ミトコンドリア膜透過性遷移の誘導
本発明は、細胞または細胞抽出物を化合物と接触させる段階、化合物がアデニンヌクレオチド輸送体(ANT)に結合するかどうかを判定する段階、および化合物が増殖細胞において選択的にミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)を誘導するかどうかを判定する段階を含む、増殖細胞においてMPTを誘導する化合物を同定する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、細胞におけるミトコンドリア膜透過性の修飾、詳細には、増殖細胞においてMPTを選択的に誘導する化合物の同定および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ミトコンドリアはATPを提供して正常な細胞機能を支持しており、その撹乱によりアポトーシス細胞死および壊死性細胞死が起こる(Crompton, 1999)。アポトーシスおよび壊死における重要な要因はミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)であり、これはカルシウム過負荷の結果として起こる。MPTの原因は、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(MPTP)として知られているミトコンドリア内膜の非特異的孔の開口である(Crompton et al., 1987)。酸化ストレス、アデニンヌクレオチドの欠乏、および無機リン酸の上昇により、カルシウム濃度に対する孔の感受性が著しく増加する。MPTPの開口は、ミトコンドリア内膜を介した小さな溶質(< 1.5 kD)の平衡を伴う。結果として生じたマトリックス内の高タンパク質濃度がコロイド浸透圧を発揮し、これがミトコンドリアを大きく膨化させ、最終的にアポトーシスおよび壊死を引き起こす。
【0003】
アデニンヌクレオチド輸送体(ANT)はミトコンドリア内膜にまたがる30 kDのタンパク質であり、MPTPの中核をなす(Crompton et al., 1988)。
【0004】
アポトーシスを誘導する手段として、特に増殖細胞において選択的にMPTを誘導する必要性が存在する。
【0005】
本発明は、ミトコンドリアにおいてANTに結合し、非増殖細胞または増殖静止細胞と比較して増殖細胞において選択的にMPTを誘導する化合物を同定する方法に関する。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明の第一の局面に従って、細胞または細胞抽出物を化合物と接触させる段階、化合物がアデニンヌクレオチド輸送体(ANT)に結合するかどうかを判定する段階、および化合物が増殖細胞において選択的にミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)を誘導するかどうかを判定する段階を含む、増殖細胞においてMPTを誘導する化合物を同定する方法を提供する。
【0007】
本発明の第二の局面に従って、細胞または細胞抽出物を複数の化合物と接触させる段階、化合物のいずれかがANTに結合するかどうかを判定する段階、およびそうであれば、複数の化合物のそれぞれについて化合物が増殖細胞において選択的にMPTを誘導するかどうかを個別に判定する段階を含む、複数の化合物をスクリーニングして増殖細胞においてMPTを誘導する化合物を同定する方法を提供する。
【0008】
本発明の第一および第二の局面に関して、増殖細胞におけるMPTの選択的誘導は、例えば、本発明の第一または第二の局面に従ってANTに結合すると同定された化合物が増殖細胞においてMPTに及ぼす影響を、非増殖細胞または増殖静止細胞においてMPTに及ぼす影響と比較することによって決定し得る。
【0009】
同様に本発明の第一および第二の局面に関して、1つの態様においては、その方法は、スーパーオキシド(O2-)アニオンの細胞内濃度の変化を測定する段階を含み得る。別の態様において、その方法は、チトクロームC放出の変化を測定する段階を含み得る。
【0010】
本発明の第三の局面に従って、細胞または細胞抽出物を候補化合物と接触させる段階、細胞内スーパーオキシドアニオン(O2-)濃度の上昇が起こるかどうかを判定する段階、および化合物が増殖細胞において選択的にアポトーシスを誘導するかどうかを判定する段階を含む、増殖細胞においてアポトーシスを誘導する化合物を同定する方法を提供する。
【0011】
本発明の第四の局面に従って、細胞または細胞抽出物を候補化合物と接触させる段階、細胞内スーパーオキシドアニオン(O2-)濃度の上昇が起こるかどうかを判定する段階、および化合物が血管新生の阻害剤であるかどうかを判定する段階を含む、血管新生の阻害剤である化合物を同定する方法を提供する。
【0012】
本発明の第五の局面に従って、本発明の第一から第三の局面のいずれか1つの局面の方法に従って検出された少なくとも1つの化合物の治療有効量、または薬学的に許容される担体、アジュバント、および/または希釈剤と共にその化合物のうちの少なくとも1つを含む薬学的組成物の治療有効量を脊椎動物に投与する段階を含む、脊椎動物においてMPTを誘導する方法を提供する。
【0013】
本発明の第六の局面に従って、本発明の第一から第三の局面のいずれか1つの局面に従って同定された化合物のアポトーシス誘導量、または薬学的に許容される担体、アジュバント、および/または希釈剤と共にその化合物のうちの少なくとも1つを含む薬学的組成物の治療有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物細胞においてアポトーシスを誘導する方法を提供する。
【0014】
本発明の第七の局面に従って、アポトーシスを誘導する薬物を製造するための、本発明の第一から第三の局面のいずれか1つの局面に従って同定された化合物の使用を提供する。
【0015】
本発明の第八の局面に従って、本発明の第四の局面に従って同定された化合物の血管新生阻害量、または薬学的に許容される担体、アジュバント、および/または希釈剤と共にその化合物のうちの少なくとも1つを含む薬学的組成物の治療有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物において血管新生を阻害する方法を提供する。
【0016】
本発明の第九の局面に従って、血管新生を阻害する薬物を製造するための、本発明の第四の局面に従って同定された化合物の使用を提供する。
【0017】
本発明の第一から第九の局面のいずれか1つの局面に関して、1つの態様においては、化合物はジチオール反応性化合物であってよい。
【0018】
別の態様において、化合物はアルセノキシド(arsenoxide)(またはアルセノキシド等価物)部分を有し得る。
【0019】
さらなる態様において、アルセノキシド(またはアルセノキシド等価物)化合物は式(I):
を含んでよく、式中、
Aは、少なくとも1つの実質的に細胞膜不透過性のペンダント基を含み;
(XBX')nB'は適切なリンカー基を含み、nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択される整数であり;
Yは、少なくとも1つのアルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含み;
pは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10から選択される整数である。
【0020】
1つの態様において、式(I)の化合物は6個を超える炭素原子を有し得る。
【0021】
以下の特徴は式(I)に関する。
【0022】
1つの態様において、Aは、天然、非天然、および合成のアミノ酸、親水性アミン、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドを含むペプチドおよびポリペプチド、単糖、二糖、およびオリゴ糖等の糖残基(置換型変種を含む)、ならびにチオール含有タンパク質からなる群より選択されてよく、またはその組み合わせであってよい。例えば、Aは、グルタチオン、グルコサミン、システイニルグリシン、システイン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、およびアルギニンからなる群より選択されてよく、それぞれの硫黄含有化合物の硫黄原子は任意に酸化されてスルホキシドまたはスルホンを形成してもよい。他の態様において、Aは、例えばグルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、リキソース、ガラクトース、ヘキソース、スクロース、ソルボース、ガラクトシル-スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール等の、糖残基、二糖、またはオリゴ糖残基を含み得る。他の態様において、Aは、一級、二級、もしくは三級アルキル、アリール、またはアラルキル-アミン等の親水性アミンであるか、またはピリジン、ピロール、イミダゾール等の複素環アミンであってよい。
【0023】
アミノ酸は当業者に周知であり、例えば、その内容が参照として本明細書に組み入れられる、King and Stansfield, A Dictionary of Genetics, 第4版、Oxford University Press, 1990等の標準的な参考書に記載されている。例えば、アミノ酸はα、β、またはγアミノ酸であってよい。本発明は、L型およびD型のアミノ酸もまた包含する。アミノ酸の例には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、およびヒスチジンが含まれる。
【0024】
1つの態様において、Aは、三酸尿素(tri-acid urea)、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、およびペンタペプチドを含むペプチドからなる群より選択され得る。例えば、グルタチオン、
等、プレッシン酸(pressinoic acid)、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸等の小さな酸性分子;1-チオ-β-D-グルコース、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール等の小さなアルコール;例えば、一級、二級、および三級アルキル、アリール、ならびにアラルキル置換アミンを含む小さなアミン;ならびに5-メルカプト-1-テトラゾール酢酸、2-メルカプトピリジン、および2-アミノピリジン等の芳香族複素環化合物。
【0025】
1つの態様において、Aはトリペプチドである。例えば、Aはグルタチオンであってよく、1つの形態において、化合物は式(II):
により表され得、
式中、(XBX')nB'は任意の適切なリンカー基を含み、Yはアルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む。
【0026】
1つの態様において、pは1〜5より選択される整数である。例えば、pは1、2、3、4、または5であってよい。1つの態様において、pは1または2である。別の態様において、pは1である。
【0027】
1つの態様において、nは0から15の整数である。例えば、nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15であってよい。1つの態様において、nは0〜10から選択される整数である。別の態様において、nは0〜5から選択される整数であり、例えば、nは0、1、2、3、4、または5であってよい。
【0028】
1つの態様において、Xは、-NR、-S(O)-、-S(O)O-、-S(O)2-、-S(O)2O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-P(O)(R1)-、および-P(O)(R1)O-からなる群より選択されるか、または存在せず;
Bは、C1〜C10アルキレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C10アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C3〜C10ヘテロシクロアルキレン、C5〜C10ヘテロシクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、ヘテロアリーレン、およびC2〜C10アシルからなる群より選択され;
X'は、-NR-、-O-、-S-、-Se-、-S-S-、S(O)-、-OS(O)-、OS(O)O-、-OS(O)2、-OS(O)2O-、-S(O)O-、-S(O)2-、-S(O)2O-、-OP(O)(R1)-、-OP(O)(R1)O-、-OP(O)(R1)OP(O)(R1)O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-P(O)(R1)-、-P(O)(R1)O-、および
からなる群より選択されるか、または存在せず;EはO、S、Se、NR、またはN(R)2+であり;
nは0、1、または2であり;
B'は、C1〜C10アルキレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C10アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C3〜C10ヘテロシクロアルキレン、C5〜C10ヘテロシクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、およびヘテロアリーレンからなる群より選択されるか、または存在せず;
それぞれのRは、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、OR2、およびC2〜C10アシルからなる群より独立して選択され;
R'はRと同一であるか、または2つのR'が、これらが結合している窒素原子と共に一体となって、飽和または不飽和の複素五員環または六員環を形成してもよく;
それぞれのR1は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、ハロ、OR2、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR2は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、および-C(O)R5からなる群より独立して選択され;
それぞれのR5は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
Bおよび/またはB'がアリーレンであるそれぞれの場合について、それぞれのアリーレン環に直接結合している置換基(アルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む)は、任意の可能な位置にあってよく、例えばパラ、メタ、またはオルトの関係にあってよく;
それぞれのアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、ヘテロシクロアルキレン、ヘテロシクロアルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアシルは、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、シアノ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルセノキシド、-S(O)R3、-OS(O)R3、-S(O)2R3、-OS(O)2R3、-P(O)R4R4、-OP(O)R4R4、-N(R'')2、-NRC(O)(CH2)mQ、-C(O)R5;
で独立して置換されてよく;
R、R1、およびR5は先に定義した通りであり;
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R4)2、N(R)2、および-C(O)R5からなる群より選択され;
それぞれのR3は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR4は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ハロ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
R6は、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より選択され;
R''はRと同一であるか、または2つのR''が、これらが結合しているN原子と共に一体となって、飽和、不飽和、または芳香族の複素環系を形成してもよく;
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1から選択され;Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され;
mは1、2、3、4、または5である。
【0029】
別の態様において、Xは、NH、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、および-C(S)S-からなる群より選択されるか、または存在せず;
Bは、C1〜C5アルキレン、C2〜C5アルケニレン、C2〜C5アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、およびC2〜C5アシルからなる群より選択され;
X'は、-O-、-S-、-NR-、-S-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-P(O)(R1)-、-OP(O)(R1)-、OP(O)(R1)O-、-OP(O)(R1)OP(O)(R1)O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-Se-、
からなる群より選択されるか、または存在せず;Eは、O、S、またはN(R)2+であり;
nは0、1、または2であり;
B'は、C1〜C5アルキレン、C2〜C5アルケニレン、C2〜C5アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、およびC6〜C12アリーレンからなる群より選択されるか、または存在せず;
それぞれのRは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、OR2、およびC2〜C10アシルからなる群より独立して選択され;
R'はRと同一であり;
それぞれのR1は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、ハロ、OR2、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR2は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、および-C(O)R5からなる群より独立して選択され;
それぞれのR5は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C5アルケニルオキシ、C3〜C5アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C5アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
Bおよび/またはB'がアリーレンであるそれぞれの場合について、それぞれのアリーレン環に直接結合している置換基(アルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む)は、任意の可能な位置にあってよく、例えばパラ、メタ、またはオルトの関係にあってよく;
それぞれのアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン、およびアシルは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、シアノ、ハロ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルセノキシド、-S(O)R3、-OS(O)R3、-S(O)2R3、-OS(O)2R3、-P(O)R4R4、-OP(O)R4R4、-N(R'')2、-NRC(O)(CH2)mQ、-C(O)R5、
で独立して置換されてよく;
R、R1、およびR5は先に定義した通りであり;
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R4)2、N(R)2、および-C(O)R5からなる群より選択され;
それぞれのR3は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C5アルケニルオキシ、C3〜C5アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C5アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR4は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C5アルケニルオキシ、C3〜C5アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C5アルキニルチオ、C3〜C5シクロアルキルチオ、C5〜C5シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ハロ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
R6は、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C5アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より独立して選択され;
R''はRと同一であり;
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1からなる群より選択され;Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され;
mは1、2、3、4、または5である。
【0030】
別の態様においては、Xは存在せず;
Bは、C1〜C5アルキレン、C6〜C12アリーレン、およびC2〜C5アシルからなる群より選択され;
X'は、-O-、-S-、-NR-、-S-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-P(O)(R1)-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-Se-、および
からなる群より選択されるか、または存在せず;EはO、S、またはN(R)2+であり;
nは0、1、または2であり;
B'は、C1〜C5アルキレン、C6〜C12アリーレンであるか、または存在せず;
それぞれのRは、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、OR2、およびC2〜C5アシルからなる群より独立して選択され;
R'はRと同一であり;
それぞれのR1は、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、ハロ、OR2、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR2は、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、および-C(O)R5からなる群より独立して選択され;
それぞれのR5は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C5アルケニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
Bおよび/またはB'がアリーレンであるそれぞれの場合について、それぞれのアリーレン環に直接結合している置換基(アルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む)はそれぞれの環の任意の可能な位置にあってよく、例えばパラ、メタ、またはオルトの関係にあってよく;
それぞれのアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン、およびアシルは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、ハロ、シアノ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルセノキシド、-S(O)R3、-OS(O)R3、-S(O)2R3、-OS(O)2R3、-P(O)R4R4、-OP(O)R4R4、-N(R'')2、-NRC(O)(CH2)mQ、-C(O)R5、
で独立して置換されてよく;
R、R1、およびR5は先に定義した通りであり;
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R4)2、および-C(O)R5からなる群より選択され;
それぞれのR3は、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR4は、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ハロ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
R6は、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より選択され;
R''はRと同一であり;
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1から選択され;Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され;
mは1、2、3、4、または5である。
【0031】
さらなる態様において、Xは存在せず;
Bは、C1〜C5アルキレン、C6〜C12アリーレン、およびC2〜C5アシルからなる群より選択され;
X'は、-O-、-S-、-NR-、-C(O)-、および-C(O)O-からなる群より選択されるか、または存在せず;
nは1であり;
B'は、C1〜C5アルキレン、C6〜C12アリーレンであるか、または存在せず;
Rは、水素、C1-C5アルキル、C6〜C12アリール、およびC2〜C5アシルからなる群より選択され;
Bおよび/またはB'がアリーレンであるそれぞれの場合について、それぞれのアリーレン環に直接結合している置換基(アルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む)はそれぞれの環の任意の可能な位置にあってよく、例えばパラ、メタ、またはオルトの関係にあってよく;
それぞれのアルキレン、アリーレン、およびアシルは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、ハロ、シアノ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルセノキシド、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)R4R4、-N(R'')2、-NRC(O)(CH2)mQ、-C(O)R5、
で独立して置換されてよく;
それぞれのRは、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、およびC2〜C5アシルからなる群より独立して選択され;
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R4)2、および-C(O)R5からなる群より選択され;
それぞれのR3は、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、およびC6〜C12アリールチオからなる群より独立して選択され;
それぞれのR4は、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、ハロ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR5は、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
R6は、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より選択され;
R''は上記Rと同一であり;
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1から選択され;Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され;
mは1、2、3、4、または5である。
【0032】
さらに別の態様においては、Xは存在せず;
BはC2〜C5アシルであり;
X'はNRであり;
nは1であり;
B'はフェニレンであり;
RはHであり;
例えば式(III):
により例示されるように、フェニレン環に直接結合している置換基は、任意の可能な位置にあってよく、
式中、R7からR10は、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、カルボキシ、C1-C5アルコキシ、-OS(O)2R3、および-NHC(O)CH2Qからなる群より独立して選択され、Qは、ハロゲン、-OS(O)2CH3、-OS(O)2C6H5、および-OS(O)2-pトリルであり;R7からR1Oのいずれか1つがC1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、-OS(O)2R3である場合、フェニレンと縮合環を形成してよく;さらに、R7からR10の少なくとも1つがC1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、または-OS(O)2R3である場合、R7からR10の任意の少なくとももう1つと結合してフェニレンと縮合環を形成し得る。
【0033】
より典型的には、R7からR1Oは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、C1〜C5アルコキシ、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、フェニル、および-NHC(O)CH2Qからなる群より独立して選択され、Qは、ハロゲン、-OS(O)2CH3、-OS(O)2C6H5、および-OS(O)2-pトリルである。
【0034】
例えば、ペンダント基Aがグルタチオンである場合、式(III)の化合物は
として表され得る。
【0035】
さらに、B'がアリーレンである場合、アリーレン環に結合している置換基はアリーレン環の任意の可能な位置にあってよい。例えば、置換基は-As=O基とメタまたはパラの関係にあってよい。
【0036】
別の態様において、本発明に従って同定されたアルセノキシド化合物は、以下の化合物から選択される。
【0037】
化合物「GSAO」(4-(N-(S-グルタチオニルアセチル)アミノ)-フェニルアルセノキシド)は、国際特許出願WO 01/21628において以前に記載されており、その全内容は相互参照として本明細書に組み入れられる。
【0038】
ANTと相互作用し得る他の化合物には、以下に例示する式(V)による化合物:
が含まれ、
式中、Qは任意のハロゲンである。
【0039】
ANTと相互作用し得るアルセノキシドの別の形態は、式(VI):
による化合物であり、
式中、Gは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、C1〜C5アルコキシ、C1〜C5アルキル、およびC6〜C12アリール、および-NHC(O)CH2Qからなる群より選択され、Qは、ハロゲン、-OS(O)2CH3、-OS(O)2C6H5、または-OS(O)2-pトリルである。
【0040】
典型的に、Gは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、カルボキシ、C1〜C5アルコキシ、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、フェニル、および-NHC(O)CH2Qからなる群より選択され、Qは、ハロゲン、-OS(O)2CH3、-OS(O)2C6H5、および-OS(O)2-pトリルからなる群である。
【0041】
1つの態様において、式VIの化合物におけるGは、ヒドロキシ、フッ素、アミノ、またはニトロである。
【0042】
別の態様において、G基はアルセノキシド基とオルト、メタ、またはパラの関係にある。例えば別の態様において、Gはアルセノキシド基とオルトまたはパラの関係にある。
【0043】
典型的に、Gとヒ素原子が互いにオルトまたはパラの関係にある場合、ヒ素原子の活性はG基により修飾され得る。例えば、GがOH(生理的pHでイオン化されてO-となる)等の電子供与基である場合、ヒ素原子はジチオールに対して不活性化されてよく、そのためより選択的になり、例えば非常に反応性の高いジチオールとのみ反応し得る。または、GがNO2等の電子吸引基である場合、ヒ素原子から電子密度が引き離され、そのためヒ素原子はジチオールとより反応しやすくなる。Gを操作することにより、ある酸化還元タンパク質は阻害し、ある酸化還元タンパク質は阻害しないという選択的阻害が達成され得る。
【0044】
典型的に、ANTと相互作用し得るアルセノキシド化合物において、アルセノキシド基(-As=O)はアルセノキシド等価物で置換され得る。
【0045】
本明細書において、アルセノキシド等価物は、ジチオールに対して-As=Oと本質的に同じ親和性を示す任意のジチオール反応性化学種と定義される。典型的に、アルセノキシド等価物には、As、Ge、Sn、およびSb化学種等のジチオール反応性実体が含まれる。より典型的には、アルセノキシド等価物は-D(Z1)(Z2)で表すことができる。アルセノキシド等価物は、対応するアルセノキシドの活性と同一または実質的に同一の活性を示すと考えられる。
【0046】
典型的に、式-D(Z1)(Z2)のアルセノキシド等価物について、Dは、例えば、As、RSn、Sb、またはRGeであり、Z1およびZ2は不安定な基(すなわち、生理的条件下で容易に置換される基)である。Z1およびZ2は同一であっても異なっていてもよく、結合していても(ヒ素原子にだけ結合して)互いに独立して存在してもよい。
【0047】
適切なアルセノキシド等価物には、以下のものが含まれる:
-D(Z1)(Z2)、
式中、Z1およびZ2は、OH、C1〜C10アルコキシ、C6〜C10アリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C6〜C10アリールチオ、C1〜C10アルキルセレノ、C6〜C10アリールセレノ、F、Cl、Br、およびI;
式中、E1=E2=O、E1=OおよびE2=S、またはE1=E2=Sであり;MはR'''であり、R''''は、水素、C1〜C10アルキル、C6〜C12アリール、ハロゲン、C1〜C10アルコキシ、C6〜C10アリールオキシ、ヒドロキシ、およびカルボキシからなる群より独立して選択され;n=1から10である。
【0048】
式D(Z1)(Z2)のアルセノキシド等価物について、DがAsであり、Z1およびZ2がOHである場合、アルセノキシド等価物は、以下に記載するように重合体化学種と平衡状態にあり得る。
【0049】
前述の平衡に関して、ヒ素は、そのヒドロキシ化学種が対応する重合体無水物と平衡状態で存在する多くの元素の1つである(Doak & Freedman, 1970)。したがって、アルセノキシド化合物は実際に、低分子量または中程度の分子量の重合体(例えば、n=3から6)として存在し得る。しかし、この脱水反応は可逆的であるため、可溶性の重合体無水物はアルセノキシド等価物のように挙動すると考えられる、すなわち、単量体-As (OH)2化学種と実質的に同じ方法で、近接したジチオールに結合すると考えられる。
【0050】
式中、X3=NH、Y1=O;X3=Y1=O、またはX3=S、Y1=Oであり、R'は、水素、C1〜C10アルキル、C6〜C12アリール、およびカルボキシからなる群より選択されるか、または20種のアミノ酸側鎖のうちの1つである;
式中、X3=Y1=O;X3=NH、Y1=O;X3=S、Y1=O;X3=Y1=NH;またはX3=S、Y1=NH;またはX3=S、Y1=NHであり、R11からR14は、水素、C1〜C10アルキル、C6〜C12アリール、およびCO2Hからなる群より選択される;
式中、X3=Y1=O、またはX3=NH、Y1=Oであり;R11からR14は、水素、C1〜C10アルキル、C6〜C12アリール、ハロゲン、C1〜C10アルコキシ、およびCO2Hからなる群より選択される。
【0051】
典型的に、(XBX')B'は上記の定義の通りである。
【0052】
略語および定義
本明細書において、MPTという略語はミトコンドリア膜透過性遷移を表す。
【0053】
本明細書において、MPTPという略語はミトコンドリア膜透過性遷移孔を表す。
【0054】
本明細書において、ANTという略語はアデニンヌクレオチド輸送体を表す。
【0055】
本明細書において、EGTAはエチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸を表す。
【0056】
本明細書において、PAOはフェニルアルセノキシドを表す。
【0057】
本明細書において、「含むこと(comprising)」という用語は、「主として含むが、必ずしもそれだけを含むこととは限らない」ことを意味する。さらに、単語「含むこと(comprising)」が語尾変化したもの、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」等は、それに対応して変化した意味を有する。
【0058】
本明細書において、「アルセノキシド」という用語は-As=O基を指す。
【0059】
本明細書において、-As=Oおよび-As(OH)2と記載する基は同義語とみなされる。
【0060】
本明細書において、「アルセノキシド等価物」という用語は、ジチオールに対して-As=OまたはAs(OH)2と本質的に同じ親和性を示す任意のジチオール反応性化学種を指し、この用語には、例えば、遷移元素を含む基、および水性溶媒(細胞培養緩衝液および治療を受けている生物に含まれる液体等)に溶解した場合に-As=Oまたは-As(OH)2に加水分解される任意の三価ヒ素剤が含まれる。
【0061】
本明細書において、「実質的に細胞膜不透過性の基」という用語は、化合物が細胞膜を通過して細胞内に入る速度を制限する任意の基を指す。例えば電荷、大きさ(分子量)、極性、親油性、親水性等の1つまたは複数の性質が理由で、実質的に細胞膜不透過性の基により、細胞内への化合物の流入が制限され得る。
【0062】
本明細書で用いる「ヒ素剤」という用語には、ヒ素を含む任意の化合物が含まれる。
【0063】
本明細書で用いる「アシル」という用語には、炭化水素部分、カルボニル部分、またはその両方で結合することができる、末端カルボニル置換基を有する一価および二価のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびシクロアルケニル部分が含まれる。
【0064】
本明細書で用いる「アルキル」という用語は、その意味に、一価の飽和した直鎖および分枝鎖の炭化水素ラジカルを含む。
【0065】
本明細書で用いる「アルケニル」という用語は、その意味に、少なくとも1つの二重結合を有する、一価の直鎖および分枝鎖の炭化水素ラジカルを含む。
【0066】
本明細書で用いる「アルキニル」という用語は、その意味に、少なくとも1つの三重結合を有する、一価の直鎖および分枝鎖の炭化水素ラジカルを含む。
【0067】
本明細書で用いる「アルキレン」という用語は、その意味に、二価の飽和した直鎖の炭化水素ラジカルを含む。
【0068】
本明細書で用いる「アルケニレン」という用語は、その意味に、少なくとも1つの二重結合を有する、二価の直鎖の炭化水素ラジカルを含む。
【0069】
本明細書で用いる「アルキニレン」という用語は、その意味に、少なくとも1つの三重結合を有する、二価の直鎖の炭化水素ラジカルを含む。
【0070】
本明細書で用いる「アリール」という用語は、その意味に、一価の単一の多核の共役および縮合芳香族炭化水素ラジカルを含む。
【0071】
本明細書で用いる「アリーレン」という用語は、その意味に、二価の単一の多核の共役および縮合芳香族炭化水素ラジカルを含む。
【0072】
本明細書で用いる「近接したジチオール」という用語は、その意味に、化学的に近接しているチオールおよび分子立体配座により空間的に並置されたチオールを含む。
【0073】
本明細書で用いる「シクロアルキル」という用語は、その意味に、一価の飽和した単環式、二環式、多環式、または縮合多環式の炭化水素ラジカルを含む。
【0074】
本明細書で用いる「シクロアルキレン」という用語は、その意味に、二価の飽和した単環式、二環式、多環式、または縮合多環式の炭化水素ラジカルを含む。
【0075】
本明細書で用いる「シクロアルケニル」という用語は、その意味に、少なくとも1つの二重結合を有する、一価の飽和した単環式、二環式、多環式、または縮合多環式の炭化水素ラジカルを含む。
【0076】
本明細書で用いる「シクロアルケニレン」という用語は、その意味に、少なくとも1つの二重結合を有する、二価の飽和した単環式、二環式、多環式、または縮合多環式の炭化水素ラジカルを含む。
【0077】
本明細書で用いる「ハロ」という用語には、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードが含まれる。
【0078】
本明細書で用いる「ヘテロアリール」という用語は、その意味に、1から12個の原子を有し、1から6個の原子がO、N、およびSから選択されるヘテロ原子である、一価の単一の多核の共役および縮合芳香族炭化水素ラジカルを含む。
【0079】
本明細書で用いる「ヘテロアリーレン」という用語は、その意味に、1から12個の原子を有し、1から6個の原子がO、N、およびSから選択されるヘテロ原子である、二価の単一の多核の共役および縮合芳香族炭化水素ラジカルを含む。
【0080】
本明細書で用いる「ヘテロシクロアルキル」という用語は、その意味に、1から5個の原子がO、N、またはSから選択されるヘテロ原子である、一価の飽和した単環式、二環式、多環式、または縮合のラジカルを含む。
【0081】
本明細書で用いる「ヘテロシクロアルキレン」という用語は、その意味に、1から5個の原子がO、N、またはSから選択されるヘテロ原子である、二価の飽和した単環式、二環式、多環式、または縮合多環式のラジカルを含む。
【0082】
本明細書で用いる「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、その意味に、少なくとも1つの二重結合を有し、かつ1から5個の原子がO、N、またはSから選択されるヘテロ原子である、一価の飽和した単環式、二環式、多環式、または縮合多環式のラジカルを含む。
【0083】
本明細書で用いる「ヘテロシクロアルケニレン」という用語は、その意味に、少なくとも1つの二重結合を有し、かつ1から5個の原子がO、N、またはSから選択されるヘテロ原子である、二価の飽和した単環式、二環式、多環式、または縮合多環式のラジカルを含む。
【0084】
本明細書で用いる「フェニルアルソン酸」という用語は、「ベンゼンアルソン酸」と同義語とみなされる。
【0085】
詳細な説明
本発明は、ミトコンドリアにおいてANTに結合し、非増殖細胞と比較して増殖細胞において選択的にMPTを誘導する化合物を同定する方法に関する。
【0086】
ANTはミトコンドリア内膜にまたがる30 kDのタンパク質であり、MPTPの中核をなす(Crompton et al., 1988)。ANTのマトリックス側には、不対のシステイン3個 - Cys57、Cys160、およびCys257が存在する(Halestrap et al., 1997)。ANT活性は、Ca2+、サイクロフィリンD、およびアデニンヌクレオチドの結合により調節される。サイクロフィリンD(Crompton et al., 1988)およびアデニンヌクレオチド(Haworth & Hunter, 1979a,b;Haworth & Hunter, 2000)がANTのマトリックス側に結合するのに対して、Ca2+の結合部位はいまだ決定されていない。これら3つの化合物の結合を調節することによって作用すると考えられる、MPTPのいくつかの既知制御因子が存在する。MPTPの開口の主要な誘因は、マトリックスCa2+濃度の上昇である。EGTAでCa2+をキレート化すると、孔の開口が阻止される。Ca2+に対する(おそらくANT上の)誘因部位の特異性は、Mg2+等の他の二価金属イオンが阻害剤として作用することから、絶対的であるようである(Haworth & Hunter, 1979a)。サイクロフィリンDのANTへの結合は、サブミリモルのCa2+濃度における孔の開口に必要である(Halestrap et al., 2002)。シクロスポリンA (CsA)は、サイクロフィリンDに結合しANTからこれを外すことによって、孔の開口を阻止する(Crompton et al., 1988)。マトリックスADPもまた、ANTに結合しCa2+に対する誘因部位の感受性を低下させる、孔の開口の重要な調節因子である(Haworth & Hunter, 1979a,b)。ボンクレキン酸(BKA)もまたANTと相互作用し、Ca2+に対する感受性を低下させる(Hunter & Haworth, 1979)。
【0087】
一般に、本発明に従って増殖細胞においてMPTを誘導する化合物を同定する方法は、細胞または細胞抽出物を候補化合物と接触させる段階、化合物がANTに結合するかどうかを判定する段階、および次に化合物が増殖細胞において選択的にMPTを誘導するかどうかを判定する段階を含む。化合物が増殖細胞において選択的にMPTを誘導するかどうかを評価する段階は、ANTに結合すると同定された化合物が増殖細胞においてMPTに及ぼす影響を、その化合物が非増殖細胞または増殖静止細胞においてMPTに及ぼす影響と比較することによって決定し得る。
【0088】
MPTの誘導のモニタリングは、当技術分野において周知の標準的な技法を用いて行い得る。例えば、化合物の異なる濃度に関して、所与の波長で光散乱の変化を分光光度法でモニタリングする。適切な波長は典型的に520 nmである。
【0089】
細胞のミトコンドリア内への化合物の取り込みの検出は、標準的な技法を用いて行い得る。例えば、蛍光標識した化合物を用いることもできるし、またはフルオロフォアを化合物に結合することもできる。適切なフルオロフォアの例には、フルオレセインおよびCy(商標)5.5が含まれる。化合物の細胞内局在化は、共焦点蛍光顕微鏡検査を含む標準的な技法により検出し得る。または、化合物を例えばビオチンのような他の検出可能な基に結合させ、ストレプトアビジン-Alexa Fluor 488等のストレプトアビジンで染色することよっても検出し得る。
【0090】
ミトコンドリアの膜電位は、例えば、JC-1等の色素およびアネキシンV-FITC等の染色液を含む標準的な技法を用いて評価し得る。そのような技法により、細胞がMPTを起こしたかどうかを決定すること、およびアポトーシスが誘導されたかどうかを評価することが可能である。
【0091】
スーパーオキシドアニオン(O2-)および過酸化水素(H2O2)等の活性酸素種は、ATP生成の副産物として生じ、細胞増殖においてシグナル伝達中間体として重要な役割を果たすが、高濃度では、脂質、タンパク質、DNA、およびRNAを損傷することにより増殖を停止させ、アポトーシスを誘導する(Zanetti et al., 2001)。O2-は、Mnスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)によりミトコンドリア内でH2O2に変換されるが、また陰イオンチャネルを解してミトコンドリアから放出され得、そこでサイトゾルCu/Zn SODにより不均化される(Vanden Hoek et al., 1998)。
【0092】
また本明細書では、細胞または細胞抽出物を候補化合物と接触させる段階、細胞内スーパーオキシドアニオン(O2-)濃度の上昇が起こるかどうかを判定する段階、および次に化合物が非増殖細胞または増殖静止細胞と比較して増殖細胞において選択的にアポトーシスを誘導するかどうかを判定する段階を含む、増殖細胞においてアポトーシスを誘導し得る可能性のある化合物を同定する方法を開示する。化合物が増殖細胞において選択的にアポトーシスを誘導するかどうかを判定する段階は、化合物が増殖細胞において細胞内スーパーオキシドアニオンレベルに及ぼす影響を、非増殖細胞または増殖静止細胞において及ぼす影響と比較することによって、当業者により容易に決定され得る。細胞内スーパーオキシドレベルの測定は、当業者に周知のアッセイ法を用いて行い得る。
【0093】
ミトコンドリアの膜間腔からのチトクロームCの放出もまた、細胞におけるアポトーシスの誘因として周知である。(非増殖細胞と比較して)増殖細胞におけるチトクロームCレベルの変化の測定は、ミトコンドリアの機能を撹乱させる化合物の同定に有用である可能性がある。
【0094】
また本明細書では、細胞または細胞抽出物を候補化合物と接触させる段階、細胞内スーパーオキシドアニオン(O2-)濃度の上昇が起こるかどうかを判定する段階、およびそれにより化合物が血管新生の阻害剤である可能性があるかどうかを判定する段階を含む、血管新生の阻害剤である可能性のある化合物を同定する方法を開示する。
【0095】
血管新生とは既存の血管からの新たな毛細血管の生成を指し、これは内皮細胞の増殖によって促進される。血管新生は、胚発生の過程においておよび成体において起こる(Carmeliet & Jain, 2001)。正常な成体哺乳動物では、血管新生は、雌の生殖周期、創傷治癒、およびいくつかの病的状態に限定されている。血管新生は、関節リウマチ、乾癬、糖尿病性網膜症、および癌等の疾患の重要な因子である。腫瘍の増殖および転移は、腫瘍の血管新生に依存する(Hanahan & Folkman, 1996)。
【0096】
治療用途
ANTに結合する化合物によるMPTの撹乱は、アポトーシスを誘導し得る。スーパーオキシドアニオン(O2-)等の活性酸素種は、細胞増殖においてシグナル伝達中間体として重要な役割を果たすが、高濃度では、増殖を停止させ、アポトーシスを誘導し得る。したがって、ANTに結合しミトコンドリア機能を選択的に阻害する化合物、または非増殖細胞と比較して増殖細胞においてスーパーオキシドアニオンの細胞内レベルを増加させる化合物は、脊椎動物の様々な疾患および病態の治療に治療的に役立つ可能性を有し得る。
【0097】
さらに、ミトコンドリアの膜間腔からのチトクロームCの放出は、細胞におけるアポトーシスの既知誘因である。チトクロームCは、カスパーゼの活性化を直接促進すると考えられている。したがって、(例えば、ANTに結合しMPTを誘導することにより)ミトコンドリア機能を撹乱させる化合物は、(非増殖細胞と比較して)増殖細胞においてチトクロームCの細胞内レベルの上昇をもたらし得、脊椎動物の様々な疾患および病態の治療に治療的に役立つ可能性を有し得る。
【0098】
障害および疾患の例は、以下のような広範なカテゴリーに分類され得る:血管新生依存性疾患、細胞増殖性疾患(例えば、乾癬、IBD、悪性腫瘍、再狭窄)、炎症性疾患、自己免疫疾患、血管疾患、血栓症、癌、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病)、骨髄異形性症候群、虚血/再灌流損傷、および臓器移植損傷。
【0099】
典型的に、癌は、発癌性腫瘍、結腸直腸癌、乳癌、肺癌、頭頚部腫瘍、肝癌、膵癌、卵巣癌、胃癌、脳腫瘍、膀胱癌、前立腺癌、および尿路/生殖管癌等の上皮起源の腫瘍;肉腫等の間葉性腫瘍;ならびにB細胞リンパ腫等の造血器腫瘍からなる群より選択される。
【0100】
典型的に、癌は血液腫瘍である。より典型的には、癌は固形腫瘍である。
【0101】
本発明の他の可能な治療用途には、炎症性疾患および/または自己免疫疾患の治療が含まれ、その例には以下のものが含まれる:関節リウマチ、血清陰性関節炎および他の炎症性関節炎、全身性エリテマトーデス、多発性動脈炎および関連症候群、全身性硬化症、シェーグレン症候群および他の炎症性眼疾患、混合結合組織病、多発性筋炎および皮膚筋炎、リウマチ性多発性筋痛および巨細胞性動脈炎、炎症性関節疾患、非炎症性関節症、軟組織リウマチ、疼痛ジストロフィー
。
【0102】
血管疾患および血栓症の例には以下のものが含まれる:アテローム性動脈硬化症の進行;一過性虚血性脳卒中、完成脳卒中、および頚動脈手術後等の脳血管障害;急性心筋梗塞(一次および二次);アンギナ;冠動脈バイパス移植片の閉塞;経皮経管冠動脈形成術後の閉塞;冠動脈ステント術後の閉塞;末梢動脈疾患における血管閉塞;手術後、または妊娠中、または固定化中の静脈血栓塞栓症。
【0103】
小血管疾患の例には以下のものが含まれる:糸球体腎炎;血栓性血小板減少性紫斑病;溶血性尿毒症症候群;胎盤機能不全、および子癇前症。
【0104】
本発明はまた、血管症候群および骨髄増殖性疾患の治療において用途を有する可能性がある。
【0105】
本発明はまた、以下の状況における血栓症の形成を予防する化合物の同定において用途を見出し得る:人工/補綴血管シャントおよび移植片;人工心臓弁;心肺バイパス術;血液灌流および血液透析。
【0106】
典型的に、本発明に従って同定される化合物は、手術および/または治療薬(化学療法薬または放射線治療薬を含む)等の他の既知の治療と併用することができる。例えば、固形腫瘍の治療に用いる場合、本発明に従って同定される化合物は、アドリアマイシン、タキソール、フルオロウリシル(fluorouricil)、メルファラン、シスプラチン、α-インターフェロン、COMP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、メトトレキセート、およびプレドニゾン)、エトポシド、mBACOD(メトトレキセート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびデキサメタゾン)、PROMACE/MOPP(プレドニゾン、メトトレキセート(ロイコビン(leucovin)レスキューを伴う)、ドキソルビシン、シクロホスファミド、タキソール、エトポシド/メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アンギオインヒビン(angioinhibin)、TNP-470、ペントサンポリサルフェート、血小板第4因子、アンギオスタチン、LM-609、SU-101、CM-101、テクガラン(Techgalan)、サリドマイド、SP-PG等の化学療法薬と共に投与することができる。他の化学療法薬には、メクロエタミン(mechloethamine)、メルファラン、クロラムブシル、シクロホスファミド、およびイホスファミドを含む窒素マスタード;カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、およびストレプトゾシンを含むニトロソ尿素;ブスルファンを含むスルホン酸アルキル;ダカルバジンを含むトリアジン;チオテパおよびヘキサメチルメラミンを含むエチエンイミン(ethyenimine;メトトレキセートを含む葉酸類似体; 5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシドを含むピリミジン類似体; 6-メルカプトプリンおよび6-チオグアニンを含むプリン類似体;アクチノマイシンDを含む抗腫瘍性抗生物質;ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、およびミトラマイシンを含むアントラサイクリン;タモキシフェンおよび副腎皮質ステロイドを含むホルモンおよびホルモン拮抗薬、ならびにシスプラチンおよびブレキナール(brequinar)を含む種々の薬剤等のアルキル化剤が含まれる。
【0107】
典型的に、本発明に従って治療すべき生理学的系(例えば、肝臓系、膵臓系)を、本発明の系を投与する前に手術によりまたは手術中に単離することができる。
【0108】
処置を施す医師によって選択された用量レベルおよびパターンを使用して、化合物または薬学的組成物の単回投与または複数回投与を行うことができる。それにかかわらず、本発明に従って同定された化合物または薬学的組成物は、患者を効果的に治療するのに十分な量の化合物を提供するように投与されるべきである。
【0109】
当業者は、日常的な実験により、アポトーシスを起こした細胞を検出し、かつ/または障害および疾患を治療または予防するのに必要とされる、本発明に従って使用する化合物または薬学的組成物の有効で無毒な量を決定し得る。一般に、有効量は、約0.0001 mg〜約1000 mg/kg体重/24時間;典型的には、約0.001 mg〜約 750mg/kg体重/24時間;約0.01 mg〜約500 mg/kg体重/24時間;約0.1 mg〜約500 mg/kg体重/24時間;約0.1 mg〜約250 mg/kg体重/24時間;約1.0 mg〜約250 mg/kg体重/24時間の範囲であると考えられる。より典型的には、有効量の範囲は、約1.0 mg〜約200 mg/kg体重/24時間;約1.0 mg〜約100 mg/kg体重/24時間;約1.0 mg〜約50 mg/kg体重/24時間;約1.0 mg〜約25 mg/kg体重/24時間;約5.0 mg〜約50 mg/kg体重/24時間;約5.0 mg〜約20 mg/kg体重/24時間;約5.0 mg〜約15 mg/kg体重/24時間の範囲であると考えられる。
【0110】
または、有効量は、最高で約500 mg/m2までであってよい。一般に、有効な投与量は、約25〜約500 mg/m2、好ましくは約25〜約350 mg/m2、より好ましくは約25〜約300 mg/m2、さらにより好ましくは約25〜約250 mg/m2、さらにより好ましくは約50〜約250 mg/m2、なおさらにより好ましくは約75〜約150 mg/m2の範囲であると考えられる。
【0111】
本明細書で開示するアルセノキシド(またはアルセノキシド等価物)化合物に関して、有効量は、約0.0001 mg〜約100 mg化合物/kg体重/24時間の範囲であってよい。例えば、有効量は、約0.001 mg〜約100 mg化合物/kg体重/24時間の範囲であってよい。例えば、有効量は、約0.01 mg〜約50 mg化合物/kg体重/24時間の範囲であってよい。例えば、有効量は、約0.1 mg〜約20 mg化合物/kg体重/24時間の範囲であってよい。例えば、有効量は、約0.1 mg〜約10 mg化合物/kg体重/24時間の範囲であってよい。
【0112】
本発明の従って同定された化合物と共に使用するさらなる活性薬剤に関して、有効量は、約0.0001 mg〜約100 mg薬剤/kg体重/24時間、好ましくは約0.001 mg〜約100 mg薬剤/kg体重/24時間、より好ましくは約0.01 mg〜約50 mg薬剤/kg体重/24時間、さらにより好ましくは約0.1 mg〜約20 mg薬剤/kg体重/24時間、さらにより好ましくは約0.1 mg〜約10 mg薬剤/kg体重/24時間の範囲であってよい。
【0113】
遅延放出製剤もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0114】
典型的に、化合物は治療する病態の持続期間中に投与され得る。
【0115】
さらに、本発明に従って使用する化合物の最適な量および各投与の間隔が、治療を受ける病態の性質および程度、投与の形態、経路、および部位、ならびに治療を受ける特定の脊椎動物の性質によって決まることは、当業者に明らかであると考えられる。また、そのような最適条件は、従来技術により決定することができる。
【0116】
所定の日数において1日当たりに投与される化合物の投与数等の、治療の最適な過程が、従来の治療過程決定試験を用いて当業者により確認され得ることもまた、当業者に明らかであると考えられる。
【0117】
本発明の方法に従って同定される化合物は単独で投与してもよいが、一般に、薬学的組成物/製剤として化合物を投与することが好ましい。一般に、薬学的製剤は当業者に周知の方法に従って調製することができ、したがって薬学的に許容される担体、希釈剤、および/またはアジュバントを含み得る。
【0118】
以下の実施例を参照して、本発明を説明する。
【0119】
実施例1
化合物の合成
方法
GSAAの合成
Donoghue et al (2000)およびWO 01/21628に記載されている方法の変法により、BRAAを調製した。水(200 mL)に溶解した炭酸ナトリウム(20 g、189 mmol)溶液にp-アルサニル酸(20.6 g、95 mmol)を少量ずつ添加した。固形物がすべて溶解した時点で、溶液はpH 10であることが認められ、これを4℃で2時間冷却した。無水ジクロロメタン(35 mL)に溶解した臭化ブロムアセチル(15 mL、173 mmol)を2回に分けて添加し、それぞれ添加した後に2〜3分間激しく振盪した。混合液を2、3分間静置し、下の有機層を排出した。98%硫酸を1滴ずつ添加して溶液をpH 2〜3に酸性化することにより、4-(N-(ブロムアセチル)アミノ)ベンゼンアルソン酸(BRAA)を沈殿させ、これを真空濾過で回収し、乾燥させ、白色固形物としてBRAAを得た。
【0120】
BRAA(3.38 g、10 mmol)、還元型グルタチオン(3.23 g、10.5 mmol)、および重炭酸ナトリウム(3.15g、37.5 mmol)を混合し、この固形混合物を0.5M重炭酸緩衝液(100 mL)に少量ずつ溶解した。透明な溶液はpH 9であることが認められ、これを完全に混合し、室温で一晩放置した。翌日、32%塩酸を1滴ずつ添加して溶液を中性pHになるまで酸性化し、十分に撹拌している無水エタノール(1 L)に酸性化した溶液を1滴ずつ添加することにより、アルコールから産物を沈殿させた。混合物を室温で1時間撹拌し、その後沈殿物が沈殿するまで3時間放置した。約300 mLを残して透明なエタノール溶液をデカントし、次いでこれを回旋し、2000 gで5分間遠心分離した。新たな無水エタノールに再懸濁することにより産物4-(N-((S-グルタチオニル)アセチル)アミノ)ベンゼンアルソン酸(GSAA)を洗浄し、再度遠心分離した。洗浄をさらに2回繰り返し、回転蒸発により、白色固形物、GSAAになるまで最終的な懸濁液を乾燥させた。1H-NMR(D2O、300 MHz)および13C-NMR(D2O、75 MHz)によりGSAAの特性を明らかにしたところ、GSAAは分子量564を有した。
【0121】
GSAOの合成
GSAOの完全な合成は、国際特許出願WO 01/21628に記載されており、その全内容は相互参照として本明細書に組み入れられる。BRAAは上記の通り調製した。次に、Donoghue et al (2000)に記載されている方法を用いて、BRAAを4-(N-(ブロムアセチル)アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(BRAO)に変換した。BRAOからGSAOへの変換手順は、以下の通り、Donoghue et al (2000)に記載されている手順の変法である。窒素雰囲気下で、還元型グルタチオン(16 g、52 mmol)を脱酸素水(1 L)に溶解した(脱酸素水は、常に窒素雰囲気下で、煮沸後に室温まで冷却することにより調製した)。BRAO(25 g、77 mmol)をこの溶液に溶解し、未溶解のBRAOが浮遊する傾向がすべてなくなるまで混合液を激しく撹拌し、その傾向がなくなった時点で撹拌速度を減少させた。トリエチルアミン(16 mL、11.6 g、115 mmol)を添加し、常に窒素下で混合液を少なくとも18時間撹拌した。急速な真空濾過によりいくらかの無色固形物を除去し、濾液が粘稠性のゲルになるまでロータリーエバポレーターで濃縮した。エタノール(250 mL)でゲルを希釈し、撹拌速度を速め、次いでアセトン(250 mL)を添加し、白色固形物が形成された。窒素下で2時間撹拌し、真空濾過により固形物を回収し、室温、真空化で恒量になるまで乾燥させた。1H-NMRによる物質の解析により、トリエチルアミンの量を決定した。最小量の脱酸素水に溶解した物質の溶液に対して10 M水溶液を添加するという形式で、等量の水酸化ナトリウム(すなわち、1 mmol NaOH/mmolトリエチルアミン)を添加した。窒素下で溶液を2時間撹拌し、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去することによりGSAO(ナトリウム塩として)を得た。以下の方法によりGSAOの特性を明らかにした:1H-NMR(D2O、400 MHz)、13C-NMR(D2O、100 MHz)、HPLC、および赤外分光法(nujol mull)。元素分析はGSAO.2H2Oの組成と一致し、質量スペクトルからは、549.1 m.u.の親分子イオン[GSAO+H]+が得られた。HPLCによると、GSAOの純度は>94%であった。
【0122】
GSCAの合成
GSCAは、以下の通りp-アルサニル酸の代わりに4-アミノ安息香酸を用いて、GSAAと同様に調製した。p-アルサニル酸について上記したように、4-アミノ安息香酸(13 g、95 mmol)のアルカリ冷却溶液を調製し、同一の方法で臭化ブロムアセチルと反応させた。下の有機層を排出し、それ自体で溶液から直接4-(N-(ブロムアセチル)アミノ)安息香酸(BRCA)を沈殿させた。BRAAの代わりにBRCA(2.58 g、10 mmol)を用いて、GSAAについての手順の残りの部分に厳密に従って、回転蒸発後に白色固形物としてGSCAを得た。1H-NMR(D2O、300 MHz)および13C-NMR(D2O、75 MHz)によりGSCAの特性を明らかにしたところ、その二ナトリウム塩は分子量528を有した。
【0123】
GSAOおよびGSAAのビオチンおよびフルオレセイン誘導体の合成
Donoghue et al. (2000)により記載されている通りにGSAO-Bを作製したところ、GSAO-Bは分子量1001を有した。Mes緩衝液、pH5.5、(5 mM、473μL)に溶解したGSAOまたはGSAA(33.8 mM)に、DMSO(240μL)に溶解したフルオレセイン-5-EXスクシンイミジルエステル(Molecular Probes、オレゴン州、ユージーン)(2.4 mg、4.1μmol)の溶液を添加し、混合液を重炭酸緩衝液、pH 9 (0.5 M、3.287 mL)で希釈して、室温で80分間放置した。次いで、この反応液をPBS (4 mL)に溶解したグリシン(100 mM)で希釈し、室温で一晩放置した。最終溶液は、三価ヒ素剤(2.00 mM)およびグリシン(50 mM)を含んでいた。フルオレセイン-5XとGSAOまたはGSAAのモル比は、約1.5:1であった。GSAO-フルオレセインおよびGSAA-フルオレセイン(GSAO-FおよびGSAA-F)の分子量は、それぞれ1024および1040であった。
【0124】
2-(2-ブロモアセチル-o-アミノ)ベンゼンアルソン酸の合成
o-アルサニル酸(4.70 g、21.7 mmol)を1.85 M KOH (25 mL)に溶解し、次いでNa2CO3 (6 g)で処理し、H2O (25 mL)で希釈した。この溶液を氷中で30分間冷却し、次に250 mL分液漏斗に添加した。CH2Cl2 (20 mL)に溶解した臭化ブロムアセチル(4 mL、46.0 mmol)の溶液を、頻繁に振ってCO2 (g)を放出させながら、約30分かけて分液漏斗に慎重に添加した。CO2の発生が停止した後、CH2Cl2を分離し、水層を濃H2SO4で酸性化した。生じた白色沈殿物を濾過により回収した(6 g、82%収率)。
【0125】
2-(2-ブロモアセチル-o-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸の合成
2-(2-ブロモアセチルアミノ)ベンゼンアルソン酸(6 g、17.8 mmol)をHBr/MeOH (1:1)に溶解した。NaI (80 mg)を添加し、反応物をN2でパージし、0℃に冷却した。約4気泡/秒でSO2の気泡を発生させ、15分後に白色沈殿物が形成し始めた。反応物を室温に温めながら、SO2の気泡をさらに2.5時間発生させた。反応物をN2で10分間パージし、濾過により固形物を回収し、H2O (x3)、エーテル(x2)で洗浄して、2-(2-ブロモアセチルアミノ)ベンゼン亜アルソン酸1.35 gを得た。最初の濾過から、さらに0.25 gを得た。全収率(1.60 g、28%)。
【0126】
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼンアルソン酸の合成
p-アルサニル酸(20 g、92 mmol)を1.85 M KOH (100 mL)に溶解し、次いでNa2CO3 (30 g)で処理し、H2O (100 mL)で希釈した。この溶液を氷中で30分間冷却し、次に500 mL分液漏斗に添加した。CH2Cl2 (60 mL)に溶解した臭化ブロムアセチル(16 mL、184 mmol)の溶液を、頻繁に振ってCO2 (g)を放出させながら、分液漏斗に慎重に添加した。添加には約2時間を要した。CO2 (g)の発生が停止した後、CH2Cl2を分離し、水層を98%H2SO4で酸性化した。生じた白色沈殿物を濾過により回収し、デシケーター内で18時間乾燥させた。24 gが得られた(72 mmol、78%収率)。
【0127】
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼンアルソン酸(15 g、45 mmol)を48% HBr(aq)/MeOH (1:1)に溶解した。NaI (200 mg、13 mmol)を添加し、反応物をN2でパージし、氷上で冷却した。約2気泡/秒でSO2 (g)の気泡を発生させ、5時間後に白色沈殿物が形成し始めた。反応物を25℃に温めながら、SO2 (g)の気泡をさらに2時間発生させた。反応物をN2で10分間パージし、濾過により固形物を回収し、H2O (x3)、エーテル(x2)で洗浄して、2-(2-ブロモアセチルアミノ)ベンゼン亜アルソン酸1.35 gを得た。5.5 gが得られた(17 mmol、38%収率)。
【0128】
NH2-Glu-Cys-(CH2CONH-C6H4-o-As{OH}2)-Gly-OH 「o-GSAO」(1)の合成
2-(2-ブロモアセチルアミノ)ベンゼン亜アルソン酸(288 mg、0.90 mmol)を脱気したH2O (5 mL)に懸濁した。NEt3 (250μL、1.7 mmol)を添加し、次いでグルタチオン(160 mg、0.521 mmol)を添加した。反応混合液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で20分間激しく撹拌した。反応液をガラスフリットフィルターを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。上清を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をデカントして真空下でさらに乾燥させた。乾燥粉末状のo-GSAOをH2O (4 mL)に溶解し、セミ分取用HPLC、C18、Vydacタンパク&ペプチドカラムに供した。緩衝液A:濾過および脱気した水に溶解した0.1% TFA;緩衝液B:濾過および脱気したアセトニトリル-濾過および脱気した水(9:1)に溶解した0.1% TFA。画分を回収し、凍結乾燥した。o-GSAOの構造を、LC-MSにより(M+ 548.4)、および1H-NMRにより確認した。HPLCによる純度は、4つのバッチに関して96.9%〜98.8%であった。
【0129】
レトロ-HO-Cys-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-カルボニル-Glu-OH (3)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(80 mg、0.25 mmol)を脱気したH2O (2 mL)に懸濁した。NEt3 (70μL、0.5 mmol)を添加し、次いでレトロ-HO-Cys-カルボニル-Glu-OH (50 mg、0.17 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバック(speed-vac)で画分を乾燥させた。
【0130】
レトロ-HO-Cys-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-カルボニル-Glu-OH (4)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(80 mg、0.25 mmol)を脱気したH2O (2 mL)に懸濁した。NEt3 (70μL、0.5 mmol)を添加し、次いでレトロ-HO-Cys-カルボニル-Glu-OH (50 mg、0.17 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0131】
H-Arg-Gly-Asp-Cys(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-OH (6)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(80 mg、0.25 mmol)を脱気したH2O (4 mL)に懸濁した。NEt3 (70μL、0.5 mmol)を添加し、次いでH-Arg-Gly-Asp-Cys-OH (50 mg、0.11 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0132】
H-Gly-Gly-Cys(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-OH (7)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(288 mg、0.90 mmol)を脱気したH2O (4 mL)に懸濁した。NEt3 (220μL、1.6 mmol)を添加し、次いでH-Gly-Gly-Cys-OH (141.2 mg、0.6 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0133】
H-Val-Thr-Cys(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-Gly-OH (8)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(80 mg、0.25 mmol)を脱気したH2O (4 mL)に懸濁した。NEt3 (70μL、0.5 mmol)を添加し、次いでH-Val-Thr-Cys-Gly-OH (50 mg、0.13 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0134】
H-Cys-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-Tyr-Phe-Gln-Asn-Cys-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-OH (9)の合成
プレッシン酸の還元:N2で脱気した10 mL 0.1 M重炭酸ナトリウムDTT溶液(99 mg、0.65 mmol)にペプチドを溶解する。溶液のpHがpH≧8であることを確認し、混合液をN2で覆う。2時間後、溶液をAcOHで酸性化し、混合液を凍結乾燥する。0.1%水性TFA溶液に溶解した後、セミ分取用RP-HPLCにより精製する。凍結乾燥する。
【0135】
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(26 mg、0.081 mmol、1.4 eq.)を脱気したH2O (3 mL)に懸濁した。NEt3 (20μL、0.14 mmol)を添加し、次いでプレッシン酸(22 mg、0.028 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0136】
3-S-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-1-プロパンスルホン酸(10)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(288 mg、0.90 mmol)を脱気したH2O (4 mL)に懸濁した。NEt3 (220μL、1.6 mmol)を添加し、次いで3-メルカプトプロパン酸(106.9 mg、0.6 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0137】
3-S-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-1-プロピオン酸(11)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(288 mg、0.90 mmol)を脱気したH2O (4 mL)に懸濁した。NEt3 (210μL、1.5 mmol)を添加し、次いでメルカプトプロピオン酸(53μL、0.6 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0138】
1-S-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-メルカプトコハク酸(13)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(288 mg、0.90 mmol)を脱気したH2O (4 mL)に懸濁した。NEt3 (210μL、1.5 mmol)を添加し、次いでメルカプトコハク酸(90 mg、0.6 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0139】
1-S-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-β-D-グルコース(14)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(288 mg、0.90 mmol)を脱気したH2O (4 mL)に懸濁した。NEt3 (210μL、1.5 mmol)を添加し、次いで1-チオ-β-D-グルコース(130.9 mg、0.6 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0140】
3-S-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-1,2-プロパンジオール(15)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(288 mg、0.90 mmol)を脱気したH2O (4 mL)に懸濁した。NEt3 (210μL、1.5 mmol)を添加し、次いで3-メルカプト-1,2-プロパンジオール(65μL、0.6 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0141】
5-S-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-1-テトラゾール酢酸(21)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(288 mg、0.90 mmol)を脱気したH2O (5 mL)に懸濁した。NEt3 (210μL、1.5 mmol)を添加し、次いで5-メルカプト-テトラゾール酢酸(110 mg、0.6 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0142】
H-Gly-Gly-Cys(CH2CONHC6H4-o-As{OH}2)-OH (22)の合成
2-(2-ブロモアセチル-o-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(160 mg、0.5 mmol)を脱気したH2O (1 mL)に懸濁した。NEt3 (140μL、1.0 mmol)を添加し、次いでH-Gly-Gly-Cys-OH (61 mg、0.26 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で20時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0143】
H-Val-Thr-Cys(CH2CONHC6H4-o-As{OH}2)-Gly-OH (23)の合成
2-(2-ブロモアセチル-o-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(80 mg、0.25 mmol)を脱気したH2O (1 mL)に懸濁した。NEt3 (70μL、0.50 mmol)を添加し、次いでH-Val-Thr-Cys-Gly-OH (50 mg、0.13 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で20時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0144】
ヒ素剤濃度のアッセイ
GSAO、GSAO-B、およびGSAO-Fの濃度は、ジメルカプトプロパノールでの滴定および5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(Sigma、ミズーリ州、セントルイス)での残存する遊離チオールの計算により測定した(Donoghue et al., 2000)。複合体は濾過滅菌し、使用時まで暗所で4℃にて保存した。これらの条件下で保存した場合、少なくとも1週間はヒ素剤の保存溶液の活性濃度の有意な喪失は、認められなかった。
【0145】
実施例2
GSAOは、ANTと反応しこれを撹乱させることによりMTP開口を誘発した
方法
ミトコンドリア膨化アッセイ
以前に記載されている通りに(Schnaitman & Greenawalt, 1968)分画遠心法を用いて、約250gの雄ウィスターラットの肝臓からミトコンドリアを単離した。最終的なミトコンドリアのペレットを、213 mMマンニトール、71 mMスクロース、および10 mMコハク酸ナトリウムを含む3 mM HEPES-KOH、pH 7.0緩衝液に、30 mgタンパク質/mLの濃度で再懸濁した。MPTの誘導は、肝ミトコンドリアを25℃で、75 mMマンニトール、250 mMスクロース、10 mMコハク酸ナトリウム、および2μMロテノンを含む3 mM HEPES-KOH、pH 7.0緩衝液に0.5 mgタンパク質/mLで懸濁して、分光光度法で評価した。緩衝液の成分はすべて、Sigma、ミズーリ州、セントルイス製であった。ヒ素剤誘導体およびGSCAは、100 mMグリシンを含むリン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解した。用いたANT結合化合物は、CsA、BKA、およびADP(Sigma、ミズーリ州、セントルイス)であった。試薬の濃度は、図の説明に示す。膨化は、Molecular Devices Thermomax Plus(カリフォルニア州、パロアルト)マイクロプレートリーダーを用いて、520 nmでの関連する光散乱の減少をモニタリングすることにより測定した。
【0146】
GSAOのANTへの結合
ラット肝ミトコンドリアを25℃で、213 mMマンニトール、71 mMスクロース、および10 mMコハク酸ナトリウムを含む3 mM HEPES-KOH、pH 7.0緩衝液に、1 mgタンパク質/mLで懸濁し、400μM 2,3-ジメルカプトプロパノール(Fluka, スイス、ブックスSG)の非存在下または存在下において100μM GSAO-Bと共に、回転ホイール上で室温で1時間インキュベートした。標識したミトコンドリアをPBSで3回洗浄し、140 mM NaCl、2.7 mM KCl、0.5% Triton-X-100、0.05% Tween-20、10μMロイペプチン、10μMアプロチニン、50μg.mL-1 4,2-(アミノエチル)-ベンゼンスルホニルフルオリド、および5 mM EDTAを含む氷冷25 mM Tris、pH 7.4緩衝液0.3 mL中で超音波処理した。4℃、18000 gで10分間遠心分離することにより溶解液を清澄化し、30μLのストレプトアビジン-ダイナビーズ(Dynal、ノルウェー、オスロ)と共に回転ホイール上で4℃で60分間インキュベートして、ビオチン標識タンパク質を単離した。超音波処理緩衝液でビーズを5回洗浄し、SDS-Laemmli緩衝液30μl中で2分間煮沸することにより、ビーズからビオチン標識タンパク質を遊離させた。還元条件下において試料を8〜16%勾配iゲルで分離し、PVDF膜に転写した。1:500希釈のヤギ抗ヒトANTポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology、カリフォルニア州、サンタクルーズ)および1:2000希釈のウサギ抗ヤギペルオキシダーゼ結合抗体(Dako、カリフォルニア州、カーピンテリア)を用いたウェスタンブロットにより、タンパク質を検出した。
【0147】
エオシン-5-マレイミドによるANTの標識
Majima et al. (1998)に従って超音波処理および分画遠心することにより、ラット肝臓亜ミトコンドリア粒子を調製した。粒子を、250 mMスクロースおよび0.2 mM EDTAを含む10 mM Tris、pH 7.2緩衝液に20 mgタンパク質/mLで懸濁し、200 nmol GSAO/mgタンパク質の非存在下または存在下で25℃で10分間インキュベートし、次いで20 nmolエオシン-5-マレイミド/mgタンパク質と共に暗所で0℃で1分間インキュベートした。10μmolジチオトレイトール/mgタンパク質を添加することにより、標識を停止した。タンパク質を4〜20%勾配iゲルで分離し、Fluor-S(商標)MultiImager(Bio-Rad、カリフォルニア州、ハーキュリーズ)を用いて、UVトランスイルミネーションによりエオシン標識ANTを可視化した。
【0148】
結果
GSAO(図1A)は、単離したラット肝ミトコンドリアの膨化を誘発した(図1Bi)。膨化率は、GSAO濃度およびインキュベーション時間の増加とともに増加した。対応する五価ヒ素剤(4-(N-((S-グルタチオニル)アセチル)アミノ)ベンゼンアルソン酸、GSAA)またはカルボン酸(4-(N-((S-グルタチオニル)アセチル)アミノ)安息香酸、GSCA)化合物(図1A)にこの効果がないことから(図1Bii)GSAOの三価ヒ素剤の部分がこの活性に関与した。孔開口の陽性対照は、Ca2+およびPiイオン(図1Bi)ならびにPAO(図1Bii)であった。
【0149】
ANT活性は、Ca2+、サイクロフィリンD、およびアデニンヌクレオチドの結合により調節される。サイクロフィリンD(Crompton et al., 1988)およびアデニンヌクレオチド(Haworth & Hunter, 1979a,b)がANTのマトリックス側に結合するのに対して、Ca2+の結合部位はいまだ決定されていない。MPTPの開口の主要な誘因は、マトリックスCa2+濃度の上昇である。EGTAでCa2+をキレート化すると、孔の開口が阻止される。Ca2+に対する誘因部位の特異性は、Mg2+等の他の二価金属イオンが阻害剤として作用することから、絶対的であるようである(Haworth & Hunter, 1979a)。サイクロフィリンDのANTへの結合は、サブミリモルのCa2+濃度における孔の開口に必要である(Halestrap et al., 2002)。シクロスポリンA (CsA)は、サイクロフィリンDに結合しANTからこれを外すことによって、孔の開口を阻止する(Crompton et al., 1988)。マトリックスADPもまた、ANTに結合しCa2+に対する誘因部位の感受性を低下させる、孔の開口の重要な調節因子である(Haworth & Hunter, 1979a,b)。ボンクレキン酸(BKA)もまたANTと相互作用し、Ca2+に対する感受性を低下させる(Hunter & Haworth, 1979)。
【0150】
Mg2+、EGTA、CsA、ADP、およびBKAはすべて、孔の開口においてGSAOの効果を阻止した(図1Biii)。これらの知見は、孔の開口におけるGSAOの特異的効果と一致し、ANTがその標的であることを支持する。
【0151】
GSAOを介するミトコンドリアの膨化の半減期は、Ca2+の添加により減少した(図1C)。この結果は、GSAOが、ミトコンドリアのマトリックス内に突出している、ANT上の3つのシステイン残基の2つを架橋することと一致する。
【0152】
ビオチンタグ化GSAO(4-(N-(S-(N-(6-((6-((ビオチニル)アミノ)ヘキサノイル)アミノ)ヘキサノイル)-グルタチオニル)アセチル)アミノ)フェニルアルセノキシド、GSAO-B)による、ANTの直接結合を図1Dに示す。GSAO-BによるANTの標識は、4倍モル過剰の小さな合成ジチオール、ジメルカプトプロパノールにより競合されたことから特異的である。エオシン-マレイミドはANTのCys160をアルキル化し(majima et al., 1998)、ADP結合を阻止する(Halestrap et al., 1997)。GSAOはANT Cys160のエオシン-マレイミドアルキル化において競合し(図1E)、これによりGSAOがCys160とCys257を架橋することが示唆された
【0153】
実施例3
GSAOは生細胞においてミトコンドリア内に濃縮された
方法
細胞培養
ウシ大動脈内皮(BAE)細胞(ATCC、メリーランド州、ロックビル)は、10%ウシ胎仔血清(FCS)、2 mM L-グルタミン、および5 U.mL-1ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco、メリーランド州、ゲイサーズバーグ)を添加したDMEMで培養した。ヒト微小血管内皮細胞株、HMEC-1(Ades et al., 1992)は、10% FCS、2 mM L-グルタミン、5 U.mL-1ペニシリン/ストレプトマイシン、10 ng.mL-1上皮増殖因子(Sigma、ミズーリ州、セントルイス)、および1μg.mL-1ヒドロコルチゾン(Sigma)を添加したMCDB131培地(Gibco)で培養した。細胞培養プラスチック製品は、Cornig Costar(ニューヨーク州、コーニング)から購入した。トリプシン/EDTA溶液はGibcoから購入した。
【0154】
免疫細胞化学法および共焦点顕微鏡検査法
8ウェルLabtekガラスチャンバースライド(Nunc、イリノイ州、ネーパービル)に、104細胞/ウェルの密度でBAE細胞を播種し、一晩接着させた。細胞を1度洗浄し、培地をハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(Gibco)に置換した。次いで、細胞を50μM GSAO-F、50μM GSAO-Fおよび250μMジメルカプトプロパノール、または50μM GSAA-Fと共に1時間インキュベートした。すべての細胞を100 nM Mitotracker(商標) Red CMXRos(Molecular Probes, オレゴン州、ユージーン)で対比染色した。次に、細胞をHBSSで3回洗浄し、80%アセトンおよび20%メタノールで10分間固定し、HBSSで3回洗浄した。スライドをVectaShield褪色防止剤(Vector Laboratories、カリフォルニア州、バーリンゲーム)にマウントし、マニキュア液で密封した。Leica DM IRB倒立顕微鏡およびLeica共焦点ソフトウェアによる共焦点システムを用いて、像を記録した。
【0155】
結果
GSAOの顕著な特徴は、生存ウシ大動脈内皮(BAE)細胞(図2)およびヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMEC-1)(データは示さず)のミトコンドリアに速やかに局在化することであった。GSAOをフルオレセインに結合させ(GSAO-F)、その細胞内局在化を共焦点蛍光顕微鏡検査により判定した。活発に呼吸している細胞のミトコンドリア内に蓄積する赤色蛍光Mitotrackerプローブ(図2ii、iv、およびvi)とGSAO-Fが共局在化することにより、ミトコンドリアの染色を確認した。GSAO-Fのミトコンドリアへの蓄積が5倍モル過剰の小さな合成ジチオール、ジメルカプトプロパノールの存在下で無効になったこと(図2iii)、および対応する五価ヒ素剤、GSAA-Fが細胞を染色しなかったこと(図2v)から、GSAO-Fのミトコンドリアへの蓄積はGSAOのジチオール反応性に特異的であった。ミトコンドリアへの局在化は、BAE細胞をGSAO-Bとインキュベーションした後に、ストレプトアビジン-Alexa Fluor 488で染色することによっても認められた(データは示さず)。
【0156】
ANTは、ミトコンドリア内膜内に豊富である。GSAOがANTのマトリックス面に隔離されることにより、GSAOのマトリックス内へのエンロトピー移入が駆動されると考えられる。この機構は、GSAOと事実上同じ電荷かつ大きさを有するGSAAが、ANTと反応しなかった、またはミトコンドリア内に蓄積しなかったという知見によって支持される。
【0157】
実施例4
GSAOは、増殖内皮細胞においてATP生成を阻害し、スーパーオキシドレベルを上昇させ、ミトコンドリアの脱分極およびアポトーシスを誘発したが、増殖静止内皮細胞においてはこれらを起こさなかった。
方法
ATPアッセイ
6ウェル培養プレート中のBAE細胞を、0.5%血清中で24時間抑止するかまたは10%血清中に置き、次いで0、60、または150μM GSAOで24時間処理した。細胞を1度洗浄した後、0.3%ウシ血清アルブミンを含むPBS 0.4 mLに再懸濁した。細胞試料50μlを水50μLおよびATP放出剤(Sigma)100μLと混合し、ルシフェリン/ルシフェラーゼATPアッセイ混合液(Sigma)を用いてATP濃度を測定した。水50μLの代わりにATP標準物質を用いて、発光単位をATP濃度に変換した。Beckmanコールターカウンターを用いて細胞数をカウントし、ATPのモルを100万個細胞当たりで表した。
【0158】
細胞増殖アッセイ
BAE細胞またはHMEC-1細胞を104細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、一晩接着させた後、示した通りに処理した。0.25%血清中での細胞増殖の抑止に関する実験では、細胞を10%血清を含む培地で播種し、一晩接着させた後、PBSで洗浄し、0.25%血清を含む培地中で24時間抑止した。処理後に残った接着細胞を、メチレンブルー(Oliver et al., 1989)を用いて測定した。
【0159】
スーパーオキシド、ミトコンドリア膜電位、ミトコンドリア量、およびアポトーシスのアッセイ
ジヒドロエチジンによるスーパーオキシドの測定、JC-1によるミトコンドリア膜電位の測定、ノニルアクリジンオレンジによるミトコンドリア量の測定、およびアネキシンVによるアポトーシスの測定については、増殖または増殖静止BAE細胞を6ウェル培養プレートにおいてGSAOで24時間または48時間処理し、次いでトリプシン/EDTAで剥離し、1度洗浄し、無血清培地で2 x 106細胞/mLになるように再懸濁した。次いで、細胞をジヒドロエチジン(5μM、Molecular Probes)と共に室温で15分間、またはJC-1(0.5μg.mL-1、Molecular Probes)、アネキシンV-FITC(50μl.mL-1)(Pharmingen、米国、カリフォルニア州、ラホーヤ)、もしくはアクリジンオレンジ10-ノニルブロマイド(5μM、Molecular Probes)と共に室温で30分間インキュベートした。次に、細胞を1度洗浄し、無血清培地0.5 mLで再懸濁し、氷中に移し、フローサイトメトリーにより直ちに蛍光を定量化した。
【0160】
結果
GSAOは生細胞のミトコンドリア内に濃縮され、ミトコンドリア機能および細胞生存度を撹乱させた。増殖細胞は、増殖静止細胞よりも多くのミトコンドリア量および呼吸を有する。GSAOが増殖細胞に対して選択的効果を有するかどうかを試験するため、増殖BAE細胞または増殖静止BAE細胞を、濃度を上昇させていくGSAOと共に48時間インキュベートした。
【0161】
増殖BAE細胞の生存度の減少に関するGSAO IC50は約75μMであったが(図3Ai)、この化合物は増殖静止細胞に対してほとんど影響を及ぼさなかった。対照化合物、GSAAおよびGSCAでは、1.0 mMの濃度まで増殖BAE細胞の生存度に有意な影響を及ぼさなかった(データは示さず)。増殖細胞の生存度に対するGSAOの効果は、時間依存的であった。インキュベーション時間を48時間から72時間に延ばした場合、GSAO IC50は約75μMから約25μMに減少した(データは示さず)。一方、PAOは、約200 nMのIC50で、増殖BAE細胞と増殖静止BAE細胞に同等に毒性を示した(図3A(ii))。HMEC-1細胞を用いても同様の結果が得られた(データは示さず)。増殖内皮細胞の生存度に及ぼすGSAOの効果は、ミトコンドリア膜電位の喪失およびアポトーシスと密接に関連していた(図3B)。これらのパラメータは、それぞれJC-1色素およびFITC結合アネキシンVを用いて測定した。サイトゾル(緑色蛍光)とミトコンドリア(赤色蛍光)とのJC-1分布率がミトコンドリア膜電位を示し(Smiley et al., 1991)、アネキシンVはアポトーシス細胞の表面上に露出したホスファチジルセリンに結合する。
【0162】
増殖内皮細胞におけるGSAOのANTへの結合は、ATP生成に影響を及ぼした。増殖BAE細胞のATP含量は増殖静止細胞のATP含量の約2倍であったが、150μM GSAOと共に24時間インキュベートすることにより、増殖細胞のATPレベルは増殖静止細胞のレベルまで減少した(図4ai)。この結果は、増殖細胞の生存度に及ぼすGSAOの選択的効果を反映している(図4ai)。細胞内ATPの減少がミトコンドリアの形成よりもむしろミトコンドリアのATP合成に及ぼすGSAOの効果に起因することを確認するため、ノニルアクリジンオレンジを用いてミトコンドリア量を測定した。この色素は、ミトコンドリア膜内のカルジオリピンに結合する(Petit et al., 1992)。増殖細胞のミトコンドリア量は増殖静止細胞のミトコンドリア量の約2倍であり、GSAO処理により変化しなかった(図4aii)。
【0163】
スーパーオキシドアニオン(O2-)等の活性酸素種は、高濃度において、細胞増殖を抑止しアポトーシスを誘導し得る。O2-の細胞内レベルに及ぼすGSAOの効果を試験するため、BAE細胞をGSAOで24時間処理し、O2-およびH2O2の細胞内レベルをそれぞれ色素ジヒドロエチジウムおよびCM-H2-DCFDAを用いて測定した。O2-の細胞内レベルは増殖BAE細胞においてGSAO濃度と共に直線的に増加したが、増殖静止BAE細胞では増加しなかった(図4b)。H2O2レベルの減少がほんのわずかであったことから、GSAOのこの効果は、SOD活性の阻害に起因したのではない(図4c)。例えば、120μM GSAOで24時間処理すると、H2O2は30%減少したが、O2-のレベルは100%増加した。この知見は、細胞内のO2-およびH2O2レベルの2チャンネルフローサイトメトリー解析を用いて確認した。大部分の細胞において、対応するH2O2の減少を示さずにO2-レベルが増加した(データは示さず)。一方、GSAAはO2-レベルにもH2O2レベルにも影響を及ぼさなかった。GSAO処理によるO2-レベルの直線的増加は、ミトコンドリアの完全性の破壊と一致する。
【0164】
実施例5
GSAOはミトコンドリアからのチトクロームCの放出を誘発する
GSAOの抗増殖効果とアポトーシス促進効果を識別するため、処理した細胞をヨウ化プロピジウム(PI)で染色してアポトーシス後期細胞および死細胞を検出した。GSAOで48時間処理した後の細胞総数およびPI陽性細胞の割合を、フローサイトメトリーにより測定した。
【0165】
BAE細胞(図5a)または初代ヒト皮膚微小血管内皮細胞(図5b)の増殖抑止のIC50は、それぞれ約10μMおよび約15μMであった。生存度損失のIC50はそれぞれ約75μMおよび約35μMであり、GSAOはアポトーシスを誘導するのに必要な濃度よりも低い濃度で増殖を抑止したことが示された。ウシ血管平滑筋細胞の増殖抑止のIC50は約30μMであった。対照的に、試験したすべての腫瘍細胞は、GSAOに対する耐性がより高かった(図5c〜g)。増殖抑止および生存度喪失を誘導するGSAOの濃度は、内皮細胞よりも腫瘍細胞の方が、それぞれ3〜>32倍および2〜9倍高かった(表1)。GSAO処理によりルイス肺癌細胞の脱凝集が起こったが、これがこの腫瘍株の細胞数の明白な増加の理由であった(図5e)。
【0166】
(表1)内皮細胞および腫瘍細胞の増殖および生存度に及ぼすGSAOの効果
1未検。LLC細胞は培養液中で凝集し、GSAO処理により細胞の脱凝集が起こったが、これにより細胞数の推定が損なわれた。
【0167】
実施例6
GSAOはミトコンドリアからのチトクロームCの放出を誘発する
方法
ラット肝ミトコンドリアを25℃で、75 mMマンニトール、250 mMスクロース、10 mMコハク酸ナトリウム、および2μMロテノンを含む3 mM HEPES、pH 7.0緩衝液に1 mgタンパク質/mLで懸濁し、ANT結合化合物で0〜60分間処理した。試薬の濃度は、図の説明に示す。8000 gで5分間遠心分離して反応液0.25 mL中のミトコンドリアをペレット化し、上清をMicrocon YM-3膜(Millipore、マサチューセッツ州、ベッドフォード)を通す限外濾過により10倍に濃縮した。濃縮した上清を非還元条件下においてGradipore(オーストラリア、シドニー)製の8〜16%勾配iゲルで分離し、PVDF膜に転写した。抗ヒトチトクロームCポリクローナル抗体(製品556433、BD Pharmingen)および抗ウサギペルオキシダーゼ結合抗体(Dako、カリフォルニア州、カーピンテリア)を用いたウェスタンブロットにより、タンパク質を検出した。GS-700イメージングデンシトメーターおよびMulti-Analystソフトウェア(Bio-Rad、カリフォルニア州、ハーキュリーズ)を用いて、化学発光フィルムを解析した。
【0168】
結果
単離したミトコンドリアのGSAOとのインキュベーションにより、チトクロームCの培地中への時間依存的な放出が誘発された(図6A)。ANTリガンド、シクロスポリンAは、この放出を部分的に阻害した(図6B)。
【0169】
実施例7
GSAOはヒヨコ絨毛尿膜(CAM)において血管新生を阻害した
方法
受精3日目の白色レグホーン卵(Spafas、コネチカット州、ノーウィッチ)を割り、無傷の卵黄を有する胚を20 x 100 mmペトリ皿内に入れて、37℃および3%CO2で3日間インキュベートした(Folkman, 1985)。次いで、GSAAまたはGSAOのいずれかを5、10、または50μg含むメチルセルロース(Fisher Scientific、ニュージャージー州、フェアローン)ディスクを個々の胚のCAMに乗せ、37℃および3%CO2で48時間インキュベートした。ディスクは、テフロン棒上で、0.45%メチルセルロース10μlに溶解したGSAAまたはGSAOを乾燥させることにより作製した。立体顕微鏡を用いてCAMを観察し、明白な影響のないこと、または無血管領域によって定義されるCAM血管新生の阻害に関して記録した。場合により、CAM血管に墨汁を注入して撮影した。
【0170】
結果
GSAOがインビトロにおいて増殖静止内皮細胞を死滅させずに増殖内皮細胞を選択的に死滅させる能力を考慮して、GSAOがインビボにおける血管新生の有効な阻害剤であるかどうかを判定する試験を行った。
【0171】
ヒヨコ絨毛尿膜(CAM)アッセイは、血管新生阻害の検出および解析に用いられている(Nguyen et al., 1994)。GSAOは、濃度依存的にCAM血管新生を阻害した(図7A)。血管新生の阻害は、6日目CAMにGSAOを含むメチルセルロースペレットに移植してから48時間後の無血管領域と定義した(図7Ai)。50μg/ペレットまでのGSAAは、CAM血管新生に影響を及ぼさなかった。
【0172】
実施例8
GSAOはマウスにおいて腫瘍の血管新生および腫瘍の増殖を阻害した
方法
原発腫瘍増殖アッセイ
雌の7〜9週齢SCIDマウスまたはC57BI6/Jマウスを用いた(Massachusetts General Hospital、マサチューセッツ州、ボストン)。マウスは3〜5匹の集団で12時間の明暗サイクルで飼育し、動物用固形飼料および水を自由に与えた。SCIDマウスまたはC57BI6/Jマウスをイソフルランの吸入により麻酔し、背部の皮膚を剪毛してエタノールで消毒し、PBS 0.2 mLまたはLLC細胞については生理食塩水0.2 mLに懸濁した2.5 x 106個のBxPC-3細胞、HT1080細胞、またはLLC細胞の懸濁液を、基部正中線にS.C.注射した。LLC細胞はO'Reilly et al. (1997)に従って調製した。腫瘍体積は、式、a.b2.0.52(式中、aは長径でありbは短径である)を用いて計算した。
【0173】
免疫組織化学法
腫瘍を緩衝化Formalde-Fresh(Fisher Scientific、ニュージャージー州、フェアローン)で固定し、パラフィンに包埋し、5μM厚の切片を作製し、ガラススライド上に置いた。切片をヘマトキシリンおよびエオシンで、またはCD31、PCNA(Holmgren et al., 1995)、もしくは断片化DNAに関して染色した。対照群および処置群に由来する最小および最大の腫瘍を含む3つの腫瘍において微小血管をカウントし、Weidner et al. (1991)に従って新血管新生の最も活発な領域における密度を評価した。増殖指数は、倍率400xでスコアリングした細胞の割合により評価した。2枚の個々の切片において、最低限1000個の細胞をカウントした。アポトーシス指標は、倍率400xでスコアリングした細胞の割合により評価した。2枚の個々の切片において、最低限1500個の細胞をカウントした。
【0174】
結果
免疫無防備状態のマウスおよび免疫能のあるマウスそれぞれにおけるヒトおよびマウス原発腫瘍の増殖はどちらも、GSAOの全身投与により顕著に抑制された。BxPC-3腫瘍(図7C)もしくはHT1080腫瘍(図7D)を有するSCIDマウス、またはLLC腫瘍(図7E)を有するC57BI6/Jマウスを、腫瘍から離れた部位におけるGSAO 10 mg/kg/日の皮下投与により処置した結果、腫瘍増殖率がそれぞれ>90%、約70%、および約50%阻害された。対照GSAAの投与では、溶媒のみの投与と比較した場合、すべての実験において腫瘍増殖率は<20%阻害された(データは示さず)。SCIDマウスまたはC57BI6/Jマウスに対する、GSAOまたはGSAA投与の明白な副作用は認められなかった。実験期間を通してGSAOおよびGSAA処置群のマウスの平均体重は同様であり、GSAOまたはGSAA処置したマウスの心臓、肺、肝臓、腎臓、および脾臓に、明白な肉眼的相違も形態学的変化も認められなかった(データは示さず)。
【0175】
図7Cに記載した実験による腫瘍の免疫組織化学的解析から、GSAO処理した腫瘍の血管密度が有意に減少したことが示された(p<0.001)(図7F)。GSAAおよびGSAO処理した腫瘍の増殖指標が同様であったのに対して、GSAA処理した腫瘍と比較してGSAO処理した腫瘍のアポトーシス指標に有意な増加が認められた(p=0.05)(図6F)。腫瘍血管新生の阻害は、腫瘍細胞のアポトーシスの増加と関連づけられた(O'Reilly et al. 1997)。アポトーシスが高率であることが腫瘍細胞の高い増殖率の平衡を保たせ、その結果腫瘍の大きさが最終的に増加しなかったと考えられる(Holmgren et al., 1995)。
【0176】
腫瘍増殖に及ぼすGSAOの効果は、腫瘍血管新生の阻害と一致する。GSAOはインビボにおいて内皮細胞の増殖を抑止したが、>30倍高い濃度ではBxPC-3の増殖に効果を及ぼさず(表1)、GSAOの全身投与によりインビボにおける腫瘍の血管増生は顕著に減少したが、BxPC-3腫瘍細胞の増殖指標には影響を及ぼさなかった(図7F)。
【0177】
実施例9
GSAOおよび関連類似体のBAE細胞に対する抗増殖活性の比較
方法
1日目においてDMEM 10% FBS中1000細胞/ウェルを有する96ウェルプレートで、化合物1〜11、12〜15、および20〜23を72時間スクリーニングした。2日目に、様々な濃度の化合物で細胞を処理した。4日目に、MTT顕色(550 nmで測定)により細胞増殖を測定し、未処理の細胞と比較した。IC50値を決定し、GSAOに対する活性の増加を以下の通りに算出した:
活性増加率 = IC50(GSAO) / IC50(GSAO類似体)
【0178】
結果を表2および図8に要約する。
【0179】
(表2)GSAOおよび関連類似体のBAE細胞の増殖に対する活性
1回しか測定していない化合物9を除いて、IC50値はすべて少なくとも2回の異なる実験から得た。
【0180】
結果
表2に示した結果から、アルセノキシド基がオルト位にある(フェニレン環のリンカー基の位置と比較して)化合物が、アルセノキシド基がパラ位にある類似の化合物よりも有意に活性が高いことが示唆された。例えば、化合物1(「o-GSAO」)は、GSAOよりも活性が53.2倍高い。同様に、「オルト-アルセノキシド」化合物4は、対応するp-アルセノキシド類似体(化合物3)よりも活性が約140倍高く;化合物22は、対応するp-アルセノキシド化合物7よりも活性が約106倍高く;化合物23は、対応するp-アルセノキシド化合物8よりも活性が約20倍高い。ヒ素部分をオルト位に位置づけるとヒ素残基とジチオールとの相互作用が立体的に妨げられえると考えていたため、これらの結果はまったく予期しないものであった。
【0181】
o-アルセノキシド化合物およびp-アルセノキシド化合物のBAE細胞に対する抗増殖効果の比較を図9に示す。
【0182】
化合物のBAE細胞に対する抗増殖効果と分子量の比較を図10に示す。
【0183】
化合物のBAE細胞に対する抗増殖効果とLog P値の比較を図11に示す。
【0184】
実施例10
GSAOおよび関連類似体のミトコンドリア孔遷移の誘導に及ぼす効果
方法
単離後に-80℃で1日または2日凍結したラット肝ミトコンドリアを用いて、スクリーニングを行った。マイクロプレートリーダーを用いて、520 nmにおける光散乱の減少をモニタリングすることにより、ミトコンドリアの膨化を測定した。
【0185】
すべての実験において、最大半減の膨化に必要な時間を各化合物について決定した。次いで、膨化率を算出し、GSAOと比較した。GSAOに対する膨化率の増加を以下の通りに算出した:
膨化増加率 = 増加率(GSAO類似体) / 増加率(GSAO)
結果を表3に要約し、図12に示す。
【0186】
(表3)GSAOおよび関連類似体のMPTP誘導に及ぼす効果
1回しか試験していない化合物15を除いて、すべての化合物は、MPTP誘導特性に関して異なるミトコンドリア調製物において少なくとも2回試験した。
【0187】
結果
試験した化合物はすべて、GSAOと同様であるかまたはそれよりも高い誘導活性を示した。最も活性の高い化合物は1、4、22、および23であり、GSAOと比較して5.4〜16.3倍の活性の増加を示した(表3;図12)。BAE細胞に対する抗増殖活性と同様にMPTP誘導に関しても、オルト-アルセノキシド化合物(1、4、22、および23)が、対応するパラ-アルセノキシド化合物(それぞれGSAO、3、7、および8)よりも高い活性を有した。
【0188】
化合物のMPTP誘導と分子量の比較を図13に示す
【0189】
化合物のMPTP誘導とLog Pの比較を図14に示す。
【0190】
GSAOおよび関連類似体の抗増殖活性を、それらの化合物がMPTを誘導する能力と比較した。結果を図15に示す。どちらの試験においてもGSAOと比較して活性の増加を示した化合物は、オルト-アルセノキシド化合物1、4、22、および23であった。
【0191】
実施例10
オルトおよびパラ置換型アルセノキシド化合物のチオールに対する親和性の比較
フェニレン環のアルセノキシド部分のオルト位またはパラ位が、ジチオールに結合する化合物の能力に有意に影響を及ぼすかどうかを判定するため、GSAO(パラ-アルセノキシド)および化合物1(オルト-アルセノキシド)をDTTで滴定した。
【0192】
図16に示すように、GSAOと化合物1のヒ素反応性に有意な相違は認められなかった。
【0193】
実施例11
GSAOとo-GSAOの比較 - ミトコンドリア膨化アッセイ
方法
以前に記載されている通りに(Don et al., 2003)分画遠心法を用いて、約250gの雄ウィスターラットの肝臓からミトコンドリアを単離した。最終的なミトコンドリアのペレットを、213 mMマンニトール、71 mMスクロース、および10 mMコハク酸ナトリウムを含む3 mM HEPES-KOH、pH 7.0緩衝液に、30 mgタンパク質/mLの濃度で再懸濁した。ミトコンドリア膜透過性遷移の誘導は、肝ミトコンドリアを25℃で、75 mMマンニトール、250 mMスクロース、10 mMコハク酸ナトリウム、および2 mMロテノンを含む3 mM HEPES-KOH、pH 7.0緩衝液に0.5 mgタンパク質/mLで懸濁して、分光光度法で評価した。膨化は、マイクロプレートリーダーを用いて、520 nmでの関連する光散乱の減少をモニタリングすることにより測定した。
【0194】
結果
単離したミトコンドリアの最大膨化の半減期は、所与の濃度のo-GSAOではGSAOと比較して3〜5倍早かった(図17)。実際に、o-GSAOはミトコンドリア膜透過性遷移の誘導において、親油性PAOとほぼ同じ程度有効であった(図17D)。
【0195】
ANTの孔形成は、生理的条件下において、Ca2+、サイクロフィリンD、およびアデニンヌクレオチドの結合により調節される。ミトコンドリア膜透過性遷移孔の開口の主要な誘因は、マトリックスCa2+濃度の上昇である。EGTAによるCa2+のキレート化により孔の開口が阻止され、Mg2+等の過剰な他の二価金属イオンでも同様に阻止される。EGTAおよびMg2+のどちらも、GSAO依存性膨化を阻止した(図18)。サイクロフィリンDのANTへの結合は、サブミリモルのCa2+濃度における孔の開口に必要である。シクロスポリンA (CsA)は、サイクロフィリンDに結合しANTからこれを外すことによって、孔の開口を阻止する。さらに、ADPは、ANTに結合しCa2+に対する誘因部位の感受性を低下させることにより、孔の開口を阻止する。CsAおよびADPは、孔の開口に対するo-GSAOの効果を阻止した(図19)。
【0196】
実施例12
GSAOとo-GSAOの比較 - 細胞増殖および生存度アッセイ
方法
BAE細胞またはヒト膵癌BxPC-3細胞は、10%ウシ胎仔血清を含むDMEM中、103細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、24時間接着させた。細胞を洗浄し、10%ウシ胎仔血清およびGSAOまたはo-GSAOを含むDMEMと共にインキュベートし、さらに48時間培養した。一部のBAE細胞は0.25%血清を含む培地中で24時間抑止し、0.25%または10%血清を含む培地中、GSAOまたはo-GSAOの存在下でさらに48時間培養した。MTTを用いて、生存接着細胞を測定した。
【0197】
結果
BAE細胞の増殖の阻害において、o-GSAOはGSAOよりも約50倍有効であった。BAE細胞の増殖抑止のIC50は、GSAOおよびo-GSAOそれぞれについて8.3±2.1μMおよび0.16±0.03μMであった(図20A)。o-GSAOはGSAOと同様に、BxPC-3細胞の増殖と比較してBAE細胞の増殖の選択的阻害剤であった。BxPC-3細胞の増殖抑止のIC50は、GSAOおよびo-GSAOそれぞれについて>300μMおよび約2μMであった(図20B)。しかし、GSAOと比較して、o-GSAOは増殖(血管新生)内皮細胞に選択的ではなかった(図21)。o-GSAOは、増殖内皮細胞および増殖静止内皮細胞の生存度を同等に十分に減少させた。o-GSAOに対する反応は、この実験におけるPAOと非常によく類似していた(Don et al., 2003を参照のこと)。
【0198】
実施例13a
GSAOとo-GSAOの比較 - 原発腫瘍増殖アッセイ
方法
雌の7〜9週齢Balb Cヌードマウスを用いた(UNSW Biological Resource Centre)。マウスは3〜5匹の集団で12時間の明暗サイクルで飼育し、動物用固形飼料および水を自由に与えた。PBS 0.2 mLに懸濁した2.5 x 106個のBxPC-3細胞の懸濁液を、基部正中線に皮下注射した。腫瘍を確立させ、約40 mm3の大きさになるまで増殖させ、その後無作為に4群に分類した。腫瘍体積は、式、a.b2.0.52(式中、aは長径でありbは短径である)を用いて計算した。動物を、PBS 0.1 ml中、1または10 mg/kg/日の用量のGSAOまたはo-GSAOで処置した。化合物は、腫瘍から離れた部位に皮下投与した。2日または3日おきに、腫瘍体積およびマウス体重を測定した。
【0199】
結果
Balb Cマウスへのo-GSAOの投与では短期間の行動的副作用が認められたが、体重の減少は認められなかった。結果を表3および図22に示す。
【0200】
(表3)o-GSAO投与の副作用
a:注射から20〜25分後に行動徴候が現れ、5〜10分間持続した。
b:注射から10〜15分後に行動徴候が現れ、5〜10分間持続した。
【0201】
実施例13b
GSAOとo-GSAOの比較 - 抗腫瘍効果
方法
約40 mm3のBxPC-3腫瘍を有するBalb-Cヌードマウスを無作為に4群に分類し(n=10または11/群)、PBS 0.1 ml中、1または10 mg/kg/日のGSAO(パートA)またはo-GSAO(パートB)を皮下投与した。パートCおよびDはそれぞれの群のマウス体重であり、矢印が処置の開始を示す。データポイントは、腫瘍体積またはマウス体重の平均値±SEである。10 mg/kg o-GSAOによる処置(パートB)は、11匹のうち7匹のマウスの注射部位において壊死および炎症が起こったため(3/11は重篤な潰瘍を有し、4/11は中程度の潰瘍を有した)、14日目に終了した。この群では、体重減少も多少認められた(パートD)。
【0202】
結果
Balb Cマウスへのo-GSAOの投与後に短期間の行動的副作用が認められ、また、同一部位への反復注射により皮膚の肥厚および時に壊死も認められた。腫瘍実験(実施例13a)におけるBalb Cヌードマウスに行動的副作用は認められなかったが、これらのマウスにおいて皮膚の壊死はより重篤であった。実際に、10 mg/kg o-GSAOでの処置は、11匹のうち7匹のマウスの注射部位において重篤な壊死および炎症が起こったため、14日目に終了した。両マウス系統のうち唯一体重減少が認められたのは、この群であった。これらの副作用は、GSAO投与では認められなかった(図23)。
【0203】
要約すると、o-GSSAOはインビトロにおいてGSAOよりも有効であるが、GSAO投与では明白でない副作用を有する。o-GSAOはGSAOと異なり、増殖静止内皮細胞と比較して増殖内皮細胞に対して選択的ではない。
【0204】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】GSAOは、ANTと反応しこれを撹乱させることによりMTP開口を誘発した。A. GSAO、GSAA、およびGSCAの構造。B. GSAOはミトコンドリアの膨化を誘発した。膨化は、520 nmでの関連する光散乱の減少を60分間にわたってモニタリングすることにより測定した。トレースは、少なくとも2つの異なるミトコンドリア調製物における最低でも3回の実験の代表値である。パートiでは、ミトコンドリアを、なし (●)、25 (○)、50 (▲)、100 (△)、または200 (■)μM GSAOと共にインキュベートした。孔開口の陽性対照は、150μM Ca2+および6 mM Pi (□)であった。パートiiでは、ミトコンドリアを、なし (●)、100μM GSCA (△)、100μM GSAA (▲)、または100μM GSAO (■)と共にインキュベートした。孔開口の陽性対照は、25μM PAO (○)であった。パートiiiでは、ミトコンドリアを、3 mM Mg2+ (▼)、100μM EGTA (△)、10μM BKA (▲)、5μM CsA (▽)、もしくは8 mM ADP (○)の存在下または非存在下 (■)において、100μM GSAOと共にインキュベートした。比較のために、処理なし (●)を示す。C. Ca2+濃度の上昇により、MPTPがGSAOに対して感作される。ミトコンドリアを、Ca2+の非存在下または濃度を上昇させていくCa2+の存在下において、50 (●)、75 (○)、100 (■)、または200μM (□) GSAOと共にインキュベートし、最大半減の膨化を測定した。D. GSAO-BによるANTの標識。単離したラットミトコンドリアを、4倍モル過剰のジメルカプトプロパノール(DMP)の非存在下(レーン1)または存在下(レーン2)においてGSAO-Bで標識し、ビオチン標識タンパク質をストレプトアビジン-アガロースビーズで回収し、SDS-PAGEで分離し、ANTに関してウェスタンブロットした。E. GSAOは、ANT内のCys160のエオシン-マレイミドによるアルキル化において競合した。ラット亜ミトコンドリア粒子を、GSAOの非存在下(レーン1)または存在下(レーン2)においてエオシン-5-マレイミドで標識し、エオシン標識ANTをSDS-PAGEで分離し、トランスイルミネーションにより検出した。
【図2】GSAOは生細胞においてミトコンドリア内に濃縮された。GSAO-F (i)およびMitotracker Red (ii)と共にインキュベートしたBAE細胞の共焦点顕微鏡検査であり、単一細胞のミトコンドリア内に化合物が共局在化することを示す。GSAO-Fは、DMPと共にインキュベートした場合、細胞を染色しなかった(iiiおよびiv)。五価ヒ素剤、GSAA-Fもまた、細胞を染色しなかった(vおよびvi)。
【図3】GSAOは、増殖内皮細胞においてミトコンドリアの脱分極およびアポトーシスを誘発したが、増殖静止内皮細胞においてはこれらを誘発しなかった。A. GSAOは増殖内皮細胞の生存度を減少させたが、増殖静止内皮細胞の生存度は減少させなかった。一方、PAOは両細胞種に同等に毒性を示した。BAE細胞は、0.25%血清を含む培地中で24時間抑止し、その後0.25%または10%血清を含む培地中で、GSAO (i)またはPAO (ii)と共に48時間培養した。48時間処理した後の接着細胞数を測定した。結果は、3回の実験の平均値±SEである。B. GSAOは、BAE細胞においてミトコンドリアの脱分極を誘発し、アポトーシスを誘導した。細胞を10%血清およびGSAOを含む培地中で48時間培養した後、JC-1またはアネキシンVで標識した。ミトコンドリア膜の脱分極(JC-1緑色/赤色蛍光)およびアポトーシスの誘導(アネキシンV結合)に関して陽性である細胞の割合を測定した。2回の異なる実験において、同様の結果が観察された。
【図4】GSAOは、増殖内皮細胞においてATP生成を阻害しスーパーオキシドレベルを上昇させたが、増殖静止内皮細胞においてはこれらを起こさなかった。A. BAE細胞は、0.5%または10%血清を含む培地中で24時間培養した後、GSAOの存在下でさらに24時間培養した。パートiでは、ルシフェリン/ルシフェラーゼアッセイを用いて、細胞内ATPレベルを測定した。結果は、4回の実験の平均値±SEMである。パートiiでは、ノニルアクリジンオレンジ(NAO)の取り込みによりミトコンドリア量を測定した。結果は、2回の実験の平均値±範囲である。B. 0.5%または10%血清を含む培地中で24時間培養した後に、GSAOの存在下でさらに24時間培養したBAE細胞における、ジヒドロエチジンを用いて測定したスーパーオキシドレベル。結果は、2回の実験の平均値±範囲である。C. 10%血清およびGSAOを含む培地中で24時間培養したBAE細胞における、O2-(y軸)の同時測定。各象現内の細胞の割合を、角の最外部に示す。
【図5】GSAOは、腫瘍細胞と比較して内皮細胞に対して選択的に毒性を示した。2種類の初代内皮細胞(AおよびB)および5つの腫瘍細胞株(C〜G)の細胞増殖および生存度に及ぼすGSAOの効果。4つのヒト(BxPC-3膵臓、HT1080線維肉腫、A549肺、およびHL60赤白血病)癌細胞株および1つのマウス(LLC肺)癌細胞株を試験した。結果は、3回の処理の平均値±SEMである。
【図6】GSAOはミトコンドリアからのチトクロームCの放出を誘導した。A. ラット肝ミトコンドリアを100μM GSAOと共に0〜60分間インキュベートし、培地中に放出されたチトクロームCをウェスタンブロットにより測定した。ウェスタンブロットおよび対応する定量化を示す。B. ラット肝ミトコンドリアをなし、100μM GSAO、100μM GSAOおよび5μMシクロスポリンA (CsA)、または陽性対照としての150μM Ca2+および6 mM Piと共に30分間インキュベートした。培地中に放出されたチトクロームCをウェスタンブロットにより測定した。
【図7】GSAOは、CAM血管新生、ならびにマウスにおける腫瘍血管新生および腫瘍増殖を阻害した。A. 10μgのGSAA(上図)またはGSAO(下図)を含むメチルセルロースディスクと共に48時間インキュベートした後のCAMの写真。点線の円は、ディスクを乗せた位置を示す。B. 5、10、または50μg GSAO/ペレットにおける、5つの領域のうち、血管新生の阻害に関して陽性であった領域の数。GSAAは、50μg/ペレットまでCAM血管新生を阻害しなかった。C〜E. 約0.1 gのBxPC-3腫瘍(パートC)もしくはHT1080腫瘍(パートD)を有するSCIDマウス、または約0.1 gのLLC腫瘍(パートE)を有するC57BI6/Jマウスを、無作為に2群(n=4)に分類し、100 mMグリシンを含むPBS 0.2 mL中、10 mg/kg/日のGSAAまたはGSAOをS.C.投与した。データポイントは、腫瘍体積の平均値±SEである。E. パートCに示した実験による、GSAAまたはGSAOによる処置31日目のBxPC-3腫瘍の組織学的切片を、血管新生(CD31)、増殖(PCNA)、およびアポトーシス(TUNEL)について解析した。
【図8】GSAOと比較した、化合物1〜11、13〜15、および20〜23のBAE細胞に対する抗増殖活性。
【図9】フェニレン環のオルト位またはパラ位にアルセノキシド基を有する化合物の、BAE細胞に対する抗増殖活性の比較。
【図10】GSAOおよび関連類似体の、BAE細胞に対する活性と分子量の相互関係。
【図11】GSAOおよび関連類似体の、BAE細胞に対する活性とLog P値の相互関係。
【図12】GSAO類似体およびGSAOによるMPTPの誘導の比較。
【図13】GSAOおよび関連類似体の、MPTP誘導と分子量の相互関係。
【図14】GSAOおよび関連類似体の、MPTP誘導とLog Pの相互関係。
【図15】BAE細胞に対する抗増殖活性とMPTP誘導の比較。
【図16】GSAOおよび化合物1のDTTとの相互作用の比較。
【図17】GSAOまたはo-GSAOによるミトコンドリア膜透過性遷移の誘導。膨化は、520 nmにおける光散乱の減少により測定した。単離したミトコンドリアを、様々な濃度のGSAO(パートA)またはo-GSAO(パートB)と共にインキュベートした。2つの異なる実験におけるGSAOまたはo-GSAO濃度の関数としての膨化の半減期をパートCに示す。GSAOまたはPAO濃度の関数としての膨化の半減期をパートDに示す。パートAおよびBにおける陽性対照は、150μM Ca2+および6 mM Pi (■)であった。
【図18】GSAOまたはo-GSAOのミトコンドリア膜透過性遷移に及ぼす効果のカルシウム依存性。ミトコンドリアを、濃度を上昇させていくCa2+のもと、様々な濃度のGSAO(パートA)またはo-GSAO(パートB)と共にインキュベートし、最大半減の膨化を測定した。
【図19】ANTリガンドは、o-GSAOによるミトコンドリア膜透過性遷移の誘導を阻止する。ミトコンドリアを、EGTA、Mg2+、CsA、もしくはADPの非存在下または存在下において、200μM o-GSAOと共にインキュベートした。陽性対照は、150μM Ca2+および6 mM Pi (■)であった。
【図20】GSAO (●)またはo-GSAO (○)と共に10%血清を含む培地中で48時間インキュベートした後に残存した、接着BAE細胞(パートA)または接着BxPC-3細胞(パートB)の数。各データポイントは、三つ組測定値の平均値±SEである。BAE細胞についての結果は、6回(GSAO)または2回(o-GSAO)の異なる実験による。
【図21】GSAO (A)またはo-GSAO (B)と共に0.25% (○)または10% (●)血清を含む培地中で48時間インキュベートした後に残存した、接着BAE細胞の数。各データポイントは、三つ組測定値の平均値±SEである。
【図22】o-GSAOの毒性。Balb-Cマウス(6〜8週齢、3匹/群)に、PBS 0.1 ml中、1または10 mg/kg/日のo-GSAOを皮下投与した。データポイントは、マウス体重の平均値±SEである。
【図23】GSAOと比較したo-GSAOの抗腫瘍効果。約40 mm3のBxPC-3腫瘍を有するBalb-Cヌードマウスを無作為に4群に分類し(n=10または11/群)、PBS 0.1 ml中、1または10 mg/kg/日のGSAO(パートA)またはo-GSAO(パートB)を皮下投与した。パートCおよびDはそれぞれの群のマウス体重であり、矢印は処置の開始を示す。データポイントは、腫瘍体積またはマウス体重の平均値±SEである。10 mg/kg o-GSAOによる処置(パートB)は、11匹のうち7匹のマウスの注射部位において壊死および炎症が起こったため(3/11は重篤な潰瘍を有し、4/11は中程度の潰瘍を有した)、14日目に終了した。この群では、体重減少も多少認められた(パートD)。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、細胞におけるミトコンドリア膜透過性の修飾、詳細には、増殖細胞においてMPTを選択的に誘導する化合物の同定および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ミトコンドリアはATPを提供して正常な細胞機能を支持しており、その撹乱によりアポトーシス細胞死および壊死性細胞死が起こる(Crompton, 1999)。アポトーシスおよび壊死における重要な要因はミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)であり、これはカルシウム過負荷の結果として起こる。MPTの原因は、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(MPTP)として知られているミトコンドリア内膜の非特異的孔の開口である(Crompton et al., 1987)。酸化ストレス、アデニンヌクレオチドの欠乏、および無機リン酸の上昇により、カルシウム濃度に対する孔の感受性が著しく増加する。MPTPの開口は、ミトコンドリア内膜を介した小さな溶質(< 1.5 kD)の平衡を伴う。結果として生じたマトリックス内の高タンパク質濃度がコロイド浸透圧を発揮し、これがミトコンドリアを大きく膨化させ、最終的にアポトーシスおよび壊死を引き起こす。
【0003】
アデニンヌクレオチド輸送体(ANT)はミトコンドリア内膜にまたがる30 kDのタンパク質であり、MPTPの中核をなす(Crompton et al., 1988)。
【0004】
アポトーシスを誘導する手段として、特に増殖細胞において選択的にMPTを誘導する必要性が存在する。
【0005】
本発明は、ミトコンドリアにおいてANTに結合し、非増殖細胞または増殖静止細胞と比較して増殖細胞において選択的にMPTを誘導する化合物を同定する方法に関する。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明の第一の局面に従って、細胞または細胞抽出物を化合物と接触させる段階、化合物がアデニンヌクレオチド輸送体(ANT)に結合するかどうかを判定する段階、および化合物が増殖細胞において選択的にミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)を誘導するかどうかを判定する段階を含む、増殖細胞においてMPTを誘導する化合物を同定する方法を提供する。
【0007】
本発明の第二の局面に従って、細胞または細胞抽出物を複数の化合物と接触させる段階、化合物のいずれかがANTに結合するかどうかを判定する段階、およびそうであれば、複数の化合物のそれぞれについて化合物が増殖細胞において選択的にMPTを誘導するかどうかを個別に判定する段階を含む、複数の化合物をスクリーニングして増殖細胞においてMPTを誘導する化合物を同定する方法を提供する。
【0008】
本発明の第一および第二の局面に関して、増殖細胞におけるMPTの選択的誘導は、例えば、本発明の第一または第二の局面に従ってANTに結合すると同定された化合物が増殖細胞においてMPTに及ぼす影響を、非増殖細胞または増殖静止細胞においてMPTに及ぼす影響と比較することによって決定し得る。
【0009】
同様に本発明の第一および第二の局面に関して、1つの態様においては、その方法は、スーパーオキシド(O2-)アニオンの細胞内濃度の変化を測定する段階を含み得る。別の態様において、その方法は、チトクロームC放出の変化を測定する段階を含み得る。
【0010】
本発明の第三の局面に従って、細胞または細胞抽出物を候補化合物と接触させる段階、細胞内スーパーオキシドアニオン(O2-)濃度の上昇が起こるかどうかを判定する段階、および化合物が増殖細胞において選択的にアポトーシスを誘導するかどうかを判定する段階を含む、増殖細胞においてアポトーシスを誘導する化合物を同定する方法を提供する。
【0011】
本発明の第四の局面に従って、細胞または細胞抽出物を候補化合物と接触させる段階、細胞内スーパーオキシドアニオン(O2-)濃度の上昇が起こるかどうかを判定する段階、および化合物が血管新生の阻害剤であるかどうかを判定する段階を含む、血管新生の阻害剤である化合物を同定する方法を提供する。
【0012】
本発明の第五の局面に従って、本発明の第一から第三の局面のいずれか1つの局面の方法に従って検出された少なくとも1つの化合物の治療有効量、または薬学的に許容される担体、アジュバント、および/または希釈剤と共にその化合物のうちの少なくとも1つを含む薬学的組成物の治療有効量を脊椎動物に投与する段階を含む、脊椎動物においてMPTを誘導する方法を提供する。
【0013】
本発明の第六の局面に従って、本発明の第一から第三の局面のいずれか1つの局面に従って同定された化合物のアポトーシス誘導量、または薬学的に許容される担体、アジュバント、および/または希釈剤と共にその化合物のうちの少なくとも1つを含む薬学的組成物の治療有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物細胞においてアポトーシスを誘導する方法を提供する。
【0014】
本発明の第七の局面に従って、アポトーシスを誘導する薬物を製造するための、本発明の第一から第三の局面のいずれか1つの局面に従って同定された化合物の使用を提供する。
【0015】
本発明の第八の局面に従って、本発明の第四の局面に従って同定された化合物の血管新生阻害量、または薬学的に許容される担体、アジュバント、および/または希釈剤と共にその化合物のうちの少なくとも1つを含む薬学的組成物の治療有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物において血管新生を阻害する方法を提供する。
【0016】
本発明の第九の局面に従って、血管新生を阻害する薬物を製造するための、本発明の第四の局面に従って同定された化合物の使用を提供する。
【0017】
本発明の第一から第九の局面のいずれか1つの局面に関して、1つの態様においては、化合物はジチオール反応性化合物であってよい。
【0018】
別の態様において、化合物はアルセノキシド(arsenoxide)(またはアルセノキシド等価物)部分を有し得る。
【0019】
さらなる態様において、アルセノキシド(またはアルセノキシド等価物)化合物は式(I):
を含んでよく、式中、
Aは、少なくとも1つの実質的に細胞膜不透過性のペンダント基を含み;
(XBX')nB'は適切なリンカー基を含み、nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択される整数であり;
Yは、少なくとも1つのアルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含み;
pは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10から選択される整数である。
【0020】
1つの態様において、式(I)の化合物は6個を超える炭素原子を有し得る。
【0021】
以下の特徴は式(I)に関する。
【0022】
1つの態様において、Aは、天然、非天然、および合成のアミノ酸、親水性アミン、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドを含むペプチドおよびポリペプチド、単糖、二糖、およびオリゴ糖等の糖残基(置換型変種を含む)、ならびにチオール含有タンパク質からなる群より選択されてよく、またはその組み合わせであってよい。例えば、Aは、グルタチオン、グルコサミン、システイニルグリシン、システイン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、およびアルギニンからなる群より選択されてよく、それぞれの硫黄含有化合物の硫黄原子は任意に酸化されてスルホキシドまたはスルホンを形成してもよい。他の態様において、Aは、例えばグルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、リキソース、ガラクトース、ヘキソース、スクロース、ソルボース、ガラクトシル-スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール等の、糖残基、二糖、またはオリゴ糖残基を含み得る。他の態様において、Aは、一級、二級、もしくは三級アルキル、アリール、またはアラルキル-アミン等の親水性アミンであるか、またはピリジン、ピロール、イミダゾール等の複素環アミンであってよい。
【0023】
アミノ酸は当業者に周知であり、例えば、その内容が参照として本明細書に組み入れられる、King and Stansfield, A Dictionary of Genetics, 第4版、Oxford University Press, 1990等の標準的な参考書に記載されている。例えば、アミノ酸はα、β、またはγアミノ酸であってよい。本発明は、L型およびD型のアミノ酸もまた包含する。アミノ酸の例には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、およびヒスチジンが含まれる。
【0024】
1つの態様において、Aは、三酸尿素(tri-acid urea)、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、およびペンタペプチドを含むペプチドからなる群より選択され得る。例えば、グルタチオン、
等、プレッシン酸(pressinoic acid)、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸等の小さな酸性分子;1-チオ-β-D-グルコース、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール等の小さなアルコール;例えば、一級、二級、および三級アルキル、アリール、ならびにアラルキル置換アミンを含む小さなアミン;ならびに5-メルカプト-1-テトラゾール酢酸、2-メルカプトピリジン、および2-アミノピリジン等の芳香族複素環化合物。
【0025】
1つの態様において、Aはトリペプチドである。例えば、Aはグルタチオンであってよく、1つの形態において、化合物は式(II):
により表され得、
式中、(XBX')nB'は任意の適切なリンカー基を含み、Yはアルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む。
【0026】
1つの態様において、pは1〜5より選択される整数である。例えば、pは1、2、3、4、または5であってよい。1つの態様において、pは1または2である。別の態様において、pは1である。
【0027】
1つの態様において、nは0から15の整数である。例えば、nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15であってよい。1つの態様において、nは0〜10から選択される整数である。別の態様において、nは0〜5から選択される整数であり、例えば、nは0、1、2、3、4、または5であってよい。
【0028】
1つの態様において、Xは、-NR、-S(O)-、-S(O)O-、-S(O)2-、-S(O)2O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-P(O)(R1)-、および-P(O)(R1)O-からなる群より選択されるか、または存在せず;
Bは、C1〜C10アルキレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C10アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C3〜C10ヘテロシクロアルキレン、C5〜C10ヘテロシクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、ヘテロアリーレン、およびC2〜C10アシルからなる群より選択され;
X'は、-NR-、-O-、-S-、-Se-、-S-S-、S(O)-、-OS(O)-、OS(O)O-、-OS(O)2、-OS(O)2O-、-S(O)O-、-S(O)2-、-S(O)2O-、-OP(O)(R1)-、-OP(O)(R1)O-、-OP(O)(R1)OP(O)(R1)O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-P(O)(R1)-、-P(O)(R1)O-、および
からなる群より選択されるか、または存在せず;EはO、S、Se、NR、またはN(R)2+であり;
nは0、1、または2であり;
B'は、C1〜C10アルキレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C10アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C3〜C10ヘテロシクロアルキレン、C5〜C10ヘテロシクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、およびヘテロアリーレンからなる群より選択されるか、または存在せず;
それぞれのRは、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、OR2、およびC2〜C10アシルからなる群より独立して選択され;
R'はRと同一であるか、または2つのR'が、これらが結合している窒素原子と共に一体となって、飽和または不飽和の複素五員環または六員環を形成してもよく;
それぞれのR1は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、ハロ、OR2、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR2は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、および-C(O)R5からなる群より独立して選択され;
それぞれのR5は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
Bおよび/またはB'がアリーレンであるそれぞれの場合について、それぞれのアリーレン環に直接結合している置換基(アルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む)は、任意の可能な位置にあってよく、例えばパラ、メタ、またはオルトの関係にあってよく;
それぞれのアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、ヘテロシクロアルキレン、ヘテロシクロアルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアシルは、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、シアノ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルセノキシド、-S(O)R3、-OS(O)R3、-S(O)2R3、-OS(O)2R3、-P(O)R4R4、-OP(O)R4R4、-N(R'')2、-NRC(O)(CH2)mQ、-C(O)R5;
で独立して置換されてよく;
R、R1、およびR5は先に定義した通りであり;
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R4)2、N(R)2、および-C(O)R5からなる群より選択され;
それぞれのR3は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR4は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ハロ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
R6は、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より選択され;
R''はRと同一であるか、または2つのR''が、これらが結合しているN原子と共に一体となって、飽和、不飽和、または芳香族の複素環系を形成してもよく;
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1から選択され;Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され;
mは1、2、3、4、または5である。
【0029】
別の態様において、Xは、NH、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、および-C(S)S-からなる群より選択されるか、または存在せず;
Bは、C1〜C5アルキレン、C2〜C5アルケニレン、C2〜C5アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、およびC2〜C5アシルからなる群より選択され;
X'は、-O-、-S-、-NR-、-S-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-P(O)(R1)-、-OP(O)(R1)-、OP(O)(R1)O-、-OP(O)(R1)OP(O)(R1)O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-Se-、
からなる群より選択されるか、または存在せず;Eは、O、S、またはN(R)2+であり;
nは0、1、または2であり;
B'は、C1〜C5アルキレン、C2〜C5アルケニレン、C2〜C5アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、およびC6〜C12アリーレンからなる群より選択されるか、または存在せず;
それぞれのRは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、OR2、およびC2〜C10アシルからなる群より独立して選択され;
R'はRと同一であり;
それぞれのR1は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、ハロ、OR2、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR2は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、および-C(O)R5からなる群より独立して選択され;
それぞれのR5は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C5アルケニルオキシ、C3〜C5アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C5アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
Bおよび/またはB'がアリーレンであるそれぞれの場合について、それぞれのアリーレン環に直接結合している置換基(アルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む)は、任意の可能な位置にあってよく、例えばパラ、メタ、またはオルトの関係にあってよく;
それぞれのアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン、およびアシルは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、シアノ、ハロ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルセノキシド、-S(O)R3、-OS(O)R3、-S(O)2R3、-OS(O)2R3、-P(O)R4R4、-OP(O)R4R4、-N(R'')2、-NRC(O)(CH2)mQ、-C(O)R5、
で独立して置換されてよく;
R、R1、およびR5は先に定義した通りであり;
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R4)2、N(R)2、および-C(O)R5からなる群より選択され;
それぞれのR3は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C5アルケニルオキシ、C3〜C5アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C5アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR4は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C5アルケニルオキシ、C3〜C5アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C5アルキニルチオ、C3〜C5シクロアルキルチオ、C5〜C5シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ハロ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
R6は、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C5アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より独立して選択され;
R''はRと同一であり;
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1からなる群より選択され;Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され;
mは1、2、3、4、または5である。
【0030】
別の態様においては、Xは存在せず;
Bは、C1〜C5アルキレン、C6〜C12アリーレン、およびC2〜C5アシルからなる群より選択され;
X'は、-O-、-S-、-NR-、-S-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-P(O)(R1)-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-Se-、および
からなる群より選択されるか、または存在せず;EはO、S、またはN(R)2+であり;
nは0、1、または2であり;
B'は、C1〜C5アルキレン、C6〜C12アリーレンであるか、または存在せず;
それぞれのRは、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、OR2、およびC2〜C5アシルからなる群より独立して選択され;
R'はRと同一であり;
それぞれのR1は、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、ハロ、OR2、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR2は、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、および-C(O)R5からなる群より独立して選択され;
それぞれのR5は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C5アルケニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
Bおよび/またはB'がアリーレンであるそれぞれの場合について、それぞれのアリーレン環に直接結合している置換基(アルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む)はそれぞれの環の任意の可能な位置にあってよく、例えばパラ、メタ、またはオルトの関係にあってよく;
それぞれのアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン、およびアシルは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、ハロ、シアノ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルセノキシド、-S(O)R3、-OS(O)R3、-S(O)2R3、-OS(O)2R3、-P(O)R4R4、-OP(O)R4R4、-N(R'')2、-NRC(O)(CH2)mQ、-C(O)R5、
で独立して置換されてよく;
R、R1、およびR5は先に定義した通りであり;
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R4)2、および-C(O)R5からなる群より選択され;
それぞれのR3は、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR4は、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ハロ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
R6は、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より選択され;
R''はRと同一であり;
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1から選択され;Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され;
mは1、2、3、4、または5である。
【0031】
さらなる態様において、Xは存在せず;
Bは、C1〜C5アルキレン、C6〜C12アリーレン、およびC2〜C5アシルからなる群より選択され;
X'は、-O-、-S-、-NR-、-C(O)-、および-C(O)O-からなる群より選択されるか、または存在せず;
nは1であり;
B'は、C1〜C5アルキレン、C6〜C12アリーレンであるか、または存在せず;
Rは、水素、C1-C5アルキル、C6〜C12アリール、およびC2〜C5アシルからなる群より選択され;
Bおよび/またはB'がアリーレンであるそれぞれの場合について、それぞれのアリーレン環に直接結合している置換基(アルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む)はそれぞれの環の任意の可能な位置にあってよく、例えばパラ、メタ、またはオルトの関係にあってよく;
それぞれのアルキレン、アリーレン、およびアシルは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、ハロ、シアノ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルセノキシド、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)R4R4、-N(R'')2、-NRC(O)(CH2)mQ、-C(O)R5、
で独立して置換されてよく;
それぞれのRは、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、およびC2〜C5アシルからなる群より独立して選択され;
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R4)2、および-C(O)R5からなる群より選択され;
それぞれのR3は、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、およびC6〜C12アリールチオからなる群より独立して選択され;
それぞれのR4は、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、ハロ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR5は、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
R6は、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より選択され;
R''は上記Rと同一であり;
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1から選択され;Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され;
mは1、2、3、4、または5である。
【0032】
さらに別の態様においては、Xは存在せず;
BはC2〜C5アシルであり;
X'はNRであり;
nは1であり;
B'はフェニレンであり;
RはHであり;
例えば式(III):
により例示されるように、フェニレン環に直接結合している置換基は、任意の可能な位置にあってよく、
式中、R7からR10は、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、カルボキシ、C1-C5アルコキシ、-OS(O)2R3、および-NHC(O)CH2Qからなる群より独立して選択され、Qは、ハロゲン、-OS(O)2CH3、-OS(O)2C6H5、および-OS(O)2-pトリルであり;R7からR1Oのいずれか1つがC1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、-OS(O)2R3である場合、フェニレンと縮合環を形成してよく;さらに、R7からR10の少なくとも1つがC1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、または-OS(O)2R3である場合、R7からR10の任意の少なくとももう1つと結合してフェニレンと縮合環を形成し得る。
【0033】
より典型的には、R7からR1Oは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、C1〜C5アルコキシ、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、フェニル、および-NHC(O)CH2Qからなる群より独立して選択され、Qは、ハロゲン、-OS(O)2CH3、-OS(O)2C6H5、および-OS(O)2-pトリルである。
【0034】
例えば、ペンダント基Aがグルタチオンである場合、式(III)の化合物は
として表され得る。
【0035】
さらに、B'がアリーレンである場合、アリーレン環に結合している置換基はアリーレン環の任意の可能な位置にあってよい。例えば、置換基は-As=O基とメタまたはパラの関係にあってよい。
【0036】
別の態様において、本発明に従って同定されたアルセノキシド化合物は、以下の化合物から選択される。
【0037】
化合物「GSAO」(4-(N-(S-グルタチオニルアセチル)アミノ)-フェニルアルセノキシド)は、国際特許出願WO 01/21628において以前に記載されており、その全内容は相互参照として本明細書に組み入れられる。
【0038】
ANTと相互作用し得る他の化合物には、以下に例示する式(V)による化合物:
が含まれ、
式中、Qは任意のハロゲンである。
【0039】
ANTと相互作用し得るアルセノキシドの別の形態は、式(VI):
による化合物であり、
式中、Gは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、C1〜C5アルコキシ、C1〜C5アルキル、およびC6〜C12アリール、および-NHC(O)CH2Qからなる群より選択され、Qは、ハロゲン、-OS(O)2CH3、-OS(O)2C6H5、または-OS(O)2-pトリルである。
【0040】
典型的に、Gは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、カルボキシ、C1〜C5アルコキシ、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、フェニル、および-NHC(O)CH2Qからなる群より選択され、Qは、ハロゲン、-OS(O)2CH3、-OS(O)2C6H5、および-OS(O)2-pトリルからなる群である。
【0041】
1つの態様において、式VIの化合物におけるGは、ヒドロキシ、フッ素、アミノ、またはニトロである。
【0042】
別の態様において、G基はアルセノキシド基とオルト、メタ、またはパラの関係にある。例えば別の態様において、Gはアルセノキシド基とオルトまたはパラの関係にある。
【0043】
典型的に、Gとヒ素原子が互いにオルトまたはパラの関係にある場合、ヒ素原子の活性はG基により修飾され得る。例えば、GがOH(生理的pHでイオン化されてO-となる)等の電子供与基である場合、ヒ素原子はジチオールに対して不活性化されてよく、そのためより選択的になり、例えば非常に反応性の高いジチオールとのみ反応し得る。または、GがNO2等の電子吸引基である場合、ヒ素原子から電子密度が引き離され、そのためヒ素原子はジチオールとより反応しやすくなる。Gを操作することにより、ある酸化還元タンパク質は阻害し、ある酸化還元タンパク質は阻害しないという選択的阻害が達成され得る。
【0044】
典型的に、ANTと相互作用し得るアルセノキシド化合物において、アルセノキシド基(-As=O)はアルセノキシド等価物で置換され得る。
【0045】
本明細書において、アルセノキシド等価物は、ジチオールに対して-As=Oと本質的に同じ親和性を示す任意のジチオール反応性化学種と定義される。典型的に、アルセノキシド等価物には、As、Ge、Sn、およびSb化学種等のジチオール反応性実体が含まれる。より典型的には、アルセノキシド等価物は-D(Z1)(Z2)で表すことができる。アルセノキシド等価物は、対応するアルセノキシドの活性と同一または実質的に同一の活性を示すと考えられる。
【0046】
典型的に、式-D(Z1)(Z2)のアルセノキシド等価物について、Dは、例えば、As、RSn、Sb、またはRGeであり、Z1およびZ2は不安定な基(すなわち、生理的条件下で容易に置換される基)である。Z1およびZ2は同一であっても異なっていてもよく、結合していても(ヒ素原子にだけ結合して)互いに独立して存在してもよい。
【0047】
適切なアルセノキシド等価物には、以下のものが含まれる:
-D(Z1)(Z2)、
式中、Z1およびZ2は、OH、C1〜C10アルコキシ、C6〜C10アリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C6〜C10アリールチオ、C1〜C10アルキルセレノ、C6〜C10アリールセレノ、F、Cl、Br、およびI;
式中、E1=E2=O、E1=OおよびE2=S、またはE1=E2=Sであり;MはR'''であり、R''''は、水素、C1〜C10アルキル、C6〜C12アリール、ハロゲン、C1〜C10アルコキシ、C6〜C10アリールオキシ、ヒドロキシ、およびカルボキシからなる群より独立して選択され;n=1から10である。
【0048】
式D(Z1)(Z2)のアルセノキシド等価物について、DがAsであり、Z1およびZ2がOHである場合、アルセノキシド等価物は、以下に記載するように重合体化学種と平衡状態にあり得る。
【0049】
前述の平衡に関して、ヒ素は、そのヒドロキシ化学種が対応する重合体無水物と平衡状態で存在する多くの元素の1つである(Doak & Freedman, 1970)。したがって、アルセノキシド化合物は実際に、低分子量または中程度の分子量の重合体(例えば、n=3から6)として存在し得る。しかし、この脱水反応は可逆的であるため、可溶性の重合体無水物はアルセノキシド等価物のように挙動すると考えられる、すなわち、単量体-As (OH)2化学種と実質的に同じ方法で、近接したジチオールに結合すると考えられる。
【0050】
式中、X3=NH、Y1=O;X3=Y1=O、またはX3=S、Y1=Oであり、R'は、水素、C1〜C10アルキル、C6〜C12アリール、およびカルボキシからなる群より選択されるか、または20種のアミノ酸側鎖のうちの1つである;
式中、X3=Y1=O;X3=NH、Y1=O;X3=S、Y1=O;X3=Y1=NH;またはX3=S、Y1=NH;またはX3=S、Y1=NHであり、R11からR14は、水素、C1〜C10アルキル、C6〜C12アリール、およびCO2Hからなる群より選択される;
式中、X3=Y1=O、またはX3=NH、Y1=Oであり;R11からR14は、水素、C1〜C10アルキル、C6〜C12アリール、ハロゲン、C1〜C10アルコキシ、およびCO2Hからなる群より選択される。
【0051】
典型的に、(XBX')B'は上記の定義の通りである。
【0052】
略語および定義
本明細書において、MPTという略語はミトコンドリア膜透過性遷移を表す。
【0053】
本明細書において、MPTPという略語はミトコンドリア膜透過性遷移孔を表す。
【0054】
本明細書において、ANTという略語はアデニンヌクレオチド輸送体を表す。
【0055】
本明細書において、EGTAはエチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸を表す。
【0056】
本明細書において、PAOはフェニルアルセノキシドを表す。
【0057】
本明細書において、「含むこと(comprising)」という用語は、「主として含むが、必ずしもそれだけを含むこととは限らない」ことを意味する。さらに、単語「含むこと(comprising)」が語尾変化したもの、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」等は、それに対応して変化した意味を有する。
【0058】
本明細書において、「アルセノキシド」という用語は-As=O基を指す。
【0059】
本明細書において、-As=Oおよび-As(OH)2と記載する基は同義語とみなされる。
【0060】
本明細書において、「アルセノキシド等価物」という用語は、ジチオールに対して-As=OまたはAs(OH)2と本質的に同じ親和性を示す任意のジチオール反応性化学種を指し、この用語には、例えば、遷移元素を含む基、および水性溶媒(細胞培養緩衝液および治療を受けている生物に含まれる液体等)に溶解した場合に-As=Oまたは-As(OH)2に加水分解される任意の三価ヒ素剤が含まれる。
【0061】
本明細書において、「実質的に細胞膜不透過性の基」という用語は、化合物が細胞膜を通過して細胞内に入る速度を制限する任意の基を指す。例えば電荷、大きさ(分子量)、極性、親油性、親水性等の1つまたは複数の性質が理由で、実質的に細胞膜不透過性の基により、細胞内への化合物の流入が制限され得る。
【0062】
本明細書で用いる「ヒ素剤」という用語には、ヒ素を含む任意の化合物が含まれる。
【0063】
本明細書で用いる「アシル」という用語には、炭化水素部分、カルボニル部分、またはその両方で結合することができる、末端カルボニル置換基を有する一価および二価のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびシクロアルケニル部分が含まれる。
【0064】
本明細書で用いる「アルキル」という用語は、その意味に、一価の飽和した直鎖および分枝鎖の炭化水素ラジカルを含む。
【0065】
本明細書で用いる「アルケニル」という用語は、その意味に、少なくとも1つの二重結合を有する、一価の直鎖および分枝鎖の炭化水素ラジカルを含む。
【0066】
本明細書で用いる「アルキニル」という用語は、その意味に、少なくとも1つの三重結合を有する、一価の直鎖および分枝鎖の炭化水素ラジカルを含む。
【0067】
本明細書で用いる「アルキレン」という用語は、その意味に、二価の飽和した直鎖の炭化水素ラジカルを含む。
【0068】
本明細書で用いる「アルケニレン」という用語は、その意味に、少なくとも1つの二重結合を有する、二価の直鎖の炭化水素ラジカルを含む。
【0069】
本明細書で用いる「アルキニレン」という用語は、その意味に、少なくとも1つの三重結合を有する、二価の直鎖の炭化水素ラジカルを含む。
【0070】
本明細書で用いる「アリール」という用語は、その意味に、一価の単一の多核の共役および縮合芳香族炭化水素ラジカルを含む。
【0071】
本明細書で用いる「アリーレン」という用語は、その意味に、二価の単一の多核の共役および縮合芳香族炭化水素ラジカルを含む。
【0072】
本明細書で用いる「近接したジチオール」という用語は、その意味に、化学的に近接しているチオールおよび分子立体配座により空間的に並置されたチオールを含む。
【0073】
本明細書で用いる「シクロアルキル」という用語は、その意味に、一価の飽和した単環式、二環式、多環式、または縮合多環式の炭化水素ラジカルを含む。
【0074】
本明細書で用いる「シクロアルキレン」という用語は、その意味に、二価の飽和した単環式、二環式、多環式、または縮合多環式の炭化水素ラジカルを含む。
【0075】
本明細書で用いる「シクロアルケニル」という用語は、その意味に、少なくとも1つの二重結合を有する、一価の飽和した単環式、二環式、多環式、または縮合多環式の炭化水素ラジカルを含む。
【0076】
本明細書で用いる「シクロアルケニレン」という用語は、その意味に、少なくとも1つの二重結合を有する、二価の飽和した単環式、二環式、多環式、または縮合多環式の炭化水素ラジカルを含む。
【0077】
本明細書で用いる「ハロ」という用語には、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードが含まれる。
【0078】
本明細書で用いる「ヘテロアリール」という用語は、その意味に、1から12個の原子を有し、1から6個の原子がO、N、およびSから選択されるヘテロ原子である、一価の単一の多核の共役および縮合芳香族炭化水素ラジカルを含む。
【0079】
本明細書で用いる「ヘテロアリーレン」という用語は、その意味に、1から12個の原子を有し、1から6個の原子がO、N、およびSから選択されるヘテロ原子である、二価の単一の多核の共役および縮合芳香族炭化水素ラジカルを含む。
【0080】
本明細書で用いる「ヘテロシクロアルキル」という用語は、その意味に、1から5個の原子がO、N、またはSから選択されるヘテロ原子である、一価の飽和した単環式、二環式、多環式、または縮合のラジカルを含む。
【0081】
本明細書で用いる「ヘテロシクロアルキレン」という用語は、その意味に、1から5個の原子がO、N、またはSから選択されるヘテロ原子である、二価の飽和した単環式、二環式、多環式、または縮合多環式のラジカルを含む。
【0082】
本明細書で用いる「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、その意味に、少なくとも1つの二重結合を有し、かつ1から5個の原子がO、N、またはSから選択されるヘテロ原子である、一価の飽和した単環式、二環式、多環式、または縮合多環式のラジカルを含む。
【0083】
本明細書で用いる「ヘテロシクロアルケニレン」という用語は、その意味に、少なくとも1つの二重結合を有し、かつ1から5個の原子がO、N、またはSから選択されるヘテロ原子である、二価の飽和した単環式、二環式、多環式、または縮合多環式のラジカルを含む。
【0084】
本明細書で用いる「フェニルアルソン酸」という用語は、「ベンゼンアルソン酸」と同義語とみなされる。
【0085】
詳細な説明
本発明は、ミトコンドリアにおいてANTに結合し、非増殖細胞と比較して増殖細胞において選択的にMPTを誘導する化合物を同定する方法に関する。
【0086】
ANTはミトコンドリア内膜にまたがる30 kDのタンパク質であり、MPTPの中核をなす(Crompton et al., 1988)。ANTのマトリックス側には、不対のシステイン3個 - Cys57、Cys160、およびCys257が存在する(Halestrap et al., 1997)。ANT活性は、Ca2+、サイクロフィリンD、およびアデニンヌクレオチドの結合により調節される。サイクロフィリンD(Crompton et al., 1988)およびアデニンヌクレオチド(Haworth & Hunter, 1979a,b;Haworth & Hunter, 2000)がANTのマトリックス側に結合するのに対して、Ca2+の結合部位はいまだ決定されていない。これら3つの化合物の結合を調節することによって作用すると考えられる、MPTPのいくつかの既知制御因子が存在する。MPTPの開口の主要な誘因は、マトリックスCa2+濃度の上昇である。EGTAでCa2+をキレート化すると、孔の開口が阻止される。Ca2+に対する(おそらくANT上の)誘因部位の特異性は、Mg2+等の他の二価金属イオンが阻害剤として作用することから、絶対的であるようである(Haworth & Hunter, 1979a)。サイクロフィリンDのANTへの結合は、サブミリモルのCa2+濃度における孔の開口に必要である(Halestrap et al., 2002)。シクロスポリンA (CsA)は、サイクロフィリンDに結合しANTからこれを外すことによって、孔の開口を阻止する(Crompton et al., 1988)。マトリックスADPもまた、ANTに結合しCa2+に対する誘因部位の感受性を低下させる、孔の開口の重要な調節因子である(Haworth & Hunter, 1979a,b)。ボンクレキン酸(BKA)もまたANTと相互作用し、Ca2+に対する感受性を低下させる(Hunter & Haworth, 1979)。
【0087】
一般に、本発明に従って増殖細胞においてMPTを誘導する化合物を同定する方法は、細胞または細胞抽出物を候補化合物と接触させる段階、化合物がANTに結合するかどうかを判定する段階、および次に化合物が増殖細胞において選択的にMPTを誘導するかどうかを判定する段階を含む。化合物が増殖細胞において選択的にMPTを誘導するかどうかを評価する段階は、ANTに結合すると同定された化合物が増殖細胞においてMPTに及ぼす影響を、その化合物が非増殖細胞または増殖静止細胞においてMPTに及ぼす影響と比較することによって決定し得る。
【0088】
MPTの誘導のモニタリングは、当技術分野において周知の標準的な技法を用いて行い得る。例えば、化合物の異なる濃度に関して、所与の波長で光散乱の変化を分光光度法でモニタリングする。適切な波長は典型的に520 nmである。
【0089】
細胞のミトコンドリア内への化合物の取り込みの検出は、標準的な技法を用いて行い得る。例えば、蛍光標識した化合物を用いることもできるし、またはフルオロフォアを化合物に結合することもできる。適切なフルオロフォアの例には、フルオレセインおよびCy(商標)5.5が含まれる。化合物の細胞内局在化は、共焦点蛍光顕微鏡検査を含む標準的な技法により検出し得る。または、化合物を例えばビオチンのような他の検出可能な基に結合させ、ストレプトアビジン-Alexa Fluor 488等のストレプトアビジンで染色することよっても検出し得る。
【0090】
ミトコンドリアの膜電位は、例えば、JC-1等の色素およびアネキシンV-FITC等の染色液を含む標準的な技法を用いて評価し得る。そのような技法により、細胞がMPTを起こしたかどうかを決定すること、およびアポトーシスが誘導されたかどうかを評価することが可能である。
【0091】
スーパーオキシドアニオン(O2-)および過酸化水素(H2O2)等の活性酸素種は、ATP生成の副産物として生じ、細胞増殖においてシグナル伝達中間体として重要な役割を果たすが、高濃度では、脂質、タンパク質、DNA、およびRNAを損傷することにより増殖を停止させ、アポトーシスを誘導する(Zanetti et al., 2001)。O2-は、Mnスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)によりミトコンドリア内でH2O2に変換されるが、また陰イオンチャネルを解してミトコンドリアから放出され得、そこでサイトゾルCu/Zn SODにより不均化される(Vanden Hoek et al., 1998)。
【0092】
また本明細書では、細胞または細胞抽出物を候補化合物と接触させる段階、細胞内スーパーオキシドアニオン(O2-)濃度の上昇が起こるかどうかを判定する段階、および次に化合物が非増殖細胞または増殖静止細胞と比較して増殖細胞において選択的にアポトーシスを誘導するかどうかを判定する段階を含む、増殖細胞においてアポトーシスを誘導し得る可能性のある化合物を同定する方法を開示する。化合物が増殖細胞において選択的にアポトーシスを誘導するかどうかを判定する段階は、化合物が増殖細胞において細胞内スーパーオキシドアニオンレベルに及ぼす影響を、非増殖細胞または増殖静止細胞において及ぼす影響と比較することによって、当業者により容易に決定され得る。細胞内スーパーオキシドレベルの測定は、当業者に周知のアッセイ法を用いて行い得る。
【0093】
ミトコンドリアの膜間腔からのチトクロームCの放出もまた、細胞におけるアポトーシスの誘因として周知である。(非増殖細胞と比較して)増殖細胞におけるチトクロームCレベルの変化の測定は、ミトコンドリアの機能を撹乱させる化合物の同定に有用である可能性がある。
【0094】
また本明細書では、細胞または細胞抽出物を候補化合物と接触させる段階、細胞内スーパーオキシドアニオン(O2-)濃度の上昇が起こるかどうかを判定する段階、およびそれにより化合物が血管新生の阻害剤である可能性があるかどうかを判定する段階を含む、血管新生の阻害剤である可能性のある化合物を同定する方法を開示する。
【0095】
血管新生とは既存の血管からの新たな毛細血管の生成を指し、これは内皮細胞の増殖によって促進される。血管新生は、胚発生の過程においておよび成体において起こる(Carmeliet & Jain, 2001)。正常な成体哺乳動物では、血管新生は、雌の生殖周期、創傷治癒、およびいくつかの病的状態に限定されている。血管新生は、関節リウマチ、乾癬、糖尿病性網膜症、および癌等の疾患の重要な因子である。腫瘍の増殖および転移は、腫瘍の血管新生に依存する(Hanahan & Folkman, 1996)。
【0096】
治療用途
ANTに結合する化合物によるMPTの撹乱は、アポトーシスを誘導し得る。スーパーオキシドアニオン(O2-)等の活性酸素種は、細胞増殖においてシグナル伝達中間体として重要な役割を果たすが、高濃度では、増殖を停止させ、アポトーシスを誘導し得る。したがって、ANTに結合しミトコンドリア機能を選択的に阻害する化合物、または非増殖細胞と比較して増殖細胞においてスーパーオキシドアニオンの細胞内レベルを増加させる化合物は、脊椎動物の様々な疾患および病態の治療に治療的に役立つ可能性を有し得る。
【0097】
さらに、ミトコンドリアの膜間腔からのチトクロームCの放出は、細胞におけるアポトーシスの既知誘因である。チトクロームCは、カスパーゼの活性化を直接促進すると考えられている。したがって、(例えば、ANTに結合しMPTを誘導することにより)ミトコンドリア機能を撹乱させる化合物は、(非増殖細胞と比較して)増殖細胞においてチトクロームCの細胞内レベルの上昇をもたらし得、脊椎動物の様々な疾患および病態の治療に治療的に役立つ可能性を有し得る。
【0098】
障害および疾患の例は、以下のような広範なカテゴリーに分類され得る:血管新生依存性疾患、細胞増殖性疾患(例えば、乾癬、IBD、悪性腫瘍、再狭窄)、炎症性疾患、自己免疫疾患、血管疾患、血栓症、癌、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病)、骨髄異形性症候群、虚血/再灌流損傷、および臓器移植損傷。
【0099】
典型的に、癌は、発癌性腫瘍、結腸直腸癌、乳癌、肺癌、頭頚部腫瘍、肝癌、膵癌、卵巣癌、胃癌、脳腫瘍、膀胱癌、前立腺癌、および尿路/生殖管癌等の上皮起源の腫瘍;肉腫等の間葉性腫瘍;ならびにB細胞リンパ腫等の造血器腫瘍からなる群より選択される。
【0100】
典型的に、癌は血液腫瘍である。より典型的には、癌は固形腫瘍である。
【0101】
本発明の他の可能な治療用途には、炎症性疾患および/または自己免疫疾患の治療が含まれ、その例には以下のものが含まれる:関節リウマチ、血清陰性関節炎および他の炎症性関節炎、全身性エリテマトーデス、多発性動脈炎および関連症候群、全身性硬化症、シェーグレン症候群および他の炎症性眼疾患、混合結合組織病、多発性筋炎および皮膚筋炎、リウマチ性多発性筋痛および巨細胞性動脈炎、炎症性関節疾患、非炎症性関節症、軟組織リウマチ、疼痛ジストロフィー
。
【0102】
血管疾患および血栓症の例には以下のものが含まれる:アテローム性動脈硬化症の進行;一過性虚血性脳卒中、完成脳卒中、および頚動脈手術後等の脳血管障害;急性心筋梗塞(一次および二次);アンギナ;冠動脈バイパス移植片の閉塞;経皮経管冠動脈形成術後の閉塞;冠動脈ステント術後の閉塞;末梢動脈疾患における血管閉塞;手術後、または妊娠中、または固定化中の静脈血栓塞栓症。
【0103】
小血管疾患の例には以下のものが含まれる:糸球体腎炎;血栓性血小板減少性紫斑病;溶血性尿毒症症候群;胎盤機能不全、および子癇前症。
【0104】
本発明はまた、血管症候群および骨髄増殖性疾患の治療において用途を有する可能性がある。
【0105】
本発明はまた、以下の状況における血栓症の形成を予防する化合物の同定において用途を見出し得る:人工/補綴血管シャントおよび移植片;人工心臓弁;心肺バイパス術;血液灌流および血液透析。
【0106】
典型的に、本発明に従って同定される化合物は、手術および/または治療薬(化学療法薬または放射線治療薬を含む)等の他の既知の治療と併用することができる。例えば、固形腫瘍の治療に用いる場合、本発明に従って同定される化合物は、アドリアマイシン、タキソール、フルオロウリシル(fluorouricil)、メルファラン、シスプラチン、α-インターフェロン、COMP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、メトトレキセート、およびプレドニゾン)、エトポシド、mBACOD(メトトレキセート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびデキサメタゾン)、PROMACE/MOPP(プレドニゾン、メトトレキセート(ロイコビン(leucovin)レスキューを伴う)、ドキソルビシン、シクロホスファミド、タキソール、エトポシド/メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アンギオインヒビン(angioinhibin)、TNP-470、ペントサンポリサルフェート、血小板第4因子、アンギオスタチン、LM-609、SU-101、CM-101、テクガラン(Techgalan)、サリドマイド、SP-PG等の化学療法薬と共に投与することができる。他の化学療法薬には、メクロエタミン(mechloethamine)、メルファラン、クロラムブシル、シクロホスファミド、およびイホスファミドを含む窒素マスタード;カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、およびストレプトゾシンを含むニトロソ尿素;ブスルファンを含むスルホン酸アルキル;ダカルバジンを含むトリアジン;チオテパおよびヘキサメチルメラミンを含むエチエンイミン(ethyenimine;メトトレキセートを含む葉酸類似体; 5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシドを含むピリミジン類似体; 6-メルカプトプリンおよび6-チオグアニンを含むプリン類似体;アクチノマイシンDを含む抗腫瘍性抗生物質;ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、およびミトラマイシンを含むアントラサイクリン;タモキシフェンおよび副腎皮質ステロイドを含むホルモンおよびホルモン拮抗薬、ならびにシスプラチンおよびブレキナール(brequinar)を含む種々の薬剤等のアルキル化剤が含まれる。
【0107】
典型的に、本発明に従って治療すべき生理学的系(例えば、肝臓系、膵臓系)を、本発明の系を投与する前に手術によりまたは手術中に単離することができる。
【0108】
処置を施す医師によって選択された用量レベルおよびパターンを使用して、化合物または薬学的組成物の単回投与または複数回投与を行うことができる。それにかかわらず、本発明に従って同定された化合物または薬学的組成物は、患者を効果的に治療するのに十分な量の化合物を提供するように投与されるべきである。
【0109】
当業者は、日常的な実験により、アポトーシスを起こした細胞を検出し、かつ/または障害および疾患を治療または予防するのに必要とされる、本発明に従って使用する化合物または薬学的組成物の有効で無毒な量を決定し得る。一般に、有効量は、約0.0001 mg〜約1000 mg/kg体重/24時間;典型的には、約0.001 mg〜約 750mg/kg体重/24時間;約0.01 mg〜約500 mg/kg体重/24時間;約0.1 mg〜約500 mg/kg体重/24時間;約0.1 mg〜約250 mg/kg体重/24時間;約1.0 mg〜約250 mg/kg体重/24時間の範囲であると考えられる。より典型的には、有効量の範囲は、約1.0 mg〜約200 mg/kg体重/24時間;約1.0 mg〜約100 mg/kg体重/24時間;約1.0 mg〜約50 mg/kg体重/24時間;約1.0 mg〜約25 mg/kg体重/24時間;約5.0 mg〜約50 mg/kg体重/24時間;約5.0 mg〜約20 mg/kg体重/24時間;約5.0 mg〜約15 mg/kg体重/24時間の範囲であると考えられる。
【0110】
または、有効量は、最高で約500 mg/m2までであってよい。一般に、有効な投与量は、約25〜約500 mg/m2、好ましくは約25〜約350 mg/m2、より好ましくは約25〜約300 mg/m2、さらにより好ましくは約25〜約250 mg/m2、さらにより好ましくは約50〜約250 mg/m2、なおさらにより好ましくは約75〜約150 mg/m2の範囲であると考えられる。
【0111】
本明細書で開示するアルセノキシド(またはアルセノキシド等価物)化合物に関して、有効量は、約0.0001 mg〜約100 mg化合物/kg体重/24時間の範囲であってよい。例えば、有効量は、約0.001 mg〜約100 mg化合物/kg体重/24時間の範囲であってよい。例えば、有効量は、約0.01 mg〜約50 mg化合物/kg体重/24時間の範囲であってよい。例えば、有効量は、約0.1 mg〜約20 mg化合物/kg体重/24時間の範囲であってよい。例えば、有効量は、約0.1 mg〜約10 mg化合物/kg体重/24時間の範囲であってよい。
【0112】
本発明の従って同定された化合物と共に使用するさらなる活性薬剤に関して、有効量は、約0.0001 mg〜約100 mg薬剤/kg体重/24時間、好ましくは約0.001 mg〜約100 mg薬剤/kg体重/24時間、より好ましくは約0.01 mg〜約50 mg薬剤/kg体重/24時間、さらにより好ましくは約0.1 mg〜約20 mg薬剤/kg体重/24時間、さらにより好ましくは約0.1 mg〜約10 mg薬剤/kg体重/24時間の範囲であってよい。
【0113】
遅延放出製剤もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0114】
典型的に、化合物は治療する病態の持続期間中に投与され得る。
【0115】
さらに、本発明に従って使用する化合物の最適な量および各投与の間隔が、治療を受ける病態の性質および程度、投与の形態、経路、および部位、ならびに治療を受ける特定の脊椎動物の性質によって決まることは、当業者に明らかであると考えられる。また、そのような最適条件は、従来技術により決定することができる。
【0116】
所定の日数において1日当たりに投与される化合物の投与数等の、治療の最適な過程が、従来の治療過程決定試験を用いて当業者により確認され得ることもまた、当業者に明らかであると考えられる。
【0117】
本発明の方法に従って同定される化合物は単独で投与してもよいが、一般に、薬学的組成物/製剤として化合物を投与することが好ましい。一般に、薬学的製剤は当業者に周知の方法に従って調製することができ、したがって薬学的に許容される担体、希釈剤、および/またはアジュバントを含み得る。
【0118】
以下の実施例を参照して、本発明を説明する。
【0119】
実施例1
化合物の合成
方法
GSAAの合成
Donoghue et al (2000)およびWO 01/21628に記載されている方法の変法により、BRAAを調製した。水(200 mL)に溶解した炭酸ナトリウム(20 g、189 mmol)溶液にp-アルサニル酸(20.6 g、95 mmol)を少量ずつ添加した。固形物がすべて溶解した時点で、溶液はpH 10であることが認められ、これを4℃で2時間冷却した。無水ジクロロメタン(35 mL)に溶解した臭化ブロムアセチル(15 mL、173 mmol)を2回に分けて添加し、それぞれ添加した後に2〜3分間激しく振盪した。混合液を2、3分間静置し、下の有機層を排出した。98%硫酸を1滴ずつ添加して溶液をpH 2〜3に酸性化することにより、4-(N-(ブロムアセチル)アミノ)ベンゼンアルソン酸(BRAA)を沈殿させ、これを真空濾過で回収し、乾燥させ、白色固形物としてBRAAを得た。
【0120】
BRAA(3.38 g、10 mmol)、還元型グルタチオン(3.23 g、10.5 mmol)、および重炭酸ナトリウム(3.15g、37.5 mmol)を混合し、この固形混合物を0.5M重炭酸緩衝液(100 mL)に少量ずつ溶解した。透明な溶液はpH 9であることが認められ、これを完全に混合し、室温で一晩放置した。翌日、32%塩酸を1滴ずつ添加して溶液を中性pHになるまで酸性化し、十分に撹拌している無水エタノール(1 L)に酸性化した溶液を1滴ずつ添加することにより、アルコールから産物を沈殿させた。混合物を室温で1時間撹拌し、その後沈殿物が沈殿するまで3時間放置した。約300 mLを残して透明なエタノール溶液をデカントし、次いでこれを回旋し、2000 gで5分間遠心分離した。新たな無水エタノールに再懸濁することにより産物4-(N-((S-グルタチオニル)アセチル)アミノ)ベンゼンアルソン酸(GSAA)を洗浄し、再度遠心分離した。洗浄をさらに2回繰り返し、回転蒸発により、白色固形物、GSAAになるまで最終的な懸濁液を乾燥させた。1H-NMR(D2O、300 MHz)および13C-NMR(D2O、75 MHz)によりGSAAの特性を明らかにしたところ、GSAAは分子量564を有した。
【0121】
GSAOの合成
GSAOの完全な合成は、国際特許出願WO 01/21628に記載されており、その全内容は相互参照として本明細書に組み入れられる。BRAAは上記の通り調製した。次に、Donoghue et al (2000)に記載されている方法を用いて、BRAAを4-(N-(ブロムアセチル)アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(BRAO)に変換した。BRAOからGSAOへの変換手順は、以下の通り、Donoghue et al (2000)に記載されている手順の変法である。窒素雰囲気下で、還元型グルタチオン(16 g、52 mmol)を脱酸素水(1 L)に溶解した(脱酸素水は、常に窒素雰囲気下で、煮沸後に室温まで冷却することにより調製した)。BRAO(25 g、77 mmol)をこの溶液に溶解し、未溶解のBRAOが浮遊する傾向がすべてなくなるまで混合液を激しく撹拌し、その傾向がなくなった時点で撹拌速度を減少させた。トリエチルアミン(16 mL、11.6 g、115 mmol)を添加し、常に窒素下で混合液を少なくとも18時間撹拌した。急速な真空濾過によりいくらかの無色固形物を除去し、濾液が粘稠性のゲルになるまでロータリーエバポレーターで濃縮した。エタノール(250 mL)でゲルを希釈し、撹拌速度を速め、次いでアセトン(250 mL)を添加し、白色固形物が形成された。窒素下で2時間撹拌し、真空濾過により固形物を回収し、室温、真空化で恒量になるまで乾燥させた。1H-NMRによる物質の解析により、トリエチルアミンの量を決定した。最小量の脱酸素水に溶解した物質の溶液に対して10 M水溶液を添加するという形式で、等量の水酸化ナトリウム(すなわち、1 mmol NaOH/mmolトリエチルアミン)を添加した。窒素下で溶液を2時間撹拌し、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去することによりGSAO(ナトリウム塩として)を得た。以下の方法によりGSAOの特性を明らかにした:1H-NMR(D2O、400 MHz)、13C-NMR(D2O、100 MHz)、HPLC、および赤外分光法(nujol mull)。元素分析はGSAO.2H2Oの組成と一致し、質量スペクトルからは、549.1 m.u.の親分子イオン[GSAO+H]+が得られた。HPLCによると、GSAOの純度は>94%であった。
【0122】
GSCAの合成
GSCAは、以下の通りp-アルサニル酸の代わりに4-アミノ安息香酸を用いて、GSAAと同様に調製した。p-アルサニル酸について上記したように、4-アミノ安息香酸(13 g、95 mmol)のアルカリ冷却溶液を調製し、同一の方法で臭化ブロムアセチルと反応させた。下の有機層を排出し、それ自体で溶液から直接4-(N-(ブロムアセチル)アミノ)安息香酸(BRCA)を沈殿させた。BRAAの代わりにBRCA(2.58 g、10 mmol)を用いて、GSAAについての手順の残りの部分に厳密に従って、回転蒸発後に白色固形物としてGSCAを得た。1H-NMR(D2O、300 MHz)および13C-NMR(D2O、75 MHz)によりGSCAの特性を明らかにしたところ、その二ナトリウム塩は分子量528を有した。
【0123】
GSAOおよびGSAAのビオチンおよびフルオレセイン誘導体の合成
Donoghue et al. (2000)により記載されている通りにGSAO-Bを作製したところ、GSAO-Bは分子量1001を有した。Mes緩衝液、pH5.5、(5 mM、473μL)に溶解したGSAOまたはGSAA(33.8 mM)に、DMSO(240μL)に溶解したフルオレセイン-5-EXスクシンイミジルエステル(Molecular Probes、オレゴン州、ユージーン)(2.4 mg、4.1μmol)の溶液を添加し、混合液を重炭酸緩衝液、pH 9 (0.5 M、3.287 mL)で希釈して、室温で80分間放置した。次いで、この反応液をPBS (4 mL)に溶解したグリシン(100 mM)で希釈し、室温で一晩放置した。最終溶液は、三価ヒ素剤(2.00 mM)およびグリシン(50 mM)を含んでいた。フルオレセイン-5XとGSAOまたはGSAAのモル比は、約1.5:1であった。GSAO-フルオレセインおよびGSAA-フルオレセイン(GSAO-FおよびGSAA-F)の分子量は、それぞれ1024および1040であった。
【0124】
2-(2-ブロモアセチル-o-アミノ)ベンゼンアルソン酸の合成
o-アルサニル酸(4.70 g、21.7 mmol)を1.85 M KOH (25 mL)に溶解し、次いでNa2CO3 (6 g)で処理し、H2O (25 mL)で希釈した。この溶液を氷中で30分間冷却し、次に250 mL分液漏斗に添加した。CH2Cl2 (20 mL)に溶解した臭化ブロムアセチル(4 mL、46.0 mmol)の溶液を、頻繁に振ってCO2 (g)を放出させながら、約30分かけて分液漏斗に慎重に添加した。CO2の発生が停止した後、CH2Cl2を分離し、水層を濃H2SO4で酸性化した。生じた白色沈殿物を濾過により回収した(6 g、82%収率)。
【0125】
2-(2-ブロモアセチル-o-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸の合成
2-(2-ブロモアセチルアミノ)ベンゼンアルソン酸(6 g、17.8 mmol)をHBr/MeOH (1:1)に溶解した。NaI (80 mg)を添加し、反応物をN2でパージし、0℃に冷却した。約4気泡/秒でSO2の気泡を発生させ、15分後に白色沈殿物が形成し始めた。反応物を室温に温めながら、SO2の気泡をさらに2.5時間発生させた。反応物をN2で10分間パージし、濾過により固形物を回収し、H2O (x3)、エーテル(x2)で洗浄して、2-(2-ブロモアセチルアミノ)ベンゼン亜アルソン酸1.35 gを得た。最初の濾過から、さらに0.25 gを得た。全収率(1.60 g、28%)。
【0126】
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼンアルソン酸の合成
p-アルサニル酸(20 g、92 mmol)を1.85 M KOH (100 mL)に溶解し、次いでNa2CO3 (30 g)で処理し、H2O (100 mL)で希釈した。この溶液を氷中で30分間冷却し、次に500 mL分液漏斗に添加した。CH2Cl2 (60 mL)に溶解した臭化ブロムアセチル(16 mL、184 mmol)の溶液を、頻繁に振ってCO2 (g)を放出させながら、分液漏斗に慎重に添加した。添加には約2時間を要した。CO2 (g)の発生が停止した後、CH2Cl2を分離し、水層を98%H2SO4で酸性化した。生じた白色沈殿物を濾過により回収し、デシケーター内で18時間乾燥させた。24 gが得られた(72 mmol、78%収率)。
【0127】
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼンアルソン酸(15 g、45 mmol)を48% HBr(aq)/MeOH (1:1)に溶解した。NaI (200 mg、13 mmol)を添加し、反応物をN2でパージし、氷上で冷却した。約2気泡/秒でSO2 (g)の気泡を発生させ、5時間後に白色沈殿物が形成し始めた。反応物を25℃に温めながら、SO2 (g)の気泡をさらに2時間発生させた。反応物をN2で10分間パージし、濾過により固形物を回収し、H2O (x3)、エーテル(x2)で洗浄して、2-(2-ブロモアセチルアミノ)ベンゼン亜アルソン酸1.35 gを得た。5.5 gが得られた(17 mmol、38%収率)。
【0128】
NH2-Glu-Cys-(CH2CONH-C6H4-o-As{OH}2)-Gly-OH 「o-GSAO」(1)の合成
2-(2-ブロモアセチルアミノ)ベンゼン亜アルソン酸(288 mg、0.90 mmol)を脱気したH2O (5 mL)に懸濁した。NEt3 (250μL、1.7 mmol)を添加し、次いでグルタチオン(160 mg、0.521 mmol)を添加した。反応混合液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で20分間激しく撹拌した。反応液をガラスフリットフィルターを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。上清を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をデカントして真空下でさらに乾燥させた。乾燥粉末状のo-GSAOをH2O (4 mL)に溶解し、セミ分取用HPLC、C18、Vydacタンパク&ペプチドカラムに供した。緩衝液A:濾過および脱気した水に溶解した0.1% TFA;緩衝液B:濾過および脱気したアセトニトリル-濾過および脱気した水(9:1)に溶解した0.1% TFA。画分を回収し、凍結乾燥した。o-GSAOの構造を、LC-MSにより(M+ 548.4)、および1H-NMRにより確認した。HPLCによる純度は、4つのバッチに関して96.9%〜98.8%であった。
【0129】
レトロ-HO-Cys-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-カルボニル-Glu-OH (3)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(80 mg、0.25 mmol)を脱気したH2O (2 mL)に懸濁した。NEt3 (70μL、0.5 mmol)を添加し、次いでレトロ-HO-Cys-カルボニル-Glu-OH (50 mg、0.17 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバック(speed-vac)で画分を乾燥させた。
【0130】
レトロ-HO-Cys-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-カルボニル-Glu-OH (4)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(80 mg、0.25 mmol)を脱気したH2O (2 mL)に懸濁した。NEt3 (70μL、0.5 mmol)を添加し、次いでレトロ-HO-Cys-カルボニル-Glu-OH (50 mg、0.17 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0131】
H-Arg-Gly-Asp-Cys(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-OH (6)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(80 mg、0.25 mmol)を脱気したH2O (4 mL)に懸濁した。NEt3 (70μL、0.5 mmol)を添加し、次いでH-Arg-Gly-Asp-Cys-OH (50 mg、0.11 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0132】
H-Gly-Gly-Cys(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-OH (7)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(288 mg、0.90 mmol)を脱気したH2O (4 mL)に懸濁した。NEt3 (220μL、1.6 mmol)を添加し、次いでH-Gly-Gly-Cys-OH (141.2 mg、0.6 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0133】
H-Val-Thr-Cys(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-Gly-OH (8)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(80 mg、0.25 mmol)を脱気したH2O (4 mL)に懸濁した。NEt3 (70μL、0.5 mmol)を添加し、次いでH-Val-Thr-Cys-Gly-OH (50 mg、0.13 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0134】
H-Cys-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-Tyr-Phe-Gln-Asn-Cys-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-OH (9)の合成
プレッシン酸の還元:N2で脱気した10 mL 0.1 M重炭酸ナトリウムDTT溶液(99 mg、0.65 mmol)にペプチドを溶解する。溶液のpHがpH≧8であることを確認し、混合液をN2で覆う。2時間後、溶液をAcOHで酸性化し、混合液を凍結乾燥する。0.1%水性TFA溶液に溶解した後、セミ分取用RP-HPLCにより精製する。凍結乾燥する。
【0135】
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(26 mg、0.081 mmol、1.4 eq.)を脱気したH2O (3 mL)に懸濁した。NEt3 (20μL、0.14 mmol)を添加し、次いでプレッシン酸(22 mg、0.028 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0136】
3-S-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-1-プロパンスルホン酸(10)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(288 mg、0.90 mmol)を脱気したH2O (4 mL)に懸濁した。NEt3 (220μL、1.6 mmol)を添加し、次いで3-メルカプトプロパン酸(106.9 mg、0.6 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0137】
3-S-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-1-プロピオン酸(11)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(288 mg、0.90 mmol)を脱気したH2O (4 mL)に懸濁した。NEt3 (210μL、1.5 mmol)を添加し、次いでメルカプトプロピオン酸(53μL、0.6 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0138】
1-S-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-メルカプトコハク酸(13)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(288 mg、0.90 mmol)を脱気したH2O (4 mL)に懸濁した。NEt3 (210μL、1.5 mmol)を添加し、次いでメルカプトコハク酸(90 mg、0.6 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0139】
1-S-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-β-D-グルコース(14)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(288 mg、0.90 mmol)を脱気したH2O (4 mL)に懸濁した。NEt3 (210μL、1.5 mmol)を添加し、次いで1-チオ-β-D-グルコース(130.9 mg、0.6 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0140】
3-S-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-1,2-プロパンジオール(15)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(288 mg、0.90 mmol)を脱気したH2O (4 mL)に懸濁した。NEt3 (210μL、1.5 mmol)を添加し、次いで3-メルカプト-1,2-プロパンジオール(65μL、0.6 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0141】
5-S-(CH2CONHC6H4-p-As{OH}2)-1-テトラゾール酢酸(21)の合成
2-(2-ブロモアセチル-p-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(288 mg、0.90 mmol)を脱気したH2O (5 mL)に懸濁した。NEt3 (210μL、1.5 mmol)を添加し、次いで5-メルカプト-テトラゾール酢酸(110 mg、0.6 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で16時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0142】
H-Gly-Gly-Cys(CH2CONHC6H4-o-As{OH}2)-OH (22)の合成
2-(2-ブロモアセチル-o-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(160 mg、0.5 mmol)を脱気したH2O (1 mL)に懸濁した。NEt3 (140μL、1.0 mmol)を添加し、次いでH-Gly-Gly-Cys-OH (61 mg、0.26 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で20時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0143】
H-Val-Thr-Cys(CH2CONHC6H4-o-As{OH}2)-Gly-OH (23)の合成
2-(2-ブロモアセチル-o-アミノ)ベンゼン亜アルソン酸(80 mg、0.25 mmol)を脱気したH2O (1 mL)に懸濁した。NEt3 (70μL、0.50 mmol)を添加し、次いでH-Val-Thr-Cys-Gly-OH (50 mg、0.13 mmol)を添加した。溶液のpHがpH≧8であることを確認した。白色懸濁液を、N2下で20時間激しく撹拌した。反応液を使い捨て0.45μMディスクを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をプラスチックチューブに移し、2 mL EtOH/アセトン(1:1)を添加して、白色沈殿物を生じた。チューブに蓋をして、4℃で1.5時間保存した。溶液を遠心分離し、白色固形物を残してデカントし、この白色固形物をMeCN-水に再度溶解した。粗製試料をRP-HPLCおよびLCMSにより分析した。産物をセミ分取用RP-HPLCにより精製した。スピードバックで画分を乾燥させた。
【0144】
ヒ素剤濃度のアッセイ
GSAO、GSAO-B、およびGSAO-Fの濃度は、ジメルカプトプロパノールでの滴定および5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(Sigma、ミズーリ州、セントルイス)での残存する遊離チオールの計算により測定した(Donoghue et al., 2000)。複合体は濾過滅菌し、使用時まで暗所で4℃にて保存した。これらの条件下で保存した場合、少なくとも1週間はヒ素剤の保存溶液の活性濃度の有意な喪失は、認められなかった。
【0145】
実施例2
GSAOは、ANTと反応しこれを撹乱させることによりMTP開口を誘発した
方法
ミトコンドリア膨化アッセイ
以前に記載されている通りに(Schnaitman & Greenawalt, 1968)分画遠心法を用いて、約250gの雄ウィスターラットの肝臓からミトコンドリアを単離した。最終的なミトコンドリアのペレットを、213 mMマンニトール、71 mMスクロース、および10 mMコハク酸ナトリウムを含む3 mM HEPES-KOH、pH 7.0緩衝液に、30 mgタンパク質/mLの濃度で再懸濁した。MPTの誘導は、肝ミトコンドリアを25℃で、75 mMマンニトール、250 mMスクロース、10 mMコハク酸ナトリウム、および2μMロテノンを含む3 mM HEPES-KOH、pH 7.0緩衝液に0.5 mgタンパク質/mLで懸濁して、分光光度法で評価した。緩衝液の成分はすべて、Sigma、ミズーリ州、セントルイス製であった。ヒ素剤誘導体およびGSCAは、100 mMグリシンを含むリン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解した。用いたANT結合化合物は、CsA、BKA、およびADP(Sigma、ミズーリ州、セントルイス)であった。試薬の濃度は、図の説明に示す。膨化は、Molecular Devices Thermomax Plus(カリフォルニア州、パロアルト)マイクロプレートリーダーを用いて、520 nmでの関連する光散乱の減少をモニタリングすることにより測定した。
【0146】
GSAOのANTへの結合
ラット肝ミトコンドリアを25℃で、213 mMマンニトール、71 mMスクロース、および10 mMコハク酸ナトリウムを含む3 mM HEPES-KOH、pH 7.0緩衝液に、1 mgタンパク質/mLで懸濁し、400μM 2,3-ジメルカプトプロパノール(Fluka, スイス、ブックスSG)の非存在下または存在下において100μM GSAO-Bと共に、回転ホイール上で室温で1時間インキュベートした。標識したミトコンドリアをPBSで3回洗浄し、140 mM NaCl、2.7 mM KCl、0.5% Triton-X-100、0.05% Tween-20、10μMロイペプチン、10μMアプロチニン、50μg.mL-1 4,2-(アミノエチル)-ベンゼンスルホニルフルオリド、および5 mM EDTAを含む氷冷25 mM Tris、pH 7.4緩衝液0.3 mL中で超音波処理した。4℃、18000 gで10分間遠心分離することにより溶解液を清澄化し、30μLのストレプトアビジン-ダイナビーズ(Dynal、ノルウェー、オスロ)と共に回転ホイール上で4℃で60分間インキュベートして、ビオチン標識タンパク質を単離した。超音波処理緩衝液でビーズを5回洗浄し、SDS-Laemmli緩衝液30μl中で2分間煮沸することにより、ビーズからビオチン標識タンパク質を遊離させた。還元条件下において試料を8〜16%勾配iゲルで分離し、PVDF膜に転写した。1:500希釈のヤギ抗ヒトANTポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology、カリフォルニア州、サンタクルーズ)および1:2000希釈のウサギ抗ヤギペルオキシダーゼ結合抗体(Dako、カリフォルニア州、カーピンテリア)を用いたウェスタンブロットにより、タンパク質を検出した。
【0147】
エオシン-5-マレイミドによるANTの標識
Majima et al. (1998)に従って超音波処理および分画遠心することにより、ラット肝臓亜ミトコンドリア粒子を調製した。粒子を、250 mMスクロースおよび0.2 mM EDTAを含む10 mM Tris、pH 7.2緩衝液に20 mgタンパク質/mLで懸濁し、200 nmol GSAO/mgタンパク質の非存在下または存在下で25℃で10分間インキュベートし、次いで20 nmolエオシン-5-マレイミド/mgタンパク質と共に暗所で0℃で1分間インキュベートした。10μmolジチオトレイトール/mgタンパク質を添加することにより、標識を停止した。タンパク質を4〜20%勾配iゲルで分離し、Fluor-S(商標)MultiImager(Bio-Rad、カリフォルニア州、ハーキュリーズ)を用いて、UVトランスイルミネーションによりエオシン標識ANTを可視化した。
【0148】
結果
GSAO(図1A)は、単離したラット肝ミトコンドリアの膨化を誘発した(図1Bi)。膨化率は、GSAO濃度およびインキュベーション時間の増加とともに増加した。対応する五価ヒ素剤(4-(N-((S-グルタチオニル)アセチル)アミノ)ベンゼンアルソン酸、GSAA)またはカルボン酸(4-(N-((S-グルタチオニル)アセチル)アミノ)安息香酸、GSCA)化合物(図1A)にこの効果がないことから(図1Bii)GSAOの三価ヒ素剤の部分がこの活性に関与した。孔開口の陽性対照は、Ca2+およびPiイオン(図1Bi)ならびにPAO(図1Bii)であった。
【0149】
ANT活性は、Ca2+、サイクロフィリンD、およびアデニンヌクレオチドの結合により調節される。サイクロフィリンD(Crompton et al., 1988)およびアデニンヌクレオチド(Haworth & Hunter, 1979a,b)がANTのマトリックス側に結合するのに対して、Ca2+の結合部位はいまだ決定されていない。MPTPの開口の主要な誘因は、マトリックスCa2+濃度の上昇である。EGTAでCa2+をキレート化すると、孔の開口が阻止される。Ca2+に対する誘因部位の特異性は、Mg2+等の他の二価金属イオンが阻害剤として作用することから、絶対的であるようである(Haworth & Hunter, 1979a)。サイクロフィリンDのANTへの結合は、サブミリモルのCa2+濃度における孔の開口に必要である(Halestrap et al., 2002)。シクロスポリンA (CsA)は、サイクロフィリンDに結合しANTからこれを外すことによって、孔の開口を阻止する(Crompton et al., 1988)。マトリックスADPもまた、ANTに結合しCa2+に対する誘因部位の感受性を低下させる、孔の開口の重要な調節因子である(Haworth & Hunter, 1979a,b)。ボンクレキン酸(BKA)もまたANTと相互作用し、Ca2+に対する感受性を低下させる(Hunter & Haworth, 1979)。
【0150】
Mg2+、EGTA、CsA、ADP、およびBKAはすべて、孔の開口においてGSAOの効果を阻止した(図1Biii)。これらの知見は、孔の開口におけるGSAOの特異的効果と一致し、ANTがその標的であることを支持する。
【0151】
GSAOを介するミトコンドリアの膨化の半減期は、Ca2+の添加により減少した(図1C)。この結果は、GSAOが、ミトコンドリアのマトリックス内に突出している、ANT上の3つのシステイン残基の2つを架橋することと一致する。
【0152】
ビオチンタグ化GSAO(4-(N-(S-(N-(6-((6-((ビオチニル)アミノ)ヘキサノイル)アミノ)ヘキサノイル)-グルタチオニル)アセチル)アミノ)フェニルアルセノキシド、GSAO-B)による、ANTの直接結合を図1Dに示す。GSAO-BによるANTの標識は、4倍モル過剰の小さな合成ジチオール、ジメルカプトプロパノールにより競合されたことから特異的である。エオシン-マレイミドはANTのCys160をアルキル化し(majima et al., 1998)、ADP結合を阻止する(Halestrap et al., 1997)。GSAOはANT Cys160のエオシン-マレイミドアルキル化において競合し(図1E)、これによりGSAOがCys160とCys257を架橋することが示唆された
【0153】
実施例3
GSAOは生細胞においてミトコンドリア内に濃縮された
方法
細胞培養
ウシ大動脈内皮(BAE)細胞(ATCC、メリーランド州、ロックビル)は、10%ウシ胎仔血清(FCS)、2 mM L-グルタミン、および5 U.mL-1ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco、メリーランド州、ゲイサーズバーグ)を添加したDMEMで培養した。ヒト微小血管内皮細胞株、HMEC-1(Ades et al., 1992)は、10% FCS、2 mM L-グルタミン、5 U.mL-1ペニシリン/ストレプトマイシン、10 ng.mL-1上皮増殖因子(Sigma、ミズーリ州、セントルイス)、および1μg.mL-1ヒドロコルチゾン(Sigma)を添加したMCDB131培地(Gibco)で培養した。細胞培養プラスチック製品は、Cornig Costar(ニューヨーク州、コーニング)から購入した。トリプシン/EDTA溶液はGibcoから購入した。
【0154】
免疫細胞化学法および共焦点顕微鏡検査法
8ウェルLabtekガラスチャンバースライド(Nunc、イリノイ州、ネーパービル)に、104細胞/ウェルの密度でBAE細胞を播種し、一晩接着させた。細胞を1度洗浄し、培地をハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(Gibco)に置換した。次いで、細胞を50μM GSAO-F、50μM GSAO-Fおよび250μMジメルカプトプロパノール、または50μM GSAA-Fと共に1時間インキュベートした。すべての細胞を100 nM Mitotracker(商標) Red CMXRos(Molecular Probes, オレゴン州、ユージーン)で対比染色した。次に、細胞をHBSSで3回洗浄し、80%アセトンおよび20%メタノールで10分間固定し、HBSSで3回洗浄した。スライドをVectaShield褪色防止剤(Vector Laboratories、カリフォルニア州、バーリンゲーム)にマウントし、マニキュア液で密封した。Leica DM IRB倒立顕微鏡およびLeica共焦点ソフトウェアによる共焦点システムを用いて、像を記録した。
【0155】
結果
GSAOの顕著な特徴は、生存ウシ大動脈内皮(BAE)細胞(図2)およびヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMEC-1)(データは示さず)のミトコンドリアに速やかに局在化することであった。GSAOをフルオレセインに結合させ(GSAO-F)、その細胞内局在化を共焦点蛍光顕微鏡検査により判定した。活発に呼吸している細胞のミトコンドリア内に蓄積する赤色蛍光Mitotrackerプローブ(図2ii、iv、およびvi)とGSAO-Fが共局在化することにより、ミトコンドリアの染色を確認した。GSAO-Fのミトコンドリアへの蓄積が5倍モル過剰の小さな合成ジチオール、ジメルカプトプロパノールの存在下で無効になったこと(図2iii)、および対応する五価ヒ素剤、GSAA-Fが細胞を染色しなかったこと(図2v)から、GSAO-Fのミトコンドリアへの蓄積はGSAOのジチオール反応性に特異的であった。ミトコンドリアへの局在化は、BAE細胞をGSAO-Bとインキュベーションした後に、ストレプトアビジン-Alexa Fluor 488で染色することによっても認められた(データは示さず)。
【0156】
ANTは、ミトコンドリア内膜内に豊富である。GSAOがANTのマトリックス面に隔離されることにより、GSAOのマトリックス内へのエンロトピー移入が駆動されると考えられる。この機構は、GSAOと事実上同じ電荷かつ大きさを有するGSAAが、ANTと反応しなかった、またはミトコンドリア内に蓄積しなかったという知見によって支持される。
【0157】
実施例4
GSAOは、増殖内皮細胞においてATP生成を阻害し、スーパーオキシドレベルを上昇させ、ミトコンドリアの脱分極およびアポトーシスを誘発したが、増殖静止内皮細胞においてはこれらを起こさなかった。
方法
ATPアッセイ
6ウェル培養プレート中のBAE細胞を、0.5%血清中で24時間抑止するかまたは10%血清中に置き、次いで0、60、または150μM GSAOで24時間処理した。細胞を1度洗浄した後、0.3%ウシ血清アルブミンを含むPBS 0.4 mLに再懸濁した。細胞試料50μlを水50μLおよびATP放出剤(Sigma)100μLと混合し、ルシフェリン/ルシフェラーゼATPアッセイ混合液(Sigma)を用いてATP濃度を測定した。水50μLの代わりにATP標準物質を用いて、発光単位をATP濃度に変換した。Beckmanコールターカウンターを用いて細胞数をカウントし、ATPのモルを100万個細胞当たりで表した。
【0158】
細胞増殖アッセイ
BAE細胞またはHMEC-1細胞を104細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、一晩接着させた後、示した通りに処理した。0.25%血清中での細胞増殖の抑止に関する実験では、細胞を10%血清を含む培地で播種し、一晩接着させた後、PBSで洗浄し、0.25%血清を含む培地中で24時間抑止した。処理後に残った接着細胞を、メチレンブルー(Oliver et al., 1989)を用いて測定した。
【0159】
スーパーオキシド、ミトコンドリア膜電位、ミトコンドリア量、およびアポトーシスのアッセイ
ジヒドロエチジンによるスーパーオキシドの測定、JC-1によるミトコンドリア膜電位の測定、ノニルアクリジンオレンジによるミトコンドリア量の測定、およびアネキシンVによるアポトーシスの測定については、増殖または増殖静止BAE細胞を6ウェル培養プレートにおいてGSAOで24時間または48時間処理し、次いでトリプシン/EDTAで剥離し、1度洗浄し、無血清培地で2 x 106細胞/mLになるように再懸濁した。次いで、細胞をジヒドロエチジン(5μM、Molecular Probes)と共に室温で15分間、またはJC-1(0.5μg.mL-1、Molecular Probes)、アネキシンV-FITC(50μl.mL-1)(Pharmingen、米国、カリフォルニア州、ラホーヤ)、もしくはアクリジンオレンジ10-ノニルブロマイド(5μM、Molecular Probes)と共に室温で30分間インキュベートした。次に、細胞を1度洗浄し、無血清培地0.5 mLで再懸濁し、氷中に移し、フローサイトメトリーにより直ちに蛍光を定量化した。
【0160】
結果
GSAOは生細胞のミトコンドリア内に濃縮され、ミトコンドリア機能および細胞生存度を撹乱させた。増殖細胞は、増殖静止細胞よりも多くのミトコンドリア量および呼吸を有する。GSAOが増殖細胞に対して選択的効果を有するかどうかを試験するため、増殖BAE細胞または増殖静止BAE細胞を、濃度を上昇させていくGSAOと共に48時間インキュベートした。
【0161】
増殖BAE細胞の生存度の減少に関するGSAO IC50は約75μMであったが(図3Ai)、この化合物は増殖静止細胞に対してほとんど影響を及ぼさなかった。対照化合物、GSAAおよびGSCAでは、1.0 mMの濃度まで増殖BAE細胞の生存度に有意な影響を及ぼさなかった(データは示さず)。増殖細胞の生存度に対するGSAOの効果は、時間依存的であった。インキュベーション時間を48時間から72時間に延ばした場合、GSAO IC50は約75μMから約25μMに減少した(データは示さず)。一方、PAOは、約200 nMのIC50で、増殖BAE細胞と増殖静止BAE細胞に同等に毒性を示した(図3A(ii))。HMEC-1細胞を用いても同様の結果が得られた(データは示さず)。増殖内皮細胞の生存度に及ぼすGSAOの効果は、ミトコンドリア膜電位の喪失およびアポトーシスと密接に関連していた(図3B)。これらのパラメータは、それぞれJC-1色素およびFITC結合アネキシンVを用いて測定した。サイトゾル(緑色蛍光)とミトコンドリア(赤色蛍光)とのJC-1分布率がミトコンドリア膜電位を示し(Smiley et al., 1991)、アネキシンVはアポトーシス細胞の表面上に露出したホスファチジルセリンに結合する。
【0162】
増殖内皮細胞におけるGSAOのANTへの結合は、ATP生成に影響を及ぼした。増殖BAE細胞のATP含量は増殖静止細胞のATP含量の約2倍であったが、150μM GSAOと共に24時間インキュベートすることにより、増殖細胞のATPレベルは増殖静止細胞のレベルまで減少した(図4ai)。この結果は、増殖細胞の生存度に及ぼすGSAOの選択的効果を反映している(図4ai)。細胞内ATPの減少がミトコンドリアの形成よりもむしろミトコンドリアのATP合成に及ぼすGSAOの効果に起因することを確認するため、ノニルアクリジンオレンジを用いてミトコンドリア量を測定した。この色素は、ミトコンドリア膜内のカルジオリピンに結合する(Petit et al., 1992)。増殖細胞のミトコンドリア量は増殖静止細胞のミトコンドリア量の約2倍であり、GSAO処理により変化しなかった(図4aii)。
【0163】
スーパーオキシドアニオン(O2-)等の活性酸素種は、高濃度において、細胞増殖を抑止しアポトーシスを誘導し得る。O2-の細胞内レベルに及ぼすGSAOの効果を試験するため、BAE細胞をGSAOで24時間処理し、O2-およびH2O2の細胞内レベルをそれぞれ色素ジヒドロエチジウムおよびCM-H2-DCFDAを用いて測定した。O2-の細胞内レベルは増殖BAE細胞においてGSAO濃度と共に直線的に増加したが、増殖静止BAE細胞では増加しなかった(図4b)。H2O2レベルの減少がほんのわずかであったことから、GSAOのこの効果は、SOD活性の阻害に起因したのではない(図4c)。例えば、120μM GSAOで24時間処理すると、H2O2は30%減少したが、O2-のレベルは100%増加した。この知見は、細胞内のO2-およびH2O2レベルの2チャンネルフローサイトメトリー解析を用いて確認した。大部分の細胞において、対応するH2O2の減少を示さずにO2-レベルが増加した(データは示さず)。一方、GSAAはO2-レベルにもH2O2レベルにも影響を及ぼさなかった。GSAO処理によるO2-レベルの直線的増加は、ミトコンドリアの完全性の破壊と一致する。
【0164】
実施例5
GSAOはミトコンドリアからのチトクロームCの放出を誘発する
GSAOの抗増殖効果とアポトーシス促進効果を識別するため、処理した細胞をヨウ化プロピジウム(PI)で染色してアポトーシス後期細胞および死細胞を検出した。GSAOで48時間処理した後の細胞総数およびPI陽性細胞の割合を、フローサイトメトリーにより測定した。
【0165】
BAE細胞(図5a)または初代ヒト皮膚微小血管内皮細胞(図5b)の増殖抑止のIC50は、それぞれ約10μMおよび約15μMであった。生存度損失のIC50はそれぞれ約75μMおよび約35μMであり、GSAOはアポトーシスを誘導するのに必要な濃度よりも低い濃度で増殖を抑止したことが示された。ウシ血管平滑筋細胞の増殖抑止のIC50は約30μMであった。対照的に、試験したすべての腫瘍細胞は、GSAOに対する耐性がより高かった(図5c〜g)。増殖抑止および生存度喪失を誘導するGSAOの濃度は、内皮細胞よりも腫瘍細胞の方が、それぞれ3〜>32倍および2〜9倍高かった(表1)。GSAO処理によりルイス肺癌細胞の脱凝集が起こったが、これがこの腫瘍株の細胞数の明白な増加の理由であった(図5e)。
【0166】
(表1)内皮細胞および腫瘍細胞の増殖および生存度に及ぼすGSAOの効果
1未検。LLC細胞は培養液中で凝集し、GSAO処理により細胞の脱凝集が起こったが、これにより細胞数の推定が損なわれた。
【0167】
実施例6
GSAOはミトコンドリアからのチトクロームCの放出を誘発する
方法
ラット肝ミトコンドリアを25℃で、75 mMマンニトール、250 mMスクロース、10 mMコハク酸ナトリウム、および2μMロテノンを含む3 mM HEPES、pH 7.0緩衝液に1 mgタンパク質/mLで懸濁し、ANT結合化合物で0〜60分間処理した。試薬の濃度は、図の説明に示す。8000 gで5分間遠心分離して反応液0.25 mL中のミトコンドリアをペレット化し、上清をMicrocon YM-3膜(Millipore、マサチューセッツ州、ベッドフォード)を通す限外濾過により10倍に濃縮した。濃縮した上清を非還元条件下においてGradipore(オーストラリア、シドニー)製の8〜16%勾配iゲルで分離し、PVDF膜に転写した。抗ヒトチトクロームCポリクローナル抗体(製品556433、BD Pharmingen)および抗ウサギペルオキシダーゼ結合抗体(Dako、カリフォルニア州、カーピンテリア)を用いたウェスタンブロットにより、タンパク質を検出した。GS-700イメージングデンシトメーターおよびMulti-Analystソフトウェア(Bio-Rad、カリフォルニア州、ハーキュリーズ)を用いて、化学発光フィルムを解析した。
【0168】
結果
単離したミトコンドリアのGSAOとのインキュベーションにより、チトクロームCの培地中への時間依存的な放出が誘発された(図6A)。ANTリガンド、シクロスポリンAは、この放出を部分的に阻害した(図6B)。
【0169】
実施例7
GSAOはヒヨコ絨毛尿膜(CAM)において血管新生を阻害した
方法
受精3日目の白色レグホーン卵(Spafas、コネチカット州、ノーウィッチ)を割り、無傷の卵黄を有する胚を20 x 100 mmペトリ皿内に入れて、37℃および3%CO2で3日間インキュベートした(Folkman, 1985)。次いで、GSAAまたはGSAOのいずれかを5、10、または50μg含むメチルセルロース(Fisher Scientific、ニュージャージー州、フェアローン)ディスクを個々の胚のCAMに乗せ、37℃および3%CO2で48時間インキュベートした。ディスクは、テフロン棒上で、0.45%メチルセルロース10μlに溶解したGSAAまたはGSAOを乾燥させることにより作製した。立体顕微鏡を用いてCAMを観察し、明白な影響のないこと、または無血管領域によって定義されるCAM血管新生の阻害に関して記録した。場合により、CAM血管に墨汁を注入して撮影した。
【0170】
結果
GSAOがインビトロにおいて増殖静止内皮細胞を死滅させずに増殖内皮細胞を選択的に死滅させる能力を考慮して、GSAOがインビボにおける血管新生の有効な阻害剤であるかどうかを判定する試験を行った。
【0171】
ヒヨコ絨毛尿膜(CAM)アッセイは、血管新生阻害の検出および解析に用いられている(Nguyen et al., 1994)。GSAOは、濃度依存的にCAM血管新生を阻害した(図7A)。血管新生の阻害は、6日目CAMにGSAOを含むメチルセルロースペレットに移植してから48時間後の無血管領域と定義した(図7Ai)。50μg/ペレットまでのGSAAは、CAM血管新生に影響を及ぼさなかった。
【0172】
実施例8
GSAOはマウスにおいて腫瘍の血管新生および腫瘍の増殖を阻害した
方法
原発腫瘍増殖アッセイ
雌の7〜9週齢SCIDマウスまたはC57BI6/Jマウスを用いた(Massachusetts General Hospital、マサチューセッツ州、ボストン)。マウスは3〜5匹の集団で12時間の明暗サイクルで飼育し、動物用固形飼料および水を自由に与えた。SCIDマウスまたはC57BI6/Jマウスをイソフルランの吸入により麻酔し、背部の皮膚を剪毛してエタノールで消毒し、PBS 0.2 mLまたはLLC細胞については生理食塩水0.2 mLに懸濁した2.5 x 106個のBxPC-3細胞、HT1080細胞、またはLLC細胞の懸濁液を、基部正中線にS.C.注射した。LLC細胞はO'Reilly et al. (1997)に従って調製した。腫瘍体積は、式、a.b2.0.52(式中、aは長径でありbは短径である)を用いて計算した。
【0173】
免疫組織化学法
腫瘍を緩衝化Formalde-Fresh(Fisher Scientific、ニュージャージー州、フェアローン)で固定し、パラフィンに包埋し、5μM厚の切片を作製し、ガラススライド上に置いた。切片をヘマトキシリンおよびエオシンで、またはCD31、PCNA(Holmgren et al., 1995)、もしくは断片化DNAに関して染色した。対照群および処置群に由来する最小および最大の腫瘍を含む3つの腫瘍において微小血管をカウントし、Weidner et al. (1991)に従って新血管新生の最も活発な領域における密度を評価した。増殖指数は、倍率400xでスコアリングした細胞の割合により評価した。2枚の個々の切片において、最低限1000個の細胞をカウントした。アポトーシス指標は、倍率400xでスコアリングした細胞の割合により評価した。2枚の個々の切片において、最低限1500個の細胞をカウントした。
【0174】
結果
免疫無防備状態のマウスおよび免疫能のあるマウスそれぞれにおけるヒトおよびマウス原発腫瘍の増殖はどちらも、GSAOの全身投与により顕著に抑制された。BxPC-3腫瘍(図7C)もしくはHT1080腫瘍(図7D)を有するSCIDマウス、またはLLC腫瘍(図7E)を有するC57BI6/Jマウスを、腫瘍から離れた部位におけるGSAO 10 mg/kg/日の皮下投与により処置した結果、腫瘍増殖率がそれぞれ>90%、約70%、および約50%阻害された。対照GSAAの投与では、溶媒のみの投与と比較した場合、すべての実験において腫瘍増殖率は<20%阻害された(データは示さず)。SCIDマウスまたはC57BI6/Jマウスに対する、GSAOまたはGSAA投与の明白な副作用は認められなかった。実験期間を通してGSAOおよびGSAA処置群のマウスの平均体重は同様であり、GSAOまたはGSAA処置したマウスの心臓、肺、肝臓、腎臓、および脾臓に、明白な肉眼的相違も形態学的変化も認められなかった(データは示さず)。
【0175】
図7Cに記載した実験による腫瘍の免疫組織化学的解析から、GSAO処理した腫瘍の血管密度が有意に減少したことが示された(p<0.001)(図7F)。GSAAおよびGSAO処理した腫瘍の増殖指標が同様であったのに対して、GSAA処理した腫瘍と比較してGSAO処理した腫瘍のアポトーシス指標に有意な増加が認められた(p=0.05)(図6F)。腫瘍血管新生の阻害は、腫瘍細胞のアポトーシスの増加と関連づけられた(O'Reilly et al. 1997)。アポトーシスが高率であることが腫瘍細胞の高い増殖率の平衡を保たせ、その結果腫瘍の大きさが最終的に増加しなかったと考えられる(Holmgren et al., 1995)。
【0176】
腫瘍増殖に及ぼすGSAOの効果は、腫瘍血管新生の阻害と一致する。GSAOはインビボにおいて内皮細胞の増殖を抑止したが、>30倍高い濃度ではBxPC-3の増殖に効果を及ぼさず(表1)、GSAOの全身投与によりインビボにおける腫瘍の血管増生は顕著に減少したが、BxPC-3腫瘍細胞の増殖指標には影響を及ぼさなかった(図7F)。
【0177】
実施例9
GSAOおよび関連類似体のBAE細胞に対する抗増殖活性の比較
方法
1日目においてDMEM 10% FBS中1000細胞/ウェルを有する96ウェルプレートで、化合物1〜11、12〜15、および20〜23を72時間スクリーニングした。2日目に、様々な濃度の化合物で細胞を処理した。4日目に、MTT顕色(550 nmで測定)により細胞増殖を測定し、未処理の細胞と比較した。IC50値を決定し、GSAOに対する活性の増加を以下の通りに算出した:
活性増加率 = IC50(GSAO) / IC50(GSAO類似体)
【0178】
結果を表2および図8に要約する。
【0179】
(表2)GSAOおよび関連類似体のBAE細胞の増殖に対する活性
1回しか測定していない化合物9を除いて、IC50値はすべて少なくとも2回の異なる実験から得た。
【0180】
結果
表2に示した結果から、アルセノキシド基がオルト位にある(フェニレン環のリンカー基の位置と比較して)化合物が、アルセノキシド基がパラ位にある類似の化合物よりも有意に活性が高いことが示唆された。例えば、化合物1(「o-GSAO」)は、GSAOよりも活性が53.2倍高い。同様に、「オルト-アルセノキシド」化合物4は、対応するp-アルセノキシド類似体(化合物3)よりも活性が約140倍高く;化合物22は、対応するp-アルセノキシド化合物7よりも活性が約106倍高く;化合物23は、対応するp-アルセノキシド化合物8よりも活性が約20倍高い。ヒ素部分をオルト位に位置づけるとヒ素残基とジチオールとの相互作用が立体的に妨げられえると考えていたため、これらの結果はまったく予期しないものであった。
【0181】
o-アルセノキシド化合物およびp-アルセノキシド化合物のBAE細胞に対する抗増殖効果の比較を図9に示す。
【0182】
化合物のBAE細胞に対する抗増殖効果と分子量の比較を図10に示す。
【0183】
化合物のBAE細胞に対する抗増殖効果とLog P値の比較を図11に示す。
【0184】
実施例10
GSAOおよび関連類似体のミトコンドリア孔遷移の誘導に及ぼす効果
方法
単離後に-80℃で1日または2日凍結したラット肝ミトコンドリアを用いて、スクリーニングを行った。マイクロプレートリーダーを用いて、520 nmにおける光散乱の減少をモニタリングすることにより、ミトコンドリアの膨化を測定した。
【0185】
すべての実験において、最大半減の膨化に必要な時間を各化合物について決定した。次いで、膨化率を算出し、GSAOと比較した。GSAOに対する膨化率の増加を以下の通りに算出した:
膨化増加率 = 増加率(GSAO類似体) / 増加率(GSAO)
結果を表3に要約し、図12に示す。
【0186】
(表3)GSAOおよび関連類似体のMPTP誘導に及ぼす効果
1回しか試験していない化合物15を除いて、すべての化合物は、MPTP誘導特性に関して異なるミトコンドリア調製物において少なくとも2回試験した。
【0187】
結果
試験した化合物はすべて、GSAOと同様であるかまたはそれよりも高い誘導活性を示した。最も活性の高い化合物は1、4、22、および23であり、GSAOと比較して5.4〜16.3倍の活性の増加を示した(表3;図12)。BAE細胞に対する抗増殖活性と同様にMPTP誘導に関しても、オルト-アルセノキシド化合物(1、4、22、および23)が、対応するパラ-アルセノキシド化合物(それぞれGSAO、3、7、および8)よりも高い活性を有した。
【0188】
化合物のMPTP誘導と分子量の比較を図13に示す
【0189】
化合物のMPTP誘導とLog Pの比較を図14に示す。
【0190】
GSAOおよび関連類似体の抗増殖活性を、それらの化合物がMPTを誘導する能力と比較した。結果を図15に示す。どちらの試験においてもGSAOと比較して活性の増加を示した化合物は、オルト-アルセノキシド化合物1、4、22、および23であった。
【0191】
実施例10
オルトおよびパラ置換型アルセノキシド化合物のチオールに対する親和性の比較
フェニレン環のアルセノキシド部分のオルト位またはパラ位が、ジチオールに結合する化合物の能力に有意に影響を及ぼすかどうかを判定するため、GSAO(パラ-アルセノキシド)および化合物1(オルト-アルセノキシド)をDTTで滴定した。
【0192】
図16に示すように、GSAOと化合物1のヒ素反応性に有意な相違は認められなかった。
【0193】
実施例11
GSAOとo-GSAOの比較 - ミトコンドリア膨化アッセイ
方法
以前に記載されている通りに(Don et al., 2003)分画遠心法を用いて、約250gの雄ウィスターラットの肝臓からミトコンドリアを単離した。最終的なミトコンドリアのペレットを、213 mMマンニトール、71 mMスクロース、および10 mMコハク酸ナトリウムを含む3 mM HEPES-KOH、pH 7.0緩衝液に、30 mgタンパク質/mLの濃度で再懸濁した。ミトコンドリア膜透過性遷移の誘導は、肝ミトコンドリアを25℃で、75 mMマンニトール、250 mMスクロース、10 mMコハク酸ナトリウム、および2 mMロテノンを含む3 mM HEPES-KOH、pH 7.0緩衝液に0.5 mgタンパク質/mLで懸濁して、分光光度法で評価した。膨化は、マイクロプレートリーダーを用いて、520 nmでの関連する光散乱の減少をモニタリングすることにより測定した。
【0194】
結果
単離したミトコンドリアの最大膨化の半減期は、所与の濃度のo-GSAOではGSAOと比較して3〜5倍早かった(図17)。実際に、o-GSAOはミトコンドリア膜透過性遷移の誘導において、親油性PAOとほぼ同じ程度有効であった(図17D)。
【0195】
ANTの孔形成は、生理的条件下において、Ca2+、サイクロフィリンD、およびアデニンヌクレオチドの結合により調節される。ミトコンドリア膜透過性遷移孔の開口の主要な誘因は、マトリックスCa2+濃度の上昇である。EGTAによるCa2+のキレート化により孔の開口が阻止され、Mg2+等の過剰な他の二価金属イオンでも同様に阻止される。EGTAおよびMg2+のどちらも、GSAO依存性膨化を阻止した(図18)。サイクロフィリンDのANTへの結合は、サブミリモルのCa2+濃度における孔の開口に必要である。シクロスポリンA (CsA)は、サイクロフィリンDに結合しANTからこれを外すことによって、孔の開口を阻止する。さらに、ADPは、ANTに結合しCa2+に対する誘因部位の感受性を低下させることにより、孔の開口を阻止する。CsAおよびADPは、孔の開口に対するo-GSAOの効果を阻止した(図19)。
【0196】
実施例12
GSAOとo-GSAOの比較 - 細胞増殖および生存度アッセイ
方法
BAE細胞またはヒト膵癌BxPC-3細胞は、10%ウシ胎仔血清を含むDMEM中、103細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、24時間接着させた。細胞を洗浄し、10%ウシ胎仔血清およびGSAOまたはo-GSAOを含むDMEMと共にインキュベートし、さらに48時間培養した。一部のBAE細胞は0.25%血清を含む培地中で24時間抑止し、0.25%または10%血清を含む培地中、GSAOまたはo-GSAOの存在下でさらに48時間培養した。MTTを用いて、生存接着細胞を測定した。
【0197】
結果
BAE細胞の増殖の阻害において、o-GSAOはGSAOよりも約50倍有効であった。BAE細胞の増殖抑止のIC50は、GSAOおよびo-GSAOそれぞれについて8.3±2.1μMおよび0.16±0.03μMであった(図20A)。o-GSAOはGSAOと同様に、BxPC-3細胞の増殖と比較してBAE細胞の増殖の選択的阻害剤であった。BxPC-3細胞の増殖抑止のIC50は、GSAOおよびo-GSAOそれぞれについて>300μMおよび約2μMであった(図20B)。しかし、GSAOと比較して、o-GSAOは増殖(血管新生)内皮細胞に選択的ではなかった(図21)。o-GSAOは、増殖内皮細胞および増殖静止内皮細胞の生存度を同等に十分に減少させた。o-GSAOに対する反応は、この実験におけるPAOと非常によく類似していた(Don et al., 2003を参照のこと)。
【0198】
実施例13a
GSAOとo-GSAOの比較 - 原発腫瘍増殖アッセイ
方法
雌の7〜9週齢Balb Cヌードマウスを用いた(UNSW Biological Resource Centre)。マウスは3〜5匹の集団で12時間の明暗サイクルで飼育し、動物用固形飼料および水を自由に与えた。PBS 0.2 mLに懸濁した2.5 x 106個のBxPC-3細胞の懸濁液を、基部正中線に皮下注射した。腫瘍を確立させ、約40 mm3の大きさになるまで増殖させ、その後無作為に4群に分類した。腫瘍体積は、式、a.b2.0.52(式中、aは長径でありbは短径である)を用いて計算した。動物を、PBS 0.1 ml中、1または10 mg/kg/日の用量のGSAOまたはo-GSAOで処置した。化合物は、腫瘍から離れた部位に皮下投与した。2日または3日おきに、腫瘍体積およびマウス体重を測定した。
【0199】
結果
Balb Cマウスへのo-GSAOの投与では短期間の行動的副作用が認められたが、体重の減少は認められなかった。結果を表3および図22に示す。
【0200】
(表3)o-GSAO投与の副作用
a:注射から20〜25分後に行動徴候が現れ、5〜10分間持続した。
b:注射から10〜15分後に行動徴候が現れ、5〜10分間持続した。
【0201】
実施例13b
GSAOとo-GSAOの比較 - 抗腫瘍効果
方法
約40 mm3のBxPC-3腫瘍を有するBalb-Cヌードマウスを無作為に4群に分類し(n=10または11/群)、PBS 0.1 ml中、1または10 mg/kg/日のGSAO(パートA)またはo-GSAO(パートB)を皮下投与した。パートCおよびDはそれぞれの群のマウス体重であり、矢印が処置の開始を示す。データポイントは、腫瘍体積またはマウス体重の平均値±SEである。10 mg/kg o-GSAOによる処置(パートB)は、11匹のうち7匹のマウスの注射部位において壊死および炎症が起こったため(3/11は重篤な潰瘍を有し、4/11は中程度の潰瘍を有した)、14日目に終了した。この群では、体重減少も多少認められた(パートD)。
【0202】
結果
Balb Cマウスへのo-GSAOの投与後に短期間の行動的副作用が認められ、また、同一部位への反復注射により皮膚の肥厚および時に壊死も認められた。腫瘍実験(実施例13a)におけるBalb Cヌードマウスに行動的副作用は認められなかったが、これらのマウスにおいて皮膚の壊死はより重篤であった。実際に、10 mg/kg o-GSAOでの処置は、11匹のうち7匹のマウスの注射部位において重篤な壊死および炎症が起こったため、14日目に終了した。両マウス系統のうち唯一体重減少が認められたのは、この群であった。これらの副作用は、GSAO投与では認められなかった(図23)。
【0203】
要約すると、o-GSSAOはインビトロにおいてGSAOよりも有効であるが、GSAO投与では明白でない副作用を有する。o-GSAOはGSAOと異なり、増殖静止内皮細胞と比較して増殖内皮細胞に対して選択的ではない。
【0204】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】GSAOは、ANTと反応しこれを撹乱させることによりMTP開口を誘発した。A. GSAO、GSAA、およびGSCAの構造。B. GSAOはミトコンドリアの膨化を誘発した。膨化は、520 nmでの関連する光散乱の減少を60分間にわたってモニタリングすることにより測定した。トレースは、少なくとも2つの異なるミトコンドリア調製物における最低でも3回の実験の代表値である。パートiでは、ミトコンドリアを、なし (●)、25 (○)、50 (▲)、100 (△)、または200 (■)μM GSAOと共にインキュベートした。孔開口の陽性対照は、150μM Ca2+および6 mM Pi (□)であった。パートiiでは、ミトコンドリアを、なし (●)、100μM GSCA (△)、100μM GSAA (▲)、または100μM GSAO (■)と共にインキュベートした。孔開口の陽性対照は、25μM PAO (○)であった。パートiiiでは、ミトコンドリアを、3 mM Mg2+ (▼)、100μM EGTA (△)、10μM BKA (▲)、5μM CsA (▽)、もしくは8 mM ADP (○)の存在下または非存在下 (■)において、100μM GSAOと共にインキュベートした。比較のために、処理なし (●)を示す。C. Ca2+濃度の上昇により、MPTPがGSAOに対して感作される。ミトコンドリアを、Ca2+の非存在下または濃度を上昇させていくCa2+の存在下において、50 (●)、75 (○)、100 (■)、または200μM (□) GSAOと共にインキュベートし、最大半減の膨化を測定した。D. GSAO-BによるANTの標識。単離したラットミトコンドリアを、4倍モル過剰のジメルカプトプロパノール(DMP)の非存在下(レーン1)または存在下(レーン2)においてGSAO-Bで標識し、ビオチン標識タンパク質をストレプトアビジン-アガロースビーズで回収し、SDS-PAGEで分離し、ANTに関してウェスタンブロットした。E. GSAOは、ANT内のCys160のエオシン-マレイミドによるアルキル化において競合した。ラット亜ミトコンドリア粒子を、GSAOの非存在下(レーン1)または存在下(レーン2)においてエオシン-5-マレイミドで標識し、エオシン標識ANTをSDS-PAGEで分離し、トランスイルミネーションにより検出した。
【図2】GSAOは生細胞においてミトコンドリア内に濃縮された。GSAO-F (i)およびMitotracker Red (ii)と共にインキュベートしたBAE細胞の共焦点顕微鏡検査であり、単一細胞のミトコンドリア内に化合物が共局在化することを示す。GSAO-Fは、DMPと共にインキュベートした場合、細胞を染色しなかった(iiiおよびiv)。五価ヒ素剤、GSAA-Fもまた、細胞を染色しなかった(vおよびvi)。
【図3】GSAOは、増殖内皮細胞においてミトコンドリアの脱分極およびアポトーシスを誘発したが、増殖静止内皮細胞においてはこれらを誘発しなかった。A. GSAOは増殖内皮細胞の生存度を減少させたが、増殖静止内皮細胞の生存度は減少させなかった。一方、PAOは両細胞種に同等に毒性を示した。BAE細胞は、0.25%血清を含む培地中で24時間抑止し、その後0.25%または10%血清を含む培地中で、GSAO (i)またはPAO (ii)と共に48時間培養した。48時間処理した後の接着細胞数を測定した。結果は、3回の実験の平均値±SEである。B. GSAOは、BAE細胞においてミトコンドリアの脱分極を誘発し、アポトーシスを誘導した。細胞を10%血清およびGSAOを含む培地中で48時間培養した後、JC-1またはアネキシンVで標識した。ミトコンドリア膜の脱分極(JC-1緑色/赤色蛍光)およびアポトーシスの誘導(アネキシンV結合)に関して陽性である細胞の割合を測定した。2回の異なる実験において、同様の結果が観察された。
【図4】GSAOは、増殖内皮細胞においてATP生成を阻害しスーパーオキシドレベルを上昇させたが、増殖静止内皮細胞においてはこれらを起こさなかった。A. BAE細胞は、0.5%または10%血清を含む培地中で24時間培養した後、GSAOの存在下でさらに24時間培養した。パートiでは、ルシフェリン/ルシフェラーゼアッセイを用いて、細胞内ATPレベルを測定した。結果は、4回の実験の平均値±SEMである。パートiiでは、ノニルアクリジンオレンジ(NAO)の取り込みによりミトコンドリア量を測定した。結果は、2回の実験の平均値±範囲である。B. 0.5%または10%血清を含む培地中で24時間培養した後に、GSAOの存在下でさらに24時間培養したBAE細胞における、ジヒドロエチジンを用いて測定したスーパーオキシドレベル。結果は、2回の実験の平均値±範囲である。C. 10%血清およびGSAOを含む培地中で24時間培養したBAE細胞における、O2-(y軸)の同時測定。各象現内の細胞の割合を、角の最外部に示す。
【図5】GSAOは、腫瘍細胞と比較して内皮細胞に対して選択的に毒性を示した。2種類の初代内皮細胞(AおよびB)および5つの腫瘍細胞株(C〜G)の細胞増殖および生存度に及ぼすGSAOの効果。4つのヒト(BxPC-3膵臓、HT1080線維肉腫、A549肺、およびHL60赤白血病)癌細胞株および1つのマウス(LLC肺)癌細胞株を試験した。結果は、3回の処理の平均値±SEMである。
【図6】GSAOはミトコンドリアからのチトクロームCの放出を誘導した。A. ラット肝ミトコンドリアを100μM GSAOと共に0〜60分間インキュベートし、培地中に放出されたチトクロームCをウェスタンブロットにより測定した。ウェスタンブロットおよび対応する定量化を示す。B. ラット肝ミトコンドリアをなし、100μM GSAO、100μM GSAOおよび5μMシクロスポリンA (CsA)、または陽性対照としての150μM Ca2+および6 mM Piと共に30分間インキュベートした。培地中に放出されたチトクロームCをウェスタンブロットにより測定した。
【図7】GSAOは、CAM血管新生、ならびにマウスにおける腫瘍血管新生および腫瘍増殖を阻害した。A. 10μgのGSAA(上図)またはGSAO(下図)を含むメチルセルロースディスクと共に48時間インキュベートした後のCAMの写真。点線の円は、ディスクを乗せた位置を示す。B. 5、10、または50μg GSAO/ペレットにおける、5つの領域のうち、血管新生の阻害に関して陽性であった領域の数。GSAAは、50μg/ペレットまでCAM血管新生を阻害しなかった。C〜E. 約0.1 gのBxPC-3腫瘍(パートC)もしくはHT1080腫瘍(パートD)を有するSCIDマウス、または約0.1 gのLLC腫瘍(パートE)を有するC57BI6/Jマウスを、無作為に2群(n=4)に分類し、100 mMグリシンを含むPBS 0.2 mL中、10 mg/kg/日のGSAAまたはGSAOをS.C.投与した。データポイントは、腫瘍体積の平均値±SEである。E. パートCに示した実験による、GSAAまたはGSAOによる処置31日目のBxPC-3腫瘍の組織学的切片を、血管新生(CD31)、増殖(PCNA)、およびアポトーシス(TUNEL)について解析した。
【図8】GSAOと比較した、化合物1〜11、13〜15、および20〜23のBAE細胞に対する抗増殖活性。
【図9】フェニレン環のオルト位またはパラ位にアルセノキシド基を有する化合物の、BAE細胞に対する抗増殖活性の比較。
【図10】GSAOおよび関連類似体の、BAE細胞に対する活性と分子量の相互関係。
【図11】GSAOおよび関連類似体の、BAE細胞に対する活性とLog P値の相互関係。
【図12】GSAO類似体およびGSAOによるMPTPの誘導の比較。
【図13】GSAOおよび関連類似体の、MPTP誘導と分子量の相互関係。
【図14】GSAOおよび関連類似体の、MPTP誘導とLog Pの相互関係。
【図15】BAE細胞に対する抗増殖活性とMPTP誘導の比較。
【図16】GSAOおよび化合物1のDTTとの相互作用の比較。
【図17】GSAOまたはo-GSAOによるミトコンドリア膜透過性遷移の誘導。膨化は、520 nmにおける光散乱の減少により測定した。単離したミトコンドリアを、様々な濃度のGSAO(パートA)またはo-GSAO(パートB)と共にインキュベートした。2つの異なる実験におけるGSAOまたはo-GSAO濃度の関数としての膨化の半減期をパートCに示す。GSAOまたはPAO濃度の関数としての膨化の半減期をパートDに示す。パートAおよびBにおける陽性対照は、150μM Ca2+および6 mM Pi (■)であった。
【図18】GSAOまたはo-GSAOのミトコンドリア膜透過性遷移に及ぼす効果のカルシウム依存性。ミトコンドリアを、濃度を上昇させていくCa2+のもと、様々な濃度のGSAO(パートA)またはo-GSAO(パートB)と共にインキュベートし、最大半減の膨化を測定した。
【図19】ANTリガンドは、o-GSAOによるミトコンドリア膜透過性遷移の誘導を阻止する。ミトコンドリアを、EGTA、Mg2+、CsA、もしくはADPの非存在下または存在下において、200μM o-GSAOと共にインキュベートした。陽性対照は、150μM Ca2+および6 mM Pi (■)であった。
【図20】GSAO (●)またはo-GSAO (○)と共に10%血清を含む培地中で48時間インキュベートした後に残存した、接着BAE細胞(パートA)または接着BxPC-3細胞(パートB)の数。各データポイントは、三つ組測定値の平均値±SEである。BAE細胞についての結果は、6回(GSAO)または2回(o-GSAO)の異なる実験による。
【図21】GSAO (A)またはo-GSAO (B)と共に0.25% (○)または10% (●)血清を含む培地中で48時間インキュベートした後に残存した、接着BAE細胞の数。各データポイントは、三つ組測定値の平均値±SEである。
【図22】o-GSAOの毒性。Balb-Cマウス(6〜8週齢、3匹/群)に、PBS 0.1 ml中、1または10 mg/kg/日のo-GSAOを皮下投与した。データポイントは、マウス体重の平均値±SEである。
【図23】GSAOと比較したo-GSAOの抗腫瘍効果。約40 mm3のBxPC-3腫瘍を有するBalb-Cヌードマウスを無作為に4群に分類し(n=10または11/群)、PBS 0.1 ml中、1または10 mg/kg/日のGSAO(パートA)またはo-GSAO(パートB)を皮下投与した。パートCおよびDはそれぞれの群のマウス体重であり、矢印は処置の開始を示す。データポイントは、腫瘍体積またはマウス体重の平均値±SEである。10 mg/kg o-GSAOによる処置(パートB)は、11匹のうち7匹のマウスの注射部位において壊死および炎症が起こったため(3/11は重篤な潰瘍を有し、4/11は中程度の潰瘍を有した)、14日目に終了した。この群では、体重減少も多少認められた(パートD)。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞または細胞抽出物を化合物と接触させる段階、化合物がアデニンヌクレオチド輸送体(ANT)に結合するかどうかを判定する段階、および化合物が増殖細胞において選択的にミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)を誘導するかどうかを判定する段階を含む、増殖細胞においてMPTを誘導する化合物を同定する方法。
【請求項2】
細胞または細胞抽出物を複数の化合物と接触させる段階、化合物のいずれかがANTに結合するかどうかを判定する段階、および、そうであれば、複数の化合物のそれぞれについて化合物が増殖細胞において選択的にMPTを誘導するかどうかを個別に判定する段階を含む、複数の化合物をスクリーニングして増殖細胞においてMPTを誘導する化合物を同定する方法。
【請求項3】
増殖細胞に対する選択性が、ANTに結合すると同定された化合物が増殖細胞においてMPTに及ぼす影響を、非増殖細胞または増殖静止細胞においてMPTに及ぼす影響と比較することによって決定される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
MPT誘導の判定がチトクロームC放出の変化を測定する段階を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
MPT誘導の判定が細胞内スーパーオキシド濃度の変化を測定する段階を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項記載の方法に従って同定された少なくとも1つの化合物の治療有効量、または薬学的に許容される担体、アジュバント、および/または希釈剤と共に該化合物のうちの少なくとも1つを含む薬学的組成物の治療有効量を脊椎動物に投与する段階を含む、脊椎動物においてMPTを誘導する方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項記載の方法に従って同定された化合物のアポトーシス誘導量、または薬学的に許容される担体、アジュバント、および/または希釈剤と共にその化合物のうちの少なくとも1つを含む薬学的組成物の治療有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、増殖哺乳動物細胞においてアポトーシスを誘導する方法。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか一項記載の方法に従って同定された化合物の血管新生阻害量、または薬学的に許容される担体、アジュバント、および/または希釈剤と共に該化合物のうちの少なくとも1つを含む薬学的組成物の治療有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物において血管新生を阻害する方法。
【請求項9】
化合物がジチオール反応性化合物である、請求項1から8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
化合物がアルセノキシド(arsenoxide)(またはアルセノキシド等価物)部分を有する、請求項1から8のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
化合物が式(I)のものである、請求項10記載の方法:
式中、
Aは、少なくとも1つのペンダント基を含み;
(XBX')nB'は適切なリンカー基を含み、Xは、-NR、-S(O)-、-S(O)O-、-S(O)2-、-S(O)2O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-P(O)(R1)-、および-P(O)(R1)O-からなる群より選択されるか、または存在せず;
Bは、C1〜C10アルキレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C10アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C3〜C10ヘテロシクロアルキレン、C5〜C10ヘテロシクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、ヘテロアリーレン、およびC2〜C10アシルからなる群より選択され;
X'は、-NR-、-O-、-S-、-Se-、-S-S-、S(O)-、-OS(O)-、OS(O)O-、-OS(O)2、-OS(O)2O-、-S(O)O-、-S(O)2-、-S(O)2O-、-OP(O)(R1)-、-OP(O)(R1)O-、-OP(O)(R1)OP(O)(R1)O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-P(O)(R1)-、-P(O)(R1)O-、および
からなる群より選択されるか、または存在せず;EはO、S、Se、NR、またはN(R)2+であり;
B'は、C1〜C10アルキレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C10アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C3〜C10ヘテロシクロアルキレン、C5〜C10ヘテロシクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、およびヘテロアリーレンからなる群より選択されるか、または存在せず;
それぞれのRは、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、OR2、およびC2〜C10アシルからなる群より独立して選択され;
R'はRと同一であるか、または2つのR'が、これらが結合している窒素原子と共に一体となって、飽和または不飽和の複素五員環または六員環を形成してもよく;
それぞれのR1は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、ハロ、OR2、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR2は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、および-C(O)R5からなる群より独立して選択され;
それぞれのR5は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
Bおよび/またはB'がアリーレンであるそれぞれの場合について、それぞれのアリーレン環に直接結合している置換基(アルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む)はパラ、メタ、またはオルトの関係にあってよく;かつ
それぞれのアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、ヘテロシクロアルキレン、ヘテロシクロアルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアシルは、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、シアノ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルセノキシド、-S(O)R3、-OS(O)R3、-S(O)2R3、-OS(O)2R3、-P(O)R4R4、-OP(O)R4R4、-N(R'')2、-NRC(O)(CH2)mQ、-C(O)R5;
で独立して置換されてよく;
R、R1、およびR5は先に定義した通りであり;
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R4)2、N(R)2、および-C(O)R5からなる群より選択され;
それぞれのR3は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR4は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ハロ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
R6は、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より選択され;
R''はRと同一であるか、または2つのR''が、これらが結合しているN原子と共に一体となって、飽和、不飽和、または芳香族の複素環系を形成してもよく;
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1から選択され;Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され;かつ
mは1から5であり、
nは0から20の整数であり
Yは、少なくとも1つのアルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含み;
pは1から10の整数であり、式(I)の化合物は6個を超える炭素原子を有する。
【請求項12】
Aが、天然、非天然、および合成のアミノ酸、親水性アミン、ペプチド、ポリペプチド、糖残基、オリゴ糖、ならびにチオール含有タンパク質、小さな酸性残基、ヒドロキシル含有残基からなる群より選択されるか、またはそれらの組み合わせである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
親水性アミンが、一級アルキルアミン、一級アリールアミン、一級アラルキルアミン、二級アルキルアミン、二級アリールアミン、二級アラルキルアミン、三級アルキルアミン、三級アリールアミン、および三級アラルキルアミン、ならびに複素環アミンから選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
Aが、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、グルタチオン、グルコサミン、糖類、二糖、オリゴ糖からなる群より選択され、それぞれの硫黄含有残基の硫黄原子が任意に酸化されてスルホキシドまたはスルホンを形成してもよい、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
Aが、1つまたは複数のシステイニルグリシン、システイン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、およびアルギニンを含むペプチド;グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、リキソース、ガラクトース、ヘキソース、スクロース、ソルボース、ガラクトシル-スクロース、ソルビトール、マンニトール、およびキシリトールから選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
Xは、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、および-C(S)S-からなる群より選択されるか、または存在せず;
Bは、C1〜C5アルキレン、C2〜C5アルケニレン、C2〜C5アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、およびC2〜C5アシルからなる群より選択され;
X'は、-O-、-S-、-NR-、-S-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-P(O)(R1)-、-OP(O)(R1)-、OP(O)(R1)O-、-OP(O)(R1)OP(O)(R1)O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-Se-、
からなる群より選択されるか、または存在せず;Eは、O、S、またはN(R)2+であり;
nは0、1、または2であり;かつ
B'は、C1〜C5アルキレン、C2〜C5アルケニレン、C2〜C5アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、およびC6〜C12アリーレンからなる群より選択されるか、または存在せず;
それぞれのRは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3-C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、OR2、およびC2-C10アシルからなる群より独立して選択され;
R'はRと同一であり;
それぞれのR1は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、ハロ、OR2、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR2は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、および-C(O)R5からなる群より独立して選択され;
それぞれのR5は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C5アルケニルオキシ、C3〜C5アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C5アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
Bおよび/またはB'がアリーレンであるそれぞれの場合について、それぞれのアリーレン環に直接結合している置換基(アルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む)はパラ、メタ、またはオルトの関係にあってよく;かつ
それぞれのアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン、およびアシルは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、シアノ、ハロ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルセノキシド、-S(O)R3、-OS(O)R3、-S(O)2R3、-OS(O)2R3、-P(O)R4R4、-OP(O)R4R4、-N(R'')2、-NRC(O)(CH2)mQ、-C(O)R5、
で独立して置換されてよく;
R、R1、およびR5は先に定義した通りであり;
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R4)2、N(R)2、および-C(O)R5からなる群より選択され;
それぞれのR3は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C5アルケニルオキシ、C3〜C5アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C5アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR4は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C5アルケニルオキシ、C3〜C5アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C5アルキニルチオ、C3〜C5シクロアルキルチオ、C5〜C5シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ハロ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
R6は、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C5アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より独立して選択され;
R''はRと同一であり;
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1からなる群より選択され;Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され;
mは1から5である、
請求項11から15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
Xは存在せず;
Bは、C1〜C5アルキレン、C6〜C12アリーレン、およびC2〜C5アシルからなる群より選択され;
X'は、-O-、-S-、-NR-、-S-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-P(O)(R1)-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-Se-、および
からなる群より選択されるか、または存在せず;EはO、S、またはN(R)2+であり;
nは0、1、または2であり;かつ
B'は、C1〜C5アルキレン、C6〜C12アリーレンであるか、または存在せず;
それぞれのRは、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、OR2、およびC2〜C5アシルからなる群より独立して選択され;
R'はRと同一であり;
それぞれのR1は、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、ハロ、OR2、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR2は、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、および-C(O)R5からなる群より独立して選択され;
それぞれのR5は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C5アルケニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
Bおよび/またはB'がアリーレンであるそれぞれの場合について、それぞれのアリーレン環に直接結合している置換基(アルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む)はパラ、メタ、またはオルトの関係にあってよく;かつ
それぞれのアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン、およびアシルは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、ハロ、シアノ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルセノキシド、-S(O)R3、-OS(O)R3、-S(O)2R3、-OS(O)2R3、-P(O)R4R4、-OP(O)R4R4、-N(R'')2、-NRC(O)(CH2)mQ、-C(O)R5、
で独立して置換されてよく;
R、R1、およびR5は先に定義した通りであり;かつ
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R4)2、および-C(O)R5からなる群より選択され;
それぞれのR3は、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR4は、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ハロ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
R6は、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より選択され;
R''はRと同一であり;
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1から選択され;Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され;
mは1から5である、
請求項11から16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
Xは存在せず;
Bは、C1〜C5アルキレン、C6〜C12アリーレン、およびC2〜C5アシルからなる群より選択され;
X'は、-O-、-S-、-NR-、-C(O)-、および-C(O)O-からなる群より選択されるか、または存在せず;
nは1であり;
B'は、C1〜C5アルキレン、C6〜C12アリーレンであるか、または存在せず;かつ
Rは、水素、C1-C5アルキル、C6〜C12アリール、およびC2〜C5アシルからなる群より選択され;
Bおよび/またはB'がアリーレンであるそれぞれの場合について、それぞれのアリーレン環に直接結合している置換基(アルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む)はパラ、メタ、またはオルトの関係にあってよく;かつ
それぞれのアルキレン、アリーレン、およびアシルは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、ハロ、シアノ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルセノキシド、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)R4R4、-N(R'')2、-NRC(O)(CH2)mQ、-C(O)R5、
で独立して置換されてよく;
それぞれのRは、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、およびC2〜C5アシルからなる群より独立して選択され;
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R4)2、および-C(O)R5からなる群より選択され;
それぞれのR3は、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、およびC6〜C12アリールチオからなる群より独立して選択され;
それぞれのR4は、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、ハロ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR5は、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
R6は、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より選択され;
R''は上記Rと同一であり;
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1から選択され;Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され;
mは、2、3、4、または5である、
請求項11から17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
Xは存在せず;
BはC2〜C5アシルであり;
X'はNRであり;
nは1であり;
B'はフェニレンであり;かつ
RはHであり;
フェニレン環に直接結合している置換基は、パラ、メタ、またはオルトの関係にあってよい、
請求項11から18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
化合物が
であり、R7からR10は、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、カルボキシ、C1-C5アルコキシ、-OS(O)2R3、および-NHC(O)CH2Qからなる群より独立して選択され、Qは、ハロゲン、-OS(O)2CH3、-OS(O)2C6H5、および-OS(O)2-pトリルであり;かつR7からR1Oのいずれか1つがC1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、-OS(O)2R3である場合、フェニレンと縮合環を形成することができ;さらに、R7からR10の少なくとも1つがC1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、または-OS(O)2R3である場合、R7からR10の任意の少なくとももう1つと結合してフェニレンと縮合環を形成することができる、
請求項19記載の方法。
【請求項21】
R7からR1Oが、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、C1〜C5アルコキシ、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、フェニル、および-NHC(O)CH2Qからなる群より独立して選択され、Qは、ハロゲン、-OS(O)2CH3、-OS(O)2C6H5、および-OS(O)2-pトリルである、
請求項20記載の方法。
【請求項22】
アルセノキシド(-As=O)基がフェニレン環の4位にある、請求項19または20記載の方法。
【請求項23】
化合物が以下からなる群より選択される、請求項1から22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
化合物が式VII:
によって表され、式中、Gは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、カルボキシ、C1〜C5アルコキシ、C1〜C5アルキル、およびC6〜C12アリール、および-NHC(O)CH2Qからなる群より選択され、Qは、ハロゲン、-OS(O)2CH3、-OS(O)2C6H5、または-OS(O)2-pトリルである、
請求項1から19のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
Gが、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、カルボキシ、C1〜C5アルコキシ、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、フェニル、および-NHC(O)CH2Qからなる群より選択され、Qは、ハロゲン、-OS(O)2CH3、-OS(O)2C6H5、または-OS(O)2-pトリルである、
請求項24記載の方法。
【請求項26】
Gが、ヒドロキシ、フッ素、アミノ、およびニトロからなる群より選択される、
請求項24または25記載の方法。
【請求項27】
アルセノキシド基(-As=O)が本明細書で定義するアルセノキシド等価物に置換される、請求項1から26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
アルセノキシド等価物が、ジチオールに対して-As=Oと本質的に同じ親和性を示す任意のジチオール反応性化学種である、請求項27記載の方法。
【請求項1】
細胞または細胞抽出物を化合物と接触させる段階、化合物がアデニンヌクレオチド輸送体(ANT)に結合するかどうかを判定する段階、および化合物が増殖細胞において選択的にミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)を誘導するかどうかを判定する段階を含む、増殖細胞においてMPTを誘導する化合物を同定する方法。
【請求項2】
細胞または細胞抽出物を複数の化合物と接触させる段階、化合物のいずれかがANTに結合するかどうかを判定する段階、および、そうであれば、複数の化合物のそれぞれについて化合物が増殖細胞において選択的にMPTを誘導するかどうかを個別に判定する段階を含む、複数の化合物をスクリーニングして増殖細胞においてMPTを誘導する化合物を同定する方法。
【請求項3】
増殖細胞に対する選択性が、ANTに結合すると同定された化合物が増殖細胞においてMPTに及ぼす影響を、非増殖細胞または増殖静止細胞においてMPTに及ぼす影響と比較することによって決定される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
MPT誘導の判定がチトクロームC放出の変化を測定する段階を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
MPT誘導の判定が細胞内スーパーオキシド濃度の変化を測定する段階を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項記載の方法に従って同定された少なくとも1つの化合物の治療有効量、または薬学的に許容される担体、アジュバント、および/または希釈剤と共に該化合物のうちの少なくとも1つを含む薬学的組成物の治療有効量を脊椎動物に投与する段階を含む、脊椎動物においてMPTを誘導する方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項記載の方法に従って同定された化合物のアポトーシス誘導量、または薬学的に許容される担体、アジュバント、および/または希釈剤と共にその化合物のうちの少なくとも1つを含む薬学的組成物の治療有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、増殖哺乳動物細胞においてアポトーシスを誘導する方法。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか一項記載の方法に従って同定された化合物の血管新生阻害量、または薬学的に許容される担体、アジュバント、および/または希釈剤と共に該化合物のうちの少なくとも1つを含む薬学的組成物の治療有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物において血管新生を阻害する方法。
【請求項9】
化合物がジチオール反応性化合物である、請求項1から8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
化合物がアルセノキシド(arsenoxide)(またはアルセノキシド等価物)部分を有する、請求項1から8のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
化合物が式(I)のものである、請求項10記載の方法:
式中、
Aは、少なくとも1つのペンダント基を含み;
(XBX')nB'は適切なリンカー基を含み、Xは、-NR、-S(O)-、-S(O)O-、-S(O)2-、-S(O)2O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-P(O)(R1)-、および-P(O)(R1)O-からなる群より選択されるか、または存在せず;
Bは、C1〜C10アルキレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C10アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C3〜C10ヘテロシクロアルキレン、C5〜C10ヘテロシクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、ヘテロアリーレン、およびC2〜C10アシルからなる群より選択され;
X'は、-NR-、-O-、-S-、-Se-、-S-S-、S(O)-、-OS(O)-、OS(O)O-、-OS(O)2、-OS(O)2O-、-S(O)O-、-S(O)2-、-S(O)2O-、-OP(O)(R1)-、-OP(O)(R1)O-、-OP(O)(R1)OP(O)(R1)O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-P(O)(R1)-、-P(O)(R1)O-、および
からなる群より選択されるか、または存在せず;EはO、S、Se、NR、またはN(R)2+であり;
B'は、C1〜C10アルキレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C10アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C3〜C10ヘテロシクロアルキレン、C5〜C10ヘテロシクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、およびヘテロアリーレンからなる群より選択されるか、または存在せず;
それぞれのRは、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、OR2、およびC2〜C10アシルからなる群より独立して選択され;
R'はRと同一であるか、または2つのR'が、これらが結合している窒素原子と共に一体となって、飽和または不飽和の複素五員環または六員環を形成してもよく;
それぞれのR1は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、ハロ、OR2、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR2は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、および-C(O)R5からなる群より独立して選択され;
それぞれのR5は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
Bおよび/またはB'がアリーレンであるそれぞれの場合について、それぞれのアリーレン環に直接結合している置換基(アルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む)はパラ、メタ、またはオルトの関係にあってよく;かつ
それぞれのアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、ヘテロシクロアルキレン、ヘテロシクロアルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアシルは、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、シアノ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルセノキシド、-S(O)R3、-OS(O)R3、-S(O)2R3、-OS(O)2R3、-P(O)R4R4、-OP(O)R4R4、-N(R'')2、-NRC(O)(CH2)mQ、-C(O)R5;
で独立して置換されてよく;
R、R1、およびR5は先に定義した通りであり;
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R4)2、N(R)2、および-C(O)R5からなる群より選択され;
それぞれのR3は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR4は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ハロ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
R6は、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より選択され;
R''はRと同一であるか、または2つのR''が、これらが結合しているN原子と共に一体となって、飽和、不飽和、または芳香族の複素環系を形成してもよく;
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1から選択され;Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され;かつ
mは1から5であり、
nは0から20の整数であり
Yは、少なくとも1つのアルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含み;
pは1から10の整数であり、式(I)の化合物は6個を超える炭素原子を有する。
【請求項12】
Aが、天然、非天然、および合成のアミノ酸、親水性アミン、ペプチド、ポリペプチド、糖残基、オリゴ糖、ならびにチオール含有タンパク質、小さな酸性残基、ヒドロキシル含有残基からなる群より選択されるか、またはそれらの組み合わせである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
親水性アミンが、一級アルキルアミン、一級アリールアミン、一級アラルキルアミン、二級アルキルアミン、二級アリールアミン、二級アラルキルアミン、三級アルキルアミン、三級アリールアミン、および三級アラルキルアミン、ならびに複素環アミンから選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
Aが、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、グルタチオン、グルコサミン、糖類、二糖、オリゴ糖からなる群より選択され、それぞれの硫黄含有残基の硫黄原子が任意に酸化されてスルホキシドまたはスルホンを形成してもよい、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
Aが、1つまたは複数のシステイニルグリシン、システイン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、およびアルギニンを含むペプチド;グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、リキソース、ガラクトース、ヘキソース、スクロース、ソルボース、ガラクトシル-スクロース、ソルビトール、マンニトール、およびキシリトールから選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
Xは、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、および-C(S)S-からなる群より選択されるか、または存在せず;
Bは、C1〜C5アルキレン、C2〜C5アルケニレン、C2〜C5アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、およびC2〜C5アシルからなる群より選択され;
X'は、-O-、-S-、-NR-、-S-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-P(O)(R1)-、-OP(O)(R1)-、OP(O)(R1)O-、-OP(O)(R1)OP(O)(R1)O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-Se-、
からなる群より選択されるか、または存在せず;Eは、O、S、またはN(R)2+であり;
nは0、1、または2であり;かつ
B'は、C1〜C5アルキレン、C2〜C5アルケニレン、C2〜C5アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、およびC6〜C12アリーレンからなる群より選択されるか、または存在せず;
それぞれのRは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3-C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、OR2、およびC2-C10アシルからなる群より独立して選択され;
R'はRと同一であり;
それぞれのR1は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、ハロ、OR2、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR2は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、および-C(O)R5からなる群より独立して選択され;
それぞれのR5は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C5アルケニルオキシ、C3〜C5アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C5アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
Bおよび/またはB'がアリーレンであるそれぞれの場合について、それぞれのアリーレン環に直接結合している置換基(アルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む)はパラ、メタ、またはオルトの関係にあってよく;かつ
それぞれのアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン、およびアシルは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、シアノ、ハロ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルセノキシド、-S(O)R3、-OS(O)R3、-S(O)2R3、-OS(O)2R3、-P(O)R4R4、-OP(O)R4R4、-N(R'')2、-NRC(O)(CH2)mQ、-C(O)R5、
で独立して置換されてよく;
R、R1、およびR5は先に定義した通りであり;
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R4)2、N(R)2、および-C(O)R5からなる群より選択され;
それぞれのR3は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C5アルケニルオキシ、C3〜C5アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C5アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR4は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C5アルケニルオキシ、C3〜C5アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C5アルキニルチオ、C3〜C5シクロアルキルチオ、C5〜C5シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ハロ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
R6は、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C5アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より独立して選択され;
R''はRと同一であり;
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1からなる群より選択され;Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され;
mは1から5である、
請求項11から15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
Xは存在せず;
Bは、C1〜C5アルキレン、C6〜C12アリーレン、およびC2〜C5アシルからなる群より選択され;
X'は、-O-、-S-、-NR-、-S-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-P(O)(R1)-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-Se-、および
からなる群より選択されるか、または存在せず;EはO、S、またはN(R)2+であり;
nは0、1、または2であり;かつ
B'は、C1〜C5アルキレン、C6〜C12アリーレンであるか、または存在せず;
それぞれのRは、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、OR2、およびC2〜C5アシルからなる群より独立して選択され;
R'はRと同一であり;
それぞれのR1は、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、ハロ、OR2、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR2は、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、および-C(O)R5からなる群より独立して選択され;
それぞれのR5は、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C5アルケニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C5アルケニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
Bおよび/またはB'がアリーレンであるそれぞれの場合について、それぞれのアリーレン環に直接結合している置換基(アルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む)はパラ、メタ、またはオルトの関係にあってよく;かつ
それぞれのアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン、およびアシルは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、ハロ、シアノ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルセノキシド、-S(O)R3、-OS(O)R3、-S(O)2R3、-OS(O)2R3、-P(O)R4R4、-OP(O)R4R4、-N(R'')2、-NRC(O)(CH2)mQ、-C(O)R5、
で独立して置換されてよく;
R、R1、およびR5は先に定義した通りであり;かつ
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R4)2、および-C(O)R5からなる群より選択され;
それぞれのR3は、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR4は、水素、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ハロ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
R6は、C1〜C5アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルキルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より選択され;
R''はRと同一であり;
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1から選択され;Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され;
mは1から5である、
請求項11から16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
Xは存在せず;
Bは、C1〜C5アルキレン、C6〜C12アリーレン、およびC2〜C5アシルからなる群より選択され;
X'は、-O-、-S-、-NR-、-C(O)-、および-C(O)O-からなる群より選択されるか、または存在せず;
nは1であり;
B'は、C1〜C5アルキレン、C6〜C12アリーレンであるか、または存在せず;かつ
Rは、水素、C1-C5アルキル、C6〜C12アリール、およびC2〜C5アシルからなる群より選択され;
Bおよび/またはB'がアリーレンであるそれぞれの場合について、それぞれのアリーレン環に直接結合している置換基(アルセノキシドまたはアルセノキシド等価物を含む)はパラ、メタ、またはオルトの関係にあってよく;かつ
それぞれのアルキレン、アリーレン、およびアシルは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、ハロ、シアノ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルセノキシド、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)R4R4、-N(R'')2、-NRC(O)(CH2)mQ、-C(O)R5、
で独立して置換されてよく;
それぞれのRは、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、およびC2〜C5アシルからなる群より独立して選択され;
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R4)2、および-C(O)R5からなる群より選択され;
それぞれのR3は、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、およびC6〜C12アリールチオからなる群より独立して選択され;
それぞれのR4は、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、ハロ、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
それぞれのR5は、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、C1〜C5アルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より独立して選択され;
R6は、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルキルチオ、C6〜C12アリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より選択され;
R''は上記Rと同一であり;
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1から選択され;Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され;
mは、2、3、4、または5である、
請求項11から17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
Xは存在せず;
BはC2〜C5アシルであり;
X'はNRであり;
nは1であり;
B'はフェニレンであり;かつ
RはHであり;
フェニレン環に直接結合している置換基は、パラ、メタ、またはオルトの関係にあってよい、
請求項11から18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
化合物が
であり、R7からR10は、水素、C1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、カルボキシ、C1-C5アルコキシ、-OS(O)2R3、および-NHC(O)CH2Qからなる群より独立して選択され、Qは、ハロゲン、-OS(O)2CH3、-OS(O)2C6H5、および-OS(O)2-pトリルであり;かつR7からR1Oのいずれか1つがC1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、-OS(O)2R3である場合、フェニレンと縮合環を形成することができ;さらに、R7からR10の少なくとも1つがC1〜C5アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C5アルコキシ、または-OS(O)2R3である場合、R7からR10の任意の少なくとももう1つと結合してフェニレンと縮合環を形成することができる、
請求項19記載の方法。
【請求項21】
R7からR1Oが、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、C1〜C5アルコキシ、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、フェニル、および-NHC(O)CH2Qからなる群より独立して選択され、Qは、ハロゲン、-OS(O)2CH3、-OS(O)2C6H5、および-OS(O)2-pトリルである、
請求項20記載の方法。
【請求項22】
アルセノキシド(-As=O)基がフェニレン環の4位にある、請求項19または20記載の方法。
【請求項23】
化合物が以下からなる群より選択される、請求項1から22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
化合物が式VII:
によって表され、式中、Gは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、カルボキシ、C1〜C5アルコキシ、C1〜C5アルキル、およびC6〜C12アリール、および-NHC(O)CH2Qからなる群より選択され、Qは、ハロゲン、-OS(O)2CH3、-OS(O)2C6H5、または-OS(O)2-pトリルである、
請求項1から19のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
Gが、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、カルボキシ、C1〜C5アルコキシ、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、フェニル、および-NHC(O)CH2Qからなる群より選択され、Qは、ハロゲン、-OS(O)2CH3、-OS(O)2C6H5、または-OS(O)2-pトリルである、
請求項24記載の方法。
【請求項26】
Gが、ヒドロキシ、フッ素、アミノ、およびニトロからなる群より選択される、
請求項24または25記載の方法。
【請求項27】
アルセノキシド基(-As=O)が本明細書で定義するアルセノキシド等価物に置換される、請求項1から26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
アルセノキシド等価物が、ジチオールに対して-As=Oと本質的に同じ親和性を示す任意のジチオール反応性化学種である、請求項27記載の方法。
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2006−518986(P2006−518986A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548941(P2004−548941)
【出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001483
【国際公開番号】WO2004/042079
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(505167794)ユニサーチ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001483
【国際公開番号】WO2004/042079
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(505167794)ユニサーチ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
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