説明

ミトコンドリアアルデヒドデヒドロゲナーゼ−2モジュレーター及びその使用方法

本発明は、ミトコンドリアアルデヒドデヒドロゲナーゼ−2(ALDH2)活性のモジュレーターとして機能する化合物、および該化合物を含む薬剤組成物を提供する。本発明は、対象化合物、または対象薬剤組成物を投与することを含む治療方法を提供する。本発明はさらに、ALDH2のアゴニストを同定するためのアッセイを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2007年3月8日出願の米国仮特許出願第60/905,963号の利益を主張し、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている。
連邦支援の研究に関する記述
国立衛生研究所から授与された助成金番号AA11147号に準じて、米国政府は本発明において特定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0002】
血液および酸素が欠乏した組織は、不可逆的な臓器障害の可能性を伴った虚血性壊死または梗塞を起こす。手術中などの一部の状況下では、一部の臓器の虚血をもたらす血流の中断が不可避である。さらに、固形腫瘍の場合は、血流を中断させて実際に虚血を誘発させることが望ましい。臓器または組織への血液および酸素の流れが回復した後(再灌流)、臓器はすぐに虚血前のその正常な状態に戻るわけではない。例えば、虚血性心筋症の場合、再灌流した虚血後の非壊死心筋は収縮性が乏しく、また、高エネルギーヌクレオチドの濃度が低く、細胞内オルガネラ機能が抑制されており、ゆっくりとしか回復しない膜損傷を有する。
【0003】
ミトコンドリアアルデヒドデヒドロゲナーゼ−2(ALDH2)は核ゲノム内にコードされており、ミトコンドリア内へと輸送される。ALDH2は、それぞれが500個のアミノ酸残基からなる4つの同一のサブユニットからなる四量体タンパク質である。この四量体は、二量体の二量体とみなすことができる。二量体を形成する単量体間の境界面は、四量体を形成する2つの二量体間の境界面とは異なっており、より大規模である。それぞれのサブユニットは、3つの主ドメイン、すなわち、触媒ドメイン、補酵素またはNAD−結合ドメイン、およびオリゴマー化ドメインからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開第2005/0171043号明細書
【特許文献2】国際公開第WO2005/057213号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Larson他(2005)J.Biol.Chem.280:30550;Li他(2006)J.Clin.Invest.116:506
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ミトコンドリアアルデヒドデヒドロゲナーゼ−2(ALDH2)活性のモジュレーターとして機能する化合物、および該化合物を含む薬剤組成物を提供する。本発明は、対象化合物、または対象薬剤組成物を投与することを含む治療方法を提供する。本発明はさらに、ALDH2のアゴニストを同定するためのアッセイを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A−B】ヒトALDH2のアミノ酸配列(配列番号:1)およびヒトALDH2のE487K変異体のアミノ酸配列を各々示す図である。
【図2】蛍光アルデヒドデヒドロゲナーゼ酵素アッセイを示す模式図である。
【図3】ヒトALDH2のE487K変異体の酵素活性に対する2つの例示的なALDH2アゴニストの効果を示す図である。
【図4】ヒトALDH2のE487K変異体の酵素活性に対する2つの例示的なALDH2アゴニストの効果を示す図である。
【図5A−C】例示的なALDH2アゴニストの構造(図5A)、ならびに例示的なALDH2アゴニストのALDH2に対する特異性を示す結果(図5Bおよび5C)を示す図である。
【図6A−D】心筋梗塞のex vivoモデルにおける例示的なALDH2アゴニストの効果を示す図である。
【図7】ヒトALDH2のE487K変異体に対する様々なALDH2アゴニストの活性を示す図である。
【図8】例示的なALDH2アンタゴニストによるALDH2の阻害を示す図である。
【図9】例示的なALDH2アンタゴニストによるALDH2の阻害を示す図である。
【図10】例示的なALDH2アンタゴニストによるALDH2の阻害を示す図である。
【図11】心筋梗塞のin vivoモデルにおける例示的なALDH2アゴニストの効果を示す図である。
【図12】ALDH2活性に対する化合物BDDB、XO−43、およびXO−44の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
本明細書中で使用する用語「ミトコンドリアアルデヒドデヒドロゲナーゼ−2」すなわち「ALDH2」とは、NAD依存性の反応で、アルデヒド(例えば、異種アルデヒド、生体アルデヒド、または摂取、吸入、もしくは吸収した化合物から産生されたアルデヒド)をその対応する酸へと酸化する酵素をいう。例えば、ALDH2は、化合物、例えば、摂取、吸収、吸入、または通常の代謝中に産生される毒性化合物の分解から生じるアルデヒドを酸化する。
【0009】
用語「ALDH2」には、様々な種由来のALDH2が包含される。様々な種由来のALDH2のアミノ酸配列が公的に入手可能である。例えば、ヒトALDH2アミノ酸配列はGenBank受託番号AAH02967号およびNP_000681号の下に見つかり、マウスALDH2アミノ酸配列はGenBank受託番号NP_033786号の下に見つかり、ラットALDH2アミノ酸配列はGenBank受託番号NP_115792号の下に見つかる。本明細書中で使用する用語「ALDH2」にはまた、ALDH2酵素活性を保持する断片、融合タンパク質、および変異体(例えば、1つまたは複数のアミノ酸の置換、付加、欠失、および/または挿入を有する変異体)も包含される。特定の酵素活性のあるALDH2変異体、断片、融合タンパク質などは、本明細書中に記載の方法を適応することによって確認することができる。ALDH2変異体の例は、図1Bに示すように(配列番号2のアミノ酸504)ヒトALDH2のアミノ酸位置487で、またはヒトALDH2のアミノ酸487に対応する位置で、GluからLysへの置換を含む、ALDH2ポリペプチドである。この突然変異体は、「E487K突然変異体」、「E487K変異体」、または「Glu504Lys多型」と呼ぶ。例えば、Larson他(2005)J.Biol.Chem.280:30550;およびLi他(2006)J.Clin.Invest.116:506を参照されたい。ALDH2変異体は、対応する野生型ALDH2酵素の酵素活性の少なくとも約1%を保持している。例えば、E487K変異体は、図1Aに示すアミノ酸配列(配列番号1)を含む酵素の活性の少なくとも約1%を保持している。
【0010】
用語「単離した化合物」とは、自然に存在する他の化合物から実質的に分離された、またはそれと比較して濃縮されている化合物を意味する。単離した化合物は、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%純粋、少なくとも約98重量%純粋、または少なくとも約99重量%純粋である。本発明は、ジアステレオマー、そのラセミ体および分割された鏡像異性的に純粋な形態、ならびに製薬上許容されるその塩を包含することを意図する。
【0011】
状態または疾患を「治療すること」またはその「治療」には、(1)状態の少なくとも1つの症状を予防すること、すなわち、疾患に曝されているもしくは罹患しやすくなっている可能性があるが、未だ疾患の症状を経験もしくは示していない哺乳動物において、臨床的症状が顕著に発生しないことをもたらすこと、(2)疾患を阻害すること、すなわち、疾患もしくはその症状の発生を停止または軽減させること、または(3)疾患を緩和すること、すなわち、疾患もしくはその臨床的症状の退行を引き起こすことが含まれる。
【0012】
「治療有効量」または「有効量」とは、疾患を治療するために哺乳動物または他の対象に投与した場合に、別の薬剤と組み合わせて、または単独で1つもしくは複数の用量で、疾患のそのような治療をもたらすために十分である、化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患およびその重篤度、ならびに治療する対象の年齢、重量などに応じて変化する。
【0013】
用語「対象」、「個体」、および「患者」とは、本明細書中で互換性があるように使用し、本明細書中に記載の製薬学的方法、組成物および治療を必要とし得る任意の哺乳動物または非哺乳動物種のメンバーまたは複数のメンバーをいう。したがって、対象および患者には、それだけには限定されないが、霊長類(ヒトを含む)、イヌ科動物、ネコ科動物、有蹄動物(例えば、ウマ科動物、ウシ、ブタ(swine)(例えば家畜用ブタ(pig))、トリ、および他の対象が含まれる。ヒトならびに商業的に重要な非ヒト哺乳動物(例えば、家畜および飼いならした動物)が、特に関心を持たれている。
【0014】
「哺乳動物」とは、任意の哺乳動物種のメンバーまたは複数のメンバーをいい、例として、イヌ科動物、ネコ科動物、ウマ科動物、ウシ、ヒツジ、げっ歯目など、および霊長類、特にヒトが含まれる。非ヒト動物モデル、特に哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ネズミ(例えば、マウス、ラット)、ウサギ目などを、実験的調査に使用し得る。
【0015】
本明細書中で使用する用語「単位剤形」とは、それぞれの単位が、製薬上許容される希釈剤、担体またはビヒクルに関連して所望の効果を生じるために十分な量で計算した、事前に決定した量の本発明の化合物を含む、ヒトおよび動物対象の単位用量として適した、物理的に別個の単位をいう。本発明の新規単位剤形の規格は、用いる具体的な化合物および達成する効果、ならびに宿主におけるそれぞれの化合物に関連する薬力学に依存する。
【0016】
用語「生理的条件」とは、生細胞に適合性のある条件、例えば、主に生細胞と適合性のある温度、pH、塩分などの水性条件を包含することを意図する。
【0017】
「製薬上許容される賦形剤」、「製薬上許容される希釈剤」、「製薬上許容される担体」、および「製薬上許容されるアジュバント」とは、一般に安全であり、無毒性であり、生物学的にも他の様式でも望ましくないものでない薬剤組成物の調製に有用な、賦形剤、希釈剤、担体、およびアジュバントを意味し、獣医学的使用およびヒトの製薬的使用に許容される賦形剤、希釈剤、担体、およびアジュバントが含まれる。明細書および特許請求の範囲中で使用する「製薬上許容される賦形剤、希釈剤、担体およびアジュバント」には、1つおよび複数のそのような賦形剤、希釈剤、担体、およびアジュバントが含まれる。
【0018】
本明細書中で使用する「薬剤組成物」とは、哺乳動物、特にヒトなどの対象への投与に適した組成物を包含することを意図する。一般に、「薬剤組成物」は無菌的であり、対象内で望ましくない応答を誘発することができる汚染物質を含まない(例えば、薬剤組成物中の(1つまたは複数の)化合物は製薬グレードである)。薬剤組成物は、経口、頬側、直腸、非経口、腹腔内、皮内、気管内などを含めたいくつかの異なる投与経路を介して、それを必要としている対象または患者に投与するように設計することができる。或る実施形態では、組成物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)以外の浸透促進剤を用いた、経皮経路による投与に適している。他の実施形態では、薬剤組成物は、経皮投与以外の経路による投与に適している。或る実施形態では、薬剤組成物には、対象化合物および製薬上許容される賦形剤が含まれる。或る実施形態では、製薬上許容される賦形剤はDMSO以外である。
【0019】
本明細書中で使用する本発明の化合物の「製薬上許容される誘導体」には、その塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、酸、塩基、溶媒和物、水和物またはプロドラッグが含まれる。そのような誘導体は、そのような誘導体化のための知られている方法を用いて、当業者が容易に調製し得る。生じた化合物は、実質的な毒性効果なしに動物またはヒトに投与し得、製薬上活性があるか、またはプロドラッグである。
【0020】
化合物の「製薬上許容される塩」とは、製薬上許容され、かつ親化合物の所望の薬理活性を保有する塩を意味する。そのような塩には、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸を用いて形成される酸付加塩;もしくは酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、グルコヘプトン酸、4,4’−メチレンビス−(3−ヒドロキシ−2−エン−1−カルボン酸)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸を用いて形成される酸付加塩;または(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンのいずれかによって置き換えられた場合に形成される塩;またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどの有機塩基と配位した場合に形成される塩が含まれる。
【0021】
本発明の化合物の「製薬上許容されるエステル」とは、製薬上許容され、かつ親化合物の所望の薬理活性を保有するエステルを意味し、それだけには限定されないが、それだけには限定されないがカルボン酸、リン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸およびボロン酸を含めた酸性基の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキルおよびヘテロシクリルエステルが含まれる。
【0022】
本発明の化合物の「製薬上許容されるエノールエーテル」とは、製薬上許容され、かつ親化合物の所望の薬理活性を保有するエノールエーテルを意味し、それだけには限定されないが、式C=C(OR)の誘導体が含まれる[式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキルまたはヘテロシクリルである]。
【0023】
本発明の化合物の「製薬上許容される溶媒和物または水和物」とは、製薬上許容され、かつ親化合物の所望の薬理活性を保有する溶媒和または水和の複合体を意味し、それだけには限定されないが、本発明の化合物と1つまたは複数の溶媒または水分子、あるいは1〜約100個、または1〜約10個、または1〜約2、3もしくは4個の溶媒または水分子との複合体が含まれる。
【0024】
「プロドラッグ」とは、そのようなプロドラッグを哺乳動物対象に投与した場合に、以下に示す一般式のうちの1つまたは複数に記載の活性親薬物を、in vivoで放出する任意の化合物を意味する。以下に示す一般式のうちの1つまたは複数の化合物のプロドラッグは、修飾がin vivoで切断されて親化合物を放出し得るような様式で、一般式の化合物中に存在する官能基を修飾することによって、調製する。プロドラッグには、以下に示す一般式のうちの1つまたは複数中のヒドロキシ、アミノ、またはスルフヒドリル基が、in vivoで切断されてそれぞれ遊離のヒドロキシル、アミノ、またはスルフヒドリル基を再生し得る任意の基と結合している、以下に示す一般式のうちの1つまたは複数の化合物が含まれる。プロドラッグの例には、それだけには限定されないが、以下に示す一般式のうちの1つまたは複数の化合物中のヒドロキシ官能基のエステル(例えば、酢酸、ギ酸、および安息香酸の誘導体)、カルバメート(例えば、N,N−ジメチルアミノカルボニル)などが含まれる。
【0025】
本明細書中で使用する用語「有機基」および「有機ラジカル」とは、脂肪族基、環状基、芳香族基、その官能化された誘導体および/またはその様々な組合せとして分類される炭化水素基を含めた、任意の炭素含有基を意味する。用語「脂肪族基」とは、飽和または不飽和の直鎖または分枝鎖状の炭化水素基を意味し、例えば、アルキル、アルケニル、およびアルキニル基が包含される。用語「アルキル基」とは、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、ヘプチル、iso−プロピル、n−オクチル、ドデシル、オクタデシル、アミル、2−エチルヘキシルなどを含めた、置換または非置換の、飽和の直鎖または分枝鎖状の炭化水素基または鎖(例えば、C〜C)を意味する。適切な置換基には、カルボキシ、保護されたカルボキシ、アミノ、保護されたアミノ、ハロ、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、ニトロ、シアノ、モノ置換アミノ、保護されたモノ置換アミノ、ジ置換アミノ、C〜Cアルコキシ、C〜Cアシル、C〜Cアシルオキシなどが含まれる。用語「置換アルキル」とは、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アミノ、保護されたアミノ、シアノ、ハロ、トリフロロメチル、モノ置換アミノ、ジ置換アミノ、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、カルボキシ、保護されたカルボキシ、またはカルボキシ、アミノ、および/もしくはヒドロキシ塩によって、1〜3回置換された、上記定義したアルキル基を意味する。ヘテロアリール環の置換基と併せて使用した場合、用語「置換(シクロアルキル)アルキル」および「置換シクロアルキル」とは、「置換アルキル」基について記載したものと同じ基で置換された、以下に定義するものである。用語「アルケニル基」とは、1つまたは複数のビニル基などの炭素−炭素二重結合を有する、不飽和の直鎖または分枝鎖状の炭化水素基を意味する。用語「アルキニル基」とは、1つまたは複数の炭素−炭素三重結合を有する、不飽和の直鎖または分枝鎖状の炭化水素基を意味する。用語「環状基」とは、脂環式基、芳香族基、またはヘテロ環基として分類される閉環炭化水素基を意味する。用語「脂環式基」とは、脂肪族基に似ている特性を有する環状炭化水素基を意味する。用語「芳香族基」または「アリール基」とは、単環または多環の芳香族炭化水素基を意味し、1つまたは複数のヘテロ原子が含まれていてもよく、以下にさらに定義する。用語「ヘテロ環基」とは、環中の原子のうちの1つまたは複数が炭素以外の元素(例えば、窒素、酸素、硫黄など)である閉環炭化水素を意味し、以下にさらに定義する。
【0026】
「有機基」は官能化されているか、または、保護されていても保護されていなくてもよいカルボキシル、アミノ、ヒドロキシルなどの有機基と会合した追加の官能基を他の様式で含んでいてもよい。例えば、語句「アルキル基」には、メチル、エチル、プロピル、t−ブチルなどの純粋に開鎖の飽和炭化水素アルキル置換基だけでなく、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルスルホニル、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシルなどの当分野で知られているさらなる置換基を保有するアルキル置換基も含まれることを意図する。したがって、「アルキル基」には、エーテル、エステル、ハロアルキル、ニトロアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、スルホアルキルなどが含まれる。
【0027】
用語「ハロ」および「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード基をいう。同一または異なる、1つまたは複数のハロゲンが存在することができる。特に興味深いハロゲンには、クロロおよびブロモ基が含まれる。
【0028】
用語「ハロアルキル」とは、1つまたは複数のハロゲン原子によって置換された、上記定義したアルキル基をいう。ハロゲン原子は同一または異なっていてよい。用語「ジハロアルキル」とは、同一または異なっていてよい2つのハロ基によって置換された、上述のアルキル基をいう。用語「トリハロアルキル」とは、同一または異なっていてよい3つのハロ基によって置換された、上述のアルキル基をいう。用語「ペルハロアルキル」とは、アルキル基中のそれぞれの水素原子がハロゲン原子によって置き換えられている、上記定義したハロアルキル基をいう。用語「ペルフルオロアルキル」とは、アルキル基中のそれぞれの水素原子がフルオロ基によって置き換えられている、上記定義したハロアルキル基をいう。
【0029】
用語「シクロアルキル」とは、完全に飽和または部分的に不飽和である、単環、二環、または三環の飽和環を意味する。そのような基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、シクロオクチル、シス−またはトランスデカリン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、シクロヘキサ−1−エニル、シクロペント−1−エニル、1,4−シクロオクタジエニルなどが含まれる。
【0030】
用語「(シクロアルキル)アルキル」とは、上記シクロアルキル環のうちの1つが上記定義したアルキル基を置換していることを意味する。そのような基の例には、(シクロヘキシル)メチル、3−(シクロプロピル)−n−プロピル、5−(シクロペンチル)ヘキシル、6−(アダマンチル)ヘキシルなどが含まれる。
【0031】
用語「置換フェニル」とは、1つまたは複数の部分、一部の例では、置換または非置換の、ハロゲン、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアシル、C〜Cアシルオキシ、カルボキシ、オキシカルボキシ、保護されたカルボキシ、カルボキシメチル、保護されたカルボキシメチル、ヒドロキシメチル、保護されたヒドロキシメチル、アミノ、保護されたアミノ、(モノ置換)アミノ、保護された(モノ置換)アミノ、(ジ置換)アミノ、カルボキサミド、保護されたカルボキサミド、N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド、保護されたN−(C〜Cアルキル)カルボキサミド、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルボキサミド、トリフルオロメチル、N−((C〜Cアルキル)スルホニル)アミノ、N−(フェニルスルホニル)アミノまたはフェニルからなる群から選択される、1つ、2つ、または3つの部分で置換したフェニル基を特定し、これにより、例えば、ビフェニルまたはナフチル基が生じる。
【0032】
用語「置換フェニル」の例には、2、3または4−クロロフェニル、2,6−ジクロロフェニル、2,5−ジクロロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、2、3または4−ブロモフェニル、3,4−ジブロモフェニル、3−クロロ−4−フルオロフェニル、2、3または4−フルオロフェニルなどのモノ−またはジ(ハロ)フェニル基;2、3、または4−ヒドロキシフェニル、2,4−ジヒドロキシフェニル、その保護されたヒドロキシ誘導体などのモノまたはジ(ヒドロキシ)フェニル基;2、3、または4−ニトロフェニルなどのニトロフェニル基;シアノフェニル基、例えば、2、3または4−シアノフェニル;2、3、または4−メチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2、3または4−(イソプロピル)フェニル、2、3、または4−エチルフェニル、2、3または4−(n−プロピル)フェニルなどのモノ−またはジ(アルキル)フェニル基;モノまたはジ(アルコキシ)フェニル基、例えば、2,6−ジメトキシフェニル、2、3または4−(イソプロポキシ)フェニル、2、3または4−(t−ブトキシ)フェニル、3−エトキシ−4−メトキシフェニルなど;2、3または4−トリフルオロメチルフェニル;2、3もしくは4−カルボキシフェニルまたは2,4−ジ(保護されたカルボキシ)フェニルなどのモノ−もしくはジカルボキシフェニルまたは(保護されたカルボキシ)フェニル基;2、3もしくは4−(保護されたヒドロキシメチル)フェニルまたは3,4−ジ(ヒドロキシメチル)フェニルなどのモノ−もしくはジ(ヒドロキシメチル)フェニルまたは(保護されたヒドロキシメチル)フェニル;2、3もしくは4−(アミノメチル)フェニルまたは2,4−(保護されたアミノメチル)フェニルなどのモノ−もしくはジ(アミノメチル)フェニルまたは(保護されたアミノメチル)フェニル;あるいは2、3または4−(N−(メチルスルホニルアミノ))フェニルなどのモノ−またはジ(N−(メチルスルホニルアミノ))フェニルが含まれる。また、用語「置換フェニル」は、置換基が異なるジ置換フェニル基、例えば、3−メチル−4−ヒドロキシフェニル、3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル、2−メトキシ−4−ブロモフェニル、4−エチル−2−ヒドロキシフェニル、3−ヒドロキシ−4−ニトロフェニル、2−ヒドロキシ−4−クロロフェニルなども表す。
【0033】
用語「(置換フェニル)アルキル」とは、上述のアルキル基のうちの1つと結合した上記置換フェニル基のうちの1つを意味する。例には、2−フェニル−1−クロロエチル、2−(4’−メトキシフェニル)エチル、4−(2’,6’−ジヒドロキシフェニル)n−ヘキシル、2−(5’−シアノ−3’−メトキシフェニル)n−ペンチル、3−(2’,6’−ジメチルフェニル)n−プロピル、4−クロロ−3−アミノベンジル、6−(4’−メトキシフェニル)−3−カルボキシ(n−ヘキシル)、5−(4’−アミノメチルフェニル)−3−(アミノメチル)n−ペンチル、5−フェニル−3−オキソ−n−ペント−1−イル、(4−ヒドロキシナプト−2−イル)メチルなどの基が含まれる。
【0034】
上述のように、用語「芳香族」または「アリール」とは、6員の環状炭素をいう。また、上述のように、用語「ヘテロアリール」とは、酸素、硫黄および/または窒素原子、特に窒素などの1〜4個のヘテロ原子を、単独でまたは硫黄もしくは酸素環原子と結合して有する、任意選択で置換された5員または6員の環を示す。
【0035】
さらに、上記任意選択で置換された5員または6員の環は、任意選択で、芳香族の5員または6員の環系と縮合していることができる。例えば、環は、任意選択で、ピリジンまたはトリアゾール系などの芳香族の5員または6員の環系、好ましくはベンゼン環と縮合していることができる。
【0036】
以下の環系が、用語「ヘテロアリール」によって示されるヘテロ環(置換であれ非置換であれ)基の例である:チエニル、フリル、ピロリル、ピロリジニル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、チアトリアゾリル、オキサトリアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、オキサジニル、トリアジニル、チアジアジニルテトラゾロ、1,5−[b]ピリダジニルおよびプリニル、ならびにベンゾ縮合誘導体、例えば、ベンゾオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズイミダゾリルおよびインドリル。
【0037】
上記任意選択で置換されたヘテロアリール環の置換基は、1〜3個のハロ、トリハロメチル、アミノ、保護されたアミノ、アミノ塩、モノ置換アミノ、ジ置換アミノ、カルボキシ、保護されたカルボキシ、カルボン酸塩、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、ヒドロキシ基の塩、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、置換(シクロアルキル)アルキル、フェニル、置換フェニル、フェニルアルキル、および(置換フェニル)アルキルである。ヘテロアリール基の置換基は、本明細書中でここまでに定義したとおりであるか、または、トリハロメチルの場合は、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチル、もしくはトリヨードメチルであることができる。ヘテロアリール環の上記置換基と併せて使用した場合、「低級アルコキシ」とはC〜Cアルコキシ基を意味し、同様に、「低級アルキルチオ」とはC〜Cアルキルチオ基を意味する。
【0038】
用語「(モノ置換)アミノ」とは、フェニル、置換フェニル、アルキル、置換アルキル、C〜Cアシル、C〜Cアルケニル、C〜C置換アルケニル、C〜Cアルキニル、C〜C16アルキルアリール、C〜C16置換アルキルアリールおよびヘテロアリール基からなる群から選択される1個の置換基を有するアミノ基をいう。(モノ置換)アミノは、さらに、用語「保護された(モノ置換)アミノ」に包含されるアミノ保護基を有することができる。用語「(ジ置換)アミノ」とは、フェニル、置換フェニル、アルキル、置換アルキル、C〜Cアシル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜C16アルキルアリール、C〜C16置換アルキルアリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される2個の置換基を有するアミノ基をいう。2つの置換基は同一または異なるものであることができる。
【0039】
用語「ヘテロアリール(アルキル)」とは、任意の位置で上記定義したヘテロアリール基によって置換された、上記定義したアルキル基を示す。
【0040】
「任意選択の」または「任意選択で」とは、続いて記載する現象、状況、特徴、または要素が起こってもよいが必ずしも起こる必要はないことを意味し、また、記載には、現象または状況が起こる場合およびそれらが起こらない場合が含まれる。例えば、「任意選択でアルキル基でモノまたはジ置換されたヘテロシクロ基」とは、アルキルが存在してもよいが必ずしも存在する必要はないことを意味し、また、記載には、ヘテロシクロ基がアルキル基でモノまたはジ置換されている状況およびヘテロシクロ基がアルキル基で置換されていない状況が含まれる。
【0041】
同じ分子式を有するが、その原子の結合の性質もしくは順序または空間中のその原子の配置が異なる化合物は、「異性体」と呼ばれる。空間中のその原子の配置が異なる異性体は、「立体異性体」と呼ばれる。互いに鏡像でない立体異性体は「ジアステレオマー」と呼ばれ、互いに重ね合わせることができないが鏡像であるものは「鏡像異性体」と呼ばれる。化合物が不斉中心を有する場合、例えば、それが4つの異なる基と結合している場合、1対の鏡像異性体が可能である。鏡像異性体はその不斉中心の絶対的立体配置によって特徴づけることができ、カーン(Cahn)およびプレログ(Prelog)のR−とS−の順序付けルールによって記載されるか、または、分子が偏光の平面を回る様式に応じて記載され、右旋性もしくは左旋性(すなわち、それぞれ(+)もしくは(−)−異性体)と指定される。キラル化合物は、個々の鏡像異性体としてまたはその混合物として存在することができる。鏡像異性体を均等な割合で含む混合物は「ラセミ混合物」と呼ばれる。
【0042】
対象化合物は1つまたは複数の不斉中心を保有し得る。したがって、そのような化合物は、個々の(R)−もしくは(S)−立体異性体として、またはその混合物として生成することができる。別段に指摘しない限りは、明細書および特許請求の範囲内の特定の化合物の記載または命名には、個々の鏡像異性体およびラセミであれその他のものであれその混合物がどちらも含まれることを意図する。立体異性体の立体化学を決定する方法およびその分割方法は当分野で周知である(例えば、第4章、「先進的有機化学(Advanced Organic Chemistry)」、第4版、J.March、John Wiley and Sons、New York、1992年の考察参照)。
【0043】
本明細書中で使用する「と組み合わせて」とは、例えば、第1の化合物を、第2の化合物の投与の全過程中に投与する使用;第1の化合物を、第2の化合物の投与と重複する期間で投与する使用、例えば、第1の化合物の投与を、第2の化合物を投与する前に開始し、第1の化合物の投与を、第2の化合物の投与が終了する前に終了すること;第2の化合物の投与を、第1の化合物を投与する前に開始し、第2の化合物の投与を、第1の化合物の投与が終了する前に終了すること;第1の化合物の投与を、第2の化合物の投与を開始する前に開始し、第2の化合物の投与を、第1の化合物の投与が終了する前に終了すること;第2の化合物の投与を、第1の化合物の投与を開始する前に開始し、第1の化合物の投与を、第2の化合物の投与が終了する前に終了することをいう。したがって、「組み合わせて」とは、2つ以上の化合物の投与を含むレジメンもいうことができる。また、本明細書中で使用する「と組み合わせて」とは、同一または異なる配合物中で、異なる経路の同一によって、かつ同一または異なる剤形型で投与し得る2つ以上の化合物の投与もいう。
【0044】
本発明をさらに説明する前に、実施形態は当然ながら変化し得るため、本発明は記載した特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書中で使用する用語は特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図しないことも理解されたい。
【0045】
値の範囲を提示した場合は、その間のそれぞれの値は、文脈によりそうでないと明らかに示されている場合以外は下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限および下限とその定めた範囲内の任意の他の定めた値またはその間の値との間で、本発明内に包含されることを理解されたい。これらのより小さな範囲の上限および下限は、そのより小さな範囲内に独立して含まれてもよく、本発明内に包含されるが、但し、定めた範囲内で限界を具体的に排除する場合もある。定めた範囲に限界の一方または双方が含まれる場合は、これらの含まれる限界の一方または双方を排除した範囲も本発明に含まれる。
【0046】
特に定義しない限り、本明細書中で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の技術者によって一般的に理解される意味と同じ意味を持つ。本明細書中に記載のものと類似または等価の任意の方法および材料も本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。本明細書中で言及するすべての出版物は、言及されている出版物と関連した方法および/または材料を開示および説明するために、本明細書中に参考として組み込まれている。
【0047】
本明細書および添付の特許請求の範囲中で使用する単数形「a」、「an」、および「the」には、文脈によりそうでないと明らかに示されている場合以外は、複数形の指示対象が含まれることも注意されたい。したがって、例えば、「(a)ミトコンドリアアルデヒドデヒドロゲナーゼ−2アゴニスト(アゴニスト)」への言及には複数のそのようなアゴニストが含まれ、「(the)薬剤組成物」への言及には1つまたは複数の薬剤組成物および当業者に知られているその等価物への言及が含まれ、他もそうである。さらに、特許請求の範囲は、任意選択の要素をすべて排除するように記載されている場合があることに注意されたい。したがって、本記述は、特許請求の範囲の要素の列挙、または「否定的な」限定の使用に関連した「もっぱら」、「のみ」などの排他的な用語の使用の先行詞として役割を果たすことを意図する。
【0048】
本明細書中に記載する出版物は、本出願の出願日以前のその開示に関してのみ提供する。本明細書中に記載のものはすべて、先行発明の利点によって本発明がそのような出版物に先行する権利を持たないことを許容するものであると解釈されるべきでない。さらに、提供した出版物の日付は実際の出版日と異なる場合があり、これらは独立して確認する必要がある。
【0049】
詳細な説明
本発明は、ミトコンドリアアルデヒドデヒドロゲナーゼ−2(ALDH2)活性のモジュレーターとして機能する化合物、および該化合物を含む薬剤組成物を提供する。ALDH2のアゴニストは、例えば、虚血性ストレスに関連する状態、慢性のフリーラジカル関連疾患、急性のフリーラジカル関連疾患、ニトログリセリンに対する非感受性(例えば、狭心症および心不全におけるもの)、高血圧、糖尿病、ならびに骨粗鬆症を含めた様々な障害の治療に有用である。ALDH2のアゴニストはまた、エタノール、メタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ポリ塩化ビニル、異種アルデヒド、および生体アルデヒドなどの化合物の個体内レベルを低下させるためにも有用である。ALDH2のアゴニストはまた、摂取、吸収、または吸入した場合にALDH2のアルデヒド基質を生じさせる化合物の個体内レベルを低下させるためにも有用である。ALDH2のアンタゴニストは、ALDH2アンタゴニストを標準の癌治療のアジュバントとして使用する、癌などの障害を治療するために有用である。ALDH2のアンタゴニストはまた、アルコール依存症を治療するために有用である。ALDH2のアンタゴニストはまた、麻薬嗜癖を治療するために有用である。本発明は、対象化合物、または対象薬剤組成物を投与することを含む治療方法を提供する。本発明はさらに、ALDH2のアゴニストを同定するためのアッセイを提供する。
【0050】
或る実施形態では、治療する個体はヒトである。或る実施形態では、対象方法に従って治療するヒトは、2つの「野生型」ALDH2対立遺伝子を有するヒトである、例えば、図1Aに示すように、2つの野生型ALDH2対立遺伝子によってコードされているALDH2は、位置487にグルタミン酸を有する。他の実施形態では、対象方法に従って治療するヒトは、1つまたは2つの「ALDH22」対立遺伝子を有するヒトである、例えば、図1Bに示すように、一方または両方のALDH2対立遺伝子によってコードされているALDH2は、アミノ酸位置487としてリシンを含む。E487K多型性は半優性の多型性であり、「野生型」ALDH2よりも有意に低い酵素活性を有するALDH2四量体をもたらす。したがって、ALDH22対立遺伝子に対してヘテロ接合性またはホモ接合性である個体は、「野生型」ALDH2対立遺伝子に対してホモ接合性である個体よりもはるかに低いin vivoのALDH2活性レベルを有する。ALDH22対立遺伝子に対してヘテロ接合性またはホモ接合性である個体は、そのような個体におけるALDH2活性のレベルは特に低く、ALDH2活性レベルのどのような増加も治療効果をもたらすと予測されるため、対象ALDH2アゴニストを用いた治療から恩恵を受けると予測される。以下により詳細に記載するように、ALDH2活性のどのような増加も、虚血性障害などの状態の治療、ニトログリセリンに対するそのような個体の応答性の増加などにおいて有益である。
【0051】
ALDH2活性化剤(アゴニスト)を同定するためのスクリーニング方法におけるE487K ALDH2変異体などのALDH2変異体の使用も提供する。E487K ALDH2変異体の酵素活性は「野生型」ALDH2よりも低いため、試験化合物の作用活性の読取値はより高感度である。
【0052】
ミトコンドリアアルデヒドデヒドロゲナーゼ−2のモジュレーター
本発明は、ミトコンドリアアルデヒドデヒドロゲナーゼ−2(ALDH2)活性のモジュレーターとして機能する化合物、および該化合物を含む薬剤組成物を提供する。モジュレーターには、アゴニスト(本明細書中で「活性化剤」とも呼ぶ)およびアンタゴニスト(本明細書中で「阻害剤」とも呼ぶ)が含まれる。
【0053】
或る実施形態では、ALDH2活性を変調する化合物は、ALDH2のデヒドロゲナーゼ活性を変調する、例えば、化合物は、アルデヒド(例えば、異種アルデヒド、生体アルデヒド、または摂取、吸入、もしくは吸収した化合物から産生されたアルデヒド)を対応する酸へと酸化することにおいて、デヒドロゲナーゼ活性を変調する。他の実施形態では、ALDH2活性を変調する化合物は、ALDH2のエステラーゼ活性を変調する。他の実施形態では、ALDH2活性を変調する化合物は、ALDH2のレダクターゼ活性を変調する。例えば、ALDH2は、そのレダクターゼ活性を介してニトログリセリンを一酸化窒素(NO)へと変換することができる。
【0054】
上述のように、或る実施形態では、ALDH2活性を変調する化合物は、ALDH2のデヒドロゲナーゼ活性を変調する、例えば、化合物は、アルデヒド(例えば、異種アルデヒド、生体アルデヒド、または摂取、吸入、もしくは吸収した化合物から産生されたアルデヒド)を対応する酸へと酸化することにおいて、デヒドロゲナーゼ活性を変調する。
【0055】
様々な化合物がALDH2のアルデヒド基質を生じさせることができる。ALDH2のアルデヒド基質を生じさせることができる化合物の非限定的な例には、エタノール、様々な殺虫剤、塩化ビニル(例えばポリ塩化ビニル)などの工業毒、およびピルベートが含まれる。例えば、化合物は哺乳動物によって摂取、吸収(例えば皮膚を介して)、または吸入され、続いて哺乳動物内でALDH2のアルデヒド基質へと変換される。
【0056】
生体アルデヒドには、哺乳動物によって産生される、例えば、哺乳動物によって代謝的に産生されるアルデヒドが含まれる。生体アルデヒドの非限定的な例には、マロンジアルデヒド(MDA)などのω−6多価不飽和脂肪酸;ヘキサナール;アクロレイン;グリオキサール;クロトンアルデヒド;トランス−2−ノネナール;4−オキソ−2−ノネナール;および4−ヒドロキシ−2−ノネナール(HNE)(例えば、Ellis、Pharmacology & Therapeutics(2007)115:13、PickloおよびMontine(2007)J Alzheimers Dis.12:185参照);3−アミノプロパナール(3−AP)、ポリアミンオキシダーゼの産物;ならびにチロシン、セリンおよびスレオニンのアルデヒド産物(Wood他、Brain Res(2006)1095;190参照)が含まれる。
【0057】
異種アルデヒドには、哺乳動物の体外の供給源から、哺乳動物によって摂取、吸収、または吸入されるアルデヒドが含まれる。異種アルデヒドには、例えば、ホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒド(例えば、McGregor他、Crit Rev Toxicol(2006)36:821およびPandey他、Hum Exp.Toxicol.(2000)19:360);クロロアセトアルデヒド(例えば、Richardson他、Mutat.Research(2007)636:178参照);ならびにタバコの煙中に存在する反応性アルデヒド(Simth他、Inhal.Toxicol.(2006)18:667参照)が含まれる。
【0058】
ミトコンドリアALDH2の基質である化合物の非限定的な例には、3,4−ジヒドロキシフェイルアセトアルデヒド(DOPAL);ホルムアルデヒド;アセトアルデヒド;プロピオンアルデヒド;n−ブチルアルデヒド;カプロンアルデヒド;ヘプタアルデヒド;ペンタアルデヒド;オクチルアルデヒド;デシルアルデヒド;レチンアルデヒド;3−ヒドロキシベンズアルデヒド;2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド;フェニルアセトアルデヒド;3−フェニルプロピオンアルデヒド(例えば、Want他(2002)Drug Metabolism and Disposition 30:69参照);シンナモイルおよびヒドロシンナモイルアルデヒドならびにその誘導体アルデヒド(例えばp−ニトロシンナムアルデヒド、p−(ジメチルアミノ)シンナムアルデヒド、ヒドロシンナムアルデヒド、α−フェニルプロピオンアルデヒド);ベンズアルデヒドおよびその誘導体アルデヒド(例えば、2,4−ジニトロ−ベンズアルデヒド、o−ニトロ−ベンズアルデヒド、p−ニトロ−ベンズアルデヒド、p−メチル−ベンズアルデヒド、m−メチル−ベンズアルデヒド、p−メトキシ−ベンズアルデヒド、p−(ジメチルアミノ)−ベンズアルデヒド、m−メトキシ−ベンズアルデヒド、m−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド、3,4−ジメトキシ−ベンズアルデヒド、o−メトキシ−ベンズアルデヒド);ナフトアルデヒドおよびその誘導体アルデヒド(例えば、5−ブロモ−1−ナフトアルデヒド、5−ニトロ−1−ナフトアルデヒド、6−[O−(CH−COOH]−2−ナフトアルデヒド、6−(ジメチルアミノ)−2−ナフトアルデヒド);クマリン−4−カルボキシアルデヒドおよびその誘導体アルデヒド(例えば、7−アセトキシ−クマリン−4−カルボキシアルデヒド、7−(ジメチルアミノ)−クマリン−4−カルボキシアルデヒド、7−メトキシ−クマリン−4−カルボキシアルデヒド、6,7−ジメトキシ−クマリン−4−カルボキシアルデヒド);キノリン、キノリノンカルボキシアルデヒド、およびその誘導体アルデヒド(例えば、キノリン−3−カルボキシアルデヒド、7−(ジメチルアミノ)−2−キノリノン−4−カルボキシアルデヒド、キノリン−4−カルボキシアルデヒド、6−メトキシ−2−キノリノン−4−カルボキシアルデヒド);フェナントレン−9−カルボキシアルデヒド;インドール−3−アルデヒド、インドール−3−アクトアルデヒド;5−メトキシインドール−3−カルボキシアルデヒド;3−ピリジンカルボキシアルデヒド;フルオレン−2−カルボキシアルデヒド(例えば、Klyosov、(1996)、Biochemstry35:4457参照);4−ヒドロキシノネナール;マロンジアルデヒド;3,4−ジヒドロキシフェニルアセトアルデヒド;ならびに5−ヒドロキシルインドール−3−アセトアルデヒドが含まれる。また、例えば、Williams他(2005)Anal.Chem.77:3383;Marchitti他(2007)Pharmacol.Rev.59:125;ならびにHoffmanおよびMaser(2007)Drug Metab.Rev.39:87も参照されたい。
【0059】
ALDH2アゴニスト
本発明は、ALDH2アゴニスト(「活性化剤」とも呼ばれる)、およびALDH2アゴニストを含む薬剤組成物を提供する。ALDH2のアゴニストは、例えば、虚血性ストレスに関連する状態、慢性のフリーラジカル関連疾患、急性のフリーラジカル関連疾患、ニトログリセリンに対する非感受性(例えば、狭心症および心不全におけるもの)、高血圧、糖尿病、ならびに骨粗鬆症を含めた様々な障害の治療に有用である。アゴニストはまた、アルコール乱用、メタノール中毒、エチレングリコールモノメチルエーテル中毒、および他の異種または生体アルデヒド化合物による中毒の解毒にも有用である。
【0060】
ALDH2アゴニストは、ALDH2ポリペプチドの酵素活性を、アゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドの酵素活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%(すなわち2倍)、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、もしくは少なくとも約50倍、または50倍よりも高く増加させる。
【0061】
或る実施形態では、ALDH2アゴニストは、ALDH2ポリペプチドのデヒドロゲナーゼ活性(例えば、アルデヒド(例えば、異種アルデヒド、生体アルデヒド、または摂取、吸入、もしくは吸収した化合物から産生されたアルデヒド)を対応する酸へと酸化することにおけるデヒドロゲナーゼ活性)を、アゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドのデヒドロゲナーゼ活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%(すなわち2倍)、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、もしくは少なくとも約50倍、または50倍よりも高く増加させる。
【0062】
或る実施形態では、ALDH2アゴニストは、ALDH2ポリペプチドのエステラーゼ活性を、アゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドのエステラーゼ活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%(すなわち2倍)、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、もしくは少なくとも約50倍、または50倍よりも高く増加させる。
【0063】
或る実施形態では、ALDH2アゴニストは、ALDH2ポリペプチドのレダクターゼ活性を、アゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドのレダクターゼ活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%(すなわち2倍)、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、もしくは少なくとも約50倍、または50倍よりも高く増加させる。
【0064】
或る実施形態では、ALDH2アゴニストは、配列番号1(図1Aに示す)に記載の、または配列番号1のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドの酵素活性を、アゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドの酵素活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%(すなわち2倍)、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、もしくは少なくとも約50倍、または50倍よりも高く増加させる。
【0065】
或る実施形態では、ALDH2アゴニストは、配列番号1(図1Aに示す)に記載の、または配列番号1のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドのデヒドロゲナーゼ活性(例えば、アルデヒド(例えば、異種アルデヒド、生体アルデヒド、または摂取、吸入、もしくは吸収した化合物から産生されたアルデヒド)を対応する酸へと酸化することにおけるデヒドロゲナーゼ活性)を、アゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドのデヒドロゲナーゼ活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%(すなわち2倍)、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、もしくは少なくとも約50倍、または50倍よりも高く増加させる。
【0066】
或る実施形態では、ALDH2アゴニストは、配列番号1(図1Aに示す)に記載の、または配列番号1のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドのエステラーゼ活性を、アゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドのエステラーゼ活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%(すなわち2倍)、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、もしくは少なくとも約50倍、または50倍よりも高く増加させる。
【0067】
或る実施形態では、ALDH2アゴニストは、配列番号1(図1Aに示す)に記載の、または配列番号1のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドのレダクターゼ活性を、アゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドのレダクターゼ活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%(すなわち2倍)、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、もしくは少なくとも約50倍、または50倍よりも高く増加させる。
【0068】
或る実施形態では、ALDH2アゴニストは、配列番号2(図1Bに示す)に記載の、または配列番号2のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドの酵素活性を、アゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドの酵素活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%(すなわち2倍)、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、もしくは少なくとも約50倍、または50倍よりも高く増加させる。
【0069】
或る実施形態では、ALDH2アゴニストは、配列番号2(図1Bに示す)に記載の、または配列番号2のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドのデヒドロゲナーゼ活性(例えば、アルデヒド(例えば、異種アルデヒド、生体アルデヒド、または摂取、吸入、もしくは吸収した化合物から産生されたアルデヒド)を対応する酸へと酸化することにおけるデヒドロゲナーゼ活性)を、アゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドのデヒドロゲナーゼ活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%(すなわち2倍)、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、もしくは少なくとも約50倍、または50倍よりも高く増加させる。
【0070】
或る実施形態では、ALDH2アゴニストは、配列番号2(図1Bに示す)に記載の、または配列番号2のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドのエステラーゼ活性を、アゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドのエステラーゼ活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%(すなわち2倍)、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、もしくは少なくとも約50倍、または50倍よりも高く増加させる。
【0071】
或る実施形態では、ALDH2アゴニストは、配列番号2(図1Bに示す)に記載の、または配列番号2のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドのレダクターゼ活性を、アゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドのレダクターゼ活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%(すなわち2倍)、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、もしくは少なくとも約50倍、または50倍よりも高く増加させる。
【0072】
或る実施形態では、ALDH2アゴニストは、ALDH2に対して特異的(例えば選択的)である、例えば、対象ALDH2アゴニストは、ALDH2酵素の酵素活性を増加させるが、サイトゾルアルデヒドデヒドロゲナーゼ−1(ALDH1)の同じ酵素活性を実質的に増加させない、例えば、対象ALDH2アゴニストは、ALDH2酵素の同じ酵素活性を少なくとも約5%以上増加させる濃度で使用した場合に、ALDH1酵素の酵素活性を、増加させる場合は約5%未満、約2%未満、または約1%未満増加させる。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、アルコール脱水素酵素(ADH)の酵素活性を実質的に増加させない、例えば、対象ALDH2アゴニストは、ALDH2酵素の酵素活性を少なくとも約5%以上増加させる濃度で使用した場合に、ADHの酵素活性を、増加させる場合は約5%未満、約2%未満、または約1%未満増加させる。
【0073】
例えば、或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、ALDH2に対して特異的(例えば選択的)である、例えば、対象ALDH2アゴニストは、ALDH2酵素のデヒドロゲナーゼ活性を増加させるが、サイトゾルアルデヒドデヒドロゲナーゼ−1(ALDH1)のデヒドロゲナーゼ活性を実質的に増加させない、例えば、対象ALDH2アゴニストは、ALDH2酵素のデヒドロゲナーゼ活性を少なくとも約5%以上増加させる濃度で使用した場合に、ALDH1酵素のデヒドロゲナーゼ活性を、増加させる場合は約5%未満、約2%未満、または約1%未満増加させる。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、アルコール脱水素酵素(ADH)のデヒドロゲナーゼ活性を実質的に増加させない、例えば、対象ALDH2アゴニストは、ALDH2酵素のデヒドロゲナーゼ活性を少なくとも約5%以上増加させる濃度で使用した場合に、ADHのデヒドロゲナーゼ活性を、増加させる場合は約5%未満、約2%未満、または約1%未満増加させる。
【0074】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、約1nM〜約1mM、例えば、約1nM〜約10nM、約10nM〜約15nM、約15nM〜約25nM、約25nM〜約50nM、約50nM〜約75nM、約75nM〜約100nM、約100nM〜約150nM、約150nM〜約200nM、約200nM〜約250nM、約250nM〜約300nM、約300nM〜約350nM、約350nM〜約400nM、約400nM〜約450nM、約450nM〜約500nM、約500nM〜約750nM、約750nM〜約1μM、約1μM〜約10μM、約10μM〜約25μM、約25μM〜約50μM、約50μM〜約75μM、約75μM〜約100μM、約100μM〜約250μM、約250μM〜約500μM、または約500μM〜約1mMのEC50を有する。
【0075】
例えば、或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、約1nM〜約1mM、例えば、約1nM〜約10nM、約10nM〜約15nM、約15nM〜約25nM、約25nM〜約50nM、約50nM〜約75nM、約75nM〜約100nM、約100nM〜約150nM、約150nM〜約200nM、約200nM〜約250nM、約250nM〜約300nM、約300nM〜約350nM、約350nM〜約400nM、約400nM〜約450nM、約450nM〜約500nM、約500nM〜約750nM、約750nM〜約1μM、約1μM〜約10μM、約10μM〜約25μM、約25μM〜約50μM、約50μM〜約75μM、約75μM〜約100μM、約100μM〜約250μM、約250μM〜約500μM、または約500μM〜約1mMの、ミトコンドリアALDH2のデヒドロゲナーゼ活性のEC50を有する。
【0076】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、約1nM〜約1mM、例えば、約1nM〜約10nM、約10nM〜約15nM、約15nM〜約25nM、約25nM〜約50nM、約50nM〜約75nM、約75nM〜約100nM、約100nM〜約150nM、約150nM〜約200nM、約200nM〜約250nM、約250nM〜約300nM、約300nM〜約350nM、約350nM〜約400nM、約400nM〜約450nM、約450nM〜約500nM、約500nM〜約750nM、約750nM〜約1μM、約1μM〜約10μM、約10μM〜約25μM、約25μM〜約50μM、約50μM〜約75μM、約75μM〜約100μM、約100μM〜約250μM、約250μM〜約500μM、または約500μM〜約1mMの、配列番号1(図1Aに示す)に記載の、または配列番号1のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドのEC50を有する。
【0077】
例えば、或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、約1nM〜約1mM、例えば、約1nM〜約10nM、約10nM〜約15nM、約15nM〜約25nM、約25nM〜約50nM、約50nM〜約75nM、約75nM〜約100nM、約100nM〜約150nM、約150nM〜約200nM、約200nM〜約250nM、約250nM〜約300nM、約300nM〜約350nM、約350nM〜約400nM、約400nM〜約450nM、約450nM〜約500nM、約500nM〜約750nM、約750nM〜約1μM、約1μM〜約10μM、約10μM〜約25μM、約25μM〜約50μM、約50μM〜約75μM、約75μM〜約100μM、約100μM〜約250μM、約250μM〜約500μM、または約500μM〜約1mMの、配列番号:1(図1Aに示す)に記載の、または配列番号1のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドのデヒドロゲナーゼ活性のEC50を有する。
【0078】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、約1nM〜約1mM、例えば、約1nM〜約10nM、約10nM〜約15nM、約15nM〜約25nM、約25nM〜約50nM、約50nM〜約75nM、約75nM〜約100nM、約100nM〜約150nM、約150nM〜約200nM、約200nM〜約250nM、約250nM〜約300nM、約300nM〜約350nM、約350nM〜約400nM、約400nM〜約450nM、約450nM〜約500nM、約500nM〜約750nM、約750nM〜約1μM、約1μM〜約10μM、約10μM〜約25μM、約25μM〜約50μM、約50μM〜約75μM、約75μM〜約100μM、約100μM〜約250μM、約250μM〜約500μM、または約500μM〜約1mMの、配列番号2(図1Bに示す)に記載の、または配列番号2のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドのEC50を有する。
【0079】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、約1nM〜約1mM、例えば、約1nM〜約10nM、約10nM〜約15nM、約15nM〜約25nM、約25nM〜約50nM、約50nM〜約75nM、約75nM〜約100nM、約100nM〜約150nM、約150nM〜約200nM、約200nM〜約250nM、約250nM〜約300nM、約300nM〜約350nM、約350nM〜約400nM、約400nM〜約450nM、約450nM〜約500nM、約500nM〜約750nM、約750nM〜約1μM、約1μM〜約10μM、約10μM〜約25μM、約25μM〜約50μM、約50μM〜約75μM、約75μM〜約100μM、約100μM〜約250μM、約250μM〜約500μM、または約500μM〜約1mMの、配列番号2(図1Bに示す)に記載の、または配列番号2のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドのデヒドロゲナーゼ活性のEC50を有する。
【0080】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストはN−ベンジル−ベンズアミド化合物である。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、以下に示す一般式Iの化合物、またはそのプロドラッグ、製薬上許容される塩、類似体、もしくは誘導体である:
【化1】

式中、R、R、およびRのそれぞれは、H;ハロ(例えば、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード);置換または非置換のフェニル基;脂肪族基、アルキル基;置換アルキル基;アルケニル基;アルキニル基;置換または非置換の環状基;置換または非置換のヘテロ環基;置換または非置換のアリール基;および置換または非置換のヘテロアリール基から独立して選択される。
【0081】
AはCまたはSであり、A=Cである場合はa=1であり;A=Sである場合はa=2である。
ArおよびArは、置換アリール基、非置換アリール基、置換ヘテロアリール基および非置換ヘテロアリール基から独立して選択される。
【0082】
例えば、或る実施形態では、式IのArおよびArは、独立して、
【化2】

である[式中、R〜Rはそれぞれ、H;ハロ(例えば、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード);置換または非置換のフェニル基;脂肪族基、アルキル基;置換アルキル基;アルケニル基;アルキニル基;置換または非置換の環状基;置換または非置換のヘテロ環基;置換または非置換のアリール基;および置換または非置換のヘテロアリール基から独立して選択される]。他の実施形態では、式IのArおよびArは、独立して、置換または非置換のヘテロ環基、例えば、置換または非置換のピリジン、チアゾール、イミダゾール、チオフェン、キノリン、イソキノリン、またはフラン基である。
【0083】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストはN−ベンジル−ベンズアミド化合物である。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、以下に示す一般式IIの化合物、またはそのプロドラッグ、製薬上許容される塩、類似体、もしくは誘導体である:
【化3】

式中、XおよびXはそれぞれ、独立して、H、C、N、O、またはハロゲン(例えば、F、Br、Cl、もしくはI)であり;nは整数0または1であり;yは整数0または1である。
・・・(点線)は任意選択の結合であり;zは整数0、1、または2である。
AはCまたはSであり、A=Cである場合はa=1であり;A=Sである場合はa=2である。
Arは非置換もしくは置換のアリール基、置換ヘテロアリール基、または非置換ヘテロアリール基である。
〜Rはそれぞれ、H;ハロ(例えば、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード);置換または非置換のフェニル基;脂肪族基、アルキル基;置換アルキル基;アルケニル基;アルキニル基;置換または非置換の環状基;置換または非置換のヘテロ環基;置換または非置換のアリール基;および置換または非置換のヘテロアリール基から独立して選択される。
【0084】
例えば、或る実施形態では、式IIのArは、
【化4】

である。式中、R〜Rはそれぞれ、H;ハロ(例えば、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード);置換または非置換のフェニル基;脂肪族基、アルキル基;置換アルキル基;アルケニル基;アルキニル基;置換または非置換の環状基;置換または非置換のヘテロ環基;置換または非置換のアリール基;および置換または非置換のヘテロアリール基から独立して選択される。或る実施形態では、RおよびRはメチル基であり、R、R、およびRはHである。或る実施形態では、RおよびRはハロゲン基(例えば、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード)であり、R、R、およびRはHである。
【0085】
他の実施形態では、式IIのArは、置換または非置換のヘテロ環基、例えば、置換または非置換のピリジン、チアゾール、イミダゾール、チオフェン、キノリン、イソキノリン、またはフラン基である。或る実施形態では、式IIのArは、置換ピリジニル基、例えば、ジハロゲノ置換ピリジニル基である。
【0086】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、以下に示す一般式Iaの化合物、またはそのプロドラッグ、製薬上許容される塩、類似体、もしくは誘導体である:
【化5】

式中、XおよびXはそれぞれ、独立して、H、C、N、O、またはハロゲン(例えば、F、Br、Cl、もしくはI)である。
・・・(点線)は任意選択の結合である。
zは整数0、1、または2であり、但し、1)X=ハロゲンであり、・・・が結合でない場合、z=0であり;2)z=0である場合、X=Oであり、・・・は結合ではなく、1つまたは複数の酸素原子(X)が存在し、酸素はメチル基と結合している。
nは整数0または1である。
yは整数0または1である。
A=CまたはSであり、A=Cである場合はa=1であり;A=Sである場合はa=2である。
Arはフェニルまたはチオフェン環であり;Arは、カルボニルまたはスルホニル基に対してオルトの位置で、メチル、ハロ、トリフルオロメチル、またはフェニルから独立して選択される1つまたは複数の置換基によって任意選択で置換されており;Arは、カルボニルまたはスルホニル基に対してメタまたはパラのハロゲンによって任意選択で置換されており;Arがチオフェン環である場合、カルボニルまたはスルホニル基は、2または3位でチオフェン環と結合している。
【0087】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、以下に示す化合物1の構造を有する。
【化6】

化合物1:(N−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル)−2,6−ジクロロベンズアミド)
【0088】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、以下に示す化合物2の構造を有する。
【化7】

化合物2:(N−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル)−2,6−ジフルオロベンズアミド)
【0089】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、以下に示す化合物3の構造を有する。
【化8】

化合物3:(N−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル)−2−ブロモベンズアミド)
或る実施形態では、化合物1、化合物2、および化合物3のうちの1つまたは複数が特に除外される。
【0090】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、以下に示す化合物4の構造を有する。
【化9】

化合物4:(N−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル)−2−ヨードベンズアミド)
【0091】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、以下に示すXO−3、XO−4、XO−5、XO−9、XO−28、XO−29、XO−33、XO−36、XO−39、XO−12、XO−13、XO−6、XO−7、XO−8、XO−11、XO−22、XO−25、およびXO−26と命名された化合物のうちの1つの構造を有する。
【化10】

【化11】

【0092】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、以下に示す化合物XO−43の構造を有する。
【化12】

【0093】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、以下に示す化合物XO−44の構造を有する。
【化13】

【0094】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、以下に示す化合物XO−45の構造を有する。
【化14】

【0095】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、以下に示す化合物XO−46の構造を有する。
【化15】

【0096】
化合物がALDH2アゴニストであるかどうかは容易に確認することができる。ALDH2のデヒドロゲナーゼ活性のアッセイは当分野で知られており、任意の既知のアッセイを使用することができる。デヒドロゲナーゼアッセイの例は、例えば、Sheikh他((1997)J.Biol.Chem.272:18817〜18822);VallariおよびPietruszko(1984)J.Biol.Chem.259:4922;ならびにFarres他((1994)J.Biol.Chem.269:13854〜13860)を含めた様々な出版物中に見出される。
【0097】
デヒドロゲナーゼ活性のアッセイの例として、ALDH2を、25℃で、50mMのピロリン酸ナトリウムHCl緩衝液、pH9.0、100mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4、または50mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4中でアッセイし、但し、緩衝液には、NAD(例えば、0.8mMのNAD、またはそれより高いもの、例えば、1mM、2mM、または5mMのNAD)および14μMのプロピオンアルデヒドなどのアルデヒド基質が含まれる。NADの還元を、分光光度計を用いて340nmで、または蛍光微小光度計を用いた蛍光増加によって監視する。酵素活性は、標準の分光光度方法を用いて、例えば、US2005/0171043およびWO2005/057213に記載のように、かつ図2に模式図を示すように、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の酸化形態からその還元形態NADHの還元反応を340nmで測定することによって、アッセイすることができる。例示的なアッセイでは、反応は、25℃で、0.1のNaPPi緩衝液、pH9.5、2.4mMのNADおよび基質として10mMのアセトアルデヒド中で実施する。酵素活性は、US2005/0171043およびWO2005/057213に記載のように、NADからNADHへの還元反応によって340nmで測定する。あるいは、NADHの生成を、NADHを消費し、検出可能なシグナルを提供する別の酵素反応と連結させることができる。そのような酵素反応の例は、US2005/0171043およびWO2005/057213に記載のように、かつ図2に模式図を示すように、リザズリンをその酸化した蛍光化合物レゾルフィンへと還元する、ジアフォラーゼに基づいた反応である。蛍光レゾルフィンを590nmで検出することにより、ALDH2酵素活性の任意の変化のための、増幅されたより高感度のシグナルがもたらされる。
【0098】
化合物がALDH2のエステラーゼ活性を増加させるかどうかは、エステラーゼ活性の任意の既知のアッセイを用いて決定することができる。例えば、ALDH2のエステラーゼ活性は、p−ニトロフェノールの形成速度を400nmで、25mMのN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)(pH7.5)中で、800μMのp−酢酸ニトロフェニルを基質として、室温で、NADを加えてまたは加えずに監視することによって、決定することができる。ニトロフェノールの400nmでのpH依存性モル吸光係数である16mM−1cm−1を使用することができる。例えば、Larson他(2007)J.Biol.Chem.282:12940)を参照されたい。ALDH2のエステラーゼ活性は、p−ニトロフェノールの形成速度を、400nmで、50mMのPipes(pH7.4)中で、1mMのp−酢酸ニトロフェニル酢酸を基質として用いて測定することによって、決定することができる。p−ニトロフェノラートの400nmでのモル吸光係数である18.3×10−1cm−1を、その形成速度の計算に使用することができる。例えば、Ho他(2005)Biochemistry、44:8022)を参照されたい。
【0099】
化合物がALDH2のレダクターゼ活性を増加させるかどうかは、レダクターゼ活性の任意の既知のアッセイを用いて決定することができる。ALDH2のレダクターゼ活性は、二硝酸1,2−グリセリルおよび二硝酸1,3−グリセリルの形成速度を、薄層クロマトグラフィー(TLC)または液体シンチレーション分光測定方法を用いて、放射標識した基質を使用して測定することによって、決定することができる。例えば、0.1mMまたは1mMのGTN(三硝酸グリセリル)を、100mMのKPi(pH7.5)、0.5mMのEDTA、1mMのNADH、1mMのNADPHを含むアッセイ混合物(1ml)と共に、ALDH2の存在下でインキュベーションする。37℃で約10分間〜約30分間インキュベーションした後、反応を停止させ、GTNおよびその代謝物を3×4mlのエーテルで抽出し、プールし、溶媒を窒素流によって蒸発させる。最終体積は、続くTLC分離およびシンチレーション計数のためにエタノール中に100ml未満に保つ。例えば、ZhangおよびStamler(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、99:8306を参照されたい。
【0100】
化合物がALDH2の酵素活性を増加させるかどうかを決定する別の方法は、E487K ALDH2変異体を使用して、以下により詳細に記載する。
【0101】
ALDH2アンタゴニスト
本発明は、ALDH2アンタゴニスト(「ALDH2阻害剤」とも呼ぶ)、およびALDH2アンタゴニストを含む薬剤組成物を提供する。或る実施形態では、ALDH2アンタゴニストは、アルコール嗜癖を治療するために有用である。他の実施形態では、ALDH2アンタゴニストは、癌化学療法剤に対する癌細胞の感度を増加させる。したがって、或る実施形態では、ALDH2アンタゴニストは、癌の治療における標準の癌治療のアジュバントとして有用である。
【0102】
或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、ALDH2ポリペプチドの酵素活性を、アンタゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドの酵素活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低下させる。
【0103】
或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、ALDH2ポリペプチドのデヒドロゲナーゼ活性を、アンタゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドのデヒドロゲナーゼ活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低下させる。
【0104】
或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、ALDH2ポリペプチドのエステラーゼ活性を、アンタゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドのエステラーゼ活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低下させる。
【0105】
或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、ALDH2ポリペプチドのレダクターゼ活性を、アンタゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドのレダクターゼ活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低下させる。
【0106】
或る実施形態では、ALDH2アンタゴニストは、配列番号1(図1Aに示す)に記載の、または配列番号1のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドの酵素活性を、アンタゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドの酵素活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低下させる。
【0107】
或る実施形態では、ALDH2アンタゴニストは、配列番号1(図1Aに示す)に記載の、または配列番号1のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドのデヒドロゲナーゼ活性を、アンタゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドのデヒドロゲナーゼ活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低下させる。
【0108】
或る実施形態では、ALDH2アンタゴニストは、配列番号1(図1Aに示す)に記載の、または配列番号1のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドのエステラーゼ活性を、アンタゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドのエステラーゼ活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低下させる。
【0109】
或る実施形態では、ALDH2アンタゴニストは、配列番号1(図1Aに示す)に記載の、または配列番号1のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドのレダクターゼ活性を、アンタゴニストが存在しない場合のALDH2ポリペプチドのレダクターゼ活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低下させる。
【0110】
或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、ALDH2に対して特異的(例えば選択的)である、例えば、対象ALDH2アンタゴニストは、ALDH2酵素の酵素活性を低下させるが、サイトゾルアルデヒドデヒドロゲナーゼ−1(ALDH1)の酵素活性を実質的に低下させない、例えば、対象ALDH2アンタゴニストは、ALDH2酵素の酵素活性を少なくとも約10%以上低下させる濃度で使用した場合に、ALDH1酵素の酵素活性を、低下させる場合は約10%未満、約5%未満、約2%未満、または約1%未満低下させる。或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、アルコール脱水素酵素(ADH)の酵素活性を実質的に低下させない、例えば、対象ALDH2アンタゴニストは、ALDH2酵素の酵素活性を少なくとも約10%以上低下させる濃度で使用した場合に、ADHの酵素活性を、低下させる場合は約10%未満、約5%未満、約2%未満、または約1%未満低下させる。
【0111】
例えば、或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、ALDH2に対して特異的(例えば選択的)である、例えば、対象ALDH2アンタゴニストは、ALDH2酵素のデヒドロゲナーゼ活性を低下させるが、サイトゾルアルデヒドデヒドロゲナーゼ−1(ALDH1)のデヒドロゲナーゼ活性を実質的に低下させない、例えば、対象ALDH2アンタゴニストは、ALDH2酵素のデヒドロゲナーゼ活性を少なくとも約10%以上低下させる濃度で使用した場合に、ALDH1酵素のデヒドロゲナーゼ活性を、低下させる場合は約10%未満、約5%未満、約2%未満、または約1%未満低下させる。或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、アルコール脱水素酵素(ADH)のデヒドロゲナーゼ活性を実質的に低下させない、例えば、対象ALDH2アンタゴニストは、ALDH2酵素のデヒドロゲナーゼ活性を少なくとも約10%以上低下させる濃度で使用した場合に、ADHのデヒドロゲナーゼ活性を、低下させる場合は約10%未満、約5%未満、約2%未満、または約1%未満低下させる。
【0112】
或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは50μM未満のIC50を有する、例えば、対象ALDH2アンタゴニストは約50μM〜約5nm、または5nM未満のIC50を有する。例えば、或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、約50μM〜約25μM、約25μM〜約10μM、約10μM〜約5μM、約5μM〜約1μM、約1μM〜約500nM、約500nM〜約400nM、約400nM〜約300nM、約300nM〜約250nM、約250nM〜約200nM、約200nM〜約150nM、約150nM〜約100nM、約100nM〜約50nM、約50nM〜約30nM、約30nM〜約25nM、約25nM〜約20nM、約20nM〜約15nM、約15nM〜約10nM、約10nM〜約5nM、または約5nM未満のIC50を有する。
【0113】
例えば、或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは50μM未満のIC50を有する、例えば、対象ALDH2アンタゴニストは約50μM〜約5nm、または5nM未満のIC50を有する。例えば、或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、約50μM〜約25μM、約25μM〜約10μM、約10μM〜約5μM、約5μM〜約1μM、約1μM〜約500nM、約500nM〜約400nM、約400nM〜約300nM、約300nM〜約250nM、約250nM〜約200nM、約200nM〜約150nM、約150nM〜約100nM、約100nM〜約50nM、約50nM〜約30nM、約30nM〜約25nM、約25nM〜約20nM、約20nM〜約15nM、約15nM〜約10nM、約10nM〜約5nM、または約5nM未満の、ミトコンドリアALDH2のデヒドロゲナーゼ活性のIC50を有する。
【0114】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、約50μM〜約25μM、約25μM〜約10μM、約10μM〜約5μM、約5μM〜約1μM、約1μM〜約500nM、約500nM〜約400nM、約400nM〜約300nM、約300nM〜約250nM、約250nM〜約200nM、約200nM〜約150nM、約150nM〜約100nM、約100nM〜約50nM、約50nM〜約30nM、約30nM〜約25nM、約25nM〜約20nM、約20nM〜約15nM、約15nM〜約10nM、約10nM〜約5nM、または約5nM未満の、配列番号1(図1Aに示す)に記載の、または配列番号1のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドのIC50を有する。
【0115】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、約50μM〜約25μM、約25μM〜約10μM、約10μM〜約5μM、約5μM〜約1μM、約1μM〜約500nM、約500nM〜約400nM、約400nM〜約300nM、約300nM〜約250nM、約250nM〜約200nM、約200nM〜約150nM、約150nM〜約100nM、約100nM〜約50nM、約50nM〜約30nM、約30nM〜約25nM、約25nM〜約20nM、約20nM〜約15nM、約15nM〜約10nM、約10nM〜約5nM、または約5nM未満の、配列番号1(図1Aに示す)に記載の、または配列番号1のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドのデヒドロゲナーゼ活性のIC50を有する。
【0116】
或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、以下に示す一般式IIIの化合物、またはそのプロドラッグ、製薬上許容される塩、類似体、もしくは誘導体である:
【化16】

式中、Arは非置換または置換のフェニル基であり;
n=0、1、2、または3であり;
A=CまたはSであり、A=Cである場合はa=1であり;A=Sである場合はa=2であり;
およびRは、独立して、H;ハロ;置換または非置換のフェニル基;アミド、脂肪族基、アルキル基;置換アルキル基;アルケニル基;アルキニル基;置換または非置換の環状基;置換または非置換のヘテロ環基;置換または非置換のアリール基;および置換または非置換のヘテロアリール基である。
【0117】
或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、以下に示す一般式IVの化合物、またはそのプロドラッグ、製薬上許容される塩、類似体、もしくは誘導体である:
【化17】

式中、Arは、置換または非置換のフェニルまたはピリジル基であり;
は、H;ハロ(例えば、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード);置換または非置換のフェニル基;アミド、脂肪族基、アルキル基;置換アルキル基;アルケニル基;アルキニル基;置換または非置換の環状基;置換または非置換のヘテロ環基;置換または非置換のアリール基;および置換または非置換のヘテロアリール基から選択される。
【0118】
或る実施形態では、式IVのRは、
【化18】

[式中、R、R、R、およびRのそれぞれは、H;ハロ(例えば、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード);アミド;置換または非置換のフェニル基;脂肪族基、アルキル基;置換アルキル基;アルケニル基;アルキニル基;置換または非置換の環状基;置換または非置換のヘテロ環基;置換または非置換のアリール基;および置換または非置換のヘテロアリール基から独立して選択される]から選択される。
【0119】
或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、以下に示す一般式Vの化合物、またはそのプロドラッグ、製薬上許容される塩、類似体、もしくは誘導体である:
【化19】

式中、nは0〜20の整数(例えば、0、1、2、2、3、4、5〜10、10〜15、または15〜20)であり;
Arは、非置換または置換のフェニル、ナフチル、またはピリジルであり;
は、H;ハロ(例えば、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード);アミド;置換または非置換のフェニル基;脂肪族基、アルキル基;置換アルキル基;アルケニル基;アルキニル基;置換または非置換の環状基;置換または非置換のヘテロ環基;置換または非置換のアリール基;および置換または非置換のヘテロアリール基であり;
Zは、H;ハロ(例えば、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード);アミド;置換または非置換のフェニル基;脂肪族基、アルキル基;置換アルキル基;アルケニル基;アルキニル基;置換または非置換の環状基;置換または非置換のヘテロ環基;置換または非置換のアリール基;および置換または非置換のヘテロアリール基である。
【0120】
或る実施形態では、式VのZは、
【化20】

から選択される。
【0121】
或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、以下に示す一般式VIの化合物、またはそのプロドラッグ、製薬上許容される塩、類似体、もしくは誘導体である:
【化21】

式中、Arは、置換または非置換のフェニルまたはベンゾジオキサリルであり;
およびRは、独立して、H;ハロ(例えば、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード);アミド;置換または非置換のフェニル基;脂肪族基、アルキル基;置換アルキル基;アルケニル基;アルキニル基;置換または非置換の環状基;置換または非置換のヘテロ環基;置換または非置換のアリール基;および置換または非置換のヘテロアリール基であり;
点線は、置換または非置換であり得る任意選択のベンゼン環である。
【0122】
或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、以下に示す一般式VIIの化合物、またはそのプロドラッグ、製薬上許容される塩、類似体、もしくは誘導体である:
【化22】

式中、
Ar=置換または非置換のアリール基であり;
Z=置換または非置換のヘテロ環基であり;
Y=C、O、N、またはSであり;
A=CまたはSであり、A=Cである場合、n=1であり、A=Sである場合、n=2であり;
m=0〜20の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、5〜10、10〜15、または15〜20)である。
【0123】
或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、以下に示す一般式VIIaの化合物、またはそのプロドラッグ、製薬上許容される塩、類似体、もしくは誘導体である:
【化23】

式中、
Y=C、O、N、またはSであり;
A=CまたはSであり、A=Cである場合、n=1であり、A=Sである場合、n=2であり;
m=0、1、2、または3であり;
、R、R、およびRのそれぞれは、H、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル、−CF、−OCF、−NO、置換もしくは非置換のアミン、置換もしくは非置換のアミド、置換もしくは非置換の環状基、置換もしくは非置換のヘテロ環基、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基から独立して選択され;
およびXはそれぞれ、独立して、C、N、O、またはSであり、aは0、1、2、3、または4であり、bは0、1、2、3、または4である。
【0124】
或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、以下に示す化合物5(図9中で化合物62923と呼ぶ)である。
【化24】

【0125】
或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、以下に示す化合物6(図9中で化合物46072と呼ぶ)である。
【化25】

【0126】
或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、以下に示す化合物7(図10中で化合物32208と呼ぶ)である。
【化26】

【0127】
或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、以下に示す化合物8〜18から選択される。
【化27】

【化28】

【化29】

【0128】
化合物がALDH2アンタゴニストであるかどうかは容易に確認することができる。ALDH2のアッセイは当分野で知られており、任意の既知のアッセイを使用することができる。アッセイの例は、例えば、Sheikh他((1997)J.Biol.Chem.272:18817〜18822)およびFarres他((1994)J.Biol.Chem.269:13854〜13860)を含めた様々な出版物中に見つかる。例えば、ALDH2を、25℃で、50mMのピロリン酸ナトリウムHCl緩衝液、pH9.0、100mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4、または50mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4中でアッセイし、但し、緩衝液には、NAD(例えば、0.8mMのNAD、またはそれより高いもの、例えば、1mM、2mM、または5mMのNAD)および14μMのプロピオンアルデヒドなどの基質が含まれる。NADの還元を、分光光度計を用いて340nmで、または蛍光微小光度計を用いた蛍光増加によって監視する。酵素活性は、標準の分光光度方法を用いて、例えば、US2005/0171043およびWO2005/057213に記載のように、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の酸化形態からその還元形態NADHの還元反応を340nmで測定することによって、アッセイすることができる。例示的なアッセイでは、反応は、25℃で、0.1のNaPPi緩衝液、pH9.5、2.4mMのNADおよび基質として10mMのアセトアルデヒド中で実施する。酵素活性は、US2005/0171043およびWO2005/057213に記載のように、NADからNADHへの還元反応によって340nmで測定する。あるいは、NADHの生成を、NADHを消費し、検出可能なシグナルを提供する別の酵素反応と連結させることができる。そのような酵素反応の例は、US2005/0171043およびWO2005/057213に記載のように、リザズリンをその酸化した蛍光化合物レゾルフィンへと還元する、ジアフォラーゼに基づいた反応である。蛍光レゾルフィンを590nmで検出することにより、ALDH2酵素活性の任意の変化のための、増幅されたより高感度のシグナルがもたらされる。
【0129】
薬剤組成物、用量、投与経路
本発明は、対象ALDH2アゴニストを含む薬剤組成物を提供する。本発明は、対象ALDH2アンタゴニストを含む薬剤組成物を提供する。用語「ALDH2アゴニスト」および「ALDH2アンタゴニスト」は、本明細書中では「ALDH2活性モジュレーター」または「活性剤」と総称して使用する。対象ALDH2活性モジュレーターは1つまたは複数の製薬上許容される賦形剤と共に配合する。様々な製薬上許容される賦形剤が当分野で知られており、本明細書中で詳述する必要はない。製薬上許容される賦形剤は、例えば、A.Gennaro(2000)「レミントン:製薬学の科学および実施(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)」、第20版、Lippincott,Williams,& Wilkins;製薬剤形および薬物送達系(Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems)(1999)H.C.Ansel他編、第7版、Lippincott,Williams,& Wilkins;ならびに製薬賦形剤の手引き(Handbook of Pharmaceutical Excipients)(2000)A.H.Kibbe他編、第3版、Amer.Pharmaceutical Assoc.を含めた様々な出版物中に十分に記載されている。
【0130】
ビヒクル、アジュバント、担体または希釈剤などの製薬上許容される賦形剤は、容易に公的に入手可能である。さらに、pH調節剤および緩衝剤、等張性調節剤、安定化剤、湿潤剤などの製薬上許容される補助物質が、容易に公的に入手可能である。
【0131】
対象方法では、対象ALDH2活性モジュレーターを、自己免疫疾患に所望の軽減をもたらすことができる任意の好都合な手段を用いて、宿主に投与し得る。したがって、対象ALDH2活性モジュレーターは、治療的投与のために様々な配合物内に取り込ませることができる。より詳細には、対象ALDH2活性モジュレーターは、適切な製薬上許容される担体または希釈剤との組合せによって薬剤組成物中に配合することができ、固体、半固体、液体または気体形態で、例えば錠剤、カプセル、散剤、顆粒、軟膏、液剤、坐薬、注射剤、吸入剤およびエアロゾルとして、調製物中に配合し得る。
【0132】
製薬剤形中では、対象活性剤は、その製薬上許容される塩の形態で投与してもよく、または、対象活性剤は、単独で、もしくは他の製薬上活性のある化合物と適切に会合させておよび組み合わせて使用してもよい。以下の方法および賦形剤は単なる例示であり、いかなる様式でも限定するものではない。
【0133】
経口調製物には、対象活性剤を単独で、または適切な添加剤、例えば、ラクトース、マンニトール、コーンスターチまたはジャガイモデンプンなどの慣用の添加剤;結晶性セルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンなどの結合剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプンまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤;タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;ならびに所望する場合は、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存料および香味料と組み合わせて使用して、錠剤、散剤、顆粒またはカプセルを作製することができる。
【0134】
対象活性剤は、植物または他の同様の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸またはプロピレングリコールのエステルなどの水性または非水性溶媒中に、所望する場合は、可溶化剤、等張化剤、懸濁剤、乳化剤、安定化剤および保存料などの慣用の添加剤と共に、それらを溶解、懸濁または乳化させることによって、注射用の調製物中に配合することができる。
【0135】
対象活性剤は、吸入によって投与するエアロゾル配合物中で利用することができる。対象活性剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの許容される加圧噴霧剤中に配合することができる。
【0136】
さらに、対象活性剤は、乳化基剤または水溶性基剤などの様々な基剤と混合することによって坐薬として作製することができる。活性剤は、坐薬によって直腸投与することができる。坐薬には、体温で融解するが室温で固化している、カカオ脂、カーボワックスおよびポリエチレングリコールモノメチルエーテルなどのビヒクルが含まれることができる。
【0137】
シロップ、エリキシル、および懸濁液などの経口または直腸投与用の単位剤形を提供してもよく、それぞれの単位用量、例えば、茶さじ量、食さじ量、錠剤または坐薬は、事前に決定した量の対象活性剤を含む。同様に、注射または静脈内投与用の単位剤形は、滅菌水、通常生理食塩水または別の製薬上許容される担体中の液剤としての組成物中で対象活性剤を含み得る。
【0138】
本明細書中で使用する用語「単位剤形」とは、それぞれの単位が、製薬上許容される希釈剤、担体またはビヒクルに関連して所望の効果を生じるために十分な量で計算した、事前に決定した量の対象活性剤を含む、ヒトおよび動物対象の単位用量として適した、物理的に別個の単位をいう。対象活性剤の規格は、用いる具体的な化合物および達成する効果、ならびに宿主におけるそれぞれの化合物に関連する薬力学に依存する。
【0139】
対象活性剤は、注射による投与用に配合することができる。典型的には、注射用組成物は液体の液剤または懸濁液として調製し、注射前に液体ビヒクル中の溶液または懸濁液にするために適した固体形態も調製し得る。また、調製物は乳化されていてもよく、または活性成分がリポソームビヒクル内にカプセル封入されていてもよい。
【0140】
或る実施形態では、対象活性剤は連続送達系によって送達する。用語「連続送達系」とは、本明細書中で「制御送達系」と互換性があるように使用し、カテーテル、注射装置などと組み合わせた連続(例えば制御)送達装置(例えばポンプ)が包含され、その幅広い種類が当分野で知られている。
【0141】
機械または電気機械的注入ポンプも、本発明と共に使用するために適している場合がある。そのような装置の例には、例えば、米国特許第4,692,147号;第4,360,019号;第4,487,603号;第4,360,019号;第4,725,852号;第5,820,589号;第5,643,207号;第6,198,966号などに記載のものが含まれる。一般に、活性剤の送達は、様々な補充可能なポンプ系のうちの任意のものを使用して達成することができる。ポンプは、経時的に一貫した徐放性を提供する。或る実施形態では、薬剤は、薬物が不透過性のリザーバ内の液体配合物中にあり、連続的な様式で個体に送達される。
【0142】
一実施形態では、薬物送達系は、少なくとも部分的に移植可能な装置である。移植可能な装置は、当分野で周知の方法および装置を用いて、任意の適切な移植部位に移植することができる。移植部位とは、薬物送達装置を導入して配置する、対象の身体内の部位である。移植部位には、必ずしもそれだけには限定されないが、真皮下、皮下、筋肉内、または対象の身体内の他の適切な部位が含まれる。或る実施形態では、薬物送達装置の移植および除去に好都合なため、皮下移植部位を使用する。
【0143】
本発明での使用に適した薬物放出装置は、様々な動作様式のうちの任意のものに基づき得る。例えば、薬物放出装置は、拡散系、対流系、または浸食系(例えば浸食に基づいた系)に基づくことができる。例えば、薬物放出装置は、電気化学的ポンプ、浸透圧ポンプ、電気浸透圧ポンプ、蒸気圧ポンプ、または浸透圧破裂基質(osmotic bursting matrix)であることができ、例えば、薬物をポリマー内に取り込ませ、ポリマーが薬物浸透性高分子材料(例えば生分解性の薬物浸透性高分子材料)の分解と同時に薬物配合物の放出をもたらす。他の実施形態では、薬物放出装置は、電気拡散系、電解ポンプ、発泡ポンプ、圧電ポンプ、加水分解系などに基づく。
【0144】
機械または電気機械的注入ポンプに基づく薬物放出装置も、本発明と共に使用するために適している場合がある。そのような装置の例には、例えば、米国特許第4,692,147号;第4,360,019号;第4,487,603号;第4,360,019号;第4,725,852号などに記載のものが含まれる。一般に、対象の治療方法は、様々な補充可能な交換不可能なポンプ系のうちの任意のものを使用して達成することができる。経時的により一貫した徐放性を一般に提供するため、ポンプおよび他の対流系が一般に好ましい。或る実施形態では、より一貫した徐放性および比較的小さな大きさというその合わせた利点のため、浸透圧ポンプを使用する(例えば、PCT公開出願WO97/27840ならびに米国特許第5,985,305号および第5,728,396号参照)。本発明での使用に適した例示的な浸透圧駆動装置には、必ずしもそれだけには限定されないが、米国特許第3,760,984号;第3,845,770号;第3,916,899号;第3,923,426号;第3,987,790号;第3,995,631号;第3,916,899号;第4,016,880号;第4,036,228号;第4,111,202号;第4,111,203号;第4,203,440号;第4,203,442号;第4,210,139号;第4,327,725号;第4,627,850号;第4,865,845号;第5,057,318号;第5,059,423号;第5,112,614号;第5,137,727号;第5,234,692号;第5,234,693号;第5,728,396号などに記載のものが含まれる。
【0145】
或る実施形態では、薬物送達装置は移植可能な装置である。薬物送達装置は、当分野で周知の方法および装置を用いて、任意の適切な移植部位に移植することができる。下記に言及するように、移植部位とは、薬物送達装置を導入して配置する、対象の身体内の部位である。移植部位には、必ずしもそれだけには限定されないが、真皮下、皮下、筋肉内、または対象の身体内の他の適切な部位が含まれる。
【0146】
或る実施形態では、活性剤は、対象活性剤の投与をもたらすために、移植可能な薬物送達系、例えばプログラム可能な系を用いて送達する。例示的なプログラム可能な移植可能な系には、移植可能な注入ポンプが含まれる。例示的な移植可能な注入ポンプ、またはそのようなポンプと連結して有用な装置は、例えば、米国特許第4,350,155号;第5,443,450号;第5,814,019号;第5,976,109号;第6,017,328号;第6,171,276号;第6,241,704号;第6,464,687号;第6,475,180号;および第6,512,954号に記載されている。本発明に適用することができるさらなる例示的な装置は、Synchromed注入ポンプ(Medtronic)である。
【0147】
適切な賦形剤ビヒクルは、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびその組合せである。さらに、所望する場合は、ビヒクルは、湿潤剤もしくは乳化剤またはpH緩衝剤などの少量の補助物質を含み得る。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者に知られているか、または明らかである。例えば、レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、Mack Publishing Company、ペンシルバニア州Easton、第17版、1985を参照されたい。投与する組成物または配合物は、いずれの場合でも、治療中の対象において所望の状態をもたらすために十分な量の薬剤を含む。
【0148】
用量および投薬
治療中の対象および状態ならびに投与経路に応じて、対象化合物は、例えば、0.1μg〜10mg/体重1kg/日の用量で投与し得る。一般に、異なる哺乳動物の治療効果の有効性は広く変動し、用量が人間ではラットよりも典型的には20、30またはさらには40倍低い(単位体重あたり)ため、範囲は広い。同様に、投与様式も用量に大きな影響を有する場合がある。したがって、例えば、経口用量は注射用量の約10倍であり得る。局所的送達経路にはより高い用量を使用し得る。
【0149】
例えば、対象ALDH2活性モジュレーターは、約1mg〜約1000mg/用量、例えば、約1mg〜約5mg、約5mg〜約10mg、約10mg〜約20mg、約20mg〜約25mg、約25mg〜約50mg、約50mg〜約75mg、約75mg〜約100mg、約100mg〜約125mg、約125mg〜約150mg、約150mg〜約175mg、約175mg〜約200mg、約200mg〜約225mg、約225mg〜約250mg、約250mg〜約300mg、約300mg〜約350mg、約350mg〜約400mg、約400mg〜約450mg、約450mg〜約500mg、約500mg〜約750mg、または約750mg〜約1000mg/用量の量で投与することができる。
【0150】
例示的な用量は、静脈内投与に適した液剤、1日2〜6回摂取する錠剤、または1日1回摂取し、比例的に高い含量の活性成分を含む1つの持続放出カプセルもしくは錠剤などであり得る。持続放出効果は、異なるpH値で溶解するカプセル材料によって、浸透圧によってゆっくりと放出するカプセルによって、または任意の他の既知の徐放性手段によって得られ得る。
【0151】
当業者は、用量レベルが具体的な化合物、症状の重篤度および対象の副作用に対する感受性の関数として変動する場合があることを容易に理解されよう。所定の化合物の好ましい用量は、様々な手段によって当業者が容易に決定可能である。
【0152】
使用する用量は達成すべき臨床的目的に応じて変動するが、或る実施形態では、適切な用量範囲は、化合物を個体に投与した約24時間後に、治療中の個体から採取した血液試料中で約1μg〜約1,000μgまたは約10,000μgまでの対象化合物をもたらすものである。
【0153】
シロップ、エリキシル、および懸濁液などの経口または直腸投与用の単位剤形を提供してもよく、それぞれの単位用量、例えば、茶さじ量、食さじ量、錠剤または坐薬は、事前に決定した量の、本発明の1つまたは複数の化合物を含む組成物を含む。同様に、注射または静脈内投与用の単位剤形は、滅菌水、通常生理食塩水または別の製薬上許容される担体中の溶液としての組成物中で化合物(複数可)を含み得る。
【0154】
或る実施形態では、複数用量の対象化合物を投与する。対象化合物の投与頻度は、様々な要因のうちの任意のもの、例えば症状の重篤度などに応じて変動する場合がある。例えば、或る実施形態では、対象化合物は、月に1回、月に2回、月に3回、隔週(qow)、週に1回(qw)、週に2回(biw)、週に3回(tiw)、週に4回、週に5回、週に6回、隔日(qod)、1日1回(qd)、1日2回(qid)、または1日3回(tid)投与する。上述のように、或る実施形態では、対象化合物を連続的に投与する。
【0155】
対象化合物の投与期間、例えば対象化合物を投与する期間は、様々な要因のうちの任意のもの、例えば患者応答などに応じて変動する場合がある。例えば、対象化合物は、約1日〜約1週間、約2週間〜約4週間、約1カ月〜約2カ月、約2カ月〜約4カ月、約4カ月〜約6カ月、約6カ月〜約8カ月、約8カ月〜約1年間、約1年間〜約2年間、もしくは約2年間〜約4年間、またはそれより長い範囲の期間にわたって投与することができる。或る実施形態では、対象化合物は、個体の寿命の間、投与する。
【0156】
投与経路
対象ALDH2活性モジュレーターは、in vivoおよびex vivo方法、ならびに全身性および局所投与経路を含めた、薬物送達に適した任意の利用可能な方法および経路を用いて、個体に投与する。投与は、急性(例えば短期間、例えば、単一投与、1日〜1週間の投与)、または慢性(例えば長期間、例えば1週間よりも長い投与、例えば、約2週間〜約1カ月、約1カ月〜約3カ月、約3カ月〜約6カ月、約6カ月〜約1年間、もしくは1年間よりも長い期間にわたる投与)であることができる。
【0157】
慣用かつ製薬上許容される投与経路には、鼻腔内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、経皮、舌下、局所的塗布、静脈内、直腸、経鼻、経口、ならびに他の経腸および非経口の投与経路が含まれる。投与経路は、所望する場合は組み合わせてもよく、または、薬剤および/もしくは所望の効果に応じて調節してもよい。化合物は、単一用量または複数用量で投与することができる。
【0158】
活性剤は、全身性または局所経路を含めた、慣用の薬物の送達に適した任意の利用可能な慣用の方法および経路を用いて、宿主に投与することができる。一般に、本発明によって企図される投与経路には、必ずしもそれだけには限定されないが、経腸、非経口、または吸入経路が含まれる。
【0159】
吸入投与以外の非経口投与経路には、必ずしもそれだけには限定されないが、局所的、経皮、皮下、筋肉内、眼窩内、関節内、脊髄内、胸骨内、および静脈内の経路、すなわち、消化管以外の任意の投与経路が含まれる。非経口投与は、薬剤の全身性または局所送達をもたらすために運ぶことができる。全身性送達を所望する場合、投与は、典型的には、製薬調製物の侵襲性または全身吸収された局所的または粘膜性投与を含む。
【0160】
薬剤はまた、経腸投与によって対象に送達することもできる。経腸投与経路には、必ずしもそれだけには限定されないが、経口および直腸(例えば坐薬を使用)の送達が含まれる。
【0161】
皮膚または粘膜を介して薬剤を投与する方法には、必ずしもそれだけには限定されないが、適切な製薬調製物の局所的塗布、経皮透過、注射および表皮投与が含まれる。経皮透過には、吸収促進剤またはイオン泳動が適切な方法である。イオン泳動透過は、数日間以上の間、無傷の皮膚から電気パルスによってその生成物を連続的に送達する、市販の「パッチ」を用いて達成し得る。
【0162】
治療方法
本発明は、それを必要としている個体に、有効量の対象アゴニスト、または有効量の対象アンタゴニストを投与することを一般に含む、様々な治療方法を提供する。対象ALDH2アゴニストは、例えば、虚血性ストレスに関連する状態、慢性のフリーラジカル関連疾患、急性のフリーラジカル関連疾患、ニトログリセリンに対する非感受性(例えば、狭心症および心不全におけるもの)、高血圧、糖尿病、ならびに骨粗鬆症を含めた様々な障害の治療に適している。対象ALDH2アンタゴニストは、癌細胞を癌化学療法剤または他の標準の癌治療に対して感作させるため;アルコール(例えば、エタノール、エチルアルコール)嗜癖を治療するため;および麻薬嗜癖を治療するために適している。
【0163】
虚血性ストレスに関連する状態の治療方法
本発明は、それを必要としている個体に有効量の対象ALDH2アゴニストを投与することを一般に含む、個体における、虚血性ストレスに関連する状態の、予防的方法を含めた治療方法を提供する。虚血性ストレスに関連する状態には、虚血状態、虚血現象、虚血を生じさせる可能性のある状態、および虚血現象から生じる状態が含まれる。対象方法で治療可能な虚血性ストレスに関連する状態には、それだけには限定されないが、心筋梗塞(例えば急性心筋梗塞)、心臓手術、脳外傷、脳血管疾患、脳卒中、脊髄傷害、くも膜下出血、様々な臓器の虚血が起こる大手術、臓器移植、肢虚血(例えば、1型または2型糖尿病から生じる)などを含めた、任意の状態または現象から生じる虚血が含まれる。
【0164】
或る実施形態では、薬剤は、予想または予測される虚血現象の前、例えば虚血現象の約1時間〜約1週間、例えば、予想または予測される虚血現象の約1時間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約4時間〜約8時間、約8時間〜約12時間、約12時間〜約16時間、約16時間〜約24時間、約24時間〜約36時間、約36時間〜約48時間、約48時間〜約72時間、または約72時間〜約1週間前に投与する。
【0165】
特定の状況下、例えば、対象が脳卒中を既に経験している場合、対象が心臓手術を受けようとしている場合などでは、活性剤を用いた前治療が望ましい。例えば、脳卒中を既に経験している患者は、2回目の脳卒中を経験する確率が高くなっている。一過性虚血性発作を起こしやすい対象も脳卒中のリスクが高い。くも膜下出血を患っている対象は、血管を狭窄する血管攣縮によって誘発されるさらなる虚血現象を経験し得る。脳などの臓器の外傷を経験している対象も虚血現象を起こしやすい。長時間にわたる手術を受ける対象も虚血現象を起こしやすい。上記状況は、対象が対象ALDH2アゴニストを用いた前治療から恩恵を受ける状況を例示している。
【0166】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、虚血現象後に投与する。例えば、対象ALDH2アゴニストは、心虚血、再灌流傷害、脳血管疾患、急性心筋梗塞、くも膜下出血、および外傷などの虚血現象の有害作用を軽減させるために有効である。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、虚血現象の1分間以内〜15時間以内、例えば、約1分間〜約5分間、約5分間〜約10分間、約10分間〜約15分間、約15分間〜約30分間、約30分間〜約60分間、約60分間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約4時間〜約8時間、約8時間〜約12時間、または約12時間〜約15時間後に投与する。或る実施形態では、増加した濃度の対象ALDH2アゴニストが、虚血現象の後に少なくとも数時間〜数日間、血漿中に維持される。
【0167】
例えば、或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、急性心筋梗塞(AMI)を患った個体に、AMIの1分間以内〜15時間以内、例えば、約1分間〜約5分間、約5分間〜約10分間、約10分間〜約15分間、約15分間〜約30分間、約30分間〜約60分間、約60分間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約4時間〜約8時間、約8時間〜約12時間、または約12時間〜約15時間後に投与する。
【0168】
慢性および急性のフリーラジカル関連疾患の治療方法
本発明は、それを必要としている個体に有効量の対象ALDH2アゴニストを投与することを一般に含む、個体における急性および慢性のフリーラジカル関連疾患の治療方法を提供する。
【0169】
急性のフリーラジカル関連障害
本発明は、それを必要としている個体に有効量の対象ALDH2アゴニストを投与することを一般に含む、個体における急性のフリーラジカル関連疾患の治療方法を提供する。対象方法で治療可能な急性のフリーラジカル関連障害には、癲癇発作(Patel他(2001)Journal of Neurochemistry 79:1065〜1069);UV曝露から生じる皮膚損傷、および皮膚の光損傷(例えば「日光皮膚炎」)(Aldini他(2007)Chem Res Toxicol.20(3):416〜23);急性熱皮膚火傷傷害(Pintaudi他(2000)Free Radic Res.33(2):139〜46);ならびに組織過酸素症(例えば、過酸素症誘発性慢性肺疾患および気管支肺異形成)(Xu他(2006)Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol.291(5):L966〜75)が含まれる。
【0170】
本発明は、それを必要としている個体に有効量の対象ALDH2アゴニストを投与することを一般に含む、個体における日光皮膚炎の治療方法を提供する。或る実施形態では、日光皮膚炎を治療する対象方法は、対象ALDH2アゴニストを含む配合物を、日光皮膚炎によって冒された皮膚の領域に局所的塗布することを含む。
【0171】
本発明は、それを必要としている個体に有効量の対象ALDH2アゴニストを投与することを一般に含む、個体における癲癇発作の治療方法を提供する。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、癲癇発作が起こった後、例えば、癲癇発作の約1分間以内〜約5分間、約5分間〜約15分間、約15分間〜約30分間、約30分間〜約1時間、または約1時間〜約4時間後に投与する。他の実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、予防的に投与する、例えば、対象ALDH2アゴニストを、過去に癲癇発作を経験したことがある個体に、別の癲癇発作が起こる可能性を下げるために投与する。或る実施形態では、有効量の対象ALDH2アゴニストとは、癲癇発作の重篤度、癲癇発作の頻度、および癲癇発作の持続期間のうちの少なくとも1つを減少させるために有効な量である。
【0172】
慢性のフリーラジカル関連疾患
本発明は、それを必要としている個体に有効量の対象ALDH2アゴニストを投与することを一般に含む、個体における慢性のフリーラジカル関連疾患の治療方法を提供する。対象方法で治療可能な慢性のフリーラジカル関連障害には、パーキンソン病およびアルツハイマー病などの神経変性疾患(Burke他(2003)Neurol.Dis.2(2):143;ならびにOhtaおよびOhsawa(2006)J.Alzheimer’s Disease、9(2):155);筋萎縮性側索硬化症(ALS);癌、例えば、食道癌(Chen他(2006)Int J Cancer、2119(12):2827〜31);上気道消化管癌(Hashibe他(2006)Cancer Epidemiol Biomarkers Prev.15(4):696〜703);頭頸部扁平細胞癌(Hashimoto他(2006)Tumour Biol.27(6):334〜8;Yokoyama他(2005)Alcohol.35(3):175〜85);アテローム性動脈硬化症などの心血管病(Narita他(2003)Ultrasound in Medicine and Biology、29(10):1415〜1419)などが含まれる。或る実施形態では、慢性のフリーラジカル関連疾患は、慢性(例えば1日1回)の対象ALDH2アゴニストを用いた治療によって治療する。
【0173】
本発明は、個体に有効量の対象ALDH2アゴニストを投与することを一般に含む、アルツハイマー病(AD)を患っている個体においてADを治療する方法を提供する。或る実施形態では、「有効量」の対象ALDH2アゴニストとは、個体における認知機能の低下を少なくとも遅らせるために有効な量である。或る実施形態では、「有効量」の対象ALDH2アゴニストとは、治療中の個体において記憶を向上させるために有効な量である。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、個体に、約3カ月〜約6カ月、約6カ月〜約1年間、または1年間より長い期間にわたって全身投与する。
【0174】
本発明は、個体に有効量の対象ALDH2アゴニストを投与することを一般に含む、個体においてパーキンソン病を治療する方法を提供する。或る実施形態では、「有効量」の対象ALDH2アゴニストとは、パーキンソン病の1つまたは複数の症状を寛解させるために有効な量である。或る実施形態では、「有効量」の対象ALDH2アゴニストとは、疾患の進行を遅らせるために有効な量である。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、個体に、約3カ月〜約6カ月、約6カ月〜約1年間、または1年間より長い期間にわたって全身投与する。
【0175】
心臓状態の治療方法
本発明は、狭心症、心不全、狭心症および心不全におけるニトログリセリンに対する非感受性(Li他(2006)J.Clin.Invest.116:506〜511)、高血圧(Asselin他(2006)Free Radical Biol.and Med.41:97)、ならびに心疾患などの障害の治療方法を提供する。本方法は、それを必要としている個体に有効量の対象ALDH2アゴニストを投与することを一般に含む。
【0176】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストを、ニトログリセリン治療と併せて個体に投与する。対象ALDH2アゴニストおよびニトログリセリンは、同一の投与経路(例えば、経口、舌下、経皮、経舌など)によって投与することができる。代替方法では、対象ALDH2アゴニストおよびニトログリセリンは、異なる投与経路によって投与することができる。例えば、或る実施形態では、ニトログリセリンを舌下、経舌、経皮、または経口投与し、対象ALDH2アゴニストを異なる投与経路(例えば、静脈内、筋肉内など)によって投与する。ALDH2アゴニストは、ニトログリセリンを投与する前、その間、またはその後に投与することができる。
【0177】
有効量の対象ALDH2アゴニストとは、ニトログリセリンとの組合せ療法で投与した場合に、狭心症を、ALDH2アゴニストを投与した約1分間〜約2分間、約2分間〜約3分間、約3分間〜約4分間、約4分間〜約5分間、または約5分間〜約10分間以内の期間に、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれより多く低下させるために有効な量をいう。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストおよびニトログリセリンは、実質的に同時に、例えば、互いに約2分間以内、約1分間以内、または約30秒間以内に投与する。用語「ニトログリセリンとの組合せ療法」には、対象ALDH2アゴニストをニトログリセリンと実質的に同時に投与すること;対象ALDH2アゴニストをニトログリセリンの投与の前に投与すること;対象ALDH2アゴニストをニトログリセリンの投与の後に投与することなどが包含される。
【0178】
或る実施形態では、有効量の対象ALDH2アゴニストとは、高血圧を治療する、例えば、個体において高血圧の1つまたは複数の症状または徴候を軽減させるために有効な量である。例えば、或る実施形態では、有効量の対象ALDH2アゴニストとは、個体において血圧を、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約25%、またはそれより高く減少させる、あるいは、個体の血圧を正常な範囲内にするために有効な量である。
【0179】
或る実施形態では、有効量の対象ALDH2アゴニストとは、心疾患を治療する、例えば、個体において心疾患の1つまたは複数の症状または徴候を軽減させるために有効な量である。所定のALDH2アゴニストが心疾患を治療するために有効であるかどうかは、心臓機能を評価する標準の方法、例えば、心電図、血管造影図などを用いて決定することができる。
【0180】
解毒方法
本発明は、それを必要としている個体に有効量の対象ALDH2アゴニストを投与することを一般に含む、個体において毒性化合物のレベルを低下させる方法を提供する。本発明は、それを必要としている個体に有効量の対象ALDH2アゴニストを投与することを一般に含む、毒性レベルの化合物(例えば、異種アルデヒド、生体アルデヒド、または摂取、吸収、もしくは吸入した場合にALDH2のアルデヒド基質を生じさせる化合物)に関連する、あるいはそれから生じる障害の治療方法を提供し、個体における化合物レベルが無毒性レベルまで低下する。
【0181】
対象方法を用いて個体におけるレベルを低下させることができる毒性化合物には、それだけには限定されないが、エタノール、メタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、異種アルデヒド、生体アルデヒド、および摂取、吸収、または吸入した化合物のin vivo代謝によって生じたアルデヒドが含まれる。対象ALDH2アゴニストは、1つまたは複数の用量で投与した場合に、エタノール、メタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、異種アルデヒド、生体アルデヒド、または摂取、吸収、もしくは吸入した化合物のin vivo代謝によって生じたアルデヒドなどの化合物の毒性レベルを低下させるために有効な量で、投与する。或る実施形態では、アルデヒドはアセトアルデヒドである。
【0182】
例として、対象ALDH2アゴニストは、過剰なアルコール(例えばエタノール)消費後に個体に投与し、個体における毒性レベルのアルコールまたはアルデヒド(例えばエタノールの代謝産物であるアルデヒド)は、ALDH2アゴニストを用いた治療前の個体におけるアルコールまたはアルデヒドのレベルと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれより多く低下する。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、毒性があるアルコールまたはアルデヒドのレベルを、ALDH2アゴニストを投与した後の約5分間以内〜約15分間、約15分間〜約30分間、約30分間〜1時間、約1時間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約4時間〜約6時間、もしくは約6時間〜約8時間、またはそれより後に、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれより多く低下させるために有効な量で、投与する。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、毒性があるアルコールまたはアルデヒドのレベルを無毒性レベルまで、ALDH2アゴニストを投与した後の約5分間以内〜約15分間、約15分間〜約30分間、約30分間〜1時間、約1時間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約4時間〜約6時間、もしくは約6時間〜約8時間、またはそれより後に低下させるために有効な量で、投与する。
【0183】
例として、対象ALDH2アゴニストは、過剰なアルコール(例えばエタノール)消費後に個体に投与し、個体におけるアセトアルデヒドのレベルは、ALDH2アゴニストを用いた治療前の個体におけるアルコールまたはアルデヒドのレベルと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれより多く低下する。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、アセトアルデヒドのレベルを、ALDH2アゴニストを投与した後の約5分間以内〜約15分間、約15分間〜約30分間、約30分間〜1時間、約1時間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約4時間〜約6時間、もしくは約6時間〜約8時間、またはそれより後に、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれより多く低下させるために有効な量で、投与する。
【0184】
本発明は、有効量の対象ALDH2アゴニストを投与することを一般に含む、アルデヒドの毒性を減少させる方法を提供する。或る実施形態では、有効量のALDH2アゴニストとは、アルデヒドの毒性の1つまたは複数の症状を軽減させるために有効な量である。例えば、或る実施形態では、有効量のALDH2アゴニストとは、例えば、頭痛、脱水、疲労、嘔気、嘔吐、下痢、脱力感、不安、被刺激性、羞明、音恐怖などを含めた、過剰なエタノール消費の1つまたは複数の症状を軽減させるために有効な量である。
【0185】
例として、対象ALDH2アゴニストは、毒性レベルのアルデヒド(例えば過剰なエタノール消費後)を有する個体に投与し、個体における毒性があるアルデヒドレベルは、ALDH2アゴニストを用いた治療前の個体におけるアルデヒドのレベルと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれより多く低下する。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、毒性があるアルデヒドレベルを、ALDH2アゴニストを投与した後の約5分間以内〜約15分間、約15分間〜約30分間、約30分間〜1時間、約1時間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約4時間〜約6時間、もしくは約6時間〜約8時間、またはそれより後に、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれより多く低下させるために有効な量で、投与する。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、毒性があるアルデヒドレベルを無毒性レベルまで、ALDH2アゴニストを投与した後の約5分間以内〜約15分間、約15分間〜約30分間、約30分間〜1時間、約1時間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約4時間〜約6時間、もしくは約6時間〜約8時間、またはそれより後に低下させるために有効な量で、投与する。
【0186】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、上述のように、例えば過剰なエタノール消費後に、エタノールおよびアルデヒドの両方のレベルを低下させる。
【0187】
別の例として、対象ALDH2アゴニストは、メタノールまたはエチレングリコールモノメチルエーテルの毒性レベルを有する個体に投与し、メタノールまたはエチレングリコールモノメチルエーテルの毒性レベルは、ALDH2アゴニストを用いた治療前の個体におけるメタノールまたはエチレングリコールモノメチルエーテルのレベルと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれより多く低下する。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、毒性があるメタノールまたはエチレングリコールモノメチルエーテルのレベルを、ALDH2アゴニストを投与した後の約5分間以内〜約15分間、約15分間〜約30分間、約30分間〜1時間、約1時間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約4時間〜約6時間、もしくは約6時間〜約8時間、またはそれより後に、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれより多く低下させるために有効な量で、投与する。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、毒性があるメタノールまたはエチレングリコールモノメチルエーテルのレベルを無毒性レベルまで、ALDH2アゴニストを投与した後の約5分間以内〜約15分間、約15分間〜約30分間、約30分間〜1時間、約1時間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約4時間〜約6時間、もしくは約6時間〜約8時間、またはそれより後に低下させるために有効な量で、投与する。
【0188】
別の例として、対象ALDH2アゴニストは、薬物毒性、例えば、薬物(例えば、製薬化合物、違法薬物など)を摂取、吸収、または吸入した後に毒性レベルのアルデヒドを示す個体に投与する。或る実施形態では、アルデヒドは、薬物の摂取、吸収、または吸入後に、身体内における薬物の代謝によって生成される。アルデヒドの毒性レベルは、ALDH2アゴニストを用いた治療前の個体におけるアルデヒドのレベルと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれより多く低下する。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、毒性があるアルデヒドレベルを、ALDH2アゴニストを投与した後の約5分間以内〜約15分間、約15分間〜約30分間、約30分間〜1時間、約1時間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約4時間〜約6時間、もしくは約6時間〜約8時間、またはそれより後に、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれより多く低下させるために有効な量で、投与する。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、毒性があるアルデヒドレベルを無毒性レベルまで、ALDH2アゴニストを投与した後の約5分間以内〜約15分間、約15分間〜約30分間、約30分間〜1時間、約1時間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約4時間〜約6時間、もしくは約6時間〜約8時間、またはそれより後に低下させるために有効な量で、投与する。
【0189】
サルソリノールレベルを低下させる方法
本発明は、個体に有効量の対象ALDH2アゴニストを投与することを一般に含む、個体においてサルソリノールレベルを低下させる方法を提供する。サルソリノール(1−メチル−6,7−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキオノリン)は、ドーパミンとアセトアルデヒドとの縮合生成物である。アセトアルデヒドはエタノールの代謝産物である。血漿サルソリノールレベルは、アルコール依存症でない人よりもアルコール依存症の人で高い。サルソリノールレベルの低下は、アルコール嗜癖の軽減に有用である。
【0190】
或る実施形態では、有効量の対象ALDH2アゴニストは、それを必要としている個体に、過剰なアルコール(例えばエタノール)消費後に投与し、有効量は、ALDH2アゴニストを用いた治療前の個体におけるサルソリノールレベルと比較して、個体におけるサルソリノールのレベルを、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれより多く低下させることをもたらす。或る実施形態では、有効量の対象ALDH2アゴニストは、それを必要としている個体に、任意の時点で投与する(例えば、必ずしも過剰なアルコール消費後ではない)。或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、サルソリノールレベルを、ALDH2アゴニストを投与した後の約5分間以内〜約15分間、約15分間〜約30分間、約30分間〜1時間、約1時間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約4時間〜約6時間、もしくは約6時間〜約8時間、またはそれより後に、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれより多く低下させるために有効な量で、投与する。これらの実施形態の一部では、個体とは、アルコール依存症を診断された者である。アルコール依存症の症状および診断は、例えば、EnochおよびGoldman(2002)American Family Physician、65:441に記載されている。
【0191】
アルコール嗜癖の治療方法
本発明は、個体におけるアルコール(エタノール)嗜癖の治療方法を提供する。本方法は、それを必要としている個体に有効量の対象ALDH2アンタゴニストを投与することを一般に含む。
【0192】
対象ALDH2アンタゴニストは、アルコール嗜癖を治療するために個体に定期的に投与することができる。例えば、或る実施形態では、対象ALDH2アンタゴニストは、それを必要としている個体に、1日2回、1日1回、隔日、週に2回、週に1回、または月に2回投与する。対象ALDH2アンタゴニストは、アルコール嗜癖を治療するために経皮「パッチ」の形態で投与することができる。
【0193】
本明細書中で使用する「アルコール嗜癖を治療すること」には、以下のうちの1つまたは複数を達成することが含まれる:アルコールの消費量の減少;アルコールを消費する頻度の減少;アルコールの渇望の減少;および過剰なアルコール消費の症状の1つまたは複数の軽減。アルコール嗜癖の文脈において本明細書中で使用する「アルコール」とは、エタノール、例えば、体積で2%、3%、4%、5%、またはそれより高いエタノールを含む飲料、例えば、ワイン、ビール、ウォッカ、ウイスキーなどをいう。
【0194】
癌の治療方法
本発明は、個体における癌の治療方法を提供する。本方法は、それを必要としている個体に有効量の対象ALDH2アンタゴニストを、標準の癌治療と併せて投与することを一般に含む。標準の癌治療には、手術(例えば癌組織の外科的除去)、放射線療法、骨髄移植、化学療法治療、生物学的応答調節剤治療、および前述のものの特定の組合せが含まれる。
【0195】
放射線療法には、それだけには限定されないが、ビームなどの外部から施用する供給源から、または小さな放射源の移植によって送達するX線またはγ線が含まれる。
【0196】
化学療法剤とは、癌細胞の増殖を減少させる非ペプチド(すなわち非タンパク質)化合物であり、細胞毒性剤および細胞分裂抑制剤が包含される。化学療法剤の非限定的な例には、アルキル化剤、ニトロソ尿素、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、植物(ビンカ)アルカロイド、およびステロイドホルモンが含まれる。
【0197】
細胞増殖を減少させるように作用する薬剤は当分野で知られており、幅広く使用されている。そのような薬剤には、それだけには限定されないが、メクロレタミン、シクロホスファミド(Cytoxan(商標))、メルファラン(L−サルコリシン)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)、ストレプトゾシン、クロロゾトシン、ウラシルマスタード、クロルメチン、イホスファミド、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、ダカルバジン、およびテモゾロマイドを含めた、アルキル化剤、例えば、窒素マスタード、ニトロソ尿素、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、およびトリアゼンが含まれる。
【0198】
代謝拮抗剤には、それだけには限定されないが、シタラビン(CYTOSAR−U)、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル(5−FU)、フロキシウリジン(FudR)、6−チオグアニン、6−メルカプトプリン(6−MP)、ペントスタチン、5−フルオロウラシル(5−FU)、メトトレキサート、10−プロパルギル−5,8−ジデアザフォレート(PDDF、CB3717)、5,8−ジデアザテトラヒドロ葉酸(DDATHF)、ロイコボリン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン、およびゲムシタビンを含めた、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、およびアデノシンデアミナーゼ阻害剤が含まれる。
【0199】
適切な天然物およびその誘導体(例えば、ビンカアルカロイド、抗腫瘍抗生物質、酵素、リンホカイン、およびエピポドフィロトキシン)には、それだけには限定されないが、Ara−C、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン−C,L−アスパラギナーゼ、アザチオプリン;ブレキナール;アルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシンなど;ポドフィロトキシン、例えば、エトポシド、テニポシドなど;抗生物質、例えば、アントラサイクリン、塩酸ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン、セルビジン)、イダルビシン、ドキソルビシン、エピルビシンおよびモルホリノ誘導体など;フェノキシゾン(phenoxizone)ビスシクロペプチド、例えばダクチノマイシン;塩基性糖ペプチド、例えばブレオマイシン;アントラキノングリコシド、例えばプリカマイシン(ミトラマイシン);アントラセンジオン、例えばミトキサントロン;アジリノピロロインドールジオン、例えばマイトマイシン;大環状免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、FK−506(タクロリムス、プログラフ)、ラパマイシンなど等が含まれる。
【0200】
他の抗増殖性細胞毒性剤は、ナベルベン、CPT−11、アナストラゾール、レトラゾール、カペシタビン、レロキサフィン、シクロホスファミド、イフォサミド、およびドロロキサフィンである。
【0201】
抗増殖活性を有する、微小管に影響を与える薬剤も使用に適しており、それだけには限定されないが、アロコルヒチン(NSC406042)、Halichondrin B(NSC609395)、コルヒチン(NSC757)、コルヒチン誘導体(例えばNSC33410)、ドルスタチン10(NSC376128)、メイタンシン(NSC153858)、リゾキシン(NSC332598)、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、Taxol(登録商標)誘導体、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、チオコルヒチン(NSC361792)、トリチルシステリン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、それだけには限定されないがエオプチロンA、エポチロンB、ディスコデルモリドを含めた天然および合成のエポチロン、エストラムスチン、ノコダゾールなどが含まれる。
【0202】
使用に適したホルモンモジュレーターおよびステロイド(合成類似体を含む)には、それだけには限定されないが、アドレノコルチコステロイド、例えば、プレドニゾン、デキサメタゾンなど;エストロゲンおよびプレゲスチン、例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、エストラジオール、クロミフェン、タモキシフェンなど;ならびに副腎皮質抑制剤、例えば、アミノグルテチミド;17α−エチニルエストラジオール;ジエチルスチルベストロール、テストステロン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、メチルプレドニゾロン、メチル−テストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド(Drogenil)、トレミフェン(Fareston)、およびZoladex(登録商標)が含まれる。エストロゲンは増殖および分化を刺激し、したがって、エストロゲン受容体と結合する化合物を使用してこの活性を遮断する。コルチコステロイドはT細胞増殖を阻害し得る。
【0203】
他の化学療法剤には、金属錯体、例えば、シスプラチン(cis−DDP)、カルボプラチンなど;尿素、例えばヒドロキシ尿素;ならびにヒドラジン、例えばN−メチルヒドラジン;エピドフィロトキシン;トポイソメラーゼ阻害剤;プロカルバジン;ミトキサントロン;ロイコボリン;テガフールなどが含まれる。他の目的の抗増殖剤には、免疫抑制剤、例えば、ミコフェノール酸、サリドマイド、デスオキシスペルグアリン、アザスポリン、レフルノミド、ミゾリビン、アザスピラン(SKF105685);Iressa(登録商標)(ZD1839、4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−(3−(4−モルホリニル)プロポキシ)キナゾリン)などが含まれる。
【0204】
「タキサン(Taxanes)」には、パクリタキセル、および任意の活性タキサン誘導体またはプロドラッグが含まれる。「パクリタキセル」(本明細書では、類似体、配合物、および誘導体、例えば、ドセタキセル、TAXOL(商標)、TAXOTERE(商標)(ドセタキセルの配合物)、パクリタキセルの10−デスアセチル類似体およびパクリタキセルの3’N−デスベンゾイル−3’N−t−ブトキシカルボニル類似体が含まれると理解されたい)は、当業者に知られている技術を利用して容易に調製し得るか(WO94/07882、WO94/07881、WO94/07880、WO94/07876、WO93/23555、WO93/10076;米国特許第5,294,637号;第5,283,253号;第5,279,949号;第5,274,137号;第5,202,448号;第5,200,534号;第5,229,529号;およびEP590,267も参照)、または、例えば、Sigma Chemical Co.、ミズーリ州St.Louisを含めた様々な商業的な供給元から得られ得る(タイヘイヨウイチイ由来のT7402もしくはタクスス・ヤンナネンシス由来のT−1912)。
【0205】
パクリタキセルは、パクリタキセルの一般的な化学的に入手可能な形態だけでなく、類似体および誘導体(例えば、上述のTaxotere(商標)ドセタキセル)ならびにパクリタキセルコンジュゲート(例えば、パクリタキセル−PEG、パクリタキセル−デキストラン、またはパクリタキセル−キシロース)にも言及するものであると理解されたい。
【0206】
また、用語「タキサン」には、親水性誘導体および疎水性誘導体をどちらも含めた様々な既知の誘導体も含まれる。タキサン誘導体には、それだけには限定されないが、国際特許出願WO99/18113に記載のガラクトースおよびマンノース誘導体;WO99/14209に記載のピペラジノおよび他の誘導体;WO99/09021、WO98/22451、および米国特許第5,869,680号に記載のタキサン誘導体;WO98/28288に記載の6−チオ誘導体;米国特許第5,821,263号に記載のスルフェンアミド誘導体;ならびに米国特許第5,415,869号に記載のタキソール誘導体が含まれる。さらに、これには、それだけには限定されないが、WO98/58927;WO98/13059;および米国特許第5,824,701号に記載のものを含めたパクリタキセルのプロドラッグも含まれる。
【0207】
本発明の方法に関連して使用するために適した生物学的応答調節剤には、それだけには限定されないが、(1)チロシンキナーゼ(RTK)活性の阻害剤;(2)セリン/スレオニンキナーゼ活性の阻害剤;(3)腫瘍関連抗原アンタゴニスト、例えば腫瘍抗原と特異的に結合する抗体;(4)アポトーシス受容体アゴニスト;(5)インターロイキン−2;(6)IFN−α;(7)IFN−γ;(8)コロニー刺激因子;(9)血管形成の阻害剤;および(10)腫瘍壊死因子のアンタゴニストが含まれる。
【0208】
対象方法は、適切な対照と比較した場合に、腫瘍量を、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、または少なくとも約90%、腫瘍の完全根絶まで減少させるために有効である。したがって、これらの実施形態では、「有効量」の対象ALDH2アンタゴニストとは、標準の癌治療と併せて投与した場合、適切な対照と比較した場合に、腫瘍量を、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、または少なくとも約90%、腫瘍の完全根絶まで減少させるために有効な量である。実験動物系では、適切な対照は、薬剤で処置しない、遺伝子が同一の動物であり得る。非実験系では、適切な対照は、薬剤を投与する前に存在する腫瘍量であり得る。他の適切な対照はプラセボ対照であり得る。
【0209】
腫瘍量が減少したかどうかは、それだけには限定されないが、固形腫瘍の質量を測定すること;細胞学的アッセイを用いて腫瘍細胞数を計数すること;蛍光活性化細胞分取(例えば、腫瘍関連抗原に特異的な抗体を用いて);腫瘍のコンピュータ断層撮影走査、磁気共鳴画像法、および/またはX線イメージングで腫瘍の大きさを推定および/または監視すること;生体試料、例えば血液中の腫瘍関連抗原の量を測定することなどを含めた、任意の知られている方法を用いて決定することができる。
【0210】
他の疾患
対象ALDH2アゴニストは、糖尿病の治療において、それを必要としている個体に投与することができる。対象ALDH2アゴニストは、骨粗鬆症の治療において、それを必要としている個体に投与することができる。
【0211】
糖尿病
本発明は、それを必要としている個体に有効量の対象ALDH2アゴニストを投与することを一般に含む、糖尿病の治療方法を提供する。或る実施形態では、糖尿病を治療するための対象方法は、糖尿病によってもたらされる障害、例えば、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害などの治療を提供する。
【0212】
或る実施形態では、対象ALDH2アゴニストは、個体における血中グルコースレベルを低下させる、例えば、個体における血中グルコースレベルを、アゴニストを用いた治療が存在しない場合の血中グルコースレベルと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%低下させるために有効な量で、投与する。或る実施形態では、有効量のALDH2アゴニストとは、血中グルコースレベルを正常な範囲まで低下させるために有効な量である。正常な絶食血中グルコースレベルは、典型的には、食事前に約70mg/dL〜約110mg/dLの範囲である。食事の2時間後の正常な血中グルコースレベルは、通常は約120mg/dL未満である。経口グルコース負荷試験(約75gのグルコースを含む糖溶液を飲み、その後、糖溶液を飲んだ後の様々な時点で血中グルコースレベルを測定することを含む)中の正常な血中グルコースレベルには、糖溶液を飲んだ2時間後に140mg/dL未満、および糖溶液を飲んだ0〜2時間後の間のすべての読取値が200mg/dL未満であることが含まれる。また、血中グルコースレベルは時々mmol/Lでも表す。正常な血中グルコースレベルは一般に約4mmol/L〜8mmol/Lである。正常な血中グルコースレベルは、一般に、食事の90分後に約10mmol/L未満であり、食事前に約4mmol/L〜約7mmol/Lである。
【0213】
或る実施形態では、対象治療方法は、対象ALDH2アゴニストを投与すること、および糖尿病を治療するための少なくとも第2の治療剤(例えばインスリン)を同時投与することを含む。本発明での使用に適したインスリンには、それだけには限定されないが、レギュラーインスリン、セミレンテ、NPH、レンテ、プロタミン亜鉛インスリン(PZI)、ウルトラレンテ、インスリングラルギン、インスリンアスパルト、アシル化インスリン、単量体インスリン、超活性インスリン、肝選択的インスリン、および任意の他のインスリン類似体または誘導体、ならびに前述の任意のものの混合物が含まれる。本発明での使用に適したインスリンには、それだけには限定されないが、米国特許第4,992,417号;第4,992,418号;第5,474,978号;第5,514,646号;第5,504,188号;第5,547,929号;第5,650,486号;第5,693,609号;第5,700,662号;第5,747,642号;第5,922,675号;第5,952,297号;および第6,034,054号;ならびに公開PCT出願WO00/121197;WO09/010645;およびWO90/12814に開示されているインスリン形態が含まれる。インスリン類似体には、それだけには限定されないが、超活性インスリン類似体、単量体インスリン、および肝特異的インスリン類似体が含まれる。
【0214】
骨粗鬆症
本発明は、それを必要としている個体に有効量の対象ALDH2アゴニストを投与することを一般に含む、骨粗鬆症の治療方法を提供する。或る実施形態では、「有効量」のALDH2アゴニストとは、個体において骨密度を増加させるために有効な量である。他の実施形態では、「有効量」のALDH2アゴニストとは、骨密度の損失速度を減少させるために有効な量である。
【0215】
治療に適した対象
対象ALDH2活性モジュレーターを用いた治療に適した対象には、上述の状態を患っている個体;上述の状態を発生するリスクのある個体;対象ALDH2活性モジュレーター以外の薬剤で上述の状態の治療を受けたが、そのような治療に応答しなかった個体、または最初はそのような治療に応答したが、後に再発した個体;上述の状態について対象ALDH2活性モジュレーター以外の薬剤を用いた治療に不応性の個体;および上述の状態について対象ALDH2活性モジュレーター以外の薬剤を用いた治療を耐用できない個体が含まれる。
【0216】
ALDH2アゴニストを投与することを含む方法
対象ALDH2アゴニストの投与を含む対象治療方法は、酸化的ストレスに関連するまたはそれから生じる障害または状態;ニトログリセリン非感受性に関連する障害または状態;毒性レベルのエチルアルコール、アルデヒド、メタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、生体または異種アルデヒドなどに関連する障害または状態;ならびに心臓の疾患および状態、例えば、冠動脈疾患、狭心症などを含めた、上述の様々な状態の治療に適している。或る実施形態では、個体は、図1Aに示すアミノ酸配列を有するALDH2をコードしているALDH2対立遺伝子に対してホモ接合性のヒトである。他の実施形態では、個体は、図1Bに示すE487K変異体を有するALDH2をコードしている、1つまたは2つのALDH22対立遺伝子を保有するヒトである。
【0217】
東アジア人口の約40%が半優性のALDH22対立遺伝子を保有する。そのような個体は、顔面紅潮、嘔気、および頻脈のうちの1つまたは複数が含まれる、エタノール消費に対する応答によって特徴づけることができる。さらに、ALDH22個体は、狭心症および冠動脈疾患などの障害においてニトログリセリン治療に対する応答性も低い。ALDH22対立遺伝子に対してヘテロ接合性またはホモ接合性である個体は、対象ALDH2アゴニストの投与を含む対象方法を用いた治療に適している。
【0218】
虚血性ストレスに関連する状態の治療方法
対象ALDH2アゴニストを用いた治療に適した対象には、心臓手術を受ける予定のある個体または心臓手術を受けた個体;脳卒中を経験したことがある個体;脳外傷を患った個体;長時間手術を受ける個体;心筋梗塞(例えば急性心筋梗塞)を患った個体;脳血管疾患を患っている個体;脊髄傷害を有する個体;くも膜下出血を有する個体;および臓器移植を受ける個体が含まれる。対象ALDH2アゴニストを用いた治療に適した対象にはまた、虚血性肢障害、例えば、1型または2型糖尿病から生じるものを有する個体も含まれる。
【0219】
急性のフリーラジカル関連疾患の治療方法
対象ALDH2アゴニストを用いた治療に適した対象には、癲癇発作を持つまたは経験したことがある個体;UV曝露から生じる皮膚損傷を有する個体;皮膚の光損傷を有する個体;急性熱皮膚火傷傷害を有する個体;および組織過酸素症を患っている個体が含まれる。
【0220】
慢性のフリーラジカル関連疾患の治療方法
対象ALDH2アゴニストを用いた治療に適した対象には、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、または他の神経変性疾患を診断された個体;アテローム性動脈硬化症を有する個体;食道癌を有する個体;頭頸部扁平細胞癌を有する個体;および上気道消化管癌を有する個体が含まれる。
【0221】
心状態の治療方法
対象ALDH2アゴニストを用いた治療に適した対象には、狭心症を有する個体;心不全を有する個体;狭心症または心不全の治療においてニトログリセリンに対する非感受性を示す個体;高血圧を有する個体;および心疾患を有する個体が含まれる。
【0222】
解毒方法
対象ALDH2アゴニストを用いた治療に適した対象には、毒性があるアルデヒドレベル、例えば、毒性化合物の摂取、毒性化合物の吸入、毒性レベルの化合物の摂取もしくは吸入、または正常な代謝中のアルデヒドの生成によるものを有する個体が含まれる。そのような個体には、それだけには限定されないが、エタノール、メタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、または他の異種もしくは生体アルデヒド化合物を摂取または吸入した個体が含まれる。例えば、そのような個体には、殺虫剤、殺真菌剤、または他のそのような化合物を摂取または吸入した個体;過剰なレベルのエタノールを消費した個体などが含まれる。
【0223】
アルコール嗜癖の治療方法
対象ALDH2アンタゴニストを用いた治療に適した対象には、アルコール依存症であるとみなされる個体(例えば、アルコールを飲むことに対する制御を損なうこと、薬物アルコールに没頭すること、有害な結果にもかかわらずアルコールを使用すること、およびアルコールの消費後に思考が歪曲することのうちの1つまたは複数によって特徴づけられた、原発性の慢性疾患を有する個体);アルコール消費の休止後に禁断症状を患っている個体;アルコール依存を経験している個体(例えば、耐性、禁断、およびアルコールを飲む制御できない衝動と組み合わせたアルコール乱用)などを含めた、アルコール嗜癖を有する個体が含まれる。
【0224】
糖尿病の治療方法
対象ALDH2アゴニストを用いた治療に適した対象には、1型または2型糖尿病を有する個体が含まれる。治療に適した対象には、1型真性糖尿病を診断された個体が含まれ、そのような個体には、約126mg/dLを超える絶食血中グルコースレベルを有する者が含まれる。そのような個体には、2時間のグルコース負荷試験(75gの無水グルコース、経口)後に約200mg/dLを超える血中グルコースレベルを有する者が含まれる。治療に適した対象には、2型糖尿病を診断された個体;未だ2型糖尿病を診断されていないが、2型糖尿病を発症するリスクのある個体、例えば、25を超える体重指数(キログラムの体重を身長(メートル)の二乗で除算)を有する個体、例えば、約25〜約27、約27〜約30、または30を超える体重指数を有する個体が含まれる。
【0225】
癌の治療方法
上述の癌を治療するための対象ALDH2アンタゴニストを用いた治療に適した対象には、固形腫瘍を有する個体が含まれる。固形腫瘍には、それだけには限定されないが、組織球性リンパ腫、脳、尿生殖路、リンパ系、胃、喉頭ならびに肺腺癌および小細胞肺癌を含めた肺の癌が含まれる。
【0226】
スクリーニングアッセイ
本発明は、ALDH2アゴニストを同定する方法を提供する。本方法は、一般に、酵素活性が低下した変異体ALDH2酵素を試験化合物と、変異体ALDH2酵素の基質の存在下で接触させること;および変異体ALDH2酵素の酵素活性に対する試験化合物の効果がある場合はそれを決定することを含む。
【0227】
「酵素活性が低下した変異体ALDH2酵素」とは、図1Aに示したアミノ酸配列(配列番号1)を含む、または図1Aに示したアミノ酸配列のアミノ酸18〜517を含むALDH2酵素と比較して酵素活性が低下した変異体ALDH2酵素である、例えば、変異体ALDH2酵素は、in vitroまたはin vivoで、図1Aに示したアミノ酸配列(配列番号1)を含む、または図1Aに示したアミノ酸配列のアミノ酸18〜517を含むALDH2酵素によって示される酵素活性の約90%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、または約2%未満を示す。或る実施形態では、変異体ALDH2酵素は、図1Bに示したアミノ酸配列(配列番号2)、または図1Bに示したアミノ酸配列のアミノ酸18〜517を含む。
【0228】
本明細書中で使用する用語「決定すること」とは、定量的および定性的な決定をどちらもいい、したがって、用語「決定すること」とは、本明細書中で「アッセイすること」、「測定すること」などと互換性があるように使用する。
【0229】
用語「候補剤」、「試験薬剤」、「薬剤」、「物質」、および「化合物」は、本明細書中で互換性があるように使用する。候補剤には、数々の化学クラス、典型的には、合成、半合成、または天然に存在する無機または有機分子が包含される。候補剤には、合成または天然化合物の大きなライブラリ中に見つかるものが含まれる。例えば、合成化合物ライブラリが、Maybridge Chemical Co.(英国コーンウォール州Trevillet)、ComGenex(カリフォルニア州South San Francisco)、およびMicroSource(コネチカット州New Milford)から市販されている。珍しい化学ライブラリがAldrich(ウィスコンシン州Milwaukee)から入手可能である。あるいは、細菌、真菌、植物および動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリが、Pan Labs(ワシントン州Bothell)から入手可能であるか、または容易に生成可能である。
【0230】
候補剤は、50より大きく約10,000ダルトン未満の分子量を有する小さな有機または無機化合物であってよく、例えば、候補剤は、約50ダルトン〜約100ダルトン、約100ダルトン〜約150ダルトン、約150ダルトン〜約200ダルトン、約200ダルトン〜約500ダルトン、約500ダルトン〜約1000ダルトン、約1,000ダルトン〜約2500ダルトン、約2500ダルトン〜約5000ダルトン、約5000ダルトン〜約7500ダルトン、または約7500ダルトン〜約10,000ダルトンの分子量を有していてよい。候補剤は、タンパク質との構造的相互作用に必要な官能基、特に水素結合を含んでいてよく、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基を含んでいてよく、官能的化学基を少なくとも2つ含んでいてよい。候補剤は、上記官能基のうちの1つまたは複数で置換された、環状炭素もしくはヘテロ環構造および/または芳香族もしくはポリ芳香族構造を含み得る。候補剤はまた、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造的類似体またはその組合せを含めた生体分子からも見つかる。
【0231】
本発明のアッセイには、試料(試験薬剤を存在させず、例えば、変異体ALDH2酵素および基質を含む試料)が含まれる、適切な対照が含まれる。一般に、様々な濃度に対する示差的応答を得るために、複数のアッセイ混合物を様々な薬剤濃度で並行して実行する。典型的には、これらの濃度のうちの1つが、陰性対照、すなわち、ゼロ濃度または検出レベル未満として役割を果たす。
【0232】
様々な他の試薬をスクリーニングアッセイに含め得る。これらには、最適酵素活性を容易にするためおよび/または非特異的もしくはバックグラウンド活性を減少させるために使用する薬剤を含めた、塩、中性タンパク質、例えばアルブミン、洗剤などの試薬が含まれる。プロテアーゼ阻害剤、抗微生物剤などの、アッセイの効率を向上させる試薬を使用し得る。アッセイ混合物の構成成分を、必要な活性をもたらす任意の順序で加える。インキュベーションを任意の適切な温度、典型的には4℃〜40℃で行う。インキュベーション時間は最適な活性のために選択するが、迅速な高スループットスクリーニングを容易にするために最適化してもよい。典型的には、0.1時間〜1時間が十分である。
【0233】
目的の試験化合物は、変異体ALDH2の酵素活性を、試験化合物が存在しない場合のALDH2ポリペプチドの酵素活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%(すなわち2倍)、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、もしくは少なくとも約50倍、または50倍よりも高く増加させる化合物である。
【0234】
或る実施形態では、目的の試験化合物は、配列番号2(図1Bに示す)に記載の、または配列番号2のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含むALDH2ポリペプチドの酵素活性を、試験化合物が存在しない場合のALDH2ポリペプチドの酵素活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%(すなわち2倍)、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、もしくは少なくとも約50倍、または50倍よりも高く増加させる化合物である。
【0235】
或る実施形態では、目的の試験化合物はALDH2に特異的な化合物である、例えば、試験化合物は、変異体ALDH2酵素の酵素活性を増加させるが、サイトゾルアルデヒドデヒドロゲナーゼ−1(ALDH1)の酵素活性を実質的に増加させない、例えば、試験化合物は、変異体ALDH2酵素の酵素活性を少なくとも約5%以上増加させる濃度で使用した場合に、ALDH1酵素の酵素活性を、増加させる場合は約5%未満、約2%未満、または約1%未満増加させる。或る実施形態では、目的の試験薬剤は、アルコール脱水素酵素(ADH)の酵素活性を実質的に増加させない、例えば、目的の試験薬剤は、変異体ALDH2酵素の酵素活性を少なくとも約5%以上増加させる濃度で使用した場合に、ADHの酵素活性を、増加させる場合は約5%未満、約2%未満、または約1%未満増加させる。
【0236】
或る実施形態では、目的の試験化合物は、約1nM〜約1mM、例えば、約1nM〜約10nM、約10nM〜約15nM、約15nM〜約25nM、約25nM〜約50nM、約50nM〜約75nM、約75nM〜約100nM、約100nM〜約150nM、約150nM〜約200nM、約200nM〜約250nM、約250nM〜約300nM、約300nM〜約350nM、約350nM〜約400nM、約400nM〜約450nM、約450nM〜約500nM、約500nM〜約750nM、約750nM〜約1μM、約1μM〜約10μM、約10μM〜約25μM、約25μM〜約50μM、約50μM〜約75μM、約75μM〜約100μM、約100μM〜約250μM、約250μM〜約500μM、または約500μM〜約1mMのEC50を有する。
【0237】
候補剤を、トリパンブルー色素排除、MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロマイド)アッセイなどの周知のアッセイを用いて、アッセイで使用する細胞に対してそれが示し得る任意の細胞毒性がある活性について評価する。細胞毒性がある活性を示さない薬剤が候補剤とみなされる。
【0238】
多くの実施形態では、スクリーニング方法は、in vitroで、細胞を含まないアッセイで実施する。或る実施形態では、in vitroの細胞を含まないアッセイでは精製した変異体ALDH2を用い、「精製した」とは、汚染物質または任意の他の望ましくない構成成分を含まないことをいう。対象のスクリーニング方法に適した精製した変異体ALDH2は、少なくとも約50%純粋、少なくとも約60%純粋、少なくとも約70%純粋、少なくとも約75%純粋、少なくとも約80%純粋、少なくとも約85%純粋、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、少なくとも約98%純粋、少なくとも約99%純粋、または99%を超えて純粋である。
【0239】
或る実施形態では、精製した変異体ALDH2は、酵素活性を維持するために1つまたは複数の安定化剤を加えることによって、安定化される。或る実施形態では、精製した変異体ALDH2の溶液は、ミトコンドリアAldDH2および約10%〜約50%のグリセロール、例えば、約10%〜約15%、約15%〜約20%、約20%〜約25%、約25%〜約30%、約30%〜約35%、約35%〜約40%、約40%〜約45%、または約45%〜約50%のグリセロールの水溶液を含む。或る実施形態では、ミトコンドリアAldDH2の溶液は、キレート化剤(例えば、EDTAまたはEGTA);NaCl、MgCl、KClなどの塩;トリス緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、ピロリン酸ナトリウム緩衝液などの緩衝液;1つまたは複数のプロテアーゼ阻害剤などのうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0240】
或る実施形態では、in vitroの細胞を含まないアッセイでは組換え変異体ALDH2を用いる。組換え変異体ALDH2は、単細胞微生物、またはin vitro培養物中で単細胞の実体として増殖させた多細胞生物の細胞などの様々な宿主細胞中で容易に調製される。適切な宿主細胞には、大腸菌などの細菌細胞;出芽酵母、ピキア・パストリス、ハンゼヌラ・ポリモルファ、クルイベロマイセス・ラクチス、ヤロウイア・リポリティカ、トルラ酵母、シゾサッカロマイセス・ポンベなどの酵母細胞;キイロショウジョウバエ細胞などの昆虫細胞;アフリカツメガエル細胞などの両生類細胞;CHO細胞、3T3細胞などの哺乳動物細胞などが含まれる。或る実施形態では、in vitroの細胞を含まないアッセイでは、ヒト変異体ALDH2、例えば、図1Bに示した配列のアミノ酸18〜517に記載のアミノ酸配列を含む変異体ALDH2酵素を用いる。或る実施形態では、in vitroの細胞を含まないアッセイでは、大腸菌細胞中で組換えによって産生した変異体ALDH2を用いる。
【0241】
或る実施形態では、in vitroの細胞を含まないアッセイでは、融合パートナーとインフレームで融合した変異体ALDH2を含む融合タンパク質を用いる。或る実施形態では、融合パートナーは変異体ALDH2ポリペプチドのアミノ末端と結合している。他の実施形態では、融合パートナーは変異体ALDH2ポリペプチドのカルボキシル末端と結合している。他の実施形態では、融合パートナーは、変異体ALDH2ポリペプチドの内部の位置で変異体ALDH2ポリペプチドとインフレームで融合している。適切な融合パートナーには、それだけには限定されないが赤血球凝集素、FLAGなどを含めたエピトープタグを含めた免疫学的タグ;それだけには限定されないが蛍光タンパク質、酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼなど)などを含めた、検出可能なシグナルを提供するタンパク質;融合タンパク質の精製または単離を容易にするポリペプチド、例えば、6Hisタグ(例えばALDH2/6His)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼなどの金属イオン結合ポリペプチドなど;細胞内局在化をもたらすポリペプチド;および細胞からの分泌をもたらすポリペプチドが含まれる。
【0242】
或る実施形態では、融合パートナーはエピトープタグである。或る実施形態では、融合パートナーは金属キレート化ペプチドである。或る実施形態では、金属キレート化ペプチドはヒスチジン多量体、例えば(His)である。或る実施形態では、(His)多量体は変異体ALDH2のアミノ末端と融合している。他の実施形態では、(His)多量体は変異体ALDH2のカルボキシル末端と融合している。(His)−変異体ALDH2の融合タンパク質は、様々な利用可能なニッケル親和性カラムのうちの任意のもの(例えばHis結合樹脂、Novagen)を使用して精製する。
【0243】
ALDH2のアッセイは当分野で知られており、任意の既知のアッセイを対象のスクリーニング方法で使用することができる。アッセイの例は、例えば、Sheikh他((1997)J.Biol.Chem.272:18817〜18822)およびFarres他((1994)J.Biol.Chem.269:13854〜13860)を含めた様々な出版物中に見つかる。例えば、ALDH2酵素活性を、25℃で、50mMのピロリン酸ナトリウムHCl緩衝液、pH9.0、100mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4、または50mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4中でアッセイし、但し、緩衝液には、NAD(例えば、0.8mMのNAD、またはそれより高いもの、例えば、1mM、2mM、または5mMのNAD)および14μMのプロピオンアルデヒドなどの基質が含まれる。NADの還元を、分光光度計を用いて340nmで、または蛍光微小光度計を用いた蛍光増加によって監視する。
【0244】
ALDH2酵素活性は、標準の分光光度方法を用いて、例えば、US2005/0171043、またはWO2005/057213に記載のように、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の酸化形態からその還元形態NADHの還元反応を340nmで測定することによって、アッセイすることができる。例示的なアッセイでは、反応は、25℃で、0.1のNaPPi緩衝液、pH9.5、2.4mMのNADおよび基質として10mMのアセトアルデヒド中で実施する。酵素活性は、US2005/0171043、またはWO2005/057213に記載のように、NADからNADHへの還元反応によって340nmで測定する。あるいは、NADHの生成を、NADHを消費し、検出可能なシグナルを提供する別の酵素反応と連結させることができる。そのような酵素反応の例は、US2005/0171043、またはWO2005/057213に記載の、リザズリンをその酸化した蛍光化合物レゾルフィンへと還元する、ジアフォラーゼに基づいた反応である。蛍光レゾルフィンを590nmで検出することにより、ALDH2酵素活性の任意の変化のための、増幅されたより高感度のシグナルがもたらされる。
【0245】
非限定的な一例として、ALDH2酵素活性の120μlの反応混合物は以下の構成成分を含む:
43μlの150mMのピロリン酸ナトリウム(NaPPi)緩衝液、pH9.0;
30μlの10mMのNAD
15μlの80mMのアセトアルデヒド;
1μlのリザズリン(HO中に0.2mg/ml);
1μlのジアフォラーゼ(1単位、例えばクロストリジウム・クライベリ由来);
2μlの変異体ALDH2(例えば、2μlの変異体ALDH2、(0.5〜2μg/μl);および
試験する薬剤を含む28μlの溶液、該薬剤は適切な溶媒(例えば、水溶液、DMSOなど)に再懸濁させている。
【0246】
上述の反応の蛍光検出を表1に記載する。
【表1】

この反応は、96ウェル、384ウェル、1536ウェルのマイクロウェルプレートなどの中で実施するか、または他のスクリーニング様式に適用させることができる。
【実施例】
【0247】
以下の実施例は、当業者に本発明をどのように作製および使用するかの完全な開示および記載を提供するために記載し、本発明者らがその発明であるとみなすものの範囲を限定することを意図せず、また、これらは、以下の実験が行った実験のすべてまたはそれしか行っていないことを示すことを意図しない。使用した数字(例えば、量、温度など)に関して精度を保証する努力はなされているが、ある程度の実験誤差および偏差を考慮されたい。別段に指摘しない限りは、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはその付近である。標準の略記、例えば、bp、塩基対(複数可);kb、キロ塩基(複数可);pl、ピコリットル(複数可);sまたはsec、秒(複数可);min、分(複数可);hまたはhr、時間(複数可);aa、アミノ酸(複数可);kb、キロ塩基(複数可);bp、塩基対(複数可);nt、ヌクレオチド(複数可);i.m.、筋肉内;i.p.、腹腔内;s.c.、皮下などを使用し得る。
【0248】
実施例1:ALDH2アゴニストの同定および特徴づけ
方法
ALDH2アゴニスト(活性化剤)およびアンタゴニスト(阻害剤)のin vitroスクリーニング
化合物は、図2に模式図を示した方法を用いてスクリーニングした。本質的に、反応は、25℃で、0.1のNaPPi緩衝液、pH9.5、2.4mMのNADおよび基質として10mMのアセトアルデヒド中で実施する。酵素活性は、NADからNADHへの還元反応によって340nmで測定する。あるいは、NADHの生成を、NADHを消費し、検出可能なシグナルを提供する別の酵素反応と連結させることができる。そのような酵素反応の例は、リザズリンをその酸化した蛍光化合物レゾルフィンへと還元する、ジアフォラーゼに基づいた反応である。
【0249】
例えば、ALDH2酵素活性の120μlの反応混合物は以下の構成成分を含む:
43μlの150mMのピロリン酸ナトリウム(NaPPi)緩衝液、pH9.0;
30μlの10mMのNAD
15μlの80mMのアセトアルデヒド;
1μlのリザズリン(HO中に0.2mg/ml);
1μlのジアフォラーゼ(1単位、例えばクロストリジウム・クライベリ由来);
2μlの変異体ALDH2(例えば、2μlの変異体ALDH2、(0.5〜2μg/μl);および
試験する薬剤を含む28μlの溶液、薬剤は適切な溶媒(例えば、水溶液、DMSOなど)に再懸濁させている。
【0250】
上述の反応の蛍光検出を表1に記載する。
【表2】

【0251】
ヒスチジンでタグ付けしたE487K ALDH2タンパク質
ヒトALDH2のE487K変異体(図1Bに示すアミノ酸配列参照)およびポリ−ヒスチジンタグが含まれる融合タンパク質を合成し、ALDH2アゴニストのスクリーニングに使用した。ポリヒスチジン(His)タグとインフレームで融合したE87K変異体をコードしている発現構築物を大腸菌内に導入し、イソプロピル−1−チオ−3−D−ガラクトシド(IPTG)を加えることによって発現を誘発させ、Hisでタグ付けしたE487K ALDH2変異体が産生された。Hisでタグ付けしたE487K ALDH2変異体を結合するために金属イオン親和性カラムを用いて、Hisでタグ付けしたE487K ALDH2変異体を大腸菌抽出物から精製した。Hisでタグ付けしたE487K ALDH2変異体をカラムから溶出させ、スクリーニングアッセイで使用してALDH2アゴニストを同定した。
【0252】
Hisでタグ付けしたE487 ALDH2は図1Bに示すアミノ酸18〜517に由来し、HisタグはE487変異体のN末端と融合していた。
【0253】
ex vivoアッセイ
ラット心臓のex vivoランゲンドルフ調製物を、無流虚血および再灌流傷害によって生じた損傷を評価するためのモデルとして使用した。これは、患者における心筋梗塞の臨床的状態を模倣する実験モデルである。ラット心臓を切除し、大動脈を介してランゲンドルフ装置にカニューレ挿入した。37℃に維持した標準の酸素化したクレブ−ヘンスレイト(Kreb−Hensleit)緩衝液を用いて逆行灌流を実施した。すべての心臓を最初の5〜10分間の灌流期間によって安定化し、続いて様々な心保護剤またはAldDH2阻害剤を、試薬に応じて10〜30分間送達した。一部の代表的な実験で使用した試薬には、エタノール(50mM)、εPKCアイソザイム選択的活性化ペプチドおよび阻害ペプチド(1μM)、シアナミド(5mM)ならびにニトログリセリン(2μM)が含まれていた。その後、25分間の無流、続いて60分間の再灌流によって、虚血を導入した。
【0254】
虚血/再灌流の損傷度合は、2つの独立した一般的に認められているパラメータによって測定した。1つのアッセイでは、心臓切片の横断面を再灌流の直後に得て、梗塞の大きさを測定するために塩化2,3,5−トリフェニル−テトラゾリウム(TTC)で染色した。別のアッセイでは、再灌流中に採取したそれぞれの心臓からの再灌流液からリン酸クレアチンキナーゼ活性を測定した。データにより、2つの方法で心損傷を評価するために比較可能な結果が得られたことが示された。同一試料の別の切片からそれぞれの心臓からのホモジネートも得て、アルデヒドデヒドロゲナーゼ酵素活性について分析した。酵素活性は、アセトアルデヒドを基質として、NADを補因子として用いた上述の標準の分光光度方法によって決定した。
【0255】
結果
ヒスチジンでタグ付けしたE487K ALDH2変異体を用いて、ALDH2活性化剤をスクリーニングした。試験した63,000個の化合物のうち、3つの化合物がALDH2活性化剤として同定された。最初の3つの化合物は以下のとおりである。
【0256】
【化30】


この化合物は化合物1とも呼ばれ、N−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル)−2,6−ジクロロベンズアミドである。
【0257】
【化31】

この化合物は化合物2とも呼ばれ、N−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル)−2,6−ジフルオロベンズアミドである。
【0258】
【化29】

この化合物は化合物3とも呼ばれ、N−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル)−2−ブロモベンズアミドである。
【0259】
化合物2および3の活性を、E487K ALDH2変異体に対して試験した。結果を図3に示す。化合物2および化合物3は、E487K ALDH2変異体の酵素活性を、対照(活性化剤化合物なし)の活性よりもそれぞれ約300%および600%増加させた。(図3:右および左パネルの両方でn=3。)
【0260】
化合物3の2−ヨード変異体を合成した。変異体は、N−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル)−2−ヨードベンズアミドである。2−ヨード変異体および化合物1の活性を、E487K ALDH2変異体に対して試験した。結果を図4に示す。化合物1および化合物3の2−ヨード変異体は、E487K ALDH2変異体の酵素活性を、対照(活性化剤化合物なし)の活性よりもそれぞれ約900%および700%増加させた。(図4:n=3)。
【0261】
ALDH2アゴニスト特異性
化合物1、2、および3の活性を、野生型ALDH2(「野生型」ALDH2は、図1Aに示すように位置487にグルタミン酸を有する)、E487K ALDH2変異体、およびALDH1A1に対して試験した。化合物の構造を図5Aに示す。結果を図5Bおよび5Cに示す。in vitroアッセイでは、野生型ALDH2酵素の活性は41%〜65%である。化合物1〜3は、E487K ALDH2変異体を10μM〜20μMで300%〜900%活性化させた。ベンゾジオキソールベンズアミド化合物(例えば化合物1〜3)によるALDH2の活性化は選択的であるとみなされた。ADH1の酵素活性またはアルデヒドデヒドロゲナーゼ1(ALDH1)の近縁種サイトゾル形態に対して、これらの化合物は有意な効果を持たなかった。
【0262】
心筋梗塞モデルにおけるALDH2アゴニストの活性。
化合物1が心筋を虚血−再灌流の損傷から保護できるかどうかを決定するために、化合物1の効果を心筋梗塞のex vivoモデルで試験した。結果を図6A〜6Dに示す。図6Aに示すように、梗塞の大きさは57.7±5.4%から41.6±4.1まで有意に減少した、p<0.05、n=7。図6Bは、N−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル)−2,6−ジクロロベンズアミド(BDDB)が存在する場合および存在しない場合における、IR傷害に曝された心臓切片の画像を示す。白色の組織は梗塞している。図6CはCPK放出を示す。CPK放出は、5530±329単位/リットルから4396単位/リットルまで有意に減少したP<0.05、n=8)。図6Dは、化合物1で処置した心臓におけるALDH2酵素活性の増加を示す、3.3±0.30から2.5±0.11μモルのNADH/分/タンパク質1mg、**p<0.01、n=6)。
【0263】
さらなる化合物の合成
いくつかのさらなる化合物を合成した。これらの化合物(XO−3、XO−4、XO−5、XO−6、XO−7、XO−8、XO−9、XO−11、XO−12、XO−13、XO−22、XO−25、XO−26、XO−28、XO−29、XO−33、XO−36、およびXO−39と呼ばれる)の構造は上記に示されている。
【0264】
XO−3、XO−4、XO−5、XO−6、XO−7、XO−8、XO−9、XO−11、XO−12、XO−13、XO−22、XO−25、XO−26、XO−28、XO−29、XO−33、XO−36、およびXO−39と呼ばれる化合物を、アミンを酸塩化物またはスルホン酸塩化物と、塩基の存在下で反応させることによって合成した。ある場合には、3,4−ジフルオロ−ベンジルアミンを塩化2−ブロモ−ベンゾイルと、ジクロロメタン中のN,N−ジイソプロピルエチルアミンの存在下で反応させて、化合物XO−4を形成した。
【0265】
すべての化合物は薄層クロマトグラフィー、H−核磁気共鳴、および質量分析によって確認した。
【0266】
図7は、E487K ALDH2変異体の活性に対するこれらの化合物(XO−3、XO−4、XO−5、XO−6、XO−7、XO−8、XO−9、XO−11、XO−12、XO−13、XO−22、XO−25、XO−26、XO−28、XO−29、XO−33、XO−36、およびXO−39)の効果を示す。すべての化合物は10μMで使用し、アッセイは二つ組で実施した。(図7:n=3)。
【0267】
実施例2:ALDH2阻害剤の同定および特徴づけ
「野生型」ALDH2酵素を使用して、化合物を上述のようにスクリーニングした。スクリーニングした63,000個の化合物のうち、6つの阻害剤が同定された。図8、9、および10中でそれぞれ#062923、#046072、および#032208と呼ぶ、化合物のうちの3つを、ALDH2酵素活性に対するその効果についてアッセイした。結果を図8〜10に示す。図8に示すように、化合物#062923は、0.63μMのIC50でALDH2活性を阻害した。(図3、4、および8〜10では、x軸の単位は340nmでのODであることに注意されたい。図3、4、および7〜10では、y軸の単位は時間(分)である。図9に示すように、化合物#046072は、1.14μMのIC50でALDH2活性を阻害した。(図9:n=3)。図10に示すように、化合物#032208は、1.62μMのIC50でALDH2活性を阻害した。(図10:n=3)。
【0268】
最初のスクリーニングでALDH2阻害剤として同定されたさらなる化合物の構造(化合物8〜18と呼ぶ、上記)を上記に提供する。
【0269】
実施例3:BDDBはin vivoで虚血/再灌流傷害に対して保護する
雄のウィスターラット(250〜300g)を3%のイソフルランによって麻酔した。左前下行枝冠状動脈(LAD)の結紮に使用した外科的処置は、公開されているプロトコルに基づいている。動物に挿管し、ハーバードげっ歯類人工呼吸器を用いて、80回の呼吸/分の速度で人工呼吸させた(5〜15mmHg)。維持麻酔は1%の吸入性イソフルランによって提供し、体温は、熱電対温度計と接続した直腸プローブおよび適切な暖房毛布を用いて37℃に維持した。心臓を胸骨正中切開によって曝露させた。20分間の安定化期間の後、LAD冠状動脈の回りに、大動脈起始部からのその開始点近くに結紮糸を配置した。結紮糸の末端をポリエチレンチューブに通して小さな引き結びを形成し、その中でシリンジプランジャーを心筋表面上に静置した。冠状動脈閉塞は、結紮糸を引きながらチューブをプランジャーに押し付け、次いでチューブを止血鉗子でクランプすることによって行った。閉塞は、左心室の自由壁がすぐに蒼白する観察によって特定された。再流は結紮糸を解放することによって行った。
【0270】
心臓の曝露および安定化の後、BDDBを、カテーテルと接続し、心尖部を通って左心室内に挿入した30G針を用いて、左心室内に直接注入した。正しい配置は、少量の血液がカテーテルに逆流したことおよび死後の解剖によって確認した。カテーテルをシリンジと連結し、BDDBを0.08ml/分の速度、0.16mlの標的体積、および8.5mg/kgの最終濃度で注入した。BDDB処置の5分後、LADを閉塞させた。対照心臓には、同一体積のDMSOを同一の流速で注入した。すべての実験で、35分間の閉塞に続いて60分間の再灌流を行った。
【0271】
再灌流の終了時、心臓を切除し、0.9%の生理食塩水で流した。梗塞の大きさの分析は、TTCを用いたex vivo実験で記載のものと同じ手順で実施した。0.45mlの血液試料を、0.05mlのヘパリンで準備刺激したシリンジ内に、LAD閉塞の終了時点の15分および30分後に、左心室の尖端穿孔によって、引き込んだ。血清を卓上遠心分離器で5000g、5分間の遠心分離によって分離し、リン酸クレアチンキナーゼ(CPK)値を決定した。
【0272】
結果を図11に示す。左前下行枝(LA)冠状動脈の結紮により、左心室の自由壁に43%の梗塞、および顕著な血液中へのクレアチンホスホキナーゼ(CPK)放出がもたらされた(図11)。8.5mg/kgのBDDBを左心室内にLAD結紮5分前に投与することにより、心筋梗塞の度合が約60%、CPK放出が約57%減少した(図11、p<0.01)。これらの結果により、ALDH2の活性化が、心臓を虚血の損傷からin vivoで保護するために十分であることが示された。
【0273】
実施例4:作用化合物XO43、XO44およびBDDBによるALDH2の活性化
図12に示すBDDB誘導体化合物、XO43およびXO44を合成し、ALDH2酵素アッセイで試験した。どちらの化合物も、0.1のピロリン酸ナトリウム緩衝液、pH9.5、2.4mMのNADおよび基質として10mMのアセトアルデヒドを25℃で用いた標準のアッセイにおいて、ALDH21およびALDH22組換え酵素を活性化する潜在性を示した。酵素活性は、US2005/0171043およびWO2005/057213に記載のように、340nmでのNADからNADHへの還元反応によって測定した。データを図12に提示する。XO43、XO44およびBDDBは、10〜200μMの範囲でALDH2活性化の用量依存性効果を示した。ALDH21野生型酵素は約180%の活性の増加を示し、ALDH22突然変異体酵素は、より高濃度で>900%の増加を示した。(図12:右および左パネルの両方でn=3。)
【0274】
本発明は、その具体的な実施形態を参照しながら記載したが、当業者には、本発明の真の精神および範囲から逸脱せずに、様々な変更を行ってもよく、等価物で置き換えてもよいことを理解されよう。さらに、本発明の特定の状況、材料、組成物、方法、方法ステップまたは複数のステップ、目的、精神および範囲に適応するために、多くの変形を行い得る。すべてのそのような変形が、本明細書に添付の特許請求の範囲内にあることを意図する。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化1】

[式中、R、R、およびRのそれぞれは、H;ハロ;置換または非置換のフェニル基;脂肪族基、アルキル基;置換アルキル基;アルケニル基;アルキニル基;置換または非置換の環状基;置換または非置換のヘテロ環基;置換または非置換のアリール基;および置換または非置換のヘテロアリール基から独立して選択され;
AはCまたはSであり、A=Cである場合はa=1であり;A=Sである場合はa=2であり;
ArおよびArは、置換または非置換のアリール基から独立して選択される]
で表される化合物、またはそのプロドラッグ、製薬上許容される塩、類似体、もしくは誘導体。
【請求項2】
以下の式:
【化2】

[式中、XおよびXはそれぞれ、独立して、H、C、N、O、またはハロゲンであり;nは整数0または1であり;yは整数0または1であり;
・・・(点線)は任意選択の結合であり;zは整数0、1、または2であり;
AはCまたはSであり、A=Cである場合はa=1であり;A=Sである場合はa=2であり;
Arは非置換または置換のアリール基であり;
〜Rはそれぞれ、H;ハロ(例えば、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード);置換または非置換のフェニル基;脂肪族基、アルキル基;置換アルキル基;アルケニル基;アルキニル基;置換または非置換の環状基;置換または非置換のヘテロ環基;置換または非置換のアリール基;および置換または非置換のヘテロアリール基から独立して選択される]
で表される化合物、またはそのプロドラッグ、製薬上許容される塩、類似体、もしくは誘導体。
【請求項3】
以下の式:
【化3】

[式中、XはOまたはFであり;
・・・(点線)は任意選択の結合であり;
zは整数0、1、または2であり、但し、1)X=Fであり、・・・が結合でない場合、z=0であり;2)z=0である場合、X=Oであり、・・・は結合ではなく、1つまたは複数の酸素原子(X)が存在し、酸素はメチル基と結合しており;
nは整数0または1であり;
yは整数0または1であり;
A=CまたはSであり、A=Cである場合はa=1であり;A=Sである場合はa=2であり;
Arはフェニルまたはチオフェン環であり;Arは、カルボニルまたはスルホニル基に対してオルトの位置で、メチル、ハロ、トリフルオロメチル、またはフェニルから独立して選択される1つまたは複数の置換基によって任意選択で置換されており;Arは、カルボニルまたはスルホニル基に対してメタまたはパラのハロゲンによって任意選択で置換されており;Arがチオフェン環である場合、カルボニルまたはスルホニル基は、2または3位でチオフェン環と結合している]
で表される化合物、またはそのプロドラッグ、製薬上許容される塩、類似体、もしくは誘導体。
【請求項4】
AがCであり、Arが、カルボニル基に対してオルトの位置で置換されたフェニル環である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
置換基がハロゲンである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
a)請求項1、請求項2、または請求項3に記載の化合物;および
b)製薬上許容される賦形剤
を含む薬剤組成物。
【請求項7】
式III、IV、V、VI、またはVIIの化合物。
【請求項8】
a)請求項7に記載の化合物;および
b)製薬上許容される賦形剤
を含む薬剤組成物。
【請求項9】
個体に有効量の請求項6に記載の薬剤組成物を投与することを含む、それを必要としている個体において虚血性ストレス状態を治療する方法。
【請求項10】
虚血状態が心虚血または脳卒中である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
薬剤組成物を、筋肉内、静脈内、皮下、および経口から選択される経路によって投与する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
個体がALDH22対立遺伝子を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
個体に有効量の請求項6に記載の薬剤組成物を投与することを含む、それを必要としている個体において急性または慢性のフリーラジカル関連疾患を治療する方法。
【請求項14】
薬剤組成物を、筋肉内、静脈内、皮下、および経口から選択される経路によって投与する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
個体がALDH22対立遺伝子を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
それを必要としている個体に、ニトログリセリン化合物、および請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物を、狭心症を治療するために有効な合わせた量で同時投与することを含む、狭心症を治療する方法。
【請求項17】
ニトログリセリンおよびALDH2アゴニストを実質的に同時に投与する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
個体がALDH22対立遺伝子を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
個体に有効量の請求項6に記載の組成物を投与することを含み、化合物が、エタノール、メタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、塩化ビニル、異種アルデヒド、生体アルデヒド、または生体アルデヒドを生じさせる化合物である、個体において毒性レベルで存在する化合物のレベルを毒性レベル未満まで低下させる方法。
【請求項20】
個体に有効量の請求項8に記載の薬剤組成物を投与することを含む、それを必要としている個体において固形腫瘍を治療する方法。
【請求項21】
薬剤を癌の標準の治療のアジュバントとして投与する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
標準の癌治療が放射線療法である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
標準の癌治療が化学療法である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
a)E487K置換を含む変異体ALDH2ポリペプチドをALDH2の基質および試験薬剤と接触させること;ならびに
b)変異体ALDH2の酵素活性に対する試験薬剤の効果がある場合はそれを決定し、変異体ALDH2の酵素活性を増加させる薬剤はALDH2アゴニストであること
を含む、ミトコンドリアアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH2)ポリペプチドのアゴニストを同定するためのin vitro方法。
【請求項25】
前記決定ステップが、生成されたNADHのレベルを測定することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記測定が蛍光定量アッセイの使用を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
変異体ALDH2が、配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項24に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−523476(P2010−523476A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552756(P2009−552756)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/003092
【国際公開番号】WO2008/112164
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(503174475)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ リーランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (41)
【氏名又は名称原語表記】The Board of Trustees of the Leland Stanford Junior University
【住所又は居所原語表記】1705 El Camino Real, Palo Alto, CA 94306−1106, USA
【Fターム(参考)】