ミトコンドリア標的化抗腫瘍剤

ミトコンドリア標的化抗腫瘍剤、ならびに望ましくない細胞増殖に関連する障害の処置のためにそれらを作製および使用する方法が記載される。一つの局面において、本発明は、式A-Bを有する組成物、または薬学的に許容されるその塩を提供し、式中、Aは分子シャペロン阻害剤であり、Bはミトコンドリア浸透性部分であり、AとBとは任意で連結部分によって連結している。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は2007年9月10日付で出願された米国仮特許出願第60/993,195号の恩典を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府の資金援助による研究または開発
本発明は、米国国立衛生研究所が授与した助成金番号HL54131、CA78810およびCA90917の下での連邦政府の支援により行った。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本発明は、抗腫瘍剤として使用される、分子シャペロンのミトコンドリア標的化阻害剤、例えば熱ショックタンパク質90(Hsp90)、Hsp60、熱ショック70kDaタンパク質9(HSPA9/モルタリン)またはTNF受容体関連タンパク質1(TRAP-1)、ならびに望まれない細胞増殖に関連する障害の処置のためにそれを作製および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
腫瘍細胞は、非常に好ましくない環境でも生存および増殖する強化された能力を示す。それは、正常(すなわち非がん性)細胞が敵対環境中で分裂することを防ぐ細胞経路の多くを下方制御することがわかっており、それはまた、有害条件下で多くの正常組織において細胞死をもたらすアポトーシス経路を不活性化する。また、腫瘍細胞は、活発な増殖を維持するために必要な経路を上方制御するとも考えられる。例えば、多くの腫瘍細胞は、腫瘍細胞がその増殖継続に必要なタンパク質機構を合成および維持することを可能にする細胞ストレス応答経路を活性化する。腫瘍における活性化されたストレス応答としては、ATPアーゼ指向性の分子シャペロンである熱ショックタンパク質(Hsp)の上方制御が挙げられる。特に、Hsp90は多くのがん性組織において上方制御される。Hsp90は、シグナル伝達および細胞増殖にその一部が関与する制限された数のクライアントタンパク質のフォールディング/成熟とプロテアソーム破壊との間の均衡を制御する。
【発明の概要】
【0005】
概要
本発明は、分子シャペロンHsp90、Hsp60およびTRAP-1が正常細胞に比べて増加したレベルで腫瘍細胞のミトコンドリアにおいて見られるという発見、ならびにミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤を使用する腫瘍細胞ミトコンドリア中の分子シャペロンの阻害によって腫瘍細胞死が生じるという発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0006】
一局面では、本発明は下記式を含む組成物、または薬学的に許容されるその塩を提供する:
A-B
式中、Aは分子シャペロン阻害剤であり、Bはミトコンドリア浸透性部分であり、AとBとは任意で連結部分によって連結している。しかし、Aがシェファーディン(shepherdin)またはその断片である場合、BはアンテナペディアヘリックスIIIホメオドメイン細胞浸透性ペプチド(ANT)またはその断片ではない。
【0007】
いくつかの態様では、Aは小分子、例えば、アンサマイシンクラスHsp90阻害剤; ゲルダナマイシン類似体; プリン骨格クラスHsp90阻害剤、レゾルシノール; もしくはマクロラクトン-Hsp90阻害剤; Hsp90のペプチド阻害剤、例えばSEQ ID NO:2(His-Ser-Ser-Gly-Cys)を含むシェファーディンペプチド; またはHsp90に結合しかつそれを阻害する、SEQ ID NO:1と少なくとも95%同一の配列を含むペプチドであるかまたはそれを含む。いくつかの好ましい態様では、Aはラジシコールもしくはその類似体; Hsp90のプリン阻害剤; 17-アリルアミノ-デメトキシゲルダマイシン(17-AAG); 17-ジメチルアミノゲルダナマイシン; 17-GMB-APA-GA(ポリペプチドに対するGAの共役を可能にするゲルダナマイシンのマレイミド誘導体); 17-(ジメチルアミノエチルアミノ)-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-DMAG); 17-[2-(ピロリジン-1-イル)エチル]アミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AEP-GA); または17-(ジメチルアミノプロピルアミノ)-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-DMAP-GA)であるかまたはそれを含む。
【0008】
いくつかの態様では、カチオン性ミトコンドリア浸透性部分Bは以下を含む:

式中、R1はH、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはRaRbRcSiであり; Ra、RbおよびRcはアルキルまたはアリールより独立して選択され; nは0、1、2、3、4、5または6であり得る。
【0009】
いくつかの態様では、カチオン性ミトコンドリア浸透性部分Bは以下を含む:

式中、Ra、RbおよびRcはアルキルまたはアリールより独立して選択され; nは1、2または3であり得る。
【0010】
いくつかの態様では、Bはミトコンドリア浸透性ペプチド、例えばマイトフュージンペプチド、ミトコンドリア標的化シグナルペプチド、アンテナペディアヘリックスIIIホメオドメイン細胞浸透性ペプチド(ANT)(例えばSEQ ID NO:18を含むもの)、HIV-1 Tat塩基性ドメイン(例えばSEQ ID NO:19もしくは20を含むもの); VP22ペプチドまたはPep-1ペプチド; RNAミトコンドリア浸透性シグナル(例えばSEQ ID NO:21、22、23もしくは24を含むもの)であるか; あるいはグアニジンリッチペプトイド、グアニジンリッチポリカルバメート、β-オリゴアルギニンおよびプロリンリッチデンドリマーからなる群より選択される。いくつかの態様では、Bはテトラグアニジウム化合物、トリグアニジウム化合物、ジグアニジウム化合物もしくはモノグアニジウム化合物、またはトリフェニルホスホニウム化合物である。
【0011】
いくつかの態様では、カチオン性ミトコンドリア浸透性部分Bは(アリール)3P-を含む。
【0012】
いくつかの態様では、カチオン性ミトコンドリア浸透性部分Bはローダミン123を含む。

【0013】
本組成物のいくつかの態様では、分子シャペロン阻害剤Aはゲルダナマイシン類似体を含む:

式中、R2はH、アルキル、アリールまたはアリールアルキルであり; R3はH、アルキルであり; R4はH、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、ORdであり、ここでRdはH、アルキルまたはアリールアルキルである。
【0014】
本組成物のいくつかの態様では、R2はHまたはアルキルであり; R3はH、アルキルであり; R4はHまたはORdであり、ここでRdはH、アルキルである。
【0015】
本組成物のいくつかの態様では、R2はHであり; R3はメチルであり; R4はHである。
【0016】
本組成物のいくつかの態様では、Bはミトコンドリア浸透性ペプチド、例えばマイトフュージンペプチド、ミトコンドリア標的化シグナルペプチド、アンテナペディアヘリックスIIIホメオドメイン細胞浸透性ペプチド(ANT)(例えばSEQ ID NO:18を含むもの)、HIV-1 Tat塩基性ドメイン(例えばSEQ ID NO:19もしくは20を含むもの); VP22ペプチドまたはPep-1ペプチド; RNAミトコンドリア浸透性シグナル(例えばSEQ ID NO:21、22、23もしくは24を含むもの)であるか; あるいはグアニジンリッチペプトイド、グアニジンリッチポリカルバメート、β-オリゴアルギニンおよびプロリンリッチデンドリマーからなる群より選択される。ホスホニウム塩、例えばメチルトリフェニルホスホニウムおよびテトラフェニルホスホニウム。本組成物のいくつかの態様では、BはANTまたはそのミトコンドリア浸透性断片であるかまたはそれを含む。本組成物のいくつかの態様では、Bはテトラグアニジウム化合物、トリグアニジウム化合物、ジグアニジウム化合物もしくはモノグアニジウム化合物、またはトリフェニルホスホニウム化合物である。
【0017】
いくつかの態様では、本組成物はAとBとの間の連結部分、例えばペプチドリンカーまたは化学リンカーを含む。
【0018】
いくつかの態様では、リンカー部分は二価でありかつアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびペプチドリンカーからなる群より選択することができ、ここで該アルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンの任意の2個の隣接する炭素-炭素結合をO、NH、S、PRe、C(O)NRf、アリーレン、ヘテロシクロアルキレンまたはヘテロアリーレンのうち1つまたは複数で置き換えてもよく; ここでReおよびRfはアルキルまたはアリールより独立して選択される。
【0019】
いくつかの態様では、リンカー部分は以下である。

【0020】
いくつかの態様では、リンカー部分はアルキレンである。
【0021】
いくつかの態様では、リンカー部分は6個の炭素原子を有するアルキレンである。
【0022】
いくつかの態様では、本組成物は下記式の化合物、または薬学的に許容されるその塩を含む:

式中、R1はH、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはRaRbRcSiであり; R2はH、アルキル、アリールまたはアリールアルキルであり; R3はH、アルキルであり; R4はH、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、ORdであり、ここでRdはH、アルキルまたはアリールアルキルであり; Ra、RbおよびRcはアルキルまたはアリールより独立して選択され; nは包含的な1〜10の整数である。
【0023】
いくつかの態様では、塩はヘキサフルオロリン酸塩である。
【0024】
いくつかの態様では、R1はRaRbRcSiであり、Ra、RbおよびRcはアルキルまたはアリールより独立して選択され; R2はHであり; R3はH、アルキルであり; R4はHであり; nは1、2、3または4である。
【0025】
いくつかの態様では、本化合物は下記式を有し得る:

式中、qは、1、2、3、4、5または6である。
【0026】
いくつかの態様では、qは3である。
【0027】
いくつかの態様では、アリールはフェニルである。
【0028】
いくつかの態様では、アリールはフェニルであり、qは3である。
【0029】
いくつかの態様では、Xはヘキサフルオロリン酸塩であり得る。
【0030】
いくつかの態様では、本化合物は以下であり得る。

【0031】
さらなる局面では、本発明は、例えば対象、例えば哺乳動物、例えばヒトまたは非ヒトの哺乳動物におけるがん細胞死または腫瘍細胞死を誘発するための方法であって、がん細胞死を誘発するために十分な量で本明細書に記載のミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤を対象に投与する段階を含む方法を含む。
【0032】
別の局面では、本発明は、例えば対象、例えば哺乳動物、例えばヒトまたは非ヒトの哺乳動物におけるがん細胞死または腫瘍細胞死を誘発するための方法を提供する。本方法は、がんまたは腫瘍、例えばがん細胞または腫瘍細胞を含むがんまたは腫瘍を有する対象を同定する段階; および該がんまたは腫瘍の細胞が対照細胞、例えば正常な非腫瘍、非がん細胞に例えば比べて増加したミトコンドリアにおけるシャペロン、例えばHsp90またはTrap-1の濃度を有するか否かを決定する段階を含む。増加したミトコンドリアにおける該シャペロンのレベルを対象が有する場合、本方法は下記式を含むミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤を哺乳動物に投与する段階を含む:
A-B
式中、Aはシャペロン阻害剤であり、Bはミトコンドリア浸透性部分であり、AとBとは任意で例えば本明細書に記載の連結部分によって連結している。
【0033】
さらなる局面では、本発明は、シャペロン活性を阻害するための候補薬剤を同定するための方法を提供する。本方法は、少なくとも1つのシャペロンおよびシクロフィリンDを含む試料を与える段階; 試料と試験薬剤とを接触させる段階; ならびに試験薬剤の存在および非存在下での試料中のシャペロンおよびシクロフィリンDの結合を検出する段階を含む。結合を阻害する試験薬剤がシャペロン活性を阻害するための候補薬剤である。いくつかの態様では、シャペロンはHsp60、HspA9、Hsp90またはTRAP-1である。
【0034】
「がん」とは、この用語を本明細書で使用する場合、細胞の制御されない異常な成長によって特徴づけられる疾患を意味する。「がん細胞」とは、制御されない成長によって異常に分裂および再生する細胞のことである。この細胞は、その起源(例えば腫瘍)の部位から離脱して、転移と呼ばれるプロセスにおいて、身体の他の部分に移動し、別の部位(例えば他の腫瘍)を設定することがある。「腫瘍」とは、制御されておらずかつ進行性である過度の細胞分裂に起因する組織の異常な塊のことであり、新生物とも呼ばれる。腫瘍は良性(非がん性)または悪性のいずれかであり得る。本明細書に記載の方法は、処置される細胞が本明細書に記載のシャペロンのミトコンドリアにおいて局在化される限り、がん細胞および腫瘍細胞、すなわち良性腫瘍と悪性腫瘍との両方および固形腫瘍を有さないがん(造血器がんなど)の処置に有用であり得る。
【0035】
分子シャペロンは、最終構造の成分であることなくポリペプチドの正確な細胞内でのフォールディングおよび構築に関与する、タンパク質の一群のいずれかである。分子シャペロンは細菌、ミトコンドリアおよび真核生物サイトゾルにおいて見られる。本明細書では「分子シャペロン」および「シャペロン」を互換的に使用する。
【0036】
本明細書では「ミトコンドリア指向性」という用語を「ミトコンドリア標的化」および「ミトコンドリア浸透性」と互換的に使用する。
【0037】
本明細書では、「ミトコンドリア指向性剤」という用語は、シャペロン活性を阻害しかつミトコンドリアに限局化する、本明細書に記載の式A-Bを有する組成物を意味する。
【0038】
本明細書で使用する「ガミトリニブ(Gamitrinib)」とは、ゲルダナマイシン類似体、例えば、ミトコンドリア浸透性部分、例えばテトラグアニジウム(G4)部分、トリグアニジウム(G3)部分、ジグアニジウム(G2)部分、モノグアニジウム(G1)部分、またはトリフェニルホスホニウム(TPP)部分にリンカーを経由してC17位のアミノ基を経由して共役している17-AAGを意味する。本出願を通じて、特別なガミトリニブの一部であるミトコンドリア浸透性部分を時々示すことがある。例えば、ガミトリニブ-G4とは、テトラグアニジウム部分が存在するガミトリニブを意味する。例えば、ガミトリニブ-TPPとは、トリフェニルホスホニウム部分が存在するガミトリニブを意味する。また本出願を通じて、複数形「ガミトリニブ(Gamitrinibs)」の使用は以下の1つまたは複数を示す: ガミトリニブ-G4、ガミトリニブ-G3、ガミトリニブ-G2、ガミトリニブ-G1およびガミトリニブ-TPP。
【0039】
以下の説明が分子シャペロンHsp90を指向することが時々あるが、この説明は、がん細胞のミトコンドリアにおいて過剰発現する構造上関連する分子シャペロン、例えばTRAP-1(Song et al., J. Biol. Chem., 270:3574-3581 (1995); Cechetto and Gupta, Experimental Cell Research, 260:30-39 (2000)); 熱ショック60kDaタンパク質1(Hsp60/HspD1)(Singh et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 169 (2), 391-396 (1990)); Bross et al., J. Hum. Genet. 52 (1), 56-65 (2007)); および熱ショック70kDaタンパク質9(HSPA9/モルタリン)(Domanico et al., Mol. Cell. Biol. 13 (6), 3598-3610 (1993); Bhattacharyya et al., J. Biol. Chem. 270 (4), 1705-1710 (1995); Kaul et al., FEBS Lett. 361 (2-3), 269-272 (1995))を一般的に言うことができると理解すべきである。
【0040】
一局面では、本発明は、ミトコンドリアに標的化される、すなわちミトコンドリア膜に浸透しかつそこに蓄積される分子シャペロン阻害剤を提供する。シャペロン阻害剤は、ミトコンドリア浸透性部分との会合を経由してミトコンドリアに標的化することができる。分子シャペロン阻害剤は、例えばシャペロンタンパク質に結合するタンパク質またはそのシャペロン結合性断片であり得る。例えば、ある種のアポトーシスタンパク質阻害剤(IAP)を使用できる。IAPは抗アポトーシスタンパク質のファミリーであり(Schimmer, Can. Res. 64:7183-7190 (2004))、有用なIAPとしては分子シャペロンHsp90に結合するものが挙げられる。分子シャペロンに自然に結合するこれらおよび他のタンパク質の断片は本発明の一部である。分子シャペロンに自然に結合しかつそれを阻害するこれらおよび他のペプチドまたはタンパク質のペプチド模倣体を使用することもできる。
【0041】
シャペロン阻害剤は、本明細書に記載のミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤である小分子、例えば本明細書に記載のスクリーニング方法を通じて同定される小分子でもあり得る。
【0042】
分子シャペロン阻害剤はミトコンドリア浸透性部分に連結する。例えば、ミトコンドリア浸透性部分は、例えばアンテナペディアホメオドメイン(ANT)の第3ヘリックスからの、塩基性のまたは正に帯電したペプチド配列であり得る。いくつかの態様では、ミトコンドリア浸透性部分は、Fernandez-Carneadoら(J. Am. Chem. Soc., 127:869-874 (2005))に記載のテトラグアニジウム化合物であり得る。
【0043】
分子シャペロン阻害剤とミトコンドリア浸透性部分との連結は、共有結合、例えばペプチド結合またはチオエーテル結合であり得る。いくつかの態様では、例えばシャペロン阻害剤またはミトコンドリア浸透性部分の一方または両方が非ペプチド性であり、例えば小分子であり、分子シャペロン阻害剤とミトコンドリア浸透性部分とは化学リンカーを通じて連結している。いくつかの態様では、分子シャペロン阻害剤とミトコンドリア浸透性部分との連結は、非共有結合性相互作用、例えばイオン性相互作用であり得る。別の局面では、本発明はまた、シャペロン阻害剤を同定するための方法を特徴とする。特に本発明は、Hsp90とシクロフィリンD(CypD)との間、Hsp60とCypDとの間、またはTRAP-1とCypDとの間の相互作用を破壊する候補化合物を同定するための方法を特徴とする。
【0044】
本発明はいくつかの利点を提供する。例えば、本明細書に記載の、正常細胞に比べて増加したミトコンドリアにおけるシャペロンの発現は、正常細胞を傷つけることなく腫瘍細胞を死滅させるために使用可能な標的化アプローチを与えるものであり、したがって副作用を最小化しかつ有効性を増加させる。さらに、多種多様な腫瘍細胞およびがん細胞タイプは、ミトコンドリアにおけるシャペロンの蓄積、したがって本明細書に記載の方法によって処置可能な多くの種類の腫瘍およびがんを示す。
【0045】
本発明は、先行技術に対して有利なミトコンドリア指向性剤(例えばミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤)を提供する。これらの薬剤は、高い効率でミトコンドリアに局在化し、かつミトコンドリアにおけるシャペロンの蓄積を示す細胞(例えばがん細胞)においてミトコンドリアの崩壊および細胞死を選択的に誘発する。これらの薬剤は、正常なシャペロンの機能(例えば正常細胞または非形質転換細胞におけるHsp90の機能)に対する影響は最小限でありながら、形質転換細胞(例えばがん細胞)に存在するミトコンドリア局在化シャペロンの機能に対して最大限の効果を有する。したがって、これらの薬剤は、ミトコンドリアに局在化するシャペロンを特異的に阻害しない現在公知のシャペロン阻害剤よりも低い毒性を有すると予想されるため、がん治療の理想的な候補となる。
【0046】
例えば、本明細書に記載のガミトリニブは、ヒトにおける試験に好適な、新規の小分子抗がん剤である。本出願人らは理論に拘束されることは望まないが、ガミトリニブの組み合わせの設計は、それをミトコンドリアに対して効率的に標的化し、それによって非腫瘍細胞または正常細胞に対するその影響を最小化しながら腫瘍細胞に対するその細胞障害性効果を最大化する。これは、腫瘍細胞の生存に重要ではあるが正常細胞中に存在しないかまたは正常細胞の生存に対して無視できる影響しか有さない、腫瘍細胞中のミトコンドリアにおけるシャペロン(例えばHsp90およびTRAP1)のプールの存在が理由である。さらに、ガミトリニブの組み合わせの設計は、サイトゾル中にシャペロンを主に発現させる非腫瘍細胞または正常細胞に対するその効果を最小化する。現行のHsp90阻害剤(例えばDrysdale et al., "Targeting Hsp90 for the treatment of cancer," Curr Opin Drug Discov Devel, 9:483-495 (2006)を参照)に比べて、ガミトリニブは腫瘍細胞に対する細胞障害活性が改善されており、これはインビトロおよびインビボの結果により支持されている。別の主要な利点は、これらの薬剤が、サイトゾルにおけるHsp90の一般的な恒常性機能に影響を与えず、したがって一般的なHsp90アンタゴニストで見られる潜在的に代償性の生存シグナル、例えばHsp70誘発(例えばDrysdale et al., (2006)前掲論文を参照)を引き出さないということである。ミトコンドリアHsp90シャペロンは大部分の正常組織には存在しないため(本明細書で実証するように)、ガミトリニブは腫瘍細胞に対して選択的でありかつ正常細胞に対する低い毒性を有し、これによりガミトリニブは抗がん治療の好ましい候補になる。さらに、腫瘍関連Hsp90は、正常細胞に比べて高い親和性でATPアーゼポケットアンタゴニストに結合し(例えばKamal et al., Nature, 425:407-410 (2003)を参照)、これにより、低レベルのミトコンドリアHsp90を有する正常器官、すなわち脳をガミトリニブに基づく治療からさらに保護することができる。ガミトリニブのパラダイムに従って、他のシャペロン阻害剤、例えばプリン阻害剤またはレゾルシノール阻害剤(例えばピラゾール系レゾルシノールHsp90阻害剤CCT018159のピペラジニル誘導体、モルホリノ誘導体およびピペリジル誘導体)を使用してがん細胞を標的化することができる(例えばSharp et al., Cancer Res. 67 (5):2206-16 (2007); Sharp et al., Mol Cancer Ther. 6 (4):1198-1211 (2007); Eccles et al., Cancer Res. 68 (8):2850-60 (2008); Strausberg et al., Nature, 429:469-474 (2004); Butcher, Nat Rev Drug Discov 4, 461-467 (2005); Philips, Biochem Soc Trans, 33:657-661 (2005)を参照)。
【0047】
別途定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するものと同一の意味を有する。本発明で使用する方法および材料は本明細書に記載されており、当技術分野で公知の他の好適な方法および材料も使用することができる。材料、方法および実施例は例示的なものでしかなく、限定的であるようには意図されていない。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースのエントリーおよび他の参考文献は、その全体が参照により組み入れられる。矛盾がある場合は、定義を含む本明細書が制御するであろう。
【0048】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1Aは、正常細胞に対して増加したレベルで腫瘍細胞においてHsp90様のシャペロンTRAP-1がミトコンドリアに局在化していることを示す一対の免疫ブロットである。示された腫瘍細胞タイプから精製したサイトゾル抽出物もしくはミトコンドリア抽出物(上側パネル)または正常なマウス器官からのミトコンドリア(下側パネル)におけるTRAP-1の免疫ブロットおよびミトコンドリアマーカーCox-IVを示す。β-アクチンの発現を上側パネルに対照として示す。図1B〜Iは、正常な膵臓(B)、乳房(D)、結腸(F)もしくは肺(H)、または膵臓(C)、乳房(E)、結腸(G)もしくは肺(I)の腺がんの症例の試料におけるTRAP-1のインビボの発現を示す、免疫組織化学的に染色した一次組織試料の画像である。図1Jは、Hsp90が腫瘍細胞においてミトコンドリアに局在化することを示す、ミトコンドリア抽出物またはサイトゾル抽出物の一連の3つの関連する免疫ブロットである。Cox-IV発現レベルおよびβ-アクチン発現レベルを対照として示す。図1K〜Lは、Hsp90に対する抗体が単離HeLa細胞ミトコンドリアに局在化する(図1K)が、非特異的抗体が単離HeLa細胞ミトコンドリアに局在化しない(図1L)ことを示す電子顕微鏡写真である。図1Mは、カルネキシン、Lamp-1、GAPDH、Cox-IV、TRAP-1およびHsp90の発現レベルを示す、HeLa細胞からの全サイトゾル抽出物(TCE)または単離ミトコンドリア(PKで処理)もしくはサイトゾル抽出物の一連の6つの関連する免疫ブロットである。
【図2】図2Aは、処理後の放射標識Hsp90または対照PiCのレベルを示す、バリノマイシンを有するかまたは有さない、35Sで標識しインビトロで転写および翻訳したHsp90、または対照PiCと共にインキュベートし、かつプロテイナーゼK(PK)で処理した、精製マウス脳ミトコンドリアからの抽出物の一組の2つのオートラジオグラフである。図2Bは、Hsp90および対照としてのmt-Hsp70のタンパク質レベルを示す、異なる濃度のジギトニンと共にインキュベートした、PKで処理したHeLa細胞ミトコンドリアからのペレット(P)または上澄み(S)の一対の免疫ブロットである。図2Cは、Hsp90、SmacおよびCypDのタンパク質レベルを示す、PKの存在下または非存在下でショ糖を有する緩衝液(SHE)またはショ糖を有さない緩衝液(HE)に懸濁し、かつ反復ピペッティングによって機械的に破壊されたミトコンドリア外膜を有する、HeLa細胞ミトコンドリアのタンパク質含有量の一組の4つの免疫ブロットである。図2Dは、Hsp90、VDAC、Cyt c、Cox-IVおよびCypDのタンパク質レベルを示す、HeLa細胞からの全ミトコンドリア抽出物(MTE)、さらに分画した外膜抽出物(OM)、膜間腔抽出物(IMS)、内膜抽出物(IM)およびミトコンドリアマトリックス抽出物(マトリックス)の一組の5つの免疫ブロットである。図2Eは、Hsp90、Cox-IVおよびCyt cのタンパク質レベルを示す、ミトコンドリア(左側)またはサイトゾル(右側)に分画したマウス器官の一組の7つの免疫ブロットである。β-アクチンをサイトゾルの対照とする。図2Fは、Hsp90およびTRAP-1のレベルを示す、腫瘍(HeLa、MCF-7、Raji)または正常(HFF、HGF、WS-1)細胞からの全細胞抽出物の一対の免疫ブロットである。β-アクチンを対照とする。図2Gは、Hsp90、TRAP-1およびCox-IVのレベルを示す、ミトコンドリア抽出物(左側3つのブロット)またはサイトゾル抽出物(右側4つのブロット)として分画した、示された正常細胞タイプまたは対照HeLa細胞の一組の7つの免疫ブロットである。β-アクチンを対照とする。
【図3】図3A〜Dは、HeLa細胞ミトコンドリアの存在下(A、B、D)または非存在下(C)でインキュベートした、アンテナペディア細胞浸透性配列(ANT)を有する(A、C)かもしくは有さない(B)FITC共役シェファーディンまたはANTを有するスクランブルペプチド模倣体(D)のミトコンドリアにおける蓄積の蛍光顕微鏡画像であって、ANTを有するシェファーディン(Sheph-ANT)とANTを有する細胞透過性スクランブルペプチド模倣体(Scram-ANT)との両方がミトコンドリアに蓄積されることを示す画像である。図3Eは、Sheph-ANTおよびScram-ANTがミトコンドリアに同様のレベルで蓄積されることを示す、FITC共役Sheph-ANTまたはFITC共役Scram-ANTでの細胞の処理後に単離ミトコンドリア画分中で定量化した蛍光強度の棒グラフである。図3Fは、FITC共役シェファーディン(Sheph)またはANTを有するFITC共役シェファーディン(Sheph-ANT)と共にインキュベートしたHeLa細胞ミトコンドリアのミトコンドリア抽出物およびそれから単離したミトコンドリア画分中で定量化した蛍光強度の棒グラフであって、Sheph-ANTがミトコンドリア、外膜/内膜の空間(OM+IMS)および内膜/マトリックス(IM+マトリックス)に蓄積されることを示す棒グラフである。未処理の試料(なし)を対照とする。図3Gは、Hsp90とTRAP-1とがスクランブルペプチド模倣体-セファロースではなくシェファーディン-セファロースによって結合することを示す、シェファーディン-セファロース(上側)またはスクランブルペプチド模倣体-セファロース(下側)のビーズ上で分画した、Rajiミトコンドリア抽出物(MTE)からの溶出画分の一対の免疫ブロットである。図3Hは、Sheph-ANTがミトコンドリア膜電位の変化を誘発すること、および増加する濃度のミトコンドリアによってその効果が低下することを示す、Sheph-ANTと共にインキュベートしたHeLa細胞から精製しかつ蛍光発光の変化について分析した、増加する濃度(μg)のTMRM担持ミトコンドリアを前提とする、経時的なミトコンドリア膜電位の線グラフである。スクランブルペプチド模倣体(Scram-ANT)を対照としてTMRM担持ミトコンドリア60μgと共にインキュベートした。図3Iは、Sheph-ANTでの処理がミトコンドリアCyt cを用量依存的に減少させることを示す、Sheph-ANTまたはScram-ANTで処理したRaji細胞の精製ミトコンドリアからの抽出物の一対の免疫ブロットである。図3Jは、Sheph-ANT処理が上澄みに対するCyt cの放出を用量依存的に増加させることを示す、試料をSheph-ANTまたはScram-ANTで処理しかつ上澄み(Sup)からミトコンドリア(Mito)を分画することで得られた一次ヒト肉腫試料からの抽出物の一組の3つの免疫ブロットである。図3Kは、ミトコンドリア内膜タンパク質SmacおよびCyt cのタンパク質レベルを示す、DMSOまたは17-AAGと共にインキュベートしたHeLa細胞ミトコンドリアの免疫ブロットである。図3Lは、上澄み中のSmacおよびCyt cのレベルを示す、17-AAGで処理したHeLa細胞ミトコンドリアからの上澄みの免疫ブロットである。ミトコンドリア抽出物(MTE)を対照として使用する。
【図4】図4Aは、一次WS-1線維芽細胞(左側)またはRajiリンパ芽球腫細胞(右側)におけるSheph-ANTまたはScram-ANTの添加後の経時的なミトコンドリア膜電位を示す2つの線グラフである。図4Bは、Hsp90、TRAP-1またはGrp94のタンパク質レベルを示す、正常なWS-1線維芽細胞またはHeLa細胞を、グルコースの存在下(+)または非存在下(-)でインキュベートした後に得られた、全細胞抽出物(TCE、左側2つのブロット)または単離したミトコンドリア画分(中央の組の3つのブロット)およびサイトゾル画分(右側の組の4つのブロット)からの抽出物の、3つの組の免疫ブロットを示す。CoxIVおよびβ-アクチンを対照とする。図4Cは、グルコース欠乏WS-1線維芽細胞から単離したTMRM担持ミトコンドリアに対するSheph-ANTまたはScram-ANTの添加後の経時的なミトコンドリア膜電位のグラフである。図4Dは、Sheph-ANTまたはScram-ANTと共にインキュベートした正常マウス肝臓からの単離ミトコンドリアからの抽出物の一対の免疫ブロットである。図4Eは、正常マウス肝臓(左側)または正常マウス脳(右側)から単離したTMRM担持ミトコンドリアに対するSheph-ANTまたはScram-ANTの添加後の経時的なミトコンドリア膜電位の2つの線グラフである。図4Fは、Hsp90、TRAP-1のタンパク質レベルを示す、野生型NIH3T3(正常)またはRas形質転換NIH3T3線維芽細胞からのミトコンドリア(MTE)抽出物またはサイトゾル抽出物の一組の4つの免疫ブロットである。Cox-IVおよびβ-アクチンを対照とする。図4Gは、Shephが形質転換細胞におけるミトコンドリア膜電位の損失を誘発することを示す、NIH3T3(左側)またはRas形質転換NIH3T3(右側)線維芽細胞から単離したTMRM担持ミトコンドリアに対するSheph-ANTまたはScram-ANTの添加(矢印)後の経時的なミトコンドリア膜電位の2つの線グラフからなる。
【図5】図5Aおよび図5Bは、ミトコンドリア染色(MitoTracker)およびFITC共役Sheph-ANT(図5A)またはFITC共役Scram-ANT(図5B)で二重標識しかつ画像統合によって分析したHeLa細胞の共焦点顕微鏡画像である。図5Cは、FITC共役Sheph-ANTまたはFITC共役Scram-ANTで処理したHeLa細胞の全細胞抽出物(TCE)、サイトゾル抽出物またはミトコンドリア抽出物における蛍光強度を示す棒グラフである。図5Dは、JC-1担持Raji細胞におけるSheph-ANT(実線)、17-AAG(点線)またはScram-ANT(破線)の添加後の経時的なミトコンドリア膜電位を示す線グラフである。図5Eのパネルは、チトクロムcおよび対照としてのβ-アクチンを示す、異なる濃度の17-AAGと共にインキュベートしたHeLa細胞からのサイトゾル抽出物の免疫ブロットである。図5Fのパネルは、アポトーシス(右上パネル)またはミトコンドリアの融合/分裂(右下パネル)の細胞形態を示す、Sheph-ANTまたはScram-ANTで処理したHeLa細胞の微速度ビデオ顕微鏡静止画像である。図5Gは、増加する濃度のSheph-ANT(実線)または増加する濃度のScram-ANT(破線)と共にインキュベートした腫瘍細胞(左側)および正常細胞(右側)の、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)生存率分析によって決定した生存率パーセントを示す2つの線グラフからなる。図5Hは、増加する濃度の17-AAGと共に4時間(左側)または24時間(右側)インキュベートした腫瘍細胞(左側)および正常細胞(右側)の、MTTによって決定した生存率パーセントを示す2つの線グラフからなる。
【図6】図6Aは、シクロスポリンA(CsA)またはゲルダナマイシン(GA)で処理した精製Rajiミトコンドリア抽出物からTRAP-1またはIgG(対照としての)に対する抗体を使用して免疫沈降させたミトコンドリアTRAP-1およびCypDの一組の2つの免疫ブロットである。任意の薬物で処理しなかったミトコンドリア抽出物(なし)を対照とする。図6Bは、Hsp90またはIgG(対照としての)に対する抗体を使用してCsAによって(+)またはそれによらずに(-)処理したRajiミトコンドリア抽出物から免疫沈降させたHsp90およびCypDの一組の2つの免疫ブロットである。図6Cは一組の3つの免疫ブロットであり、上側および中央のパネルは、GST(対照としての)またはGST-CypDを使用してCsAもしくはGAによってまたは薬物なしで(なし)処理したRajiミトコンドリア抽出物から捕捉したHsp90およびTRAP-1の免疫ブロットである。下側パネルは、上側および中央のパネルの免疫ブロットに対応するクーマシー染色ゲルである。図6Dは、HeLa細胞から単離したTMRM担持ミトコンドリアに対するCsAの存在下(破線)または非存在下(実線)でのSheph-ANTまたはScram-ANTの添加(矢印)後の経時的なミトコンドリア膜電位を示す線グラフである。図6Eは、CsAの存在下(円)または非存在下(四角)で増加する濃度のSheph-ANT(中実記号)またはScram-ANT(中空記号)で処理したHeLa細胞のMTTで決定した生存率パーセントを示す線グラフである。図6Fは、増加する濃度のSheph-ANT(四角)またはScram-ANT(円)で処理した、対照siRNA(中空記号)またはCypD指向性siRNA(中実記号)を形質移入したHeLa細胞のMTTで決定した生存率パーセントを示す線グラフである。図6Gは、CsAの存在下または非存在下で対照siRNAまたはTRAP-1指向性siRNAを形質移入したHeLa細胞のMTTで決定した生存率パーセントを示す棒グラフである。図6Hは、対照siRNAもしくはCypD指向性siRNA(上側の組の2つのパネル)またはTRAP-1指向性siRNA(下側の組の2つのパネル)を形質移入したHeLa細胞の抽出物の一組の二対の免疫ブロットである。非形質移入培養物(なし)を対照とする。β-アクチン免疫ブロットを対照とする。図6Iは、pcDNA3(対照としての)またはTRAP-1 cDNAを形質移入し、増加する濃度のスタウロスポリンで処理した正常WS-1線維芽細胞のMTTで決定した生存率パーセントの棒グラフである。
【図7】図7Aは、HeLa細胞から単離した異なる濃度(μg)のTMRM担持ミトコンドリアに対するANT-GAまたは脱共役混合物GA/ANTの添加(矢印)後の経時的なミトコンドリア膜電位を示す線グラフである。単離ミトコンドリア60μgと共にインキュベートした脱共役混合物GA/ANTを対照とする。図7Bは、HeLa細胞(左側)またはマウス脳(右側)から単離したTMRM担持ミトコンドリアに対する、CsAを有するかまたは有さないANT-GAまたは脱共役混合物GA/ANTの添加(矢印)後の経時的なミトコンドリア膜電位を示す2つの線グラフからなる。図7Cは、ANT-GAまたは脱共役混合物GA/ANTで処理した単離HeLa細胞ミトコンドリア(上側の組の2つのパネル)または単離マウス肝ミトコンドリア(下側の組の2つのパネル)から放出されたチトクロムcの一対の組の2つの免疫ブロットである。図7Dは、異なる濃度でGA、ANT-GAまたはGA/ANTと共にインキュベートしたHeLa細胞のMTTで決定した生存率パーセントを示す線グラフである。図7Eは、ANT-GA(中実四角)またはGA/ANT(中空円)で処理した一次ヒト線維芽細胞WS-1(黒色)、HGF(紫色)またはHFF(緑色)のMTTで決定した生存率パーセントを示す線グラフである。前立腺がんPC3細胞(青色)を対照とする。図7Fは、ANT-GA(左側の2つのプロット)またはGA/ANT(左側の2つのプロット)で処理したp53+/+(上側の2つのプロット)およびp53-/-(下側の2つのプロット)HCT116細胞のフローサイトメトリー分析の、ヨウ化プロピジウム染色強度をy軸上、DEVDアーゼ活性をx軸上とする4つの散布図である。各象限における細胞の割合を表示する。
【図8】一組の4つの免疫ブロットである。上側パネルは、精巣、肺、脾臓、腎臓、脳および肝臓から単離した、プロテイナーゼK(PK)で処理したミトコンドリアのHsp90免疫ブロットであり、精巣および脳においてのみ最小限の発現を示す。Bcl-2(中央パネル)およびCox-IV(下側パネル)の免疫ブロットをそれぞれ負の対照および正の対照として使用した。PKでの処理なしの脳ミトコンドリアにおけるBcl-2免疫ブロットも正の対照として使用した(左手のパネル)。
【図9】一対の免疫ブロットである。上側パネルは、一次p53-/-マウスリンパ腫試料から単離しかつSheph-ANTまたはScram-ANTと共にインキュベートしたミトコンドリアから調製した抽出物のCyt c免疫ブロットである。Cox-IV免疫ブロットを正の対照として使用した(下側パネル)。
【図10】図10Aは一組の2つの免疫ブロットである。上側パネルは、CsA、GAを加えるかまたは薬物を加えずにGSTまたはGST-TRAP-1を組換えCypDと共にインキュベートしたCypD免疫ブロットであって、GST-TRAP1 CypDがGSTではなくGST-TRAP-1によってプルダウンすることを示す免疫ブロットである。図10Aの下側パネルは免疫ブロットゲルのクーマシー染色である。図10Bは一組の2つの免疫ブロットである。上側パネルは、インビトロで転写および翻訳した35S標識Hsp90のGSTまたはGST-CypDプルダウンの電気泳動によるタンパク質ゲルのオートラジオグラフである。図10Bの下側パネルは実験で使用したゲルのクーマシー染色である。図10Cは一組の2つの免疫ブロットである。上側パネルは、インビトロで転写および翻訳した35S標識CypDのGSTまたはGST-Hsp90プルダウンの電気泳動によるタンパク質ゲルのオートラジオグラフである。図10Cの下側パネルは実験で使用したゲルのクーマシー染色である。
【図11】pcDNA3(対照としての)またはTRAP-1 cDNAを形質移入し、各種濃度のスタウロスポリンで処理した正常HFFヒト線維芽細胞のMTTで決定した生存率パーセントを示す棒グラフである。
【図12】図12Aは一組の6つの画像パネルであり、上側および中央の列は、精製Raji細胞ミトコンドリアと共にインキュベートしたFITC-GA(左上パネル)、FITC-ANT(右上パネル)もしくはFITC-ANT-GA(左中央パネル)、または精製Raji細胞ミトコンドリアなしでインキュベートしたFITC-ANT-GA(右中央パネル)の蛍光顕微鏡画像である。下側の列のパネルは、PKでの処理の前(左下パネル)および後(右下パネル)の精製Raji細胞ミトコンドリアと共にインキュベートしたFITC-ANT-GAである。図12Bは、ANT-GAを生成するためのチオエーテル結合による17-AAGまたは17-GMB-APA-GAとANTとの共役用の1つのスキームを示す図である。図12Cは一対の質量スペクトログラフである。上側パネルは、ANT-GAを生成するために行った共役反応の質量スペクトルであって、17-GMP-APA-GAのピークを矢印で示す質量スペクトルである。下側パネルは、ANT-GAを生成するために行った共役反応の質量スペクトルであって、ANTおよびANT-GAのピークを矢印で示す質量スペクトルである。図12Dは、ANT-GA(中央レーン)または脱共役混合物GA/ANT(右側レーン)で処理したHeLa細胞におけるAkt発現(上側パネル)を示す免疫ブロットである。未処理HeLa細胞を対照として使用した(左側レーン)。β-アクチンを対照として使用した(下側パネル、レーンは上側パネルと同様)。
【図13】図13Aは、MCF-7もしくはHCT116細胞からの単離サイトゾル(C)画分もしくはミトコンドリア(M)画分(上側パネル)または一次WS-1もしくはHFFヒト線維芽細胞(下側パネル)におけるHsp60およびCOX-IVの発現を示す一対のウエスタンブロットである。図13Bは、Hsp60に対する抗体で染色しかつ免疫組織化学的検査で分析した、乳房、結腸もしくは肺の腺がん(腫瘍)または対応する正常組織(正常)の一次ヒト組織試料を示す一組の6枚の顕微鏡写真である。倍率200倍。図13Cは、74INT正常上皮細胞または一次WS-1正常線維芽細胞に非標的化またはHsp60指向性siRNAを形質移入し、また多パラメータフローサイトメトリーによってDEVDアーゼ活性およびヨウ化プロピジウム染色を分析した、実験の結果を示す一組の6つのプロットである。各象限における細胞の割合を表示する。「なし」とは非形質移入細胞のことである。
【図14】本明細書に開示される配列の非公式の配列表である。
【図15】図15Aは、TBDPSがtert-ブチルジフェニルシリルを示すガミトリニブの組み合わせモジュラー構造を示す図である。図15Bの左上パネルは、17-AAGまたはガミトリニブ-G4(「G4」として示す)(1〜10μM)で処理した細胞におけるCdc25のChk1依存性リン酸化としてのシャペロン活性を示すオートラジオグラムであり、担持対照を中央(Cdc25)および下側(GST-Chk1)に示す。右側パネルは、左側パネルに示すバンドの濃度測定による定量化を示す棒グラフであり、2つの実験を表すものである。図15Cは、17-AAGまたはガミトリニブ-G4(「G4」として示す)のミトコンドリアにおける蓄積を定量化する棒グラフであって、「なし」が媒体対照を示す棒グラフである。平均値±SEM(n=3)。
【図16】図16Aは、ガミトリニブ-G1(「G1」)、ガミトリニブ-G2(「G2」)、ガミトリニブ-G3(「G3」)、ガミトリニブ-G4(「G4」)、ガミトリニブ-TPP(「TPP」)、GAまたは17-AAG(濃度1μM)で処理しかつ蛍光発光について分析したTMRM担持ミトコンドリアにおける、経時的なミトコンドリア内膜電位を示す線グラフである。図16Bの左側パネルは、17-AAGとテトラグアニジウムとの混合物(17-AAG + TG-OH)、17-AAGおよび1μMシクロスポリンA(「17-AAG + CsA」)、1.5μMガミトリニブ-G4(「G4」)、1.5μMガミトリニブ-G4および1μMシクロスポリンA(「G4 + CsA」)と共にインキュベートしたTMRM担持ミトコンドリアにおける、経時的なミトコンドリア内膜電位を示す線グラフである。右側パネルは、GAとトリフェニルホスホニウムとの混合物(「GA + TPP-OH」)、GAとトリフェニルホスホニウムおよび1μMシクロスポリンAとの混合物(「GA + TPP-OH + CsA」)、トリフェニルホスホニウム自体(「TPP」)ならびにトリフェニルホスホニウムおよび1μMシクロスポリンA(「TPP + CsA」)と共にインキュベートしたTMRM担持ミトコンドリアにおける、経時的なミトコンドリア内膜電位を示す線グラフである。矢印は添加時点を示す。図16Cは、ガミトリニブ-G1(「G1」)、ガミトリニブ-G2(「G2」)、ガミトリニブ-G4(「G4」)または17-AAGで処理した(20分間)腫瘍ミトコンドリア中のミトコンドリアマーカーとしてのCox-IVを示す上澄み(S)またはペレット(P)におけるチトクロムcの放出を示す、免疫ブロットのパネルである。図16Dは、IPI-504、BIIB021、NVP-AUY922、17-AAGまたはガミトリニブ-G4(「G4」)と共に3時間インキュベートしたミトコンドリアからのチトクロムcの経時的放出のパーセントを示す線グラフである。データは2つの独立した実験を表す。
【図17】図17Aは、異なる濃度のガミトリニブ-G1(「G1」)、ガミトリニブ-G2(「G2」)、ガミトリニブ-G3(「G3」)、ガミトリニブ-G4(「G4」)、ガミトリニブ-TPP(「TPP」)または17-AAGで処理した、MTTで分析したH460細胞の生存率パーセントを示す2つの線グラフからなり、処理3時間後を左側の線グラフ、処理24時間後を右側の線グラフとする。平均値±SD(n=2)。図17Bは、ガミトリニブ-G4(「G4」)、ガミトリニブ-TPP(「TPP」)または17-AAG(濃度10μM)で処理しかつMTTで分析したSKBr3細胞の経時的な生存率パーセントを示す線グラフである。図17Cは、示された時間間隔で10μMのガミトリニブ-G4(「G4」)、ガミトリニブ-TPP(「TPP」)または17-AAGで処理したSKBr3細胞においてトリパンブルー染色によって分析した死細胞の割合を示す棒グラフである。平均値±SEM(n=3)。図17Dは4つの散布図からなる。H460細胞を、ガミトリニブ-G4(「G4」)または媒体で4時間処理し、JC-1で標識し、また、上側の散布図に示すFL2/FL1蛍光比の変化によるミトコンドリア膜電位の損失、または下側の散布図に示すDEVDアーゼ(カスパーゼ)活性について(多パラメータフローサイトメトリーによって)分析した。各象限における細胞の割合を表示し、PIを使用してヨウ化プロピジウムを示す。図17Eは、軟寒天におけるコロニー形成の2つの写真であって、上側写真において媒体(なし)で4時間処理したH460細胞を使用する2週間後のコロニー形成を示し、また下側写真において50μMのガミトリニブ-G4(「G4」)で4時間処理したH460細胞を使用する2週間後のコロニー形成を示す写真である。倍率200倍。図17Fは、MTTで分析した、腫瘍細胞株(K562、黒色; MDA-MB-231、淡橙色; U87MG、赤色; MCF-7、桃色; H1975、淡褐色; DU145、橙色; H460、青色; HCT116、紫色; HL-60、青紫色; Raji、濃桃色; THP-1、緑色)におけるガミトリニブ-G4(実線)または17-AAGとTG-OHとの混合物(破線)の濃度関数としての生存率パーセントを示す線グラフである。データは2つの実験を表す。図17Gは、MTTで分析した、対照(中実記号)またはCypD(中空記号)siRNAを形質移入したH460細胞における17-AAG(円)またはガミトリニブ-G4(四角)の濃度関数としての生存率パーセントを示す線グラフである。平均値±SEM(n=3)。図17Hは、ガミトリニブ-G1(「G1」)、ガミトリニブ-G2(「G2」)、ガミトリニブ-G3(「G3」)、ガミトリニブ-G4(「G4」)、ガミトリニブ-TPP(「TPP」)または17-AAG(濃度5μM、24時間)で処理したHeLa細胞におけるAkt、Hsp70、Chk1およびGAPDHのタンパク質レベルを示す一連の免疫ブロットである。
【図18】図18Aは上側および下側の2つの線グラフからなる。上側の線グラフは、H460肺腺がん異種移植腫瘍(100〜150mm3)を保有しており、ガミトリニブ-G4(「G4」)または17-AAGで処理したSCID/ベージュマウスにおける時間関数としての腫瘍体積を示す。下側の線グラフは、実施例11に記載の用量増大レジメンによって媒体、ガミトリニブ-G1(「G1」)またはガミトリニブ-TPP(「TPP」)で処理したマウスにおける時間関数としての腫瘍体積を示す。腫瘍体積はノギスによって測定した。図18Bは、TUNELによってインサイチューで可視化した、媒体(「媒体」)またはガミトリニブ-G4(「G4」)で処理した腫瘍からの腫瘍試料におけるヌクレオソーム間DNA断片化の「媒体」および「G4」とラベリングした2つの画像を示す。下側の棒グラフは陽性細胞の定量化を示す。倍率400倍。***はp<0.0001。図18Cは、媒体またはガミトリニブ-G4(「G4」)で処理した動物から収集したH460異種移植腫瘍のサイトゾル画分におけるチトクロムc(Cyto c)、Cox-IVおよびGAPDHの一連の免疫ブロットを示す。2匹のマウス/群(動物番号)を分析した。図18Dは、実験の終わりに測定した、媒体、17-AAG、ガマトリニブ(Gamatrinib)-G1(「G1」)、ガマトリニブ-G4(「G4」)またはガマトリニブ-TPP(「TPP」)で処理したマウスにおける体重減少割合を示す棒グラフである。平均値±SEM。図18Eは、正常WS-1線維芽細胞から単離し、かつCsAを有するかまたは有さない脱共役17-AAG/TG-OHまたはガミトリニブ-G4(「G4」)と共にインキュベートしたTMRM担持ミトコンドリアにおける、経時的な膜電位の割合を示す線グラフである。矢印は添加時点である。図18Fは、正常HFF線維芽細胞またはHeLa細胞から単離しかつガミトリニブ-G1(「G1」)、ガミトリニブ-G2(「G2」)、ガミトリニブ-G3(「G3」)、ガミトリニブ-G4(「G4」)、ガミトリニブ-TPP(「TPP」)または17-AAGで処理したミトコンドリアにおけるCyto cおよびCox-IVの2つの免疫ブロットを示す。Cox-IVをミトコンドリアマーカーとして使用した。図18Gは、インキュベーションの24時間後にMTTで分析した、ヒト線維芽細胞(HFF、黒色線)、ウシ大動脈内皮細胞(中間灰色)、腸上皮細胞(濃灰色)またはヒト臍静脈内皮細胞(淡灰色)におけるガミトリニブ-G4(実線)または17-AAG(破線)の濃度関数としての生存率パーセントを示す線グラフである。データは2つの実験を表す。
【図19】これらの試験で使用したGA(17-AAG)、IPI-504ならびに非GA系(BIIB021およびNVP-AUY922)Hsp90阻害剤の化学構造の模式図である。
【図20】図20Aは、処理期間中に2mg/kgの媒体またはガミトリニブ-G4(「G4」)で1日2回腹腔内(HL-60)に処理した、経時的なヒト急性白血病HL-60の腫瘍体積(2/マウス、6腫瘍/群)を示す線グラフである。矢印は処理の開始である。図20Bは、処理期間中に、2mg/kgを1日2回で開始し(0〜2日目)、2.5mg/kgを1日2回(3〜5日目)、3mg/kgを1日2回とする用量増大レジメン(MDA-MB-231)によって媒体またはガミトリニブ-G4(「G4」)で処理した、経時的なヒト乳腺がんMDA-MB-231の腫瘍体積(2/マウス、6腫瘍/群)を示す線グラフである。矢印は処理の開始である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
詳細な説明
ミトコンドリアは細胞生存および細胞死において重要な役割を果たす(Pandey et al., EMBO J., 19:4310-4322 (2000); Green and Kroemer, Science, 305:626-629, (2004))。これらの小器官の機能障害および完全性損失は、複数の細胞死経路の分子的な必要条件であり、その細胞死経路は、アポトーシス原性タンパク質、すなわちチトクロムcのサイトゾルにおける放出による、ミトコンドリア内膜の透過性の増加、膜電位の損失、マトリックスの膨潤、および最後に外膜の破裂によって特徴づけられる(Green and Kroemer, Science, 305:626-629, (2004))。「ミトコンドリア透過性転移」として知られるこのプロセスがどのようにして制御されるかは完全には理解されておらず(Green and Kroemer, Science, 305:626-629, (2004))、電位依存性アニオンチャネル(VDAC-1)、アデニンヌクレオチドトランスロケーター(ANT)またはイムノフィリンであるシクロフィリンD(CypD)を含む透過性転移孔の成分が不必要であるか(Kokoszka et al., Nature, 427:461-1465, (2004); Krauskopf et al., Biochim. Biophys. Acta, 1757:590-595, (2006))またはミトコンドリア細胞死のいくつかの、但しすべてではない形態に結びついているか(Baines et al., Nature, 434:658-662, (2005); Nakagawa et al., Nature, 434:652-658, (2005))のいずれかであることが判った。
【0051】
本発明は、分子シャペロンHsp60、Hsp90およびTRAP-1が増加したレベルで腫瘍細胞のミトコンドリアにおいて見られるという発見、ならびにミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤を使用する腫瘍細胞ミトコンドリア中の分子シャペロンの阻害によってがん細胞死が生じるという発見に少なくとも部分的に基づいている。理論に拘束されることは望まないが、これらのミトコンドリアシャペロンの阻害によって、ミトコンドリア膜電位の損失およびチトクロムcの放出を含むミトコンドリア機能の崩壊によるミトコンドリア透過性転移の活性化が生じ、それにより細胞死が導かれることがある。
【0052】
したがって、シャペロン阻害剤、例えばHSPA9、Hsp60、Hsp90またはTRAP-1阻害剤およびミトコンドリア浸透性部分を含み、介在リンカーを任意で有するミトコンドリア指向性剤、ならびに、異常細胞増殖、例えばがんおよび腫瘍に関連する障害を処置するために、例えばがん細胞および腫瘍細胞を例えばインビボおよびインビトロで死滅させるために、これらの組成物を作製および使用する方法が、本明細書に記載される。これらのミトコンドリア指向性剤を含有する組成物も本明細書に記載される。
【0053】
I. 分子シャペロン
分子シャペロン、特に熱ショックタンパク質(Hsp)遺伝子ファミリーのメンバー(Lindquist and Craig, Annu. Rev. Genet. 1988; 22:631-77)は、タンパク質フォールディングの質の制御、タンパク質分解、および細胞内区画間のタンパク質輸送を支援する(Hartl and Hayer-Hartl, Science 2002; 295:1852-8)。これは、ATPアーゼ活性の周期的サイクル、さらなるシャペロンの補充、およびミトコンドリアを含む細胞内微小ドメインにおける区画化を包含する(Young et al., Cell 2003; 112:41-50)。分子シャペロンは、アポトソームが開始するミトコンドリアの細胞死の抑制(Paul et al., Mol Cell Biol 2002; 22:816-34)と、生存エフェクターの安定性の増加(Sato et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2000; 97:10832-7)と、p53の不活性化(Wadhwa et al., J Biol Chem 1998; 273:29586-91)とを介した細胞生存の強化(Beere, J Cell Sci 2004; 117:2641-51)に多くの場合関連している。本明細書に記載のように、シャペロンの抗アポトーシス機能は、腫瘍細胞の維持に中心的な役割を果たし、またそれを選択的に標的化することでがん細胞を死滅させることができる。Whitesell et al., Nat Rev Cancer 2005; 5:761-72; およびIsaacs et al., Cancer Cell 2003; 3:213-7も参照。
【0054】
以下は、本方法を使用して標的化可能な分子シャペロンの一部の簡潔な説明である。いくつかの態様では、本方法(例えばスクリーニング方法)において有用な分子シャペロンポリペプチドは、本明細書に記載のアミノ酸配列(例えばヒト配列)と少なくとも約90%、95%、99%または100%同一である。いくつかの態様では、本方法(例えばスクリーニング方法)において有用な分子シャペロンをコードする核酸は、本明細書に記載の核酸配列(例えばヒト配列)と少なくとも約90%、95%、99%または100%同一である。
【0055】
2つの配列間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用することで達成することができる。例えば、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、デフォルトパラメータ、例えば、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4およびフレームシフトギャップペナルティ5を有するBlossum 62スコアリングマトリックスを用いる、GCGソフトウェアパッケージ(ワールドワイドウェブ上でgcg.comにて入手可能)のGAPプログラムに組み入れられているNeedleman and Wunsch((1970) J. Mol. Biol. 48:444-453)のアルゴリズムを使用して決定することができる。
【0056】
Hsp90(熱ショック90-kDタンパク質1)
HSP90は、発がん性シグナル伝達タンパク質を含むいくつかのタンパク質の高次構造的成熟において主要な役割を果たす分子シャペロンである。本明細書に記載のように、Hsp90は、正常細胞ではなくがん細胞のミトコンドリアに蓄積し、ミトコンドリア浸透性配列を含む本明細書に記載の組成物を使用して標的化が可能である。
【0057】
ヒトHsp90のGenBankアクセッション番号としては、熱ショックタンパク質90kDa α(サイトゾル)クラスAメンバー1アイソフォーム1についてNM_001017963.2(核酸)およびNP_001017963.2(タンパク質)、ならびに熱ショックタンパク質90kDa α(サイトゾル)クラスAメンバー1アイソフォーム2についてNM_005348.3(核酸)、NP_005339.3(タンパク質)が挙げられる。変異体2は、変異体1に比べて5' UTRおよびコード配列が異なる。得られたアイソフォーム2はアイソフォーム1に比べてN-末端において短い。
【0058】
Hsp90はHSPCA; HSPC1; HSP90A; HSP89-ALPHA (HSP89A); リポ多糖関連タンパク質2(LAP2); およびLPS関連タンパク質2としても知られる。
【0059】
TRAP-1(TNF受容体関連タンパク質1)
TRAP-1はhsp90に対して高い相同性を有しており、また1型腫瘍壊死因子受容体に結合する(Song et al., J. Biol. Chem., 270:3574-3581 (1995)を参照)。推定661アミノ酸タンパク質はHSP90ファミリーのメンバーと60%同様であるが、それはHSP90タンパク質に見られる高荷電ドメインを欠いている。例えばFelts et al., J Biol Chem. 2000; 275(5):3305-12を参照。本明細書に記載のように、TRAP-1は、正常細胞ではなくがん細胞のミトコンドリアに蓄積し、ミトコンドリア浸透性配列を含む本明細書に記載の組成物を使用して標的化が可能である。
【0060】
ヒトTRAP-1のGenBankアクセッション番号としてはNM_016292.2(核酸)およびNP_057376.2(アミノ酸)が挙げられる。TRAP-1は熱ショックタンパク質75-KD(HSP75); 腫瘍壊死因子受容体関連タンパク質1; TRAP1; およびTNFR関連タンパク質1とも呼ぶ。
【0061】
Hsp60(熱ショック60-kDタンパク質1)
Hsp60は、その関連シャペロニンHsp10と共に、進化的に保存されるストレス応答シャペロンとして認知されており(Zhao et al., Embo J 2002;21:4411-9)、これはミトコンドリアにおいて独占的にではないが主に区画化され(Soltys and Gupta, Int Rev Cytol 2000; 194:133-96)、また移入した前タンパク質の小器官生合成およびフォールディング/リフォールディングにおいて重要な役割を有する(Deocaris et al., Cell Stress Chaperones 2006; 11:116-28)。しかし、Hsp60も細胞生存に寄与するか否かは議論の余地があり、データはカスパーゼ活性化の強化を経由したアポトーシス促進機能(Samali et al., Embo J 1999; 18:2040-8; Xanthoudakis et al., Embo J 1999; 18:2049-56)、または逆にBax含有複合体の隔離を包含する抗アポトーシス機構(Shan et al., J Mol Cell Cardiol 2003; 35:1135-43)を示唆している。がんにおけるHsp60の役割も同じく不明である。これは、このシャペロンの上方制御(Thomas et al., Leuk Res 2005; 29:1049-58; Cappello et al., BMC Cancer 2005; 5:139)または下方制御(Tang et al., Cell Stress Chaperones 2005; 10:46-58; Cappello et al., Cancer 2006; 107:2417-24)が、疾患結果と相関する各種の腫瘍系列において報告されているためである。本明細書に記載のように、Hsp60は正常細胞に比べて腫瘍細胞において大きく発現し、Hsp60の標的化はミトコンドリアの機能障害およびアポトーシスを引き起こし、一方、正常細胞におけるHsp60の損失は十分耐容されるものであり、細胞死をもたらすものではない。
【0062】
Hsp60はCPN60; GROEL; HSP60; HSP65; SPG13; およびHuCHA60としても知られている。ヒトHsp60の例示的なGenBankアクセッション番号としては転写変異体1(より長い変異体)についてNM_002156.4(核酸)およびNP_002147.2(タンパク質)、ならびに転写変異体2についてNM_199440.1(核酸)およびNP_955472.1(タンパク質)が挙げられる。変異体2は、変異体1に比べて5' UTRが異なる。変異体1と変異体2との両方は同一のアイソフォームをコードする。
【0063】
HspA9(熱ショック70kDaタンパク質9)
HspA9は、熱誘発性のメンバーと恒常的に発現するメンバーとの両方を含む熱ショックタンパク質70ファミリーに属している。後者は熱ショック同族タンパク質と呼ばれ、HspA9はその1つである。HspA9は細胞増殖の制御において役割を果たすものであり、またシャペロンとしても作用し得る。例えばWadhwa et al., Int J Cancer. 2006; 118(12):2973-80; Wadhwa et al., J Gene Med. 2004; 6(4):439-44を参照。
【0064】
HspA9はモルタリン、mthsp70およびGRP75としても知られている。ヒトHspA9の例示的GenBankアクセッション番号としてはNM_004134.5(核酸)、および熱ショック70kDaタンパク質9前駆体のNP_004125.3(タンパク質)が挙げられる。
【0065】
II. 分子シャペロンの阻害剤
本明細書に記載の組成物および方法は、分子シャペロンの阻害剤、例えばHsp60、HspA9、Hsp90および/またはTRAP-1の阻害剤の使用を含む。本明細書に記載の方法および組成物において有用な阻害剤は、シャペロンタンパク質自体に直接作用し、すなわち、上流または下流では作用しない。いくつかのそのような阻害剤、例えばペプチド阻害剤および小分子阻害剤は当技術分野で公知である。いくつかの態様では、本発明において有用な分子シャペロン阻害剤は、シャペロン、例えばHsp60、HspA9、Hsp90および/またはTRAP-1のATPアーゼ活性を阻害する。いくつかの態様では、本発明において有用な分子シャペロン阻害剤は、シクロフィリンDに対するHsp60、HspA9、Hsp90またはTRAP-1の結合を阻害する。いくつかの態様では、本発明において有用な分子シャペロン阻害剤は、サバイビンに対するHsp60、HspA9、Hsp90またはTRAP-1の結合を阻害する。いくつかの態様では、分子シャペロン阻害剤は、シャペロンに結合し、シャペロンのクライアントタンパク質のプロテアソーム分解を誘発する。
【0066】
さらに、候補シャペロン阻害剤を同定、設計およびアッセイするために有用な数多くの方法が存在する。例えば、非ペプチド構造のデータベースをスクリーニングする足場としてのシェファーディンペプチド(LFACGSSHK、すべてD-アミノ酸)を用いるコンピュータによるアプローチを使用して、Hsp90を標的化するさらなる分子を同定する、合理的なスクリーニング方法が使用されている。例えばMeli et al., J. Med. Chem., 49:7721-7730 (2006)を参照。
【0067】
分子シャペロンのペプチド阻害剤
分子シャペロン、例えばHsp90および/またはTRAP-1のいくつかのペプチド阻害剤は当技術分野で公知である。本明細書に記載の組成物および方法において有用な阻害剤は、ペプチドもしくはポリペプチド全体(例えばアポトーシス誘発性タンパク質(サバイビンなどのAIP)全体)、または、親のHsp90阻害活性、すなわち親の活性の少なくとも40%を保持するその活性(すなわち阻害性)断片を含み得るものであり、活性断片は、親ポリペプチドのHsp90阻害活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上を有することが好ましい。
【0068】
サバイビンペプチドおよび誘導体
サバイビンペプチドおよびペプチド誘導体は、米国特許出願第11/187,230号(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に開示されている。活性サバイビンペプチドは、サバイビンタンパク質の単一のバキュロウイルスアポトーシス阻害剤(IAP)反復(BIR)ドメインに位置する、SEQ ID NO:2(His Ser Ser Gly Cys)のコアHsp90結合配列モチーフを共有する。このモチーフは、完全長サバイビン(SEQ ID NO:1)の80〜84位のアミノ酸残基に対応している。このモチーフを含むペプチド、およびそのペプチド誘導体は、(a)Hsp90のN-末端ATPアーゼドメイン(「ATPポケット」)に結合しかつ(b)Hsp90-サバイビンタンパク質-タンパク質相互作用をインビトロおよびインビボで阻害することができる。
【0069】
本明細書で使用するサバイビンペプチドおよびサバイビンペプチド誘導体という用語は、細胞死を防ぐ機能性サバイビンタンパク質の全アミノ酸配列未満を含むペプチドを意味する。本発明で有用なサバイビンペプチドおよびペプチド誘導体は、分子シャペロンを阻害し、特に分子シャペロン、例えばHsp90またはTRAP-1とシクロフィリンDとの間の相互作用を阻害する。
【0070】
完全長ヒト野生型サバイビンポリペプチドは以下のアミノ酸配列を有する。

【0071】
以下の表(表1)では、Hsp90に結合可能ないくつかの例示的サバイビンペプチドを列挙する。
【0072】
(表1)例示的サバイビンペプチド

【0073】
サバイビンペプチドの変異体も本明細書に記載の方法および組成物において使用することができる。保存的および非保存的なアミノ酸置換を行うことができる。特に、SEQ ID NO:1のHis 80〜Cys 84に対応するコア五量体配列(すなわち先に開示のSEQ ID NO:2)の外側の1個または複数のアミノ酸、例えば最大5個、10個、20個または30個のアミノ酸について保存的アミノ酸置換を行うことができる。サバイビンペプチドのペプチド模倣体は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるPlesciaら(Rational design of Shepherdin, a novel anticancer agent. Cancer Cell. 7(5):457-68 (2005))に記載されている。
【0074】
他のIAPペプチドおよび誘導体
cIAP1(Entrezアクセッション番号: NP_001156)、cIAP2(Entrezアクセッション番号: NP_001157)およびXIAP(Entrezアクセッション番号: NP_001158)を含む他のアポトーシスタンパク質阻害剤(IAP)はHsp90と相互作用する。例えば、Deveraux and Reed, Genes and Dev., 13:239-252 (1999)を参照。これらのIAPタンパク質は、本明細書に開示されているように、Hsp90の相互作用を媒介する少なくとも1つのバキュロウイルスIAP反復ドメインを含む。例えば、XIAPの第1のBIRドメイン(BIR1)は、Hsp90-XIAP結合性相互作用を媒介する。
【0075】
したがって、IAPタンパク質またはそのHsp90結合性および阻害性断片を本組成物および方法に使用することができる。例えば、これらのIAPタンパク質中の1つもしくは複数のBIRドメインに対応するペプチド、またはそのHsp90結合性断片を本明細書に開示される組成物および方法に使用して、がん細胞死または腫瘍細胞死を誘発することができる。IAPタンパク質またはそのHsp90結合性断片を試験化合物としてスクリーニングすることで、例えば、分子シャペロンとシクロフィリンDとの結合を阻害する候補化合物を同定することもできる。いくつかの態様では、IAPタンパク質またはそのHsp90結合性断片を試験化合物としてスクリーニングすることで、がん細胞死を誘発する候補化合物を同定することができる。
【0076】
XIAPの例示的な第1のBIRドメインは以下の配列を含む。

【0077】
cIAP1の例示的な第1のBIRドメインは以下の配列を含む。

【0078】
cIAP2の例示的な第1のBIRドメインは以下の配列を含む。

【0079】
ペプチド阻害剤の変異体
分子シャペロンのペプチド阻害剤の変異体も本発明の一部である。これらは配列変異体を含む。保存的アミノ酸置換を行う場合、その置換は以下の群のいずれかにおいて1個のアミノ酸残基を別のものに置換することであり得る: アルギニン、ヒスチジンおよびリジン; アスパラギン酸およびグルタミン酸; アラニン、ロイシン、イソロイシンおよびバリン; ならびにフェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン。ここに列挙したアミノ酸残基は天然である。同様の種類の非天然アミノ酸残基も置換可能である。例えば、負に帯電した非天然アミノ酸残基を負に帯電した天然アミノ酸残基に置換することができ、疎水性芳香族非天然アミノ酸残基を疎水性芳香族天然アミノ酸残基に置換することができる。
【0080】
同一性の程度は異なり得るものであり、当技術分野で十分に確立された方法で決定することができる。「相同性」および「同一性」はいずれも2つのポリペプチド配列間の配列の類似性を意味するものであり、同一性とはより厳密な比較のことである。相同性および同一性は、比較のために整列可能な各配列におけるある位置を比較することで決定することができる。比較した配列中のある位置を同一のアミノ酸残基が占める場合、ポリペプチドをその位置において同一であると呼ぶことができ、同等の部位を同一のアミノ酸が占める(例えば同一である)かまたは同様のアミノ酸が占める(例えば立体的および/または電子的な性質が同様である)場合、分子をその位置において相同的であると呼ぶことができる。配列間の相同性または同一性の割合は、配列が共有すしている一致したまたは相同的な位置の数の関数である。本明細書に記載のポリペプチドの生物学的に活性な変異体は、対応する天然ポリペプチド(例えば本明細書に記載の例えばサバイビン断片またはIAP断片)に対する少なくともまたは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性または相同性を有し得る。生物学的に活性な変異体ポリペプチドをコードする核酸も同様に、対応する天然核酸配列に対して少なくともまたは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有すると記述することができる。当業者は核酸配列の変性した変異体を容易に認識するであろうし、そのような変異体は本明細書に記載の目的で使用可能である。
【0081】
ヒト対象においてペプチド阻害剤および/またはミトコンドリア浸透性部分を使用する場合、ヒト配列またはヒト化配列を使用することが一般に望ましい。したがって、本明細書に記載の方法は、非ヒト配列をヒト化する標準的な分子生物学技術の使用を含み得る。あるいは、ヒト配列を使用して構築物を作製することができる。
【0082】
ペプチド阻害剤の修飾
本明細書に記載のペプチドの修飾したバージョンも、本明細書に記載の組成物および方法において使用することができる。ペプチドおよび生物学的に活性なその変異体を数多くの方法で修飾することができる。例えば、さらなるアミノ酸残基、他の置換基、および保護基を含む作用物質を、アミノ末端、カルボキシ末端またはその両方のいずれかに加えることができる。ペプチドの形態を変化させるか、またはペプチドが互いに、同一ではないペプチドに、もしくは他のポリペプチドに結合するかもしくはそれと相互作用する方法を変化させるために、修飾を行うことができる。例えば、ジスルフィド結合形成に関与可能なシステイン残基または他の硫黄含有の残基もしくは作用物質を含むようにペプチドを修飾することができる。例えば、少なくとも2つのシステイン残基を加えることができ、その一方または両方は任意でペプチドのC-末端またはN-末端にある。
【0083】
システイン残基間(またはより一般的にはポリペプチドに(例えば末端領域にて)存在する少なくとも2つのシステイン残基のうち2つの間)にジスルフィド結合を形成することで、ペプチドを環化することができる。本発明のペプチドは線状または環状であるが、一般に環状ペプチドは、その環状構造がより堅固であり、したがってその生物活性が対応する線状ペプチドのそれよりも高いことがあるという点において、線状ペプチドに対する利点を有する(Camarero and Muir, J. Am. Chem. Soc., 121:5597-5598, (1999)を一般に参照)。
【0084】
線状前駆体から環状ポリペプチドを調製するための戦略は記載されており、本ペプチドと共に使用することができる。例えば、化学架橋アプローチを使用して、ペプチドの主鎖環化バージョンを調製することができる(Goldenburg and Creighton, J. Mol. Biol., 165:407-413, (1983))。他のアプローチとしては、線状合成ペプチドを水性条件下で効率的に環化することを可能にする、化学的分子内連結方法(例えばCamarero et al., Angew Chem. Int. Ed., 37:347-349, (1998); Tam and Lu, Prot. Sci., 7:1583-1592, (1998); Camarero and Muir, Chem. Commun., 1369-1370, (1997); およびZhang and Tam, J. Am. Chem. Soc., 119:2363-2370, (1997)を参照)ならびに酵素的分子内連結方法(Jackson et al., J. Am. Chem. Soc., 117:819-820, (1995))が挙げられる。米国特許第7,105,341号も参照。
【0085】
代わりにまたはさらに、ペプチドはアミノ末端またはカルボキシ末端で置換基をさらに含むことができる。置換基は、アシル基または置換もしくは非置換アミン基であり得る(例えば、N-末端の置換基はアシル基であり得るものであり、C-末端は置換もしくは非置換アミン基(例えば、同一でも異なっていてもよい1個、2個または3個の置換基を有するアミノ基でアミド化することができる)。アミン基は、低級アルキル基(例えば1〜4個の炭素を有するアルキル)、アルケニル基、アルキニル基またはハロアルキル基を含み得る。アシル基は低級アシル基(例えば最大4個の炭素原子を有するアシル基)、特にアセチル基であり得る。
【0086】
本明細書で使用する「アルキル」という用語は、直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基を意味するよう意図されている。例示的なアルキル基としてはメチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えばn-プロピルおよびイソプロピル)、ブチル(例えばn-ブチル、イソブチル、t-ブチル)、ペンチル(例えばn-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)などが挙げられる。アルキル基は1〜約20個、2〜約20個、1〜約10個、1〜約8個、1〜約6個、1〜約4個または1〜約3個の炭素原子を含有し得る。
【0087】
本明細書で使用する「アルケニル」とは、1個または複数の二重炭素-炭素結合を有するアルキル基を意味する。例示的なアルケニル基としてはエテニル、プロペニルなどが挙げられる。
【0088】
本明細書で使用する「アルキニル」とは、1個または複数の三重炭素-炭素結合を有するアルキル基を意味する。例示的なアルキニル基としてはエチニル、プロピニルなどが挙げられる。
【0089】
本明細書で使用する「ハロアルキル」とは、1個または複数のハロゲン置換基を有するアルキル基を意味する。例示的なハロアルキル基としてはCF3、C2F5、CHF2、CCl3、CHCl2、C2Cl5などが挙げられる。
【0090】
本明細書で使用する「アリール」とは、6〜19個の炭素原子を含有する芳香族単環式または多環式基を意味する。アリール基の例としては非置換または置換フェニル、非置換または置換フルオレニル、および非置換または置換ナフチルが挙げられるがそれに限定されない。
【0091】
本明細書で使用する「ヘテロシクロアルキル」とは、一態様では3〜10員、別の態様では4〜7員、さらなる態様では5〜6員の、単環式または多環式の飽和または不飽和環系を意味するものであり、ここで環系の原子のうち1個または複数、ある種の態様では1〜3個はヘテロ原子、すなわち、窒素、酸素または硫黄が挙げられるがそれに限定されない炭素以外の原子である。ある種の態様では、環の原子のうち1つをカルボニル基またはスルホニル基で置き換えることができる。
【0092】
本明細書で使用する「アルキレン」、「アルケニレン」、「アルキニレン」、「シクロアルキレン」、「アリーレン」、「ヘテロアリーレン」および「ヘテロシクロアルキレン」は、二価の連結性「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「シクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」および「ヘテロシクロアルキル」基を意味する。いくつかの態様では、二価のリンカーは両方の方向に存在し得るものであり、例えばC(O)NHは-C(O)NH-または-NHC(O)-のいずれかであり得る。
【0093】
上述のように、ペプチドは、長さが異なり得るものであり、また、シャペロン結合タンパク質(CBP)、例えばサバイビンもしくはIAPにおいて天然に存在するか、または天然CBP配列とはある程度異なる(但し有用である上で十分な活性を保持する)、近接するアミノ酸残基であるかまたはそれを含み得る。ペプチドがそのN-末端もしくはC-末端(またはその両方)に、CBPにおいて天然に見出されないアミノ酸残基を含む場合、さらなる配列は約200個のアミノ酸残基の長さであり得るものであり、これらの残基をN-末端とC-末端との間で均等または不均等に分割することができる。例えば、N-末端およびC-末端はいずれも約10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または100個のアミノ酸残基を含み得る。あるいは、一方の末端は約10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、110個、120個、130個、140個、150個、160個、170個、180個、190個または200個の残基を含むことがあり、一方の末端は何も含まないことがある(例えば、天然サバイビン配列と同一のアミノ酸配列においてそれが終結することがある)。
【0094】
より具体的には、N-末端またはC-末端は、正に帯電した1〜約100個(例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または100個)のアミノ酸残基(例えばアルギニン残基、ヒスチジン残基および/またはリジン残基などの塩基性アミノ酸残基); 負に帯電した1〜約100個(例えばアスパラギン酸残基またはグルタミン酸残基などの酸性アミノ酸残基); 1〜約100個のグリシン残基; 1〜約100個の疎水性アミノ酸残基(例えばアラニン、ロイシン、イソロイシンもしくはバリンなどの疎水性脂肪族残基、またはフェニルアラニン、トリプトファンもしくはチロシンなどの疎水性芳香族残基); あるいは1〜約100個(例えば1〜4個)のシステイン残基を含み得る。
【0095】
上記の修飾ペプチドを含むペプチドは、プロテアーゼ抵抗性であり得るものであり、アシル基、アミド基、ベンジル基もしくはベンゾイル基などの1種もしくは複数の保護基、またはポリエチレングリコールを含み得る。より具体的には、上記の修飾ペプチドを含むペプチドをN-末端アセチル化および/またはC-末端アミド化することができる。
【0096】
非天然または修飾アミノ酸残基が含まれる場合、当技術分野で利用可能な以下または多くの他のものより選択することができる: 4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、o-ホスホセリン、o-ホスホチロシンまたはδ-ヒドロキシリジン。他の例としては、合成を容易にするためにトリプトファンに置換可能なナフチルアラニン、L-ヒドロキシプロピル、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニル、L-α-ヒドロキシリジルおよびD-α-メチルアラニル、L-α-メチルアラニルなどのα-アミノ酸、β-アミノ酸、ならびにイソキノリルが挙げられる。非天然アミノ酸残基を有するペプチドを合成ペプチドと呼ぶことができ、これは本明細書に記載の1種の変異体を構成する。他の変異体としては、アミノ酸残基(L-形態またはD-形態のいずれかでの)の天然側鎖が非天然側鎖に置き換えられているペプチドが挙げられる。
【0097】
一態様では、ペプチドは、いずれかの末端(または両方)(例えばN-末端)に3個の余分のアミノ酸(Met-Gly-Ser)を、またいずれかの末端(または両方)(例えばC-末端)に7〜8個の追加アミノ酸

を有し得る。
【0098】
別の態様では、当技術分野で公知の方法によってペプチドをPEG化することができる。
【0099】
還元/アルキル化および/またはアシル化によるペプチド修飾に関する手引きとしてはTarr, Methods of Protein Microcharacterization, J. E. Silver ed., Humana Press, Clifton N.J. (1986) 155-194を参考にすることができ、適切な担体に対する化学共役に関する手引きとしてはMishell and Shiigi, eds, Selected Methods in Cellular Immunology, WH Freeman, San Francisco, Calif. (1980)および米国特許第4,939,239号を参考にすることができ、穏和なホルマリン処理に関する手引きとしてはMarsh, Int. Arch. Allergy Appl. Immunol., (1971) 41:199-215を参考にすることができる。
【0100】
阻害性ペプチドのペプチド模倣体も使用できる。本明細書に開示されるペプチド阻害剤および当技術分野で公知のペプチド阻害剤を、ペプチド模倣体を生成するための当技術分野で公知の方法に従って修飾することができる。例えばKazmierski, W.M., ed., Peptidomimetics Protocols, Human Press (Totowa NJ 1998); Goodman et al., eds., Houben-Weyl Methods of Organic Chemistry: Synthesis of Peptides and Peptidomimetics, Thiele Verlag (New York 2003); およびMayo et al., J. Biol. Chem., 278:45746, (2003)を参照。いくつかの場合では、本明細書に開示されるペプチドおよび断片のこれらの修飾したペプチド模倣体バージョンは、非ペプチド模倣体のペプチドに比べて強化されたインビボでの安定性を示す。
【0101】
ペプチド模倣体を作り出すための方法としては、ペプチド配列中のアミノ酸のうち1つまたは複数、例えば全部をD-アミノ酸鏡像異性体で置換することが挙げられる。そのような配列を本明細書では「レトロ」配列と呼ぶ。別の方法では、アミノ酸残基のN-末端からC-末端までの順序を逆転させることで、本来のペプチドのN-末端からC-末端までのアミノ酸残基の順序が、修飾ペプチド模倣体のC-末端からN-末端までのアミノ酸残基の順序になる。そのような配列を「インバーソ(inverso)」配列と呼ぶことができる。
【0102】
ペプチド模倣体は、レトロバージョンとインバーソバージョンとの両方、すなわち、本明細書に開示のペプチドの「レトロ-インバーソ」バージョンであり得る。ペプチド模倣体のN-末端からC-末端までのアミノ酸残基の順序が本来のペプチドのC-末端からN-末端までのアミノ酸残基の順序に対応するように並べられたD-アミノ酸から新規ペプチド模倣体を構成することができる。
【0103】
ペプチド模倣体を作製するための他の方法としては、ペプチドの1つまたは複数のアミノ酸残基をアミノ酸の化学的に別個であるが認知されている機能的類似体、すなわち人工的アミノ酸類似体で置き換えることが挙げられる。人工的なアミノ酸類似体としては、β-アミノ酸、β-置換β-アミノ酸(「β3-アミノ酸」)、α-アミノホスホン酸およびα-アミノホスフィン酸などのアミノ酸のリン類似体、ならびに非ペプチド結合を有するアミノ酸が挙げられる。人工アミノ酸を使用して、ペプトイドオリゴマー(例えばペプトイドのアミド類似体もしくはエステル類似体)、β-ペプチド、環状ペプチド、オリゴ尿素もしくはオリゴカルバメートペプチド; または複素環分子などのペプチド模倣体を作り出すことができる。例示的なサバイビンのレトロ-インバーソペプチド模倣体としては、配列がすべてのD-アミノ酸を含む

が挙げられる。これらの配列は、例えばアミノ末端のビオチン化およびカルボキシ末端のアミド化によって修飾することができる。
【0104】
本明細書に記載の変異体形態を含む本明細書に記載のペプチドのいずれかは、異種ポリペプチド(例えばCBP中に現れない配列を有するポリペプチド)をさらに含み得る。異種ポリペプチドは、それが結合する(例えば融合タンパク質におけるように融合する)対象であるペプチドの循環半減期を増加させるポリペプチドであり得る。異種ポリペプチドは、アルブミン(例えばヒト血清アルブミンもしくはその一部)または免疫グロブリンの一部(例えばIgGのFc領域)であり得る。異種ポリペプチドはミトコンドリア浸透性部分であり得る。
【0105】
本明細書に記載のペプチドの必要な高次構造を模倣する化合物は、本発明の範囲内にあるものとして想定される。そのような模倣体の種々の設計が可能である。いずれも参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,192,746号; 米国特許第5,169,862号; 米国特許第5,539,085号; 米国特許第5,576,423号; 米国特許第5,051,448号; および米国特許第5,559,103号では、そのような化合物を作り出すための複数の方法が記載されている。
【0106】
ペプチド配列を模倣する非ペプチド化合物は当技術分野で公知である(Meli et al. J. Med. Chem., 49:7721-7730 (2006)ではシェファーディンの非ペプチド小分子模倣体を同定する方法が記載されている)。ペプチド配列を模倣する非ペプチド化合物の合成も当技術分野で公知である(例えばEldred et al. J. Med. Chem., 37:3882, (1994); Ku et al. J. Med. Chem., 38:9, (1995); Meli et al. J. Med. Chem., 49:7721-7730 (2006)を参照)。シャペロンに結合するCBPペプチドを模倣するそのような非ペプチド化合物を、本発明は具体的に想定している。
【0107】
本発明は合成模倣化合物も想定している。当技術分野で公知のように、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などのカップリング剤との反応により活性化したカルボキシル基にアミノ基を連結することで、ペプチドを合成することができる。活性化カルボキシルに対する遊離アミノ基の攻撃は、ペプチド結合の形成およびジシクロヘキシル尿素の放出を導く。反応するように意図されるアミノ基およびカルボキシル基以外の潜在的に反応性の基を保護することが必要なことがある。例えば、活性化カルボキシル基を含有する成分のα-アミノ基をtert-ブチルオキシカルボニル基でブロックすることができる。次に、ペプチド結合を損なわない希酸にペプチドを曝露することで、この保護基を除去することができる。
【0108】
この方法では、ポリスチレンビーズなどの不溶性マトリックスに連結している成長ペプチド鎖にアミノ酸を段階的に加えることによる固相法によって、ペプチドを容易に合成することができる。所望のペプチド配列のカルボキシル末端アミノ酸(アミノ保護基を有する)を最初にポリスチレンビーズに固着させる。次にアミノ酸の保護基を除去する。次のアミノ酸(保護基を有する)をカップリング剤と共に加える。洗浄サイクルがこれに続く。このサイクルを必要に応じて繰り返す。
【0109】
一態様では、本発明の模倣体は、本明細書に記載のシャペロン阻害剤ペプチドに対して配列相同性を有するペプチドである。これらの模倣体としては、L-アミノ酸がそのD-異性体で置き換えられているペプチドが挙げられるがそれに限定されない。配列相同性、より重要には統計上有意な類似性を評価するための1つの共通の方法論は、Z値を得るためにLipmanおよびPearsonが記したアルゴリズムを使用するモンテカルロ分析を使用することである。この分析によれば、6を超えるZ値は有意である可能性を示し、10を超えるZ値は統計上有意であると考えられる(Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 85:2444-2448, (1988); Lipman and Pearson, Science, 227:1435-1441, (1985)。より一般的には、本明細書に記載のCBPペプチドおよび上記の模倣体は、Merrifield et al., Biochemistry, 21:5020-5031, (1982); Houghten Wellings, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 82:5131-5135, (1985); Atherton, Methods in Enzymology, 289:44-66, (1997)もしくはGuy and Fields, Methods in Enzymology, 289:67-83, (1997)に記載のティーバッグ方法論もしくは固相ペプチド合成手順を含む任意の公知の方法を使用するか、または市販の自動合成機を使用して合成することができる。
【0110】
分子シャペロンの小分子阻害剤
本明細書に記載の方法および組成物において有用ないくつかの小分子シャペロン阻害剤は当技術分野で公知である。例えば、本明細書に記載の組成物および方法において有用な小分子シャペロン阻害剤としては、Hsp90 ATP結合ポケットに結合する分子が挙げられるがそれに限定されない。当技術分野で公知の小分子Hsp90阻害剤は、例えばRodinaら(Nature Chemical Biology、2007年7月1日にオンラインで公開)に記載されている。
【0111】
いくつかの態様では、シャペロン阻害剤はいくつかのケモタイプのうちの1つより選択されるHsp90阻害剤である。これらのケモタイプのうち2つはアンサマイシン阻害剤およびマクロラクトン阻害剤である。これらは、マクロラクトンHsp90阻害剤クラスのメンバーであるラジシコールおよびシクロプロパラジシコール、ならびにHsp90阻害剤のアンサマイシンクラスのメンバーである17-ジメチルアミノエチルアミノ-17-デメトキシ-ゲルダナマイシン(17DMAG)および17AAGによって代表される。ラジシコールおよびゲルダナマイシンによるHsp90の阻害の構造上の根拠は公知であるため、Hsp90阻害活性を保持するであろうその類似体を当業者は容易に生じさせかつ試験することができる可能性がある。例えばRoe et al., J. Med. Chem. 42(2):260-6 (1999)を参照。プリン阻害剤は、本明細書に記載の組成物および方法において有用な化合物の第3のクラスを形成する。
【0112】
Hsp90のアンサマイシン阻害剤
本発明において有用な分子シャペロン阻害剤のさらなる例としては、マクベシン、ゲルダナマイシン、ゲルダナマイシン類似体およびハービマイシンAなどのキニーネアンサマイシン抗生物質が挙げられるがそれに限定されない。
【0113】
ゲルダナマイシンは熱ショックタンパク質90(Hsp90)の阻害剤であり、これはシグナル伝達、細胞周期制御および転写制御に関与する主要タンパク質を含む広範なタンパク質(「クライアントタンパク質」)のフォールディング、活性化および構築に関与する。Hsp90に対するゲルダナマイシンの結合は、Hsp90-クライアントタンパク質相互作用を破壊することで、クライアントタンパク質のフォールディングを正確に防ぐ。ゲルダナマイシンおよびゲルダナマイシン類似体はこの一部である。
【0114】
本明細書で使用する「ゲルダナマイシン類似体」とは、ゲルダナマイシンと共通のコア構造を共有するが軽微な化学修飾を有する化合物を意味する。
【0115】
ゲルダナマイシンの17位の変異体であるゲルダナマイシン類似体は当技術分野で公知であり、多くは市販されている。市販のゲルダナマイシン類似体の例としては、17-アリルアミノ-デメトキシゲルダマイシン(17-AAG)、17-ジメチルアミノゲルダナマイシン、17-GMB-APA-GA(ポリペプチドに対するGAの共役を可能にするゲルダナマイシンのマレイミド誘導体)、17-(ジメチルアミノエチルアミノ)-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-DMAG)、17-[2-(ピロリジン-1-イル)エチル]アミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AEP-GA)、および17-(ジメチルアミノプロピルアミノ)-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-DMAP-GA)が挙げられるがそれに限定されない。Sasakiら、米国特許第4,261,989号(1981); Schnurら、米国特許第5,932,566号(1999); Schnur et al., J. Med. Chem., 38:3806-3812, (1995); Schnur et al., J. Med. Chem., 38:3813-3820, (1995); およびSantiら、米国特許出願公開第2003/0114450 A1号(2003)も参照。
【0116】
11位の変異体であるゲルダナマイシン類似体は当技術分野で公知である。例としては、参照により本明細書に組み入れられるMuroiら、米国特許第4,421,688号(1983); Schnur、米国特許第5,387,584号(1995); Schnurら、米国特許第5,932,566号(1999); Welchら、米国特許第6,015,659号(2000); Whitesellら、国際公開公報第94/08578 A2号(1994); Hoら、国際公開公報第00/03737 A2号(2000); Snaderら、国際公開公報第02/36574 A1号(2002); Snaderら、国際公開公報第02/079167 A1号(2002); Santiら、国際公開公報第03/013430 A2号(2003); Zhangら、国際公開公報第03/066005 A2号(2003); Omuraら、特開昭63-218620号(1988); Schnur et al., J. Med. Chem., 38:3806-3812, (1995); およびSchnur et al., J. Med. Chem., 38:3813-3820, (1995)が挙げられるがそれに限定されない。当技術分野で公知の11-O-メチルゲルダナマイシン化合物は、米国特許第6,855,705号、米国特許第6,887,993号および米国特許第6,870,049号に記載されている。
【0117】
本組成物のいくつかの態様では、分子シャペロン阻害剤はゲルダナマイシン類似体を含む:

式中、R2はH、アルキル、アリールまたはアリールアルキルであり; R3はH、アルキルであり; R4はH、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、ORdであり、ここでRdはH、アルキルまたはアリールアルキルである。
【0118】
本組成物のいくつかの態様では、R2はHまたはアルキルであり; R3はH、アルキルであり; R4はHまたはORdであり、ここでRdはH、アルキルである。
【0119】
本組成物のいくつかの態様では、R2はHであり; R3はメチルであり; R4はHである。
【0120】
Hsp90のレゾルシノール誘導型阻害剤
レゾルシノールから誘導される化合物はHsp90の強力な阻害剤である。これらは4,5-ジアリールイソキサゾール骨格に基づく化合物(例えばBrough et al., J. Med. Chem, 2007を参照)、3,4-ジアリールピラゾール骨格に基づく化合物(例えば米国特許第7,247,734号およびSharp et al., Cancer Res. 67 (5):2206-16 (2007)を参照)、ならびに3,4-ジアリールピラゾールレゾルシノールHSP90阻害剤(CCT018159)、アミドレゾルシノール化合物(例えば国際公開公報第2006/117669号に記載のもの)およびイソオキサゾールレゾルシノール化合物を含む。Sharp et al., Mol Cancer Ther. 6 (4):1198-1211 (2007)(強力な合成レゾルシノール系ピラゾール/イソオキサゾールアミド類似体、例えばVER-49009および対応するイソオキサゾールVER-50589); Eccles et al., Cancer Res. 68 (8):2850-60 (2008)(NVP-AUY922、新規レゾルシノール系イソオキサゾールアミド熱ショックタンパク質90(HSP90)阻害剤); Barril et al., Bioorg. Med. Chem. Let. 16(9):2543-2548 (2006)(ピラゾール系Hsp90阻害剤CCT018159のピペラジニル誘導体、モルホリノ誘導体およびピペリジル誘導体)も参照。
【0121】
マクロラクトン-Hsp90阻害剤
大環状化合物ラジシコールおよびモノシリン、ならびにシクロプロパラジシコールなどのその類似体は、Hsp90のATP結合部位に結合する阻害剤である。例えばTurbyville et al., J. Nat. Prod., 69(2):178-184 (2006)、Soga et al., Curr. Cancer Drug Targets. 3(5):359-69 (2003)、Shiotsu et al., Blood. 96(6):2284-91 (2000)および米国特許第7,115,651号を参照。ラジシコールの新規オキシム誘導体であるKF25706は、Hsp90結合性シグナル伝達分子の選択的枯渇を経由するインビボでの抗腫瘍活性を有する(Soga et al., Cancer Res. 59(12):2931-8 (1999))。
【0122】
ラジシコールおよびゲルダナマイシンの構造上の成分を含むキメラ阻害剤も公知である。例えばHadden et al., Curr. Top. Med. Chem. 6(11):1173-82; Shen et al., J. Org. Chem. 71(20):7618-31 (2006)を参照。
【0123】
Hsp90のプリン阻害剤
プリン骨格クラスのHsp90阻害剤は、がんのインビトロモデルとインビボモデルとの両方においてHsp90に対して強力かつ選択的であることが報告されており、この活性の構造上の根拠は決定されている。Wright et al., Chem. Biol. 11(6):775-85 (2004)を参照。いくつかの8-アリール-スルファニルアデニン化合物が合成され、Hsp90阻害活性を有することがわかっており、例えば、Hsp90によってその構造が解析されたPU-H71およびPU-H64が挙げられる。Immormino et al., J. Med. Chem. 49(16):4953-60 (2006)を参照。他のプリンクラスHsp90阻害剤は当技術分野で公知であり、例えば3,4-ジアリールピラゾールおよび関連類似体(McDonald et al., Curr. Top. Med. Chem. 6(11):1193-203 (2006)); ピラゾロピリミジンおよび関連類似体(米国特許第7,148,228号)、ピロロピリミジンおよび関連類似体(米国特許第7,138,402号)、ならびに2-アミノプリン類似体(米国特許第7,138,401号)が挙げられる。
【0124】
Hsp60阻害剤
エポラクタエン(Nagumo et al., Biochem. J. 387:835-840 (2005); Tan and Negishi, Org. Lett. 8(13):2783-2785 (2006); およびNagumo et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 14:4425-4429 (2004))ならびにミゾリビン(ブレディニン)(Itoh et al., J. Biol. Chem. 274:35147-35151 (1999))を含むいくつかのHsp60阻害剤は当技術分野で公知である。
【0125】
HspA9(モルタリン)阻害剤
がん細胞に対する選択的毒性を有するカチオン性ローダシアニン色素類似体であるMKT-077は、HspA9/モルタリンに結合し、腫瘍抑制タンパク質p53とのその相互作用を抑止する。例えばWadhwa et al., Cancer Res. 2000; 60(24):6818-21を参照。
【0126】
他の阻害剤
本発明において有用な分子シャペロン阻害剤としては、Hsp60とシクロフィリンDとの間、Hsp90とシクロフィリンDとの間、またはTRAP-1とシクロフィリンDとの間の相互作用を阻害する分子も挙げられる。これらの阻害剤は、当技術分野で公知であるかまたは本明細書に記載の方法によって化学ライブラリーに存在する分子から同定することができる。例えばMeli et al., J. Med. Chem. 49:7721-7730 (2006)およびHowes et al., Anal. Biochem., 350(2):202-213 (2006)を参照。例えば、非ペプチド小分子5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミド-1-β-D-リボフラノシド(AICAR)がHsp90の構造上新規の阻害剤として同定された(Meli et al., 2006, 前掲論文を参照)。これを本明細書に記載の方法で使用することができる。Blagg et al., Med. Res. Rev. 26(3):310-338 (2005)も参照。
【0127】
III. ミトコンドリア浸透性部分
ミトコンドリア浸透性分子シャペロン阻害剤が本明細書に開示される。本明細書に記載の分子シャペロン阻害剤のいずれかを、当技術分野で公知の方法を使用してミトコンドリア浸透性部分との会合によって修飾することができる。但しこれは、シャペロン阻害剤がシェファーディンまたはその活性断片である場合に、ミトコンドリア浸透性部分がアンテナペディアまたはその断片ではないことが条件である。例を以下に示す。
【0128】
本明細書で使用するミトコンドリア浸透性部分とは、分子シャペロン阻害剤単独に比べて、会合した、例えば化学的に共役した分子シャペロン阻害剤のミトコンドリア局在化を増加させる、化学基、例えばペプチド、ペプチド模倣体または他の化合物のことである。
【0129】
ペプチドミトコンドリア浸透性部分
本明細書に記載の組成物において、シャペロン阻害剤(本明細書に記載の)をペプチドミトコンドリア浸透性部分に付着させることができる。例えば、アンテナペディアの第3のα-ヘリックス上で見られる配列(Gratton et al., Cancer Cell, 4:31, (2003))に対応するアンテナペディア担体配列を使用できる。そのようなペプチドの例示的な配列は

であり、本明細書ではANTとする。本明細書に開示されるシャペロン阻害剤がそれに付着可能である標的化ペプチドの他の例としては、例えばHIV-1からのTATタンパク質配列(Chen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96:4325, (1999); Kelemen et al., J. Biol. Chem., 277:8741-8748, (2002))、例えば

(Brooks et al., Adv. Drug Del. Rev., 57(4):559-577 (2005))、または配列

を有する修飾TAT(Barnett et al., Inv. Ophth. Vis. Sci., 47:2589-2595 (2006))が挙げられるがそれに限定されない。さらに他の例としては、単純ヘルペスウイルスからのVP22タンパク質(Lundberg and Johansson, Biochem. Biophys. Res. Comm., 291:367-371, (2002))およびPep-1ペプチド担体(Morris et al., Nature Biotech., 19:1173-1176, (2001))が挙げられる。いくつかの態様では、ペプチドは、例えば取り込みを改善するかまたは細胞分解を減少させるために、D-異性体アミノ酸または他の修飾を含む。
【0130】
ペプチドミトコンドリア浸透性部分を含むポリペプチドは、化学合成などの標準的技術で生成するか、またはポリペプチドをコードする核酸から発現させることができる。
【0131】
ミトコンドリア浸透性部分として有用であり得る他の断片としては、ミトコンドリアに局在化するタンパク質に見られるミトコンドリア標的化配列が挙げられるがそれに限定されない。ミトコンドリア標的化配列の非限定的な例としては、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第20040072774号に記載の、ヒトチトクロムcオキシダーゼサブユニットVIIIのN-末端領域、ヒトATPシンターゼのサブユニットcのP1アイソフォームのN-末端領域、またはアルデヒドデヒドロゲナーゼ標的化配列のN-末端領域が挙げられる。例えば、マイトフュージンの断片(ヒトマイトフュージン1配列はGenBankアクセッション番号NP_284941.2にあり、ヒトマイトフュージン2配列はGenBankアクセッション番号NP_055689.1にある)、例えばヒトマイトフュージン2の97〜757番のアミノ酸(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,953,680号を参照)は、本発明におけるミトコンドリア標的化部分として有用である。
【0132】
ペプチド模倣体ミトコンドリア浸透性部分
ペプチド模倣体ミトコンドリア浸透性部分も、本明細書に開示される組成物および方法において使用することができる。ペプチド模倣体およびそれを作製するための方法の一般的説明は上記に見出すことができる。
【0133】
例えば、本明細書に組み入れられるFernandez-Carneado et al. J. Am. Chem. Soc. 127(3):869-74, (2005)に記載の非加水分解性テトラグアニジウム化合物を本組成物および方法において使用することができる。
【0134】
ミトコンドリア標的化シグナルペプチド
タンパク質をミトコンドリアに指向させる断片も使用できる。例としては、ラットチトクロムP450 2E1(CYP2E1)のアミノ酸74〜95番であるRRIVVLHGYGAVKEVLLNHK(SEQ ID NO:41)(Neve and Ingelman-Sundberg, J. Biol. Chem., 276(14):11317-11322 (2001); 酵母チトクロムcオキシダーゼIV前駆体からの開裂可能なプレピース(MLSLRQDIRFFKPATRTLCSSR(SEQ ID NO:42)、Maarse et al., EMBO J. 3(12):2831-2837 (1984)およびHurt et al., FEBS 178(2) 306-310 (1984)を参照); インフルエンザウイルスのPB2タンパク質からのミトコンドリア標的化シグナル(Carr et al., Virology, 344(2):492-508, (2006); ヘムリアーゼ内に含有される移入シグナル(Diekert et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 96(21):11752-11757, (1999); ミトコンドリアマトリックス酵素オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)のリーダーペプチド(Horwich et al., EMBO J. 4(5):1129-1135, (1985). Hay et al., Biochim. Biophys. Acta. 779(1):65-87, (1984); Fujiwara et al., Genome Inform. Ser. Workshop, Genome Inform. 8:53-60, (1997)が挙げられる。
【0135】
核酸ミトコンドリア浸透性部分
ミトコンドリア浸透性部分として作用する核酸(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,569,754号に記載のもの、例えば

など)も、本明細書に記載の組成物および方法において使用することができる。ペプチドに核酸を連結させるための方法は当技術分野で公知である。
【0136】
親油性カチオンミトコンドリア浸透性部分
ミトコンドリア浸透性部分として作用する親油性カチオンは、その全体が参照により本明細書に組み入れられるSmith et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 100(9):5407-12 (2003)に記載されている。本明細書で有用な親油性カチオンとしては、例えばローダミン123ならびにホスホニウム塩、例えばメチルトリフェニルホスホニウムおよびテトラフェニルホスホニウムが挙げられる。
【0137】
いくつかの態様では、カチオン性ミトコンドリア浸透性部分は以下を含む:

式中、R1はH、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはRaRbRcSiであり; Ra、RbおよびRcはアルキルまたはアリールより独立して選択され; nは0、1、2、3、4、5または6であり得る。
【0138】
いくつかの態様では、カチオン性ミトコンドリア浸透性部分は以下を含む:

式中、Ra、RbおよびRcはアルキルまたはアリールより独立して選択され; nは1、2または3であり得る。
【0139】
いくつかの態様では、カチオン性ミトコンドリア浸透性部分は(アリール)3P-を含む。
【0140】
いくつかの態様では、カチオン性ミトコンドリア浸透性部分はローダミン123を含む。

【0141】
IV. 連結部分
いくつかの態様では、ミトコンドリア浸透性部分は、リンカーを経由して本明細書に記載の分子シャペロン阻害剤に連結している。本明細書で使用する「連結する」とは、共有結合性または非共有結合性の結合または会合を経由してミトコンドリア浸透性部分とシャペロン阻害剤とを会合させることを意味する。
【0142】
いくつかのリンカーを使用してシャペロン阻害剤をミトコンドリア浸透性部分に連結させることができる。例えば、ペプチドリンカー、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個またはそれ以上のアミノ酸を含むペプチドリンカーを使用できる。いくつかの態様では、ペプチドリンカーは可動性であり、すなわち、可動性の高次構造を採用するアミノ酸を含み、例えばグリシン残基、アラニン残基および/またはグルタミン残基を含む。
【0143】
ミトコンドリア浸透性部分およびシャペロン阻害剤がいずれもペプチドである態様では、融合タンパク質全体をコードする核酸を例えば使用して、介在リンカー有りまたは無しで、融合タンパク質としてミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤を生成することが一般に望ましい。
【0144】
いくつかの態様では、リンカー部分は二価でありかつアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびペプチドリンカーからなる群より選択することができ、ここで該アルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンの任意の2個の隣接する炭素-炭素結合をO、NH、S、PRe、C(O)NRf、アリーレン、ヘテロシクロアルキレンまたはヘテロアリーレンのうち1つまたは複数で置き換えてもよく; ここでReおよびRfはアルキルまたはアリールより独立して選択される。
【0145】
いくつかの態様では、リンカー部分は以下である。

【0146】
いくつかの態様では、リンカー部分はアルキレンである。
【0147】
いくつかの態様では、リンカー部分は6個の炭素原子を有するアルキレンである。
【0148】
ミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤の1種は、シャペロン阻害剤をミトコンドリア浸透性部分に架橋することで生成される。好適な架橋剤としては、適切なスペーサーによって分離される2つの明確に反応性の基を有するヘテロ二官能性であるもの(例えばm-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、またはホモ二官能性であるもの(例えばスベリン酸ジスクシンイミジル)が挙げられる。そのようなリンカーはイリノイ州ロックフォードのPierce Chemical Companyから入手可能である。
【0149】
本明細書に記載の組成物を作製するために有用な一般的方法論は当技術分野で公知である。いくつかの態様では、本方法は、ミトコンドリア浸透性部分、例えば本明細書に記載のANTと、リンカー、例えばSSPなどのジスルフィドリンカーとを接触させることで反応混合物を形成する工程、反応混合物とシャペロン阻害剤、例えばゲルダナマイシン類似体とを接触させる工程、および、シャペロン阻害剤に共役したミトコンドリア浸透性部分を含む組成物を得る工程を含み得る。いくつかの態様では、本方法は、反応混合物中のリンカー対ミトコンドリア浸透性部分の比が約1:1になる量のリンカーと、ミトコンドリア浸透性部分とを接触させる工程を含む。したがって、本発明は、シャペロン阻害剤、例えば17-AAGなどのゲルダナマイシン類似体に共役した、ミトコンドリア浸透性部分、例えば本明細書に記載のANTを調製する方法を特徴とする。
【0150】
ミトコンドリア浸透性部分とシャペロン阻害剤との連結は、当技術分野で公知の組換え方法を使用して、それらを単一のタンパク質鎖とすることが可能な合成リンカーによって行うことができる。例えばBird et al., Science, 242:423-426 (1988); およびHuston et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883 (1988)を参照。
【0151】
例えば、本発明のシャペロン阻害剤を、1つまたは複数のミトコンドリア浸透性部分に機能的に連結させる(化学共役、遺伝子融合、非共有結合的会合またはその他によって)ことができる。
【0152】
本明細書に記載の組成物は下記式の化合物、または薬学的に許容されるその塩を含む:

式中、R1はH、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはRaRbRcSiであり; R2はH、アルキル、アリールまたはアリールアルキルであり; R3はH、アルキルであり; R4はH、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、ORdであり、ここでRdはH、アルキルまたはアリールアルキルであり; Ra、RbおよびRcはアルキルまたはアリールより独立して選択され; nは包含的な1〜10の整数である。
【0153】
いくつかの態様では、塩はヘキサフルオロリン酸塩である。
【0154】
いくつかの態様では、R1はRaRbRcSiであり、Ra、RbおよびRcはアルキルまたはアリールより独立して選択され; R2はHであり; R3はH、アルキルであり; R4はHであり; nは1、2、3または4である。
【0155】
いくつかの態様では、本化合物は以下または薬学的に許容されるその塩より選択される。

【0156】
いくつかの態様では、本化合物は下記式を有し得る:

式中、qは1、2、3、4、5または6であり; Xは薬学的に許容される対イオンである。
【0157】
いくつかの態様では、qは3である。
【0158】
いくつかの態様では、アリールはフェニルである。
【0159】
いくつかの態様では、アリールはフェニルであり、qは3である。
【0160】
いくつかの態様では、Xはヘキサフルオロリン酸塩であり得る。
【0161】
いくつかの態様では、本化合物は以下であり得る。

【0162】
合成方法
本明細書に記載の化合物は、ゲルダナマイシンまたは17-GMB-APA-GA類似体の共役によって調製することができる。これらの化合物のいずれかの使用によって、チオール、アミンまたはアルコールなどの求核性部分との共役が可能になる。下記モノマー構造を含有する1〜10個のグアニジノ部分を含むように、カチオン性ミトコンドリア浸透性部分の合成を行うことができる:

上記式を

と略すことができる。オリゴマーグアニジノ構造を含有するそのような組成物の一般的な反復的合成方法を以下に示す。メシレートG1を酢酸カリウム(KSAc)で処理することでチオエステルを得ることができ、これを塩基処理した後、ゲルダナマイシン(GA)などの分子シャペロン阻害剤のマレイミド誘導体(L-GA)に曝露することで、所望の第1世代組成物G1-GAを得ることができる。次に、このG1-チオエステル化合物を、例えばメタンスルホン酸; トリブチルホスフィンの存在下での炭酸セシウムで順次処理した後、G1と反応させ、最後に無水メタンスルホン酸で処理することで、G1の高級同族体であるG2を得ることができる。そのような以上の反復プロセスは、オリゴマーグアニジノ単位へのアクセスを明らかに提供する。このプロセスを実証するために以下の実施例でいくつかの化合物を合成する。ここで示すスキームは共役を容易にするためのマレイミド基を有するリンカーについて記述されているが、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば17-NHS-ALA-GA)などの、共役用の他の官能基を有するリンカーにこの方法を拡張することができる。プリン系アンタゴニストまたはレゾルシノールアンタゴニストなどの他の非GA系Hsp90阻害剤にこの反復スキームをすることができることも、当業者は認識するであろう。

【0163】
V. 処置方法
本明細書に記載の化合物、すなわちミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤は、腫瘍形成およびがんにおいて例えば生じる、制御されない細胞増殖に関連する障害の処置に有用である。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法によって処置される腫瘍は、本明細書に記載のがんに関連していることがある。
【0164】
一般に、本方法は、本明細書に記載の治療有効量の治療用化合物を、そのような処置を必要としているかまたは必要としていると決定された対象に投与する段階を含む。
【0165】
この文脈で使用する「処置する」とは、制御されない細胞増殖に関連する状態の少なくとも1つの症状を寛解させることを意味する。増殖細胞の死または細胞(すなわちがん細胞もしくは腫瘍細胞)の増殖速度の減少を処置がもたらすことができることが理想である。
【0166】
「有効量」とは、有益なまたは所望の結果をもたらすために十分な量のことである。例えば、治療量とは、所望の治療効果を実現する量のことである。この量は、疾患または疾患症状の発症を予防するために必要な量である予防有効量と同一であっても異なっていてもよい。1回または複数回の投与、適用または投薬で有効量を投与することができる。組成物の治療有効量は選択される組成物に依存する。
【0167】
当技術分野で公知の方法、例えば非経口、経口、経粘膜または他の投与経路を使用して、本組成物の全身投与、局所投与またはその両方を行うことができる。当業者が認識する通り、投与経路は特定の状態の処置に対する適合性、および組成物の調剤に基づいて選択すべきである。
【0168】
本組成物は、隔日に1回を含む、1日1回または複数回〜1週間に1回または複数回投与することができる。疾患または障害の重症度、これまでの処置、対象の全般的健康および/または年齢、ならびに存在する他の疾患が挙げられるがそれに限定されないある種の要因が、対象を有効に処置するために必要な投与量およびタイミングに影響を与えることがあることを、当業者は理解するであろう。さらに、本明細書に記載の組成物の治療有効量での対象の処置は、単一の処置または一連の処置を含み得る。
【0169】
本明細書に記載の化合物は腫瘍およびがんの処置に有用である。本明細書に記載の化合物を、がん、例えば本明細書で言及される種類のがんのいずれかと診断された患者に投与することができる。例えば、肺、乳房、上皮、大腸、直腸、精巣、胆嚢、胆管、胆道、前立腺、結腸、胃、食道、膵臓、肝臓、子宮、卵巣または脳のがんまたは腫瘍のうち1つまたは複数に罹患している対象を処置するために、本明細書に開示されるミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤を非限定的に使用することができる。ある種の態様では、慢性骨髄性白血病、Bリンパ芽球腫白血病、乳腺がん、肺腺がん、前立腺腺がん、神経膠芽腫、結腸腺がんおよび子宮頸がんの処置において有用である。他の例では、血管腫、ホジキン病、大細胞型非ホジキンリンパ腫、悪性リンパ腫、白血病、真性多血症、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、不応性貧血を伴う骨髄異形成症候群、神経芽細胞腫、神経膠腫、褐色細胞腫、軟部組織肉腫、上顎がん、舌がん、口唇がん、口腔がん、メラノーマまたは非メラノーマ皮膚がんに罹患している対象を非限定的に処置するために、本明細書に開示されるミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤を使用することができる。一般に、本明細書に記載の化合物および候補化合物で処置可能ながんとしては細胞腫、肉腫、リンパ腫、白血病または生殖細胞腫瘍が挙げられるがそれに限定されない。好ましい態様では、子宮頸がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、上皮がん、結腸直腸がん、バーキットリンパ腫、骨髄性白血病および白血病性単球リンパ腫と診断された患者に本明細書に記載の化合物を投与することができる。
【0170】
投与および投薬
そのような化合物の毒性および治療有効性は、例えばLD50(集団の50%に対する致死量)およびED50(集団の50%における治療有効量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比を治療指数とし、それはLD50/ED50比で表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。毒性の副作用を示す化合物を使用できるが、非感染細胞に対する潜在的な損傷を最小限にし、それにより副作用を減少させるために患部組織の部位、例えば骨または軟骨にそのような化合物を標的化する送達系を設計するように注意を払うべきである。
【0171】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得たデータを、ヒトにおいて使用する範囲の投与量を調剤することに使用することができる。そのような化合物の投与量は、ほとんどまたは全く毒性を伴わないED50を含む、ある循環濃度の範囲内にあることが好ましい。使用する剤形および利用する投与経路に応じて、投与量はこの範囲内で異なり得る。本発明の化合物で使用する任意の化合物では、治療有効量を最初に細胞培養アッセイから推定することができる。細胞培養において決定されるIC50(すなわち症状の最大半減阻害を実現する試験化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を実現するために、動物モデルにおいて用量を調剤することができる。ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するためにそのような情報を使用することができる。例えば高速液体クロマトグラフィーによって血漿中レベルを測定することができる。
【0172】
処置される患者の種類、疾患または障害の重症度、これまでの処置、患者の全般的健康および/または年齢、ならびに存在する他の疾患が挙げられるがそれに限定されない、ある種の要因が、患者を有効に処置するために必要な投与量およびタイミングに影響を与えることがあることを、当業者は理解するであろう。さらに、治療有効量のタンパク質、ポリペプチド、抗体、または他の化合物での患者の処置は、単一の処置を含み得るものであり、または好ましくは一連の処置を含み得る。
【0173】
本化合物が小分子である場合、例示的な用量としては、対象または試料の重量1キログラム当たりミリグラムまたはマイクログラムの量の小分子(例えば1キログラム当たり約1マイクログラム〜1キログラム当たり約500ミリグラム、1キログラム当たり約100マイクログラム〜1キログラム当たり約5ミリグラム、または1キログラム当たり約1マイクログラム〜1キログラム当たり約50マイクログラム)が挙げられる。小分子の適切な用量は調節される発現または活性に対する小分子の効力に依存するということがさらに理解される。本発明のポリペプチドまたは核酸の発現または活性を調節するために、1つまたは複数のこれらの小分子を動物(例えばヒト)に投与しなければならない場合、医師、獣医師または研究者は、例えば比較的低い用量を最初に処方し、続いて適切な応答が得られるまで用量を増加させることができる。さらに、任意の特別な動物対象に特異的な用量レベルが、使用する特定の化合物の活性、対象の年齢、体重、全般的健康、性別および食餌、投与時間、投与経路、排泄速度、任意の薬物組み合わせ、ならびに調節される発現または活性の程度を含む種々の要因に依存するということが理解される。
【0174】
処置用の対象の同定
いくつかの態様では、本方法は(i)がんに罹患している個人を同定および選択する段階、ならびに任意で(ii)個人のがん細胞がミトコンドリアにおいて高レベルのHsp90シャペロンを発現しているか否かを決定する段階を含む。これらの細胞がミトコンドリアにおいて高レベルのHsp90シャペロンを発現している場合、その個人は、ミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤での処置の候補であり、すなわちその処置のために選択され得るものであり、本方法は(iii)ミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤を含む薬学的組成物を個人に投与する段階をさらに含む。
【0175】
がんを有する個人を、例えば症状を示しているという理由でまたはスクリーニングの結果として、当技術分野で公知の方法を使用して同定することができる。さらなる臨床試験を行うことができ、その臨床試験としては、診断を確定するための血液検査、X線、CTスキャン、内視鏡検査、および生検組織の組織学的検査が挙げられるがそれに限定されない。
【0176】
個人におけるがんの症状としては、異常な塊または腫脹、出血、疼痛および/または潰瘍形成、リンパ節拡張、咳および喀血、肝腫大(肝肥大)、骨痛、患部骨の骨折および神経症状、体重減少、食欲不振および悪液質(筋消耗)、過度の発汗、ならびに貧血が挙げられるがそれに限定されない。
【0177】
がんを有する個人を同定するためのスクリーンは当技術分野で公知である。スクリーニング方法としては自己検査、マンモグラム、胎児潜血試験、子宮頸部細胞診(例えばPapスメア)、デジタル直腸診、前立腺特異的抗原(PSA)血液試験、直腸および結腸下部における視覚的異常を調査するS状結腸鏡検査、ならびに直腸および結腸全体の可視化を可能にする結腸内視鏡検査、ならびに直腸および結腸のX線検査を可能にする二重造影バリウム注腸(DCBE)が挙げられるがそれに限定されない。
【0178】
例えばHsp90に対する抗体を使用するイムノアッセイを含む、ミトコンドリアにおける高レベルのシャペロンを検出するためのいくつかの方法が、当技術分野で公知である。例えば、ミトコンドリアにおけるシャペロンの検出は、ミトコンドリア画分およびミトコンドリア内画分を得た後、ウエスタンブロッティング、Hsp90に対する抗体を用いる免疫電子顕微鏡法、ならびにミトコンドリア画分のマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)プロテオミクス(例えば質量分析および飛行時間分析)などの公知の検出方法を使用することによって実現することができる。
【0179】
シャペロン阻害剤での処置の候補である個人を同定するためのさらなる方法を本明細書に開示する。これらの方法では、個人からのがん細胞を(i)ミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤に曝露し、(ii)以下の活性のうち1つまたは複数の存在についてアッセイする: 細胞死の増加、細胞生存率の損失、ミトコンドリア膜電位の損失、ミトコンドリア膜の完全性の損失(例えばSmadまたはチトクロムcの放出)、およびHsp90シャペロン活性の損失(例えばAktキナーゼの分解)。そのようなアッセイを行うための方法は当技術分野で公知であり、フローサイトメトリー、MTTアッセイ、ゲル電気泳動およびウエスタンブロッティングが挙げられる。例示的な方法も本明細書の実施例に記載する。
【0180】
がん細胞がこれらの活性のうち1つまたは複数を示す場合、その個人はミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤での処置の候補として分類される。他の新規方法では、同一個人からのがん細胞を培地に配置する。そのがん細胞の一部をミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤に接触させて、細胞の増殖を可能にする条件下で培養する。ミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤が、例えば阻害剤と接触していない細胞に比べて、接触したがん細胞の増殖を阻害しかつ/またはアポトーシスを誘発する場合、その個人はミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤での処置の候補である。
【0181】
VI. 薬学的組成物
本明細書に記載のミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤(いずれも本明細書では「活性化合物」と呼ぶことができる)を薬学的組成物に組み入れることができる。そのような組成物は、活性化合物および薬学的に許容される担体を典型的に含む。「薬学的に許容される担体」としては、薬学的投与に適合性のある、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを挙げることができる。補足的な活性化合物も本組成物に組み入れることができる。薬学的組成物それ自体、および本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩も含まれる。薬理学的に活性なアミン化合物の無毒の付加塩は、その遊離塩基と活性が異ならないということは薬理学の分野で周知である。
【0182】
薬学的に許容される塩としては酸付加塩と塩基付加塩との両方が挙げられる。「薬学的に許容される塩」とは、遊離塩基の生物学的な有効性および特性を保持しかつ生物学的にまたは他の理由で望ましくないということがない塩を意味する。好適な薬学的に許容される酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、ならびに酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸などの有機酸によって形成することができる。
【0183】
薬学的に許容される塩基付加塩としてはナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩などの無機塩基から誘導される塩が挙げられる。アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩が特に好ましい。薬学的に許容される無毒の有機塩基から誘導される塩としては、イソプロピルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂などの、一級アミン、二級アミンおよび三級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環状アミンならびに塩基性イオン交換樹脂の塩が挙げられる。特に好ましい無毒の有機塩基としてはイソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミンおよびジシクロヘキシルアミンがある。
【0184】
薬学的組成物は、その意図される投与経路に適合性があるように一般に調剤される。投与経路の例としては非経口投与、例えば静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口投与(例えば吸入)、経皮投与(局所投与)、経粘膜投与、および直腸内投与が挙げられる。非経口適用、皮内適用または皮下適用に使用する溶液または懸濁液は以下の成分を含み得る: 注射用水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤; ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤; アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤; エチレンジアミンテトラ酢酸などのキレート化剤; 酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝液、および塩化ナトリウムまたはブドウ糖などの浸透圧の調整のための薬剤。pHは塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整可能である。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは多用量バイアルに封入することができる。
【0185】
注射での使用に好適な薬学的組成物としては、滅菌水溶液(水溶性の場合)または懸濁液、および滅菌注射用溶液または懸濁液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与では、好適な担体としては生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、ニュージャージー州Parsippany)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。いずれの場合でも、本組成物は滅菌されていなければならず、また容易にシリンジ注入が可能である程度に流動的であるべきである。それは製造条件および貯蔵条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセリン、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにその好適な混合物を例えば含有する溶媒または分散媒体であり得る。例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合の必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用により、適当な流動性を維持することができる。微生物の作用の阻止はさまざまな抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって実現することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムを本組成物中に含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを本組成物中に含むことで実現することができる。
【0186】
所要量の活性化合物を適切な溶媒中に、先に列挙した成分のうち1つまたは組み合わせを必要に応じて組み入れた後、濾過滅菌を行うことで、滅菌注射用溶液を調製することができる。一般に、塩基性分散媒体および先に列挙したものからの必要な他の成分を含有する滅菌媒体に活性化合物を組み入れることで、分散液は調製される。滅菌注射用溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、有効成分と任意のさらなる所望の成分との粉末を、既に滅菌濾過したその溶液から得る、真空乾燥および凍結乾燥である。
【0187】
経口組成物は、不活性希釈剤または食用担体を一般に含む。治療用の経口投与では、活性化合物を賦形剤と共に組み入れ、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤、例えばゼラチンカプセル剤の形態で使用することができる。流体担体を使用して経口組成物を調製してマウスウォッシュとして使用することもできる。薬学的に適合性のある結合剤および/または補助材料を本組成物の一部として含むことができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分または同様の性質の化合物のいずれかを含有し得る: 結晶セルロース、トラガントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤; デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤; アルギン酸、PRIMOGELもしくはコーンスターチなどの崩壊剤; ステアリン酸マグネシウムもしくはSTEROTESなどの潤滑剤; コロイダル二酸化ケイ素などの流動促進剤; ショ糖もしくはサッカリンなどの甘味料; またはペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香味料などの香味料。
【0188】
吸入による投与では、本化合物は、好適な噴霧剤、例えば二酸化炭素などのガスを含む加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーから、エアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0189】
全身投与は経粘膜または経皮的手段によるものでもよい。経粘膜または経皮投与では、透過すべき障壁に適した浸透剤が製剤中で使用される。そのような浸透剤は当技術分野で一般に公知であり、例えば経粘膜投与では洗浄剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は経鼻スプレーまたは坐薬の使用を通じて達成することができる。経皮投与では、活性化合物は、当技術分野で一般に公知の軟膏剤(ointment)、軟膏剤(salve)、ゲル剤またはクリーム剤に調剤される。出願人らは理論に拘束されることを望まないが、本明細書に記載の全身投与されるミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤の任意の非特異的細胞毒性効果は、少なくとも以下の理由のために最小限であると予想される: ミトコンドリアにおけるHsp90およびTRAP 1のレベルは大部分の正常組織において低く; 本明細書で実証するように、Hsp90およびTRAP-1のミトコンドリアにおける局在化は一般に腫瘍細胞特異的であり、したがって本阻害剤は腫瘍細胞のミトコンドリアに優先的に蓄積され; ミトコンドリアに局在化したHsp90およびTRAP-1を有する正常組織では、Hsp90およびTRAP-1の活性は腫瘍細胞中の活性に比べて減少し; 血液脳関門は脳を保護すると予想される。
【0190】
本化合物は、坐薬(例えばカカオバターおよび他のグリセリドなどの慣行的な坐薬基剤を有する)または直腸送達用の停留浣腸の形態で調製することもできる。
【0191】
一態様では、移植片およびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤などの活性化合物は、身体からの急速な排除に対して該化合物を保護する担体によって調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用できる。そのような製剤の調製のための方法は当業者には明らかであろう。材料はAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体と共に、感染細胞に標的化されたリポソームを含む)を薬学的に許容される担体として使用することもできる。これらは、米国特許第4,522,811号に例えば記載の、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0192】
投与の容易さおよび投与量の均一性が理由で、単位剤形で経口または非経口組成物を調剤することが有利である。本明細書で使用する単位剤形とは、処置される対象用の単位投与量として適した物理的に別々の単位を意味し、各単位は、所要の薬学担体と共同して所望の治療効果をもたらすように計算される所定量の活性化合物を含む。
【0193】
本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸分子をベクターに挿入し、遺伝子治療ベクターとして使用することができる。遺伝子治療ベクターは、例えば静脈内注射、局所投与(例えば米国特許第5,328,470号を参照)または定位注射(例えばChen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:3054-3057, (1994)を参照)によって対象に送達することができる。遺伝子治療ベクターの薬学的製剤は、許容される希釈剤中の遺伝子治療ベクターを含むことができるか、または、遺伝子送達媒体が埋め込まれる徐放性マトリックスを含み得る。あるいは、組換え細胞、例えばレトロウイルスベクターから完全遺伝子送達ベクターを無傷で生成することができる場合、薬学的製剤は、遺伝子送達系を生成する1つまたは複数の細胞を含み得る。
【0194】
脂質化などの修飾を使用して、タンパク質を安定化しかつ取り込みおよび組織浸透を強化することができる。脱脂用の方法はCruikshank et al., J. Acquired Immune Deficiency Syndromes and Human Retrovirology, 14:193, (1997)に記載されている。
【0195】
薬学的組成物を投与用説明書と共に容器、パックまたはディスペンサーに包含させることができる。
【0196】
VII. 核酸
本明細書に記載のペプチド系ミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤をコードする核酸も本開示に含まれる。
【0197】
本発明の一部である核酸は、ミトコンドリアHsp90シャペロン、例えばHsp90およびTRAP-1に結合しかつそれを阻害する、本明細書に開示されている方法によって同定されるペプチドのいずれかをコードすることができる。本明細書に開示される核酸は、ミトコンドリアHsp90シャペロンに結合しかつそれを阻害するペプチドの修飾バージョン、例えばレトロペプチド、異種ポリペプチド配列に連結しているペプチド、ミトコンドリア浸透性配列に連結しているペプチド、細胞内在化配列に連結しているペプチド、およびミトコンドリア浸透性配列に連結しているレトロペプチドをコードする核酸も含み得る。
【0198】
いくつかの態様では、核酸は、遺伝子治療に使用されるミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤をコードする。
【0199】
本明細書に開示される核酸としては、細胞から単離される組換えDNAおよび合成(例えば化学合成)DNAを含む、RNAとDNAとの両方が挙げられる。核酸は二本鎖でも一本鎖でもよい。核酸は、オリゴヌクレオチド類似体または誘導体(例えばイノシンヌクレオチドまたはホスホロチオエートヌクレオチド)を使用して合成することができる。そのようなオリゴヌクレオチドを使用して、例えばヌクレアーゼに対する増加した耐性を有する核酸を調製することができる。
【0200】
ミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤の発現を可能にする転写および/または翻訳配列に機能的に連結している、本明細書に記載のミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤をコードする核酸を含む遺伝子構築物(例えばベクターおよびプラスミド)、例えば発現ベクターも本発明に含まれる。選択される核酸、例えば本明細書に記載のペプチドをコードするDNA分子が、別の核酸分子、例えばプロモーターに「機能的に連結している」のは、選択される核酸の転写および/または翻訳をその別の分子が方向づけることができるように、それをその別の分子に隣接して位置づけるかまたは同一もしくは他の場所に位置づけるかのいずれかである場合である。
【0201】
本明細書に開示される核酸を含有し、任意で発現させる、各種の操作された細胞、例えば形質転換宿主細胞も本発明に含まれる。原核細胞および真核細胞、例えば哺乳動物細胞(例えば腫瘍細胞)、酵母、真菌および細菌(大腸菌(Escherichia coli)など)ならびに初代細胞および形質転換細胞が宿主細胞であり得る。いくつかの好適な細胞は当技術分野で公知である。
【0202】
VIII. スクリーニング方法
候補化合物、例えば有機または無機小分子(例えば1,000Da未満の分子量を有する)、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド、炭水化物、および本明細書に記載の処置方法において有用な抗体を同定するための方法が本明細書に記載されている。いくつかの方法では、候補化合物をシャペロン、例えばHsp90またはTRAP-1と結合するその能力についてスクリーニングする。いくつかの方法では、候補化合物をシクロフィリンDと結合するその能力についてスクリーニングする。いくつかの方法では、計算的方法(Hsp90、例えばHsp90のアポ-オープン形態に結合することが予想される候補化合物を同定するために、例えば実施例12に記載)によってインシリコで候補化合物をスクリーニングする。化学構造のライブラリーは当技術分野で公知である。
【0203】
これらの候補化合物を本明細書に記載のミトコンドリア浸透性部分に(共有結合性または非共有結合性の相互作用を経由して)任意で連結させることができる。いくつかの方法では、候補化合物をシクロフィリンDとシャペロン、例えばHsp90またはTRAP-1との間の相互作用を阻害するその能力についてスクリーニングする。いくつかの方法では、候補化合物をミトコンドリアに局在化するその能力についてスクリーニングする。いくつかの方法では、候補化合物を細胞死を誘発するその能力についてスクリーニングする。
【0204】
試験化合物のライブラリー
いくつかの態様では、がん細胞を処置するために使用可能な候補化合物用のスクリーニングは、試験化合物のライブラリーを使用する。本明細書で使用する「試験化合物」は、任意の化学化合物、例えば巨大分子(例えばポリペプチド、タンパク質複合体、糖タンパク質もしくは核酸)または小分子(例えばアミノ酸、ヌクレオチド、有機化合物もしくは無機化合物)であり得る。試験化合物は、1モル当たり約10,000グラム未満、1モル当たり5,000グラム未満、1モル当たり1,000グラム未満または1モル当たり約500グラム未満の式量を有し得る。試験化合物は天然(例えばハーブもしくは天然物)、合成であり得るか、または天然成分と合成成分との両方を含み得る。試験化合物の例としてはペプチド、ペプチド模倣体(例えばペプトイド)、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、および有機化合物または無機化合物、例えばヘテロ有機化合物または有機金属化合物が挙げられる。
【0205】
試験化合物を個々にまたは並行してスクリーニングすることができる。並行スクリーニングの例は、化学物質の大きいライブラリーの高スループット薬物スクリーンである。候補化合物のそのようなライブラリーを作成するかまたは例えばカリフォルニア州サンジエゴのChembridge Corp.から購入することができる。多様な範囲の化合物を包含するようにライブラリーを設計することができる。例えば、ライブラリーは500、1000、10,000、50,000もしくは100,000またはそれ以上の独自化合物を含み得る。いくつかの場合では、ライブラリーは、抗がん活性を有する可能性が高まった化合物のクラスを含む。可能性が高まった化合物のクラスは、公知のシャペロン阻害剤および構造上同様の化合物を含む。例えば、ライブラリーは、アンサマイシン抗生物質、ゲルダナマイシン類似体、ならびにピラゾロピリミジンおよび関連類似体を含み得る。化学物質のそのようなクラスを包含するようにライブラリーを設計および合成することができる。
【0206】
コンビナトリアルライブラリーの合成が検討されている(例えばGordon et al., J. Med. Chem., 37:1385, (1994); DeWitt and Czarnik, Acc. Chem. Res., 29:114, (1996); Armstrong et al., Acc. Chem. Res., 29:123-131, (1996); Ellman, J. A., Acc. Chem. Res., 29:132, (1996); Gordon et al., Acc. Chem. Res., 29:144, (1996); Lowe, G. Chem. Soc. Rev., 309, (1995), Blondelle et al., Trends Anal. Chem., 14:83, (1995); Chen et al., J. Am. Chem. Soc., 116:2661, (1994); 米国特許第5,359,115号、第5,362,899号および第5,288,514号; ならびにPCT公報番号 WO92/10092、WO93/09668、WO91/07087、WO93/20242、およびWO94/08051を参照)。
【0207】
化合物のライブラリーは、その一部が当技術分野で公知である種々の方法に従って調製することができる。例えば、スプリット-プール戦略を以下の方法で実行することができる:機能性ポリマー支持体のビーズを複数の反応容器に配置する:固相ペプチド合成に好適な種々のポリマー支持体は公知であり、一部は市販されている(例えばBodansky, Principles of Peptide Synthesis, 2nd edition, Springer-Verlag, Berlin (1993)を参照)。ビーズの各アリコートに異なる活性化アミノ酸の溶液を加え、反応を進行させて、複数の固定化アミノ酸を各反応容器に1つずつ得る。次に、誘導体化ビーズのアリコートを洗浄し、プールし(すなわち組換え)、ビーズのプールを再度分割し、各アリコートを別々の反応容器に配置する。次に、別の活性化アミノ酸をビーズの各アリコートに加える。所望のペプチド長が得られるまで合成サイクルを繰り返す。例えば、抗体と相互作用可能な公知のペプチド、例えば抗イディオタイプ抗体抗原結合部位に対して公知の構造上の類似性または相同性を有する阻害剤を提供するために、各合成サイクルにおいて加えるアミノ酸残基をランダムに選択することができるか、あるいは、バイアスライブラリー、例えば、阻害剤のある種の部分が非ランダム的に選択されるライブラリーを与えるようにアミノ酸を選択することができる。多種多様なペプチド化合物、ペプチド模倣体化合物または非ペプチド化合物をこのようにして容易に生み出すことができることが理解されよう。
【0208】
スプリット-プール戦略によってペプチド、例えばモジュレーターのライブラリーを得ることができ、これを使用して、本明細書に記載のスクリーンで使用される試験化合物のライブラリーを調製することができる。別の例示的な合成では、DeWitt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 90:6909, (1993)の方法によってdiversomerライブラリーを作り出す。Houghten et al., Nature, 354:84, (1991)に記載の「ティーバッグ」技術を含む他の合成方法を使用して、本発明に係る化合物のライブラリーを合成することもできる。
【0209】
化合物のライブラリーをスクリーニングすることで、ライブラリーの任意のメンバーがシャペロン、例えばHsp90またはTRAP-1の阻害活性を有するかどうかを決定し、有する場合は阻害剤を同定することができる。コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする方法が記載されている。例えばGordon et al., J. Med. Chem., 前掲論文を参照。可溶性化合物ライブラリーをスクリーニングすることでシャペロン、例えばHsp90またはTRAP-1の阻害剤を単離した後、慣行的な技術(例えば質量分析、NMRなど)によって、単離したリガンドを同定することができる。スクリーンは本明細書に記載されている。
【0210】
スクリーン
腫瘍またはがんの処置用の候補化合物を同定するための方法が本明細書において提供される。本出願人らは関連する生物学的機構に関して任意の特定の理論に拘束されることは意図しないが、そのような化合物は、ミトコンドリアにおけるシャペロンを阻害し、それによってシクロフィリンD(CypD)の機能のシャペロン媒介性拮抗作用を阻害すると考えられる。シクロフィリンDは、ミトコンドリア細胞死を誘発するイムノフィリンであり、シャペロンはタンパク質フォールディング/リフォールディング機構を経由してCypD機能に拮抗すると考えられる。ミトコンドリアを指向する新規Hsp90 ATPアーゼアンタゴニストを使用してこの経路を無能にすることで、ミトコンドリア機能の突然の崩壊および選択的な腫瘍細胞死が生じる。したがって、シャペロンはミトコンドリアの完全性の新規レギュレーターであり、その小器官特異的アンタゴニストは強力な抗がん剤の新規クラスを提供し得る。
【0211】
ある種の態様では、ミトコンドリアにおけるシャペロンを阻害可能な化合物のスクリーニングは、試験化合物の群から(i)分子シャペロンを阻害しかつ/もしくはそれに結合し、(ii)分子シャペロンとシクロフィリンDとの相互作用を阻害し、かつ/または(iii)腫瘍細胞ミトコンドリアにおけるシャペロンのレベルを低下させるものを同定することを含み得る。活性(i)、(ii)または(iii)のうち1つまたは複数を示す試験化合物を本明細書では「候補化合物」と呼ぶ。スクリーニングアッセイは、候補化合物を、インビトロまたはインビボでのがん細胞の増殖を調節するその能力についてさらに試験することを任意で含み得る。本発明のスクリーニングアッセイは、全細胞製剤および/またはエクスビボ無細胞系中で行うことができる。いくつかの態様では、試験化合物または候補化合物がミトコンドリア浸透性部分に連結している。
【0212】
シャペロンタンパク質を含む無細胞試料に対する試験化合物の結合は、基材、例えばプレート(例えば96ウェルポリスチレンマイクロタイタープレート)のウェルの表面上にシャペロンタンパク質を可逆的または不可逆的に固定することによりインビトロで例えば検出することができる。例えば、マイクロタイタープレートをシャペロンタンパク質またはその断片でコーティングし、洗浄し、ブロッキングして(例えばBSAで)、プレートに対する試験化合物の非特異的結合を防ぐことができる。次にシャペロンタンパク質をプレートに架橋する。コーティングしたプレートにいくつかの条件下(例えば37℃で0.5〜12時間)で試験化合物を加える。次に、プレートをすすぐことができ、シャペロンタンパク質に対する試験化合物の結合を種々の当技術分野で公知の方法のいずれかによって検出することができる。例えば、シャペロンタンパク質に特異的に結合する抗体をイムノアッセイに使用できる。所望であれば、抗体を標識し(例えば蛍光的にまたは放射性同位体で)、直接検出することができる(例えばWest and McMahon, J. Cell Biol., 74:264, (1977)を参照)。あるいは、第2の抗体を検出に使用することができる(例えば、抗シャペロンタンパク質抗体に結合する標識抗体)。シャペロンタンパク質に結合する試験化合物は、固定化シャペロンタンパク質に対する抗体の結合を阻害するその能力によって検出することができる。代替的検出方法では、試験化合物を標識し(例えば放射性同位体、フルオロフォア、発色団などで)、シャペロンタンパク質に対する試験化合物の結合を、基材に固定化される標識を検出することで検出する。
【0213】
さらに別の態様では、試験化合物を、基材、例えば上記のマイクロタイタープレートに固定化し、シャペロンタンパク質(またはその断片)を含む無細胞試料と共にインキュベートし、洗浄し、固定化試験化合物に結合するシャペロンタンパク質の能力を検出する。例えば、Hsp90(またはその断片)を、光学的に検出可能なタンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質またはその変異体(紫外光下で検出可能)との融合タンパク質として生成することができ、試験化合物に結合する融合タンパク質の能力を検出する。あるいは、シャペロンを、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼまたはグルコースオキシダーゼなどの検出可能な酵素活性を有する酵素との融合タンパク質として生成することができる。これらの酵素のすべてをコードする遺伝子はクローニングされており、熟練した施術者に利用可能である。所望であれば、融合タンパク質は、慣行的な方法を使用してポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体によって検出および測定可能な抗原を含み得る。好適な抗原としては酵素(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびβ-ガラクトシダーゼ)ならびに非酵素ポリペプチド(例えばBSAおよびグロブリンなどの血清タンパク質、ならびにカゼインなどの牛乳タンパク質)が挙げられる。これらの方法では、試験化合物に結合するシャペロン融合タンパク質の能力を検出する。
【0214】
シャペロンタンパク質に結合するポリペプチドを同定するために、タンパク質/タンパク質相互作用のツーハイブリッドアッセイを使用できる(例えばChien et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:9578, (1991); Fieldsら、米国特許第5,283,173号; Fields and Song, Nature, 340:245, (1989); Le Douarin et al., Nucleic Acids Research, 23:876, (1995); Vidal et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:10315-10320, (1996); およびWhite, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:10001-10003, (1996)を参照)。各種ツーハイブリッド法を実践するためのキットが市販されている(例えばカリフォルニア州Palo AltoのClontechから)。
【0215】
ある種の他の態様では、シャペロンタンパク質またはその断片と試験化合物との相互作用は、シャペロンタンパク質または試験化合物のいずれかに共有結合的に連結するドナーフルオロフォアとシャペロンタンパク質または試験化合物のいずれかに共有結合的に連結するアクセプターフルオロフォアとの間の共鳴蛍光エネルギー移動(FRET)によって検出され、ここで、アクセプターフルオロフォアおよびドナーフルオロフォアはいずれもシャペロンタンパク質または試験化合物には連結しておらず、また、フルオロフォアがシャペロンタンパク質-試験化合物相互作用を通じて隣接している場合、ドナーの発光スペクトルとアクセプターの励起スペクトルとの好適な重複が存在することで効率的な無放射エネルギー移動が得られる。
【0216】
いくつかの方法では、1つまたは複数のシャペロンタンパク質およびCypDを含む試料に試験化合物を接触させた後、シャペロンとCypDとの間の相互作用の低下についてスクリーニングすることで、腫瘍またはがんの処置用の候補化合物である試験化合物の同定を行うことができる。一態様では、無細胞系を使用して、組換えTRAP-1または組換えHsp90が試験化合物の存在下で組換えCypDと免疫共沈降するか否かを決定する。
【0217】
いくつかの方法では、腫瘍またはがんの処置用の候補化合物である試験化合物を、1つまたは複数の腫瘍細胞と接触させ、シャペロンの発現低下について評価する。関連する方法では、組換えシャペロンを発現させる腫瘍細胞に1つまたは複数の試験化合物を接触させ、組換えシャペロンの発現低下について細胞を評価する。シャペロンの発現は、ノーザンブロット、RT-PCR分析、RNAse保護分析、ウエスタンブロット、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)および蛍光活性化細胞選別(FACS)によって例えば測定することができる。試験分子の非存在下の発現レベルと比較した試験分子の存在下の発現レベルは、試験化合物がシャペロンの発現を阻害するか否かを示す。一態様では、試験化合物は低分子干渉RNA(siRNA)である。
【0218】
試験化合物を候補化合物として同定した後、例えばインビトロまたはインビボのモデル系を使用する腫瘍細胞の増殖アッセイにおいて、候補化合物をさらに試験することができる。インビトロ増殖アッセイは、腫瘍細胞、例えばRaji細胞の培養液に候補化合物を接触させること、ならびに培養細胞においてアポトーシスを誘発しかつ/または培養細胞の増殖を防ぐ候補化合物の能力を評価することを含む。インビボ腫瘍アッセイは、腫瘍または腫瘍を発生させる素因を有する動物モデル、例えばげっ歯類に候補化合物を投与すること、および引き続きその動物における腫瘍発生または腫瘍増殖を阻害する候補化合物の能力を評価することを含む。がんの例示的な動物モデルとしては異種移植がん細胞を有する動物が挙げられる。他の動物モデルとしては、腫瘍を発生させる遺伝的素因を有するげっ歯類、例えば、(i)大腸腺腫症(APC)遺伝子(例えば多発性腸腫瘍(APCMin)マウス(例えばHaigis et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA, 101:9769-9773, (2004)を参照)、(ii)mut-s相同体-2(Msh2)遺伝子(例えばKohonen-Corish et al., Cancer Research, 62:2092-2097, (2002)を参照)、および/または(iii)MutL相同体-1(Mlh1)遺伝子(例えばCohen et al., Cell, 85:1125-1134, (1996)を参照)の変異体形を有するマウスが挙げられる。C57BL/6J-ApcMinマウスはJackson Harbor Labs(メイン州Bar Harbor)から入手可能である。あるいは、動物モデルにおいて腫瘍を誘発すると報告されている、2-アミノ-1-メチル-6-フェニルイミダゾ[4,5-b]ピリジン(PhIP)などのジメチルヒドラジン誘導体または複素環式アミンなどの発がん性化学物質に、動物モデルを曝露させることができる。
【0219】
いくつかの方法では、1つまたは複数の腫瘍細胞を含む試料に候補化合物を接触させた後、細胞生存率の低下についてスクリーニングすることによって、腫瘍またはがんの処置用の候補化合物を、アポトーシス誘導活性についてさらに試験することができる。一態様では、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)減少アッセイを使用して、細胞生存率の低下を測定する。Mossman(J. Immunol. Methods 65:55-63 (1983))が開発した比色MTTアッセイは、水溶性MTTを不溶性の紫色ホルマザンに変換することに基づいている。次にホルマザンを可溶化し、その濃度を570nmの光学濃度で決定する。本方法を例えばPlesciaら(Cancer Cell. 2005 May;7(5):457-68)に記載のように行うことができる。他の生存率アッセイも使用できる。
【0220】
いくつかの方法では、1つまたは複数の腫瘍細胞を含む試料に試験化合物を接触させた後、アポトーシスの増加についてスクリーニングすることによって、腫瘍またはがんの処置用の候補化合物をさらに試験することができる。一態様では、DEVDアーゼ加水分解によって決定されるカスパーゼ活性の増加として、アポトーシスの増加が明らかになる。アポトーシスを測定するための方法は当技術分野において周知である。
【0221】
いくつかの方法では、腫瘍またはがんの処置用の候補化合物を、ミトコンドリア膜の完全性を破壊するその能力についてさらに試験することができる。例えば、候補化合物を、ミトコンドリア膜電位の変化を誘発し、チトクロムcの放出を増加させ、またはSmadの放出を増加させるその能力についてさらに試験することができる。一態様では、細胞を候補化合物で処理し、ミトコンドリア膜電位感受性蛍光染料JC-1でさらに処理し、緑色/赤色蛍光比の変化についてフローサイトメトリーで分析する。
【0222】
いくつかの方法では、腫瘍またはがんの処置用の候補化合物を、シャペロン活性を阻害するその能力についてさらに試験することができる。例えば、候補化合物を、Hsp90クライアントタンパク質であるAktの分解を誘発するその能力についてさらに試験することができる。
【0223】
医薬品化学
対象となる化合物(または薬剤)を同定した時点で、医薬品化学の標準的原理を使用して該化合物の誘導体を生成することができる。改善された薬理特性、例えば有効性、薬物動態、安定性、溶解度およびクリアランスについて誘導体をスクリーニングすることができる。上記アッセイにおける化合物の活性を担う部分は、当技術分野で一般的に実施されている構造-活性の関係(SAR)の検査によって説明することができる。製薬化学における当業者は、候補化合物または候補薬剤(すなわちリード化合物)上の部分を修飾し、また該化合物または薬剤の有効性に対する修飾の効果を測定することにより、効力の増大した誘導体を生成することができる。例えばNagarajan et al., J. Antibiot., 41:1430-1438, (1988)を参照。さらに、化合物(または薬剤)の生化学的標的が公知であるか決定されている場合、標的および化合物の構造は誘導体の設計および最適化の情報を与えることができる。分子モデリングソフトウェアがこの目的のために市販されている(例えばMolecular Simulations, Inc.から)。
【0224】
実施例
本発明を以下の実施例においてさらに説明するが、実施例は、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定するものではない。
【0225】
実施例1
ミトコンドリアにおけるHsp90シャペロン
本実施例に記載の実験は、シャペロンTRAP-1およびHsp90の細胞内局在化を決定するために設計された。
【0226】
TRAP-1に対する抗体は、各種の腫瘍細胞タイプから単離した精製ミトコンドリアにおける豊富な約75kDaの免疫反応性バンドを検出した(図1A)。この局在化は選択的であった。これは、TRAP-1が、正常マウス組織から単離したミトコンドリアにおいて非常に低レベルで見られ(図1A)、腫瘍細胞または正常細胞のサイトゾルにおいて存在しない(図1Aおよび図示せず)ためであった(Chen et al., Mol. Cell. Biol., 16:4691-4699, (1996))。インビボでの一次腫瘍試料およびその各々の正常組織におけるTRAP-1の発現差異を試験した。免疫組織化学的検査によれば、TRAP-1は膵臓(図1C)、乳房(図1E)、結腸(図1G)および肺(図1I)の腺がんの腫瘍細胞において強く発現した。逆に、正常な膵臓(図1B)、乳房(図1D)、結腸(図1F)および肺(図1H)の上皮は、非常に低レベルのTRAP-1を含有しており、IgGは正常組織または腫瘍組織を染色しなかった(図示せず)。
【0227】
サイトゾル中のその公知の局在化に加えて、Hsp90の豊富なプールがウエスタンブロッティングによって各種の腫瘍細胞タイプのミトコンドリアにおいて検出された(図1J)。したがって、電子顕微鏡法によれば(図1K)、Hsp90に対する抗体は、HeLa細胞から単離した精製ミトコンドリアを標識し(26.6±4.1個の金粒子/ミトコンドリア、n=13)、一方、IgGはミトコンドリアを著しく染色することはなかった(1.1±0.33個の金粒子/ミトコンドリア、n=13; p<0.0001)(図1L)。ミトコンドリアを以下のように特徴づけた。HeLa細胞から精製したミトコンドリア画分は、TRAP-1およびHsp90を含有していたが、小胞体のタンパク質(カルネキシン)またはサイトゾル(GAPDH)を含有しておらず、またリソソームマーカーであるLamp-1を非常に少量含有していた(図1M)。Hsp90は単離ミトコンドリアにおいて活発に移入された。プロテイナーゼKでの処理後、35S標識されインビトロで転写および翻訳されたHsp90タンパク質は、単離された脳ミトコンドリア内に容易に蓄積され、この反応は脱共役剤バリノマイシンによって完全に阻害された(図2A)。35S標識ミトコンドリアミトコンドリア移入の対照としてのリン酸輸送体PiCによって同様の結果が得られた(図2A)。
【0228】
Hsp90がインビボでミトコンドリアに局在化するか否かを決定するために、精巣、肺、脾臓、腎臓、脳および肝臓の一次細胞から得たミトコンドリア抽出物についてイムノブロットを行った。これらのイムノブロットは、一次細胞のミトコンドリアにおいてHsp90が低レベルで発現することを示した(図8)。Bcl-2を含む外膜タンパク質のプロテイナーゼKの分解は、単離ミトコンドリアにおいてHsp90反応性を減少させなかった(図8)。このことは、それがタンパク質分解から保護されたことを示唆している。
【0229】
逆に、ジギトニンによる外膜の透過処理によって、ミトコンドリアペレットから上清へのHsp90の濃度依存性放出が生じた一方で、マトリックス関連mt-Hsp70は影響を受けなかった(図2B)。ショ糖の非存在下で、外膜の機械的破壊は、マトリックス関連シクロフィリンD(CypD)に影響を与えることなく、ミトコンドリア膜間腔からSmacを完全に枯渇させた(図2C)。この処理によって減少したが、相当なHsp90反応性がミトコンドリアと関連したままとどまっており(図2C)、このことはHsp90がマトリックスとミトコンドリア膜間腔との両方に局在したことを示唆している。外膜(OM)、膜間腔(IMS)、内膜(IM)およびマトリックスを含む個々の小器官区画の分析を可能にするミトコンドリア内分画プロトコールを使用してHsp90の局在化を検査した。Hsp90は膜間腔とミトコンドリアマトリックスとの両方に局在化した(図2D)。
【0230】
TRAP-1と同様に、Hsp90のミトコンドリア局在化は選択的であり、脳および精巣を除いて、調査した他の正常マウス組織においてミトコンドリアHsp90の発現は見られなかった(図2E)。さらに、脳および精巣におけるミトコンドリアHsp90のレベルは、腫瘍細胞タイプで観察されたミトコンドリアHsp90レベルよりも著しく低かった(図1J)。逆に、Hsp90のサイトゾルプールは正常細胞および腫瘍細胞タイプにおいて広範に存在した(図2E)。ヒト細胞では、Hsp90とTRAP-1との両方が、各種の腫瘍細胞株において高レベルで発現したが、3つの正常な一次線維芽細胞タイプにおいて低レベルで発現した(図2F)。この局在化の差異は、腫瘍細胞に対して正常細胞におけるHsp90シャペロンの発現が包括的に減少したためではなかった。正常細胞におけるHsp90のサイトゾル中の量は代表的な腫瘍細胞タイプのそれと同等であった一方、そのミトコンドリアプールはかなり減少し、ミトコンドリアにおけるTRAP-1レベルも低下した(図2G)。
【0231】
実施例2
ミトコンドリアHsp90シャペロンの標的化がミトコンドリア透過性転移および細胞死を引き起こす
本実施例に記載の実験では、Hsp90シャペロンの2つのATPアーゼポケットアンタゴニスト、小分子GA誘導体である17-AAG(Isaacs et al., Cancer Cell, 3:213-217, (2003))と、アンテナペディアヘリックスIIIホメオドメイン細胞浸透性配列(「ANT」、Plescia et al., Cancer Cell, 7:457-468, (2005))の付加により細胞透過性になるペプチド模倣体シェファーディン(Sheph)とを使用した。両方の分子は、ATP結合性および阻害性のHsp90 ATPアーゼ活性と競合することによりHsp90シャペロン活性を阻害する(Neckers and Ivy, Curr. Opin. Oncol., 15:419-424, (2003); Plescia et al., Cancer Cell, 7:457-468, (2005))。
【0232】
下記のように精製ミトコンドリアをHeLa細胞から単離した。フルオレセイン共役Sheph-ANTが精製ミトコンドリア内に蓄積された(図3A)一方、アンテナペディア細胞浸透性配列を欠くシェファーディンShephについて(図3B)、またはミトコンドリアの非存在下で(図3C)、蛍光信号は検出されなかった。フルオレセイン共役細胞透過性スクランブルペプチド模倣体Scram-ANTも単離ミトコンドリア内に蓄積され(図3D)、蛍光強度の定量化によって、Sheph-ANT配列およびScram-ANT配列はいずれも単離ミトコンドリアにおけるミトコンドリア内浸透の効率について識別不能である(図3E)ことが示された。
【0233】
アンテナペディア細胞浸透性ペプチドを有するシェファーディン(Sheph-ANT)またはそれを有さないシェファーディン(Sheph)のミトコンドリア内分布を定量化した。細胞透過性Sheph-ANTは、未分画ミトコンドリア、ならびに膜間腔、内膜およびマトリックスを含むすべてのミトコンドリア内区画に存在した(図3F)。Sheph(ANTを有さない)がミトコンドリアまたは任意のミトコンドリア内区画に見られなかった(図3F)ため、この局在化はアンテナペディアペプチド(ANT)に完全に依存していた。インビボでミトコンドリアにおいてシェファーディンがHsp90分子に直接結合するか否かを決定するために、本発明者らは次に、シェファーディンまたはスクランブルペプチド模倣体をセファロースビーズに共役させた。シェファーディン-セファロースの上でのRajiミトコンドリア抽出物の分画によって、ウエスタンブロッティングによるTRAP-1とHsp90との両方の特異的溶出が生じた(図3G上側)。これに対し、Hsp90分子と固定化スクランブルペプチド模倣体との会合は実証されなかった(図3G下側)。
【0234】
これらの実験条件下で、精製HeLa細胞ミトコンドリアにSheph-ANTを加えることでミトコンドリア膜電位の突然の損失が生じた(図3H)。ミトコンドリア濃度の増加に従ってこの応答は累進的に減弱した(図3H)。このことはミトコンドリア内の化合物蓄積の必要性を示唆している。逆に、Sheph-ANTは、バックグラウンドレベルに比べて正常細胞のミトコンドリア膜電位に影響を与えず(以下の図4A、C、E、Gを参照)、スクランブルペプチド模倣体(Scram-ANT)は、腫瘍細胞または正常細胞のミトコンドリア膜電位に対して有意な効果を有さなかった(図3H、および以下の図4A、C、E、Gを参照)。さらに、Sheph-ANTは、Rajiリンパ芽球腫細胞(図3I)およびインビボでの一次ヒト肉腫試料(図3J)から単離したミトコンドリアからのチトクロムcの濃度依存性放出を誘発した一方、Scram-ANTは有意な効果を有さなかった(図3I、J)。これらのデータとは矛盾して、Hsp90アンタゴニスト17-AAGは、単離した腫瘍ミトコンドリアからのチトクロムcまたはSmacの放出を誘発せず(図3K)、高濃度(20μM)においてのみ、それは上清中にてミトコンドリアからのSmacではなくチトクロムcの少量の流出を引き起こした(図3L)。
【0235】
実施例3
腫瘍細胞タイプ対正常細胞タイプにおけるミトコンドリア恒常性の制御の差異
Sheph-ANTは、WS-1正常ヒト線維芽細胞から単離したミトコンドリアの膜電位の損失を引き起こさなかった(図4A左側)一方で、B-リンパ芽球腫Raji細胞から精製したミトコンドリアをそれは容易に脱分極させた(図4A右側)。Scram-ANTは、正常または腫瘍ミトコンドリアに対して有意な効果を有さなかった(図4A)。Hsp90レベルは細胞ストレスによって調節することができる。WS-1線維芽細胞のグルコース欠乏によって、対照として使用した小胞体Hsp90相同体であるGrp94のレベルが増加した(図4B左側)。しかし、グルコース欠乏後のWS-1ミトコンドリアにおける内在性TRAP-1およびHsp90の発現の変化は最小限であった(図4B右側)。これと一致する通り、Sheph-ANTは、Scram-ANTに比べて、グルコース欠乏WS-1ミトコンドリアの膜電位に有意に影響を与えなかった(図4C)。
【0236】
Sheph-ANTは、p53-/-マウスリンパ腫試料から単離したミトコンドリアからのチトクロムcの放出を誘発し(図9)、この処理は、正常マウス肝ミトコンドリアのチトクロムcまたはSmacのレベルに効果を有さず(図4D)、正常マウスの肝臓(図4E左側)または脳(図4E右側)のミトコンドリアの膜電位に影響を与えなかった。対照スクランブルペプチド模倣体Scram-ANTは、正常または腫瘍ミトコンドリアに対して有意な効果を有さなかった(図9、図4D、E)。
【0237】
腫瘍ミトコンドリアに対するHsp90分子の補充に関する正常ミトコンドリアとの差異の根拠を検討するために、Hsp90の局在化および発現レベルに対するがん遺伝子発現の効果を検討した。正常NIH3T3線維芽細胞は低レベルのミトコンドリアHsp90を示した(図4F)。しかし、変異体Rasがん遺伝子によるこれらの細胞のレトロウイルス形質導入によって、ミトコンドリアに対するHsp90の補充が増加した一方、TRAP-1の発現はそれほど顕著には増加しなかった(図4F)。逆に、サイトゾルのHsp90レベルは、正常またはRas形質転換NIH3T3細胞において変化しなかった(図4F)。Sheph-ANTが正常NIH3T3細胞から単離したミトコンドリアに効果を有さなかった(図4G左側)一方、確立された腫瘍細胞と同様にRas形質転換NIH3T3ミトコンドリアをそれは容易に脱分極させた(図4G右側)。
【0238】
実施例4
ミトコンドリアHsp90分子の阻害による腫瘍細胞死滅の制御の差異
Sheph-ANTは腫瘍細胞を選択的に死滅させることがわかった。フルオレセイン共役Sheph-ANTは、腫瘍細胞の核周囲領域に蓄積され、共焦点顕微鏡法によってミトコンドリアマーカーMitoTrackerの反応性と共存した(図5A)。Scram-ANTは単離した精製ミトコンドリア内に蓄積された(図3D、E)が、Scram-ANTは無傷の生細胞中でMitoTrackerと共存しなかった(図5B)。Scram-ANTはミトコンドリアに対して浸透する能力がある(単離ミトコンドリア中の蓄積が示すように)が、インサイチュー(細胞中)でのミトコンドリアにおいて共焦点顕微鏡法によって検出可能なレベルまでScram-ANTが蓄積されないということを、これらの結果は示唆している。本出願人らは理論によって拘束されることを望まないが、インサイチューでのミトコンドリアにおけるScram-ANTの蓄積の検出が不可能なことは、他のサイトゾル膜区画におけるScram-ANTの非特異的浸透、例えば細胞の区画全体を通じてのScram-ANTの平衡分布によって、ミトコンドリア局在化Scram-ANTの定常状態レベルが共焦点顕微鏡法の検出限界を超えて減少していることを反映し得るものである。やはり理論に拘束されることは望まないが、Sheph-ANTの蓄積は、ミトコンドリア内に局在化するHsp90またはTRAP-1に対するSheph部分の緊密な結合によるものである可能性が高い。この予測と一致する通り、蛍光強度の定量化によって、処理細胞のミトコンドリア抽出物におけるScram-ANTの蓄積がSheph-ANTに比べて減少していたことが明らかになった(図5C)。逆に、両配列は、処理細胞の全細胞抽出物およびサイトゾル画分において同等に蓄積されていた(図5C)。
【0239】
添加5分以内に、Sheph-ANTは、腫瘍細胞におけるミトコンドリア膜電位の損失(図5D)およびサイトゾルにおけるミトコンドリアチトクロムcの流出(図示せず)を誘発した。対照的に、細胞透過性スクランブルペプチド模倣体(Scram-ANT)は効果がなかった(表5D)。並行実験において、17-AAGは、HeLa細胞におけるミトコンドリア膜電位に影響を与えず(図5D)、広範な濃度にわたってチトクロムcの放出に効果を有さなかった(図5E)。微速度ビデオ顕微鏡法で分析した際に、Scram-ANTではなくSheph-ANTに曝露した腫瘍細胞は、細胞収縮、膜小疱形成、および核周囲領域の周りのミトコンドリアの融合/分裂を含む、アポトーシスの形態学的特徴を数分以内に示した(図5F)。したがって、Sheph-ANTへの1時間の曝露は異なる腫瘍細胞タイプを濃度依存的に死滅させるために十分であった一方、細胞透過性スクランブルペプチド模倣体Scram-ANTは無効であった(図5G)。作用の選択性と一致する通り、同等の濃度のSheph-ANTは、各種の正常ヒト線維芽細胞タイプの生存率に影響を与えなかった(図5G)。対照的に、17-AAGは同一の動態内での腫瘍細胞生存率に対する効果を有さず、薬物に対する長期曝露によってのみ、処理後24時間に検出可能な部分細胞死が生じた(図5H)。
【0240】
実施例5
ミトコンドリアにおけるHsp90制御シャペロンネットワーク
単離したRajiミトコンドリアから免疫沈降したTRAP-1が、内在性CypDとの複合体において見られた(図6A)。CypD阻害剤であるシクロスポリンA(CsA)は、インビボでCypD-TRAP-1複合体の形成を阻止した(図6A)。GAでの処理は効果を有さなかった(図6A)。TRAP-1と同様に、内在性CypDに関連した単離ミトコンドリア抽出物からHsp90をインビボで免疫沈降させ、この相互作用もCsAによって阻止された(図6B)。Hsp90はTRAP-1免疫複合体では見られなかった(図示せず)。このことは、ミトコンドリアにおいてCypDを含有する独立したTRAP-1複合体およびHsp90複合体が存在することを示唆している。Hsp90シャペロンとCypDとの間の相互作用を無細胞系によって確認した。プルダウン実験では、やはりGAではなくCsAによって無効になった反応において、組換えTRAP-1またはHsp90を組換えCypDに直接結合させ、反対に、CypDを組換えHsp90分子に直接会合させた(図10)。対照的に、GSTはインビトロでHsp90またはTRAP-1と会合しなかった(図10)。Rajiミトコンドリア抽出物とGST-CypDとのインキュベーションによって、TRAP-1とHsp90との両方の単離が生じ、これらの相互作用はGAではなくCsAによって阻害された(図6C)。
【0241】
実施例6
Hsp90指向性ミトコンドリア恒常性の分子的要件
CsAによるCypD活性の阻害は、Sheph-ANTによる腫瘍ミトコンドリアの膜脱分極を完全に防いだ(図6D)。Sheph-ANTは、CsAの有無にかかわらず、正常肝ミトコンドリアに効果を有さなかった。CsAは、Sheph-ANT誘発性の細胞死を有意に阻害することで、CsAで処理されない培養液中で完全な細胞死滅をもたらすSheph-ANTの濃度(50μM)で70%の細胞生存率を保全した(図6E)。CsAの保護効果が特異的であることを確認するために、本発明者らは、次に低分子干渉RNA(siRNA)によってその標的であるCypDを鋭く切断し、シェファーディンが媒介する腫瘍細胞死滅を定量化した。CypDのsiRNA切断は、Sheph-ANT誘発性の腫瘍細胞死滅も予防し、それによりSheph-ANTの広範な有効濃度(50〜100μM)にわたって60〜70%の細胞生存率を回復した(図6F)。対照的に、CsAの存在下もしくは非存在下で(図6E)、または非標的化もしくはCypD指向性siRNAの形質移入後(図6F)に、スクランブルペプチド模倣体Scram-ANTは効果を有さなかった。
【0242】
ミトコンドリアにおけるHsp90、TRAP-1またはその両方の分子が透過性転移においてCypDの機能に拮抗するか否かを決定するために、以下の実験を行った。ミトコンドリアにのみ存在するTRAP-1発現をsiRNAで切断し、細胞生存率に対する効果を決定した。TRAP-1サイレンシングは、HeLa細胞生存率を非標的化siRNAに比べて約50%減少させた(図6G)。CsAでのプレインキュベーションは、TRAP-1サイレンシングが誘発する細胞死を完全に阻害した(図6G)。このことは、ミトコンドリアにおけるCypDのHsp90シャペロン拮抗作用ががん細胞生存に必要であることを示唆している。対照実験では、TRAP-1またはCypDを指向するsiRNAがHeLa細胞におけるこれら2つのタンパク質の発現を減少させた一方、非標的化siRNAは効果を有さなかった(図6H)。ミトコンドリアHsp90分子がアポトーシスに対する積極的な保護を与えるか否かをさらに検討するために、TRAP-1を、非常に低レベルのこのタンパク質を発現する正常ヒト線維芽細胞に形質移入した(図2F、G)。次に、形質移入したヒト線維芽細胞を、スタウロスポリン誘発性アポトーシスに対する耐性について試験した。WS-1(図6I)またはHFF(図11)正常ヒト線維芽細胞における組換えTRAP-1の発現は、対照に比べて、広範なスタウロスポリン濃度にわたってアポトーシスに強く対抗した。
【0243】
実施例7
ミトコンドリア指向性GAの設計および化学合成
Sheph-ANTは単離ミトコンドリアおよび生細胞において透過性転移を誘発し、選択的腫瘍細胞死を引き起こしたが、十分に特徴づけられたHsp90アンタゴニストである17-AAG(Neckers and Ivy, Curr. Opin. Oncol., 15:419-424, (2003))は、ミトコンドリアの完全性に対して効果を有さず(図3K、L)、控えめな抗がん活性を示した(図5H)。17-AAGの効果の欠如がミトコンドリア内に17-AAGが蓄積されなかったことによるか否かを決定するために、局在化試験を行った。フルオレセイン共役GAは、単離した腫瘍細胞ミトコンドリア内に蓄積されなかった(図12A)。17-AAGの変異体である17-(3-(4-マレイミドブチルカルボキサミド)プロピルアミノ)-デメトキシゲルダナマイシン(17-GMB-APA-GA)(図12B、C)を、アンテナペディア細胞浸透性ペプチド(ANT)に対してチオエーテル結合によって共有結合的に共役させた。FITCと共役した際に、ANT-GAと呼ばれるこの新規化合物(図12C)は、単離した腫瘍ミトコンドリア内に容易に蓄積された一方、ミトコンドリアの非存在下で蛍光信号は検出されなかった(図12A)。プロテイナーゼKによるANT-GAの前処理がミトコンドリア内蓄積を無効にした一方、ミトコンドリアによるANT-GAのインキュベーション後のプロテイナーゼKの添加は無効であった(図12A)。このことは該化合物がタンパク質分解から保護されたことを示す。最適以下の濃度のANT-GAとのHeLa細胞の終夜のインキュベーションにより、Hsp90クライアントタンパク質であるAktの分解が生じた(図12D)。これは、ANTとGAとの脱共役混合物(GA/ANT)と区別不能な形でHsp90 ATPアーゼ活性を阻害するその能力を確認するものである。
【0244】
実施例8
ミトコンドリア指向性GA(ANT-GA)によるミトコンドリア透過性転移および選択的腫瘍細胞死の誘発
ANT-GAとの精製HeLa細胞ミトコンドリアのインキュベーションにより、ミトコンドリア膜電位の突然の損失が生じた(図7A)。ミトコンドリア濃度の増加に従ってこの応答は累進的に減弱した。このことはミトコンドリア内の化合物蓄積が活性に必要であったことを示している(図7A)。CsAは、腫瘍ミトコンドリアのANT-GA誘発性の膜脱分極を完全に逆転させることで(図7B)、この経路におけるCypDの役割を補強した。さらに、ANT-GAは、腫瘍細胞について選択的であり、単離した腫瘍ミトコンドリアにおいてチトクロムcの濃度依存的放出を引き起こしたが(図7C上側)、CsAの有無にかかわらず正常な脳ミトコンドリアの膜電位に影響を与えなかったか(図7B)、または正常な肝ミトコンドリアのチトクロムc含有量に影響を与えなかった(図7C下側)。対照実験では、GA/ANTの脱共役混合物または単独のGAは、正常または腫瘍ミトコンドリアの膜電位に有意に影響を与えず(図7B)、チトクロムc放出に効果を有さなかった(図7C)。腫瘍細胞に加えた際に、単独のGAまたは脱共役ANT/GA混合物ではなくANT-GAが、速やか(約2時間)でかつ濃度依存性の細胞死滅を引き起こした(図7D)一方、どの化合物も各種の正常ヒト線維芽細胞タイプの生存率に影響を与えなかった(図7E)。最後に、ANT-GAが誘発した腫瘍細胞死滅は、DEVDアーゼ加水分解により決定されるカスパーゼ活性の増加によってアポトーシスの顕著な特徴を有し、p53の有無による影響を受けなかった(図7F)。対照的に、脱共役混合物GA/ANTは、p53+/+またはp53-/-細胞においてアポトーシスを誘発しなかった(図7F)。
【0245】
実施例9
腫瘍における選択的Hsp60細胞保護
Hsp60細胞保護が優先的にがんにおいて利用されたか否かを決定するために、腫瘍細胞タイプに対する正常細胞タイプにおけるその発現および機能を検討した。本質的にはDohi et al., J Clin Invest 2004;114:1117-27に記載のように、ミトコンドリアおよびサイトゾルの画分を腫瘍細胞から抽出した(6〜7×107)。Hsp60は、乳腺がんMCF-7細胞および結腸腺がんHCT116細胞のミトコンドリア画分およびミトコンドリア外画分(Soltys and Gupta, Int Rev Cytol 2000;194:133-96)、すなわちサイトゾル画分に豊富に存在した(図13A、上側パネル)。対照的に、一次WS-1およびHFFヒト線維芽細胞は、両方の細胞内区画においてかなり減少したレベルのHsp60を示した(図13A、下側パネル)。免疫組織化学的検査では、Hsp60は、インビボで乳房、結腸および肺の正常上皮において、検出不能であるかまたは非常に低レベルで発現した(図13B)。対照的に、Hsp60は、乳房、結腸および肺の腺がんの腫瘍細胞集団において豊富に発現し(図13B)、乳腺がん、結腸腺がんおよび肺腺がんの一次組織試料、ならびに正常な対応する組織をUMass Memorial Cancer Center Tissue Bankから匿名で得た。Dohi et al., J Clin Invest 2004;114:1117-27に記載のように、IgGまたはHsp60に対する抗体(1:1000)を使用して、免疫組織化学的検査用に組織切片を加工した。対照実験では、IgGは正常上皮または腫瘍上皮を染色しなかった。
【0246】
Hsp60細胞保護が選択的に腫瘍細胞において作用したか否かを決定するために、Hsp60発現を正常細胞および腫瘍細胞タイプにおいて標的化し、細胞生存率を分析した。Beltrami et al., J Biol Chem 2004; 279:2077-84に記載のように、オリゴフェクタミン(3μl/ウェル)を使用する非標的化(VIII)またはHsp60指向性二本鎖(ds)RNAオリゴヌクレオチドの形質移入によって、低分子干渉RNA(siRNA)による遺伝子サイレンシングを行った。あるいは、オリゴフェクタミンによって、Hsp60に対する対照またはSMARTプールsiRNAオリゴヌクレオチド(Dharmacon)を細胞に形質移入した。二重形質移入実験では、細胞に対照またはHsp60指向性siRNAを2回添加し、各形質移入の間に48時間の間隔を空けた。
【0247】
74INT正常ヒト上皮細胞またはWS-1一次ヒト線維芽細胞にHsp60指向性siRNAを形質移入することでHsp60発現の抑制が生じた一方、非標的化siRNAは効果がなかった。腫瘍細胞株で得た結果とは矛盾して、正常細胞におけるHsp60の鋭いsiRNA切断によって、細胞生存率の損失、または、非標的化siRNAを形質移入した対照培養液と比べて増加したカスパーゼ活性が生じなかった(図13C)。
【0248】
したがって、Hsp60(サバイビンに結合、データは示さず)は、インビボで腫瘍において異なって利用される広範な抗アポトーシスプログラムに寄与するものであり、したがって、正常細胞を保存しながら腫瘍細胞を優先的に死滅させるために標的化することができる。
【0249】
実施例10
ガミトリニブはミトコンドリアの完全性を効率的に破壊する
ガミトリニブ(GAミトコンドリアマトリックス阻害剤)は、ミトコンドリアにおいて区画化されるHsp90シャペロンの小分子アンタゴニストの第1のクラスである。ガミトリニブの構造は、組み合わせ的であり、Hsp90阻害剤から誘導されるベンゾキノンアンサマイシン骨格と、17-アリルアミノゲルダナマイシン(17-AAG)(Isaacs et al., Cancer Cell, 3:213-217 (2003))と、C17位のリンカー領域と、環状グアニジウムの1〜4個のタンデムリピート(Fernandez-Carneado et al., J Am Chem Soc, 127:869-874 (2005))(ガミトリニブG1〜G4)またはトリフェニルホスホニウム(Armstrong, Br J Pharmacol, 151:1154-1165 (2007))(ガミトリニブ-TPP)のいずれかにより与えられるミトコンドリア標的化部分とを含有する(図15A)。ガミトリニブの17-AAG部分がHsp90 ATPアーゼポケットと接触すると予測される一方、グアニジウムモジュールは結合界面から排除され、ATPアーゼポケットの外側で溶媒の方を向く。予測されるドッキング構造では、Hsp90に対するガミトリニブの結合配置はゲルダナマイシン(GA)のそれに密接に従っており(Stebbins et al., Cell, 89:239-250 (1997))、17-AAG領域の重原子の二乗平均偏差は0.5Åである。
【0250】
ガミトリニブ-G4は、精製クライアントタンパク質再構成アッセイにおいて、腫瘍細胞可溶化液でのHsp90に対する結合に関してGA親和性ビーズと効率的に競合し、Hsp90シャペロン活性を阻害した(図15B)(Arlander et al., J. Biol. Chem., 281:2989-2998 (2006))。ガミトリニブ-G4が単離した腫瘍ミトコンドリアにおいて選択的に蓄積された一方、非標的化17-AAGのミトコンドリアにおける浸透または蓄積は生じなかった(図15C)(Kang et al., Cell, 131:257-270 (2007))。
【0251】
ガミトリニブはミトコンドリアの完全性を破壊した。単離した腫瘍ミトコンドリアに加えた際に、ガミトリニブはいずれも同等の効率で内膜電位の突然の損失を生じた(図16A)。対照的に、非標的化Hsp90アンタゴニストであるGA、17-AAGまたは17-(ジメチルアミノエチルアミノ)-17-デメトキシゲルダナマイシン(DMAG)は、ミトコンドリア膜電位に影響を与えなかった(図16A)。ガミトリニブ(G4またはTPP)は腫瘍ミトコンドリアを速やかに脱分極し、この反応はCypD阻害剤であるシクロスポリンA(CsA)によって阻害された(図16B)。対照的に、単離したミトコンドリア浸透性部分、例えばTG-OHまたはTPP-OHと混合した17-AAGまたはGAは、CsAの有無にかかわらずミトコンドリア膜電位に効果を有さなかった(図16B)。すべてのガミトリニブがミトコンドリアチトクロムcの急速な(20分)流出も誘発した一方、17-AAGは無効であった(図16C)。
【0252】
いくつかの最近開発されたプリン系およびイソオキサゾールレゾルシノール系Hsp90アンタゴニスト(図19)を、ミトコンドリアの完全性の変化について試験した。ガミトリニブ-G4は、ミトコンドリアからのチトクロムcの突然かつ完全な流出を誘発した(図16D)。対照的に、17-AAG、17-AAGのヒドロキノン誘導体(IPI-504)、プリン類似体(BIIB021)またはイソオキサゾール(NVP-AUY922)のHsp90阻害剤は、チトクロムc放出に対して効果を有さなかった(図16D)。
【0253】
ミトコンドリア脱分極およびチトクロムcの放出は、典型的には細胞死を生じさせるミトコンドリア透過性転移の顕著な特徴である(Green et al., Science 305:626-629 (2004))。この予測と一致して、ガミトリニブ-G3またはガミトリニブ-G4へ肺腺がんH460細胞を3時間曝露することは、細胞生存率の濃度依存的(IC50約0.5μM)かつ完全な損失を生じさせるために十分であった(図17A左側)。この時間枠内で、ガミトリニブ-G1または17-AAGは効果を有さず、ガミトリニブ-G2またはガミトリニブ-TPPは中間的な活性を有していた。このことは細胞内蓄積の異なる効率を反映している(図17A左側)。24時間以内に、すべてのガミトリニブが同等に腫瘍細胞集団全体を死滅させた一方、17-AAGは細胞生存率または細胞増殖の部分的な減少を生じさせた(図17A右側)。
【0254】
現行のHsp90阻害剤は、大部分の腫瘍細胞タイプにおける細胞周期停止、それに続く48〜72時間以内の様々な程度のアポトーシスを主に引き起こす。非ミトコンドリア標的化Hsp90阻害剤と比べたガミトリニブの抗がん活性の潜在的な機構的差異を探るために、乳腺がんSKBr3細胞(Hsp90阻害に対する感受性が高いモデル細胞タイプ)を使用した。ガミトリニブ(G4もしくはTPP)または17-AAGでのSKBr3細胞の処理は、48時間以内におよび96時間の間隔全体を通じて代謝活性を同等に減少させた(図17B)。しかし、17-AAGで処理した大部分のSKBr3細胞が72時間後も依然として生存していた一方、ガミトリニブは細胞毒性であり、24時間以内にほぼ完全な腫瘍細胞死滅を引き起こした(図17C)。この細胞死応答は、ミトコンドリアのアポトーシスを示す、ミトコンドリア内膜電位の損失およびカスパーゼ活性によって特徴づけられた(図17D)。ガミトリニブ(G4)は、その細胞毒性特性と一致して、軟寒天における足場非依存性の腫瘍成長を抑制し(図17E)、異質な腫瘍細胞タイプ(ヒト腫瘍細胞タイプ、慢性骨髄性白血病細胞、Bリンパ芽球腫白血病細胞、乳腺がん細胞、肺腺がん細胞、前立腺腺がん細胞、神経膠芽腫細胞、結腸腺がん細胞および子宮頸がん細胞を例えば含む)のパネルに対して細胞毒性効果を有していた。ガミトリニブの細胞毒性効果は、p53の状態と、生存因子、例えばBcl-2の発現とに対して非依存性であった(図17F)。siRNAによるCypDの鋭いサイレンシング(Green et alScience, 305:626-629 (2004))は、ガミトリニブが媒介する腫瘍細胞死滅を部分的に減弱させた(図17G)。このことは、この経路における透過性転移孔の役割を確認する。
【0255】
ガミトリニブがHsp90シャペロンのミトコンドリアプールに特異的であるか否かを決定するために、子宮頸がんHeLa細胞を17-AAGで処理したところ、クライアントタンパク質であるChk1およびAktの不安定化(Isaacs et al., Cancer Cell, 3:213-217 (2003))ならびにシャペロンHsp70の発現増加(Beere et al., Nat Cell Biol, 2:469-475 (2000))が生じた。Chk1およびAktのレベルの低下ならびにHsp70のレベルの増加は、サイトゾルHsp90の阻害と一致している(図17H)。対照的に、ガミトリニブはChk1、AktおよびHsp70のレベルに対して検出不能な効果を有していた。このことはそれがサイトゾルHsp90に対して最小限の効果を有することを示唆している(図17H)。
【0256】
実施例11
ガミトリニブは異種移植腫瘍モデルにおいて有効である
ガミトリニブの有効性および毒性を異種移植腫瘍モデルにおいて評価した。
【0257】
この実施例で使用するモデルを作り出すために、滅菌PBS(200μl)に懸濁したHL60(10×106個)またはH460(4×106個)細胞を、10週齢CB17 SCID/ベージュ(Taconic Farms)易感染性雌マウスの両側腹部に皮下注射した。あるいは、50%マトリゲル(BD Biosciences)200μlに懸濁したMDA-MB-231細胞(5×106個)を、CB17 SCID/ベージュマウスにおける皮下注射に使用した。表在性腫瘍が100〜150mm3の体積に達した時点で、動物を2つの群(腫瘍2個/マウス、動物3匹/群)にランダム化し、媒体(DMSO)、またはPBS中20% Cremophor EL(Sigma)に溶解したガミトリニブで腹腔内(i.p.)注射によって処理した。ガミトリニブ-G4を滅菌腹腔内注射液として以下のスケジュールで使用した: HL60異種移植片、2mg/Kgを1日2回; H460異種移植片、0日目に2mg/kgを1日2回、1日目に2.5mg/kgを1日2回、処理期間中に3.0mg/kgを1日2回; MDA-MB-231異種移植片、0〜2日目に2mg/Kgを1日2回、3〜5日目に2.5mg/Kgを1日2回、残りの処理全体を通じて3mg/Kgを1日2回。17-AAGを20% Cremophor ELに溶解させ、H460異種移植片試験におけるガミトリニブ-G4と同一の用量増大レジメンと共に全身腹腔内注射液として使用した。ガミトリニブ-G1を以下のスケジュールで使用した: 1日30mg/Kg(0〜2日目)、残りの処理で1日50mg/Kg。実験期間全体にわたって、ガミトリニブ-TPPを腹腔内注射液として1日10mg/Kgで使用した。腫瘍測定値を毎日ノギスで取得し、腫瘍細胞を式([ミリメートル単位の長さ] × [ミリメートル単位の幅]2)/2によって計算した。各種処理群のマウスの体重を各実験の最初および最後に測定した。
【0258】
インビボでの細胞内分画を以下のように行った。媒体またはガミトリニブで処理したマウスからのHL60異種移植腫瘍を、300〜400mm3の体積に達した時点で収集し、サイトゾル画分をミトコンドリア単離キット(SIGMA)を使用して調製した。サイトゾル中に放出されたチトクロムcをウエスタンブロッティングで分析した。
【0259】
インサイチューでのヌクレオソーム間DNA断片化(TUNEL)を以下のように行った。処理の終わりに、腫瘍を媒体またはガミトリニブで処理した動物から収集し、ホルマリンに固定し、パラフィンに包埋し、切片にした。既に記載(Dohi et al., Mol Cell, 27:17-28 (2007))の説明書マニュアルに従って、ApopTag Plusペルオキシダーゼインサイチューアポトーシス検出キット(Chemicon)によって、TUNEL染色を行った。オンライン電荷結合素子カメラを有するOlympus顕微鏡を使用して400×の倍率で画像を捕捉した(壊死領域は分析から除外した)。定量化のために、TUNEL陽性細胞を400×倍率視野の10個の独立した領域内で計数した(10視野/各群)。
【0260】
組織学的検査を以下のように行った。媒体群またはガミトリニブ群の動物を実験の終わりに安楽死させ、脳、結腸、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、小腸、脾臓および胃を含む器官を、回収し、ホルマリンに固定し、パラフィンに包埋した。切片(5μm)を高粘着性スライド上に載せ、ヘマトキシリンエオシンで染色し、光学顕微鏡法で分析した。
【0261】
データをGraphPadソフトウェアプログラム(Prism 4.0)上で独立t検定を使用して分析した。すべての統計検定は両側性であった。0.05のp値を統計上有意であると考えた。
【0262】
マウスに対するガミトリニブ-G4の全身投与はインビボで株化ヒト白血病(図20A)、乳腺腫瘍(図20B)および肺腫瘍(図18A)の増殖を阻害した。同等の用量の17-AAGはマウスにおけるヒト肺がんの成長に効果を有さなかった(図18A上側)。異なるミトコンドリア指向性部分(モノ-グアニジウム(G1)またはトリフェニルホスホニウム(TPP))を保有するガミトリニブも、インビボで肺がんの成長を示した(図18A下側)。ガミトリニブで処理した動物から収集した肺腫瘍は、インサイチューで広範囲のアポトーシスを示した(図18B)。さらに、ガミトリニブで処理した動物から収集した肺腫瘍はサイトゾルのチトクロムcを示した(図18C)。このことは、ガミトリニブがインビボでミトコンドリアの機能障害を誘発したことを示唆している。さらに、ガミトリニブが最小限の副作用を有し得たことを結果は示唆している。使用濃度で、ガミトリニブは処理過程にわたって動物対象において有意な体重減少を引き起こさず(図18D)、ガミトリニブで処理した動物から回収した器官は、ガミトリニブで処理しなかった動物からの組織に比べて組織学的に正常であった。ミトコンドリア機能障害のガミトリニブによる誘発が正常細胞ではなく腫瘍細胞に選択的であるか否かを決定するために、ガミトリニブを使用して腫瘍細胞および正常細胞を処理した。有効濃度のガミトリニブは正常ヒト線維芽細胞のミトコンドリア膜電位(CsAの存在下または非存在下での(図18E))に影響を与えなかった。ガミトリニブは正常ヒト線維芽細胞のチトクロムc含有量(図18F)にも影響を与えなかった。完全な腫瘍細胞死滅を誘発する濃度のガミトリニブは、正常なヒト細胞タイプの生存率を低下させなかった(図18G)。
【0263】
これらの結果は、ガミトリニブが選択的で、有効かつ安全であることを示している。
【0264】
実施例12
ミトコンドリア指向性シャペロン阻害剤を同定するための計算的方法
すべてのドッキング計算に使用したHsp90の結晶構造は、pdbコード1YET.pdbに対応する座標を有するタンパク質データバンクから取得した(Stebbins et al., Cell, 89:239-250 (1997))。本来のX線構造はリガンドであるゲルダナマイシン(GA)を含んでおり、GAを活性部位から除去することでHsp90のアポ-オープン形態が得られた。ガミトリニブをHsp90の活性部位に、異なるドッキング手順、異なる計算的アプローチプログラム、およびエネルギー関数を使用してドッキングすることで、ガミトリニブ-Hsp90複合体の最小自由エネルギーを代表する共通構造を規定した。第一に、ガミトリニブの構造を、水溶媒の影響を考慮に入れて、Macromodelプログラム(Mohamadi et al., J. Comp. Chem., 11:440-467 (1990))、AMBER力場(Duan et al., J. Comp. Chem., 24:1999-2012 (2003))およびGB/SAアプローチ(Rami Reddy et al., J. Comp. Chem., 19:769-780 (1998))を使用して最小化した。
【0265】
ドッキング計算の第1のセットでは、プログラムAutoDockを使用する推定上のN-末端Hsp90受容体に関する盲検的ドッキング実験に、ガミトリニブのエネルギー最小化構造を供した(Morris et al., J. Comp. Chem. 19:1639-1662 (1998))。質量中心グリッドマップを、Hsp90のATPアーゼポケットの周りで、プログラムAutogridによって0.35Åのスペーシングで生み出した。レナード-ジョーンズパラメータ12-10および12-6(プログラムパッケージにおけるデフォルトパラメータ)を、モデリングH-結合およびファンデルワールス相互作用にそれぞれ使用した。MehlerおよびSolmajerの距離依存性誘電体誘電率(Mehler and Solmajer, Protein Eng, 4:903-910 (1991))を静電グリッドマップの計算に使用した。ラマルクの遺伝的アルゴリズム(LGA)ならびに疑似SolisおよびWest法を、デフォルトパラメータを使用する最小化に適用した。生成数を全ランにおいて2500万に設定し、したがって停止基準をエネルギー評価の総数によって規定した。グリッド上のランダム開始位置、ランダム配向、およびねじれ(可動性リガンドのみ)をリガンドに使用した。合計310回のランを行った。ドッキングランの終わりに、リガンドの高次構造をエネルギー増加順に列挙した。続いて、最小エネルギーでのリガンド高次構造を基準として使用し、基準から見て質量中心から質量中心までの距離が1.5Å未満であるすべての高次構造を第1のクラスターに属するものとした。ある高次構造があるクラスターに割り当てられた時点で、他の(エネルギー的により好ましくない)クラスターとしてはそれを再度使用しなかった。次に、すべての高次構造をあるクラスターに入れるまで、このプロセスをすべての今までに未分類の高次構造について繰り返した。大部分のドッキングされた構造は、複合体のグローバルミニマムの構造によって原型的に表される共通の高次構造上の特徴を共有していた。Autodockランから得た最小自由エネルギー構造の17-AAG領域は、0.56Åの全重原子の二乗平均偏差(rmsd)を有するGAのベンゾキノンアンサマイシン骨格と十分に重なる。
【0266】
ドッキング計算の第2のセットでは、Glideソフトウェアを使用してガミトリニブの最小化構造をHsp90受容体上にドッキングした(Friesner et al., J. Med. Chem., 47:1739-1749 (2004); and Halgren et al., J. Med. Chem., 47:1750-1759 (2004))。各辺の長さが14Åの立方文字枠をATPアーゼ結合ポケットの周りのリガンド用に構築した。完全な可動性がリガンドについて可能になり、Glide標準精度(SP)モードを使用してドッキングポーズをスコアリングした。この手順から得たベストドッキングポーズのガミトリニブの17-AAG領域は、X線構造(Stebbins et al., Cell, 89:239-250 (1997))および以前のドッキング計算(0.51Åのrmsd)でのGAのベンゾキノンアンサマイシン骨格に再度重なる。
【0267】
最後に、可動性リガンドの異なる高次構造が異なる複合体形状を決定し得るという可能性を評価するために、ガミトリニブを、GB/SA法を通じて、水が暗に示されている溶液中の単離における予備的高次構造分析に供した。ガミトリニブの高次構造空間を調査するために、Monte Carlo Multiple Minimum法の10000段階(Chang et al., J. Am. Chem. Soc., 111:4379-4386 (1989))、およびMacromodelにおいて実行されるAMBER力場を使用して、ねじれに基づく高次構造の探索を行った。4223個の独自の高次構造を同定し、リガンド用に保存した。次に、この計算から得たすべての高次構造を、単純Glideドッキングアプローチに記載のものと同一の手順を使用するHsp90受容体についてのドッキング計算用のリガンドとして使用した。高次構造の各々を異なるスコアで受容体にドッキングした。重要なことに、上位226のポーズは、その17-AAG領域において、0.6Åの平均rmsdを有するGAのベンゾキノンアンサマイシン骨格と再度完全に重複する。
【0268】
実施例13
(4E,6Z,8S,9S,10E,12S,13R,14S,16R)-19-(3-(4-(3-(((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)ブタンアミド)プロピルアミノ)-13-ヒドロキシ-8,14-ジメトキシ-4,10,12,16-テトラメチル-3,20,22-トリオキソ-2-アザビシクロ[16.3.1]ドコサ-1(21),4,6,10,18-ペンタン-9-イルカルバメート,テトラキスヘキサフルオロリン酸塩(ガミトリニブ-G4、1)の合成

【0269】
工程1
((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルメタンスルホネート,テトラキスヘキサフルオロリン酸塩4:
アルコール3(Fernandez-Carneado et al., J. Am. Chem. Soc., 127:869-874 (2005)に記載のように合成、445mg、0.276mmol)のアセトニトリル(5mL)溶液を、N-メチルモルホリン(0.30mL、2.76mmol)および無水メタンスルホン酸(240mg、1.38mmol)によって、N2下室温で処理した。室温で5時間攪拌後、揮発性物質の大部分を減圧除去した。残渣をジクロロメタン(30mL)で希釈し、0.1M NH4PF6水溶液(20mL)で洗浄した。水相をさらなるジクロロメタン(30mL)で再抽出した。一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中2〜5% MeOH)での精製によって4をテトラヘキサフルオロリン酸塩(452mg、97%、淡褐色泡状物)として得た。

【0270】
工程2
S-((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルエタンチオエート,テトラキスヘキサフルオロリン酸塩5:
メシル酸塩4(452mg、0.267mmol)およびチオ酢酸カリウム(153mg、1.34mmol)のテトラヒドロフラン(THF、8mL)/H2O(3mL)溶液を16時間還流させた。室温に冷却後、反応混合物をジクロロメタン(30mL)で希釈し、0.1M NH4PF6水溶液(20mL)で洗浄した。水相をさらなるジクロロメタン(30mL)で再抽出した。一緒にした有機相を0.1M NH4PF6水溶液(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。ジエチルエーテル-ヘキサン(1:1)からの粉砕によって、5をテトラヘキサフルオロリン酸塩(420mg、94%、淡褐色固体)として得た。

【0271】
工程3
(4E,6Z,8S,9S,10E,12S,13R,14S,16R)-19-(3-(4-(3-(((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)ブタンアミド)プロピルアミノ)-13-ヒドロキシ-8,14-ジメトキシ-4,10,12,16-テトラメチル-3,20,22-トリオキソ-2-アザビシクロ[16.3.1]ドコサ-1(21),4,6,10,18-ペンタン-9-イルカルバメート,テトラキスヘキサフルオロリン酸塩1:
5(118mg、0.071mmol)の脱気MeOH(4mL)溶液をN2下室温でカリウムtert-ブトキシド(0.21mL、0.21mmol、THF中1M)で処理した。30分後、反応混合物を1N HCl水溶液(約0.1mL)で中和し、0.1Nリン酸緩衝液(pH6、3mL)で処理した。緩衝溶液にN2下室温でゲルダナマイシン-マレイミド2(Mandler, et al. Bioconjug. Chem. 13:786-791 (2002)に記載のように合成、65mg、0.085mmol)の脱気MeOH(2mL)溶液を加えた。2時間後、反応液を約3mLに濃縮した。得られた反応混合物をジクロロメタン(20mL)で希釈し、0.1M NH4PF6水溶液(30mL)で洗浄した。水相をジクロロメタン(20mL)で再抽出した。一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。分取HPLC(水中5〜50%アセトニトリル、0.1% TFA)による分離、それに続く濃縮によって1をトリフルオロ酢酸塩(TFA)として得た。TFA塩をジクロロメタン(3mL)に溶解させ、0.1M NH4PF6水溶液(2mL×5)で連続的に洗浄した。濃縮、それに続くジエチルエーテル-ヘキサン(1:1)からの粉砕によって、1をテトラヘキサフルオロリン酸塩(88mg、52%、紫色固体)として得た。HPLCによる254nmでの1の純度は99%を超えた。HRMSで測定した1の分子質量([M+3H]3+, m/z 604.9698)は理論上の質量(m/z 604.9736)と一致していた。

【0272】
実施例14
(4E,6Z,8S,9S,10E,12S,13R,14S,16R)-19-(3-(4-(3-(((2R,8R)-8-((tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)ブタンアミド)プロピルアミノ)-13-ヒドロキシ-8,14-ジメトキシ-4,10,12,16-テトラメチル-3,20,22-トリオキソ-2-アザビシクロ[16.3.1]ドコサ-1(21),4,6,10,18-ペンタン-9-イルカルバメート,ヘキサフルオロリン酸塩(ガミトリニブ-G1、I)の合成

【0273】
工程1
S-((2R,8R)-8-((tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルエタンチオエートヘキサフルオロリン酸塩I-2:
I-1(Fernandez-Carneado et al., J. Am. Chem. Soc., 127:869-874 (2005)に記載のように合成、2.30g、3.48mmol)およびチオ酢酸カリウム(794mg、6.95mmol)のTHF(40mL)/H2O(16mL)中攪拌溶液を16時間還流させた。室温に冷却後、反応混合物をジクロロメタン(100mL)で希釈し、0.1M NH4PF6水溶液(50mL)で洗浄した。水相をさらなるジクロロメタン(50mL)で再抽出した。一緒にした有機相を0.1M NH4PF6水溶液(30mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(25%ヘキサン/酢酸エチルから100%酢酸エチル)による精製および濃縮によって、I-2をヘキサフルオロリン酸塩(2.12g、95%、淡黄色固体)として得た。

【0274】
工程2
(4E,6Z,8S,9S,10E,12S,13R,14S,16R)-19-(3-(4-(3-(((2R,8R)-8-((tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)ブタンアミド)プロピルアミノ)-13-ヒドロキシ-8,14-ジメトキシ-4,10,12,16-テトラメチル-3,20,22-トリオキソ-2-アザビシクロ[16.3.1]ドコサ-1(21),4,6,10,18-ペンタン-9-イルカルバメート,ヘキサフルオロリン酸塩I:
I-2(100mg、0.156mmol)の脱気MeOH(3mL)溶液にN2下室温でカリウムtert-ブトキシド(0.47mL、0.47mmol、THF中1M)を加えた。30分後、反応混合物を1N HCl水溶液(約0.5mL)で中和し、0.1Nリン酸緩衝液(pH = 6、2mL)で処理した。緩衝溶液にN2下室温でゲルダナマイシン-マレイミド2(144mg、0.188mmol)の脱気MeOH(1mL)溶液を加えた。2時間後、反応液を約2mLに濃縮した。得られた反応混合物をジクロロメタン(30mL)で希釈し、0.1M NH4PF6水溶液(30mL)で洗浄した。水相をジクロロメタン(30mL)で再抽出した。一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。分取HPLC(水中5〜50%アセトニトリル、0.1% TFA)による精製および濃縮によって、IをTFA塩として得た。得られたTFA塩をジクロロメタン(3mL)に溶解させ、0.1M NH4PF6水溶液(2mL×5)で洗浄した。濃縮、それに続くジエチルエーテルからの粉砕によって、Iをヘキサフルオロリン酸塩(107mg、50%、紫色固体)として得た。HPLCによる254nmでのIの純度は98%を超えた。HRMSで測定したIの分子質量([M+H]+, 1221.6073)は理論上の質量(m/z 1221.6090)と一致していた。

【0275】
実施例15
(4E,6Z,8S,9S,10E,12S,13R,14S,16R)-19-(3-(4-(3-(((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)ブタンアミド)プロピルアミノ)-13-ヒドロキシ-8,14-ジメトキシ-4,10,12,16-テトラメチル-3,20,22-トリオキソ-2-アザビシクロ[16.3.1]ドコサ-1(21),4,6,10,18-ペンタン-9-イルカルバメート,ビスヘキサフルオロリン酸塩(ガミトリニブ-G2、II)の合成

【0276】
工程1
S-((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルエタンチオエート,ビスヘキサフルオロリン酸塩II-2:
II-1(Fernandez-Carneado et al., J. Am. Chem. Soc., 127:869-874 (2005)に記載のように合成、1.71g、1.70mmol)およびチオ酢酸カリウム(583mg、5.10mmol)のTHF(20mL)/H2O(8mL)中攪拌溶液を16時間還流させた。室温に冷却後、反応混合物をジクロロメタン(100mL)で希釈し、0.1M NH4PF6水溶液(50mL)で洗浄した。水相をさらなるジクロロメタン(50mL)で再抽出した。一緒にした有機相を0.1M NH4PF6水溶液(50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(100%酢酸エチル→ジクロロメタン中5% MeOH)による精製および濃縮によって、II-2をジヘキサフルオロリン酸塩(1.45g、87%、淡褐色固体)として得た。

【0277】
工程2
(4E,6Z,8S,9S,10E,12S,13R,14S,16R)-19-(3-(4-(3-(((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)ブタンアミド)プロピルアミノ)-13-ヒドロキシ-8,14-ジメトキシ-4,10,12,16-テトラメチル-3,20,22-トリオキソ-2-アザビシクロ[16.3.1]ドコサ-1(21),4,6,10,18-ペンタン-9-イルカルバメート,ビスヘキサフルオロリン酸塩II:
II-2(110mg、0.112mmol)の脱気MeOH(4mL)溶液にN2下室温でカリウムtert-ブトキシド(0.34mL、0.34mmol、THF中1M)を加えた。30分後、反応混合物を1N HCl水溶液(約0.3mL)で中和し、0.1Nリン酸緩衝液(pH6、0.5mL)で処理した。緩衝溶液にN2下室温でゲルダナマイシン-マレイミド2(94mg、0.122mmol)の脱気MeOH(2mL)溶液を加えた。2時間後、反応液を約2mLに濃縮した。得られた反応混合物をジクロロメタン(30mL)で希釈し、0.1M NH4PF6水溶液(30mL)で洗浄した。水相をジクロロメタン(30mL)で再抽出した。一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。分取HPLC(水中5〜50%アセトニトリル、0.1% TFA)による精製および濃縮によって、IIをTFA塩として得た。得られたTFA塩をジクロロメタン(3mL)に溶解させ、0.1M NH4PF6水溶液(2mL×5)で洗浄した。濃縮、それに続くジエチルエーテルからの粉砕によって、IIをジヘキサフルオロリン酸塩(55mg、29%、紫色固体)として得た。HPLCによる254nmでのIIの純度は99%を超えた。HRMSで測定したIIの分子質量([M+2H]2+, m/z 709.8534)は理論上の質量(m/z 709.8577)と一致していた。

【0278】
実施例16
(4E,6Z,8S,9S,10E,12S,13R,14S,16R)-19-(3-(4-(3-(((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)ブタンアミド)プロピルアミノ)-13-ヒドロキシ-8,14-ジメトキシ-4,10,12,16-テトラメチル-3,20,22-トリオキソ-2-アザビシクロ[16.3.1]ドコサ-1(21),4,6,10,18-ペンタン-9-イルカルバメート,トリスヘキサフルオロリン酸塩(ガミトリニブ-G3、III)の合成

【0279】
工程1
((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メタノール,トリスヘキサフルオロリン酸塩III-1:
メシル酸塩I-1(545mg、0.82mmol)およびチオ酢酸カリウム(188mg、1.65mmol)のTHF(10mL)/H2O(4mL)中攪拌溶液を16時間還流させた。メタンスルホン酸(0.27mL、4.12mmol)を加え、反応混合物を24時間還流させた。室温に冷却後、有機相および水相をジエチルエーテル(50mL)および水(50mL)中で分離した。水相をさらなる水(20mL)で再抽出した。一緒にした水相をジエチルエーテルで洗浄した。次に、水相を炭酸水素カリウム(495mg、4.94mmol)で中和し、溶媒を蒸発乾固させた。この得られた固体にMeOH(100mL)を加え、析出物を濾去した。この手順をMeOH/CH2Cl2系(MeOH/CH2Cl2 = 50/50→5/95)によって2回繰り返した。濃縮によって粗黄色泡状物を得た。この生成物のMeOH(10mL)溶液に炭酸セシウム(322mg、0.99mmol)およびトリブチルホスフィン(0.12mL、0.49mmol)を室温で加えた。40分攪拌後、メシル酸塩II-1(697mg、0.69mmol)のTHF(10mL)溶液を加え、反応混合物を室温で16時間攪拌した。次に、揮発性物質の大部分を減圧除去した。残渣をジクロロメタン(50mL)で希釈し、0.1M NH4PF6水溶液(30mL)で洗浄した。水相をさらなるジクロロメタン(30mL)で再抽出した。一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(MeOH/CH2Cl2: 2%から5%)での精製によってIII-1(560mg、64%、白色固体)をトリヘキサフルオロリン酸塩として得た。

【0280】
工程2
((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メタンチオール,トリスヘキサフルオロリン酸塩III-2:
アルコールIII-1(433mg、0.34mmol)のTHF(5mL)溶液を、N2下室温でN-メチルモルホリン(0.19mL、1.70mmol)および無水メタンスルホン酸(178mg、1.02mmol)によって処理した。室温で2時間攪拌後、反応混合物をジクロロメタン(30mL)で希釈し、0.1M NH4PF6水溶液(20mL)で洗浄した。水相をさらなるジクロロメタン(30mL)で再抽出した。一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(MeOH/CH2Cl2: 2%から5%)での精製によってIII-2をトリヘキサフルオロリン酸塩(359mg、78%、淡褐色泡状物)として得た。

【0281】
工程3
S-((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルエタンチオエート,トリスヘキサフルオロリン酸塩III-3:
メシル酸塩III-2(359mg、0.27mmol)およびチオ酢酸カリウム(97mg、0.85mmol)のTHF(8mL)/H2O(3mL)中攪拌溶液を16時間還流させた。室温に冷却後、反応混合物をジクロロメタン(50mL)で希釈し、0.1M NH4PF6水溶液(30mL)で洗浄した。水相をさらなるジクロロメタン(30mL)で再抽出した。一緒にした有機相を0.1M NH4PF6水溶液(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。ジエチルエーテル-ヘキサン(1:1)からの粉砕によって、III-3をトリヘキサフルオロリン酸塩(294mg、83%、黄色固体)として得た。

【0282】
工程4
(4E,6Z,8S,9S,10E,12S,13R,14S,16R)-19-(3-(4-(3-(((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((((2R,8R)-8-((tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)メチル)-2,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルチオ)-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)ブタンアミド)プロピルアミノ)-13-ヒドロキシ-8,14-ジメトキシ-4,10,12,16-テトラメチル-3,20,22-トリオキソ-2-アザビシクロ[16.3.1]ドコサ-1(21),4,6,10,18-ペンタン-9-イルカルバメート,トリスヘキサフルオロリン酸塩III:
III-1(209mg、0.157mmol)の脱気MeOH(4mL)溶液にN2下室温でカリウムtert-ブトキシド(0.47mL、0.47mmol、THF中1M)を加えた。30分後、反応混合物を1N HCl水溶液(約0.1mL)で中和し、0.1Nリン酸緩衝液(pH6、3mL)で処理した。緩衝溶液にN2下室温でゲルダナマイシン-マレイミド2(133 mg、0.173 mmol)の脱気MeOH(2mL)溶液を加えた。2時間後、反応液を約3mLに濃縮した。得られた反応混合物をジクロロメタン(20mL)で希釈し、0.1M NH4PF6水溶液(30mL)で洗浄した。水相をジクロロメタン(20mL)で再抽出した。一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。分取HPLC(水中5〜50%アセトニトリル、0.1% TFA)による精製および濃縮によって、IIIをTFA塩として得た。得られたTFA塩をジクロロメタン(3mL)に溶解させ、0.1M NH4PF6水溶液(2mL×5)で洗浄した。濃縮、それに続くジエチルエーテル-ヘキサン(1:1)からの粉砕によって、IIIをトリヘキサフルオロリン酸塩(110mg、34%、紫色固体)として得た。HPLCによる254nmでのIIIの純度は96%を超えた。HRMSで測定したIIIの分子質量([M+3H]3+, m/z 539.2695)は理論上の質量(m/z 539.2740)と一致していた。

【0283】
実施例17
(4E,6Z,8S,9S,10E,12S,13R,14S,16R)-19-(6-(トリフェニルホスホニオ)ヘキシルアミノ)-13-ヒドロキシ-8,14-ジメトキシ-4,10,12,16-テトラメチル-3,20,22-トリオキソ-2-アザビシクロ[16.3.1]ドコサ-1(21),4,6,10,18-ペンタン-9-イルカルバメートヘキサフルオロリン酸塩(ガミトリニブ-TPP、9)の合成

【0284】
工程1
tert-ブチル6-(トリフェニルホスホニウム)ヘキシルカルバメート臭化物塩7:
6(Egbertson, et al. J. Med. Chem., 37:2537-2551 (1994)に記載のように合成、1.60g、5.71mmol)のアセトニトリル(10mL)溶液にトリフェニルホスフィン(1.57g、5.99mmol)を加え、反応液を16時間還流させた。反応液を室温に冷却後、過剰のトリフェニルホスフィンをn-ヘキサン(100mL×3)での抽出により除去した。濃縮および減圧乾燥によってホスホニウム塩7(3.09g、99%、白色固体)を得た。

【0285】
工程2
6-(トリフェニルホスホニウム)ヘキサン-1-アミンクロリド塩酸塩8:
ホスホニウム塩7(1.5g、0.765mmol)のジクロロメタン(100mL)溶液を室温でHCl溶液(1,4-ジオキサン中4N、171mL)によって処理した。3時間攪拌後、反応液を濃縮した。減圧乾燥によってアミン8(1.31g、99%、白色固体)を得た。アミン8をさらに精製せずに使用した。

【0286】
工程3
(4E,6Z,8S,9S,10E,12S,13R,14S,16R)-19-(6-(トリフェニルホスホニオ)ヘキシルアミノ)-13-ヒドロキシ-8,14-ジメトキシ-4,10,12,16-テトラメチル-3,20,22-トリオキソ-2-アザビシクロ[16.3.1]ドコサ-1(21),4,6,10,18-ペンタン-9-イルカルバメートヘキサフルオロリン酸塩9:
ゲルダナマイシン(GA、150mg、0.27mmol)のクロロホルム(25mL)溶液にN2下室温でアミン8(390mg、0.81mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.47mL、2.70mmol)を加えた。3時間攪拌後、さらなるアミン8(390mg、0.81mmol)を加えた。10時間後、反応液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中2〜10%メタノール)で精製した。得られた塩をジクロロメタン(3mL)に溶解させ、0.1M NH4PF6水溶液(2mL×5)で洗浄した。濃縮、それに続くジエチルエーテルからの粉砕によって9をヘキサフルオロリン酸塩(173mg、62%、紫色固体)として得た。HPLCによる254nmでの9の純度は98%を超えた。HRMSで測定した9の分子質量(M+, m/z 890.4559)は理論上の質量(m/z 890.4509)と一致していた。

【0287】
実施例18
ミトコンドリア透過性GAの設計および化学合成
マレイミドGA誘導体である17-(3-(4-マレイミドブチルカルボキサミド)プロピルアミノ)-デメトキシゲルダナマイシン(17-GMB-APA-GA)をInvivogenから購入した。細胞透過性ヘリックスIIIアンテナペディアペプチド(ANT)を、アミノ末端FITC基を用いるかまたは用いずに、およびアミノ酸配列RQIKIWFQNRRMKWKKC(SEQ ID NO:40)を有するCOOH末端でのアミド(CONH2)封止Cys残基を用いて合成した。ANTのCOOH末端Cysのスルフヒドリル基を17-GMB-APA-GAのマレイミド基と反応させてチオエーテル結合を生み出した。抱合反応として、ANTおよび17-GMB-APA-GAをそれぞれ50mM Hepes(pH7.0)およびDMSOに最終濃度10mMで溶解させ、1:1のANT:17-GMB-APAGA比で穏やかに混合しながら22℃で1時間混合した。得られたANT-17-GMB-APA-GA共役体を質量分析で分析し、ミトコンドリア透過性転移および細胞生存率の分析に使用した。
【0288】
一般的方法
化学的特性決定
1H-NMRスペクトルをVarian Inova 400NB(400MHz)分光計またはVarian Inova 600(600MHz)分光計のいずれかの上で得た。質量スペクトルをHP1100シリーズLC/MS分光計上で記録した。反応の進行をTLCプレート(蛍光指示薬UV254付きのMacherey-Nagel 0.25mmシリカゲル60)上で確認し、TLCプレートをニンヒドリンまたはCe-Mo染色溶液に浸漬後、スポットを紫外光(254nm)および/またはチャーリング下で可視化した。カラムクロマトグラフィーをシリカゲル(Merck 9385シリカゲル60)上で行った。最終生成物を、YMC-Pack Pro C18RSカラム(YMC)を備えたHPLC(Watersアライアンス)で分析し、254nmで検出した。合成した化合物の化学的同一性を、高分解能質量分析(HRMS)によって、Waters Q-TOF Premier質量分析計を使用して、[Glu1]-フィブリノペプチドB(CAS 103213-49-6)からの[M+2H]2+イオンまたは単一荷電生成物イオンをロックマス基準物質として確認した。理論上の分子質量を、MassLynx(商標)ソフトウェア(Waters Corp.)を使用して計算し、測定質量と比較した。すべての測定質量は、理論値の測定誤差(5amu)の範囲内であり、予想される元素組成と一致している。すべての試薬および溶媒(アセトニトリル、メタノール、ジエチルエーテルおよびヘキサン)を試薬グレードとして購入し、さらに精製せずに使用した。テトラヒドロフランおよびジクロロメタンをそれぞれNa-ベンゾフェノンおよびCaH2から蒸留した。
【0289】
細胞株および抗体
子宮頸がんHeLa細胞、結腸直腸腺がんHCT116細胞、乳腺がんMCF-7およびMDA-MB-231細胞、肺腺がんH460およびH1975細胞、前立腺腺がんPC3およびDU145細胞、類表皮扁平上皮がんA431細胞、ならびにB-リンパ芽球腫Raji細胞、HL-60およびU937細胞をAmerican Tissue Culture Collection(ATCC、バージニア州Manassas)から取得し、供給者の仕様に従って培養液中に維持した。急性転化したヒト慢性骨髄性白血病のK562細胞、単球性白血病THP-1細胞、神経膠芽腫U87MG細胞、子宮頸がんHeLa細胞、結腸直腸腺がんHCT116細胞、乳腺がんMCF-7(ER陽性)およびMDA-MB-231(エストロゲン受容体陰性)細胞、肺腺がんH460およびH1975細胞、前立腺腺がんPC3およびDU145細胞、類表皮扁平上皮がんA431細胞、ならびにB-リンパ芽球腫Raji細胞、骨髄芽球性白血病HL-60およびU937細胞をAmerican Tissue Culture Collection(ATCC、バージニア州Manassas)から取得し、供給者の仕様に従って培養液中に維持した。正常ヒト細胞タイプHGF、包皮線維芽細胞HFF、上皮線維芽細胞WS-1および腸上皮INTもATCCから得た。ウシ大動脈内皮細胞およびヒト臍静脈内皮細胞を単離し、公刊されたプロトコール16に従って培養液中に維持した(Mesri et al., 「Suppression of vascular endothelial growth factor-mediated endothelial cell protection by Survivin targeting,」 Am. J. Pathol., 158:1757-1765 (2001))。Bert Vogelstein教授(ジョンズ・ホプキンス大学)のご厚意によりBax-/-およびp53-/- HCT116細胞の提供を受けた。以下の抗体を使用した: チトクロムc(Clontech)、Cox-IV(Clontech)、Hsp90(BD Biosciences)、TRAP-1(BD Biosciences)、シクロフィリンD(CypD、ペプチジルプロリルイソメラーゼF、ppif、Calbiochem)、Bcl-2(BD Biosciences)、Smac(ProSci)、mt-Hsp70(ABR)およびβ-アクチン(Sigma-Aldrich)。
【0290】
ペプチド、プラスミド、および組換えタンパク質発現
HPLCで精製した細胞透過性レトロ-インバーソシェファーディンペプチド模倣体(サバイビン配列Lys79-Leu87)およびそのスクランブル細胞透過性変異体を、Plescia et al., Cancer Cell, 7:457-468, (2005)に記載のように合成し、細胞生存率、チトクロムc放出およびミトコンドリア膜電位の分析に使用した。FITC共役天然Sheph、および細胞透過性Sheph-ANT、Scram、Scram-ANTもPlescia et al., 2005, 前掲論文に記載のように合成した。CypDのMammalian Gene Collection(MGC)完全長クローン(GenBankアクセッション番号BC030707)をInvitrogenから購入し、プライマー

または代替として

を使用してPCRによって増幅した。
【0291】
TRAP-1のMGC完全長クローン(GenBankアクセッション番号NM_004257(タンパク質はNP004248))をInvitrogenから購入し、形質移入実験に使用するこの完全長クローン、Ser60で開始するこのタンパク質の成熟型に対応する転写物を、フォワードプライマー

をそれぞれ使用し、かつ3'リバースプライマー

を使用して増幅した。PCR産物を、EcoRI/XhoI(CypD)またはBamHI/XhoI(TRAP-1)で消化し、pGEX-4T(Pharmacia)またはpcDNA3.0(Invitrogen)に、それぞれ原核細胞または真核細胞/インビトロ翻訳発現用に結合させた。pGEX-CypD、pGEX-TRAP-1またはpGEX-Hsp90 cDNAをBL21-CodonPlus-RIL大腸菌株(Stratagene)に形質転換した。
【0292】
マウスPiCの完全長クローン(溶質輸送体ファミリー25(ミトコンドリア輸送体、リン酸輸送体)、メンバー3(GenBankアクセッション番号AL360268(タンパク質はCAI13838))をInvitrogenから購入した。PiC cDNAをプライマー

によって増幅し、PCR産物をBamHI/XhoIで消化し、pcDNA3にサブクローニングしてpcDNA-PiCを作製した。組換えタンパク質を0.2mM IPTGによって30℃で5時間誘導し、Fortugno et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 100(24):13791-6, (2003)に記載のように細菌抽出物から精製した。
【0293】
ウシ血清アルブミン(BSA)を標準物質として用いるタンパク質アッセイ試薬(Bio-Rad)によって、タンパク質濃度を決定した。
【0294】
ミトコンドリア内分画
ミトコンドリア内分画を、以前に記載のリン酸膨潤-収縮にわずかな修正を加えて行った(Bijur and Jope, J. Neurochem., 87:1427-1435, (2003); Hovius et al., Biochim. Biophys. Acta, 1021:217-226, (1990))。手短に言えば、上記のようにショ糖ステップグラジエントによって単離した高精製ミトコンドリアペレットを、膨潤緩衝液(10mM KH2PO4(pH7.4)およびプロテアーゼ阻害剤)に懸濁させ、穏やかに混合しながら0℃で20分間インキュベートした。膨潤ミトコンドリアを等体積の収縮緩衝液(10mM KH2PO4(pH7.4)、32%ショ糖、30%グリセリン、10mM MgCl2およびプロテアーゼ阻害剤)と混合し、0℃でさらに20分間インキュベートした。10,000×gで10分間遠心分離後、外膜および内膜ミトコンドリア画分(OMおよびIMS)を含有するものとして上清を回収した。ペレットを、膨潤/収縮緩衝液の1:1混合物で3回洗浄し、膨潤緩衝液に懸濁させ、超音波処理して内膜を破壊し、その内膜を内膜およびマトリックスミトコンドリア画分(IMおよびMA)を含有するものとして回収した。150,000×g、4℃で1時間の遠心分離によって、OMおよびIMSならびにIMおよびMAをさらに分画した。ペレットを、それぞれOM画分およびIM画分として回収した。上清を、Centricon 10KおよびMicrocon 10K遠心分離フィルターデバイス(Millipore)によってさらに濃縮し、それぞれIMS画分およびMA画分として回収した。
【0295】
他の実験では、HeLa細胞またはマウス脳(2μg/μl、15μl)から単離したミトコンドリアを、SHE緩衝液(HE緩衝液中250mMショ糖)に懸濁して、SHE緩衝液またはHE緩衝液(10mM Hepes、1mM EDTA(pH7.2))135μl中で希釈し、0℃で15分間インキュベートし、繰り返しのピペッティングによってミトコンドリア外膜を機械的に破壊した。試料を50μg/mlプロテイナーゼK(Roche)と共にて0℃で10分間インキュベートし、1mM PMSFと混合し、10,000×gで10分間遠心分離し、ウエスタンブロッティングで分析した。あるいは、ジギトニン濃度を増加させながら(0〜0.4%)試料を処理してミトコンドリア膜に透過性を与え、ペレットから上清へのミトコンドリアタンパク質の再配分を、Dohi et al., J. Clin. Invest. 114(8):1117-27, (2004)に記載のようにウエスタンブロッティングで分析した。
【0296】
ミトコンドリアの単離および薬物の「ミトコンドリア指向性」
ミトコンドリアをHeLa細胞から既に記載のように(Kang et al., Cell, 131:257-270 (2007))単離した。簡潔に言えば、HeLa細胞を収集し、TD緩衝液(135mM NaCl、5mM KCl、25mM Tris(pH7.6))で洗浄した。細胞ペレットをCaRSB緩衝液(10mM NaCl、1.5mM CaCl2、10mM Tris(pH7.5)、プロテアーゼ阻害剤)に懸濁して、0℃で5分間インキュベートした。膨潤した細胞をDounce粉砕機中で均質化し、1.5体積のMS緩衝液(210mMマンニトール、70mMショ糖、5mM Tris(pH7.6)、5mM EDTA)と直ちに混合した。核および他の細胞デブリを600×gで15分間の遠心分離によって除去した。試料を、ミトコンドリア2600μg当たり200μMのガミトリニブまたは17-AAGと共に、0℃で5分間さらにインキュベートし、処理したミトコンドリアを6,000×gで10分間の遠心分離によって再度単離した。ミトコンドリアペレットを、MS緩衝液に懸濁し、10mM Tris、5mM EDTA(pH7.6)、2mM DTTおよびプロテアーゼ阻害剤中の1M/1.5Mショ糖ステップグラジエント上に110,000×gで1.5時間適用した。ミトコンドリアバンドを単離し、MS緩衝液中で洗浄し、150mM NaCl、10mM Tris(pH7.4)、0.5% IGEPAL CA-630、1mM EDTAおよびプロテアーゼ阻害剤を含有する緩衝液中に溶解させた。Bio-Radタンパク質アッセイ試薬によって、BSAを標準物質として、タンパク質濃度を決定した。同等のタンパク質濃度での吸光度を、338nmでDU530分光光度計(Beckman Coulter)を使用して決定した。最大吸収ならびに17AAGおよびガミトリニブに対する同等のシグナルを理由として、338nmでの吸光度を薬物検出に使用した。
【0297】
単離ミトコンドリアの蛍光分析
FITC共役シェファーディンと共にインキュベートした個々のミトコンドリア細画分(20μg)を、20mM Tris緩衝液3ml中でインキュベートし、蛍光強度(U、任意単位)を励起波長497nmおよび発光波長525nmで、CARY ECLIPSE蛍光分光光度計(米国カリフォルニア州Varian Inc.)を使用して測定した。いくつかの実験では、MCF-7細胞を20μMのFITC-シェファーディンまたはFITC-スクランブルペプチドで30分間処理した。細胞を収集し、ミトコンドリアをPIERCEからのミトコンドリア単離キットによって分画した。タンパク質アッセイ試薬(Bio-Rad)によって、BSAを標準物質として、タンパク質濃度を決定した。タンパク質試料50μgを20mM Tris緩衝液(pH7.4)3mlと混合し、蛍光強度を分光光度計(米国カリフォルニア州Varian Inc.)上で497/525nm励起/発光波長で測定した。
【0298】
インビトロミトコンドリア移入アッセイ
単離したミトコンドリア画分における組換えタンパク質の移入を、Young et al., Cell, 112:41-50, (2003)の記載にわずかな変更を加えて行った。簡潔に言えば、単離した脳ミトコンドリアを、上記のように250mMショ糖、80mM酢酸カリウム、20mM HEPES-KOH(pH7.5)、5mM酢酸マグネシウムを含有するMC緩衝液中で洗浄した。インビトロで転写および翻訳した35S標識タンパク質を、1体積のMCS緩衝液(500mMショ糖、80mM酢酸カリウム、20mM HEPES-KOH(pH7.5)、5mM酢酸マグネシウム)で希釈し、全体積50μlで精製ミトコンドリア(30μg)と、1μMバリノマイシンの存在下または非存在下、30℃で1時間混合した。試料を氷上で冷却し、50μg/mlプロテイナーゼKによって0℃で10分間処理した。タンパク質消化を1mM PMSFの添加により停止させ、ミトコンドリアを6,000×gで10分間の遠心分離により再度単離した。ミトコンドリアに対するタンパク質移入の差異をオートラジオグラフィーによって決定した。
【0299】
免疫沈降、プルダウンアッセイ、およびアフィニティークロマトグラフィー
単離したRajiミトコンドリアを、150mM NaCl、10mM Tris(pH7.4)、1% Triton X-100、0.5% IGEPAL CA-630およびプロテアーゼ阻害剤(Roche)を含有する緩衝液中に、一定の攪拌下、4℃で1時間溶解させた。13,000×g、4℃で10分間の遠心分離後、上清をタンパク質G-アガロースビーズ(Calbiochem)によって4℃で3時間予めクリアにし、予めクリアにしたタンパク質抽出物200μgを、Hsp90またはTRAP-1に対する抗体と共に、CsA(5μM)またはGA(10μM)の存在下または非存在下、4℃で16時間インキュベートした。沈降した免疫複合体を溶解緩衝液中で洗浄し、結合したタンパク質をSDSゲル電気泳動で分離し、ウエスタンブロッティングで分析した。プルダウン実験では、GSH-ビーズ結合GST-CypD、GST-TRAP-1、またはGST-Hsp90を、20mM Hepes(pH7.7)、75mM KCl、0.1mM EDTA、2.5mM MgCl2、0.05% NP40、1mM DTTおよび1mg/ml BSAを含有するH-緩衝液でブロッキングした。ブロッキングしたビーズを、H-緩衝液中で精製組換えタンパク質または35S標識タンパク質と共に、CsAまたはGAの存在下、4℃で16時間インキュベートした。インキュベーションの終わりに、ペレット化ビーズをH緩衝液中で洗浄し、結合したタンパク質をSDSゲル電気泳動によって分離し、ウエスタンブロッティングまたはオートラジオグラフィーによって分析した。インビボ捕捉アッセイでは、GSTまたはGST-CypDを、単離したRajiミトコンドリアとH-緩衝液中で、CsA(5μM)またはGA(10μM)の存在下、4℃で16時間混合した。結合したタンパク質を洗浄し、ウエスタンブロッティングで分析した。いくつかの実験では、シェファーディンまたはスクランブルペプチド模倣体(5mg/ml)をセファローズビーズに共役させ、精製Rajiミトコンドリアの分画に使用した。洗浄後、結合した材料を0.1Mグリシン(pH2.5)で溶出させ、直ちに中和し、ウエスタンブロッティングで分析した。
【0300】
チトクロムc放出
腫瘍細胞タイプを対照または各種Hsp90アンタゴニストで処理し、サイトゾル抽出物を、5〜30分の増加する時間間隔で収集し、ウエスタンブロッティングで分析した。無細胞系での実験では、精製ミトコンドリア(20μg)をSB緩衝液(0.2Mショ糖、10mM Tris-MOPS(pH7.4)、5mMコハク酸、1mMリン酸ナトリウム、10μM EGTA-Trisおよび2μMロテノン)500μlに懸濁させた。対照または各種Hsp90アンタゴニストによって、試料を22℃で20分間処理した。各インキュベーション反応の終わりに、ミトコンドリアおよび上清を、6,000×gで10分間の遠心分離で分離し、ウエスタンブロッティングで分析した。
【0301】
ミトコンドリア膜電位
Raji細胞を、シェファーディンまたは対照のスクランブルペプチド模倣体(100μM)もしくは17-AAG(5μM)で処理し、ミトコンドリア膜電位感受性蛍光染料JC-1を担持させ、緑色/赤色蛍光比の変化についてフローサイトメトリーで分析した。無細胞系での実験では、一次正常細胞、各種の腫瘍細胞タイプ、または正常マウス器官から単離した精製ミトコンドリアをSB緩衝液に懸濁させた。試料(100μg)を、SB緩衝液中で、0.1μMテトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)と共にインキュベートし、シェファーディンまたは対照のスクランブルペプチド模倣体(0.5〜1.5μM)、17-AAG(1.5μM)もしくはANT-GA(1〜1.5μM)によって、CsA(5μM)の存在下または非存在下で処理し、549nm励起および575nm発光で連続的に分析した(Photon Technology International, Inc)。これらの実験では、SB緩衝液中のTMRM担持ミトコンドリアは安定した蛍光に到達し、これを完全分極状態(最大膜電位)に設定した。2mM CaCl2での処理後の蛍光強度を、最小膜電位(完全脱分極状態)に設定した。各処理後の蛍光強度の変化を、最大膜電位と最小膜電位との間の比としてプロットした。いくつかの実験では、HeLaまたはMCF-7細胞から単離した、濃度を増加させた(10〜100μg)TMRM担持ミトコンドリアを、SB緩衝液3ml中に希釈し、BSAで全タンパク質濃度500μgに基準化し、対照または各種Hsp90アンタゴニストに応答する膜電位の変化について分析した。
【0302】
ミトコンドリア機能
正常または腫瘍ミトコンドリア(100μg)に0.1mMテトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)を担持させ、CsAを有するかまたは有さないガミトリニブまたは17-AAGと共にインキュベートし、内膜電位の変化について549nm励起および575nm発光で連続的に分析した(Photon Technology International, Inc)。2mM CaCl2での処理後の蛍光強度は完全脱分極状態に対応していた。あるいは、H460細胞を、蛍光染料JC-1(Molecular Probes)で標識し、各種薬剤での処理後の赤色/緑色(Fl-2/Fl-1)蛍光比の変化について多パラメータフローサイトメトリーによって分析した。薬物で処理した単離ミトコンドリアのペレットまたは上清中のチトクロムc含有量をウエスタンブロッティングで決定した。
【0303】
細胞死の分析
細胞生存率の調節をMTTで決定した(Kang et al., 「Regulation of tumor cell mitochondrial homeostasis by an organelle-specific Hsp90 chaperone network,」 Cell, 131:257-270 (2007))。アポトーシスの決定では、CaspaTag(Intergen、マサチューセッツ州Burlington)を使用し、多パラメータフローサイトメトリーによって、細胞をカスパーゼ活性(DEVDアーゼ活性)および形質膜の完全性(ヨウ化プロピジウム)について分析した(Kang et al., 「Regulation of tumor cell mitochondrial homeostasis by an organelle-specific Hsp90 chaperone network,」 Cell, 131:257-270 (2007))。
【0304】
Hsp90機能の分析
GA-ビーズ競合実験では、SkBr3乳がん細胞をTNESV溶解緩衝液(50mM Tris-HCl(pH7.4)、1% Nonidet P-40、2mM EDTA、100mM NaCl、1mMオルトバナジン酸ナトリウム、1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、1ml当たり20μgのアプロチニンおよびロイペプチン)に溶解させた。上清を透明にするための遠心分離の後、可溶化液を0、0.5、1もしくは10μMのガミトリニブまたは0、0.05、0.1もしくは0.5μMのGAと共に氷上で30分間インキュベートした。次に可溶化液(等しいタンパク質)をGA-ビーズ沈殿を使用するHsp90のアフィニティー精製に供し、既に記載のようにHsp90についてブロッティングした(Marcu et al., 「Novobiocin and related coumarins and depletion of heat shock protein 90-dependent signaling proteins,」 J Natl Cancer Inst, 92:242-248 (2000))。可溶化液に残留するHsp90のレベルは、ウエスタンブロッティングにより可視化されるHsp90バンドの走査および画像分析による濃度測定定量化によって決定される。データは、同一の結果を有する2つの独立した実験を表すものであり、またガミトリニブがHsp90結合をめぐるGA-ビーズとの競合におけるGAとして有効であることを示した。
【0305】
他の実験では、シャペロン依存性GST-Chk1再構成を既に記載のように決定した(Arlander et al., 「Chaperoning checkpoint kinase 1 (Chk1), an Hsp90 client, with purified chaperones,」 J Biol Chem, 281:2989-2998 (2006))。簡潔に言えば、各試料は、樹脂結合GST-Chk1(残基1〜265番)0.7μg、精製ヒトHsp90α 1μg、および以下の量の他の精製シャペロンタンパク質を含有していた: Hsp70 10μg、Hdj1 2μg、p50cdc37 2μg、CK2 0.06単位、p60Hop 2.5μg。ガミトリニブまたは17-AAGの存在下または非存在下での、Cdc25のChk1依存性リン酸化による光学濃度を、添加シャペロンタンパク質を欠く試料を超える活性化倍数として決定およびプロットした。いくつかの実験では、HeLa細胞を、ガミトリニブ(G1〜G4)または17-AAG(5μM)で24時間処理し、単離した抽出物をウエスタンブロッティングによりAktまたはHsp70の発現の調節について分析した。
【0306】
細胞イメージング
蛍光標識試験では、HeLa細胞を、FITC共役シェファーディンまたは細胞透過性スクランブルペプチド模倣体と共に、ミトコンドリアマーカーであるMitoTrackerの存在下でインキュベートした。画像を、倒立顕微鏡(Zeiss Axiovert 200)上でPerkin-Elmer CSU-10回転ディスク共焦点スキャナを使用して取得した。Z断面を、Hamamatsu ORCAカメラを使用して細胞全体について0.3μm毎に取得し、Metamorph 6.3r5(Universal Imaging Corp.)を使用して投影として提示した。微速度ビデオ顕微鏡法では、HeLa細胞を35mmガラス底組織培養皿(Mat-tek)内に維持した。イメージング前に、細胞を400nM CM-H2XRos(M7513、Molecular Probes)と共に成長条件下で15分間インキュベートした。洗浄後、新鮮な培地を加え、細胞を環境室(PDMI-2; Harvard Apparatus)中、完全培地においてCO2交換(0.5リットル/分)下37℃でイメージングした。細胞を1分毎に、倒立顕微鏡(Olympus IX-70)上で、緑色干渉フィルター付きの100×位相差レンズを使用してイメージングした。画像をCoolSnap HQ CCDカメラ(Roper Scientific)上で捕捉し、Metamorphソフトウェア(Universal Imaging Corp.)を使用して連結した。画像を任意の試薬の非存在下で経過時間の最初の10分間イメージングし、その時点でシェファーディンまたは細胞透過性スクランブルペプチド模倣体を複数の取得の合間に滴下した。ミトコンドリアの位相差画像をCM-H2XRos標識の存在下で検証した。いくつかの実験では、単離ミトコンドリアをANT-GAで平衡化し、50μg/mlプロテイナーゼKで処理し、蛍光顕微鏡法で分析した。
【0307】
電子顕微鏡法
単離したHeLa細胞ミトコンドリアを、3%ホルムアルデヒドおよび0.1%グルタルアルデヒド(EMグレード)中、37℃で10分間固定し、PBS(pH7.4)中50mM NH4Clにおいて22℃で60分間インキュベートして遊離アルデヒドをアミジン化し、100%まで段階的に連続したエタノールを通じて脱水し、50:50(v/v)樹脂(Lowicryl K4M):100%エタノールの混合物に終夜22℃で移した。試料を新鮮な樹脂のアリコートに移し(×3)、60℃で24時間、カプセルに対する充填、埋め込みに適用した。薄切片をウルトラミクロトーム(Reichert-Jung Ultracut E)によって切断し、金の支持リッド床上に配置し、22℃で30分間ブロッキングし(Zymed)、Hsp90または対照非結合性IgGのN-ドメインに対する抗体と共にインキュベートした。金共役二次抗体(1:20、Jackson ImmunoResearch Laboratories)の添加後、試料を洗浄し、OsO4蒸気に22℃で1時間曝露させ、酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で後染色し、Dohi et al., J. Clin. Invest. 114(8):1117-27, (2004)に記載のようにPhilips EM10電子顕微鏡上で80kVで分析した。
【0308】
細胞生存率およびアポトーシスの分析
正常細胞または腫瘍細胞タイプを、増加する濃度のHsp90アンタゴニストまたはその各々の対照(シェファーディン、0〜150μM; 17-AAG、0〜100μM; ANT-GA、0〜100μM)によって37℃で1〜2.5時間処理し、MTTアッセイによって細胞生存率の損失について分析した(Plescia et al., Cancer Cell, 7:457-468, (2005))。あるいは、HeLa細胞を、CypD阻害剤であるCsA(1μM)で処理するか、または対照非標的化siRNAもしくはCypDに対するSmartPool siRNA(Dharmacon)を形質移入し、48時間後にシェファーディンまたは対照スクランブルペプチド模倣体と共にインキュベートし、細胞生存率についてMTTで分析した。他の実験では、HeLa細胞に、対照の非標的化siRNAまたはTRAP-1指向性siRNA(Dharmacon)を形質移入し、CsA(1μM)の存在下または非存在下でインキュベートし、48時間後に細胞生存率についてMTTで分析した。siRNA標的化の各種実験におけるタンパク質発現の変化を、ウエスタンブロッティングで評価した。TRAP-1指向性細胞保護の分析では、一次非形質転換ヒト線維芽細胞HFFおよびWS-1に、対照のpcDNA3またはTRAP-1 cDNAを、リポフェクタミンによって24時間形質移入し、濃度を増加させた(0〜1μM)細胞死刺激スタウロスポリン(STS)に曝露し、MTTによるさらなる24時間のインキュベーション後に、細胞生存率について分析した。アポトーシスの分析では、p53+/+またはp53-/- HCT116細胞を、対照またはANT-GA(100μM)で処理し、Dohi et al., J. Clin. Invest. 114(8):1117-27, (2004); Plescia et al., Cancer Cell, 7:457-468, (2005)に記載の同時多パラメータフローサイトメトリーによって、DEVDアーゼ活性(CaspaTag)およびヨウ化プロピジウム染色について分析した。
【0309】
組織調達および免疫組織化学的検査
ヒト乳腺がん、膵臓腺がん、肺腺がん、結腸腺がん、およびそれらの各々の正常組織の匿名の一次外科試料を、UMass Memorial Cancer Center Tissue Bankから識別子なしで得た。組織試料を緩衝ホルマリンに固定し、パラフィンに包埋した。組織染色では、切片を脱パラフィン化し、水に再水和し、内在性ペルオキシダーゼ用にクエンチした。スライドを10%クエン酸ナトリウム中で60分間蒸すことで、エピトープ熱回収を行った。加工したスライドを、PBS中ですすぎ、標準的アビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ技術(Histostain-plus, Zymed Laboratories)を使用して、TRAP-1または対照IgGに対する抗体で染色した。スライドを、色素原としてのDABと共にインキュベートし、ヘマトキシリンで対比染色した。各組織病理学的診断当たり2つの独立した症例、および各々の正常組織を分析し、同一の結果を得た。
【0310】
統計分析
データをWindows用GraphPadソフトウェアパッケージ(Prism 4.0)上で、両側独立t検定を使用して分析した。0.05のp値を統計上有意として考えた。
【0311】
他の態様
本発明をその詳細な説明と関連させて説明してきたが、前述の説明が、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を例示することを意図しており、それを制限することを意図しているわけではないことを理解すべきである。他の局面、利点および変更は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式を含む組成物、または薬学的に許容されるその塩:
A-B
式中、Aは分子シャペロン阻害剤であり、Bはミトコンドリア浸透性部分であり、AとBとは任意で連結部分によって連結しており、ここで、Aがシェファーディン(shepherdin)またはその断片である場合、BはアンテナペディアヘリックスIIIホメオドメイン細胞浸透性ペプチド(ANT)またはその断片ではない。
【請求項2】
Aが、アンサマイシンクラスHsp90阻害剤; ゲルダナマイシン類似体Hsp90阻害剤; プリン骨格クラスHsp90阻害剤; レゾルシノールHsp90阻害剤; およびマクロラクトン-Hsp90阻害剤からなる群より選択される小分子である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
AがHsp90のペプチド阻害剤である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
Aが、SEQ ID NO:2(His-Ser-Ser-Gly-Cys)を含むシェファーディンペプチドである、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
Aが、Hsp90に結合しかつそれを阻害するSEQ ID NO:1と少なくとも95%同一の配列を含むペプチドである、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
Bがミトコンドリア浸透性ペプチドである、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
Bが、マイトフュージンペプチド、ミトコンドリア標的化シグナルペプチド、TATペプチド、ANTペプチド、VP22ペプチドまたはPep-1ペプチドからなる群より選択される、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
Bが、RNAミトコンドリア浸透性シグナルである、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
Bが、グアニジンリッチペプトイド、グアニジンリッチポリカルバメート、β-オリゴアルギニンおよびプロリンリッチデンドリマーからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
Aが17-アリルアミノ-デメトキシゲルダマイシン(17-AAG)を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
Aがラジシコールを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
Aがプリン骨格クラスHsp90阻害剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
Aが、17-ジメチルアミノゲルダナマイシンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
Bが以下である、請求項1記載の組成物:

式中、
R1はH、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはRaRbRcSiであり;
Ra、RbおよびRcはアルキルまたはアリールより独立して選択され;
nは0、1、2、3、4、5または6である。
【請求項15】
Bが以下である、請求項1記載の組成物:

式中、
Ra、RbおよびRcはアルキルまたはアリールより独立して選択され;
nは1、2または3である。
【請求項16】
Bが(アリール)3P-である、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
Bが

である、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
Aが以下である、請求項1記載の組成物:

式中、
R2はH、アルキル、アリールまたはアリールアルキルであり; R3はH、アルキルであり; R4はH、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、ORdであり、ここでRdはH、アルキルまたはアリールアルキルである。
【請求項19】
R2がHまたはアルキルであり; R3がH、アルキルであり; R4がHまたはORdであり、ここでRdがH、アルキルである、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
R2がHであり; R3がメチルであり; R4がHである、請求項18記載の組成物。
【請求項21】
BがANTまたはそのミトコンドリア浸透性断片を含む、請求項10〜13のいずれか一項記載の組成物。
【請求項22】
AとBとの間に連結部分を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項23】
連結部分がペプチドリンカーおよび化学リンカーからなる群より選択される、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
リンカー部分が二価でありかつアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびペプチドリンカーからなる群より選択され、ここで該アルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンの任意の2個の隣接する炭素-炭素結合が、O、NH、S、PRe、C(O)NRf、アリーレン、ヘテロシクロアルキレンまたはヘテロアリーレンのうち1つまたは複数で置き換えられていてもよく; ここでReおよびRfがアルキルまたはアリールより独立して選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項25】
リンカー部分が

である、請求項1記載の組成物。
【請求項26】
リンカー部分がアルキレンである、請求項1記載の組成物。
【請求項27】
リンカー部分が6個の炭素原子を有するアルキレンである、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
A-Bが以下である、請求項1記載の組成物、または薬学的に許容されるその塩:

式中、R1はH、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはRaRbRcSiであり;
R2はH、アルキル、アリールまたはアリールアルキルであり; R3はH、アルキルであり; R4はH、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、ORdであり、ここでRdはH、アルキルまたはアリールアルキルであり;
Ra、RbおよびRcはアルキルまたはアリールより独立して選択され;
nは包含的に1〜10の整数である。
【請求項29】
塩がヘキサフルオロリン酸塩である、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
R1がRaRbRcSiであり、ここでRa、RbおよびRcがアルキルまたはアリールより独立して選択され; R2がHであり; R3がH、アルキルであり; R4がHであり; nが1、2、3または4である、請求項26記載の組成物。
【請求項31】
A-Bが

より選択される、請求項1記載の組成物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項32】
塩がヘキサフルオロリン酸塩である、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
A-Bが以下である、請求項1記載の組成物:

式中、qは1、2、3、4、5または6であり; Xは薬学的に許容される対イオンである。
【請求項34】
qが3である、請求項33記載の組成物。
【請求項35】
アリールがフェニルであり、qが3である、請求項33記載の組成物。
【請求項36】
Xがヘキサフルオロリン酸塩である、請求項33記載の組成物。
【請求項37】
A-Bが

である、請求項1記載の組成物。
【請求項38】
がん細胞死を誘発するために十分な量で請求項1〜16のいずれか一項記載のミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤を対象に投与する段階を含む、がん細胞死または腫瘍細胞死を誘発するための方法。
【請求項39】
がんまたは腫瘍を有する対象を同定する段階;
該がんまたは腫瘍の細胞が対照細胞に比べてミトコンドリアにおけるシャペロンの増加した濃度を有するか否かを決定する段階;
ミトコンドリアにおけるシャペロンの増加したレベルを対象が有する場合、式
A-B
を含むミトコンドリア標的化シャペロン阻害剤を哺乳動物に投与する段階であって、式中Aがシャペロン阻害剤であり、Bがミトコンドリア浸透性部分であり、AとBとが任意で連結部分によって連結している、段階
を含む、がん細胞死または腫瘍細胞死を誘発するための方法。
【請求項40】
少なくとも1つのシャペロンおよびシクロフィリンDを含む試料を与える段階;
試料と試験薬剤とを接触させる段階; ならびに
試験薬剤の存在および非存在下での試料中のシャペロンおよびシクロフィリンDの結合を検出する段階
を含む、シャペロン活性を阻害するための候補薬剤を同定するための方法であって、
結合を阻害する試験薬剤がシャペロン活性を阻害するための候補薬剤である、方法。
【請求項41】
シャペロンがHsp60、HspA9、Hsp90またはTRAP-1である、請求項40記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図14−3】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2011−501731(P2011−501731A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524247(P2010−524247)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/075895
【国際公開番号】WO2009/036092
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(505231659)ユニバーシティ オブ マサチューセッツ (23)
【Fターム(参考)】