPNARPを選択してmtDNAのL鎖のT8993G変異を含む配列を結合した(8993Gは標的部位内のブラックボックスとしてマークした)。ジンクフィンガーF1、F2及びF3のαヘリックスのアミノ酸配列は、単一の文字コードを使用して下記で一覧が示される。フィンガーF1、F2及びF3は、灰色の球体として示される亜鉛イオンによって安定するαヘリックス及び2つのβ鎖によって表される。mtDNAのL鎖に対する−1位、3位及び6位の残基の予測される接触は、実線の黒い矢印として示される。曲線の灰色の矢印は、2位のアミノ酸と各フィンガーに対する隣接する3bpの結合部位間の界面の相補的H鎖との間の交差鎖相互作用の可能性を示す。(B)F−ZFPNARPによる配列識別。突然変異体T8993G(NARP−G)又はT8993C(NARP−C)又はwt配列8993T(wt)のいずれかを含む標的DNAに対する結合についてのゲルリターデイションアッセイで、in vitroで合成されたF−ZFPNARP及び対照のジンクフィンガーペプチドF−ZFPcontをテストした。全てのペプチドを連続した5倍の希釈(勾配の記号で示される)で使用し、そしてDNAプローブを0.3nMの濃度で使用した。文字「f」は遊離DNAを意味し、一方で文字「b」はタンパク質が結合した複合体を意味する。タンパク質が結合した複合体「b」の2つの移動性の形態は、交差鎖相互作用の有無で発現するF−ZFPNARP−DNAの2つの異なる圧縮の程度に起因する可能性がある。F−ZFPNARPがこれらの相互作用について最適化されなかったことには注意しなければならない。(C)F−ZFPNARPは、ミトコンドリアへの取り込みにおける結合能力を有する。ミトコンドリアに標的化されたF−ZFPNARPを一時的に発現する細胞からのミトコンドリア抽出物に関して、T8993G変異(NARP−G)を含むDNA標的におけるゲルリターデイションアッセイを実施した。細胞質ゾル分画を対照として使用した。タンパク質の一連の希釈及びプローブの濃度は、(B)と同様であった。
【図3】ミトコンドリアに標的化されたジンクフィンガーメチラーゼF−ZFPNARP−meth−NESの構造及びミトコンドリア内局在化。(A)ミトコンドリアに標的化されたメチラーゼの概略的構造。NARPに特異的な(F−ZFPNARP−meth−NES)又は対照の(F−ZFPcont−meth−NES)を作製するために、ヒトDNMT3a DNAメチラーゼ(hDNMT3a CD)の触媒ドメイン(残基592〜909)への(SGGGG)3SSの17アミノ酸の長い可撓性リンカーを使用してキメラのメチラーゼF−ZFPNARP又はF−ZFPcontを結合した。核外移行シグナル(NES)をC末端に付加した。更なる対照として、DNA結合ドメインが欠けている、ミトコンドリアに標的化されたメチラーゼを、F−ZFPNARP−meth−NES構築物からZFPを欠失させることによって作製した(F−meth−NES)。更なる検出を容易にするために、両方の構築物にはHAエピトープ標識を用いた。(B)ミトコンドリア内のF−ZFPNARP−meth−NESジンクフィンガーメチラーゼの局在化。一時的にF−ZFPNARP−meth−NESを過剰発現させたNARP細胞を分画し、そして抗HA mAbを使用してウエスタンブロット法によってタンパク質分画を解析した。示された通りの各種条件下で全細胞可溶化物(「T」)、細胞質ゾル(「C」)及びプロテイナーゼKで処理されたミトコンドリア分画におけるF−ZFPNARP−meth−NES前駆体(「p」)及びその成熟した(「m」)形態の局在化が、マーカータンパク質の局在化と比較された。F−ZFPNARP−meth−NESの前駆体は、ミトコンドリア分画において認められたが、プロテアーゼ消化に到達可能であったことから、明確にミトコンドリアの外側に位置していた。反対に、キメラのメチラーゼの成熟形態は、ミトコンドリアがTrironX−100と共に溶解された後のみ、保護され、そしてタンパク質分解に到達可能となった。以下の内在性タンパク質を分画マーカーとして使用した。(i)ミトコンドリア外膜25、26に静電的に関連すると以前に報告されたGAPDH。(ii)mtTFAM:ミトコンドリア基質27において局所化される転写因子。(C)ミトコンドリアヌクレオイドとのF−ZFPNARP−meth−NESジンクフィンガーメチラーゼの共局在。F−ZFPNARP−meth−NESの細胞内局在化を、一時的にトランスフェクトされたNARP細胞における免疫蛍光法によって解析した。ミトコンドリアは、HAエピトープ標識に対する抗体によって検出されるMito Tracker CMX Red(赤)及びF−ZFPNARP−meth−NESで、その後FITC(緑)に結合する2次抗体で染色された。F−ZFPNARP−meth−NESは、点状のミトコンドリア内染色パターン(1〜3)を示す。更に、大部分の一時的に発現したF−ZFPNARP−meth−NESは、mtTFAM、即ちヒトミトコンドリアヌクレオイドの周知のタンパク質と共局在化し、それはポリクローナル抗体で染色され、そしてTexasRed(4〜6)で視覚化された。F−ZFPNARP−meth−NESに対して陽性のミトコンドリア内の病巣は、BrdU(7〜9)で標識されたmtDNAと共局在化した。
【図4】ZFPNARP結合部位に隣接したmtDNA領域のin vivoでのメチル化の結果。示された各構築物のNARP突然変異部位を囲むmtDNAのH鎖におけるシトシン残基のメチル化状態を判定するために、細胞DNAの全体を重亜硫酸塩の変換に供した。次いで、対象の領域(示された通り、8950〜9070位)をPCRによって増幅し、そして大腸菌内にクローン化した。どのシトシンがメチル化されたのかを同定するために、各構築物について、統計学的に有意の数の独立したクローン(「N=」によって示される)をランダムに選択し、配列決定し、そして解析した。図は、mtDNAフラグメントがNARP細胞か対照wt細胞のいずれかから生じたことを示し、ここで、メチル化されていないCpNジヌクレオチドは無記入の四角として表され、メチル化されたCpN部位(mCpN)は記入された四角として示され、説明文によって色づけられる。記入された四角内の数は、各構築物について検出されたmCpNの頻度を表す。解析された領域において認められるCpG部位は、本文の参照のために更に「a」から「f」までアルファベット順に示される。各構築物について、少なくとも1つのmCpN、mCpG又はメチル化された非CpGを含むクローンの割合をグラフに示す。F−ZFPNARP−meth−NESを発現するNARP細胞及び対照から生じるDNAのメチル化における統計的な差は、対応のあるスチューデントt検定によって判定した場合、非常に有意(P>0.001)であることが認められた。
【図5】ミトコンドリアの取り込みについてテストされるジンクフィンガータンパク質の配列。2フィンガーユニット(2F×2F)の2倍として設計される密接に関連した4フィンガータンパク質のライブラリーのタンパク質配列が並べられる。前記タンパク質は、各種のMTSを用いてミトコンドリア内に取り込まれるその能力についてテストされた。αヘリックスにおいて予測されたDNA接触残基は、黄色でマークされる。ジンクフィンガーF1〜F4に対する認識αヘリックスの位置は、その並びの上に示される。2つのフィンガーの第1及び第2のセット間に存在するリンカー(配列GGG)は、該当する場合、青で示す。認識αヘリックスの外部の置換は、黒でマークされる。NLSとして働く可能性があるフィンガーF2及びF4の認識αヘリックス内の塩基性アミノ酸のセットが構成される。群1及び群2のタンパク質は、異なるライブラリーから形成された。
【図6】PicoGreen染料で染色されるmtDNAとのF−ZFPNARP−meth−NESの共局在。一時的にトランスフェクトされたNARP細胞における免疫蛍光法によって、mtDNAとのF−ZFPNARP−meth−NESの共局在を解析した。実験手順で説明されるように、PicoGreenで染色された細胞を固定し、透過化処理し、そして免疫染色に供した。キメラのメチラーゼは、HAエピトープ標識に対する抗体で、その後Texas Red(赤)に結合する2次抗体で検出された。共局在は、デジタル的重ねた画像上の黄色として現れる。
【図7−1】Cメチル化を解析するために用いられる重亜硫酸塩方法の説明。NARP細胞(8950bp〜9030bp)のmtDNAにおけるZFPNARP結合部位に隣接した領域のミトコンドリアのH鎖のDNA配列は、前記方法を例証するために示される。ZFPNARP結合部位の配列がハイライトされる。(A)重亜硫酸塩の変換前のメチル化DNA鋳型。(B)重亜硫酸塩の投与後のメチル化されていないDNA鋳型。全てのシトシンがチミンに変わることに注意が必要である。(C)in vitroでCpGメチラーゼM.SssIが投与され、そして更に重亜硫酸塩の変換に供されるDNA鋳型。(D)及び(E)異なるクローンの重亜硫酸塩の変換後のin vivoにおけるメチル化DNA鋳型の2つ例。CpGの場合におけるDNAのメチル化から生じる無変化のシトシンは、下線を引かれる。
【図7−2】Cメチル化を解析するために用いられる重亜硫酸塩方法の説明。NARP細胞(8950bp〜9030bp)のmtDNAにおけるZFPNARP結合部位に隣接した領域のミトコンドリアのH鎖のDNA配列は、前記方法を例証するために示される。ZFPNARP結合部位の配列がハイライトされる。(A)重亜硫酸塩の変換前のメチル化DNA鋳型。(B)重亜硫酸塩の投与後のメチル化されていないDNA鋳型。全てのシトシンがチミンに変わることに注意が必要である。(C)in vitroでCpGメチラーゼM.SssIが投与され、そして更に重亜硫酸塩の変換に供されるDNA鋳型。(D)及び(E)異なるクローンの重亜硫酸塩の変換後のin vivoにおけるメチル化DNA鋳型の2つ例。CpGの場合におけるDNAのメチル化から生じる無変化のシトシンは、下線を引かれる。
【図8】ZFPNARP結合部位から離れているmtDNA領域のメチル化の結果。示された構築物についてのNARP突然変異部位から離れているmtDNAのH鎖におけるシトシン残基のメチル化状態を判定するために、細胞のDNAの全体が重亜硫酸塩の変換に供された。次いで、mtDNA(380位〜570位及び13500位〜13650位)の対照の領域をPCRによって増幅し、そして大腸菌内にクローン化した。どのシトシンがメチル化されたのかを同定するために、各構築物について、統計学的に有意の数の独立したクローン(「N=」によって示される)をランダムに採集し、配列決定し、そして解析した。図は、mtDNAフラグメントがNARP細胞から生じたことを示し、ここで、メチル化されていないCpNジヌクレオチドは無記入の四角として表され、メチル化されたCpN部位(mCpN)は記入された四角として示され、説明文によって色づけられる。記入された四角内の数は、各構築物について検出されたmCpNの頻度を表す。各構築物について、少なくとも1つのmCpN、mCpG又はメチル化された非CpGを含むクローンの割合をグラフに示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミトコンドリアターゲティング配列(MTS)及び核外移行シグナル(NES)に融合されたDNA結合性ポリペプチドをコードするコード配列を含む核酸構築物。
【請求項2】
前記DNA結合性ポリペプチドがミトコンドリアに対して異種である、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項3】
前記DNA結合性ポリペプチドがジンクフィンガーポリペプチド(ZFP)である、請求項1又は請求項2に記載の核酸構築物。
【請求項4】
前記ZFPが2個、3個又はそれ以上のジンクフィンガーを含む、請求項3に記載の核酸構築物。
【請求項5】
前記DNA結合性ポリペプチドがミトコンドリアゲノムにおける標的配列と結合する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項6】
前記標的配列が疾患と関連するDNA領域内に存在する、請求項5に記載の核酸構築物。
【請求項7】
前記疾患が、LHON(レーベル遺伝性視神経症);MM(ミトコンドリアミオパシー);AD(アルツハイマー病);LIMM(致死性小児性ミトコンドリアミオパシー(Lethal Infantile Mitochondrial Myopathy));ADPD(アルツハイマー病及びパーキンソン病);MMC(母性ミオパシー及び心筋症(Maternal Myopathy and Cardiomyopathy));NARP(神経原性筋力低下、失調及び色素性網膜炎;この遺伝子座の別の表現型はリー病として報告される)、FICP(致死性小児性心筋症プラス(Fatal Infantile Cardiomyopathy Plus)、MELAS関連心筋症)、MELAS(ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス及び脳卒中様発作)、LDYT(レーベル遺伝性視神経症及びジストニー)、MERRF(ミオクローヌス癲癇及び赤色ぼろ筋線維)、MHCM(母性遺伝性肥大性心筋症)、CPEO(慢性進行性外眼筋麻痺)、KSS(キーンズ・セイアー症候群)、DM(糖尿病)、DMDF(糖尿病+難聴)、CIPO(ミオパシー及び眼筋麻痺を伴う慢性的腸偽閉塞(Chronic Intestinal Pseudoobstruction with myopathy and Ophthalmoplegia))、DEAF(母性遺伝性難聴又はアミノグリコシド誘導性難聴)、PEM(進行性脳症)、SNHL(感音難聴)、老化、脳筋症、FBSN(家族性両側性線条体壊死)、PEO及びSNE(亜急性壊死性脳症)からなる群から選択される、請求項6に記載の核酸構築物。
【請求項8】
前記DNA結合性ポリペプチドがDNA結合性ポリペプチドのライブラリーから選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項9】
前記DNA結合性ポリペプチドが、ファージディスプレイ、ツーハイブリッド選択及び細菌ディスプレイからなる群から選択される1つ以上の方法によって、ランダム化された変異体ポリペプチドのライブラリーから選択される、請求項4に記載の核酸構築物。
【請求項10】
前記DNA結合性タンパク質の調製において合理的な設計が用いられる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項11】
前記DNA結合性ポリペプチドが機能的ドメインに融合される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項12】
前記機能的ドメインが転写活性化ドメイン又は転写抑制ドメインである、請求項11に記載の核酸。
【請求項13】
前記機能的ドメインがDNA修飾酵素から得られる、請求項11に記載の核酸構築物。
【請求項14】
前記DNA修飾酵素が、DNAメチラーゼ及びIIs型制限エンドヌクレアーゼの切断ドメインからなる群から選択される、請求項13に記載の核酸構築物。
【請求項15】
前記MTSがミトコンドリアタンパク質のシグナルペプチドである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項16】
前記MTSが、ヒトチトクロームc酸化酵素サブユニットVIII、ヒトATPシンターゼのサブユニットcのP1アイソフォーム、ヒトATPシンターゼのF1βサブユニット、アルデヒドデヒドロゲナーゼターゲティング配列及びBCS1タンパク質からなる群から選択されるタンパク質から得られる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項17】
前記NESが、MMVの非構造タンパク質2、プロテインキナーゼ阻害剤、HIV−1 Rev及びMAPキナーゼキナーゼ、MVM NS2、NMD3、An3、IκBα、サイクリンB1及びTFIIIAからなる群から選択されるタンパク質から得られる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項18】
前記NESが、LALKLAGLDIN(プロテインキナーゼ阻害剤)、LQLPPLERLTLD(HIV−1 Rev)及びLGLKLEELELE(MAPキナーゼキナーゼ)、MTKKFGTLTI(MVM NS2)、LAEMLEDLHI(NMD3)、LDQQF−AGLDL(An3)、MVKELQEIRL(IκBα)、LCQAFSDVIL(サイクリンB1)及びLPVLENLTL(サイクリンB1)からなる群から選択される、請求項17に記載の核酸構築物。
【請求項19】
ミトコンドリアDNA(mtDNA)において目的配列を改変するための融合タンパク質であって、
(a)mtDNA内の標的配列と結合するDNA結合性ポリペプチドであって、該標的配列は、該目的配列の中又は近くに存在する、DNA結合性ポリペプチド;
(b)mtDNAを修飾する機能的ドメイン;
(c)ミトコンドリアターゲティング配列(MTS);及び
(d)核外移行配列(NES)、
を含む、融合タンパク質。
【請求項20】
前記機能的ドメインが、メチラーゼ及び制限エンドヌクレアーゼからなる群から選択されるタンパク質から得られる、請求項19に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
前記機能的ドメインがエンドヌクレアーゼのDNA切断ドメインである、請求項20に記載の融合タンパク質。
【請求項22】
前記エンドヌクレアーゼがIIs型制限エンドヌクレアーゼである、請求項20又は請求項21に記載の融合タンパク質。
【請求項23】
前記DNA結合性ポリペプチドがジンクフィンガーポリペプチド(ZFP)である、請求項19〜22のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の核酸構築物によってコードされる融合タンパク質。
【請求項25】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の核酸構築物を含む細胞。
【請求項26】
請求項18〜24のいずれか1項に記載のタンパク質を含む細胞。
【請求項27】
(a)請求項1〜18のいずれか1項に記載の核酸構築物を調製するステップ;及び
(b)前記核酸構築物を真核細胞内に導入するステップ、を含むミトコンドリアにポリペプチドを送達する方法であって、該構築物が前記ポリペプチドを産生するように発現され、そして該ポリペプチドがミトコンドリアに入る、方法。
【請求項28】
(a)請求項13又は請求項14に記載の核酸構築物を調製するステップ;及び
(b)前記核酸構築物を真核細胞内に導入するステップ、を含むミトコンドリアDNA内の配列を改変する方法であって、該構築物が前記ポリペプチドを産生するように発現され、そして該ポリペプチドがミトコンドリアに入る、方法。
【請求項29】
請求項13又は請求項14に記載の核酸構築物内に含まれる前記MTSがミトコンドリアタンパク質のシグナルペプチドである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記MTSが、ヒトチトクロームc酸化酵素サブユニットVIII、ヒトATPシンターゼのサブユニットcのP1アイソフォーム、ヒトATPシンターゼのF1βサブユニット及びアルデヒドデヒドロゲナーゼターゲティング配列からなる群から選択されるタンパク質から得られる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記NESが、MMVの非構造タンパク質2、プロテインキナーゼ阻害剤、HIV−1 Rev及びMAPキナーゼキナーゼ、MVM NS2、NMD3、An3、IκBα、サイクリンB1及びTFIIIAからなる群から選択されるタンパク質から得られる、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
ミトコンドリアにおける遺伝子発現の調節のための、ミトコンドリアに対して異種のDNA結合性ポリペプチドの使用。
【請求項33】
前記DNA結合性ポリペプチドが、DNA結合ドメイン及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質である、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記DNA結合性ポリペプチドがジンクフィンガーポリペプチドである、請求項32又は請求項33に記載の使用。
【請求項35】
請求項19〜24のいずれか1項に記載の融合タンパク質を含む医薬組成物。
【請求項36】
ミトコンドリア病の治療のための医薬組成物の調製における請求項1〜18のいずれか1項に記載の核酸構築物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−520488(P2009−520488A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546588(P2008−546588)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004755
【国際公開番号】WO2007/071962
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(504178144)メディカル リサーチ カウンセル (3)
【Fターム(参考)】